インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の製造方法、流路形成基板およびインクジェット式記録ヘッド
【課題】インクジェット式記録ヘッドの高密度化のための、ノズル連通孔の開口部を小さくできるエッチング方法が望まれていた。
【解決手段】シリコン単結晶基板にエッチングによりノズル連通孔とリザーバとインク供給口とを備える流路形成基板の製造方法であって、前記ノズル連通孔の形成領域内の前記ノズル連通孔の連通方向に、レーザー照射により前記シリコン単結晶基板の改質部を連続的に積層する改質相形成工程と、前記ノズル連通孔の形成範囲及び前記リザーバの形成範囲をエッチングにより穿孔する第1エッチング工程と、前記インク供給口の形成範囲をエッチングにより前記インク供給口を形成する第2エッチング工程とを含む流路形成基板の製造方法。
【解決手段】シリコン単結晶基板にエッチングによりノズル連通孔とリザーバとインク供給口とを備える流路形成基板の製造方法であって、前記ノズル連通孔の形成領域内の前記ノズル連通孔の連通方向に、レーザー照射により前記シリコン単結晶基板の改質部を連続的に積層する改質相形成工程と、前記ノズル連通孔の形成範囲及び前記リザーバの形成範囲をエッチングにより穿孔する第1エッチング工程と、前記インク供給口の形成範囲をエッチングにより前記インク供給口を形成する第2エッチング工程とを含む流路形成基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の製造方法、流路形成基板およびインクジェット式記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録ヘッドは、外部のインクタンクからリザーバにインクの供給を受け、圧力発生装置を備える圧力発生室の膨張によりリザーバから吸引されたインクを、圧力発生室を収縮させて、ノズル連通孔を経てインクをノズル開口よりインク滴として吐出させるように構成されている。
【0003】
このインクジェット式記録ヘッドは、吐出するインク滴のインク量を少なくしドットサイズを小さく、なおかつ記録密度を高めるために、シリコン単結晶基板をフォトリソグラフィーと異方性エッチングにより、圧力発生室を小さく、且つ高密度に配列する流路形成基板の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、シリコン単結晶基板の結晶軸に対するエッチングレートの差によって、上述の方法でもノズル連通孔の開口部が大きくなってしまい、高密度化に限界があった。このような問題を解決するために、ノズル連通孔の開口領域に予め微小な貫通孔を穿孔し、この貫通孔をエッチング誘導孔としてノズル連通孔開口を小さくすることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この方法によるノズル連通孔形成にあっては、加工するシリコン単結晶基板が硬くて脆い素材であることから、貫通孔の加工は時間を掛けて行う必要があり、生産性の低い方法であった。そこで、エッチング誘導孔を貫通孔ではなく非貫通孔として貫通孔形成作業を簡素化する方法が提案されていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−40509号公報
【特許文献2】特開平5−309835号公報
【特許文献3】特開平10−166600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術であっても、エッチング誘導孔(貫通孔もしくは非貫通孔)形成がレーザーによる孔明け加工のために、ノズル連通孔の開口部はレーザー照射領域を加味したエッチング領域をエッチング保護膜に形成した。そのために、エッチング領域、すなわちノズル連通孔開口部が小さくできるエッチング誘導部の形成方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現される。
【0009】
〔適用例1〕本適用例の流路形成基板の製造方法は、シリコン単結晶基板にエッチングによりノズル連通孔、リザーバ、インク供給口とを備える流路形成基板の製造方法であって、前記ノズル連通孔の形成領域内の前記ノズル連通孔の連通方向に、レーザー照射により前記シリコン単結晶基板の改質部を連続的に積層する改質部形成工程と、前記ノズル連通孔の形成範囲及び前記リザーバの形成範囲をエッチングにより穿孔する第1エッチング工程と、前記インク供給口の形成範囲をエッチングにより前記インク供給口を形成する第2エッチング工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
この適用例によれば、ノズル連通孔の穿孔のエッチング工程の前にレーザー照射によって、ノズル連通孔の連通方向にシリコンの改質部が形成される。この改質部は、シリコン単結晶が持つエッチングの異方性を持っていない。この改質部を、連通孔形成範囲のシリコン単結晶基板の厚さ方向、すなわち連通孔の連通方向に連続して形成することで、連通孔エッチング工程において、改質部が先にエッチングされ、微小径の貫通孔が形成される。形成された微小径の貫通孔は、連通孔のエッチング誘導孔として貫通孔の中にエッチング液が導入さる。このことにより、貫通孔(エッチング誘導孔)内周面の全域に対してエッチングが開始され、小径のノズル連通孔を形成することができる。
【0011】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記改質部形成工程において、前記レーザー照射は前記シリコン単結晶基板表面からの深さDから前記改質部が形成され、
前記深さDは、
0≦D≦0.7W
但し
W:ノズル連通孔開口部最小径
であることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、レーザー照射の焦点(集光部)位置がシリコン単結晶基板の表面に設定されないため、シリコン単結晶基板表面に施された連通孔形成用のエッチングマスク(酸化膜パターン)を損なうことがない。さらに、シリコン単結晶基板の内部に改質を形成するだけのエネルギー量のレーザー照射であることから、エッチングマスクにおける連通孔形成部の開口部は、最小形状で形成することができる。
【0013】
〔適用例3〕上述の適用例において、酸化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成するエッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程前であることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、エッチング保護膜が透明な酸化ケイ素であることで、エッチング保護膜を透過してレーザー照射が可能となる。しかも、改質部形成工程におけるレーザー照射がシリコン単結晶基板の表面より内部に焦点が設定されているため、レーザー照射によるエッチング保護膜へのダメージも発生しない。また、酸化ケイ素膜の形成を上述の適用例における製造工程の初期段階で行われるため、取扱時におけるシリコン単結晶基板表面への傷付き防止膜としての効果も有する。
【0015】
〔適用例4〕上述の適用例において、窒化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成する前記エッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程と前記第1エッチング工程の間であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、エッチング保護膜として優れた特性を有する窒化ケイ素を適用しても、開口部の小さなノズル連通孔が形成できる。
