説明

インナーフォーカス式望遠レンズ

【課題】フォーカシングのための移動量が少ない小型のフォーカス群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを提供する。
【解決手段】このインナーフォーカス式望遠レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G11と、負の屈折力を有する第2レンズ群G12と、負の屈折力を有する第3レンズ群G13と、が配置されて構成される。第2レンズ群G12を、光軸に沿って物体側から像側へ移動させることにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態に至るまでのフォーカシングを行う。そして、所定の条件を満足することにより、フォーカス群の小型化はもとより、光学系全系の小型、軽量化、高性能化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、写真用カメラ、ビデオカメラなどに好適なインナーフォーカス式望遠レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ市場の増大に伴い、デジタルカメラに対するユーザの要望も多岐にわたり、小型化と軽量化はユーザが最も強く要求するところである。この要求に伴い、デジタルカメラに搭載される撮影レンズに対する小型、軽量化も強く望まれている。小型化という点では、まず「使用時の光学系全長(最も物体側のレンズ面から像面までの距離)」を縮小する必要があり、また、「フォーカシング時のフォーカス群ストローク(合焦する際の移動距離)」を縮小することも重要である。
【0003】
一般に、撮影レンズでは、光学系全体またはその一部を移動させることにより、フォーカシングを行っている。とりわけ、長焦点距離を有する望遠レンズの場合は、光学系全体が大型で重いため、光学系全体を移動させてフォーカシングを行うのは機構的に困難である。
【0004】
そこで、望遠レンズでは一部のレンズ群を移動させてフォーカシングを行っているものが多い。このうち光学系の前方レンズ群以外で、レンズ口径が比較的小さくレンズ重量の軽い中間部または後方部のレンズ群を移動させるインナーフォーカス方式を採用したものが提案されている(たとえば、特許文献1〜3を参照。)。
【0005】
これらのインナーフォーカス式望遠レンズでは、いずれも、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群の3つのレンズ群を配置し、第2レンズ群を光軸に沿って移動させてフォーカシングを行っている。特に、特許文献1に記載のものは、フォーカス群である第2レンズ群を正レンズと負レンズの2枚のレンズで構成している。特許文献2に記載のものは、第2レンズ群を正レンズと負レンズからなる接合レンズで構成している。特許文献3に記載のものは、第2レンズ群を2枚の負レンズと1枚の正レンズで構成している。
【0006】
また、フォーカス群の軽量化を図るため、フォーカス群を1枚の負レンズで構成したインナーフォーカス式望遠レンズも提案されている(たとえば、特許文献4を参照。)。特許文献4に記載のインナーフォーカス式望遠レンズは、第1レンズ群が光軸に対して回転対称形状の回折格子からなる少なくとも1つの正の屈折力を有する回折面を有している。
【0007】
また、長い焦点距離の撮影系を使用する際には、撮影系が振動によって傾くと、撮影画像はその傾き角と撮影系の焦点距離に応じた変位を発生する。そこでかかる不都合を解消するため、撮影系が振動によって傾いた際にも撮影画像の変位、いわゆる撮影画像のブレが発生しないように補正する機能を備えたインナーフォーカス式望遠レンズも提案されている(たとえば、特許文献2,5,6を参照。)。特許文献2,5に記載のものは、光学系中の一部のレンズ群(防振群)を光軸と直交する方向へシフトさせて撮影画像のブレを補正している。また、特許文献6に記載のものは、第1レンズ群と第2レンズ群とが略アフォーカル系をなし、防振群である第3レンズ群を2枚の正レンズと1枚の負レンズ、正レンズと負レンズとの接合レンズ、または1枚の正レンズにより構成し、第3レンズ群を光軸と直交する方向にシフトさせて撮影画像のブレを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3746942号公報
【特許文献2】特許第3486541号公報
【特許文献3】特許第3541283号公報
【特許文献4】特許第3950571号公報
【特許文献5】特許第4272725号公報
【特許文献6】特許第3646295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜5に記載のインナーフォーカス式望遠レンズでは、正のパワーを第1レンズ群と第3レンズ群に分担させることで、入射光線の偏角を緩やかに変化させることを実現している。しかし、焦点距離に対して光学系全長が長くなり、光学系全体が大型化するという問題がある。
【0010】
上記文献3に記載の第2群合焦式の望遠レンズでは、第1レンズ群と第2レンズ群とで略アフォーカル光学系が形成されるため、光学系全長が長くなる傾向にある。このため、光学系の大型化、重量化につながり、撮影レンズに対する小型、軽量化を望むユーザを満足させることができない。
【0011】
上記文献4に記載の回折格子を有するインナーフォーカス式望遠レンズは、Fナンバーが4以上で暗く、フォーカシング時の収差変動も大きいので、良好な光学性能が得られない。特に、近年、高画素化が進む個体撮像素子を搭載したカメラには不向きである。
【0012】
上記特許文献2,5に記載の防振機能を備えたインナーフォーカス式望遠レンズは、防振係数(防振時における像点のシフト量と防振群のシフト量との比率)が大きいため、防振群の移動量が少なくて済む点は優れている。しかしながら、防振群が2枚の負レンズと1枚の正レンズで構成されているため重い。このため、防振群を駆動させるアクチュエータの径が増大し、その消費電力も増大する。さらに、防振群を構成するレンズ枚数が多いため、レンズの同軸度を保持することが困難である。レンズの同軸度は防振精度にかかわるため、より高い実装精度が要求されることから、レンズの製造コストが増大するという問題もある。
【0013】
上記文献6に記載の防振機能を備えたインナーフォーカス式望遠レンズは、防振群が1ないし3枚のレンズで構成されている。防振群を1枚のレンズで構成することができれば、防振群の重量を大幅に低減することができる。しかし、当該特許文献に記載のものは、防振群の防振係数が小さいため、像点振動量を補正するために、防振群を大きくシフトさせる必要があり、光学系の径方向も大きくなる。加えて、防振群を駆動させるアクチュエータの径も大きくなり、またその消費電力も増大するという問題もある。
【0014】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、フォーカシングのための移動量が少ない小型のフォーカス群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを提供することを目的とする。また、撮影画像の変位補正のためのシフト量が少ない小型の防振群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを提供することも、この発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、を備え、前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることによりフォーカシングを行い、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(1) 0.3<f12/f<1.0
