インターフェロン−β融合タンパク質および使用
【課題】インターフェロン−β融合タンパク質および使用を提供すること。
【解決手段】アミノ酸配列X−Y−Z、またはその一部を有する融合ポリペプチドが、記載され、これは、グリコシル化インターフェロン−β(X)のアミノ酸配列を含み;Yは、必要に応じたリンカー部分であり;そしてZは、グリコシル化インターフェロン−β以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである。Xは、ヒトインターフェロン−β−1aであることが、好ましい。インターフェロン−β−1aの変異体もまた、記載される。
【解決手段】アミノ酸配列X−Y−Z、またはその一部を有する融合ポリペプチドが、記載され、これは、グリコシル化インターフェロン−β(X)のアミノ酸配列を含み;Yは、必要に応じたリンカー部分であり;そしてZは、グリコシル化インターフェロン−β以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである。Xは、ヒトインターフェロン−β−1aであることが、好ましい。インターフェロン−β−1aの変異体もまた、記載される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
特定の疾患の全身的処置のためのポリペプチドおよびタンパク質の使用は、今や、医学診療において十分に受け入れられている。これらの物質が治療において果たす役割は非常に重要であるので、多くの研究活動が、組換えDNA技術による大量合成に指向している。これらのポリペプチドの多くは、内因性分子であり、これは、それらの生物学的作用を誘発することにおいて、非常に強力かつ特異的である。
【0002】
これらの意図される適用のためのこれらのタンパク質様物質の有用性を制限する主要な因子は、非経口で与えられる場合、これらが短時間以内に体内から排出されることである。これは、プロテアーゼによる代謝の結果として、またはタンパク質排出についての正常な経路(例えば、腎臓における濾過による)を使用する、クリアランスによって生じ得る。タンパク質の投与のこれらの経路に関連する問題は、製薬産業において周知であり、そして種々のストラテジーが、それらを解決するための試みにおいて使用されている。
【0003】
多くの臨床的研究およびその投与ならびにバイオ同化(bio−assimilation)を改善するための試みの焦点となっているペプチドファミリーは、インターフェロンである。インターフェロンは、種々の臨床的疾患状態において試験されている。ヒトインターフェロン−β(そのファミリーの1つのメンバー)の使用は、多発性硬化症の処置において最も良好に確立されている。組換えインターフェロン−βの2つの形態は、近年、この疾患の処置について、欧州および米国において認可されてきた。1つの形態は、インターフェロン−β−1a(登録商標され、AVONEX(登録商標)として販売されている、mfg.Biogen,Inc.,Cambridge、MA)であり、本明細書中で以後、「インターフェロン−β−1a」または「IFN−β−1a」または「IFN−β−1a」または「インターフェロン−β−1a」が、交換可能に使用される。他方の形態は、インターフェロン−β−1b(登録商標され、BETASERON(登録商標)として販売されている、Berlex,Richmond CA)であり、本明細書中で以後、「インターフェロン−β−1b」である。インターフェロン−β−1aは、天然のヒト遺伝子配列を使用して哺乳動物細胞において産生され、そしてグリコシル化されるが、インターフェロン−β−1bは、アミノ酸17位で遺伝子操作されたシステインからセリンへの置換を含む改変ヒト遺伝子配列を使用してE.coli細菌において産生され、そしてグリコシル化されない。
【0004】
以前に、本発明者らの数人は、機能的アッセイにおいてインターフェロン−β−1aおよびインターフェロン−β−1bの相対的なインビトロ潜在能を直接比較し、そしてインターフェロン−β−1aの比活性が、インターフェロン−β−1bの比活性よりも約10倍高いことを示した(Runkelら、1998、Pharm.Res.15:641〜649)。これらの活性の差異についての構造的基礎を同定するために設計された研究から、本発明者らは、比活性に影響を及ぼす産物間の既知の構造的差異のただ1つとして、グリコシル化を同定した。炭水化物の効果は、構造に対するその安定化の役割を通じて非常に著しかった。炭水化物の安定化効果は、熱変性実験およびSEC分析において明らかであった。グリコシル化の欠如はまた、凝集における増加、および熱変性に対する増加した感受性と相関した。PNGase Fを用いるインターフェロン−β−1aからの炭水化物の酵素的除去は、脱グリコシル化産物の過剰な沈殿を生じた。
【0005】
これらの研究は、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1bとの間の配列における保存に関わらず、これらが別個の生化学的実体であり、それゆえに、インターフェロン−β−1bについて公知のものの多くがインターフェロン−β−1aに適用され得ないこと(逆もまた同じ)ことを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明者らは、非グリコシル化形態に対するグリコシル化されたインターフェロン−βの利点を開発した。特に、本発明者らは、インターフェロン−β−1bに対して増加した活性を有するインターフェロン−β−1a組成物を開発し、そしてこれはまた、融合タンパク質でないインターフェロン−β−1aと比較して、一般に活性において有効な損失を有さない融合タンパク質の有益な(salutory)特性を有する。従って、改変が、産物(インターフェロン−β−1a融合タンパク質)がそれらの生物学的活性の全てまたはほとんどを保持するような方法においてなされる場合、以下の特性が、生じ得る:増加された半減期および組織分布における変更(例えば、より長期間の間、血管系において留まる能力)を導く変更された薬物速度論および薬力学。このような処方は、薬学的および医学の分野において実質的な進歩であり、そしてインターフェロンがいくらかの有用性を有する種々の疾患(例えば、多発性硬化症、線維症、および他の炎症性疾患または自己免疫疾患、肝炎および他のウイルス性疾患ならびに新生血管形成によって特徴付けられる疾患)の管理において有意な寄与をなす。特に、血管系においてより長い期間残存する能力は、インターフェロン−β−1aが新脈管形成を阻害するため、および潜在的に血液脳関門を横切るために使用されることを可能にする。
【0007】
特に、本発明は、アミノ酸配列X−Y−Zを有する単離されたポリペプチドに関し、ここで、Xは、インターフェロン−βのアミノ酸配列からなるアミノ酸配列またはその一部を有するポリペプチドであり;Yは、必要に応じたリンカー部分であり;そしてZは、インターフェロン−β以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである。必要に応じた部分Yおよび必要とされる部分Zは、インターフェロン−β(X)のN末端またはC末端のいずれかに連結され得る。好ましくは、Xは、ヒトインターフェロン−β−1aである。好ましい実施形態において、Zは、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部であり、そしてIgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来であり得る。このクラスがIgGである場合、これは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択される。ヒトIgMおよびIgEの定常領域は、4つの定常領域(CH1、(ヒンジ)、CH2、CH3およびCH4)を含むが、ヒトIgG、IgAおよびIgDの定常領域は、3つの定常領域(CH1、(ヒンジ)、CH2およびCH3)を含む。本発明の最も好ましい融合タンパク質において、この定常領域は、少なくともヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む。他の実施形態において、部分Zは、免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチドの少なくとも一部である。このような他のポリペプチドの例としては、CD1、CD2、CD4、ならびにクラスI主要組織適合抗原およびクラスII主要組織適合抗原のメンバーが挙げられる。
【0008】
本発明の別の実施形態は、インターフェロン−βまたはその一部のアミノ酸配列からなるアミノ末端領域を有し、そしてインターフェロン−β以外のタンパク質の少なくとも一部を含むカルボキシ末端領域を有する、融合タンパク質である。このカルボキシ部分は、好ましくは、IgM、IgG、IgD,IgAおよびIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来の免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部である。最も好ましい融合タンパク質において、この定常領域は少なくともヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態は、インターフェロン−β部分(例えば、上記式におけるX)が、インターフェロン−β−1aの非変異形態に対して選択的に増強された抗ウイルス活性および/もしくは抗増殖活性または他の利点を有するムテインを提供するように変異されている。
【0010】
本発明のなお別の実施形態は、上記の融合タンパク質をコードする単離されたDNAである。本発明はまた、上記の融合タンパク質をコードする単離されたDNAおよび発現制御配列を含む組換えDNAに関し、ここで、この発現制御配列は、このDNAに作動可能に連結されている。本発明の範囲はまた、本発明の組換えDNA配列を用いて形質転換された宿主細胞を含む。
【0011】
本発明はさらに、以下:本発明に従う宿主細胞の集団を提供する工程;組換えDNAによってコードされるポリペプチドが発現される条件下で細胞の集団を増殖させる工程;およびこの発現されたポリペプチドを単離する工程、を包含する、組換えポリペプチドを産生する方法に関する。
【0012】
本発明のさらなる局面は、インターフェロン−β−1a、およびそれがネイティブでは付随しないさらなるポリペプチドを含む実質的に精製された形態のインターフェロン−β−1aの融合タンパク質であり、この融合物は、さらなるポリペプチドを欠如するインターフェロン−β−1aの抗ウイルス活性にほぼ等しい抗ウイルス活性を有する。
【0013】
本発明のなお別の局面は、インターフェロン−β−1a融合タンパク質の治療的有効量を含む薬学的組成物である。
本発明のなお別の局面は、本発明のポリペプチドを使用して新脈管形成および新生血管形成を阻害する方法である。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) アミノ酸配列X−Y−Zを有する単離されたポリペプチドであって、ここで、Xは、グリコシル化インターフェロン−βのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその一部を有するポリペプチドであり;
Yは、必要に応じたリンカー部分であり;そして
Zは、グリコシル化インターフェロン−β以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである、単離されたポリペプチド。
(項目2) Xが、インターフェロン−β−1aである、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目3) 項目1に記載の単離されたポリペプチドであって、ここで、Xは、以下の特性の少なくとも1つを有する変異体である:(a)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aよりも高い抗ウイルス活性を有し、ここで、該抗ウイルス活性は、ウイルスに誘導された細胞の溶解によって測定される;(b)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性よりも大きな抗ウイルス活性を有する;(c)該変異体は、インターフェロンレセプターを結合するが、野生型インターフェロン−β−1aと比較される場合、そのレセプター結合活性と比較して、低められた抗ウイルス活性および低められた抗増殖活性を有する、単離されたポリペプチド。
(項目4) 前記インターフェロン−β−1aが誘導体化されている、項目2に記載の単離されたポリペプチド。
(項目5) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目4に記載の単離されたポリペプチド。
(項目6) Zが、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部である、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目7) 項目6に記載の単離されたポリペプチドであって、ここで、前記定常領域の少なくとも一部が、クラスIgM、クラスIgG、クラスIgD、クラスIgAおよびクラスIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来である、単離されたポリペプチド。
(項目8) 前記クラスがIgGである、項目7に記載の単離されたポリペプチド。
(項目9) 前記定常領域の少なくとも一部が、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目6に記載の単離されたポリペプチド。
(項目10) グリコシル化インターフェロン−βまたはその一部のアミノ酸配列からなるアミノ末端領域を有し、そしてグリコシル化インターフェロン−β以外のタンパク質の少なくとも一部を含むカルボキシ末端領域を有する、融合タンパク質。
(項目11) Xが、インターフェロン−β−1aである、項目10に記載の単離されたタンパク質。
(項目12) 項目10に記載の単離されたタンパク質であって、ここで、Xは、以下の特性の少なくとも1つを有する変異体である:(a)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aよりも高い抗ウイルス活性を有し、ここで、該抗ウイルス活性は、ウイルスに誘導された細胞の溶解によって測定される;(b)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性よりも大きな抗ウイルス活性を有する;(c)該変異体は、インターフェロンレセプターを結合するが、野生型インターフェロン−β−1aと比較される場合、そのレセプター結合活性と比較して、低められた抗ウイルス活性および低められた抗増殖活性を有する、単離されたタンパク質。
(項目13) 前記インターフェロン−β−1aが誘導体化されている、項目11に記載の単離されたタンパク質。
(項目14) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目13に記載の単離されたタンパク質。
(項目15) 前記インターフェロン−β以外のタンパク質の少なくとも一部が、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部である、項目10に記載の単離されたタンパク質。
(項目16) 項目15に記載の単離されたタンパク質であって、ここで、前記定常領域の少なくとも一部が、クラスIgM、クラスIgG、クラスIgD、クラスIgAおよびクラスIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来である、単離されたタンパク質。
(項目17) 前記クラスがIgGである、項目16に記載の単離されたタンパク質。
(項目18) 前記定常領域の少なくとも一部が、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目15に記載の単離されたタンパク質。
(項目19) 項目1および10に記載のタンパク質をコードする、単離されたDNA配列。
(項目20) 項目19に記載のDNA配列および発現制御配列を含む組換えDNAであって、ここで、該発現制御配列が、該DNAに作動可能に連結されている、組換えDNA。
(項目21) 項目20に記載の組換えDNA配列を用いて形質転換された、宿主細胞。
(項目22) 以下の工程:(a)項目21に記載の宿主細胞の集団を提供する工程;(b)前記組換えDNAによってコードされるポリペプチドが発現される条件下で該細胞の集団を増殖させる工程;および(c)該発現されたポリペプチドを単離する工程、を包含する、組換えポリペプチドを産生する方法。
(項目23) グリコシル化インターフェロン−β、およびそれがネイティブには付随しないさらなるポリペプチドを含む、実質的に精製された形態のインターフェロン−β融合タンパク質。
(項目24) 前記インターフェロン−βが、ヒトインターフェロン−β−1aである、項目23に記載の融合タンパク質。
(項目25) 項目24に記載の融合タンパク質であって、ここで、該融合物は、以下:(a)野生型インターフェロン−β−1aよりも高い抗ウイルス活性であって、ここで、該抗ウイルス活性はウイルスに誘導された細胞の溶解によって測定される、活性、(b)野生型インターフェロン−β−1aに対して、抗増殖活性よりも大きな抗ウイルス活性;(c)レセプター結合活性を含むが、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、該レセプター結合活性に対して、低められた抗ウイルス活性および低められた抗増殖活性を含む、活性、からなる群より選択される抗ウイルス活性を有する、融合タンパク質。
(項目26) 項目1、10および23に記載のインターフェロン−β融合タンパク質の治療的有効量を含む、薬学的組成物。
(項目27) 被験体において新脈管形成を阻害する方法であって、項目26に記載の組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目28) 前記変異体が誘導体化されている、項目3に記載の単離されたポリペプチド。
(項目29) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目27に記載の単離されたポリペプチド。
(項目30) 前記変異体が誘導体化されている、項目12に記載の単離されたタンパク質。
(項目31) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目29に記載の単離されたタンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヒスチジンタグ化インターフェロン−β融合物(「his IFN−β」または「His6−タグ化」(6×Hisは、配列番号63として開示される)とも呼ばれる)のcDNAおよび推定アミノ酸配列。his IFN−β−1aの全長DNA(配列番号3)およびタンパク質(配列番号4)配列が、示される。切断されたVCAM−1シグナル配列は、ヒスチジンタグ(His6(配列番号63)、4〜9位)の上流に3つアミノ末端残基(SerGlyGly)を残す。エンテロキナーゼリンカー配列(AspAspAspAspLys)(配列番号62)は、スペーサー(10〜12位、SerSerGly)によってヒスチジンから離れる。天然のIFN−β−1aタンパク質部分は、位置(Met18〜Asn183)に及ぶ。
【図2−1】インターフェロン−β−1a/Fc融合物のcDNAおよび推定アミノ酸配列。ヒトIFN−β−1a/マウスFcの全長DNA(配列番号1)およびタンパク質(配列番号2)配列が示される。ヒトIFN−β−1aタンパク質配列は、アミノ酸残基1〜166(DNA配列1〜498)に及ぶ。エンテロキナーゼリンカー配列は、アミノ酸残基167〜171(DNA配列499〜513)に及ぶ。マウスIgG2a重鎖タンパク質配列は、残基172〜399(DNA配列514〜437)に及ぶ。
【図2−2】インターフェロン−β−1a/Fc融合物のcDNAおよび推定アミノ酸配列。ヒトIFN−β−1a/マウスFcの全長DNA(配列番号1)およびタンパク質(配列番号2)配列が示される。ヒトIFN−β−1aタンパク質配列は、アミノ酸残基1〜166(DNA配列1〜498)に及ぶ。エンテロキナーゼリンカー配列は、アミノ酸残基167〜171(DNA配列499〜513)に及ぶ。マウスIgG2a重鎖タンパク質配列は、残基172〜399(DNA配列514〜437)に及ぶ。
【図3】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の、I型インターフェロンレセプター鎖の細胞外ドメインから構成されるダイマー融合タンパク質(IFNAR2/Fc)への結合。アラニン置換型IFN変異体(A1−E)のIFNAR2レセプター鎖に対する結合親和性を、実施例1に記載される通りに決定した(小節D)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらの結合親和性を示す(%w.t.)。この%w.t.値を、(野生型his−IFN−βの親和性)/(変異体IFN−βの親和性)×100として計算した。複数のアッセイ(n=3)についての%w.t.(x)および実験セットについての平均%w.t.(x)を、示す。変異体A2、AB1、AB2およびEは、野生型his−IFN−β EC50(*)よりも500倍高い濃度でIFNAR2/Fcを結合しなかった。
【図4】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の、Daudi Burkittリンパ腫細胞上に発現されるI型インターフェロン細胞表面レセプター複合体(「IFNAR1/2」複合体)への結合。アラニン置換型変異体(A1−E)のレセプター結合特性を、FACSに基づく、実施例1に記載されるような細胞表面レセプター結合アッセイを使用して決定した(小節D)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらのレセプター結合親和性を示す(%w.t.)。各変異体についての%w.t.を、(野生型his−IFN−βの親和性)/(変異体IFN−βの親和性)×100として計算した。このヒストグラムの下での複数のアッセイからの%w.t.値(白丸)および実験セットについての平均%w.t.値(x)を、示す。
【図5】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の抗ウイルス活性。アラニン置換型変異体(A1−E)の抗ウイルス活性を、実施例1に記載されるようにEMCウイルスを用いてチャレンジされたヒトA549細胞上で決定した(小節E)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらの活性を示す(%w.t.)。この%w.t.を、変異体IFN−βの濃度(50%cpe)/野生型his−IFN−βの濃度(50%cpe)×100の逆関数(inverse)として計算した。複数のアッセイについての%w.t.(白丸)および実験データセットについての平均(x)を、示す。
【図6】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の抗増殖活性。アラニン置換型変異体(A1−E)の抗増殖活性を、実施例1に記載されるようにDaudi Burkittリンパ腫細胞上で決定した(小節E)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらの活性を示す(%w.t.)。この%w.t.を、(野生型his−IFN−βの濃度(50%増殖阻害))/変異体IFN−βの濃度(50%増殖阻害)×100として計算した。複数のアッセイについての%w.t.(白丸)および実験データセットについての平均(x)を、示す。
【図7】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の相対的な抗ウイルス活性および抗増殖活性。抗ウイルスアッセイ(x軸)および抗増殖アッセイ(y軸)におけるアラニン置換型変異体(A1−E)の相対的活性を、比較した。図5および図6に示される野生型his−IFN−βの平均パーセント(%w.t.(x))を、この比較について使用した。活性において座標の損失/取得を伴うこれらの変異体は、垂線上かまたは垂線に非常に近くにある。抗ウイルス活性または抗増殖活性において不釣合いな損失/取得を伴うこれらの変異体は、対角線から有意に低下する(DE1、D、C1)。有意性を、使用される平均%w.t.値に固有な標準偏差を考慮して決定した。
【図8】(インターフェロン−β−1a/Ig融合物の抗ウイルス活性)図8は、X軸に示される濃度でインターフェロン−β−1a(AVONEX(登録商標)として使用される)またはインターフェロン−β−1a/マウスIg2a融合物の活性を、EMCウイルスでチャレンジしたヒト肺癌腫細胞(A549)を用いた抗ウイルスアッセイにおいて評価した。ウイルスとともに2日間インキュベートした後に、生存細胞をMTTで染色し、プレートを450nmで読みとり、そして吸光度(細胞生存性を反映している)をY軸に示す。標準偏差をエラーバーで示す。提供されたインターフェロン−β−1a(AVONEX(登録商標)バルク中間体として使用される)の濃度(最大OD450の50%)、従って50%のウイルス殺傷(「50%細胞変性効果」)は、約0.4pMであり、そしてインターフェロン−β−1a融合物の50%細胞変性効果は約0.15pMであった。
【図9】(インターフェロン−β−1a/Fc融合物またはインターフェロン−β−1aで処置したマウスの血漿におけるインターフェロン−β抗ウイルス活性の測定)50,000ユニットのインターフェロン−β−1a(AVONEX(登録商標)バルク中間体として使用される)または50,000ユニットのインターフェロン−β−1a/Fc融合物のいずれかを、マウスにiv注射した。これらのマウスからの血液を、X軸に示されたインターフェロン注射して種々の時間の後に、眼窩採血することにより得た。各時点で少なくとも3匹のマウスから採血し、そして血漿を調製し、そしてインターフェロン−β活性を脳心筋炎ウイルスでチャレンジしたヒト肺癌腫細胞(A549)を使用する抗ウイルス性アッセイにおいて評価するときまで凍結した。生存細胞をMTTの溶液で染色し、プレートを450nmで読みとって、吸光度(細胞生存性およびインターフェロン−β活性を反映する)を決定した。標準曲線を、インターフェロン−β−1aをAVONEX(登録商標)として使用した各プレートについて生成し、そしてこの標準曲線を用いて各サンプルにおけるインターフェロン−β活性の量を測定した。個々の動物のデータを示す。
【図10A】ヒトIFNβおよびヒトIgG1Fcの直接融合物(ZL5107)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図10B】ヒトIFNβおよびヒトIgG1Fcの直接融合物(ZL5107)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図10C】ヒトIFNβおよびヒトIgG1Fcの直接融合物(ZL5107)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図11A】ヒトIFNβ/G4Sリンカー/ヒトIgG1Fcからなる融合タンパク質(ZL6206)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図11B】ヒトIFNβ/G4Sリンカー/ヒトIgG1Fcからなる融合タンパク質(ZL6206)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図11C】ヒトIFNβ/G4Sリンカー/ヒトIgG1Fcからなる融合タンパク質(ZL6206)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図12】図12は、全体のクローニングストラテジーおよび発現ストラテジーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
詳細な説明において引用される全ての参考文献は、他に規定されない限り、本明細書中に参考として援用される。以下の用語が本明細書中で使用される。
【0016】
(I.定義)
インターフェロン−「インターフェロン」(「IFN」とも称される)は、ウイルス、ポリペプチド、マイトジェンなどのような種々のインデューサーへの曝露に応答して、哺乳動物細胞によって産生される、小さな種特異的一本鎖ポリペプチドである。本発明で使用される最も好ましいインターフェロンは、グリコシル化されたヒトインターフェロン−βであり、これは残基80(Asn80)でグリコシル化され、そして好ましくは、組換えDNA技術を介して誘導される。この好ましいグリコシル化されたインターフェロン−βは、「インターフェロン−ベータ−1a」または「INF−ベータ−1a」または「IFN−β−1a」または「インターフェロンベータ1a」または「インターフェロン−β−1a」または「インターフェロン−β−1a」と呼ばれ、これらは全て、交換可能に使用される。用語「INF−ベータ−1a」はまた、その変異体もまた、Asn80残基でグリコシル化されるならば全ての変異形態を包含することを意味する(すなわち、実施例1)。
【0017】
タンパク質(インターフェロンを含む)を産生するための組換えDNA方法は、公知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第5,149,636号、同第5,179,017号(Axelら)および同第4,470,461号(Kaufman)を参照のこと。
【0018】
本発明の方法において使用され得る好ましいインターフェロン−β−1aポリヌクレオチドは、様々な脊椎動物(好ましくは、哺乳動物)の野生型インターフェロンβ遺伝子配列に由来し、そして以下の米国特許において記載される方法のような、当業者に周知の方法を使用して得られる:米国特許第5,641,656(1997年6月24日発行:DNA encoding avian type I interferon proprotein and mature avian type I interferon)、米国特許第5,605,688号(1997年2月25日:recombinant dog and horse type I interferons);米国特許第5,231,176号(1993年7月27日、DNA molecule encoding a human leukocyte interferon);米国特許第5,071,761号(1991年12月10日、DNA sequence coding for sub−sequences of human lymphoblastoid interferons LyIFN−alpha−2 and LyIFN−alpha−3);米国特許第4,970,161号(1990年11月13日、DNA sequence coding for human interferon−gamma);米国特許第4,738,931号(1988年4月19日、DNA containing a human interferon beta gene);米国特許第4,695,543号(1987年9月22日、human alpha−interferon Gx−1 gene)および米国特許第4,456,748号(1984年6月26日、DNA encoding sub−sequences of different, naturally, occurring leukocyte interferons)。
【0019】
インターフェロン−β−1aの変異体は、本発明に従って使用され得る。変異体は、当業者に公知の、特異的変異誘発の従来の方法を使用して開発される。さらに、本発明は、機能的に等価なインターフェロン−β−1aポリペプチドをコードする機能的に等価なインターフェロン−β−1aポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
インターフェロン−β−1aをコードする第1のポリヌクレオチドは、それが、以下の条件の少なくとも1つを満たす場合、インターフェロン−β−1aをコードする第2のポリヌクレオチドと比較して、「機能的に等価」である:
(a)「機能的等価物」が、標準的なハイブリダイゼーション条件下で第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズし、そして/または第1のポリヌクレオチド配列へと縮重される、第1のポリヌクレオチドである。より好ましくは、それは、インターフェロン−β−1aの[治療的]活性を有する変異体インターフェロンをコードする;
(b)「機能的等価物」が、第2のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列についての発現をコードする第1のポリヌクレオチドである。
【0021】
要約すると、用語「インターフェロン」は、上記に列挙された薬剤ならびにそれらの機能的等価物を含むが、これらに限定されない。それゆえ、本明細書中で使用される場合、用語「機能的等価物」とは、機能的等価物とみなされているインターフェロンと、哺乳動物レシピエントに対して同じかもしくは改良された有益な効果を有するインターフェロン−β−1aタンパク質、またはそのインターフェロン−β−1aタンパク質をコードするポリヌクレオチドをいう。当業者に明らかなように、機能的に等価なタンパク質は、組換え技術によって、例えば、「機能的に等価なDNA」を発現することによって、産生され得る。従って、本発明は、天然に存在するDNAによってコードされるインターフェロン−β−1aタンパク質、ならびに天然に存在するDNAによってコードされるのと同じタンパク質をコードする天然には存在しないDNAによってコードされるインターフェロン−β−1aを包含する。配列をコードするヌクレオチドの縮重に起因して、他のポリヌクレオチドは、インターフェロン−β−1aをコードするために使用され得る。これらは、配列内の同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変更され、従ってサイレント変化が産生される、上記の配列の全てまたは部分を含む。このような変更された配列は、これらの配列の等価物とみなす。例えば、Phe(F)は、2つのコドン(TTCまたはTTT)によってコードされ、Tyr(Y)は、TACまたはTATによってコードされ、そしてHis(H)は、CACまたはCATによってコードされる。反対に、Trp(W)は、単一のコドンTGGによってコードされる。従って、特定のインターフェロンをコードする所定のDNA配列について、それをコードする多くのDNA縮重配列が存在することが理解される。これらの縮重DNA配列は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0022】
「融合」とは、それらの個々のペプチド骨格を介する、最も好ましくは、それらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通じての、2つ以上のタンパク質またはそのフラグメントの共線状(co−lnnear)の共有結合をいう。タンパク質またはそのフラグメントが異なる供給源に由来することが好ましい。従って、好ましい融合タンパク質は、インターフェロンではない第2の部分に共有結合されたインターフェロン−β−1aのタンパク質またはフラグメントを含む。詳細には、「インターフェロン−β/Ig融合物」は、N末端またはC末端が、免疫グロブリン鎖のN末端に連結された本発明のインターフェロン−β分子(すなわち、インターフェロン−β−1a)またはそのフラグメントを含むタンパク質であり、ここで免疫グロブリンのN末端の部分は、インターフェロン−βと置換される。インターフェロン−β/Ig融合物の種は、免疫グロブリンの定常ドメインの少なくとも一部に連結した、本発明のインターフェロンβ分子(すなわち、インターフェロン−β−1a)を含むタンパク質である「インターフェロン−β/Ig融合物」である。好ましいFc融合物は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントに連結された、本発明のインターフェロンβ分子を含む。
【0023】
また、用語「融合タンパク質」は、インターフェロンβタンパク質ではなく、かつ以下に記載のように精製タンパク質から新規に作製される第2の部分に、モノ官能化分子またはヘテロ官能化分子を介して化学的に連結されるインターフェロンβタンパク質を意味する。
【0024】
「組換え」とは、本明細書中で使用される場合、タンパク質が、組換え哺乳動物発現系から誘導されることを意味する。ほとんどの細菌培養(例えば、E.coli)において発現されるタンパク質は、グリカンを含まないので、これらの発現系は好ましくない。酵母において発現されるタンパク質は、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるオリゴサッカリド構造を有し得る。
【0025】
「生物学的に活性」とは、インターフェロン−β 1aの特徴として本明細書を通じて使用される場合、特定の分子が、実施例1(以下を参照こと)に示される型のインビトロ抗ウイルスアッセイにおいて測定されるような抗ウイルス活性を可能にするに十分な、本明細書中に開示される本発明の形態とのアミノ酸配列相同性を共有することを意味する。
【0026】
「治療用組成物」とは、本明細書中で使用される場合、本発明のタンパク質および他の生理学的に適合可能な成分を含む、として規定される。治療用組成物は、賦形剤(例えば、水、ミネラル、およびタンパク質のようなキャリア)を含み得る。
【0027】
「アミノ酸」−ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のモノマー単位。天然に存在するペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に見出される20のアミノ酸が存在し、それらの全ては、L型異性体である。この用語はまた、これらのアミノ酸のアナログならびにこれらのタンパク質アミノ酸のD型異性体およびそのアナログを含む。
【0028】
「誘導体化」アミノ酸は、天然または非天然アミノ酸であり、ここでは、通常存在する側鎖または末端基(インターフェロン−β−1aの場合では糖部分)が、化学反応によって改変される。このような改変としては、例えば、以下が挙げられる:γ−カルボキシル化、β−カルボキシル化、PEG化、硫酸化、スルホン化、リン酸化、アミド化、エステル化、N−アセチル化、カルボベンジル化(carbobenzylation)、トシル化、および当該分野で公知の他の改変。「誘導体化ポリペプチド」は、1つ以上の誘導体化アミノ酸および/または1つ以上の誘導体化糖部分(このポリペプチドがグリコシル化されている場合)を含むポリペプチドである。
【0029】
「タンパク質」−本質的に20のアミノ酸のいずれかからなる任意のポリマー。「ポリペプチド」は、しばしば、比較的大きいポリペプチドに関して使用されるが、「ペプチド」は、しばしば小ポリペプチドに関して使用され、当該分野におけるこれらの用語の使用頻度は重複し、そして変動する。用語「タンパク質」とは、本明細書中で使用される場合、他に注記されなければ、ペプチド、タンパク質およびポリペプチドをいう。
【0030】
アミノ酸残基の「機能的に等価物」は、機能的等価物により置換されたアミノ酸残基と類似の物理化学的特性を有するアミノ酸である。
【0031】
「変異体」−生物の遺伝物質における任意の変化、特に、野生型ポリヌクレオチド配列における任意の変化(すなわち、欠失、置換、付加または改変)または野生型タンパク質における任意の変化。用語「ムテイン」は、「変異体」と交換可能に使用される。
【0032】
「野生型」−通常にはインビボで存在するような、天然に存在する、それぞれ、タンパク質のエキソンのポリヌクレオチド配列もしくはその部分、またはタンパク質配列もしくはその部分。
【0033】
「標準的なハイブリダイゼーション条件」−ハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方に関して、0.5×SSC〜約5×SSCおよび65℃に実質的に等価な塩および温度条件。従って、本明細書中で使用される場合、用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、操作の規定であり、そしてハイブリダイゼーション条件の一定範囲を包含する。より高いストリンジェンシー条件としては、例えば、プラークスクリーン緩衝液(0.2% ポリビニルピロリドン、0.2% Ficoll 400TM;0.2%ウシ血清アルブミン、50mM Tris−HCl(pH7.5);1M NaCl;0.1% ピロリン酸ナトリウム;1% SDS);10% 硫酸デキストラン、および100μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNAを用いた65℃で12〜20時間のハイブリダイゼーション工程、ならびに75mM NaCl/7.5mM クエン酸ナトリウム(0.5×SSC)/1% SDSを用いた65℃での洗浄工程が挙げられ得る。より低いストリンジェンシー条件としては、例えば、プラークスクリーン緩衝液、10% 硫酸デキストランおよび110μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNAを用いた55℃で12〜20時間のハイブリダイゼーション工程、ならびに300mM NaCl/30mM クエン酸ナトリウム(2×SSC)/1% SDSを用いた55℃での洗浄工程が挙げられ得る。Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.New York,第6.3.1〜6.3.6節(1989)もまた参照のこと。
【0034】
「発現制御配列」−遺伝子に作動可能に連結された場合にそれらの遺伝子の発現を制御および調節するポリヌクレオチド配列。
【0035】