【0016】
〔適用例5〕上述の適用例に記載の製造方法により製造された流路形成基板。
【0017】
〔適用例6〕上述の流路形成基板を用いたインクジェット式記録ヘッド。
【0018】
上述の適用例によれば、吐出される液滴の粒径をさらに小さくする流路形成基板を実現することができる。この流路形成基板を用いたインクジェット式記録ヘッドを使ったインクジェット式記録装置により高密度、高精細の印刷物を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態における流路ユニットの概略断面図。
【図2】実施形態における流路ユニットの流路形成基板の概略横断面を示す平面図。
【図3】実施形態における流路形成基板の概略斜視図。
【図4】第1実施形態における流路形成基板の製造フローチャート。
【図5】第1実施形態における流路形成基板の製造方法を示す概略断面図。
【図6】第1実施形態における流路形成基板の製造方法を示す概略断面図。
【図7】第1実施形態における改質部形成部を説明する模式図。
【図8】第2実施形態における流路形成基板の製造フローチャート。
【図9】第2実施形態における流路形成基板の製造方法を示す概略断面図。
【図10】第3実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの構成を示す概略断面図。
【図11】第3実施形態におけるノズルプレートを模式的示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
流路形成基板の製造方法の一実施形態について、以下に説明する。図1にインクジェット式記録ヘッドの流路ユニットの概略断面図を示す。流路ユニット100は、流路形成基板10と、流路形成基板10の一方の面を封止する弾性板20と、流路形成基板10の他方の面を封止するノズル開口31を備えたノズルプレート30とから構成されている。流路形成基板10は、外部のタンクからインクの供給を受けるリザーバ11、外部からの加圧力を受ける圧力発生室12、リザーバ11と圧力発生室12とを接続するインク供給口13、圧力発生室12とノズルプレート30のノズル開口31とを接続するノズル連通孔14とを備える。
【0022】
流路ユニット100の弾性板20に圧電振動子40を当接させ、圧電振動子40が変位(振動)することにより、弾性板20が変位し、圧力発生室12の容積を膨張させてリザーバ11のインクをインク供給口13を経由して圧力発生室12に吸引し、圧力発生室12の容積を収縮させて圧力発生室12のインクを加圧してノズルプレート30のノズル開口31からインク滴として吐出するように構成している。
【0023】
図2は、図1における流路形成基板10のA−A’断面の概略平面を示す。図2に示すように、流路形成基板10は一つのリザーバ11に複数の圧力発生室12とインク供給口13とノズル連通孔14とを備え、それぞれのノズル連通孔14にはノズルプレート30のノズル開口31が対応している。さらに、流路形成基板10の構成を分り易くするため、図3に流路形成基板10の斜視図を示す。
【0024】
次に流路形成基板10の製造方法について説明する。流路形成基板10は、材料にシリコン単結晶基板を使用し、図4に示すフローチャートにより形成される。
〔保護膜形成工程〕
保護膜形成工程(S101)は、図5(a)に示すようにシリコン単結晶基板50(以下、基板50という)の表面全体に酸化ケイ素膜を熱酸化法により成膜し、エッチング保護膜60として形成する。エッチング保護膜60の膜厚としては、約1μm程度が好ましい。
【0025】
〔第1エッチングパターン形成工程〕
上記のエッチング保護膜60をフォトリソグラフィーにより、後述する第1エッチングのためのマスク形状に形成する第1エッチングパターン形成工程(S102)に移行する。図5(b)に示すように、この第1エッチングパターン形成工程(S102)では、保護膜形成工程(S101)で成膜されたエッチング保護膜60にレジスト剤をスピンコートなどの方法により塗布し、リザーバ11及びノズル連通孔14の形成範囲に相当する範囲のレジスト剤を露光し、露光部のレジスト剤を除去する。次に緩衝フッ酸溶液に浸漬し、エッチング保護膜60が除去されたリザーバ形成用開口部61及びノズル連通孔形成用開口部62を備える、基板50をエッチングする第1エッチングマスク63を形成する。
【0026】
なお、この第1エッチングパターン形成工程(S102)において、図示しないが、インク供給口13及び圧力発生室12が形成される範囲は、エッチング保護膜60をハーフエッチングしたハーフエッチング部64を形成しておく。
【0027】
〔改質部形成工程〕
次に、改質部形成工程(S103)に移行する。改質部形成工程(S103)では、図5(c)に示すように、上述の第1エッチングマスク63を備える基板50に対して、レーザー70をノズル連通孔形成用開口部62のいずれか一方の面側、もしくは両側から照射する。この時、レーザー70の焦点71部分には、シリコン単結晶の改質部51が形成される。改質部51はレーザー70の照射方向に縦長となる略紡錘形に形成され、レーザー70の焦点71を照射方向に移動させることで、改質部51を基板50の内部に積層させる。
【0028】
照射するレーザー70は、基板50の材料である単結晶シリコン内部を透過する波長域である、1000〜1200nmの波長とすることが好ましい。1000nmより短い波長のレーザーでは単結晶シリコン内の透過率は急激に悪くなり、また1200nmを超える波長のレーザーでは完全に透過してしまい、焦点71での改質部51の形成ができない。またレーザーとしては特に限定されず、YAGレーザー、YLFレーザー、YVO4レーザーなどが使用できる。
【0029】
本実施形態の基板50は、図示しないが一般的に多数個の流路形成基板10が形成できるウエハー基板の形態となっている。このウエハー状の基板50に対して改質部形成工程(S103)では、次のようにレーザー70を照射している。例えば、基板50の一方の面側だけからのレーザー70の照射をする場合、最初にレーザー照射側の反対面側に最も近い改質部51を、ウエハー状の基板50に形成される全ての流路形成基板10のノズル連通孔14の形成位置相当部位に形成するように焦点71を合わせてレーザー70を照射する。
【0030】
次に、上記で形成された改質部51のレーザー70の照射側の直近の改質部51を、ウエハー状の基板50に形成される全ての流路形成基板10のノズル連通孔14の形成位置相当部位に形成するように焦点71を合わせてレーザー70を照射する。これを所定回数繰り返すことにより、レーザー70の照射側面に最も近い改質部51まで形成する。これにより、改質部51が積層された基板50を高い生産性で形成することができる。
【0031】
なお、改質部51の形成方法は上記に限定されるものではなく、例えばウエハー状の基板50に形成されるノズル連通孔14の形成位置において、個々のノズル連通孔14に相当する部位に改質部51を積層し、これを繰り返して改質部51が積層された基板50を複数含むウエハーを形成しても良い。
【0032】
改質部形成工程(S103)における改質部51の形成は、貫通孔であるノズル連通孔14を後述のエッチングにより形成する際、先にエッチングされる貫通孔として形成される。すなわち改質部51は、シリコン単結晶の基板50の結晶性が崩れ、エッチング異方性がなくエッチングレートの高い部位となっているためである。この改質部51から形成される貫通孔がパイロット孔となって、ノズル連通孔14の形成のためのエッチングが行われる。
【0033】
図5(c)のノズル連通孔形成用開口部62近傍であるA部の詳細を図7に示す。図7に示すように、改質部51の形成は基板50の表面から深さD位置から形成されることが好ましい。
