説明

インターロイキン−15アンタゴニストペプチド

本発明は、分子薬学の分野、特にインターロイキン−15(IL−15)配列に属するペプチドであって、該分子及びそのペプチドの類似体又は模倣体の生物活性を阻害することができる上記IL−15配列に関連する。本発明においては、該ペプチドが、受容体(IL−15R)のαサブユニットに結合すると、IL−15誘導T細胞増殖とTNF媒介アポトーシスを阻害することが示される。本発明はまた、異常なIL−15又はIL−15R発現が病気の進行に関連した病因の治療における該ペプチドの使用にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子薬学の分野、特に受容体アルファサブユニットに結合するインターロイキン−15(IL−15)を阻害し;それにより、IL−15又はIL−15Rαの異常発現に関連する疾病の治療に有用なインターロイキン15由来のペプチドに関連する。
【背景技術】
【0002】
IL−15として知られるサイトカインは、T細胞活性化因子として2つのグループにより同時に確認された14−15kDaの糖タンパク質である(Grabstein,K.H.et al.,Science 1994,264,965;Burton,J.D.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1994,91,4935)。IL−15のmRNAは異なる細胞や組織で広く発現されているが、翻訳段階および細胞間交通でのその発現の強力な転写後調節により、これらの細胞の中に、又は細胞上清中に、本タンパク質を見出すことは難しい(Barmford RN.et al.,J.Immunol.1998,160:4418−4426;Kurys G,et al.,J.Biol.Chem.2000,275:30653−30659)。さらに、IL−15は活性状態で膜タンパク質として存在する可能性が示されており(Musso et al.,Blood 1999,Vol.93,No 10(May 15),:pp3531−3539)、最近、本経路を介して、炎症性サイトカインの分泌を誘導するリガンドまたは受容体として機能する可能性が知られている(Budalgian et al.,JBC 2004,vol 279,No 40:pp 42192−42201)。
【0003】
可溶型タンパク質の高い発現レベルは、自己免疫疾患および炎症疾患の病因に関連する。クローン病(Kirman I.,1996,Am.J.Gastroenterol.91,1789)、乾癬(Ruckert R.2000,165:2240−2250)、白血病(Yamada Y.1999,Leukemia and Lymphoma,35(1−2):37−45)及びリューマチ関節炎(RA)(Mclnnes I.B.1998,Immunology Today,19,75−79)を含むいくつかの疾患で、IL−15が検出されている。T細胞受容体へのリガンドの結合は、IL−15Rαの発現と、CD69、CD25そしてTNFRIIのようないくつかの活性化抗原の発現を誘引する。IL−15もまた、ヒト血中Tリンパ球の誘引化学物質である(Wilkinson 1995,J.Exp.Med.181,12250−1259)。これらのデータは全て、抗原提示細胞により発現したIL−15が炎症部位の初期のT細胞活性化において重要である、ということを示唆している。
【0004】
Mclnnesらは、本疾患におけるIL−15の発現異常、髄液中の高濃度IL−15、及び髄膜でのIL−15発現を見出した。彼らは、サイトカインカスケードにおいてIL−15がTNFαに先行することを示唆し、細胞接触に依存する機構を提案し、そこでは、IL−15に活性化されたT細胞が、マクロファージによるTNFα合成を誘引するとしている。さらに、IL−15は髄液中へのT細胞の移行に関する重要な因子として作用することが提唱されている(Mclnnes,1997,Nat Med,3:189−195)。
【0005】
Ziokowskaらは、IL−15がRA患者の関節において、IL−17の発現を誘引することを報告しており、本サイトカインが、IL−6、IL−8、GM−CSF、及びプロスタグランジンE2といったいくつかの炎症伝達物質の滑膜細胞からの遊離を誘引し、このことがIL−15に対しRA病因における重要な役割を示唆することは既に知られている(Ziolkowska y col 2000,J immunol,164:2832−2838)。
