説明

インクジェット記録方法

【課題】布帛への前処理を不要とし、画像滲みが抑制され、高濃度のプリント物が得られるインクジェット捺染方式を用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】インク受容層を有さない布帛に、水溶性染料として酸性染料または直接染料と、酸性基としてカルボキシル基またはスルホ基を有し、酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下の水溶性樹脂とを含有する水性染料インクを吐出して印画した後、該布帛に尿素を1.0g/m以上付与し、次いで、該布帛を150℃以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性染料インクを用いて布帛にインクジェット捺染方式で画像形成を行うインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式による画像の印刷方法は、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッドより飛翔させ、対象となる記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。インクジェット方式は、その機構が比較的簡便、安価で、かつ高精細で高品位な画像を形成できることが利点である。
【0003】
このインクジェット方式の利点を生かして、布帛への画像印字、いわゆるインクジェット捺染についても開発が進められている。インクジェット捺染は、従来の捺染とは異なり、版を作製する必要がなく、手早く階調性に富んだ画像を形成できる利点を有している。更に、形成画像として必要な量のインクのみを画像形成に使用するため、従来方法に比較すると廃液が少ない等の環境的な利点も有する優れた画像形成方法であるといえる。
【0004】
但し、インクジェット捺染の場合、通常の捺染方法とは異なり、使用するインクの粘度が低いため、そのままの状態で繊維に印画すると、布帛を構成する繊維に沿ってインクが滲み、画質の大幅な低下や画像の定着性の不足を生じるという問題を引き起こす。このため、インクジェット方式により布帛に絵柄等の画像を形成するときには、得られる色濃度を高くするため、あるいは滲みを抑制するために、プリント前に布帛を撥水剤、捺染糊等で前処理を行い、布帛にインク受容層を形成させる方法が一般的に行われている。また、布帛にプリントを行った後には、染料等の色材を布帛に定着させるために、スチーミングによる加熱処理を施す定着工程を設ける必要があり、インクジェット記録方式の画像形成の簡便さに比べると、インクジェット捺染方式は、作業が繁雑で時間を要し、インクジェット方式の利点を十分生かし切れていないのが現状であった。そのため、前処理を施していない布帛に対しても、高画質のプリントを得ることができ、かつ煩雑な後処理の必要がないシステムの開発が望まれている。
【0005】
また、染料と活性エネルギー線で架橋する高分子化合物を含有させて、前処理加工を不要にする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、活性エネルギー線源として電子線や紫外線が使用されており、これらの活性エネルギー線照射装置として高価で大掛かりなものとなる。
【特許文献1】特開2007−186539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、布帛への前処理を不要とし、画像滲みが抑制され、高濃度のプリント物が得られるインクジェット捺染方式を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
1.インク受容層を有さない布帛に、水溶性染料として酸性染料または直接染料と、酸性基としてカルボキシル基またはスルホ基を有し、酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下の水溶性樹脂とを含有する水性染料インクを吐出して印画した後、該布帛に尿素を1.0g/m以上付与し、次いで、該布帛を150℃以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とするインクジェット記録方法。
【0009】
2.前記水性染料インクを前記布帛上に吐出する際に、該布帛を40℃以上の温度に加熱することを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、布帛への前処理を不要とし、画像滲みが抑制され、高濃度のプリント物が得られるインクジェット捺染方式を用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水溶性染料として酸性染料または直接染料と、酸性基としてカルボキシル基またはスルホ基を有し、酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下の水溶性樹脂とを含有する水性染料インクを吐出して印画した後、該布帛に尿素を1.0g/m以上付与し、次いで、該布帛を150℃以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とするインクジェット記録方法により、布帛への前処理を不要とし、画像滲みが抑制され、高濃度のプリント物が得られるインクジェット記録方法を実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0013】