0≦D≦0.7W
W:ノズル連通孔開口部最小径
すなわち、最も基板50の表面に近い改質部51を形成するレーザー70の焦点71の位置が、基板50の表面より基板50の内部側になるように設定される。
【0034】
開口幅Wと深さDにより定義される角錐部Mは、後述の第1エッチング工程(S104)において、エッチングにより最初に食刻される領域であり、シリコン単結晶の結晶面(111)52が露出し、食刻が止まってしまう。このエッチング可能範囲の角錐部Mの範囲、すなわち「0≦D≦0.7W」に改質部51を形成することが好ましい。また、最も基板50の表面に近い改質部51を形成するレーザー70の焦点71の位置が、基板50の表面より基板50の内部側、すなわち基板50の表面部にレーザー70の焦点71が当たらないことで、表面加工時に発生する飛散物がなくなりレーザー装置の対物レンズ表面に被加工物が付着しない。したがって該レンズの表面損傷、透過率低下を防ぐことができ、好ましい。
【0035】
〔第1エッチング工程〕
次に第1エッチング工程(S104)に移行する。第1エッチング工程(S104)では、貫通孔であるリザーバ11とノズル連通孔14をエッチングにより形成する。エッチング液には20質量%KOHの水溶液を使用し、このKOH水溶液を80°Cに加熱して、第1エッチングマスク63を備える基板50を約2時間浸漬させ、貫通孔が形成される。
【0036】
第1エッチング工程(S104)は、図5(d)に示す模式図のように、はじめは改質部形成工程(S103)により形成された改質部51と、リザーバ形成用開口部61とがエッチングされる。この時、改質部51の形成部分のエッチングレートが高いため、貫通孔14aが形成される。改質部15は断面径で約1μm程度ときわめて細く形成されるため、改質部15をエッチングし形成される貫通孔14aもきわめて細い貫通孔が可能となる。また、リザーバ形成用開口部61からのエッチングはシリコン単結晶の基板50を結晶面に沿ってエッチングされる。さらにエッチングを進行させ、図5(e)に示すように、貫通孔としてリザーバ11とノズル連通孔14が形成される。
【0037】
〔第2エッチングパターン形成工程〕
次に第2エッチングパターン形成工程(S105)に移行する。この第2エッチングパターン形成工程(S105)では、第1エッチングパターン形成工程(S102)において図5(b)に示すハーフエッチング部64をフォトリソグラフィーにより除去し、図6(a)に示す第2エッチングマスク65を形成する。
【0038】
〔第2エッチング工程〕
次に第2エッチング工程(S106)に移行する。エッチング液は第1エッチング工程(S104)と同じエッチング液を用い、浸漬時間を短くして図6(b)に示す圧力発生室12を形成する凹部16とインク供給口13を形成する凹部17とを形成する。
【0039】
〔保護膜除去工程〕
最後に保護膜除去工程(S107)において、第2エッチングマスク65を除去し、流路形成基板10が形成される。
【0040】
本実施形態におけるノズル連通孔14の形成において、予めレーザー照射により改質部15を基板50の内部に形成したことにより、エッチングレートが高く、且つ断面径が約1μmときわめて小径の改質部15から先にエッチングが進行し、ノズル連通孔14を形成する。従って、改質部15から形成されたエッチングのパイロット孔も微小径の貫通孔となり、開口面積の小さいノズル連通孔14の形成を容易に形成することができる。
【0041】
さらに、改質部15を形成するレーザーは長波長で、しかも低出力であっても改質部15を形成できることから、従来のレーザーによる貫通孔(エッチングパイロット孔)加工における短波長、高出力レーザーに比較して、基板50に対する損傷の虞も無い。
【0042】
また、従来のレーザーによる貫通孔形成では、基板50の表面からレーザー加工が開始され、しかも貫通孔とするために、その開口部では30〜40μmの孔となってしまう。このため、ノズル連通孔形成用開口部62はレーザー照射による損傷を回避するために更に大きな開口面積で形成しなければならず、ノズル連通孔14の開口部は少なくとも30μmを下回ることができなかった。これに対して、上述の通り約1ミクロンの断面径で改質部15から貫通孔のエッチングパイロット孔を形成する本実施形態では、数μmの開口部の大きさでノズル連通孔14の形成が可能である。しかし、実用上の観点で、従来技術に対しては70%以上のダウンサイズする10μ程度の開口部をもつノズル連通孔が好ましい。
【0043】
(第2実施形態)
次に、流路形成基板10の他の製造方法について説明する。本実施形態ではエッチング保護膜として窒化ケイ素膜を形成し、流路形成基板10が製造される。図8に本実施形態のフローチャートを示す。
【0044】
(改質部形成工程)
本実施形態では、後述するようにエッチング保護膜として窒化ケイ素膜を形成、流路形成基板10を製造する。また、本実施形態では最初にレーザー照射による改質部形成工程(S201)が行われる。
【0045】
図9(a)に示すように、基板50(シリコン単結晶基板)にノズル連通孔14形成位置にレーザー70を照射し、改質部51を形成する。改質部形成のための条件、方法は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0046】
(保護膜形成工程)
保護膜形成工程(S202)では、図9(b)に示すように、改質部51が形成された基板50の表面全体にエッチング保護膜80が形成される。このエッチング保護膜80は窒化ケイ素膜であり、熱酸化法により基板50の全体に被覆される。
【0047】
(第1エッチングパターン形成工程)
第1エッチングパターン形成工程(S203)は、第1実施形態同様の方法により、図9(c)に示すように、エッチング保護膜80をフォトリソグラフィーによりリザーバ形成用開口部81とノズル連通孔形成用開口部82とハーフエッチング部84とを備えるマスク83を形成する。
【0048】
以降、第1エッチング工程(S204)、第2エッチングパターン形成工程(S205)、第2エッチング工程(S206)、保護膜除去工程(S207)は第1実施例と同じであり説明は省略する。
【0049】
本実施例に示すように、エッチング保護膜80を窒化ケイ素膜とすることにより、エッチング液に対する耐性が向上し、微小なノズル連通孔形成用開口部82となるエッチング保護膜80の端部の侵食を最小限に留めることができ、ノズル連通孔形成用開口部82の形状を忠実にノズル連通孔14の開口形状に実現することができる。また、これにより隣合うリザーバ11、圧力発生室12、インク供給口13、ノズル連通孔14のそれぞれの間の壁が薄くなり過ぎることを防止することもできる。
【0050】
(第3実施形態)
上述の実施形態により得られる流路形成基板10を用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図10はインクジェット式記録ヘッドの主要部断面を示す。インクジェット式記録ヘッド1000(以下、記録ヘッド1000という)は、ケース200、流路ユニット100、及びアクチュエーターユニット300等を主な構成としている。流路ユニット100には、上述の実施形態の製造方法によって得られた流路形成基板を用いている。ケース200は合成樹脂性の中空箱状部材であり、先端部には流路ユニット100を接合し、内部に形成された収容空間部201内にはアクチュエーターユニット300を収容している。また、流路ユニット100の接合部とは反対側の基端面には、印刷装置本体側からの駆動信号をアクチュエーターユニット300に供給するための回路基板(図示せず)を取り付けている。
【0051】
