説明

インターロイキン−15のアンタゴニスト

【課題】同種移植片拒絶反応および移植片対宿主疾患を治療する薬剤組成物の提供。
【解決手段】哺乳類のインターロイキン−15(「IL−15」)のアンタゴニストが開示され、そしてそれには各々がIL−15R α−サブユニットに結合することが可能であり、かつIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかを介してシグナルを伝達することが不可能な、IL−15の突然変異体および改変IL−15分子。さらに、IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかを介するシグナル伝達を実施することを阻害する、IL−15に対するモノクローナル抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的には、本明細書でインターロイキン−15(「IL−15」)として引用される哺乳類上皮由来T細胞因子ポリペプチドのアンタゴニストに関する。本発明はより具体的には、IL−15の突然変異体、IL−15に対するモノクローナル抗体、およびIL−15複合体に関し、これらは各々インビトロCTLLアッセイにおいてT−リンパ球の増殖を刺激化するIL−15の能力を有意に減少させる。IL−15活性の減少が所望される、哺乳類の様々な疾患状態を治療するための方法も本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インターロイキン−15はIL−2依存性細胞株CTLL−2の増殖を支援することができる既知のT−細胞増殖因子である。IL−15はGrabsteinらにより、Science, 264:965 (1994) に、114アミノ酸の成熟蛋白質をもたらす、48アミノ酸リーダー配列を含む162アミノ酸前駆体ポリペプチドを含む分泌型サイトカインとして初めて報告された。 Grabsteinらは更に、316bpの5’非コーディング領域および486bpの読み取り枠(もしくは停止コドン用の3bpを含む場合には489bpの読み取り枠)、および400bpの3’非コーディング領域を含む、162アミノ酸前駆体をコードする全長ヒトcDNAのクローニングも記載している。
【0003】
IL−15はIL−2と多くの性質を共有している。これらの性質には、ヒトおよびマウスのT細胞の増殖および活性化、リンホカインにより活性化されたキラー細胞(LAK)活性、ナチュラルキラー細胞(NK)活性、および細胞障害性Tリンパ球(CTL)活性の誘導、ならびにB細胞の増殖と分化との同時刺激化がある。
【0004】
それに加えIL−15とIL−2とは、T細胞膜表面上の少なくとも3つの異なるレセプターサブユニットに結合することが可能な構造的に相同な分子である。IL−2レセプターは少なくとも3つのサブユニット、すなわちα、β、およびγを含む(Toshikazu et al., Science, 257:379 (1992))。IL−15とIL−2の両方共は共通のβ−γサブユニット複合体への結合性を共有している一方で、IL−15とIL−2の各々が特異的α−レセプターサブユニット(各々、IL−15Rα およびIL−2Rα)に結合する。最近ではIL−15Rαが発見され、かつ同時係属中の米国特許出願第08/300,903号の主題となっている。IL−2レセプターのα−鎖に対する抗体(抗−IL−2Rα)はIL−15結合には何の効果も有さない(Grabstein et al., 前述)。IL−2レセプターのβ−サブユニットに対する抗体、すなわちTU27、TU11、もしくはMikβ1はしかしながらIL−15の活性を遮断することが可能であり、このことによりIL−15がシグナル伝達のためにβ−サブユニットを用いることが示唆される。同様に、IL−2レセプターのγ−鎖がシグナル伝達に必要とされる(Giri et al., EMBO J., 13:2822 (1944))。IL−15レセプター複合体のβおよびγ−サブユニットの組合せはトランスフェクトさせたCOS細胞上のIL−15に結合するが、ただし、いずれのサブユニットも単独では結合を生じない。
【0005】
所定の疾患状態および生理学的状態はT細胞により媒介される。このような疾患には、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、自己免疫疾患、リューマチ性関節炎、炎症性腸疾患、皮膚障害、インシュリン依存性糖尿病、眼障害、および突発性ネフローゼ症候群/突発性膜性腎症が含まれる。実際のところ、同種移植片拒絶反応および移植片対宿主疾患(GVHD)はIL−2レセプター発現の増加に関連している。外来性組織適合性抗原に応答して活性化されるT細胞がIL−2レセプター複合体を発現するようである。様々な治療法が提案および研究されている。例えば、Tinubuら(J. Immunol.,153:4330 (1994))は、抗IL−2Rβモノクローナル抗体であるMikβ1が霊長類の心臓同種移植片の生残期間を延長させることを報告した。急性同種移植片拒絶反応に関連してCD4−およびCD8−発現性細胞上にはIL−2Rβサブユニット発現が増加し、このことによりIL−2Rβサブユニット発現が同種反応性T細胞では増加するように思えることが示唆される。例えば、Nigumaら,Transplantation, 52:296 (1991)、を参照されたい。
【0006】
しかしながら本発明以前には、GVHDを治療するための手段として、または、同種移植生残率を亢進させるための、IL−15リガンド−レセプター相互作用に焦点を当てた治療法は全く存在しなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、IL−15アンタゴニスト並びにヒト疾患の治療のためにそのアンタゴニストを用いる方法に関する。具体的にはそのような治療法には哺乳類における同種移植片の生残率を亢進させること、およびGVHDを治療することが含まれる。IL−15アンタゴニストは、IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかを介して細胞へシグナルを伝達することを防ぎ、よってIL−15の生物学的活性を拮抗することにより効力を発揮する。本発明の所定のアンタゴニストはIL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットに結合することを妨害する一方で、 IL−15のIL−15Rαへの結合は実質的には妨害しない。
【0008】
本発明のアンタゴニストには、成熟IL−15もしくは天然のIL−15の突然変異体が含まれ、この場合IL−15には、IL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットへの結合の際に機能する、一つもしくは複数のアミノ酸残基または領域に突然変異を生じさせてある。このような突然変異体は IL−15Rαに対するIL−15の高親和性を維持しながらも、IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかを介して細胞にシグナルを伝達することを阻害する。典型的にはこのような突然変異体は重要な位置(例えば、各々が配列番号1および2に示されるサルおよびヒトのIL−15のAsp56もしくはGln156である)での追加、欠失、もしくは置換により作製される。Asp56がIL−15レセプター複合体のβ−サブユニットとの結合に影響を及ぼし、そしてGln156がそのγ−サブユニットとの結合に影響を及ぼすものと考えられる。
【0009】
さらに、本発明は、成熟IL−15と免疫反応し、かつIL−15レセプター複合体へのシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体を含む。
IL−15Rαに結合する能力を保持するが、IL−15レセプター複合体のβ−および/またはγ−サブユニットに対する親和性が実質的に減少しているかもしくはそのような親和性を全く有さない改変IL−15分子も更に本発明の範囲内に含まれる。改変IL−15分子は、結合が妨害もしくは妨げられるような様式で(通常は標的結合部位もしくはその近傍での改変)その改変が作製されている限り、いかなる形態でもよい。このような改変IL−15分子の例には、IL−15/IL−15レセプター結合を立体的に妨害する一つもしくは複数の化学基に共有結合により複合体形成させられる成熟IL−15もしくはIL−15の突然変異体がある。例えば成熟IL−15はIL−15Rαに対するIL−15の高親和性を維持しながらも、そのIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−鎖に対するIL−15の結合を阻害することができるIL−15分子上の特異的部位に部位特異的グリコシル化を含ませてもよく、あるいは例えばポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシPEG(mPEG)、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−L−リシンもしくはポリヒスチジン)、アルブミン、ゼラチン等の基に共有結合により結合させてもよい。その基の立体障害特性を利用することにより、特異的レセプターサブユニットへの結合を拮抗することができる。PEG鎖を、例えばIL−2、GM−CSF、アスパラギナーゼ、免疫グロブリン、ヘモグロブリン、およびその他のもののような蛋白質に対して複合体形成させることのの他の利点は、当該技術分野に知られている。例えば、PEGがインビボでの循環半減期を延長させること(例えば、Delgado, et al., Crit. Rev. Ther. Drug. Carr. Syst., 9:249 (1992)、を参照されたい)、溶解度を高めること(例えば、Katre, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 84:1487 (1987)、を参照されたい)、および免疫原性を減少させること(例えば、Katre, N.V., Immunol. 144:209 (1990)、を参照されたい)が知られている。
