説明

インクジェット記録装置

【課題】記録品位が低下することなく、かつ余分なウェイト時間を要さずに未定着インクの擦れによる画像品位低下を防止することが可能なインクジェット記録装置を実現すること。
【解決手段】連続した記録ジョブの前に1回、定着時間T1を測定し、その定着時間T1から排紙スミアウェイト時間Ts或いは両面反転ウェイト時間Tdを求めて、これら排紙スミアウェイト時間Ts或いは両面反転ウェイト時間Tdに基づいて記録制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上のインク定着制御を行うインクジェット記録装置(以下、単に記録装置とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているインクジェット記録装置では、記録終了後の記録媒体上の未定着インクによる汚れを防止するために、記録媒体表面が液相表面であるか固相表面であるかを判別する光学的検知手段を用いる制御方法が提案されている。また、特許文献2に開示される記録装置では、排紙スミアを防止するために、被記録媒体を幾つかのエリアに分割し、所定量のインクが付与されたエリアに対して予め記憶されたデータに従ってウェイト時間を入れる制御方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−52869号公報
【特許文献2】特許第3397426号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、記録媒体の全てのページに黒マークを記録し、その定着を確認してから次ページに進むように制御されるため、使用者の意図したデータ以外のデータが記録媒体に記録され記録品位が低下する問題があった。また、記録濃度が低いデータのみの記録動作であっても、定着に時間が掛かる黒マークが定着しないと次ページに進めないため、余分なウェイト時間が掛かってしまう問題があった。
【0005】
また、特許文献2に開示される技術では、予め記憶されたデータでウェイト時間を決める。しかし、通常は安全を見て幾つかの条件の中で比較的定着時間が長いケースに合わせてウェイト時間を決めているため、多くの実使用条件に於いては余分なウェイト時間が掛かってしまう問題があった。またウェイト時間設定時に考慮しなかった記録媒体に記録されると、所定ウェイト時間を置いても未定着インクの擦れによる画像品位低下が発生する懸念があった。
【0006】
以上の様に、専用の定着手段など強制的にインクを定着させる機構を持たない記録装置では、記録媒体種類や記録装置の使用環境を全て勘案した最短なウェイト時間を設定することが困難で、余分なウェイト時間が掛かるか、画像品位低下が発生する問題があった。
【0007】
よって本発明は、記録品位が低下することなく、かつ余分なウェイト時間を要さずに未定着インクの擦れによる画像品位低下を防止することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体にノズル列からインクを吐出して画像を記録する記録手段と、前記画像が記録された前記記録媒体の記録面に、所定の接触物を接触させて所定の処理を行う処理手段と、前記記録手段によって画像が記録された記録媒体を前記処理手段へと搬送する搬送手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、画像の記録に用いるインクと記録媒体との組み合わせによって、前記記録媒体にテストパターンを記録する第1の制御手段と、前記テストパターンを記録された前記記録媒体の記録面の光学的変化に基づいて、前記インクが前記記録媒体に定着するまでの定着時間を計測する計測手段と、前記インクと記録媒体との組み合わせを用いて画像を記録するときに、前記搬送手段による前記記録手段から前記処理手段までの搬送時間が前記定着時間よりも長くなるように前記搬送手段を制御する第2の制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によればインクジェット記録装置は、画像の記録に用いるインクと記録媒体との組み合わせによって、記録媒体にテストパターンを記録する第1の制御手段を備えている。さらにインクジェット記録装置は、テストパターンを記録された記録媒体の記録面の光学的変化に基づいて、インクが記録媒体に定着するまでの定着時間を計測する計測手段を備えている。さらにインクジェット記録装置は、インクと記録媒体との組み合わせを用いて画像を記録するときに、搬送手段による記録手段から処理手段までの搬送時間が定着時間よりも長くなるように搬送手段を制御する第2の制御手段を備えている。