アクチュエーターユニット300は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子301と、圧電振動子301を固定する固定板302と、回路基板からの駆動信号を圧電振動子301に供給するためのTCP(テープキャリアパッケージ)等の配線部材303とを含む構成となっている。各圧電振動子301は、固定板302に接合固定される固定端部と固定板302の端部から突出している自由端部を有する、いわゆる片持ち梁の状態で固定板302に取り付けられている。このアクチュエーターユニット300は、固定板302の圧電振動子301の固定面とは反対の面を、収容空間部201を区画するケース200の内壁面202に接着固定され、ケース200内に収納されている。
【0052】
流路ユニット100は、弾性板20、流路形成基板10、及びノズルプレート30を積層、接着し一体化され、リザーバ11からインク供給口13及び圧力発生室12を通りノズル連通孔14よりノズル開口31に至る、一連のインク流路を形成する部材である。圧力発生室12は、ノズル開口31の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、リザーバ11は、インクカートリッジ等のインク供給源からインクが導入される室である。リザーバ11に導入されたインクは、インク供給口13を通じて各圧力発生室12に分配供給される。
【0053】
ノズルプレート30は、図11に示すように、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口31を、記録紙等の記録媒体の送り方向に対して列状に金属プレートに備えたものである。各ノズル列はインク種別に対応し、図11に示すノズルプレート30では、例えば8種類のインクを吐出可能となる構成である。
【0054】
インクジェット式印刷装置における解像度は、ドット形成密度いわゆる「dpi(Dots Per Inchi)」で表示される。これは1インチ当たり何個のインクドット(液滴)が記録媒体に載せることができるか、を示すものである。図11に示すノズル開口31の配列で示すと、ノズル開口31の配置ピッチPの逆数となる。解像度を上げるためにはピッチPをより小さくする必要がある。このピッチPを決定している一要素として、ノズル連通孔14の開口部の大きさにある。
【0055】
第1実施形態及び第2実施形態で得られる、流路形成基板10はノズル連通孔14を従来よりも小さい開口面積で実現するものであり、実用領域であっても従来技術に対して70%ものダウンサイズが可能となっている。したがって、この流路形成基板10に対応してノズルプレート30のノズル開口31は従来ピッチPが35μm程度であったが、本実施形態ではピッチPは20μmまで小さくすることが可能となった。
【0056】
上述の通り、本実施形態の記録ヘッド1000を使ったインクジェット式記録装置では、従来技術に対して解像度を約75%以上向上させることができ、より高画質印刷を可能とするものである。
【実施例】
【0057】
(実施例)
厚さ220μmのシリコン単結晶ウエハー表面に、酸化ケイ素膜を2μm被膜した。フォトリソグラフィーにより酸化ケイ素膜に、リザーバとノズル連通孔とを形成するための開口部と、圧力発生室とインク供給口とを形成するためのハーフエッチング部とを形成し、第1エッチング用マスクを形成した。この時、ノズル連通孔形成のマスク開口は1辺が7μm、ピッチを20μmとした。
【0058】
次に、YAGレーザー(波長:1064nm)を出力エネルギー:3μJで、ノズル連通孔形成部位に、ウエハーの一方の面より他方の面に向けてレーザーの焦点を1mm/秒の移動速度で移動、照射し、ウエハーの厚さ方向に連続する改質部を形成した。レーザー照射に際しては、最初の照射のレーザー焦点と最後のレーザー照射は、ウエハー表面から4μmの深さになるように調整した。
【0059】
改質部が形成されたウエハーを、80°Cに加熱した19.7質量%のKOH溶液中に2時間浸漬し、リザーバとノズル連通孔の形成部をエッチングし、貫通孔に形成した。
【0060】
次に、第1エッチング用マスクを更にフォトリソグラフィーにより、ハーフエッチング部の酸化ケイ素膜を除去し、80°Cに加熱したKOH(19.7質量%)の水溶液中に2時間浸漬し、インク供給口と圧力発生口とになる凹部を形成し、流路形成基板を得た。
【0061】
得られた流路形成基板は、ノズル連通孔開口の1辺が11μm、ピッチが20μmであった。また、隣り合うノズル連通孔の隔壁は5.1μmで形成できた。
【0062】
(比較例)
厚さ220μmのシリコン単結晶ウエハー表面に、酸化ケイ素膜を2μm被膜した。フォトリソグラフィーにより酸化ケイ素膜に、リザーバ、ノズル連通孔の形成のための開口部と、圧力発生室、インク供給口の形成のためのハーフエッチング部を形成し、第1エッチング用マスクを形成した。この時、ノズル連通孔形成のマスク開口は1辺が90μm、ピッチを141μmとした。
【0063】
次に、YAGレーザー(波長:532nm)を出力エネルギー:130μJで、ノズル連通孔形成部位に、ウエハーの一方の面より照射し、貫通孔を形成した。貫通孔が形成されたウエハーを、80°Cに加熱した19.7質量%のKOH溶液中に2時間浸漬し、リザーバとノズル連通孔の形成部をエッチングし、貫通孔に形成した。
【0064】
次に、第1エッチング用マスクを更にフォトリソグラフィーにより、ハーフエッチング部の酸化ケイ素膜を除去し、80°Cに加熱したKOH(19.7質量%)の水溶液中に2時間浸漬し、インク供給口と圧力発生口とになる凹部を形成し、流路形成基板を得た。
【0065】
得られた流路形成基板は、ノズル連通孔開口の1辺が27.8μm、ピッチが30μmであった。また、隣り合うノズル連通孔の隔壁は7.5μmで形成できた。
【0066】
(結果)
実施例は比較例に対して、ノズル連通孔の1辺の長さは約40%まで短くすることができた。また、ピッチは約67%まで縮めることができた。
【符号の説明】
【0067】
10…流路形成基板、11…リザーバ、12…圧力発生室、13…インク供給口、14…ノズル連通孔、20…弾性板、30…ノズルプレート、31…ノズル開口、40…圧電振動子、100…流路ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の製造方法、流路形成基板およびインクジェット式記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録ヘッドは、外部のインクタンクからリザーバにインクの供給を受け、圧力発生装置を備える圧力発生室の膨張によりリザーバから吸引されたインクを、圧力発生室を収縮させて、ノズル連通孔を経てインクをノズル開口よりインク滴として吐出させるように構成されている。
【0003】
このインクジェット式記録ヘッドは、吐出するインク滴のインク量を少なくしドットサイズを小さく、なおかつ記録密度を高めるために、シリコン単結晶基板をフォトリソグラフィーと異方性エッチングにより、圧力発生室を小さく、且つ高密度に配列する流路形成基板の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、シリコン単結晶基板の結晶軸に対するエッチングレートの差によって、上述の方法でもノズル連通孔の開口部が大きくなってしまい、高密度化に限界があった。このような問題を解決するために、ノズル連通孔の開口領域に予め微小な貫通孔を穿孔し、この貫通孔をエッチング誘導孔としてノズル連通孔開口を小さくすることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この方法によるノズル連通孔形成にあっては、加工するシリコン単結晶基板が硬くて脆い素材であることから、貫通孔の加工は時間を掛けて行う必要があり、生産性の低い方法であった。そこで、エッチング誘導孔を貫通孔ではなく非貫通孔として貫通孔形成作業を簡素化する方法が提案されていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−40509号公報
