イミド変性エラストマーおよびカーボンナノチューブ配合ベルト
【課題】導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性等に優れるイミド変性エラストマーおよびベルトを提供することである。
【解決手段】導電剤としてカーボンナノチューブを含有したイミド変性エラストマーであり、該イミド変性エラストマーを用いたベルトである。このベルトは、表面抵抗率が103〜1012Ω/□であるのが好ましい。また、ポリイミド樹脂からなる基材1上に少なくとも弾性層2が設けられたベルトであって、弾性層2が前記イミド変性エラストマーからなるものであってもよい。このようなベルトは、カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形されたものであるのが好ましい。
【解決手段】導電剤としてカーボンナノチューブを含有したイミド変性エラストマーであり、該イミド変性エラストマーを用いたベルトである。このベルトは、表面抵抗率が103〜1012Ω/□であるのが好ましい。また、ポリイミド樹脂からなる基材1上に少なくとも弾性層2が設けられたベルトであって、弾性層2が前記イミド変性エラストマーからなるものであってもよい。このようなベルトは、カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形されたものであるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有するイミド変性エラストマーおよびカーボンナノチューブ配合ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
イミド成分を有するポリイミド樹脂は、物理強度等に優れるので、例えばベルト等に用いられる。
一方、ベルトには帯電防止の上で導電性が要求される。例えば画像形成装置において転写部で用いられる中間転写ベルトには、トナー転写の上でベルトの導電率を半導電領域にする必要がある。
ところが、ポリイミド樹脂は絶縁性なので導電性を付与する必要があり、導電性を付与する方法としては、例えばカーボンブラックを導電剤として添加する方法等がある。
【0003】
非特許文献1には、カーボンブラックを充填したポリイミドベルトが記載されている。この文献によると、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液にカーボンブラックを均一に分散させた後、この溶液を回転成形(遠心成形)しながら溶剤を半分以上揮発させ、ポリアミド酸のシームレスベルトを成形加工する。ついで、これを脱水イミド化してカーボンブラックを充填したポリイミド製の中間転写ベルトを得ている。
【0004】
しかしながら、カーボンブラックでベルトに半導電性を付与するには、通常、カーボンブラックを多量に添加しなければならず、このため柔軟性等の諸物性が低下すると共に、ベルト表面にカーボンブラック由来の凹凸が生じてベルトの表面性が低下するという問題がある。また、カーボンブラックは、一定の添加量で急激に導電率が低下するいわゆるパーコレーション現象を起こすので、導電率の制御が難しい。
【0005】
一方、カーボンブラックに代えてカーボンナノチューブを導電剤として配合する方法がある。カーボンナノチューブを用いると、カーボンブラックよりも少量で高い導電率が得られ、パーコレーション現象も生じないので好適と考えられる。例えば特許文献1には、カーボンナノチューブを含有してなるポリイミド樹脂を主成分とするポリイミドフィルムを用いた画像形成記録装置用ベルトが記載されている。
【0006】
ところで、ポリイミド樹脂は、物理強度等には優れるものの、樹脂構造が剛直なので、柔軟性に欠け、屈曲性等に劣るという問題がある。したがって、特許文献1に記載されているようなポリイミド樹脂を用いたベルトは、駆動中にベルトに亀裂が生じたり、ベルトが破断するおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開2005−206616号公報
【非特許文献1】西浦直樹、岡本健三、石川優、「回転成形法におけるカーボンブラック充填ポリイミドベルトの電気抵抗率に与える遠心力の影響」、成形加工、第16巻、第11号、2004年、p729-734
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性等に優れるイミド変性エラストマーおよびカーボンナノチューブ配合ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)導電剤としてカーボンナノチューブを含有したことを特徴とするイミド変性エラストマー。
(2)イミド変性ポリウレタンエラストマーである前記(1)記載のイミド変性エラストマー。
(3)前記イミド変性ポリウレタンエラストマーは、下記一般式(I):
【化2】
[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]で表される前記(2)記載のイミド変性エラストマー。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のイミド変性エラストマーを用いたことを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
(5)表面抵抗率が103〜1012Ω/□である前記(4)記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(6)ポリイミド樹脂からなる基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトであって、前記弾性層が前記イミド変性エラストマーからなる前記(4)または(5)記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(7)カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形された前記(4)〜(6)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(8)画像形成装置に用いられる前記(4)〜(7)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【発明の効果】
【0010】
前記(1)によれば、イミド変性エラストマーが導電剤としてカーボンナノチューブを含有するので、導電率を簡単に制御でき、かつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すことができるという効果を有する。すなわち、前記イミド変性エラストマーは、イミド成分を有するエラストマーなので、物理強度等を保持しつつ、ポリイミド樹脂よりも柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。また、前記カーボンナノチューブは、少量で高い導電率を発現することができ、かつその添加量と導電率との関係は直線的に変化するのでパーコレーション現象が発生せず、よって導電率の制御が簡単になるという効果を有する。また、樹脂へのカーボンブラック添加では、分散性にもよるが、高い導電率を得る場合には多量の添加が必要であり、柔軟性等の諸物性が低下する場合が多かった。これに対し、カーボンナノチューブ添加では、少量の添加で高い導電率を発現するために、柔軟性等の物性を低下させずに導電性を付与することが可能である。したがって、前記イミド変性エラストマーが導電剤として前記カーボンナノチューブを含有すると、前記したイミド変性エラストマーによる効果とカーボンナノチューブによる効果とが相まって、前記(1)のイミド変性エラストマーは、導電率の制御が簡単になり、かつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すようになる。
【0011】
前記(2)によれば、ポリウレタンをエラストマー成分とするので、より優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。前記(3)によれば、主鎖に連続したイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を所望の値に調整することができ、よって確実に物理強度等を保持しつつ、優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。
【0012】
また、カーボンナノチューブを用いると、カーボンブラックよりも少量で高い導電率が得られるので、本発明にかかるイミド変性エラストマーを、前記(4)のようにベルトに用いると、導電剤を添加することによる柔軟性の低下を抑制することができる。すなわち前記(4)のベルトは、導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性に優れる。しかも、導電剤由来の凹凸がベルト表面に生じることによるベルトの表面性低下を抑制することができる。
【0013】
前記(5)によれば、表面抵抗率が103〜1012Ω/□であるので、前記(8)のように画像形成装置用として好適に用いることができる。また、耐久性やトナーの転写性等を向上させる上で、ベルトの構成を前記(6)のように、ポリイミド樹脂からなる基材上に少なくとも本発明にかかるイミド変性エラストマーからなる弾性層を設けるようにしてもよい。
【0014】
前記(7)によれば、カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法によりベルトを成形するので、イミド変性エラストマーの前駆体である溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散することができ、その結果、簡単にシームレスなベルトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<イミド変性エラストマー>
本発明にかかるイミド変性エラストマーは、導電剤としてカーボンナノチューブを含有する。以下、本発明にかかるイミド変性エラストマーの一実施形態について説明する。本実施形態において、前記イミド変性エラストマーとは、イミド成分を有するエラストマーのことを意味する。
【0016】
具体的には、該エラストマー中のエラストマー成分としては、例えばポリウレタン、不飽和オレフィン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、フッ素ゴム系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー等が挙げられ、イミド成分としては、例えば脂環式モノマー、複素環式モノマー、フェニルエーテル系モノマー、アルキル側鎖モノマー等が挙げられる。
【0017】
本実施形態では、前記で例示したイミド変性エラストマーのうち、ポリウレタンをエラストマー成分とするイミド変性ポリウレタンエラストマー(以下、「ポリイミドウレタンエラストマー」や「PIUE」とも言う。)が好ましく、特に、前記一般式(I)で表されるPIUE(以下、「PIUE(I)」とも言う。)が好ましい。
【0018】
PIUE(I)は、ポリウレタン(ポリウレタンプレポリマー)をエラストマー成分として含有すると共に、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を所望の値に調整することができ、よって物理強度等を保持しつつ、柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。かかるPIUE(I)は文献未記載の新規化合物である。
【0019】
具体的には、前記一般式(I)において前記R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるジイソシアナート(a)の残基等が挙げられる。
【0020】
前記R2は、重量平均分子量100〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるポリオール(b)の残基等が挙げられる。
【0021】
前記R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(B)に従ってポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する際に用いるジアミン化合物(d)の残基等が挙げられる。前記脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
【0022】
前記R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(C)に従ってイミド変性エラストマー(I)を合成する際に用いるテトラカルボン酸二無水物(f)の残基等が挙げられる。
前記nは1〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。前記mは2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。
【0023】
前記一般式(I)で表されるPIUEの具体例としては、下記式(1)で表されるPIUE等が挙げられる。
【化3】
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは10〜100の整数を示す。]
【0024】
前記一般式(I)で表されるPIUEは、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体であるのが好ましい。このようなPIUEは、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(C)を経て製造することができる。
【0025】
[反応行程式(A)]
【化4】
[式中、R1,R2,nは、前記と同じである。]
