説明

インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法

【課題】 インクを無駄に消費することのないインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 インクジェットプリンタ1は、キャップの要否を示すフラグを保持するフラッシュROM46と、電源オンに基づく起動処理とリセット指示に基づく起動処理を区別する制御部41とを備える。そして、制御部41は、電源オンによる起動処理時であってかつフラッシュROM46に保持されたフラグが未キャップを示している場合には、インク吸引を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは、用途や使用形態に応じて様々な種類のものが使用されているが、近年印刷ヘッドからインクを吐出して被印刷物に印字するタイプのインクジェットプリンタが一般的に用いられてきている。インクジェットプリンタは、インク貯蔵手段から供給されるインクを吐出する印刷ヘッドと、記録用紙を印刷ヘッドに対して相対的に移動させる用紙搬送機構を備え、印字信号に応じて印刷ヘッドを移動させながら記録用紙にインク滴を吐出させて、用紙上にドットを形成することで印刷を行う。
【0003】
インクジェットプリンタでは、インクという液体を扱う関係上、印刷ヘッドへのインクの充填や、またインク溶媒の乾燥や揮散によりノズルの目詰まりが発生する場合もある。このノズルの目詰まりを防止するために、印刷ヘッドをキャッピング手段により封止して負圧を作用させ、印刷ヘッドからインクを強制的に吸引排出させるインク吸引や、また印刷データに関係がない駆動信号を供給してヘッドのノズル開口からインク滴を吐出させるフラッシングといったクリーニング動作が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
クリーニング動作の中で、特にインク吸引は、インクジェットプリンタの長時間の休止後に印刷を再開する場合や、またユーザがノズルの目詰まりにより印刷品質が低下を回復させるためにクリーニングスイッチを押下した場合に実施される。その他、クリーニング処理としては、ゴムなどの弾性板からなるブレード材によりノズル面のインクをぬぐい取るワイピング動作がインク吸引後に行われる機種もある。
【0005】
また、印刷ヘッドに駆動信号を印加してインク滴を吐出させるフラッシングは、ノズル開口からインク適を吐出させることにより、ヘッドのノズル開口近傍の不揃いのメニスカスを回復させたり、また印刷中にインク滴の吐出が少ないノズル開口の目詰まりを防止したりする目的で一定周期ごとに実行される。
【特許文献1】特許第3472909号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、インクジェットプリンタは、起動される毎にインクジェットプリンタ機構の初期化を伴う全ての立ち上がり動作を行っている。このインクジェットプリンタ機構の初期化では、印刷ヘッドが搭載されたキャリッジの位置合わせ、印刷ヘッドのインク吸引、フラッシング等が行われる。
したがって、インクジェットプリンタ機構の初期化が必要以上に連続実行されるような場合には、インクジェットプリンタ機構の初期化毎に印刷ヘッドのインク吸引が行われてしまう。インク吸引は、他のクリーニング処理に比べてインクの消費量が大きいため、何度もインク吸引を行ってしまうと、インクの消費量が激増し、無駄にインクが消耗されてしまうという問題がある。
【0007】
例えば、インクジェットプリンタを制御するホストコンピュータが起動すると、BIOS(Basic Input/Output System)、OS(Operating System)、そしてアプリケーションの起動毎にリセット指示がインクジェットプリンタに出力される場合がある。インクジェットプリンタは、このリセット指示を受信する毎にインクジェットプリンタ機構の初期化を行うので、必要以上のインク吸引が初期化動作の流れの中で行われしまい、インクが無駄に消費されてしまうといった状態が発生してしまう虞もある。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑み、インクジェットプリンタ起動時にインクジェットプリンタ機構の初期化を行う際、印刷ヘッドのインク吸引が不要な状況ではインク吸引を行わないように構成することにより、インクを無駄に消費することのないインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成される。
