説明

インクジェットヘッド

【課題】電界クロストークの影響を激減させ、インク吐出性能の安定化を図り得るインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】分極された圧電素子基板に複数の平行な溝を形成することにより、複数のインク流路1と複数の隔壁2とを並設し、隔壁2の両壁面に電極7を形成し、該電極7に電圧を印加することにより、隔壁2をせん断変形させてインク流路1内の圧力を変化させ、インクを吐出させるインクジェットヘッドにおいて、圧電素子基板におけるインク流路1が形成されている面と反対側の面で、且つインク流路1の底面1aから300μm以内に二つ以上の境界面A、Bを有しており、二つ以上の境界面A、Bの各々を挟んで隣接する層は、比誘電率が互いに異なることを特徴とするインクジェットヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分極された圧電素子を少なくとも一部に含む隔壁により隔てられた複数のインク流路を備え、隔壁の両壁面に設けられた電極に電圧を印加することにより、隔壁をせん断変形させてインク流路内のインクを吐出させるようにしたインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シェアモードタイプのインクジェットヘッドは、複数並列するインク流路を隔てる隔壁の少なくとも一部に分極された圧電素子を使用し、この隔壁の両壁面に設けられた電極に電圧を印加することにより、隔壁をせん断変形させて圧力波を発生させ、インク流路内のインクをノズルから吐出させる仕組みである。
【0003】
このようなインクジェットヘッドにおいては、電界印加に対する隔壁の変位が重要である。すなわち、隔壁を構成する圧電素子の変位は、圧電定数と電界強度に関連付けられている。いま、隔壁の深さをHとし、電界印加により生じる隔壁の変位量をΔLとすると、ΔLは次式で与えられる。
【0004】
ΔL=d15・H・E・α
【0005】
ここで、d15は圧電定数、Eは電界強度、αは定数である。
【0006】
しかし、実際には圧電素子の同一組成で作られた基板の場合、上記のEの電界の漏れが起こり、いわゆる電界クロストークのため、実際の電界E’は次式のように少なくなってしまう。
【0007】
E’=E0−Ec(クロストークによる漏れ)
【0008】
このため、実際の隔壁の変位量は、予想していた変位量よりも少なくなり、設計通りのインク射出速度が得られない問題がある。
【0009】
また、漏れた電界Ecがインク流路底面に作用することにより、このインク流路底面を盛り上げるように収縮変形させる現象が発生し、隣接するインク流路の駆動方式や吐出するタイミングによって隔壁の変位量に差異が生じてしまう。
【0010】
このような電界クロストークの影響は、吐出速度のばらつきや吐出速度そのものに影響を与えることにより、インクジェットヘッドの設計が困難となる問題がある。
【0011】
特許文献1には、2列のノズル列を有するインクジェットヘッドにおいて、各列の間に設けられるベース基板に、その両側の圧電素子基板よりも誘電率の低い絶縁物質(アルミナ)を使用することにより、ベース基板の両側に位置するインク流路間の電気的結合を小さくし、電界クロストークの影響を小さくする技術が開示されている。
【0012】
また、特許文献2には、インク流路の底面を形成する圧電素子の厚さを80μm以下に定めることにより、隔壁の根元における電場の影響を抑制し、隔壁の歪み特性を向上させる技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3087315号公報
【特許文献2】特開平8−300643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らの知見によれば、特許文献1に開示のように、単にベース基板に圧電素子基板よりも誘電率の低い絶縁材料を用いるというだけでは、電界クロストークの影響を小さくするには十分ではない。
【0014】
また、特許文献2に開示の技術では、電界クロストークの影響をある程度まで小さくするには有効な方法であると考えられるが、電界クロストークの影響を激減させるには至らず、インク射出性能の安定化を図るには不十分であった。
【0015】
本発明者らはこのような電界クロストークの影響について鋭意検討した結果、圧電素子からある一定距離にある領域に、互いに比誘電率の異なる層によって形成される境界面を二つ以上持たせることが、電界クロストークの影響を激減させるのに有効であることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は、電界クロストークの影響を激減させ、インク吐出性能の安定化を図り得るインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
【0017】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0019】
請求項1記載の発明は、分極された圧電素子基板に複数の平行な溝を形成することにより、複数のインク流路と複数の隔壁とを並設し、前記隔壁の両壁面に電極を形成し、該電極に電圧を印加することにより、前記隔壁をせん断変形させて前記インク流路内の圧力を変化させ、インクを吐出させるインクジェットヘッドにおいて、前記圧電素子基板における前記インク流路が形成されている面と反対側の面で、且つ前記インク流路の底面から300μm以内に二つ以上の境界面を有しており、前記二つ以上の境界面の各々を挟んで隣接する材料は、比誘電率が互いに異なることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0020】