【0026】
(ポリウレタンプレポリマー(c)の合成)
前記反応行程式(A)に示すように、まず、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(c)を得る。PIUE(I)は、このポリウレタンプレポリマー(c)をエラストマー成分とするので、ゴム状領域(室温付近)の弾性率が低くなり、よりエラスティックにすることができると共に、このポリウレタンプレポリマー(c)の分子量を制御することにより、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合で導入することが可能となる。
【0027】
具体的には、前記ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(Cr.MDI)、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
【0028】
前記ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量は100〜10,000、好ましくは300〜5,000であるのが好ましい。前記重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0030】
反応は、前記で例示したジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温で1時間〜5時間程度反応させればよい。ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.1:1.0〜2.0:1.0の範囲にするのが好ましい。これにより、得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を、下記で説明する所定の値にすることができる。
【0031】
得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量は、300〜50,000、好ましくは500〜45,000であるのがよい。この範囲内でポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を制御して、イミドユニットを所望の割合で導入すると、物理強度等を保持しつつ、柔軟性・屈曲性等に優れるPIUE(I)を得ることができる。
【0032】
また、ポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量が、前記範囲内において小さいほど、ハードなPIUE(I)を得ることができる。これに対し、前記分子量が300より小さいと、PIUE(I)がハードになりすぎ、50,000より大きいと、ソフトになりすぎるおそれがあるので好ましくない。前記重量平均分子量は、ポリウレタンプレポリマー(c)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0033】
[反応行程式(B)]
【化5】
[式中、R1〜R3,n,mは、前記と同じである。]
【0034】
(ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成)
前記で得られたポリウレタンプレポリマー(c)を用いて、反応行程式(B)に従ってイミド前駆体であるポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する。すなわち、ポリウレタンプレポリマー(c)をジアミン化合物(d)でウレア結合により鎖延長してポリウレタン−ウレア化合物(e)を得る。
【0035】
具体的には、前記ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
特に、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)を用いるのが、強度に優れるPIUE(I)を得ることができるうえで好ましい。また、前記で例示したジアミン化合物(d)の選択によっても、PIUE(I)の弾性率を調整することができる。
【0036】
反応は、ウレタンプレポリマー(c)と、前記で例示したジアミン化合物(d)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。
【0037】
前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンが好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、定法に従い脱水処理したものを用いるのが好ましい。
【0038】
[反応行程式(C)]
【化6】
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
【0039】
(PIUE(I)の合成)
前記で得られたポリウレタン−ウレア化合物(e)を用いて、反応行程式(C)に従って一般式(I)で表されるPIUEを合成する。すなわち、テトラカルボン酸二無水物(f)でウレア結合部にイミドユニットを導入してブロック共重合体であるPIUE(I)を得る。
【0040】
具体的には、前記テトラカルボン酸二無水物(f)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
反応は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)とのイミド化反応である。該イミド化反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれであってもよい。溶媒下でイミド化反応を行う場合には、まず、ポリウレタン−ウレア化合物(e)と、前記で例示したテトラカルボン酸二無水物(f)とを所定の割合で溶媒に加え、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、1時間〜10時間程度反応させて、下記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含む溶液(PUA溶液)を得る。
【化7】
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
【0042】
ここで、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成で使用したジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合比(モル)が、ジアミン化合物(d):テトラカルボン酸二無水物(f)=1:2〜1:2.02の範囲となる割合で混合するのが好ましい。これにより、確実にウレア結合部にイミドユニットを導入することができる。
【0043】
使用できる溶媒としては、前記反応行程式(B)の溶液重合反応に使用できる溶媒で例示したものと同じ溶媒を例示することができる。なお、反応行程式(B)において溶液重合反応でポリウレタン−ウレア化合物(e)を得た場合には、該溶媒中でイミド化反応を行えばよい。
【0044】
ついで、前記で得たPUA溶液を例えば円筒金型に注入して、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、100〜2,000rpm、30分〜2時間程度で円筒金型を回転させながら、遠心成形によりPUAをフィルム状に成膜する。
【0045】
ついで、フィルム状のPUAを加熱処理(脱水縮合反応)することにより、フィルム状の一般式(I)で表されるPIUEを得ることができる。加熱処理は、PUAが熱分解しない条件であるのが好ましく、例えば減圧条件下において150〜450℃、好ましくは150〜250℃、1時間〜5時間程度であるのがよい。
【0046】
一方、無溶媒下でイミド化反応を行う場合には、通常の攪拌槽型反応器の他、排気系を有する加熱手段を備えた押出機の中でも行うことができるので、得られるPIUE(I)を押し出して、そのままフィルム状に成形することができる。
【0047】
前記のようにして得られるPIUE(I)は、ガラス転移温度(Tg)が、通常、−30〜−60℃であると共に、高い弾性を有し、かつゴム状弾性領域の温度範囲が広いものになる。この理由として、以下の理由が推察される。すなわち、前記で説明した通り、PIUE(I)は、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、このイミドユニットからなるハードセグメントの凝集が均一かつ強固なものになる。このため、PIUE(I)は、より均一かつ強固なミクロ相分離構造を形成し、ガラス転移温度が低くなることで、ゴム状弾性領域の温度範囲が広くなる。
【0048】
PIUE(I)の重量平均分子量は10,000〜1000,000、好ましくは50,000〜800,000、より好ましくは50,000〜500,000であるのがよい。前記重量平均分子量は、前記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含むPUA溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した値である。なお、PIUE(I)ではなく、PUA溶液をGPCで測定するのは、PIUE(I)は、GPCの測定溶媒に不溶なためである。
【0049】
PIUE(I)は弾性率を所望の値に調整することができる。具体的には、PIUE(I)のイミド分率(イミド成分含有率)、すなわちイミド変性エラストマー中のイミド成分の割合を調整することによって、弾性率を調整することができる。イミド分率は、弾性率等に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、25重量%以下、好ましくは15重量%以下であるのがよく、下限値としては、通常、5重量%以上が妥当である。前記イミド分率は、原料、すなわちジイソシアナート(a)、ポリオール(b)、ジアミン化合物(d)およびテトラカルボン酸二無水物(f)の仕込み量から算出される値であり、より具体的には、下記式(α)から算出される値である。
【0050】
【数1】
【0051】
調整される弾性率の値としては、用途に応じて任意の値に調整すればよいが、通常、1.0×106〜1.0×109Paの範囲になるように調整される。前記弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定して得られる50℃での貯蔵弾性率E’の値である。
【0052】
ここで、前記した通り、前記イミド変性エラストマーは物理強度等を保持しつつ柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。また、下記で説明するカーボンナノチューブは、少量で高い導電率を発現することができるので、柔軟性等の物性を低下させずに導電性を付与することができ、しかもパーコレーション現象が発生せず、よって導電率の制御が簡単になるという効果を有する。そして、本実施形態では、このカーボンナノチューブを導電剤として前記イミド変性エラストマーが含有するので、イミド変性エラストマーが有する前記した効果と、カーボンナノチューブが有する前記した効果とが相まって、このイミド変性エラストマーは、導電率の制御が簡単になりかつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すようになる。
【0053】
具体的には、前記カーボンナノチューブとは、炭素で構成された直径がnmオーダーの単層もしくは複層の管のことを意味する。その特性値としては、特に限定されるものではなく、通常、直径は単層で0.4〜2nm、複層で10〜30nm程度、長さは単層、複層共に0.05〜15μm程度、体積抵抗値は単層、複層共に1.0×10-2〜8.0×10-2Ωcm程度であるのが好ましい。
【0054】
特に、カーボンナノチューブは、該カーボンナノチューブを適当な溶媒に分散させた分散液の形態で使用するのが好ましい。これにより、本発明にかかるイミド変性エラストマーの一使用形態であるベルトを後述する遠心成形法により成形すると、イミド変性エラストマーの前駆体である溶液中にカーボンナノチューブが均一に分散し、その結果、簡単にシームレスなベルトを得ることができる。
【0055】
前記分散液の濃度としては、分散液100重量%に対してカーボンナノチューブを0.5〜10重量%程度の割合で含むのが好ましい。また、分散させるカーボンナノチューブの表面には、例えば酸化処理、界面活性剤等の表面処理を施しておくのが好ましい。
【0056】
このようなカーボンナノチューブの分散液としては、例えば(株)ジェムコ製の以下に示すカーボンナノファイバー分散液等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
・同社製の商品名「CNF−T/水」:分散溶媒は水系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/EtOH」:分散溶媒はエタノール系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/IPA」:分散溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/NMP」:分散溶媒N−メチル−2−ピロリドン(NMP)系、濃度1,3重量%、表面処理は界面活性剤
・同社製の商品名「CNF−T/アノン」:分散溶媒シクロヘキサノン系、濃度1,3重量%、表面処理は界面活性剤
【0057】
カーボンナノチューブの添加量は、用途に応じて任意の割合で添加すればよいが、通常、イミド変性エラストマー100重量%に対して0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%程度であるのがよい。これに対し、前記添加量が0.1重量%より少ないと、カーボンナノチューブによる効果が得られないおそれがあり、20重量%を超えると、必要以上に導電率を付与することになるので好ましくない。
