説明

インクジェットプリンタ

【課題】光硬化性インクを用いるインクジェットプリンタにおいて、記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができ、その結果、良好な画像の形成を行うことができるインクジェットプリンタとする。
【解決手段】インクジェットプリンタ100において、記録媒体Pに複数種のインクを吐出するための複数の記録ヘッド31と、記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置32と、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に双方向に移動させる駆動装置と、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向及びその逆方向へ移動させながら複数の記録ヘッドからインクを吐出させると共に、同様の色を形成する際に一方向への移動時と逆方向への移動時とでそれぞれの記録ヘッドから吐出されるインクの吐出量を変化させるように制御して画像を形成する制御装置4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに係り、特には紫外線を照射することによって硬化するインクを使用したインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は、グラビア印刷方式より簡便・安価に画像を作成することができるため、写真・各種印刷・マーキング・カラーフィルターといった特殊印刷等の様々な印刷分野に応用されてきている。特に、インクジェット記録方式では、微細なドットを吐出・制御するインクジェット記録方式のインクジェットプリンタと、色再現域・耐久性・吐出適性等を改善したインクと、インク吸収性・色材発色性・表面光沢等を飛躍的に向上させた専用紙とを組み合わせることで、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。
【0003】
従来のインクジェットプリンタには、搬送方向に搬送される記録媒体上において搬送方向に対して直交する走査方向(記録方向)に並んだ複数の吐出口が形成されたラインヘッドからインクを吐出することにより画像記録を行うライン方式、キャリッジに搭載した記録ヘッドを走査方向(記録方向)に移動させて記録ヘッドの移動中に記録ヘッドの吐出口からインクを吐出することにより画像記録を行うシリアル方式等がある。
【0004】
また、インクジェットプリンタは、インクの種類で分類することができる。つまり、従来のインクジェットプリンタには、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式、紫外線の被照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いる紫外線硬化型インクジェット方式等がある。中でも、紫外線硬化型インクジェット方式は、他の記録方式に比べ比較的低臭気であり、専用紙以外にも速乾性・インク吸収性の無い記録媒体に記録できる点で注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、近年、例えば前記シリアル方式のインクジェットプリンタにあっては、記録ヘッドからのインク吐出をキャリッジが走査方向における一方向に往動する際だけでなく、前記キャリッジが走査方向における逆方向に復動する際にも行うようになっており、これにより、高速度での画像形成を実現可能となっている。
【0006】
ところで、インクジェットプリンタでカラー画像を形成する場合には、複数色のインクを記録媒体に重ねて吐出することにより、特定の色を表現することになる。しかし、例えば前記したようなシリアル方式のインクジェットプリンタで、キャリッジの往動時にも復動時にもインクを吐出するようになっていると、往動時と復動時とでインクの吐出順序が変わってしまうため、同じ組み合わせの複数色のインクを同じ量吐出しても往動時と復動時とで色が異なって見えるという不具合が生じる。
【0007】
そこで、従来、往動時と復動時とでインクの吐出順序が同じになるように、キャリッジに搭載する複数の記録ヘッドを、インクの色が左右対称となるように配置するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、水系のインクを用いるインクジェットプリンタにおいては、記録媒体へのインク浸透度に応じて、キャリッジの往動時と復動時とでインク吐出量を変化させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−310454号公報
【特許文献2】特許第3248704号公報
【特許文献3】特開2003−25613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記した特許文献2では、往動時のみにインクを吐出するプリンタに比べて、記録ヘッドの数が約2倍必要となり、その分だけインクジェットプリンタが大型化せざるを得ないという問題が生じてしまう。
【0010】