【特許文献2】特開平5−309835号公報
【特許文献3】特開平10−166600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術であっても、エッチング誘導孔(貫通孔もしくは非貫通孔)形成がレーザーによる孔明け加工のために、ノズル連通孔の開口部はレーザー照射領域を加味したエッチング領域をエッチング保護膜に形成した。そのために、エッチング領域、すなわちノズル連通孔開口部が小さくできるエッチング誘導部の形成方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現される。
【0009】
〔適用例1〕本適用例の流路形成基板の製造方法は、シリコン単結晶基板にエッチングによりノズル連通孔、リザーバ、インク供給口とを備える流路形成基板の製造方法であって、前記ノズル連通孔の形成領域内の前記ノズル連通孔の連通方向に、レーザー照射により前記シリコン単結晶基板の改質部を連続的に積層する改質部形成工程と、前記ノズル連通孔の形成範囲及び前記リザーバの形成範囲をエッチングにより穿孔する第1エッチング工程と、前記インク供給口の形成範囲をエッチングにより前記インク供給口を形成する第2エッチング工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
この適用例によれば、ノズル連通孔の穿孔のエッチング工程の前にレーザー照射によって、ノズル連通孔の連通方向にシリコンの改質部が形成される。この改質部は、シリコン単結晶が持つエッチングの異方性を持っていない。この改質部を、連通孔形成範囲のシリコン単結晶基板の厚さ方向、すなわち連通孔の連通方向に連続して形成することで、連通孔エッチング工程において、改質部が先にエッチングされ、微小径の貫通孔が形成される。形成された微小径の貫通孔は、連通孔のエッチング誘導孔として貫通孔の中にエッチング液が導入さる。このことにより、貫通孔(エッチング誘導孔)内周面の全域に対してエッチングが開始され、小径のノズル連通孔を形成することができる。
【0011】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記改質部形成工程において、前記レーザー照射は前記シリコン単結晶基板表面からの深さDから前記改質部が形成され、
前記深さDは、
0≦D≦0.7W
但し
W:ノズル連通孔開口部最小径
であることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、レーザー照射の焦点(集光部)位置がシリコン単結晶基板の表面に設定されないため、シリコン単結晶基板表面に施された連通孔形成用のエッチングマスク(酸化膜パターン)を損なうことがない。さらに、シリコン単結晶基板の内部に改質を形成するだけのエネルギー量のレーザー照射であることから、エッチングマスクにおける連通孔形成部の開口部は、最小形状で形成することができる。
【0013】
〔適用例3〕上述の適用例において、酸化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成するエッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程前であることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、エッチング保護膜が透明な酸化ケイ素であることで、エッチング保護膜を透過してレーザー照射が可能となる。しかも、改質部形成工程におけるレーザー照射がシリコン単結晶基板の表面より内部に焦点が設定されているため、レーザー照射によるエッチング保護膜へのダメージも発生しない。また、酸化ケイ素膜の形成を上述の適用例における製造工程の初期段階で行われるため、取扱時におけるシリコン単結晶基板表面への傷付き防止膜としての効果も有する。
【0015】
〔適用例4〕上述の適用例において、窒化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成する前記エッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程と前記第1エッチング工程の間であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、エッチング保護膜として優れた特性を有する窒化ケイ素を適用しても、開口部の小さなノズル連通孔が形成できる。
【0016】
〔適用例5〕上述の適用例に記載の製造方法により製造された流路形成基板。
【0017】
〔適用例6〕上述の流路形成基板を用いたインクジェット式記録ヘッド。
【0018】
上述の適用例によれば、吐出される液滴の粒径をさらに小さくする流路形成基板を実現することができる。この流路形成基板を用いたインクジェット式記録ヘッドを使ったインクジェット式記録装置により高密度、高精細の印刷物を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態における流路ユニットの概略断面図。
【図2】実施形態における流路ユニットの流路形成基板の概略横断面を示す平面図。
【図3】実施形態における流路形成基板の概略斜視図。
【図4】第1実施形態における流路形成基板の製造フローチャート。
【図5】第1実施形態における流路形成基板の製造方法を示す概略断面図。
【図6】第1実施形態における流路形成基板の製造方法を示す概略断面図。
【図7】第1実施形態における改質部形成部を説明する模式図。
【図8】第2実施形態における流路形成基板の製造フローチャート。
【図9】第2実施形態における流路形成基板の製造方法を示す概略断面図。
【図10】第3実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの構成を示す概略断面図。
【図11】第3実施形態におけるノズルプレートを模式的示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
流路形成基板の製造方法の一実施形態について、以下に説明する。図1にインクジェット式記録ヘッドの流路ユニットの概略断面図を示す。流路ユニット100は、流路形成基板10と、流路形成基板10の一方の面を封止する弾性板20と、流路形成基板10の他方の面を封止するノズル開口31を備えたノズルプレート30とから構成されている。流路形成基板10は、外部のタンクからインクの供給を受けるリザーバ11、外部からの加圧力を受ける圧力発生室12、リザーバ11と圧力発生室12とを接続するインク供給口13、圧力発生室12とノズルプレート30のノズル開口31とを接続するノズル連通孔14とを備える。
【0022】
流路ユニット100の弾性板20に圧電振動子40を当接させ、圧電振動子40が変位(振動)することにより、弾性板20が変位し、圧力発生室12の容積を膨張させてリザーバ11のインクをインク供給口13を経由して圧力発生室12に吸引し、圧力発生室12の容積を収縮させて圧力発生室12のインクを加圧してノズルプレート30のノズル開口31からインク滴として吐出するように構成している。
【0023】
図2は、図1における流路形成基板10のA−A’断面の概略平面を示す。図2に示すように、流路形成基板10は一つのリザーバ11に複数の圧力発生室12とインク供給口13とノズル連通孔14とを備え、それぞれのノズル連通孔14にはノズルプレート30のノズル開口31が対応している。さらに、流路形成基板10の構成を分り易くするため、図3に流路形成基板10の斜視図を示す。
