説明

インスリンアルブミンコンジュゲート

インスリンアナログ、二官能性リンカー及びアルブミンからなるインスリンアルブミンコンジュゲートは糖尿病患者を治療するのに効率的に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なインスリンアルブミンコンジュゲート、そのようなインスリンアルブミンコンジュゲートの調製方法、インスリンアルブミンコンジュゲートを含むインスリン調製物及びこれらインスリンアルブミンコンジュゲートを使用して真性糖尿病を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病(1型及び2型糖尿病)は、グルコースを利用する能力が部分的に又は完全に失われる代謝性疾患である。全人口の約5%が糖尿病に苦しみ、この病気は蔓延している。1920年代のインスリンの発見以来、絶え間ない努力が糖尿病の治療を改善するために行われてきた。糖尿病に苦しむ人々は、数十年にもわたって、長期間の治療を受けるので、安全で便利で生活の質を改善するインスリン系治療剤に対する大きな需要がある。
【0003】
ヒトインスリンは、21及び30のアミノ酸残基を含むいわゆるA及びB鎖である2つのポリペプチド鎖からなる。インスリンアナログは、アミノ酸の一又は複数が他のアミノ酸と交換されているヒトインスリンである。商業的に入手可能なインスリン製剤の幾つかは、速い作用の発現を特徴とし、他の製剤は、作用発現は比較的遅いが、程度の差はあるが、長時間にわたる作用を示す。
1型及び2型糖尿病の治療は、典型的には、食事で誘発される高血糖症に対しての速効型の摂食前ボーラスインスリンでの治療と併せて、食事と夜間の間の血糖管理に対しての長時間作用基礎インスリンでの治療を含む。治療の目標は長期にわたるほぼ正常血糖の管理の維持である。
【0004】
インスリンのような治療用ペプチド又はタンパク質のヒト血清アルブミン又はその誘導体へのコンジュゲーションは、プロテアーゼに対する治療用ペプチド又はタンパク質の保護をもたらす。治療剤のサイズの増加はクリアランスの減少を生じる。よってコンジュゲーションはコンジュゲートの延長された滞留時間を生じる(国際公開第01/77137号及び国際公開第2006/012346号を参照)。アルブミンへのインスリンのコンジュゲーションは、持続作用プロファイルを生じ、それによって注射の頻度を低減させる。ほぼ正常血糖の維持は低血糖のリスクを低下させる(Diabetes 2005, vol 54, 251-258、及びBioconjugate Chem. 2005, vol 16, 1000-1008を参照せよ)。
【0005】
国際公開第00/69900号の請求項7は、例えばペプチド−血液成分コンジュゲートを形成することを含むペプチダーゼ活性から治療用ペプチドを保護する方法に関し、そこでは、請求項14に記載の血液成分はアルブミンである。国際公開第00/69900号の特定の実施例は何れもインスリンを扱ってはいない。
国際公開第2005/012346号の請求項1は、インスリン分子と血液成分に共有的に結合するための反応性基を含むインスリン誘導体に関する。その請求項2によれば、反応性基は、位置Gly A1、Phe B1及びLys B29から選択された位置で、インスリン分子、つまりヒトインスリンのアミノ酸に結合している。
【0006】
国際公開第2005/103087号の請求項1は、非コンジュゲートアルブミンからアルブミンコンジュゲートを分離する方法に関する。国際公開第2005/103087号において例示されているインスリンはヒトインスリンとA1、B1又はB29に伸展を有するインスリンであり、全てA21Asn(A21N)を含んでいる。
国際公開第2007/071068号の請求項1は、ある化合物に共有的に結合したアルブミンを含むコンジュゲートの調製方法に関する。インスリンはそこの第9頁第16行に述べられている。国際公開第2007/071068号には特定の実施例は与えられていない。
通常は、インスリン製剤は皮下注射によって投与される。
【発明の態様】
【0007】
この発明の態様は、皮下的に投与される場合、少なくとも約6時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、皮下的に投与される場合、少なくとも約12時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、皮下的に投与される場合、少なくとも約18時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、皮下的に投与される場合、少なくとも約24時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、皮下的に投与される場合、少なくとも約36時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、皮下的に投与される場合、少なくとも約48時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
【0008】
この発明の態様は、経肺的に投与される場合、少なくとも約6時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経肺的に投与される場合、少なくとも約12時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経肺的に投与される場合、少なくとも約18時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経肺的に投与される場合、少なくとも約24時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経肺的に投与される場合、少なくとも約36時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経肺的に投与される場合、少なくとも約48時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
【0009】
この発明の態様は、経口的に投与される場合、少なくとも約24時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経口的に投与される場合、少なくとも約36時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の態様は、経口的に投与される場合、少なくとも約48時間の間、ほぼ正常血糖をもたらすインスリン誘導体の提供に関する。
【0010】
この発明の他の態様は、血糖値の満足できる基礎制御を与えるために毎日一回だけ投与されるものであるインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の他の態様は、治療中に体重増加を生じないか、低い度合いでのみ生じさせるものであるインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の他の態様は、治療中に体重減少を生じさせるインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の他の態様は、血糖降下事象を生じないか、低い度合いでのみ生じさせるものであるインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の他の態様は、肝選択的であるインスリン誘導体の提供に関する。
この発明の目的は、先行技術の不具合の少なくとも一つを解消又は改善し、又は有用な代替手段を提供することにある。
【0011】
定義
ここで、インスリンなる用語は、自然に生じるインスリン、例えばヒトインスリン、並びにそのインスリンアナログをカバーする。
ここで、アミノ酸残基なる用語は、水素原子がアミノ基から除去された、及び/又はヒドロキシ基がカルボキシ基から除去された、及び/又は水素原子がメルカプト基から除去されたアミノ酸をカバーする。不正確ではあるが、アミノ酸残基はアミノ酸を指す場合がある。
ここで、ペプチド残基なる用語は、水素原子がアミノ基から除去された、及び/又はヒドロキシ基がカルボキシ基から除去された、及び/又は水素原子がメルカプト基から除去されたペプチドをカバーする。不正確ではあるが、ペプチド残基はペプチドを指す場合がある。
【0012】
ここで、インスリンアナログ(又はインスリンのアナログ)なる用語は、天然インスリン中に生じる一又は複数のアミノ酸残基を欠失及び/又は置換する(置き換える)ことにより、及びA21アミノ酸残基に一又は複数のアミノ酸残基を付加することにより、例えばヒトインスリン等の自然に生じるインスリンの構造から形式的に誘導することができる分子構造を有するポリペプチドをカバーする。好ましくは、付加及び/又は置換されたアミノ酸残基は、コード性アミノ酸残基である。例えば、A鎖はそのC末端が、例えば(ヒトインスリンと比較して)1、2、3又は4のアミノ酸残基だけ伸展され得、その位置はそれぞれA22、A23、A24及びA25と称する。たとえインスリンアナログがA21/A22位に伸展を有していても、該インスリンアナログ中の他の位置に欠失がありうる。ヒトインスリンにおける場合と同様に、この発明の化合物中に存在するインスリンアナログでは、A21アミノ酸残基がN末端的に20位のCys残基に連結され、そのCys残基が鎖間ジスルフィド架橋の形成に関与する。ここで、親インスリン又は親インスリンアナログなる用語はまたインスリンアナログに対して使用される。主として、親なる用語は、例えばアシル化によって化学的に導入されうる側鎖を有するインスリンアナログと区別する場合に使用される。
【0013】
ここで、変異なる用語は、アミノ酸配列中の任意の変化(コード性アミノ酸を用いた置換及び挿入並びに欠失)をカバーする。
ここで、A1、A2、A3等の用語は、それぞれ、(N末端から数えて)インスリンのA鎖の位置1、2及び3を示す。同様に、B1、B2、B3等の用語は、それぞれ、(N末端から数えて)インスリンのB鎖の位置1、2及び3を示す。アミノ酸に対して1文字コードを使用すると、A21A、A21G及びA21Q等の用語は、A21位にあるアミノ酸が、それぞれA、G及びQであることを示す。アミノ酸のための3文字コードを使用すると、対応する表現は、それぞれAlaA21、GlyA21及びGlnA21となる。
【0014】
ここで、desB29及びdesB30等の用語は、それぞれB29又はB30アミノ酸残基を欠くインスリンアナログを示す。
インスリンアナログ及びA及びB鎖における位置の番号付けは、親化合物がそのために使用される番号を有するヒトインスリンであるようになされる。
ここで、アミノ酸、アミノ酸残基、ペプチド又はペプチド残基のような用語と関連した「コード性」なる表現は、ヌクレオチドのトリプレット(「コドン」)によってコードされうるアミノ酸、アミノ酸残基、ペプチド又はペプチド残基を示すために使用される(遺伝子工学参照)。
【0015】
ここで、アルブミンなる用語は、様々な種、例えばヒト(HSA,ヒト血清アルブミン)、ラット(RSA,ラット血清アルブミン)、マウス(MSA,マウス血清アルブミン)、ブタ(PSA,ブタ血清アルブミン)、ウシ(BSA,ウシ血清アルブミン)、イヌ(CSA,イヌ血清アルブミン)及びウサギ(RaSA,ウサギ血清アルブミン)、組換えアルブミン、例えばN末端残基(Asp)の欠失を伴う組換えヒト血清アルブミン及びゲノム源からのアルブミンをカバーする。