「作動可能に連結される(た)」−ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)は、発現制御配列がポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御および調節する場合に、発現制御配列に作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される(た)」は、発現されるポリヌクレオチド配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、発現制御配列の制御下でのこのポリヌクレオチド配列の発現、およびこのポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの生成を可能にするように正しいリーディングフレームを維持することを含む。
【0036】
「発現ベクター」−発現ベクターが宿主細胞に導入される場合には、少なくとも1つの遺伝子の発現を可能にする(他の一般的例の中でも)ポリヌクレオチド(例えば、DNAプラスミドまたはファージ)。このベクターは、細胞中で複製され得てもよいし、複製され得なくてもよい。
【0037】
「単離される(た)」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)−ポリペプチドをコードする核酸(すなわち、ポリヌクレオチド配列)に適用される場合には、RNAまたはDNAのポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの一部、cDNAまたは合成ポリヌクレオチドを意味する。これらは、その起源または操作により:(i)天然に関連している全てのポリヌクレオチドと関連していない(例えば、発現ベクターとして宿主細胞に存在するポリヌクレオチドまたはその一部);あるいは(ii)天然に連結しているのではなく、核酸または他の化学的部分に連結している;あるいは(iii)天然に存在しない。「単離される(た)」によって、(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増幅される;(ii)化学合成される;(iii)クローニングにより組換え生成される;または(iv)切断およびゲル分離により精製される、ポリヌクレオチド配列がさらに意味される。
【0038】
従って、「実質的に純粋な核酸」は、核酸が由来している生物の天然に存在するゲノムにおいて通常は連続しているコード配列の一方または両方とはすぐに連続していない核酸である。実質的に純粋なDNAはまた、さらなる配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0039】
「単離される(た)」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)−ポリペプチドに対して適用される場合には、ポリペプチドまたはその一部を意味し、これらは、その起源または操作により:(i)発現ベクターの一部の発現産物として宿主細胞に存在する;または(ii)天然に連結しているのではなく、タンパク質または他の化学的部分と連結している;または(iii)天然に存在しない。「単離される(た)」によって、(i)化学合成される;または(ii)宿主細胞において発現され、そして関連するタンパク質から精製される、タンパク質がさらに意味される。この用語は、一般には、他のタンパク質から分離しているポリペプチドおよび天然に存在する核酸を意味する。好ましくは、このポリペプチドはまた、精製するために使用される抗体またはゲルマトリクス(ポリアクリルアミド)のような物質から分離される。
【0040】
「異種プロモーター」−本明細書中で使用される場合は、遺伝子または精製された核酸と天然には関連しないプロモーターである。
【0041】
「相同(な)」−本明細書中で使用される場合は、用語「同一」と同義であり、そして2つのポリペプチド分子間または2つの核酸間の配列類似性をいう。2つの比較される配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットにより占有される場合(例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンにより占有されるか、または2つのポリペプチドの各々における位置がリジンにより占有される場合)、それぞれの分子は、その位置で相同である。2つの配列間の相同性パーセントは、2つの配列により共有される適合位置または相同な位置の数を比較された位置の数で割って100をかけた関数である。例えば、2つの配列間で10個の位置のうち6個が適合または相同である場合、2つの配列は60%相同である。例を挙げると、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTは、50%の相同性を共有する(計6個の位置のうち3個が適合している)。一般に、2つの配列が整列されて、最大の相同性が与えられた場合、比較が行われる。このような整列は、例えば、Needlmanら、J.Mol.Biol.48:443−453(1970)の方法を用いて提供され得、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)のようなコンピュータープログラムにより、簡便に実行され得る。相同な配列は、同一または類似のアミノ酸残基を共有し、ここで、類似の残基は、整列された参照配列における対応するアミノ酸残基の保存的置換または「許容された点変異」である。これに関して、参照配列における残基の「保存的置換」は、共有結合または水素結合を形成する能力などを含む、対応する参照残基に物理的または機能的に類似する(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性を有する)それらの置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら、5:Atlas of Protein Sequence and Structure,5:補遺3,第22章:354−352,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,D.C.(1978)における「受容される点変異」について規定される基準を満たす物である。
【0042】
用語「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」はまた、本明細書中で交換可能に使用される。
【0043】
用語「新生血管形成」および「新脈管形成」は、それらの最も広い意味において、新たな血管の増加を意味する。特に、「新脈管形成」はまた、腫瘍部位での新たな血管の増加をいう。
【0044】
「IFNAR2」、「IFNAR1」、「IFNAR1/2」とは、細胞表面I型インターフェロンレセプターを含むことが公知のタンパク質をいう。IFNAR2鎖の細胞外部分(外部ドメイン)は、単独で、インターフェロンαまたはインターフェロンβを結合し得る。
【0045】
本発明の実施は、他に示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、タンパク質化学、および免疫学の従来技術を利用する。これらの技術は、当業者の技術範囲内である。このような技術は、文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrook,FritschおよびManiatis編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;DNA Cloning,第I巻および第II巻(D.N.Glover編),1985;Oligonucleotide Synthesis,(M.J.Gait編),1984;米国特許第4,683,195号(Mullisら);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編),1984;Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編),1984;Culture of Animal Cells(R.I.Freshney編),Alan R.Liss,Inc.,1987;Immobilized Cell and Enzymes,IRL Press,1986;A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal),1984;Methods In Enzymology,第154巻および155巻(Wuら編),Academic Press,New York;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編),1987,Cold Spring Harbor Laboratory;Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(MayerおよびWalker編),Academic Press,London,1987;Handbook of Experiment Immunology,第I巻〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編),1986;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1986。
【0046】
(II.融合タンパク質の産生および発現)
本発明は、インターフェロンβ−1a融合タンパク質の産生についてのシステムに関する。特に、本発明は、これらのタンパク質ならびにこれらの産生において用いられる組換えDNA分子に関する。
【0047】
本発明のポリペプチドの産生は、当該分野において公知の種々の方法によって達成され得る。例えば、全長インターフェロンβ−1aまたはインターフェロンβ−1aの短縮形態が、cDNAを使用する公知の組換えDNA技法によって産生され得る(以下を参照のこと)。
【0048】
所望のインターフェロンβ−1aポリペプチドをコードする遺伝子は、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計され得る。標準の方法が、次いで、この遺伝子を合成するために適用され得る。例えば、このアミノ酸配列は、逆翻訳された(back−translated)遺伝子を構築するために使用され得る。インターフェロンβ−1aについてコードし得るヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーは、単一工程で作製され得る。あるいは、所望のインターフェロンβ−1aの一部をコードするいくつかのより小さなオリゴヌクレオチドが、合成され得、次いで、ともに連結される。好ましくは、インターフェロンβ−1a部分をコードするDNA配列が、いくつかの個々のオリゴヌクレオチドとして作製され、これらは、引き続いてともに連結される。実施例2を参照のこと。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的に、相補性構築のための5’突出または3’突出を含む。
【0049】
一旦構築されると、好ましい遺伝子は、制限エンドヌクレアーゼによって認識される配列(クローニングベクターまたは発現ベクターへの直接的構築のための固有の制限部位を含む)、使用される宿主発現系(好ましくは哺乳動物細胞)を考慮に入れる好ましいコドン、および転写される場合に、安定的に、効率的に転写されるRNAを産生する配列によって特徴付けられる。適切な構築は、ヌクレオチド配列決定、制限マッピング、および適切な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認され得る。
【0050】
哺乳動物インターフェロンβ cDNAは、交雑種(cross−speices)ハイブリダイゼーションにより特定の哺乳動物cDNAライブラリーをスクリーニングするために適切なプローブとして、適切なヒトインターフェロンβ
DNA配列を使用することによって単離され得る。本発明において使用される哺乳動物インターフェロンβには、例として、霊長類、ヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ウマおよびブタのインターフェロンβが挙げられる。哺乳動物インターフェロンβは、ヒトインターフェロンβ DNA配列から誘導される一本鎖cDNAを、哺乳動物cDNAライブラリーからインターフェロンβ cDNAを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用して、交雑種ハイブリダイゼーションによって得られ得る。インターフェロン遺伝子配列を単離およびクローニングするために使用され得る方法の中でも、とりわけ、上記で要約される米国特許において見られる方法である。しかし、ヒトインターフェロンβ遺伝子を含むDNAを記載する米国特許第4、738,931号(1988年4月19日)の教示が、特定の関連性がある。
【0051】
本発明はまた、上述のDNA配列を含む組換えDNA分子に関する。本発明の組換えDNA分子は、それで形質転換された宿主において、本発明のポリペプチドの発現を指向し得る。本発明の融合ポリペプチドをコードするDNA配列は、このような発現についての発現制御配列へ作動可能に連結されなければならない。本発明の組換え構築物の適切な転写を提供するために、プロモーター/発現制御配列が、グリコシル化インターフェロンβをコードするヌクレオチド配列の転写を駆動し得るならば、適切なプロモーター/エンハンサー配列が、好ましくは、組換えベクターへ組み込まれ得る。免疫グロブリンベースの融合タンパク質の発現を制御するために使用され得るプロモーターには、以下が挙げられるが、これらに制限されない:SV40初期プロモーター領域(BenoistおよびChambon、1981、Nature 290:304−310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamoamotoら、1980、Cell 22:787−797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:144−1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982、Nature 296:39−42);ノパリンシンターゼプロモーター領域を含む植物発現ベクター(Heerrera−Estrellaら、Nature 303:209−213)またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら、1981、Nucl.Acids Res.9:2871)、および光合成酵素リブロースビスリン酸(ribulose biphosphate)カルボキシラーゼについてのプロモーター(Herrera−Estrellaら、1984、Nature 310:115−120);酵母または他の真菌由来のプロモータエレメント(例えば、Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼ(phophatase)プロモーター)、および以下の動物の転写制御領域(これらは、組織特異性を示し、そして形質転換動物において利用されている):エラスターゼI遺伝子制御領域(これは、膵臓細胞で活性である)(Swiftら、1984、Cell 38:639−646;Ornitzら、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409;MacDonald、1987、Hepatology 7:425−515);インスリン遺伝子エンハンサーまたはプロモーター(これは、膵臓β細胞で活性である)(Hanahanm 1985、Nature 315:115−122);免疫グロブリン遺伝子エンハンサーまたはプロモーター(これは、リンパ系細胞で活性である)(Grosschedlら、1984、Cell 38:647−658;Adamesら、1985、Nature 318:533−538;Alexanderら、1987、Mol.Cell.Biol.7:1436−1444);サイトメガロウイルス初期プロモーター領域およびエンハンサー領域(Boshartら、1985、Cell 41:521−530);マウス乳腺癌ウイルス制御領域(これは、精巣細胞、乳房細胞、リンパ系細胞およびマスト細胞で活性である)(Lederら、1986、Cell 45:485−495);アルブミン遺伝子制御領域(これは肝臓で活性である)(Pinkertら、1987、GenesおよびDevel 1:268−276);αフェトプロテイン遺伝子制御領域(これは肝臓で活性である)(Krumlaufら、1985、Mol.Cell.Biol.5:1639−1648;Hammerら、1987、Science 235:53−58);α1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(これは肝臓で活性である)(Kelseyら、1987、GenesおよびDevel.1:161−171);βグロブリン遺伝子制御領域(これは、骨髄性細胞で活性である)(Mogramら、1985、Nature 315:338−340;Kolliasら、1986、Cell 46:89−94);ミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(これは、脳内の稀突起神経膠細胞で活性である)(Readheadら、1987、Cell 48:703−712);ミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(これは、骨格筋で活性である)(Sani、1985、Nature 314:283−286);ならびに性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(これは、視床下部で活性である)(Masonら、1986、Science 234:1372−1378)。LACまたはβラクタマーゼプロモーターのような原核生物の発現系(Villa−Kamaroffら、1978、Proc,Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727−3731)は、発現されるインターフェロンβがグリコシル化されないので、現在は、好ましくない。にもかかわらず、原核生物宿主または真核生物宿主のいずれかにおけるインターフェロンβのグリコシル化を可能にする原核生物の発現系は、本発明の範囲内に含まれる。
【0052】
使用され得る発現ベクターには、例をいくつか挙げると、以下のベクターまたはそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:ワクシニアウイルス、アデノウイルスまたはレトロウイルスベースのベクターのような、ヒトまたは動物のウイルス;バキュロウイルスのような昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、λ)、ならびにプラスミドおよびコスミドのDNAベクター。具体的には、好ましい真核生物宿主に有用な発現ベクターには、SV40、ウシパピローマウイルス属、サイトメガロウイルス由来の制御配列を含むベクターが挙げられる。さらに、各特定の発現ベクター内で、種々の部位が、これらのDNA配列の挿入について選択され得る。これらの部位は、通常、それらを切断する制限エンドヌクレアーゼによって命名される。これらは、当業者に、よく認識されている。本発明に有用な所定の発現ベクターが、選択されるDNAフラグメントの挿入のための制限エンドヌクレアーゼ部位を有する必要がないことが理解される。代わりに、ベクターは、代替の手段によってフラグントによって結合され得る。
【0053】
発現ベクター、選択されるDNAフラグメントの挿入および発現制御配列への作動可能な連結のために選択される部位は、種々の因子(例えば、特定の制御酵素に感受性の部位の数、ポリペプチドのサイズ、ポリペプチドがどれだけ容易にタンパク質分解的に分解されるかなど)によって決定される。所定のDNAについてのベクターおよび挿入部位の選択は、これらの因子のバランスによって決定される。
【0054】
本発明の組換え構築物は、形質転換(例えば、DEAEデキストラン技法またはリン酸カルシウム技法を使用する)、トランスフェクション、マイクロインジェクション、感染、細胞銃(cell gun)、およびエレクトロポレーションを含む当該分野で公知の任意の方法を使用して、融合タンパク質を発現し得る宿主細胞へ導入され得る。この融合タンパク質組換え核酸配列が、その細胞型においてmRNAに適切に転写され、そしてその細胞がタンパク質をグリコシル化し得る限り、任意の宿主細胞型が利用され得る。さらに、本発明の組換え核酸構築物は、免疫グロブリンベースの融合タンパク質を産生し得る非ヒトトランスジェニック動物を作製するために使用され得る。本発明の好ましい実施態様において、宿主細胞は、COS細胞またはCHO細胞のような哺乳動物細胞である。
【0055】
これらのポリペプチド構築物の所定の発現ベクターへの首尾良い組み込みは、3つの一般的なアプローチによって同定され得る:(a)DNA‐DNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、および(c)挿入される配列の発現。第1のアプローチにおいて、発現ベクターに挿入されるインターフェロンβ−1a遺伝子の存在は、挿入される融合タンパク質遺伝子に対して相同性である配列を含むプローブを使用する、DNA−DNAハイブリダイゼーションによって検出され得る。第2のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系は、ベクターの外来遺伝子の挿入によって引き起こされる特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、G418のような抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける閉塞体形成)の存在または非存在に基づいて、同定および選択され得る。例えば、ポリヌクレオチドが、ベクターのマーカー遺伝子配列を中断するように挿入される場合、この挿入物を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定され得る。第3のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、この組換えベクターによって発現される外来遺伝子産物をアッセイすることによって同定され得る。このようなアッセイは、例えば、バイオアッセイ系におけるこの遺伝子産物の物理的特性または機能的特性に基づき得る。
【0056】
全ての宿主/発現ベクターの組み合わせが、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を発現する際に等しい効率で機能するわけではないことが理解される。しかし、宿主−発現ベクター組み合わせの特定の選択が、本発明の範囲から逸脱することなしに、本明細書に記載される原理を十分に考慮した後、当業者によって実施され得る。
【0057】
本発明の好ましい実施態様は、融合タンパク質およびそれらをコードするDNA配列を意図する。これらの融合タンパク質は、インターフェロンβ−1aのアミノ酸配列によって特徴付けられるアミノ末端領域およびインターフェロンβ−1a以外のタンパク質のドメインを有するカルボキシ末端領域を有する。このようなタンパク質について好ましい一般式は、一次アミノ酸配列X−Y−Zを有するタンパク質であり、ここで、Xは、ヒトインターフェロンβのアミノ酸配列からなるアミノ酸配列、もしくはその部分を有するポリペプチドであり;Yは、任意のリンカー部分であり;そしてZは、ヒトインターフェロンβ以外のポリペプチドの少なくとも一部分を含むポリペプチドである。1つの実施態様において、部分Zは、免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチドの一部であり得る。このような他のポリペプチドの例は、CD1、CD2、CD4、ならびにクラスIおよびクラスII主要組織適合性抗原のメンバーを含む。このようなポリペプチドの例については米国特許第5,565,335号(Caponら)を参照のこと。
【0058】
部分Zには、例えば、複数のヒスチジン残基、好ましくは、免疫グロブリンのFc領域が挙げられ得、「Fc」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントとして本明細書で定義される。
【0059】
最も好ましい融合タンパク質において、インターフェロンβ−1aポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部分へ、そのC末端を介して融合される。インターフェロンβ−1aは、アミノ末端部分を形成し、そしてFc領域は、カルボキシ末端部分を形成する。これらの融合タンパク質において、Fc領域は、好ましくは、定常ドメインヒンジ領域ならびにCH2およびCH3ドメインに限定される。これらの融合体におけるFc領域はまた、ヒンジ領域の一部分(この部分は、分子間ジスルフィド結合を形成し得る)、ならびにCH2およびCH3ドメイン、またはそれらの機能的等価物へ限定され得る。これらの定常領域は、任意の哺乳動物供給源(好ましくは、ヒト)から誘導され得、そして任意の適切なクラスおよび/またはアイソタイプ(IgA、IgD、IgM、IgEならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)から誘導され得る。
【0060】
Ig融合体をコードする組換え核酸分子は、当該分野で公知の任意の方法によって得られるか(Maniatisら、1982、Molcular Cloning;A Laboratory Manual,Cold Spring Habor,N.Y.)、または公共的に入手可能なクローンから得られ得る。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の定常領域をコードする遺伝子の調製のための方法が、例えば、Robinson,R.ら、PCT出願公開番号WO87−02671によって教示される。インターフェロン分子またはフラグメントをコードするcDNA配列は、重鎖Ig定常領域をコードするcDNAへ直接連結され得るか、またはリンカー配列を介して連結され得る。本発明のさらなる実施態様において、組換えベクター系が、合成ヒンジ領域を有する正しい読み枠においてインターフェロンβをコードする配列を収容するに作製される。さらに、組換えベクター系の一部として、RNA切断部位/ポリアデニル化部位ならびに下流配列を含む、免疫グロブリン遺伝子の3’隣接領域に対応する核酸を含むことが、所望され得る。さらに、組換えベクターで形質転換された細胞からの融合分子の分泌を促進するように、免疫グロブリン融合タンパク質をコードする配列の上流にシグナル配列を操作することが所望であり得る。
【0061】
本発明は、二量体融合分子ならびに融合タンパク質を含む単量体分子または多量体分子を提供する。このような多量体は、例えばIgM五量体またはIgA二量体のような通常は多量体であるIg分子のFc領域もしくはその一部を使用して産生され得る。J鎖ポリペプチドが、IgM五量体およびIgA二量体を形成し、そして安定化するために必要とされ得ることが理解される。あるいは、インターフェロンβ−1a融合タンパク質の多量体が、Ig分子のFc領域についての親和性を有するタンパク質(例えば、プロテインA)を使用して、形成され得る。例えば、複数のインターフェロンβ−1a/免疫グロブリン融合タンパク質が、プロテインA−アガロースビーズへ結合され得る。
【0062】
これらの多価形態は、これらが複数のインターフェロンβレセプター結合部位を有するので、有用である。例えば、2価可溶性インターフェロンβ−1aは、リンカー領域(部分Y)によって分離される、配列番号2のアミノ酸1〜166の2つの縦列反復(または、配列番号1の1〜498で番号付けられる核酸によってコードされるもの)(一般式におけるX部分)からなり得、これらの反復は、免疫グロブリン定常ドメイン(部分Z)の少なくとも一部分に結合される。代替の多価形態はまた、例えば、インターフェロンβ−1a/Ig融合体を、従来の結合技法を使用して、臨床的に受容可能なキャリア分子、Ficoll、ポリエチレングリコールまたはデキストランからなる群から選択されるポリマーへ化学的に結合することによって構築され得る。あるいは、インターフェロンβ−1aは、ビオチンへ化学的に結合され得、そしてこのビオチンインターフェロンβ Fc結合体は、次いで、アビジンへ結合され、4価のアビジン/ビオチン/インターフェロンβ分子を生じる。インターフェロンβ−1a/Ig融合体がまた、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)へ共有結合され得、そして得られた結合体は抗−DNPまたは抗−TNP−IgMで沈殿され、インターフェロンβレセプター結合部位について10個の価数を有する十量体結合体を形成する。
【0063】
本発明のインターフェロンβ−1aタンパク質、フラグメント、および融合タンパク質が、従来の条件(例えば、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動など)に従って、単離され、そして精製され得る。例えば、インターフェロンタンパク質およびフラグメントは、その上に固定されたインターフェロンレセプターを有するカラムを通してその溶液を通過させることによって精製され得る(米国特許第4,725,669号を参照のこと)。結合されたインターフェロン分子は、次いで、カオトロピック塩での処理によってまたは酢酸水溶液での溶出によって溶出され得る。免疫グロブリン融合タンパク質は、融合タンパク質を含む溶液を、固定されたプロテインAまたはプロテインG(これは、融合タンパク質のFc部分を選択的に結合する)を含むカラムを通過させることによって精製され得る。例えば、Reis,K.J.ら、Immunol.132:3098−3102(1984);PCT出願公開WO87/00329を参照のこと。次いで、キメラ抗体が、カオトロピック塩での処理または酢酸水溶液での溶出によって溶出され得る。
【0064】
あるいは、インターフェロンタンパク質と免疫グロブリンの融合分子が、抗インターフェロン抗体カラムで、または抗免疫グロブリン抗体カラム上で精製され、実質的に純粋なタンパク質が得られ得る。用語「実質的に純粋な」によって、タンパク質が、それと天然で結合する不純物を含まないことが意図される。実質的純度は、電気泳動による単一バンドによって実証され得る。
【0065】
本発明の有用なインターフェロンβ−1a/Ig融合タンパク質の例は、配列番号2のものであり、これは、発現プラスミド中CMGp261を含む真核生物細胞によって細胞培養物中へ分泌される(実施例2を参照のこと)。このタンパク質は、マウスIgのヒンジ領域ならびにCH2およびCH3定常ドメインの部分へ融合した成熟ヒトインターフェロンβ−1aから構成される。これは、Fc結合タンパク質であるプロテインAによって認識されるに十分なマウス免疫グロブリンの部分を含む。
【0066】
ヒトインターフェロンβ−1aを組み込む本発明の他の融合タンパク質が、以下に示される:(a)hisタグ化インターフェロンβ−1a融合体のcDNAおよび推定アミノ酸配列それぞれについての、配列番号3および4(図1にも示される)ならびに;(b)配列番号2のインターフェロンβ−1a/Ig融合タンパク質をコードするcDNAについての配列番号1(図2にも示される)。
【0067】
本発明の好ましいインターフェロンβ−1aタンパク質は、新規の「接合部」DNA配列 配列番号5およびアミノ酸 配列番号6を含む。配列番号5は、ヒトインターフェロンβDNAとヒト免疫グロブリン定常領域との間の接合部の両側上の11個のトリプレットコドンを示す(例えば、実施例5:配列番号41および42)。詳細には、配列番号5において、ヒトインターフェロンβ−1aをコードするDNAは、ヌクレオチドトリプレット568−570(AAC)で終結し、そしてヒトIgG1定常領域をコードするDNAは、配列番号41のヌクレオチド番号574で始まるトリプレット(GAC)で開始する。対応する推定アミノ酸「接合部」配列は、配列番号6に示され、そして配列番号42に基づく。最終DNA構築物内にリンカー配列を含む別の固有の「接合部」配列が、規定される(例えば、実施例5:配列番号43および44を参照のこと)。この「接合部」DNAおよびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7および8に示され、これは、インターフェロンβ−1a配列の末端(配列番号43内のヌクレオチド番号570)とリンカー配列(配列番号43内のヌクレオチド571〜585;配列番号8内のGGGGS(配列番号64))との間の直接的接合部の両側上の11個のトリプレットコドンを示す。
【0068】
DNA「接合部」配列は、DNAプローブとして使用され得、そして任意のインターフェロンβ−1a/Ig融合タンパク質をコードする任意のDNA配列に対する標準的条件下でのハイブリダイゼーションのために必要とされる最小のDNAであり得る。にもかかわらず、プローブ全体が、接合部の両方の側にハイブリダイズし、そしてインターフェロンβ/定常領域接合部の両方の側が、ハイブリダイゼーションに関与する場合、より小さな配列が存在し得る。さらに、当業者は、配列番号5または7よりも長いDNA配列も同様にハイブリダイゼーションに適切であることを理解する。当業者は、配列番号5または7のような特定のプローブが、ポリヌクレオチドキナーゼを使用して適切に標識されたATPのリン酸を用いて、一本鎖センスオリゴヌクレオチドまたは一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかの5’末端を標識することによって、接合部の両側でハイブリダイズし得るかどうかを試験し得る。本発明の配列は、両方のオリゴヌクレオチドプローブへハイブリダイズしなければならず、従って両方のオリゴヌクレオチドプローブによって標識されなければならない。本発明が、接合部 配列番号5または7をコードする配列を完全に変性することを包含することがさらに理解される。
【0069】
(III.インターフェロン融合ポリペプチドの他の改変体)
本発明のタンパク質の誘導体はまた、生物学的活性を保持する主要なタンパク質の種々の構造形態を含む。イオン化可能なアミノ基およびイオン化可能なカルボキシル基の存在に起因して、例えば、インターフェロンβ融合タンパク質は、酸性塩もしくは塩基性塩の形態であり得るか、または中性形態であり得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化または還元により改変され得る。さらに、1次アミノ酸構造(N末端および/またはC末端を含む)またはインターフェロン−β−1aのグリカンは、他の化学的部分、例えばグリコシル基、ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG:同時係属中でかつ同一人に譲渡された出願連続番号60/104,491および60/120,237を参照のこと)、脂質、ホスフェート、アセチル基などともに共有結合体もしくは凝集結合体を形成することによるか、またはアミノ酸配列変異体を作製することにより改変(誘導体化)され得る。
【0070】
インターフェロンβ/Igの他の誘導体は、例えば付加的N末端またはC末端のような組換え培養による合成によって、インターフェロンβまたはそのフラグメントと他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合体または凝集結合体を含む。例えば、この結合体化ペプチドは、細胞膜または細胞壁の内側または外側のその合成部位からその機能部位へのこのタンパク質の移動を翻訳と同時か、または翻訳後に方向付ける(例えば、酵母α因子リーダー)タンパク質のN末端領域のシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であり得る。インターフェロンβレセプタータンパク質は、インターフェロンβ(例えば、ヒスチジン/インターフェロンβ−1a融合体)の精製または同定を容易にするため付加されるペプチドを含み得る。インターフェロンβのアミノ酸配列はまた、ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号61)と連結され得る(Hoppら、Bio/Technology 6:1204、1988)。後者の配列は、高度に抗原性であり、そして特異的モノクローナル抗体により可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現される組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。この配列はまた、ウシ粘膜エンテロキナーゼにより、Asp−Lys対の直後の残基において特異的に切断される。
【0071】
他のアナログは、単離されたタンパク質の生物学的活性を無効にしない、1つ以上の保存的アミノ酸置換または1つ以上の非保存的アミノ酸置換、もしくは欠失または挿入によって、配列番号2、4、6または8に示される配列とはインターフェロンβの配列が異なるインターフェロンβ融合Fcタンパク質またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。代表的に、保存的置換は、類似する特徴を有する別のアミノ酸に対する1つのアミノ酸の置換を含み、例えば、以下の群の中での置換である:バリン、アラニン、およびグリシン;ロイシンおよびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびトレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性疎水性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。他の保存的置換は、当業者に容易に知られ得る。例えば、アミノ酸であるアラニンに対して、保存的置換は、D−アラニン、グリシン、β−アラニン、L−システイン、およびD−システインのいずれか1つから選択され得る。リジンに対して、置換は、D−リジン、アルギニン、D−アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D−メチオニン、オルニチンまたはD−オルニチンのいずれか1つであり得る。一般的に、単離されたポリペプチドの機能的特性における変化を誘導することが予期され得る置換は、以下の置換である:(i)極性残基(例えば、セリンまたはトレオニン)が、疎水性残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンまたはアラニン)に対して(または、によって)置換される置換;(ii)システイン残基が、任意の他の残基に対して(または、によって)置換される置換;(iii)正に帯電した側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニンまたはヒスチジン)が、負に帯電した側鎖を有する残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)に対して(または、によって)置換される置換;または(iv)かさばる側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が、そのような側鎖を有しない残基(例えば、グリシン)に対して(または、によって)置換される置換。対立遺伝子改変体、天然の変異体、誘導された変異体、高または低ストリンジェンシーな条件下において配列番号2、4、6または8のようなポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質である、単離された分子は、本発明に含まれる。
【0072】
本発明者らは、本発明のインターフェロン−β−1a部分のさらなる改変体であるインターフェロン−β−1a変異体を開発した。これらのインターフェロン−β−1a部分は、野生型インターフェロン−β−1aにおいては見受けられない新規の特性を示すので特に有用であり得る(実施例1を参照のこと)。手短に言うと、本発明者らは、活性およびレセプター結合のために必要とされる残基をマッピングする目的でヒトインターフェロン−β−1aの変異分析を行った。ヒトインターフェロン−β−1aの3−D結晶構造(Karpusasら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818を参照のこと)の入手可能性は、本発明者らが、アラニン(またはセリン)置換に対して、インターフェロンβレセプター相互作用のために利用可能な溶媒に曝露された残基を同定することを可能とし、そして分子内結合に関与するアミノ酸を保持することを可能にする。15個のアラニンスキャニング変異のパネルを設計した。このパネルでは、インターフェロン−β−1aのヘリックス(A、B、C、D、E)およびループ(AB1、AB2、AB3、CD1、CD2、DE1、DE2)の各々の異なる領域に沿って2と8との間の残基を置換した。実施例1を参照のこと。
【0073】
アミノ末端ヒスチジンタグ(「his」タグ)は、変異体を発現した哺乳動物細胞のアフィニティー精製のために包含された(配列番号2:図1)。これらの変異の機能的重要性を、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおいて評価した。非放射性結合アッセイを、インターフェロンβ細胞表面レセプター(IFNAR1/2細胞表面レセプター)に対する変異体の結合についてこれらの変異体を分析するために開発した。さらに、インターフェロンを結合させるためにIFNAR2−外部ドメイン(ectodomain)/Fc融合タンパク質を使用するELISEベースのアッセイを使用して、インターフェロン−β−1aとIFNAR2との間の表面の相互作用をマッピングした(実施例1を参照のこと)。これらの変異分析は、N末端およびC末端が、インターフェロン−β分子の、レセプター結合または生物学的機能に重要ではない部分に存在することを実証した。
【0074】