【0010】
本発明は更に、T細胞上でのIL−15活性の減少が所望される疾患もしくは症状を治療する方法における上記アンタゴニストの使用にも関する。そのような疾患には、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、自己免疫疾患、リューマチ性関節炎、炎症性腸疾患、皮膚疾患、インシュリン依存性糖尿病、眼疾患、および突発性ネフローゼ症候群/突発性膜性腎症が含まれる。。具体的には同種移植片拒絶反応の際には、IL−15活性はその移植片に対する宿主免疫応答を、そして最終的には拒絶反応をもたらすことがある。同様にGVHDでは、移植片(典型的には、骨髄移植片)は宿主に対する免疫応答をもたらす。本発明のIL−15アンタゴニストによるこのような活性の抑制は、移植片残存を亢進および延長させるという点、ならびにGVHDを治療するという点で有利でありうる。
【0011】
様々な研究者らが、例えば抗ヒトIL−2α−レセプターモノクローナル抗体、抗−TACのような抗体を用いることによる移植片生残の延長を報告している。例えば、Reedら,Transplantation, 47:55-59 (1989) を参照されたい(この文献では、抗−TACは霊長類の腎臓同種移植片移を改善したことが示されている)。更にBrownら、Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2663 (1991) は、霊長類の心臓同種移植片生残を延長させる際のヒューマナイズド抗−TACの使用を記載している。Kirkmanら、Transplantation, 51:107 (1991)、もやはり初期同種移植片拒絶反応を回避させる際の抗−TACを必要とする臨床試験を記載している。IL−15はIL−2に類似する多くの生物学的活性を保持し、そして実際にIL−2と所定のレセプターサブユニットを共有するため、疾患状態におけるIL−15の有害活性の妨害が顕著な治療的可能性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、IL−15レセプター複合体を介するIL−15のシグナル伝達を妨害するIL−15活性のアンタゴニストに関する。具体的には、本発明のIL−15アンタゴニストは、(a)IL−15レセプターのα−サブユニットへの結合が可能であり、かつIL−15レセプター複合体のβ−および/もしくはγ−サブユニットを介するシグナルの伝達が不可能である成熟IL−15もしくは天然IL−15の突然変異体;(b) IL−15が、IL−15レセプター複合体のβ−および/もしくはγ−サブユニットを介してシグナル伝達を実施することを阻害する、IL−15に対するモノクローナル抗体;ならびに(c)IL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかを介してシグナル伝達を実施するIL−15の能力を妨害するが、IL−15Rαに対するIL−15の結合は妨害しないような、ある化学基に共有結合により連結されているIL−15分子、を含む群から選択される。先に記載される突然変異体をコードするDNAも本発明の範囲内に含まれる。
【0013】
本明細書に用いられる際には「組換えDNA技術」もしくは「組換え」は、異種ペプチドの生合成を可能にさせるためにクローン化DNA配列もしくは合成DNA配列で形質転換もしくはトランスフェクトさせてある微生物(例えば、細菌、昆虫、もしくは酵母)または哺乳類細胞もしくは生物体(例えば、トランスジェニック体)から特異的ポリペプチドを産生するための技術および方法を意味する。天然のグリコシル化パターンは哺乳類細胞発現システムを用いてのみ達成されるであろう。酵母によっては特有のグリコシル化パターンが提供される。原核生物細胞発現(例えば、大腸菌(coli))は一般的にはグリコシル化されていないポリペプチドを産生するであろう。
【0014】
「核酸配列」は、個別の断片の形態をとるか、あるいは大きめのDNA構築物の構成成分としてのポリヌクレオチドを意味し、このポリヌクレオチドは少なくとも一旦実質的に純粋な形態をとり(すなわち、混入している内因性物質を含まない)かつ標準的な生化学的方法(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)、に概要が記載されている方法)による同定、操作、および回収を可能とさせる量もしくは濃度で単離されたDNAもしくはRNAから取得されている。このような配列は、真核生物遺伝子内に典型的に存在する内部非翻訳配列もしくはイントロンにより妨害されていない読み取り枠の形態で提供されることが好ましい。非翻訳化DNAの配列は読み取り枠から見て5’もしくは3’の位置に存在してもよく、この場合、同配列はコーディング領域の操作もしくは発現を妨害しない。
【0015】
「組換え発現ベクター」は、(1)遺伝子発現の際に調節的役割を担う遺伝子要素(一つもしくは複数)(例えば、プロモーターもしくはエンハンサー)、(2)IL−15もしくはIL−15突然変異体をコードする構造配列もしくはコーディング配列、ならびに(3)適切な転写および翻訳開始配列、ならびに所望により停止配列のアセンブリーを含む転写単位を含むプラスミドを意味する。用いることができる様々な調節要素の代表例が以下に論議される(「組換えDNA技術」を参照されたい)。酵母発現系における使用が意図される構造要素ハ、酵母宿主細胞による翻訳されたポリペプチドの細胞外分泌を可能にさせるリーダー配列を含むことが好ましい。別法では、細菌性発現系では、組換えポリペプチドがN−末端メチオニン残基を含んでもよい。このN−末端メチオニン残基はその後、発現された組換えポリペプチドから開裂され、更なる精製に適した産物を提供することができる。
【0016】
「組換え微生物性発現系」は、染色体DNA内に組換え転写単位を安定に組み込ませてあるか、もしくは内在性プラスミドの構成成分としての組換え転写単位を保持する、例えば細菌(例えば、大腸菌(coli)、または酵母(例えば、S.セルビジエ(cerevisiae))のような適切な宿主微生物の実質的に均質な単一培養物を意味する。一般的には組換え微生物性発現系を含む宿主細胞は単一祖先の形質転換細胞の子孫である。組換え微生物発現系は、発現予定の構造的ヌクレオチド配列に連結された調節要素の誘導の際に異種ポリペプチドを発現するであろう。
【0017】
「IL−15突然変異体(IL-15 mutein)」もしくは「IL−15の突然変異体(muteins of IL-15)」は、IL−15のアンタゴニストを産生する目的で、本発明に従って突然変異を生じさせてある、配列番号1のアミノ酸49〜162の配列を有するサルIL−15分子、または配列番号2のアミノ酸49〜162の配列を有するヒトIL−15分子(いずれも成熟した分子もしくは天然の分子である)を意味する。このようなIL−15突然変異体は、IL−15αサブユニットに結合することは可能であり、かつIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することは不可能である。
【0018】
IL−15の調製
ヒトもしくはサルのIL−15は、Grabsteinら(Science, 264;965 (1994))(これは引用により本明細書に取り込まれる)により記載される方法に従うか、もしくは例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような常法により取得することができる。ヒトIL−15 cDNAの寄託は1993年2月19日にthe American Type Culture Collection, Rockville, MD, USA (ATCC) に行われ、かつ受託番号69245が割り振られている。この寄託物は「I41−hETF」と命名されている。この寄託はブタペスト条約の規定に従って実施された。
【0019】
IL−15突然変異体
アンタゴニストを産生することができる多くの可能なIL−15の突然変異が存在する。このような突然変異はβ−もしくはγ−サブユニットのシグナル伝達に関与すると考えられる特異的アミノ酸部位で作製することができるか;あるいは突然変異を、β−もしくはγ−サブユニットのシグナル伝達にとって必要であると考えられるIL−15の全領域にわたって作製することができる。典型的には、突然変異はアミノ酸残基の添加、置換、もしくは欠失として作製することができる。好ましくは置換もしくは欠失突然変異体が好ましく、置換突然変異体が最も好ましい。
【0020】
Asp56がIL−15レセプター複合体のβ−サブユニットとの結合に影響を及ぼし、そしてGln156がγ−サブユニットとの結合に影響を及ぼすものと考えられる。部位Asp56およびGln156の近傍もしくはその位置で天然に存在する他のアミノ酸残基を添加もしくは置換することは、IL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかもしくは両方に対するIL−15の結合に影響を及ぼすことができる。実際、陰性に帯電しているアスパラギン酸残基を除去し、そしてそれを陰性に帯電している別の残基に置換することでは、アスパラギン酸が例えばアルギニンのような陽性に帯電しているアミノ酸、または例えばセリンもしくはシステインのような帯電していない残基で置換された場合と同じようにはレセプター結合を遮断する効力は発揮されないことがある。