ただし、f12は無限遠物体合焦状態における前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との合成焦点距離、fは光学系全系の焦点距離を示す。
【0016】
この発明によれば、全長が短く、優れた光学性能を備えた、低望遠比のインナーフォーカス方式レンズを実現することができる。
【0017】
この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、前記発明において、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(2) 0.8<β3<1.8
(3) 1.0<β2<2.4
ただし、β3は前記第3レンズ群の横倍率、β2は前記第2レンズ群の横倍率を示す。
【0018】
この発明によれば、フォーカス群である第2レンズ群のフォーカシング時の移動量を抑えることで、収差変動を抑制し、光学系全長も縮小することができる。また、フォーカス群である第2レンズを1枚のレンズで構成してもフォーカシング時の収差変動を抑制し、優れた光学性能を維持することができる。
【0019】
この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、前記発明において、前記第1レンズ群の最も物体側には正レンズが配置されており、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(4) 0.65<φ/f1<0.90
ただし、φは前記正レンズの物体側面の有効径、f1は前記第1レンズ群の焦点距離を示す。
【0020】
この発明によれば、フォーカス群である第2レンズ群の径方向の縮小化を図るとともに、諸収差(特に高次の球面収差)を良好に補正することができる。
【0021】
この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、前記発明において、前記第3レンズ群が、物体側より順に配置された、正の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する中群と、正の屈折力を有する後群と、を備え、前記中群を光軸に直交する方向にシフトさせることにより撮影画像の結像位置を変位させ、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(5) 0.01<f/f3R<3
(6) 0.15<|f3M/f|<0.6
ただし、f3Rは前記後群の焦点距離、f3Mは前記中群の焦点距離を示す。
【0022】
この発明によれば、撮影画像の変位補正を行う第3レンズ群の中群(防振群)のシフト量を抑制することで光学系の径方向の縮小化を図るとともに、諸収差を良好に補正することができる。
【0023】
この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、前記発明において、前記第3レンズ群を構成する中群が、1枚の負レンズ、または負レンズと正レンズとからなる接合レンズで構成されており、以下に示す条件式を満足することを特徴とする。
(7) 39<νd<55
ただし、νdは前記中群に含まれる負レンズのd線に対するアッベ数を示す。
【0024】
この発明によれば、撮影画像の変位補正を行う第3レンズ群の中群(防振群)の軽量化を図るとともに、色収差を良好に補正することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、フォーカシングのための移動量が少ない小型のフォーカス群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを提供することができるという効果を奏する。また、撮影画像の変位補正のためのシフト量が少ない小型の防振群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
【図2】実施例1にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【図3】実施例1にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。
【図4】実施例2にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
【図5】実施例2にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【図6】実施例2にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。
【図7】実施例3にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
【図8】実施例3にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【図9】実施例3にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。
【図10】実施例4にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
【図11】実施例4にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【図12】実施例4にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。
【図13】実施例5にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。
【図14】実施例5にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【図15】実施例5にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、を備え、第2レンズ群を光軸に沿って物体側から像側へ移動させることにより無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態へ至るまでのフォーカシングを行う(基本構成)。
【0029】
この発明の第1の目的は、フォーカシングのための移動量が少ない小型のフォーカス群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比(0.75倍程度)のインナーフォーカス式望遠レンズを提供することを目的としている。そこで、かかる目的を達成するため、上記基本構成に加え、以下に示すような各種条件を設定している。
【0030】
まず、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズでは、上記基本構成において、無限遠物体合焦状態における前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との合成焦点距離をf12、光学系全系の焦点距離をfとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(1) 0.3<f12/f<1.0