また、特許文献3に記載されるような水系インクの場合は、インクが記録媒体に染み込むため、既に吐出したインクの上から異なる色のインクを吐出する場合でも、インクと記録媒体との関係を考慮すれば適当なインク量を算出することができた。しかし、光硬化性インクでは、基本的にインクが記録媒体に染み込まないため、既に吐出したインクの上から異なる色のインクを吐出する場合に、インクと記録媒体との関係と共に、既に吐出されて記録媒体に着弾し光硬化されたインクとの関係を考慮しなければならず、従来、このことは考慮されていなかった。そのため、特許文献3の記載では、光硬化性インクを用いたインクジェットプリンタに対応できなかった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、光硬化性インクを用いるインクジェットプリンタにおいて、記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができ、その結果、良好な画像の形成を行うことができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタにおいて、
記録媒体に複数種のインクを吐出するための複数の記録ヘッドと、
記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置と、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に双方向に移動させる駆動装置と、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向及びその逆方向へ移動させながら前記複数の記録ヘッドからインクを吐出させると共に、同様の色を形成する際に一方向への移動時と逆方向への移動時とでそれぞれの記録ヘッドから吐出されるインクの吐出量を変化させるように制御して画像を形成する制御装置と、
を備えることを特徴としている。
【0013】
このように請求項1に記載の発明によれば、記録媒体に複数種のインクを吐出するための複数の記録ヘッドと、記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置と、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に双方向に移動させる駆動装置と、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向及びその逆方向へ移動させながら複数の記録ヘッドからインクを吐出させると共に、同様の色を形成する際に一方向への移動時と逆方向への移動時とでそれぞれの記録ヘッドから吐出されるインクの吐出量を変化させるように制御して画像を形成する制御装置とを備えるため、記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記制御装置は、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向に移動させる間に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させ、
さらに、前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に逆方向に移動させる間に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させることを繰り返して画像を形成し、
インク及び記録媒体の濡れ性に応じて、一方向への移動時と逆方向への移動時のインクの吐出量を変化させるように制御することを特徴としている。
【0015】
このように請求項2に記載の発明によれば、制御装置は、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向に移動させる間に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させ、さらに、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に逆方向に移動させる間に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させることを繰り返して画像を形成し、インク及び記録媒体の濡れ性に応じて、一方向への移動時と逆方向への移動時のインクの吐出量を変化させるように制御するため、確実に記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記制御装置は、
インク及び記録媒体の濡れ性に応じて、画像情報の階調を補正するように制御することを特徴としている。
【0017】
このように請求項3に記載の発明によれば、制御装置は、インク及び記録媒体の濡れ性に応じて、画像情報の階調を補正するように制御するため、特に中間調で、より確実に記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記制御装置は、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体との相対的な移動速度に応じて、一方向への移動時と逆方向への移動時のインクの吐出量を変化させるように制御することを特徴としている。
【0019】
このように請求項4に記載の発明によれば、制御装置は、複数の記録ヘッドと記録媒体との相対的な移動速度に応じて、一方向への移動時と逆方向への移動時のインクの吐出量を変化させるように制御するため、さらに確実に記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、記録方向が一方向のときと逆方向のときの双方で同様の色を形成することができるため、良好な画像の形成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
図1は、本発明を適用した一実施形態として例示するインクジェットプリンタを概略的に示した図である。