【0058】
カーボンナノチューブをイミド変性エラストマーに含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶融状態のイミド変性エラストマーにカーボンナノチューブを添加して混練してもよく、イミド変性エラストマーの前駆体である溶液中(例えばPUA溶液中)にカーボンナノチューブを添加した後、該溶液を脱水縮合反応してもよい。前記溶液中にカーボンナノチューブを添加する場合には、前記溶液中の固形分量100重量%に対してカーボンナノチューブを前記添加量、すなわち0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%程度添加すればよい。また、カーボンナノチューブを分散液の形態で添加する場合には、該分散液を固形分換算した値が前記添加量となるようにすればよい。
【0059】
<カーボンナノチューブ配合ベルト>
次に、前記したイミド変性エラストマーの一使用形態であるベルトの一実施形態について説明する。本実施形態にかかるカーボンナノチューブ配合ベルト(以下、「ベルト」と言う。)は、前記したイミド変性エラストマーを用いたものである。したがって、このベルトは、導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性等に優れると共に、表面性に優れるという効果を有する。
【0060】
具体的には、このベルトは、表面抵抗率が103〜1012Ω/□、好ましくは107〜1012Ω/□であるのがよい。このような表面抵抗率を有するベルトは、例えば画像形成装置に用いられるベルト、すなわち、例えば転写部で用いられる中間転写ベルト、定着部で用いられる定着ベルト、駆動部で用いられる駆動ベルト等として好適に使用することができる。
一方、中間転写ベルトとして使用する場合には、表面抵抗率が103Ω/□より小さいと、トナーを担持するのに充分な帯電を行うことができず、1012Ω/□より大きいと、トナーが飛散するおそれがある。特に、中間転写ベルトの場合には、トナーを担持するのに充分な帯電を確実に行う上で、表面抵抗率の下限値は107Ω/□であるのが好ましい。また、定着ベルト、駆動ベルトとして使用する場合にも、帯電防止の上で、表面抵抗率は1012Ω/□以下であることが必要である。前記表面抵抗率は、例えば後述するように、三菱化学社製の「ハイレスターMCP−HT450」を用いて印加電圧10Vの条件で測定して得られた値である。
【0061】
表面抵抗率を前記所定の範囲にするには、イミド変性エラストマー100重量%に対してカーボンナノチューブを0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で添加すればよい。これに対し、カーボンナノチューブの添加量が前記した範囲外であると、所定の表面抵抗率を得られないおそれがある。
【0062】
ベルトは、イミド変性エラストマーからなる単層ベルトであってもよく、耐久性やトナーの転写性を向上させる上で、図1(a)に示すように、ポリイミド樹脂を基材1とし、該基材1上にイミド変性エラストマーからなる弾性層2を設けた2層ベルト10、図1(b)に示すように、弾性層2上にさらに離型性樹脂層3を設けた3層ベルト20であってもよい。
【0063】
2層ベルト10または3層ベルト20において、基材1を構成するポリイミド樹脂としては、通常、酸無水物とジアミン化合物から合成されたポリアミド酸を熱および触媒等によってイミド化することで得られる。具体的には、前記酸無水物としては、例えば無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフタル酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、前記ジアミン化合物としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン等が挙げられ、例えば特許第2560727号公報に記載されているものが挙げられる。
【0064】
基材1の厚みは50〜200μm、好ましくは100〜150μmであるのがよい。これにより、ベルトの剛性が高くなり、ベルトの回転時に発生するスラスト方向の荷重に対しても強くなる。
【0065】
弾性層2は、ベルトに柔軟性を付与するためのものである。この弾性層2はイミド変性エラストマーからなるので、ポリイミド樹脂からなる基材1との親和性に優れ、両者が剥離することによる耐久性の低下を抑制することができる。また、該イミド変性エラストマー中のイミド成分の含有率を調整して、該エラストマーの弾性率を所望の値に調整することができるので、優れた柔軟性および屈曲性等を示すことができる。調整される弾性率は、通常、1.0×106〜1.0×109Pa程度であるのが好ましい。なお、単層ベルトの弾性率についても、前記所定の弾性率を例示することができる。
【0066】
弾性層2の厚みは50〜1,000μm、好ましくは100〜200μmであるのがよい。これにより、例えばトナーの転写効果等が優れたものになる。これに対し、弾性層2の厚みが50μmより薄いと、弾性層2に要求される柔軟性が低下し、1,000μmより大きいと、ベルトの総厚みが増して屈曲性などに悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0067】
離型性樹脂層3は、ベルトに表面性やトナーの離型性等を付与するためのものである。この離型性樹脂層3としては、離型性、耐熱性および屈曲耐性等の上で、フッ素樹脂等が好ましく、該フッ素樹脂としては、例えばテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。このような離型性樹脂層3を弾性層2上に設けると、シリコーンオイル等を使用しなくてもトナーの離型性が得られると共に、紙粉固着防止効果等が得られ、オイルレス化を図ることができる。
【0068】
離型性樹脂層3は、トナーおよび紙粉の離型性等を確保し、かつ弾性層2の柔軟性を損なわないような厚さで弾性層2上に設けるのが好ましい。このような離型性樹脂層3の厚みとしては5〜50μm、好ましくは10〜30μmであるのがよい。これに対し、離型性樹脂層3の厚みが5μmより薄いと、十分な離型性が得られず耐久性にも劣り、50μmより大きいと、弾性層2の柔軟性を損なうおそれがある。
【0069】
ベルトの総厚みは、通常、50〜300μm程度、好ましくは100〜200μmであるのがよく、特に、中間転写ベルトとして使用する場合には、100〜150μmであるのがよい。これに対し、ベルトの総厚みが前記した厚みよりも薄いと、物理強度が低下するおそれがあり、前記した厚みよりも大きいと、ロール屈曲部での変形によって、ベルト表面に応力が集中してクラックが発生するおそれがある。
【0070】
次に、前記したベルトの製造方法の一実施形態について、イミド変性エラストマーに前記したPIUE(I)を例に挙げて説明する。なお、ベルトはシームレスなベルトとして中間転写ベルトに用いると、本発明の有用性が増す上で好ましい。したがって、シームレスなベルトの製造方法について説明する。また、
【0071】
シームレスなベルトは、例えば遠心成形法により得ることができる。まず、イミド変性エラストマーからなるシームレスな単層ベルトを得る場合には、前記で説明したPUA溶液を調製する。このPUA溶液は、固形分量を10〜30重量%、好ましくは20重量%程度に調製するのが好ましい。
【0072】
ついで、このPUA溶液に導電剤としてカーボンナノチューブを添加する。このカーボンナノチューブは、分散液の形態で添加するのが好ましい。これにより、PUA溶液中にカーボンナノチューブが均一に分散するので、遠心力による導電剤の偏りが発生してベルトの表裏において導電率に差が生じることを抑制することができる。カーボンナノチューブの添加量としては、表面抵抗率が所定の範囲になるような前記した割合、すなわちイミド変性エラストマー(PUA溶液中の固形分量)100重量%に対してカーボンナノチューブを0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で添加すればよい。
【0073】
カーボンナノチューブを添加したPUA溶液は、密閉式攪拌機を用いて回転数50〜150rpm程度、20〜40分程度の時間をかけて攪拌した後、回転数10〜30rpm程度、5〜15分程度の時間をかけて脱泡処理を行うのが好ましい。なお、攪拌機は、前記した密閉式攪拌機に限定されるものではなく、例えばロールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等を用いてもよく、さらに例示したこれら以外の公知の攪拌機を用いてもよい。
【0074】
ついで、このPUA溶液を遠心成形機に投入する。PUA溶液の投入は、遠心成形機を110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、かつ400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させた状態で投入するのが好ましい。これにより、PUA溶液をドラム全体に充分に延伸させることができる。また、遠心成形機のドラム内面には離型処理を施す、離経剤を塗布する、あるいは離形性を有する樹脂層を形成する等の表面処理を施しておくのが好ましい。これにより、得られるPUAフィルムを遠心成型機から簡単に取り外すことができる。
【0075】
PUA溶液を遠心成形機に投入した後、遠心成形機の回転数を900〜1,100rpm、好ましくは1,000rpm程度に上げ、20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理をした後、50〜70℃、好ましくは60℃程度にまで冷却して、ドラム内面にPUAフィルムを形成する。
【0076】
形成されたPUAフィルムを室温まで冷却した後、該PUAフィルムをドラムから取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットする。ついで、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃程度で20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行い、フィルム状の一般式(I)で表されるPIUEを得る。このフィルムを適切な大きさにスリットしてイミド変性エラストマーからなるシームレスな単層ベルトを得る。
【0077】
次に、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20の製造方法について説明する。まず、前記した単層ベルトと同様にしてカーボンナノチューブを配合したPUA溶液を調製すると共に、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸のワニス(ポリイミドワニス)を調製する。ポリイミドワニスの固形分量としては、10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、より好ましくは18重量%程度であるのがよい。このようなポリイミドワニスとしては、特に限定されるものではなく、ポリアミド酸を適当な溶剤に加えてワニス化したものの他、市販のものを用いてもよく、例えば宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」等が挙げられる。
【0078】
ポリイミドワニスにも、カーボンナノチューブを添加するのが好ましい。具体的には、ポリイミド樹脂(ポリイミドワニスの固形分量)100重量%に対してカーボンナノチューブを10〜30重量%、好ましくは20重量%の割合で添加するのがよい。カーボンナノチューブを添加したポリイミドワニスは、攪拌機で30分〜2時間、好ましくは1時間程度攪拌しながら脱泡処理を行うのが好ましい。前記攪拌機としては、例えば前記したカーボンナノチューブを添加したPUA溶液を攪拌する際に挙げた攪拌機と同じ攪拌機を例示することができる。
【0079】
ついで、単層ベルトと同様にしてPUA溶液を遠心成形機に投入し、ドラム内面にPUAフィルムを形成した後、ドラムを400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させながら、前記で調製したポリイミドワニスを前記PUAフィルム内面に注入する。その後、回転数を50〜200rpm、好ましくは100rpm程度で回転させると共に、110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、30〜60分間、好ましくは45分間程度で熱処理を行ことで積層フィルム(基材1、弾性層2)を形成する。
【0080】
形成した積層フィルムを室温まで冷却した後、該積層フィルムをドラムから取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットする。ここで、3層ベルト20にする場合には、積層フィルムの表面にフッ素樹脂等をコーティングして離型樹脂層3を形成する。
【0081】
ついで、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃程度で20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行い、得られたフィルムを適切な大きさにスリットすることで、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得る。
【0082】