【0006】
T細胞の漸増と活性化は、IL−15の局所的合成の結果として生じうる。そのような非特異的活性化は、結果として、絶え間ない炎症を引き起こしうる。これら全てから、他の自己免疫疾患および炎症疾患と同様に、IL−15阻害による本疾病の治療可能性を有しうることが示唆される。
【0007】
IL−15の生物学的効果は、3つのサブユニットα、βおよびγから構成される細胞膜受容体に結合することで仲介される。IL−15Rαは、このサイトカインに対してKd 10−11という非常に高い親和性で結合する特有のサブユニットであり、膜受容体として又は可溶型として見出されうる(Budagian V.et al.,JBC 2004,279,39:40368−40735;Mortier et al.,The journal of Immunology,2004,173:1681−1688)。
【0008】
サブユニットβとγは、IL−15と高い構造的相同性を有するサイトカイン、IL−2によって共有される。以前より、IL−15分子におけるAsp56が受容体βサブユニットとの結合に重要であり、Gln156は受容体γサブユニットとの結合に重要であると、言われている。
【0009】
突然変異タンパク質は、受容体αサブユニットに結合したIL−15アンタゴニスト分子のように振る舞い、β及びγサブユニットを介したシグナル伝達を阻害する。これらのアミノ酸を認識する抗体もまた、IL−15アンタゴニストのように作用する(US6177079,US6168783,US6013480,US6001973,US9706931,WO9741232)。
【0010】
Ruchatzらは、ネズミα受容体サブユニット(IL−15Rα)の可溶型断片を生成し、この断片の注射により、DBA/1マウスにおけるコラーゲン−誘導型関節炎(CIA)が阻害されることを実証した(Ruchatz H.1998,J.Immunol.160:5654−5660)。
【0011】
Genmab社は、IL−15に対して特異的なヒト抗体の特許、WO03017935、を有しており、そこでは、4種の抗体について述べられているが、そのうちの2種、146B7と146H5は、受容体γサブユニット相互作用部位においてIL−15に結合し、CTLL2細胞系およびPBMC(末梢血単核細胞)においてIL−15誘導型細胞増殖を抑制すること、抗体404A8と404E4は増殖を抑制しないこと、が述べられている。AMG714という名で呼ばれている146B7抗体(Amgen)は、リュウマチ関節炎臨床試験のフェーズIIにある。
【0012】
近年、受容体αサブユニットへのIL−15の結合配列が2種、アミノ酸44から52およびアミノ酸64から68に見つかった(Bernard et al.,JBC 2004,279(23),24313−24322)。彼らは、IL−15アゴニスト又はアンタゴニストとして作用する突然変異タンパク質について述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
今日までに、IL−15アンタゴニストペプチドについては、述べられてきていない。IL−15アンタゴニストとしての長さの短いペプチド(10aa)の使用は、受容体αサブユニットへのIL−15結合を選択的に遮断し、IL−15−受容体相互作用のためIL−15の影響を仲介又は阻害するという利点を有する。例えば、本発明でも述べるように、Sec No.1と名づけたペプチドは、我々が受容体αサブユニットとの相互作用部位として同定したIL−15の10アミノ酸領域にわたる(図1)。そのようなペプチドは、ELISAおよびテンタゲル(Tentagel)レジンアッセイにおいて、IL−15Rα−Fc融合タンパク質と結合し(図2)、IL−15に依存したCTLL−2細胞系の増殖を阻害し(図3aと図3b)、TNFα誘導のアポトーシスから保護するが(図4)、本効果はIL−15の受容体α鎖への結合が仲介している。後者の効果より、アポトーシス経路を阻害することが必要な疾患への使用が考えられる。同様に、本発明において述べるような本ペプチドの可溶型α鎖への結合は、膜結合IL−15よって仲介される逆シグナル伝達を阻害しうる(Budalgian et al.,JBC 2004,vol 279,No 40:pp 42192−42201)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特に、IL−15Rαサブユニットに結合できるIL−15領域の同定に関する。本願で、Sec.No.1と名づけられた本領域を含むペプチドは、化学的に合成されており、IL−15Rα−Fcへの結合能を有し(図2)、IL−15誘導のCTLL2増殖を阻害し、TNFα誘導のDNA断片化から保護する(図4)。
