説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】インク供給源の負圧変動や駆動条件に影響されることなく吐出量の大きな液滴を安定して吐出することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッド10と、記録ヘッド10にインクを供給するインク供給手段とを備える。記録ヘッドは、インクを吐出する複数の吐出口17と、各吐出口17に連通する複数の液路18と、各液路17に供給されたインクを各吐出口17から液滴として吐出させるための吐出エネルギーを発生させる複数のエネルギー発生手段と、を備える。液路18内の一部を複数の流路に分割する分割部21をインク吐出口17より液路18の内方に設ける。インク供給手段は、記録ヘッド10内に対して負圧を調整可能に付与する負圧付与手段35,36を備え、記録ヘッド10内の圧力の変動に応じて負圧付与手段を制御して記録ヘッド内に付与する負圧を調整させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吐出口を有し、各吐出口からインク滴を吐出させるインクジェット方式の記録ヘッドを用いて記録を行う記録装置および記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドに配列された吐出口からインク滴を吐出させ、そのインク滴を記録媒体上に直接着弾させることによって記録を行う。このため、記録動作を低騒音で行うことができると共に、現像などの特別な処理も必要とせず、安価かつ小型に形成でき、カラー化も容易に実現できるという優れた利点も有している。特に、インク滴を吐出するためのエネルギーとして熱を利用するインクジェット記録装置では、記録ヘッドの複数の吐出口を高密度に形成することが可能であり、高解像度、高画質の画像を高速に形成することができる。
【0003】
図24はインクジェット記録装置の一例を示すものである。315(K)、315(C)、315(M)、315(Y)は、図24の紙面と直交する方向に延在するフルラインタイプの記録ヘッドである。この記録ヘッドは、使用する記録媒体Pの最大幅以上の長さに亘って、インクを吐出するための吐出口が配列されている。
【0004】
これらの記録ヘッド315(K)、315(C)、315(M)、315(Y)の吐出口からは、それぞれブラック、シアン、マゼンダ、イエローのインクが所定のタイミングで記録媒体Pに向けて吐出される。そして、インクの吐出タイミングに応じて記録媒体Pが図24中矢印方向に搬送されることにより、記録媒体P上にカラー画像が記録される。なお、図24に示す記録媒体Pは、ロール状に巻かれた連続ラベル紙となっている。ロール供給ユニット317から供給されるラベル紙316は、記録ヘッド317の下部に配置された搬送ユニット18によって、予め設定されたスピードで搬送される。
【0005】
インクカートリッジ319(K)、319(C)、319(M)、319(Y)と記録ヘッド315(K)、315(C)、315(M)、315(Y)は、各インク色毎に、図示しないインク供給系に接続されている。また、クリーニング等により記録ヘッド315の各吐出口から排出されるインクを回収するための回復桶320も、各インク色毎に、インク供給系に接続されている。
【0006】
このようなインクジェット記録装置に用いられる従来の記録ヘッドH1の吐出口周辺の構造を図20の模式的斜視図にて示す。また、図21は従来の記録ヘッドの吐出口およびこれに連通する液路の構造を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図、(c)は正面図である。
図20および図21に示す記録ヘッドH1は、ヒータボード2と、このヒータボード2上に一定の間隔を介して突設された複数のノズル側壁部6と、ノズル側壁部6の上面に設けられた天板7とを備える。そして、これらによって、インクを吐出する吐出口3と、これに連通する液路4とからなるノズル5が複数個配列されている。また、各液路の一面を形成するヒータボード2には、各液路4内に供給されるインクを吐出口3から吐出させるための吐出エネルギーを発生するヒータ1が配置されている。
【0007】
このように構成された記録ヘッドH1において、ヒータ1が通電されると、液路4内に供給されたインクがヒータ1の熱によって瞬間的に加熱されてインク内に気泡が発生し、その気泡発生時の圧力によって吐出口3からインク滴が吐出される。
【0008】
ところで、インクジェット記録装置、特に産業用のインクジェット記録装置は、様々な記録媒体への記録を行うことから、それぞれの記録媒体に適した特性を持つ種々の特殊インクを用いた記録を可能にすることが求められる傾向にある。これらの特殊インクは、通常のインクに比べて粘性が高い等、安定した吐出が困難なものも含まれている。こうした特殊インクの吐出の安定化を図るため、産業用のインクジェット記録装置では、吐出されるインク滴の吐出量を大きくすること、すなわち、インク滴の大液滴化を図ることによって安定した吐出を実現することが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、吐出されるインクの大液滴化を図るインクジェット記録装置では、記録ヘッドH1における吐出口3の開口面積を大きくする必要がある。しかし、吐出口H1の開口面積を大きくすると、記録ヘッドH1のメニスカスを維持する力(メニスカス力または毛細管力)が小さくなる。その結果、インク供給系の負圧の変動などに影響されてメニスカスが破れ易くなり、ノズル5内に十分にインクが保持されない状態が発生するという問題がある。すなわち、吐出動作前にメニスカスが破壊された場合、ノズル5内のインクが不足した状態あるいは存在しない状態でヒータが駆動されることとなり、インク滴の吐出不良が発生する。
また、記録ヘッドH1にインクを供給するインクタンク内のインク量が減少して負圧が増大したとき、前述のようにノズル5における毛細管力が小さい状態にあると、ノズルへのインクのリフィルが遅くなる。その結果、吐出が不安定になって記録結果がかすれてしまうという問題が生じる。
【0010】
また、インク供給系におけるインクの負圧を制御して、記録中のインクの負圧を小さく抑え、記録ヘッドへのインクのリフィル性を高めて高速印刷に対応する技術も提案されている。しかしこの場合には、記録終了時に負圧を大きくして、インク供給系からのインクの流れを止めることが必要であり、その際に、前述のような吐出口の開口面積および液路の断面積を広げたノズルでは、メニスカスが破れたりして吐出が不安定になる。
【0011】
このように従来の記録ヘッドH1は、吐出口3の開口面積を大きくすれば、メニスカスの維持およびノズルへのリフィル性が低下し、逆に吐出口3の開口面積を小さくすれば、十分な吐出量を得ることが困難になるという二律背反の問題が生じている。
【0012】
そこで、図22および図23に示すような記録ヘッドH2およびH3を用いることも提案、実施されている。すなわち、図22に示す記録ヘッドH2は、正方形をなすと共に比較的小さな開口面積を有する一対の吐出口3a,3bを近接して配置し、各吐出口3a,3bから吐出されるインクを合体させて、一つの液滴として吐出させる構造となっている。
また、図23に示す記録ヘッドH3は、面積の大きい正方形の吐出口を仕切板で区切って長方形形状の吐出口3c,3dを形成し、各吐出口3c,3dから吐出されるインクを合体させて一つの液滴として吐出させる構造となっている。
【0013】
この図22,図23に示す記録ヘッドH2,H3にあっては、インクが各吐出口から分離された状態で外部へと押し出されるため、それらのインクが一つのインク滴として合体しないまま吐出されてしまい、記録品質の低下を招く虞がある。特に、図23に示す記録ヘッドの場合、区切られた各吐出口が長方形の細長い形状となるため、各吐出口から押し出されるインクの方向が安定せず、一つのインク滴に合体しにくいという問題が生じる。また、図22に示す記録ヘッドの場合、正方形をなす各吐出口3a,3bからインクが押し出される。このため、各吐出口3a,3bから押し出されたインクが合体したとしても、そのインク滴が全体的に細長くなってしまい、インク滴の飛翔方向が安定しないという問題も生じる。
【0014】