本発明者らは、標的化変異誘発によって引き起こされた3つの型の効果を同定した。これらの効果は、特定の状況下において、インターフェロン薬物開発のために有利であり得る。3つの型の効果は、以下の通りである:(a)his野生型インターフェロン−β−1aの抗ウイルス活性よりも高い抗ウイルス活性を有する変異体(例えば、変異体C1);(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイの両方において活性を示す変異体であるが、これについての抗増殖活性が、his野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗ウイルス活性に関して不釣合いに低い、変異体(例えば、変異体C1、DおよびDE1);および(C)機能的アンタゴニスト(例えば、A1、B2、CD2およびDE1)、これは、his野生型インターフェロン−β−1aと比較して、レセプター結合に関して不釣合いに低い、抗ウイルス活性および抗増殖活性を示す。
【0075】
さらに、インターフェロン−β−1a部分(X)と第2の非インターロイキン−β−1a部分Z(例えば、免疫グロブリンのFc領域)との間のカップリングはまた、免疫グロブリンおよびインターフェロン−β−1aがそれぞれその活性を保持する限り、この2つの分子を一緒に結合する任意の化学反応によりもたらされ得る。この化学的連結は、多くの化学機構(例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合(coordinate binding)および錯体形成)を含み得る。インターフェロン−β−1a部分と免疫グロブリン部分との間の共有結合を発達させるための代表的なカップリング剤(すなわち、一般式におけるリンカー「Y」)は、例えば、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート(例えば、トリレン(tolylene)−2,6−ジイソシアネート)、グルテルアルデヒド(gluteraldehyde)、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミン(例えば、ビス−(p−ジアゾニウム−ベンゾイル)−エチレンジアミン、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピンイミデート(dimethyl adipimidate))およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)のような有機化合物を含み得る。このリストは、当該分野において公知の種々のクラスの化学カップリング剤を網羅していることを意図しない。これらの多く、例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プローブピオネート(SPDP)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボイミドヒドロクロリド(EDC);4−スクシニミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(SMPT:Pierce Chem.Co.,Cat.#21558G)は、市販されている。
【0076】
(IV.本発明の有用性)
本発明の融合タンパク質は、インターフェロンβ治療が求められるときはいつでも、治療的組成物において使用され得る。これらの分子は、融合タンパク質、特にIg融合体と関連する通常の利点(すなわち、変更された薬物動力学および薬力学)を有し、増加した半減期および血管系における増加した残留時間を導く。さらに、特に好ましいグリコシル化インターフェロン−β−1aタンパク質は、インターフェロンβ1bと構造が類似しているが、非グリコシル化インターフェロンβ1bよりも何倍も生物学的活性が大きい。Runkelら、1998、Pharm.Res.15:641−649を参照のこと。
【0077】
本発明の産物は、治療的インターフェロン−β1aの半減期を維持する際に有用であることが見出されており、そして例えば、水または受容可能な液体媒体に希釈することにより、治療的投与のために調製され得る。投与は、非経口経路、エアロゾル経路または経口経路のいずれかによってである。微細コロイド性懸濁液は、蓄積(depot)効果を産生するために非経口投与のために調製され得るか、または他方、経口経路によっては、エアロゾル処方物は、事実上、液体または乾燥粉末であり得る。乾燥した凍結乾燥状態において、または溶液処方物において、本発明のインターフェロン−β−1a融合体は、良好な貯蔵安定性を有するはずである。
【0078】
本発明の治療タンパク質は、インターフェロン−β−1a構成成分が有効である任意の状態もしくは疾患状態の予防もしくは処置のために利用され得る。さらに、本発明の融合タンパク質は、生物学的系または検体における構成成分、状態または疾患状態の診断において利用され得、ならびに非生理学系における診断目的のために、利用され得る。
【0079】
治療的用法において、本発明は、そのような状態または疾患状態を有するか、もしくは潜在的に感受性であり、かつそのような処置を必要としている動物被験体を処置する方法を意図し、この方法は、そのような動物に、上記状態または疾患状態に治療的に有効である本発明の有効量の融合タンパク質を投与する工程を包含する。本発明の融合体により処置されるべき被験体は、哺乳動物被験体を含み、そして最も好ましくはヒト被験体を含む。闘われるべき特定の状態または疾患状態に依存して、当該分野の技術範囲内で容易に決定され得るように、過度の実験を伴わずに、動物被験体は、治療的に有効かつ安全な任意の適切な投薬量において本発明のインターフェロン−β−1a融合タンパク質を投与され得る。インターフェロンI型の種障壁という理由により、適切な種由来のインターフェロンを用いて本明細書中に記載されるようなインターフェロン融合タンパク質を産生することが必要であり得る。
【0080】
インターフェロン−β−1aの抗細胞増殖活性は、周知である。詳細には、本明細書中に記載される特定のインターフェロン−β−1a融合体は、腫瘍および癌(例えば、骨原性肉腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、乳癌、黒色腫および鼻咽頭癌)ならびに線維症、狼瘡、および多発性硬化症のような自己免疫状態を処置するために有用である。融合タンパク質、特に、本明細書中に記載される特定のインターフェロンβ−1aムテインよって示される抗ウイルス活性は、ウイルス疾患(例えば、ECM感染、インフルエンザ、および他の気道感染、狂犬病、および肝炎)の処置において使用され得ることがさらに予想される。本明細書中に記載されるタンパク質によって示されるインターフェロン−β−1aの免疫調節活性が、自己免疫疾患おおび炎症性疾患(例えば、線維症、多発性硬化症)の処置において使用され得ることもまた予想される。新規の血管形成(新脈管形成または新生血管形成)を阻害するインターフェロンの能力は、本発明のタンパク質を使用して、例えば、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅、オースラーウェーバー(Osler−Webber)症候群のような脈管形成疾患を処置することを可能とする。さらに、インターフェロンの抗内皮細胞性活性が、かなり長い間、知られており、そしてインターフェロン作用の1つの潜在的な機構が、腫瘍細胞により産生される脈管形成因子の産生または効力を阻害することにより内皮細胞活性を妨害し得る。いくつかの血管腫瘍(例えば、血管腫)はインターフェロンを用いる処置に対して特に敏感である。インターフェロンαを用いる処置は、この疾患について実証された唯一の処置である。本発明のインターフェロン−1a融合タンパク質を用いる処置は、この結合体は、非結合体化インターフェロンよりも長期間、血管系に残存することが予期されるので、薬物動力学および薬力学という点においてかなりの薬学的利益を提供すると予想され、従って、抗脈管形成剤として使用するためにより効率的かつ効果的な治療を導く。実施例9を参照のこと。
【0081】
本発明のポリマーインターフェロン−β−1a融合体は、それ自体で、ならびに薬学的に受容可能なエステル、塩および他の生理学的に機能的なその誘導体の形態において投与され得る。このような薬学的処方物および医薬処方物において、好ましくは、インターフェロン−β−1aは、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアおよび必要に応じて任意の他の治療成分とともに利用される。このキャリアは、処方物の他の成分と適合性であるという意味において薬学的に受容可能でなければならず、なおかつそのレシピエントに対して過度に有害であってはならない。インターフェロン−β−1aは、上記のような所望される薬理学的効果を達成するに有効な量において、かつ所望される1日量を達成するに適切な量において提供される。
【0082】
この処方物は、非経口的投与ならびに経口的投与に適切な処方物を含み、そして特定の投与様式としては、経口、直腸、頬、局所的、鼻、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、骨髄腔内、関節内、動脈内、クモ膜下、気管支、リンパ、腟および子宮内の投与が挙げられる。経口、鼻および非経口の投与に適切な処方物が、好ましい。
【0083】
インターフェロン−β−1aが、液体溶液を含む処方物において利用される場合、この処方物は、経口的または非経口的に有利に投与され得る。インターフェロン−β−1aが、液体懸濁処方物または生体適合性のキャリア処方物における粉末として使用される場合、この処方物は、経口、直腸または気管支に有利に投与され得る。
【0084】
インターフェロン−β−1aが、直接、粉末状固体の形態において使用される場合、インターフェロンβ−1aは、経口的に有利に投与され得る。あるいは、インターフェロンβ−1aは、適切なネブライザーデバイスを含む呼吸回路から患者により吸気される粉末のガス状分散物を形成するために、キャリアガス中の粉末の噴霧を介して、鼻腔的または気管支的に投与され得る。
【0085】
本発明のタンパク質を含む処方物は、都合良く単位投与量形態において示され得、そして薬学の分野において周知の任意の方法によって調製され得る。このような方法は、一般的に、1つ以上の補助成分を構成するキャリアに活性成分を会合させる工程を含む。代表的に、この処方物は、この活性成分を液体キャリア、細かく分割された固体キャリアもしくはその両方に均一かつ親密に会合させ、次いで、必要な場合、この産物を所望の処方物の投与量形態に成形することにより調製される。
【0086】
経口投与のために適切な本発明の処方物は、別個の単位(例えば、カプセル剤、カシュ剤(cachet)、錠剤、またはロゼンジ)、(この単位の各々は、予め決定された量の活性成分を、粉末または顆粒として含む)として、または水溶液または非水性液体における懸濁液(例えば、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または一回分(draught))として提示され得る。
【0087】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分を伴って、圧縮または成形により作製され得る。圧縮錠剤は、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または排泄剤と混合される自由流動(free−flowing)形態(例えば、粉末または顆粒)である活性化合物とともに適切な機械における圧縮によって調製され得る。粉末状ポリマー結合体と適切なキャリアとの混合物を含む成形錠剤は、適切な機械における成形によって作製され得る。
【0088】
シロップは、活性化合物を糖(例えば、スクロース)の濃縮水溶液に添加することにより作製され得、この溶液にはまた、任意の補助成分が添加され得る。このような補助成分としては、矯味矯臭剤、適切な保存剤、糖の結晶化を遅延させるための薬剤、および任意の他の成分の溶解度を増加させるための薬剤(例えば、ポリヒドロキシアルコール、例えば、グリセロールまたはソルビトール)が挙げられ得る。
【0089】
非経口投与のために適切な処方物は、都合良く活性結合体の滅菌水性調製物を含み、これは好ましくはレシピエントの血液と等張である(例えば、生理的食塩水溶液)。このような処方物は、血液成分または1つ以上の器官に対してその化合物を標的化するために設計される懸濁化剤および濃稠化剤または他の微小粒子系を含み得る。この処方物は、単一用量形態または多用量形態において示され得る。
【0090】
鼻噴霧処方物は、保存剤および等張化剤を伴う活性結合体の精製された水性溶液を含む。このような処方物は、好ましくは鼻粘膜と適合するpHおよび等張状態に調整される。
【0091】
直腸投与のための処方物は、適切なキャリア(例えば、カカオ脂、硬化脂肪または硬化脂肪カルボン酸)を伴う坐剤として示され得る。
【0092】
眼処方物(例えば、点眼剤)は、pHおよび等張因子が好ましくは眼のpHおよび等張因子と適合するように調節されること以外は、鼻噴霧に類似する方法によって調製される。
【0093】
局所的処方物は、1つ以上の媒体(例えば、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール、または局所的な薬学的処方物のために使用される他の基剤)に溶解、または懸濁される本発明の結合体を含む。
【0094】
上述の成分に加えて、本発明の処方物は、希釈剤、緩衝剤、矯味矯臭剤、崩壊剤、界面活性剤、濃稠化剤(thickener)、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択されるさらに1つ以上の補助成分を含み得る。
【0095】
従って、本発明は、非治療的適用の好ましい例示的適用として、溶液中でのインターフェロン−β 1aのインビトロ安定化のための適切な融合タンパク質の提供を意図する。例えば、この融合タンパク質は、インターフェロン−β 1aの酵素分解に対する耐性を増加させるために使用され得、貯蔵寿命、室温安定性および研究試薬およびキットの頑健性を改善する手段を提供する。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、そして本発明を限定するとは解釈されるべきではない。詳細には、インビボにおいて、本明細書中に記載される動物実験は、変更され得、故に基本的方法論の他の改変およびバリエーションが可能であることが理解される。例えば、実施例7において、当業者は、他のネオプテリンアッセイを使用し得るか、または使用した霊長類の数および種類を変更し得る。実施例に対するこれらの改変およびバリエーションは、本発明の趣旨および範囲内にあると見なされるべきである。
【0097】
(実施例1:アラニン/セリン置換変異を使用するヒトインターフェロン−β−1aの構造/活性研究:レセプター結合部位および機能的ドメインの分析)
(A.概観)
ヒトインターフェロン−β−1a(IFN−β−1a)の広範な変異分析を、活性およびレセプター結合に必要である残基のマッピングの目的で行った。ヒトIFN−βの3−D結晶構造(Karpusas,M.ら、1997,Proc.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818)の利用可能性は、本発明者らに、レセプター相互作用のために利用可能な、溶媒にさらされている残基である、アラニン(またはセリン)置換を同定することおよび分子内結合に関与するアミノ酸を保持することを可能にした。各ヘリックス(A、B、C、D、E)およびループ(AB、CD、DE)の別個の領域に沿って2残基〜8残基を置換する、15アラニン置換変異のパネルを設計した。アフィニティー精製のための6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグ、ならびにアミノ末端伸長の除去のためのエンテロキナーゼリンカー配列を含めた。得られるインターフェロンは、「hisタグ化インターフェロン(IFN)−β」または「His−インターフェロン−β」または「His6−インターフェロン−β」などと交換可能に呼ばれる。
【0098】
種々の変異体hisタグ化IFN−β発現プラスミドを、野生型IFN−β遺伝子構築物を変異誘発のための鋳型として使用して構築した。変異誘発ストラテジーは、野生型hisタグ化IFNβ遺伝子を通して独特な制限酵素切断部位を最初に導入する工程、次いでアラニン(またはセリン)置換変異をコードする合成オリゴヌクレオチド二重鎖を用いて選択された制限酵素間で別個のDNA配列を置き換える工程、を包含した。最後に、変異体IFN遺伝子を、ヒト293腎臓細胞株中での哺乳動物細胞発現を指向するプラスミドにサブクローニングした。
【0099】
これらの変異の機能的な結果を、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおいて評価した。非放射活性IFN結合アッセイを開発して、ヒトDaudiバーキットリンパ腫細胞の表面レセプター(「IFNAR1/2複合体」)へのそれらの結合においてこれらの変異体を分析した。さらに、his−IFN−β変異体とIFNAR2との間の相互作用表面をマッピングするためのアッセイを開発した。これは、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインに融合したIFNレセプタータンパク質IFNAR2細胞外ドメインからなるIFNAR2/Fc融合タンパク質を利用する。
【0100】
(1.変異誘発の鋳型としてのインターフェロンβ遺伝子の作製)
IFN−βのアラニン(またはセリン)置換変異体を生成するための本発明者らのストラテジーは、最初に、改変IFN−β遺伝子を作製することであった。この遺伝子は、野生型タンパク質をコードするが、遺伝子にわたり散在する独特な制限酵素切断部位を有した。その独特な部位は、変異コドンをコードする合成オリゴヌクレオチド二重鎖についての野生型配列を交換するために使用された。変異遺伝子の作製のために適切なヒトIFN−β−1a発現カセットを得るために、IFN−β cDNA(GenBank登録番号#E00029)を、PCRによって増幅した。IFN−β遺伝子のプラスミドpMJB107(pACYC184の誘導体、Roseら、1988、Nucleic Acids Res.16(1)355を参照のこと)への最初のクローニングは、変異誘発を通して生成される特定の制限部位を欠くプラスミド中での遺伝子の部位特異的変異誘発を実行するために必要であった。
【0101】
ヒトIFN−β遺伝子のコード配列をサブクローニングするために使用されるPCRプライマーはまた、本発明者らに、そのIFN−β遺伝子の上流かつインフレームでエンテロキナーゼリンカー配列を導入することを可能にした(5’PCRプライマー 5’TTCTCCGGAGACGATGATGACAAGATGAGCTACAACTTGCTTGGATTCCTACAAAGAAGC−3’(配列番号9:「BET−021」)および3’PCRプライマー 5’−GCCGCTCGAGTTATCAGTTTCGGAGGTAACCTGTAAGTC−3’(配列番号10:「BET−022」)ならびにプラスミドpMJB107部位へのクローニングのために有用な隣接する制限酵素部位(BspEIおよびXhoI))。得られるDNAは、PCRフラグメントAといわれる。
【0102】
ヒト血管細胞接着分子−1(VCAM−1)シグナル配列由来の効率的なシグナル配列および6ヒスチジンタグを、pDSW247から生成された第2のDNAフラグメント(フラグメントB)からの最終構築物に導入した。プラスミドpDSW247は、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体であり、ここからEBNA−1遺伝子が欠失され、そしてこの誘導体は、6ヒスチジンタグの上流にかつこれとインフレームに融合されたVCAM−1シグナル配列(VCAMss)を有する。VCAMss−1/ヒスチジンタグカセット部分を生成するために使用されたPCRプライマーは、フラグメントB DNAの切除を可能にする、隣接する制限酵素切断部位(NotIおよびBspEI)を組み込んでいるKID369(5’PCRプライマー 5’−AGCTTCCGGGGGCCATCATCATCATCATCATAGCT−3’:配列番号11)およびKID−421(3’プライマー 5’CCGGAGCTATGATGATGATGATGATGGCCCCCGGA−3’:配列番号12)であった。
【0103】
VCAM−1シグナル配列、hisタグおよびインターフェロン−β遺伝子を有するプラスミドベクターを作製するために、本発明者らは、プラスミドベクターpMJB107(NotIおよびXhoI切断された)、PCRフラグメントA(BspEIおよびXhoI切断された)、およびフラグメントB(NotIおよびBspEI切断された)からゲル精製されたDNAフラグメントを使用して、3方向連結(three−way ligation)を行った。連結されたプラスミドを使用して、JA221 E.coli細胞またはXL1−Blue E.coli細胞のいずれかを形質転換し、そしてアンピシリン耐性コロニーを拾い上げ、そして制限地図分析によってインサートについて試験した。ミニプレップDNAを作製し、そしてインサートの配列を、DNA配列決定によって確認した。得られた構築物を、pCMG260と名付けた。
【0104】
(2.pCMG260におけるヒトインターフェロン−βのアラニン置換変異体の作製)
プラスミドpCMG260を、多数回の変異誘発のための鋳型として使用した(U.S.E.部位特異的変異誘発キット(Boehringer−Mannheim))。これは、独特な制限切断部位を、IFN−βタンパク質コード配列に沿った位置に導入するが、タンパク質の得られる配列を変化させなかった。変異誘発されたプラスミドを使用して、E.coliのJA221またはXL1−Blue株のいずれかを形質転換し、そして組換えコロニーをクロラムフェニコール耐性について選択した。クロラムフェニコール耐性コロニーを、さらに、DNA制限マッピング分析によって、所望の独特な制限酵素部位の存在について試験した。得られるIFN−βプラスミドである、pCMG275.8は、独特な制限酵素切断部位の全セットを含み、そしてその遺伝子のDNA配列を確認した。改変された、hisタグ化インターフェロン−β遺伝子の全DNA配列は、その野生型タンパク質コード配列とともに、図1に提供される。
【0105】
アラニン置換変異のフルセットを、表1に示す(次頁)(それぞれ、見た目の順序で配列番号60および45〜59)。変異の名前は、変異が導入された構造的領域(ヘリックスおよびループ)を特定する。アラニン(セリン)置換の全体のパネルは、ヒトIFN−βの165アミノ酸のうちの65の変異を生じる。
【0106】
変異体のパネルを、pCMG275.8から、独特な制限部位間のDNAのセグメントを表2(以下を参照のこと)に示される遺伝子コード情報を有する合成オリゴヌクレオチド二重鎖と置換することによって作製した。種々のアラニン置換変異体プラスミドを作製するために、ゲル精製したpCMG275.8ベクター(各IFN−β構造領域について以下のリストに示されるように、適切な制限酵素を用いて切断した)およびオリゴヌクレオチド二重鎖(コード鎖配列は、表2において示される)を一緒に連結した。連結混合物を使用して、E.coliのJA221株を形質転換し、そして組換えコロニーを、アンピシリン耐性について選択した。アンピシリン耐性コロニーを、適切な制限酵素部位についてスクリーニングすることによって変異の挿入の存在について試験した。2つの変異体(A2およびCD2)について、クローニングストラテジーは、合成ヌクレオチドの2つの二重鎖(表2に示す)を使用することを伴った。この二重鎖は相補的な突出末端を有し、互いにおよびベクターIFN−β骨格を3工程連結で連結することを可能にする。以下のリストは、表2からの変異したオリゴヌクレオチドをクローニングするために使用された部位を例証する。このクローニングスキーム(サブセクションB)は、インターフェロン−β遺伝子上のこれらの独特な部位の位置を示す。
【0107】
Aヘリックス BspEI〜MunI、またはBglII〜PstI
ABループ MunI〜PstI、またはMunI〜BsaHI
Bヘリックス BspHI〜BsaI、またはBsaHI〜BsaI
Cヘリックス BsaI〜XbaI
CDループ XbaI〜BspHI、またはXbaI〜DraIII
Dヘリックス BspHI〜DraIII
DEループ BspHI〜PvuI
Eヘリックス PvuI〜BstEII。
【0108】
(表1.HUIFN−βのアラニン置換変異の位置)
【0109】
【表1】
IFN−βと示された線は、野生型ヒトIFN−β配列を示す。IFN−β残基のアラニン置換またはセリン置換を各々の変異体について示し、そして関連する領域の下のダッシュは、野生型配列を示す。ヘリックス構造およびループ構造を、変異体の下に実線として示す。DEループは、DヘリックスとEヘリックスとの間のギャップにわたる。2つのさらなるアラニン置換変異体(H93A、H97A、およびH121A)を生成し、そして抗ウイルスアッセイにおいて分析して、結晶構造二量体において亜鉛をキレートするこれらのヒスチジンを変異させる効果を評価した。これらの変異体の両方は、抗ウイルスアッセイにおいて完全な野生型活性を保持しており、このことは、亜鉛媒介二量体形成が、IFN−β活性に重要ではないことを示唆する。
【0110】
【表2】
(B.EBNA293発現プラスミドの構築)
VCAM−1シグナル配列、hisタグ、ならびにエンテロキナーゼリンカー配列に融合された野生型遺伝子および変異体IFN−β遺伝子を、761塩基対のNotIおよびBamHI制限フラグメントとしてゲル精製した。精製した遺伝子を、NotIおよびBamHI切断したプラスミドベクターpDSW247にサブクローニングした。プラスミドpDSW247は、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体である。プラスミドpDSW247は、ヒトEBNA293腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)におけるタンパク質の一過性発現のための発現ベクターである。このベクターは、サイトメガロウイルス初期遺伝子プロモーターおよびこの系における高いレベルの遺伝子発現のために必要とされるEBV調節エレメント、ならびにE.coli(アンピシリン耐性)およびEBNA293細胞(ハイグロマイシン耐性)についての選択マーカーを含む。連結したプラスミドを使用して、JA221 E.coli細胞またはXL1−Blue E.coli細胞のいずれかを形質転換し、そしてアンピシリン耐性コロニーを拾い上げて、制限地図分析によってインサートについて試験した。マルチプレップDNAを作製し、そしてインサートの配列をDNA配列決定によって確認した。所望の変異した配列を示すポジティブクローンを使用して、ヒトEBNA293腎臓細胞をトランスフェクトした。
【0111】
全体のクローニングストラテジーおよび発現ストラテジーを図12に表す。
【0112】
(C.IFN−β−1aアラニン置換変異体の発現および定量)
ヒトEBNA293細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA,Chittenden,T.(1989)J.Virol.63:3016−3025)を、10%胎仔ウシ血清、2mM グルタミン、および250μg/ml Geneticin(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を補充したダルベッコ改変イーグル培地中のサブコンフルエント培養物として維持した。pDSW247発現プラスミドを、リポフェクタミンプロトコル(Gibco/BRL,Life Technologies)を使用してEBNA 293細胞中に一過性にトランスフェクトした。馴化培地を、トランスフェクションの3〜4日後に収集し、細胞細片を遠心分離によって取り除き、そしてhis−IFN−β濃度をELISAによって定量した。
【0113】
ELISAアッセイを、ポリクローナルウサギ抗体(プロテインA精製したIgG、抗体は精製したヒトIFN−β−1aに対して惹起された)を用いて96ウェルELISAプレートをコーティングして実施し、そして同じポリクローナルウサギIgGのビオチン化形態を、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:Jackson ImmunoResearch,W.Grove,PA)を用いてインターフェロン検出を可能にする二次試薬として使用した。インターフェロン−β−1aの系列希釈(Biogen,Inc.より購入されたAVONEX(登録商標)として)を使用して、標準濃度曲線を作成した。EBNAトランスフェクト体からのhis−IFN−β含有馴化培地を、希釈して、ELISAアッセイにおける10ng/mlと0.3ng/mlとの間の範囲の濃度を有するサンプルを得た。ELISAによって決定された培地中のIFN−βの濃度を確認するために、ウェスタンブロット分析を実行した。還元した培養上清およびIFN−β−1a標準を、10〜20%勾配ゲル(Novex,San Diego,CA)上のSDS−PAGEに供し、そしてPDVF膜上にブロットした。免疫反応性バンドを、ウサギポリクローナル抗IFN−β−1a抗血清(#447,Biogen,Inc.、二次抗血清はIFN−β−1aに対して惹起された)、続いてHRR結合ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch、W.Grove、PA)を用いる処理で検出した。
【0114】
(D.レセプター結合についてのインターフェロン−β変異体の評価)
Cにおいて記載されたインターフェロン−β変異体のレセプター結合特性を、2つの異なる結合アッセイを使用して評価した。1つのアッセイは、融合タンパク質IFNAR2/Fcに対するインターフェロン−β変異体の結合を測定した。この融合タンパク質は、ヒトIgGの定常領域の部分に融合したヒトIFNAR2レセプター鎖の細胞外ドメインを含む。IFNAR2−Fcを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で発現し、そして製造業者の指示書(Pierce Chem.Co.,Rockford,IL,カタログ番号#20334)に従ってプロテインAセファロースTMアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。インターフェロン−β変異体のIFNAR2−Fcへの結合を、ELISA形式アッセイにおいて測定した。ELISAプレートを、コーティング緩衝液(50mM NaHCO3、0.2mM MgCl2、0.2mM CaCl2、pH 9.6)中10μg/mlのマウス抗ヒトIgG1モノクローナル抗体(CDG5−AA9、Biogen,Inc.)の50μl/ウェルで、4℃で一晩、平底96ウェルプレートをコートすることによって調製した。プレートを、0.05% Tween−20TMを含むPBSで2回洗浄し、そしてPBS中0.5%脱脂粉乳で、室温で1時間ブロックした。さらなる2回の洗浄後、0.05% Tween−20TMを含むPBS中の0.5%ミルク(milk)中の1μg/ml IFNAR2−Fcの50μlを各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートし、次いでプレートをさらに2回洗浄した。インターフェロン−β変異体のIFNAR2−Fcへの結合を、50μl/ウェルの変異体インターフェロン−βを馴化培地(10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で段階希釈した)中に添加すること、および4℃で2時間インキュベートすることによって測定した。インターフェロン−β変異体の希釈は、代表的には、約1μMから下方に10pMまでの範囲であった。洗浄後、プレートに結合したインターフェロン−βを、ウサギポリクローナル抗インターフェロン抗体(#447、Biogen,Inc.)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識化ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch)の1:1000希釈からなるカクテルの50μl/ウェルを添加すること、および4℃で15分間インキュベートすることによって検出した。2回の洗浄の後、HRP基質を添加し、そしてプレートを4℃でインキュベートし、その後ELISAプレートリーダー上で450nmの吸光度を読みとった。データを、吸光度対変異体インターフェロン−βの濃度としてプロットし、そして変異体インターフェロン−βのIFNAR2−Fcへの結合についての親和性を単純な双曲線式にデータを適合させることによって決定した。これらの分析からの結果を図3に示し、ここでは、3つの実験から決定された各変異体についての結合親和性が、His6−野生型インターフェロン−β−1aについて測定された親和性の割合として表される。
【0115】
第2のレセプター結合アッセイを使用して、インターフェロン−β変異体が両方のレセプター鎖(IFNAR1およびIFNAR2、これらは、ともにインターフェロン−βについてのレセプターを含む)を発現するDaudi細胞に結合する親和性を測定した。このFACSに基づくアッセイは、インターフェロン−βが結合したレセプターから、占有されていない(遊離の)レセプターを区別するために、IFNAR1、EA12(Biogen,Inc.)の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体をブロックすることを使用した。Dauri細胞(2.5×107細胞/mlで20μl)を、96ウェルV底ELISAプレートに配置し、そして種々の濃度のインターフェロン−β変異体(20μlのFACS緩衝液中;5% FBS、PBS中の0.1% NaN3)とともに4℃で1時間インキュベートした。インターフェロン−β変異体の所望の段階希釈は、0.5μMから下方に0.5pMまでの範囲であった。各ウェルに100ngのビオチン化マウス抗IFNAR1モノクローナル抗体EA12(10μl)を添加し、そしてプレートを室温で2分間インキュベートし、その後FACS緩衝液で2回洗浄した(4℃)。次いで、細胞を、R−フィコエリトリン結合体化ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch、West Grove,PA)の1:200希釈の50μl/ウェルとともに4℃で30分間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄し、0.5%パラホルムアルデヒドを含む300μlのFACS緩衝液に再懸濁し、そして12×75mmポリスチレンチューブ(Falcon 2052)に移した。次いで、サンプルをFACScan(Becton Dickinson)上のフローサイトメトリーによって分析した。データを、平均チャネル蛍光強度(MFCI)対インターフェロン−β変異体の濃度としてプロットし;結合親和性を、抗体染色の50%阻害を与えるインターフェロン−βの濃度として規定した。各変異体を、複数回試験した。図4は、本発明の方法によって決定され、各実験においてHis6−野生型インターフェロン−β−1aについて測定された親和性の割合として表現された、各インターフェロン−βについてのレセプター結合親和性を示す。
【0116】
(E.機能についてのインターフェロン−β変異体の評価)
インターフェロン−β変異体をまた、抗ウイルス活性に関するインビトロアッセイを用いて機能的な活性について、そして細胞増殖を阻害するインターフェロン−βの能力について試験した。各々三つ組のデータ点を伴う、最低三回の抗ウイルスアッセイを、各々の変異体において実施した。His6−野生型インターフェロン−β−1aを、すべての実験において基準として含めた。この抗ウイルスアッセイは、変異インターフェロン−βの2倍階段希釈を用いて、ウイルスによる細胞殺傷からの完全な抗ウイルス防御と無防御との間の範囲にわたる濃度で、A549ヒト肺癌細胞(ATCC CCL 185)を一晩処理することによって実施した。次の日、この細胞を、脳心筋炎ウイルス(ECMV)を用いて、インターフェロンの非存在下で完全な細胞の殺傷を生じる希釈度で、2日間チャレンジした。次いで、プレートを、代謝性色素であるMTT(2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホ−フェニル]−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド)(M−5655、Sigma、St.Louis、MO)を用いて発色させた。MTTのストック溶液を、PBS中に5mg/mlで調製し、濾過滅菌し、そしてこの溶液50μlを、細胞培養液中に希釈した(100μl/ウェル)。室温で30〜60分間のインキュベーションに続いて、MTT/培地溶液を捨て、細胞を、100μlのPBSを用いて洗浄し、そして最終的に代謝された色素を、90%イソプロパノール中の1.2N塩酸100μl中に可溶化した。生存細胞(色素の存在によって証明されるような)を、450nmの吸光度によって定量した。データを、インターフェロン−β変異体の濃度に対する吸光度をプロットすることによって解析し、各々の変異体の活性を、50%の細胞が死滅する濃度として規定した。図5は、各々の実験におけるヒスタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて測定された活性の百分率として表された、各変異体の活性を示す。
【0117】
インターフェロン−β変異体をまた、抗増殖アッセイにおいて機能に関して評価した。ヒトDaudiバーキットリンパ腫細胞(ATCC#CCL 213)を、10%の規定されたウシ胎仔血清(Hyclone、Logan Utah)および2mMのL−グルタミンを補充したRPMI1620中に、2×105細胞/mlで播種した。各々のウェルはまた、最終総容量100μl/ウェルの培地中に、インターフェロン−β変異体の所定の濃度を含む;用いられたインターフェロン−β濃度を、Daudi細胞増殖の最大阻害から無阻害(すなわち、完全な増殖)までの間の範囲にわたって選んだ。二つ組の実験点を、試験されたインターフェロン−β変異体の各々の濃度について用い、そして二つ組のセットの未処理細胞を、すべての実験に含めた。細胞を、37℃で2日間、5%のCO2インキュベーター内でインキュベートし、その後50μl培地中に1μCi/ウェルのトリチウムチミジン((メチル−3H)チミジン、Amersham TRK758)を、各々のウェルに添加し、そしてさらに4時間インキュベートした。細胞を、LKBプレートハーベスターを用いて回収した。そして、トリチウムチミジンの取りこみをLKBβプレートリーダーを用いて測定した。二つ組の実験値を平均化し、そして標準偏差を決定した。データを、1分あたりの平均数 対 インターフェロン−β変異体の濃度としてプロットし、各々の変異体の活性を、観察される増殖阻害の最大値の50%を与えるのに必要な濃度として規定した。各々の変異体についての複数のアッセイを実施した。図6は、各実験におけるhisタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて見出された活性の百分率として表された結果を示す。
【0118】
(F.インターフェロン−β変異体の特性)
ヒスチジンタグ化野生型インターフェロン−β−1aは、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおいて、タグのない野生型インターフェロン−β−1aについて見出される対応する活性の各々約3分の1の活性を有することが見出された。インターフェロン−β変異体A1−Eのすべてが同一のhisタグ配列をそのN末端に含むので、この分子の特性に対する変異体の効果は、抗ウイルスアッセイ、抗増殖アッセイおよび結合アッセイにおけるこれらの変異体の活性を、ヒスタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて観察される活性と比較することによって決定した。そうすることにおいて、本発明者らは、hisタグ化野生型インターフェロン−β−1aと比較した変異体A1−Eの活性における変動が、これら同一の変異体がN末端のhisタグの非存在下で有する効果と、質的におよび量的にほぼ同一であると想定する。他の可溶性サイトカインのタグ化または融合構築物についての等価な想定は、特に、タグ化または融合構築物のインビトロでの機能的な活性が、本明細書中の場合のように野生型サイトカインの活性と近接する場合、アラニンスキャンニング変異誘発の技術の実施者は一般に正しいと考える。例えば、Pearce K.H.Jrら、J.Biol.Chem.272:20595−20602(1997)およびJones J.T.ら、J.Biol.Chem.273:11667−11674(1998)を参照のこと。
【0119】
図3〜6に示したデータは、標的された変異誘発によって生じた効果の3つの型を示唆する。これらの効果は、特定の環境下でのインターフェロン薬物の開発のために有利であり得る。この効果の3つの型は、以下である:(a)野生型インターフェロン−β−1aの活性よりも高い抗ウイルス活性を伴う変異体(例えば、C1変異体);(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイの両方において活性を示すが、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗ウイルス活性と比較して抗増殖活性が不釣合いに低い変異体(例えば、C1、DおよびDE1変異体);および(c)野生型インターフェロン−β−1aと比較して、レセプター結合と比較して不釣合いに低い抗ウイルス活性および抗増殖活性を示す、機能的アンタゴニスト(例えば、A1、B2、CD2およびDE1)。いくつかの変異体が、一つを超えるクラスに分類されることが理解され得る。これらのクラスを、以下に総説する。列挙されたこれらの例に関して、これらのクラスの変異体を特徴付ける一方、これらの領域の他の変異体が活性に対して類似の、またはさらに増強された効果を生じ得ることが理解されるべきである。