【0024】
次に流路形成基板10の製造方法について説明する。流路形成基板10は、材料にシリコン単結晶基板を使用し、図4に示すフローチャートにより形成される。
〔保護膜形成工程〕
保護膜形成工程(S101)は、図5(a)に示すようにシリコン単結晶基板50(以下、基板50という)の表面全体に酸化ケイ素膜を熱酸化法により成膜し、エッチング保護膜60として形成する。エッチング保護膜60の膜厚としては、約1μm程度が好ましい。
【0025】
〔第1エッチングパターン形成工程〕
上記のエッチング保護膜60をフォトリソグラフィーにより、後述する第1エッチングのためのマスク形状に形成する第1エッチングパターン形成工程(S102)に移行する。図5(b)に示すように、この第1エッチングパターン形成工程(S102)では、保護膜形成工程(S101)で成膜されたエッチング保護膜60にレジスト剤をスピンコートなどの方法により塗布し、リザーバ11及びノズル連通孔14の形成範囲に相当する範囲のレジスト剤を露光し、露光部のレジスト剤を除去する。次に緩衝フッ酸溶液に浸漬し、エッチング保護膜60が除去されたリザーバ形成用開口部61及びノズル連通孔形成用開口部62を備える、基板50をエッチングする第1エッチングマスク63を形成する。
【0026】
なお、この第1エッチングパターン形成工程(S102)において、図示しないが、インク供給口13及び圧力発生室12が形成される範囲は、エッチング保護膜60をハーフエッチングしたハーフエッチング部64を形成しておく。
【0027】
〔改質部形成工程〕
次に、改質部形成工程(S103)に移行する。改質部形成工程(S103)では、図5(c)に示すように、上述の第1エッチングマスク63を備える基板50に対して、レーザー70をノズル連通孔形成用開口部62のいずれか一方の面側、もしくは両側から照射する。この時、レーザー70の焦点71部分には、シリコン単結晶の改質部51が形成される。改質部51はレーザー70の照射方向に縦長となる略紡錘形に形成され、レーザー70の焦点71を照射方向に移動させることで、改質部51を基板50の内部に積層させる。
【0028】
照射するレーザー70は、基板50の材料である単結晶シリコン内部を透過する波長域である、1000〜1200nmの波長とすることが好ましい。1000nmより短い波長のレーザーでは単結晶シリコン内の透過率は急激に悪くなり、また1200nmを超える波長のレーザーでは完全に透過してしまい、焦点71での改質部51の形成ができない。またレーザーとしては特に限定されず、YAGレーザー、YLFレーザー、YVO4レーザーなどが使用できる。
【0029】
本実施形態の基板50は、図示しないが一般的に多数個の流路形成基板10が形成できるウエハー基板の形態となっている。このウエハー状の基板50に対して改質部形成工程(S103)では、次のようにレーザー70を照射している。例えば、基板50の一方の面側だけからのレーザー70の照射をする場合、最初にレーザー照射側の反対面側に最も近い改質部51を、ウエハー状の基板50に形成される全ての流路形成基板10のノズル連通孔14の形成位置相当部位に形成するように焦点71を合わせてレーザー70を照射する。
【0030】
次に、上記で形成された改質部51のレーザー70の照射側の直近の改質部51を、ウエハー状の基板50に形成される全ての流路形成基板10のノズル連通孔14の形成位置相当部位に形成するように焦点71を合わせてレーザー70を照射する。これを所定回数繰り返すことにより、レーザー70の照射側面に最も近い改質部51まで形成する。これにより、改質部51が積層された基板50を高い生産性で形成することができる。
【0031】
なお、改質部51の形成方法は上記に限定されるものではなく、例えばウエハー状の基板50に形成されるノズル連通孔14の形成位置において、個々のノズル連通孔14に相当する部位に改質部51を積層し、これを繰り返して改質部51が積層された基板50を複数含むウエハーを形成しても良い。
【0032】
改質部形成工程(S103)における改質部51の形成は、貫通孔であるノズル連通孔14を後述のエッチングにより形成する際、先にエッチングされる貫通孔として形成される。すなわち改質部51は、シリコン単結晶の基板50の結晶性が崩れ、エッチング異方性がなくエッチングレートの高い部位となっているためである。この改質部51から形成される貫通孔がパイロット孔となって、ノズル連通孔14の形成のためのエッチングが行われる。
【0033】
図5(c)のノズル連通孔形成用開口部62近傍であるA部の詳細を図7に示す。図7に示すように、改質部51の形成は基板50の表面から深さD位置から形成されることが好ましい。
0≦D≦0.7W
W:ノズル連通孔開口部最小径
すなわち、最も基板50の表面に近い改質部51を形成するレーザー70の焦点71の位置が、基板50の表面より基板50の内部側になるように設定される。
【0034】
開口幅Wと深さDにより定義される角錐部Mは、後述の第1エッチング工程(S104)において、エッチングにより最初に食刻される領域であり、シリコン単結晶の結晶面(111)52が露出し、食刻が止まってしまう。このエッチング可能範囲の角錐部Mの範囲、すなわち「0≦D≦0.7W」に改質部51を形成することが好ましい。また、最も基板50の表面に近い改質部51を形成するレーザー70の焦点71の位置が、基板50の表面より基板50の内部側、すなわち基板50の表面部にレーザー70の焦点71が当たらないことで、表面加工時に発生する飛散物がなくなりレーザー装置の対物レンズ表面に被加工物が付着しない。したがって該レンズの表面損傷、透過率低下を防ぐことができ、好ましい。
【0035】
〔第1エッチング工程〕
次に第1エッチング工程(S104)に移行する。第1エッチング工程(S104)では、貫通孔であるリザーバ11とノズル連通孔14をエッチングにより形成する。エッチング液には20質量%KOHの水溶液を使用し、このKOH水溶液を80°Cに加熱して、第1エッチングマスク63を備える基板50を約2時間浸漬させ、貫通孔が形成される。
【0036】
第1エッチング工程(S104)は、図5(d)に示す模式図のように、はじめは改質部形成工程(S103)により形成された改質部51と、リザーバ形成用開口部61とがエッチングされる。この時、改質部51の形成部分のエッチングレートが高いため、貫通孔14aが形成される。改質部15は断面径で約1μm程度ときわめて細く形成されるため、改質部15をエッチングし形成される貫通孔14aもきわめて細い貫通孔が可能となる。また、リザーバ形成用開口部61からのエッチングはシリコン単結晶の基板50を結晶面に沿ってエッチングされる。さらにエッチングを進行させ、図5(e)に示すように、貫通孔としてリザーバ11とノズル連通孔14が形成される。
【0037】
〔第2エッチングパターン形成工程〕
次に第2エッチングパターン形成工程(S105)に移行する。この第2エッチングパターン形成工程(S105)では、第1エッチングパターン形成工程(S102)において図5(b)に示すハーフエッチング部64をフォトリソグラフィーにより除去し、図6(a)に示す第2エッチングマスク65を形成する。
【0038】
〔第2エッチング工程〕
次に第2エッチング工程(S106)に移行する。エッチング液は第1エッチング工程(S104)と同じエッチング液を用い、浸漬時間を短くして図6(b)に示す圧力発生室12を形成する凹部16とインク供給口13を形成する凹部17とを形成する。
【0039】
〔保護膜除去工程〕
最後に保護膜除去工程(S107)において、第2エッチングマスク65を除去し、流路形成基板10が形成される。