(1) インクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドを覆って封止するキャップ装置と、
前記キャップ装置に覆われ封止された前記ヘッドからインクを吸引するポンプと、
キャップ状態を示すフラグを記憶するキャップ状態フラグ保持部と、
起動状態を示すフラグを記憶する起動状態フラグ保持部と、
起動処理時に、前記キャップ状態と前記起動状態とに応じて前記ポンプにインク吸引を選択的に実行させる制御部と、を備えたインクジェットプリンタ。
(2) 前記制御部は、起動処理時に、前記起動状態保持部が電源オンによる起動処理を示していない場合、または前記起動状態フラグ保持部が電源オンによる起動処理を示しており且つ前記キャップ状態フラグ保持部がキャップ済みを示している場合、前記ヘッドにフラッシング動作を実行させることを特徴とする(1)に記載のインクジェットプリンタ。
(3) 前記制御部は、起動処理時に、前記起動状態保持部が電源オンによる起動処理を示しており、かつ前記キャップ状態フラグ保持部が未キャップを示している場合、前記ポンプにインク吸引を実行させることを特徴とする(1)または(2)に記載のインクジェットプリンタ。
(4) 前記制御部は、前記キャップ装置が前記ヘッドを封止したと判断したときに前記起動状態フラグ保持部にキャップ済みを示すフラグを保存させることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(5) 前記制御部は、前記起動状態フラグ保持部に電源オンによる起動処理時に所定値を設定し、次回の起動処理時に前記起動状態フラグ保持部の値が前記所定値であった場合にはリセットによる起動処理が実行されていると判断することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(6) 前記起動状態フラグ保持部は、電源オンによる起動処理とリセットによる起動処理とを区別可能なフラグを保持することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(7) 前記起動状態フラグ保持部は、揮発性メモリであり、前記キャップ状態フラグ保持部は、不揮発性メモリであることを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(8) 起動処理時に、電源オンによる第1の起動処理とリセットによる第2の起動処理とを判断する起動判断ステップと、
起動処理時のキャップ状態を判断するキャップ判断ステップと、を有し、
起動処理時に、前記起動判断ステップと前記キャップ判断ステップとの判断結果に応じて選択的にインク吸引を行うことを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
(9) 前記起動判断ステップが前記第2の起動処理であると判断した場合、フラッシングを実行させることを特徴とする(8)記載のインクジェットプリンタの制御方法。
(10) 前記起動判断ステップが前記第1の起動処理であると判断し、かつ前記キャップ判断ステップがキャップ済みであると判断した場合、フラッシングを実行することを特徴とする(8)記載のインクジェットプリンタの制御方法。
(11) 前記起動判断ステップが前記第1の起動処理でであると判断し、かつ前記キャップ判断ステップが未キャップであると判断した場合、インク吸引を実行させることを特徴とする(8)に記載のインクジェットプリンタの制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェットプリンタによれば、電源オンによる起動処理時であってかつフラグ保持部に保持されたフラグが未キャップを示している場合にのみ印刷ヘッドのインク吸引を行うので、リセット時等インク吸引を行う必要性が少ないと考えられる場合には自動的にインク吸引を実行させない。したがって、起動処理時にリセット信号を複数回受信するようなシステムにおいて、リセット指示に応じて機械的かつ無意味にインクが吸引されることが防止され、インク吸引に基づくインクの無駄な消費を抑制することが可能となる。
【0011】
また、リセットに基づく起動処理時においては、印刷ヘッドが未キャップ状態であってもその放置時間は印字品質に影響を与えない程度である場合が多い。また、電源オンによる起動処理であってかつフラグ保持部に保持されたフラグがキャップ済みを示していれば印刷ヘッドはキャップされた状態であるため、印刷ヘッドのノズルが乾き目詰まりを生じない場合もある。本発明では、このような状態において印刷ヘッドのインク吸引を行わせないように構成することにより、インクの消費量を減少させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(インクジェットプリンタの構造)