本発明で規定する上記構成からなるインクジェット記録方法により、布帛の前処理を不要とすることができ、画像滲みが抑制され、高濃度のプリント物が得られる理由については、以下のように推定している。
【0014】
すなわち、インク中に潮解性を有する尿素を添加することで、発色反応に必要な水分を確保して、150℃以上の温度で高温発色させることにより高濃度画像を達成すると共に、加えて、請求項2で規定するように、好ましくは印字を行う際に布帛を40℃以上に加熱して、布帛に着弾したインク中の水分を蒸発させて、速やかにインクを濃縮することにより、粘度上昇を起こさせて画像滲みを防止することができた。
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録方法の各構成要素の詳細について説明する。
【0016】
《水性染料インク》
本発明に係る水性染料インク(以下、単にインクともいう)は、少なくとも水溶性染料として酸性染料または直接染料と、酸性基としてカルボキシル基またはスルホ基を有し、酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下の水溶性樹脂とを含有することを特徴とする。
【0017】
〔水溶性染料〕
本発明に係る水性染料インクに用いられる色材としては、酸性染料もしくは直接染料を用いる。好ましくは、布帛への染色性、堅牢性等を考慮して、酸性染料であることが好ましい。
【0018】
以下、本発明に係る水性染料インク(以下、単にインクともいう)に適用可能な染料の具体例を列挙するが、本発明では、これら例示する染料にのみ限定されるものではない。
【0019】
本発明で用いることのできる水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。
【0020】
(酸性染料)
〈C.I.アシッドイエロー〉
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246、
〈C.I.アシッドオレンジ〉
3、7、8、10、19、22,24、51、56、67、74、80、86、87、88、
89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
〈C.I.アシッドレッド〉
88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、447,
〈C.I.アシッドバイオレット〉
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
〈C.I.アシッドブルー〉
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
〈C.I.アシッドグリーン〉
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
〈C.I.アシッドブラウン〉
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
〈C.I.アシッドブラック〉
1、2、3、24、26、31、50、52、52:1、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
(直接染料)
〈C.I.ダイレクトイエロー〉
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、79、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153、
〈C.I.ダイレクトオレンジ〉
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
〈C.I.ダイレクトレッド〉
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
〈C.I.ダイレクトバイオレット〉
9、35、51、66、94、95、
〈C.I.ダイレクトブルー〉
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
〈C.I.ダイレクトグリーン〉
26、28、59、80、85、
〈C.I.ダイレクトブラウン〉
44、106、115、195、209、210、222、223、
〈C.I.ダイレクトブラック〉
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169
これら染料のインク中濃度は0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜13質量%がより好ましい。0.1質量%以下だと着色濃度が不充分であり、20質量%以上だと染料の析出が起こったり粘度が高くなりすぎたりして射出が不安定になる。