【0015】
本発明はまた、組み換え又は合成的方法によって得られた前者のペプチドの相同体又は相同的変異体のいずれについてもと同様に、それらを含有するいずれの処方についても含む。
【0016】
同様に、本発明はまた、前述のペプチドの単独、又は他の適切な分子、例えば、抗炎症ステロイド薬(コルチコステロイド)、疾病調節薬(メトトレキサート)、若しくは他のリュウマチ関節炎治療で使用されるサイトカインアンタゴニストとの組み合わせ、での使用と、可溶型での又は膜結合型での受容体αサブユニットへのIL−15の結合を阻害するための該ペプチドの使用についても包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明におけるペプチドは、線形(lineal)構造を有し、主に、IL−15に対するアンタゴニスト化する能力により、特徴付けられる。一方、本発明におけるペプチドによってもたらされるインビトロでの効果については、CTLL−2細胞増殖アッセイおよびTNFα誘導アポトーシス阻害アッセイによって実証される。
【0018】
前述のペプチドの確定のため、5つの重複アミノ酸を有した10 aa連続ペプチド中にIL−15の完全な配列を含むセルロースフィルター上でのマップ化技術を利用した。
【0019】
本発明において、Sec.No.1(配列番号1)は、固相法を用い化学的に合成され、HPLCにより精製され、質量分析により分析され、最終的にそのIL−15活性への影響の点から評価された。
【0020】
本発明において示される結果により、10 aaのペプチド(Sec.No.1)として同定し、合成した領域は、受容体αサブユニットと相互作用するIL−15領域に相当し、そのため、受容体へのIL−15の結合を抑制し、そのIL−15誘導型T細胞増殖活性を阻害することが示される。
【0021】
IL−15Rαと相互作用するIL−15のアミノ酸を含むペプチド(Sec.No.1)は、IL−15のIL−15Rαへの結合によって介されるTNFαアポトーシス(Bulfone−Paus et al.,The FASEB journal,1999,September Vol.13)のIL−15防御効果を模倣する。
【0022】
ここで得られた結果は、前述のIL−15アンタゴニストの使用が正当化されるIL−15高発現性関連の疾病の治療において、及び可溶型IL−15Rαの高発現性に関連する病理においてと同様、アポトーシス防御効果が必要とされる病理において、治療方法としての使用を提案する。このように、IL−15におけるSec.No.1に含まれる領域を認識する抗体は、IL−15のIL−15Rαへの結合を阻害し、そのような受容体サブユニットへの分子の結合を阻害することによって、IL−15アンタゴニスト活性を示すであろう。このことからも、キャリアー分子又はMAP(マルチ抗原性ペプチド)化学結合体に結合したペプチドは、IL−15アンタゴニスト抗体を得るために用いることができる。
【0023】
本発明の目的は、また、前述のペプチドのDNAコード化へも適用される。本発明におけるペプチドをコードしたDNAを含むベクターは、ペプチド配列の発現に替わる他の方法としても用いることができる。
【0024】
ここで説明されているペプチドは、他の抗炎症および炎症抑制剤、又は、リュウマチ関節炎、乾癬、クローン病等で使用されている他のサイトカインアンタゴニストと組み合わせて、使用することができる。
【0025】
前述のペプチドは、抗IL−15体液性応答を示す治療用ワクチンにも含まれ得る。
【0026】