本発明は上記従来技術の課題に着目してなされたものであり、負圧変動や駆動条件に影響されることなく吐出量の大きな液滴を安定して吐出することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来技術の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0016】
すなわち、本発明の第1の形態は、インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインク供給手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドは、前記各吐出口に連通する複数の液路と、前記各液路内に供給されたインクを前記各吐出口から液滴として吐出させるための吐出エネルギーを発生させる複数のエネルギー発生素子と、前記インク吐出口より前記液路の内方に設けられ、前記液路内の一部を複数の流路に分割する分割部と、を有し、前記インク供給手段は、インク供給源と前記記録ヘッドとを連通させるインク連通路中に備えられて、前記記録ヘッド内に対して負圧を調整可能に付与する負圧付与手段と、前記記録ヘッド内の圧力の変動に応じて前記負圧付与手段を制御して前記記録ヘッド内に付与する負圧を調整させるための制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第2の形態は、インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッドにインクを供給しつつ記録を行うインクジェット記録方法であって、前記記録ヘッドは、前記各吐出口に連通する複数の液路と、前記各液路内に供給されたインクを前記各吐出口から液滴として吐出させるための吐出エネルギーを発生させる複数のエネルギー発生素子と、前記インク吐出口より前記液路の内方に設けられ、前記液路内の一部を複数の流路に分割する分割部と、を有し、前記記録ヘッド内の圧力の変動を検出し、その検出結果に応じて前記記録ヘッド内に付与する負圧を一定範囲内に維持するよう調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、吐出口より液路の内方に分割部を設けてメニスカス保持力を高めると共に、記録ヘッドに供給するインクの負圧を制御する。このため、記録ヘッドの駆動条件などに拘わりなく吐出量の大きい液滴を一つの液滴として吐出することが可能になると共に、液路におけるインクのリフィル性も高めることが可能になる。その結果、吐出の安定性は向上し、高品位な画像を高速に記録することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第1の実施形態]
この第1の実施形態は、図1および図2のような画像形成システムに組み込まれるインクジェット記録装置の例を示している。
【0020】
(画像形成システムの概要)
図1は、画像形成システムの概要を示す模式的斜視図である。本例のプリンタ複合システムは、概して、情報処理装置100および画像形成装置からなり、画像形成装置は、媒体搬送装置117およびプリンタ複合システムを備える。プリンタ複合システムは、独立した複数のエンジンであるプリンタユニット(以下、「インクジェット記録装置」または「記録装置」とも言う)116−1〜116−5を有する。
【0021】
情報処理装置100は、形成すべき画像データの供給源であり、1枚の画像を複数の領域に分割し、それらに対応する複数の分割画像データを、プリンタ複合システム400を構成する複数のプリンタユニット116−1〜116−5のそれぞれに供給する。媒体搬送装置117によって搬送される記録媒体206は、プリンタユニット116−1〜116−5の配列によって記録可能な範囲に対応した幅方向のサイズを有する。また媒体搬送装置117は、記録媒体206の端部(紙端)を検出して、各プリンタユニット116−1〜116−5の記録開始位置を規定するための信号を出力する。
【0022】
プリンタ複合システムは、複数(本例では5台)のプリンタユニット116−1〜116−5を有し、それらは、記録媒体206上の記録領域を分割して記録を行うべく配列される。各プリンタユニットは、情報処理装置100から供給された分割画像データに基づき、媒体搬送装置117により規定されるタイミングにて、担当する記録領域に対し、それぞれ独立して印刷動作(記録動作)を実行する。各プリンタユニットには、記録媒体206に対してフルカラーの画像を記録すべく複数のインクが搭載されている。ここでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の三原色のインクと、ブラック(K)のインクのそれぞれを吐出するための記録ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドに対しては、インク供給源であるインクタンク203Y、203M、203Cおよび203Kからそれぞれの色のインクが供給される。
【0023】
印刷プログラム(プリンタドライバ)は、情報処理装置100に接続されている複数の印刷装置116−1〜116−5の台数(すなわち、1ページの画像を分割する分割数に対応)を設定する手段が設けられている。さらに、プリンタドライバは、印刷装置116−1〜116−5のそれぞれが印刷を担当する領域(分割幅)を設定する手段と、各印刷装置が1ページ内のどの部分の画像を分担するかを示す印刷担当部の関連付け設定手段(図3参照)と、を有している。そして、これらの各種設定手段によって設定された内容に基づいて1ページの画像を分割し、それらの対応する分割画像データを各々の印刷装置116−1〜116−5へ転送して、印刷を行わせる。
【0024】
情報処理装置100と、複数の印刷装置116−1〜116−5および搬送装置117とはハブ140を介して接続され、印刷データ、動作開始および終了コマンド等の転送を行う。また、印刷装置116−1〜116−5の各々(以下、これら印刷装置を特定しない場合は符号116で示す)と搬送装置117との間も信号接続されている。これにより、記録媒体206の先端検出ないし印刷先頭位置の設定や、媒体搬送速度と各印刷装置における印刷動作(インク吐出動作)とを同期させるための信号の授受が行われる。
【0025】
各印刷装置116には、例えば、記録媒体206に対して連続的なフルカラー記録を行うべく、前述の4色のインクをそれぞれ吐出するための記録ヘッド10Y、10M、10Cおよび10Kの4本の記録ヘッドが搭載されている。なお、以下の説明において、各記録ヘッドを特定する必要がない場合は符号10によって表す。記録媒体206の搬送方向における各色インク用記録ヘッドの並び順は、各印刷装置116間において等しく、従って色の重なり順も等しい。各記録ヘッドのインク吐出口は、記録媒体の幅方向(媒体搬送方向に直交する方向)に配列される。ここでは、印刷装置116−1〜116−5全体として約500mmの最大記録幅を満たすものとなっている。
【0026】
各印刷装置116における記録ヘッド10Y、10M、10Cおよび10Kに対しては、インク供給源であるインクタンク203Y、203M、203Cおよび203Kから、専用のチューブ204を介してそれぞれの色のインクが供給される。
【0027】
(各印刷装置の制御系)
図2は、各印刷装置116における制御系の構成例を示す。
図において、800は、所定の処理手順に対応したプログラム等に従って印刷装置116の全体的な制御を行うCPU、803はそのプログラムや固定データを格納したROM、805は作業用メモリ領域として用いられるRAMである。また、814は、CPU800が制御のために使用する所要のパラメータ等を、印刷装置の電源が遮断されている場合にも保持しておくために記憶するEEPROMである。
【0028】
802はUSBケーブルを介して情報処理装置100に対して印刷装置116を接続するためのインタフェースコントローラ、801は各色画像データを展開するためのVRAMである。804は、インタフェースコントローラ802に受信した画像データをVRAM801に転送するとともに、印刷の進捗に従って画像データを読み出す制御を行うメモリコントローラである。情報処理装置100からUSBケーブルを介して、分割された印刷データがインタフェースコントローラ802に受信されると、CPU800は、まず、その印刷データに付加されたコマンドを解析する。この後、CPU800は、記録データの各色成分のイメージデータをVRAM801にビットマップ展開する指示を行う。この指示を受けて、メモリコントローラ804は、画像データをインタフェースコントローラ802からVRAM801に高速に書き込む。