【0021】
IL−15突然変異体の組換え産生は、まずIL−15突然変異体をコードするDNAクローン(すなわち、cDNA)の単離を必要とする。cDNAクローンは哺乳類IL−15ポリペプチドを発現する初期細胞もしくは細胞株に由来する。最初に細胞の全mRNAを単離し、その後に逆転写によりそのmRNAからcDNAライブラリーを作製する。本明細書内に提供されるDNA配列情報を用いて前述したように種間ハイブリダイゼーションプローブもしくはPCRプライマーを設計し、cDNAクローンを単離および同定することができる。このようなcDNAクローンは配列番号1および配列番号2の核酸1〜486の配列を有する。
【0022】
単離されたcDNAは内部非翻訳配列もしくはイントロンにより中断されない読み取り枠の形態をとることが好ましい。哺乳類IL−15ポリペプチドをコードする適切なヌクレオチド配列を含むゲノムDNAも、コーディング配列を構築する際に有用な遺伝子情報の源として用いることができる。単離されたcDNAを当該技術分野に知られる技術を利用して突然変異を生じさせて、IL−15アンタゴニスト活性を提供することができる。以下の実施例1はIL−15突然変異体を調製するのに用いることができる具体的方法を記載する。
【0023】
活性に必要とされないような、アミノ酸残基もしくは配列の様々な追加もしくは置換、あるいは末端もしくは内部の残基もしくは配列の欠失をコードする同等のDNA構築物も本発明により包含される。例えば、IL−15内のN−グリコシル化部位をグリコシル化を妨げるように改変させて、哺乳類および酵母の発現系において炭化水素類似体の減少した発現を行わせることもできる。真核生物のポリペプチド内のN−グリコシル化部位は、アミノ酸トリプレットAsn−X−Yを特徴とし、先の式中、XはPro以外のいずれかのアミノ酸であり、そしてYはSerもしくはThrである。サルのIL−15蛋白質はこのようなトリプレットを、配列番号1のアミノ酸127〜129および160〜162の2カ所に含む。ヒトIL−15蛋白質はこのようなトリプレットを、配列番号2のアミノ酸119〜121、127〜129、および160〜162の3カ所に含む。これらのトリプレットをコードするヌクレオチド配列に対する適切な置換、追加、もしくは欠失は、Asn側鎖での炭化水素残基の結合の阻害をもたらすであろう。例えば、Asnが異なるアミノ酸により置換されるように選択された単一ヌクレオチドの変化はN−グリコシル化部位を不活化させるに十分である。蛋白質中のN−グリコシル化部位を不活化するための既知の方法には、引用により本明細書に取り込まれる米国特許第5,071,972号および欧州特許出願第276,846号がある。
【0024】
組換え発現ベクターには、IL−15突然変異体をコードする合成DNAもしくはcDNA由来DNA断片がある。 IL−15突然変異体をコードするDNAは、例えば哺乳類、微生物、ウイルス、もしくは昆虫の遺伝子に由来するもののような適切な転写もしくは翻訳調節用または構造ヌクレオチド配列に機能可能なように連結される。調節配列の例には例えば、遺伝子発現の際に調節的役割を果たす遺伝子配列(例えば、転写プロモーターもしくはエンハンサー)、転写を調節するための所望によるオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の開始および停止を制御する適切な配列が含まれる。その調節配列が機能的に構造遺伝子に関連している際には、ヌクレオチド配列は機能可能なように連結されている。例えば、シグナルペプチド(分泌用リーダー)のためのDNA配列は、そのシグナルペプチドが前駆体アミノ酸配列の一部として発現され、かつIL−15突然変異体の分泌に関与する場合には、IL−15突然変異体のための構造遺伝子DNA配列に機能可能なように連結されうる。更には、プロモーターヌクレオチド配列は、そのプロモーターヌクレオチド配列が構造遺伝子ヌクレオチド配列の転写を制御する場合には、コーディング配列(例えば、構造遺伝子DNA)に機能可能なように連結される。その上更に、リボソーム結合部位は、そのリボソーム結合部位が翻訳を促すようにベクター内に配置される場合には、構造遺伝子ヌクレオチドコーディング配列(例えば、IL−15突然変異体)に機能可能なように連結されうる。
【0025】
IL−15突然変異体の発現に適する宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下に置かれる原核生物、酵母、もしくは高等真核生物細胞が含まれる。原核生物は、例えば大腸菌(E. coli)もしくは桿菌等のグラム陰性もしくはグラム陽性の生物体を含む。形質転換に適する原核生物宿主細胞には例えば、大腸菌(E. coli)、バチルス スブチリス(Bacillus subtillis)、サルモネラ ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus)内に含まれる様々な他の種が含まれる。以下に一層詳細に論議されるように、適切な宿主細胞の例には、例えばS. セレビジエ(S. cerevisiae)等の酵母、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Overy (CHO))細胞等の哺乳類細胞系、もしくは昆虫細胞が含まれる。本明細書に開示されるDNA構築物に由来するRNAを用いてIL−15突然変異体を産生するには無細胞翻訳系も利用することができる。細菌、昆虫、酵母、および哺乳類細胞性宿主を用いる使用法のための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、例えばPouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, 1985、に記載されている。
【0026】
IL−15突然変異体が酵母宿主細胞内で発現される場合には、IL−15突然変異体をコードするヌクレオチド配列(例えば、構造遺伝子)はリーダー配列を含んでもよい。このリーダー配列は、翻訳されたポリペプチドの酵母宿主細胞による細胞外分泌の改善を可能にし得る。
【0027】
IL−15突然変異体は酵母宿主細胞(好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、S. セレビジエ(S. cerevisiae))からのもの)内で発現してもよい。ピキア(Pichia)もしくはクルイベロミセス(Kluyveromyces)等の他の属の酵母を利用してもよい。酵母ベクターは、2μ酵母プラスミドからの複製起点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、および転写停止用の配列を含むであろう。酵母ベクターが複製起点および選択用マーカーを含むことが好ましい。酵母ベクターに適するプロモーター配列は、メタロチオネイン、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255:2073, 1980)、もしくは他の解糖酵素(Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg. 7:149, 1968; and Holland et al., Biochem. 17:4900, 1978)(例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼ)のためのプロモーターを含む。酵母発現の際の使用のための他の適切なベクターおよびプロモーターは、Hitzemanの欧州特許出願公開第73,657号に更に詳細に記載されている。
【0028】
酵母ベクターは、大腸菌(E. coli)内での選択および複製のために、例えばpBR322からのDNA配列(Amp遺伝子および複製起点)を用いて組み立てることができる。酵母発現構築物内に含まれることができる他の酵母DNA配列には、グルコース抑制性ADH2プロモーターおよびα−因子分泌リーダーを含む。ADH2プロモーターはRussellら(J. Biol. Chem. 258:2674, 1982)およびBeierら(Nature 300:724, 1982)により記載されている。酵母のα−因子リーダー配列は異種ポリペプチドの分泌を指令する。このα−因子リーダー配列はプロモーター配列と構造遺伝子配列との間に挿入されることがしばしばである。例えば、Kurjanら、Cell 30:933, 1982;およびBitterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 5330, 1984、を参照されたい。このリーダー配列をその3’末端付近で改変し、一つもしくは複数の制限部位を含ませてもよい。このことにより構造遺伝子へのリーダー配列の融合が容易になるであろう。
【0029】
酵母の形質転換プロトコールは当業者に知られている。このようなプロトコールの一つがHinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 75: 1929, 1978により記載されている。Hinnenらのプロトコールは選択培地中でTrp形質転換体を選択し、その選択培地は0.67%の酵母窒素塩基、0.5%のカザミノ酸、2%のグルコース、10mg/mlのアデニン、および20mg/mlのウラシルでできている。
【0030】
発現を誘導させるために、ADH2プロモーター配列を含むベクターにより形質転換された酵母宿主細胞を「リッチ」培地中で増殖させてもよい。リッチ培地の一例は、80mg/mlのアデニンおよび80mg/mlのウラシルを添加した、1%酵母エキストラクト、2%ペプトン、および1%グルコースからできた培地である。ADH2プロモーターの抑制は、グルコースが培地から消費された時点で失われる。