本発明は、受容体αサブユニットと相互作用するIL−15配列(Sec.No.1)の同定にある。線形(lineal)の10アミノ酸ペプチドとして合成された配列は、T細胞増殖の誘導に関してはIL−15アンタゴニスト能を示し、TNFα誘導アポトーシスからの保護に関してはアゴニスト効果を示す。
【実施例】
【0027】
本発明の実施態様を例証するため、以下の例を提供する。
【0028】
(実施例1)
A.IL−15Rαに対する結合領域の同定
セルロース支持体上でのIL−15のアミノ酸配列に相当する10−merペプチドの合成
IL−15Rα結合に関与するIL−15領域の同定のため、Frankらが以前に述べているように、ペプチドスポット合成法を利用した。乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)とN−メチルイミダゾール(NMI)とを使用して、最初のアンカー成分、Fmoc−β−Ala−OHのエステル化により、ワットマン540紙の誘導体化を実行した。セルロース膜上のスポットアレイ(array)は、10−merペプチドの要求数(22ペプチド、5残基が重複、IL−15配列の114アミノ酸)にしたがい、事前に印をつけた部分上でのFmoc−β−Ala−OHの固定化(anchoring)によって決定された。そのうえで、関連の無い10アミノ酸ペプチドについて、Fmoc−β−Ala−OHだけが固定化する(anchoring)スポット23とスポット24において、コントロールとして両方とも合成した。これら全分子の集合について、標準的なFmoc−/tBu化学反応が使用された。合成の最終的なサイクルの後、全てのペプチドのN末端と側鎖は、脱保護された。
【0029】
セルロース支持体上で合成されたペプチドへの抗IL−15抗体の結合
ペプチド間の疎水的相互作用の可能性を回避するため、セルロースシートをエタノールに浸漬した。連続的な洗浄によって、エタノールをトリス緩衝生理食塩液(TBS)(150mM NaCl、10mM Tris、pH7.6)に置換した。10mLのTBS阻害緩衝液(5%粉末状乳入りTBS)中で膜を一晩インキュベートすることにより、非特異的結合を阻害した。次に、シートをIL−15α−受容体と3時間インキュベートし、10mLのT−TBS試料緩衝液(5%粉末乳および0.5%Tween 20入りTBS)に希釈した。血清に対し、希釈率1:50が使用された。IL−15α−受容体は、同じ緩衝液中において、5μg/mLに調製した。セルロースシートは4回T−TBS緩衝液で洗浄した。そして、アルカリホスファターゼ結合抗IgG(Fc 特異的)(Sigma)が添加され、T−TBS試料緩衝液中で1時間希釈された(IL−15α受容体アッセイにおける抗ヒトIgGに対し希釈率1:25000)。セルロースシートは再度T−TBSで4回洗浄し、膜と基質緩衝液(100mM NaCl、2mMmgCl、100mM Tris、pH8.9)中の0.5mg/mLの5−ブロモ 4−クロロ 3−インドリルリン酸(BCIP)(Sigma)とをインキュベートすることにより、結合したペプチドの検出を達成した。陽性のスポットは青/紫色を発色した。PBSでの洗浄により、染色を終了した。セルロースシートは、前述(Frank,R.(1992) Tetrahedron 48,9217)のように、他のアッセイのため最終的に再生された。我々は、8と7の二つのペプチドの認識を観察した。実験のコントロールとして、膜をヒトIgG1のFc領域を含むヒト化モノクローナル抗体とインキュベートした。その場合には、我々は、膜上にいかなるペプチドの認識も観察しなかった。
【0030】
ペプチドのIL−15Rαへの結合を実証するビーズ比色アッセイ
ペプチドSec.No.1のNH−テンタゲル(Tentagel)−Sレジン上での合成
レジンNH−テンタゲル−S(0.24mMol/g)は、何回かジクロロメタン(DCM)とメタノールで洗浄した。それから10分間、30%トリフルオロ酢酸(TFA)溶液中でインキュベートし;何回かDCMで洗浄し、5%ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)入りDCM中にて1分間インキュベートした。この処置により、NH基は、合成のため活性化した。その後、DCMで洗浄し、ジメチルホルムアミド(DMF)中にて5分間、ペプチドを合成するためインキュベートした。従来どおりのFmoc/tBu合成法を用いた。カップリング反応はニンヒドリン試験により追跡した。一度ペプチドSec.No.1配列が完成すると、アミノ酸側鎖を脱保護し、C末端をレジンに固定化させた。