【0021】
〔水溶性樹脂〕
本発明に係るインクに適用する水溶性樹脂は、酸性基としてカルボキシル基またはスルホ基を有し、酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であることを特徴とする。
【0022】
このような樹脂としては、樹脂中に疎水性成分と親水性成分をあるバランスで有するものを設計して用いる。この際、親水性成分としてはイオン性のものであり、更に好ましくはアニオン性のものである。特に、アニオン性のものを揮発可能な塩基成分で中和することで水溶性を付与したものが好ましい。そして、本発明の水溶性樹脂は、酸性基としてカルボキシル基またはスルホン酸基を有しており、かつ酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下の樹脂である。酸価としては、90mgKOH/g乃至200mgKOH/g程度のものを特に好ましく用いることができる。
【0023】
酸価とは樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)である。
【0024】
このような樹脂としては、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系の各樹脂を挙げることができる。
【0025】
樹脂として疎水性モノマーと親水性モノマーを含有する樹脂を用いることができる。
【0026】
疎水性モノマーとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
【0027】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
【0028】
樹脂の分子量としては、平均分子量で3000から30000のものを用いることができる。好ましくは7000から20000のものを用いることができる。
【0029】
樹脂のTgは−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは−20℃から80℃程度のものを用いることができる。
【0030】
重合方法としては、溶液重合を用いることが好ましい。
【0031】
樹脂の酸性モノマー由来の酸性基は部分的、あるいは完全に塩基成分で中和することが好ましい。この場合の中和塩基としては、アルカリ金属含有塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等や、アミン類(アンモニア、アルカノールアミン、アルキルアミン等を用いることができる)を用いることができる。
【0032】
水溶性樹脂の添加量としては、本発明の目的を得るためには、2質量%以上、10質量%以下の量で用いることが好ましく、3質量%以上、6質量%以下で用いることがより好ましい。
【0033】
本発明において、固形分として2質量%以上、10質量%以下の水溶性樹脂を含有することが好ましく用いられる理由として以下のように推察している。
【0034】
2質量%未満では増粘の程度が小さくインク混じり防止が不十分で高画質が得られない。また、10質量%より多く添加するとインクの保存安定性、吐出安定性の不安定化が生じる。
【0035】
〔各種添加剤〕
本発明に係るインクには、上記説明した酸性染料または直接染料及び水溶性樹脂の他に、各種添加剤を必要に応じて用いることができる。
【0036】
(水溶性有機溶媒)
本発明に係るインクには、インク粘度の調整等を目的として各種水溶性有機溶媒を用いることができる。
【0037】
本発明に係るインクに適用可能な水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノエチル、エチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノブチル、トリエチレングリコールモノブチル、プロピレングリコールモノプロピル、ジプロピレングリコールモノメチル、トリプロピレングリコールモノメチル等)、1,2−アルカンジオール類(例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
【0038】
水溶性有機溶媒の添加量としては、10質量%以上、80質量%未満含有することが好ましい。更に好ましくは15質量%以上、75質量%未満である。
【0039】
(界面活性剤)
本発明において、布帛に対する浸透性や十分な濡れ性を付与する観点から、インクの表面張力は40mN/m以下が好ましく、35mN/m以下に調整することがより好ましい。この表面張力に調整するためには種々界面活性剤を好ましく用いることができる。特に、シリコーン系界面活性剤、パーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種を用いることが有効である。
【0040】
シリコーン系界面活性剤とはジメチルポリシロキ酸の側鎖または末端をポリエーテル変性したものであり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー製のBYK347、BYK348などが市販されている。
