説明

インクジェットプリンタ

【課題】隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアの表面に印刷する場合に、インクジェットヘッド及びメディア保持部の急激な速度変化の発生を抑止する。
【解決手段】4つの平面部αを有するメディアMに印刷刷する際、メディアMに対するインクジェットヘッドの相対移動軌跡Tを、平面部αに沿って直線状に延びる4つの直線軌跡部T1と、走査方向S後方の直線軌跡部T1と走査方向S前方の直線軌跡部T1との間に連結されるとともに、走査方向S後方の直線軌跡部T1の直線に沿って所定長だけ延びた後、メディアMの外方から曲線状に走査方向S前方の直線軌跡部T1の延長線上に回り込み、この走査方向S前方の直線軌跡部T1に向けて所定長だけ直線状に延びる4つの離間軌跡部T2とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアの表面に印刷を行うインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元形状のメディアに対しても印刷を行いたいとの要求から、特許文献1に記載されたインクジェットプリンタが考えられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを水平方向に移動させるX軸駆動部と、メディア保持部を垂直方向に移動させるZ軸駆動部と、メディアを回転させるB軸駆動部と、メディアの傾斜角を調整するA軸駆動部と、を備えており、これらの各駆動部を駆動制御することで、インクジェットヘッドとメディア保持部とを三次元空間内において相対的に移動させている。そして、これらの各駆動部を駆動制御しながら、インクジェットヘッドからインクを吐出することで、メディアの表面に印刷を行っている。
【特許文献1】特開2008−108971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクジェットプリンタは球状のメディアしか考慮されていないため、隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアに印刷する場合は、以下に説明するような問題があった。すなわち、メディアの平面部に印刷する場合は、X軸駆動部を駆動させてインクジェットヘッドを水平移動させればよいが、平面部間を接続する角部では、一気にインクジェットヘッドとメディア保持部とを所定角度相対的に回転させる必要がある。このため、隣接する平面部間の角部において、Z軸駆動部及びB軸駆動部の駆動を開始又は停止が発生するため、インクジェットヘッド及びメディア保持部に急激な速度変化によりインクジェットヘッドとメディア保持部との相対移動が遅れるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアの表面に印刷する場合に、インクジェットヘッド及びメディア保持部の急激な速度変化の発生を抑止することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットプリンタは、隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアを保持するメディア保持部とインクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させながら、インクジェットヘッドからインクを吐出してメディア表面に印刷を行うインクジェットプリンタであって、メディアに対するインクジェットヘッドの相対移動軌跡に基づいて、メディア保持部とインクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させる駆動制御手段を有し、相対移動軌跡は、隣接するメディアの平面部に対応する軌跡の間に、メディアから離間する軌跡を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、インクジェットヘッドとメディア保持部との相対移動軌跡として、隣接する平面部に対応する軌跡の間に、一旦メディアから離間する軌跡が形成されているため、隣接する平面部に対応する軌跡を完全に分離させることができる。すなわち、走査方向後方の平面部を印刷した後、一気にインクジェットヘッドとメディア保持部とを所定角度相対的に回転させる必要がなくなる。このため、走査方向後方の平面部に対する印刷と走査方向後方の平面部に対する印刷との間において、インクジェットヘッドとメディア保持部とを相対移動させる区間を確保することができる。これにより、印刷時におけるメディア保持部及びインクジェットヘッドの急激な速度変化の発生を抑止することができるため、インクジェットヘッドとメディア保持部との相対移動が遅れることによる印刷速度の低下や印刷ミスの発生を防止することができる。
【0008】