【0120】
a)変異体C1は、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aの活性に比べて約6倍高い抗ウイルス活性を有する。この変異体およびこの型の他の変異体は、抗ウイルス効果の所定のレベルを達成するために投与されなければならないインターフェロン−βの量を減少するのに有用であることが予想される。投与されるタンパク質の量を低下させることは、このタンパク質の免疫原性を減少すると予測され、そしてまた、メカニズムに基づかない毒性からの副作用をまた減少し得る。このクラスの変異体は、インターフェロン−β投与の治療的利点がその抗ウイルス効果から生じ、そして抗増殖効果が毒性または望まれない副作用に寄与するといった状況において有利であると予想される。
【0121】
(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおけるアラニン置換変異体の相対的な活性(%野生型)を、図7において比較する。同等に変化した活性(すなわち、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aの活性とは、同一因子によって異なる抗ウイルス活性および抗増殖活性)は、ほとんどの変異体において見られる(対角線上にある)。しかし、いくつかの変異体は、対角線からのずれによって証明されるように、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aと比較して、その他と比較して一つのアッセイにおける活性により大きな変更を示す。3つのこのような変異体を、以下の表に示す。変異体C1は、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aの活性よりも約6倍高い抗ウイルス活性を示すが、抗増殖アッセイにおける活性は、野生型のそれと類似する。従って、変異体C1は、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに対して、その抗増殖活性を5.2倍増強された抗ウイルス活性を有する。同様に、変異体Dは、抗ウイルスアッセイにおいて野生型の活性の65%を示すが、抗増殖アッセイにおいては野生型の活性のたった20%を示し、従って、野生型に比べてその抗増殖活性の3.4倍増強された抗ウイルス活性を有する。変異体DE1は、抗ウイルスアッセイにおいて野生型の活性の26%を示すが、抗増殖アッセイにおいてはたった8.5%を示し、従って、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに比べてその抗増殖活性の3.0倍増強された抗ウイルス活性を有する。所望の抗ウイルス活性のレベルに達するのに十分な濃度において投与される場合、これらの変異体タンパク質は、野生型タンパク質より実質的に低いレベルの抗増殖活性を示す。クラス(a)中のものと同様に、このクラスの変異体は、インターフェロン−β投与の治療的利点がその抗ウイルス効果から生じ、そして抗増殖効果が毒性または望まれない副作用に寄与するといった状況において有利であると予想される。
【0122】
【表3】
(c)野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに比べてレセプター結合が低い抗ウイルス活性および抗増殖活性を伴う変異体(下の表を参照のこと)。変異体A1は、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに関して観察される活性より2.0倍および1.8倍高い抗ウイルス活性および抗増殖活性を示すが、Daudi細胞上の同族のレセプターに野生型より29倍高い親和性で結合する。従って、この変異体のIFN−βレセプターへの結合は、このタンパク質の抗ウイルス活性および抗増殖活性に比べて約15倍増強される。同様に、変異体B2、CD2およびDE1は、それぞれに、4.6倍、4.6倍および18倍の抗ウイルス活性を越える、そして3.5倍、15倍および54倍の抗増殖活性を越える結合の増強性を示す。これらのタンパク質は、内因性IFN−β、およびおそらく他の内因性I型インターフェロンの活性の機能的なアンタゴニストとして有用であることが予想される。なぜなら、これらが、レセプターに結合する能力およびレセプターを占有する能力を有し、そしてなお野生型IFN−βに関してみられる標的細胞における機能的な応答の単なる小さな画分を生じるからである。
【0123】
【表4】
(G.インターフェロンの3次元構造に対するムテイン関連性)
マウスインターフェロン−βの非グリコシル化型(T.Senda、S.SaitohおよびY.Mitsui.Rifined Crystal Structure of Recombinant Murine Interferon−β at 2.15 Å Resolution.J.Mol.Biol.253:187〜207(1995))およびヒトインターフェロンα−2b(R.Radhakrishnan,L.J.Walter,A.Hruza,P.Reichert,P.P Trotta,T.L.NagabhushanおよびM.R.Walter.Zinc Mediated Dimer of Human Interferon−α2b Revealed by X−ray Crystallography.Structure.4:1453−1463(1996))に関する公表された結晶構造が、ヒトインターフェロン−βのペプチド骨格のモデルを提供したが、本発明者らは、グリコシル化状態のインターフェロン−β−1aの構造を最近解明した(M.Karpusas,M.Nolte,C.B.Benton,W.Meier,W.N.Lipscomb,およびS.E Goelz.The Crystal Structure of Human Interferon−β at 2.2 Å resolution.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11813〜11818(1997))。
【0124】
本発明者らの変異の解析の結果は、インターフェロン−β−1aの3D構造に関して要約され得る(本明細書中には示さず)。特定の変異残基は、活性において減少を生じた(2分の1〜5分の1未満に減少した)。この変異された領域は、表1および2に与えられた置換に対応する。
【0125】
機能に対するそれらの効果において最も重要である変異は、活性および細胞表面レセプター結合の両方の劇的な減少を生じた。本発明者らのアッセイにおいてこれらの変異体のいずれもIFNAR/Fcを結合しなかったので、この領域(A2へリックス、AB & AB2ループおよびEへリックス)は、IFNAR2結合部位における変異に対応する。
【0126】
IFNAR2結合に重要なこれらの変異もまた、細胞の結合に影響を及ぼしたが、細胞表面結合特性もまた、この分子の他の領域(B1へリックス、C2へリックス)の残基によって影響される。IFN−β−1a分子のN末端、C末端およびグリコシル化Cへリックス領域がレセプター結合部位内に存在しないことが、アラニン置換変異体の効果を示す3Dモデル(示さず)において見られ得る。これらの領域における変異は、生物学的活性を低減せず、細胞表面レセプター結合も低減しない。
【0127】
(実施例2:インターフェロン−β−1a融合(IFN−β/Fc)タンパク質の発現のためのプラスミドの構築)
PCR技術を使用して、マウスIgG2a重鎖分子のFc部分に融合されたヒトIFN−β DNA配列をコードする発現プラスミドを作製した。プラスミドベクターpDSW247(実施例1を参照のこと)は、EBNA−1遺伝子が欠失されている、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体である。このプラスミドを、EBNA 293ヒト腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA.,Shen.E.S.ら、1995、Gene 156、235〜239)における一過性タンパク質発現のために有用な発現ベクターの構築のために使用した。このプラスミドは、インターフェロンβ配列の上流にインフレームでヒト血管細胞接着分子−I(VCAM−1)シグナル配列、そしてインターフェロンβおよびIg配列の接合部にエンテロキナーゼリンカー配列を含むように設計された。
【0128】
融合タンパク質発現カセットは、いくつかのDNAフラグメントからアセンブリされた。ヒトIFN−β遺伝子をコードするDNAフラグメントを得るために、ヒトIFN−βのcDNAサブクローン(GenBank登録番号E00029)を、IFN−βの最初のコドンの上流に制限酵素切断部位(BsaI)をもまた組み込んだ、以下のプライマーを使用するPCRのための鋳型として使用した:
【0129】
【化1】
。IFN−β遺伝子のための3’PCRプライマー(配列番号32:BET−026)は、IFN−β終止コドンを除去し、そして発現ベクターへのサブクローニングのために有用な、インフレームエンテロキナーゼリンカー配列(DDDDK)(配列番号62)およびターミナル制限酵素部位(XhoI)の両方を組み込んだ。IFN−βコード配列の上流に導入されたBsaI部位によって、本発明者らは、IFN−β遺伝子コード配列と上流かつインフレームでVCAM−1シグナル配列を連結することが可能であった。このVCAM−1シグナル配列はまた、5’制限酵素切断部位(pDSW247 NotIクローニング部位への連結のために、NotI)および3’制限酵素切断部位(IFN−β−1a 5’PCRフラグメントへの連結のために、BsaI)を含む以下のプライマー対を使用するPCRによって生成された:
【0130】
【化2】
。PCRの鋳型は、ヒト血管細胞接着分子−1(VCAM−1)cDNA(GenBank登録番号X53051)であった。
【0131】
IFN−β−1a/Fc融合遺伝子を作製するために、以下の手順を行った。マウスIgG2aフラグメントを、SalI+BamHI消化DNAフラグメントのゲル精製によってpEAG293から取り出した。プラスミドpEAG293は、マウスIgG2aのヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインのBluescript IISK+(Stratagene,LaJolla CA,カタログ番号212205)サブクローンである(GenBank登録番号V00798)。PCRプライマー対5’−AGGTSMARCTGCAGSAGTCW−3’(配列番号35)、ここでS=CまたはG、M=AまたはC、R=AまたはG、W=AまたはT、および5’−CTGAGCTCATTTACCCGGAGTCCGGGAGAAGCTCTT−3’(配列番号36)は、カセットの5’末端および3’末端にそれぞれ隣接するSalI部位およびNotI部位を作製した。マウスIgG2a Fcドメインカセットは、単一塩基(コドンV369)でGenBank配列とは異なり、これはサイレント変異を生じる。従って、野生型Fcタンパク質は、このIgG2a Fcカセットから発現される。
【0132】
C末端エンテロキナーゼリンカー配列を有する、huIFN−β遺伝子に融合されたVCAM−1シグナル配列を含むDNAフラグメントを、NotI〜BamHI消化によってpCMG258から切り出し、そしてゲル精製した。SalI部位は、元々のpDSW247プラスミド上に存在し、そしてIFN−β遺伝子コード配列のすぐ下流にインフレームで配置される。プラスミドベクターpDSW247を、ゲル精製NotI+BamHIフラグメントとして調製した(実施例1を参照のこと)。上述のフラグメントを用いて3方向連結を行い、IFN−β−1a/IgG2a融合物をコードする最終的な発現ベクターをアセンブリした。この発現プラスミドを、pCMG261と命名した。このプラスミドは、成熟ヒトIFN−β、エンテロキナーゼリンカー配列およびマウスIgG2a Fcドメインについての遺伝子と融合したVCAM−1シグナル配列を含む。融合タンパク質の全長DNA(配列番号1)およびタンパク質配列(配列番号2)を図2に示す。
【0133】
(実施例3:哺乳動物細胞におけるインターフェロン−β−1a融合タンパク質の生成)
組換えIFN−β/Fc発現ベクターpCMG261を、ヒトEBNA 293腎臓細胞に一過性にトランスフェクトし、本発明のIFN−β−1a融合タンパク質の発現を達成した。この組換え発現プラスミドを、EBNA 293細胞の100mm培養ディッシュについて1〜3マイクログラムのプラスミドDNAを使用して、製造業者のプロトコル(Life Technologies,Gaithersburg,MD,Hawley−Nelson,P.,Ciccarone,V.,Gebeyehu,G.Jessee,J.,Felgner,P.L.(1993)Focus 15.73)に従って、EBNA 283ヒト腎臓細胞において、リポフェクタミンプロトコル(カタログ番号18324−020,Life Technologies)によってトランスフェクトする。細胞のリポフェクタミントランスフェクションの後の日に、培地を増殖培地(ダルベッコ改変イーグル培地、10%ウシ胎仔血清、4mMグルタミン、250マイクログラムGentecin/ml(Life Technologies,Gaithersburg,MD))で置き換える。3〜4日後に馴化培地を収集する。IFN−β−1a−Fcの濃度を下記の通りに決定した。
【0134】
他の哺乳動物細胞および原核生物細胞発現系におけるIFN−β/Fc融合タンパク質の生成もまた、それらの系についての適切な発現ベクターへの、融合タンパク質についてのタンパク質コード領域の移入の際に実施し得た。代替の発現系としては、以下のような哺乳動物細胞発現系が挙げられる:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Barsoum,J.(1995、Methods in Mol.Biol.48、第18章、225〜237)およびNS−0マウス細胞(Rossman,C.ら、1996、Protein Expression and Pur.7,335〜342)、ならびにCOSミドリザル腎臓細胞(Ettinger,R.ら、1996、Proc.Natil.Acad.Sci.USA,93:23,13102〜13107)。適切である他の真核生物発現系は、酵母Pichia pastoris(Eldin,P.E.ら、1997、J.Immun.Methods,201,67〜75)およびSaccharomyces cerevisiae(Horwitz,A.H.、1988、Proc.Natil.Acad.Sci.USA,85,8678〜8682)である。
【0135】
トランスフェクトされたEBNA 293細胞からの培養上清におけるIFN−β−1a−Fcタンパク質発現レベルの定量を、ウサギ抗IFN−β−1aポリクローナル抗体(抗原は、精製されたIFN−β−1aであった、Biogen,Inc.)のプロテインA精製IgG画分を使用して96ウェルプレートをコートするELISAによって行った。この抗体は、10ng/mL〜0.3ng/mLのインターフェロン濃度範囲で、IFN−β−1a標準および培養上清を検出する。ビオチン化ウサギポリクローナル抗IFN−β−1a(上記と同じ抗体)およびストレプトアビジン連結西洋ワサビペルオキシダーゼを使用して、結合したインターフェロンを検出した。ELISA値を確認するために、ウェスタンブロット分析を行った。ここで、減少させた培養上清およびIFN−β−1a標準を、5〜20%のTris−グリシンゲル(Novex,San Diego,CA)で泳動し、PVDF膜(Amersham Life Science,Inc.,Cleveland,OH)に移し、そして異なるウサギポリクローナル血清(IFN−β−1aに対して惹起される)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ連結ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)抗体を用いて検出した。
【0136】
(実施例4:IFN−β−1a/マウスIgG2a融合タンパク質の抗ウイルス活性)
ヒト肺癌細胞(A549)を、脳心筋炎ウイルス(EMCV)でのチャレンジ前に、IFN−β−1aまたはIFN−β−マウスIgG2a(61、41、27、18、12、8.2、5.5、3.7、2.5、1.6pg/mL)で24時間、前処理した。ウイルスとの2日間のインキュベーションの後に、生存細胞を、XTT:PMS(リン酸緩衝化生理食塩水中、それぞれ333μg/mLおよび2ng/mLの2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド(carboxanilide)内部塩:Penazineメトスルフェート(methosulfate))の溶液で染色し、そして450nMにて分光法によって検出した。各IFN濃度についての三連のデータ点を用いてアッセイを行った。
【0137】
図8において、標準偏差を誤差バーとして示す。IFN−β−1aについての50%細胞変性効果は、約0.4pMであると決定された。IFN−β−マウスIgG2aについての50%細胞変性効果は、0.15pMであることが見出された。
【0138】
(実施例5:ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の構築および生成)
(A.ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の構築)
PCR技術を使用して、ヒトIgG1重鎖分子のFc部分(ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)に融合されたヒトIFN−β DNA配列をコードする発現プラスミドを作製した。
【0139】
EBNA構築:プラスミドベクターpCH269は、EBNA−1遺伝子が欠失されている、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体である。このプラスミドを、EBNA 293ヒト腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA.,Shen.E.S.ら、1995、Gene 156、235〜239)における一過性タンパク質発現のために有用な発現ベクターの構築のために使用した。
【0140】
融合タンパク質発現カセットを、以下の3つのDNAフラグメントからアセンブリした:ヒトIFNβをコードする配列にインフレームでかつ融合されたVCAM−1シグナル配列をコードするNotI/SalIフラグメント、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインをコードするSalI/NotIフラグメント、ならびにEBNA発現ベクターpCH269のNotIフラグメント。
【0141】
ヒトIFN β遺伝子にインフレームでかつ融合された成熟VCAM−1シグナル配列をコードする2つの異なるNotI/SalIフラグメントを、PCR技術によって作製した。PCR鋳型は、ヒトIFN β遺伝子(これ自体、エンテロキナーゼリンカー配列にインフレームでかつ融合されている)にインフレームでかつ融合された成熟VCAM−1シグナル配列をコードするプラスミドpCMG258(上記の実施例2を参照のこと)であった。2つのセットのPCRプライマーを使用した。以下のプライマーの1セットは、162位でのGからCへのアミノ酸変化を導入した:
【0142】
【化3】
。このフラグメントを、ヒトIFN β−C162と呼ぶ。
【0143】
以下の第2のプライマーセットもまた、G162からC162へのアミノ酸置換を導入し、そしてエンテロキナーゼリンカー配列(DDDDK)(配列番号62)を、ヒトIFN β遺伝子にインフレームで3’側に融合されたGGGGS(配列番号64)リンカー配列に変更した:
【0144】
【化4】
。このフラグメントを、ヒトIFN β−C162/G4Sと呼ぶ。プライマーの両方のセットは、pCH269への連結を可能にする5’NotI部位、およびヒトIgG1のSalI/NotIフラグメントとの連結を可能にする3’SalI切断部位を含む。
【0145】
ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインをコードするヒトIgG1フラグメントを、プラスミドpEAG409(プラスミドSAB144の誘導体(米国特許第5,547,853号に記載される))の制限酵素(SalI/NotI)消化によって調製した。このDNAフラグメントを切り出し、そしてゲル精製した。EBNA発現ベクタープラスミドpCH269を、NotIで消化し、そしてゲル精製した。
【0146】
2つのヒトIFN β−ヒトIgG1 Fc融合構築物を、2つの3方向連結によって作製した。ZL6206と呼ばれる1つの構築物は、G4Sリンカーを含む;ZL5107と呼ばれるもう1つの構築物は、直接融合物である。この直接融合物のオープンリーディングフレームの全長DNAおよびタンパク質配列(図10を参照のこと)をそれぞれ、配列番号41および配列番号42に示す。リンカー融合物のオープンリーディングフレームの全長DNAおよびタンパク質配列(図11を参照のこと)をそれぞれ、配列番号43および配列番号44に示す。
【0147】
(CHO構築物)
ヒトIgG1 Fcに直接連結されたヒトIFNβを含む、ヒトIFN β−ヒトIgG1 Fc融合CHOの安定な発現構築物を作製した。ヒトIFNβ−ヒトIgG1 Fcフラグメントを、NotIを用いてプラスミドZL5107から切り出し、そしてゲル精製した;このフラグメントを、pEAG347のNotI部位に連結した。pEAG347は、タンデムなSV40初期プロモーターおよびアデノウイルス主要後期プロモーター[pAD2βプラスミドに由来する]、唯一のNotIクローニング部位、続いて、SV40後期転写終結シグナルおよびポリAシグナル[pCMVβプラスミドに由来する]を含む発現ベクターである。pEAG347は、pUC19由来のプラスミド骨格およびpSV2dhfr由来dhfrを、トランスフェクトされたCHO細胞におけるMTX選択および増幅のために含む。
【0148】
(B.ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の哺乳動物細胞における生成)
(ヒトIFNβ融合構築物のEBNA293細胞への一過性トランスフェクション):
上記の組換えIFN−β/ヒトIgG1 Fc発現ベクターを、ヒトEBNA293腎臓細胞中に一過性でトランスフェクトして、本発明のIFN−β−1a融合タンパク質の発現を達成した。これらの組換え発現プラスミドを、リポフェクタミンプロトコル(カタログ番号18324−020、Life Technologies)によって、上記の実施例3に記載のプロトコルに従ってEBNA293ヒト腎臓細胞中にトランスフェクトした。
【0149】
(ヒトIFNβ−1a/ヒトIgG1 Fc融合構築物(リンカーなし)のdhfr− CHO細胞への安定なトランスフェクション):
上記の組換えIFN−β/ヒトIgG1 Fc(リンカーなし)dhfr含有発現ベクターを、dhfr− CHO細胞中に安定にトランスフェクトして、本発明のIFN−β−1a融合タンパク質の発現を達成した。この組換え発現プラスミドを、エレクトロポレーションによってトランスフェクトし、そしてポジティブクローンの選択を、以下のプロトコルに従って達成した:
BglIIを用いて消化したプラスミドDNA(20mcg)を沈澱させ、800mclのHEPES緩衝液中に再懸濁し、そして10×107 CHO細胞/mlになるように添加した。エレクトロポレーションの後、細胞を、DMEM完全培地にて2日間培養した。次いで細胞を、完全DMEM/透析した10% FBSを有する20〜40個の10cmディッシュに分け、そして5日間培養した後に、細胞を、漸増する(50〜200ng)濃度のMTXをDMEM中に含む選択培地に2週間にわたって移した。2週間の終わりに、細胞の単コロニーを選択し、そして増殖させた。22個のCHOクローンに由来する上清を、抗ウイルスアッセイにおいて試験した。
【0150】
(活性)
融合タンパク質の抗ウイルス活性を、実施例4に記載されるようなCPEアッセイにおいて決定した。このアッセイにおいて用いられる60MU/mgの比活性のインターフェロン−ベータ−1a標準に基づいて、一過的に(EBNA)発現された、リンカーを有するヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の活性は900U/mlであり、そしてリンカーを有さないものの活性は440U/mlであった。CHO発現ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の活性は50U/mlであった。
【0151】
(実施例6:インターフェロン−β−1aおよびインターフェロン−β−1a/マウスIgG2a融合タンパク質を用いて処置したマウスの血漿における、インターフェロン−β−1a抗ウイルス活性の測定)
マウス(C57/B16)に、尾静脈を通して50,000単位のインターフェロン−β−1a(バルク)または5,000単位のインターフェロン−β−1a−マウスIgG2a融合タンパク質をi.v.注射する。等しい容量のリン酸緩衝液をコントロールとして与える。
【0152】
血液を、眼窩後方での出血を介して、インターフェロンβ注射後の異なる時点(すぐ、0.25時間、1時間、4時間、24時間および48時間)でサンプリングする。1つの時点あたり少なくとも3つのマウスが存在する。全血を、抗凝固剤を含むチューブに収集し、細胞を除去し、そして得られる血漿をアッセイのときまで凍結する。血漿サンプルを、無血清アッセイ媒体中に1:10希釈し、そして0.2μmシリンジフィルターを通過させる。
【0153】
次いで、希釈したサンプルを、A549細胞を含む96ウェル組織培養プレートの指定したウェル中に力価測定する。標準のインターフェロン−β−1a(10、6.7、4.4、2.9、1.3、0.9および0.6U/ml AVONOX)および4つのサンプルを、全てのプレートで行った。細胞を、EMCウイルスを用いるチャレンジの前に、サンプルを用いて24時間にわたって前処理する。ウイルスを用いた2日間のインキュベーションに続いて、生存細胞を、MTTの溶液(リン酸緩衝液中5mg/ml)を用いて1時間染色し、リン酸緩衝液を用いて洗浄し、そしてイソプロパノール中の1.2N HClを用いて可溶化する。細胞を、450nmで読み取った。標準曲線を各プレートについて作成し、そしてこれを用いて各サンプル中のインターフェロン−β−1a活性の量を決定する。異なるマウスからのサンプルにおける活性を、図9において、時点に対するグラフにする。
【0154】
時間の関数としての、循環からのインターフェロン−β−1a融合物のより緩慢な損失は、融合タンパク質サンプルの半減期が、改変していないインターフェロン−β−1aコントロールの半減期よりもずっと長いことを示す。この研究からの第2の非常に重要な知見は、15分および60分の時点での類似の高レベルの活性によって証明されるように、ごくわずかな融合タンパク質が、分布相の間に失わることを示した。このデータは、コントロールのインターフェロン−β−1aとは異なり、インターフェロン−β−1a融合タンパク質の分布が脈管構造に主に制限されることを示す。
【0155】
(実施例7:霊長類における比較薬物動態学および薬力学)
比較研究を、インターフェロン−β−1a融合物およびネイティブなインターフェロン−β−1a(100mMリン酸ナトリウム、200mM NaCl、pH7.2中の処方されていないバルクの中間体AVONEX(登録商標)インターフェロン−β−1aとして)を用いて行い、霊長類におけるそれらの相対安定性および活性を決定する。これらの研究では、霊長類におけるこのインターフェロン−β−1a融合物の薬物動態学および薬力学を、ネイティブなインターフェロン−β−1aの薬物動態学および薬力学と比較し、そして合理的な推測がヒトにまで広げられ得る。
【0156】
(動物および方法)
(研究設計)
これは、インターフェロン−β−1a融合タンパク質と非融合インターフェロン−β−1aとの比較薬物動態学および薬力学を評価するための並行群の反復用量研究である。
【0157】
健常な霊長類(好ましくはアカゲザル)をこの研究に用いる。投与前に、全ての動物を、試験物品の投与前14日以内に2回、Lab Animal Veterinaryによって不健康の徴候について評価する;1回の評価は、最初の試験物品の投与24時間以内でなければならない。健常な動物のみが、試験物品を受ける。評価は、一般的な身体検査、ならびに基準線臨床病理およびインターフェロン−β−1aに対する基準線抗体レベルについての投与前採血を含む。全ての動物を計量し、そして体温を、試験物品投与の前24時間以内に記録する。
【0158】
12体の被験体が参加し、そして1MU/kgのインターフェロン−β−1aを融合物または非融合物のいずれかであるが他の点では同一のインターフェロン−β−1aとして受けるように3体ずつの群に割り当てられる。投与は、皮下(SC)経路または静脈内(IV)経路いずれかによる。6体の雄性動物は、試験物品をIV経路によって受け(3/処置)、そして別の6体の雄性動物は、試験物品をSC経路によって受ける(3/処置)。全ての動物は、インターフェロン−β処置に対して未処置(naive)でなければならない。各動物は、2回投与される:用量は、4週間間隔をあける。用量の容量は1.0mL/kgである。
【0159】
血液を、薬物動態学的試験のために、各注射の0、0.083、0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、8、12、24、48、72および96時間後に採血する。インターフェロン誘導性生物学的応答マーカーである血清ネオプテリン(neopterin)の測定のための血清サンプルを、試験薬物の投与の0、24、48、72、96、168、336、504時間後に採血する。
【0160】
試験期間の間の評価は、投与後30分および1時間で毒性の徴候について行われる臨床観察を含む。毎日、ケージ横(cageside)で観察を行い、全体的外観、毒性の徴候、不快、および行動の変化を記録する。体重および体温を、定期的な間隔で投与後21日を通して記録する。
【0161】
(アッセイ方法)
血清中のインターフェロンβのレベルを、細胞変性効果(CPE)バイオアッセイを用いて定量する。CPEアッセイは、インターフェロン媒介抗ウイルス活性のレベルを測定する。サンプル中の抗ウイルス活性のレベルは、血液を採血した時点でそのサンプル中に含まれる活性なインターフェロンの分子数を反映する。このアプローチは、インターフェロンβの薬物動態学を評価する標準方法である。現在の研究において用いられるCPEアッセイは、インターフェロンβが、ヒト肺癌細胞(A549,#CCL−185,ATCC,Rockville,MD)を脳心筋炎(EMC)ウイルスに起因した細胞傷害性から保護する能力を検出する。この細胞を、血清サンプルを用いて15〜20時間にわたってプレインキュベーションして、インターフェロン誘導性タンパク質の誘導および合成を可能にし、その後、このタンパク質は抗ウイルス応答を開始させる。その後、EMCウイルスを添加し、そしてさらに30時間インキュベートした後、細胞傷害性の評価をクリスタルバイオレット染色を用いて行う。内部インターフェロンβ標準ならびにインターフェロン−β−Ig内部標準を、各アッセイプレート上でサンプルを用いて同時に試験する。この標準は、天然のヒト線維芽細胞インターフェロン参照標準(WHO Second International Standard for Interferon,Human Fibroblast,Gb−23−902−53)に対して較正される。各アッセイプレートはまた、いずれの種類のインターフェロンβもEMCも含まない細胞増殖コントロールウェルを含み、そしてウイルスコントロールウェルは、細胞およびEMCを含むがインターフェロンβを含まない。標準およびサンプルを含むコントロールプレートもまた調製して、細胞増殖に対するサンプルの効果(ある場合)を決定する。これらのプレートを、ウイルスの添加を行わずに染色する。
【0162】
サンプルおよび標準を、2つの複製アッセイプレートの各々について二連で試験して、1サンプルあたり4つのデータ点を得る。4つの複製についての相乗平均濃度を記録する。このアッセイにおける検出限界は、10ユニット(U)/mlである。
【0163】
ネオプテリンの血清濃度を、市販のアッセイを用いて臨床的薬理学単位で決定する。
【0164】
(薬物動態学的方法および統計的方法)
RstripTMソフトウェア(MicroMath,Inc.,Salt Lake City,UT)を用いて、データを薬物動態学的モデルに適合させる。相乗平均濃度を、各群について時間によってプロットする。アッセイ結果は希釈で表されるので、相乗平均は、相加平均よりも適切であると考えられる。血清インターフェロンレベルを基準線値に調整し、そして検出可能でない血清濃度を5U/mlに設定する。これは、検出の下限の2分の1を表す。
【0165】
IV注入データに関して、2区画IV注入モデルを、各被験体について検出可能な血清濃度に適合させ、そしてSCデータを2区画注射モデルに適合させる。
【0166】
以下の薬物動態学的パラメータを算出する:
(i)観察されたピーク濃度Cmax(U/ml);
(ii)台形公式を用いた0〜48時間の曲線下面積AUC;
(iii)排出半減期;
およびIV注入データから(IVを用いた場合):
(iv)分布半減期(h);
(v)クリアランス(ml/h);
(vi)見かけの分布容量Vd(L)。
【0167】
WinNonlin(Version 1.0,Scientific Consulting Inc.,Apex,NC)ソフトウェアを用いて、SC注射およびIM注射後の排出半減期を算出する。
【0168】
ネオプテリンに関して、時間による相加平均を、各群について表す。基準線からの最大変化であるEmaxを算出する。Cmax、AUCおよびEmaxを、一元(one−way)分散分析に供して提示して、投与群を比較する。CmaxおよびAUCを、分析前に対数変換する;相乗平均を記録する。
【0169】
(実施例8:インターフェロンβ−1a融合物の抗脈管形成効果)
(インターフェロン−β−1a融合物が、内皮細胞増殖をインビトロで阻害する能力の評価)
ヒト静脈内皮細胞(Cell Systems,カタログ#2V0−P75)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems,カタログ#2M1−C25)を、CS−C培地キット(Cell Systems,カタログ#4Z0−500)を用いる培養中で維持する。実験24時間前に、細胞をトリプシン処理し、そしてアッセイ培地(90% M199および10%ウシ胎児血清(FBS))中に再懸濁し、そして所望の細胞密度に調整する。次いで、細胞を、ゼラチンでコーティングした24ウェルプレートまたは96ウェルプレートに、12,500細胞/ウェルまたは2,000細胞/ウェルのいずれかで、それぞれプレートする。
【0170】
一晩のインキュベーション後、アッセイ培地を、20ng/mlのヒト組換え塩基性線維芽細胞増殖因子(Becton Dickinson,カタログ#40060)および種々の濃度の、融合インターフェロン−β−1aタンパク質および非融合のインターフェロン−β−1aタンパク質またはポジティブコントロール(エンドスタチンは、bFGFに対する抗体がポジティブコントロールとして用いられ得るように、ポジティブコントロールとして用いられ得る)を含有する、新鮮な培地で置換する。最終容量を、24ウェルプレートで0.5mlに、または96ウェルプレート中で0.2mlに調整する。
【0171】
72時間後、細胞をCoulter計数のためにトリプシン処理するか、CyQuant蛍光読み取りのために凍結するか、または[3H]チミジンで標識する。
【0172】
このインビトロアッセイは、本発明のヒトインターフェロン−β分子を、インビボで抗脈管形成効果を示し得る、内皮細胞増殖に対する効果について試験する。O’Reilly,M.S.,T.Boehm,Y.Shing,N.Fukal,G.Vasios,W.Lane,E.Flynn,J.Birkhead,B.Olsen,およびJ.Folkman,(1997),Endostatin:An Endogenous Inhibitor of Angiogensis and Tumor Growth.Cell 88,277−285を参照のこと。
【0173】
(実施例9:インターフェロン−β−1a/Ig融合物の抗脈管形成効果および抗新生脈管形成効果を試験するためのインビボモデル)
種々のモデルを、本明細書中に記載の分子の抗脈管形成効果および抗新生脈管形成効果を試験するために開発した。これらの分子のいくつかは、米国特許第5,733,876号(1998年3月31日:「Method of inhibiting angiogenesis」)および同第5,135,919号(1992年8月4日:「Method and pharmaceutical composition for the inhibition of angiogenesis」)に記載されている。他のアッセイとしては、以下が挙げられる:S.TaylorおよびJ.Folkman;Nature,297,307(1982)およびR.Crum.S.SzaboおよびJ.Folkman;Science.230.1375(1985)の外皮のない絨毛尿膜(CAM)アッセイ;Folkman,J.ら;J.Exp.Med.,133,275(1971)のマウス背側(dorsal)肺胞嚢法の抗脈管形成(antigiogenesis)モデルおよびGimbrone,M.A.Jr.ら,J.Natl.Cancer Inst.52,413(1974)のラット角膜微小ポケットアッセイ。このラット角膜微小ポケットアッセイでは、EVA(エチレン−ビニルアセテートコポリマー)ペレット中に含浸した500ngの塩基性FGF(ウシ、R & D Systems,Inc.)を各角膜に移植することによって、Sprague−Dawley系統(Charles,River,Japan)の成体雄性ラットにおいて角膜の血管新生が誘導される。
【0174】
インターフェロン−β/Ig融合物を、動物モデルにおいて抗脈管形成効果について試験するための他の方法としては、オリジナルのCancer Chemotherapy Reports,第3部,第3巻,第2号,1971年9月および増補のIn Vivo Cancer Models,1976−1982,NIH刊行物番号84−2635,1984年2月に記載されるような、新規の潜在的な抗癌剤をスクリーニングするためのプロトコルが挙げられる(が、これらに限定されない)。げっ歯類モデルにおけるインターフェロンβ誘導物の抗脈管形成活性を評価するためには、I型インターフェロンの種障壁があるので、げっ歯類インターフェロン−β/:Ig融合物調製物を作製する。このようなスクリーニング方法は、皮下に移植したLewis Lung Carcinomaに対するマウスインターフェロン−β/Ig融合物の抗脈管形成効果について試験するためのプロトコルによって例示される。
【0175】
(腫瘍株の起源)
1951年に、C57BL/6マウスにおいて肺の癌として自然発生した。
【0176】
試験手順のまとめ:腫瘍フラグメントを、B6D2F1マウスの腋窩部の皮下に移植する。試験薬剤(すなわち、本発明の融合タンパク質)を、腫瘍移植後、複数日、種々の用量で皮下(SC)または腹腔内(IP)に投与する。測定するパラメーターは、中間生存時間である。結果を、コントロール生存時間の百分率として表す。
【0177】
(動物)
繁殖:C57BL/6マウス
試験:B6D2F1マウス
体重:マウスは、雄性については18gを、そして雌性については17gを最少体重として、3gの体重範囲内にあるべきである
性別:1つの性別を全ての試験について用い、そしてコントロール動物を1つの実験において用いる
供給源:可能であれば、1つの実験における全ての動物について1つの供給源。
【0178】
(実験サイズ)
1試験群あたり10匹の動物。
【0179】
(腫瘍移植)
増殖:
フラグメント:皮下ドナー腫瘍の2〜4のフラグメントを調製する
時間:13〜15日
部位:フラグメントを、鼡径部において穿刺によって腋窩部に皮下移植する
試験:
フラグメント:皮下ドナー腫瘍の2〜4mmのフラグメントを調製する
時間:13〜15日
部位:フラグメントを、鼡径部において穿刺によって腋窩部に皮下移植する。
【0180】
(試験スケジュール)
0日目:腫瘍を移植する。細菌培養を行う。奇数番号の実験物毎にポジティブコントロール化合物を試験する。材料を調製する。死亡を毎日記録する。
1日目:培養物をチェックする。汚染されていた場合、実験物を捨てる。動物をランダム化する。指示されたように処理する(1日目および翌日)。
2日目:培養物を再度チェックする。汚染されていた場合、実験物を捨てる。
5日目:2日目および日の最初の試験薬物毒性評価を検量する。
14日目:初期死亡日を調節する。
48日目:採取なしの日を調節する。
60日目:実験を終了し、そして評価する。肺を肉眼で(grossly)腫瘍に関して検査する。
【0181】
(精度管理)
ポジティブコントロール化合物(NSC 26271(100mg/kg/注射の用量のCytoxan))を全ての奇数番号の実験物において予定し、そのレジメンは、1日目のみが腹腔内である。ポジティブコントロールに関する、より低い試験/コントロール限界は140%である。受け入れ可能な未処理のコントロール中間生存時間は、19〜35.6日である。
【0182】
(評価)
測定されるパラメーターは、中間生存時間である。1日目および5日目についての平均動物体重を計算し、全ての試験群について試験/コントロール比を算出する。開始(staging)日および最終評価日についての平均動物体重を計算する。試験/コントロール比を、5日目に65%を越える生存動物(survivor)を有する全ての試験群について計算する。86%未満の試験/コントロール比の値は、毒性を示す。過度の体重変化の相違(試験−コントロール)もまた、毒性の評価の際に用いられ得る。
【0183】
(活性についての基準)