【0040】
本実施形態におけるノズル連通孔14の形成において、予めレーザー照射により改質部15を基板50の内部に形成したことにより、エッチングレートが高く、且つ断面径が約1μmときわめて小径の改質部15から先にエッチングが進行し、ノズル連通孔14を形成する。従って、改質部15から形成されたエッチングのパイロット孔も微小径の貫通孔となり、開口面積の小さいノズル連通孔14の形成を容易に形成することができる。
【0041】
さらに、改質部15を形成するレーザーは長波長で、しかも低出力であっても改質部15を形成できることから、従来のレーザーによる貫通孔(エッチングパイロット孔)加工における短波長、高出力レーザーに比較して、基板50に対する損傷の虞も無い。
【0042】
また、従来のレーザーによる貫通孔形成では、基板50の表面からレーザー加工が開始され、しかも貫通孔とするために、その開口部では30〜40μmの孔となってしまう。このため、ノズル連通孔形成用開口部62はレーザー照射による損傷を回避するために更に大きな開口面積で形成しなければならず、ノズル連通孔14の開口部は少なくとも30μmを下回ることができなかった。これに対して、上述の通り約1ミクロンの断面径で改質部15から貫通孔のエッチングパイロット孔を形成する本実施形態では、数μmの開口部の大きさでノズル連通孔14の形成が可能である。しかし、実用上の観点で、従来技術に対しては70%以上のダウンサイズする10μ程度の開口部をもつノズル連通孔が好ましい。
【0043】
(第2実施形態)
次に、流路形成基板10の他の製造方法について説明する。本実施形態ではエッチング保護膜として窒化ケイ素膜を形成し、流路形成基板10が製造される。図8に本実施形態のフローチャートを示す。
【0044】
(改質部形成工程)
本実施形態では、後述するようにエッチング保護膜として窒化ケイ素膜を形成、流路形成基板10を製造する。また、本実施形態では最初にレーザー照射による改質部形成工程(S201)が行われる。
【0045】
図9(a)に示すように、基板50(シリコン単結晶基板)にノズル連通孔14形成位置にレーザー70を照射し、改質部51を形成する。改質部形成のための条件、方法は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0046】
(保護膜形成工程)
保護膜形成工程(S202)では、図9(b)に示すように、改質部51が形成された基板50の表面全体にエッチング保護膜80が形成される。このエッチング保護膜80は窒化ケイ素膜であり、熱酸化法により基板50の全体に被覆される。
【0047】
(第1エッチングパターン形成工程)
第1エッチングパターン形成工程(S203)は、第1実施形態同様の方法により、図9(c)に示すように、エッチング保護膜80をフォトリソグラフィーによりリザーバ形成用開口部81とノズル連通孔形成用開口部82とハーフエッチング部84とを備えるマスク83を形成する。
【0048】
以降、第1エッチング工程(S204)、第2エッチングパターン形成工程(S205)、第2エッチング工程(S206)、保護膜除去工程(S207)は第1実施例と同じであり説明は省略する。
【0049】
本実施例に示すように、エッチング保護膜80を窒化ケイ素膜とすることにより、エッチング液に対する耐性が向上し、微小なノズル連通孔形成用開口部82となるエッチング保護膜80の端部の侵食を最小限に留めることができ、ノズル連通孔形成用開口部82の形状を忠実にノズル連通孔14の開口形状に実現することができる。また、これにより隣合うリザーバ11、圧力発生室12、インク供給口13、ノズル連通孔14のそれぞれの間の壁が薄くなり過ぎることを防止することもできる。
【0050】
(第3実施形態)
上述の実施形態により得られる流路形成基板10を用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図10はインクジェット式記録ヘッドの主要部断面を示す。インクジェット式記録ヘッド1000(以下、記録ヘッド1000という)は、ケース200、流路ユニット100、及びアクチュエーターユニット300等を主な構成としている。流路ユニット100には、上述の実施形態の製造方法によって得られた流路形成基板を用いている。ケース200は合成樹脂性の中空箱状部材であり、先端部には流路ユニット100を接合し、内部に形成された収容空間部201内にはアクチュエーターユニット300を収容している。また、流路ユニット100の接合部とは反対側の基端面には、印刷装置本体側からの駆動信号をアクチュエーターユニット300に供給するための回路基板(図示せず)を取り付けている。
【0051】
アクチュエーターユニット300は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子301と、圧電振動子301を固定する固定板302と、回路基板からの駆動信号を圧電振動子301に供給するためのTCP(テープキャリアパッケージ)等の配線部材303とを含む構成となっている。各圧電振動子301は、固定板302に接合固定される固定端部と固定板302の端部から突出している自由端部を有する、いわゆる片持ち梁の状態で固定板302に取り付けられている。このアクチュエーターユニット300は、固定板302の圧電振動子301の固定面とは反対の面を、収容空間部201を区画するケース200の内壁面202に接着固定され、ケース200内に収納されている。
【0052】
流路ユニット100は、弾性板20、流路形成基板10、及びノズルプレート30を積層、接着し一体化され、リザーバ11からインク供給口13及び圧力発生室12を通りノズル連通孔14よりノズル開口31に至る、一連のインク流路を形成する部材である。圧力発生室12は、ノズル開口31の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、リザーバ11は、インクカートリッジ等のインク供給源からインクが導入される室である。リザーバ11に導入されたインクは、インク供給口13を通じて各圧力発生室12に分配供給される。
【0053】
ノズルプレート30は、図11に示すように、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口31を、記録紙等の記録媒体の送り方向に対して列状に金属プレートに備えたものである。各ノズル列はインク種別に対応し、図11に示すノズルプレート30では、例えば8種類のインクを吐出可能となる構成である。
【0054】
インクジェット式印刷装置における解像度は、ドット形成密度いわゆる「dpi(Dots Per Inchi)」で表示される。これは1インチ当たり何個のインクドット(液滴)が記録媒体に載せることができるか、を示すものである。図11に示すノズル開口31の配列で示すと、ノズル開口31の配置ピッチPの逆数となる。解像度を上げるためにはピッチPをより小さくする必要がある。このピッチPを決定している一要素として、ノズル連通孔14の開口部の大きさにある。
【0055】
第1実施形態及び第2実施形態で得られる、流路形成基板10はノズル連通孔14を従来よりも小さい開口面積で実現するものであり、実用領域であっても従来技術に対して70%ものダウンサイズが可能となっている。したがって、この流路形成基板10に対応してノズルプレート30のノズル開口31は従来ピッチPが35μm程度であったが、本実施形態ではピッチPは20μmまで小さくすることが可能となった。
【0056】
上述の通り、本実施形態の記録ヘッド1000を使ったインクジェット式記録装置では、従来技術に対して解像度を約75%以上向上させることができ、より高画質印刷を可能とするものである。
【実施例】