【0010】
これによって、記録品位が低下することなく、かつ余分なウェイト時間を要さずに未定着インクの擦れによる画像品位低下を防止することが可能なインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】定着センサを示しており、(a)は着弾直後の状態を示し、(b)は時間が経ってインクが記録用紙に浸透し定着した状態を示している。
【図2】(a)は記録用紙の表面反射率を測定した結果、(b)は使用環境を変えて反射率ρを測定した結果、(c)はある条件での反射率ρの測定結果と定着時間を算定する過程を示したグラフである。
【図3】本発明を適用したインクジェット記録装置のブロック図である。
【図4】本発明の制御方法を示したフローチャートである。
【図5】テストパターンを示した図である。
【図6】第1の実施形態の定着センサと記録ヘッドの位置関係を示している。
【図7】第2の実施形態の定着センサと記録ヘッドの位置関係を示している。
【図8】第4の実施形態における定着センサを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置イメージタイプ定着センサを搭載した定着センサを示している。(a)は記録部から吐出されたインク滴が記録用紙(記録媒体)10に着弾直後の状態を示し、(b)は時間が経ってインクが記録用紙10に浸透し定着した状態を示している。
【0014】
定着センサ1は反射型フォトセンサであり、LEDなどの光源2、フォトトランジスタやフォトダイオードなどの受光素子である正反射光センサ3と、フォトトランジスタやフォトダイオードなどの拡散反射光センサ4とを備えている。記録用紙10に吐出され、記録用紙10に浸透する前のインクで液相状態のものは非定着インク11とし、記録用紙10に浸透したインクを定着インク12とする。定着センサ1は、記録用紙10からの反射光を検出可能であり、まず光源2から記録用紙10に向けて光を照射する。光源2は記録用紙10となす角が小さく配置されているので、記録用紙10の表面反射率が高い場合、つまりインクが液相状態の場合は照射された光の多くが正反射し、光源2とほぼ同じ角度で配置された正反射光センサ3へと到達する。逆に記録用紙10の表面反射率が低い場合、言い換えるとインクが記録用紙10に浸透後で記録用紙10の表面に凹凸が多くある様な場合には、照射された光が凹凸により乱反射し拡散反射して色々な方向へ向かう。
【0015】
本実施形態では、拡散反射した光の光学的変化を検知する為に拡散反射光センサ4を配置している。記録用紙10の表面反射率を検知するだけであれば正反射光センサ3のみ配置するだけでも良いが、光源2からの光が記録用紙10に吸収されたのか、あるいは乱反射して拡散反射したのかを判断する為に、拡散反射光センサ4を備えている。しかしながら本実施形態に於いては、主に正反射光の増減を検知することによりインクの定着を判断するので、拡散反射光センサ4の使用方法詳細については言及しない。
【0016】
次に、図2は本発明を適用した定着センサ1の正反射光センサ3の出力値の一例を示すグラフである。図2(a)は記録用紙10の種類を変えて表面反射率(以下、単に反射率ρとも称する)を測定(計測)した結果、(b)は使用環境を変えて反射率ρを測定した結果である。また図2(c)はある条件での反射率ρの測定結果とその結果から定着時間を算定する過程を示したグラフである。全て横軸に記録用紙10へのインク滴を吐出した時点をゼロとした経過時間を取り、縦軸には正反射光センサ3の出力値から換算される反射率ρを取っている。
【0017】