アルブミン中の位置の番号付けは、親化合物がヒト血清アルブミンであるようになされる。Cys34のような用語は、34位のCysを示す。最初のアミノ酸を欠く組換えヒト血清アルブミンであるアルバゲン(Albagen)では、遊離のCysはCys34と称される。
【0016】
ここで、マイケルアクセプターなる用語は、限定するものではないが、α,β-不飽和カルボニル部分、マレイミド基及びビニルスルホン基をカバーする。
ここで、チオール反応性基なる用語は、限定するものではないが、ヨードアセトアミド基、非対称ジスルフィド類であって、(ここで定義した)二官能性リンカーが非対称ジスルフィド中のメルカプト官能基の一つと離脱基としての他の官能基を提供する。このような非対称ジスルフィド類の例は、ピリジルジスルフィド、(メトキシ-又はエトキシカルボニル)ジスルフィド類、及び(o-ニトロフェニル)ジスルフィド類である。
【0017】
インスリン活性を有するインスリンアルブミンコンジュゲートとは、例えば静脈内、皮下又は経肺投与による適切な投与後に例えばラット、ウサギ、イヌ又はブタモデルでありうる適切な動物モデルにおいて測定して哺乳動物における血糖を低下させる能力か又はインスリンレセプター結合親和性を有するインスリンアルブミンコンジュゲートを意味する。
【0018】
ここで、肝選択的なる用語は、筋肉及び/又は脂肪のような末梢組織へのインスリン作用に対して、肝臓へのインスリン作用に対しての選択性をカバーする。肝臓への作用は、筋肉及び/又は脂肪のような末梢組織へのインスリン作用に対して、好ましくは5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上強い。作用の選択性は、例えば、インスリンアルブミンコンジュゲートの投与後に様々な組織中のインスリンレセプターリン酸化(つまり、活性化)過程を測定することによって測定することができる。別法では、肝選択性は、Ra(グルコース出現速度、つまり肝臓グルコース生産)及びRd(グルコース廃棄速度、つまり筋肉及び脂肪でのグルコース取り込み)の測定によってクランプ技術によって測定することができる。
【0019】
インスリンレセプター親和性及びIGF-1レセプター親和性を有するポリペプチドは、適切な結合アッセイにおいてインスリンレセプター及びヒトIGF-1レセプターと相互作用可能なポリペプチドである。このようなレセプターアッセイは当該分野で良く知られており、実施例に更に記載される。本インスリンアルブミンコンジュゲートはIGF-1レセプターに結合せず、又は上記レセプターに対してかなり低い親和性を有する。より正確には、この発明のインスリンアルブミンコンジュゲートは、ヒトインスリンのものと実質的に同じ大きさか又はそれ以下の親和性をIGF-1レセプターに対して有する。
【0020】
ここで使用される治療及び治療するという用語は、疾患、疾病又は症状に抗することを目的として、患者を管理し世話することを意味する。該用語には、疾患、疾病又は症状の進行を遅延させ、徴候及び合併症を軽減し、徴候及び合併症を軽減又は緩和し、及び/又は疾患、疾病又は症状を治癒又は除去することが含まれるものである。治療される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0021】
ここで使用される疾患の治療なる用語は、疾病、症状又は疾患を発症した患者の管理及び世話(ケア)を意味する。治療の目的は、疾病、症状又は疾患と闘うことである。治療には、疾病、症状又は疾患を排除し又は制御するため、並びに疾病、症状又は疾患に伴う徴候又は合併症を緩和するための、活性な化合物の投与を含む。
ここで使用される疾患の予防なる用語は、疾患の臨床的発症より前に疾患の発病の危険性について個人を管理及びケアすることとして定義される。予防の目的は疾病、症状又は疾患の発病と闘うことであり、徴候又は合併症の発症を予防又は遅らせるため、及び関連する疾病、症状又は疾患の発病を予防又は遅らせるために、活性な化合物を投与することを含む。
【0022】
ここで使用される有効量なる用語は、治療されない場合と比較して患者の治療に有効であるのに十分な投薬量を意味する。
明示的に示されない限り、ここに述べられるアミノ酸はL-アミノ酸である。更に、ペプチドのアミノ酸配列の左及び右端は、別の記載がない限り、それぞれN末端及びC末端である。
【0023】
便宜上、ここに、コード性の天然アミノ酸の名前をカッコ内に通常の3文字コードと1文字コードを伴って示す:グリシン(Gly及びG)、プロリン(Pro及びP)、アラニン(Ala及びA)、バリン(Val及びV)、ロイシン(Leu及びL)、イソロイシン(Ile及びI)、メチオニン(Met及びM)、システイン(Cys及びC)、フェニルアラニン(Phe及びF)、チロシン(Tyr及びY)、トリプトファン(Trp及びW)、ヒスチジン(His及びH)、リジン(Lys及びK)、アルギニン(Arg及びR)、グルタミン(Gln及びQ)、アスパラギン(Asn及びN)、グルタミン酸(Glu及びE)、アスパラギン酸(Asp及びD)、セリン(Ser及びS)及びスレオニン(Thr及びT)。タイピングエラーにより、一般的に用いられるコードからのずれがある場合は、一般的に用いられるコードが適用される。この発明のインスリン中に存在するアミノ酸は、好ましくは、核酸によってコードされうるアミノ酸である。
【0024】
ここで使用される略語は次の通りである:hは時間、AcCNはアセトニトリル、DCMはジクロロメタン、DIPEAはジイソプロピルエチルアミン、DMFはジメチルホルムアミド、DMSOはジメチルスルホキシド、EtOAcは酢酸エチル、TFAはトリフルオロ酢酸、THFはテトラヒドロフランであり、TSTUはO-(N-スクシミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、HOSuはN-ヒドロキシスクシンイミド、HOAtは1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール、HOBtは1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、MWCOは分子量カットオフ、CVはカラム容量である。
【発明の概要】
【0025】
インスリンA鎖のC末端のリジン残基へのインスリンへのアルブミンのコンジュゲーションが、従来はB20リジンを介して結合していた類似のインスリンアルブミンコンジュゲートの相対親和性よりも、ヒトインスリンレセプターに対して高い相対親和性を有するインスリンアルブミンコンジュゲートを生じることが意外にも見出された。本発明は二官能性リンカーの合成を必要とする。一官能基がリンカーの一端をインスリン分子へ結合させ、他の官能基がリンカーの他端をアルブミンに結合させる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】16週齢の意識ある給餌されたZDFラットに実施例1のインスリンアルブミンコンジュゲート(87.3nmol/kg)並びにビヒクルの皮下投与後の時間(hr)に対する血糖(mmol/l)の依存性を示す。結果は、実施例1のインスリンアルブミンコンジュゲートによるグルコースのクリアランスは速く、効果的で、持続性があった。
【図2a】実施例1のインスリンアルブミンコンジュゲートによる肝臓のインスリンレセプターのリン酸化を示す。試験の結果は、肝臓インスリンレセプターの活性化の増加によって表される肝選択性を示すものであった。
【図2b】実施例1のインスリンアルブミンコンジュゲートによる筋肉として表される末梢組織のインスリンレセプターのリン酸化を示す。試験の結果は、筋肉のインスリンレセプターの活性化の減少によって表される肝選択性を示すものであった。
【図2c】実施例1のインスリンアルブミンコンジュゲートによる脂肪として表される末梢組織のインスリンレセプターのリン酸化を示す。試験の結果は、脂肪組織のインスリンレセプターの活性化の減少によって表される肝選択性を示すものであった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
形式的には、この発明のインスリンアルブミンコンジュゲートはインスリンアナログ、リンカー及びアルブミンからなる。一実施態様では、インスリンアナログはA22K,B29R,desB30ヒトインスリンであり、リンカーは8-[3-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイルであり、アルブミンはアルバゲン(以下の実施例1を参照)である。
この発明のインスリンアルブミンコンジュゲートの一部であるインスリンアナログは、形式的には、A21アミノ酸残基と比較して単一のアミノ酸残基、つまりリジン残基、又はペプチド残基、好ましくは2−5のアミノ酸残基からなるものからなり、場合によってはインスリンの位置A1−A21及びB1−B30のアミノ酸残基の一又は複数が欠失sれ又は他のアミノ酸残基によって置換されたA鎖の伸展のC末端を含む、A鎖のC末端にリジン残基を有するヒトインスリンとして例示することができる。命名法については、A21位のアミノ酸残基にC末端的に連結されたアミノ酸残基はA22位にある。同様に、A21のアミノ酸残基にC末端的に連結されたペプチド残基中に存在するアミノ酸残基は、位置A22、A23、A24、A25等にある。インスリンアナログは、ヒトインスリンのA鎖と比較して、A鎖のC末端にリジン残基を有するか、又はリジン残基はA差のアミノ酸伸展のC末端にあり、A鎖の上記伸展はそのC末端にある。
【0028】
二官能性リンカーの一端はA鎖のC末端リジンに結合されなければならない。二官能性リンカーの他端はアルブミンに結合されなければならない。
二官能性リンカーからアルブミンへの結合は好ましくは34位の遊離Cysに対してでなければならない。
二官能性リンカーは、一般式(I):
M-Z-Y-W (I)
[上式中、Mは、マレイミド基、ビニルスルホン等によって表されるマイケルアクセプター、ヨウ化物、ピリジルジスルフィド、メトキシ−又はエトキシカルボニルジスルフィド及びo−ニトロフェニルジスルフィドによって表されるチオール反応性基を含み;
Zは共有結合又は次の式の部分:
-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-;
-NH-(CH)-CH-CO-;
-NH-(CH-CH-O)-CH-CH-CO-;
-HN-CH-CH-NH-CO;
-NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-CO-CH-CH-CO-;又は
-NH-C-CO-
から選択され(ここで、そのN末端はZ(又は存在するならばY)と標記されている部分に連結されている);
pは0又は1から24の範囲の整数であり;
qは0又は1から24の範囲の整数であり;
rは0又は1から24の範囲の整数であり;
-C-はパラ−フェニレンであり;
nは1から10の範囲の整数又はより好ましくは1又は2であり;
YはZ又は共有結合として定義され;
oは0又は1から10の範囲の整数又はより好ましくは0又は1であり;かつ
Wは一般的に使用される活性エステルの離脱基である)
によって表すことができる。
【0029】
そのような活性エステル離脱基の非限定的な例は、HOSu(N-ヒドロキシスクシミジル)、HOAt、HOBt、ベンゾトリアゾール等である。
一実施態様では、式I(M-Z-Y-W)の二官能性リンカーは次の6の一般式:

[上式中、基-Z-Y-Wは上の通りであり、sは1から5の範囲の整数又はゼロ(0)であり、tは1から5の範囲の整数である]を有する。
【0030】
他の実施態様では、二官能性リンカーは、一般式Ia:
M-(CH)-CO-Z-Y-W (Ia)
[上式中、Mは、マレイミド基、ビニルスルホン等によって表されるマイケルアクセプター、ヨウ化物、ピリジルジスルフィド、メトキシ−又はエトキシカルボニルジスルフィド及びo−ニトロフェニルジスルフィドによって表されるチオール反応性基であり;
mは1から5の範囲の整数であり;
Zは次の式:
-NH-(CH-CH-X)-CH-CO-;
-NH-CH-CH-O-CH-CO-;
-HN-CH-CH-NH-;
-NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-CO-CH-CH-CO-;
-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-;又は
-NH-C-CO-
の部分から選択され;
Xは-O-又は-CH-であり;
pは0又は1から24の範囲の整数であり;
-C-はパラ-フェニレンであり;
nは1から10の範囲の整数であり、又はより好ましくは1又は2であり;
YはZ又は共有結合として定義され;
oは0又は1から10の範囲の整数又はより好ましくは0又は1であり;かつ
Wは一般的に使用される活性エステルの離脱基である]
を有する。そのような活性エステル離脱基の非限定的な例はHOSu(N-スクシミジルオキシ)、HOAt、HOBt、ベンゾトリアゾール等である。
【0031】
ここでの請求項に記載した化合物を調製する一つの方法は次の通りである:
式(I)の二官能性リンカーの活性エステルをインスリンのA鎖C末端のリジンのεアミノ基[Nε]と反応させて、一般式(II):
M-Z-Y-Ins (II)
(上式中、Insは、形式的にはA鎖のC末端リジン残基に存在するアミノ基から水素原子が除去されたインスリン又はインスリンアナログを表し;
M、m、Z、n、Y及びoはここに定義された通りである)
のインスリン誘導体を得る。
【0032】
ついで、リンカーが結合したインスリン(式IIのインスリン)を所望ならばアルブミンと反応させることができる。この反応はエキソビボ(つまり、インビトロ)又はインビボの何れかで実施することができる。アルブミン中のシステイン残基の遊離チオールが、インスリンに結合した離ナーのチオール反応性官能基と(例えばマイケル反応又は置換反応で)反応し、一般式(III):
Alb-M’-Z-Y-Ins (III)
(上式中、M’は、アルブミンのチオール基(好ましくはCys-34)との反応後のチオール反応性基(M)であり、
p、q、r、t、Z、p、-C-、n、Y及びoはここに定義された通りであり、
Albは、Cys残基、好ましくはCys-34残基の遊離チオール基を介して連結されたここに記載のアルブミンである)
によって表されるインスリンアルブミンコンジュゲートを形成する。
【0033】
一実施態様では、M’は次の一般式:

(上式中、tは上で定義された通りである)
の4つの基の一つである。
【0034】
符号Insによって示される基は一般式Ins-H(ここで、Insは上で定義された通りである)の化合物から由来する。一般式Ins-H(ここで、Insは上で定義された通りである)の化合物は、既知の化合物又は既知の化合物の調製と同様にして調製することができる化合物である。
【0035】
一般式III(式中、Alb及びInsがそれぞれ上で定義された通りである)の本発明に係るインスリンアルブミンコンジュゲートの非限定的な特定の例は、この発明の一実施態様を構成する次のものである:










一実施態様では、一般式-M’-Z-Y-の部分は、一般式IIIのこの発明に係るインスリンアルブミンコンジュゲートの上記の126の非限定的な特定の例に存在する部分からなる群から選択される。
【0036】
他の実施態様では、この発明の化合物中に存在する親インスリンは、A22位のリジンは別にして、またA21アミノ酸残基にC末端的に連結した任意のペプチド残基は別にして、またB29R及び/又はdesB30変異とは別にして、次の変異の一又は複数を含む。ここで、A又はB鎖の位置が最初に与えられ、その後に、可能なアミノ酸残基が一文字コードとして与えられる。A22位のリジンは別にして、またA21アミノ酸残基にC末端的に連結した任意のペプチド残基は別にして、またB29R及び/又はdesB30変異とは別にして、一実施態様では、6の変異があり、他の実施態様では、5の変異があり、他の実施態様では、4の変異があり、他の実施態様では、3の変異があり、他の実施態様では、2の変異があり、他の実施態様では、1の変異があり、他の実施態様では、変異がない:
【0037】
A4: A又はQ
A5: L
A8: R、N、Q、E、H、L又はW
A9: R又はL
A14: E又はD
A15: A又はT
A16: M
A17: D又はF
A18: R、L、又はV
A21: G、A又はK
【0038】
B3: A、R、H、I、L、M、F、W、Y、S又はT
B10: D又はE
B25: Y、H又はdesB25
B26: Q、E、S又はdesB26
B27: H、L、M、W又はY
B28: D又はE
【0039】
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA4A又はA4Q変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA5L変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA8L、A8N、A8Q、A8E、A8H、A8L、又はA8W変異を含む。他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA8H変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA9R又はA9L変異を含む。他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA9L変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA14E又はA14D変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA15A又はA15T変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA16M変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA17D又はA17F変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA18R、A18L、又はA18V変異を含む。他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA18L又はA18V変異を含む。
【0040】
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA21G又はA21A変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB3A、B3R、B3H、B3I、B3L、B3M、B3F、B3W、B3Y、B3S又はB3T変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB10D又はB10E変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB25Y、B25H、又はdesB25変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB26Q、B26E、B26S、はdesB26変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB27H、B27L、B27M、B27W、又はB27Y変異を含む。他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB27W又はB27Y変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはB28D又はB28E変異を含む。
他の好ましい実施態様では、本発明の親インスリンはA21Q、B1Q、desB1、B3Q、B3S、B3T、B13Q、又はdesB27変異を含む。
【0041】
この発明のインスリンアルブミンコンジュゲート中に存在し得、この発明の一態様である親インスリンアナログの非限定的な特定の例は、次のものを含む:



【0042】
親インスリンはそれ自体知られている方法で調製することができる。例えば、それらは、例えばEP1246845に開示されたよく知られた技術によって適切な宿主細胞中で問題の単鎖インスリンをコードするDNA配列を発現させることによって生産することgできる。インスリンは、例えばEP163529及びEP214826に開示された酵素的及び化学的インビトロプロセスによって所望のインスリン分子に転換される前駆体分子として、形質転換された宿主細胞において発現される。前駆体分子は、例えばEP1246845に開示されたようにして後で切断されるN末端伸展をもって発現されうる。本発明に適したタイプのN末端伸展の例は、例えば米国特許第5395922号及び欧州特許第765395号に開示されている。より詳細には、国際公開第2006/082205号の第37頁第31行から第39頁第29行を参照することができる。
【0043】
上記一般式IIの化合物がヒトに投与される場合、それはヒト血清アルブミンと結合し、上記一般式IIIの化合物を形成する。よって、上記一般式IIの化合物と上記一般式IIIの化合物は、例えば糖尿病の治療において、医薬として使用することができる。一般式IIの化合物と一般式IIIの化合物は、集合的に、一般式IV:
A-Z-Y-Ins (IV)
(上式中、AはM及び集合的にAlb-M’-と同じ意味を有し、Z、n、Y、o、Ins、M、Alb及びM’はそれぞれここに記載されている)
によって表すことができる。
【0044】
薬学的組成物
この発明の化合物は、皮下的、経鼻的、経口的又は経肺的に投与されうる。
皮下投与のためには、この発明の化合物は、既知のインスリンの製剤と同じようにして製剤化される。更に、皮下投与のためには、この発明の化合物は、既知のインスリンの投与と同じようにして投与され、一般に医師はこの手順に通じている。
この発明の化合物は、循環インスリンレベルを増加させ、及び/又は循環グルコースレベルを低下させるために効果的な用量で、吸入によって投与されうる。このような投与は、糖尿病又は高血糖症のような疾患を治療するのに効果的でありうる。インスリンの効果的な用量を達成するには、この発明の化合物を、約5μg/kgを越え約500μg/kgまでの吸入用量で投与することが必要である。治療的有効量は、インスリンレベル、血糖値、患者の身体状態、患者の肺の状態等を含む要因を考慮する、博識な医師により決定されうる。
【0045】
この発明の化合物は、吸収の遅延化、及び/又はその全身的クリアランスの低減を達成するために、吸入により送達されうる。類似の粒径及び類似の肺沈着レベルで比較する場合、異なった吸入装置が典型的には類似の薬物動態をもたらす。
この発明の化合物は、吸入による治療剤の投与について、当該分野で知られている様々な吸入装置の何れかにより送達されうる。これらの装置には、定量噴霧式吸入器、ネブライザー、乾燥パウダー発生器、噴霧器等が含まれる。好ましくは、この化合物は、乾燥パウダー吸入器又は噴霧器により送達される。この発明の化合物を投与するための吸入装置には、幾つかの所望される特徴がある。例えば、吸入装置による送達は、有利には信頼性、再現性及び正確性がある。良好な呼吸性のためには、吸入装置は、小粒子又はエアゾール、例えば約10μm未満、例えば約1−5μmのものを送達すべきである。この発明の実施に適した商業的に入手可能な吸入装置の幾つかの特定の例は、TurbohalerTM(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、SpirosTM吸入器(Dura)、Inhale Therapeuticsにより市販されている装置、AERxTM(Aradigm)、Ultravent(登録商標)ネブライザー(Mallinckrodt)、Acorn II(登録商標)ネブライザー(Marquest Medical Products)、Ventolin(登録商標)定量噴霧式吸入器(Glaxo)、Spinhaler(登録商標)パウダー吸入器(Fisons)等である。
【0046】
当業者には分かるように、この発明の化合物の処方、送達される製剤の量、及び単一用量の投与の持続時間は、使用される吸入装置のタイプに依存する。ネブライザー等の幾つかのエアゾール送達システムでは、投与の頻度及びシステムが稼働している時間長さは、主としてエアゾール中の化合物の濃度に依存するであろう。例えば、短い投与時間は、ネブライザー溶液中のより高い濃度の化合物で使用されうる。定量噴霧式吸入器等の装置は、高濃度のエアゾールを生成することができ、所望量の化合物の送達を、より短い時間で作動させることができる。パウダー吸入器等の装置は、与えられた充填量の薬剤が装置から排出されるまで、活性剤を送達する。このタイプの吸入器では、与えられたパウダー量のこの発明の化合物の量が、一回の投与で送達される用量を決定する。
【0047】
吸入装置により送達される製剤におけるこの発明の化合物の粒径は、肺、好ましくは気道下部及び肺胞内中へ吸入されるインスリンの能力に関して重要である。好ましくは、この発明の化合物は、送達される化合物の少なくとも約10%、好ましくは約10%から約20%、又はそれ以上が肺に沈着するように製剤化される。口呼吸するヒトにとって肺沈着の最大効率は、約2μmから約3μmの粒径の場合に得られることが知られている。粒径が約5μmを越えると、肺沈着は大幅に低減する。粒径が約1μm以下であると、肺沈着の低下が引き起こされ、治療に有効な十分な量の粒子を送達することが困難になる。よって、吸入器により送達される化合物の粒子は、好ましくは約10μm未満、より好ましくは約1μmから約5μmの範囲の粒径を有する。化合物の製剤化は、選択された吸入装置で所望される粒径が得られるように選択される。
【0048】
乾燥パウダーとしての投与の場合、有利には、この発明の化合物は、約10μm未満、好ましくは約1μmから約5μmの粒径を有する微粒形態に調製される。好ましい粒径は、患者の肺の肺胞に送達するのに効果的なものである。好ましくは、乾燥パウダーは、大半の粒子が所望の範囲のサイズを有するように製造された粒子から主としてなる。有利には、乾燥パウダーの少なくとも約50%が、約10μm未満の直径を有する粒子から作製される。このような製剤は、この発明の化合物と他の所望の成分を含む溶液を、噴霧乾燥、製粉、又は臨界点濃縮することにより達成可能である。また、本発明に有用な粒子を作製するのに適切な他の方法も、当該分野で知られている。
【0049】
粒子は、通常、容器中で乾燥パウダー製剤から分離され、ついで運搬気流を介して患者の肺に輸送される。典型的には、今の乾燥パウダー吸入器では、固形物を破壊する力は、患者の吸入だけでもたらされる。他のタイプの吸入器では、患者の吸入により生じる気流が、粒子を凝集させない推進モーターを駆動する。
【0050】
乾燥パウダー吸入器からの投与のためのこの発明の化合物の製剤は、典型的には、誘導体を含む微細に分割された乾燥パウダーを含むが、パウダーは、増量剤、担体、賦形剤、他の添加剤等をまた更に含みうる。例えば特定のパウダー吸入器からの送達に必要とされるパウダーを希釈するため、製剤のプロセシングを容易にするため、製剤に有利なパウダー性を付与するため、吸入装置からのパウダーの分散を容易にするため、製剤を安定させるため(例えば、酸化防止剤又はバッファー)、製剤に味を付与するため等に、添加剤を化合物の乾燥パウダー製剤に含有させることができる。有利には、添加剤は患者の気道に悪影響を与えないものである。化合物は分子レベルで添加剤と混合させることができ、又は固体製剤は添加剤の粒子と混合されて又はそれで被覆された化合物の粒子を含みうる。典型的な添加剤には、単糖類、二糖類、及び多糖類;糖アルコール類及び他のポリオール類、例えばラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール(lactitol)、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール、デンプン、又はそれらの組合せ;界面活性剤、例えばソルビトール類、ジホスファチジルコリン、又はレシチン等が含まれる。典型的には、添加剤、例えば増量剤は、上述の目的に対して有効な量、しばしば製剤の重量に対して約50%から約90%の量で存在している。インスリンアナログタンパク質等のタンパク質の製剤について、当該分野で知られている更なる薬剤もまた製剤に含めることができる。
【0051】
この発明の化合物を含むスプレーは、化合物の懸濁液又は溶液を加圧下でノズルを強制的に通過させることにより、生成させることができる。ノズルサイズ及び構造、適用圧力、及び液体供給速度は、所望される排出量及び粒径が達成されるように選択することができる。例えば、キャピラリー又はノズルフィード部に接続された電場により、エレクトロスプレーを製造することができる。有利には、噴霧器により送達されるインスリンコンジュゲートの粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μmから約5μmの範囲の粒径を有する。
【0052】
噴霧器と共に使用するのに適したこの発明の化合物の製剤は、典型的には、溶液1ml当たり約1mgから約500mgの濃度で水溶液中に化合物を含む。選択される化合物及び医師に知られている他の要因に応じて、溶液1ml当たりの化合物の上限はより低く、例えば450、400、350、300、250、200、150、120、100又は50mg以下でありうる。製剤は、賦形剤、バッファー、等張剤、保存料、界面活性剤、好ましくは亜鉛等の薬剤を含みうる。また製剤は、賦形剤、又は化合物の安定化のための薬剤、例えばバッファー、還元剤、バルクタンパク質、又は炭水化物をまた含みうる。インスリンコンジュゲートの製剤化に有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミン等が含まれる。化合物の製剤化に有用な典型的な炭水化物には、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコース、シクロデキストリン等が含まれる。また化合物の製剤は、エアゾールの形成において溶液の噴霧化により生じるインスリンコンジュゲートの表面誘起凝集を低減又は防止可能な界面活性剤を更に含みうる。様々な一般的な界面活性剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル類及びアルコール類、及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類を使用することができる。量は、一般には、製剤の約0.001から約4重量%の範囲である。
【0053】
この発明の化合物を含む薬学的組成物は、またこのような治療が必要な患者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン様シリンジにより、皮下、筋肉内又は静脈内注射により実施されうる。あるいは、非経口投与は、輸液ポンプにより実施されうる。
【0054】
この発明の化合物の注射用組成物は、所望される最終生成物が得られるように、適切に成分を溶解させ、混合することを含む製薬工業の一般的な技術を使用して調製することができる。よって、一手順に従えば、化合物は、調製されるべき組成物の最終容量よりも幾分少ない量の水に溶解される。必要に応じて、亜鉛、等張剤、保存料及び/又はバッファーが添加され、必要ならば、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を使用して、溶液のpH値が調節される。最後に、溶液の容量は、所望の濃度の成分が得られるように水で調節される。
【0055】
この発明の更なる実施態様では、バッファーは酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、及び他の有機酸又はそれらの塩又は混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーの各一がこの発明の別の実施態様を構成する。
【0056】
この発明の更なる実施態様では、製剤は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサール(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパンジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択されうる薬学的に許容可能な保存料を更に含有する。この発明の更なる実施態様では、保存料は約0.1mg/mlから20mg/mlの濃度で存在している。この発明の更なる実施態様では、保存料は約0.1mg/mlから5mg/mlの濃度で存在している。この発明の更なる実施態様では、保存料は約5mg/mlから10mg/mlの濃度で存在している。この発明の更なる実施態様では、保存料は約10mg/mlから20mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の保存料の各一が、この発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物に保存料を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0057】
この発明の更なる実施態様では、製剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン又はスレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、又は1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択されうる等張剤を更に含有する。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びカルボキシメチルセルロース-Naを使用することができる。一実施態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一の-OH基を有するC4−C8炭化水素と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述の糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用されうる。糖又は糖アルコールが液状調製物に可溶性であり、この発明の方法を使用して達成される安定化効果に悪影響を与えない限り、使用される量に決まった限定はない。一実施態様では、糖又は糖アルコールの濃度は、約1mg/mlから約150mg/mlである。この発明の更なる実施態様では、等張剤は約1mg/mlから50mg/mlの濃度で存在している。この発明の更なる実施態様では、等張剤は約1mg/mlから7mg/mlの濃度で存在している。この発明の更なる実施態様では、等張剤は約8mg/mlから24mg/mlの濃度で存在している。この発明の更なる実施態様では、等張剤は約25mg/mlから50mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の等張剤の各一がこの発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物に等張剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0058】
典型的な等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ジメチルスルホン及びグリセロールであり、典型的な保存料は、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びベンジルアルコールである。
適切なバッファーの例は、酢酸ナトリウム、グリシルグリシン、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)及びリン酸ナトリウムである。
この発明の化合物の鼻投与用の組成物は、例えば、欧州特許第272097号に記載されているようにして調製されうる。
【0059】
この発明の化合物を含む組成物は、インスリンに対して敏感な状態の治療に使用することができる。よって、それらは、1型糖尿病、2型糖尿病及び高血糖症で、例えば重症を負ったヒト及び大手術を受けたヒトに時折見られるようなものの治療に使用することができる。任意の患者に対する最適な用量レベルは、用いられる特定のインスリン誘導体の有効性、年齢、体重、身体活動、患者の食習慣、他の薬剤との可能な組合せ、及び治療される状態の重篤度を含む様々な要因に依存する。この発明の化合物の毎日の投与量は、既知のインスリン組成物と同様にして、当業者により、それぞれの個々の患者に対して決定されることが推奨される。
【0060】
この発明の好ましい特徴
ここでの説明をまとめ、補充するため、この発明の特徴は次の通りである:
1. 一般式(III)
Alb-M’-Z-Y-Ins (III)
[上式中、
Insは、A鎖のC末端リジン残基中に存在するアミノ基から形式的に水素原子が除去されたここで定義されたインスリン又はインスリンアナログを表し;
M’はAlb(アルブミン)のチオール基との反応後のMと命名されたチオール反応性基を表し、
Mは、マレイミド基、ビニルスルホン基、ビニルスルホン等によって表されるマイケルアクセプター、ヨウ化物、ピリジルジスルフィド、メトキシ-又はエトキシカルボニルジスルフィド及びo-ニトロフェニルジスルフィドによって表されるチオール反応性基を表し;
Zは共有結合であるか又は次の式:
-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-;
-NH-(CH)-CH-CO-;
-NH-(CH-CH-O)-CH-CH-CO-;
-HN-CH-CH-NH-CO-;
-NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-CO-CH-CH-CO-;又は
-NH-C-CO-
の一つの部分を表し;
pは0(ゼロ)又は1から24の範囲の整数であり;
qは0(ゼロ)又は1から24の範囲の整数であり;
rは0(ゼロ)又は1から24の範囲の整数であり;
-C-はパラ-フェニレンであり;
nは1から10の範囲の整数か又はより好ましくは1又は2を表し;
YはZに対して与えた意味の一つを有し;
oは0から10又はより好ましくは0、1又は2であり;かつ
Albはここで定義されたアルブミンを表す]の化合物。
2. 一般式(IIIa): Alb-M’-(CH-CO-Z-Y-CO-Ins(IIIa)[上式中、M’はアルブミンのチオール基との反応後のチオール反応性基(M)であり、ここで、Mはマレイミド基、ビニルスルホン等によって表されるマイケルアクセプター、ヨウ化物、ピリジルジスルフィド、メトキシ-又はエトキシカルボニルジスルフィド及びo-ニトロフェニルジスルフィドによって表されるチオール反応性基であり;mは1から5の範囲の整数であり;Zは次の6つの部分:-NH-(CH-CH-X)-CH-CO-;-NH-CH-CH-O-CH-CO-;-HN-CH-CH-NH-;-NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-CO-CH-CH-CO-;-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-;及び-NH-C-CO-から選択され;Xは-O-又は-CH-であり;pは0又は1から24の範囲の整数であり;-C-はパラ-フェニレンであり;nは1から10の範囲の整数又はより好ましくは1又は2であり;YはZ又は共有結合として定義され;oは0又は1から10の範囲の整数又はより好ましくは0又は1であり;そしてAlbはここで定義されたアルブミンを表し、好ましくはCys残基の遊離チオール基を介して連結されている]の化合物。
3. Zが次の式:-NH-(CH-CH-X)-CH-CO-;-NH-CH-CH-O-CH-CO-;-HN-CH-CH-NH−;-NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-CO-CH-CH-CO-;-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-;又は-NH-C-CO-(ここで、Xは-O-又は-CH−である)の次の部分から選択され;mは1から5の範囲の整数であり、Alb、M’、n、Y、o、W及びInsはそれぞれ第1項に定義された通りである一般式III又はIIIaの化合物。
4. Insが、A鎖のC末端にリジン残基を有し、場合によってはペプチド残基のC末端中のリジン残基又はA21アミノ酸残基にC末端的に連結されたリジン残基を有するインスリンアナログである上記項の何れか一項に記載の化合物。
5. Insが、A鎖のC末端にリジン残基を有し、場合によってはA鎖C末端のアミノ酸伸展のC末端中のリジン残基を有するインスリンアナログである、上記項に記載の化合物。
6. InsのA22位のアミノ酸残基がC末端アミノ酸残基であり、A22アミノ酸残基がK(Lys)である上記項の何れか一項に記載の化合物。
7. InsのA22位のアミノ酸残基がC末端アミノ酸残基であり、A22アミノ酸残基がK(Lys)であり、A18がL(Leu)である上記項の何れか一項に記載の化合物。
8. InsのA23位のアミノ酸残基がC末端アミノ酸残基であり、A23アミノ酸残基がK(Lys)である上記項の何れか一項に記載の化合物。
9. A22位のアミノ酸残基がGである、可能な限度において先行する項の何れか一項に記載の化合物。
10. B29位のアミノ酸残基がR(Arg)である先行する項に記載の化合物。
11. B30位のアミノ酸残基が欠失されている先行する項に記載の化合物。
12. InsがA22K,B29R,desB30ヒトインスリン;A22G,A23K,B29R,desB30ヒトインスリン;A22G,A23G,A24K,B29R,desB30ヒトインスリン;A22G,A23G,A24G,A25K,B29R,desB30ヒトインスリン;又はA21Q,A22−39G,A40K,B29R,desB30ヒトインスリンである、可能な限度において上記項の何れか一項に記載の化合物。
13. InsのA21位のアミノ酸残基がC末端アミノ酸残基であり、A21アミノ酸残基がK(Lys)である上記項に記載の化合物。
14. InsのA18位のアミノ酸残基がL(Leu)である上記項に記載の化合物。
15. InsのA21位のアミノ酸残基がC末端アミノ酸残基であり、A21アミノ酸残基がK(Lys)であり、A18がL(Leu)である上記項に記載のインスリンアルブミンコンジュゲート。
16. InsのA5位のアミノ酸残基がL(Leu)である上記項の何れか一項に記載の化合物。
17. M’が