本発明に係る印刷方法は、隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアを保持するメディア保持部とインクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させながら、インクジェットヘッドからインクを吐出してメディア表面に印刷を行うインクジェットプリンタの印刷方法であって、メディアに対するインクジェットヘッドの相対移動軌跡に基づいて、メディア保持部とインクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させ、相対移動軌跡は、隣接するメディアの平面部に対応する軌跡の間に、メディアから離間する軌跡を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る印刷方法によれば、インクジェットヘッドとメディア保持部との相対移動軌跡として、隣接する平面部に対応する軌跡の間に、一旦メディアから離間する軌跡が形成されているため、隣接する平面部に対応する軌跡を完全に分離させることができる。すなわち、走査方向後方の平面部を印刷した後、一気にインクジェットヘッドとメディア保持部とを所定角度相対的に回転させる必要がなくなる。このため、走査方向後方の平面部に対する印刷と走査方向後方の平面部に対する印刷との間において、インクジェットヘッドとメディア保持部とを相対移動させる区間を確保することができる。これにより、印刷時におけるメディア保持部及びインクジェットヘッドの急激な速度変化の発生を抑止することができるため、インクジェットヘッドとメディア保持部との相対移動が遅れることによる印刷速度の低下や印刷ミスの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアの表面に印刷する場合に、インクジェットヘッド及びメディア保持部の急激な速度変化の発生を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図であり、図2は、図1のII−II線断面図であり、図3は、図1に示したインクジェットプリンタの一部斜視図である。なお、本実施形態では、図1の左右方向(図2の前後方向)をY軸方向とし、図1の前後方向(図2の左右方向)をX軸方向とし、図1の上下方向(図2の上下方向)をZ軸方向とする。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、隣り合う平面部が90°で接続された四角柱のメディアM表面に印刷するものであって、インクを吐出するインクジェットヘッド20とメディアMを保持するメディア保持部40とを相対的に移動させて、インクジェットヘッド20からインクを吐出させることで、メディアMの表面に画像等を印刷するものである。
【0014】
インクジェットプリンタ1は、基台となるベース10に、Y軸方向に沿って配置される左右一対の支持脚11,12が立設されている。Y軸方向において右側に配置される支持脚11には、作業者による指示操作を受け付ける操作盤13が搭載された第1制御装置14が固定されており、Y軸方向において左側に配置される支持脚12には、インクジェットヘッド20をクリーニングするメンテナンスステーション15が搭載された第2制御装置16が固定されている。
【0015】
第1制御装置14及び第2制御装置16は、後述するインクジェットヘッド20とメディア保持部40との相対移動制御やインクジェットヘッド20のインク吐出制御などを行う制御装置である。このため、第1制御装置14及び第2制御装置16は、駆動制御手段として機能する。第1制御装置14及び第2制御装置16は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。上記の各機能は、CPUやRAM上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませ、CPUの制御の下で動作させることで実現される。なお、本実施形態では、第1制御装置14と第2制御装置16とが別体であるものとして説明するが、物理的及び機能的に1つであってもよく、複数に分割されていてもよい。
【0016】
左右一対の支持脚11,12の間には、Y軸方向に沿って延在する支持桁17が掛け渡されている。そして、支持桁17の上面には、支持桁17の延在方向に延びる一対のY軸ガイドレール18a,18bがX軸方向に並列して配設されている。そして、この一対のY軸ガイドレール18a,18bに、インクジェットヘッド20を搭載するヘッドキャリッジ21がY軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0017】
インクジェットヘッド20は、複数色のインクを吐出して、メディア保持部40に保持されたメディアMにカラー画像を印刷するものである。このため、インクジェットヘッド20には、イエロー、マゼンダ、シアン及びブラックなどのインク色に対応して設けられている。そして、インクジェットヘッド20は、インクが吐出されるノズル面20aがメディア保持部40に保持されたメディアMに対向するように、ヘッドキャリッジ21の下端部に配置されている。
【0018】