なお、効率よくシームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得る上で、遠心成形により連続して基材1、弾性層2を得る場合について説明したが、例えば前記で説明した遠心成形の条件で、円筒状のシームレスな基材1,弾性層2をそれぞれ調製すると共に、押出成形法等で円筒状のシームレスな離型性樹脂層3を調製し、これらを1液性または2液性のシリコーン系弾性接着剤、ウレタン系弾性接着剤、シート状ホットメルト型のシリコーン系接着剤,シラン変性ポリイミド系接着剤等や、加熱加圧等で一体化することにより、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得てもよい。
【0083】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
<合成例>
PUA溶液の合成方法について、下記式に基づいて説明する。
【化8】
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは5〜100の整数を示す。]
【0085】
(ポリウレタンプレポリマー(j)の合成)
まず、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)(h)[日本ポリウレタン工業(株)社製]を減圧蒸留した。また、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(i)[保土谷化学(株)社製の商品名「PTMG1000」、重量平均分子量:1,000]を80℃、2〜3mmHg、24時間の条件で減圧乾燥した。
【0086】
ついで、前記MDI(h)23.8gと、PTMG(i)76.2gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(j)を得た。このポリウレタンプレポリマー(j)をGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は4.6×104であった。
【0087】
(ポリウレタン−ウレア化合物(l)の合成)
前記で得たポリウレタンプレポリマー(j)10gを脱水処理したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)60mlに溶解させたものと、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)(k)0.378gを脱水処理したNMP20mlに溶解させたものとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、室温(23℃)で24時間攪拌して、ポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液を得た。
【0088】
(PUA溶液の合成)
前記で得たポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液中に、無水ピロメリット酸(PMDA)(m)0.831gを加え、アルゴンガス雰囲気下、150℃で2時間攪拌して、ポリウレタンアミド酸(PUA)溶液を得た。
【0089】
ちなみに、このPUA溶液を遠心成形機に流し込み、150℃で1,000rpm、1時間遠心成形してPUAシートを得、このPUAシートを減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)すると、厚さ100μmのシート状のPIUE(1)が得られた(イミド分率:15重量%)。前記イミド分率は、前記式(α)から算出して得た値である。得られたPIUE(1)について、KBr法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0090】
[実施例1〜5]
<試験片の作製>
前記合成例で得たPUA溶液を用いてキャスト法および遠心成形法でそれぞれ試験片を作製した。具体的には、密閉式攪拌機内にPUA溶液50gを添加した後、導電剤としてカーボンナノチューブの分散液を前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1および表2に示す割合で添加した。なお、前記カーボンナノチューブの分散液は、(株)ジェムコ製の商品名「CNF−T/NMP」であり、固形分換算して添加した。
【0091】
ついで、前記密閉式攪拌機を回転数100rpm、30分間の条件で攪拌させた後、回転数20rpm、10分間の条件で真空脱泡処理を行い、PUA/カーボンナノチューブ混合溶液を得た。
【0092】
(キャスト法)
上記で得た混合溶液を樹脂型に入れ、120℃で1時間加熱した後、さらに200℃で2時間熱処理して幅50mm、長さ100mm、厚み約100μmのシート状の試験片を得た。
【0093】
(遠心成形法)
上記で得た混合溶液を遠心成形機に投入して遠心成形し、図2(a)に示すようなシームレスの単層ベルト30を得た。なお、遠心成形は、回転数1000rpm、加熱温度120℃、加熱時間60分とし、遠心成形後に200℃で2時間熱処理を行った。ついで、得られた単層ベルト30をカッターでカットして、図2(b)に示すような幅50mm、長さ150mm、厚さ約100μmのシート状の試験片31を得た。
【0094】
<評価>
上記で得た各試験片について、表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。各測定方法を以下に示すと共に、その結果を表1,表2および図3〜図5に示す。
【0095】
(表面抵抗率の測定方法)
キャスト法で得た試験片を用い、該試験片の3箇所を、三菱化学社製の「ハイレスターMCP−HT450」を用いて印加電圧10Vの条件で測定し、得られた値の平均値を算出した。その結果を表1および図3に示す。
【0096】
(破断強度および破断伸びの測定方法)
遠心成形法で得た試験片を用い、該試験片を用いて引っ張り試験を実施し、破断強度および破断伸びを測定した。引っ張り試験の条件は次の通りである。すなわち試験片を3号ダンベルで打ち抜き、標線間20mm、500mm/分の条件で、JIS K6251に準拠し、破断強度(MPa)および破断伸び(%)をそれぞれ測定した。その結果を表2および図4,図5に示す。
【0097】
[比較例1]
前記合成例で得たPUA溶液に代えて、ポリイミドワニス(宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」)を用い、導電剤を添加しない以外は、前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法を行って試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図6および図7に示す。
【0098】
[比較例2]
前記合成例で得たPUA溶液に導電剤を添加しない以外は、前記PUA溶液を前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法で成形して試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図6および図7に示す。
【0099】
[比較例3〜5]
導電剤をカーボンナノチューブの分散液に代えて、カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「トーカブラック#5500」)にし、該カーボンブラックを前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1および表2に示す割合で添加した以外は、前記実施例1〜5と同様にして、PUA/カーボンブラック混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法で成形して試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1および図8に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図9および図10に示す。
【0100】
[比較例6〜11]
導電剤をカーボンナノチューブの分散液に代えて、カーボンブラック(キャボットジャパン社製の商品名「MOGAL-L」)にし、該カーボンブラックを前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1および表2に示す割合で添加した以外は、前記実施例1〜5と同様にして、PUA/カーボンブラック混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法で成形して試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1および図11に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図12および図13に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
表1および図3,8,11から明らかなように、比較例3〜5(トーカブラック#5500)および比較例6〜11(MOGAL-L)では、表面抵抗率のバラツキおよび添加量5%から15%の間における大きな表面抵抗率の変化(パーコレーション)が発生したのに対して、実施例1〜5(カーボンナノチューブ)は、添加量によるバラツキが小さく、かつ添加量と共に表面抵抗率が低下しパーコレーションは発生していないのがわかる。
【0104】
また、表2および図4〜7,9,10,12,13から明らかなように、比較例3〜5(トーカブラック#5500)および比較例6〜11(MOGAL-L)は、配合量の増加とともに破断強度および破断伸びが大きく低下している。これに対し、実施例1〜5(カーボンナノチューブ)は、破断伸び、破断強度共に大きな低下は起っていないのがわかる。このことから、カーボンナノチューブは導電率のコントロールが容易であり、かつ柔軟性などの物性低下を起こさずに添加が可能であることがわかる。したがって、本発明にかかるイミド変性エラストマーは、導電率の制御が簡単であり、かつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すといえる。
【0105】
以上、本発明の一実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良したものにも適用できることは言うまでもない。例えば、前記した実施形態では、イミド変性エラストマーの一使用形態としてベルトを例に挙げて説明したが、本発明にかかるイミド変性エラストマーの使用形態はこれに限定されるものではない。具体例としては、例えばシート、フィルム、チューブ、ホース、ロールギア、パッキング材、防音材、防振材、ブーツ、ガスケット、ベルトラミネート製品、被覆材、パーベーパレーション用の分離膜、光学非線形材料、弾性繊維、圧電素子、アクチュエーター、その他の各種自動車部品、工業機械部品、スポーツ用品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a),(b)は、本発明の一実施形態にかかるベルトを示す拡大概略断面図である。
【図2】(a),(b)は、実施例における遠心成形法で試験片を得る方法を示す概略説明図である。
【図3】実施例1〜5の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例1〜5の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1〜5の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図6】比較例1,2の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図7】比較例1,2の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図8】比較例3〜5の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図9】比較例3〜5の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図10】比較例3〜5の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図11】比較例6〜11の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図12】比較例6〜11の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図13】比較例6〜11の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0107】
1 基材
2 弾性層
3 離型性樹脂層
10 2層ベルト
20 3層ベルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有するイミド変性エラストマーおよびカーボンナノチューブ配合ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
イミド成分を有するポリイミド樹脂は、物理強度等に優れるので、例えばベルト等に用いられる。
一方、ベルトには帯電防止の上で導電性が要求される。例えば画像形成装置において転写部で用いられる中間転写ベルトには、トナー転写の上でベルトの導電率を半導電領域にする必要がある。
ところが、ポリイミド樹脂は絶縁性なので導電性を付与する必要があり、導電性を付与する方法としては、例えばカーボンブラックを導電剤として添加する方法等がある。
【0003】
非特許文献1には、カーボンブラックを充填したポリイミドベルトが記載されている。この文献によると、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液にカーボンブラックを均一に分散させた後、この溶液を回転成形(遠心成形)しながら溶剤を半分以上揮発させ、ポリアミド酸のシームレスベルトを成形加工する。ついで、これを脱水イミド化してカーボンブラックを充填したポリイミド製の中間転写ベルトを得ている。
