説明

インナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法

【課題】インナーリブを備えた樹脂積層板の提供。
【解決手段】スライドコア300を設けた一対の金型の間に、熱可塑性樹脂製シートP1、P2を位置決めする段階と、熱可塑性樹脂製シートP1と一方の金型のキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、密閉空間を吸引しつつ、他方の金型に向かってスライドコア300を突出させることにより、熱可塑性樹脂製シートP1を賦形するとともに、シートの一部を他方の金型に向かってU字状に突き出す段階と、熱可塑性樹脂製シートを他方の熱可塑性樹脂製シートに溶着させる段階と、熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着して、2枚の熱可塑性樹脂製シートの内部に密閉部280を形成する段階と、スライドコア300を引っ込めることにより、U字状に突き出された熱可塑性樹脂製シートの内面同士を互いに対向させる段階と、対向内面同士を溶着させて、インナーリブを形成する段階とを有する樹脂積層板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法に関し、より詳細には、製造効率および外観上の美観を確保しつつ、軽量化および高剛性化を達成可能なインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内装材や建材、物流・包装材として、いわゆる樹脂積層板が採用されている。
樹脂積層板の一例として、樹脂製の表面材と樹脂製の裏面材とを有し、裏面材には先端部が表面材の内面に突き合わされる複数の凹部が設けられる。特に、外観が重視される自動車の内装材や建材の場合には、表面材の表側には不織布等の化粧材が貼着される。
このような樹脂積層板によれば、凹部を構成するリブを通じて、積層板の厚み方向の圧縮剛性を増大することは可能であるが、以下のような技術的問題点を有する。
第1に、積層板の厚み方向の圧縮剛性に比べて、積層板の曲げ剛性が不十分となりやすい点である。より詳細には、裏面材に設けた凹部により、裏面材の外表面には、凹部の数に応じて開口が形成されるところ、この開口を大きくする向きの曲げに対しては、開口を設けない場合に比べて、曲げ剛性が劣化する傾向にある。
【0003】
第2に、凹部を設けることに起因して、外観上の美観が劣る点である。より詳細には、上述のように、裏面材の外表面には複数の開口が形成されることに起因して、表面材と異なり、裏面材の外表面に化粧材を貼着することが困難であり、複数の開口が外観上露出状態となることから、開口を設けない場合に比べて、裏面材の外表面の外観上の美観が劣る。
この点、このような凹部を形成しないで、表面材と裏面材との間にリブを設ける樹脂積層板が採用されている。
この樹脂積層板は、表面材と裏面材との間に、積層板の一辺の方向に互いに間隔を隔て、それぞれ他辺の方向に延びる板状のリブが配設され、表面材および裏面材ともに、それぞれの外表面には開口が形成されていない。
このような樹脂積層板の製造方法としては、押出成形技術が周知であり、リブの配置に応じてスリット形状を準備することにより、スリットから溶融樹脂を押し出すことにより、一様な断面形状であって押出方向にリブが延びる形態の樹脂積層板を製造することが可能である。
しかしながら、このような押出成形技術を利用した樹脂積層板には、以下のような技術的問題点が存する。
すなわち、外観上の美観に優れた樹脂積層板の製造効率が低い点である。
より詳細には、押し出された樹脂積層板のスリットの両端部に位置する部分は、内部構造が露出され、外観上の美観の観点から末端処理が別途必要となることから、その分製造効率が低下する。
さらに、表面材の外表面に化粧材を貼着する場合には、押出工程後に、別途化粧材の貼着工程が必要となることから、製造効率がさらに低下する。
このような製造効率の低下を引き起こすことのない樹脂積層板の製造方法として、ブロー成形技術を利用した製造方法が、たとえば特許文献1に開示されている。
この樹脂積層板の製造方法は、熱可塑性樹脂のパリソンを対象に、一方がスライドコアを備える分割形式の金型を利用して、表面材と裏面材との間にインナーリブを形成するものである。
【0004】
より詳細には、一対の分割金型の一方の金型のキャビティと熱可塑性樹脂のパリソンとの間に化粧材を配置する段階と、一対の分割金型を型締することにより、ピンチオフ部によって熱可塑性樹脂のパリソン内部を密閉状に形成する段階と、他方の金型に設けたスライドコアを一方の金型に向かって突出させることにより、熱可塑性樹脂のパリソンの他方の金型に対向する裏面材の部分を、その先端が熱可塑性樹脂のパリソンの一方の金型に対向するおもて面材の内面に溶着するようにU字状に突き出す段階と、スライドコアを他方の金型のキャビティに向かって引っ込める段階と、パリソン内部に形成された密閉部にブロー圧をかけることにより、化粧材をおもて面材の外面に溶着するとともに、突き出された裏面材の部分のスライドコアを介して対向していた対向面同士を互いに溶着させて、一体的なインナーリブを形成する段階とを有する。
【0005】
このような製造方法によれば、化粧材の表面材との溶着を型締により行わず、型締力より小さいブロー圧により行う一方、リブは、凹部を通じてリブを形成していた従来技術のように型締による賦形により行わず、インナーリブを形成するようにしており、それによりインナーリブの形成の際、リブの先端の基材の内面に対する押圧力を低く抑えることにより、総じて表皮材の外観を保持している。
しかしながら、このような製造方法には、以下のような技術的問題点が存する。
すなわち、樹脂積層板の軽量化を確保しつつ、高剛性化、特に曲げ剛性の増大を達成することが困難である。
【0006】