ヘッドキャリッジ21は、支持桁17に取り付けられたY軸搬送機構(不図示)に連結されている。Y軸搬送機構は、例えば、駆動モータに連結されたボールねじと、このボールねじの軸受けとなるボール軸受けとで構成される周知の機構で実現される。そして、ヘッドキャリッジ21は、第1制御装置14又は第2制御装置16によるY軸搬送機構の駆動制御により、一対のY軸ガイドレール18a,18bにガイドされてY軸方向に移動する。そして、ヘッドキャリッジ21の移動によりインクジェットヘッド20がメンテナンスステーション15の上方に位置すると、メンテナンスステーション15が昇降してインクジェットヘッド20をクリーニングする。
【0019】
また、ベース10の上面には、一対の支持脚11,12の間に、X軸方向に延びる一対のX軸ガイドレール19a,19bがY軸方向に並列して配設されている。そして、この一対のX軸ガイドレール19a,19bには、メディア保持部40を載置するためのXテーブル31がX軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0020】
Xテーブル31は、メディア保持部40を、インクジェットヘッド20に対してX軸方向に相対移動させるテーブルであり、ベース10に取り付けられたX軸搬送機構(不図示)に連結されている。X軸搬送機構は、例えば、駆動モータに連結されたボールねじと、このボールねじの軸受けとなるボール軸受けとで構成される周知の機構で実現される。そして、Xテーブル31には、Z軸方向に延びるZ軸支持部32が立設されている。
【0021】
Z軸支持部32は、メディア保持部40をZ軸方向に昇降可能に支持する支持部材である。このため、Z軸支持部32には、Z軸方向に立設される一対の側壁部33a,33bと、一対の側壁部33a,33bの上面を連結する天板部34が取り付けられている。そして、一対の側壁部33a,33bの間には、側壁部33a,33bに沿ってメディア保持部40をZ軸方向に昇降させる昇降機構35が取り付けられている。
【0022】
昇降機構35は、一対の側壁部33a,33bの間に配置されてXテーブル31に固定されたZ軸用駆動モータ37と、Z軸用駆動モータ37の出力軸に連結されてZ軸方向に立設されるボールねじ38と、ボールねじ38の軸受けとなってメディア保持部40に連結されるボール軸受け39とにより構成される。そして、第1制御装置14又は第2制御装置16によるZ軸用駆動モータ37の駆動制御により、ボールねじ38が回転するとともに、ボールねじ38の回転によるボール軸受け39のZ軸方向における昇降により、メディア保持部40がZ軸方向に昇降する。
【0023】
メディア保持部40は、メディアMを回転可能に保持するものである。このため、メディア保持部40には、昇降機構35のボール軸受け39に取り付けられるZテーブル41と、Zテーブル41からX軸方向に突出する一対のアーム42a,42bと、一対のアーム42a,42bに回転可能に取り付けられるA軸回転部43と、A軸回転部43に回転可能に取り付けられてメディアMを保持するチャック44とにより構成されている。
【0024】
一対のアーム42a,42bは、Y軸方向に対向配置されており、A軸回転部43を回転可能に保持するものである。すなわち、対向される一対のアーム42a,42bの先端にY軸方向に延びる回転軸が取り付けられており、この回転軸にA軸回転部43が取り付けられている。そして、この回転軸には、一方のアーム42a固定されたA軸用駆動モータ45の出力軸が連結されている。A軸用駆動モータ45は、一対のアーム42a,42bに取り付けられた回転軸回りの回転方向Aに回転駆動するものである。このため、A軸用駆動モータ45が回転駆動することで、A軸回転部43が回転方向A(A軸方向)に回転することが可能となる。
【0025】
A軸回転部43は、チャック44を回転可能に保持するものである。すなわち、A軸回転部43には、A軸回転部43の回転軸に対して垂直な方向の軸を回転軸として、この回転軸回りの回転方向Bに回転駆動するB軸用駆動モータ46が取り付けられている。そして、B軸用駆動モータ46の出力軸に、チャック44が取り付けられている。このため、B軸用駆動モータ46が回転駆動することで、チャック44が回転方向B(B軸方向)に回転することが可能となる。
【0026】
このように、Z軸用駆動モータ37、A軸用駆動モータ45、B軸用駆動モータ46の回転駆動により、メディア保持部40のチャック44に保持されたメディアMが、Z軸方向に昇降するとともに、回転方向A及び回転方向Bに回転する。
【0027】
次に、インクジェットプリンタ1におけるインクジェットヘッド20とメディア保持部40との相対移動制御について説明する。
【0028】
図4は、メディアの断面図であり、図5は、メディアに対するインクジェットヘッドの相対移動軌跡を示した図である。図4では、メディアの回転軸に垂直な面で切断した断面を示しており、Oは、メディアMの回転中心を示している。図5では、図4に示したメディアMメディアMに対するインクジェットヘッド20の相対移動軌跡を示しており、メディアMに対してインクジェットヘッド20が相対的に移動する方向を走査方向Sとする。
【0029】
図4に示すように、メディアM表面は、4つの平面部αが90度傾けて接続された四角柱状に形成される。このため、各平面部αが連結される4つの連結点pは、隣接する平面部αが角部となって折り曲げられる地点となる。