請求項2記載の発明は、前記二つ以上の境界面の少なくとも一つが、前記インク流路の底面から100μm以内に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドである。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記二つ以上の境界面の各々を挟んで隣接する一方の材料の比誘電率をE1、他方の材料の比誘電率をE2とし、E1>E2であるとき、E1/E2≧100であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドである。
【0022】
請求項4記載の発明は、前記二つ以上の境界面は、少なくとも一つの接着剤層の両面を含むことを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッドである。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記接着剤層を構成する接着剤は硬化型接着剤であり、硬化後の引っ張り弾性率が100kgf/cm以上であることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドである。
【0024】
請求項6記載の発明は、前記接着剤層を構成する接着剤は硬化型接着剤であり、硬化後のガラス転移点が100℃以上であることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドである。
【0025】
請求項7記載の発明は、前記接着剤層を構成する接着剤は、フィラーを含み、厚み制御されていることを特徴とする請求項4、5又は6記載のインクジェットヘッドである。
【0026】
請求項8記載の発明は、前記接着剤層の厚みは、1μm〜50μmであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0027】
請求項9記載の発明は、前記圧電素子基板における前記インク流路が形成されている面と反対側の面に、前記二つ以上の境界面のうちの少なくとも二つを挟んで、前記隔壁を構成している圧電素子と同じ圧電素子からなる第2の圧電素子基板が積層されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0028】
請求項10記載の発明は、前記第2の圧電素子基板を構成する圧電素子の分極方向は、前記隔壁を構成している圧電素子の分極方向と対称的に形成されていることを特徴とする請求項9記載のインクジェットヘッドである。
【0029】
請求項11記載の発明は、前記インク流路は、入口と出口が対向するように配置されていると共に、前記入口から前記出口にかけて深さが均一に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0030】
請求項12記載の発明は、前記電極はめっきにより形成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0031】
請求項13記載の発明は、分極された圧電素子基板に複数の平行な溝を形成することにより、複数のインク流路と複数の隔壁とを並設し、前記隔壁の両壁面に電極を形成し、該電極に電圧を印加することにより、前記隔壁をせん断変形させて前記インク流路内の圧力を変化させ、インクを吐出させるインクジェットヘッドにおいて、前記圧電素子基板における前記インク流路が形成されている面と反対側の面で、且つ前記インク流路の底面から300μm以内に、比誘電率が変化する領域を二つ以上有していることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電界クロストークの影響を激減させ、インク吐出性能の安定化を図り得るインクジェットヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0034】
図1は、本発明に係るせん断モードタイプのインクジェットヘッドの一例を示す部分断面図である。
【0035】
インクジェットヘッドH1は、内部にインクが貯留される複数のインク流路1が隔壁2によって隔てられ、図示左右方向に多数並設されている。各インク流路1の上方は各隔壁2の上端に接着剤層3を介して接合されたカバー基板4によって閉塞され、下方の底面1aはベース基板5によって閉塞されている。
【0036】
隔壁2は、接着剤層6を介して2つの圧電素子2a、2bを接合することによって構成されている。この隔壁2を構成する圧電素子2a、2bとしては、電界を印加することにより変形を生じる公知の圧電素子を用いることができるが、中でもチタン酸ジルコン酸鉛(商品名PZT)が、充填密度が大きく、圧電定数が大きく、加工性が良いので好ましい。PZTは、焼成後、温度を下げると急に結晶構造が変化して、原子がズレ、片側がプラス、反対側がマイナスという双極子の形の細かい結晶の集まりになる。こうした自発分極は方向がランダムで、極性を互いに打ち消し合っているので、更に分極処理が必要となる。分極処理は、PZTの薄板を電極で挟み、シリコン油中に漬けて、10〜35kv/cm程度の高電界を掛けて行う。