【0004】
しかしながら、カーボンブラックでベルトに半導電性を付与するには、通常、カーボンブラックを多量に添加しなければならず、このため柔軟性等の諸物性が低下すると共に、ベルト表面にカーボンブラック由来の凹凸が生じてベルトの表面性が低下するという問題がある。また、カーボンブラックは、一定の添加量で急激に導電率が低下するいわゆるパーコレーション現象を起こすので、導電率の制御が難しい。
【0005】
一方、カーボンブラックに代えてカーボンナノチューブを導電剤として配合する方法がある。カーボンナノチューブを用いると、カーボンブラックよりも少量で高い導電率が得られ、パーコレーション現象も生じないので好適と考えられる。例えば特許文献1には、カーボンナノチューブを含有してなるポリイミド樹脂を主成分とするポリイミドフィルムを用いた画像形成記録装置用ベルトが記載されている。
【0006】
ところで、ポリイミド樹脂は、物理強度等には優れるものの、樹脂構造が剛直なので、柔軟性に欠け、屈曲性等に劣るという問題がある。したがって、特許文献1に記載されているようなポリイミド樹脂を用いたベルトは、駆動中にベルトに亀裂が生じたり、ベルトが破断するおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開2005−206616号公報
【非特許文献1】西浦直樹、岡本健三、石川優、「回転成形法におけるカーボンブラック充填ポリイミドベルトの電気抵抗率に与える遠心力の影響」、成形加工、第16巻、第11号、2004年、p729-734
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性等に優れるイミド変性エラストマーおよびカーボンナノチューブ配合ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)導電剤としてカーボンナノチューブを含有したことを特徴とするイミド変性エラストマー。
(2)イミド変性ポリウレタンエラストマーである前記(1)記載のイミド変性エラストマー。
(3)前記イミド変性ポリウレタンエラストマーは、下記一般式(I):
【化2】
[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]で表される前記(2)記載のイミド変性エラストマー。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のイミド変性エラストマーを用いたことを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
(5)表面抵抗率が103〜1012Ω/□である前記(4)記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(6)ポリイミド樹脂からなる基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトであって、前記弾性層が前記イミド変性エラストマーからなる前記(4)または(5)記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(7)カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形された前記(4)〜(6)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(8)画像形成装置に用いられる前記(4)〜(7)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【発明の効果】
【0010】
前記(1)によれば、イミド変性エラストマーが導電剤としてカーボンナノチューブを含有するので、導電率を簡単に制御でき、かつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すことができるという効果を有する。すなわち、前記イミド変性エラストマーは、イミド成分を有するエラストマーなので、物理強度等を保持しつつ、ポリイミド樹脂よりも柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。また、前記カーボンナノチューブは、少量で高い導電率を発現することができ、かつその添加量と導電率との関係は直線的に変化するのでパーコレーション現象が発生せず、よって導電率の制御が簡単になるという効果を有する。また、樹脂へのカーボンブラック添加では、分散性にもよるが、高い導電率を得る場合には多量の添加が必要であり、柔軟性等の諸物性が低下する場合が多かった。これに対し、カーボンナノチューブ添加では、少量の添加で高い導電率を発現するために、柔軟性等の物性を低下させずに導電性を付与することが可能である。したがって、前記イミド変性エラストマーが導電剤として前記カーボンナノチューブを含有すると、前記したイミド変性エラストマーによる効果とカーボンナノチューブによる効果とが相まって、前記(1)のイミド変性エラストマーは、導電率の制御が簡単になり、かつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すようになる。
【0011】
前記(2)によれば、ポリウレタンをエラストマー成分とするので、より優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。前記(3)によれば、主鎖に連続したイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を所望の値に調整することができ、よって確実に物理強度等を保持しつつ、優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。
【0012】
また、カーボンナノチューブを用いると、カーボンブラックよりも少量で高い導電率が得られるので、本発明にかかるイミド変性エラストマーを、前記(4)のようにベルトに用いると、導電剤を添加することによる柔軟性の低下を抑制することができる。すなわち前記(4)のベルトは、導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性に優れる。しかも、導電剤由来の凹凸がベルト表面に生じることによるベルトの表面性低下を抑制することができる。
【0013】
前記(5)によれば、表面抵抗率が103〜1012Ω/□であるので、前記(8)のように画像形成装置用として好適に用いることができる。また、耐久性やトナーの転写性等を向上させる上で、ベルトの構成を前記(6)のように、ポリイミド樹脂からなる基材上に少なくとも本発明にかかるイミド変性エラストマーからなる弾性層を設けるようにしてもよい。
【0014】
前記(7)によれば、カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法によりベルトを成形するので、イミド変性エラストマーの前駆体である溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散することができ、その結果、簡単にシームレスなベルトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<イミド変性エラストマー>
本発明にかかるイミド変性エラストマーは、導電剤としてカーボンナノチューブを含有する。以下、本発明にかかるイミド変性エラストマーの一実施形態について説明する。本実施形態において、前記イミド変性エラストマーとは、イミド成分を有するエラストマーのことを意味する。
【0016】
具体的には、該エラストマー中のエラストマー成分としては、例えばポリウレタン、不飽和オレフィン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、フッ素ゴム系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー等が挙げられ、イミド成分としては、例えば脂環式モノマー、複素環式モノマー、フェニルエーテル系モノマー、アルキル側鎖モノマー等が挙げられる。
【0017】
本実施形態では、前記で例示したイミド変性エラストマーのうち、ポリウレタンをエラストマー成分とするイミド変性ポリウレタンエラストマー(以下、「ポリイミドウレタンエラストマー」や「PIUE」とも言う。)が好ましく、特に、前記一般式(I)で表されるPIUE(以下、「PIUE(I)」とも言う。)が好ましい。
【0018】
PIUE(I)は、ポリウレタン(ポリウレタンプレポリマー)をエラストマー成分として含有すると共に、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を所望の値に調整することができ、よって物理強度等を保持しつつ、柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。かかるPIUE(I)は文献未記載の新規化合物である。
【0019】
具体的には、前記一般式(I)において前記R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるジイソシアナート(a)の残基等が挙げられる。
【0020】
前記R2は、重量平均分子量100〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるポリオール(b)の残基等が挙げられる。
【0021】
前記R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(B)に従ってポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する際に用いるジアミン化合物(d)の残基等が挙げられる。前記脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
【0022】
前記R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(C)に従ってイミド変性エラストマー(I)を合成する際に用いるテトラカルボン酸二無水物(f)の残基等が挙げられる。
前記nは1〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。前記mは2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。
【0023】
前記一般式(I)で表されるPIUEの具体例としては、下記式(1)で表されるPIUE等が挙げられる。
【化3】
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは10〜100の整数を示す。]
【0024】
前記一般式(I)で表されるPIUEは、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体であるのが好ましい。このようなPIUEは、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(C)を経て製造することができる。
【0025】
[反応行程式(A)]
【化4】
[式中、R1,R2,nは、前記と同じである。]
【0026】
(ポリウレタンプレポリマー(c)の合成)
前記反応行程式(A)に示すように、まず、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(c)を得る。PIUE(I)は、このポリウレタンプレポリマー(c)をエラストマー成分とするので、ゴム状領域(室温付近)の弾性率が低くなり、よりエラスティックにすることができると共に、このポリウレタンプレポリマー(c)の分子量を制御することにより、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合で導入することが可能となる。
【0027】
具体的には、前記ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(Cr.MDI)、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
【0028】
前記ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量は100〜10,000、好ましくは300〜5,000であるのが好ましい。前記重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0030】
反応は、前記で例示したジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温で1時間〜5時間程度反応させればよい。ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.1:1.0〜2.0:1.0の範囲にするのが好ましい。これにより、得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を、下記で説明する所定の値にすることができる。
【0031】
得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量は、300〜50,000、好ましくは500〜45,000であるのがよい。この範囲内でポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を制御して、イミドユニットを所望の割合で導入すると、物理強度等を保持しつつ、柔軟性・屈曲性等に優れるPIUE(I)を得ることができる。
【0032】
