説明

インバータにおけるスイッチ回路およびインバータ装置

【課題】インバータにおけるスイッチの応答速度を高くする。
【解決手段】コンデンサ32,42を設けたことにより、スイッチ回路30,40のIGBT33,43がオンされるときには、そこに電荷が蓄えられ、オフされるときには蓄えられた電荷が放出されることにより、IGBT33,43の応答期間を短縮することができる。これにより、応答速度が高くなるような容量のコンデンサをスイッチ回路30,40のそれぞれに設けてやれば、従来よりもデッドタイムを短くしたインバータを設計することが可能となる。これにより、デッドタイムを短縮することができるから、負荷3に供給される交流電流の波形(又は、電圧波形)の劣化を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータにおけるスイッチ回路およびインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータにおいて、直流電流を供給する電源と負荷との間に設けられたスイッチのオンオフ制御により、負荷に供給する交流電流の周波数や電流値を制御するタイプのものがある。このようなインバータに関する技術として、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2007−267583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図9は、従来のインバータシステムの構成を示す回路図である。
同図に示すように、このインバータシステムは、インバータ装置100、電源2、及び負荷3からなる。インバータ装置100は、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行う三相方式のインバータ装置で、制御装置150と、3つのインバータ部200U,200V,200Wとを備える。インバータ部200U,200V,200Wは、電源2に対して並列に接続されている。インバータ部200Uは、2つのスイッチ回路300U,400Uが直列に接続されて構成され、インバータ部200V,200Wもこれと同等の構成を有する。インバータ部200U,200V,200Wにおいて、それぞれ両スイッチ回路の接続点が負荷3に接続される接続端となって、その接続端を介して交流電流が負荷3の各相の負荷に供給される。なお、以下では、インバータ部200U,200V,200Wのそれぞれを区別しない場合には末尾のアルファベットを省略して「インバータ部200」と称する。スイッチ回路300,400についても同様とする。
【0004】
図10は、図9に示したインバータ装置100のうち、制御装置150及び1相分のインバータ部200の構成を示した回路図である。
同図に示すように、インバータ部200は、電源2の正極−負極間に直列に接続されたスイッチ回路300,400からなる。スイッチ回路300は、抵抗31、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)という)33、及びダイオード34を備える。スイッチ回路400は、スイッチ回路300と同等の構成を有し、抵抗41、IGBT43及びダイオード44を備える。IGBT33,43は、電源2と負荷3とを導通させるオン状態となるか、又は電源2と負荷3とを導通させないオフ状態のうち、いずれかの状態となるスイッチとして機能する。制御装置150は、IGBT33,43のそれぞれをオン状態又はオフ状態のいずれかの状態にするための制御を行う。ここでは、制御装置150は、電位が高いハイレベルの電位の制御信号(以下、この制御信号を“H”と称する。)と、電位が低いローレベルの電位の制御信号(以下、この制御信号を“L”と称する。)とのいずれかを出力する。制御信号“H”が、各スイッチ回路の抵抗及びコンデンサを介してIGBT33,43のゲートに入力されると、そのゲート電位は上昇し、IGBT33,43はオフ状態からオン状態に切り替えられ、電源2と負荷3とが導通する。制御装置150は、IGBT33,43を交互にオン状態とするように制御信号“H”を出力する。一方、制御装置150は、IGBT33,43をオフ状態とするときには、スイッチ回路300,400に対して制御信号“L”を出力する。
【0005】