【0041】
パーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤とは、4−フッ化エチレンやヘキサフルオロプロピレンをアニオン的に重合した2量体、3量体あるいは5量体に親水基を導入して合成することができ、親水基にポリオキシエチレンエーテルを有するノニオン型、スルホン酸やカルボン酸を有するアニオン型、4級アンモニウム塩とカルボン酸を有するベタイン型のいずれも好ましく用いることができ、株式会社ネオス製のフタージェントシリーズとして市販されている。
【0042】
本発明に係るインクには、フッ素系もしくはシリコーン系界面活性剤の他に、以下の界面活性剤を使用することができる。例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0043】
(その他の添加剤)
本発明に係るインクは、長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインクジェット用水性インク中に添加してもかまわない。防腐剤、防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
《尿素》
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明に係る水性染料インクを布帛に付与した後、水溶性染料の布帛への染着効率を高めるための染着助剤として尿素を1.0g/m以上付与することを特徴とし、好ましくは1.0g/m以上、6.0g/m以下であり、更に好ましくは1.0g/m以上、4.0g/m以下である。
【0045】
《インクジェット記録方法》
次いで、本発明のインクジェット記録方法によるプリント物の作製方法について説明する。
【0046】
本発明のインクジェット記録方法で用いる主要な工程としては、
1)布帛上にインクジェット方式により、本発明に係る水溶性染料(酸性染料または直接染料)と水溶性樹脂を含む水性染料インクを付与する印画工程、この時、布帛を40℃以上に加熱して印画することが、滲み等を防止できる観点方から好ましい、
2)印画した布帛上に、本発明に係る尿素を付与する染着工程、
3)布帛を150℃以上で加熱する加熱処理工程、
であり、更には
4)印画した布帛中の不要な物質を除去する洗浄工程
等から構成されている。
【0047】
〔布帛〕
本発明のインクジェット記録方法において主として使用する布帛を構成する繊維素材としては、酸性染料または直接染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はなく、綿、絹、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリル系繊維等種々の繊維素材が挙げられ、又、これらの混紡、交織物、不織布等のものであってもよい。
【0048】
〔印画工程〕
本発明のインクジェット記録方法において、布帛上への水性染料インクの付与は、インクジェット記録ヘッドを用いて行う。
【0049】
本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェット記録ヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又、吐出方式としては、電気−機械変換方式(シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(スパークジェット型等)等を具体的な例として挙げることができるが、何れの吐出方式を用いても構わない。インクジェットプリンタの記録方式としては、シリアルヘッド方式とラインヘッド方式のいずれも用いることができる。
【0050】
インクジェット記録ヘッドより、本発明に係るインクジェット用インクを吐出する条件としては、高精細な画像を得るため、ノズル径が10〜50μmのインクジェット記録ヘッドを用いて記録することが好ましい。粒状性を高めるためにはより小さい方が好ましいが、液滴体積が小さくなりすぎて気流の影響を受けるため、10〜40μmの範囲であることが特に好ましい。
【0051】
インクジェットヘッド駆動装置の駆動周波数は、15kHz以上が好ましく、30kHz以上、100kHz以下であることが、インクの目詰まりを防止する上で更に好ましい。同様な理由からインク吐出速度は6m/s以上が好ましく、8m/s以上、50m/s以下であることが更に好ましい。
【0052】
本発明のインクジェット記録方法において、インク飛翔時の液滴体積としては、滲み耐性及び鮮鋭性の向上に観点より、10pl以上、50pl以下であることが好ましい。
【0053】
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インクジェット記録ヘッドを用いて布帛上に水性染料インクの付与する際に、布帛自身を40℃以上に加熱することが好ましく、更に好ましくは40℃以上、80℃以下に加熱することである。
【0054】