より具体的には、曲げ剛性を確保するために、インナーリブのピッチ間隔を狭めることにより、インナーリブを密に配置するとすれば、その分、パリソンが引き伸ばされてインナーリブを設ける裏面材の厚みの薄肉化が引き起こされる。特に、樹脂積層板を高い曲げ剛性が必要となる用途に使用する場合、個々のインナーリブにおいて、インナーリブの先端部と表面材の内面との溶着性を保持するために、溶着面積確保の観点から、インナーリブの先端部の厚みを確保する必要があり、それにより、さらに裏面材の厚みの薄肉化が引き起こされる。
それに対して、筒状のパリソンは、通常ダイコア間の環状のスリットから押し出しされることからその厚みは周方向に略一様であり、一方、分割形式の一対の金型を型締めした際、金型内の密閉空間から吹き込み圧をかけることからパリソンの金型に対する押圧力はパリソンの全面に亘って一様である。
この点から、筒状パリソンの厚みは、一方の金型の側のインナーリブを設ける裏面材の薄肉部に合わせて設定する必要があり、それにより他方の金型の側の表面材には、余分な厚みのシートが形成されることになる。
このように、インナーリブを形成するのに周方向の肉厚が略均一な筒状パリソンを利用する場合は、ブロー成形後に裏面材と表面材とで不可避的に厚みの違いを生じ、これに起因して、樹脂積層板の十分な軽量化、薄肉化を達成することができない。
【特許文献1】特許第3791924号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、製造効率および外観上の美観を確保しつつ、軽量化および高剛性化を達成可能なインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明に係るインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法は、
他方の金型に対して進退自在なスライドコアを一方の金型のキャビティに設けた分割形式の一対の金型を設けるとともに、それぞれの厚みを調整した2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを準備する段階と、
2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを互いに所定間隔を隔てて、それぞれの金型に設けた環状ピンチオフ部のまわりにはみ出す形態で、分割形式の一対の金型の間に位置決めする段階と、
一方の金型のキャビティに対向する一方の熱可塑性樹脂製シートと一方の金型のキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、
【0009】
一方の金型の側から前記密閉空間を吸引しつつ、他方の金型に向かってスライドコアを突出させることにより、一方の金型のキャビティに対して一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面を押し当てることにより、一方の熱可塑性樹脂製シートを賦形するとともに、一方の熱可塑性樹脂製シートの一部を他方の金型に向かってU字状に突き出す段階と、
一方の熱可塑性樹脂製シートの一部の先端を他方の熱可塑性樹脂製シートの内表面に突き合わせ溶着させる段階と、
一対の金型を型締めすることにより、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着して、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの内部に密閉部を形成する段階と、
スライドコアを一方の金型に向かって引っ込めることにより、U字状に突き出された一方の熱可塑性樹脂製シートの一部の内面同士を互いに対向させる段階と、
前記密閉部内からブロー圧をかけることにより、前記対向内面同士を溶着させて、インナーリブを形成する段階とを、有する構成としている。

【0010】
以上の構成を有するインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法によれば、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面に凹部を設け、それによりリブを設けるのではなく、一方の金型に設けたスライドコアを利用してインナーリブを形成することにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面に開口を設けることなく、外観上の美観を維持しつつ、特にインナーリブを複数設けて、隣合うインナーリブの間隔を狭めることにより曲げ剛性を確保することが可能であると同時に、一対の金型を型締めすることにより、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着することにより、従来のような別途の端面処理が不要となり、製造効率を向上することも可能である。
【0011】
その際、それぞれ厚み調整をした2枚の熱可塑性樹脂製シートを分割形式の金型の間に位置決めしたうえで、一方の樹脂製シートとそれに対向する金型のキャビティとの間に密閉空間を形成して、金型の側から密閉空間内を吸引することにより、従来のブロー成形によれば円筒状のパリソンを用いて吹き込み圧によりキャビティに沿った形状に賦形するところ、一方の金型のキャビティのみにスライドコアが設けられているため、スライドコアを有するキャビティ側でパリソンが大きく引き伸ばされる反面、スライドコアを有しないキャビティ側では比較的パリソンが引き伸ばされずにそれぞれの肉厚に差が生じるという問題が引き起こされていたところ、このような問題を解決することにより、必要な強度を確保する限度で2枚の樹脂製シートそれぞれの厚みを個別に最大限まで薄肉化することが可能であり、それにより製造効率および製品品質を確保しつつ、十分な軽量化、薄肉化を達成可能である。

また、前記インナーリブの形成段階は、スライドコアを一方の金型に向かって引っ込めつつ、前記密閉部内からブロー圧をかける段階を有するのがよい。
さらに、前記2枚の熱可塑性樹脂製シートの位置決め段階は、他方の金型のキャビティと他方の熱可塑性樹脂製シートとの間に、化粧材を配置する段階を有し、
前記一方の熱可塑性樹脂製シートの突き合わせ溶着段階は、化粧材の表面に押圧痕を残さない程度の突き合わせ圧力によって、化粧材を他方の熱可塑性樹脂製シートに対して溶着する段階を有するのがよい。