【0031】
条件式(1)は、全長が短く、優れた光学性能を備えた、低望遠比のインナーフォーカス方式レンズを実現するための条件を示すものである。条件式(1)においてその下限を下回ると、最至近距離物体合焦時に発生する球面収差が顕著になるため、好ましくない。一方、条件式(1)においてその上限を超えると、光学系全長が大きく延びることに加え、低望遠比のインナーフォーカス方式レンズを実現できなくなる。
【0032】
なお、上記条件式(1)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(1)’ 0.6<f12/f<0.95
この条件式(1)’で規定する範囲を満足することにより、より光学系全長を縮小するとともに、諸収差をより良好に補正することができる。
【0033】
さらに、上記条件式(1)’は、次に示す範囲を満足すると、さらなる好ましい効果が期待できる。
(1)’’ 0.75<f12/f<0.9
この条件式(1)’’で規定する範囲を満足することにより、より一層の光学系全長の縮小と、光学性能の向上を図ることができる。
【0034】
さらに、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズでは、第3レンズ群の横倍率をβ3、第2レンズ群の横倍率をβ2とするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(2) 0.8<β3<1.8
(3) 1.0<β2<2.4
【0035】
条件式(2),(3)は、フォーカス群である第2レンズ群の単位移動量に対する像面移動量の比、いわゆるガタ倍率を小さくして、第2レンズ群のフォーカシング時の移動量を抑え、収差変動を抑制し、光学系全長を縮小するための条件を示すものである。条件式(2),(3)を満足することにより、第2レンズ群を1枚のレンズで構成しても、フォーカシング時の収差変動を抑制して、光学性能を向上させることができる。なお、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズにおいて、ガタ倍率βfは、前述のように第2レンズ群の横倍率をβ2、第3レンズ群の横倍率をβ3とするとき、βf=(1−(β2)2)×(β3)2で求めることができる。条件式(2)または(3)においてその下限を下回ると、近距離物体へのフォーカシングを行う際に第2レンズ群の移動量が増大し、光学系全系の小型化やフォーカシングをつかさどるレンズ変位機構の簡易化が困難になる。さらに、フォーカス群である第2レンズ群の移動量の増大によりもたらされる収差変動も大きくなって、その補正が困難になる。一方、条件式(2)または(3)においてその上限を超えると、ガタ倍率が大きくなりすぎ、高い分解能が要求され、第2レンズ群を駆動するレンズ変位機構にも高い精度が求められ、コスト増にもつながるため、好ましくない。
【0036】
なお、上記条件式(2),(3)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(2)’ 0.9<β3<1.5
(3)’ 1.5<β2<2.3
この条件式(2)’,(3)’で規定する範囲を満足することにより、より第2レンズ群の移動量を抑え、第2レンズ群の移動に伴う収差変動を抑制することができる。
【0037】
さらに、上記条件式(2)’,(3)’は、次に示す範囲を満足すると、さらなる好ましい効果が期待できる。
(2)’’ 0.95<β3<1.35
(3)’’ 1.7<β2<2.25
この条件式(2)’’,(3)’’で規定する範囲を満足することにより、より一層第2レンズ群の移動量を抑え、第2レンズ群の移動に伴う収差変動を抑制することができる。
【0038】
さらに、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズでは、第1レンズ群の最も物体側には正レンズを配置するとよい。そして、このとき、第1レンズ群の最も物体側に配置された正レンズの物体側面の有効径をφ、第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(4) 0.65<φ/f1<0.90
【0039】
条件式(4)は、フォーカス群である第2レンズ群の径方向の縮小化を図るとともに、諸収差(特に高次の球面収差)を良好に補正するための条件を示すものである。条件式(4)においてその下限を下回ると、第1レンズ群の屈折力が弱くなりすぎて当該第1レンズ群による光束の収斂作用が弱くなって、第2レンズ群に入射する光束径が太くなってしまう。この結果、第2レンズ群のレンズ口径を大きくしなければならず、光学系の径方向の大型化を招き、好ましくない。また、第2レンズ群のレンズ口径が大きくなることにより、その重量も増加するため、第2レンズ群の駆動機構にも大きな負担がかかる。一方、条件式(4)においてその上限を超えると、第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎて、高次の球面収差の発生が顕著になる。これを他のレンズ群で補正することは困難である。
【0040】
この発明の第2の目的は、撮影画像の変位補正のためのシフト量が少ない小型の防振群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを提供することである。そこで、かかる目的を達成するため、上記構成に加え、以下に示すような各種条件を設定している。
【0041】
この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズでは、上記構成において、第3レンズ群を、物体側より順に、正の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する中群と、正の屈折力を有する後群と、を配置して構成し、中群を光軸に対して略垂直な方向にシフトさせて撮影画像の結像位置を変位させることにより、手振れなどによる光学系の振動時に生じる像ブレの補正(防振補正)を行う。この場合、光学系全系の焦点距離をf、後群の焦点距離をf3R、中群の焦点距離をf3Mとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(5) 0.01<f/f3R<3
(6) 0.15<|f3M/f|<0.6
【0042】
条件式(5),(6)は、撮影画像の変位補正を行う第3レンズ群の中群(防振群)のシフト量を抑制することで光学系の径方向の縮小化を図るとともに、諸収差を良好に補正するための条件を示すものである。条件式(5)または(6)においてその上限を超えると、防振群である第3レンズ群の中群の敏感度が低くなりすぎて、像変位の補正を行う際に防振群を大きく移動させる必要が生じるため、光学系の径方向が増大して小型化を維持することが困難になる。加えて、当該中群を駆動するレンズ変位機構の負担も大きくなるという不都合が生じる。一方、条件式(5)または(6)においてその下限を下回ると、第3レンズ群の中群の屈折力が弱くなりすぎて、諸収差を良好に補正することが困難になる。
【0043】
なお、上記条件式(5),(6)は、次に示す範囲を満足すると、より好ましい効果が期待できる。
(5)’ 0.1<f/f3R<2.8