図2(a)で実線20は、記録用紙10が標準的記録用紙の場合の反射率ρの時間変化を示している。インクジェット記録装置で使用されるインクは染料を主体とした色材を水に分散させたインクや、顔料を主体とした色材を水に分散させたインクが広く用いられるが、特に後者の顔料系インクをいわゆる普通紙に記録した場合に定着に時間が長く掛かる傾向がある。即ち、インク滴が記録用紙10に着弾して暫くの間は図1(a)で示す状態のように、インクが液相のまま記録用紙10上に残ることになる。この状態で光源2から光を当てると気液界面での反射が起こり、反射率が非常に高くなる。その後、徐々にインクは記録用紙10中に浸透していくと同時に、インク中の蒸発成分が蒸発することで、インクの液相部分は減少していく。インク液相部分の減少に伴い、記録用紙10表面の凹凸が露出し始め、乱反射する比率が高まってくるので、正反射光センサ3に到達する光が減少し、反射率ρは徐々に低下していく。最終的にインクが記録用紙10に定着すると、図1(b)に示すように記録用紙10表面は固相になり界面反射が減少する。このことと、記録用紙10表面の凹凸による乱反射の影響と、定着インク12により吸光されることで、正反射光は非常に少なくなって反射率ρは小さな値に収束する。
【0018】
また、図2(a)で破線21は、記録用紙10の吸水性が高い場合の反射率ρの時間変化を示している。例えば普通紙に塩化カルシウムやカチオンポリマーを多く添加したものなどがこれに相当する。この場合には、液相のままの非定着インク11状態でいる時間が短いため、反射率ρは短時間で低下し始め、短い経過時間で下限値に収束する。また一点鎖線22は、記録用紙10の表面が比較的平滑で吸水率の悪い場合の反射率ρの時間変化を示している。この場合には、液相のまま非定着インク11状態でいる時間が長いことと、表面が比較的平滑なため定着後も所定量の正反射光があり、反射率ρが最終的に収束する値も20や21の場合に較べて大きい値になる。
【0019】
また、図2(b)で実線23は、温度25℃/湿度60%程度の雰囲気中で記録動作を実施した場合の反射率ρの変化を示している。これに対し破線24では、実線23の場合と同じ記録用紙10を用いながら温度25℃/湿度10%の雰囲気中で記録動作を実施した場合の反射率ρの時間変化を示している。実線23の場合に較べるとインク中の蒸発成分の蒸発速度が速くなるため、反射率ρは短時間で低下し始め、短い経過時間で下限値に収束する。以上、図2(a)および図2(b)を使って示したように、インクが記録用紙10に定着するまでの時間は記録用紙種類や使用雰囲気や、ここには記載していないがインク種類等によっても様々に変化する。よって、スループット向上と未定着インクによる記録品位低下防止を両立するには、それぞれの場合について的確に定着するまでの時間を測定することが必要となる。
【0020】
次に、本発明の制御方法について図2(c)および図3から図5迄を使用して説明する。図3は、本発明を適用したインクジェット記録装置のブロック図である。制御手段たる記録装置の制御部50は、制御部50の動作を司る中央演算処理装置であるCPU51、制御プログラムや変数初期値などを記憶しておくROM52、制御プログラムの実行や定着センサ1の測定値の記憶等をする記憶手段たるRAM53を備えている。制御部50はインクジェット記録装置と外部ホスト等を仲介するインターフェイス部54、記録ヘッド30を駆動するヘッドドライバ55、モータを駆動するモータドライバ56、58、と接続62されている。さらに、制御部50は、定着センサ1、記録用紙近傍の雰囲気温度を測定する温度センサ61、インクジェット記録装置に備えられ記録用紙をスタックしておく給紙カセットが着脱されたことを検知する給紙カセット着脱センサ62、と接続されている。また、搬送手段たる記録用紙搬送部を駆動する搬送モータ57は、モータドライバ56と接続されており、記録ヘッド30を走査駆動するためのキャリッジモータ59は、モータドライバ58と接続されている。クロック/タイマー60は、制御部50の動作タイミングを司ると共に定着までの経過時間を測定している。
【0021】
図4は、本発明の適用した定着時間測定方法と、その定着時間を用いて用紙搬送手段を制御する方法を示したフローチャートである。以下、このフローチャートに従い、本実施形態のインクジェット記録装置の制御を説明する。先ず、記録ジョブ(一連の記録データがまとまったもの)がインターフェイス部54を介して制御部50に送られると、ステップS1で、定着時間測定用のテスト用紙を給紙カセットから給紙する。このテスト用紙は、以降の記録ジョブ記録用の記録用紙と同種類のものであり、用紙搬送モータ57により記録ヘッド30および定着センサ1に対向する位置まで記録用紙10を搬送する。次にステップS2で、インクが吐出される前の記録用紙10の未記録部分を定着センサ1で読み取り、初期反射率ρ0(初期表面状態測定値)を測定する。ρ0は記録用紙10の色や記録用紙表面の凹凸量により変化するものである。次にステップS3で、定着時間を測定するための反射率の閾値ρ1(表面状態閾値)を算出する。ρ1は一般的にρ1=f(ρ0)と表せるが、関数fは使用するインクの種類や検出に使用するテストパターンにより決定すれば良い。本実施形態では、