さらにまた、前記インナーリブの形成段階は、化粧材を他方の熱可塑性樹脂製シートに対して溶着する段階をさらに有するのがよい。
加えて、溶融状態のシート状の2条のパリソンを下方に垂下する形態で、一対の分割形式の金型の間に向かって押し出す段階を有するのがよい。
さらに、前記スライドコアは、樹脂積層板に要求される曲げ剛性に応じて、鉛直方向に互いに所定間隔を隔てて複数設けられ、それぞれのスライドコアは、一方の金型のキャビティに亘って水平方向に設けられるのがよい。
さらにまた、前記吸引段階は、前記一方の金型の周縁に型締め方向に移動自在に外嵌する外枠を前記一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面に向かって移動させる段階を有し、前記一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面、前記外枠の内周面および前記一方の金型のキャビティにより密閉空間を構成するのがよい。
加えて、一対の金型を型締めを通じて、それぞれのピンチオフ部同士を当接させることにより、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着させてパーティングラインを形成するとともに、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの間に密閉中空部を形成するのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
車両用内装品向けの樹脂積層板を例として、本発明に係る樹脂積層板100の製造方法の実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1に示すように、樹脂積層板100は、おもて面側シート120Aと裏面側シート120Bと、おもて面側シート120Aの外表面150に貼り合わされた化粧材シート140とから構成され、樹脂積層板100は、化粧材シート140、おもて面側シート120A、および裏面側シート120Bの3層の積層構造である。
図1に示すように、おもて面側シート120Aと裏面側シート120Bとの間には、密閉中空部280が形成されており、密閉中空部280が積層構造板100の周端面において、裏面側シート120Bの外周壁により閉じられ、中空二重壁構造を構成している。なお、化粧材シート140は、中空二重壁構造の周壁130に及ぶように貼り付けられており、それにより外観上の美観を保持している。
おもて面側シート120Aおよび裏面側シート120Bそれぞれの厚み(肉厚)、および車両用内装品100としての全体厚み(板厚)は、車両用内装品100の用途に応じて適宜定めればよい。軽量性の観点から肉厚は1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下であり、板厚は15mm以下、好ましくは10mm以下である。
【0013】
樹脂積層板100には、裏面側シート120Bの内表面180とおもて面側シート120Aの内表面170との間を延びる複数のインナーリブ122が形成されている。複数のインナーリブ122は、樹脂積層板100の矩形の一辺の方向に沿って互いに所定の間隔を隔て、それぞれ矩形の他方の方向全体に亘って延びている。樹脂積層板100は、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂をブロー成形することにより製造され、その際、複数のインナーリブ122はそれぞれ、裏面側シート120Bの一部をおもて面側シート120Aの内表面170に向かって突出させて、内表面170に対して突き合わせ溶着することにより形成されており、これにより裏面側シート120Bとおもて面側シート120Aとが複数のインナーリブ122により一体化され、剛性あるいは強度を確保することが可能である。特に、複数のインナーリブ122により、樹脂積層板100の厚み方向の圧縮剛性を確保するとともに、従来のように凹部を設けることによりリブを構成する場合には、一方のシートに凹部を設けることに伴い開口が形成され、この開口を広げる向きの曲げ剛性が劣化していたところ、樹脂積層板100の裏面側シート120Bの外表面には、このような開口が形成されないので、外観上の美観を確保するとともに、曲げ剛性の劣化を防止することも可能である。
【0014】
複数のインナーリブ122それぞれの厚みあるいは隣合うリブ同士の間隔は、要求される圧縮剛性あるいは曲げ剛性に応じて定めればよいが、後に説明するように、複数のインナーリブ122それぞれは、裏面側シート120Bの一部をおもて面側シート120Aの内表面170に向かってU字形に突出させ、突出する裏面側シート120Bの一部の対向する面同士を溶着することにより形成されることから、複数のインナーリブ122それぞれの厚みは、裏面側シート120Bの厚みの略2倍の厚みとなる。この点から、インナーリブ122のおもて面側シート120Aに対する溶着性の観点から溶着面積を確保しつつ、インナーリブ122の厚みおよび隣合うリブ同士の間隔が剛性に及ぼす影響を勘案して、ブロー成形の対象である裏面側シート120Bの材料である熱可塑性樹脂性シートの厚みを、おもて面側シート120Aの材料となる熱可塑性樹脂性シートとは別個独立に調整すればよい。
【0015】
裏面側シート120Bが、後に説明するように、2つの分割形式の金型50の間に位置決めした溶融状態の2枚の熱可塑性樹脂製シートPを2つの分割形式の金型50を型締することにより成形される場合、積層板100の用途に応じて、おもて面側シート120Aと裏面側シート120Bとの間の所望の位置に密閉中空部280を有するとともに所望の表面形状を呈するように形成する一方、おもて面側シート120Aと裏面側シート120Bとを溶着し、積層板100の用途に応じた外形あるいは表面形状および内部構造を所望に実現可能な積層板100を提供することが可能である。特に、おもて面側シート120Aおよび裏面側シート120B同士の周縁面が互いに溶着することにより、パーティングラインPLが形成される。