(6)’ 0.16<|f3M/f|<0.5
この条件式(5)’,(6)’で規定する範囲を満足することにより、より中群の防振補正時のシフト量を抑えるとともに、より良好な収差補正効果が得られる。
【0044】
さらに、上記条件式(5)’,(6)’は、次に示す範囲を満足すると、さらなる好ましい効果が期待できる。
(5)’’ 0.2<f/f3R<2.3
(6)’’ 0.20<|f3M/f|<0.4
この条件式(5)’’,(6)’’で規定する範囲を満足することにより、より一層中群の防振補正時のシフト量を抑えるとともに、より一層良好な収差補正効果が得られる。
【0045】
さらに、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズでは、第3レンズ群を構成する中群を、1枚の負レンズ、または負レンズと正レンズとからなる接合レンズで構成するとよい。このようにすることで、防振機能を有する第3レンズ群の中群を軽量化して、当該中群のレンズ変位機構にかかる重量負荷を軽減することができる。そして、当該中群に含まれる負レンズのd線に対するアッベ数をνdとするとき、次の条件式を満足することが好ましい。
(7) 39<νd<55
【0046】
条件式(7)は、第3レンズ群の中群(防振群)で色収差を良好に補正するための条件を示すものである。条件式(7)においてその下限を下回ると、第3レンズ群の中群による色収差の補正量が不足し、防振補正時の倍率色収差の変動が大きくなり、光学性能が劣化する。一方、条件式(7)においてその上限を超えると、色収差の補正に有利になるが、硝材の屈折率が小さくなって、球面収差の補正量が不足し、光学性能が劣化する。
【0047】
以上説明したように、この発明によれば、フォーカシングのための移動量が少ない小型のフォーカス群と、撮影画像の変位補正のためのシフト量が少ない小型の防振群を備えた、小型、軽量で高い光学性能を有する、低望遠比のインナーフォーカス式望遠レンズを実現することができる。特に、上記各条件式を満足することで、フォーカス群である第2レンズの小型、軽量化とフォーカシング時の移動量の抑制、撮影画像の変位補正時における第3レンズ群の中群(防振群)のシフト量の抑制、光学性能の向上を図ることができる。
【0048】
以下、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの実施例を図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0049】
図1は、実施例1にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。このインナーフォーカス式望遠レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G11と、負の屈折力を有する第2レンズ群G12と、負の屈折力を有する第3レンズ群G13と、が配置されて構成される。また、第2レンズ群G12と第3レンズ群G13との間には、所定の口径を規定する開口絞りSTOPが配置されている。
【0050】
第1レンズ群G11は、物体側から順に、正レンズL111と、正レンズL112と、負レンズL113と、負レンズL114と、正レンズL115と、が配置されて構成される。正レンズL112と負レンズL113、負レンズL114と正レンズL115は、接合されている。
【0051】
第2レンズ群G12は、負レンズL121により構成される。第2レンズ群G12は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態に至るまでのフォーカシングを行う。
【0052】
第3レンズ群G13は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群G13Fと、負の屈折力を有する中群G13Mと、正の屈折力を有する後群G13Rと、が配置されて構成される。前群G13Fは、正レンズL131により構成される。中群G13Mは、物体側から順に、負レンズL132と、正レンズL133と、が配置されて構成される。負レンズL132と正レンズL133とは、接合されている。中群G13Mには防振群としての機能をもたせている。すなわち、中群G13Mを光軸に対して略垂直な方向にシフト(偏芯)させて撮影画像の結像位置を変位させることにより、手振れなどによる光学系の振動時に生じる像ブレの補正を行う。後群G13Rは、物体側から順に、負レンズL134と、正レンズL135と、が配置されて構成される。
【0053】
以下、実施例1にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0054】
(レンズデータ)
1=70.3264
1=6.7914 nd1=1.74436 νd1=52.60
2=-274.7406
2=1.8927
3=39.6454
3=10.0000 nd2=1.49845 νd2=81.61
4=-122.0962
4=1.6607 nd3=1.82017 νd3=46.57
5=78.8754
5=7.2204
6=56.7446
6=0.8500 nd4=1.79191 νd4=25.72
7=28.1569
7=9.5849 nd5=1.51872 νd5=64.20
8=241.0821
8=D(8)(可変)
9=516.9675
9=0.5000 nd6=1.83944 νd6=42.72
10=39.1074
10=D(10)(可変)
11=∞(開口絞り)
11=1.5000
12=-172.0440
12=1.8943 nd7=1.81263 νd7=25.46
13=-40.5829
13=2.5000
14=440.6293
14=0.5000 nd8=1.83944 νd8=42.72
15=20.0000
15=1.7885 nd9=1.67764 νd9=32.17
16=34.9981
16=16.5228
17=-16.4798
17=0.8500 nd10=1.83944 νd10=42.72
18=-24.0084
18=0.1000
19=40.9767
19=3.3815 nd11=1.70444 νd11=30.05
20=-176.4246
20=0.1000
21=∞(像面)
【0055】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離
D(8) 6.2080 11.8591
D(10) 8.3421 2.5040
【0056】
f(光学系全系の焦点距離)=133.00
Fno=2.86
2ω(画角)=12.1
望遠比=0.752
φ(正レンズL111の物体側面の有効径)=23.50
f1(第1レンズ群G11の焦点距離)=30.051
f12(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G11と第2レンズ群G12との合成焦点距離)=113.582
f3M(中群G13Mの焦点距離)=-38.57
f3R(後群G13Rの焦点距離)=152.670
【0057】
(条件式(1)に関する数値)
f12/f=0.854
【0058】
(条件式(2)に関する数値)
β3(第3レンズ群G13の横倍率)=1.170
【0059】
(条件式(3)に関する数値)
β2(第2レンズ群G12の横倍率)=1.915
【0060】
(条件式(4)に関する数値)
φ/f1=0.782
【0061】
(条件式(5)に関する数値)