【0029】
810は、各色記録ヘッド10Y、10M、10Cおよび10Kを制御するための制御回路である。809は、記録ヘッド10の吐出口が形成された面のキャッピングを行うためのキャッピング機構(不図示)を駆動するキャッピングモータであり、入出力ポート806、駆動部807を介して駆動される。
【0030】
ポンプモータ820は、図4において後に詳述するサブタンク40と記録ヘッド10との間に挿入されるポンプ48を駆動するための正、逆両回転可能なモータである。ソレノイド821はバルブ35を駆動するアクチュエータであり、CPU800がPWM回路823に設定するPWM(Pulse Width Modulation)値によって、バルブ35の開閉状態のアナログ的制御を可能とする。
【0031】
ポンプモータ508はサーボモータであり、記録ヘッドに連結される流路の近傍に設けた圧力センサ49の出力がポンプモータ制御部822にフィードバックされることによってメカポンプ36を制御する。ポンプモータ820、508、ソレノイド821および圧力センサ49は、各インク色に対応する記録ヘッド10Y、10M、10Cおよび10K毎に各々独立して備えられている。
【0032】
印刷装置116の非使用時等においては、キャッピングモータ809を駆動することにより、記録ヘッド10Y、10M、10Cおよび10Kと、キャッピング機構とを相対移動させてキャッピングが行われる。一方、印刷すべき画像データがVRAM801に展開された場合には、キャッピングモータ809を駆動し、各記録ヘッドとキャッピング機構とを相対移動させてキャッピング状態を解除する。そして、後述の媒体搬送装置117からの印刷開始信号を待つ。
【0033】
806は、入出力(I/O)ポートであり、モータ駆動部807、他の駆動手段および所要のセンサなど(不図示)が接続されて、CPU800との間で信号の授受を行う。812は、媒体搬送装置117から、記録媒体の頭出し信号と媒体の移動に同期した位置パルス信号を受信し、これらに適切に同期して印刷動作を実行するためのタイミング信号を発生する同期化回路である。すなわち、記録媒体の搬送に伴う位置パルスに同期して、VRAM801のデータがメモリコントローラ804によって高速に読み出され、そのデータが記録ヘッド制御回路810を介して記録ヘッド10に転送されることにより、カラー記録(印刷)が行われる。
【0034】
(搬送装置の構成および制御系)
図1を参照するに、媒体搬送装置117は、幅方向に大きくかつ搬送方向には任意のサイズをもつ記録媒体の搬送にも適したものである。また、印刷装置116−1〜116−5に設けられた記録ヘッド810との対向する位置において、記録媒体206の被記録面を平坦に規制するために、メディアステージ202が設けられている。記録媒体としては種々の厚みを有するものが用いられるので、厚紙であってもその被記録面を平坦とするために、メディアステージ202への記録媒体の密着性を向上させるための手段を付加しても良い。搬送モータ205は、メディアステージ205の上面に密着した記録媒体を搬送するための搬送ローラ列205Aの駆動源である。
【0035】
さらに、媒体搬送装置117における記録媒体の搬送部の構成としては、図2に示したような固定のメディアステージ202を具えたものに限られない。例えば、印刷位置に対する搬送方向の上流側および下流側に配された一対のドラムに無端の搬送ベルトを架け渡し、その搬送ベルト上に記録媒体を担持しつつ、ドラムの回転に伴う搬送ベルトの走行によって、記録媒体の搬送を行うものでも良い。これらの形態は、カット紙状または連続紙状のいずれの記録媒体でも搬送可能である。
【0036】
印刷装置116−1〜116−5のそれぞれは、情報処理装置100から分割印刷データの供給を受けるとともに、媒体搬送装置117から供給される記録タイミングの規定信号に応じて、独立して印刷動作を行うものである。それぞれの印刷装置116−1〜116−5は、信号系に関して完結したプリンタユニットであって、印刷データの供給や記録タイミングが一つの印刷装置を経由して他の印刷装置に伝達されるような構成とはなっていない。すなわち、各印刷装置は、自らが用いる記録ヘッド10Y〜10Kおよび各記録ヘッドに配列されるノズルに対応してデータを整列し、規定のタイミングにてインクの吐出動作を行う手段(シフトレジスタやラッチ回路など)を個々に有する。つまり、各印刷装置はそれぞれ同様のハードウェアを有し、同様のソフトウェアにて動作を行うものであり、一つの印刷装置の動作が他の印刷装置の動作に直接影響を与えることはなく、全体として一つの画像データを印刷すべく協働するものである。
【0037】
(インク系の概要)
本例における印刷装置116−1〜116−5のそれぞれは、独立して動作可能なであることに加え、各印刷装置における各記録ヘッド10に対するインク供給系(インク供給手段)と、各記録ヘッド10に対する回復系と、を含むインク系についても互いに独立している。
【0038】
図3は、インク系の内、特にインク供給系の構成を説明するための模式図である。、各印刷装置116における記録ヘッド10Y、10M、10Cおよび10Kに対しては、インク供給源であるインクタンク(以下、メインタンクともいう)203Y、203M、203Cおよび203Kから、専用のチューブ204Y、204M、204Cおよび204Kを介しそれぞれの色のインクが分配供給される。なお、インクの供給方式としては、インクタンクに常時流体連通していわば連続的にインクが供給されるものでも良い。あるいは、各記録ヘッド毎に設けたインク供給ユニットに保持されるインクが少なくなった時に流体連通するようにすることで、いわば間歇的にインク供給がなされるものでも良い。
【0039】
以上のように、本実施形態においては、各印刷装置における各記録ヘッド10に対するインク供給系および回復系についても、印刷装置間において互いに独立した構成を有している。これによって、各印刷装置の動作状態すなわち印刷量等に応じて、適切な量のインク供給や回復動作が可能となる。
【0040】
(インク系の構成例)
図4は、1つの記録ヘッドに対してインクを供給するためのインク供給手段としてのインク系の内部構成例を示す。記録ヘッド10にはインク接続管が2つ設けられている。このうち、一方のインク接続管は、記録ヘッドのインク吐出口に形成されるインクメニスカスの保持力と平衡する好ましい負圧を発生するための負圧室30に接続されている。また他方のインク供給管は、記録ヘッド毎のインク供給ユニット(以下、サブタンクという)40にポンプ48を介して接続される。
【0041】
負圧室30には、圧力調整バルブ35を介して機械式のインクポンプ(以下、「メカポンプ」ともいう)36が接続されており、負圧室30へのインク供給を制御している。本例におけるインクポンプ36はギアポンプである。
【0042】
また、ポンプ36を含め、インク供給経路の各部に配されるポンプとしては、駆動信号に応じてインクを移送可能なものであれば、いかなる形態のものを用いても良い。本実施形態のポンプ36は、インクの流れの方向の切り替えが可能、かつインク流量を調節可能なものである。すなわち本例のポンプ36は、負圧室30に対してインクを供給する方向(以下、この方向への回転を正転という)と、抜き出す方向(以下、この方向への回転を逆転という)と、に選択的にインクを移送可能なギアポンプである。
【0043】
ポンプ36は脱気システム38に接続されており、ポンプ36に移送されるインクに溶融している気体成分を除去する。この脱気システム38は、記録によって消費される適切な量のインクを収納するサブタンク40に接続されている(図4参照)。サブタンク40は、その内部のインク収納空間の一部を画成し、かつ収納するインク量に応じて変形可能なバッファ部材41を有する。さらに、サブタンク40は、メインタンク203に接続されるインクチューブ204(図1参照)との間にて適宜インク連通を行うためのジョイント42をも有している。このジョイント42は、サブタンク内部のインクが少なくなった際に、インクチューブ204に設けられたジ良いント43に接続されることによって、メインタンク203からサブタンク40にインクを適宜補充できる構成になっている。
【0044】