【0030】
そして、図5に示すように、相対移動軌跡Tは、図4に示す4つの連結点pに対応して分割された軌跡であって、平面部αに対応する4つの直線軌跡部T1と、走査方向S後方の直線軌跡部T1と走査方向S前方の直線軌跡部T1との間に連結される4つの離間軌跡部T2とにより形成される。
【0031】
直線軌跡部T1は、平面部αを印刷するための軌跡であり、平面部αから所定距離離間するとともに、この平面部αに沿って直線状に延びる線である。すなわち、直線軌跡部T1は、平面部αの2つの連結点pに対応する点を直線で結ぶ線となる。なお、直線軌跡部T1とメディアM表面との離間距離は0(ゼロ)、すなわち、直線軌跡部T1はメディアMの表面上であってもよい。そして、直線軌跡部T1では、第1制御装置14及び第2制御装置16による駆動制御及びインク吐出制御により、インクジェットヘッド20に対するY軸方向への移動を行わせながら、インクジェットヘッド20からインクを吐出させる。なお、このとき、メディアMは、Z軸方向に移動する必要が無く、また、B軸方向に回転する必要が無いため、メディア保持部40に対するZ軸方向への昇降を停止するとともに、メディアMに対するB軸方向への回転を停止する。
【0032】
離間軌跡部T2は、メディアMに対する印刷を中断する軌跡であり、走査方向S後方の直線軌跡部T1の直線に沿って所定長だけ延びた後、メディアMの外方から曲線状に走査方向S前方の直線軌跡部T1の延長線上に回り込み、この走査方向S前方の直線軌跡部T1に向けて所定長だけ直線状に延びる線である。このように、離間軌跡部T2を、走査方向S後方の直線軌跡部T1の直線に沿って所定長だけ走査方向S前方に延ばすことで、走査方向S後方の直線軌跡部T1に基づくインクジェットヘッド20とメディア保持部40の相対移動を最後まで定速で行わせることができる。また、離間軌跡部T2を曲線状に回り込ませることで、直線軌跡部T1に基づくインクジェットヘッド20とメディア保持部40の相対移動を円滑に開始させることができる。また、離間軌跡部T2を、直線軌跡部T1に向けて所定長だけ直線状に延ばすことで、インクジェットヘッド20を十分に加速させて、直線軌跡部T1の始点から直線軌跡部T1に基づくインクジェットヘッド20とメディア保持部40との相対移動を開始させることができる。
【0033】
次に、図6及び図7を参照して、印刷スケジュールについて説明する。図6は、メディアとインクジェットヘッドとの位置関係を時系列的に示した図であり、図7は、図6の後のメディアとインクジェットヘッドとの位置関係を時系列的に示した図である。
【0034】
まず、インクジェットプリンタ1は、図6(a)に示す初期状態から、直線軌跡部T1の始端位置に来るまで、インクジェットヘッド20をX軸方向に移動させる。このとき、インクジェットヘッド20を、印刷するために必要な所定速度になるまで加速させる。
【0035】
そして、直線軌跡部T1に進入すると、インク吐出制御によりインクジェットヘッド20からインクを吐出させるとともに、駆動制御によりインクジェットヘッド20をX軸方向に等速で移動させて、メディアMの平面部αに印刷を行う(図6(b)及び図6(c)参照)。
【0036】
直線軌跡部T1から離間軌跡部T2に進入すると、インク吐出制御を停止して、駆動制御によりインクジェットヘッド20をメディアMから離間させる(図6(d)参照)。そして、離間軌跡部T2では、走査方向S後方の直線軌跡部T1から走査方向S前方の直線軌跡部T1に向かってメディアMの外方を回り込むように、インクジェットヘッド20とメディアMとを相対的に移動させる(図7(a)〜(c)参照)。そして、離間軌跡部T2の終端位置付近では、インクジェットヘッド20がメディアMの平面部αに対して直線的に進入するように、インクジェットヘッド20をY軸方向に移動させる(図7(d)参照。なお、このとき、インクジェットヘッド20を、印刷するために必要な所定速度になるまで加速させる。
【0037】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、インクジェットヘッド20とメディア保持部40との相対移動軌跡Tとして、隣接する平面部αに対応する直線軌跡部T1の間に、一旦メディアMから離間する離間軌跡部T2が形成されているため、隣接する平面部αに対応する軌跡を完全に分離させることができる。すなわち、走査方向S後方の平面部αを印刷した後、一気にインクジェットヘッド20とメディア保持部40とを所定角度相対的に回転させる必要がなくなる。このため、走査方向S後方の平面部αに対する印刷と走査方向S後方の平面部αに対する印刷との間において、インクジェットヘッド20とメディア保持部40とを相対移動させる区間を確保することができる。これにより、印刷時におけるメディア保持部40及びインクジェットヘッド20の急激な速度変化の発生を抑止することができるため、インクジェットヘッド20とメディア保持部40との相対移動が遅れることによる印刷速度の低下や印刷ミスの発生を防止することができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、離間軌跡部T2は、インクジェットヘッド20がメディアMから離間する軌跡であるものとして説明したが、必ずしも、軌跡全体においてインクジェットヘッド20がメディアMから離間する必要はなく、少なくとも、走査方向S後方の直線軌跡部T1と走査方向S前方の直線軌跡部T1とを連結するために必要な部分だけメディアMから離間すればよい。