f/f3R=0.871
【0062】
(条件式(6)に関する数値)
|f3M/f|=0.29
【0063】
(条件式(7)に関する数値)
νd(負レンズL132とのd線に対するアッベ数)=42.72
【0064】
図2は、実施例1にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。また、図3は、実施例1にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。図中、gはg線(λ=435.83nm)、dはd線(λ=587.56nm)、CはC線(λ=656.28nm)に相当する波長の収差を表す。そして、非点収差図におけるΔS,ΔMは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。また、横収差図は、それぞれ光軸に対する像高位置(Y)での収差を表している(正が光軸より上の方向)。
【実施例2】
【0065】
図4は、実施例2にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。このインナーフォーカス式望遠レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G21と、負の屈折力を有する第2レンズ群G22と、負の屈折力を有する第3レンズ群G23と、が配置されて構成される。また、第2レンズ群G22と第3レンズ群G23との間には、所定の口径を規定する開口絞りSTOPが配置されている。
【0066】
第1レンズ群G21は、物体側から順に、正レンズL211と、正レンズL212と、負レンズL213と、正レンズL214と、が配置されて構成される。正レンズL212と負レンズL213とは、接合されている。
【0067】
第2レンズ群G22は、負レンズL221により構成される。第2レンズ群G22は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態に至るまでのフォーカシングを行う。
【0068】
第3レンズ群G23は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群G23Fと、負の屈折力を有する中群G23Mと、正の屈折力を有する後群G23Rと、が配置されて構成される。前群G23Fは、正レンズL231により構成される。中群G23Mは、物体側から順に、負レンズL232と、正レンズL233と、が配置されて構成される。負レンズL232と正レンズL233とは、接合されている。中群G23Mには防振群としての機能をもたせている。すなわち、中群G23Mを光軸に対して略垂直な方向にシフト(偏芯)させて撮影画像の結像位置を変位させることにより、手振れなどによる光学系の振動時に生じる像ブレの補正を行う。後群G23Rは、物体側から順に、負レンズL234と、正レンズL235と、が配置されて構成される。
【0069】
以下、実施例2にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0070】
(レンズデータ)
1=59.8072
1=7.1074 nd1=1.83944 νd1=42.72
2=-835.4183
2=0.1000
3=34.8607
3=9.6505 nd2=1.49845 νd2=81.61
4=-180.0000
4=2.2980 nd3=1.81184 νd3=33.27
5=24.5407
5=3.0000
6=25.2708
6=7.1341 nd4=1.51872 νd4=64.20
7=440.3397
7=D(7)(可変)
8=-2287.3310
8=0.5000 nd5=1.69660 νd5=53.34
9=42.3977
9=D(9)(可変)
10=∞(開口絞り)
10=1.5000
11=-160.3486
11=2.0567 nd6=1.85505 νd6=23.78
12=-43.4481
12=2.5000
13=277.5057
13=0.5000 nd7=1.83944 νd7=42.72
14=20.3750
14=1.8856 nd8=1.79191 νd8=25.72
15=35.4856
15=20.0000
16=-16.9895
16=1.0000 nd9=1.88815 νd9=40.80
17=-28.0378
17=1.0868
18=42.7437
18=3.8084 nd10=1.52033 νd10=58.96
19=-63.3548
19=0.1000
20=∞(像面)
【0071】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離
D(7) 9.4278 15.2724
D(9) 8.3446 2.500
【0072】
f(光学系全系の焦点距離)=133.00
Fno=2.88
2ω(画角)=12.1
望遠比=0.752
φ(正レンズL211の物体側面の有効径)=23.47
f1(第1レンズ群G21の焦点距離)=29.784
f12(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G21と第2レンズ群G22との合成焦点距離)=107.996
f3M(中群G23Mの焦点距離)=-46.55
f3R(後群G23Rの焦点距離)=554.167
【0073】
(条件式(1)に関する数値)
f12/f=0.812
【0074】
(条件式(2)に関する数値)
β3(第3レンズ群G23の横倍率)=1.232
【0075】
(条件式(3)に関する数値)
β2(第2レンズ群G22の横倍率)=1.845
【0076】
(条件式(4)に関する数値)
φ/f1=0.788
【0077】
(条件式(5)に関する数値)
f/f3R=0.240
【0078】
(条件式(6)に関する数値)
|f3M/f|=0.35
【0079】
(条件式(7)に関する数値)
νd(負レンズL232とのd線に対するアッベ数)=42.72
【0080】
図5は、実施例2にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。また、図6は、実施例2にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。図中、gはg線(λ=435.83nm)、dはd線(λ=587.56nm)、CはC線(λ=656.28nm)に相当する波長の収差を表す。そして、非点収差図におけるΔS,ΔMは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。また、横収差図は、それぞれ光軸に対する像高位置(Y)での収差を表している(正が光軸より上の方向)。
【実施例3】
【0081】
図7は、実施例3にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。このインナーフォーカス式望遠レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G31と、負の屈折力を有する第2レンズ群G32と、負の屈折力を有する第3レンズ群G33と、が配置されて構成される。また、第2レンズ群G32と第3レンズ群G33との間には、所定の口径を規定する開口絞りSTOPが配置されている。
【0082】
