説明

インクジェットヘッド

【課題】薄膜型駆動部を有しながらも必要なメンブレインの変位を確保できるインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】インクを収容するチャンバ102と、インクが吐出されるように、チャンバ102に結合されるノズル104と、チャンバ102のノズル104と対向する側に形成されるメンブレイン106と、メンブレイン106を変形させるためにメンブレイン106上に結合される第1駆動部110と、メンブレイン106を変形させるためにチャンバ102の一側に結合される第2駆動部120と、を備えるインクジェットヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、電気的信号を物理的な力に変換して、ノズルを介してインク液滴を吐出することにより印刷が行われる装置である。インクジェットヘッドは、チャンバ、リストリクタ、ノズル、圧電体などの多様な部品をそれぞれの層に加工し、これらを互いに接合する方式で作製可能である。
【0003】
近年、インクジェットヘッド技術は、紙や繊維に印刷する従来のグラフィックインクジェットの産業分野だけではなく、プリント基板、LCDパネルなどの電子部品製作においても用いられるなど、その適用が拡大されている。
【0004】
しかし、従来のグラフィックプリント技術に比べて、機能性インクを正確かつ精密に吐出しなければならない電子部品用インクジェットプリント技術においては、従来には要求されなかった機能が要求される。例えば、吐出液滴のサイズの微細化や速度偏差の低減などであって、そのほかにも、生産量を増加するための高密度ノズルや高周波特性を備えることが求められる。
【0005】
従来のインクジェットヘッドの駆動は、チャンバ上に接合されている厚膜型の圧電体の圧電特性を用いて行われている。厚膜型の圧電体は、その製作が容易で、また圧電特性も優れている。しかしながら、駆動電圧を低減するために圧電体を薄くすると、圧電特性が低下するだけでなく、接合工程及びダイシング工程も困難になるため、厚膜型の圧電体を薄くするには限界がある。
【0006】
一方、薄膜型の圧電体を用いると、薄型の駆動部が実現でき、ダイシング工程なしに蒸着及びパターニングから所望する構造を作製できるが、厚膜型の圧電体に比べて、圧電特性が非常に低いため、実際にインクジェット吐出のための駆動部に応用するには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明は、薄膜型駆動部を有するインクジェットヘッドを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、インクを収容するチャンバと、インクが吐出されるように、チャンバに結合されるノズルと、チャンバのノズルと対向する側に形成されるメンブレインと、メンブレインを変形させるためにメンブレイン上に結合される第1駆動部と、メンブレインを変形させるためにチャンバの一側に結合される第2駆動部と、を含むインクジェットヘッドが提供される。
【0009】
第2駆動部は、チャンバの両側に結合されてもよく、チャンバの側面を囲んでもよい。第1駆動部は、圧電体を含んで構成されることができ、第1駆動部の圧電体は両側に伸縮できる。また、第2駆動部は、圧電体を含んで構成されることができ、第2駆動部の圧電体は両側に伸縮でき、第2駆動部は圧電体の両側に伸縮できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、薄膜型駆動部を有しながら、必要なメンブレインの変位を確保することができる。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴を全て列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッドを示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッドを示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッドの動作を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッドの動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施形態を有することができるため、本願では特定の実施形態のみを図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物及び代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0014】
以下、本発明によるインクジェットヘッドの実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。添付図面を参照して説明するにあたって、同一または対応する構成要素は同一の図面番号を付し、これに対する重複説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド100を示す断面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド100は、インクを収容するチャンバ102と、インクが吐出されるように、チャンバ102に結合されるノズル104と、チャンバ102のノズル104と対向する側に形成されるメンブレイン106と、メンブレイン106を変形させるためにメンブレイン106上に結合される第1駆動部110と、メンブレイン106を変形させるためにチャンバ102の一側に結合される第2駆動部120と、を備えることにより、薄膜型駆動部を有しながら、必要なメンブレイン106の変位を確保することができる。
【0016】
チャンバ102は、インクジェットヘッド100の内部に形成され、インクを収容する空間を提供することができる。チャンバ102の上側は全体的に直方体の形状を有し、チャンバ102の下側はノズル104に向かって断面積が次第に減少する形状を有する。ノズル104は、インクが吐出されるようにチャンバ102に結合される。ノズル104は、チャンバ102の下側の断面積が次第に減少する部分に形成され、チャンバ102のインクが外部へ吐出されるように通路を提供する。
【0017】
メンブレイン106は、チャンバ102のノズル104と対向する側に形成される。メンブレイン106は薄膜の形態を有し、チャンバ102の上側をカバーする。メンブレイン106は、第1駆動部110で発生した振動をチャンバ102内のインクに伝達してインクが吐出されるようにすることができる。
【0018】
第1駆動部110は、メンブレイン106が変形されるようにメンブレイン106の上部で結合される。第1駆動部110は、メンブレイン106の上部で結合される下部電極114、下部電極114の上部で結合される圧電体112、圧電体112の上部で結合される上部電極116を含んで構成されることができる。
【0019】