一方、記録ヘッド10に設けられた接続管の他方は、図9のように、ポンプ48を介してサブタンク40に接続されている。このポンプ48と上記ポンプ36との作動により、サブタンク40、負圧室30および記録ヘッド10の間にてインクを循環させることができる。
【0045】
図5(a),(b),(c)のように、負圧室30は、可撓性部材でなるインク保持部31と、対向する一対の板状インク保持部33とからなり、これらによって画成される内部空間にインクを保持する。対向する一対の板状インク保持部33間には、圧縮ばね32が配設され、その圧縮ばね32が板状インク保持部33を互いに離隔する方向に付勢することにより、負圧が発生するようになっている。この負圧室30は記録ヘッド10の近傍に配置されており、それらの両者間の接続部での圧力損失はほとんど無い。従って、負圧室30の内部は記録ヘッド内の負圧とほぼ同様となる。記録ヘッド10へのインクの供給量が急激に変化して、ポンプ36からのインクの供給量が不足する場合でも、この負圧室30がバッファとなって供給を助ける。具体的には、一対の板状インク保持部33がばね32の伸長力に抗して、これを圧縮しながら近接方向に変位することにより、負圧室30の内容積を小さくしてインク供給を行う。
【0046】
この負圧室30内の圧力は、圧力センサ49が行う。この圧力センサ49としては、負圧室30内の負圧を直接的に検出する検出方式のものの他、種々の検出方式のものを用いることができる。例えば、図5に示す光学式のセンサ149を用いることもできる。このセンサ149は、板状インク保持部33に取付けられた反射板149Aと、その反射板149Aと対向する負圧室30外部の定位置に備えられた発光素子(発光ダイオードなど)149Bおよび受光素子(受光トランジスタなど)149Cと、を含む。
【0047】
発光素子149Bからの光は、反射板149Aによって反射されてから受光素子149Cに受光される。その受光量は、図5(a)に示すように負圧室3内のインク量が多いときに多くなり、図5(b)および(c)に示すように負圧室3内のインク量が減少するにつれて減少する。従ってセンサ149は、負圧室30内のインク量を検知することになり、そのインク量と負圧室30内の負圧との関係から、間接的に負圧室30内の負圧を検出することができる。
【0048】
また印刷装置116は、記録ヘッド10のインク吐出性能を健全な状態に維持、もしくは回復させるための回復系機構を備えており、その一部として記録ヘッド10を密閉キャップするキャップ44、ポンプ45、バルブ47などを備える。
【0049】
なお、バルブ35を含めた図中の各部に配されるバルブは、制御信号に応じて流路を適切に開閉または流量を適切に制御できるものであれば、いかなる形態のものを用いても良い。
【0050】
(記録ヘッドの構成例)
図6は、この第1の実施形態に用いられる記録ヘッド10の内部のインク流路構成、および、その一部を拡大して示す説明図である。ここに示す記録ヘッドは、4インチ幅にわたってノズル19を所定の密度で配列したものとなっている。各ノズルの一端に形成されている開口部はインクの吐出口17であり、この吐出口17には、液路18が連通している。各液路18の吐出口17とは反対側の端部は、前述の2本の接続管に連結されている液体供給路(以下、共通液室とも言う)20に連通している。液路18内には、インクを吐出するためのエネルギーを発生する素子として、インクを加熱発泡させるための熱エネルギーを発生する電気熱変換素子(ヒータ)11が設けられている。このヒータ11に1〜5μ秒程度の通電を行うことによりインクが加熱され、ヒータ表面上のインクは300℃以上の温度で膜沸騰が発生する。それによってインクは慣性力を受け、吐出口17から吐出されて記録媒体に着弾する。これにより、画像が形成される。なお、図6中、56はインク供給路20の供給側と戻り側のそれぞれに設けたフィルタである。
【0051】
図7は、第1の実施形態における記録ヘッド10の吐出口周辺の構造をさらに拡大して示す斜視図である。また、図8は記録ヘッド10の吐出口およびこれに連通する液路の構造を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図、(c)は正面図をそれぞれ示している。
図7および図8に示すように、この第1の実施形態における記録ヘッド10は、インクを加熱発泡するヒータ11を有するヒータボード12と、このヒータボード12上に設けたノズル形成部材13と、このノズル形成部材13上に設けた天板22とを有する。これらの部材の端面は同一平面上に位置するよう形成されている。
【0052】
また、ノズル形成部材13の端面である吐出口形成面には、インクを吐出する矩形の吐出口17が一定の間隔を介して形成されると共に、各吐出口17に連通する液路18が形成されている。すなわち、ノズル形成部材13には、天板22に接して吐出口17の一辺を形成する平面部14と、ヒータボード12上に一定の間隔を介して配置されると共に一端が平面部14に接して吐出口18の両側面を形成する側壁部16が形成されている。さらに、各側壁部16の間に位置し、吐出口14の他の一辺を形成する底面部15と、が形成されている。また、ノズル形成部材13には、吐出口17より内方に所定距離dだけ入り込んだ位置に、液路18の一部を分割する板状の分割部21が形成されている。この分割部21は、平面部14および底面部15と同一部材によって一体形成されている。
【0053】
以上のように、この第1の実施形態における記録ヘッド10は、ノズル形成部材13によって複数の吐出口17が形成され、さらにこのノズル形成部材13とヒータボード12とにより各吐出口17に連通する複数の液路18が形成されている。また、各液路18は、記録ヘッド10に設けられた不図示の共通液室に連通している。共通液室には不図示のインクタンクからのインクが供給され、そのインクが各液路に供給される。記録動作時のインク供給は主として各液路の毛細管力により行なわれ、又記録ヘッド10の回復動作時には不図示の加圧ポンプによって加圧供給することもある。
【0054】
ここで、本例の記録ヘッドにおけるインクの吐出過程を図9の概念図に基づき説明する。
図9(a)は、記録ヘッドのノズル19に形成される通常のメニスカスLmを示している。ここに示すインクLのメニスカスLmは、吐出口17の開口面積と同一の大きさのメニスカスLmとなっており、分割部21には接触していない。
図9(b)はヒータ11が熱せられ、液路18内で発泡BL1した状態を示している。液路18は、分割部21によって液路の内方から吐出口17よりdだけ内方に入り込んだ位置まで二つに分かれている。このため、分割部21によって分割された各分割流路18a,18bを通過してきたインクは、それぞれ吐出口17に向けて押し出されて行き、吐出口17から吐出された直後のインクの先端は、二つの液滴が重なったような形状となる。しかし、吐出口3側の分割部21の先端から吐出口3に至る分割部21の存在しない部分で、二つの分割流路18a,18bを通過してきたインクがすでに一体化しているため、図9(c)に示すように消泡BL2の段階で、各インク滴は一つの液滴となる。従って、一つの吐出口17から吐出されるインク滴は2つに分散することなく、図9(d)に示すように、確実に一つの液滴L1となって吐出される。
【0055】
また、図9(d)に示すように、インクLが吐出口17から完全に分離してインク滴L1となった後、ノズル19側に残ったインクLは、液路18内の負圧によって後退する。そのインクLによって形成されるメニスカスは、分割部21によって分割された分割流路18a,18bに形成される。各分割流路18a,18bの断面積は分割部21によって2分割されているため、メニスカス保持力(毛細管力)は高められている。これにより、分割流路18a,18bまで後退したメニスカスLmが破れることはなく、各分割流路18a,18b内に保持される。その後、各分割流路18a,18b内のメニスカスは、図9(e)に示すように、ノズル19内にインクがリフィルされた状態となる。このリフィル動作において、断面積の小さな各分割流路18a,18bでは、インクに対して大きな毛細管力が作用するため、一旦後退したメニスカス10を、吐出口17側へと迅速に移動させることができ、リフィル時間を短縮させることができる。従って、高速な記録動作においても、安定したインク吐出を実現することができる。
このように、この第1の実施形態によれば、吐出量の大きい液滴を実現させる場合にも、メニスカス保持力を高められていることから、インク系に負圧の変動が生じた場合にも、極めて安定した吐出を行うことが可能となる。