【0031】
ビーズ上でのアッセイ
ペプチドを固定化したレジンビーズは、生理食塩溶液(PBS)で数回洗浄した。非特異的相互作用は、1時間、室温のPBS中のBSA(1%)にて阻害した。次いで、5μg/mLのIL−15Rα−Fc融合タンパク質(R&D 147−IR)入りBSA(1%/PBS)中において、4°Cで16時間インキュベートした。その後、ビーズを、5分間3倍希釈PBS中で、振とうして洗浄し、それからBSA(1%/PBS)中で1:25000に希釈された抗−Fc IgGヒト−ホスファターゼ結合体と、室温で3時間インキュベートした。その後、さらに生理食塩溶液(TBS/Tween−20、1%)にて洗浄し、約30分間、BCIP(0.45mg/mL)含有の基質溶液(100mM Tris、pH8.9;100mM NaCl;2mMmgCl2)中にてインキュベートした。反応を止めるため、PBSで4回(four fold)洗浄した。Sec.No.1ペプチドを含有するレジンをIL−15Rα−Fcタンパク質とインキュベートしたときのみ強い青色が観察され、関連性の無いペプチドを含有するレジンとIL−15Rα−Fcとをインキュベートしたときには観察されなかった。そのような場合、色素の元となる基質は沈殿せず、また、色を発しない。同様に、過剰のヒトIL−15の存在によっては色を観察しなかった。
【0032】
ペプチド合成
0.54mMol/gのFmoc−AM−MBHAレジンと、機械的振動を有する合成プロトコールを利用し、Fmoc/tBu法によってペプチドは合成された。TFA処置の後、ペプチドは凍結乾燥され、HPLC−MSによって検査された。
【0033】
(実施例2)
上記ペプチドのCTLL2細胞系増殖への効果
IL−15存在下で、サイトカイン依存型細胞系CTLL−2は増殖する。シグナル伝達依存型受容体の阻害分子を結合したIL−15は、この細胞系の増殖を妨害する。
【0034】
本発明のペプチドの中和能を評価するため、10%ウシ胎児血清(Gibco)を補ったRPMI媒体(Gibco)25μL容が入った96穴ウェル(Costar、USA)で、それらの段階希釈を実施した。事前に洗浄したCTLL−2細胞を、1ウェル当り5×10細胞で添加し、30分間インキュベートした。それから、300pgのIL−15がそれぞれのウェルに添加された。プレートは、72時間、5%CO、37°Cでインキュベートされた。結果を、図3bに示す。我々は、Sec No.1としたペプチドが、IL−15が誘導する増殖を、130μMというIC50で阻害することを観察した。増殖を測定するため、MTTミトコンドリア染色を使用した(Cosman et al.1984,Nature,312:768−771)。我々は、また、異なるIL−15濃度での本ペプチド260μMのアンタゴニスト効果について評価した(図3a)。ペプチドの阻害効果は、IL−15投与量に依存した。
【0035】
(実施例3)
L929細胞系におけるアポトーシス誘導
DNA断片化アッセイ(DNA Fragmentation Assay)は、細胞のTNF−アルファによる処置によって分解したDNA量を決定することができる。放射活性の3H−チミジンをDNA中に取り込むよう、3H−チミジン存在下で細胞が成長することにより、細胞のDNAは放射活性にラベル化された。24時間後、細胞はTrispin/EDTAで処理、洗浄され、96穴プレートに1ウェル当り5000個ずつ撒かれた。次いで、ラベル化された細胞は、TNFα(100ng/mL)、IL−15(100ng/mL)、ペプチド(260μM)又はTNFαと異なるペプチドとの組み合わせと共に、インキュベートされた。
【0036】
