説明

イメージセンサおよび有価カード

【課題】 薄型でありながら高解像度で接触体の光学検出をする。
【解決手段】
光軸が厚み方向を向くように密に配置された複数の光ファイバー111からなるファイバープレート11と、光注入部aを備え、ファイバープレート11の一方の面に配置された全反射導光膜12と、ファイバープレート11の他方の面に配置された固体撮像デバイス13と、光注入部に光を供給する光源14とを備え、光源から光注入部を介して注入された光を全反射導光膜内で全反射伝播させ、各光ファイバーは、全反射導光膜13のファイバーと反対側の面に接触した撮像対象の当該接触した領域の乱反射光SCを入射して固体撮像デバイス13に出力し、固体撮像デバイス13は入射光を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型でありながら高解像度で接触体の光学検出ができる、イメージセンサおよび有価カードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージセンサは、一般的には光学式のものが用いられている。たとえば、指紋センサとして使用される光学式イメージセンサは、ピエゾ素子への押圧を利用した感圧式センサや、検出対象との間の静電容量を検出する静電式センサに比べて耐水性に優れ、劣化しにくく、故障率も低い。
【0003】
図9に、光ファイバーを用いた従来の光学式指紋センサ(特許文献1)の概要を示す。図9において、光学式指紋センサ(指紋センサモジュール)9は、光源91と、光源91から出た光を入射するガラス93と、ガラス93面上に置かれた指の反射光を先端から入射する光ファイバー94の群と、光ファイバー94を通った光が入射する位置に置かれたイメージセンサ95とからなる。光源91は、支持板921に固定され、イメージセンサ95は支持板922に固定され、光ファイバー94はイメージセンサ95に取り付けられている。
【特許文献1】特開2003−317085
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図9の光学式指紋センサ9では、傾斜した支持板921,922に光源91,イメージセンサ95を実装しなくてはならないため、製造が容易ではない。また、ガラス93面上に置かれた指の反射点(P)と、光ファイバー94の先端P′までの距離を小さくしないと実用的な解像度を得ることはできないが、図9の構成では限界があり、この実用的な解像度を得ることができない。
【0005】
一般に光学式指紋センサには、指紋からの反射光を画像として認識する方式と、指紋押圧部分が全反射することを利用した方式とがあり、検出精度は後者の方式の方が各段に優れている。図9の光学式指紋センサ9は、前者の方式(ガラス93を透過した光の指における反射光を通常の画像として認識する)を採用しているため、画像認識精度が低い。
【0006】
本発明は、薄型でありながら高解像度で指紋等の接触体の光学検出ができるイメージセンサおよびこのイメージセンサを搭載した有価カードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のイメージセンサは、光軸が厚み方向を向くように密に配置された複数の光ファイバーからなるファイバープレートと、光注入部を備え、前記ファイバープレートの一方の面に配置された全反射導光膜と、前記ファイバープレートの他方の面に配置された固体撮像デバイスまたは前記ファイバープレートの他方の面に形成された感光素子アレイと、前記光注入部に光を供給する光源と、を備え、前記光源から前記光注入部を介して注入された光を前記全反射導光膜内で全反射伝播させ、前記各光ファイバーは、前記全反射導光膜の当該光ファイバーと反対側の面に接触した撮像対象の当該接触した領域の乱反射光を入射して前記固体撮像デバイスまたは前記感光素子アレイに出力し、前記固体撮像デバイスまたは前記感光素子アレイは前記入射光を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明のイメージセンサでは、上述したように、固体撮像デバイスにより光検出することもできるし、前記ファイバープレートの他方の面(下面)に直接、半導体プロセスにより形成された感光素子アレイにより光検出することができる。固体撮像デバイスは、ファイバープレートと別体に製造されたCCD等である。また、感光素子アレイはファイバープレートの下面に半導体プロセスにより形成された半導体素子群である。
【0009】
本発明のイメージセンサでは、前記各光ファイバーの側面に遮光部を形成することができる。この場合、各光ファイバー間の空隙が遮光材により充填されていてもよい。
【0010】
本発明のイメージセンサでは、前記全反射導光膜の厚みを5〜500μm(場合によっては、最大1mm程度)の範囲で設定することができる。また、前記光ファイバーは、径を5〜200μmの範囲で設定することができる。
【0011】