図1は、本発明に係るインクジェットプリンタの一実施形態を示す斜視図であり、図2は、インクジェットプリンタの内部を示す断面模式図である。
【0014】
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、図1及び図2に示すように、ロール紙Pを搬送しながら印刷を実行するとともに、給紙部3に装填される小切手CKを筐体1aに形成された小切手搬送路P1に沿って搬送し、そしてカード挿入口10から挿入されるカードCを同じく筐体1aに形成されたカード搬送路P2に沿って搬送可能に構成されている。
【0015】
小切手搬送路P1に沿って搬送される小切手CKは、小切手搬送路P1に沿って設けられた各種読取装置(不図示)によってその画像及び磁気文字が読み取られ、かつ印刷が行われる。また、カードCは、カード搬送路P2に沿って設けられた読取装置によって画像が読み取られる。すなわち、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、画像読取装置、兼磁気文字読み取り装置、兼印刷装置である。
【0016】
次に、ロール紙Pを搬送するロール紙搬送路P3について説明を行う。
ロール紙Pは、図2に示すように、ロール紙収納部20内に装填収納されている。このロール紙収納部20は、第1搬送路P1の2つの直線部分に挟まれた領域に配置されており、その上面はロール紙カバー25によって覆われている。ロール紙カバー25は、ヒンジ部25bを介して筐体1aに開閉可能に取り付けられたロール紙カバーフレーム25aに支持されている。ユーザは、このロール紙カバー25を開閉することにより、ロール紙Pの補充や内部のメンテナンスを行うことができる。
【0017】
ロール紙Pは、その一端がロール紙収納部20内部から引き出され、テンションローラ30の表面、プラテン24の表面に沿って、駆動ローラ22と押付ローラ23間に挟み込まれた状態で、ロール紙排出開口36からインクジェットプリンタ1外部に排出される。すなわち、本実施形態では、ロール紙搬送路P3は、ロール紙収納部20からテンションローラ30、プラテン24、駆動ローラ22と押付ローラ23間を経て、ロール紙排出開口36までのルートによって規定されている。
【0018】
駆動ローラ22は、ロール紙カバーフレーム25aの端部に回転駆動可能に支持された搬送ローラである。この駆動ローラ22には、ロール紙搬送路P3を介して押付ローラ23が対向配置されており、押付ローラ23がロール紙Pを駆動ローラ22に付勢した状態で、ロール紙Pをロール紙排出開口36側に搬送可能に構成されている。
【0019】
プラテン24は、ロール紙Pを印刷する印刷領域に設けられている。このプラテン24の対向位置には、印刷ヘッド15を備えたキャリッジ14が移動可能に設けられている。この印刷ヘッド15は、インクジェット方式の印刷ヘッドであり、ロール紙Pの幅方向(すなわち図2の紙面方向)に沿って移動しながら、プラテン24上に配置されたロール紙Pに対してインクを吐出してロール紙P上に画像を形成する。
【0020】
なお、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、小切手CKがU字型の搬送路P1にそって搬送され、このプラテン24と印刷ヘッド15との間に配置された状態では、小切手CKに対して印刷ヘッド15からインクを吐出して小切手CK上に画像を形成することも可能である。
【0021】
テンションローラ30は、ロール紙Pに所定のテンションを加える付勢ローラであり、その表面にロール紙Pが一部巻回された状態で駆動ローラ22がロール紙Pをロール紙排出開口36側に所定長さ送り出すことにより、プラテン24上のロール紙Pにテンションを加え、印刷時のロール紙Pをたるみのない状態に保つ。
【0022】
次にキャリッジ14と印刷ヘッド15の動作について説明する。
図3は、キャリッジ14、印刷ヘッド15及びキャップ装置16の位置関係を示した斜視図である。
これらのキャリッジ14、印刷ヘッド15及びキャップ装置16は、図1に示すように印刷機構部1b内に配置されている。
【0023】
キャリッジ14は、タイミングベルト18と結合されており、このタイミングベルトの駆動により、ガイドレール17に沿ってプラテン24に対向しながら往復移動する。
【0024】
印刷ヘッド15は、プラテン24上に配置された記録媒体としての用紙(図3では小切手CK)に対向するようにキャリッジ14に搭載されており、この印刷ヘッド15に対してインクが導入され、印刷データに対応してプラテン上の記録用紙にインク滴を吐出することにより、所望の文字や画像を印刷することができるように構成されている。