【0031】
あるいは、大腸菌(E. coli)等の原核生物宿主細胞内ではIL−15突然変異体は、原核生物宿主細胞内の組換えポリペプチドの発現を容易にさせるためにN−末端メチオニン残基を含むことがあってよい。このN−末端Metは発現された組換えIL−15突然変異体から開裂されてよい。
【0032】
組換えIL−15突然変異体構造遺伝子ヌクレオチド配列を保持する組換え発現ベクターを適切な宿主微生物もしくは哺乳類細胞株内にトランスフェクトもしくは形質転換させる。
【0033】
原核生物宿主細胞内にトランスフェクトされた発現ベクターは一般的には一つもしくは複数の表現型選択用マーカーを含む。表現型選択用マーカーは例えば、抗生物質耐性を付与するかもしくは独立栄養性の要件を共給する蛋白質をコードする遺伝子、およびその宿主内での増幅を確実に実施させるためにその宿主により認識される複製起点である。原核生物宿主細胞にとっての他の有用な発現ベクターは、市販品として入手可能なプラスミドに由来する細菌起源の選択用マーカーを含む。この選択用マーカーはクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝子要素を含むことができる。pBR322はアンピリシンとテトラサイクリンに対する耐性のための遺伝子を含み、そしてそのため形質転換させた細胞を同定するための簡単な手段を提供する。pBR322の「主鎖」部分を適切なプロモーターおよびIL−15突然変異体構造遺伝子配列と連結させる。他の市販品として入手可能なベクターには例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals社, Uppsala, Sweden)およびpGEM1(Promega Biotec社,Madison, WI, USA)がある。
【0034】
プロモーター配列は組換え原核生物宿主細胞発現ベクターについて一般に用いられる。一般のプロモーター配列には、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Chang et al., Nature 275:615, 1978; and Goeddel et al., Nature 281:544, 1979)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucl. Acids Res. 8:4057, 1980;および欧州特許出願公開第36,776号)、およびtacプロモーター(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989))が含まれる。特に有用な原核生物宿主細胞発現系はλファージλPプロモーターおよびcI857ts不耐熱性リプレッサー配列を利用する。λPプロモーターの誘導体を取り込む、the American Type Culture Collectionから取得することができるプラスミドベクターには、プラスミドpHUB2(大腸菌(E. coli)株JMB9(ATCC 37092)内に存在する)およびpPLc28(大腸菌(E. coli)RR1(ATCC 53082)内に存在する)が含まれる。
【0035】
哺乳類もしくは昆虫の宿主細胞培養系も組換えIL−15突然変異体を発現させるのに利用することができる。適切な哺乳類宿主細胞株の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(Gluzman et al., Cell 23:175, (1981); ATCC CRL 1651)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、CHO細胞、HeLa細胞(ATCC CCL 2)およびBHK(ATCC CRL 10)細胞株がある。適切な哺乳類発現ベクターは、例えば複製起点、プロモーター配列、構造遺伝子に連結されているエンハンサー、5’もしくは3’に近接する他の転写されない配列、例えばリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供給部位および受容部位、ならびに転写停止配列のような転写されない要素を含む。
【0036】
哺乳類宿主細胞発現ベクター中の転写および翻訳制御配列はウイルス源から提供されうる。例えば、一般に用いられる哺乳類細胞のプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマ(Polyoma)、アデノウイルス2(Adenovirus 2)、サル ウイルス40(Simian Virus 40)(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルスから取得される。
【0037】
SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列(例えば、SV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位)を用いて哺乳類宿主細胞内の構造遺伝子配列の発現に必要とされる他の遺伝子要素を提供してもよい。ウイルスの初期および後期プロモーターが特に有用である。なぜなら、両者ともがウイルスの複製起点も含み得る断片としてウイルスゲノムから容易に取得されるためである(Fiers et al., Nature 273:113, 1978)。SV40ウイルス複製起点部位内に位置するHindIII部位からBglI部位にまでに亙る約250bpの配列が含まれる限り、より小さい、またはより大きいSV40断片も用いることができる。
【0038】
例示的哺乳類発現ベクターは、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol. 3:280, 1983)により記載される要領で構築することができる。更なる有用な哺乳類発現ベクターは、1990年2月14日に出願された米国特許出願第07/480,694号および米国特許5,350,683号に記載されている。
【0039】
組換えIL−15突然変異体の精製
一般的に、IL−15突然変異体ポリペプチドは、形質転換させた宿主細胞をIL−15突然変異体ポリペプチドを発現させるのに必要な培養条件下で培養することにより調製することができる。得られる発現突然変異体をその後、培養培地もしくは細胞抽出物から精製することができる。IL−15突然変異体は、例えばAmicon社もしくはMillipore Pellicon社の限外濾過装置のような市販品として入手可能な蛋白質濃縮用フィルターを用いて濃縮することができる。濃縮段階を含む場合も、もしくは含まない場合も、その培養培地を例えば疎水性クロマトグラフィー媒質のような精製用マトリックスに適用させることができる。フェニルセファロース(Phenyl Sepharose)(登録商標)CL−4B(Pharmacia社)が好ましい媒質である。別法では、陰イオン交換樹脂を用いることができ、例えば、遊離の(pendant)ジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスもしくは基質を用いることができる。このマトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、もしくは蛋白質精製の際に共通して利用される他のタイプのものもよい。別法ではゲル濾過用媒質を用いることもできる。
【0040】
最終的には、例えば、遊離のブチル基もしくは他の脂肪族基を有するシリカゲルのような疎水性RP−HPLC媒質を利用する、一つもしくは複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)段階を利用して、IL−15突然変異体を更に精製することができる。Sセファロース(Pharmacia社)の陽イオン交換カラムを最終緩衝液交換工程として用いてもよい。更には、前述の慣用化された精製工程の内の幾つかもしくは全てを様々な組合せで利用して、実質的に均一な組換え蛋白質を提供することもできる。
【0041】
細菌培養物内で産生される組換え蛋白質は通常、始めの宿主細胞破壊、遠心分離、不溶性ポリペプチドの場合の細胞ペレットからの抽出あるいは可溶性ポリペプチドの場合の上清からの抽出、そしてその後の1回もしくは複数回の、濃縮、塩析、イオン交換もしくはサイズ排除クロマトグラフィーの段階により単離される。最終的にはRP−HPLCを最終精製段階用に利用することができる。微生物細胞は、凍結−解凍サイクル、超音波処理、機械的破壊、もしくは細胞溶解剤の使用を初めとするいずれかの常法により破壊することができる。
【0042】
形質転換させた酵母宿主細胞を利用して、分泌ポリペプチドとしてIL−15突然変異体を発現させることが好ましい。酵母宿主細胞発酵物からの分泌組換えポリペプチドは、Urdalら(J. Chromatog. 296:171, 1984)により開示されたものと類似する方法により精製することができる。Urdalらは、準備されたHPLCカラム上での組換えヒトIL−2の精製のための2つの連続的逆相HPLC段階を記載している。
【0043】