【0056】
(印刷装置における動作)
次に、上記印刷装置116の動作を説明する。なお、以下の説明では、印刷待機時および印刷時などにおける上記インク系の動作を主体に説明する。
【0057】
印刷待機時(図10参照)
印刷開始前などの通常の待機状態では、環境変化に対する安定性を維持するために、記録ヘッド10内のインクに対して比較的大きな負圧(大気圧より20〜150mmAq程度の低い圧)を作用させる。すなわち、図10(a)に示すように、ポンプ48を止めて記録ヘッド10からサブタンク40へのインクの戻りを制限した上、ポンプ36を逆転させて、負圧室30内のインクをサブタンク40内に戻す。これにより、記録ヘッド10内のインクに作用する負圧が増大する。そして図10(b)に示すように、より大きい負圧を作用させた状態を維持して印刷の開始を待つ。サブタンク40は、負圧室30から戻されたインクの分だけ、図10(a)における下向きの矢印方向に容積が増大する。
【0058】
しかし、図10(b)に示す負圧状態のままでは、印刷時に記録ヘッド10へのインク供給(リフィル)性能が低下し、高い周波数で記録ヘッドを駆動することが難しくなる。そこで、印刷信号が入力された際に、図10(c)に示すように、ポンプ36を正転させてインクの予備供給を行う。すなわち、負圧室30を加圧して記録ヘッド10に作用する負圧を正方向に制御し、印刷に適した負圧にまで下げる。負圧室30の負圧は、負圧センサ49またはセンサ149(図5参照)によって検知することができる。またサブタンク40は、負圧室30に送り込まれるインクの分だけ、図10(c)における上向きの矢印方向に容積が減少する。
【0059】
印刷時の供給制御(図11参照)
負圧調整バルブ35およびメカポンプ36を適切に制御することにより、印刷装置116ないし記録ヘッド10が印刷する画像データの内容に対応する様々な印刷デューティ(記録密度)に応じて、より均一な負圧を維持できる。
【0060】
例えば、印刷デューティが低い場合には、図11(a)に示すように、ポンプ36を低速で正転させてインクを供給しつつ、さらに供給を適正化するために、負圧調整バルブ35を制御して負圧を高精度に安定させる。つまり、少量のインクを供給することにより、記録ヘッド10内のインクの負圧を最適な範囲に安定させ、さらに、負圧調整バルブ35の開閉制御または開度の調整制御することによって、そのインクの負圧をより安定化させる。
【0061】
このような場合、流路が所定時間内に開かれる割合は比較的少なく、かつ開度は比較的小さい範囲で制御されることになる。
【0062】
また、印刷デューティ(記録密度)が高い場合には、図11(b)に示すように、ポンプ36をより高速で正転させてインク供給量を増大させると共に、負圧調整バルブ35を制御して負圧を安定化させる。その場合、流路が所定時間内に開かれる割合は比較的多くなり、かつ開度は比較的大きい範囲で制御されることになる。
【0063】
また、印刷動作の停止時には、図11(c)に示すように負圧調整バルブ35を即座に閉じる。これは、印刷動作の停止時におけるインクの慣性によって、大きなインク供給圧が負圧室30および記録ヘッド10に加わることを防止するためである。すなわち、インク供給圧が加わった場合には、記録ヘッドの内圧が上昇するため、その上昇圧が一定範囲を超えると、インク吐出口からのインク漏洩の可能性があり、その後の印刷動作時において印刷品位の低下を招くおそれがあるためである。但し、前述のように、本例の記録ヘッド10は、各ノズル内における毛管力が分割流路によって高められているため、インク供給圧が一定範囲内であれば、インクの漏出を抑えることができる。従って、本例の記録ヘッドによれば、負圧調整バルブ35を閉じるタイミングに多少の誤差が生じても問題はない。
【0064】
この負圧調整バルブ35の制御は、負圧室30の負圧を検出するセンサ49,149(図5参照)の出力信号をフィードバックすることにより行うことができる。また後述するように、印刷データ(記録データ)に基づいて予め負圧調整バルブ35とポンプ36を関連的に制御することもできる。
【0065】
また、単位時間当たりのインクの消費量に応じて、つまり印刷デューティに応じて、ポンプ36の正転量や正転速度のみならず、その逆転量や逆転速度をも制御することができる。ポンプ36を正転させた場合には、インクの消費量に応じて記録ヘッド10側のインクを積極的に加圧することにより、記録ヘッド10内の負圧の上昇を抑えることができる。一方、ポンプ36を逆転させた場合には、記録ヘッド10側のインクを積極的に減圧させることにより、記録ヘッド10内の負圧の減少を抑えることができる。また、このようなポンプ36の制御に関連して、負圧調整バルブ35を制御することにより、より高精度に記録ヘッド10内の負圧を制御して、その負圧を一層安定化させることができる。
【0066】
いずれにしても本実施形態によれば、記録ヘッドに供給するインクの負圧を積極的に制御することにより、印刷デューティ(記録密度)の如何に拘わらず、適正な負圧を安定して記録ヘッドに印加することができる。そのため、例えば、大判の記録媒体に大きなインク滴によって高速に画像を記録するような産業用の記録装置(印刷装置)においても記録ヘッド内の負圧の変動を小さく抑えることができる。すなわち、本実施形態によれば、単位時間当たりのインク消費量が大幅に変化した場合にも応答性よく負圧を制御して、記録ヘッド内の負圧の変動を小さく抑えることができる。
【0067】
このように、この第1の実施形態によれば、上記記録ヘッドによるメニスカス力の増大と、上記インク系による負圧の安定化とが相俟って、より安定したインク滴の吐出動作を実現することができる。すなわち、上記記録ヘッド10内の負圧が安定すれば、分割された複数の流路内に確実にインクを保持させることができ、メニスカスの破れをより確実に防止することができるようになる。さらに、インクのリフィル性もより向上する。つまり、記録ヘッド10内の負圧が安定化することにより、図9の(d)に示すインク滴の分離状態から図9(e)に示す状態へとメニスカスが迅速に復帰するため、高速記録にも十分に対応することができる。
【0068】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
前述の第1の実施形態における記録ヘッド(図6ないし図9参照)10では、分割部21が均一な厚さを有する平板形状を有し、インクの流れる方向に対して吐出口17側とヒータ11側の両方に端面を有するものとなっている。これに対し、この第2の実施形態では、分割部21の形状を、図12または図13に示すように構成したものとなっている。
【0069】
すなわち、図12に示す記録ヘッド10aには、吐出口17側に向けて薄くなるテーパ状の分割部22が設けられている。このため、分割部21によって分割された2つの分割流路18a,18bを通過してきたインクが、吐出口17から吐出されるまでにより結合し易くなり、より安定した吐出が可能となる。
【0070】
さらに、図13に示す記録ヘッド10bにおける分割部23のように、吐出口17側に向けて薄くなるテーパ部23aと、ヒータ11側に向けて薄くなるテーパ部23bとを形成することも可能である。これによれば、2つの分割流路18a,18bを通過してきたインクが、吐出口17から吐出されるまでにさらに結合し易くなると共に、吐出時およびリフィル時などにおいて分割流路18a,18bへのインクの流入がスムーズになる。このため、各分割分割流路18a,18bを通過したインクをより結合し易くすることが可能となると共に、リフィルをより迅速に行うことが可能となり、記録動作の高速化により適したものとなる。
【0071】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
本発明の第3の実施形態は、記録ヘッドを図14に示すように構成したものである。また、図15は本発明の第3の実施形態における記録ヘッドの構成を模式的に示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図、(c)は正面図をそれぞれ示している。
【0072】
ここに示す記録ヘッド10dにおいても、その基本的な構成は、上記第1の実施形態で示したものと同様となっている。すなわち、インクを加熱発泡させるためのヒータ11を有するヒータボード2の上に、インクを吐出させる吐出口3および吐出口3に連通する液路18からなるノズルを形成するためのノズル形成部材13が設けられる。さらにこのノズル形成部材13上には天板22が設けられている。
