説明

インシュレータの圧縮成形方法

【課題】圧縮成形によって金属箔付きインシュレータを折り曲げ予定線に沿って該インシュレータを凸状に直角に折り曲げる自動車車体等に取付けられるアルミ箔等の圧縮成形方法を提供する。
【解決手段】マット様物体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた金属箔付きインシュレータの圧縮成形方法であって、該インシュレータを加熱フォーミングプレスするとともに、該加熱フォーミングプレス用の金型内に設けられたスリット形成刃体11によって該インシュレータの折り曲げ予定線に沿ったスリットを該金属箔2に形成することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体等に取付けられるアルミ箔等の金属箔付きインシュレータの圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インシュレータの圧縮成形方法に関する従来技術としては特許文献1に述べられているようなものがある。
【特許文献1】特開平5−50545号公報
【0003】
しかし、従来のインシュレータの圧縮成形方法では該インシュレータに含浸させた未硬化のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を熱硬化させているため成形後の該インシュレータははなはだ硬く、自動車車体等に取付ける際に柔軟性を期待できないので予め所定の形状に合うように成形せざるを得なかったが、特に自動車のエンジンルーム内に用いられエンジンからの輻射熱を遮るために金属箔を貼着したものでは圧縮成形時に無理な変形を強いられて該金属箔が破れてしまうという欠点があった。
【0004】
例えば従来のインシュレータ1の斜視図である図1に示すような、A部やB部が直角に折れ曲がったアルミ箔付きインシュレータの場合、グラスウール3の表面にアルミ箔2が貼着されているが、図1の部分拡大図である図2に示すように折り曲げ予定線6,6,6に沿って該インシュレータ1の該B部を凸状に圧縮成形によって折り曲げようとすると、同じく図1の部分拡大図である図3に示すように該B部の該アルミ箔2はかかる曲げによって大きく伸展させられるため不規則な形状のギザギザな亀裂5が入ってしまうことが多く、外観上の商品価値を大きく減じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、アルミ箔付きインシュレータを折り曲げ予定線に沿って圧縮成形により該インシュレータを凸状に直角に折り曲げようとすると該アルミ箔はかかる曲げによって大きく伸展させられるため不規則な形状のギザギザな亀裂が入り、外観上の商品価値を大きく減じてしまうという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすため本発明は、マット様物体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた金属箔付きインシュレータの圧縮成形方法であって、該インシュレータを加熱フォーミングプレスするとともに、該加熱フォーミングプレス用の金型内に設けられたスリット形成刃体によって該インシュレータの折り曲げ予定線に沿ったスリットを該金属箔に形成することを最も主要な特徴とする。
【0007】
また、該マット様物体がグラスウールであることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、該スリットの形状は従来の亀裂のような不規則なギザギザではなく、幾何学的に美しく整った形状に仕上がるため、該インシュレータの外観上の商品価値を減ずることはないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
マット様物体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた金属箔付きインシュレータの圧縮成形方法であって、該インシュレータを折り曲げ予定線に沿って凸状に直角に折り曲げる際、かかる曲げによって該アルミ箔が大きく伸展させられることで従来の圧縮成形により生ずる亀裂のような不規則なギザギザではなく、幾何学的に美しく整った形状のスリットを得るという目的を、該インシュレータを加熱フォーミングプレスするとともに、該加熱フォーミングプレス用の金型内に設けられたスリット形成刃体によって該インシュレータの折り曲げ予定線に沿ったスリットを該金属箔に形成することによって、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0010】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づき、未硬化のフェノール樹脂を含浸させたインシュレータ1のB部を、図2に示すように折り曲げ予定線6,6,6に沿って凸状に圧縮成形により折り曲げようとする場合を説明する。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0011】