本発明の有価カードは、上記のイメージセンサが搭載されてなるものであり、たとえば指紋照合が成功したときにカード機能が有効となる(たとえば、送受信が可能となる、パスワードやIDの発信が可能となる、あるいはカード内メモリへの書き込みが可能となる等)の機能を備えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、全反射方式により指紋等を検出するようにしたので、薄型でありながら高解像度で接触体の光学検出ができ、しかも各光源等の実装が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明のイメージセンサの一実施形態を示す説明図である。図1において、イメージセンサ1はファイバープレート11と、全反射導光膜12と、固体撮像デバイス13と、光源14とを備えている。
【0014】
ファイバープレート11は、平板矩形状をなし、光軸が厚み方向を向くように密に(通常は、稠密に)配置された複数の光ファイバー111からなる。光ファイバー111の径r(図2(A)参照)に限定はなく、本実施形態では50μmであるが、適宜、20〜200μmとすることができる。光ファイバー111として、石英系、ガラス系、プラスチック系等、種々のものが使用できる。
【0015】
ファイバープレート11の厚み(光ファイバー111の長さ)に限定はなく、本実施形態では2mmとしてあるが、適宜100μm〜5mmの範囲内に設定することができる。
各光ファイバー111は、接着材Cにより一体のプレート状に形成される。光ファイバー111は、クラッドがコアを覆う2層構造とすることができ、各光ファイバー111を通過する光を、外部(たとえば他の光ファイバー111)に漏れ難く構成することができる。
【0016】
各光ファイバー111の側面には図2(A)に示すように遮光部112を形成することができる。また、図2(B)に示すように、接着材Cに着色顔料を含有させて、当該接着材Cを遮光部112として機能させることができる。また、各光ファイバー111として、単層構造のものを使用することができ、この場合にも、各光ファイバー111の側面に遮光部112を形成することができる。
【0017】
全反射導光膜12は、光注入部121を備えた透明合成樹脂(たとえば、屈折率1.3〜1.7)からなるもので、ファイバープレート11の一方の面に配置される。本実施形態では、光注入部121を、全反射導光膜12の一ヵ所に備えたが、複数ヵ所に備えることもできる。
【0018】
光注入部121は、平面視が図3(A)にも示すように、光注入部aを頂点としこの対辺が全反射導光膜12の辺に連続する概略三角形状をなしている。また、側面視が図3(B)に示すように、光注入部aを側辺としこの対角が全反射導光膜12に連続する概略三角形状をなしている。
【0019】
固体撮像デバイス13は、ファイバープレート11の全反射導光膜12と反対側の面に配置されている。本実施形態では固体撮像デバイス13としてCCDを用いているがCMOS等の他の撮像素子を使用することもできる。
【0020】
また、固体撮像デバイス13とファイバープレート11とは、図4(A)に示すように、接着材Yにより接合してもよいし、図4(B)に示すように、固体撮像デバイス13保護のための柔軟材16を介して接合してもよい。
【0021】
光源14は、本実施形態ではLEDであり、光注入部aに光を供給することができる。
図5は、光源14から出射された光の振る舞いを示す説明図である。以下に、イメージセンサ1の作用を説明する。
【0022】
光源14(図5では図示せず)からの光Bは、光注入部を121を介して全反射導光膜12に注入される。全反射導光膜12内部を全反射伝播する光Bは、表面に指が接触している部分(指紋の凸部の押接部位P)では乱反射する。この乱反射光SCは押接部真下の光ファイバー111に入射する。全反射導光膜12の厚みLが薄ければ、乱反射光SCの多くは乱反射部P直下の光ファイバー111に入射する。本実施形態では、上述したように全反射導光膜12の厚みLは、検出対象(たとえば指紋)の分解能を低下させない程度に小さくする必要がある。指紋検出の本実施形態では、上述したように全反射導光膜12の厚みLは50μm以下としてある。なお、光ファイバー111の径rは10μmとしてある。
【0023】
乱反射光SCは、光ファイバー111を介して固体撮像デバイス13に送られる。固体撮像デバイス13はこの光を検出して、図示しない検出回路に送出する。
図6は、上述したイメージセンサ1を応用した指紋センサ付き有価カード100の側面部分説明図である。指紋センサ付き有価カード100は、上述したイメージセンサ1と、回路部2と、これらが実装された基板部3と、カバー部4と、押圧センサ5とを含んで構成さえれている。
【0024】
図7(A)の有価カード100の構造を示し、図7(B)に表面図を示す。図7(A)に示すように、有価カード100には、イメージセンサ1および回路部2のほか、アンテナ61,電池62,スイッチ63,インタフェース64,図示しない指紋センサ5が搭載されている。
【0025】
図8に示すように、回路部2は、CPU21、EEPROM22、RAM23、DSP24、通信回路25を備えており、この回路部2には、押圧センサ5、アンテナ61、電池62、スイッチ63およびインタフェース64が接続されている。
【0026】
CPU21は、回路部2全体を制御する。EEPROM22には、システムプログラム、各種設定値、登録指紋データ等が記憶されている。RAM23には、CPU21の作業エリアが確保される。DSP24は、固体撮像デバイス13により取得したデータを処理して(具体的には、コントラスト処理、分離ドット接続処理等をして)、検出イメージを生成する。有価カード100はDSP24を備えないようにもでき、この場合には、CPU21がEEPROM22に格納された検出イメージ生成プログラムにより画像生成処理を行う。