IL−15(配列番号1に示されるアミノ酸残基49〜162の配列を有するサルのIL−15、もしくは配列番号2に示されるアミノ酸残基49〜162の配列を有するヒトのIL−15)のアミノ酸残基Asp56もしくはGln156の内の少なくとも一つが欠失しているか、もしくは天然に存在する異なるアミノ酸残基で置換されているIL−15の突然変異体を用いることが好ましい。置換および/または欠失のいかなる組合せも作製することができる。例えばAsp56を欠失させる一方で、Gln156をいずれかの他のアミノ酸で置換させでもよく、あるいはAsp56とGln156の両方を各々同一もしくは異なるアミノ酸部分で置換させてもよい。更にはAsp56をいずれかのアミノ酸で置換させる一方で、Gln156を欠失させてもよい。一般的には置換突然変異体が好ましく、そしてIL−15分子の天然の折り畳み構造に著しく影響を及ぼさないものが一層好ましい。置換突然変異体は好ましくは以下のものを含む:Asp56がセリンもしくはシステインにより置換されているもの;Gln156がセリンもしくはシステインにより置換されているもの、あるいはAsp56とGln156の両方共が各々セリンもしくはシステインにより置換されているもの。欠失突然変異体の例は以下のものを含む:成熟IL−15のAsp56とGln156とが両方共欠失しているもの;Asp56のみが欠失しているもの;あるいはGln156のみが欠失しているもの。Asp56とGln156のいずれかの領域内の他のアミノ酸残基を置換もしくは欠失させ、かつその突然変異体がなおIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかもしくは両方を介するシグナル伝達を阻害する効果を有するということが可能である。従って本発明は更に、Asp56とGln156の領域内に含まれるアミノ酸残基が置換もしくは欠失のいずれかを受けており、かつIL−15アンタゴニスト活性を保持する突然変異体を包含する。このような突然変異体は本明細書に記載される方法を用いて作製することができ、そして常法を用いてIL−15アンタゴニスト活性についてアッセイすることができる。本発明に従ってIL−15突然変異体を作製するために用いることができる方法の更に詳細な記述が実施例1に提供される。
【0044】
複合体形成させたIL−15分子およびIL−15突然変異体
本明細書に開示される成熟IL−15ポリペプチド(配列番号1に示されるアミノ酸49〜162の配列を含む成熟したサルのIL−15、および配列番号2に示されるアミノ酸残基49〜162の配列を有する成熟したヒトのIL−15)、ならびにIL−15突然変異体を、他の化学部分との共有結合性複合体もしくは凝集性複合体を形成させることにより改変してもよい。このような部分は、IL−15Rαに対するIL−15の高親和性を維持しながらIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−鎖へのIL−15の結合を阻害することができる、IL−15分子上の特異的部位における、PEG、mPEG、デキストラン、PVP、PVA、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−L−リシンもしくはポリヒスチジン)、アルブミン、およびゼラチンを含むことができる。さらに、IL−15を、IL−15Rαに対するIL−15の高親和性を維持しながら、IL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−鎖へのIL−15の結合を阻害することができる部位で特異的にグリコシル化することもできる。複合体形成用の好ましい基は、PEG、デキストラン、およびPVPである。本発明における使用に最も好ましいものはPEGであり、このPEGの分子量は約1,000〜約20,000の間であることが好ましい。約5000の分子量がIL−15の複合体形成を実施するには好ましいが、他の分子量のPEG分子も同様に適切であろう。多種多様のPEG形態が本発明の使用に適する。例えばPEGをスクシンイミジルコハク酸PEG(SS−PEG)(このSS−PEGはインビボでの加水分解的開裂に感受性を示すエステル結合を提供する)、スクシンイミジル炭酸PEG(SC−PEG)(このSC−PEGはウレタン結合が提供し、かつインビボでの加水分解的開裂に安定である)、スクシンイミジルプロピオン酸PEG(SPA−PEG)(このSPA−PEGは、インビボで安定なエーテル結合を提供する)、ビニルスルホンPEG(VS−PEG)、およびマレイミドPEG(Mal−PEG)の形態で用いられることができ、これら全てはShearwater Polymers, Inc. 社(Huntsville, AL)から市販品として入手することができる。一般的には、SS−PEG、SC−PEG、およびSPA−PEGはポリペプチド中のリシン残基と特異的に反応する一方で、VS−PEGおよびMal−PEGの各々は遊離のシステイン残基と反応する。しかしながらMal−PEGはアルカリ性pHではリシン残基と反応する傾向にある。SC−PEGおよびVS−PEGが好ましく、かつそのインビボでの安定性およびリシン残基に対する特異性のためSC−PEGが最も好ましい。
【0045】
PEG部分はPEGの巨大分子サイズを利用すると、IL−15の攻略的部位に結合させることができる。先に記載したようにPEG部分は蛋白質内に天然に存在するリシンもしくはシステイン残基を利用することによるか、または部位特異的PEG結合化(PEGylation)によりIL−15に結合させることができる。部位特異的PEG結合化(PEGylation)の一方法は、システインもしくはリシン残基が特異的アミノ酸位置でIL−15に取り込まれる蛋白質工学の方法を介する。IL−15に複合体結合される巨大分子サイズのPEG鎖(一つもしくは複数)はIL−15レセプター複合体のβ−および/もしくはγ−サブユニットには結合するが、α−サブユニットには結合しないIL−15の領域を遮断するものと考えられる。複合体形成は、IL−15を含む塩基性溶液にPEGを添加するという簡潔な添加反応により実施することができる。典型的にはPEG結合化(PEGylation)は、(1)pH約9.0かつ約1:1〜100:1もしくはそれを上回るリシン残基に対するSC−PEGの分子的比率で;あるいは(2)pH約7.0かつ約1:1〜100:1もしくはそれを上回るシステイン残基に対するVS−PEGの分子的比率でかのいずれかで実施される。
【0046】
複合体形成され、PEG結合化(PEGylation)を受けたIL−15分子の特徴決定は、Novex Corp. 社、San Diego, Californiaから入手することができる4〜20%の密度勾配ポリアクリルアミドゲル上でのSDS−PAGEにより実施することができる。慣用化され銀染色を利用してもよく、あるいは銀染色によっては容易に可視化されない高度にPEG結合化(PEGylation)された蛋白質については慣用化されたウエスタンブロット技術を利用することもできる。PEG結合化(PEGylation)されたIL−15分子の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、限外濾過、もしくは親和性精製を用いて実施することができる。
【0047】
PEG結合化(PEGylation)されたIL−15の改変および不均質性の程度は、レーザー脱離イオン化質量分析法(laser desorption ionization mass spectrometry)(MALDI)の助けを借りて慣用化されたマトリックスを用いて決定することができる。ヒトIL−15は約13,000の分子量を有するため、そして5000の分子量を有するPEGを用いることにより、MALDIによって13,000の分子量と測定される調製物はPEG結合化(PEGylation)されてはおらず、18,000の分子量と測定される調製物は1分子のIL−15が一つのPEG分子に結合しており、23,000の分子量と測定される調製物は一つのIL−15分子が2つのPEG分子に結合している、等が示唆される。
【0048】
IL−15に対するモノクローナル抗体
あるいは、本発明のアンタゴニストは、 IL−15レセプター複合体のα−、β−、もしくはγ−サブユニットの内のいずれかに対するIL−15の結合を阻害する、IL−15に対するモノクローナル抗体の形態をとることができる。本発明の一つの態様では、IL−15(その誘導体を含む)ならびに例えばIL−15ペプチドのようなそれらの蛋白質の部分もしくは断片を用いてIL−15に特異的に結合する抗体を調製することができる。本発明では用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、例えばF(ab’)およびFab断片のようなそれらの断片、ならびに組換え的に産生させた結合用パートナーを含むものと理解されるべきである。モノクローナル抗体もしくは結合用パートナーの親和性は当業者により容易に決定することができる(Scatchard, Ann. N.Y. Acad. Sci., 51: 660-672 (1949) を参照されたい)。このようなモノクローナル抗体の具体例が本明細書の実施例2に提供される。
【0049】
一般的にはIL−15に対するモノクローナル抗体は以下の方法を用いて作製することができる。精製されたIL−15、その断片、合成ペプチド、もしくはIL−15を発現する細胞を用い、それ自体既知の技術(例えば、米国特許第4,411,993号に記載される技術)を用いてIL−15に対するモノクローナル抗体を作製することができる。簡潔に述べると、完全フロイト(Freund's)アジュバントもしくはRIBIアジュバント(RIBI Corp.社, Hamilton, Montana)内に乳化させたIL−15を免疫原としてマウスを免役し、かつIL−15の10〜100μgの範囲の量を皮下的もしくは腹腔内に注射した。10〜12日後に免疫化させた動物に不完全フロイト(Freund's)アジュバント内に乳化させた追加的IL−15で追加免疫する。マウスにはその後毎週一回もしくは2週間に1回の免疫化スケジュールで追加免疫を施す。血清試料を眼窩後出血もしくは尾末端切開により周期的に採取してドットブロットアッセイ、ELISA(酵素抗原免疫吸着アッセイ(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay))、もしくはCTLL−2細胞上でのIL−15活性の阻害によりIL−15抗体についての検査を実施する。