【0022】
図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、シリアル方式のインクジェットプリンタであって、記録媒体Pを搬送経路に沿って搬送する搬送機構1と、搬送機構1により搬送される記録媒体Pを上面にて吸引し支持するプラテン2と、プラテン2に支持された記録媒体Pの記録面に画像を記録する画像記録装置3と、これらを統括的に制御する制御装置4(図3参照)とを備えて構成されている。
【0023】
搬送機構1は、プラテン2よりも記録媒体Pの搬送方向Xの上流側に配設され、所定幅を有する長尺な記録媒体Pが巻回された元巻きローラ11と、元巻きローラ11とプラテン2との間に配設され、元巻きローラ11から送られる記録媒体Pを案内するための4つの上流側従動ローラ12a〜12dと、プラテン2よりも搬送方向Xの下流側に配設され、元巻きローラ11から送られる記録媒体Pを巻き取るための巻き取りローラ13と、プラテン2と巻き取りローラ13との間に配設され、画像記録装置3にて画像記録された記録媒体Pを案内するための4つの下流側従動ローラ14a〜14dと、巻き取りローラ13を回転駆動させる搬送モータ等の駆動源(図示省略)とを備えている。
このような構成の搬送機構1は、制御装置4の制御下にて、駆動源の駆動により巻き取りローラ13を回転させることにより、記録媒体Pを搬送方向Xに間欠的に搬送可能となっている。
【0024】
ここで、本実施形態に用いられる記録媒体Pとしては、通常のインクジェットプリンタに適用される普通紙、再生紙、光沢紙等の各種紙、各種布地、各種不織布、樹脂、金属、ガラス等の材質からなる記録媒体Pが適用可能である。また、記録媒体Pの形態としては、ロール状、カットシート状、板状等が適用可能である。
特に、本実施形態で用いられる記録媒体Pとして、所謂軟包装に用いられる透明又は不透明な非吸収性の樹脂製フィルムが適用できる。樹脂製フィルムの具体的な樹脂の種類として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ-ρ-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が適用可能であり、さらには、これら樹脂の共重合体、これら樹脂の混合物、これら樹脂を架橋したもの等も適用可能である。中でも、樹脂製フィルムの樹脂の種類として、延伸したポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロンのいずれかを選択するのが、樹脂製フィルムの透明性・寸法安定性・剛性・環境負荷・コスト等の面で好ましく、2μm以上100μm以下(好ましくは、6μm以上50μm以下)の厚みを有する樹脂製フィルムを用いるのが好ましい。また、樹脂製フィルムの支持体の表面にコロナ放電処理、易接着処理等の表面処理を施してもよい。
さらに、本実施形態に用いられる記録媒体Pとして、樹脂により表面を被覆した各種紙、顔料を含むフィルム、発泡フィルム等の不透明な公知の記録媒体Pも適用可能である。
【0025】
プラテン2は、例えば略水平に配置されており、プラテン2の上面で所定範囲の記録媒体Pの下面(記録面の側と反対側となる面)を図示しない吸引手段の駆動により吸引して支持する。
また、プラテン2の上方には、画像記録装置3が設けられている。
【0026】
次に、画像記録装置3について図2を参照して詳細に説明する。
ここで、図2は、画像記録装置3の要部構成を示した側面図である。
図2に示すように、画像記録装置3は、光として紫外線が照射されることで硬化する性質を有するインクをノズルの吐出口から記録媒体Pの記録面に向けて吐出する記録ヘッド31と、記録面に吐出され着弾したインクに紫外線を照射する光照射装置32と、これら記録ヘッド31と光照射装置32とを搭載支持するキャリッジ33と、走査方向(記録方向)Yに沿って延在するキャリッジレール34とを備えている。なお、本実施形態では、キャリッジ33、キャリッジレール34及び駆動源(図示省略)等で、複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に双方向に移動させる駆動装置を構成している。
【0027】
キャリッジ33は、キャリッジレール34に案内されながら走査方向Yに移動可能となっている。キャリッジ33の移動方向は、駆動源の回転方向に従って変更され、これによりキャリッジ33は走査方向Yにおける一方向及び逆方向の双方向に往復移動する。また、画像記録時において、キャリッジ33は記録媒体Pが停止している際に、走査方向Yにおける一方向に往動、逆方向に復動又は双方向に往復移動し、このとき、記録ヘッド31及び光照射装置32が作動して記録媒体Pに画像を記録する。すなわち、画像記録装置3によりシリアル方式にて画像記録が行われる。
なお、本実施形態における走査方向Yは、記録媒体Pの搬送方向Xに直交する方向、つまり記録媒体Pの幅方向となっている。
【0028】
記録ヘッド31は、インクジェットプリンタ100で使用される4色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のインクに対応して4つ設けられており、これら4つの記録ヘッド31a〜31dが走査方向Yに沿って、図2における右側から左側に向かって並んで配置されている。
各記録ヘッド31は、その下面に記録媒体Pの搬送方向Xに複数のノズル(図示省略)の吐出口(図示省略)が略一列に形成されたノズル面が設けられ、このノズル面が画像記録時においてプラテン2上を搬送される記録媒体Pの記録面に対向するように配置されている。