このインキュベーション中に、添加した薬剤(agent)(例えば、TNFα)は、アポトーシスによる細胞死を引き起こし、次に、未処置の細胞のDNAが無傷の状態である間にDNAの断片化を引き起こす。24時間後、細胞は回収され;回収の間、細胞は2回蒸留した水(bidestilated)で96穴プレートのウェルから洗い出され;細胞とオルガネラは破壊され、細胞のDNAは遊離した。細胞フラグメントとDNAはフィルター膜(ガラスフィルター)を通過した。1.5μMより小さい粒子だけがフィルターを通過しうる。そのため、無傷のDNA(ミリメートル又はセンチメートルの範囲内の長さの断片である)は、フィルターを通過できず、フィルター膜上に収集される。約5000bp以下の断片に解裂/分解したDNAは、フィルターのポアを通過する程度に十分小さく、フィルター上には収集されない。フィルター膜は乾燥され、放射線量(無傷のDNA量に相当)が、シンチレーションカウンターで定量された。DNA断片のパーセンテージは、薬剤未処理の細胞の計測された放射活性(カウント/分=cpm)と、薬剤処理済みの細胞のcpmを比較して計算した。結果として、我々は、ペプチドSec.No.1はTNF誘導アポトーシスから防護することが観察された。
【0037】
(実施例4)
モノクローナル抗体調製
モノクローナル抗体は、Georges KohlerとCesar Milsteinによる記述(Nature,256:495−497,1975)にしたがって得られた。KLHに結合したペプチドSec No.1又は本ペプチド4分子を含む化学結合体は、IL−15の結合と阻害の活性よりは、モノクローナル抗体の活性化(raise)のために用いられた。
【0038】
マウスは、フロイントアジュヴァント(Freund’s adjuvant)で10から100μgの量で乳化して注射用に調製した結合ペプチドにより、皮下にて免疫性を与えられ、次いで隔週ごとに、不完全フロイントアジュヴァント(incomplete Freund’s adjuvant)内のペプチドによる皮下への免疫性付与を続けた。IL−15に対する免疫性応答は、ELISAによってモニターされた。犠牲となって脾臓を除去する3日前に、十分な力価の抗IL−15免疫グロブリンを有するマウスは、静脈内追加免疫された。IL−15に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するため、我々は、Nature(256:495−497,1975)に発表されている審査プロトコールを利用した。結果物のハイブリドーマは、IL−15又はペプチドに特異的な抗体の産生に関して、ELISAにより、及びCTLL−2アッセイにおけるIL−15活性への阻害効果により、スクリーニングした。陽性のクローンは、腹水腫瘍を産生させるため同系マウスの腹膜腔内に接種させ、結果物のモノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来タンパク質Aへの抗体結合に基づいた、アフィニティークロマトグラフィーで精製された。
【0039】
(実施例5)
カニクイザル(Macacus irus)における中和抗体生成についてのSec.No.1ペプチドの評価
3グループがサルの免疫性付与のスキームにより評価され、キャリアータンパク質に結合したペプチド、化学結合で4量体となったペプチド(MAP);及びプラセボにより免疫性が付与された。タンパク質は、フロイントアジュヴァント(Freund’s adjuvant)中に1接種当たり100μgから200μgの量が投与された。二回目の免疫性付与は1ヵ月後、三回目の免疫性付与は2ヵ月後に実施された。二回目と三回目の免疫性付与のそれぞれ二週間後に、血液がサル血清中の抗IL−15抗体レベルを評価するために抽出された。サルの血清に存在する抗体の中和能は、IL−15の300pgの存在でCTLL−2アッセイによって試験された。
【0040】
提案された解決の利点
Sec No.1ペプチドは、選択的にIL−15のIL−15Rαへの結合を阻害する。ペプチドSec No.1は、T細胞(CTLL−2細胞)上でのIL−15誘導増殖効果に対するアンタゴニストとなるが、さらに、TNFα−誘導アポトーシス感受性細胞でのIL−15アポトーシス保護効果のアゴニストである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】セルロースフィルター上でのIL−15Rマッピング IL−15Rα−Fcは、Sec No.1に相当するペプチド8と、より狭い範囲のペプチド7を認識している。