【0037】
図1において、隔壁2に付された矢印は各圧電素子2a、2bの分極方向を示している。このように隔壁2を構成する各圧電素子2a、2bの分極方向は、互いに反対方向となるように配置されている。
【0038】
このようなインクジェットヘッドH1におけるインク流路1及び隔壁2は、図2(a)に示すように、それぞれ分極処理された薄手の圧電素子基板51と厚手の圧電素子基板52を、分極方向が反対方向となるように接着剤を用いて接合した後、図2(b)に示すように、ダイシングブレード等の研削具を用いて、薄手の圧電素子基板51の表面から、該圧電素子基板51を貫通し、厚手の圧電素子基板52の中途部にまで至る多数の溝53を平行に並設することによって形成することができる。溝53がインク流路1となり、隣接する溝53間に削り残された圧電素子基板51、52が隔壁2となり、インク流路1の底面1aに位置する厚手の圧電素子基板52がベース基板5となる。
【0039】
各インク流路1の内面、すなわち、両隔壁2、2の側面からインク流路1の底面1aにかけて電極7が密着形成されている。電極7を形成する金属は、電気特性、耐食性、加工性の観点から、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、タンタル、チタニウム等が好ましい。
【0040】
電極7は、インク流路1を形成した後、蒸着法、スパッタリング法、めっき法によって、各インク流路1の内面に金属被膜を設けることによって形成することができる。中でもピンホールのない電極7を形成することができる点でめっき法によるものが好ましい。めっき法により形成された電極7は、蒸着法やスパッタリング法によって形成されるものに比べて剛性が高いため、電界クロストークの影響によって発生する内部圧力による変形を抑止する効果が高く、本発明においては好ましい。めっき法としては無電解めっきが好ましい。また、電極7の厚みは特に限定されないが、一般には0.5〜5μmとすることができる。
【0041】
かかるインクジェットヘッドH1は、分極した圧電素子2a、2bからなる隔壁2の両側の電極7、7から、分極方向に直角に電圧を印加すると、図3(a)に示すように、隔壁2が圧電滑り効果により斜め方向にくの字状にせん断変形して、インク流路1の容積が膨張し、インクがインク流路1内に流入する。この時、インク流路1内に負の圧力波が発生して、インク中を伝わり、時間L/v(L:インク流路1の長さ、vインク中の音速)経過すると、圧力波がインク流路1末端に到達して反射され、位相が反転して正の圧力波になる。この時、電極7、7に印加した電圧をグランドに落とすと、図3(b)に示すように、隔壁2の変形が無くなり、インク流路1の容積が縮小してインクに圧力が掛かる。反転した正の圧力波と隔壁2からの圧力とが加わって高い圧力がインクに掛かり、インク流路1の一端に設けられたノズル(図示せず)からインク滴が吐出される。隔壁2の変形量が大きい程、インクに掛かる力が大きくなり、インク滴の吐出速度が早くなり、吐出の直進性が高くなり、画像の解像度が向上する。
【0042】
ここで、このインクジェットヘッドH1は、ベース基板5におけるインク流路1が形成されている面と反対側の面に、インク流路1の底面1aと平行な二つの境界面A、Bを有している。
【0043】
すなわち、ベース基板5におけるインク流路1が形成されている面と反対側の面に接着剤層8が設けられ、この接着剤層8を介して接合基板9が接着され、これら接着剤層8と接合基板9による層とが形成されている。上記二つの境界面A、Bは、接着剤層8の両面によって形成されており、境界面Aは、ベース基板5と接着剤層8との間に形成され、境界面Bは、接着剤層8と接合基板9との間に形成されている。
【0044】
また、インク流路1の底面1aから二つ目の境界面Bまでの距離L1は、300μm以内とされており、二つの境界面A、Bの各々を挟んで隣接する層は、比誘電率が互いに異なっている。すなわち、境界面Aを挟んで隣接するベース基板5の比誘電率と接着剤層8の比誘電率とは互いに異なっており、且つ、境界面Bを挟んで隣接する接着剤層8の比誘電率と接合基板9の比誘電率とは互いに異なっている。このため、ベース基板5と接着剤層8との境界面Aの領域で比誘電率が変化し、更に接着剤層8と接合基板9との境界面Bの領域でも比誘電率が変化する。
【0045】
ここで、本発明において比誘電率が互いに異なるとは、境界面を挟んで隣接する二つの層のうちの一方の層の比誘電率をE1、他方の層の比誘電率をE2とし、E1>E2であるとき、(E1−E2)≧10となることをいう。
【0046】
これにより、インク流路1の両側に配置される隔壁2の電極7にそれぞれ電圧を印加した際に、電極7からインク流路1の底面1a側に電界漏れが発生した場合、漏れ出た電界は、インク流路1の底面1a側のベース基板5から境界面Aを通過して接着剤層8に至り、続いて境界面Bを通過して接合基板9に至る。このとき、各境界面A、Bの両側にある層の比誘電率が異なっていることから、各境界面A、Bで電界の方向が屈折する。
【0047】
更に、本発明のように、ある深さ範囲に比誘電率が変化する領域を二つ以上設けることで、漏れ出た電界を1つ目の境界面Aの領域においてある角度で屈折させた後に、次の境界面Bの領域でその操作した入射角をさらに屈折させることで、ほぼ反射させることとなり、漏れ出た電界は二つの境界面A、Bの各領域を通過する際に大きく曲げられて反射し、電界の漏れ、つまり電界クロストークの影響は激減する。これにより、吐出速度のばらつきが抑えられ、同一駆動電圧での吐出速度の向上効果が得られるようになる。