【0050】
適切な抗体力値の検出の後には、陽性動物に食塩水中のIL−15の追加的静脈内注射を行う。3〜4日後にその動物を屠殺し、脾臓細胞を回収し、そして脾臓細胞を例えばNS1もしくは好ましくはP3(63Ag8.653(ATCC CRL 1580)のようなマウス骨髄腫細胞株(myeloma cell line)に融合させる。融合によりハイブリドーマ細胞が作製され、これを複数のマイクロタイタープレート内のHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン)選択用培地内でプレート培養させて非融合骨髄腫細胞および骨髄腫同士のハイブリッドの増殖を阻害させる。
【0051】
このハイブリドーマ細胞を、Engvallら、Immunochem. 8:871、1971、および米国特許第4,703,004号に開示される技術の適用により、精製されたIL−15に対する反応についてELISAによりスクリーニングする。好ましいスクリーニング技術はBeckmannら(J. Immunol 144: 4212, 1990)に記載される抗体捕獲技術である。陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウス内に腹腔内注射して、高濃度の抗−IL−15モノクローナル抗体を含む腹水を産生することができる。別法ではハイブリドーマ細胞を様々な技術によりフラスコもしくはローラーボトル内でインビトロで増殖させることができる。マウス腹水内に産生されたモノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿およびその後のゲル排除クロマトグラフィーにより精製することができる。別法では、プロテインAもしくはプロテインGに対する抗体の結合を基にする親和性クロマトグラフィー、そして同様にIL−15への結合を基にする親和性クロマトグラフィーも用いることもできる。
【0052】
他の「抗体」も本明細書に提供される開示を利用して調製することができ、従って、それらの抗体は本発明の範囲内に含まれる。ヒト化抗体を作製するのに用いられる方法は、米国特許第4,816,567号および国際公開第94/10332号に見いだすことができ:微生物体を作製するための方法は国際公開第94/09817号に見いだすことができ:そしてトランスジェニック抗体を作製するための方法は英国特許第2 272 440号において見いだすことができ、これら全ては引用により本明細書に取り込まれる。
【0053】
どのモノクローナル抗体がアンタゴニストであるかを決定するためには、スクリーニングアッセイの使用が好ましい。CTLL−2増殖アッセイがこの目的のためには好ましい。GillisおよびSmith, Nature 268:154 (1977)、を参照されたい(これは引用により本明細書に取り込まれる)。
【0054】
本発明のアンタゴニストについては、先に記載されるように、かつ以降より詳細に記載されるように、同種移植片の生残率を亢進させる際、および移植片対宿主疾患を患う患者を治療する際の使用が見いだされた。当該アンタゴニストについての他の確かな使用法には、後期HTLV(ヒトT細胞リンパ栄養性ウイルス)I−誘導性成人T細胞白血病リンパ腫の治療がある。Burtonら、Proc. Natl. Acad. Sci., 91:4935 (1994)、を参照されたい。他の確かな使用法には、インビトロでのB細胞もしくはT細胞刺激を妨げる能力、レセプター−リガンド相互作用の調査、胃腸管の感染性疾患および障害用の診断用キットでの使用が含まれる。本発明のアンタゴニストの活性のために、所定の疾患を治療する新方法が本発明の範囲内に含まれる。例えば、同種移植片を必要とする患者での同種移植片拒絶反応を予防するための方法、および同種移植片を必要とする患者でのGVHDを治療する方法が開示され、各方法は、IL−15活性を阻害するのに効果的な量のIL−15アンタゴニストおよび薬剤学的に許容される担体もしくは希釈剤を含む薬剤組成物を投与する段階を含む。標的細胞(疾患状態もしくはその疾患状態の症状の主原因であると考えられる細胞)がIL−15レセプター複合体を発現し、かつIL−15レセプターのβ−もしくはγ−サブユニットを介するシグナル伝達の遮断もしくは阻害が所望される同様の方法も他の疾患を治療するのに有用である。このような疾患状態は、標的細胞がIL−15レセプター複合体を発現するということがわかった際には本発明のアンタゴニストで治療することが可能でありうる。実際、GVHDおよび同種移植片拒絶反応に加え、このような疾患状態は例えばリンパ腫、癌、白血病、横紋肉腫、および例えばリューマチ性関節炎のような所定の自己免疫疾患を含んでよい。標的細胞が必要とされるIL−15レセプター複合体を発現する全ての疾患状態を、前述のリストは網羅し尽くしてはいない、という事実をもって本発明の範囲を限定するとして見なすべきではない。
【0055】
先に記載されるように、本発明の他の態様は、本発明のIL−15突然変異体をコードする核酸である。このような核酸は、配列番号1の144〜486および配列番号2の144〜486のヌクレオチド配列を有するRNAもしくはcDNAのいずれかを含む。IL−15突然変異体をコードするcDNAを含む発現ベクターおよびそのような発現ベクターで形質転換もしくはトランスフェクトさせた宿主細胞も更に本発明の範囲に含まれる。形質転換させた宿主細胞とは、標準技術を用いて組換え発現ベクターで形質転換もしくはトランスフェクトさせてある細胞である。発現される哺乳類IL−15は宿主細胞内に存在する、および/または培養上清内に分泌され、これは宿主細胞およびその宿主細胞内に挿入された遺伝子構築物の性質に依存する。既述のIL−15アンタゴニストの内のいずれかを含む薬剤組成物も本発明に包含される。
【0056】
IL−15のアンタゴニストの投与
本発明は、適切な希釈剤もしくは担体中に有効量のIL−15アンタゴニストを含む薬剤組成物を用いる方法を提供する。本発明のIL−15アンタゴニストは、薬剤学的に有用な組成物を調製するために用いられる既知の方法に従って処方することができる。IL−15アンタゴニストを、単一の活性物質としてかもしくは他の既知の活性物質と一緒にかのいずれかの状態で、混合剤として、薬剤学的に適切な希釈剤(例えば、Tris−HCl、酢酸、リン酸)、保存料(例えば、チメロサル(Thimerosal)、ベンジルアルコール、パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバント、および/または担体と組み合わせることができる。適切な担体およびそれらの製剤法はRemington s Pharmaceutical Sciences, 16th ed. 1980, Mack Publishing Co.に記載されている。それに加え、このような組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンと複合体形成しているか、もしくは例えばポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどのような重合性化合物内に取り込まれているか、あるいはリポソーム、ミクロエマルジョン、ミセル、単層もしくは多重層のベシクル、赤血球ゴースト、またはスフェロブラスト内に取り込まれるIL−15アンタゴニストを含むことができる。このような組成物はIL−15アンタゴニストの物理的状態、溶解度、安定性、インビボでの放出速度、およびインビボでの浄化速度に影響を及ぼすであろう。更にはIL−15アンタゴニストを、組織特異的レセプター、リガンドもしくは抗原に対する抗体に複合体形成させるか、または組織特異的レセプターのリガンドに連結させることもできる。
【0057】
本発明のIL−15アンタゴニストを、局所的、非経口的、直腸的に投与するか、または吸入により投与することができる。用語「非経口的」には皮下注射、静脈内、筋肉内、嚢内注射、もしくは注入技術がある。これらの組成物は典型的には有効量のIL−15アンタゴニストを単独でか、もしくは有効量の他のいずれかの活性物質と組み合わせて含むであろう。組成物中に含まれる、このような服用量および所望される薬剤濃度は、意図される使用法、患者の体重および年齢、ならびに投与経路を初めとする多くの因子に依存して変化してよい。予備用量は動物実験に従って決定することができ、そしてヒト投与のための用量計測は当該技術に許容される常法に従って実施することができる。
【0058】
先に加え、以下の実施例が特定の態様を詳細に説明するために提供され、かつこれらの実施例は本発明の範囲は制限しない。
【実施例】
【0059】
実施例1
IL−15の突然変異体
この実施例は、IL−15のアンタゴニストとして機能する、成熟IL−15もしくは天然のIL−15の突然変異体を取得するための方法を記載する。IL−15はIL−2同様、IL−2Rβγ複合体に結合し、そしてその複合体を通してシグナル伝達を行うことができ、そしてそれ自体IL−2と構造的類似性を共有することが提案されている。IL−2においてIL−2R β−およびγ−鎖(Zurawski et al., EMBO J., 12 (13):5113 (1993))との相互作用にとって重要であることが既に示されている残基と等価のL−15中の残基をベストフィット配列アラインメントにより、β−鎖についてはアスパラギン酸(残基56(Asp))であり、そしてγ−鎖についてはグルタミン(残基156(Gln))であることを決定した(アミノ酸の番号付けは、配列番号1および2のアミノ酸残基1〜162により示されるペプチドの配列に基づく)。