【0029】
また、各記録ヘッド31は、その内部にピエゾ素子(圧電素子)等の吐出手段311(図3参照)が設けられている。そして、複数の記録ヘッド31,…は、吐出手段311の作動により各吐出口からインク滴を別個に吐出し、記録媒体P上に着弾させることによって画像を形成する。
【0030】
また、記録ヘッド31a〜31dは、濃度階調法によって画像の階調を表現するようになっている。ここで、濃度階調法とは、画像を構成する画素毎の濃度、即ち、一画素に対して吐出されるべきインクの液滴数を変化させる方法である。つまり、記録ヘッド31a〜31dの吐出口からのインク吐出量の変化に基づいて、記録媒体P上の形成画像の階調が変化することとなる。また、画像の階調表現を、例えば、ディザ法や誤差拡散法などの面積階調法の手法と組み合わせることで行うようにしても良い。
【0031】
ここで、本実施形態に用いられる「インク」について説明する。
本実施形態で用いられるインクは、特に、「光硬化技術−樹脂・開始剤の選定と配合条件及び硬化度の測定・評価−(技術協会情報)」に記載の「光硬化システム(第4章)」の「光酸・塩基発生剤を利用する硬化システム(第1節)」、「光誘導型交互共重合(第2節)」等に適合するインクが適用可能であり、通常のラジカル重合により硬化するものであってもよい。
具体的に、本実施形態に用いられるインクは、光としての紫外線の被照射により硬化する性質を具備する紫外線硬化性インクであり、主成分として、少なくとも重合性化合物(公知の重合性化合物を含む。)と、光開始剤と、色材とを含むものである。ただし、本実施形態に用いるインクとして、前記「光誘導型交互共重合(第2節)」に適合するインクを用いる場合には、光開始剤は除外されてもよい。
前記光硬化性インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のインクが本実施形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能であり、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン重合系インクのほうが機能性・汎用性に優れるため、本実施形態では、特に、カチオン重合系インクを用いている。
なお、本実施形態に用いられるカチオン重合系インクは、具体的に、少なくともオキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物であり、前記の通り、紫外線の被照射により硬化する性質を具備するものである。
【0032】
光照射装置32は、複数の記録ヘッド31a〜31dをキャリッジ33の走査方向Yに挟むように2つ配置されている。即ち、図2におけるブラック(K)のインクに対応する記録ヘッド31aの右側及びイエロー(Y)のインクに対応する記録ヘッド31dの左側に、光照射装置32a,32bが配置されている。
【0033】
また、各光照射装置32は、紫外線を照射可能な例えば複数の光源(図示省略)を備えており、画像記録時において、記録ヘッド31から記録媒体Pの記録面に吐出されたインクにより形成された画像に対して、記録ヘッド31よりもキャリッジ33の走査方向Yの下流側に配置された光照射装置32から紫外線を照射するようになっている。具体的には、キャリッジ33が走査方向Yにおける一方向に往動、即ち、キャリッジ33が図2における右方向に移動する際に、記録面上に形成された画像に対して、図2におけるキャリッジの左端に配設された光照射装置32bから紫外線を照射する一方で、キャリッジ33が走査方向Yにおける逆方向に復動、即ち、キャリッジ33が図2における左方向に移動する際に、記録面上に形成された画像に対して、図2におけるキャリッジ33の右端に配設された光照射装置32bから紫外線を照射するようになっている。
これにより、記録面上にて画像が硬化し、この記録面に対する画像の記録が行われる。
【0034】
なお、前記光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、発光ダイオード並びに半導体レーザ等が適用可能なっている。
【0035】
次に、制御装置4について図3〜図7を参照して詳細に説明する。
ここで、図3は、制御装置4の要部構成を示す機能ブロック図である。また、図4は、階調補正テーブルc1を示す図であり、図5は、記録媒体補正データc4に基づく、記録媒体Pの構成材料と、画像データの補正係数との対応を示す図であり、図6は、インク物性補正データc5に基づく、インクの物性と、画像データの階調の補正係数との対応を示す図であり、図7は、移動速度データc6に基づく、キャリッジ33の移動速度と、画像データの補正係数との対応を示す図である。
【0036】
図3に示すように、制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)4a、RAM(Random Access Memory)4b、ROM(Read Only Memory)4c、インターフェイス(I/F)4d等から構成されており、インターフェイス4dを介して、搬送機構1、プラテン2、画像記録装置3等が電気的に接続されている。
【0037】
ROM4cは、インクジェットプリンタ100の各部の動作に関する各種制御プログラム(図示省略)、階調補正テーブルc1、階調補正プログラムc2、インク吐出量制御プログラムc3等が記憶されている。