ρ1=f(ρ0)=0.4×ρ0
として、表面状態閾値ρ1を定着時間の判定基準値とする。なお、ρ0とρ1の関係については、図2(c)で図示されている。次にステップS4で、テスト用紙にテストパターンを記録する(第1の制御)。本実施形態では、テストパターンは図5に示すテストパターン13のような矩形領域に、黒インクを使用して隙間無くインク滴を打ち込むパターンを使用している。なお、テストパターン13は、定着センサ1の読み取り領域よりも広い領域としている。次にステップS5で、テストパターン13記録直後をゼロとした経過時間を測定するために、タイマー60をリセットしてスタートさせる。次にステップS6で、キャリッジモータ59を駆動することで、定着センサ1の読み取り領域をテストパターン13上に速やかに移動する。移動完了直後から記録用紙10および定着センサ1は静止させておく。次にステップS7で、定着センサ1の読み取りを開始する。読み取りは所定のタイミングで繰り返し実施し、その時に得られた反射率ρを閾値ρ1と比較してρ≦ρ1が成立するまでS7の動作を繰り返す。ρ≦ρ1となったら、テストパターン13のインクが記録用紙10に定着したと判断出来る。そこで、ステップS8に移行し、タイマー60を停止させる。次にステップS9で、ここまでの経過時間T1(図2(c)参照)をRAM53に格納する。この経過時間T1は即ち、現在のインク/記録用紙/周囲環境下での定着時間(以下、定着時間T1とも称する)と定義することが出来る。また、同時に初期反射率ρ0やρ1をRAM53に格納しておくことも可能である。次にステップS10でテスト用紙を排紙して、ステップS11で排紙スミアウェイト時間あるいは両面反転ウェイト時間を設定するが、ここで簡単に排紙スミア汚れおよび両面反転時汚れについて説明する。
【0022】
インクジェット記録装置で連続して枚葉紙に記録を行う場合、先行して記録された記録用紙の表面に未定着のインクがあると、後続で記録される記録用紙先端(接触物)が未定着インク部分を擦って、インクが拡散して汚れが発生し記録品位が低下する場合がある。
【0023】
また、通常駆動ローラと従動ローラのローラ対により記録用紙を搬送する用紙搬送手段を採用したインクジェット記録装置で、用紙表裏反転部に記録用紙を送り、記録ヘッド30に記録用紙裏面を再度対向させて両面記録動作を行うものが実用化されている。このような装置を小型化する等の理由により、表面の記録動作が終了した後に、用紙搬送手段を反転させて記録用紙をバックフィードさせ用紙表裏反転部に搬送することがある。その際に記録用紙表面に未定着のインクが残っていると、記録用紙を挟持しているローラ対の記録面対向側のローラと記録用紙の記録面とが接触してローラにインクが付着し、そのインクが再度記録用紙表面に転写してインクが拡散し、記録品位が低下する事がある。
【0024】
これらの汚れ発生現象を防止するため本実施形態では、前者の場合は、後続記録用紙の記録動作中に記録動作を停止させ(即ち、用紙搬送動作も停止させる)先行記録用紙の未定着インクが定着するのを待つ為の排紙スミアウェイト時間Tsを設けている。また後者の場合は、用紙搬送手段の反転動作前に記録用紙表面の未定着インクが定着するのを待つ(即ち、用紙搬送動作を停止させる)為の両面反転ウェイト時間Tdを設けている。
【0025】
この様な排紙スミア制御を行う場合、先行記録用紙の高濃度記録部が記録された時刻をゼロとし、先行記録用紙が排紙されて後続記録用紙が記録開始し、後続記録用紙の先端部が排紙スタッカ上の先行記録用紙の高濃度記録部分に到達するまでの時間をTaとする。そしてTaと定着時間T1とから、一時停止時間である排紙スミアウェイト時間Ts=T1−Taで表せる。但し、Ts<0となる場合はTs=0とする。Taは記録ジョブ記録動作中に実測する時間であるので、ステップS11ではT1をRAM53に記憶しておき、高濃度記録部が記録された際に前述の式に基づいてTsを求めるように制御する。
【0026】