【0048】
すなわち、本発明は、単に比誘電率の異なる材料の層を設けるという発想ではなく、インク流路1の底面1aから所定の距離以内に二つ以上の境界面A、B…を形成し、その二つ以上の境界面A、B…の各々を挟んで隣接する層の比誘電率を互いに異ならせるという新規な発想によってなされたものである。二つ以上の境界面A、B…はインク流路1の底面1aから300μm以内に形成されていることが必要である。二つ以上の境界面がインク流路1の底面1aから300μmを超える場合や、300μm以内であっても境界面が一つだけの場合は、漏れ出た電界による電界クロストークの影響を激減させることはできない。
【0049】
かかるインクジェットヘッドH1において、二つ以上の境界面A、B…のうちの少なくとも一つの境界面(境界面A)のインク流路1の底面1aからの距離L2が、100μm以内であることが好ましい。インク流路1の底面1aからの距離が近く、浅くなることで、電界の漏れによる電界クロストークの影響を低減する効果が顕著に得られる。
【0050】
また、各境界面A、Bを挟んで隣接する二つの層、すなわち、ベース基板5と接着剤層8、接着剤層8と接合基板9とでは、一方の層の比誘電率をE1、他方の層の比誘電率をE2とし、E1>E2であるとき、E1/E2≧100の条件を満足することが好ましい。この条件を満たす場合は、電界クロストークの影響を一層低減させる効果を得ることができる。
【0051】
更に、このように接着剤層8を形成することによってベース基板5に接合基板9を接合することで、二つの境界面A、Bによって比誘電率が変化する二つの領域を容易に形成することができる。
【0052】
接着剤層8に用いられる接着剤としては、例えばエポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、ポリウレタン・イソシアネート系接着剤、アクリル酸エステル系接着剤等が挙げられる。これらの中でも、強靭で接着強度が高く、耐溶剤性も良好である点で、エポキシ系接着剤が好ましい。
【0053】
エポキシ系接着剤は、エポキシ樹脂(主剤)と硬化剤との組合せからなる。主剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、硬化剤としては、アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等が挙げられる。なお、これらの材料の詳細は、新保正樹編「新エポキシ樹脂ハンドブックI」日刊工業新聞社に詳細に記載されている。
【0054】
隔壁2とカバー基板4とを接合している接着剤層3及び圧電素子2aと2bとを接合している接着剤層6も、この接着剤層8と同一の接着剤を用いると、製造工程の簡略化を図ることができるために好ましい。このような場合、接着剤がインクと接する可能性があるため、インクに対する耐性という観点から、一般には加熱により硬化する加熱硬化型の接着剤が好ましく用いられる。このような接着剤は、室温での硬化反応は遅いので、作業効率上、加熱硬化処理が必要となる。また、通常室温でも硬化反応が進む接着剤、例えばポリアミノアミド系硬化剤を使用したエポキシ系接着剤等においても、硬化温度を上げることで、より高いインク耐性が得られるようになる場合があり、本発明において使用することができる。
【0055】
特に、接着剤層8を構成する接着剤としては、かかる接着剤のうちから、上述した比誘電率の関係を満足する接着剤を用いるが、中でも、硬化後の引っ張り弾性率が100kgf/cm以上(980N/cm以上)であるものが、接着界面が剥がれにくく、インクジェットヘッドH1の耐久性を向上させることができるために好ましい。
【0056】
この引っ張り弾性率は室温25℃での値である。また、引っ張り弾性率はISO527の方法で測定することができる。
【0057】
更に、接着剤として、硬化後のガラス転移点が100℃以上であるものを用いることも、同様に耐久性向上の観点から好ましい。
【0058】
接着剤層8の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。接着剤層8の厚みをこの範囲とすることによって、二つの境界面A、Bの間の距離が1〜50μmに規定され、電界の漏れによる電界クロストークの影響を顕著に抑えることができる。接着剤層8の厚みは、グラビア−フレキソ印刷法等の適宜公知の方法によって接着剤を塗布形成することによって制御することができる。
【0059】
また、接着剤層8に用いられる接着剤中に、各種フィラーを混合することによって厚み制御することも好ましい。
【0060】
接着剤中に混合されるフィラーとしては、ガラス、アルミナ、シリカといった無機材料からなるものや、有機材料からなるものとがある。有機材料には、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂からなるものと、アクリルニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の熱可塑性樹脂からなるものとがある。いずれも接着剤層8の厚みに応じて、平均粒径が数百nm〜数十μmのものを適宜用いることができる。
【0061】