140%以上の初期試験/コントロール比は、中程度の活性を実証するために必要であるとみなされる。150%以上の再現性のある試験/コントロール比の値は、有意に活性であるとみなされる。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
特定の疾患の全身的処置のためのポリペプチドおよびタンパク質の使用は、今や、医学診療において十分に受け入れられている。これらの物質が治療において果たす役割は非常に重要であるので、多くの研究活動が、組換えDNA技術による大量合成に指向している。これらのポリペプチドの多くは、内因性分子であり、これは、それらの生物学的作用を誘発することにおいて、非常に強力かつ特異的である。
【0002】
これらの意図される適用のためのこれらのタンパク質様物質の有用性を制限する主要な因子は、非経口で与えられる場合、これらが短時間以内に体内から排出されることである。これは、プロテアーゼによる代謝の結果として、またはタンパク質排出についての正常な経路(例えば、腎臓における濾過による)を使用する、クリアランスによって生じ得る。タンパク質の投与のこれらの経路に関連する問題は、製薬産業において周知であり、そして種々のストラテジーが、それらを解決するための試みにおいて使用されている。
【0003】
多くの臨床的研究およびその投与ならびにバイオ同化(bio−assimilation)を改善するための試みの焦点となっているペプチドファミリーは、インターフェロンである。インターフェロンは、種々の臨床的疾患状態において試験されている。ヒトインターフェロン−β(そのファミリーの1つのメンバー)の使用は、多発性硬化症の処置において最も良好に確立されている。組換えインターフェロン−βの2つの形態は、近年、この疾患の処置について、欧州および米国において認可されてきた。1つの形態は、インターフェロン−β−1a(登録商標され、AVONEX(登録商標)として販売されている、mfg.Biogen,Inc.,Cambridge、MA)であり、本明細書中で以後、「インターフェロン−β−1a」または「IFN−β−1a」または「IFN−β−1a」または「インターフェロン−β−1a」が、交換可能に使用される。他方の形態は、インターフェロン−β−1b(登録商標され、BETASERON(登録商標)として販売されている、Berlex,Richmond CA)であり、本明細書中で以後、「インターフェロン−β−1b」である。インターフェロン−β−1aは、天然のヒト遺伝子配列を使用して哺乳動物細胞において産生され、そしてグリコシル化されるが、インターフェロン−β−1bは、アミノ酸17位で遺伝子操作されたシステインからセリンへの置換を含む改変ヒト遺伝子配列を使用してE.coli細菌において産生され、そしてグリコシル化されない。
【0004】
以前に、本発明者らの数人は、機能的アッセイにおいてインターフェロン−β−1aおよびインターフェロン−β−1bの相対的なインビトロ潜在能を直接比較し、そしてインターフェロン−β−1aの比活性が、インターフェロン−β−1bの比活性よりも約10倍高いことを示した(Runkelら、1998、Pharm.Res.15:641〜649)。これらの活性の差異についての構造的基礎を同定するために設計された研究から、本発明者らは、比活性に影響を及ぼす産物間の既知の構造的差異のただ1つとして、グリコシル化を同定した。炭水化物の効果は、構造に対するその安定化の役割を通じて非常に著しかった。炭水化物の安定化効果は、熱変性実験およびSEC分析において明らかであった。グリコシル化の欠如はまた、凝集における増加、および熱変性に対する増加した感受性と相関した。PNGase Fを用いるインターフェロン−β−1aからの炭水化物の酵素的除去は、脱グリコシル化産物の過剰な沈殿を生じた。
【0005】
これらの研究は、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1bとの間の配列における保存に関わらず、これらが別個の生化学的実体であり、それゆえに、インターフェロン−β−1bについて公知のものの多くがインターフェロン−β−1aに適用され得ないこと(逆もまた同じ)ことを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明者らは、非グリコシル化形態に対するグリコシル化されたインターフェロン−βの利点を開発した。特に、本発明者らは、インターフェロン−β−1bに対して増加した活性を有するインターフェロン−β−1a組成物を開発し、そしてこれはまた、融合タンパク質でないインターフェロン−β−1aと比較して、一般に活性において有効な損失を有さない融合タンパク質の有益な(salutory)特性を有する。従って、改変が、産物(インターフェロン−β−1a融合タンパク質)がそれらの生物学的活性の全てまたはほとんどを保持するような方法においてなされる場合、以下の特性が、生じ得る:増加された半減期および組織分布における変更(例えば、より長期間の間、血管系において留まる能力)を導く変更された薬物速度論および薬力学。このような処方は、薬学的および医学の分野において実質的な進歩であり、そしてインターフェロンがいくらかの有用性を有する種々の疾患(例えば、多発性硬化症、線維症、および他の炎症性疾患または自己免疫疾患、肝炎および他のウイルス性疾患ならびに新生血管形成によって特徴付けられる疾患)の管理において有意な寄与をなす。特に、血管系においてより長い期間残存する能力は、インターフェロン−β−1aが新脈管形成を阻害するため、および潜在的に血液脳関門を横切るために使用されることを可能にする。
【0007】
特に、本発明は、アミノ酸配列X−Y−Zを有する単離されたポリペプチドに関し、ここで、Xは、インターフェロン−βのアミノ酸配列からなるアミノ酸配列またはその一部を有するポリペプチドであり;Yは、必要に応じたリンカー部分であり;そしてZは、インターフェロン−β以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである。必要に応じた部分Yおよび必要とされる部分Zは、インターフェロン−β(X)のN末端またはC末端のいずれかに連結され得る。好ましくは、Xは、ヒトインターフェロン−β−1aである。好ましい実施形態において、Zは、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部であり、そしてIgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来であり得る。このクラスがIgGである場合、これは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択される。ヒトIgMおよびIgEの定常領域は、4つの定常領域(CH1、(ヒンジ)、CH2、CH3およびCH4)を含むが、ヒトIgG、IgAおよびIgDの定常領域は、3つの定常領域(CH1、(ヒンジ)、CH2およびCH3)を含む。本発明の最も好ましい融合タンパク質において、この定常領域は、少なくともヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む。他の実施形態において、部分Zは、免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチドの少なくとも一部である。このような他のポリペプチドの例としては、CD1、CD2、CD4、ならびにクラスI主要組織適合抗原およびクラスII主要組織適合抗原のメンバーが挙げられる。
【0008】
本発明の別の実施形態は、インターフェロン−βまたはその一部のアミノ酸配列からなるアミノ末端領域を有し、そしてインターフェロン−β以外のタンパク質の少なくとも一部を含むカルボキシ末端領域を有する、融合タンパク質である。このカルボキシ部分は、好ましくは、IgM、IgG、IgD,IgAおよびIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来の免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部である。最も好ましい融合タンパク質において、この定常領域は少なくともヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態は、インターフェロン−β部分(例えば、上記式におけるX)が、インターフェロン−β−1aの非変異形態に対して選択的に増強された抗ウイルス活性および/もしくは抗増殖活性または他の利点を有するムテインを提供するように変異されている。
【0010】
本発明のなお別の実施形態は、上記の融合タンパク質をコードする単離されたDNAである。本発明はまた、上記の融合タンパク質をコードする単離されたDNAおよび発現制御配列を含む組換えDNAに関し、ここで、この発現制御配列は、このDNAに作動可能に連結されている。本発明の範囲はまた、本発明の組換えDNA配列を用いて形質転換された宿主細胞を含む。
【0011】
本発明はさらに、以下:本発明に従う宿主細胞の集団を提供する工程;組換えDNAによってコードされるポリペプチドが発現される条件下で細胞の集団を増殖させる工程;およびこの発現されたポリペプチドを単離する工程、を包含する、組換えポリペプチドを産生する方法に関する。
【0012】
本発明のさらなる局面は、インターフェロン−β−1a、およびそれがネイティブでは付随しないさらなるポリペプチドを含む実質的に精製された形態のインターフェロン−β−1aの融合タンパク質であり、この融合物は、さらなるポリペプチドを欠如するインターフェロン−β−1aの抗ウイルス活性にほぼ等しい抗ウイルス活性を有する。
【0013】
本発明のなお別の局面は、インターフェロン−β−1a融合タンパク質の治療的有効量を含む薬学的組成物である。
本発明のなお別の局面は、本発明のポリペプチドを使用して新脈管形成および新生血管形成を阻害する方法である。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) アミノ酸配列X−Y−Zを有する単離されたポリペプチドであって、ここで、Xは、グリコシル化インターフェロン−βのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその一部を有するポリペプチドであり;
Yは、必要に応じたリンカー部分であり;そして
Zは、グリコシル化インターフェロン−β以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである、単離されたポリペプチド。
(項目2) Xが、インターフェロン−β−1aである、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目3) 項目1に記載の単離されたポリペプチドであって、ここで、Xは、以下の特性の少なくとも1つを有する変異体である:(a)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aよりも高い抗ウイルス活性を有し、ここで、該抗ウイルス活性は、ウイルスに誘導された細胞の溶解によって測定される;(b)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性よりも大きな抗ウイルス活性を有する;(c)該変異体は、インターフェロンレセプターを結合するが、野生型インターフェロン−β−1aと比較される場合、そのレセプター結合活性と比較して、低められた抗ウイルス活性および低められた抗増殖活性を有する、単離されたポリペプチド。
(項目4) 前記インターフェロン−β−1aが誘導体化されている、項目2に記載の単離されたポリペプチド。
(項目5) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目4に記載の単離されたポリペプチド。
(項目6) Zが、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部である、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目7) 項目6に記載の単離されたポリペプチドであって、ここで、前記定常領域の少なくとも一部が、クラスIgM、クラスIgG、クラスIgD、クラスIgAおよびクラスIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来である、単離されたポリペプチド。
(項目8) 前記クラスがIgGである、項目7に記載の単離されたポリペプチド。
(項目9) 前記定常領域の少なくとも一部が、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目6に記載の単離されたポリペプチド。
(項目10) グリコシル化インターフェロン−βまたはその一部のアミノ酸配列からなるアミノ末端領域を有し、そしてグリコシル化インターフェロン−β以外のタンパク質の少なくとも一部を含むカルボキシ末端領域を有する、融合タンパク質。
(項目11) Xが、インターフェロン−β−1aである、項目10に記載の単離されたタンパク質。
(項目12) 項目10に記載の単離されたタンパク質であって、ここで、Xは、以下の特性の少なくとも1つを有する変異体である:(a)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aよりも高い抗ウイルス活性を有し、ここで、該抗ウイルス活性は、ウイルスに誘導された細胞の溶解によって測定される;(b)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性よりも大きな抗ウイルス活性を有する;(c)該変異体は、インターフェロンレセプターを結合するが、野生型インターフェロン−β−1aと比較される場合、そのレセプター結合活性と比較して、低められた抗ウイルス活性および低められた抗増殖活性を有する、単離されたタンパク質。
(項目13) 前記インターフェロン−β−1aが誘導体化されている、項目11に記載の単離されたタンパク質。
(項目14) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目13に記載の単離されたタンパク質。
(項目15) 前記インターフェロン−β以外のタンパク質の少なくとも一部が、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部である、項目10に記載の単離されたタンパク質。
(項目16) 項目15に記載の単離されたタンパク質であって、ここで、前記定常領域の少なくとも一部が、クラスIgM、クラスIgG、クラスIgD、クラスIgAおよびクラスIgEから選択されるクラスの免疫グロブリン由来である、単離されたタンパク質。
(項目17) 前記クラスがIgGである、項目16に記載の単離されたタンパク質。
(項目18) 前記定常領域の少なくとも一部が、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目15に記載の単離されたタンパク質。
(項目19) 項目1および10に記載のタンパク質をコードする、単離されたDNA配列。
(項目20) 項目19に記載のDNA配列および発現制御配列を含む組換えDNAであって、ここで、該発現制御配列が、該DNAに作動可能に連結されている、組換えDNA。
(項目21) 項目20に記載の組換えDNA配列を用いて形質転換された、宿主細胞。
(項目22) 以下の工程:(a)項目21に記載の宿主細胞の集団を提供する工程;(b)前記組換えDNAによってコードされるポリペプチドが発現される条件下で該細胞の集団を増殖させる工程;および(c)該発現されたポリペプチドを単離する工程、を包含する、組換えポリペプチドを産生する方法。
(項目23) グリコシル化インターフェロン−β、およびそれがネイティブには付随しないさらなるポリペプチドを含む、実質的に精製された形態のインターフェロン−β融合タンパク質。
(項目24) 前記インターフェロン−βが、ヒトインターフェロン−β−1aである、項目23に記載の融合タンパク質。
(項目25) 項目24に記載の融合タンパク質であって、ここで、該融合物は、以下:(a)野生型インターフェロン−β−1aよりも高い抗ウイルス活性であって、ここで、該抗ウイルス活性はウイルスに誘導された細胞の溶解によって測定される、活性、(b)野生型インターフェロン−β−1aに対して、抗増殖活性よりも大きな抗ウイルス活性;(c)レセプター結合活性を含むが、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、該レセプター結合活性に対して、低められた抗ウイルス活性および低められた抗増殖活性を含む、活性、からなる群より選択される抗ウイルス活性を有する、融合タンパク質。
(項目26) 項目1、10および23に記載のインターフェロン−β融合タンパク質の治療的有効量を含む、薬学的組成物。
(項目27) 被験体において新脈管形成を阻害する方法であって、項目26に記載の組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目28) 前記変異体が誘導体化されている、項目3に記載の単離されたポリペプチド。
(項目29) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目27に記載の単離されたポリペプチド。
(項目30) 前記変異体が誘導体化されている、項目12に記載の単離されたタンパク質。
(項目31) 前記誘導体がポリアルキルグリコールポリマーである、項目29に記載の単離されたタンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヒスチジンタグ化インターフェロン−β融合物(「his IFN−β」または「His6−タグ化」(6×Hisは、配列番号63として開示される)とも呼ばれる)のcDNAおよび推定アミノ酸配列。his IFN−β−1aの全長DNA(配列番号3)およびタンパク質(配列番号4)配列が、示される。切断されたVCAM−1シグナル配列は、ヒスチジンタグ(His6(配列番号63)、4〜9位)の上流に3つアミノ末端残基(SerGlyGly)を残す。エンテロキナーゼリンカー配列(AspAspAspAspLys)(配列番号62)は、スペーサー(10〜12位、SerSerGly)によってヒスチジンから離れる。天然のIFN−β−1aタンパク質部分は、位置(Met18〜Asn183)に及ぶ。
【図2−1】インターフェロン−β−1a/Fc融合物のcDNAおよび推定アミノ酸配列。ヒトIFN−β−1a/マウスFcの全長DNA(配列番号1)およびタンパク質(配列番号2)配列が示される。ヒトIFN−β−1aタンパク質配列は、アミノ酸残基1〜166(DNA配列1〜498)に及ぶ。エンテロキナーゼリンカー配列は、アミノ酸残基167〜171(DNA配列499〜513)に及ぶ。マウスIgG2a重鎖タンパク質配列は、残基172〜399(DNA配列514〜437)に及ぶ。
【図2−2】インターフェロン−β−1a/Fc融合物のcDNAおよび推定アミノ酸配列。ヒトIFN−β−1a/マウスFcの全長DNA(配列番号1)およびタンパク質(配列番号2)配列が示される。ヒトIFN−β−1aタンパク質配列は、アミノ酸残基1〜166(DNA配列1〜498)に及ぶ。エンテロキナーゼリンカー配列は、アミノ酸残基167〜171(DNA配列499〜513)に及ぶ。マウスIgG2a重鎖タンパク質配列は、残基172〜399(DNA配列514〜437)に及ぶ。
【図3】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の、I型インターフェロンレセプター鎖の細胞外ドメインから構成されるダイマー融合タンパク質(IFNAR2/Fc)への結合。アラニン置換型IFN変異体(A1−E)のIFNAR2レセプター鎖に対する結合親和性を、実施例1に記載される通りに決定した(小節D)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらの結合親和性を示す(%w.t.)。この%w.t.値を、(野生型his−IFN−βの親和性)/(変異体IFN−βの親和性)×100として計算した。複数のアッセイ(n=3)についての%w.t.(x)および実験セットについての平均%w.t.(x)を、示す。変異体A2、AB1、AB2およびEは、野生型his−IFN−β EC50(*)よりも500倍高い濃度でIFNAR2/Fcを結合しなかった。
【図4】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の、Daudi Burkittリンパ腫細胞上に発現されるI型インターフェロン細胞表面レセプター複合体(「IFNAR1/2」複合体)への結合。アラニン置換型変異体(A1−E)のレセプター結合特性を、FACSに基づく、実施例1に記載されるような細胞表面レセプター結合アッセイを使用して決定した(小節D)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらのレセプター結合親和性を示す(%w.t.)。各変異体についての%w.t.を、(野生型his−IFN−βの親和性)/(変異体IFN−βの親和性)×100として計算した。このヒストグラムの下での複数のアッセイからの%w.t.値(白丸)および実験セットについての平均%w.t.値(x)を、示す。
【図5】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の抗ウイルス活性。アラニン置換型変異体(A1−E)の抗ウイルス活性を、実施例1に記載されるようにEMCウイルスを用いてチャレンジされたヒトA549細胞上で決定した(小節E)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらの活性を示す(%w.t.)。この%w.t.を、変異体IFN−βの濃度(50%cpe)/野生型his−IFN−βの濃度(50%cpe)×100の逆関数(inverse)として計算した。複数のアッセイについての%w.t.(白丸)および実験データセットについての平均(x)を、示す。
【図6】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の抗増殖活性。アラニン置換型変異体(A1−E)の抗増殖活性を、実施例1に記載されるようにDaudi Burkittリンパ腫細胞上で決定した(小節E)。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対するこのアッセイにおけるこれらの活性を示す(%w.t.)。この%w.t.を、(野生型his−IFN−βの濃度(50%増殖阻害))/変異体IFN−βの濃度(50%増殖阻害)×100として計算した。複数のアッセイについての%w.t.(白丸)および実験データセットについての平均(x)を、示す。
【図7】アラニン置換型インターフェロン−β変異体の相対的な抗ウイルス活性および抗増殖活性。抗ウイルスアッセイ(x軸)および抗増殖アッセイ(y軸)におけるアラニン置換型変異体(A1−E)の相対的活性を、比較した。図5および図6に示される野生型his−IFN−βの平均パーセント(%w.t.(x))を、この比較について使用した。活性において座標の損失/取得を伴うこれらの変異体は、垂線上かまたは垂線に非常に近くにある。抗ウイルス活性または抗増殖活性において不釣合いな損失/取得を伴うこれらの変異体は、対角線から有意に低下する(DE1、D、C1)。有意性を、使用される平均%w.t.値に固有な標準偏差を考慮して決定した。
【図8】(インターフェロン−β−1a/Ig融合物の抗ウイルス活性)図8は、X軸に示される濃度でインターフェロン−β−1a(AVONEX(登録商標)として使用される)またはインターフェロン−β−1a/マウスIg2a融合物の活性を、EMCウイルスでチャレンジしたヒト肺癌腫細胞(A549)を用いた抗ウイルスアッセイにおいて評価した。ウイルスとともに2日間インキュベートした後に、生存細胞をMTTで染色し、プレートを450nmで読みとり、そして吸光度(細胞生存性を反映している)をY軸に示す。標準偏差をエラーバーで示す。提供されたインターフェロン−β−1a(AVONEX(登録商標)バルク中間体として使用される)の濃度(最大OD450の50%)、従って50%のウイルス殺傷(「50%細胞変性効果」)は、約0.4pMであり、そしてインターフェロン−β−1a融合物の50%細胞変性効果は約0.15pMであった。
【図9】(インターフェロン−β−1a/Fc融合物またはインターフェロン−β−1aで処置したマウスの血漿におけるインターフェロン−β抗ウイルス活性の測定)50,000ユニットのインターフェロン−β−1a(AVONEX(登録商標)バルク中間体として使用される)または50,000ユニットのインターフェロン−β−1a/Fc融合物のいずれかを、マウスにiv注射した。これらのマウスからの血液を、X軸に示されたインターフェロン注射して種々の時間の後に、眼窩採血することにより得た。各時点で少なくとも3匹のマウスから採血し、そして血漿を調製し、そしてインターフェロン−β活性を脳心筋炎ウイルスでチャレンジしたヒト肺癌腫細胞(A549)を使用する抗ウイルス性アッセイにおいて評価するときまで凍結した。生存細胞をMTTの溶液で染色し、プレートを450nmで読みとって、吸光度(細胞生存性およびインターフェロン−β活性を反映する)を決定した。標準曲線を、インターフェロン−β−1aをAVONEX(登録商標)として使用した各プレートについて生成し、そしてこの標準曲線を用いて各サンプルにおけるインターフェロン−β活性の量を測定した。個々の動物のデータを示す。
【図10A】ヒトIFNβおよびヒトIgG1Fcの直接融合物(ZL5107)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図10B】ヒトIFNβおよびヒトIgG1Fcの直接融合物(ZL5107)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図10C】ヒトIFNβおよびヒトIgG1Fcの直接融合物(ZL5107)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図11A】ヒトIFNβ/G4Sリンカー/ヒトIgG1Fcからなる融合タンパク質(ZL6206)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図11B】ヒトIFNβ/G4Sリンカー/ヒトIgG1Fcからなる融合タンパク質(ZL6206)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図11C】ヒトIFNβ/G4Sリンカー/ヒトIgG1Fcからなる融合タンパク質(ZL6206)のオープンリーディングフレームの全長DNA配列およびタンパク質配列。
【図12】図12は、全体のクローニングストラテジーおよび発現ストラテジーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
詳細な説明において引用される全ての参考文献は、他に規定されない限り、本明細書中に参考として援用される。以下の用語が本明細書中で使用される。
【0016】
(I.定義)
インターフェロン−「インターフェロン」(「IFN」とも称される)は、ウイルス、ポリペプチド、マイトジェンなどのような種々のインデューサーへの曝露に応答して、哺乳動物細胞によって産生される、小さな種特異的一本鎖ポリペプチドである。本発明で使用される最も好ましいインターフェロンは、グリコシル化されたヒトインターフェロン−βであり、これは残基80(Asn80)でグリコシル化され、そして好ましくは、組換えDNA技術を介して誘導される。この好ましいグリコシル化されたインターフェロン−βは、「インターフェロン−ベータ−1a」または「INF−ベータ−1a」または「IFN−β−1a」または「インターフェロンベータ1a」または「インターフェロン−β−1a」または「インターフェロン−β−1a」と呼ばれ、これらは全て、交換可能に使用される。用語「INF−ベータ−1a」はまた、その変異体もまた、Asn80残基でグリコシル化されるならば全ての変異形態を包含することを意味する(すなわち、実施例1)。
【0017】
タンパク質(インターフェロンを含む)を産生するための組換えDNA方法は、公知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第5,149,636号、同第5,179,017号(Axelら)および同第4,470,461号(Kaufman)を参照のこと。
【0018】
本発明の方法において使用され得る好ましいインターフェロン−β−1aポリヌクレオチドは、様々な脊椎動物(好ましくは、哺乳動物)の野生型インターフェロンβ遺伝子配列に由来し、そして以下の米国特許において記載される方法のような、当業者に周知の方法を使用して得られる:米国特許第5,641,656(1997年6月24日発行:DNA encoding avian type I interferon proprotein and mature avian type I interferon)、米国特許第5,605,688号(1997年2月25日:recombinant dog and horse type I interferons);米国特許第5,231,176号(1993年7月27日、DNA molecule encoding a human leukocyte interferon);米国特許第5,071,761号(1991年12月10日、DNA sequence coding for sub−sequences of human lymphoblastoid interferons LyIFN−alpha−2 and LyIFN−alpha−3);米国特許第4,970,161号(1990年11月13日、DNA sequence coding for human interferon−gamma);米国特許第4,738,931号(1988年4月19日、DNA containing a human interferon beta gene);米国特許第4,695,543号(1987年9月22日、human alpha−interferon Gx−1 gene)および米国特許第4,456,748号(1984年6月26日、DNA encoding sub−sequences of different, naturally, occurring leukocyte interferons)。
【0019】
インターフェロン−β−1aの変異体は、本発明に従って使用され得る。変異体は、当業者に公知の、特異的変異誘発の従来の方法を使用して開発される。さらに、本発明は、機能的に等価なインターフェロン−β−1aポリペプチドをコードする機能的に等価なインターフェロン−β−1aポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
インターフェロン−β−1aをコードする第1のポリヌクレオチドは、それが、以下の条件の少なくとも1つを満たす場合、インターフェロン−β−1aをコードする第2のポリヌクレオチドと比較して、「機能的に等価」である:
(a)「機能的等価物」が、標準的なハイブリダイゼーション条件下で第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズし、そして/または第1のポリヌクレオチド配列へと縮重される、第1のポリヌクレオチドである。より好ましくは、それは、インターフェロン−β−1aの[治療的]活性を有する変異体インターフェロンをコードする;
(b)「機能的等価物」が、第2のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列についての発現をコードする第1のポリヌクレオチドである。
【0021】
要約すると、用語「インターフェロン」は、上記に列挙された薬剤ならびにそれらの機能的等価物を含むが、これらに限定されない。それゆえ、本明細書中で使用される場合、用語「機能的等価物」とは、機能的等価物とみなされているインターフェロンと、哺乳動物レシピエントに対して同じかもしくは改良された有益な効果を有するインターフェロン−β−1aタンパク質、またはそのインターフェロン−β−1aタンパク質をコードするポリヌクレオチドをいう。当業者に明らかなように、機能的に等価なタンパク質は、組換え技術によって、例えば、「機能的に等価なDNA」を発現することによって、産生され得る。従って、本発明は、天然に存在するDNAによってコードされるインターフェロン−β−1aタンパク質、ならびに天然に存在するDNAによってコードされるのと同じタンパク質をコードする天然には存在しないDNAによってコードされるインターフェロン−β−1aを包含する。配列をコードするヌクレオチドの縮重に起因して、他のポリヌクレオチドは、インターフェロン−β−1aをコードするために使用され得る。これらは、配列内の同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変更され、従ってサイレント変化が産生される、上記の配列の全てまたは部分を含む。このような変更された配列は、これらの配列の等価物とみなす。例えば、Phe(F)は、2つのコドン(TTCまたはTTT)によってコードされ、Tyr(Y)は、TACまたはTATによってコードされ、そしてHis(H)は、CACまたはCATによってコードされる。反対に、Trp(W)は、単一のコドンTGGによってコードされる。従って、特定のインターフェロンをコードする所定のDNA配列について、それをコードする多くのDNA縮重配列が存在することが理解される。これらの縮重DNA配列は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0022】
「融合」とは、それらの個々のペプチド骨格を介する、最も好ましくは、それらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通じての、2つ以上のタンパク質またはそのフラグメントの共線状(co−lnnear)の共有結合をいう。タンパク質またはそのフラグメントが異なる供給源に由来することが好ましい。従って、好ましい融合タンパク質は、インターフェロンではない第2の部分に共有結合されたインターフェロン−β−1aのタンパク質またはフラグメントを含む。詳細には、「インターフェロン−β/Ig融合物」は、N末端またはC末端が、免疫グロブリン鎖のN末端に連結された本発明のインターフェロン−β分子(すなわち、インターフェロン−β−1a)またはそのフラグメントを含むタンパク質であり、ここで免疫グロブリンのN末端の部分は、インターフェロン−βと置換される。インターフェロン−β/Ig融合物の種は、免疫グロブリンの定常ドメインの少なくとも一部に連結した、本発明のインターフェロンβ分子(すなわち、インターフェロン−β−1a)を含むタンパク質である「インターフェロン−β/Ig融合物」である。好ましいFc融合物は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントに連結された、本発明のインターフェロンβ分子を含む。
【0023】
また、用語「融合タンパク質」は、インターフェロンβタンパク質ではなく、かつ以下に記載のように精製タンパク質から新規に作製される第2の部分に、モノ官能化分子またはヘテロ官能化分子を介して化学的に連結されるインターフェロンβタンパク質を意味する。
【0024】
「組換え」とは、本明細書中で使用される場合、タンパク質が、組換え哺乳動物発現系から誘導されることを意味する。ほとんどの細菌培養(例えば、E.coli)において発現されるタンパク質は、グリカンを含まないので、これらの発現系は好ましくない。酵母において発現されるタンパク質は、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるオリゴサッカリド構造を有し得る。
【0025】
「生物学的に活性」とは、インターフェロン−β 1aの特徴として本明細書を通じて使用される場合、特定の分子が、実施例1(以下を参照こと)に示される型のインビトロ抗ウイルスアッセイにおいて測定されるような抗ウイルス活性を可能にするに十分な、本明細書中に開示される本発明の形態とのアミノ酸配列相同性を共有することを意味する。
【0026】
「治療用組成物」とは、本明細書中で使用される場合、本発明のタンパク質および他の生理学的に適合可能な成分を含む、として規定される。治療用組成物は、賦形剤(例えば、水、ミネラル、およびタンパク質のようなキャリア)を含み得る。
【0027】
「アミノ酸」−ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のモノマー単位。天然に存在するペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に見出される20のアミノ酸が存在し、それらの全ては、L型異性体である。この用語はまた、これらのアミノ酸のアナログならびにこれらのタンパク質アミノ酸のD型異性体およびそのアナログを含む。
【0028】
「誘導体化」アミノ酸は、天然または非天然アミノ酸であり、ここでは、通常存在する側鎖または末端基(インターフェロン−β−1aの場合では糖部分)が、化学反応によって改変される。このような改変としては、例えば、以下が挙げられる:γ−カルボキシル化、β−カルボキシル化、PEG化、硫酸化、スルホン化、リン酸化、アミド化、エステル化、N−アセチル化、カルボベンジル化(carbobenzylation)、トシル化、および当該分野で公知の他の改変。「誘導体化ポリペプチド」は、1つ以上の誘導体化アミノ酸および/または1つ以上の誘導体化糖部分(このポリペプチドがグリコシル化されている場合)を含むポリペプチドである。
【0029】
「タンパク質」−本質的に20のアミノ酸のいずれかからなる任意のポリマー。「ポリペプチド」は、しばしば、比較的大きいポリペプチドに関して使用されるが、「ペプチド」は、しばしば小ポリペプチドに関して使用され、当該分野におけるこれらの用語の使用頻度は重複し、そして変動する。用語「タンパク質」とは、本明細書中で使用される場合、他に注記されなければ、ペプチド、タンパク質およびポリペプチドをいう。
【0030】
アミノ酸残基の「機能的に等価物」は、機能的等価物により置換されたアミノ酸残基と類似の物理化学的特性を有するアミノ酸である。
【0031】
「変異体」−生物の遺伝物質における任意の変化、特に、野生型ポリヌクレオチド配列における任意の変化(すなわち、欠失、置換、付加または改変)または野生型タンパク質における任意の変化。用語「ムテイン」は、「変異体」と交換可能に使用される。
【0032】
「野生型」−通常にはインビボで存在するような、天然に存在する、それぞれ、タンパク質のエキソンのポリヌクレオチド配列もしくはその部分、またはタンパク質配列もしくはその部分。
【0033】
「標準的なハイブリダイゼーション条件」−ハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方に関して、0.5×SSC〜約5×SSCおよび65℃に実質的に等価な塩および温度条件。従って、本明細書中で使用される場合、用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、操作の規定であり、そしてハイブリダイゼーション条件の一定範囲を包含する。より高いストリンジェンシー条件としては、例えば、プラークスクリーン緩衝液(0.2% ポリビニルピロリドン、0.2% Ficoll 400TM;0.2%ウシ血清アルブミン、50mM Tris−HCl(pH7.5);1M NaCl;0.1% ピロリン酸ナトリウム;1% SDS);10% 硫酸デキストラン、および100μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNAを用いた65℃で12〜20時間のハイブリダイゼーション工程、ならびに75mM NaCl/7.5mM クエン酸ナトリウム(0.5×SSC)/1% SDSを用いた65℃での洗浄工程が挙げられ得る。より低いストリンジェンシー条件としては、例えば、プラークスクリーン緩衝液、10% 硫酸デキストランおよび110μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNAを用いた55℃で12〜20時間のハイブリダイゼーション工程、ならびに300mM NaCl/30mM クエン酸ナトリウム(2×SSC)/1% SDSを用いた55℃での洗浄工程が挙げられ得る。Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.New York,第6.3.1〜6.3.6節(1989)もまた参照のこと。
【0034】
「発現制御配列」−遺伝子に作動可能に連結された場合にそれらの遺伝子の発現を制御および調節するポリヌクレオチド配列。
【0035】
「作動可能に連結される(た)」−ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)は、発現制御配列がポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御および調節する場合に、発現制御配列に作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される(た)」は、発現されるポリヌクレオチド配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、発現制御配列の制御下でのこのポリヌクレオチド配列の発現、およびこのポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの生成を可能にするように正しいリーディングフレームを維持することを含む。
【0036】
「発現ベクター」−発現ベクターが宿主細胞に導入される場合には、少なくとも1つの遺伝子の発現を可能にする(他の一般的例の中でも)ポリヌクレオチド(例えば、DNAプラスミドまたはファージ)。このベクターは、細胞中で複製され得てもよいし、複製され得なくてもよい。
【0037】