また両面反転制御の場合は、記録用紙表面で最後に高濃度記録部が記録された時刻をゼロとし、記録用紙表面記録終了後に搬送モータ57を反転駆動開始するまでの時間をTbとすると、一時停止時間である両面反転ウェイト時間Td=T1−Tbで表せる。但し、Td<0となる場合はTd=0とする。Tbは記録ジョブ記録動作中に実測する時間であるので、ステップS11ではT1をRAM53に記憶しておき、搬送モータ57を反転駆動開始する際に前述の式に基づいてTdを求めるように制御する。
【0027】
なお、本実施形態に於いてはステップS1からステップS11に示す制御を記録ジョブの先頭にて1回だけ実施している。連続した記録ジョブ中は記録用紙10の種類や周囲の環境が大きく変わることは無いと考えられる。そこで、記録ジョブの先頭で測定した定着時間T1を記録ジョブ中の全てのページに適用して排紙スミアウェイト時間Tsあるいは両面反転ウェイト時間Tdを用いて記録媒体の搬送時間を制御する。以上が、本発明を適用したインクジェット記録装置に於けるインク定着の為の用紙搬送手段制御(第2の制御)の概略である。
【0028】
図6は、本実施形態をシリアル走査型インクジェット記録装置に適用した場合の定着センサと記録ヘッドの位置関係を示している。ここで、定着センサ1と記録ヘッド30との位置関係について図6を用いて説明する。
【0029】
インクジェット記録装置は、インク吐出ノズル列31を備えた記録ヘッド30、記録ヘッド30を搭載して矢印A方向(ノズル列と直交する方向)に往復走査するキャリッジ32、キャリッジ32をガイドするキャリッジガイドシャフト33を備えている。記録動作においては、キャリッジ32の矢印A方向への走査と、搬送モータ57による記録用紙10の矢印B方向への搬送を繰り返すことで、記録用紙10全面への記録を可能にする構成である。この様な構成に於いては、定着速度を測定したいインクの吐出ノズル列の長さL1の幅内(ノズル列幅内側)に定着センサ1を配置する構成が好ましい。この様に配置することにより、テストパターン13記録後、記録用紙10を搬送することなくキャリッジ32を矢印A方向に搬送させるだけで、定着センサ1の読み取り領域をテストパターン13上に移動可能となる。これにより、定着時間T1が非常に短時間であっても定着センサ1により確実にインクの定着状態を検出することが可能となる。
【0030】
このように、連続した記録ジョブの前に1回、定着時間T1を測定し、その定着時間T1から排紙スミアウェイト時間Ts或いは両面反転ウェイト時間Tdを求めて、これら排紙スミアウェイト時間Ts或いは両面反転ウェイト時間Tdに基づいて記録制御を行う。これによって、記録品位が低下することなく、かつ余分なウェイト時間を要さずに未定着インクの擦れによる画像品位低下を防止することが可能なインクジェット記録装置を実現することができた。
【0031】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0032】
図7は、本実施形態を適用可能なラインヘッド型インクジェット記録装置の定着センサと記録ヘッドの位置関係を示している。本実施形態ではラインヘッド型インクジェット記録装置に本発明を適用した場合を示す。本実施形態におけるラインヘッド型インクジェット記録装置は、記録領域幅分の吐出ノズル列を有するライン型記録ヘッド40と、定着センサ1を矢印C方向にガイドするセンサXガイドシャフト41とを備えている。
【0033】
定着センサ1は、不図示の駆動手段により矢印C方向でライン型記録ヘッド40の吐出ノズル列31の幅L2内の任意位置に移動する事が可能なように配置されている。この様に配置することにより、テストパターン13の記録と同時に定着センサ1を矢印C方向に移動し、記録用紙10を搬送することによって定着センサ1の読み取り領域をテストパターン13上に移動させることが可能となる。なお、テストパターン13を記録する位置を一意に決めてしまうのであれば、定着センサ1が移動する機構を設ける必要は無く、ライン型記録ヘッド40に対して相対的に固定するように構成しても良い。
【0034】
上記のように構成することにより、シリアル走査型インクジェット記録装置のみならずラインヘッド型インクジェット記録装置にも適用可能となり、その場合にも定着時間T1が非常に短時間であっても定着センサ1により確実に検出することが可能となる。
【0035】