第1レンズ群G31は、物体側から順に、正レンズL311と、正レンズL312と、負レンズL313と、負レンズL314と、正レンズL315と、が配置されて構成される。正レンズL312と負レンズL313、負レンズL314と正レンズL315は、接合されている。
【0083】
第2レンズ群G32は、負レンズL321により構成される。第2レンズ群G32は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態に至るまでのフォーカシングを行う。
【0084】
第3レンズ群G33は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群G33Fと、負の屈折力を有する中群G33Mと、正の屈折力を有する後群G33Rと、が配置されて構成される。前群G33Fは、正レンズL331により構成される。中群G33Mは、物体側から順に、負レンズL332と、正レンズL333と、が配置されて構成される。負レンズL332と正レンズL333とは、接合されている。中群G33Mには防振群としての機能をもたせている。すなわち、中群G33Mを光軸に対して略垂直な方向にシフト(偏芯)させて撮影画像の結像位置を変位させることにより、手振れなどによる光学系の振動時に生じる像ブレの補正を行う。後群G33Rは、物体側から順に、負レンズL334と、正レンズL335と、が配置されて構成される。
【0085】
以下、実施例3にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0086】
(レンズデータ)
1=66.2281
1=7.3750 nd1=1.75844 νd1=52.32
2=-253.2931
2=0.1000
3=43.0037
3=11.0161 nd2=1.49845 νd2=81.61
4=-99.7688
4=1.4977 nd3=1.88815 νd3=40.80
5=59.7060
5=4.5720
6=46.8995
6=3.3343 nd4=1.85505 νd4=23.78
7=33.2819
7=10.1049 nd5=1.51872 νd5=64.20
8=-1331.6903
8=D(8)(可変)
9=291.8995
9=0.9000 nd6=1.73234 νd6=54.67
10=35.9220
10=D(10)(可変)
11=∞(開口絞り)
11=1.5000
12=-93.8260
12=1.8420 nd7=1.81263 νd7=25.46
13=-38.3112
13=2.5000
14=336.1878
14=0.9000 nd8=1.83944 νd8=42.72
15=20.0000
15=1.8590 nd9=1.57046 νd9=42.84
16=39.5281
16=15.8380
17=-16.0311
17=0.9000 nd10=1.83944 νd10=42.72
18=-24.9482
18=0.1000
19=47.4345
19=3.1983 nd11=1.74707 νd11=27.76
20=-126.0807
20=0.1000
21=∞(像面)
【0087】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離
D(8) 6.0206 15.2724
D(10) 8.3421 2.500
【0088】
f(光学系全系の焦点距離)=133.00
Fno=2.86
2ω(画角)=12.1
望遠比=0.752
φ(正レンズL311の物体側面の有効径)=23.38
f1(第1レンズ群G31の焦点距離)=29.007
f12(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G31と第2レンズ群G32との合成焦点距離)=99.883
f3M(中群G33Mの焦点距離)=-38.57
f3R(後群G33Rの焦点距離)=225.424
【0089】
(条件式(1)に関する数値)
f12/f=0.751
【0090】
(条件式(2)に関する数値)
β3(第3レンズ群G33の横倍率)=1.330
【0091】
(条件式(3)に関する数値)
β2(第2レンズ群G32の横倍率)=1.752
【0092】
(条件式(4)に関する数値)
φ/f1=0.806
【0093】
(条件式(5)に関する数値)
f/f3R=0.590
【0094】
(条件式(6)に関する数値)
|f3M/f|=0.29
【0095】
(条件式(7)に関する数値)
νd(負レンズL332とのd線に対するアッベ数)=42.72
【0096】
図8は、実施例3にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。また、図9は、実施例3にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。図中、gはg線(λ=435.83nm)、dはd線(λ=587.56nm)、CはC線(λ=656.28nm)に相当する波長の収差を表す。そして、非点収差図におけるΔS,ΔMは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。また、横収差図は、それぞれ光軸に対する像高位置(Y)での収差を表している(正が光軸より上の方向)。
【実施例4】
【0097】
図10は、実施例4にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。このインナーフォーカス式望遠レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G41と、負の屈折力を有する第2レンズ群G42と、負の屈折力を有する第3レンズ群G43と、が配置されて構成される。また、第2レンズ群G42と第3レンズ群G43との間には、所定の口径を規定する開口絞りSTOPが配置されている。
【0098】
第1レンズ群G41は、物体側から順に、正レンズL411と、正レンズL412と、負レンズL413と、負レンズL414と、正レンズL415と、が配置されて構成される。正レンズL412と負レンズL413、負レンズL414と正レンズL415は、接合されている。
【0099】
第2レンズ群G42は、負レンズL421により構成される。第2レンズ群G42は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態に至るまでのフォーカシングを行う。
【0100】
第3レンズ群G43は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群G43Fと、負の屈折力を有する中群G43Mと、正の屈折力を有する後群G43Rと、が配置されて構成される。前群G43Fは、正レンズL431により構成される。中群G43Mは、物体側から順に、負レンズL432と、正レンズL433と、が配置されて構成される。負レンズL432と正レンズL433とは、接合されている。中群G43Mには防振群としての機能をもたせている。すなわち、中群G43Mを光軸に対して略垂直な方向にシフト(偏芯)させて撮影画像の結像位置を変位させることにより、手振れなどによる光学系の振動時に生じる像ブレの補正を行う。後群G43Rは、物体側から順に、正レンズL434と、負レンズL435と、正レンズL436と、が配置されて構成される。
【0101】
以下、実施例4にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0102】