【0073】
また、ノズル形成部材13には、吐出口17を形成する平面部14、側壁部16,底面部15および分割部21が形成されている。この分割部21は吐出口のより内方に入り込んだ位置に設けられている。さらに、この第2の実施形態では、液路18内に可動弁28が設けられており、この点が上記第1の実施形態と異なる。この可動弁28の自由端はヒータ11との対向位置に設けられており、ヒータ11の加熱によりインクに生じた発泡に伴って変位するようになっている。
【0074】
図15(a)は、この第3の実施形態における記録ヘッド10dにおいて、インクの発泡に伴って可動弁28が変位する様子を模式的に示した斜視図、図15(b)は同図(a)に示したものの縦断側面図である。図15(a)の一点鎖線および図15(b)に示すように、可動弁28の自由端は、インク内に生じた気泡に圧力によって図中、上方に変位する。これにより、可動弁28は、気泡Aの上流側(図15(b)中、右側)への膨出を抑制するストッパーとして作用し、気泡は吐出口17側へと成長する。これにより、発泡エネルギーをインク吐出のために効率的に利用することが可能となり、消費電力の削減、あるいは吐出速度の向上を図ることが可能となる。
【0075】
さらに、この第3の実施形態の可動弁28によれば、インク吐出方向の安定化にも有効である。
図16は発泡の前後において、可動弁28が変位する様子を正面から示した概念図である。図16(a)はインクが発泡していない状態を示している。この状態からヒータ21の加熱作用によってインクが発泡すると、その発泡11に伴って可動弁28は上方に変位し、可動弁28の端面は図16(b)に示すように、吐出口17を上下に分割する位置へと移動する。これに対し、分割部21は、吐出口17を左右に分割する位置に保持されているため、吐出口17は、その正面から見た状態において、分割部21と可動弁28の端面とにより上下左右に画成された状態となる。このため、気泡によって液路18内を流動するインクは、分割部21と可動弁28とにより上下方向および左右方向を規制された整流となる。このため、吐出口17から吐出されるインク滴の方向はより安定化する。
【0076】
なお、この第3の実施形態においても、分割部21を図12および図13に示すようにテーパ部を有する形状に構成することも可能である。
【0077】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。
この第4の実施形態では、上記第1の実施形態におけるギアポンプ36を図17の概略断面図に示すようなギアポンプPに変更したものである。
【0078】
この第4の実施形態におけるポンプPは、前述した第1の実施形態におけるメカポンプ36と同様のギアポンプである。但し、本例のポンプPは通常の容積型のギアポンプとは異なり、ギアG1,G2の歯先とケーシングCの内周面との間に、インクの通り抜け通路LAとしての隙間が形成されている。具体的には、ケーシングCの内面に、ギアG1,G2の歯先との間に隙間を形成するための拡径部が形成されている。従ってインクは、通路LAを通してポンプPを通り抜けることができると共に、ギアG1,G2の回転速度に応じて移動することになる。ギアG1,G2が図38中の矢印方向に高速回転した場合には、インクを上流側へ圧送する力が強く作用して、下流側に大きな負圧が生じることになる。一方、ギアG1,G2が同図中の矢印方向に低速回転した場合には、インクを上流側へ圧送する力が弱く作用して、下流側に小さな負圧が生じることになる。従って、このようにポンプPの回転速度を制御することにより、インクに付与する負圧を調整することができる。
【0079】
通り抜け通路は、ギアの回転速度に応じた圧送力を受ける位置に形成すればよく、本例の構成のみに特定されない。例えば、ギアの歯先の一部を切り欠くことによって、ギアとケーシングの内面との間に、通り抜け通路としての隙間を形成しても良い。
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。
【0080】
上記第1の実施形態では、ギアポンプ36およびバルブ35を有するインク供給系によってインクの負圧制御を行うようにしたが、この負圧制御を行うインク供給系としては、その他の構成を用いることも可能である。
【0081】
図18は、この第5の実施形態におけるインク供給系を概念的に示す図であり、記録ヘッド811とインクタンクとを連結するインク供給流路530、およびこのインク供給路530に設けられる負圧発生手段などが示されている。なお、この第5の実施形態に用いる記録ヘッド10は、上記第1ないし第4の実施形態に示した記録ヘッドと同様のものを用いることができる。
【0082】
図18において、インク供給路530は、サブタンク540の底部における異なる2箇所に両端部が連通する循環流路531と、この循環流路531の中間部分と記録ヘッド811とを連結する連結流路532と、により構成されている。連結流路532内には、インクの流通、遮断を行う圧力調整バルブ535が備えられている。なお、サブタンク540には、図外のメインタンクからインクが供給される。
【0083】
また、サブタンク540には、循環流路531内を通してインクを流動させる圧力調整ポンプ536が設けられている。本例の圧力調整ポンプ536は軸流ポンプであり、サブタンク540の上面に設けられたモータ501によって正方向または逆方向へ回転される回動軸536bと、この回動軸536bに固定される羽根車536aと、によって構成されている。羽根車536aは、循環流路531の一端部に連通するサブタンク540の流通口h1の近傍に配置されている。羽根車536aは、その正転によって、循環流路531内のインクを流通口h1からサブタンク540内に引き込み、図中の矢印に示す方向に循環させる。また羽根車536aは、その正転によってサブタンク540内のインクを流通口h1から循環流路531内に送り出す。
【0084】
また、循環流路531の他端部には、サブタンク540と循環流路531との間にて流動するインク量を調整するための流量調整バルブ(流抵抗調整手段)503が設けられている。本例では、循環流路531の他端部が3つの分岐路531aに分かれ、各分岐路531aと連通するサブタンク540の計3つの流通口h2は、それらに対応する球状の弁体503aの進退によって開閉されるようになっている。弁体503aの進退動作は、弁体503aに設けられた軸503bを進退させるソレノイド503cによって行う。この弁体503aによって、3つの流通口h2を選択的に開閉させることにより、循環流路531の他端部に連通するサブタンク540の流通口h2の全体的な開口面積を段階的(ここでは3段階)に変化させることができる。このように流通口h2の開口面積を変化させることによって、循環流路531とサブタンク540との間のインクの流抵抗が調整される。本実施形態では、圧力調整ポンプ536と、流量調整バルブ503と、これらを制御するCPUなどの制御部によって、インク流量制御手段が構成されている。また、図18において、533は記録ヘッド10からサブタンク540にインクを戻すインク戻し通路である。
【0085】
上記構成において、モータ501によって羽根車536aを正転させて、循環流路531に矢印で示す方向にインクの流れを生じさせると、連結流路532に負圧が発生する。その負圧の大きさは、循環流路531内を矢印方向に流れるインクの流速に対応し、その流速が高まるほど大きくなる。この負圧は記録ヘッド10に付与されることになる。従って、圧力調整ポンプ536の正転速度の制御と、流量調整バルブ503による流通口h2の開口面積の制御のうち、少なくとも一方、好ましくは両方を制御して循環流路531内の流速を調整する。これにより、記録ヘッド10に付与する負圧を制御することができる。ポンプ536の正転速度が高くなる程、また流通口h2の開口面積が小さくなる程、大きな負圧が発生することになる。
【0086】
モータ501によって羽根車536aを正転させた場合には、循環流路531に矢印とは逆の方向にインクの流れが生じて、連結流路532に正圧が発生する。後述するように、記録ヘッド811に付与する負圧を制御する際には、このような圧力調整ポンプ536の逆転制御も積極的に利用することができる。この場合には、ポンプ536の逆転速度が高くなる程、また流通口h2の開口面積が小さくなる程、大きな正圧が発生することになる。