「単離される(た)」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)−ポリペプチドをコードする核酸(すなわち、ポリヌクレオチド配列)に適用される場合には、RNAまたはDNAのポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの一部、cDNAまたは合成ポリヌクレオチドを意味する。これらは、その起源または操作により:(i)天然に関連している全てのポリヌクレオチドと関連していない(例えば、発現ベクターとして宿主細胞に存在するポリヌクレオチドまたはその一部);あるいは(ii)天然に連結しているのではなく、核酸または他の化学的部分に連結している;あるいは(iii)天然に存在しない。「単離される(た)」によって、(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増幅される;(ii)化学合成される;(iii)クローニングにより組換え生成される;または(iv)切断およびゲル分離により精製される、ポリヌクレオチド配列がさらに意味される。
【0038】
従って、「実質的に純粋な核酸」は、核酸が由来している生物の天然に存在するゲノムにおいて通常は連続しているコード配列の一方または両方とはすぐに連続していない核酸である。実質的に純粋なDNAはまた、さらなる配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0039】
「単離される(た)」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)−ポリペプチドに対して適用される場合には、ポリペプチドまたはその一部を意味し、これらは、その起源または操作により:(i)発現ベクターの一部の発現産物として宿主細胞に存在する;または(ii)天然に連結しているのではなく、タンパク質または他の化学的部分と連結している;または(iii)天然に存在しない。「単離される(た)」によって、(i)化学合成される;または(ii)宿主細胞において発現され、そして関連するタンパク質から精製される、タンパク質がさらに意味される。この用語は、一般には、他のタンパク質から分離しているポリペプチドおよび天然に存在する核酸を意味する。好ましくは、このポリペプチドはまた、精製するために使用される抗体またはゲルマトリクス(ポリアクリルアミド)のような物質から分離される。
【0040】
「異種プロモーター」−本明細書中で使用される場合は、遺伝子または精製された核酸と天然には関連しないプロモーターである。
【0041】
「相同(な)」−本明細書中で使用される場合は、用語「同一」と同義であり、そして2つのポリペプチド分子間または2つの核酸間の配列類似性をいう。2つの比較される配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットにより占有される場合(例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンにより占有されるか、または2つのポリペプチドの各々における位置がリジンにより占有される場合)、それぞれの分子は、その位置で相同である。2つの配列間の相同性パーセントは、2つの配列により共有される適合位置または相同な位置の数を比較された位置の数で割って100をかけた関数である。例えば、2つの配列間で10個の位置のうち6個が適合または相同である場合、2つの配列は60%相同である。例を挙げると、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTは、50%の相同性を共有する(計6個の位置のうち3個が適合している)。一般に、2つの配列が整列されて、最大の相同性が与えられた場合、比較が行われる。このような整列は、例えば、Needlmanら、J.Mol.Biol.48:443−453(1970)の方法を用いて提供され得、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)のようなコンピュータープログラムにより、簡便に実行され得る。相同な配列は、同一または類似のアミノ酸残基を共有し、ここで、類似の残基は、整列された参照配列における対応するアミノ酸残基の保存的置換または「許容された点変異」である。これに関して、参照配列における残基の「保存的置換」は、共有結合または水素結合を形成する能力などを含む、対応する参照残基に物理的または機能的に類似する(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性を有する)それらの置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら、5:Atlas of Protein Sequence and Structure,5:補遺3,第22章:354−352,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,D.C.(1978)における「受容される点変異」について規定される基準を満たす物である。
【0042】
用語「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」はまた、本明細書中で交換可能に使用される。
【0043】
用語「新生血管形成」および「新脈管形成」は、それらの最も広い意味において、新たな血管の増加を意味する。特に、「新脈管形成」はまた、腫瘍部位での新たな血管の増加をいう。
【0044】
「IFNAR2」、「IFNAR1」、「IFNAR1/2」とは、細胞表面I型インターフェロンレセプターを含むことが公知のタンパク質をいう。IFNAR2鎖の細胞外部分(外部ドメイン)は、単独で、インターフェロンαまたはインターフェロンβを結合し得る。
【0045】
本発明の実施は、他に示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、タンパク質化学、および免疫学の従来技術を利用する。これらの技術は、当業者の技術範囲内である。このような技術は、文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrook,FritschおよびManiatis編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;DNA Cloning,第I巻および第II巻(D.N.Glover編),1985;Oligonucleotide Synthesis,(M.J.Gait編),1984;米国特許第4,683,195号(Mullisら);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編),1984;Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編),1984;Culture of Animal Cells(R.I.Freshney編),Alan R.Liss,Inc.,1987;Immobilized Cell and Enzymes,IRL Press,1986;A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal),1984;Methods In Enzymology,第154巻および155巻(Wuら編),Academic Press,New York;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編),1987,Cold Spring Harbor Laboratory;Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(MayerおよびWalker編),Academic Press,London,1987;Handbook of Experiment Immunology,第I巻〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編),1986;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1986。
【0046】
(II.融合タンパク質の産生および発現)
本発明は、インターフェロンβ−1a融合タンパク質の産生についてのシステムに関する。特に、本発明は、これらのタンパク質ならびにこれらの産生において用いられる組換えDNA分子に関する。
【0047】
本発明のポリペプチドの産生は、当該分野において公知の種々の方法によって達成され得る。例えば、全長インターフェロンβ−1aまたはインターフェロンβ−1aの短縮形態が、cDNAを使用する公知の組換えDNA技法によって産生され得る(以下を参照のこと)。
【0048】
所望のインターフェロンβ−1aポリペプチドをコードする遺伝子は、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計され得る。標準の方法が、次いで、この遺伝子を合成するために適用され得る。例えば、このアミノ酸配列は、逆翻訳された(back−translated)遺伝子を構築するために使用され得る。インターフェロンβ−1aについてコードし得るヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーは、単一工程で作製され得る。あるいは、所望のインターフェロンβ−1aの一部をコードするいくつかのより小さなオリゴヌクレオチドが、合成され得、次いで、ともに連結される。好ましくは、インターフェロンβ−1a部分をコードするDNA配列が、いくつかの個々のオリゴヌクレオチドとして作製され、これらは、引き続いてともに連結される。実施例2を参照のこと。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的に、相補性構築のための5’突出または3’突出を含む。
【0049】
一旦構築されると、好ましい遺伝子は、制限エンドヌクレアーゼによって認識される配列(クローニングベクターまたは発現ベクターへの直接的構築のための固有の制限部位を含む)、使用される宿主発現系(好ましくは哺乳動物細胞)を考慮に入れる好ましいコドン、および転写される場合に、安定的に、効率的に転写されるRNAを産生する配列によって特徴付けられる。適切な構築は、ヌクレオチド配列決定、制限マッピング、および適切な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認され得る。
【0050】
哺乳動物インターフェロンβ cDNAは、交雑種(cross−speices)ハイブリダイゼーションにより特定の哺乳動物cDNAライブラリーをスクリーニングするために適切なプローブとして、適切なヒトインターフェロンβ
DNA配列を使用することによって単離され得る。本発明において使用される哺乳動物インターフェロンβには、例として、霊長類、ヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ウマおよびブタのインターフェロンβが挙げられる。哺乳動物インターフェロンβは、ヒトインターフェロンβ DNA配列から誘導される一本鎖cDNAを、哺乳動物cDNAライブラリーからインターフェロンβ cDNAを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用して、交雑種ハイブリダイゼーションによって得られ得る。インターフェロン遺伝子配列を単離およびクローニングするために使用され得る方法の中でも、とりわけ、上記で要約される米国特許において見られる方法である。しかし、ヒトインターフェロンβ遺伝子を含むDNAを記載する米国特許第4、738,931号(1988年4月19日)の教示が、特定の関連性がある。
【0051】
本発明はまた、上述のDNA配列を含む組換えDNA分子に関する。本発明の組換えDNA分子は、それで形質転換された宿主において、本発明のポリペプチドの発現を指向し得る。本発明の融合ポリペプチドをコードするDNA配列は、このような発現についての発現制御配列へ作動可能に連結されなければならない。本発明の組換え構築物の適切な転写を提供するために、プロモーター/発現制御配列が、グリコシル化インターフェロンβをコードするヌクレオチド配列の転写を駆動し得るならば、適切なプロモーター/エンハンサー配列が、好ましくは、組換えベクターへ組み込まれ得る。免疫グロブリンベースの融合タンパク質の発現を制御するために使用され得るプロモーターには、以下が挙げられるが、これらに制限されない:SV40初期プロモーター領域(BenoistおよびChambon、1981、Nature 290:304−310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamoamotoら、1980、Cell 22:787−797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:144−1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982、Nature 296:39−42);ノパリンシンターゼプロモーター領域を含む植物発現ベクター(Heerrera−Estrellaら、Nature 303:209−213)またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら、1981、Nucl.Acids Res.9:2871)、および光合成酵素リブロースビスリン酸(ribulose biphosphate)カルボキシラーゼについてのプロモーター(Herrera−Estrellaら、1984、Nature 310:115−120);酵母または他の真菌由来のプロモータエレメント(例えば、Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼ(phophatase)プロモーター)、および以下の動物の転写制御領域(これらは、組織特異性を示し、そして形質転換動物において利用されている):エラスターゼI遺伝子制御領域(これは、膵臓細胞で活性である)(Swiftら、1984、Cell 38:639−646;Ornitzら、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409;MacDonald、1987、Hepatology 7:425−515);インスリン遺伝子エンハンサーまたはプロモーター(これは、膵臓β細胞で活性である)(Hanahanm 1985、Nature 315:115−122);免疫グロブリン遺伝子エンハンサーまたはプロモーター(これは、リンパ系細胞で活性である)(Grosschedlら、1984、Cell 38:647−658;Adamesら、1985、Nature 318:533−538;Alexanderら、1987、Mol.Cell.Biol.7:1436−1444);サイトメガロウイルス初期プロモーター領域およびエンハンサー領域(Boshartら、1985、Cell 41:521−530);マウス乳腺癌ウイルス制御領域(これは、精巣細胞、乳房細胞、リンパ系細胞およびマスト細胞で活性である)(Lederら、1986、Cell 45:485−495);アルブミン遺伝子制御領域(これは肝臓で活性である)(Pinkertら、1987、GenesおよびDevel 1:268−276);αフェトプロテイン遺伝子制御領域(これは肝臓で活性である)(Krumlaufら、1985、Mol.Cell.Biol.5:1639−1648;Hammerら、1987、Science 235:53−58);α1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(これは肝臓で活性である)(Kelseyら、1987、GenesおよびDevel.1:161−171);βグロブリン遺伝子制御領域(これは、骨髄性細胞で活性である)(Mogramら、1985、Nature 315:338−340;Kolliasら、1986、Cell 46:89−94);ミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(これは、脳内の稀突起神経膠細胞で活性である)(Readheadら、1987、Cell 48:703−712);ミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(これは、骨格筋で活性である)(Sani、1985、Nature 314:283−286);ならびに性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(これは、視床下部で活性である)(Masonら、1986、Science 234:1372−1378)。LACまたはβラクタマーゼプロモーターのような原核生物の発現系(Villa−Kamaroffら、1978、Proc,Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727−3731)は、発現されるインターフェロンβがグリコシル化されないので、現在は、好ましくない。にもかかわらず、原核生物宿主または真核生物宿主のいずれかにおけるインターフェロンβのグリコシル化を可能にする原核生物の発現系は、本発明の範囲内に含まれる。
【0052】
使用され得る発現ベクターには、例をいくつか挙げると、以下のベクターまたはそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:ワクシニアウイルス、アデノウイルスまたはレトロウイルスベースのベクターのような、ヒトまたは動物のウイルス;バキュロウイルスのような昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、λ)、ならびにプラスミドおよびコスミドのDNAベクター。具体的には、好ましい真核生物宿主に有用な発現ベクターには、SV40、ウシパピローマウイルス属、サイトメガロウイルス由来の制御配列を含むベクターが挙げられる。さらに、各特定の発現ベクター内で、種々の部位が、これらのDNA配列の挿入について選択され得る。これらの部位は、通常、それらを切断する制限エンドヌクレアーゼによって命名される。これらは、当業者に、よく認識されている。本発明に有用な所定の発現ベクターが、選択されるDNAフラグメントの挿入のための制限エンドヌクレアーゼ部位を有する必要がないことが理解される。代わりに、ベクターは、代替の手段によってフラグントによって結合され得る。
【0053】
発現ベクター、選択されるDNAフラグメントの挿入および発現制御配列への作動可能な連結のために選択される部位は、種々の因子(例えば、特定の制御酵素に感受性の部位の数、ポリペプチドのサイズ、ポリペプチドがどれだけ容易にタンパク質分解的に分解されるかなど)によって決定される。所定のDNAについてのベクターおよび挿入部位の選択は、これらの因子のバランスによって決定される。
【0054】
本発明の組換え構築物は、形質転換(例えば、DEAEデキストラン技法またはリン酸カルシウム技法を使用する)、トランスフェクション、マイクロインジェクション、感染、細胞銃(cell gun)、およびエレクトロポレーションを含む当該分野で公知の任意の方法を使用して、融合タンパク質を発現し得る宿主細胞へ導入され得る。この融合タンパク質組換え核酸配列が、その細胞型においてmRNAに適切に転写され、そしてその細胞がタンパク質をグリコシル化し得る限り、任意の宿主細胞型が利用され得る。さらに、本発明の組換え核酸構築物は、免疫グロブリンベースの融合タンパク質を産生し得る非ヒトトランスジェニック動物を作製するために使用され得る。本発明の好ましい実施態様において、宿主細胞は、COS細胞またはCHO細胞のような哺乳動物細胞である。
【0055】
これらのポリペプチド構築物の所定の発現ベクターへの首尾良い組み込みは、3つの一般的なアプローチによって同定され得る:(a)DNA‐DNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、および(c)挿入される配列の発現。第1のアプローチにおいて、発現ベクターに挿入されるインターフェロンβ−1a遺伝子の存在は、挿入される融合タンパク質遺伝子に対して相同性である配列を含むプローブを使用する、DNA−DNAハイブリダイゼーションによって検出され得る。第2のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系は、ベクターの外来遺伝子の挿入によって引き起こされる特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、G418のような抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける閉塞体形成)の存在または非存在に基づいて、同定および選択され得る。例えば、ポリヌクレオチドが、ベクターのマーカー遺伝子配列を中断するように挿入される場合、この挿入物を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定され得る。第3のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、この組換えベクターによって発現される外来遺伝子産物をアッセイすることによって同定され得る。このようなアッセイは、例えば、バイオアッセイ系におけるこの遺伝子産物の物理的特性または機能的特性に基づき得る。
【0056】
全ての宿主/発現ベクターの組み合わせが、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を発現する際に等しい効率で機能するわけではないことが理解される。しかし、宿主−発現ベクター組み合わせの特定の選択が、本発明の範囲から逸脱することなしに、本明細書に記載される原理を十分に考慮した後、当業者によって実施され得る。
【0057】
本発明の好ましい実施態様は、融合タンパク質およびそれらをコードするDNA配列を意図する。これらの融合タンパク質は、インターフェロンβ−1aのアミノ酸配列によって特徴付けられるアミノ末端領域およびインターフェロンβ−1a以外のタンパク質のドメインを有するカルボキシ末端領域を有する。このようなタンパク質について好ましい一般式は、一次アミノ酸配列X−Y−Zを有するタンパク質であり、ここで、Xは、ヒトインターフェロンβのアミノ酸配列からなるアミノ酸配列、もしくはその部分を有するポリペプチドであり;Yは、任意のリンカー部分であり;そしてZは、ヒトインターフェロンβ以外のポリペプチドの少なくとも一部分を含むポリペプチドである。1つの実施態様において、部分Zは、免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチドの一部であり得る。このような他のポリペプチドの例は、CD1、CD2、CD4、ならびにクラスIおよびクラスII主要組織適合性抗原のメンバーを含む。このようなポリペプチドの例については米国特許第5,565,335号(Caponら)を参照のこと。
【0058】
部分Zには、例えば、複数のヒスチジン残基、好ましくは、免疫グロブリンのFc領域が挙げられ得、「Fc」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントとして本明細書で定義される。
【0059】
最も好ましい融合タンパク質において、インターフェロンβ−1aポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部分へ、そのC末端を介して融合される。インターフェロンβ−1aは、アミノ末端部分を形成し、そしてFc領域は、カルボキシ末端部分を形成する。これらの融合タンパク質において、Fc領域は、好ましくは、定常ドメインヒンジ領域ならびにCH2およびCH3ドメインに限定される。これらの融合体におけるFc領域はまた、ヒンジ領域の一部分(この部分は、分子間ジスルフィド結合を形成し得る)、ならびにCH2およびCH3ドメイン、またはそれらの機能的等価物へ限定され得る。これらの定常領域は、任意の哺乳動物供給源(好ましくは、ヒト)から誘導され得、そして任意の適切なクラスおよび/またはアイソタイプ(IgA、IgD、IgM、IgEならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)から誘導され得る。
【0060】
Ig融合体をコードする組換え核酸分子は、当該分野で公知の任意の方法によって得られるか(Maniatisら、1982、Molcular Cloning;A Laboratory Manual,Cold Spring Habor,N.Y.)、または公共的に入手可能なクローンから得られ得る。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の定常領域をコードする遺伝子の調製のための方法が、例えば、Robinson,R.ら、PCT出願公開番号WO87−02671によって教示される。インターフェロン分子またはフラグメントをコードするcDNA配列は、重鎖Ig定常領域をコードするcDNAへ直接連結され得るか、またはリンカー配列を介して連結され得る。本発明のさらなる実施態様において、組換えベクター系が、合成ヒンジ領域を有する正しい読み枠においてインターフェロンβをコードする配列を収容するに作製される。さらに、組換えベクター系の一部として、RNA切断部位/ポリアデニル化部位ならびに下流配列を含む、免疫グロブリン遺伝子の3’隣接領域に対応する核酸を含むことが、所望され得る。さらに、組換えベクターで形質転換された細胞からの融合分子の分泌を促進するように、免疫グロブリン融合タンパク質をコードする配列の上流にシグナル配列を操作することが所望であり得る。
【0061】
本発明は、二量体融合分子ならびに融合タンパク質を含む単量体分子または多量体分子を提供する。このような多量体は、例えばIgM五量体またはIgA二量体のような通常は多量体であるIg分子のFc領域もしくはその一部を使用して産生され得る。J鎖ポリペプチドが、IgM五量体およびIgA二量体を形成し、そして安定化するために必要とされ得ることが理解される。あるいは、インターフェロンβ−1a融合タンパク質の多量体が、Ig分子のFc領域についての親和性を有するタンパク質(例えば、プロテインA)を使用して、形成され得る。例えば、複数のインターフェロンβ−1a/免疫グロブリン融合タンパク質が、プロテインA−アガロースビーズへ結合され得る。
【0062】
これらの多価形態は、これらが複数のインターフェロンβレセプター結合部位を有するので、有用である。例えば、2価可溶性インターフェロンβ−1aは、リンカー領域(部分Y)によって分離される、配列番号2のアミノ酸1〜166の2つの縦列反復(または、配列番号1の1〜498で番号付けられる核酸によってコードされるもの)(一般式におけるX部分)からなり得、これらの反復は、免疫グロブリン定常ドメイン(部分Z)の少なくとも一部分に結合される。代替の多価形態はまた、例えば、インターフェロンβ−1a/Ig融合体を、従来の結合技法を使用して、臨床的に受容可能なキャリア分子、Ficoll、ポリエチレングリコールまたはデキストランからなる群から選択されるポリマーへ化学的に結合することによって構築され得る。あるいは、インターフェロンβ−1aは、ビオチンへ化学的に結合され得、そしてこのビオチンインターフェロンβ Fc結合体は、次いで、アビジンへ結合され、4価のアビジン/ビオチン/インターフェロンβ分子を生じる。インターフェロンβ−1a/Ig融合体がまた、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)へ共有結合され得、そして得られた結合体は抗−DNPまたは抗−TNP−IgMで沈殿され、インターフェロンβレセプター結合部位について10個の価数を有する十量体結合体を形成する。
【0063】
本発明のインターフェロンβ−1aタンパク質、フラグメント、および融合タンパク質が、従来の条件(例えば、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動など)に従って、単離され、そして精製され得る。例えば、インターフェロンタンパク質およびフラグメントは、その上に固定されたインターフェロンレセプターを有するカラムを通してその溶液を通過させることによって精製され得る(米国特許第4,725,669号を参照のこと)。結合されたインターフェロン分子は、次いで、カオトロピック塩での処理によってまたは酢酸水溶液での溶出によって溶出され得る。免疫グロブリン融合タンパク質は、融合タンパク質を含む溶液を、固定されたプロテインAまたはプロテインG(これは、融合タンパク質のFc部分を選択的に結合する)を含むカラムを通過させることによって精製され得る。例えば、Reis,K.J.ら、Immunol.132:3098−3102(1984);PCT出願公開WO87/00329を参照のこと。次いで、キメラ抗体が、カオトロピック塩での処理または酢酸水溶液での溶出によって溶出され得る。
【0064】
あるいは、インターフェロンタンパク質と免疫グロブリンの融合分子が、抗インターフェロン抗体カラムで、または抗免疫グロブリン抗体カラム上で精製され、実質的に純粋なタンパク質が得られ得る。用語「実質的に純粋な」によって、タンパク質が、それと天然で結合する不純物を含まないことが意図される。実質的純度は、電気泳動による単一バンドによって実証され得る。
【0065】
本発明の有用なインターフェロンβ−1a/Ig融合タンパク質の例は、配列番号2のものであり、これは、発現プラスミド中CMGp261を含む真核生物細胞によって細胞培養物中へ分泌される(実施例2を参照のこと)。このタンパク質は、マウスIgのヒンジ領域ならびにCH2およびCH3定常ドメインの部分へ融合した成熟ヒトインターフェロンβ−1aから構成される。これは、Fc結合タンパク質であるプロテインAによって認識されるに十分なマウス免疫グロブリンの部分を含む。
【0066】
ヒトインターフェロンβ−1aを組み込む本発明の他の融合タンパク質が、以下に示される:(a)hisタグ化インターフェロンβ−1a融合体のcDNAおよび推定アミノ酸配列それぞれについての、配列番号3および4(図1にも示される)ならびに;(b)配列番号2のインターフェロンβ−1a/Ig融合タンパク質をコードするcDNAについての配列番号1(図2にも示される)。
【0067】
本発明の好ましいインターフェロンβ−1aタンパク質は、新規の「接合部」DNA配列 配列番号5およびアミノ酸 配列番号6を含む。配列番号5は、ヒトインターフェロンβDNAとヒト免疫グロブリン定常領域との間の接合部の両側上の11個のトリプレットコドンを示す(例えば、実施例5:配列番号41および42)。詳細には、配列番号5において、ヒトインターフェロンβ−1aをコードするDNAは、ヌクレオチドトリプレット568−570(AAC)で終結し、そしてヒトIgG1定常領域をコードするDNAは、配列番号41のヌクレオチド番号574で始まるトリプレット(GAC)で開始する。対応する推定アミノ酸「接合部」配列は、配列番号6に示され、そして配列番号42に基づく。最終DNA構築物内にリンカー配列を含む別の固有の「接合部」配列が、規定される(例えば、実施例5:配列番号43および44を参照のこと)。この「接合部」DNAおよびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7および8に示され、これは、インターフェロンβ−1a配列の末端(配列番号43内のヌクレオチド番号570)とリンカー配列(配列番号43内のヌクレオチド571〜585;配列番号8内のGGGGS(配列番号64))との間の直接的接合部の両側上の11個のトリプレットコドンを示す。
【0068】
DNA「接合部」配列は、DNAプローブとして使用され得、そして任意のインターフェロンβ−1a/Ig融合タンパク質をコードする任意のDNA配列に対する標準的条件下でのハイブリダイゼーションのために必要とされる最小のDNAであり得る。にもかかわらず、プローブ全体が、接合部の両方の側にハイブリダイズし、そしてインターフェロンβ/定常領域接合部の両方の側が、ハイブリダイゼーションに関与する場合、より小さな配列が存在し得る。さらに、当業者は、配列番号5または7よりも長いDNA配列も同様にハイブリダイゼーションに適切であることを理解する。当業者は、配列番号5または7のような特定のプローブが、ポリヌクレオチドキナーゼを使用して適切に標識されたATPのリン酸を用いて、一本鎖センスオリゴヌクレオチドまたは一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかの5’末端を標識することによって、接合部の両側でハイブリダイズし得るかどうかを試験し得る。本発明の配列は、両方のオリゴヌクレオチドプローブへハイブリダイズしなければならず、従って両方のオリゴヌクレオチドプローブによって標識されなければならない。本発明が、接合部 配列番号5または7をコードする配列を完全に変性することを包含することがさらに理解される。
【0069】
(III.インターフェロン融合ポリペプチドの他の改変体)
本発明のタンパク質の誘導体はまた、生物学的活性を保持する主要なタンパク質の種々の構造形態を含む。イオン化可能なアミノ基およびイオン化可能なカルボキシル基の存在に起因して、例えば、インターフェロンβ融合タンパク質は、酸性塩もしくは塩基性塩の形態であり得るか、または中性形態であり得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化または還元により改変され得る。さらに、1次アミノ酸構造(N末端および/またはC末端を含む)またはインターフェロン−β−1aのグリカンは、他の化学的部分、例えばグリコシル基、ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG:同時係属中でかつ同一人に譲渡された出願連続番号60/104,491および60/120,237を参照のこと)、脂質、ホスフェート、アセチル基などともに共有結合体もしくは凝集結合体を形成することによるか、またはアミノ酸配列変異体を作製することにより改変(誘導体化)され得る。
【0070】
インターフェロンβ/Igの他の誘導体は、例えば付加的N末端またはC末端のような組換え培養による合成によって、インターフェロンβまたはそのフラグメントと他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合体または凝集結合体を含む。例えば、この結合体化ペプチドは、細胞膜または細胞壁の内側または外側のその合成部位からその機能部位へのこのタンパク質の移動を翻訳と同時か、または翻訳後に方向付ける(例えば、酵母α因子リーダー)タンパク質のN末端領域のシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であり得る。インターフェロンβレセプタータンパク質は、インターフェロンβ(例えば、ヒスチジン/インターフェロンβ−1a融合体)の精製または同定を容易にするため付加されるペプチドを含み得る。インターフェロンβのアミノ酸配列はまた、ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号61)と連結され得る(Hoppら、Bio/Technology 6:1204、1988)。後者の配列は、高度に抗原性であり、そして特異的モノクローナル抗体により可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現される組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。この配列はまた、ウシ粘膜エンテロキナーゼにより、Asp−Lys対の直後の残基において特異的に切断される。
【0071】
他のアナログは、単離されたタンパク質の生物学的活性を無効にしない、1つ以上の保存的アミノ酸置換または1つ以上の非保存的アミノ酸置換、もしくは欠失または挿入によって、配列番号2、4、6または8に示される配列とはインターフェロンβの配列が異なるインターフェロンβ融合Fcタンパク質またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。代表的に、保存的置換は、類似する特徴を有する別のアミノ酸に対する1つのアミノ酸の置換を含み、例えば、以下の群の中での置換である:バリン、アラニン、およびグリシン;ロイシンおよびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびトレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性疎水性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。他の保存的置換は、当業者に容易に知られ得る。例えば、アミノ酸であるアラニンに対して、保存的置換は、D−アラニン、グリシン、β−アラニン、L−システイン、およびD−システインのいずれか1つから選択され得る。リジンに対して、置換は、D−リジン、アルギニン、D−アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D−メチオニン、オルニチンまたはD−オルニチンのいずれか1つであり得る。一般的に、単離されたポリペプチドの機能的特性における変化を誘導することが予期され得る置換は、以下の置換である:(i)極性残基(例えば、セリンまたはトレオニン)が、疎水性残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンまたはアラニン)に対して(または、によって)置換される置換;(ii)システイン残基が、任意の他の残基に対して(または、によって)置換される置換;(iii)正に帯電した側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニンまたはヒスチジン)が、負に帯電した側鎖を有する残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)に対して(または、によって)置換される置換;または(iv)かさばる側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が、そのような側鎖を有しない残基(例えば、グリシン)に対して(または、によって)置換される置換。対立遺伝子改変体、天然の変異体、誘導された変異体、高または低ストリンジェンシーな条件下において配列番号2、4、6または8のようなポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質である、単離された分子は、本発明に含まれる。
【0072】
本発明者らは、本発明のインターフェロン−β−1a部分のさらなる改変体であるインターフェロン−β−1a変異体を開発した。これらのインターフェロン−β−1a部分は、野生型インターフェロン−β−1aにおいては見受けられない新規の特性を示すので特に有用であり得る(実施例1を参照のこと)。手短に言うと、本発明者らは、活性およびレセプター結合のために必要とされる残基をマッピングする目的でヒトインターフェロン−β−1aの変異分析を行った。ヒトインターフェロン−β−1aの3−D結晶構造(Karpusasら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818を参照のこと)の入手可能性は、本発明者らが、アラニン(またはセリン)置換に対して、インターフェロンβレセプター相互作用のために利用可能な溶媒に曝露された残基を同定することを可能とし、そして分子内結合に関与するアミノ酸を保持することを可能にする。15個のアラニンスキャニング変異のパネルを設計した。このパネルでは、インターフェロン−β−1aのヘリックス(A、B、C、D、E)およびループ(AB1、AB2、AB3、CD1、CD2、DE1、DE2)の各々の異なる領域に沿って2と8との間の残基を置換した。実施例1を参照のこと。
【0073】
アミノ末端ヒスチジンタグ(「his」タグ)は、変異体を発現した哺乳動物細胞のアフィニティー精製のために包含された(配列番号2:図1)。これらの変異の機能的重要性を、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおいて評価した。非放射性結合アッセイを、インターフェロンβ細胞表面レセプター(IFNAR1/2細胞表面レセプター)に対する変異体の結合についてこれらの変異体を分析するために開発した。さらに、インターフェロンを結合させるためにIFNAR2−外部ドメイン(ectodomain)/Fc融合タンパク質を使用するELISEベースのアッセイを使用して、インターフェロン−β−1aとIFNAR2との間の表面の相互作用をマッピングした(実施例1を参照のこと)。これらの変異分析は、N末端およびC末端が、インターフェロン−β分子の、レセプター結合または生物学的機能に重要ではない部分に存在することを実証した。
【0074】
本発明者らは、標的化変異誘発によって引き起こされた3つの型の効果を同定した。これらの効果は、特定の状況下において、インターフェロン薬物開発のために有利であり得る。3つの型の効果は、以下の通りである:(a)his野生型インターフェロン−β−1aの抗ウイルス活性よりも高い抗ウイルス活性を有する変異体(例えば、変異体C1);(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイの両方において活性を示す変異体であるが、これについての抗増殖活性が、his野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗ウイルス活性に関して不釣合いに低い、変異体(例えば、変異体C1、DおよびDE1);および(C)機能的アンタゴニスト(例えば、A1、B2、CD2およびDE1)、これは、his野生型インターフェロン−β−1aと比較して、レセプター結合に関して不釣合いに低い、抗ウイルス活性および抗増殖活性を示す。
【0075】