また、フィラーは気体を内包したバルーン状のものであることも好ましい。バルーン状とは、シェル(殻)の内部に気体を包み込んだコア/シェルタイプのマイクロカプセル状を呈するものを指し、内包される気体の性質によって膨張するタイプと膨張しないタイプとがあるが、膨張するタイプのものでは、本発明においては膨張後の状態のものをバルーン状のフィラーということとする。
【0062】
このようなフィラーには、一般にマイクロバルーンと呼ばれるものが好ましく用いられる。特に、シェルに熱可塑性高分子を使用したものが、柔軟性に富み、均一な膜厚の厚み制御を行うことができるために好ましい。中でも、シェルが塩化ビニリデン樹脂、アクリルニトリル樹脂又は塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体のいずれかからなり、加熱によって膨張することで、気体を内包したバルーン状とされる熱膨張性のものが、接着剤中での安定性に優れ、気泡の破壊が少ない点でより好ましい。内包される気体としては、熱膨張性の気体が用いられ、例えばイソブタン、イソブチレン等の低沸点(常温で気体)の炭化水素が好ましく用いられる。これらは熱可塑性高分子のシェルの内部に液体の状態で包み込まれ、加熱されることによってシェルが軟化し、液状の炭化水素が気体に変化するため、その圧力で気体を内包したバルーン状の形態とされる。
【0063】
フィラーの接着剤層8中の含有量は、1〜10重量%が適当である。
【0064】
接合基板9の材料としては、境界面Bを挟んだ接着剤層8の比誘電率と異なる比誘電率を有する材料であれば特に限定されず、例えば焼結アルミナ、石英ガラス類、焼結コーデュライト、焼結ムライト、ジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、ジルコニア強化セラミックス、正方晶ジルコニア多結晶体等を用いることができる。
【0065】
また、接合基板9には、ベース基板5を構成している圧電素子と同じ圧電素子からなる基板(第2の圧電素子基板)を用いることも好ましい。すなわち、ベース基板5がPZTからなる場合、接合基板9も同じPZTとする。これにより、ベース基板5と接合基板9との間の熱膨張率の差に起因する歪みの発生を抑えることができる。
【0066】
接合基板9に圧電素子を用いる場合は必ずしも分極処理されていなくてもよいが、分極処理された圧電素子である場合、その分極方向は、隔壁2を構成している圧電素子の分極方向と対称的に形成されていることが好ましい。この隔壁2を構成している圧電素子とは、本実施形態のように隔壁2が2つの圧電素子2a、2bからなる場合、接合基板9側に位置する圧電素子2bのことであり、ベース基板5を構成している圧電素子基板52(図2参照)のことである。これによれば、仮に接着剤の塗布ムラ等によって接着剤層8の厚みにムラがある場合でも、分極方向が反対方向となるので、接合基板9に漏れ出た電界を相殺することができ、電界クロストークの影響を抑えることができる。
【0067】
かかるインクジェットヘッドH1のヘッドチップは、いわゆるハーモニカタイプであることが好ましい。ハーモニカタイプのヘッドチップを有するインクジェットヘッドH1のインク流路1は、入口と出口が対向するように配置されると共に、入口から出口にかけて深さが均一に形成される。
【0068】
ハーモニカタイプのヘッドチップを有するインクジェットヘッドH1の場合、電界クロストークの影響によってインク吐出の不安定化を招き易いため、電界漏れを防止することはより重要となる。従って、本発明は、ヘッドチップがハーモニカタイプであると、顕著な効果が得られるために好ましい。
【0069】
ハーモニカタイプのヘッドチップは、図4に示すように、ストレート状に形成されたインク流路1と隔壁2とを並設し、各インク流路1の内面に電極7を形成すると共にその上方をカバー基板4で閉塞し、更に接着剤層8を介して接合基板9を接着した積層体100を作成し、この積層体100を、インク流路1の長さ方向と直交する方向に複数の切断線C1、C2…に沿って切断することによってヘッドチップ101を得ることができる。
【0070】
この後、図5に示すように、ヘッドチップ101の前面に、インク流路1に対応するようにノズル103が形成されたノズルプレート102を接合すると共に、後面に、ヘッドチップ101の各インク流路1内に共通にインクを供給するインク共通室を形成するためのインクマニホールド104を接合することで、インクジェットヘッドH1を製造することができる。
【0071】
図6は、別の態様に係るインクジェットヘッドH2を示している。このインクジェットヘッドH2は、インク流路1の底面1aからの距離L1が300μm以内となる位置に三つの境界面A、B及びCを形成することにより、比誘電率が変化する三つの領域を有している。このうちの境界面A、Bの構成は上述した構成と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0072】
接合基板9(第1の接合基板)の下面には更に第2の接合基板10が接合されている。この第1の接合基板9と第2の接合基板10は互いに比誘電率が異なっている。第1の接合基板9と第2の接合基板10は、接着剤を用いずに、第1の接合基板9と第2の接合基板10とを直接積層させ、加圧、焼結等の工程を経て溶融接合されている。これにより、ベース基板5の下面側には、第1の接合基板9と第2の接合基板10との間で三つ目の境界面Cが形成される。