また、ポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量が、前記範囲内において小さいほど、ハードなPIUE(I)を得ることができる。これに対し、前記分子量が300より小さいと、PIUE(I)がハードになりすぎ、50,000より大きいと、ソフトになりすぎるおそれがあるので好ましくない。前記重量平均分子量は、ポリウレタンプレポリマー(c)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0033】
[反応行程式(B)]
【化5】
[式中、R1〜R3,n,mは、前記と同じである。]
【0034】
(ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成)
前記で得られたポリウレタンプレポリマー(c)を用いて、反応行程式(B)に従ってイミド前駆体であるポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する。すなわち、ポリウレタンプレポリマー(c)をジアミン化合物(d)でウレア結合により鎖延長してポリウレタン−ウレア化合物(e)を得る。
【0035】
具体的には、前記ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
特に、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)を用いるのが、強度に優れるPIUE(I)を得ることができるうえで好ましい。また、前記で例示したジアミン化合物(d)の選択によっても、PIUE(I)の弾性率を調整することができる。
【0036】
反応は、ウレタンプレポリマー(c)と、前記で例示したジアミン化合物(d)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。
【0037】
前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンが好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、定法に従い脱水処理したものを用いるのが好ましい。
【0038】
[反応行程式(C)]
【化6】
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
【0039】
(PIUE(I)の合成)
前記で得られたポリウレタン−ウレア化合物(e)を用いて、反応行程式(C)に従って一般式(I)で表されるPIUEを合成する。すなわち、テトラカルボン酸二無水物(f)でウレア結合部にイミドユニットを導入してブロック共重合体であるPIUE(I)を得る。
【0040】
具体的には、前記テトラカルボン酸二無水物(f)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
反応は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)とのイミド化反応である。該イミド化反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれであってもよい。溶媒下でイミド化反応を行う場合には、まず、ポリウレタン−ウレア化合物(e)と、前記で例示したテトラカルボン酸二無水物(f)とを所定の割合で溶媒に加え、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、1時間〜10時間程度反応させて、下記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含む溶液(PUA溶液)を得る。
【化7】
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
【0042】
ここで、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成で使用したジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合比(モル)が、ジアミン化合物(d):テトラカルボン酸二無水物(f)=1:2〜1:2.02の範囲となる割合で混合するのが好ましい。これにより、確実にウレア結合部にイミドユニットを導入することができる。
【0043】
使用できる溶媒としては、前記反応行程式(B)の溶液重合反応に使用できる溶媒で例示したものと同じ溶媒を例示することができる。なお、反応行程式(B)において溶液重合反応でポリウレタン−ウレア化合物(e)を得た場合には、該溶媒中でイミド化反応を行えばよい。
【0044】
ついで、前記で得たPUA溶液を例えば円筒金型に注入して、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、100〜2,000rpm、30分〜2時間程度で円筒金型を回転させながら、遠心成形によりPUAをフィルム状に成膜する。
【0045】
ついで、フィルム状のPUAを加熱処理(脱水縮合反応)することにより、フィルム状の一般式(I)で表されるPIUEを得ることができる。加熱処理は、PUAが熱分解しない条件であるのが好ましく、例えば減圧条件下において150〜450℃、好ましくは150〜250℃、1時間〜5時間程度であるのがよい。
【0046】
一方、無溶媒下でイミド化反応を行う場合には、通常の攪拌槽型反応器の他、排気系を有する加熱手段を備えた押出機の中でも行うことができるので、得られるPIUE(I)を押し出して、そのままフィルム状に成形することができる。
【0047】
前記のようにして得られるPIUE(I)は、ガラス転移温度(Tg)が、通常、−30〜−60℃であると共に、高い弾性を有し、かつゴム状弾性領域の温度範囲が広いものになる。この理由として、以下の理由が推察される。すなわち、前記で説明した通り、PIUE(I)は、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、このイミドユニットからなるハードセグメントの凝集が均一かつ強固なものになる。このため、PIUE(I)は、より均一かつ強固なミクロ相分離構造を形成し、ガラス転移温度が低くなることで、ゴム状弾性領域の温度範囲が広くなる。
【0048】
PIUE(I)の重量平均分子量は10,000〜1000,000、好ましくは50,000〜800,000、より好ましくは50,000〜500,000であるのがよい。前記重量平均分子量は、前記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含むPUA溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した値である。なお、PIUE(I)ではなく、PUA溶液をGPCで測定するのは、PIUE(I)は、GPCの測定溶媒に不溶なためである。
【0049】
PIUE(I)は弾性率を所望の値に調整することができる。具体的には、PIUE(I)のイミド分率(イミド成分含有率)、すなわちイミド変性エラストマー中のイミド成分の割合を調整することによって、弾性率を調整することができる。イミド分率は、弾性率等に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、25重量%以下、好ましくは15重量%以下であるのがよく、下限値としては、通常、5重量%以上が妥当である。前記イミド分率は、原料、すなわちジイソシアナート(a)、ポリオール(b)、ジアミン化合物(d)およびテトラカルボン酸二無水物(f)の仕込み量から算出される値であり、より具体的には、下記式(α)から算出される値である。
【0050】
【数1】
【0051】
調整される弾性率の値としては、用途に応じて任意の値に調整すればよいが、通常、1.0×106〜1.0×109Paの範囲になるように調整される。前記弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定して得られる50℃での貯蔵弾性率E’の値である。
【0052】
ここで、前記した通り、前記イミド変性エラストマーは物理強度等を保持しつつ柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。また、下記で説明するカーボンナノチューブは、少量で高い導電率を発現することができるので、柔軟性等の物性を低下させずに導電性を付与することができ、しかもパーコレーション現象が発生せず、よって導電率の制御が簡単になるという効果を有する。そして、本実施形態では、このカーボンナノチューブを導電剤として前記イミド変性エラストマーが含有するので、イミド変性エラストマーが有する前記した効果と、カーボンナノチューブが有する前記した効果とが相まって、このイミド変性エラストマーは、導電率の制御が簡単になりかつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すようになる。
【0053】
具体的には、前記カーボンナノチューブとは、炭素で構成された直径がnmオーダーの単層もしくは複層の管のことを意味する。その特性値としては、特に限定されるものではなく、通常、直径は単層で0.4〜2nm、複層で10〜30nm程度、長さは単層、複層共に0.05〜15μm程度、体積抵抗値は単層、複層共に1.0×10-2〜8.0×10-2Ωcm程度であるのが好ましい。
【0054】
特に、カーボンナノチューブは、該カーボンナノチューブを適当な溶媒に分散させた分散液の形態で使用するのが好ましい。これにより、本発明にかかるイミド変性エラストマーの一使用形態であるベルトを後述する遠心成形法により成形すると、イミド変性エラストマーの前駆体である溶液中にカーボンナノチューブが均一に分散し、その結果、簡単にシームレスなベルトを得ることができる。
【0055】
前記分散液の濃度としては、分散液100重量%に対してカーボンナノチューブを0.5〜10重量%程度の割合で含むのが好ましい。また、分散させるカーボンナノチューブの表面には、例えば酸化処理、界面活性剤等の表面処理を施しておくのが好ましい。
【0056】
このようなカーボンナノチューブの分散液としては、例えば(株)ジェムコ製の以下に示すカーボンナノファイバー分散液等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
・同社製の商品名「CNF−T/水」:分散溶媒は水系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/EtOH」:分散溶媒はエタノール系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/IPA」:分散溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/NMP」:分散溶媒N−メチル−2−ピロリドン(NMP)系、濃度1,3重量%、表面処理は界面活性剤
・同社製の商品名「CNF−T/アノン」:分散溶媒シクロヘキサノン系、濃度1,3重量%、表面処理は界面活性剤
【0057】
カーボンナノチューブの添加量は、用途に応じて任意の割合で添加すればよいが、通常、イミド変性エラストマー100重量%に対して0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%程度であるのがよい。これに対し、前記添加量が0.1重量%より少ないと、カーボンナノチューブによる効果が得られないおそれがあり、20重量%を超えると、必要以上に導電率を付与することになるので好ましくない。
【0058】
カーボンナノチューブをイミド変性エラストマーに含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶融状態のイミド変性エラストマーにカーボンナノチューブを添加して混練してもよく、イミド変性エラストマーの前駆体である溶液中(例えばPUA溶液中)にカーボンナノチューブを添加した後、該溶液を脱水縮合反応してもよい。前記溶液中にカーボンナノチューブを添加する場合には、前記溶液中の固形分量100重量%に対してカーボンナノチューブを前記添加量、すなわち0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%程度添加すればよい。また、カーボンナノチューブを分散液の形態で添加する場合には、該分散液を固形分換算した値が前記添加量となるようにすればよい。
【0059】
<カーボンナノチューブ配合ベルト>
次に、前記したイミド変性エラストマーの一使用形態であるベルトの一実施形態について説明する。本実施形態にかかるカーボンナノチューブ配合ベルト(以下、「ベルト」と言う。)は、前記したイミド変性エラストマーを用いたものである。したがって、このベルトは、導電率の制御が簡単であり、かつ柔軟性および屈曲性等に優れると共に、表面性に優れるという効果を有する。
【0060】
具体的には、このベルトは、表面抵抗率が103〜1012Ω/□、好ましくは107〜1012Ω/□であるのがよい。このような表面抵抗率を有するベルトは、例えば画像形成装置に用いられるベルト、すなわち、例えば転写部で用いられる中間転写ベルト、定着部で用いられる定着ベルト、駆動部で用いられる駆動ベルト等として好適に使用することができる。
一方、中間転写ベルトとして使用する場合には、表面抵抗率が103Ω/□より小さいと、トナーを担持するのに充分な帯電を行うことができず、1012Ω/□より大きいと、トナーが飛散するおそれがある。特に、中間転写ベルトの場合には、トナーを担持するのに充分な帯電を確実に行う上で、表面抵抗率の下限値は107Ω/□であるのが好ましい。また、定着ベルト、駆動ベルトとして使用する場合にも、帯電防止の上で、表面抵抗率は1012Ω/□以下であることが必要である。前記表面抵抗率は、例えば後述するように、三菱化学社製の「ハイレスターMCP−HT450」を用いて印加電圧10Vの条件で測定して得られた値である。
【0061】
表面抵抗率を前記所定の範囲にするには、イミド変性エラストマー100重量%に対してカーボンナノチューブを0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で添加すればよい。これに対し、カーボンナノチューブの添加量が前記した範囲外であると、所定の表面抵抗率を得られないおそれがある。