布帛を上記温度条件で加熱した状態で印画することにより、布帛に着弾したインク液滴の粘度上昇が速やかに進行し、滲み防止効果を発揮することができる観点で好ましい。
【0055】
布帛の加熱方法としては、特に制限はないが、布帛の搬送をサポートするプラテンを、フラットパネルヒーター等で所望の温度に加熱する方法が、簡便で好ましい。
【0056】
〔尿素を付与する染着工程〕
本発明のインクジェット記録方法においては、布帛への水溶性染料インクと尿素を所定の濃度で含有する水溶液の付与順序は特に制限はないが、布帛上に水性染料インクの付与した後、直ちに尿素を所定の濃度含有する水溶液を付与して、酸性染料または直接染料を布帛に染着させる方法が好ましい。
【0057】
尿素水溶液を、湿潤状態にある水性染料インクを保持している布帛に付与する方法としては、特に液体を均一に供給することのできる装置であれば特に制限はなく、前述の様なインクジェットヘッド方式、コータ方式、ローラ方式、スプレー方式等を適宜選択して用いることができる。
【0058】
インクジェットヘッド方式としては、水性染料インクを付与するのに用いるのと同様のインクジェットヘッドを適用することができる。
【0059】
図1は、ラインヘッド方式のインクジェットヘッドを用いた水性染料インク及び尿素水溶液の付与方法の一例を示す概略図である。
【0060】
図1のa)においては、上部から下部に向かって布帛Pを搬送し、布帛Pの全巾のカバーする水性染料インクを吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドH、H、H、Hと、それぞれに対応する尿素水溶液を吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドHがそれぞれ配置されている。連続搬送されている布帛P上に、インクジェットヘッドHより水性イエロー染料インクを吐出した後、直ちにインクジェットヘッドHUAより尿素水溶液を吐出し、順次、水性マゼンタ染料インクと尿素水溶液、水性シアン染料インクと尿素水溶液、水性ブラック染料インクと尿素水溶液を吐出して、プリント画像を形成する。
【0061】
また、図1のb)に記載の方法は、上流側にラインヘッド方式のインクジェットヘッドH、H、H、Hを一群として配置し、その下流側に一個の尿素水溶液を吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドHを配置した構成であり、図1のa)、図1のb)のいずれの構成であってもよい。
【0062】
図2は、ラインヘッド方式のインクジェットヘッドを用いた水性染料インク及び尿素/アルカリ水溶液の付与方法の他の一例を示す概略図である。
【0063】
図2では、水性染料インクを吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドH、H、H、Hと尿素水溶液を吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドHとが、それぞれ接合された形態のラインヘッド方式のインクジェットヘッドユニットである。
【0064】
図3は、図2で示した水性染料インクを吐出するインクジェットヘッドと尿素水溶液を吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドから構成されるインクジェットヘッドユニットの底面図である。
【0065】
図3に示した底面図は、図2におけるインクジェットヘッドユニットHUを一例として、底面側より見た各ノズルNの配置を示したものであり、記録媒体の搬送方向上流側から順に、水性イエロー染料インクを吐出するノズル列が設けられたインクジェットヘッドHと、尿素水溶液を吐出するノズル列が設けられたインクジェットヘッドHUAが配置されている。インクジェットヘッドH、Hの各ノズルがノズル列方向に同じ位置にある。また、各ノズル列のノズルピッチはX/2(mm)であり、得られる記録媒体の搬送方向に垂直な方向のドットピッチX/2に等しくなるように設定されている。
【0066】
なお、上記インクジェットヘッドを用いた印画工程及び染着工程について、ラインヘッド方式のインクジェットヘッドを用いて説明したが、各インクジェットヘッドが、それぞれ布帛の幅手方向に独立して移動するシリアルヘッド方式を用いても良い。例えば、それぞれ独立してシリアルヘッド方式の水性染料インクを吐出するインクジェットヘッドと、その下流側に同じくシリアルヘッド方式の尿素水溶液を吐出するインクジェットヘッドとを平行に配置した方法、あるいは、キャリッジ上に水性染料インクを吐出するインクジェットヘッドを設け、その両端部に尿素水溶液を吐出するインクジェットヘッドを配置したシリアルヘッド方式のインクジェット記録方法等を用いることができる。
【0067】
また、染着工程において、尿素水溶液を付与する方法として、スプレー塗布装置を用いて付与することができる。スプレー塗布装置とは、尿素水溶液を加圧しながら噴霧ノズル部より微小液滴群として供給する方法である。
【0068】