(レンズデータ)
1=70.1149
1=7.0320 nd1=1.67000 νd1=48.30
2=-232.8818
2=0.1000
3=40.1811
3=10.1770 nd2=1.49845 νd2=81.61
4=-144.1383
4=0.8500 nd3=1.83944 νd3=42.72
5=93.5683
5=11.1534
6=45.5860
6=0.8500 nd4=1.85505 νd4=23.78
7=26.3525
7=7.8375 nd5=1.48914 νd5=70.44
8=113.8593
8=D(8)(可変)
9=417.7519
9=0.9210 nd6=1.83944 νd6=42.72
10=35.4132
10=D(10)(可変)
11=∞(開口絞り)
11=1.5000
12=-68.4684
12=1.5000 nd7=1.85505 νd7=23.78
13=-34.8085
13=1.7769
14=89.0909
14=2.5000 nd8=1.88815 νd8=40.80
15=20.0000
15=0.8500 nd9=1.85505 νd9=23.78
16=25.2985
16=1.6011
17=31.9353
17=2.5000 nd10=1.51872 νd10=62.20
18=1128.3418
18=2.3395
19=-19.9409
19=10.9264 nd11=1.83944 νd11=42.72
20=-137.7006
20=0.8500
21=64.8626
21=0.3269 nd12=1.76860 νd11=26.61
22=-45.5295
22=3.4450
23=∞(像面)
【0103】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離
D(8) 6.0209 11.8595
D(10) 8.3421 2.5040
【0104】
f(光学系全系の焦点距離)=133.00
Fno=2.87
2ω(画角)=12.1
望遠比=0.752
φ(正レンズL411の物体側面の有効径)=23.55
f1(第1レンズ群G41の焦点距離)=31.316
f12(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G41と第2レンズ群G42との合成焦点距離)=129.941
f3M(中群G43Mの焦点距離)=-39.90
f3R(後群G43Rの焦点距離)=95.409
【0105】
(条件式(1)に関する数値)
f12/f=0.977
【0106】
(条件式(2)に関する数値)
β3(第3レンズ群G43の横倍率)=1.023
【0107】
(条件式(3)に関する数値)
β2(第2レンズ群G42の横倍率)=2.118
【0108】
(条件式(4)に関する数値)
φ/f1=0.752
【0109】
(条件式(5)に関する数値)
f/f3R=1.394
【0110】
(条件式(6)に関する数値)
|f3M/f|=0.30
【0111】
(条件式(7)に関する数値)
νd(負レンズL432とのd線に対するアッベ数)=40.80
【0112】
図11は、実施例4にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。また、図12は、実施例4にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。図中、gはg線(λ=435.83nm)、dはd線(λ=587.56nm)、CはC線(λ=656.28nm)に相当する波長の収差を表す。そして、非点収差図におけるΔS,ΔMは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。また、横収差図は、それぞれ光軸に対する像高位置(Y)での収差を表している(正が光軸より上の方向)。
【実施例5】
【0113】
図13は、実施例5にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの構成を示す光軸に沿う断面図である。このインナーフォーカス式望遠レンズは、図示しない物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G51と、負の屈折力を有する第2レンズ群G52と、負の屈折力を有する第3レンズ群G53と、が配置されて構成される。また、第2レンズ群G52と第3レンズ群G53との間には、所定の口径を規定する開口絞りSTOPが配置されている。
【0114】
第1レンズ群G51は、物体側から順に、正レンズL511と、正レンズL512と、負レンズL513と、負レンズL514と、正レンズL515と、が配置されて構成される。正レンズL512と負レンズL513、負レンズL514と正レンズL515は、接合されている。
【0115】
第2レンズ群G52は、負レンズL521により構成される。第2レンズ群G52は、光軸に沿って物体側から像側へ移動することにより、無限遠物体合焦状態から最至近距離物体合焦状態に至るまでのフォーカシングを行う。
【0116】
第3レンズ群G53は、物体側から順に、正の屈折力を有する前群G53Fと、負の屈折力を有する中群G53Mと、正の屈折力を有する後群G53Rと、が配置されて構成される。前群G53Fは、正レンズL531により構成される。中群G53Mは、負レンズL532により構成される。中群G53Mには防振群としての機能をもたせている。すなわち、中群G53Mを光軸に対して略垂直な方向にシフト(偏芯)させて撮影画像の結像位置を変位させることにより、手振れなどによる光学系の振動時に生じる像ブレの補正を行う。後群G53Rは、物体側から順に、正レンズL533と、負レンズL534と、正レンズL535と、が配置されて構成される。
【0117】
以下、実施例5にかかるインナーフォーカス式レンズに関する各種数値データを示す。
【0118】
(レンズデータ)
1=59.7133
1=7.9141 nd1=1.56605 νd1=60.83
2=-262.7417
2=0.1000
3=37.4731
3=10.2958 nd2=1.49845 νd2=81.61
4=-199.4034
4=1.1508 nd3=1.80831 νd3=46.50
5=71.0499
5=7.9425
6=34.9720
6=0.8500 nd4=1.83930 νd4=37.34
7=21.0000
7=9.7468 nd5=1.49845 νd5=81.61
8=108.1912
8=D(8)(可変)
9=142.0616
9=0.8500 nd6=1.71615 νd6=53.94
10=29.2165
10=D(10)(可変)
11=∞(開口絞り)
11=1.5000
12=-35.6101
12=1.5091 nd7=1.85505 νd7=23.78
13=-28.6943
13=4.5589
14=218.1423
14=0.8500 nd8=1.77621 νd8=49.62
15=25.7190
15=2.5000
16=32.9384
16=1.9755 nd9=1.57125 νd9=56.04
17=534.2482
17=9.0961
18=-18.8316
18=0.8500 nd10=1.83944 νd10=42.72
19=-46.1779
19=2.5719
20=124.5153
20=3.2759 nd11=1.76167 νd11=27.53