ところで、インバータ装置100においては、インバータ部200が備えるスイッチ回路300,400のIGBT33,43が同時にオン状態となる“同時点弧”を回避することが必要である。同時点弧が発生した場合、スイッチ回路300と、400とが短絡されてしまい、インバータ装置100内や負荷3に規定値以上の大きな電力が供給されてしまい、インバータシステム内の構成部品が故障してしまったり、事故の原因となってしまうからである。そこで、制御装置150は、同時点弧が起こらないような制御を行う。
【0006】
図11において、(a)は制御装置150が制御信号を出力する様子を示したタイムチャートで、(b)はIGBT33,43のコレクタ・エミッタ間の電位差の遷移の様子を示したタイムチャートである。同図(a)では、スイッチ回路300,400のそれぞれに対して、制御装置150が制御信号“H”を供給する期間を“H”で表し、制御信号“L”を供給する期間を“L”で表している。
同図(a)に示すように、制御装置150は、時刻t=T0に、スイッチ回路300に供給する制御信号を“L”から“H”に切り替えると、時刻T1までの期間に亘って制御信号“H”を供給し続ける。この期間において、制御装置150はスイッチ回路400に対しては制御信号“L”を供給し続ける。そして、制御装置150は、時刻t=T1にスイッチ回路300に供給する制御信号を“H”から“L”に切り替えると、そこから時間tdだけ経過した時刻t=T2に、スイッチ回路400に対して供給する制御信号を“L”から“H”に切り替える。そして、時刻t=T3に、制御装置150は、スイッチ回路400に供給する制御信号を“H”から“L”に切り替えると、そこから時間tdだけ経過した時刻t=T4に、スイッチ回路300に供給する制御信号を“L”から“H”に切り替える。
このように、制御装置150は、スイッチ回路300,400に対して交互に制御信号“H”を出力し、且つその出力先を切り替えるときには、どちらのスイッチ回路に対しても制御信号“H”を出力しない(すなわち、制御信号“L”を出力する)期間を設けている。この期間は、同時点弧を回避するために、インバータ部200のスイッチ回路300,400のどちらも導通させないようにする期間であり、「デッドタイム」と呼ばれている。
【0007】
しかしながら、同図(a),(b)に示すように、制御装置150により供給される制御信号が“L”から“H”に切り替えられてから、電源2と負荷3とが導通して、IGBT33,43がオン状態のときのコレクタ・エミッタ間の電位差(E)になるまでには、ターンオン期間Ton1,Ton2を要する。また、制御装置150によって供給される制御信号が“H”から“L”に切り替えられてからも、電源2と負荷3とが非導通となって、IGBT33,43がオフ状態のときのコレクタ・エミッタ間の電位差(0)になるまでには、ターンオフ期間Toff1,Toff2を要する。ターンオン期間やターンオフ期間が存在するのは、IGBTのゲートに対する制御信号“H”の供給が開始、又は停止されてから、IGBTが定常的な動作を行うようになるまでに、キャリアの移動に相当する期間が必要となるからである。この期間の長さによりスイッチの応答速度が決定付けられ、ターンオン期間及びターンオフ期間が短いスイッチは応答速度が高く、反対に、ターンオン期間及びターンオフ期間が長いスイッチは応答速度が低い。
デッドタイムの長さtdは、これらターンオン期間及びターンオフ期間よりも長くなるように設定される。また、IGBT等の半導体素子においては、素子毎に応答速度にばらつきがあるので、このばらつきも加味して、実際には応答速度よりも十分に長い期間のデッドタイムが設定される。IGBTを用いたインバータにおいて、デッドタイムの時間tdは、3マイクロ秒以上とするのが一般的である。しかしながら、デッドタイムが長くなると、負荷3に供給される交流電流の電流波形(電圧波形)が劣化してしまい、その作動に影響を与えないように、デッドタイムの動作を補償する構成が別途必要となることがあった。
そこで、本発明は、インバータにおけるスイッチの応答速度を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、インバータにおけるスイッチ回路であって、一端と他端とを備え、ハイレベル又はローレベルの電位の制御信号が当該一端に入力される抵抗と、一端と他端とを備え、前記抵抗と並列に接続された容量性素子であって、前記制御信号が当該一端に入力され、入力された当該制御信号の電位がローレベルからハイレベルに切り替えられたときから電荷を蓄え始め、当該制御信号の電位がハイレベルからローレベルに切り替えられると、蓄えた電荷を放出する容量性素子と、直流電流の供給源と負荷との間に設けられるとともに、前