また、尿素水溶液を付与する方法として、従来公知の湿式塗布装置を適用することができ、例えば、ディップ塗布装置、ローラ塗布装置、ファウンテン塗布装置、グラビア塗布装置、ブレード塗布装置、バー塗布装置、スライド塗布装置、エクストルージョン塗布装置等を適用することができる。
【0069】
〔加熱処理工程〕
上記印画工程及び染着工程でプリントした布帛は、次いで、加熱処理が施される。この加熱処理を施すことにより、酸性染料または直接染料が布帛を構成する繊維に完全に定着される。
【0070】
加熱処理工程における加熱温度としては、150℃以上で加熱することを特徴とするが、使用する布帛を構成する繊維の特性により、上限は250℃とすることが好ましい。
【0071】
加熱処理工程で適用しうる加熱方法としては、特に制限はないが、加熱ファン、フラットパネルヒーター、輻射熱加熱手段、加熱ローラ、加熱ベルトを用いて、印画した布帛を所望の温度に加熱することができる。
【0072】
〔洗浄工程〕
加熱処理後は染着に関与しなかった染料を除去する目的で洗浄を行っても良い。その方法は、プリントする素材、インク種、プリント物への前処理内容により選択される。水洗で終わるケースも多いが、堅牢度を要求される場合は、水洗、湯洗、ソーピングを行なうことにより効果的である。洗浄後には乾燥を行っても良い。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【0073】
〔捺染工程ライン〕
次いで、上記説明した本発明のインクジェット記録方法により捺染工程の全体ラインを説明する。
【0074】
図4は、本発明のインクジェット記録方法における各工程の流れを示す概略ライン図である。
【0075】
図4のa)は、上記図1で説明したラインヘッド方式のインクジェットヘッドを用いて水性染料インク及び尿素水溶液を付与する印画工程を含むライン図である。
【0076】
図4のa)において、連続搬送する布帛P上に、印画工程Aでインクジェットヘッド1を用いて、ノズルNより水性染料インクINKを吐出する。この時、布帛Pの背面に設置したフラットパネルヒーター8により、布帛Pを40℃以上に加熱することが、滲みが防止され高精細な画像が得られる観点から好ましい。布帛P上に水性染料インクINKを吐出した後、直ちに染着工程Bにて、尿素水溶液Uを、同じくインクジェットヘッド2を用いて付与する。
【0077】
次いで、布帛Pを加熱処理工程Cに移動させ、加熱手段として、加熱ローラ9とサポートローラ10で形成したニップ間に布帛Pを通して、印画部を加熱、加圧して定着させる。次いで、加熱処理を行った布帛は、洗浄工程Dに移動させて、洗浄、乾燥を行って、プリント物を作成する。
【0078】
図4のb)は、尿素水溶液Uを布帛P上に付与する手段としてスプレー塗布装置3を用いて、尿素水溶液Uを噴霧状にして布帛Pに着弾させる方法を示してある。
【0079】
図4のc)は、尿素水溶液Uを、ローラ塗布装置4を用いて布帛P上に付与する方法を示してある。ローラ塗布装置4を構成するローラは、金属製の芯金の表面に溶液を保持するスポンジを備えたスポンジローラで構成されている。スポンジローラは、例えば、セルローススポンジ、ポリビニルアルコールスポンジ、ウレタンフォーム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)スポンジ、メラミンフォーム、ポリエチレンフォーム等の樹脂系スポンジ、天然ゴム(NR)スポンジ、クロロプレンゴム(CR)スポンジ、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)スポンジ、ブタジエン−アクリロニトリルゴムスポンジ等のゴム系スポンジ等で構成することができる。この中でも、スポンジ部分は、樹脂系スポンジで構成され、ローラ塗布装置4の上部に位置する尿素水溶液供給部5より、尿素水溶液を、ローラ塗布装置4を構成するスポンジに供給した後、布帛に再供給する方法である。
【0080】
図4のd)は、尿素水溶液Uを、定量供給型のエクストルージョン塗布装置6を用いて、布帛Pに付与する方法を示している。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0082】
《水性染料インクセットの調製》
〔インクセット1の調製〕
下記に示す各色の水性染料インクからなるインクセット1を調製した。
【0083】
(イエローインク1の調製)
C.I.アシッドイエロー79 5%
ジョンクリル70J(BASF社製水溶性樹脂、30%水溶液、酸化240、Tg102℃、平均分子量16500) 10%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 25%
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 20%
KF−351A(信越化学工業製、シリコーン系界面活性剤) 0.5%
上記各添加剤を混合、攪拌し、イオン交換水を加えて全量を100部とした後、5μmのフィルターで濾過して、イエローインク1を得た。
【0084】
(マゼンタインク1の調製)
上記イエローインク1の調製において、C.I.アシッドイエロー79に代えて、C.I.アシッドレッド249を用いた以外は同様にして、マゼンタインク1を得た。