【0025】
キャップ装置16は、印刷ヘッド15の待機位置19近傍に設けられている。キャップ装置16は、印刷ヘッド15のノズルがインクの乾燥、固形物や塵埃の侵入等により目詰まりすることを防止するため、待機位置19にて印刷ヘッド15を覆い、印刷ヘッド15のノズル開口を封止する。この状態では、印刷ヘッド15はノズル開口からインク液滴を吐出させる「フラッシング(クリーニング動作の一つ)」を行うことが可能である。
【0026】
一方、非印刷時でも、インクジェットプリンタ1の電源オンによる起動の場合であってかつ印刷ヘッド15が未キャップ状態である場合には、キャリッジ14が待機位置まで移動しキャップ装置16が印刷ヘッド15を封止し、キャップ装置16に接続されたポンプ21によって負圧を適宜印加させることにより、印刷ヘッド15からインクを強制的に吸引する「インク吸引(クリーニング動作の一つ)」を実施する。インク吸引は、フラッシングよりもクリーニング効果が大きいため、電源オンによる起動であってキャップされていないような状態では、フラッシングではなく、インク吸引を行うことが好ましい。しかしながら、インク吸引は、フラッシングよりも多量のインクを消費してしまうため、インク吸引回数は少ないことが好ましい。
【0027】
(キャップ装置16のインク吸引制御)
次に、本実施形態のキャップ装置16のインク吸引制御について説明する。
図4は、本実施形態のインクジェットプリンタの制御回路を示すブロック図である。なお、本ブロック図では、簡略化のためにインク吸引に必要な主要箇所のみをブロックにて示している。
【0028】
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ50と通信可能に接続され、ホストコンピュータ50からの各種コマンドに応じて印刷や読取等の各種動作を実行するものである。インクジェットプリンタ1は、主として、制御部41と、ロール紙搬送部42と、キャリッジ駆動機構43と、ヘッド駆動機構44と、キャップ駆動機構45と、フラッシュROM46と、通信インタフェース48と、ポンプ駆動機構49とを有しており、これらは、例えば制御部41と通信可能に接続されている。
【0029】
制御部41は、インクジェットプリンタ1の制御中枢であり、CPU,ROM,RAM,及び各種コントローラ、各種レジスタ等から構成されている。制御部41は、ROMに書き込まれたファームウェアに従って動作することにより、各種読取部や印刷部の動作を制御する。本実施形態では、制御部41は、インクジェットプリンタ1の電源オンによる起動であってかつキャップ装置16が印刷ヘッドにキャッピングされていない場合に、印刷ヘッド15のインクの吸引を実行するように構成されている。
【0030】
また、制御部41は、以下のような条件の場合に印刷ヘッド15にフラッシングを実行するように構成されている。
(1)キャップ装置16が印刷ヘッド15をキャップしているか否かに関わらずホストコンピュータ50からのリセット信号またはインクジェットプリンタ1の内部処理に基づくリセット指示に基づき起動処理が行われた場合。
(2)インクジェットプリンタ1の電源オンによる起動であってかつキャップ装置16が印刷ヘッド15をキャップしている場合。
【0031】
以下、インクジェットプリンタ1の他の制御ブロックについての説明を行いつつ、制御部41がどのようにインク吸引動作の要否を判断しかつ上記(1)または(2)の状態を判断するかどうかについて説明していく。
【0032】
用紙搬送機構42は、モータ、モータの駆動回路、モータの動力を駆動ローラ22に伝達するベルト等から構成され、ロール紙Pや小切手CKの搬送を制御する。
【0033】
キャリッジ駆動機構43は、モータ(不図示)、モータ駆動回路、ギア、キャリッジを移動させるためのタイミングベルト18等から構成され、印刷時には被印刷物に対して平行に往復移動し、キャップ装置16のキャップ時にはキャリッジ14を待機位置まで移動させる等、制御部41からの指示に応じてキャリッジ14の位置を制御する。
【0034】
また、ヘッド駆動機構44は、印刷ヘッド15内のインク吐出用の圧電素子及び圧電素子への電圧印加回路等からなり、制御部41からの指示に応じて圧電素子に電圧を印加させることにより印刷ヘッド15に設けられた複数のノズルからインク液滴を吐出する。
【0035】
キャップ駆動機構45は、キャップ装置16の動作を制御する制御機構であり、制御部41からの指示に応じて駆動されて印刷ヘッド15の封止を実行する。
【0036】