【0087】
連結流路532には、インクの流通および遮断の切り替えが可能な圧力調整バルブ535が備えられている。圧力調整バルブ535としては、上記第1の実施形態におけるバルブ35と同様のものを用いることができる。
【0088】
また、圧力調整ポンプ536は、基本的には、駆動信号に応じてインクを移送可能なものであれば、いかなる形態のものでも良い。しかし、インクの流れの方向の切り替えが可能であり、かつ流量調整バルブ503と協働して圧力変動の少ないインク流量調節を行うことが可能なものが好ましい。
【0089】
本例では、ポンプ536として、回転方向および回転速度の制御が可能なモータ(不図示)により駆動される定圧軸流型のポンプを用いている。前述したようにポンプ536は、正転駆動されたときに、連結流路532からインクを引き込む方向、つまり連結流路532に負圧を付与する方向の流れをつくる。また逆転駆動されたときには、連結流路532にインクを供給する方向、つまり連結流路532に正圧を付与する方向の流れをつくる。以下、ポンプ536の回転方向に関しては、記録ヘッド811に負圧を付与するインクの流れをつくるときの回転を正転、記録ヘッド811に正圧を付与するインクの流れをつくるときの回転を逆転という。
【0090】
サブタンク540は、対向する一対の可撓性部材を有する可動部540Aと、これらの間に配設された圧縮ばね540Bとを有する。このばね540Bの伸縮によって、サブタンク540内部の急激な圧力変動を抑える。
【0091】
また、記録ヘッド811の近傍には、連結通路532内の圧力を検知する圧力センサ544が備えられている。CPUなどの制御部は、圧力センサ544の出力を読み出し、両方向に回転可能なポンプ536を後述するようにフィードバック(又はフィードフォワード)制御することによって、記録ヘッド811内の圧力を所望の値に調整する。
【0092】
サブタンク540内には不図示の圧力センサが取り付けられており、サブタンクのインク残量が減って、その内部の圧力が所定値を下回ったときを検出して、メインタンクから自動的にインクが補充できるようになっている。
【0093】
以上のように構成されたインク供給系を用いて、記録ヘッド10へ供給するインクの負圧を安定化させることにより、上記第1の実施形態と同様に、安定したインク吐出を実現することができる。
【0094】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、使用する記録ヘッドのノズルにおいて、吐出口より内方に入り込んだ位置に設けた一つの分割部によって液路内の一部を2分割するようにした場合を示した。しかし、液路内を3分割以上に分割する分割部を設け、それによって流路内のメニスカス力をより高めることも可能である。例えば、図19に示すように、十字状の横断面形状を有する分割部29を、吐出口17より内方に入り込んだ位置に設け、液路18内の一部を4つの分割流路18a,18b,18c,18dに分割するようにしても良い。これによれば、液路18内のメニスカス力をより高めることが可能になると共に、分割部29が吐出時のインクの流動を整流する直交整流素子として作用するため、インク滴の吐出方向をより安定化させることも可能になる。
【0095】
また、上記第1の実施形態および第5の実施形態では、インクタンクから記録ヘッドにインクを供給するインク流路に、負圧発生手段としてのポンプおよびバルブ(35、535)を設けた場合を例に採り説明した。しかし、負圧発生手段は、記録ヘッドからインクタンクへとインクを戻す流路側に設けても良く、さらには、両流路の両方に設けても良い。要は、インクタンクと記録ヘッドとを連通するインク連通路中に備えられ、記録ヘッドに対して調整可能な負圧を付与することができるものであれば、本発明における負圧発生手段として適用可能である。
【0096】
また、本実施形態で採用した複数の印刷装置は、それぞれが互いに独立性を有するものである。すなわち、複数の印刷装置は各々相互の関係において、空間(配置)上独立したものであり、また信号系およびインク系においても独立している。そのため、各印刷装置の動作状態、すなわち印刷量に応じて、適切な量のインク供給や回復動作が可能となる。また、画像形成システムや画像形成装置から分離して、また他の印刷装置から独立して、様々な条件下において印刷装置を制御することができ、印刷装置の単体での取り引きや取り扱いも可能となる。
【0097】
本発明は、上述した実施形態のみに限られることなく、本発明の思想の範囲内で適宜の変形を施すことが可能である。
【0098】
例えば、1つの印刷装置において用いられる1つまたは複数の記録ヘッドに対して、インクを供給するように構成することができる。また印刷装置は、上述したように記録ヘッドの移動を伴わずに記録を行うフルラインタイプの他、記録ヘッドの主走査方向の移動を伴って記録を行うシリアルスキャンタイプなどであってもよく、その記録形式や形態は何ら特定されず任意である。本発明は、ポンプとバルブを用いて、記録ヘッドに供給するインクの負圧を積極的に制御することにより、その負圧を安定化させることができるインク供給手段と、記録ヘッド内の各液路内に複数の液路を形成した分割部を吐出口より内方に設けた記録ヘッドとを備えれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像形成システムの概要を示す模式的斜視図である。
【図2】図1の印刷装置の制御系のブロック構成図である。
【図3】図1の複数の印刷装置におけるインク供給系の構成を説明するための模式図である。
【図4】図1の印刷装置における1つの記録ヘッドに対するインク系の構成を説明するための模式図である。
【図5】図4における負圧室の動作を説明するための模式図である。
【図6】図4における記録ヘッドのインク流路構成の説明図である。
【図7】本発明における記録ヘッドの吐出口周辺の構造を模式的に示す斜視図である。
【図8】記録ヘッドの吐出口およびこれに連通する液路の構造を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は同図(a)におけるB−B線断面図、(c)は正面図である。
【図9】図7および図8に示す記録ヘッドにおけるインクの吐出過程を示す概念図である。
【図10】印刷待機時における図4のインク系の動作を説明するための模式図である。
【図11】印刷時における図4のインク系の動作を説明するための模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における記録ヘッドの一例を示す断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態における記録ヘッドの他の例を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における記録ヘッドの吐出口およびこれに連通する液路の構造を模式的に示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は同図(a)におけるB−B線断面図、(c)は正面図である。
【図15】図14に示す記録ヘッドにおいて、インクの発泡に伴って可動弁が変位する様子を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は縦断側面図である。
【図16】図14に示す記録ヘッドにおいてインクの発泡の前後に可動弁が変位する様子を正面から示した概念図であり、(a)はインクが発泡していない状態を、(b)はインクが発泡した状態をそれぞれ示している。
【図17】本発明の第4の実施形態において用いるポンプの概略断面図である。
【図18】本発明の第5の実施形態におけるインク供給系におけるインク供給流路を説明するための模式図である。
【図19】本発明の他の実施形態に用いる記録ヘッドにおける吐出口周辺の構造を模式的に示す斜視図である。
【図20】従来のインクジェット記録装置に用いる記録ヘッドにおける吐出口周辺の構造を模式的に示す斜視図である。
【図21】従来のインクジェット記録装置に用いる記録ヘッドの吐出口およびこれに連通する液路の構造を模式的に示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は同図(a)におけるB−B線断面図、(c)は正面図である。