である上記項の何れか一項に記載のインスリンアルブミンコンジュゲート。
18. mが2である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
19. tが2である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
20. M’が-CH-CO-である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載のインスリンアルブミンコンジュゲート。
21. Zが部分-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
22. Zが部分-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
23. nが1である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
24. Yが共有結合である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
25. YがNH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
26. oが2である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
27. Albがヒト血清アルブミン又はアルバゲン(N末端残基(Asp)が欠失したヒト血清アルブミン)である、可能な限度での上記項の何れか一項に記載の化合物。
28. 一般式II:
M-Z-Y-Ins (II)
(上式中、M、Z、n、Y、o及びInsはそれぞれここで定義された通りであり、特に上項で定義された通りである)の化合物。
29.この明細書、例えば特定の実施例、特に以下に記載する実施例1以下の何れかに特に記載されている化合物の何れか一である、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物。
30. 糖尿病を治療する薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
31. 糖尿病を治療するために皮下投与可能な薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
32. 糖尿病を治療するために皮下投与可能で、長期間作用する効果をもたらす薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
33. 糖尿病を治療するために肺投与可能な薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
34. 糖尿病を治療するために肺投与可能で、長時間の作用効果をもたらす薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
35. 糖尿病を治療するために肺投与可能なパウダー状薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
36. 糖尿病を治療するために肺投与可能な液状薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
37. 糖尿病を治療するために経口投与可能な薬学的組成物の調製のための、可能な度合いでの先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の使用。
38. 先行する生成物の項のいずれか1項の化合物の治療的有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、糖尿病の治療方法。
39. ヒトインスリン、並びに先行する項の何れか一項の化合物を含有する組成物。
40. インスリンアスパルト、並びに先行する項の何れか一項の化合物を含有する組成物。
41. インスリンリスプロ、並びに先行する項の何れか一項の化合物を含有する組成物。
42. インスリングルリシン、並びに先行する項の何れか一項の化合物を含む組成物。
43. インスリンアナログに関連する先行する項の何れか一項のインスリンアナログの生物活性量と薬学的に許容可能な担体を含有する薬学的組成物。
44. インスリンアナログに関連する上述した項の何れか一項のインスリンアナログ、又は上述した項の何れか一項の薬学的組成物を患者に投与することを含む、患者の高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、肥満、X症候群、又は脂質代謝異常を治療、予防又は緩和する方法。
45. 高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、肥満、X症候群、又は脂質代謝異常を治療又は予防する薬学的製剤を調製するための、インスリンアナログに関する上述した項の何れか一項のインスリンアナログの治療的有効量の使用。
46. 糖尿病の処置方法であって、該方法が、先行する生成物の項の何れか一項のインスリンアルブミンコンジュゲートの治療的有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。
【0061】
場合によっては、一又は複数の以下の請求項と、ここに記載の一又は複数の項とを組合せることで、更なる項が得られ、本発明は該項と請求項の全ての可能な組合せに関する。
ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりその全内容がここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的に使用され、決してこの発明を限定するものと解すべきではない。
ここに提供される任意かつ全ての例、又は例示的言語(例えば「等」)の使用は、単にこの発明をより明らかにすることを意図しており、特に請求項に記載がない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中の如何なる語句も請求項に記載していない要素が本発明の実施に必須であることを示しているものと解すべきではない。
ここでの特許文献の引用及び援用は単に便宜上なされているもので、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使性についての見解を反映させるものではない。文献のここでの記載は、それらが従来技術を構成することを自認するものではない。
ここで、「含有する」なる単語は、広義には「含む」、「有する」又は「包含する」を意味すると解釈される(EPOガイドラインC4.13)。
この発明は、適用される法律に容認される場合、ここに添付された特許請求の範囲に記載された主題事項の全ての変更及び均等物を含む。
【実施例】
【0062】
次の実施例は例証する方法を提供するものであって、限定するものではない。
一般的方法
LCMS法
Waters Micromass ZQ 質量分析計を使用し、Waters Alliance HT HPLCシステムからの溶出後に、試料の質量を同定した。
溶出液:
A:水中0.1%のトリフルオロ酢酸
B:アセトニトリル中0.1%のトリフルオロ酢酸
カラム:Phenomenex, Jupiter C4 50×4.60mm、内径5μm
勾配:7.5分にわたって10%−90%B、1.0ml/分
【0063】
実施例1
A22K[Nε8-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