ポンプ駆動機構49は、ポンプ21を制御する制御部であり、印刷ヘッド15のノズル孔に残留している塵埃やインクの目詰まりを除去するため、印刷ヘッド15にキャップ装置20がキャップされた状態で負圧をかける。
【0037】
フラッシュROM46は、書換可能な不揮発性のメモリであり、電源オフ時にもその内部の値を保持するように構成されている。図4では、フラッシュROM46は、制御部41とは別体として図示しているが、制御部41内にフラッシュROM46が組み込まれていても構わない。
【0038】
このフラッシュROM46は、インクジェットプリンタ1の電源オフ時にキャップ装置が印刷ヘッド15にキャップされているか否かを示すフラグ(以下、"キャップ状態フラグ"と呼ぶ)を記憶する。本実施形態では、制御部41は、ファームウェアの実行により一連のキャップ動作シーケンスが行われたか否かでキャップされたか否かを判断する。すなわち、一連のキャップ動作シーケンスが終了していればキャップ状態フラグに「キャップ済み」を保存し、一連のキャップ動作シーケンスが未終了であればキップ状態フラグに「未キャップ」を保存する。
【0039】
また、制御部41には、リセットによる起動と電源オフからオンによる起動とを区別するレジスタ47が設けられている。このレジスタ47は、例えば制御部41に設けられた各種レジスタの一つである計時比較レジスタを用いることが可能である。
【0040】
図5は、このレジスタ47の内部状態とその遷移を示す模式図である。
このレジスタ47は、例えば、8ビットのレジスタであり、その0ビット目から7ビット目にそれぞれLまたはHが値として設定される。図5に示すように、インクジェットプリンタ1の電源が投入されて、インクジェットプリンタ1の状態が電源オフの状態(a)から電源オンの状態(b)に遷移すると、このレジスタ47は、全てのビットにLまたはHの値が設定されるように構成されている(図5では、全てのビットに値Lが設定された状態を示す)。
【0041】
そして、インクジェットプリンタ1の電源オンにともない、ファームウェアが読み出されて、インクジェットプリンタ1の起動処理が実行されると、制御部41は、このレジスタ47の値を参照して、全てのビットにLまたはHの値が設置されている場合には、今回の起動処理が電源オフからオンに切り替わったことに基づく起動処理であると判断するとともに、制御部41は前記フラッシュROM46のキャップ状態フラグを参照し「未キャップ」状態であれば印刷ヘッド15のインク吸引を実行する。そして、制御部41は、このインク吸引の実行と前後して、今回の起動処理が電源オフからオンに切り替わったことに基づく起動処理であると判断すると、レジスタ47の値を組み替えて、全てのビットにLまたはHの値が設定されない状態に変更し、起動処理後の状態(c)に遷移する(図5では、例えば、偶数ビットにLを奇数ビットにHを設定している)。
【0042】
すなわち、このレジスタ47の各ビットの値は、インクジェットプリンタ1の電源投入時に全てのビットにLまたはHの値が設定され、印刷ヘッド15のインク吸引が実行されると、全てのビットにLまたはHの値が設定された状態以外の状態に設定される。このレジスタ47の値は、起動処理終了後は、電源オフになるまでその値が保持され、電源オンの間にインクジェットプリンタ1がリセット信号を受信しても各ビットの値が変更されず、また何らかの理由で変更される場合であっても、全てのビットにLまたはHの値が設定されないように構成されている。
【0043】
通信インタフェース48は、ホストコンピュータ50との間の通信を制御するものであり、ホストコンピュータ50から受信した各種コマンド(リセット信号を含む)を制御部41に転送するとともに、制御部41からの指示に応じてホストコンピュータ50にコマンドに対するステータスを送信するように構成されている。
【0044】
例えば、通信インタフェース48は、ホストコンピュータ50のBIOS起動時、OS起動時、インクジェットプリンタ1に関連するアプリケーションの起動時等に、ホストコンピュータ50内部の諸設定に応じてホストコンピュータ50からリセット信号を受信する。そして、制御部41は、このリセット信号の受信に応じて、すなわちホストコンピュータ50からのリセット指示に応じてインクジェットプリンタ1の起動処理を実行する。
【0045】
なお、制御部41は、インクジェットプリンタ1の起動処理の実行は、ホストコンピュータ50からのリセット信号に基づくもののみに限られず、インクジェットプリンタ1内部の状態遷移に基づき、リセット指示を出力して起動処理(ここでは、再起動処理)を行うように構成してもよい。例えば、制御部41は、ロール紙カバー25が閉じたことを検出するとリセット指示を出力し、起動処理を行うように構成してもよい。
【0046】