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端に接続され、前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端から供給される前記制御信号の電位がハイレベルのときには、前記供給源と前記負荷とを導通させるオン状態となり、前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端から供給される前記制御信号の電位がローレベルのときには、前記供給源と前記負荷とを導通させないオフ状態となるスイッチとを備えることを特徴とするインバータにおけるスイッチ回路を提供する。
本発明のインバータにおけるスイッチ回路において、一端から制御信号が入力される抵抗と、容量性素子とが並列に接続され、これらの他端には、直流電流の供給源と負荷との間に設けられたスイッチが接続されている。制御信号の電位がローレベルからハイレベルに切り替えられると、そのときから容量性素子は電荷を蓄え始め、スイッチには突入電流が流れてオン状態となる。制御信号の電位がハイレベルからローレベルに切り替えられると、そのときから容量性素子に蓄えられた電荷は放出され、スイッチには逆バイアスが加わって電位が低下し、オフ状態となる。これにより、スイッチは速やかにオン状態とオフ状態とが切り替わり、インバータにおけるスイッチの応答速度を高くすることができる。
【0009】
この構成において、前記スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタであり、前記絶縁ゲートバイポーラトランジスタのゲートが前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端にそれぞれ接続され、当該ゲートに供給される制御信号の電位がハイレベルのときには、前記絶縁ゲートバイポーラトランジスタのコレクタ及びエミッタを介して前記供給源と前記負荷とを導通させるオン状態となることを特徴とする。
このインバータにおけるスイッチ回路において、制御信号の電位がハイレベルのときには、スイッチである絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、コレクタ及びエミッタを介して前記供給源と前記負荷とを導通させたオン状態となる。絶縁ゲートバイポーラトランジスタは応答速度に優れており、スイッチの応答速度をさらに高くすることができる。
【0010】
また、本発明は、上記構成のいずれか一方に記載のスイッチ回路である第1及び第2のスイッチ回路と、前記第1及び第2のスイッチ回路の各々が備える前記スイッチの間に設けられ、前記負荷に接続される接続端と、前記第1のスイッチ回路が備える前記抵抗及び前記容量性素子を介してハイレベルの電位の前記制御信号を供給するときには、前記第2のスイッチ回路が備える前記スイッチに前記抵抗及び前記容量性素子を介してローレベルの電位の前記制御信号を供給し、前記第2のスイッチ回路が備える前記スイッチに前記抵抗及び前記容量性素子を介してハイレベルの電位の前記制御信号を供給するときには、前記第1のスイッチ回路が備える前記スイッチに前記抵抗及び前記容量性素子を介してローレベルの電位の前記制御信号を供給する制御手段とを備えることを特徴とするインバータ装置を提供する。
本発明のインバータ装置において、一端が制御手段に接続された抵抗と、容量性素子とが並列に接続され、これらの他端には、直流電流の供給源と負荷との間に設けられたスイッチが接続されている。制御信号が供給する制御信号の電位がローレベルからハイレベルに切り替えられると、そのときから容量性素子は電荷を蓄え始め、スイッチには突入電流が流れてオン状態となる。制御信号が供給する制御信号の電位がハイレベルからローレベルに切り替えられると、そのときから容量性素子に蓄えられた電荷は放出され、スイッチには逆バイアスが加わって電位が低下し、オフ状態となる。これにより、スイッチは速やかにオン状態とオフ状態とが切り替わり、インバータ装置におけるスイッチの応答速度を高くすることができる。
【0011】
この構成において、前記第1及び第2のスイッチ回路の前記容量性素子は、容量の総和が変化する1又は複数の容量性素子であり、前記制御手段によってハイレベルの前記制御信号が供給されてから、当該制御信号が供給された前記第1又は第2のスイッチ回路が備えるスイッチがオン状態になるまでの期間を特定する期間特定手段と、前記期間特定手段によって特定される期間が長い場合には、当該期間が特定されたスイッチを有するスイッチ回路の1又は複数の前記容量性素子の容量の総和を大きくする容量制御手段とを備えるようにしてもよい。