【0027】
スイッチ53は、操作されると電池62からの電力がイメージセンサ1、回路部2に供給され、一定時間経過後にオフするように制御される。押圧センサ5が、指の押圧を検出したときは、光源14が駆動され、指紋の検出が行われる。
【0028】
本実施形態では、指紋照合処理はDSP24が行うようにできるし、CPU21がEEPROM22内の指紋照合プログラムにより指紋照合処理を行うようにできる。有価カード100がDSP24を備えない場合は、CPU21がEEPROM22内の指紋照合プログラムにより指紋照合処理を行うことが言うまでもない。
【0029】
通信回路25はアンテナ61を介して、たとえばEEPROM22に格納された情報を外部機器に出力することができるし、通信回路25は、外部機器から受信した情報をEEPROM22に書き込むことができる。
【0030】
イメージセンサ1が、携帯型電話機の一部として構成される場合には、CPU、ROM、RAM、電池等として携帯型電話機に付属のものを使用することができる。
【0031】
本発明実施形態では、250〜500dpi、あるいは500dpiより高い解像度の指紋検出が可能となる。
【0032】
なお、ファイバープレート11の下面に、光ファイバーの密度とは独立して感光素子を形成することもできるし、ファイバープレート11の下面に、光ファイバー1本あたり1つの感光素子を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のイメージセンサの一実施形態を示す説明図である。
【図2】(A)は遮光部が形成された光ファイバーを示す図、(B)は接着材Cに着色顔料が含有させて、当該接着材Cを遮光部112として機能させることができる。
【図3】(A)は光注入部の平面視説明図、(B)は光注入部の側面視説明図である。
【図4】(A),(B)は、ファイバープレートと固体撮像デバイスの側面拡大説明図である。
【図5】指紋イメージを読み取る際の光源から出射された光の振る舞いを示す説明図である。
【図6】イメージセンサを応用した指紋センサ付き有価カードの側面部分説明図である。
【図7】(A)は有価カードの構造を示す図、(B)は表面図である。
【図8】有価カードの回路部構成を示す図である。
【図9】光ファイバーを。用いた従来の光学式指紋センサの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 イメージセンサ
2 回路部
3 基板部
4 カバー部
5 押圧センサ
11 ファイバープレート
12 全反射導光膜
13 固体撮像デバイス
14 光源
21 CPU
22 EEPROM
23 RAM
24 DSP
25 通信回路
61 アンテナ
62 電池
63 スイッチ
64 インタフェース
100 有価カード
111 光ファイバー
112 遮光部
121 光注入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸が厚み方向を向くように密に配置された複数の光ファイバーからなるファイバープレートと、
光注入部を備え、前記ファイバープレートの一方の面に配置された全反射導光膜と、
前記ファイバープレートの他方の面に配置された固体撮像デバイスまたは前記ファイバープレートの他方の面に形成された感光素子アレイと、
前記光注入部に光を供給する光源とを備え、
前記全反射導光膜は、前記光源から前記光注入部を介して注入された光を全反射伝播させ、
前記各光ファイバーは、前記全反射導光膜の当該光ファイバーと反対側の面に接触した撮像対象の当該接触した領域の乱反射光を入射して前記固体撮像デバイスまたは前記感光素子アレイに出力し、
前記固体撮像デバイスまたは前記感光素子アレイは前記入射光を検出する、
ことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項2】
前記各光ファイバーの側面には遮光部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記全反射導光膜の厚みが5〜500μmの範囲で設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記光ファイバーは、径が5〜200μmの範囲で設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のイメージセンサ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のイメージセンサが搭載された有価カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−178788(P2006−178788A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372314(P2004−372314)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(503474043)株式会社ヒューマンテクノロジーズ (3)
【Fターム(参考)】