ここで、インクジェットプリンタ1の起動処理では、ファームウェアの再起動、ファームウェアの再起動に伴う各種画像読取センサの初期化、印刷ヘッド15が搭載されたキャリッジ14の位置あわせやインク吸引処理等が実行される。
ここで、このインクジェットプリンタ1の起動処理時に印刷ヘッド15のインク吸引が行われるかどうかは、上述したフラッシュROM46内のキャップ状態フラグの状態及びレジスタ47内部の値の状態によって左右される。
【0047】
図6は、起動処理時のインク吸引処理に関連したインクジェットプリンタ1の動作を説明するフローチャートである。
以下、図6に示すフローチャートを参照しながら、この起動処理時のインク吸引処理の実行可否の判断フローについて詳細に説明する。
【0048】
まず、リセット指示またはインクジェットプリンタ1への電源投入により、インクジェットプリンタ1の起動動作がスタートすると、制御部41は、レジスタ47内部のレジスタ値を確認する(ステップS1)。そして、ステップS2において、レジスタ47内部のレジスタ値が全てH又はLであれば、この起動動作がインクジェットプリンタ1の電源投入に基づくものであるので、次に制御部41はフラッシュROM46内部のフラグを確認し(ステップS3)印刷ヘッド15がキャップ装置16によりキャップされているかどうかを判断する(ステップS4)。そして、フラッシュROM46内部にフラグが保存されていない、すなわち「未キャップ」状態である場合には制御部41は、キャップ駆動機構45を介してキャップ装置16を駆動して印刷ヘッド15をキャップ封止するとともに、ポンプ駆動機構49を介して印刷ヘッド15のインク吸引を行う(ステップS6)。
【0049】
一方、ステップS4において、フラッシュROM46内部に保存されているフラグが、「キャップ済み」状態である場合には印刷ヘッド15のフラッシングを行う(ステップ5)。また、ステップS2においてレジスタ47内部のレジスタ値が全てH又はL以外であった場合にもステップS5に移行し、印刷ヘッド15のフラッシングを行い、その後起動処理を終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、ロール紙Pを搬送する用紙搬送機構42と、ロール紙Pのたるみ取りの要否を示すフラグを保持するフラグ保持部であるフラッシュROM46と、電源オンに基づく起動処理(第1の起動処理)とリセット指示に基づく起動処理(第2の起動処理)を区別する制御部41とを備える。そして、制御部41は、リセット指示に基づく起動処理時あるいは電源オンに基づく起動処理であってフラッシュROM46に保持されたフラグがキャップ済み示している場合には、キャップ装置16にインク吸引動作を実行させず、比較的インク消費量の少ないフラッシングを実行させる。
【0051】
このように、本実施形態では、電源投入時や何らかの理由によりインク吸引が必要な状態をフラッシュROM46内のフラグとレジスタ47の値を用いて制御部41に判断可能としている。したがって、印刷ヘッド15が未キャップ状態であっても印字品質に影響を与えない程度の短い放置時間であれば印刷ヘッド15のインク吸引を実行するまでもなくフラッシングのみ実行させ、印字品質に影響が生じる可能性のある場合にのみ適切なタイミングでインク吸引を行うことにより、クリーニングによるインクの消費量を減少させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、レジスタ47内に起動状態を示すフラグが記憶されているとして説明を行ったが、これに限られずインクジェットプリンタ1の起動処理時(リセット時)であってもデータが失われない記憶媒体であれば何でもよく、リセット時にデータが失われない設定であれば揮発性のRAM(例えばSRAM)を用いてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、フラッシュROM46内にキャップ状態を示すフラグが記憶されているとして説明を行ったが、これに限られず電源オフから電源オンとなる間に電源オフ時のキャップ状態を示すフラグを保持できるものであれば何でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部を示す断面模式図である。
【図3】本実施形態のインクジェットプリンタのヘッドとキャップの状態関係を示す図である。
【図4】本実施形態のインクジェットプリンタの制御回路を示すブロック図である。
【図5】レジスタの内部状態とその遷移を示す模式図である。起動処理時のたるみ取り処理に関連したインクジェットプリンタの動作を説明するフローチャートである。