このインバータ装置において、容量の総和が変化する1又は複数の容量性素子を備え、期間特定手段は、ハイレベルの制御信号が供給されてから、その制御信号が供給された第1又は第2のスイッチ回路が備えるスイッチがオン状態になるまでの期間を特定し、容量制御手段は、期間特定手段によって特定される期間が長い場合には、その期間が特定されたスイッチを有するスイッチ回路の容量性素子の容量の総和を大きくする。容量性素子の容量の総和が大きくなると、スイッチの応答速度は高くなるので、自装置でデッドタイムを短くするような制御を行うことができ、高い性能を継続して確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インバータにおけるスイッチの応答速度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
(A)第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるインバータシステムの構成を示す回路図である。
同図に示すように、このインバータシステムは、インバータ装置1、電源2及び負荷3からなる。インバータ装置1は、電源2から供給された直流電力を交流電力に変換して負荷3に出力する、三相電圧型PWMインバータを採用したインバータ装置である。インバータ装置1は、制御装置10と、負荷3に三相交流の電流を供給するための3つのインバータ部20U,20V,20Wとを備える。インバータ部20U,20V,20Wは、電源2に対して並列に接続されている。インバータ部20Uは、スイッチ回路30Uと,スイッチ回路40Uが直列に接続されて構成され、同様に、インバータ部20Vは、スイッチ回路30V,40Vが直列に接続されて構成され、インバータ部20Wは、スイッチ回路30W,40Wが直列に接続されて構成されている。これらインバータ部のスイッチ回路の各々が、インバータとしての機能を実現する。インバータ部20U,20V,20Wでは、それぞれ両スイッチ回路の接続点が接続端PU,PV,PWとなって、負荷3に対する交流電流がその各相の負荷に供給される。インバータ装置1においては、制御装置10は、PWM制御によって負荷3に供給する交流電流の電流値(交流電圧の電圧値)や周波数、位相を制御する。
なお、インバータ部20U,20V,20Wの構成はそれぞれ同じであるから、以下では、これらを区別しない場合には末尾のアルファベットを省略して「インバータ部20」と称する。スイッチ回路30,40についても同様とする。
【0014】
電源2は、直流電流の供給源であり、例えば、商用電源から供給される交流電流を直流電力に変換してインバータ装置1に供給するコンバータや、予め蓄えておいた電力を利用してインバータ装置1に直流電流を供給する蓄電池等である。負荷3は、U相、V相、W相からなる3相の負荷がY結線によって接続され、インバータ装置1からの三相交流電流の供給を受けて作動する。ここでの負荷3は、例えば車両衝突試験を実施するためのダイナモメータである。このダイナモメータにおいては、実車走行パタンを台上でシミュレートさせながら耐久試験を行う。この場合において、インバータ装置1はダイナモメータの発生トルクや回転数を制御し、種々の衝突条件での車両衝突試験を実施できるような制御(PWM制御)を行う。
【0015】
図2は、インバータ装置1の構成を示す回路図である。同図においては、図1に示したインバータ装置1のうち、制御装置10及び1相分のインバータ部20を示している。
制御装置10は、基板上に設けられたCPU、メモリ及びドライブ回路等を備えており、インバータ装置1内の各部の制御を行う。制御装置10は、負荷3の駆動を制御するために、外部から入力される始動指令や回転数指令、発生トルク指令等の制御指令に従って、インバータ部20に対してパルス信号である制御信号を出力する。ここでは、制御装置10は、電位が高いハイレベルの制御信号“H”、又は電位が低いローレベルの制御信号“L”のいずれかを供給する。制御装置10に設けられる図示せぬドライブ回路は、例えば高速フォトカプラであり、インバータ装置1における制御装置10、及びインバータ部20における制御系統の回路部分と、電源2からの電流が供給される電力系統の回路部分とを絶縁する。
【0016】