【図2】テンタゲルSビーズ(Tentagel S Beads)上での比色アッセイ 5μg/mLのIL−15Rα−Fc(R&D)とインキュベートしたSec No.1ペプチドを含有するビーズにおいて、発色が観察された。 2a)a)関連性のないペプチド、又はb)Sec No.1ペプチドを含むレジンの、15Rα−Fc(R&D)でインキュベートされたレジンを含有するインキュベーション。 2b)a)Sec No.1ペプチドとIL15Rα−Fc(R&D)、又はb)過剰なIL−15の存在下でのSec No.1ペプチドとIL−15Rα−Fc(R&D)を含むレジンのインキュベーション。
【図3】10 UI/mgの特異的活性を有するヒトIL−15(R&D)によるCTLL−2増殖アッセイ 3a)異なる濃度のIL−15と固定化ペプチド濃度260μMでの、CTLL−2アッセイ。 3b)異なる濃度のSec No.1ペプチド濃度と固定化IL−15濃度300pg/mLでの、CTLL−2アッセイ。
【図4】L929細胞系におけるアポトーシス誘導アッセイ TNFα(100ng/mL)のみ、又はSec No.1ペプチドと組み合わせてインキュベートされた細胞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1として記載したアミノ酸配列を含むことを特徴とするIL−15活性アンタゴニストペプチド。
【請求項2】
IL−15Rα細胞サブユニット又はその可溶分画に結合することを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載のIL−15Rα依存型のIL−15生物活性の阻害を特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドの配列と相同的な配列を含み、請求項2に記載のIL−15細胞受容体のサブユニットα又はその可溶画分に結合可能であり、請求項3に記載のペプチドの効果を模倣することが可能であることを特徴とするペプチド。
【請求項5】
細胞性のIL−15Rα依存型のIL−15生物活性を阻害することが可能な医薬製剤の活性成分であることを特徴とする請求項1〜4に記載のペプチド。
【請求項6】
遺伝子操作又は化学合成によって得られることを特徴とする請求項1〜5に記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1のペプチドをコードし、その産生物がIL15Rα又はその可溶画分に結合することができ、IL−15生物活性を阻害することを特徴とする核酸鎖。
【請求項8】
発現ベクターの一部であるが、IL−15Rα依存型のIL−15生物活性を阻害することができることを特徴とする請求項7に記載の核酸鎖。
【請求項9】
IL−15Rα依存型のIL−15生物活性を阻害することが可能な治療薬であり、請求項1〜6に記載のペプチドを単独で、結合して、又は組み合わせて含むことを特徴とする医薬製剤。
【請求項10】
細胞性のIL−15Rα依存型のIL−15生物活性を阻害することが可能な治療薬であり、請求項8に記載の核酸鎖を含むことを特徴とする医薬製剤。
【請求項11】
請求項1〜6に記載のペプチドを含み、細胞性のIL−15Rα型依存のIL−15生物活性の阻害応答を誘導することができる治療ワクチンであることを特徴とするワクチン製剤。
【請求項12】
請求項1〜6に記載のペプチドのリュウマチ関節炎の治療における使用。
【請求項13】
請求項1〜6に記載のペプチドのクローン病の治療における使用。
【請求項14】
請求項1〜6に記載のペプチドの乾癬治療における使用。
【請求項15】
請求項1〜6のペプチドを認識可能であることを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項16】
請求項15に記載のモノクローナル抗体のリュウマチ関節炎、クローン病、及び乾癬の治療における使用。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−512994(P2008−512994A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531575(P2007−531575)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/CU2005/000007
【国際公開番号】WO2006/029578
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】