工程1:A22K(Nε-8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタノイル),B29R,desB30ヒトインスリン
A22K,B29R,desB30ヒトインスリン(国際公開第2007096431号)(1.00g)をDMSO(80ml)及びトリエチルアミン(0.50ml)に溶解させた。THF(8.35ml)に溶解させた8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル(84mg)を添加した。165分後、数滴のTFA、A-及びB-バッファー(以下参照)を添加し、pH5−6で150mlを得た。
分取HPLCによる精製:C18、3cmカラム(Gemini)、A-バッファー:MiliQ水に0.1%のTFA、B-バッファー:AcCNに0.1%のTFA、流量:20ml/分、勾配:60分にわたって20−40%のB。
収量:117mg、MALDI:6152.89。
【0064】
工程2:A22K[Nε8-[3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン
アルバゲン(New Century Pharmaceuticals, Inc.による特注の200mgのバイアル、水から凍結乾燥、安定していない組換え体)を、反応バッファー(0.15MのNaHPO、pH6.5、2%のマンニトール、5ml)に溶解させた。10%の酢酸(0.50ml)にA22K-(Nε-8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタノイル)B29R,desB30ヒトインスリン(18.5mg)が入った溶液を、沈殿下で添加した。1NのNaOHを用い、pHを7.0に調節し、ほぼ透明な反応混合物を得た。混合物を室温で4−6時間、ゆっくりと攪拌した。硫酸アンモニウム(1g)を添加し、Millexの0.22μmフィルターを通して、混合物を濾過した。HIC-ISO(25ml)カラムを使用し、Akta Purifierにおいて精製を実施した。A-バッファー、0.05MのNaHPO、2Mの硫酸アンモニウム、pH7、2%のマンニトール:B-バッファー、0.05MのNaHPO、pH7、2%のマンニトール。
勾配:20CVに対して0−100%のB。流量10ml/分。コンジュゲートを含有するフラクションをプール化し、Vivaspin 20, 30000 MWCOチューブを使用し、3000gでの遠心分離により濃縮した。HiPrep 26/10カラムとB-バッファーを使用し、濃縮した生成物を脱塩した。Vivaspin 20, 30000 MWCOチューブを使用し、3000gでの限外濾過により、収集したフラクションをもう一度濃縮した。冷凍庫において、生成物をバッファーに保存した。吸光係数:41479を使用し、吸光測定により、濃度を決定した。LC-MS、M/z:1960.0(M+37)、組合せ:72478。
【0065】
8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル:
工程1:3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル:
マレイミド(Malimido)プロピオン酸(500mg)を無水THF(15ml)に溶解させた。TSTU(790mg)及びDIPEA(0.62ml)を添加した。混合物を、室温、窒素下にて一晩攪拌した。黄色の粘度のある懸濁液が濃縮された。残留物をDCMに溶解させ、0.1NのHCl(2×)及びブライン(1×)で抽出した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮し、白色の固形物を得た。LC-MS、M/z:267.26(M+1)。
【0066】
工程2:8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタン酸
3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル(787mg、粗物質)をDMF(15ml)に溶解させた。8-アミノオクタン酸(350mg)及びDIPEA(0.45ml)を添加した。混合物を、室温、窒素下にて一晩攪拌した。混合物を濃縮した。残留物をEtOAcに溶解させ、0.1NのHCl(2×)で抽出した。相分離は容易ではなかった。有機相をブライン(2×)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮し、白色の固形物を得た。LC-MS、M/z:311.34(M+1)。
【0067】
工程3:8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル
無水THF(15ml)に8-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロピロール-1-イル)プロピオニルアミノ]オクタン酸(917mg、粗物質)が入った溶液に、TSTU(1.07mg)及びDIPEA(0.65ml)を添加した。混合物を窒素下にて一晩攪拌した。混合物を濃縮した。残留物にEtOAcを添加し、沈殿物を濾過した。濾液を0.1NのHCl(2×)及びブライン(1×)で抽出し、乾燥させ(NaSO)、濃縮し、オフ-ホワイト色の固形物を得た。全体の収量:37%(444mg)。LC-MS、M/z:408.39(M+1)。
【0068】
実施例2
A22K[Nε-12-{2-(アルバゲン-Cys34-イルアセチルアミノ)}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