スイッチ回路30は、抵抗31と、コンデンサ32と、IGBT33と、ダイオード34とを備える。抵抗31は、一端と他端とを備え、制御装置10からの制御信号“H”又は“L”がその一端に入力される。コンデンサ32は、一端と他端とを備え、抵抗31と並列に接続された容量性素子である。IGBT33は、ゲートG1が抵抗31の他端、及びコンデンサ32の他端にそれぞれ接続されている。また、IGBT33のコレクタC1は、電源2の正極側に接続される。エミッタE1は、接続端を介して負荷3に接続されるとともに、スイッチ回路40の後述するIGBT43のコレクタC2に接続されている。IGBT33はスイッチとして機能し、制御装置10から、抵抗31及びコンデンサ32を介して供給される制御信号が“H”のときには、電源2と負荷3とを導通させるオン状態となる。このとき、IGBT33は、電源2から供給される電流をコレクタC1及びエミッタE1を介して接続端から負荷3に出力させる。一方、制御装置10から、抵抗31及びコンデンサ32を介して供給される制御信号が“L”のときには、IGBT33は、電源2と負荷3とを導通させないオフ状態となる。ダイオード34は、IGBT33のコレクタC1からエミッタE1に逆方向接続された一方向性素子である。ダイオード34は、IGBT33がオン状態からオフ状態に切り替えられたときにIGBT33が破損しないように、過渡電流の供給経路を確保するために設けられたものである。
【0017】
スイッチ回路40は、抵抗41と、コンデンサ42と、IGBT43と、ダイオード44とを備える。スイッチ回路40の回路構成はスイッチ回路30のそれとほぼ同じである。抵抗41は、一端が制御装置10に接続されて、その一端から制御装置10から供給される制御信号が入力される。コンデンサ42は、抵抗41と並列に接続された容量性素子である。IGBT43は、ゲートG2が抵抗41の他端、及びコンデンサ42の他端にそれぞれ接続されている。IGBT43のコレクタC2は、スイッチ回路30のIGBT33のエミッタE1、及び接続端を介して負荷3にそれぞれ接続される。つまり、第1のスイッチ回路であるスイッチ回路30、及び第2のスイッチ回路であるスイッチ回路40の各々が備えるIGBT33,43の間に接続端が設けられる。IGBT43のエミッタE2は、電源2の負極側に接続されている。IGBT43はスイッチとして機能し、制御装置10から、抵抗41及びコンデンサ42を介して供給される制御信号が“H”のときには、電源2と接続端とを導通させる。このとき、IGBT43は、接続端を介して負荷3から供給される電流を、コレクタC2及びエミッタE2を介して電源2の負極に供給させる。一方、制御装置10から、抵抗41及びコンデンサ42を介して供給される制御信号が“L”のときには、IGBT43は、電源2と負荷3とを導通させないオフ状態となる。ダイオード44は、IGBT43のコレクタC2からエミッタE2に逆方向接続された一方向性素子で、その機能はダイオード34のそれと同じである。
【0018】
上述したように、インバータ部20において、スイッチ回路30にはコンデンサ32を設け、スイッチ回路40にはコンデンサ42を設けている。以下、その理由について説明する。
図2に示すように、コンデンサ32は抵抗31に対して並列に接続され、コンデンサ42は抵抗41に対して並列に接続されている。これらコンデンサ32,42は、それぞれIGBT33,43がオフ状態からオン状態に切り替えられるときのターンオン期間、及びオン状態からオフ状態に切り替えられるときのターンオフ期間を短縮させるために設けられたものである。つまり、これらのコンデンサ32,42の作用により、IGBT33,43のスイッチとしての応答速度が高められている。
【0019】
これらのコンデンサ32,42の作用について、より具体的に説明する。なお、これらコンデンサ32,42の作用はそれぞれ同じであるため、ここでは、コンデンサ32を含むスイッチ回路30を例に挙げて説明する。
図3において、(a)は、制御装置10が制御信号を出力する様子を示したタイムチャートで、(b)は、IGBT33のゲートG1に流れ込むゲート電流IGの遷移の様子を示したタイムチャートを示している。なお、同図(a)において、制御信号“H”が出力される期間を“H”で表し、制御信号“L”が出力される期間を“L”で表している。また、同図(b)において、制御装置10からIGBT33のゲートG1の方向へゲート電流IGが流れるときの電流値を正で表し、ゲートG1から制御装置10の方向へゲート電流IGが流れるときの電流値を負で表している。なお、同図に示す時刻t=taよりも前においては、制御装置10により制御信号“L”が出力されており、この期間においてコンデンサ32には電荷は蓄えられていないものとする。また、図4は、図3に示した各時刻、及び期間におけるスイッチ回路30に流れるゲート電流IGの様子を説明する図である。