さらに、インターフェロン−β−1a部分(X)と第2の非インターロイキン−β−1a部分Z(例えば、免疫グロブリンのFc領域)との間のカップリングはまた、免疫グロブリンおよびインターフェロン−β−1aがそれぞれその活性を保持する限り、この2つの分子を一緒に結合する任意の化学反応によりもたらされ得る。この化学的連結は、多くの化学機構(例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合(coordinate binding)および錯体形成)を含み得る。インターフェロン−β−1a部分と免疫グロブリン部分との間の共有結合を発達させるための代表的なカップリング剤(すなわち、一般式におけるリンカー「Y」)は、例えば、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート(例えば、トリレン(tolylene)−2,6−ジイソシアネート)、グルテルアルデヒド(gluteraldehyde)、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミン(例えば、ビス−(p−ジアゾニウム−ベンゾイル)−エチレンジアミン、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピンイミデート(dimethyl adipimidate))およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)のような有機化合物を含み得る。このリストは、当該分野において公知の種々のクラスの化学カップリング剤を網羅していることを意図しない。これらの多く、例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プローブピオネート(SPDP)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボイミドヒドロクロリド(EDC);4−スクシニミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(SMPT:Pierce Chem.Co.,Cat.#21558G)は、市販されている。
【0076】
(IV.本発明の有用性)
本発明の融合タンパク質は、インターフェロンβ治療が求められるときはいつでも、治療的組成物において使用され得る。これらの分子は、融合タンパク質、特にIg融合体と関連する通常の利点(すなわち、変更された薬物動力学および薬力学)を有し、増加した半減期および血管系における増加した残留時間を導く。さらに、特に好ましいグリコシル化インターフェロン−β−1aタンパク質は、インターフェロンβ1bと構造が類似しているが、非グリコシル化インターフェロンβ1bよりも何倍も生物学的活性が大きい。Runkelら、1998、Pharm.Res.15:641−649を参照のこと。
【0077】
本発明の産物は、治療的インターフェロン−β1aの半減期を維持する際に有用であることが見出されており、そして例えば、水または受容可能な液体媒体に希釈することにより、治療的投与のために調製され得る。投与は、非経口経路、エアロゾル経路または経口経路のいずれかによってである。微細コロイド性懸濁液は、蓄積(depot)効果を産生するために非経口投与のために調製され得るか、または他方、経口経路によっては、エアロゾル処方物は、事実上、液体または乾燥粉末であり得る。乾燥した凍結乾燥状態において、または溶液処方物において、本発明のインターフェロン−β−1a融合体は、良好な貯蔵安定性を有するはずである。
【0078】
本発明の治療タンパク質は、インターフェロン−β−1a構成成分が有効である任意の状態もしくは疾患状態の予防もしくは処置のために利用され得る。さらに、本発明の融合タンパク質は、生物学的系または検体における構成成分、状態または疾患状態の診断において利用され得、ならびに非生理学系における診断目的のために、利用され得る。
【0079】
治療的用法において、本発明は、そのような状態または疾患状態を有するか、もしくは潜在的に感受性であり、かつそのような処置を必要としている動物被験体を処置する方法を意図し、この方法は、そのような動物に、上記状態または疾患状態に治療的に有効である本発明の有効量の融合タンパク質を投与する工程を包含する。本発明の融合体により処置されるべき被験体は、哺乳動物被験体を含み、そして最も好ましくはヒト被験体を含む。闘われるべき特定の状態または疾患状態に依存して、当該分野の技術範囲内で容易に決定され得るように、過度の実験を伴わずに、動物被験体は、治療的に有効かつ安全な任意の適切な投薬量において本発明のインターフェロン−β−1a融合タンパク質を投与され得る。インターフェロンI型の種障壁という理由により、適切な種由来のインターフェロンを用いて本明細書中に記載されるようなインターフェロン融合タンパク質を産生することが必要であり得る。
【0080】
インターフェロン−β−1aの抗細胞増殖活性は、周知である。詳細には、本明細書中に記載される特定のインターフェロン−β−1a融合体は、腫瘍および癌(例えば、骨原性肉腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、乳癌、黒色腫および鼻咽頭癌)ならびに線維症、狼瘡、および多発性硬化症のような自己免疫状態を処置するために有用である。融合タンパク質、特に、本明細書中に記載される特定のインターフェロンβ−1aムテインよって示される抗ウイルス活性は、ウイルス疾患(例えば、ECM感染、インフルエンザ、および他の気道感染、狂犬病、および肝炎)の処置において使用され得ることがさらに予想される。本明細書中に記載されるタンパク質によって示されるインターフェロン−β−1aの免疫調節活性が、自己免疫疾患おおび炎症性疾患(例えば、線維症、多発性硬化症)の処置において使用され得ることもまた予想される。新規の血管形成(新脈管形成または新生血管形成)を阻害するインターフェロンの能力は、本発明のタンパク質を使用して、例えば、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅、オースラーウェーバー(Osler−Webber)症候群のような脈管形成疾患を処置することを可能とする。さらに、インターフェロンの抗内皮細胞性活性が、かなり長い間、知られており、そしてインターフェロン作用の1つの潜在的な機構が、腫瘍細胞により産生される脈管形成因子の産生または効力を阻害することにより内皮細胞活性を妨害し得る。いくつかの血管腫瘍(例えば、血管腫)はインターフェロンを用いる処置に対して特に敏感である。インターフェロンαを用いる処置は、この疾患について実証された唯一の処置である。本発明のインターフェロン−1a融合タンパク質を用いる処置は、この結合体は、非結合体化インターフェロンよりも長期間、血管系に残存することが予期されるので、薬物動力学および薬力学という点においてかなりの薬学的利益を提供すると予想され、従って、抗脈管形成剤として使用するためにより効率的かつ効果的な治療を導く。実施例9を参照のこと。
【0081】
本発明のポリマーインターフェロン−β−1a融合体は、それ自体で、ならびに薬学的に受容可能なエステル、塩および他の生理学的に機能的なその誘導体の形態において投与され得る。このような薬学的処方物および医薬処方物において、好ましくは、インターフェロン−β−1aは、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアおよび必要に応じて任意の他の治療成分とともに利用される。このキャリアは、処方物の他の成分と適合性であるという意味において薬学的に受容可能でなければならず、なおかつそのレシピエントに対して過度に有害であってはならない。インターフェロン−β−1aは、上記のような所望される薬理学的効果を達成するに有効な量において、かつ所望される1日量を達成するに適切な量において提供される。
【0082】
この処方物は、非経口的投与ならびに経口的投与に適切な処方物を含み、そして特定の投与様式としては、経口、直腸、頬、局所的、鼻、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、骨髄腔内、関節内、動脈内、クモ膜下、気管支、リンパ、腟および子宮内の投与が挙げられる。経口、鼻および非経口の投与に適切な処方物が、好ましい。
【0083】
インターフェロン−β−1aが、液体溶液を含む処方物において利用される場合、この処方物は、経口的または非経口的に有利に投与され得る。インターフェロン−β−1aが、液体懸濁処方物または生体適合性のキャリア処方物における粉末として使用される場合、この処方物は、経口、直腸または気管支に有利に投与され得る。
【0084】
インターフェロン−β−1aが、直接、粉末状固体の形態において使用される場合、インターフェロンβ−1aは、経口的に有利に投与され得る。あるいは、インターフェロンβ−1aは、適切なネブライザーデバイスを含む呼吸回路から患者により吸気される粉末のガス状分散物を形成するために、キャリアガス中の粉末の噴霧を介して、鼻腔的または気管支的に投与され得る。
【0085】
本発明のタンパク質を含む処方物は、都合良く単位投与量形態において示され得、そして薬学の分野において周知の任意の方法によって調製され得る。このような方法は、一般的に、1つ以上の補助成分を構成するキャリアに活性成分を会合させる工程を含む。代表的に、この処方物は、この活性成分を液体キャリア、細かく分割された固体キャリアもしくはその両方に均一かつ親密に会合させ、次いで、必要な場合、この産物を所望の処方物の投与量形態に成形することにより調製される。
【0086】
経口投与のために適切な本発明の処方物は、別個の単位(例えば、カプセル剤、カシュ剤(cachet)、錠剤、またはロゼンジ)、(この単位の各々は、予め決定された量の活性成分を、粉末または顆粒として含む)として、または水溶液または非水性液体における懸濁液(例えば、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または一回分(draught))として提示され得る。
【0087】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分を伴って、圧縮または成形により作製され得る。圧縮錠剤は、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または排泄剤と混合される自由流動(free−flowing)形態(例えば、粉末または顆粒)である活性化合物とともに適切な機械における圧縮によって調製され得る。粉末状ポリマー結合体と適切なキャリアとの混合物を含む成形錠剤は、適切な機械における成形によって作製され得る。
【0088】
シロップは、活性化合物を糖(例えば、スクロース)の濃縮水溶液に添加することにより作製され得、この溶液にはまた、任意の補助成分が添加され得る。このような補助成分としては、矯味矯臭剤、適切な保存剤、糖の結晶化を遅延させるための薬剤、および任意の他の成分の溶解度を増加させるための薬剤(例えば、ポリヒドロキシアルコール、例えば、グリセロールまたはソルビトール)が挙げられ得る。
【0089】
非経口投与のために適切な処方物は、都合良く活性結合体の滅菌水性調製物を含み、これは好ましくはレシピエントの血液と等張である(例えば、生理的食塩水溶液)。このような処方物は、血液成分または1つ以上の器官に対してその化合物を標的化するために設計される懸濁化剤および濃稠化剤または他の微小粒子系を含み得る。この処方物は、単一用量形態または多用量形態において示され得る。
【0090】
鼻噴霧処方物は、保存剤および等張化剤を伴う活性結合体の精製された水性溶液を含む。このような処方物は、好ましくは鼻粘膜と適合するpHおよび等張状態に調整される。
【0091】
直腸投与のための処方物は、適切なキャリア(例えば、カカオ脂、硬化脂肪または硬化脂肪カルボン酸)を伴う坐剤として示され得る。
【0092】
眼処方物(例えば、点眼剤)は、pHおよび等張因子が好ましくは眼のpHおよび等張因子と適合するように調節されること以外は、鼻噴霧に類似する方法によって調製される。
【0093】
局所的処方物は、1つ以上の媒体(例えば、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール、または局所的な薬学的処方物のために使用される他の基剤)に溶解、または懸濁される本発明の結合体を含む。
【0094】
上述の成分に加えて、本発明の処方物は、希釈剤、緩衝剤、矯味矯臭剤、崩壊剤、界面活性剤、濃稠化剤(thickener)、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択されるさらに1つ以上の補助成分を含み得る。
【0095】
従って、本発明は、非治療的適用の好ましい例示的適用として、溶液中でのインターフェロン−β 1aのインビトロ安定化のための適切な融合タンパク質の提供を意図する。例えば、この融合タンパク質は、インターフェロン−β 1aの酵素分解に対する耐性を増加させるために使用され得、貯蔵寿命、室温安定性および研究試薬およびキットの頑健性を改善する手段を提供する。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、そして本発明を限定するとは解釈されるべきではない。詳細には、インビボにおいて、本明細書中に記載される動物実験は、変更され得、故に基本的方法論の他の改変およびバリエーションが可能であることが理解される。例えば、実施例7において、当業者は、他のネオプテリンアッセイを使用し得るか、または使用した霊長類の数および種類を変更し得る。実施例に対するこれらの改変およびバリエーションは、本発明の趣旨および範囲内にあると見なされるべきである。
【0097】
(実施例1:アラニン/セリン置換変異を使用するヒトインターフェロン−β−1aの構造/活性研究:レセプター結合部位および機能的ドメインの分析)
(A.概観)
ヒトインターフェロン−β−1a(IFN−β−1a)の広範な変異分析を、活性およびレセプター結合に必要である残基のマッピングの目的で行った。ヒトIFN−βの3−D結晶構造(Karpusas,M.ら、1997,Proc.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818)の利用可能性は、本発明者らに、レセプター相互作用のために利用可能な、溶媒にさらされている残基である、アラニン(またはセリン)置換を同定することおよび分子内結合に関与するアミノ酸を保持することを可能にした。各ヘリックス(A、B、C、D、E)およびループ(AB、CD、DE)の別個の領域に沿って2残基〜8残基を置換する、15アラニン置換変異のパネルを設計した。アフィニティー精製のための6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグ、ならびにアミノ末端伸長の除去のためのエンテロキナーゼリンカー配列を含めた。得られるインターフェロンは、「hisタグ化インターフェロン(IFN)−β」または「His−インターフェロン−β」または「His6−インターフェロン−β」などと交換可能に呼ばれる。
【0098】
種々の変異体hisタグ化IFN−β発現プラスミドを、野生型IFN−β遺伝子構築物を変異誘発のための鋳型として使用して構築した。変異誘発ストラテジーは、野生型hisタグ化IFNβ遺伝子を通して独特な制限酵素切断部位を最初に導入する工程、次いでアラニン(またはセリン)置換変異をコードする合成オリゴヌクレオチド二重鎖を用いて選択された制限酵素間で別個のDNA配列を置き換える工程、を包含した。最後に、変異体IFN遺伝子を、ヒト293腎臓細胞株中での哺乳動物細胞発現を指向するプラスミドにサブクローニングした。
【0099】
これらの変異の機能的な結果を、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおいて評価した。非放射活性IFN結合アッセイを開発して、ヒトDaudiバーキットリンパ腫細胞の表面レセプター(「IFNAR1/2複合体」)へのそれらの結合においてこれらの変異体を分析した。さらに、his−IFN−β変異体とIFNAR2との間の相互作用表面をマッピングするためのアッセイを開発した。これは、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインに融合したIFNレセプタータンパク質IFNAR2細胞外ドメインからなるIFNAR2/Fc融合タンパク質を利用する。
【0100】
(1.変異誘発の鋳型としてのインターフェロンβ遺伝子の作製)
IFN−βのアラニン(またはセリン)置換変異体を生成するための本発明者らのストラテジーは、最初に、改変IFN−β遺伝子を作製することであった。この遺伝子は、野生型タンパク質をコードするが、遺伝子にわたり散在する独特な制限酵素切断部位を有した。その独特な部位は、変異コドンをコードする合成オリゴヌクレオチド二重鎖についての野生型配列を交換するために使用された。変異遺伝子の作製のために適切なヒトIFN−β−1a発現カセットを得るために、IFN−β cDNA(GenBank登録番号#E00029)を、PCRによって増幅した。IFN−β遺伝子のプラスミドpMJB107(pACYC184の誘導体、Roseら、1988、Nucleic Acids Res.16(1)355を参照のこと)への最初のクローニングは、変異誘発を通して生成される特定の制限部位を欠くプラスミド中での遺伝子の部位特異的変異誘発を実行するために必要であった。
【0101】
ヒトIFN−β遺伝子のコード配列をサブクローニングするために使用されるPCRプライマーはまた、本発明者らに、そのIFN−β遺伝子の上流かつインフレームでエンテロキナーゼリンカー配列を導入することを可能にした(5’PCRプライマー 5’TTCTCCGGAGACGATGATGACAAGATGAGCTACAACTTGCTTGGATTCCTACAAAGAAGC−3’(配列番号9:「BET−021」)および3’PCRプライマー 5’−GCCGCTCGAGTTATCAGTTTCGGAGGTAACCTGTAAGTC−3’(配列番号10:「BET−022」)ならびにプラスミドpMJB107部位へのクローニングのために有用な隣接する制限酵素部位(BspEIおよびXhoI))。得られるDNAは、PCRフラグメントAといわれる。
【0102】
ヒト血管細胞接着分子−1(VCAM−1)シグナル配列由来の効率的なシグナル配列および6ヒスチジンタグを、pDSW247から生成された第2のDNAフラグメント(フラグメントB)からの最終構築物に導入した。プラスミドpDSW247は、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体であり、ここからEBNA−1遺伝子が欠失され、そしてこの誘導体は、6ヒスチジンタグの上流にかつこれとインフレームに融合されたVCAM−1シグナル配列(VCAMss)を有する。VCAMss−1/ヒスチジンタグカセット部分を生成するために使用されたPCRプライマーは、フラグメントB DNAの切除を可能にする、隣接する制限酵素切断部位(NotIおよびBspEI)を組み込んでいるKID369(5’PCRプライマー 5’−AGCTTCCGGGGGCCATCATCATCATCATCATAGCT−3’:配列番号11)およびKID−421(3’プライマー 5’CCGGAGCTATGATGATGATGATGATGGCCCCCGGA−3’:配列番号12)であった。
【0103】
VCAM−1シグナル配列、hisタグおよびインターフェロン−β遺伝子を有するプラスミドベクターを作製するために、本発明者らは、プラスミドベクターpMJB107(NotIおよびXhoI切断された)、PCRフラグメントA(BspEIおよびXhoI切断された)、およびフラグメントB(NotIおよびBspEI切断された)からゲル精製されたDNAフラグメントを使用して、3方向連結(three−way ligation)を行った。連結されたプラスミドを使用して、JA221 E.coli細胞またはXL1−Blue E.coli細胞のいずれかを形質転換し、そしてアンピシリン耐性コロニーを拾い上げ、そして制限地図分析によってインサートについて試験した。ミニプレップDNAを作製し、そしてインサートの配列を、DNA配列決定によって確認した。得られた構築物を、pCMG260と名付けた。
【0104】
(2.pCMG260におけるヒトインターフェロン−βのアラニン置換変異体の作製)
プラスミドpCMG260を、多数回の変異誘発のための鋳型として使用した(U.S.E.部位特異的変異誘発キット(Boehringer−Mannheim))。これは、独特な制限切断部位を、IFN−βタンパク質コード配列に沿った位置に導入するが、タンパク質の得られる配列を変化させなかった。変異誘発されたプラスミドを使用して、E.coliのJA221またはXL1−Blue株のいずれかを形質転換し、そして組換えコロニーをクロラムフェニコール耐性について選択した。クロラムフェニコール耐性コロニーを、さらに、DNA制限マッピング分析によって、所望の独特な制限酵素部位の存在について試験した。得られるIFN−βプラスミドである、pCMG275.8は、独特な制限酵素切断部位の全セットを含み、そしてその遺伝子のDNA配列を確認した。改変された、hisタグ化インターフェロン−β遺伝子の全DNA配列は、その野生型タンパク質コード配列とともに、図1に提供される。
【0105】
アラニン置換変異のフルセットを、表1に示す(次頁)(それぞれ、見た目の順序で配列番号60および45〜59)。変異の名前は、変異が導入された構造的領域(ヘリックスおよびループ)を特定する。アラニン(セリン)置換の全体のパネルは、ヒトIFN−βの165アミノ酸のうちの65の変異を生じる。
【0106】
変異体のパネルを、pCMG275.8から、独特な制限部位間のDNAのセグメントを表2(以下を参照のこと)に示される遺伝子コード情報を有する合成オリゴヌクレオチド二重鎖と置換することによって作製した。種々のアラニン置換変異体プラスミドを作製するために、ゲル精製したpCMG275.8ベクター(各IFN−β構造領域について以下のリストに示されるように、適切な制限酵素を用いて切断した)およびオリゴヌクレオチド二重鎖(コード鎖配列は、表2において示される)を一緒に連結した。連結混合物を使用して、E.coliのJA221株を形質転換し、そして組換えコロニーを、アンピシリン耐性について選択した。アンピシリン耐性コロニーを、適切な制限酵素部位についてスクリーニングすることによって変異の挿入の存在について試験した。2つの変異体(A2およびCD2)について、クローニングストラテジーは、合成ヌクレオチドの2つの二重鎖(表2に示す)を使用することを伴った。この二重鎖は相補的な突出末端を有し、互いにおよびベクターIFN−β骨格を3工程連結で連結することを可能にする。以下のリストは、表2からの変異したオリゴヌクレオチドをクローニングするために使用された部位を例証する。このクローニングスキーム(サブセクションB)は、インターフェロン−β遺伝子上のこれらの独特な部位の位置を示す。
【0107】
Aヘリックス BspEI〜MunI、またはBglII〜PstI
ABループ MunI〜PstI、またはMunI〜BsaHI
Bヘリックス BspHI〜BsaI、またはBsaHI〜BsaI
Cヘリックス BsaI〜XbaI
CDループ XbaI〜BspHI、またはXbaI〜DraIII
Dヘリックス BspHI〜DraIII
DEループ BspHI〜PvuI
Eヘリックス PvuI〜BstEII。
【0108】
(表1.HUIFN−βのアラニン置換変異の位置)
【0109】
【表1】
IFN−βと示された線は、野生型ヒトIFN−β配列を示す。IFN−β残基のアラニン置換またはセリン置換を各々の変異体について示し、そして関連する領域の下のダッシュは、野生型配列を示す。ヘリックス構造およびループ構造を、変異体の下に実線として示す。DEループは、DヘリックスとEヘリックスとの間のギャップにわたる。2つのさらなるアラニン置換変異体(H93A、H97A、およびH121A)を生成し、そして抗ウイルスアッセイにおいて分析して、結晶構造二量体において亜鉛をキレートするこれらのヒスチジンを変異させる効果を評価した。これらの変異体の両方は、抗ウイルスアッセイにおいて完全な野生型活性を保持しており、このことは、亜鉛媒介二量体形成が、IFN−β活性に重要ではないことを示唆する。
【0110】
【表2】
(B.EBNA293発現プラスミドの構築)
VCAM−1シグナル配列、hisタグ、ならびにエンテロキナーゼリンカー配列に融合された野生型遺伝子および変異体IFN−β遺伝子を、761塩基対のNotIおよびBamHI制限フラグメントとしてゲル精製した。精製した遺伝子を、NotIおよびBamHI切断したプラスミドベクターpDSW247にサブクローニングした。プラスミドpDSW247は、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体である。プラスミドpDSW247は、ヒトEBNA293腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)におけるタンパク質の一過性発現のための発現ベクターである。このベクターは、サイトメガロウイルス初期遺伝子プロモーターおよびこの系における高いレベルの遺伝子発現のために必要とされるEBV調節エレメント、ならびにE.coli(アンピシリン耐性)およびEBNA293細胞(ハイグロマイシン耐性)についての選択マーカーを含む。連結したプラスミドを使用して、JA221 E.coli細胞またはXL1−Blue E.coli細胞のいずれかを形質転換し、そしてアンピシリン耐性コロニーを拾い上げて、制限地図分析によってインサートについて試験した。マルチプレップDNAを作製し、そしてインサートの配列をDNA配列決定によって確認した。所望の変異した配列を示すポジティブクローンを使用して、ヒトEBNA293腎臓細胞をトランスフェクトした。
【0111】
全体のクローニングストラテジーおよび発現ストラテジーを図12に表す。
【0112】
(C.IFN−β−1aアラニン置換変異体の発現および定量)
ヒトEBNA293細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA,Chittenden,T.(1989)J.Virol.63:3016−3025)を、10%胎仔ウシ血清、2mM グルタミン、および250μg/ml Geneticin(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を補充したダルベッコ改変イーグル培地中のサブコンフルエント培養物として維持した。pDSW247発現プラスミドを、リポフェクタミンプロトコル(Gibco/BRL,Life Technologies)を使用してEBNA 293細胞中に一過性にトランスフェクトした。馴化培地を、トランスフェクションの3〜4日後に収集し、細胞細片を遠心分離によって取り除き、そしてhis−IFN−β濃度をELISAによって定量した。
【0113】
ELISAアッセイを、ポリクローナルウサギ抗体(プロテインA精製したIgG、抗体は精製したヒトIFN−β−1aに対して惹起された)を用いて96ウェルELISAプレートをコーティングして実施し、そして同じポリクローナルウサギIgGのビオチン化形態を、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:Jackson ImmunoResearch,W.Grove,PA)を用いてインターフェロン検出を可能にする二次試薬として使用した。インターフェロン−β−1aの系列希釈(Biogen,Inc.より購入されたAVONEX(登録商標)として)を使用して、標準濃度曲線を作成した。EBNAトランスフェクト体からのhis−IFN−β含有馴化培地を、希釈して、ELISAアッセイにおける10ng/mlと0.3ng/mlとの間の範囲の濃度を有するサンプルを得た。ELISAによって決定された培地中のIFN−βの濃度を確認するために、ウェスタンブロット分析を実行した。還元した培養上清およびIFN−β−1a標準を、10〜20%勾配ゲル(Novex,San Diego,CA)上のSDS−PAGEに供し、そしてPDVF膜上にブロットした。免疫反応性バンドを、ウサギポリクローナル抗IFN−β−1a抗血清(#447,Biogen,Inc.、二次抗血清はIFN−β−1aに対して惹起された)、続いてHRR結合ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch、W.Grove、PA)を用いる処理で検出した。
【0114】
(D.レセプター結合についてのインターフェロン−β変異体の評価)
Cにおいて記載されたインターフェロン−β変異体のレセプター結合特性を、2つの異なる結合アッセイを使用して評価した。1つのアッセイは、融合タンパク質IFNAR2/Fcに対するインターフェロン−β変異体の結合を測定した。この融合タンパク質は、ヒトIgGの定常領域の部分に融合したヒトIFNAR2レセプター鎖の細胞外ドメインを含む。IFNAR2−Fcを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で発現し、そして製造業者の指示書(Pierce Chem.Co.,Rockford,IL,カタログ番号#20334)に従ってプロテインAセファロースTMアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。インターフェロン−β変異体のIFNAR2−Fcへの結合を、ELISA形式アッセイにおいて測定した。ELISAプレートを、コーティング緩衝液(50mM NaHCO3、0.2mM MgCl2、0.2mM CaCl2、pH 9.6)中10μg/mlのマウス抗ヒトIgG1モノクローナル抗体(CDG5−AA9、Biogen,Inc.)の50μl/ウェルで、4℃で一晩、平底96ウェルプレートをコートすることによって調製した。プレートを、0.05% Tween−20TMを含むPBSで2回洗浄し、そしてPBS中0.5%脱脂粉乳で、室温で1時間ブロックした。さらなる2回の洗浄後、0.05% Tween−20TMを含むPBS中の0.5%ミルク(milk)中の1μg/ml IFNAR2−Fcの50μlを各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートし、次いでプレートをさらに2回洗浄した。インターフェロン−β変異体のIFNAR2−Fcへの結合を、50μl/ウェルの変異体インターフェロン−βを馴化培地(10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で段階希釈した)中に添加すること、および4℃で2時間インキュベートすることによって測定した。インターフェロン−β変異体の希釈は、代表的には、約1μMから下方に10pMまでの範囲であった。洗浄後、プレートに結合したインターフェロン−βを、ウサギポリクローナル抗インターフェロン抗体(#447、Biogen,Inc.)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識化ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch)の1:1000希釈からなるカクテルの50μl/ウェルを添加すること、および4℃で15分間インキュベートすることによって検出した。2回の洗浄の後、HRP基質を添加し、そしてプレートを4℃でインキュベートし、その後ELISAプレートリーダー上で450nmの吸光度を読みとった。データを、吸光度対変異体インターフェロン−βの濃度としてプロットし、そして変異体インターフェロン−βのIFNAR2−Fcへの結合についての親和性を単純な双曲線式にデータを適合させることによって決定した。これらの分析からの結果を図3に示し、ここでは、3つの実験から決定された各変異体についての結合親和性が、His6−野生型インターフェロン−β−1aについて測定された親和性の割合として表される。
【0115】
第2のレセプター結合アッセイを使用して、インターフェロン−β変異体が両方のレセプター鎖(IFNAR1およびIFNAR2、これらは、ともにインターフェロン−βについてのレセプターを含む)を発現するDaudi細胞に結合する親和性を測定した。このFACSに基づくアッセイは、インターフェロン−βが結合したレセプターから、占有されていない(遊離の)レセプターを区別するために、IFNAR1、EA12(Biogen,Inc.)の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体をブロックすることを使用した。Dauri細胞(2.5×107細胞/mlで20μl)を、96ウェルV底ELISAプレートに配置し、そして種々の濃度のインターフェロン−β変異体(20μlのFACS緩衝液中;5% FBS、PBS中の0.1% NaN3)とともに4℃で1時間インキュベートした。インターフェロン−β変異体の所望の段階希釈は、0.5μMから下方に0.5pMまでの範囲であった。各ウェルに100ngのビオチン化マウス抗IFNAR1モノクローナル抗体EA12(10μl)を添加し、そしてプレートを室温で2分間インキュベートし、その後FACS緩衝液で2回洗浄した(4℃)。次いで、細胞を、R−フィコエリトリン結合体化ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch、West Grove,PA)の1:200希釈の50μl/ウェルとともに4℃で30分間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄し、0.5%パラホルムアルデヒドを含む300μlのFACS緩衝液に再懸濁し、そして12×75mmポリスチレンチューブ(Falcon 2052)に移した。次いで、サンプルをFACScan(Becton Dickinson)上のフローサイトメトリーによって分析した。データを、平均チャネル蛍光強度(MFCI)対インターフェロン−β変異体の濃度としてプロットし;結合親和性を、抗体染色の50%阻害を与えるインターフェロン−βの濃度として規定した。各変異体を、複数回試験した。図4は、本発明の方法によって決定され、各実験においてHis6−野生型インターフェロン−β−1aについて測定された親和性の割合として表現された、各インターフェロン−βについてのレセプター結合親和性を示す。
【0116】
(E.機能についてのインターフェロン−β変異体の評価)
インターフェロン−β変異体をまた、抗ウイルス活性に関するインビトロアッセイを用いて機能的な活性について、そして細胞増殖を阻害するインターフェロン−βの能力について試験した。各々三つ組のデータ点を伴う、最低三回の抗ウイルスアッセイを、各々の変異体において実施した。His6−野生型インターフェロン−β−1aを、すべての実験において基準として含めた。この抗ウイルスアッセイは、変異インターフェロン−βの2倍階段希釈を用いて、ウイルスによる細胞殺傷からの完全な抗ウイルス防御と無防御との間の範囲にわたる濃度で、A549ヒト肺癌細胞(ATCC CCL 185)を一晩処理することによって実施した。次の日、この細胞を、脳心筋炎ウイルス(ECMV)を用いて、インターフェロンの非存在下で完全な細胞の殺傷を生じる希釈度で、2日間チャレンジした。次いで、プレートを、代謝性色素であるMTT(2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホ−フェニル]−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド)(M−5655、Sigma、St.Louis、MO)を用いて発色させた。MTTのストック溶液を、PBS中に5mg/mlで調製し、濾過滅菌し、そしてこの溶液50μlを、細胞培養液中に希釈した(100μl/ウェル)。室温で30〜60分間のインキュベーションに続いて、MTT/培地溶液を捨て、細胞を、100μlのPBSを用いて洗浄し、そして最終的に代謝された色素を、90%イソプロパノール中の1.2N塩酸100μl中に可溶化した。生存細胞(色素の存在によって証明されるような)を、450nmの吸光度によって定量した。データを、インターフェロン−β変異体の濃度に対する吸光度をプロットすることによって解析し、各々の変異体の活性を、50%の細胞が死滅する濃度として規定した。図5は、各々の実験におけるヒスタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて測定された活性の百分率として表された、各変異体の活性を示す。
【0117】
インターフェロン−β変異体をまた、抗増殖アッセイにおいて機能に関して評価した。ヒトDaudiバーキットリンパ腫細胞(ATCC#CCL 213)を、10%の規定されたウシ胎仔血清(Hyclone、Logan Utah)および2mMのL−グルタミンを補充したRPMI1620中に、2×105細胞/mlで播種した。各々のウェルはまた、最終総容量100μl/ウェルの培地中に、インターフェロン−β変異体の所定の濃度を含む;用いられたインターフェロン−β濃度を、Daudi細胞増殖の最大阻害から無阻害(すなわち、完全な増殖)までの間の範囲にわたって選んだ。二つ組の実験点を、試験されたインターフェロン−β変異体の各々の濃度について用い、そして二つ組のセットの未処理細胞を、すべての実験に含めた。細胞を、37℃で2日間、5%のCO2インキュベーター内でインキュベートし、その後50μl培地中に1μCi/ウェルのトリチウムチミジン((メチル−3H)チミジン、Amersham TRK758)を、各々のウェルに添加し、そしてさらに4時間インキュベートした。細胞を、LKBプレートハーベスターを用いて回収した。そして、トリチウムチミジンの取りこみをLKBβプレートリーダーを用いて測定した。二つ組の実験値を平均化し、そして標準偏差を決定した。データを、1分あたりの平均数 対 インターフェロン−β変異体の濃度としてプロットし、各々の変異体の活性を、観察される増殖阻害の最大値の50%を与えるのに必要な濃度として規定した。各々の変異体についての複数のアッセイを実施した。図6は、各実験におけるhisタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて見出された活性の百分率として表された結果を示す。
【0118】
(F.インターフェロン−β変異体の特性)
ヒスチジンタグ化野生型インターフェロン−β−1aは、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおいて、タグのない野生型インターフェロン−β−1aについて見出される対応する活性の各々約3分の1の活性を有することが見出された。インターフェロン−β変異体A1−Eのすべてが同一のhisタグ配列をそのN末端に含むので、この分子の特性に対する変異体の効果は、抗ウイルスアッセイ、抗増殖アッセイおよび結合アッセイにおけるこれらの変異体の活性を、ヒスタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて観察される活性と比較することによって決定した。そうすることにおいて、本発明者らは、hisタグ化野生型インターフェロン−β−1aと比較した変異体A1−Eの活性における変動が、これら同一の変異体がN末端のhisタグの非存在下で有する効果と、質的におよび量的にほぼ同一であると想定する。他の可溶性サイトカインのタグ化または融合構築物についての等価な想定は、特に、タグ化または融合構築物のインビトロでの機能的な活性が、本明細書中の場合のように野生型サイトカインの活性と近接する場合、アラニンスキャンニング変異誘発の技術の実施者は一般に正しいと考える。例えば、Pearce K.H.Jrら、J.Biol.Chem.272:20595−20602(1997)およびJones J.T.ら、J.Biol.Chem.273:11667−11674(1998)を参照のこと。
【0119】
図3〜6に示したデータは、標的された変異誘発によって生じた効果の3つの型を示唆する。これらの効果は、特定の環境下でのインターフェロン薬物の開発のために有利であり得る。この効果の3つの型は、以下である:(a)野生型インターフェロン−β−1aの活性よりも高い抗ウイルス活性を伴う変異体(例えば、C1変異体);(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイの両方において活性を示すが、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗ウイルス活性と比較して抗増殖活性が不釣合いに低い変異体(例えば、C1、DおよびDE1変異体);および(c)野生型インターフェロン−β−1aと比較して、レセプター結合と比較して不釣合いに低い抗ウイルス活性および抗増殖活性を示す、機能的アンタゴニスト(例えば、A1、B2、CD2およびDE1)。いくつかの変異体が、一つを超えるクラスに分類されることが理解され得る。これらのクラスを、以下に総説する。列挙されたこれらの例に関して、これらのクラスの変異体を特徴付ける一方、これらの領域の他の変異体が活性に対して類似の、またはさらに増強された効果を生じ得ることが理解されるべきである。
【0120】
a)変異体C1は、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aの活性に比べて約6倍高い抗ウイルス活性を有する。この変異体およびこの型の他の変異体は、抗ウイルス効果の所定のレベルを達成するために投与されなければならないインターフェロン−βの量を減少するのに有用であることが予想される。投与されるタンパク質の量を低下させることは、このタンパク質の免疫原性を減少すると予測され、そしてまた、メカニズムに基づかない毒性からの副作用をまた減少し得る。このクラスの変異体は、インターフェロン−β投与の治療的利点がその抗ウイルス効果から生じ、そして抗増殖効果が毒性または望まれない副作用に寄与するといった状況において有利であると予想される。
【0121】