【0073】
この溶融接合された二つの層間は、互いに溶融し合うことにより、接着剤層8の場合のような明確な境界面を形成しない場合があるが、第1の接合基板9と第2の接合基板10とは互いに比誘電率が異なるため、第1の接合基板9と第2の接合基板10との間のある領域において比誘電率は変化する。
【0074】
すなわち、本発明における境界面又は比誘電率が変化する領域は、インク流路1の底面1aから300μm以内であり、且つ、境界面又は領域を挟んで隣接する層の比誘電率が互いに異なる条件を有していれば、三つ以上あってもよく、更に、それら境界面又は比誘電率が変化する領域の形成方法は、接着剤層を介して二つの部材同士を接合するものに限らず、加圧、焼結等の工程を経て二つの部材同士を直接接合するものであってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の効果を実施例によって例証する。
【0076】
(実施例1)
分極処理された2枚のPZT基板(比誘電率=2500)を、分極方向が反対方向となるように接合した後、上側のPZT基板表面から下側のPZT基板の中途部に亘って、幅75μm、深さ300μm、ピッチ127μmとなるように128本のインク流路を平行に形成し、各インク流路内にアルミニウムを蒸着して電極とし、各インク流路の上方を塞ぐようにカバー基板(アルミナ)を接合した後、インク流路と直交する方向に切断して、ハーモニカタイプの128ノズルのヘッドチップを構成した。
【0077】
このヘッドチップの底面に、以下の通りに第1層及び第2層をそれぞれ形成し、インク流路底面側に削り残されたベース基板と第1層との間及び第1層と第2層との間で二つの境界面を形成した。
【0078】
第1層
インク流路底面からの距離a(図7参照):50μm
材質:接着剤(エポテック社製EPO−TEK353ND、引っ張り弾性率140kgf/cm(1372N/cm)、比誘電率=4)
厚さ:5μm
形成方法:塗布
【0079】
第2層
インク流路底面からの距離b(図7参照):55μm
材質:焼結アルミナ基板(比誘電率=10)
厚さ:1000μm
形成方法:第1層による接着接合
【0080】
なお、各材料の比誘電率は、双興電機製作所社製静電容量測定器CP−1000Fを用いて静電容量を測定し、そこから算出した。
【0081】
(実施例2)
第2層のインク流路底面からの距離b及び材質を以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0082】
第2層
インク流路底面からの距離b:55μm
材質:PZT基板(非分極処理)
【0083】
(実施例3)
第2層のインク流路底面からの距離b及び材質を以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0084】
第2層
インク流路底面からの距離b:55μm
材質:PZT基板(ベース基板と反対方向となるように分極処理)
【0085】
(実施例4)
第1層及び第2層のインク流路底面からの距離a、bを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0086】
第1層
インク流路底面からの距離a:5μm
第2層
インク流路底面からの距離b:10μm
【0087】
(実施例5)
第1層及び第2層のインク流路底面からの距離a、bを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0088】
第1層
インク流路底面からの距離a:10μm
第2層
インク流路底面からの距離b:15μm
【0089】
(実施例6)
第1層及び第2層のインク流路底面からの距離a、bを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0090】
第1層
インク流路底面からの距離a:100μm
第2層
インク流路底面からの距離b:105μm
【0091】
(実施例7)
第1層及び第2層のインク流路底面からの距離a、bを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0092】
第1層
インク流路底面からの距離a:150μm
第2層
インク流路底面からの距離b:155μm
【0093】
(実施例8)
第1層及び第2層のインク流路底面からの距離a、bを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0094】
第1層
インク流路底面からの距離a:290μm
第2層
インク流路底面からの距離b:295μm
【0095】
(実施例9)
第1層の材質を以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0096】
第1層
材質:接着剤(エポテック社製EPO−TEK302−3M、引っ張り弾性率90kgf/cm(882N/cm)、比誘電率=4)
【0097】
(実施例10)
第1層の厚さを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0098】
第1層
厚さ:0.5μm
【0099】
(実施例11)
第1層の厚さを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0100】
第1層
厚さ:1μm
【0101】
(実施例12)