次に、このような積層板100の成形装置について、以下に説明する。
【0016】
図2に示すように、積層板100の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有し、押出装置12から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを成形するようにしている。ここに、2枚の熱可塑性樹脂それぞれを押し出して、型締装置14まで送るまでの装置は、同様であるので、一方のみ説明し、他方については同様な参照番号を付することによりその説明は省略する。
【0017】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22内に設けられたプランジャー24とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ室22に移送されて一定量貯留され、プランジャー24の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて所定の長さの連続的な熱可塑性樹脂製シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0018】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂製シートPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm以上、より好ましくは150kg/時cm以上である。
【0019】
一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂製シートPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの押出速度と一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0020】
図2に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された熱可塑性樹脂製シートPは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔を可変とすることにより、熱可塑性樹脂製シートPの厚みを変更することが可能である。
【0021】
一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、図2に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂製シートPに関して、線対称となるように配置される。
【0022】
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべき熱可塑性樹脂製シートPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間に熱可塑性樹脂製シートPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂製シートPとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても熱可塑性樹脂製シートPがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0023】
図2に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向に沿うように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸が設けられる。
【0024】
一方の金型32Aには、所定の厚みを有する板状のスライドコア300(300Aないし300D)と、各スライドコア300を往復運動させるためのスライドコア駆動手段(図示せず)とが設けられ、各スライドコア300は、金型32A内に設けられたスペース内に設置され、金型32Aの内面に対して摺動可能に構成されている。
スライドコア300の厚みDは、スライドコア300によって形成するインナーリブ122に要求される厚み、インナーリブ122を溶着するのに要求される溶着面積の観点から定められる。
スライドコア駆動手段は、カム、歯車機構、油圧またはエアシリンダでよい。
スライドコア300は、その表面にパリソンに対して滑りやすいフッ素樹脂から被覆層を形成してもよく、この被覆層をスライドコア300の表面に強固に形成するために、スライドコア300の表面を粗面にするのがよい。
スライドコア300は、完成品の樹脂積層板10に要求される曲げ剛性に応じて、鉛直方向に互いに所定間隔を隔てて複数(図では、4つ)設けられ、それぞれのスライドコア300は、一方の金型32Aのキャビティに亘って水平方向に延びるように設けられる。
【0025】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、その周縁にパーティングラインPLが形成されるように溶着され、中空部を閉塞する外周壁が形成される。
【0026】
金型32Aの外周部には、型枠33Aが密封状態で摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33Aが、金型32Aに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP1の側面に当接可能である。
【0027】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接することにより、2つの分割金型32A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置、すなわち、ピンチオフ部118同士が互いに当接する位置は、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2間で、両熱可塑性樹脂製シートP1、P2から等距離の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