このように、ラインヘッド型インクジェット記録装置において、連続した記録ジョブの前に1回、定着時間T1を測定し、その定着時間T1から排紙スミアウェイト時間Ts或いは両面反転ウェイト時間Tdを求める。そして、これら排紙スミアウェイト時間Ts或いは両面反転ウェイト時間Tdに基づいて記録制御を行う。これによって、記録品位が低下することなく、かつ余分なウェイト時間を要さずに未定着インクの擦れによる画像品位低下を防止することが可能なインクジェット記録装置を実現することができた。
【0036】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0037】
第1の実施形態では、記録ジョブの先頭で1回のみ定着時間T1の測定を実施する場合を示したが、本実施形態では、その他の定着時間T1の測定タイミングを示す。第1の実施形態では、一連の記録データが連続して記録される記録ジョブ中では記録用紙10の種類や周囲の環境は余り変わらないとした。ここで、記録ジョブと次の記録ジョブの間隔が余り長時間空いていなければ、次の記録ジョブもほぼ同様の環境と判断することも可能である。そこで本実施形態では、記録ジョブ終了時にタイマー60をリセットしてスタートさせ、次の記録ジョブをインターフェイス部54が受信した時にタイマー60を停止させる。そして、その時間が所定時間以下である場合は、記録ジョブ先頭でのステップS1からステップS11迄の処理を省略し、先の記録ジョブ時に測定した定着時間T1をそのまま使用して記録するように制御を行う。所定時間経過後の場合は、改めて定着時間T1を測定する。
【0038】
また、温度センサ61を備えるインクジェット記録装置では、温度情報を利用することも可能である。即ち、記録用紙10の種類が変わらなければ、記録用紙10近傍の温度により定着時間はほぼ決定出来るためである。よって記録ジョブ先端で定着時間T1を測定した際は、その時の温度センサ61で測定した温度をRAM53に合わせて記憶しておく。そして、次回記録ジョブをインターフェイス部54が受信した時にRAM53から温度を読み出して前回の測定時の温度と現在の温度センサ61の温度と比較する。そして、その差が所定温度以下であれば、定着時間は先に測定した定着時間T1と同じと考え、先の記録ジョブ時に測定した定着時間T1をそのまま使用して記録するように制御を行う。所定温度以上の温度変動があった場合には、温度変動後の最初の記録開始前に改めて定着時間T1を測定する。
【0039】
更には、給紙カセット着脱センサ62を備えるインクジェット記録装置では、スタックされた記録用紙10の交換を検知して定着時間T1再測定のタイミングとしても良い。即ち、図2(a)で示したように、記録用紙10の種類によっても定着時間T1は異なるので、記録用紙種類を変更された可能性が有る給紙カセットの着脱動作に伴って再測定をすることが可能である。具体的には、前回の定着時間T1測定後から次の記録ジョブをインターフェイス部54が受信するまでの間に給紙カセット着脱センサ62が給紙カセット着脱を検知する。あるいは記録ジョブ記録中でも給紙カセット着脱センサ62が給紙カセット着脱を検知した時に、S1からS11迄の制御に従って定着時間T1を再測定するようにしても良い。なお、この給紙カセット着脱センサ62による制御をタイマー60による制御あるいは温度センサ61による制御と組み合わせて使用することも可能である。
【0040】
これらの制御を実施することにより、テスト用紙を節約することが可能になり、また定着時間T1測定の時間を省略することが出来て、経済性と生産性が向上する。
【0041】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0042】
図8は、本実施形態で用いるイメージタイプ定着センサを搭載した定着センサを示した図である。第1の実施形態では定着センサ1に光源2と正反射光センサ3と拡散反射光センサ4を使用したセンサを使用したが、本実施形態では正反射光量を測定するのではなく記録用紙10の表面画像を撮像するセンサを搭載した場合を示す。
【0043】