【0060】
ヒトIL−15を増幅し、かつ残基56もしくは156のいずれかでセリンもしくはシステインのいずれかをコードするコドンを誘導するようにオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。2回の別個のPCR増幅周期を各突然変異体の構築のために実施した(以下の略図を参照されたい)。初回PCR反応では増幅は適切な突然変異を導入するか、もしくは成熟配列を増幅するかのいずれかを実施するプライマー対を用いた。二次PCR反応では第一周期からの物質を、pαADH2酵母発現ベクターpIXY456内にクローニングするための制限酵素を組み込ませるプライマー対を用いて再増幅させた。Priceら、Gene, 55:287 (1987)およびPriceら、Meth. Enzym. 185:308 (1990)、を参照されたい。
【0061】
【化1】

【0062】
以下の表は各突然変異体の初回増幅のために用いられたオリゴヌクレオチドプライマー対を列挙する。オリゴヌクレオチドNTFIL15B(5’プライマー)およびNCTFIL15F(3’プライマー)を、成熟配列の維持が所望される場合の初回増幅用に用いた。
【0063】
【表1】

【0064】
あるいは、オリゴヌクレオチドNTFIL15BをオリゴヌクレオチドIL15PIXYF5と置換することができ、かつオリゴヌクレオチドNCTFIL15FをオリゴヌクレオチドIL15PIXY3と置換することができる。初回PCR増幅は、250μM dNTPおよび50pモルの5’および3’オリゴヌクレオチドプライマーを含む100μlの1X Taq ポリメラーゼ緩衝液(Boehringer社)中で実施した。用いたDNA鋳型は約50ngのpIXY764であった。ベクターpIXY764は既述のベクターpIXY456に類似しており、そのpIXY456はヒトflag IL−15をコードするDNA含み、このDNAではヒトIL−15のN−結合型グリコシル化部位が先に記載される方法を用いて不活化されている。反応混合物にミネラルオイルを重層し、そしてサーマルサイクラー中で94℃にまで5分間加熱してから、2単位のTaq ポリメラーゼ(Boehringer社)の添加およびサーマルサイクリングの開始を行った。サイクリング条件は94℃45秒間の変性、45℃45秒間のアニーリング、および72℃1分間の伸長、を総計30サイクルであった。
【0065】
初回増殖からの約20ngのゲル精製産物を二次PCR増幅用の鋳型として用いた。全構築物は以前と同一の緩衝液条件を用い、IL15PIXYF5およびIL15PIXY3で増幅させた。サイクリング条件は、94℃45秒間の変性、60℃45秒間のアニーリング、および72℃1分間の伸長を、総計20周期であった。
【0066】
増幅産物をゲル精製し、そしてAsp718(Boehringer社)およびNcoI(New England Biolabs社)を用い、1X Boehringer緩衝液B中、37℃で一晩消化させた。この制限産物を、Asp716およびNcoIで消化させてあるpIXY456酵母発現ベクター内に連結させた。このDNAを用いて電気穿孔によりDH10β大腸菌(E. coli)細胞を形質転換させた。
【0067】
単一形質転換体からのプラスミドDNAの配列決定を実施して配列の完全性を確認し、そしてこれを用いてXV2181 S.セルビジエ(cerevisiae)を形質転換させた。生物学的活性は30時間の誘導後の酵母上清を用いてアッセイした。
【0068】
これらの実験は、突然変異誘発部位がIL−15遺伝子の両末端付近に位置しているため、突然変異誘発用のPCRを基にする攻略法を利用した。しかしながらこれらの突然変異、および他のいずれかの単一もしくは複数の点突然変異は、通常の部位特異的突然変異誘発技術により組み込ませることもできる。
【0069】
実施例2
IL−15に対するモノクローナル抗体
この実施例は、IL−15のアンタゴニストとして機能する3つの抗IL−15モノクローナル抗体を取得するのに用いられた方法を記載する。用いられた全方法は注釈がなされている以外は常法である。
【0070】
Balb/cマウスに、RIBIアジュバント(RIBI Corp.社、Hamilton, Montana)の存在下で10μgの酵母由来のヒトIL−15を3週間の間隔を開けて2度腹腔内に注射した。その後にマウス血清を、通常のドットブロット技術、抗体捕獲(ABC)、および中和アッセイ(CTLL−2アッセイ)によりアッセイして、どの動物が融合に最適であるかを決定した。3週間後にマウスに、滅菌PBS中に懸濁させた3μgのヒトIL−15の静脈内ブースター注射を施した。3日後にマウスを屠殺し、そして確立されたプロトコールに従い脾臓細胞をAg8.653骨髄腫細胞(ATCC)と融合させた。簡潔に述べると、Ag8.653細胞を無血清培地中で数回洗浄し、そしてマウス脾臓細胞に、一つの骨髄腫細胞に対して3つの脾臓細胞の割合で融合させた。融合剤は50%PEG:10%DMSO(Sigma社)であった。融合物を、HATを補足したDMEM培地を含む20枚の96ウエル平底プレート(Corning社)内でプレート培養させ、そして8日間増殖させた。得られたハイブリドーマからの上清を回収し、そしてヤギ抗マウスIgで最初にコーティングしてある96ウエルのプレートに60分間添加した。洗浄後に、125I−IL−15を各ウエルに添加し、室温で60分間インキュベートし、そして4回洗浄した。その後に陽性ウエルを、Kodak X-Omat Sフィルムを用いて−70℃下でオートラジオグラフィーにより検出した。陽性クローンをバルク培養物として増殖させ、そしてその後に上清をプロテイン(Protein)Aカラム(Pharmacia社)にかけて精製した。その後にはM110、M111、およびM112と表示されるクローンのアイソタイプを各々IgG1モノクローナル抗体と決定した。モノクローナル抗体M110、M111、およびM112を産生するハイブリドーマは、1996年3月13日に、the American Type Culture Collection, Rockville, MD, USA (ATCC)に寄託してあり、そして各々受託番号HB−12061、HB−12062、およびHB−12063を割り当てられている。全寄託物はブタペスト条約の規定に従って実施した。
【0071】
産生されたモノクローナル抗体を、Gillisら(前述)により本質的に記載されるCTLL−2アッセイを用いてIL−15アンタゴニスト活性についてアッセイすることができる。
【0072】
実施例3
改変IL−15分子
この実施例は、IL−15アンタゴニストとして機能する改変IL−15分子を取得するための方法を記載する。
【0073】
PEG化させた(PEGylated)IL−15
全複合体形成反応は、Shearwater Polymers, Inc. 社(Huntsville, AL)からスクシンイミジルコハク酸PEG(SS−PEG)、スクシンイミジル炭酸PEG(SC−PEG)、VS−PEG、およびMal−PEGの形態で取得した分子量5000のPEGを用いて実施した。 SS−PEGとSC−PEGとの両方はリシンのε−アミノ基と反応し、 SS−PEGの場合には加水分解に対して不安定なエステル結合を形成し、そしてSC−PEGの場合には加水分解に対して安定なウレタン結合を形成する。PEG化(PEGylation)は、SS−PEGとSC−PEGについてはpH9.0で50nM NaHPO中で;そしてVS−PEGとMal−PEGを含む反応物についてはpH7.0で実施した。これらの反応は100μg/ml、0.5mlの容積で進行させた。各反応で、PEGを、1:1、3:1、10:1、および100:1のリシンに対するPEGのモル比率で反応混合物に添加した(サルの各IL−15分子中には9つのリシン残基が存在する)。これらの反応を4℃下で一晩進行させた。
【0074】
PEG化させた(PEGylated)サルのIL−15の特徴決定は、4〜20%の密度勾配ポリアクリルアミドゲル(Novex 社、San Diego, California)上のSDS−PAGEにより実施した。約0.5μg/ラインでゲルにのせた改変させていないIL−15蛋白質については通常の銀染色技術を用いた。高度にPEG化された(PEGylated)サルIL−15蛋白質は、可視化させるためにゲルに多めの蛋白質をのせる必要があった。高度にPEG化された(PEGylated)IL−15の特徴を決定するためにはウエスタン(Western)ブロットも用いた。これらの実験ではPEG化された(PEGylated)サルIL−15をSDS−PAGEにより分離させ、ニトロセルロース膜に移し、モノクローナル抗体 M111と共にインキュベートし、その後にヤギ抗マウスHRPと共にインキュベートし、そして最後に4CN Membrane Peroxidase Substrate System(Kirkegaard & Perry Laboratories社、Gaithersburg, MD)を用いて可視化させた。PEG化された(PEGylated)サルIL−15は更に慣用化された技術に従い、Biosil SEC-250サイズ決定用カラムでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)HPLCにより性質決定を行った。
【0075】