ここで、階調補正テーブルc1は、記録媒体P上に記録される画像の画像データの階調補正に係る階調補正特性データを有している。階調補正特性データとは、具体的には、例えば、図4に示すように、画像データに含まれる各画素のY、M、C、K成分の輝度を示す所定ビット数のYMCKデータの入力画像信号レベル(入力値)と、これら入力画像信号レベルに応じて階調補正されたY’M’C’K’データのD/A入力レベル(出力値)とを対応付けたものである。なお、本実施形態では、入力画像信号レベルを、0〜255の濃度レベルで表現するものとし、D/A入力レベルを、白レベルが0.0となり、黒レベルが1.0となるような濃度レベルで表現するものとする。
【0038】
また、ROM4cは、前記各種プログラムの実行に係る制御データ(図示省略)、記録媒体補正データc4、インク物性補正データc5、移動速度データc6等の各種のデータを記憶している。
ここで、記録媒体補正データc4は、記録媒体Pの構成材料に基づいて、画像データの階調の補正量が規定されたデータである。具体的には、記録媒体補正データc4は、例えば、図5に示すように、記録媒体Pの構成材料(例えば、構成材料A〜D)に応じて所定の補正係数(例えば、構成材料Aに対応する補正係数1.00、構成材料Bに対応する補正係数0.95、構成材料Cに対応する補正係数0.75構成材料Dに対応する補正係数0.90)が規定されている。
また、インク物性補正データc5は、図6に示すように、インクの物性に基づき画像データの階調の補正量が規定されたデータである。
さらに、移動速度データc6は、図7に示すように、キャリッジ33の移動速度に係るデータである。
なお、記録媒体補正データc4及びインク物性補正データc5は、それぞれ記録媒体の濡れ性及びインクの濡れ性等に基づき、規定されている。
【0039】
RAM4bは、電力が供給されている間だけ入力されたデータを複数記憶可能に構成されており、CPU4aによる作業領域と、記録媒体P上に対する画像の記録を指示するための画像データ等を記憶する記憶領域などが備えられている。
【0040】
ここで、画像データは、例えば、有線、無線を問わず所定の通信手段を介して当該インクジェットプリンタ100に接続された制御装置等から入力されたものであっても良いし、また、例えば光ディスク等の所定の記憶媒体に記録され、所定の読取装置によって読み取られたものであっても良い。
【0041】
CPU4aは、ROM4cに格納されている各種プログラムの中から指定されたプログラムを、RAM4b内の作業領域に展開して、当該プログラムに従った各種処理を実行する。
【0042】
具体的には、CPU4aは、階調補正プログラムc2を実行することで、画像データの階調を補正する階調補正処理を実行可能となっており、この階調補正処理において、階調補正手段として、まず、CPU4aは、記録ヘッド31からのインク吐出に基づいて記録媒体P上に形成される画像のうち、走査方向の一方向への往動時において形成される画像の階調値と、走査方向の逆方向への復動時において形成される画像の階調値とが異なるように、階調補正テーブルc1の階調補正特性データに基づき補正する。
【0043】
次に、階調補正処理において、CPU4aは、階調補正テーブルc1の階調補正特性データに基づき階調が補正された画像データの階調を、記録媒体補正データc4に基づいて補正する。
【0044】
また、階調補正処理において、CPU4aは、記録媒体補正データc4に基づき階調が補正された画像データの階調を、インク物性補正データc5に基づいて補正する。
【0045】
さらに、階調補正処理において、CPU4aは、インク物性補正データc5に基づき階調が補正された画像データの階調を、移動速度データc6に基づいて補正する。
【0046】
また、CPU4aは、画像形成時において、インク吐出量制御手段として、インク吐出量制御プログラムc3を実行することにより、移動速度データc6に基づき階調が補正された画像データに基づいて、複数の記録ヘッド31a〜31dの吐出口から吐出されるインク吐出量、即ち、一画素に対して吐出されるべきインク液滴数を制御するようになっている。また、記録装置の特性に合わせて画像を多値化処理する際の記録率に反映させても良い。
【0047】
ここで、インク吐出量の制御において、本実施形態では、キャリッジ33の往動時と復動時とで、複数色のインクを吐出する際のそれぞれのインク吐出量を変化させるようにしている。例えば、キャリッジの往動時(右方向に移動時)に先に吐出するMインクと後から吐出するYインクを同量吐出した場合に、キャリッジの復動時(左方向に移動時)に往動時と同じ色を形成するために、先に吐出するYインクよりも後から吐出するMインクの吐出量を少なくする等のパターンが挙げられる。これにより、往動時のインク吐出順(K→C→M→Aの順)でインクを吐出した場合の色と、復動時のインク吐出順(Y→M→C→Kの順)でインクを吐出した場合の色とを同様に見せることができる。
【0048】
また、記録媒体及びインクの濡れ性に応じて、インク吐出量を変化させるようにしている。例えば、記録媒体やインクの濡れ性が所定の基準値より高い場合、後から吐出する色のインクが拡がり易いため、後から吐出するインクの吐出量を少なくし、逆に記録媒体やインクの濡れ性が所定の基準値より低い場合、後から吐出する色のインクが拡がり難いため、後から吐出するインクの吐出量を多くすることが挙げられる。
【0049】