21=-42.1718
21=0.1000
22=∞(像面)
【0119】
(各合焦状態の数値データ)
無限遠 最至近距離
D(8) 6.0207 11.8593
D(10) 8.3421 2.5040
【0120】
f(光学系全系の焦点距離)=133.00
Fno=2.87
2ω(画角)=12.1
望遠比=0.752
φ(正レンズL511の物体側面の有効径)=24.21
f1(第1レンズ群G51の焦点距離)=29.417
f12(無限遠物体合焦状態における第1レンズ群G51と第2レンズ群G52との合成焦点距離)=107.065
f3M(中群G53Mの焦点距離)=-37.24
f3R(後群G53Rの焦点距離)=65.776
【0121】
(条件式(1)に関する数値)
f12/f=0.805
【0122】
(条件式(2)に関する数値)
β3(第3レンズ群G53の横倍率)=1.242
【0123】
(条件式(3)に関する数値)
β2(第2レンズ群G52の横倍率)=1.837
【0124】
(条件式(4)に関する数値)
φ/f1=0.823
【0125】
(条件式(5)に関する数値)
f/f3R=2.022
【0126】
(条件式(6)に関する数値)
|f3M/f|=0.28
【0127】
(条件式(7)に関する数値)
νd(負レンズL532とのd線に対するアッベ数)=49.62
【0128】
図14は、実施例5にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。また、図15は、実施例5にかかるインナーフォーカス式望遠レンズの無限遠物体合焦状態における横収差図である。図中、gはg線(λ=435.83nm)、dはd線(λ=587.56nm)、CはC線(λ=656.28nm)に相当する波長の収差を表す。そして、非点収差図におけるΔS,ΔMは、それぞれサジタル像面、メリディオナル像面に対する収差を表す。また、横収差図は、それぞれ光軸に対する像高位置(Y)での収差を表している(正が光軸より上の方向)。
【0129】
なお、上記各実施例中の数値データにおいて、r1,r2,・・・・は各レンズ、絞り面などの曲率半径、d1,d2,・・・・は各レンズ、絞りなどの肉厚またはそれらの面間隔、nd1,nd2,・・・・は各レンズのd線(λ=587.56nm)に対する屈折率、νd1,νd2,・・・・は各レンズのd線(λ=587.56nm)に対するアッベ数を示している。そして、長さの単位はすべて「mm」、角度の単位はすべて「°」である。
【0130】
以上説明したように、上記各実施例のインナーフォーカス式望遠レンズは、フォーカシングのための移動量が少ない小型のフォーカス群と、撮影画像の変位補正のためのシフト量が少ない小型の防振群を備えることができる。特に、上記各条件式を満足することで、フォーカス群である第2レンズの小型、軽量化とフォーカシング時の移動量の抑制、撮影画像の変位補正時における第3レンズ群の中群(防振群)のシフト量の抑制、光学性能の向上を図り、望遠比が0.75程度、Fナンバーが2.8程度のインナーフォーカス式望遠レンズを実現することができる。また、適宜接合レンズを用いることでより、良好な収差補正を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上のように、この発明にかかるインナーフォーカス式望遠レンズは、写真用カメラ、ビデオカメラなどに有用であり、特に、振動による影響を受けやすい場所で用いられる撮像装置に最適である。
【符号の説明】
【0132】
11,G21,G31,G41,G51 第1レンズ群
12,G22,G32,G42,G52 第2レンズ群
13,G23,G33,G43,G53 第3レンズ群
13F,G23F,G33F,G43F,G53F 前群
13M,G23M,G33M,G43M,G53M 中群
13R,G23R,G33R,G43R,G53R 前群
111,L112,L115,L131,L133,L135,L211,L212,L214,L231,L233,L235,L311,L312,L315,L331,L333,L335,L411,L412,L415,L431,L433,L434,L436,L511,L512,L515,L531,L533,L535 正レンズ
113,L114,L121,L132,L134,L213,L221,L232,L234,L313,L314,L321,L332,L334,L413,L414,L421,L432,L435,L513,L514,L521,L532,L534 負レンズ
STOP 開口絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、を備え、
前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることによりフォーカシングを行い、
以下に示す条件式を満足することを特徴とするインナーフォーカス式望遠レンズ。
(1) 0.3<f12/f<1.0
ただし、f12は無限遠物体合焦状態における前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との合成焦点距離、fは光学系全系の焦点距離を示す。
【請求項2】
以下に示す条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のインナーフォーカス式望遠レンズ。
(2) 0.8<β3<1.8
(3) 1.0<β2<2.4
ただし、β3は前記第3レンズ群の横倍率、β2は前記第2レンズ群の横倍率を示す。
【請求項3】
前記第1レンズ群の最も物体側には正レンズが配置されており、
以下に示す条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のインナーフォーカス式望遠レンズ。
(4) 0.65<φ/f1<0.90
ただし、φは前記正レンズの物体側面の有効径、f1は前記第1レンズ群の焦点距離を示す。
【請求項4】
前記第3レンズ群は、物体側より順に配置された、正の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する中群と、正の屈折力を有する後群と、を備え、
前記中群を光軸に対して略垂直方向へシフトさせることにより撮影画像の結像位置を変位させ、
以下に示す条件式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のインナーフォーカス式望遠レンズ。
(5) 0.01<f/f3R<3
(6) 0.15<|f3M/f|<0.6
ただし、f3Rは前記後群の焦点距離、f3Mは前記中群の焦点距離を示す。
【請求項5】
前記第3レンズ群を構成する中群は、1枚の負レンズ、または負レンズと正レンズとからなる接合レンズで構成されており、
以下に示す条件式を満足することを特徴とする請求項4に記載のインナーフォーカス式望遠レンズ。
(7) 39<νd<55
ただし、νdは前記中群に含まれる負レンズのd線に対するアッベ数を示す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−97212(P2013−97212A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240698(P2011−240698)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】