チャンバ102が形成されるインクジェットヘッド100の本体は、複数のシリコンウェハを積層することにより形成でき、下部電極114はシリコンウェハ上に白金(Pt)とチタニウム(Ti)を蒸着して形成される。
【0020】
圧電体112は、下部電極114の上部に圧電材料を蒸着して薄膜型で形成することができる。蒸着して形成された薄膜型の圧電体112は、厚膜型の圧電体に比べて相対的に低い駆動電圧でも動作できるので、インクジェットヘッド100の駆動電圧を低減することができる。結果的に、薄膜型の圧電体112を用いることにより、インクジェットヘッド100の電気的特性を改善することができる。
【0021】
上部電極116は、圧電体112の上部に白金(Pt)を蒸着することにより形成できる。上部電極116及び下部電極114は、圧電体112を動作させるために電気的に接続される。上部電極116及び下部電極114により圧電体112に電圧が印加されると、圧電体112はその両側に伸長するように分極される。正方形の薄膜形態を有する本実施形態による圧電体112は、圧電体112に電圧が印加されると、正方形の面積が増加して上下左右の4方向に伸長される。圧電体112に電圧が印加されないと、圧電体112はもとの形態に戻り収縮することができる。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド100を示す平面図である。図1、図2に示すように、第2駆動部120はメンブレイン106を変形させるためにチャンバ102の側面を囲んで設けられてもよい。
【0023】
第2駆動部120はチャンバ102の側壁101に隣接して形成され、チャンバ102の側壁101を囲んでいる。第2駆動部120の下部電極124は、第1駆動部110の下部電極114と同じく、チャンバ102が形成されるインクジェットヘッド100のシリコンウェハ上に白金(Pt)とチタニウム(Ti)を蒸着して形成することができる。
【0024】
第2駆動部120の圧電体122は、下部電極124の上部に圧電材料を蒸着して薄膜型に形成される。蒸着して形成された薄膜型の圧電体122は、厚膜型の圧電体に比べて低い駆動電圧でも動作できるので、インクジェットヘッド100の駆動電圧を低減することができる。第2駆動部120の圧電体122の上部に白金(Pt)を蒸着して第2駆動部120の上部電極126を形成することができる。
【0025】
第2駆動部120に駆動電圧が印加されると、第2駆動部120の圧電体122は両側に伸長する。第2駆動部120はチャンバ102の側壁101に沿って環状に形成されるため、第2駆動部120の圧電体122は環状の内外側に伸長することができる。結果的に、第2駆動部120はチャンバ102の側壁101をチャンバ102の内側に向かって押すかたちとなり、第1駆動部110の動作によりメンブレイン106が上側に変形するのを補助する。
【0026】
図3および図4は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド100の動作を示す断面図である。図3に示すように、第1駆動部110と第2駆動部120に電圧が印加されると、第1駆動部110及び第2駆動部120の圧電体112,122はそれぞれ両側に伸長する。チャンバ102の上部にあるメンブレイン106は、チャンバ102の上側に向かって凸状に変形し、チャンバ102の側壁101はチャンバ102の内側に収縮されてメンブレイン106が上側に向かって凸状に変形することを補助する。結果として、チャンバ102内部の容積は増加する。
【0027】
次に、図4に示すように、第1駆動部110及び第2駆動部120に電圧が印加されない場合、第1駆動部110及び第2駆動部120はもとの形状に戻り、メンブレイン106及びチャンバ102の側壁101ももとの形状に戻ることになる。したがって、チャンバ102内部の容積は減少し、インク10がノズル104からインクジェットヘッド100の外部に吐出される。
【0028】
上述したように、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド100は、薄膜型圧電体112,122を用いて第1駆動部110及び第2駆動部120を実現することにより、インクジェットヘッド100にかかる駆動電圧が低減され、インクジェットヘッド100の電気的特性を改善できる。さらに、インクジェットヘッド100は、チャンバ102の側面に形成された第2駆動部120を備えることにより、メンブレイン106の変位を十分に確保することができる。
【0029】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者にとって明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0030】
100 インクジェットヘッド
101 側壁
102 チャンバ
104 ノズル
106 メンブレイン
110 第1駆動部
120 第2駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するチャンバと、
前記インクが吐出されるように、前記チャンバに結合されるノズルと、
前記チャンバの前記ノズルと対向する側に形成されるメンブレインと、
前記メンブレインを変形させるために前記メンブレインの上部に結合される第1駆動部と、
前記メンブレインを変形させるために前記チャンバの一側に結合される第2駆動部と、を備えることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記第2駆動部が、前記チャンバの両側に結合されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記第2駆動部が、前記チャンバの側面を囲むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記第1駆動部が、圧電体を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記第1駆動部の圧電体が両側に伸縮することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記第2駆動部が、圧電体を含むことを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記第2駆動部の圧電体が、両側に伸縮することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記第2駆動部が、前記圧電体の両側に伸縮することを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195031(P2010−195031A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171148(P2009−171148)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】