【0039】
また、上記実施形態では、離間軌跡部T2は、直線軌跡部T1の直線に沿って所定長だけ延びた後に曲線状に回り込むものとして説明したが、緩やかに変化する軌跡であれば如何なる形状の軌跡であってもよい。すなわち、離間軌跡部T2は、インクジェットプリンタ1における各軸の駆動が緩やかに変化するように、その軌跡が設定される。このため、例えば、直線軌跡部T1との境界付近の軌跡を緩やかな曲線状としてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、メディアMとして四角柱を用いて説明したが、三角柱や六角柱など、多面体のメディアであれば、如何なるメディアを採用してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、第1制御装置14及び第2制御装置16に駆動制御手段の機能を実現させるものとして説明したが、駆動制御手段の機能は、インクジェットプリンタ1に実装されるASICやFPGAなどで実現してもよい。また、駆動制御手段は、インクジェットプリンタ1の全体を制御するCPUと、ASICやFPGAなどにより構成することが考えられる。このように構成することで、インクジェットヘッド20やメディア保持部40などの駆動制御を適切かつ高速に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示したインクジェットプリンタの一部斜視図である。
【図4】メディアの断面図である。
【図5】メディアに対するインクジェットヘッドの相対移動軌跡を示した図である。
【図6】メディアとインクジェットヘッドとの位置関係を時系列的に示した図である。
【図7】図6の後のメディアとインクジェットヘッドとの位置関係を時系列的に示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1…三次元インクジェットプリンタ、10…ベース、11…支持脚、12…支持脚、13…操作盤、14…第1制御装置(駆動手段)、15…メンテナンスステーション、16…第2制御装置(駆動手段)、17…支持桁、18a,18b…Y軸ガイドレール、19a,19b…X軸ガイドレール、20…インクジェットヘッド、21…ヘッドキャリッジ、31…Xテーブル、32…Z軸支持部、33a,33b…側壁部、34…天板部、35…昇降機構、36a,36b…Z軸ガイドレール、37…Z軸用駆動モータ、38…ボールねじ、39…ボール軸受け、40…メディア保持部、41…Zテーブル、42…アーム、43…A軸回転部、44…チャック、45…A軸用駆動モータ、46…B軸用駆動モータ、100…インクジェットプリンタ、101…UVランプ、M…メディア、p…連結点、S…走査方向、T…相対移動軌跡、T1…直線軌跡部、T2…離間軌跡部、α…平面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアを保持するメディア保持部とインクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記メディア表面に印刷を行うインクジェットプリンタであって、
前記メディアに対する前記インクジェットヘッドの相対移動軌跡に基づいて、前記メディア保持部と前記インクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させる駆動制御手段を有し、
前記相対移動軌跡は、隣接する前記メディアの平面部に対応する軌跡の間に、前記メディアから離間する軌跡を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
隣り合う平面部が所定角度で接続された多面体のメディアを保持するメディア保持部とインクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記メディア表面に印刷を行うインクジェットプリンタの印刷方法であって、
前記メディアに対する前記インクジェットヘッドの相対移動軌跡に基づいて、前記メディア保持部と前記インクジェットヘッドとを三次元空間において相対的に移動させ、
前記相対移動軌跡は、隣接する前記メディアの平面部に対応する軌跡の間に、前記メディアから離間する軌跡を有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−125744(P2010−125744A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304206(P2008−304206)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】