工程1:A22K(Nε-12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイル),B29R,desB30ヒトインスリン
0.1Mの炭酸ナトリウム(20ml)及びエタノール(10ml)、pH10.6にA22K,B29R,desB30ヒトインスリン(国際公開第2007096431号)(1.00g)が入った溶液に、THF(0.5ml)に12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル(99mg)が入った溶液を添加した。反応混合物のpHを10.6に保持した。30分、ゆっくりと攪拌した後、水(50ml)を添加し、1NのHClを用いて、pHを5.5に調節し、沈殿物を得た。生成物を3000gで10分、沈降させた。上清を廃棄し、固体状生成物を分取HPLC:C18、3cmカラム(Gemini)、A-バッファー:MiliQ水に0.1%のTFA、B-バッファー:AcCNに0.1%のTFA、流量:25ml/分、勾配:45分にわたって25−60%のBで精製した。
収量:330mg、MALDI:6228.21。
【0069】
工程2:A22K[Nε-12{[2-アルバゲン-Cys34-イルアセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン
アルバゲン(New Century Pharmaceuticals, Inc.による特注の200mgのバイアル、水から凍結乾燥、安定していない組換え体)を、反応バッファー(0.15MのNaHPO、pH7.0、2%のマンニトール、3ml)に溶解させた。反応バッファー/アセトニトリル1:1(2.0ml)にA22K(Nε-12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイル),B29R,desB30ヒトインスリン(20mg)が入った溶液を添加し、溶液を得た。pHは7.3であった。混合物を、室温、暗所で一晩、ゆっくりと攪拌した。硫酸アンモニウム(1g)を添加し、Millexの0.22μmフィルターを通して、混合物を濾過した。実施例1に記載したようにして精製を実施した。冷凍庫において、生成物をB-バッファーに保存した。吸光係数:41479を使用し、吸光測定により、濃度を決定した。LC-MS、M/z:1542.29(M+47)、組合せ:72430。
【0070】
12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル
工程1:12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカン酸
ヨード酢酸(1.00g)をジクロロメタンに溶解させ、暗所で保持した。TSTU(1.62g)及びDIPEA(1.03ml)を添加した。45分攪拌した後、DIPEA(1.03ml)とNMP(10ml)に12-アミノドデカン酸(1.14g)が入った懸濁液を添加した。4時間攪拌した後、0.5NのHCl(300ml)に混合物を注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機相を0.1NのHClで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、油を得た。ジエチルエーテルと酢酸エチルの混合物に残留物を溶解させ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、固形物を得た。この固形物をジエチルエーテルにおいて粉砕し、濾過し、パウダーを得た。収量:1.05g、50%。LC-MS、M/z:384.2(M+1)。
【0071】
工程2:12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル
THF(10ml)に12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカン酸(460mg)が入った溶液に、TSTU(415mg)及びDIPEA(0.315ml)を添加した。室温で2時間攪拌した後、混合物を0.5NのHCl(200ml)に注ぎ、酢酸エチル(2×200ml)で抽出した。組合せた有機相を0.1NのHCl及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。残留物をさらなる精製をすることなく使用した。収量:99%(575mg)。LC-MS、M/z:481.2(M+1)。
【0072】
実施例3
A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-アルバゲン-Cys-34-イルアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン

工程1:A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-ヨードアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)-エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン
0.1Mの炭酸ナトリウム(16ml)、pH10.5にA22K,B29R,desB30ヒトインスリン(国際公開第2007096431号)(0.800g)が入った溶液に、アセトニトリル/エタノール1:1(10ml)に(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)酢酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル(105mg)が入った溶液を添加した。反応混合物のpHを10.6に保持した。30分、ゆっくりと攪拌した後、水(50ml)を添加し、1NのHClを用いてpHを5.5に調節し、沈殿物を得た。生成物を3000gで10分、沈降させた。上清を廃棄し、固体状生成物を分取HPLC:C18、3cmカラム(Gemini)、A-バッファー:MiliQ水に0.1%のTFA、B-バッファー:AcCNに0.1%のTFA、流量:20ml/分、勾配:60分にわたって5−80%のBにより精製した。
収量:280mg、LC-MS、M/z:1630.23(M+4)。
【0073】
工程2:A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-アルバゲン-Cys-34-イルアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン
アルバゲン(New Century Pharmaceuticals, Inc.による特注の200mgのバイアル、水から凍結乾燥、安定していない組換え体)を、反応バッファー(0.15MのNaHPO、pH7.0、2%のマンニトール、3ml)に溶解させた。反応バッファー/アセトニトリル1:1(2.0ml)にA22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-({2-ヨードアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン(20mg)が入った溶液を添加し、溶液を得た。pHは7.3であった。混合物を、室温、暗所で一晩、ゆっくりと攪拌した。硫酸アンモニウム(1g)を添加し、Millexの0.22μmフィルターを通して、混合物を濾過した。実施例1に記載したようにして精製を実施した。冷凍庫において、生成物をB-バッファーに保存した。吸光係数:41479を使用し、吸光測定により、濃度を決定した。LC-MS、M/z:1774.71(M+31)、1732(M+32)、1548(M+47)。
【0074】
(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)酢酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イル
工程1:(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}-エトキシ)酢酸
0.1Mの炭酸ナトリウムに[2-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]酢酸(194mg)が入った溶液に、アセトニトリル(5ml)、続いてアセトニトリル(6ml)に12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカン酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル(260mg)が入った溶液を添加した。45分攪拌した後、1NのHClを用いて、pHを4に調節し、混合物を分取HPLC:C18、3cmカラム(Gemini)、A-バッファー:MiliQ水に0.1%のTFA、B-バッファー:AcCNに0.1%のTFA、流量:20ml/分、勾配:30分にわたって10−80%のB、により精製した。生成物を含有するフラクションをプールし、濃縮し、49%の収率(180m)で表題の化合物を得た。LC-MS、M/z:674.3(M+1)。
【0075】
工程2:(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}-エトキシ)酢酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イル
エタノール(1.5ml)に(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]-エトキシ}エトキシ)酢酸(50mg)が入った溶液に、TSTU(24mg)及びDIPEA(0.020ml)を添加した。室温で一晩攪拌した後、精密検査及び精製をすることなく、インスリン誘導体のアシル化に、混合物を直接使用した。
【0076】
実施例4
A18L,A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-アルバゲン-Cys-34-イル-アセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}-アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン

工程1:A18L,A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-ヨードアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン
0.1Mの炭酸ナトリウム(4ml)とエタノール(3ml)、pH10.7に、A18L,A22K,B29R,desB30ヒトインスリン(0.300g)が入った溶液に、エタノール(1.5ml)に(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-ヨードアセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)酢酸 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルエステル(55mg)が入った溶液を添加した。反応混合物のpHを10.7に保持した。60分、ゆっくりと攪拌した後、水(40ml)を添加し、1NのHClを用いてpHを5.5に調節し、沈殿物を得た。生成物を3000gで10分、沈降させた。上清を廃棄し、固体状生成物を分取HPLC:C18、3cmカラム(Gemini)、A-バッファー:MiliQ水に0.1%のTFA、B-バッファー:AcCNに0.1%のTFA、流量:20ml/分、勾配:45分にわたって10−70%のBにより精製した。
収量:72mg、LC-MS、M/z:1304.6(M+5)。
【0077】
工程2:A18L,A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-アルバゲン-Cys-34-イル-アセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン
アルバゲン(New Century Pharmaceuticals, Inc.による特注の200mgのバイアル、水から凍結乾燥、安定していない組換え体)を、反応バッファー(0.15MのNaHPO、pH7.0、2%のマンニトール、3ml)に溶解させた。反応バッファー/アセトニトリル1:1(2.0ml)にA18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-({2-ヨードアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン(18.3mg)が入った溶液を添加し、溶液を得た。1NのNaOHを用い、pHを7.4に上昇させた。混合物を、室温、暗所で一晩、ゆっくりと攪拌した。硫酸アンモニウム(1g)を添加し、Millexの0.22μmフィルターを通して、混合物を濾過した。実施例1に記載したようにして精製を実施した。冷凍庫において、生成物をB-バッファーに保存した。吸光係数:41479を使用し、吸光測定により、濃度を決定した。LC-MS、M/z:72716.18。
【0078】
次の実施例における本発明のアルブミン-インスリンコンジュゲートを、同様にして調製してよい。
実施例5
A18L,A22K[Nε-12-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0079】
実施例6
A5L,A22K[Nε-12-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0080】
実施例7
A18L,A22K[Nε-12-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0081】
実施例8
A22K[Nε-12-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0082】
実施例9
A5L,A22K[Nε-12-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イルアセチルアミノ)}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0083】
実施例10
A18L,A22K[Nε8-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0084】
実施例11
A5L,A22K[Nε8-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0085】
実施例12
A18L,A22K[Nε8-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0086】
実施例13
A22K[Nε8-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys3-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0087】
実施例14
A5L,A22K[Nε8-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0088】
実施例15
A5L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0089】
実施例16
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0090】
実施例17
A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0091】
実施例18
A5L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0092】
実施例19
A22K[Nε-10-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0093】
実施例20
A18L,A22K[Nε-10-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0094】
実施例21
A22K[Nε-10-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0095】
実施例22
A18L,A22K[Nε-10-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0096】
実施例23
A22K[Nε-10-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0097】
実施例24
A18L,A22K[Nε-10-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0098】
実施例25
A22K[Nε-10-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0099】
実施例26
A18L,A22K[Nε-10-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0100】
実施例27
A22K[Nε-16-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0101】
実施例28
A18L,A22K[Nε-16-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0102】
実施例29
A22K[Nε-16-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0103】
実施例30
A18L,A22K[Nε-16-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0104】
実施例31
A22K[Nε-16-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0105】
実施例32
A18L,A22K[Nε-16-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0106】
実施例33
A22K[Nε-16-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0107】
実施例34
A18L,A22K[Nε-16-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン

【0108】
実施例35
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0109】
実施例36
A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0110】
実施例37
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0111】
実施例38
A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0112】
実施例39
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0113】
実施例40
A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0114】
実施例41
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0115】
実施例42
A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル])B29R,desB30ヒトインスリン

【0116】
実施例43
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0117】
実施例44
18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0118】
実施例45
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0119】
実施例46
18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys35-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0120】
実施例47
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ})ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0121】
実施例48
18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイルアミノ)エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン

【0122】
実施例49
A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0123】
実施例50
18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys34)イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ]ヘキサデカノイルアミノ)エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン

【0124】
実施例51
ZDFラットへの実施例1のインスリンアルバゲンコンジュゲートの皮下投与
16匹のオス16週で食餌を与えられたZDFラット(約400g)を、2つのグループに分けた。実験の開始時に食物を取り除いた。一方のグループにはビヒクルを投与し、他方のグループには、t=0時に、実施例1のインスリンコンジュゲートを87.3nmol/kg投与した。t=30-、60-、90-、120-、180-及び240分、及びt=5-、6-、7-、8-、9-及び10時間に、血液試料を尾静脈から取り出した。
【0125】
実施例52
正常なマウスにおけるインスリン感受性組織でのインスリン刺激性細胞内シグナル伝達
21匹のオスで空腹ではないNMRIマウス(30-40g)を:1つの基本グループ、3つのヒトインスリン(HI)処置用グループ、及び3つの実施例1のインスリンアルブミンコンジュゲート処置用グループの、7つのグループに分けた。実験の開始時に食物を取り除いた。グルコース測定用の血液試料を、投与前に全てのマウスから取り出した。基本グループ(未処置)を犠牲にし(頸椎脱臼による)、組織を取り出し、基本値を決定した。他のマウスには、HI(6nmol/kg)又は実施例1のインスリンHSAコンジュゲート(9.9nmol/kg)を静脈内に投与した。同様の血糖低下が、双方の群で達成された。5、15及び120分の時点のそれぞれの後、尾端血液試料を、HI処置された群、及び実施例1で処置された群から取り出し、その後、これらの動物を犠牲にし、組織を除去した。BioSourceのELISAにより、インスリンレセプターホスホリル化分子を肝臓、下肢筋肉及び精巣上体脂肪において測定した。
【0126】
実施例53
この発明のインスリンアルブミンコンジュゲートのインスリンレセプター結合性
ヒトインスリンレセプターに対する、この発明のインスリンアルブミンコンジュゲートの親和性を、SPAアッセイ(シンチレーション近接アッセイ)マイクロタイタープレート抗体捕捉アッセイにより測定する。SPA-PVT抗体結合ビーズ、抗マウス試薬(Amersham Biosciences, Cat No. PRNQ0017)を、25mlの結合用バッファー(100mMのHEPES、pH7.8;100mMの塩化ナトリウム、10mMのMgSO、0.025%のトゥイーン-20)と混合する。単一のPackard Optiplate(Packard No. 6005190)用の試薬混合物は、1:5000に希釈され精製された組換えヒトインスリンレセプター(エクソン11を有する又は有さない)を2.4μl、試薬混合物100μl当たり5000cpmに相当するA14Tyr[125I]-ヒトインスリンの保存溶液を所定量、F12抗体の1:1000希釈液を12μl、SPA-ビーズを3ml、及び全体で12mlになるような結合用バッファーからなる。ついで、全体で100μlの試薬混合物をPackard Optiplateに各ウェルに添加し、適切な試料から、Optiplateにおいて、インスリン誘導体の希釈シリーズを作製する。ついで、ゆっくりと振盪させつつ、試料を16時間インキュベートする。ついで、1分間の遠心分離により相分離させ、Topcounterにてプレートを計測する。GraphPad Prism 2.01(GraphPad Software, San Diego, CA)にて、非線形回帰アルゴリズムを使用し、結合データを適合させた。
【0127】
2つの既知のインスリンと4つの本発明の選択されたインスリンのインスリンレセプター親和性:

<配列表>
実施例において、ヒトインスリンから次のずれ:A5L,A22K;A18L,A22K;及びA22Kを持つ次のA鎖はそれぞれ配列番号1−3として与えられ、ヒトインスリンから次のずれ:B29R,desB30を持つ次のB鎖は配列番号4として与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式II: M-Z-Y-Ins又は式III: Alb-M’-Z-Y-Ins[上式中、InsはA鎖のC末端リジン残基中に存在するアミノ基から形式的に水素原子が除去されたここで定義されたインスリン又はインスリンアナログを表し;M’はAlb(アルブミン)のチオール基との反応後にMと命名されたチオール反応性基を表し;Mは、マレイミド基、ビニルスルホン等によって表されるマイケルアクセプター、ヨウ化物、ピリジルジスルフィド、メトキシ-又はエトキシカルボニルジスルフィド及びo-ニトロフェニルジスルフィドによって表されるチオール反応性基を表し;Zは共有結合であるか又は次の6の式:-NH-(CH-CH-O)-CH-CO-;-NH-(CH)-CH-CO-;-NH-(CH-CH-O)-CH-CH-CO-;-HN-CH-CH-NH-CO-;-NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-CO-CH-CH-CO-;及び-NH-C-CO-の一つの部分を表し;pは0(ゼロ)又は1から24の範囲の整数であり;qは0(ゼロ)又は1から24の範囲の整数であり;rは0(ゼロ)又は1から24の範囲の整数であり;-C-はパラ-フェニレンであり;nは1から10の範囲の整数を表すか又はより好ましくは1又は2であり;YはZに対して与えられた意味の一つを有し;oは0から10又はより好ましくは0,1又は2であり;かつAlbはここに定義されたアルブミンを表す]の化合物。
【請求項2】
化合物が、A22K[Nε8-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-12-{2-(アルバゲン-Cys34-イルアセチルアミノ)}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-アルバゲン-Cys-34-イルアセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-{2-[2-(2-{2-[2-(12-{2-アルバゲン-Cys-34-イル-アセチルアミノ}ドデカノイルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-12-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A5L,A22K[Nε-12-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-12-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-12-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A5L,A22K[Nε-12-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イルアセチルアミノ)}ドデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε8-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A5L,A22K[Nε8-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε8-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε8-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys3-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A5L,A22K[Nε8-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}オクタノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A5L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A5L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[12-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ドデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-10-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-10-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-10-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-10-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}デカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-10-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-10-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-10-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-10-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}デカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-16-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-16-{2-(アルバゲン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-16-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-16-{2-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)アセチルアミノ}ヘキサデカノイル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-16-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-16-{3-(アルバゲン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-16-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-16-{3-(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイル],B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{アルバゲン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(2-{ヒト血清アルブミン-Cys34-イル}アセチルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル])B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ)]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[10-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys35-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)デカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ})ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(アルバゲン-Cys34-イル)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)プロピオニルアミノ}ヘキサデカノイルアミノ)エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]B29R,desB30ヒトインスリン;A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys34-イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ)ヘキサデカノイルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリン;及び18L,A22K[Nε-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[16-(3-{(ヒト血清アルブミン-Cys34)イル-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル}プロピオニルアミノ]ヘキサデカノイルアミノ)エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]]B29R,desB30ヒトインスリンからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Insと命名された基がA5L,A22K,B29R,desB30ヒトインスリン;A18L,A22K,B29R,desB30ヒトインスリン及びA22K,B29R,desB30ヒトインスリンであって、Lys(A22)アミノ酸残基中に存在するイプシロンアミノ基から水素が除去されたものからなる群から選択されるものからなる群から選択される請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Albと命名された基がアルバゲン及びヒト血清アルブミンからなる群から選択される請求項1から3の何れか一に記載の化合物。
【請求項5】
M’と命名された基が

及び-CH-CO-(つまり、メチルカルボニル)からなる群から選択される請求項1から4の何れか一に記載の化合物。
【請求項6】
と命名された基が、-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-;-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-;-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-及び-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-からなる群から選択される請求項1から5の何れか一に記載の化合物。
【請求項7】
又はYと命名された基が、-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-である請求項1から6の何れか一に記載の化合物。
【請求項8】
-M’-Z-Y-と命名された部分が、次の式:-CH-CO-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-;-CH-CO-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-;-CH-CO-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-;-CH-CO-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-;-CH-CO-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-;-CH-CO-NH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CO-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-NH-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CO-;

からなる群から選択される請求項1から7の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
医薬として使用されるための請求項1から8の何れか一に記載の化合物。
【請求項10】
糖尿病の治療に使用されるための請求項1から8の何れか一に記載の化合物。
【請求項11】
高血糖症、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、肥満症、X症候群又は脂質異常症の治療又は予防のための薬学的製剤の調製のためのインスリンアナログに関する上記請求項に記載のインスリンアナログの治療的有効量の使用。
【請求項12】
上記の項の何れか一と組み合わせたここに記載の請求項の何れか一。
【請求項13】
ここに記載された任意の新規な特徴又は特徴の組合せ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【公表番号】特表2011−518779(P2011−518779A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502376(P2011−502376)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053819
【国際公開番号】WO2009/121884
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】