図4、図5は、本発明の1実施例を示す図2中のD−D断面相当の金型4,4’内の部分拡大図である。加熱フォーミングプレス用の該金型4,4’内には発熱体(図示せず)が内蔵されている。11はスリット形成刃体、12はスプリングである。
【0012】
図4において該スリット形成刃体11は、図2の折り曲げ予定線6,6,6に沿って、該金型4内に進退自在に摺設され、該スプリング12によって該アルミ箔2の側に付勢されている。該スリット形成刃体11は該折り曲げ予定線6,6,6の形状の単純さや複雑さに合わせて設定し、その数は単一でも、複数個でもかまわない。
【0013】
次に本発明の作用を説明する。該金型4,4’内に該アルミ箔2の付いた該グラスウール3をセットし、該金型4,4’を型締めする。図4は該金型4,4’の型締めの途中であり、且つ該アルミ箔2が該スリット形成刃体11に接触する直前の状態を表している。
【0014】
該アルミ箔2が該スリット形成刃体11に接触した後、該スリット形成刃体11は該スプリング12の押圧力によって該アルミ箔2を切開すると同時に該押圧力の反力によって該金型4内に押し戻され、図5に示す状態になる。図5は該金型4,4’の型締めが完了した状態を表している。それとともに、該グラスウール3中のフェノール樹脂を該発熱体によって加熱硬化させる。
【0015】
該スプリング12のバネ特性(反発力)は該スリット形成刃体11が該アルミ箔2を切開するためには充分強いが、該グラスウール3を切断しない程度には充分弱く設定しておけば、該スリット形成刃体11は該グラスウール3を切断せずに該アルミ箔2のみを切開しただけで、型締め力によって該金型4内に収納されることになる。
【0016】
その後、該金型4,4’を開いて取り出した該インシュレータ1の斜視図を図6に示す。図6は図2と同様の位置を表す部分拡大図である。7,7,7は該スリット形成刃体11によって切開された該アルミ箔2のスリットである。
【0017】
該スリット7,7,7の形状は従来の該亀裂5のような不規則なギザギザではなく、幾何学的に美しく整った形状に仕上がるため、該インシュレータ1の外観上の商品価値を減ずることはない。
【0018】
尚、上記実施例ではアルミ箔を用いた例を述べたが、銅箔や錫箔等他の金属箔を用いても良い。
【0019】
また、フェノール樹脂に限らずユリア樹脂やメラミン樹脂等のグラスウールに含浸可能な他の熱硬化性樹脂を用いても良い。
【0020】
また、グラスウールに限らず、フェルトや毛布のように熱硬化性樹脂を含浸可能なマット様物体であればなんでも良い。
【0021】
以上実施例に述べたように本発明によれば、マット様物体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた金属箔付きインシュレータの圧縮成形方法において、該インシュレータを加熱フォーミングプレスするとともに、該加熱フォーミングプレス用の金型内に設けられたスリット形成刃体によって該インシュレータの折り曲げ予定線に沿ったスリットを該金属箔に形成するため、該スリットの形状は従来の亀裂のような不規則なギザギザではなく、幾何学的に美しく整った形状に仕上がるので、該インシュレータの外観上の商品価値を減ずることはないという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、自動車車体等の相手部品に取付ける必要上、大きく折れ曲げられた形状の金属箔付きインシュレータの圧縮成形に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の直角に折れ曲がったアルミ箔付きインシュレータの斜視図
【図2】図1の部分拡大図
【図3】図1の部分拡大図
【図4】本発明に係る図2中のD−D断面相当の、金型内の部分拡大図
【図5】本発明に係る図2中のD−D断面相当の、金型内の部分拡大図
【図6】図2と同様の位置を表す本発明に係る部分拡大図
【符号の説明】
【0024】
1 インシュレータ
2 アルミ箔
3 グラスウール
4,4’ (加熱フォーミングプレス用の)金型
6 折り曲げ予定線
7 スリット
11 スリット形成刃体
12 スプリング
A,B 直角に折れ曲がった個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット様物体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた金属箔付きインシュレータの圧縮成形方法であって、該インシュレータを加熱フォーミングプレスするとともに、該加熱フォーミングプレス用の金型内に設けられたスリット形成刃体によって該インシュレータの折り曲げ予定線に沿ったスリットを該金属箔に形成することを特徴とするインシュレータの圧縮成形方法
【請求項2】
請求項1に述べたマット様物体がグラスウールであることを特徴とする請求項1記載のインシュレータの圧縮成形方法

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−17852(P2010−17852A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177505(P2008−177505)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】