【図22】正方形の吐出口を二つ並べた従来の記録ヘッドの吐出口周辺の構造を模式的に示す斜視図である。
【図23】面積の大きい正方形の吐出口を仕切板で画成した従来の記録ヘッドの吐出口周辺の構造を模式的に示す斜視図である。
【図24】インクジェット記録装置の一例を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0100】
10,10a,10b,10d 記録ヘッド
11 ヒータ
12 ヒータボード
13 吐出口形成部材
14 平面部
15 底面部
16 側壁部
17 吐出口
18 液路
18a 分割流路
18b 分割流路
19 ノズル
21,22,23 分割部
23a,23b テーパ部
28 可動弁
29 分割部
30 負圧室
36、45、48 ポンプ
40 サブタンク
100 情報処理装置
101、800、901 CPU
112、803、903 ROM
116、116−1〜116−5 印刷装置(記録装置)
117 媒体搬送装置
206 記録媒体
544 圧力センサ
540 サブタンク
530 インク供給路
531 循環流路
532 連結流路
533 戻し通路
536 圧力調整ポンプ
A 気泡
L インク
Lm メニスカス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインク供給手段とを備えたインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドは、
前記各吐出口に連通する複数の液路と、
前記各液路内に供給されたインクを前記各吐出口から液滴として吐出させるための吐出エネルギーを発生させる複数のエネルギー発生素子と、
前記インク吐出口より前記液路の内方に設けられ、前記液路内の一部を複数の流路に分割する分割部と、を有し、
前記インク供給手段は、
インク供給源と前記記録ヘッドとを連通させるインク連通路中に備えられて、前記記録ヘッド内に対して負圧を調整可能に付与する負圧付与手段と、
前記記録ヘッド内の圧力の変動に応じて前記負圧付与手段を制御して前記記録ヘッド内に付与する負圧を調整させるための制御手段と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記液路は、前記吐出エネルギーとして熱エネルギーを発生するヒータを保持するヒータボードと、前記ヒータボードに対向して設けられた天板との間に設けられたノズル形成部材と、により構成され、
前記ノズル形成部材は、前記複数の吐出口と前記分割部とを形成すると共に、前記ヒータボードとの組み合わせにより液路を形成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記分割部は、前記液路内に形成された少なくとも一枚の平板状部分によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記分割部は、前記液路内において前記吐出口と前記ヒータとの間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記分割部は、吐出口側に向けて薄くなるテーパ部を有することを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記分割部は、吐出口側およびヒータ側に向けて薄くなるテーパ部を有することを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記ヒータの加熱によってインク内に発生する気泡を前記吐出方向へと成長させる可動弁を、さらに備えたことを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記記録ヘッド内のインク圧を検出するための検出手段を含み、前記検出手段が検出するインク圧に基づいて、前記負圧付与手段を制御して前記記録ヘッド内に付与する負圧を調整させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記記録ヘッド内のインク圧を圧力損失なく検出するように前記記録ヘッドに近接する位置に設けられて、前記記録ヘッドと共にプリントユニットを構成することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記インク連通路は、前記インク供給源から前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給路であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記インク連通路は、前記記録ヘッドから前記インク供給源にインクを戻すための戻し通路であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記記録ヘッドの単位時間当たりのインク消費量に基づいて、前記負圧付与手段を制御することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記負圧付与手段は、前記インク連通路中に備えられるポンプとバルブとを含み、
前記制御手段は、前記ポンプと前記バルブを関連的に制御することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記ポンプは、前記インク連通路中におけるインクの加圧方向の変更が可能であることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記ポンプは、ギアの回転速度に応じた圧送力を受ける位置に、インクの通り抜け通路が形成されたギアポンプであることを特徴とする請求項13または14に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記インク連通路は、インクを循環可能な循環流路と、前記循環流路と前記記録ヘッドとを連通する連結通路と、を含み
前記ポンプは前記循環流路に備えられ、
前記バルブは、前記循環流路および前記連結通路の少なくとも一方に備えられることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記バルブは、前記循環流路に備えられてインクの流抵抗の調整が可能であることを特徴とする請求項16に記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記記録ヘッドを用いての記録動作が終了した直後に、前記バルブを閉じることを特徴とする請求項16または17記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
前記制御手段は、前記記録ヘッドを用いて記録動作可能な記録装置の使用状況に応じて、前記ポンプと前記バルブを制御することを特徴とする請求項13ないし18のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項20】
前記記録ヘッドは、複数の記録装置によって構成される複合プリントシステムにおいて用いられることを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項21】
インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッドにインクを供給しつつ記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドは、
前記各吐出口に連通する複数の液路と、
前記各液路内に供給されたインクを前記各吐出口から液滴として吐出させるための吐出エネルギーを発生させる複数のエネルギー発生素子と、
前記インク吐出口より前記液路の内方に設けられ、前記液路内の一部を複数の流路に分割する分割部と、を有し、
前記記録ヘッド内の圧力の変動を検出し、その検出結果に応じて前記記録ヘッド内に付与する負圧を一定範囲内に維持するよう調整することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−203641(P2007−203641A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26350(P2006−26350)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】