【0085】
(シアンインク1の調製)
上記イエローインク1の調製において、C.I.アシッドイエロー79に代えて、C.I.ダイレクトブルー87を用いた以外は同様にして、シアンインク1を得た。
【0086】
(ブラックインク1の調製)
上記イエローインク1の調製において、C.I.アシッドイエロー79に代えて、C.I.アシッドブラック52:1を用いた以外は同様にして、ブラックインク1を得た。
【0087】
(ライトマゼンタインク1の調製)
C.I.アシッドレッド249 1%
ジョンクリル70J(BASF社製水溶性樹脂、30%水溶液、酸化240、Tg102℃、平均分子量16500) 10%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 25%
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 45%
KF−351A(信越化学工業製、シリコーン系界面活性剤) 0.5%
上記各添加剤を混合、攪拌し、イオン交換水を加えて全量を100部とした後、5μmのフィルターで濾過して、ライトマゼンタインク1を得た。
【0088】
(ライトシアンインク1の調製)
上記ライトマゼンタインク1の調製において、C.I.アシッドレッド249に代えて、C.I.ダイレクトブルー87を用いた以外は同様にして、ライトシアンインク1を得た。
【0089】
〔インクセット2の調製〕
上記インクセット1の調製において、各色インクの調製に用いた水溶性樹脂であるジョンクリル70J(BASF社製水溶性樹脂、30%水溶液、酸化240、Tg102℃、平均分子量16500)を、ジョンクリルJDX6500(BASF社製水溶性樹脂、29.5%水溶液、酸化74、Tg65℃、平均分子量10000)にそれぞれ変更した以外は同様にして各色インクを調製し、これをインクセット2とした。
【0090】
〔インクセット3の調製〕
上記インクセット1の調製において、各色インクの調製に用いた水溶性樹脂であるジョンクリル70J(BASF社製水溶性樹脂、30%水溶液、酸化240、Tg102℃、平均分子量16500)を除いた以外は同様にして各色インクを調製し、これをインクセット3とした。
【0091】
《尿素水溶液の調製》
尿素 10.0g
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 8.0g
ジエチレングリコール 23.0g
グリセリン 4.5g
オルフィンE1010(日信化学社製) 5.3g
以上にイオン交換水を加え全量を100mlとして、尿素水溶液を調製した。
【0092】
《インクジェット画像記録》
〔記録方法1〕
上記調製したインクセット1を、図2、図3に記載の構成に、更にライトマゼンタインク用インクジェットヘッドと尿素水溶液を吐出するインクジェットヘッドHと、ライトシアンインク用インクジェットヘッドと尿素水溶液を吐出するインクジェットヘッドHとを備えたコニカミノルタIJ株式会社製のピエゾ型インクジェットヘッドにそれぞれ装填した。水性染料インク用のインクジェット記録ヘッドは、ノズル口径28μm、駆動周波数18kHz、ノズル数512、最小液適量14pl、ノズル密度180dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのノズル数を表す)で、各色毎に単色ベタ画像(印字密度100%)、250μm単色細線画像及び各色白抜き文字画像を布帛上に印画した。なお、印画工程は、20℃、相対湿度55%の環境とした。
【0093】
また、各インクジェットヘッドHは、尿素水溶液を装填し、布帛上に各色水性染料インクを吐出した後、直ちに吐出した。吐出条件は、尿素の付与量が2.0g/mとなる条件で付与した。なお、使用した布帛は、インク受容層を有さない絹布を用いた。
【0094】
また、各色水性染料インク及び尿素水溶液を布帛に付与する際には、布帛の下方部に配置したフラットパネルヒーターにより、布帛の印字面温度が50℃となるように加熱した。
【0095】
次いで、加熱処理工程で、加熱ファンを備えた加熱ゾーンで、布帛を180℃、5分間の加熱を行った後、洗浄処理を行ってプリント物を得た。
【0096】
〔記録方法2、3〕
上記記録方法1において、インクセット1に代えて、それぞれインクセット2、3を用いた以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法2、3とした。
【0097】
〔記録方法4〕
上記記録方法1において、染着工程で尿素水溶液の付与を行わなかった以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法4とした。
【0098】
〔記録方法5〜7〕
上記記録方法1において、染着工程における尿素の付与量を、それぞれ0.5g/m、1.0g/m、5.0g/mに変更した以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法5〜7とした。
【0099】
〔記録方法8〕