(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおけるアラニン置換変異体の相対的な活性(%野生型)を、図7において比較する。同等に変化した活性(すなわち、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aの活性とは、同一因子によって異なる抗ウイルス活性および抗増殖活性)は、ほとんどの変異体において見られる(対角線上にある)。しかし、いくつかの変異体は、対角線からのずれによって証明されるように、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aと比較して、その他と比較して一つのアッセイにおける活性により大きな変更を示す。3つのこのような変異体を、以下の表に示す。変異体C1は、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aの活性よりも約6倍高い抗ウイルス活性を示すが、抗増殖アッセイにおける活性は、野生型のそれと類似する。従って、変異体C1は、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに対して、その抗増殖活性を5.2倍増強された抗ウイルス活性を有する。同様に、変異体Dは、抗ウイルスアッセイにおいて野生型の活性の65%を示すが、抗増殖アッセイにおいては野生型の活性のたった20%を示し、従って、野生型に比べてその抗増殖活性の3.4倍増強された抗ウイルス活性を有する。変異体DE1は、抗ウイルスアッセイにおいて野生型の活性の26%を示すが、抗増殖アッセイにおいてはたった8.5%を示し、従って、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに比べてその抗増殖活性の3.0倍増強された抗ウイルス活性を有する。所望の抗ウイルス活性のレベルに達するのに十分な濃度において投与される場合、これらの変異体タンパク質は、野生型タンパク質より実質的に低いレベルの抗増殖活性を示す。クラス(a)中のものと同様に、このクラスの変異体は、インターフェロン−β投与の治療的利点がその抗ウイルス効果から生じ、そして抗増殖効果が毒性または望まれない副作用に寄与するといった状況において有利であると予想される。
【0122】
【表3】
(c)野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに比べてレセプター結合が低い抗ウイルス活性および抗増殖活性を伴う変異体(下の表を参照のこと)。変異体A1は、野生型hisタグ化インターフェロン−β−1aに関して観察される活性より2.0倍および1.8倍高い抗ウイルス活性および抗増殖活性を示すが、Daudi細胞上の同族のレセプターに野生型より29倍高い親和性で結合する。従って、この変異体のIFN−βレセプターへの結合は、このタンパク質の抗ウイルス活性および抗増殖活性に比べて約15倍増強される。同様に、変異体B2、CD2およびDE1は、それぞれに、4.6倍、4.6倍および18倍の抗ウイルス活性を越える、そして3.5倍、15倍および54倍の抗増殖活性を越える結合の増強性を示す。これらのタンパク質は、内因性IFN−β、およびおそらく他の内因性I型インターフェロンの活性の機能的なアンタゴニストとして有用であることが予想される。なぜなら、これらが、レセプターに結合する能力およびレセプターを占有する能力を有し、そしてなお野生型IFN−βに関してみられる標的細胞における機能的な応答の単なる小さな画分を生じるからである。
【0123】
【表4】
(G.インターフェロンの3次元構造に対するムテイン関連性)
マウスインターフェロン−βの非グリコシル化型(T.Senda、S.SaitohおよびY.Mitsui.Rifined Crystal Structure of Recombinant Murine Interferon−β at 2.15 Å Resolution.J.Mol.Biol.253:187〜207(1995))およびヒトインターフェロンα−2b(R.Radhakrishnan,L.J.Walter,A.Hruza,P.Reichert,P.P Trotta,T.L.NagabhushanおよびM.R.Walter.Zinc Mediated Dimer of Human Interferon−α2b Revealed by X−ray Crystallography.Structure.4:1453−1463(1996))に関する公表された結晶構造が、ヒトインターフェロン−βのペプチド骨格のモデルを提供したが、本発明者らは、グリコシル化状態のインターフェロン−β−1aの構造を最近解明した(M.Karpusas,M.Nolte,C.B.Benton,W.Meier,W.N.Lipscomb,およびS.E Goelz.The Crystal Structure of Human Interferon−β at 2.2 Å resolution.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11813〜11818(1997))。
【0124】
本発明者らの変異の解析の結果は、インターフェロン−β−1aの3D構造に関して要約され得る(本明細書中には示さず)。特定の変異残基は、活性において減少を生じた(2分の1〜5分の1未満に減少した)。この変異された領域は、表1および2に与えられた置換に対応する。
【0125】
機能に対するそれらの効果において最も重要である変異は、活性および細胞表面レセプター結合の両方の劇的な減少を生じた。本発明者らのアッセイにおいてこれらの変異体のいずれもIFNAR/Fcを結合しなかったので、この領域(A2へリックス、AB & AB2ループおよびEへリックス)は、IFNAR2結合部位における変異に対応する。
【0126】
IFNAR2結合に重要なこれらの変異もまた、細胞の結合に影響を及ぼしたが、細胞表面結合特性もまた、この分子の他の領域(B1へリックス、C2へリックス)の残基によって影響される。IFN−β−1a分子のN末端、C末端およびグリコシル化Cへリックス領域がレセプター結合部位内に存在しないことが、アラニン置換変異体の効果を示す3Dモデル(示さず)において見られ得る。これらの領域における変異は、生物学的活性を低減せず、細胞表面レセプター結合も低減しない。
【0127】
(実施例2:インターフェロン−β−1a融合(IFN−β/Fc)タンパク質の発現のためのプラスミドの構築)
PCR技術を使用して、マウスIgG2a重鎖分子のFc部分に融合されたヒトIFN−β DNA配列をコードする発現プラスミドを作製した。プラスミドベクターpDSW247(実施例1を参照のこと)は、EBNA−1遺伝子が欠失されている、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体である。このプラスミドを、EBNA 293ヒト腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA.,Shen.E.S.ら、1995、Gene 156、235〜239)における一過性タンパク質発現のために有用な発現ベクターの構築のために使用した。このプラスミドは、インターフェロンβ配列の上流にインフレームでヒト血管細胞接着分子−I(VCAM−1)シグナル配列、そしてインターフェロンβおよびIg配列の接合部にエンテロキナーゼリンカー配列を含むように設計された。
【0128】
融合タンパク質発現カセットは、いくつかのDNAフラグメントからアセンブリされた。ヒトIFN−β遺伝子をコードするDNAフラグメントを得るために、ヒトIFN−βのcDNAサブクローン(GenBank登録番号E00029)を、IFN−βの最初のコドンの上流に制限酵素切断部位(BsaI)をもまた組み込んだ、以下のプライマーを使用するPCRのための鋳型として使用した:
【0129】
【化1】
。IFN−β遺伝子のための3’PCRプライマー(配列番号32:BET−026)は、IFN−β終止コドンを除去し、そして発現ベクターへのサブクローニングのために有用な、インフレームエンテロキナーゼリンカー配列(DDDDK)(配列番号62)およびターミナル制限酵素部位(XhoI)の両方を組み込んだ。IFN−βコード配列の上流に導入されたBsaI部位によって、本発明者らは、IFN−β遺伝子コード配列と上流かつインフレームでVCAM−1シグナル配列を連結することが可能であった。このVCAM−1シグナル配列はまた、5’制限酵素切断部位(pDSW247 NotIクローニング部位への連結のために、NotI)および3’制限酵素切断部位(IFN−β−1a 5’PCRフラグメントへの連結のために、BsaI)を含む以下のプライマー対を使用するPCRによって生成された:
【0130】
【化2】
。PCRの鋳型は、ヒト血管細胞接着分子−1(VCAM−1)cDNA(GenBank登録番号X53051)であった。
【0131】
IFN−β−1a/Fc融合遺伝子を作製するために、以下の手順を行った。マウスIgG2aフラグメントを、SalI+BamHI消化DNAフラグメントのゲル精製によってpEAG293から取り出した。プラスミドpEAG293は、マウスIgG2aのヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインのBluescript IISK+(Stratagene,LaJolla CA,カタログ番号212205)サブクローンである(GenBank登録番号V00798)。PCRプライマー対5’−AGGTSMARCTGCAGSAGTCW−3’(配列番号35)、ここでS=CまたはG、M=AまたはC、R=AまたはG、W=AまたはT、および5’−CTGAGCTCATTTACCCGGAGTCCGGGAGAAGCTCTT−3’(配列番号36)は、カセットの5’末端および3’末端にそれぞれ隣接するSalI部位およびNotI部位を作製した。マウスIgG2a Fcドメインカセットは、単一塩基(コドンV369)でGenBank配列とは異なり、これはサイレント変異を生じる。従って、野生型Fcタンパク質は、このIgG2a Fcカセットから発現される。
【0132】
C末端エンテロキナーゼリンカー配列を有する、huIFN−β遺伝子に融合されたVCAM−1シグナル配列を含むDNAフラグメントを、NotI〜BamHI消化によってpCMG258から切り出し、そしてゲル精製した。SalI部位は、元々のpDSW247プラスミド上に存在し、そしてIFN−β遺伝子コード配列のすぐ下流にインフレームで配置される。プラスミドベクターpDSW247を、ゲル精製NotI+BamHIフラグメントとして調製した(実施例1を参照のこと)。上述のフラグメントを用いて3方向連結を行い、IFN−β−1a/IgG2a融合物をコードする最終的な発現ベクターをアセンブリした。この発現プラスミドを、pCMG261と命名した。このプラスミドは、成熟ヒトIFN−β、エンテロキナーゼリンカー配列およびマウスIgG2a Fcドメインについての遺伝子と融合したVCAM−1シグナル配列を含む。融合タンパク質の全長DNA(配列番号1)およびタンパク質配列(配列番号2)を図2に示す。
【0133】
(実施例3:哺乳動物細胞におけるインターフェロン−β−1a融合タンパク質の生成)
組換えIFN−β/Fc発現ベクターpCMG261を、ヒトEBNA 293腎臓細胞に一過性にトランスフェクトし、本発明のIFN−β−1a融合タンパク質の発現を達成した。この組換え発現プラスミドを、EBNA 293細胞の100mm培養ディッシュについて1〜3マイクログラムのプラスミドDNAを使用して、製造業者のプロトコル(Life Technologies,Gaithersburg,MD,Hawley−Nelson,P.,Ciccarone,V.,Gebeyehu,G.Jessee,J.,Felgner,P.L.(1993)Focus 15.73)に従って、EBNA 283ヒト腎臓細胞において、リポフェクタミンプロトコル(カタログ番号18324−020,Life Technologies)によってトランスフェクトする。細胞のリポフェクタミントランスフェクションの後の日に、培地を増殖培地(ダルベッコ改変イーグル培地、10%ウシ胎仔血清、4mMグルタミン、250マイクログラムGentecin/ml(Life Technologies,Gaithersburg,MD))で置き換える。3〜4日後に馴化培地を収集する。IFN−β−1a−Fcの濃度を下記の通りに決定した。
【0134】
他の哺乳動物細胞および原核生物細胞発現系におけるIFN−β/Fc融合タンパク質の生成もまた、それらの系についての適切な発現ベクターへの、融合タンパク質についてのタンパク質コード領域の移入の際に実施し得た。代替の発現系としては、以下のような哺乳動物細胞発現系が挙げられる:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Barsoum,J.(1995、Methods in Mol.Biol.48、第18章、225〜237)およびNS−0マウス細胞(Rossman,C.ら、1996、Protein Expression and Pur.7,335〜342)、ならびにCOSミドリザル腎臓細胞(Ettinger,R.ら、1996、Proc.Natil.Acad.Sci.USA,93:23,13102〜13107)。適切である他の真核生物発現系は、酵母Pichia pastoris(Eldin,P.E.ら、1997、J.Immun.Methods,201,67〜75)およびSaccharomyces cerevisiae(Horwitz,A.H.、1988、Proc.Natil.Acad.Sci.USA,85,8678〜8682)である。
【0135】
トランスフェクトされたEBNA 293細胞からの培養上清におけるIFN−β−1a−Fcタンパク質発現レベルの定量を、ウサギ抗IFN−β−1aポリクローナル抗体(抗原は、精製されたIFN−β−1aであった、Biogen,Inc.)のプロテインA精製IgG画分を使用して96ウェルプレートをコートするELISAによって行った。この抗体は、10ng/mL〜0.3ng/mLのインターフェロン濃度範囲で、IFN−β−1a標準および培養上清を検出する。ビオチン化ウサギポリクローナル抗IFN−β−1a(上記と同じ抗体)およびストレプトアビジン連結西洋ワサビペルオキシダーゼを使用して、結合したインターフェロンを検出した。ELISA値を確認するために、ウェスタンブロット分析を行った。ここで、減少させた培養上清およびIFN−β−1a標準を、5〜20%のTris−グリシンゲル(Novex,San Diego,CA)で泳動し、PVDF膜(Amersham Life Science,Inc.,Cleveland,OH)に移し、そして異なるウサギポリクローナル血清(IFN−β−1aに対して惹起される)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ連結ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)抗体を用いて検出した。
【0136】
(実施例4:IFN−β−1a/マウスIgG2a融合タンパク質の抗ウイルス活性)
ヒト肺癌細胞(A549)を、脳心筋炎ウイルス(EMCV)でのチャレンジ前に、IFN−β−1aまたはIFN−β−マウスIgG2a(61、41、27、18、12、8.2、5.5、3.7、2.5、1.6pg/mL)で24時間、前処理した。ウイルスとの2日間のインキュベーションの後に、生存細胞を、XTT:PMS(リン酸緩衝化生理食塩水中、それぞれ333μg/mLおよび2ng/mLの2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド(carboxanilide)内部塩:Penazineメトスルフェート(methosulfate))の溶液で染色し、そして450nMにて分光法によって検出した。各IFN濃度についての三連のデータ点を用いてアッセイを行った。
【0137】
図8において、標準偏差を誤差バーとして示す。IFN−β−1aについての50%細胞変性効果は、約0.4pMであると決定された。IFN−β−マウスIgG2aについての50%細胞変性効果は、0.15pMであることが見出された。
【0138】
(実施例5:ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の構築および生成)
(A.ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の構築)
PCR技術を使用して、ヒトIgG1重鎖分子のFc部分(ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)に融合されたヒトIFN−β DNA配列をコードする発現プラスミドを作製した。
【0139】
EBNA構築:プラスミドベクターpCH269は、EBNA−1遺伝子が欠失されている、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)の誘導体である。このプラスミドを、EBNA 293ヒト腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA.,Shen.E.S.ら、1995、Gene 156、235〜239)における一過性タンパク質発現のために有用な発現ベクターの構築のために使用した。
【0140】
融合タンパク質発現カセットを、以下の3つのDNAフラグメントからアセンブリした:ヒトIFNβをコードする配列にインフレームでかつ融合されたVCAM−1シグナル配列をコードするNotI/SalIフラグメント、ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインをコードするSalI/NotIフラグメント、ならびにEBNA発現ベクターpCH269のNotIフラグメント。
【0141】
ヒトIFN β遺伝子にインフレームでかつ融合された成熟VCAM−1シグナル配列をコードする2つの異なるNotI/SalIフラグメントを、PCR技術によって作製した。PCR鋳型は、ヒトIFN β遺伝子(これ自体、エンテロキナーゼリンカー配列にインフレームでかつ融合されている)にインフレームでかつ融合された成熟VCAM−1シグナル配列をコードするプラスミドpCMG258(上記の実施例2を参照のこと)であった。2つのセットのPCRプライマーを使用した。以下のプライマーの1セットは、162位でのGからCへのアミノ酸変化を導入した:
【0142】
【化3】
。このフラグメントを、ヒトIFN β−C162と呼ぶ。
【0143】
以下の第2のプライマーセットもまた、G162からC162へのアミノ酸置換を導入し、そしてエンテロキナーゼリンカー配列(DDDDK)(配列番号62)を、ヒトIFN β遺伝子にインフレームで3’側に融合されたGGGGS(配列番号64)リンカー配列に変更した:
【0144】
【化4】
。このフラグメントを、ヒトIFN β−C162/G4Sと呼ぶ。プライマーの両方のセットは、pCH269への連結を可能にする5’NotI部位、およびヒトIgG1のSalI/NotIフラグメントとの連結を可能にする3’SalI切断部位を含む。
【0145】
ヒトIgG1のヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインをコードするヒトIgG1フラグメントを、プラスミドpEAG409(プラスミドSAB144の誘導体(米国特許第5,547,853号に記載される))の制限酵素(SalI/NotI)消化によって調製した。このDNAフラグメントを切り出し、そしてゲル精製した。EBNA発現ベクタープラスミドpCH269を、NotIで消化し、そしてゲル精製した。
【0146】
2つのヒトIFN β−ヒトIgG1 Fc融合構築物を、2つの3方向連結によって作製した。ZL6206と呼ばれる1つの構築物は、G4Sリンカーを含む;ZL5107と呼ばれるもう1つの構築物は、直接融合物である。この直接融合物のオープンリーディングフレームの全長DNAおよびタンパク質配列(図10を参照のこと)をそれぞれ、配列番号41および配列番号42に示す。リンカー融合物のオープンリーディングフレームの全長DNAおよびタンパク質配列(図11を参照のこと)をそれぞれ、配列番号43および配列番号44に示す。
【0147】
(CHO構築物)
ヒトIgG1 Fcに直接連結されたヒトIFNβを含む、ヒトIFN β−ヒトIgG1 Fc融合CHOの安定な発現構築物を作製した。ヒトIFNβ−ヒトIgG1 Fcフラグメントを、NotIを用いてプラスミドZL5107から切り出し、そしてゲル精製した;このフラグメントを、pEAG347のNotI部位に連結した。pEAG347は、タンデムなSV40初期プロモーターおよびアデノウイルス主要後期プロモーター[pAD2βプラスミドに由来する]、唯一のNotIクローニング部位、続いて、SV40後期転写終結シグナルおよびポリAシグナル[pCMVβプラスミドに由来する]を含む発現ベクターである。pEAG347は、pUC19由来のプラスミド骨格およびpSV2dhfr由来dhfrを、トランスフェクトされたCHO細胞におけるMTX選択および増幅のために含む。
【0148】
(B.ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の哺乳動物細胞における生成)
(ヒトIFNβ融合構築物のEBNA293細胞への一過性トランスフェクション):
上記の組換えIFN−β/ヒトIgG1 Fc発現ベクターを、ヒトEBNA293腎臓細胞中に一過性でトランスフェクトして、本発明のIFN−β−1a融合タンパク質の発現を達成した。これらの組換え発現プラスミドを、リポフェクタミンプロトコル(カタログ番号18324−020、Life Technologies)によって、上記の実施例3に記載のプロトコルに従ってEBNA293ヒト腎臓細胞中にトランスフェクトした。
【0149】
(ヒトIFNβ−1a/ヒトIgG1 Fc融合構築物(リンカーなし)のdhfr− CHO細胞への安定なトランスフェクション):
上記の組換えIFN−β/ヒトIgG1 Fc(リンカーなし)dhfr含有発現ベクターを、dhfr− CHO細胞中に安定にトランスフェクトして、本発明のIFN−β−1a融合タンパク質の発現を達成した。この組換え発現プラスミドを、エレクトロポレーションによってトランスフェクトし、そしてポジティブクローンの選択を、以下のプロトコルに従って達成した:
BglIIを用いて消化したプラスミドDNA(20mcg)を沈澱させ、800mclのHEPES緩衝液中に再懸濁し、そして10×107 CHO細胞/mlになるように添加した。エレクトロポレーションの後、細胞を、DMEM完全培地にて2日間培養した。次いで細胞を、完全DMEM/透析した10% FBSを有する20〜40個の10cmディッシュに分け、そして5日間培養した後に、細胞を、漸増する(50〜200ng)濃度のMTXをDMEM中に含む選択培地に2週間にわたって移した。2週間の終わりに、細胞の単コロニーを選択し、そして増殖させた。22個のCHOクローンに由来する上清を、抗ウイルスアッセイにおいて試験した。
【0150】
(活性)
融合タンパク質の抗ウイルス活性を、実施例4に記載されるようなCPEアッセイにおいて決定した。このアッセイにおいて用いられる60MU/mgの比活性のインターフェロン−ベータ−1a標準に基づいて、一過的に(EBNA)発現された、リンカーを有するヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の活性は900U/mlであり、そしてリンカーを有さないものの活性は440U/mlであった。CHO発現ヒトインターフェロン−β−1a/ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の活性は50U/mlであった。
【0151】
(実施例6:インターフェロン−β−1aおよびインターフェロン−β−1a/マウスIgG2a融合タンパク質を用いて処置したマウスの血漿における、インターフェロン−β−1a抗ウイルス活性の測定)
マウス(C57/B16)に、尾静脈を通して50,000単位のインターフェロン−β−1a(バルク)または5,000単位のインターフェロン−β−1a−マウスIgG2a融合タンパク質をi.v.注射する。等しい容量のリン酸緩衝液をコントロールとして与える。
【0152】
血液を、眼窩後方での出血を介して、インターフェロンβ注射後の異なる時点(すぐ、0.25時間、1時間、4時間、24時間および48時間)でサンプリングする。1つの時点あたり少なくとも3つのマウスが存在する。全血を、抗凝固剤を含むチューブに収集し、細胞を除去し、そして得られる血漿をアッセイのときまで凍結する。血漿サンプルを、無血清アッセイ媒体中に1:10希釈し、そして0.2μmシリンジフィルターを通過させる。
【0153】
次いで、希釈したサンプルを、A549細胞を含む96ウェル組織培養プレートの指定したウェル中に力価測定する。標準のインターフェロン−β−1a(10、6.7、4.4、2.9、1.3、0.9および0.6U/ml AVONOX)および4つのサンプルを、全てのプレートで行った。細胞を、EMCウイルスを用いるチャレンジの前に、サンプルを用いて24時間にわたって前処理する。ウイルスを用いた2日間のインキュベーションに続いて、生存細胞を、MTTの溶液(リン酸緩衝液中5mg/ml)を用いて1時間染色し、リン酸緩衝液を用いて洗浄し、そしてイソプロパノール中の1.2N HClを用いて可溶化する。細胞を、450nmで読み取った。標準曲線を各プレートについて作成し、そしてこれを用いて各サンプル中のインターフェロン−β−1a活性の量を決定する。異なるマウスからのサンプルにおける活性を、図9において、時点に対するグラフにする。
【0154】
時間の関数としての、循環からのインターフェロン−β−1a融合物のより緩慢な損失は、融合タンパク質サンプルの半減期が、改変していないインターフェロン−β−1aコントロールの半減期よりもずっと長いことを示す。この研究からの第2の非常に重要な知見は、15分および60分の時点での類似の高レベルの活性によって証明されるように、ごくわずかな融合タンパク質が、分布相の間に失わることを示した。このデータは、コントロールのインターフェロン−β−1aとは異なり、インターフェロン−β−1a融合タンパク質の分布が脈管構造に主に制限されることを示す。
【0155】
(実施例7:霊長類における比較薬物動態学および薬力学)
比較研究を、インターフェロン−β−1a融合物およびネイティブなインターフェロン−β−1a(100mMリン酸ナトリウム、200mM NaCl、pH7.2中の処方されていないバルクの中間体AVONEX(登録商標)インターフェロン−β−1aとして)を用いて行い、霊長類におけるそれらの相対安定性および活性を決定する。これらの研究では、霊長類におけるこのインターフェロン−β−1a融合物の薬物動態学および薬力学を、ネイティブなインターフェロン−β−1aの薬物動態学および薬力学と比較し、そして合理的な推測がヒトにまで広げられ得る。
【0156】
(動物および方法)
(研究設計)
これは、インターフェロン−β−1a融合タンパク質と非融合インターフェロン−β−1aとの比較薬物動態学および薬力学を評価するための並行群の反復用量研究である。
【0157】
健常な霊長類(好ましくはアカゲザル)をこの研究に用いる。投与前に、全ての動物を、試験物品の投与前14日以内に2回、Lab Animal Veterinaryによって不健康の徴候について評価する;1回の評価は、最初の試験物品の投与24時間以内でなければならない。健常な動物のみが、試験物品を受ける。評価は、一般的な身体検査、ならびに基準線臨床病理およびインターフェロン−β−1aに対する基準線抗体レベルについての投与前採血を含む。全ての動物を計量し、そして体温を、試験物品投与の前24時間以内に記録する。
【0158】
12体の被験体が参加し、そして1MU/kgのインターフェロン−β−1aを融合物または非融合物のいずれかであるが他の点では同一のインターフェロン−β−1aとして受けるように3体ずつの群に割り当てられる。投与は、皮下(SC)経路または静脈内(IV)経路いずれかによる。6体の雄性動物は、試験物品をIV経路によって受け(3/処置)、そして別の6体の雄性動物は、試験物品をSC経路によって受ける(3/処置)。全ての動物は、インターフェロン−β処置に対して未処置(naive)でなければならない。各動物は、2回投与される:用量は、4週間間隔をあける。用量の容量は1.0mL/kgである。
【0159】
血液を、薬物動態学的試験のために、各注射の0、0.083、0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、8、12、24、48、72および96時間後に採血する。インターフェロン誘導性生物学的応答マーカーである血清ネオプテリン(neopterin)の測定のための血清サンプルを、試験薬物の投与の0、24、48、72、96、168、336、504時間後に採血する。
【0160】
試験期間の間の評価は、投与後30分および1時間で毒性の徴候について行われる臨床観察を含む。毎日、ケージ横(cageside)で観察を行い、全体的外観、毒性の徴候、不快、および行動の変化を記録する。体重および体温を、定期的な間隔で投与後21日を通して記録する。
【0161】
(アッセイ方法)
血清中のインターフェロンβのレベルを、細胞変性効果(CPE)バイオアッセイを用いて定量する。CPEアッセイは、インターフェロン媒介抗ウイルス活性のレベルを測定する。サンプル中の抗ウイルス活性のレベルは、血液を採血した時点でそのサンプル中に含まれる活性なインターフェロンの分子数を反映する。このアプローチは、インターフェロンβの薬物動態学を評価する標準方法である。現在の研究において用いられるCPEアッセイは、インターフェロンβが、ヒト肺癌細胞(A549,#CCL−185,ATCC,Rockville,MD)を脳心筋炎(EMC)ウイルスに起因した細胞傷害性から保護する能力を検出する。この細胞を、血清サンプルを用いて15〜20時間にわたってプレインキュベーションして、インターフェロン誘導性タンパク質の誘導および合成を可能にし、その後、このタンパク質は抗ウイルス応答を開始させる。その後、EMCウイルスを添加し、そしてさらに30時間インキュベートした後、細胞傷害性の評価をクリスタルバイオレット染色を用いて行う。内部インターフェロンβ標準ならびにインターフェロン−β−Ig内部標準を、各アッセイプレート上でサンプルを用いて同時に試験する。この標準は、天然のヒト線維芽細胞インターフェロン参照標準(WHO Second International Standard for Interferon,Human Fibroblast,Gb−23−902−53)に対して較正される。各アッセイプレートはまた、いずれの種類のインターフェロンβもEMCも含まない細胞増殖コントロールウェルを含み、そしてウイルスコントロールウェルは、細胞およびEMCを含むがインターフェロンβを含まない。標準およびサンプルを含むコントロールプレートもまた調製して、細胞増殖に対するサンプルの効果(ある場合)を決定する。これらのプレートを、ウイルスの添加を行わずに染色する。
【0162】
サンプルおよび標準を、2つの複製アッセイプレートの各々について二連で試験して、1サンプルあたり4つのデータ点を得る。4つの複製についての相乗平均濃度を記録する。このアッセイにおける検出限界は、10ユニット(U)/mlである。
【0163】
ネオプテリンの血清濃度を、市販のアッセイを用いて臨床的薬理学単位で決定する。
【0164】
(薬物動態学的方法および統計的方法)
RstripTMソフトウェア(MicroMath,Inc.,Salt Lake City,UT)を用いて、データを薬物動態学的モデルに適合させる。相乗平均濃度を、各群について時間によってプロットする。アッセイ結果は希釈で表されるので、相乗平均は、相加平均よりも適切であると考えられる。血清インターフェロンレベルを基準線値に調整し、そして検出可能でない血清濃度を5U/mlに設定する。これは、検出の下限の2分の1を表す。
【0165】
IV注入データに関して、2区画IV注入モデルを、各被験体について検出可能な血清濃度に適合させ、そしてSCデータを2区画注射モデルに適合させる。
【0166】
以下の薬物動態学的パラメータを算出する:
(i)観察されたピーク濃度Cmax(U/ml);
(ii)台形公式を用いた0〜48時間の曲線下面積AUC;
(iii)排出半減期;
およびIV注入データから(IVを用いた場合):
(iv)分布半減期(h);
(v)クリアランス(ml/h);
(vi)見かけの分布容量Vd(L)。
【0167】
WinNonlin(Version 1.0,Scientific Consulting Inc.,Apex,NC)ソフトウェアを用いて、SC注射およびIM注射後の排出半減期を算出する。
【0168】
ネオプテリンに関して、時間による相加平均を、各群について表す。基準線からの最大変化であるEmaxを算出する。Cmax、AUCおよびEmaxを、一元(one−way)分散分析に供して提示して、投与群を比較する。CmaxおよびAUCを、分析前に対数変換する;相乗平均を記録する。
【0169】
(実施例8:インターフェロンβ−1a融合物の抗脈管形成効果)
(インターフェロン−β−1a融合物が、内皮細胞増殖をインビトロで阻害する能力の評価)
ヒト静脈内皮細胞(Cell Systems,カタログ#2V0−P75)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems,カタログ#2M1−C25)を、CS−C培地キット(Cell Systems,カタログ#4Z0−500)を用いる培養中で維持する。実験24時間前に、細胞をトリプシン処理し、そしてアッセイ培地(90% M199および10%ウシ胎児血清(FBS))中に再懸濁し、そして所望の細胞密度に調整する。次いで、細胞を、ゼラチンでコーティングした24ウェルプレートまたは96ウェルプレートに、12,500細胞/ウェルまたは2,000細胞/ウェルのいずれかで、それぞれプレートする。
【0170】
一晩のインキュベーション後、アッセイ培地を、20ng/mlのヒト組換え塩基性線維芽細胞増殖因子(Becton Dickinson,カタログ#40060)および種々の濃度の、融合インターフェロン−β−1aタンパク質および非融合のインターフェロン−β−1aタンパク質またはポジティブコントロール(エンドスタチンは、bFGFに対する抗体がポジティブコントロールとして用いられ得るように、ポジティブコントロールとして用いられ得る)を含有する、新鮮な培地で置換する。最終容量を、24ウェルプレートで0.5mlに、または96ウェルプレート中で0.2mlに調整する。
【0171】
72時間後、細胞をCoulter計数のためにトリプシン処理するか、CyQuant蛍光読み取りのために凍結するか、または[3H]チミジンで標識する。
【0172】
このインビトロアッセイは、本発明のヒトインターフェロン−β分子を、インビボで抗脈管形成効果を示し得る、内皮細胞増殖に対する効果について試験する。O’Reilly,M.S.,T.Boehm,Y.Shing,N.Fukal,G.Vasios,W.Lane,E.Flynn,J.Birkhead,B.Olsen,およびJ.Folkman,(1997),Endostatin:An Endogenous Inhibitor of Angiogensis and Tumor Growth.Cell 88,277−285を参照のこと。
【0173】
(実施例9:インターフェロン−β−1a/Ig融合物の抗脈管形成効果および抗新生脈管形成効果を試験するためのインビボモデル)
種々のモデルを、本明細書中に記載の分子の抗脈管形成効果および抗新生脈管形成効果を試験するために開発した。これらの分子のいくつかは、米国特許第5,733,876号(1998年3月31日:「Method of inhibiting angiogenesis」)および同第5,135,919号(1992年8月4日:「Method and pharmaceutical composition for the inhibition of angiogenesis」)に記載されている。他のアッセイとしては、以下が挙げられる:S.TaylorおよびJ.Folkman;Nature,297,307(1982)およびR.Crum.S.SzaboおよびJ.Folkman;Science.230.1375(1985)の外皮のない絨毛尿膜(CAM)アッセイ;Folkman,J.ら;J.Exp.Med.,133,275(1971)のマウス背側(dorsal)肺胞嚢法の抗脈管形成(antigiogenesis)モデルおよびGimbrone,M.A.Jr.ら,J.Natl.Cancer Inst.52,413(1974)のラット角膜微小ポケットアッセイ。このラット角膜微小ポケットアッセイでは、EVA(エチレン−ビニルアセテートコポリマー)ペレット中に含浸した500ngの塩基性FGF(ウシ、R & D Systems,Inc.)を各角膜に移植することによって、Sprague−Dawley系統(Charles,River,Japan)の成体雄性ラットにおいて角膜の血管新生が誘導される。
【0174】
インターフェロン−β/Ig融合物を、動物モデルにおいて抗脈管形成効果について試験するための他の方法としては、オリジナルのCancer Chemotherapy Reports,第3部,第3巻,第2号,1971年9月および増補のIn Vivo Cancer Models,1976−1982,NIH刊行物番号84−2635,1984年2月に記載されるような、新規の潜在的な抗癌剤をスクリーニングするためのプロトコルが挙げられる(が、これらに限定されない)。げっ歯類モデルにおけるインターフェロンβ誘導物の抗脈管形成活性を評価するためには、I型インターフェロンの種障壁があるので、げっ歯類インターフェロン−β/:Ig融合物調製物を作製する。このようなスクリーニング方法は、皮下に移植したLewis Lung Carcinomaに対するマウスインターフェロン−β/Ig融合物の抗脈管形成効果について試験するためのプロトコルによって例示される。
【0175】
(腫瘍株の起源)
1951年に、C57BL/6マウスにおいて肺の癌として自然発生した。
【0176】
試験手順のまとめ:腫瘍フラグメントを、B6D2F1マウスの腋窩部の皮下に移植する。試験薬剤(すなわち、本発明の融合タンパク質)を、腫瘍移植後、複数日、種々の用量で皮下(SC)または腹腔内(IP)に投与する。測定するパラメーターは、中間生存時間である。結果を、コントロール生存時間の百分率として表す。
【0177】
(動物)
繁殖:C57BL/6マウス
試験:B6D2F1マウス
体重:マウスは、雄性については18gを、そして雌性については17gを最少体重として、3gの体重範囲内にあるべきである
性別:1つの性別を全ての試験について用い、そしてコントロール動物を1つの実験において用いる
供給源:可能であれば、1つの実験における全ての動物について1つの供給源。
【0178】
(実験サイズ)
1試験群あたり10匹の動物。
【0179】
(腫瘍移植)
増殖:
フラグメント:皮下ドナー腫瘍の2〜4のフラグメントを調製する
時間:13〜15日
部位:フラグメントを、鼡径部において穿刺によって腋窩部に皮下移植する
試験:
フラグメント:皮下ドナー腫瘍の2〜4mmのフラグメントを調製する
時間:13〜15日
部位:フラグメントを、鼡径部において穿刺によって腋窩部に皮下移植する。
【0180】
(試験スケジュール)
0日目:腫瘍を移植する。細菌培養を行う。奇数番号の実験物毎にポジティブコントロール化合物を試験する。材料を調製する。死亡を毎日記録する。
1日目:培養物をチェックする。汚染されていた場合、実験物を捨てる。動物をランダム化する。指示されたように処理する(1日目および翌日)。
2日目:培養物を再度チェックする。汚染されていた場合、実験物を捨てる。
5日目:2日目および日の最初の試験薬物毒性評価を検量する。
14日目:初期死亡日を調節する。
48日目:採取なしの日を調節する。
60日目:実験を終了し、そして評価する。肺を肉眼で(grossly)腫瘍に関して検査する。
【0181】
(精度管理)
ポジティブコントロール化合物(NSC 26271(100mg/kg/注射の用量のCytoxan))を全ての奇数番号の実験物において予定し、そのレジメンは、1日目のみが腹腔内である。ポジティブコントロールに関する、より低い試験/コントロール限界は140%である。受け入れ可能な未処理のコントロール中間生存時間は、19〜35.6日である。
【0182】
(評価)
測定されるパラメーターは、中間生存時間である。1日目および5日目についての平均動物体重を計算し、全ての試験群について試験/コントロール比を算出する。開始(staging)日および最終評価日についての平均動物体重を計算する。試験/コントロール比を、5日目に65%を越える生存動物(survivor)を有する全ての試験群について計算する。86%未満の試験/コントロール比の値は、毒性を示す。過度の体重変化の相違(試験−コントロール)もまた、毒性の評価の際に用いられ得る。
【0183】
(活性についての基準)
140%以上の初期試験/コントロール比は、中程度の活性を実証するために必要であるとみなされる。150%以上の再現性のある試験/コントロール比の値は、有意に活性であるとみなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【公開番号】特開2010−268810(P2010−268810A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165349(P2010−165349)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【分割の表示】特願2000−577197(P2000−577197)の分割
【原出願日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【分割の表示】特願2000−577197(P2000−577197)の分割
【原出願日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
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