SC−PEG化された(SC−PEGylated)FLAG−サルIL−15を、細胞膜表面にIL−15のα−、もしくはβ−およびγ−レセプターサブユニットを発現するトランスフェクトされたCOS細胞に結合する能力について検査した。PEG化された(PEGylated)IL−15は、IL−15R α−サブユニットを発現するCOS細胞への放射ラベル化されたIL−15の結合を阻害し、このことによりPEG化された(PEGylated)IL−15がIL−15R α−サブユニット結合に関して競合することが示された。更にPEG化された(PEGylated)IL−15はβ−およびγ−レセプターサブユニットを発現するCOS細胞への放射ラベル化されたIL−15の結合は阻害せず、このことによりPEG化された(PEGylated)IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−および/またはγ−レセプターサブユニットには結合しないことが示された。従って、PEG化された(PEGylated)IL−15は、内因性IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−およびγ−レセプターサブユニットを介するシグナル伝達に影響を及ぼすことを妨げる。
【0076】
実施例4
CTLL−2アッセイにおけるIL−15活性の阻害
この実施例は更に、本発明のアンタゴニストによる、IL−15レセプター複合体のβ−およびγ−レセプターサブユニットを介するIL−15のシグナル伝達の阻害を決定するための方法を詳細に説明する。
【0077】
モノクローナル抗体、PEG化された(PEGylated)IL−15、およびIL−15突然変異体のアンタゴニスト活性は、改変させたCTLL−2細胞H−チミジン取り込みアッセイ(Gills et al., 上述)を用いてアッセイすることができる。アンタゴニストの連続希釈物を、96−ウエルの平底組織培養用プレート(Costar社、Cambridge, MA)で、DMEM培地(5%FCS、NEAA、ピルビン酸Na、HEPES pH7.4、2−me、PSGが補足してある)中、50μlの最終容積で作製することができる。その後、試料の連続希釈後かつ細胞の添加前に、至適下量のIL−15(20〜40pg/mlの最終濃度)を全アッセイウエルに添加する(5μl/ウエル)。洗浄したCTLL−2細胞を添加し(50μl中、約2000/ウエル)、そしてそれらのプレートを空気中10%COの湿潤化させた大気中、37℃で24時間インキュベートする。この後に0.5μCiのH−チミジン(25Ci/mモル(Mol)、Amersham社、Arlington Heights, IL)と共に5時間インキュベートさせた。その後にそれらの培養物をガラス繊維性フィルター上で回収し、そしてマルチディテクターダイレクトベータカウンター(multidetector direct beta counter)(Matrix 96、Packard Instrument Company社、Meridien, CT) もしくはベータシンチレーションカウンターのいずれかでアバランシェガス電離により計数する。このアッセイにより生じるカウント/分(CPM)をパーセント阻害率に変換し、そして滴定を行ったアンタゴニスト試料各々のパーセント阻害率の値を用いて単位/mlでのアンタゴニスト活性を算出する。
【0078】
CTLL阻害アッセイ中で40pg/mlのIL−15を中和するのに必要とされる濃度を示すデータが以下の表Iに提供される。以下の表IIは、CTLLおよびCTLL阻害アッセイにおけるIL−15(アゴニスト活性)およびIL−15アンタゴニストの活性を示す。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−15(IL−15)がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットのいずれかを介してシグナルを伝達することを阻害するIL−15のアンタゴニストであって、そのようなIL−15アンタゴニストがIL−2レセプター複合体に対するモノクローナル抗体ではない上記アンタゴニスト。
【請求項2】
(a) IL−15レセプターのα−サブユニットに結合することが可能であって、かつIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することが不可能な天然のIL−15の突然変異体;
(b)IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することを阻害する、IL−15に対するモノクローナル抗体;
(c)成熟したIL−15が、PEG、mPEG、PVP、およびデキストリンからなる群より選択される巨大不活性部分に共有結合により連結されている複合体形成させてあるIL−15分子であって;IL−15Rα−サブユニットに結合することが可能であり、かつIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することが不可能である、上記複合体形成させてあるIL−15分子:
からなる群より選択される、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項3】
アミノ酸残基Asp56もしくはGln156のいずれかの内の少なくとも一つが欠失しているか、あるいは天然に存在する異なるアミノ酸残基で置換されている、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項4】
Asp56およびGln156のいずれかもしくは両方が各々セリンもしくはシステインで置換される、請求項3に記載のアンタゴニスト。
【請求項5】
Asp56がセリンもしくはシステインで置換される、請求項4に記載のアンタゴニスト。
【請求項6】
Gln156がセリンもしくはシステインで置換される、請求項4に記載のアンタゴニスト。
【請求項7】
IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することを妨害する、IL−15に対するモノクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項8】
HB−12061、HB−12062およびHB−12063からなる群より選択されるATCC受託番号を有するハイブリドーマから取得されるモノクローナル抗体である、請求項7に記載のアンタゴニスト。
【請求項9】
M110である、請求項7に記載のアンタゴニスト。
【請求項10】
M111である、請求項7に記載のアンタゴニスト。
【請求項11】
M112である、請求項7に記載のアンタゴニスト。
【請求項12】
請求項2のIL−15の突然変異体をコードする単離された核酸。
【請求項13】
IL−15の突然変異体が、欠失しているかもしくは天然に存在する異なるアミノ酸残基で置換されているアミノ酸残基Asp56もしくはGln156の内の少なくとも一つを有する、請求項12に記載の単離された核酸。
【請求項14】
Asp56およびGln156のいずれかもしくは両方が各々セリンもしくはシステインで置換される、請求項13に記載の単離された核酸。
【請求項15】
Asp56がセリンもしくはシステインで置換される、請求項13に記載の単離された核酸。
【請求項16】
Gln156がセリンもしくはシステインで置換される、請求項13に記載の単離された核酸。
【請求項17】
請求項12の核酸を含む組換えベクター。
【請求項18】
請求項17のベクターで形質転換もしくはトランスフェクトさせてある宿主細胞。
【請求項19】
請求項2に記載のIL−15突然変異体を産生する方法であって、そのようなIL−15の発現の助けとなる培養条件下で請求項18に記載の宿主細胞を培養することを含む、上記方法。
【請求項20】
IL−15活性を阻害するのに有効な量の請求項1に記載のアンタゴニスト、および薬剤学的に許容される担体もしくは希釈剤を含む、薬剤組成物。
【請求項21】
アンタゴニストがIL−15Rα−サブユニットに結合することが可能であり、かつIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することが不可能な天然のIL−15の突然変異体である、請求項20に記載の薬剤組成物。
【請求項22】
アンタゴニストが、IL−15がIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することを阻害する、IL−15に対するモノクローナル抗体である、請求項20に記載の薬剤組成物。
【請求項23】
アンタゴニストが、PEGに共有結合で連結されており、かつ IL−15R α−サブユニットに結合することが可能であり、かつIL−15レセプター複合体のβ−もしくはγ−サブユニットを介してシグナルを伝達することが不可能なIL−15分子であり、そしてそのアンタゴニストに加えて薬剤学的に許容される担体もしくは希釈剤を含む、請求項20に記載の薬剤組成物。
【請求項24】
請求項20に記載の薬剤組成物を投与することを含む、移植片対宿主疾患の症状を有する患者を治療するための方法。
【請求項25】
請求項20に記載の薬剤組成物を投与することを含む、同種移植片の生残率をその移植片を必要とする患者内で延長させるための方法。

【公開番号】特開2008−133276(P2008−133276A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293169(P2007−293169)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【分割の表示】特願平8−525853の分割
【原出願日】平成8年2月21日(1996.2.21)
【出願人】(591123609)イミュネックス・コーポレーション (24)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNEX CORPORATION
【Fターム(参考)】