【0057】
(実施例)
厚さ220μmのシリコン単結晶ウエハー表面に、酸化ケイ素膜を2μm被膜した。フォトリソグラフィーにより酸化ケイ素膜に、リザーバとノズル連通孔とを形成するための開口部と、圧力発生室とインク供給口とを形成するためのハーフエッチング部とを形成し、第1エッチング用マスクを形成した。この時、ノズル連通孔形成のマスク開口は1辺が7μm、ピッチを20μmとした。
【0058】
次に、YAGレーザー(波長:1064nm)を出力エネルギー:3μJで、ノズル連通孔形成部位に、ウエハーの一方の面より他方の面に向けてレーザーの焦点を1mm/秒の移動速度で移動、照射し、ウエハーの厚さ方向に連続する改質部を形成した。レーザー照射に際しては、最初の照射のレーザー焦点と最後のレーザー照射は、ウエハー表面から4μmの深さになるように調整した。
【0059】
改質部が形成されたウエハーを、80°Cに加熱した19.7質量%のKOH溶液中に2時間浸漬し、リザーバとノズル連通孔の形成部をエッチングし、貫通孔に形成した。
【0060】
次に、第1エッチング用マスクを更にフォトリソグラフィーにより、ハーフエッチング部の酸化ケイ素膜を除去し、80°Cに加熱したKOH(19.7質量%)の水溶液中に2時間浸漬し、インク供給口と圧力発生口とになる凹部を形成し、流路形成基板を得た。
【0061】
得られた流路形成基板は、ノズル連通孔開口の1辺が11μm、ピッチが20μmであった。また、隣り合うノズル連通孔の隔壁は5.1μmで形成できた。
【0062】
(比較例)
厚さ220μmのシリコン単結晶ウエハー表面に、酸化ケイ素膜を2μm被膜した。フォトリソグラフィーにより酸化ケイ素膜に、リザーバ、ノズル連通孔の形成のための開口部と、圧力発生室、インク供給口の形成のためのハーフエッチング部を形成し、第1エッチング用マスクを形成した。この時、ノズル連通孔形成のマスク開口は1辺が90μm、ピッチを141μmとした。
【0063】
次に、YAGレーザー(波長:532nm)を出力エネルギー:130μJで、ノズル連通孔形成部位に、ウエハーの一方の面より照射し、貫通孔を形成した。貫通孔が形成されたウエハーを、80°Cに加熱した19.7質量%のKOH溶液中に2時間浸漬し、リザーバとノズル連通孔の形成部をエッチングし、貫通孔に形成した。
【0064】
次に、第1エッチング用マスクを更にフォトリソグラフィーにより、ハーフエッチング部の酸化ケイ素膜を除去し、80°Cに加熱したKOH(19.7質量%)の水溶液中に2時間浸漬し、インク供給口と圧力発生口とになる凹部を形成し、流路形成基板を得た。
【0065】
得られた流路形成基板は、ノズル連通孔開口の1辺が27.8μm、ピッチが30μmであった。また、隣り合うノズル連通孔の隔壁は7.5μmで形成できた。
【0066】
(結果)
実施例は比較例に対して、ノズル連通孔の1辺の長さは約40%まで短くすることができた。また、ピッチは約67%まで縮めることができた。
【符号の説明】
【0067】
10…流路形成基板、11…リザーバ、12…圧力発生室、13…インク供給口、14…ノズル連通孔、20…弾性板、30…ノズルプレート、31…ノズル開口、40…圧電振動子、100…流路ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶基板にエッチングによりノズル連通孔、リザーバ、インク供給口とを備える流路形成基板の製造方法であって、
前記ノズル連通孔の形成領域内の前記ノズル連通孔の連通方向に、レーザー照射により前記シリコン単結晶基板の改質部を連続的に積層する改質部形成工程と、
前記ノズル連通孔の形成範囲及び前記リザーバの形成範囲をエッチングにより穿孔する第1エッチング工程と、
前記インク供給口の形成範囲をエッチングにより前記インク供給口を形成する第2エッチング工程と、
を含むことを特徴とする流路形成基板の製造方法。
【請求項2】
前記改質部形成工程において、前記レーザー照射は前記シリコン単結晶基板表面からの深さDから前記改質部が形成され、
前記深さDは、
0≦D≦0.7W
但し
W:ノズル連通孔開口部最小部径
である、
ことを特徴とする請求項1に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項3】
酸化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成するエッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程前である、
ことを特徴とする請求項1及び2に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項4】
窒化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成する前記エッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程と前記第1エッチング工程の間である、
ことを特徴とする請求項1及び2に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法により製造された流路形成基板。
【請求項6】
請求項5に記載の流路形成基板を用いたインクジェット式記録ヘッド。
【請求項1】
シリコン単結晶基板にエッチングによりノズル連通孔、リザーバ、インク供給口とを備える流路形成基板の製造方法であって、
前記ノズル連通孔の形成領域内の前記ノズル連通孔の連通方向に、レーザー照射により前記シリコン単結晶基板の改質部を連続的に積層する改質部形成工程と、
前記ノズル連通孔の形成範囲及び前記リザーバの形成範囲をエッチングにより穿孔する第1エッチング工程と、
前記インク供給口の形成範囲をエッチングにより前記インク供給口を形成する第2エッチング工程と、
を含むことを特徴とする流路形成基板の製造方法。
【請求項2】
前記改質部形成工程において、前記レーザー照射は前記シリコン単結晶基板表面からの深さDから前記改質部が形成され、
前記深さDは、
0≦D≦0.7W
但し
W:ノズル連通孔開口部最小部径
である、
ことを特徴とする請求項1に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項3】
酸化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成するエッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程前である、
ことを特徴とする請求項1及び2に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項4】
窒化ケイ素をエッチング保護膜として前記シリコン単結晶板に形成する前記エッチング保護膜形成工程が、前記改質部形成工程と前記第1エッチング工程の間である、
ことを特徴とする請求項1及び2に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法により製造された流路形成基板。
【請求項6】
請求項5に記載の流路形成基板を用いたインクジェット式記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−83899(P2011−83899A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236006(P2009−236006)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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