【0062】
ベルトは、イミド変性エラストマーからなる単層ベルトであってもよく、耐久性やトナーの転写性を向上させる上で、図1(a)に示すように、ポリイミド樹脂を基材1とし、該基材1上にイミド変性エラストマーからなる弾性層2を設けた2層ベルト10、図1(b)に示すように、弾性層2上にさらに離型性樹脂層3を設けた3層ベルト20であってもよい。
【0063】
2層ベルト10または3層ベルト20において、基材1を構成するポリイミド樹脂としては、通常、酸無水物とジアミン化合物から合成されたポリアミド酸を熱および触媒等によってイミド化することで得られる。具体的には、前記酸無水物としては、例えば無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフタル酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、前記ジアミン化合物としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン等が挙げられ、例えば特許第2560727号公報に記載されているものが挙げられる。
【0064】
基材1の厚みは50〜200μm、好ましくは100〜150μmであるのがよい。これにより、ベルトの剛性が高くなり、ベルトの回転時に発生するスラスト方向の荷重に対しても強くなる。
【0065】
弾性層2は、ベルトに柔軟性を付与するためのものである。この弾性層2はイミド変性エラストマーからなるので、ポリイミド樹脂からなる基材1との親和性に優れ、両者が剥離することによる耐久性の低下を抑制することができる。また、該イミド変性エラストマー中のイミド成分の含有率を調整して、該エラストマーの弾性率を所望の値に調整することができるので、優れた柔軟性および屈曲性等を示すことができる。調整される弾性率は、通常、1.0×106〜1.0×109Pa程度であるのが好ましい。なお、単層ベルトの弾性率についても、前記所定の弾性率を例示することができる。
【0066】
弾性層2の厚みは50〜1,000μm、好ましくは100〜200μmであるのがよい。これにより、例えばトナーの転写効果等が優れたものになる。これに対し、弾性層2の厚みが50μmより薄いと、弾性層2に要求される柔軟性が低下し、1,000μmより大きいと、ベルトの総厚みが増して屈曲性などに悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0067】
離型性樹脂層3は、ベルトに表面性やトナーの離型性等を付与するためのものである。この離型性樹脂層3としては、離型性、耐熱性および屈曲耐性等の上で、フッ素樹脂等が好ましく、該フッ素樹脂としては、例えばテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。このような離型性樹脂層3を弾性層2上に設けると、シリコーンオイル等を使用しなくてもトナーの離型性が得られると共に、紙粉固着防止効果等が得られ、オイルレス化を図ることができる。
【0068】
離型性樹脂層3は、トナーおよび紙粉の離型性等を確保し、かつ弾性層2の柔軟性を損なわないような厚さで弾性層2上に設けるのが好ましい。このような離型性樹脂層3の厚みとしては5〜50μm、好ましくは10〜30μmであるのがよい。これに対し、離型性樹脂層3の厚みが5μmより薄いと、十分な離型性が得られず耐久性にも劣り、50μmより大きいと、弾性層2の柔軟性を損なうおそれがある。
【0069】
ベルトの総厚みは、通常、50〜300μm程度、好ましくは100〜200μmであるのがよく、特に、中間転写ベルトとして使用する場合には、100〜150μmであるのがよい。これに対し、ベルトの総厚みが前記した厚みよりも薄いと、物理強度が低下するおそれがあり、前記した厚みよりも大きいと、ロール屈曲部での変形によって、ベルト表面に応力が集中してクラックが発生するおそれがある。
【0070】
次に、前記したベルトの製造方法の一実施形態について、イミド変性エラストマーに前記したPIUE(I)を例に挙げて説明する。なお、ベルトはシームレスなベルトとして中間転写ベルトに用いると、本発明の有用性が増す上で好ましい。したがって、シームレスなベルトの製造方法について説明する。また、
【0071】
シームレスなベルトは、例えば遠心成形法により得ることができる。まず、イミド変性エラストマーからなるシームレスな単層ベルトを得る場合には、前記で説明したPUA溶液を調製する。このPUA溶液は、固形分量を10〜30重量%、好ましくは20重量%程度に調製するのが好ましい。
【0072】
ついで、このPUA溶液に導電剤としてカーボンナノチューブを添加する。このカーボンナノチューブは、分散液の形態で添加するのが好ましい。これにより、PUA溶液中にカーボンナノチューブが均一に分散するので、遠心力による導電剤の偏りが発生してベルトの表裏において導電率に差が生じることを抑制することができる。カーボンナノチューブの添加量としては、表面抵抗率が所定の範囲になるような前記した割合、すなわちイミド変性エラストマー(PUA溶液中の固形分量)100重量%に対してカーボンナノチューブを0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で添加すればよい。
【0073】
カーボンナノチューブを添加したPUA溶液は、密閉式攪拌機を用いて回転数50〜150rpm程度、20〜40分程度の時間をかけて攪拌した後、回転数10〜30rpm程度、5〜15分程度の時間をかけて脱泡処理を行うのが好ましい。なお、攪拌機は、前記した密閉式攪拌機に限定されるものではなく、例えばロールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等を用いてもよく、さらに例示したこれら以外の公知の攪拌機を用いてもよい。
【0074】
ついで、このPUA溶液を遠心成形機に投入する。PUA溶液の投入は、遠心成形機を110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、かつ400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させた状態で投入するのが好ましい。これにより、PUA溶液をドラム全体に充分に延伸させることができる。また、遠心成形機のドラム内面には離型処理を施す、離経剤を塗布する、あるいは離形性を有する樹脂層を形成する等の表面処理を施しておくのが好ましい。これにより、得られるPUAフィルムを遠心成型機から簡単に取り外すことができる。
【0075】
PUA溶液を遠心成形機に投入した後、遠心成形機の回転数を900〜1,100rpm、好ましくは1,000rpm程度に上げ、20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理をした後、50〜70℃、好ましくは60℃程度にまで冷却して、ドラム内面にPUAフィルムを形成する。
【0076】
形成されたPUAフィルムを室温まで冷却した後、該PUAフィルムをドラムから取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットする。ついで、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃程度で20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行い、フィルム状の一般式(I)で表されるPIUEを得る。このフィルムを適切な大きさにスリットしてイミド変性エラストマーからなるシームレスな単層ベルトを得る。
【0077】
次に、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20の製造方法について説明する。まず、前記した単層ベルトと同様にしてカーボンナノチューブを配合したPUA溶液を調製すると共に、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸のワニス(ポリイミドワニス)を調製する。ポリイミドワニスの固形分量としては、10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、より好ましくは18重量%程度であるのがよい。このようなポリイミドワニスとしては、特に限定されるものではなく、ポリアミド酸を適当な溶剤に加えてワニス化したものの他、市販のものを用いてもよく、例えば宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」等が挙げられる。
【0078】
ポリイミドワニスにも、カーボンナノチューブを添加するのが好ましい。具体的には、ポリイミド樹脂(ポリイミドワニスの固形分量)100重量%に対してカーボンナノチューブを10〜30重量%、好ましくは20重量%の割合で添加するのがよい。カーボンナノチューブを添加したポリイミドワニスは、攪拌機で30分〜2時間、好ましくは1時間程度攪拌しながら脱泡処理を行うのが好ましい。前記攪拌機としては、例えば前記したカーボンナノチューブを添加したPUA溶液を攪拌する際に挙げた攪拌機と同じ攪拌機を例示することができる。
【0079】
ついで、単層ベルトと同様にしてPUA溶液を遠心成形機に投入し、ドラム内面にPUAフィルムを形成した後、ドラムを400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させながら、前記で調製したポリイミドワニスを前記PUAフィルム内面に注入する。その後、回転数を50〜200rpm、好ましくは100rpm程度で回転させると共に、110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、30〜60分間、好ましくは45分間程度で熱処理を行ことで積層フィルム(基材1、弾性層2)を形成する。
【0080】
形成した積層フィルムを室温まで冷却した後、該積層フィルムをドラムから取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットする。ここで、3層ベルト20にする場合には、積層フィルムの表面にフッ素樹脂等をコーティングして離型樹脂層3を形成する。
【0081】
ついで、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃程度で20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行い、得られたフィルムを適切な大きさにスリットすることで、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得る。
【0082】
なお、効率よくシームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得る上で、遠心成形により連続して基材1、弾性層2を得る場合について説明したが、例えば前記で説明した遠心成形の条件で、円筒状のシームレスな基材1,弾性層2をそれぞれ調製すると共に、押出成形法等で円筒状のシームレスな離型性樹脂層3を調製し、これらを1液性または2液性のシリコーン系弾性接着剤、ウレタン系弾性接着剤、シート状ホットメルト型のシリコーン系接着剤,シラン変性ポリイミド系接着剤等や、加熱加圧等で一体化することにより、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得てもよい。
【0083】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
<合成例>
PUA溶液の合成方法について、下記式に基づいて説明する。
【化8】
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは5〜100の整数を示す。]
【0085】
(ポリウレタンプレポリマー(j)の合成)
まず、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)(h)[日本ポリウレタン工業(株)社製]を減圧蒸留した。また、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(i)[保土谷化学(株)社製の商品名「PTMG1000」、重量平均分子量:1,000]を80℃、2〜3mmHg、24時間の条件で減圧乾燥した。
【0086】
ついで、前記MDI(h)23.8gと、PTMG(i)76.2gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(j)を得た。このポリウレタンプレポリマー(j)をGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は4.6×104であった。
【0087】
(ポリウレタン−ウレア化合物(l)の合成)
前記で得たポリウレタンプレポリマー(j)10gを脱水処理したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)60mlに溶解させたものと、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)(k)0.378gを脱水処理したNMP20mlに溶解させたものとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、室温(23℃)で24時間攪拌して、ポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液を得た。
【0088】
(PUA溶液の合成)