さらに、前記複数の記録ヘッドと記録媒体との相対的な移動速度(本実施形態ではキャリッジ速度)に応じて、インク吐出量を変化させるようにしている。例えば、移動速度が基準速度より速い場合、記録媒体にインクが着弾してから光照射装置によってインクを硬化するまでの時間が短くなるため、記録媒体上でインクが拡がり難くなる。そのため、インク吐出量を多くし、短い時間で移動速度が遅い場合と同じドット径になるように調整する。逆に、移動速度が基準速度より遅い場合、記録媒体にインクが着弾してから光照射装置によってインクを硬化するまでの時間が長くなるため、記録媒体上でインクが拡がり易くなる。そのため、インク吐出量を少なくし、硬化までの時間が長くても移動速度が速い場合と同じドット径になるように調整する。
【0050】
次に、制御装置4の制御下における階調補正処理について、図6を参照して説明する。
ここで、図6は、階調補正処理を説明するためのフローチャートである。
【0051】
先ず、ユーザによる所定の操作に基づいて、記録媒体Pに対する画像の記録が指示されると、CPU4aは、画像の画像データに対する階調補正処理を実行する。即ち、CPU4aは、先ず、階調補正プログラムc2を実行して、ROM4cに記憶されている階調補正テーブルc1を読み出して、RAM4bの所定の作業領域に展開する(ステップS1)。そして、CPU4aは、階調補正テーブルc1の階調補正特性データに基づいて、RAM4bに記憶されている画像データを、その入力画像信号レベルに応じたD/A入力レベルに階調補正する。これにより、画像データをYMCKデータからY’M’C’K’データに変換する。
【0052】
次に、CPU4aは、ROM4cから記録媒体補正データc4を読み出して、この記録媒体補正データc4に基づいて所定の演算を行うことにより、前記階調補正テーブルc1に基づき階調が補正された画像データの階調を補正する(ステップS2)。
なお、算出された画像データは、CPU4aの制御下にてRAM4bの記憶領域の所定領域に一旦記憶される。
【0053】
さらに、CPU4aは、ROM4cからインク物性補正データc5を読み出して、このインク物性補正データc5に基づいて所定の演算を行うことにより、前記記録媒体補正データc4に基づき階調が補正された画像データの階調を補正する(ステップS3)。
なお、算出された画像データは、CPU4aの制御下にてRAM4bの記憶領域の所定領域に一旦記憶される。
【0054】
続けて、CPU4aは、ROM4cから移動速度データc6を読み出して、この移動速度データc6に基づいて所定の演算を行うことにより、前記インク物性補正データc5に基づき階調が補正された画像データの階調を補正する(ステップS4)。
なお、算出された画像データは、CPU4aの制御下にてRAM4bの記憶領域の所定領域に一旦記憶される。
【0055】
前記のように、CPU4aは、階調補正処理を行うことによって、画像データの階調特性を最適化することができる。
【0056】
そして、CPU4aは、階調が最適化された画像データに対して誤差拡散処理等の所定の処理を施す制御を行った後、インク吐出量制御手段として、所定の処理が施された画像データに基づいて、記録ヘッド31a〜31dのノズルの吐出口のインク吐出量、即ち、一画素に対して吐出されるべきインク液滴数を制御する。また、記録装置の特性に合わせて画像を多値化処理する際の記録率に反映させても良い。
【0057】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ100によれば、記録媒体に複数種のインクを吐出するための複数の記録ヘッドと、記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置と、記録媒体の搬送方向と直交する走査方向に往復移動し、複数の記録ヘッドと光照射装置を走査方向に並列して搭載するキャリッジと、キャリッジの往動時及び復動時に複数の記録ヘッドからインクを吐出させると共に、同様の色を形成する際に往動時と復動時とでそれぞれの記録ヘッドから吐出されるインクの吐出量を変化させるように制御して画像を形成する制御装置とを備えるため、往動時と復動時とで同様の色を形成することができる。
【0058】
また、本実施形態では、制御装置は、キャリッジの往動時の一走査中に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させ、さらに、キャリッジの復動時の一走査中に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させることを繰り返して画像を形成し、インクの濡れ性に応じて、往動時と復動時のインクの吐出量を変化させるように制御するため、確実に往動時と復動時とで同様の色を形成することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、制御装置は、インク及び記録媒体の濡れ性に応じて画像情報の階調を補正するように制御するため、特に中間調で、より確実に往動時と復動時とで同様の色を形成することができる。
【0060】
またさらに、本実施形態では、制御装置は、キャリッジの移動速度に応じて、往動時と復動時のインクの吐出量を変化させるように制御するため、さらに確実に往動時と復動時とで同様の色を形成することができる。
【0061】
このような結果、本実施形態のインクジェットプリンタは、往動時と復動時とで同様の色を形成することができるため、良好な画像の形成を行うことができる。
【0062】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0063】
例えば、本実施形態では、インクジェットプリンタとしてシリアル方式のプリンタを用いていたが、本発明はこれに限るものではなく、インクジェットプリンタとしてライン方式やドラム方式のプリンタを用いても良い。
【0064】