なお、一方の熱可塑性樹脂製シートP1用の押出装置および一対のローラーと、他方の一方の熱可塑性樹脂製シートP2用の押出装置および一対のローラーとは、この閉位置に関して対称に配置されている。
【0028】
分割金型32Aの内部には、真空吸引室(図示せず)が設けられ、真空吸引室は吸引穴(図示せず)を介してキャビティ116Aに連通し、真空吸引室から吸引穴を介して吸引することにより、キャビティ116Aに向かって熱可塑性樹脂製シートP1を吸着させて、キャビティ116Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。より詳細には、真空吸引室およびそこからキャビティ116Aの外表面に向かって延びる吸引穴は、分割金型32Aの内部において、スライドコア300Aないし300Dと干渉しないように設ければよい。
一方、分割金型32Bには、金型32A、Bを型締したときに両金型により形成される密閉空間内から吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。
【0029】
おもて面側シート120Aおよび裏面側シート120Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0030】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。

【0031】
また、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
さらに、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0032】
おもて面側シート120Aの材料である熱可塑性樹脂製シートP2の表面に化粧材シート140を設ける場合において、化粧材シート140とは、外観性向上、装飾性、成形品と接触する物(例えば、カーゴフロアボードの場合、ボード上面に載置される荷物など)の保護を目的として構成されるものである。化粧材シート140の材質は、繊維表皮材、シート状表皮材、フィルム状表皮材等が適用される。かかる繊維表皮材の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、又はこれらのブレンド繊維が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、触感、耐久性及び成形性の観点から、ポリプロピレン又はポリエステルであることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。繊維表皮材に用いられる糸は、例えば、ポリエステル:(3〜5)デニール×(50〜100)mm等の繊度が3〜15デニール、繊維長さが2〜5インチ程度のステープルの紡績糸と、細い柔軟なフィラメントを束にしたポリエステル:約150〜1000デニール/30〜200フィラメント=約5デニール×30〜200本等のマルチフィラメント、又は、ポリエステル:400〜800デニール/1フィラメント等の太いモノ・フィラメントと、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0034】
化粧材シート140の組織としては、不織布、織物、編物、それらを起毛した布地等が挙げられる。なお、織物には、織組織が縦糸、横糸が順次上下に交絡する平組織のほか、何本かの糸を跳び越して交絡する種々の変化織も含まれる。これらの中でも、伸びに対する方向性がないため、立体形状に成形し易く、且つ表面の触感、風合いに優れることから、不織布であることが好ましい。ここで、不織布とは、繊維を平行に又は交互させて積上げるか又はランダムに散布してウエブを形成し、次いでウエブとなった繊維を接合してなる布状品を意味する。これらの中でも、成形品の立体形状再現性及び外観特性の観点から、ニードルパンチ法により製造された不織布であることが好ましい。また、ニードルパンチ法にて得られた不織布は、織物に比べて強度が小で伸度が大であり任意方向に対する変形度合いが大きいので、不織布としての強度を向上させると共に寸法の安定化を図るために、織布にバインダーを付着させる、又は、ウエブと不織布を重ね針でパンチさせておくことがより好ましい。これらのことから、化粧材シート140は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、化粧材シート140自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能である。例えば主体樹脂層をポリプロピレンにて構成し、化粧材シート140をポリプロピレン不織布で構成すると、成形品の主体樹脂層と化粧材シート140とが同じ素材であることから、リサイクルが容易になる。
【0035】
一方、化粧材シート140がポリエステル不織布であると、ポリプロピレンにて構成した主体樹脂層と繊維表皮材との融点が異なるので、成形品に化粧材シート140を接着する際、熱により変質、変形したり、正しい位置に接着できない等の不具合が生じるのを抑制できる。また、この場合、成形性、剛性、外観及び耐久性にも優れる。また、化粧材シート140の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm
2以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃においてJIS−K−7113に準拠して測定したものである。シート状表皮材、フィルム状表皮材としては、熱可塑性エラストマ−、エンボス加工された樹脂層、印刷層が外面に付された樹脂層、合成皮革、滑り止め用メッシュ形状の表皮層等が使用できる。
以上の構成を有する積層板100の成形装置10を利用した積層板100の製造方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0036】