第1層の厚さを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0102】
第1層
厚さ:10μm
【0103】
(実施例13)
第1層の厚さを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0104】
第1層
厚さ:50μm
【0105】
(実施例14)
第1層の厚さを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0106】
第1層
厚さ:60μm
【0107】
(実施例15)
ヘッドチップの底面に、以下の通りに第1層、第2層及び第3層をそれぞれ形成し、インク流路底面側に削り残されたベース基板と第1層との間、第1層と第2層との間及び第2層と第3層との間で三つの境界面を形成した以外は実施例1と同一とした。
【0108】
なお、第2層と第3層とを予め接合して積層体を形成した後、この積層体を第1層に接合した。
【0109】
第1層
インク流路底面からの距離a:50μm
材質:接着剤(エポテック社製EPO−TEK353ND、引っ張り弾性率140kgf/cm(1372N/cm)、比誘電率=4)
厚さ:5μm
形成方法:塗布
【0110】
第2層
インク流路底面からの距離b:55μm
材質:焼結アルミナ基板(比誘電率=10)
厚さ:100μm
形成方法:第1層による接着接合
【0111】
第3層
インク流路底面からの距離c(図7参照):155μm
材質:PZT基板(非分極処理)
厚さ:500μm
形成方法:第2層と溶融接合
【0112】
(実施例16)
第1層の材質及び厚さを以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0113】
第1層
材質:アクリルニトリル系のシェル型フィラー(粒径40〜70μm)を3重量%混入させることにより厚み制御した接着剤(松本油脂社製F46、比誘電率=4)
厚さ:10μm
【0114】
(実施例17)
第2層を以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0115】
第2層
インク流路底面からの距離b:55μm
材質:酸化チタン基板(比誘電率=30)
厚さ:1000μm
形成方法:第1層による接着接合
【0116】
(比較例1)
インク流路の底面側に、削り残された厚さa=500μmのPZT基板を有する以外は実施例1と同様にヘッドチップを形成した。
【0117】
ヘッドチップの底面側には何も接合せず、境界面を形成しなかった。
【0118】
(比較例2)
第1層のインク流路底面からの距離を以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0119】
第1層
インク流路底面からの距離a:400μm
【0120】
(比較例3)
インク流路の底面側に、削り残された厚さa=40μmのPZT基板を有する以外は実施例1と同様にヘッドチップを形成した。
【0121】
このヘッドチップの底面に、以下の通りに第1層を形成し、インク流路底面側に削り残されたベース基板と第1層との間で一つの境界面を形成した。
【0122】
第1層
インク流路底面からの距離a:40μm
材質:アルミナ基板(比誘電率=10)
厚さ:500μm
形成方法:溶融接合
【0123】
(比較例4)
第2層を以下の通りとした以外は実施例1と同一とした。
【0124】
第2層
材質:ポリエステル樹脂板(比誘電率=4)
厚さ:1000μm
形成方法:第1層による接着接合
【0125】
<評価方法>
実施例1〜17、比較例1〜4の各インクジェットヘッドについて、吐出速度安定性及び強度耐性の各項目について評価した。その結果を表1に示す。
【0126】
吐出速度安定性
128ノズルの平均射出速度が8m/sとなるように駆動電圧を掛け、そのときの速度ばらつきを測定し、以下の基準に基づいて評価した。
【0127】
◎:最大射出速度と最低射出速度との差が0.5m/s未満
○:最大射出速度と最低射出速度との差が0.5m/s以上、1m/s未満
△:最大射出速度と最低射出速度との差が1m/s以上、2m/s未満
×:最大射出速度と最低射出速度との差が2m/s以上
なお、△以上であれば実用上は問題ないレベルとする。
【0128】
強度耐性
ヒートサイクル試験として、60℃1時間、−20℃1時間のサイクルを20回繰り返し、その後の接合部における封止漏れ発生の有無を確認し、以下の基準に基づいて評価した。
【0129】
◎:歪(0.5%以内)なく、封止漏れも全く見られない
○:歪は1%以内だが、封止漏れは全く見られない
△:歪が1%を超える
×:封止漏れが見られる
なお、△以上であれば実用上は問題ないレベルとする。
【0130】
【表1】

【0131】
このように、インク流路の底面から300μm以内に二つ以上の境界面を有しており、その二つ以上の境界面の各々を挟んで隣接する材料の比誘電率が互いに異なる実施例1〜17(本発明)は、吐出速度の安定性に優れるのに対し、境界面を一つも持たない比較例1、二つの境界面を持つが、それらがインク流路の底面から300μm以内にない比較例2、インク流路の底面から300μm以内に一つの境界面しか持たない比較例3及びインク流路の底面から300μm以内に二つの境界面を持つが、二つの境界面の各々を挟んで隣接する材料の比誘電率が一部同じである比較例4のいずれも、本発明に比べて吐出速度の安定性に劣っており、本発明の構成により、電界クロストークの影響を激減させ、インク吐出性能の安定化を図り得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明に係るせん断モードタイプのインクジェットヘッドの一例を示す部分断面図