【0020】
まず、図3(a)に示すように、時刻t=taにおいて、制御装置10が出力する制御信号が“L”から“H”に切り替えられると、同図(b)に示すように、直ちに制御信号“H”に応じたゲート電流IGがIGBT33のゲートG1に流れ込む。このときの電流経路は図4(a)に示すとおりで、制御装置10からコンデンサ32を経由してゲート電流IGが流れる。制御装置10により出力される制御信号が“L”から“H”に切り替えられたときから、制御装置10側がコンデンサ32側よりも高電位となり、この電位差により制御装置10からコンデンサ32に電荷が供給されて、コンデンサ32は電荷を蓄え始める。このときコンデンサ32に供給される電流は突入電流と呼ばれ、その電流値は比較的大きい。よって、図3(b)に示すように、ゲート電流IGの電流値もIs(>0)という具合に大きくなっているのである。このように充電開始時に流れる大電流の作用により、IGBT33内の各キャリアの移動がスムーズに行われてゲート電位は上昇しやすくなる。ゲート電位が早く上昇するということは、コレクタC1及びエミッタE1間が早く導通するということを意味している。したがって、コンデンサ32が設けられていない構成と比べて、IGBT33は速やかにオフ状態からオン状態に切り替えられ、ターンオン期間は短縮される。なお、図3(b)に示すように、制御信号が“L”から“H”に切り替えられてから、時間が経過するにつれて充電の速度は小さくなるので、これによりゲート電流IGも次第に小さくなっていく。
【0021】
続いて、図3(a)に示すように、コンデンサ32に充分な電荷が蓄えられ、制御装置10により制御信号“H”が出力されている期間においては、図4(b)に示す期間tbのように、突入電流の電流値Isよりも小さい電流値If(>0)のゲート電流IGが流れる。このとき、図4(b)に示すように、制御装置10から抵抗31を経由してIGBT33のゲートG1にゲート電流IGは流れ、コンデンサ32側にはゲート電流IGは流れない。したがって、一定電位である制御信号“H”に応じて一定の電流値Ifのゲート電流IGが、抵抗31を介してIGBT33のゲートG1に流れる。
【0022】
そして、図3(a)に示すように、時刻t=tcにおいて、制御装置10が出力する制御信号が“H”から“L”に切り替えられると、同図(b)に示すように、直ちにこの切り替えに応じたゲート電流IGが流れる。このときのゲート電流IGの電流値Irは負であり、図4(c)に示すように、IGBT33のゲートG1から、コンデンサ32を経由して制御装置10にゲート電流IGが流れる。ゲート電流IGの電流値が急激に負の電流値Irにまで上昇するのは、コンデンサ32に蓄えられた電荷の作用による。制御装置10によって出力される制御信号が“H”から“L”に切り替えられると、電荷が蓄えられた高電位側のコンデンサ32から低電位側の制御装置10に対して、蓄えられた電荷が放出される。このとき、高電位側のIGBT33のゲートG1にも逆バイアスが加わるので、図4(c)に示すような電流経路で、電流値の大きなゲート電流IGが流れる。この電流により、IGBT33のゲートG1、コレクタC1間にあった少数キャリアが速やかにオフ状態のときの状態に戻るよう移動する。この作用により、IGBT33のゲート電位は速やかに低下する。このようにして、コンデンサ32が設けられていない構成と比べて、上記キャリアの移動がさらにスムーズになり、IGBT33は速やかにオン状態からオフ状態に切り替えられて、ターンオフ期間は短縮される。なお、時刻t=tcの後においては、放電の速度は時間経過と共に次第に小さくなるので、これによりゲート電流IGは次第に小さくなる。コンデンサ32の放電が完了すると、ゲート電流IGは流れなくなる。
【0023】
また、図3(b)に示すように、時刻t=tdに、制御装置10が出力する制御信号が“L”から“H”が切り替えられて、期間t=teに“H”の制御信号が出力され、時刻t=tfに“H”から“L”に切り替えられているが、このときにも上記と同様の原理により、IGBT33のオンオフが切り替えられる。また、これと同じ原理で、スイッチ回路40においても、コンデンサ42の作用によりIGBT43のターンオン期間及びターンオフ期間は共に短縮される。すなわち、インバータ部20のスイッチであるIGBT33,43の応答速度は、コンデンサ32,42が設けられない構成と比べて高くなる。