まず、図2において、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ22内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0037】
次いで、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
次いで、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。
次いで、図2に示すように、押出方向に一様な厚みを形成した熱可塑性樹脂製シートPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32A,B間に配置する。これにより、熱可塑性樹脂製シートPは、ピンチオフ部118のまわりにはみ出す形態で位置決めされる。
以上の工程を、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれについて行い、おもて面側シート120Aの材料である熱可塑性樹脂製シートP2と、裏面側シート120Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1とを互いに間隔を隔てた状態で、分割金型32A,B間に配置する。
この場合、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2はそれぞれ、互いに独立に、押し出しスリット34の間隔、あるいは一対のローラ30の回転速度を調整することにより、分割金型32A,B間に配置される際の厚みを調整可能である。
【0038】
より詳細には、熱可塑性樹脂製シートP1の厚みは、後に形成するインナーリブ122により裏面側シート120Bが薄肉化される点、および要求される剛性の観点から必要とされるインナーリブ122の厚みを考慮して、裏面側シート120Bに必要とされる厚みを決めて、それに応じて定めればよく、一方熱可塑性樹脂製シートP2の厚みは、おもて面側シート120Aの側には、インナーリブ122を形成しないことから、それに起因する薄肉化を考慮する必要なく、概して熱可塑性樹脂製シートP1の厚みより薄く設定することが可能であり、それにより軽量化を図りつつ、剛性を確保すること可能である。
次いで、図3に示すように、型枠33Aを金型32Aに対して、裏面側シート120Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1に向かって、金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当たるまで移動させる。
なお、化粧材シート14は、適宜金型上方に保持させてキャビティ面に沿って予め垂下させておけばよい。この化粧材シート14の配置のタイミングは、一対の金型32A、Bを型締するまでに行えばよい。
【0039】
次いで、金型32Aのキャビティ116A、型枠33Aの内周面102、および金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117により構成された第1密閉空間84を通じて、真空吸引室から吸引穴を介して吸引しつつ、金型32Bに向かって複数のスライドコア300Aないし300Dそれぞれを突出させることにより、金型32Aのキャビティ116Aに対して熱可塑性樹脂製シートP1の外表面を押し当てることにより、熱可塑性樹脂製シートP1を賦形するとともに、熱可塑性樹脂製シートP1の一部を金型32Bに向かって断面U字状に突き出す。その際、突き出される熱可塑性樹脂製シートP1の一部の近傍の熱可塑性樹脂製シートP1は、薄肉化されるが、上述のように、この点を考慮して、熱可塑性樹脂製シートP2とは別個独立に熱可塑性樹脂製シートP1の厚みを予め調整しておけばよい。
【0040】
次いで、断面U字状に突き出された熱可塑性樹脂製シートP1の一部の先端301を熱可塑性樹脂製シートP2の内表面302に突き合わせ溶着させる。これにより、熱可塑性樹脂製シートP1の一部は熱可塑性樹脂製シートP2と一体化され、断面U字状の間に位置するそれぞれのスライドコア300を金型32Aに向かって引っ込めることが可能となる。
【0041】
この場合、スライドコア300による突き合わせ圧力により、化粧材シート14を熱可塑性樹脂製シートP2に対して溶着することも可能である。さらに、突き合わせ圧力を加減して、化粧材シート14の表面に押圧痕を残さない程度とすることにより、化粧材シート14がたとえば毛羽を有する不織布である場合、毛倒れを防止することが可能である。なお、突き合わせ圧力が不足する場合には、後工程である金型の型締後のブロー圧をかけることにより、化粧材シート14を熱可塑性樹脂製シートP2に対して本溶着すればよい。
【0042】
次いで、図4に示すように、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当接する型枠33Aをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP1を吸引保持しつつ、それぞれの環状のピンチオフ部118A,B同士が当接するまで両金型32A,Bを互いに近づく向きに移動させて型締する。この場合、ピンチオフ部118A,B同士の型締方向の当接位置は、互いに離間する2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2の間となるところ、図4に示すように、ピンチオフ部118A,B同士が当接することにより、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2は互いの周縁部同士が溶着固定されてパーティングラインが形成される。これにより、裏面側シート120Bとおもて面側シート120Aとの間に密閉中空部280を形成する。
【0043】