上記記録方法1において、印画工程で布帛の加熱を行わなかった以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法8とした。
【0100】
〔記録方法9〕
上記記録方法1において、印画工程、染着工程を行った後、加熱処理工程を行わなかった以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法9とした。
【0101】
〔記録方法10〜12〕
上記記録方法1において、加熱処理工程における加熱温度をそれぞれ140℃、220℃、250℃に変更した以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法10〜12とした。
【0102】
〔記録方法13〜15〕
上記記録方法1において、染着工程における尿素水溶液である尿素水溶液の付与方法を、図4のb)に記載のスプレー塗布装置、図4のc)に記載の表面にスポンジを備えたローラ塗布装置、図4のd)に記載のエクストルージョン塗布装置にそれぞれ変更した以外は同様にしてプリント物を作成し、これを記録方法13〜15とした。
【0103】
《プリント物の評価》
上記記録方法により作成した各プリント物について、下記の評価を行った。
【0104】
〔滲み耐性の評価〕
作成した各色ベタ画像、細線画像、白抜き文字画像について滲み発生の有無を目視観察し、下記の基準に従って滲み耐性の評価を行い、各色の平均レベルを求めた。
【0105】
◎:ベタ画像と白地の境界領域で滲みもなく、細線の太りも無く、白抜き文字の描画性も明瞭
○:ベタ画像と白地の境界領域で滲みもなく、細線の太りは無く、白抜き文字の描画性がやや不明瞭だが、品質上問題のないレベル
△:ベタ画像と白地の境界領域で滲みはないが、細線の太りは無く、白抜き文字は認識できず
×:ベタ画像と白地の境界領域で滲みがあり、細線の太りはないが10箇所未満繊維に沿った滲みがあり、白抜き文字も認識できず
××:ベタ画像と白地の境界領域で滲みが激しく、細線が太り10箇所以上繊維に沿った滲みがあり、白抜き文字も認識できず
〔画像濃度の評価〕
印字密度100%で作成した各色ベタ画像の濃度及びムラの有無について目視観察し、下記の基準に従って画像濃度の評価を行い、各色の平均レベルを求めた。
【0106】
◎:十分な画像濃度であり、ムラの発生も認められない
○:十分な画像濃度であるが、若干ムラの発生が認められる
△:やや画像濃度が低い
×:画像濃度が明らかに低い
××:画像濃度が明らかに低く、強いムラの発生も認められる
以上により得られた各評価結果を、表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定したインクジェット記録方法により作成した画像は、比較例に対し、滲みの発生が抑制され、均一で高い画像を備えたプリンと物が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】ラインヘッド方式のインクジェットヘッドを用いた水性染料インク及び尿素水溶液の付与方法の一例を示す概略図である。
【図2】ラインヘッド方式のインクジェットヘッドを用いた水性染料インク及び尿素水溶液の付与方法の他の一例を示す概略図である。
【図3】図2で示した水性染料インクを吐出するインクジェットヘッドと尿素水溶液を吐出するラインヘッド方式のインクジェットヘッドから構成されるインクジェットヘッドユニットの底面図である。
【図4】本発明のインクジェット記録方法における各工程の流れを示す概略ライン図である。
【符号の説明】
【0110】
1、2 インクジェットヘッド
3 スプレー塗布装置
4 ローラ塗布装置
5、7 尿素水溶液供給部
6 エクストルージョン塗布装置
8 フラットパネルヒーター
9 加熱ローラ
10 サポートローラ
A 印画工程
B 染着工程
C 加熱処理工程
D 洗浄工程
INK 水性染料インク
U 尿素水溶液
、H、H、H インク用インクジェットヘッド
尿素水溶液用インクジェットヘッド
P 布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受容層を有さない布帛に、水溶性染料として酸性染料または直接染料と、酸性基としてカルボキシル基またはスルホ基を有し、酸価が70mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下の水溶性樹脂とを含有する水性染料インクを吐出して印画した後、該布帛に尿素を1.0g/m以上付与し、次いで、該布帛を150℃以上の温度で加熱処理を施すことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記水性染料インクを前記布帛上に吐出する際に、該布帛を40℃以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−69817(P2010−69817A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242238(P2008−242238)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】