また、前記実施形態に用いられるインク(ラジカル重合系インク、カチオン重合系インク及びハイブリッド型インクを含む。)は、紫外線の被照射により硬化するものであるが、必ずしもこれには限定されず、紫外線以外の光の被照射により硬化するものであっても良い。ここでいう「光」とは、広義の光であって、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波を含むものである。つまり、前記実施形態に用いられるインクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物どうしの重合反応を開始させる光開始剤とが適用されても良い。紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを前記実施形態に用いる場合は、その光を照射する光源を本発明に係る光照射装置として適用する必要がある。
【0065】
さらに、前記実施形態では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクの各々に対応させた記録ヘッド31a〜31dを備えるようにしたが、すくなくとも2つの記録ヘッド31を備える構成であれば、記録ヘッド31の数及び記録ヘッド31から吐出されるインクの色はともに、適宜任意に変更可能なっている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を適用した一実施形態として例示するインクジェットプリンタを概略的に示した図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの画像記録装置の要部構成を示した側面図である。
【図3】図1のインクジェットプリンタの制御装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図1のインクジェットプリンタによる階調補正処理に係る、画像補正テーブルの情報内容を具体的に示した図である。
【図5】図1のインクジェットプリンタによる階調補正処理に係る、記録媒体補正データの情報内容を具体的に示した図である。
【図6】図1のインクジェットプリンタによる階調補正処理に係る、インク物性補正データの情報内容を具体的に示した図である。
【図7】図1のインクジェットプリンタによる階調補正処理に係る、移動速度データの情報内容を具体的に示した図である。
【図8】図1のインクジェットプリンタによる階調補正処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
100 インクジェットプリンタ
31,31a,31b,31c,31d 記録ヘッド
311 吐出手段
32,32a,32b 光照射装置
33 キャリッジ
4 制御装置
4a CPU(階調補正手段、インク吐出量制御手段)
4b RAM
4c ROM
c1 階調補正テーブル
c2 階調補正プログラム
c3 インク吐出量制御プログラム
c4 記録媒体補正データ
c5 インク物性補正データ
c6 移動速度データ
P 記録媒体
X 搬送方向
Y 走査方向(記録方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に複数種のインクを吐出するための複数の記録ヘッドと、
記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置と、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に双方向に移動させる駆動装置と、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向及びその逆方向へ移動させながら前記複数の記録ヘッドからインクを吐出させると共に、同様の色を形成する際に一方向への移動時と逆方向への移動時とでそれぞれの記録ヘッドから吐出されるインクの吐出量を変化させるように制御して画像を形成する制御装置と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に一方向に移動させる間に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させ、
さらに、前記複数の記録ヘッドと記録媒体とを相対的に逆方向に移動させる間に、既に硬化されたインクを含む記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出させると共に当該インクを光照射装置によって硬化させることを繰り返して画像を形成し、
インク及び記録媒体の濡れ性に応じて、一方向への移動時と逆方向への移動時のインクの吐出量を変化させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御装置は、
インク及び記録媒体の濡れ性に応じて、画像情報の階調を補正するように制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記複数の記録ヘッドと記録媒体との相対的な移動速度に応じて、一方向への移動時と逆方向への移動時のインクの吐出量を変化させるように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−43945(P2006−43945A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225516(P2004−225516)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】