次いで、図5に示すように、それぞれのスライドコア300Aないし300Dを金型32Aに向かって引っ込めることにより、断面U字状に突き出された熱可塑性樹脂製シートP1の一部の内面304同士を互いに対向させる。その際、熱可塑性樹脂製シートP1の一部の先端は、熱可塑性樹脂製シートP2の内表面302に溶着されているので、スライドコア300を引っ込めるとしても、熱可塑性樹脂製シートP1の一部がそれに追従することはない。
【0044】
次いで、ブローピンを介して型締された金型内の密閉中空部280からブロー圧をかけることにより、対向する内面304同士を溶着させて、インナーリブ122を形成する。その際、スライドコア300を引き抜くことにより形成された裏面側シート120Bの外表面117の開口は完全に閉鎖され、裏面側シート120Bの外表面117には、線状痕が残るに過ぎない。
次いで、図6に示すように、分割金型32A,Bを型開きして、成形された積層板100を取り出し、ピンチオフ部118A,Bの外側のバリ部分Bを切断し、これで成形が完了する。
【0045】
以上のように、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、シート状の積層板100を次々に成形することが可能であり、押出成形により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPとして押し出し、真空成形または圧空成形により押し出された熱可塑性樹脂製シートPを金型を用いて所定の形状に賦形することが可能である。
【0046】
以上の構成を有するインナーリブ122を備えた樹脂積層板の製造方法によれば、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面に凹部を設け、それによりリブを設けるのではなく、一方の金型32Aに設けたスライドコア300を利用してインナーリブ122を形成することにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面に開口を設けることなく、外観上の美観を維持しつつ、特にインナーリブ122を複数設けて、隣合うインナーリブ122の間隔を狭めることにより曲げ剛性を確保することが可能であると同時に、一対の金型32を型締めすることにより、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着することにより、従来のような別途の端面処理が不要となり、製造効率を向上することも可能である。
【0047】
その際、従来のブロー成形によれば円筒状のパリソンを用いて吹き込み圧によりキャビティに沿った形状に賦形することから、一方の金型32Aのキャビティのみにスライドコア300が設けられているため、スライドコア300を有するキャビティ側でパリソンが大きく引き伸ばされる反面、スライドコア300を有しないキャビティ側では比較的パリソンが引き伸ばされずにそれぞれの肉厚に差が生じるという問題が引き起こされるのに対し、それぞれ厚み調整をした2枚の熱可塑性樹脂製シートを分割形式の金型32の間に位置決めしたうえで、一方の樹脂製シートとそれに対向する金型32Aのキャビティとの間に密閉空間を形成して、金型の側から密閉空間内を吸引することにより、このような問題を解決し、必要な強度を確保する限度で2枚の熱可塑性樹脂製シートそれぞれの厚みを個別に最大限まで薄肉化することが可能であり、それにより製造効率および製品品質を確保しつつ、十分な軽量化、薄肉化を達成可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変更が可能である。たとえば、本実施形態においては、インナーリブの形成段階は、スライドコアを一方の金型に向かって引っ込めた後に、密閉部内からブロー圧をかけることにより行うものとして説明したが、それに限定されることなく、スライドコアを一方の金型に向かって引っ込めつつ、密閉部内からブロー圧をかけることにより行ってもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを利用して、積層板100としてダイレクトに賦形・成形するものとして説明したが、それに限定されることなく、賦形・成形するのに必要な溶融状態を実現する限り、いったん押出成形し、冷却した熱可塑性樹脂製シートを再度加熱して溶融状態とした材料を利用して賦形・成形を行ってもよい。
【0050】
さらに、本実施形態においては、おもて面側シート120Aを一対の金型の間に配置する際、化粧材シート140を金型上方に保持させてキャビティ面に沿って垂下させるものとして説明したが、それに限定されることなく、化粧材シート140をたとえば金型32Bから吸引することによりキャビティ116B内に配置した状態で金型を型締めするものでもよいし、おもて面側シート120Aに化粧材シート140が予め接着された状態で配置されるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂積層板の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る成形装置とともに、溶融樹脂シートが分割金型の間に配置された状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型の外枠を溶融樹脂シートの側面に当接させるとともに、スライドコアを突出させている状況を示す概略部分側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型締めした状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形装置において、スライドコアを引き抜いている状況を示す概略部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型開きした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
P 熱可塑性樹脂製シート
PL パーティングライン
10 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