前記で得たポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液中に、無水ピロメリット酸(PMDA)(m)0.831gを加え、アルゴンガス雰囲気下、150℃で2時間攪拌して、ポリウレタンアミド酸(PUA)溶液を得た。
【0089】
ちなみに、このPUA溶液を遠心成形機に流し込み、150℃で1,000rpm、1時間遠心成形してPUAシートを得、このPUAシートを減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)すると、厚さ100μmのシート状のPIUE(1)が得られた(イミド分率:15重量%)。前記イミド分率は、前記式(α)から算出して得た値である。得られたPIUE(1)について、KBr法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0090】
[実施例1〜5]
<試験片の作製>
前記合成例で得たPUA溶液を用いてキャスト法および遠心成形法でそれぞれ試験片を作製した。具体的には、密閉式攪拌機内にPUA溶液50gを添加した後、導電剤としてカーボンナノチューブの分散液を前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1および表2に示す割合で添加した。なお、前記カーボンナノチューブの分散液は、(株)ジェムコ製の商品名「CNF−T/NMP」であり、固形分換算して添加した。
【0091】
ついで、前記密閉式攪拌機を回転数100rpm、30分間の条件で攪拌させた後、回転数20rpm、10分間の条件で真空脱泡処理を行い、PUA/カーボンナノチューブ混合溶液を得た。
【0092】
(キャスト法)
上記で得た混合溶液を樹脂型に入れ、120℃で1時間加熱した後、さらに200℃で2時間熱処理して幅50mm、長さ100mm、厚み約100μmのシート状の試験片を得た。
【0093】
(遠心成形法)
上記で得た混合溶液を遠心成形機に投入して遠心成形し、図2(a)に示すようなシームレスの単層ベルト30を得た。なお、遠心成形は、回転数1000rpm、加熱温度120℃、加熱時間60分とし、遠心成形後に200℃で2時間熱処理を行った。ついで、得られた単層ベルト30をカッターでカットして、図2(b)に示すような幅50mm、長さ150mm、厚さ約100μmのシート状の試験片31を得た。
【0094】
<評価>
上記で得た各試験片について、表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。各測定方法を以下に示すと共に、その結果を表1,表2および図3〜図5に示す。
【0095】
(表面抵抗率の測定方法)
キャスト法で得た試験片を用い、該試験片の3箇所を、三菱化学社製の「ハイレスターMCP−HT450」を用いて印加電圧10Vの条件で測定し、得られた値の平均値を算出した。その結果を表1および図3に示す。
【0096】
(破断強度および破断伸びの測定方法)
遠心成形法で得た試験片を用い、該試験片を用いて引っ張り試験を実施し、破断強度および破断伸びを測定した。引っ張り試験の条件は次の通りである。すなわち試験片を3号ダンベルで打ち抜き、標線間20mm、500mm/分の条件で、JIS K6251に準拠し、破断強度(MPa)および破断伸び(%)をそれぞれ測定した。その結果を表2および図4,図5に示す。
【0097】
[比較例1]
前記合成例で得たPUA溶液に代えて、ポリイミドワニス(宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」)を用い、導電剤を添加しない以外は、前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法を行って試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図6および図7に示す。
【0098】
[比較例2]
前記合成例で得たPUA溶液に導電剤を添加しない以外は、前記PUA溶液を前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法で成形して試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図6および図7に示す。
【0099】
[比較例3〜5]
導電剤をカーボンナノチューブの分散液に代えて、カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「トーカブラック#5500」)にし、該カーボンブラックを前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1および表2に示す割合で添加した以外は、前記実施例1〜5と同様にして、PUA/カーボンブラック混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法で成形して試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1および図8に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図9および図10に示す。
【0100】
[比較例6〜11]
導電剤をカーボンナノチューブの分散液に代えて、カーボンブラック(キャボットジャパン社製の商品名「MOGAL-L」)にし、該カーボンブラックを前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1および表2に示す割合で添加した以外は、前記実施例1〜5と同様にして、PUA/カーボンブラック混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にしてキャスト法および遠心成形法で成形して試験片を得た。ついで、この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率、破断強度および破断伸びを測定した。表面抵抗率の結果を表1および図11に、破断強度および破断伸びの結果を表2,図12および図13に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
表1および図3,8,11から明らかなように、比較例3〜5(トーカブラック#5500)および比較例6〜11(MOGAL-L)では、表面抵抗率のバラツキおよび添加量5%から15%の間における大きな表面抵抗率の変化(パーコレーション)が発生したのに対して、実施例1〜5(カーボンナノチューブ)は、添加量によるバラツキが小さく、かつ添加量と共に表面抵抗率が低下しパーコレーションは発生していないのがわかる。
【0104】
また、表2および図4〜7,9,10,12,13から明らかなように、比較例3〜5(トーカブラック#5500)および比較例6〜11(MOGAL-L)は、配合量の増加とともに破断強度および破断伸びが大きく低下している。これに対し、実施例1〜5(カーボンナノチューブ)は、破断伸び、破断強度共に大きな低下は起っていないのがわかる。このことから、カーボンナノチューブは導電率のコントロールが容易であり、かつ柔軟性などの物性低下を起こさずに添加が可能であることがわかる。したがって、本発明にかかるイミド変性エラストマーは、導電率の制御が簡単であり、かつ優れた柔軟性および屈曲性等を示すといえる。
【0105】
以上、本発明の一実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良したものにも適用できることは言うまでもない。例えば、前記した実施形態では、イミド変性エラストマーの一使用形態としてベルトを例に挙げて説明したが、本発明にかかるイミド変性エラストマーの使用形態はこれに限定されるものではない。具体例としては、例えばシート、フィルム、チューブ、ホース、ロールギア、パッキング材、防音材、防振材、ブーツ、ガスケット、ベルトラミネート製品、被覆材、パーベーパレーション用の分離膜、光学非線形材料、弾性繊維、圧電素子、アクチュエーター、その他の各種自動車部品、工業機械部品、スポーツ用品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a),(b)は、本発明の一実施形態にかかるベルトを示す拡大概略断面図である。
【図2】(a),(b)は、実施例における遠心成形法で試験片を得る方法を示す概略説明図である。
【図3】実施例1〜5の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例1〜5の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1〜5の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図6】比較例1,2の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図7】比較例1,2の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図8】比較例3〜5の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図9】比較例3〜5の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図10】比較例3〜5の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図11】比較例6〜11の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図12】比較例6〜11の破断強度の測定結果を示すグラフである。
【図13】比較例6〜11の破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0107】
1 基材
2 弾性層
3 離型性樹脂層
10 2層ベルト
20 3層ベルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電剤としてカーボンナノチューブを含有したことを特徴とするイミド変性エラストマー。
【請求項2】
イミド変性ポリウレタンエラストマーである請求項1記載のイミド変性エラストマー。
【請求項3】
前記イミド変性ポリウレタンエラストマーは、下記一般式(I):
【化1】
[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]で表される請求項2記載のイミド変性エラストマー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のイミド変性エラストマーを用いたことを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項5】
表面抵抗率が103〜1012Ω/□である請求項4記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項6】
ポリイミド樹脂からなる基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトであって、前記弾性層が前記イミド変性エラストマーからなる請求項4または5記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項7】
カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形された請求項4〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項8】
画像形成装置に用いられる請求項4〜7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項1】
導電剤としてカーボンナノチューブを含有したことを特徴とするイミド変性エラストマー。
【請求項2】
イミド変性ポリウレタンエラストマーである請求項1記載のイミド変性エラストマー。
【請求項3】
前記イミド変性ポリウレタンエラストマーは、下記一般式(I):
【化1】
[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]で表される請求項2記載のイミド変性エラストマー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のイミド変性エラストマーを用いたことを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項5】
表面抵抗率が103〜1012Ω/□である請求項4記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項6】
ポリイミド樹脂からなる基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトであって、前記弾性層が前記イミド変性エラストマーからなる請求項4または5記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項7】
カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形された請求項4〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【請求項8】
画像形成装置に用いられる請求項4〜7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−156560(P2008−156560A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349656(P2006−349656)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
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