【図6】起動処理時のインク吸引およびフラッシングに関連したインクジェットプリンタの動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0055】
1・・インクジェットプリンタ 41・・制御部 42・・ロール紙搬送機構 43・・キャリッジ駆動機構 44・・ヘッド駆動機構 45・・キャップ 駆動機構 46・・フラッシュROM 47・・レジスタ 48・・通信インタフェース 49・・ポンプ駆動機構 50・・ホストコンピュータ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドを覆って封止するキャップ装置と、
前記キャップ装置に覆われ封止された前記ヘッドからインクを吸引するポンプと、
キャップ状態を示すフラグを記憶するキャップ状態フラグ保持部と、
起動状態を示すフラグを記憶する起動状態フラグ保持部と、
起動処理時に、前記キャップ状態と前記起動状態とに応じて前記ポンプにインク吸引を選択的に実行させる制御部と、を備えたインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、起動処理時に、前記起動状態保持部が電源オンによる起動処理を示していない場合、または前記起動状態フラグ保持部が電源オンによる起動処理を示しており且つ前記キャップ状態フラグ保持部がキャップ済みを示している場合、前記ヘッドにフラッシング動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、起動処理時に、前記起動状態保持部が電源オンによる起動処理を示しており、かつ前記キャップ状態フラグ保持部が未キャップを示している場合、前記ポンプにインク吸引を実行させることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御部は、前記キャップ装置が前記ヘッドを封止したと判断したときに前記起動状態フラグ保持部にキャップ済みを示すフラグを保存させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記起動状態フラグ保持部に電源オンによる起動処理時に所定値を設定し、次回の起動処理時に前記起動状態フラグ保持部の値が前記所定値であった場合にはリセットによる起動処理が実行されていると判断することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記起動状態フラグ保持部は、電源オンによる起動処理とリセットによる起動処理とを区別可能なフラグを保持することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記起動状態フラグ保持部は、揮発性メモリであり、前記キャップ状態フラグ保持部は、不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
起動処理時に、電源オンによる第1の起動処理とリセットによる第2の起動処理とを判断する起動判断ステップと、
起動処理時のキャップ状態を判断するキャップ判断ステップと、を有し、
起動処理時に、前記起動判断ステップと前記キャップ判断ステップとの判断結果に応じて選択的にインク吸引を行うことを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項9】
前記起動判断ステップが前記第2の起動処理であると判断した場合、フラッシングを実行させることを特徴とする請求項8記載のインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項10】
前記起動判断ステップが前記第1の起動処理であると判断し、かつ前記キャップ判断ステップがキャップ済みであると判断した場合、フラッシングを実行することを特徴とする請求項8記載のインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項11】
前記起動判断ステップが前記第1の起動処理でであると判断し、かつ前記キャップ判断ステップが未キャップであると判断した場合、インク吸引を実行させることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットプリンタの制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62265(P2006−62265A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249232(P2004−249232)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】