20 油圧モーター
22 アキュムレータ
24 プランジャー
28 Tダイ
30 ローラー
32 分割金型
33 型枠
34 押出スリット
80 真空吸引室
82 真空吸引穴
84 第1密閉空間
86 第2密閉空間
100 積層板
102 内周面
116 キャビティ
117 外表面
118 ピンチオフ部
119 突起体
120 シート
122 インナーリブ
140 化粧材シート
150 おもて面側シートの外表面
170 おもて面側シートの内表面
180 裏面側シートの内表面
200 凹部
220 裏面側シートの外表面
240 突き合わせ面
260 開口
280 密閉中空部
300 スライドコア
302 内表面
304 対向内面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他方の金型に対して進退自在なスライドコアを一方の金型のキャビティに設けた分割形式の一対の金型を設けるとともに、それぞれの厚みを調整した2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを準備する段階と、
2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを互いに所定間隔を隔てて、それぞれの金型に設けた環状ピンチオフ部のまわりにはみ出す形態で、分割形式の一対の金型の間に位置決めする段階と、
一方の金型のキャビティに対向する一方の熱可塑性樹脂製シートと一方の金型のキャビティとの間に密閉空間を形成する段階と、
一方の金型の側から前記密閉空間を吸引しつつ、他方の金型に向かってスライドコアを突出させることにより、一方の金型のキャビティに対して一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面を押し当てることにより、一方の熱可塑性樹脂製シートを賦形するとともに、一方の熱可塑性樹脂製シートの一部を他方の金型に向かってU字状に突き出す段階と、
一方の熱可塑性樹脂製シートの一部の先端を他方の熱可塑性樹脂製シートの内表面に突き合わせ溶着させる段階と、
一対の金型を型締めすることにより、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着して、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの内部に密閉部を形成する段階と、
スライドコアを一方の金型に向かって引っ込めることにより、U字状に突き出された一方の熱可塑性樹脂製シートの一部の内面同士を互いに対向させる段階と、
前記密閉部内からブロー圧をかけることにより、前記対向内面同士を溶着させて、インナーリブを形成する段階とを、有することを特徴とする、インナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項2】
前記インナーリブの形成段階は、スライドコアを一方の金型に向かって引っ込めつつ、前記密閉部内からブロー圧をかける段階を有する、請求項1に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項3】
前記2枚の熱可塑性樹脂製シートの位置決め段階は、他方の金型のキャビティと他方の熱可塑性樹脂製シートとの間に、化粧材を配置する段階を有し、
前記一方の熱可塑性樹脂製シートの突き合わせ溶着段階は、化粧材の表面に押圧痕を残さない程度の突き合わせ圧力によって、化粧材を他方の熱可塑性樹脂製シートに対して溶着する段階を有する、請求項1に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記インナーリブの形成段階は、化粧材を他方の熱可塑性樹脂製シートに対して溶着する段階を有する、請求項2に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項5】
溶融状態のシート状の2条のパリソンを下方に垂下する形態で、一対の分割形式の金型の間に向かって押し出す段階を有する、請求項1に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項6】
前記スライドコアは、樹脂積層板に要求される曲げ剛性に応じて、鉛直方向に互いに所定間隔を隔てて複数設けられ、それぞれのスライドコアは、一方の金型のキャビティに亘って水平方向に設けられる、請求項4に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項7】
前記吸引段階は、前記一方の金型の周縁に型締め方向に移動自在に外嵌する外枠を前記一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面に向かって移動させる段階を有し、前記一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面、前記外枠の内周面および前記一方の金型のキャビティにより密閉空間を構成する、請求項1に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。
【請求項8】
一対の金型の型締めを通じて、それぞれのピンチオフ部同士を当接させることにより、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着させてパーティングラインを形成するとともに、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの間に密閉中空部を形成する、請求項1に記載のインナーリブを備えた樹脂積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255531(P2011−255531A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129715(P2010−129715)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】