【0024】
また、IGBT33,43の応答速度は、それぞれコンデンサ32,42の静電容量の大きさに依存する。ここで、図5は、コンデンサの静電容量と、IGBT32,42の応答速度との関係を概略的に示したグラフである。
同図に示すように、コンデンサ32,42の静電容量が大きくなるほど、IGBT32,42の応答速度は大きくなる傾向を示している。上述したように、ターンオンにおいては、制御信号が“L”から“H”に切り替えられたときに、突入電流がゲート電流IGとして流れる。コンデンサ32,42の静電容量が大きいほど、蓄えられる電荷量も大きくなるので、より大きな電流がゲート電流IGとして流れる。これにより、さらにゲート電位はさらに上昇しやすくなって、IGBT33,43はよりスムーズにオフ状態からオン状態に切り替わる。また、制御装置10によって出力される制御信号が“H”から“L”に切り替えられたときにおいても、コンデンサ32,42の静電容量が大きいほど放出される電荷量も大きくなるので、IGBT33,43における少数キャリアの移動がさらにスムーズになってターンオフ期間が短縮される。このような理由から、IGBT33,43の応答速度は、コンデンサ32,42の静電容量が大きくなるにつれて大きくなる。
ただし、コンデンサ32,42の容量が大きすぎても、ゲート・エミッタ間の電位が飽和状態(オン状態)のときの電位に達してしまうと、それ以上はコンデンサ32,42に充電されることはなく、応答速度が高くなることもない。よって、コンデンサ32,42の容量は、IGBT33,43の耐圧や負荷3の負荷特性に応じて適切な容量のものにすることが望ましい。これと、同様の作用がインバータ部20U,20V,20Wのそれぞれについて得られる。
【0025】
以上説明した第1実施形態によれば、コンデンサ32,42を設けたことにより、スイッチ回路30,40のIGBT33,43の応答速度を高くすることができる。これにより、インバータ装置の設計段階において、スイッチの応答速度が高くなる容量のコンデンサをスイッチ回路30,40のそれぞれに設けてやれば、従来よりもデッドタイムを短くしたインバータを設計することが可能となる。このようにしてデッドタイムを短縮することで、負荷3に供給される交流電流の電流波形(電圧波形)の劣化を防ぐことができ、これを補償する構成も不要とすることができる。また、コンデンサ32,43の静電容量に応じて応答速度を調整することができるので、例えば両者の応答速度を予め決められた値に一致するように静電容量を決めると、インバータの設計において、デッドタイムの設定がより簡単になる。
【0026】
(B)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、本実施形態のインバータシステムの構成を示した回路図である。
同図に示すように、本実施形態のインバータシステムは、第1実施形態のインバータシステムに対して、負荷3のU相、V相、W相の各相の負荷に流れる負荷電流を検出する電流検出器60U,60V,60Wを加えたものである。電流検出器60U,60V,60Wは、例えば電流計であり、測定した電流値を表す電流検出信号を定期的に制御装置10aに出力する。また、インバータ装置1aは、制御装置10aと、3つのインバータ部20Ua,20Va,20Waを備えている。インバータ部20Uaは、2つのスイッチ回路30Ua,40Uaが直列に接続されて構成され、インバータ部20Vaは、スイッチ回路30Va,40Vaが直列に接続されて構成され、インバータ部20Waは、スイッチ回路30Wa,40Waが直列に接続されて構成されている。
なお、インバータ部20Ua,20Va,20Waの構成はそれぞれ同じであるから、これらを区別しない場合には,「インバータ部20a」と称する。スイッチ回路についても同様に、スイッチ回路30a,40aと称する。また、電流検出器60U,60V,60Wのそれぞれを区別する必要のない場合には、「電流検出器60」と称する。
【0027】
図7は、インバータ装置1aの構成を示す回路図である。なお、同図においては、インバータ装置1aが備える制御装置10a及び1相分のインバータ部20aを示す。