本実施形態で用いるイメージタイプ定着センサ5は、2次元画像を取り込むことが可能なCCD素子からなるエリアセンサ6と、記録用紙10の所定領域を集光する集光レンズ7とを備えている。イメージタイプ定着センサ5では、光源2で斜めから照射された領域の凹凸によって出来る陰影を2次元イメージで読み取る。記録用紙10の表面が非常に平滑である時は殆ど陰影が形成されず、表面が粗い時は多くの陰影が観察される。陰影のイメージを画像処理し、凹凸の特徴を抽出することにより平滑な面か、粗い面かを判断することが可能である。テストパターン13を読み取る際に、非定着インク11の状態であれば表面は非常に平滑であるのでインクが未定着であると判断出来る。そして、定着インク12の状態であれば記録用紙10が本来持っている表面の凹凸から粗い面と読み取れるために定着完了であると判断出来る。
【0044】
この様な定着センサを用いることにより、記録用紙10の表面が相当平滑である場合でも正確に定着を判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 定着センサ
2 光源
3 正反射光センサ
10 記録用紙
13 テストパターン
30 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にノズル列からインクを吐出して画像を記録する記録手段と、前記画像が記録された前記記録媒体の記録面に、所定の接触物を接触させて所定の処理を行う処理手段と、前記記録手段によって画像が記録された記録媒体を前記処理手段へと搬送する搬送手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、
画像の記録に用いるインクと記録媒体との組み合わせによって、前記記録媒体にテストパターンを記録する第1の制御手段と、
前記テストパターンを記録された前記記録媒体の記録面の光学的変化に基づいて、前記インクが前記記録媒体に定着するまでの定着時間を計測する計測手段と、
前記インクと記録媒体との組み合わせを用いて画像を記録するときに、前記搬送手段による前記記録手段から前記処理手段までの搬送時間が前記定着時間よりも長くなるように前記搬送手段を制御する第2の制御手段と、を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記処理手段は、記録後の前記記録媒体を積み重ねる処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記処理手段は、記録後の前記記録媒体の表裏を反転させる処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記計測手段は、表面反射率を検出可能であり、1つの光源と、少なくとも1つの受光素子を持つ反射型フォトセンサを備えていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記記録手段の前記ノズル列と直交する方向のノズル列幅内側に設けられており、前記記録手段と共に移動可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記計測手段によって前記記録媒体の未記録部分の表面反射率を測定して、初期表面状態測定値とし、該初期表面状態測定値を演算して得られた表面状態閾値を前記定着時間の判定基準値とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体の表面反射率を測定してから、一連の記録を開始することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体の表面反射率を測定するのは、前回の表面反射率の測定から所定時間経過後の最初の記録開始前であることを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録媒体の表面反射率を測定するのは、前回の表面反射率の測定時の気温から所定温度以上の温度変動した時の最初の記録開始前であることを特徴とする、請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記記録媒体の表面反射率を測定するのは、給紙装置に用紙がセットされた後の最初の記録開始前であることを特徴とする、請求項4ないし請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106381(P2012−106381A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256108(P2010−256108)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】