【図2】(a)(b)はインク流路及び隔壁の製造例を説明する図
【図3】(a)(b)はせん断モードタイプのインクジェットヘッドの駆動を説明する図
【図4】ハーモニカタイプのインクジェットヘッドの製造例を説明する図
【図5】ハーモニカタイプのインクジェットヘッドの製造例を説明する図
【図6】別の態様に係るインクジェットヘッドを示す部分断面図
【図7】インク流路底面からの距離a、b、cを説明する図
【符号の説明】
【0133】
1:インク流路
2:隔壁
2a、2b:圧電素子
3:接着剤層
4:カバー基板
5:ベース基板
6:接着剤層
7:電極
8:接着剤層
9:接合基板(第1の接合基板)
10:第2の接合基板
H1、H2:インクジェットヘッド
A、B、C:境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分極された圧電素子基板に複数の平行な溝を形成することにより、複数のインク流路と複数の隔壁とを並設し、前記隔壁の両壁面に電極を形成し、該電極に電圧を印加することにより、前記隔壁をせん断変形させて前記インク流路内の圧力を変化させ、インクを吐出させるインクジェットヘッドにおいて、
前記圧電素子基板における前記インク流路が形成されている面と反対側の面で、且つ前記インク流路の底面から300μm以内に二つ以上の境界面を有しており、
前記二つ以上の境界面の各々を挟んで隣接する層は、比誘電率が互いに異なることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記境界面の少なくとも一つが、前記インク流路の底面から100μm以内に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記二つ以上の境界面の各々を挟んで隣接する一方の層の比誘電率をE1、他方の層の比誘電率をE2とし、E1>E2であるとき、E1/E2≧100であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記二つ以上の境界面は、少なくとも一つの接着剤層の両面を含むことを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記接着剤層を構成する接着剤は硬化型接着剤であり、硬化後の引っ張り弾性率が100kgf/cm以上であることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記接着剤層を構成する接着剤は硬化型接着剤であり、硬化後のガラス転移点が100℃以上であることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記接着剤層を構成する接着剤は、フィラーを含み、厚み制御されていることを特徴とする請求項4、5又は6記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記接着剤層の厚みは、1μm〜50μmであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記圧電素子基板における前記インク流路が形成されている面と反対側の面に、前記二つ以上の境界面のうちの少なくとも二つを挟んで、前記隔壁を構成している圧電素子と同じ圧電素子からなる第2の圧電素子基板が積層されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記第2の圧電素子基板を構成する圧電素子の分極方向は、前記隔壁を構成している圧電素子の分極方向と対称的に形成されていることを特徴とする請求項9記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記インク流路は、入口と出口が対向するように配置されていると共に、前記入口から前記出口にかけて深さが均一に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記電極はめっきにより形成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
分極された圧電素子基板に複数の平行な溝を形成することにより、複数のインク流路と複数の隔壁とを並設し、前記隔壁の両壁面に電極を形成し、該電極に電圧を印加することにより、前記隔壁をせん断変形させて前記インク流路内の圧力を変化させ、インクを吐出させるインクジェットヘッドにおいて、
前記圧電素子基板における前記インク流路が形成されている面と反対側の面で、且つ前記インク流路の底面から300μm以内に、比誘電率が変化する領域を二つ以上有していることを特徴とするインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−279614(P2008−279614A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123676(P2007−123676)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】