同図に示すように、インバータ装置1aにおいては、上述したインバータ装置1におけるコンデンサ32,42に代えて、容量の総和が変化する可変コンデンサ32a,42aがそれぞれ設けられている。可変コンデンサ32a,42aは、制御装置10aの制御の下、その容量が変化させられる。なお、スイッチ回路30a,40aのそれぞれにおいて、容量性素子である可変コンデンサは1つずつなので、ここでの容量の総和とは、その可変コンデンサ32a,42a単体の静電容量のことをいう。また、制御装置10aは、時刻を測定することが可能なタイマを備え、電流検出器60U,60V,60Wによってフィードバックされる負荷電流の大きさと、タイマにより測定した時刻に応じて、可変コンデンサ32a,42aの静電容量を制御する。
このように、上述した第1実施形態では、デッドタイムを短縮するために、最適なコンデンサの容量を設計段階で決めていたのに対し、この第2実施形態では、制御装置10aが適宜これらの静電容量を制御する点で両者は異なる。
【0028】
次に、インバータ装置1aが、可変コンデンサ32a,42aの静電容量を制御するときの動作について説明する。
制御装置10aは、まずスイッチ回路30aに対して出力する制御信号を“L”から“H”に切り替えると、このタイミングに、自身のタイマによる計時を開始する。そして、制御装置10aは定期的に電流検出器60から電流検出信号を取得し、第1の閾値以上の電流値を表す電流検出信号を取得すると、この時点でタイマによって計時している時刻を、ターンオンが完了した時刻と特定する。このときに用いる第1の閾値は、IGBT33がオン状態となったときに、負荷3に流れる負荷電流の電流値に相当する値である。つまり、制御装置10aがタイマによって計測する時刻は、スイッチ回路30aのIGBT33のターンオン期間そのものの長さを表す。続いて、制御装置10aは、スイッチ回路30aに対して出力する制御信号を“H”から“L”に切り替えると、このタイミングに、タイマによって計時を開始する。そして、制御装置10aは定期的に電流検出器60から電流検出信号を取得し、第2の閾値以下の電流値を表す電流検出信号を取得すると、制御装置10aは、この時点でタイマによって計時している時刻を、ターンオフが完了した時刻として特定する。このときに用いる第2の閾値は、スイッチ回路30aのIGBT33がオフ状態となったときに、負荷3に流れる負荷電流の電流値に相当する値である。つまり、制御装置10aがタイマによって計測する時刻は、ターンオン期間そのものの長さを表す。
以上の制御により、制御装置10aは、IGBT33のスイッチとしてのターンオン期間及びターンオフ期間、つまりIGBT33の応答速度を特定する。
続いて、制御装置10aは、スイッチ回路40aに対しても同様の制御を行って、IGBT43のターンオン期間及びターンオフ期間、つまりIGBT43のスイッチとしての応答速度を特定する。
【0029】
そして、制御装置10aは、スイッチ回路30a,40aのそれぞれに設けられたIGBT33,43の応答速度が高くなるように、可変コンデンサ32a,42aのそれぞれ静電容量を制御する。IGBT33,43の応答速度とコンデンサの静電容量との関係は、図5に示したとおりである。制御装置10aは、この関係に基づいて、特定したターンオン期間及びターンオフ期間が長い(応答速度が低い)場合には、これらの期間を特定したスイッチ回路30a,40aの可変コンデンサ32a,42aの容量の総和を大きくするよう制御する。具体的には、制御装置10aは、可変コンデンサ32a,42aの静電容量を変化させつつ上記同様の制御を行って、スイッチ回路30a、40aのターンオン期間を最短とするように、コンデンサ32a,42aの静電容量を制御してもよい。また、制御装置10aは、ターンオフ期間を最短にするように制御してもよい。このほかにも、制御装置10aは、十分に短いと考えられる所定の時間とするように双方の可変コンデンサの容量を制御してもよく、IGBT33,43の応答速度を一致させるように、可変コンデンサ32a,42aの容量を制御するようにしてもよい。
【0030】
以上のようにして、制御装置10aは、電流検出器60Uの検出結果に応じてインバータ部20Uの可変コンデンサの容量を制御し、電流検出器60Vの検出結果に応じてインバータ部20Vの可変コンデンサの容量を制御し、電流検出器60Wの検出結果に応じてインバータ部20Wの可変コンデンサの静電容量を制御する。それぞれの可変コンデンサの容量を制御すると、制御装置10aは各インバータ部のスイッチ(IGBT)の応答速度に基づいて、デッドタイムを設定し直す。このデッドタイムの設定においては、例えば、予め制御装置10aのメモリにターンオン期間やターンオフ期間と、デッドタイムとの関係が予め記憶されており、制御装置10aがこの対応関係に基づいて、デッドタイムを設定する。また、制御装置10aは、特定したターンオン期間やターンオフ期間の長さに基づいて、所定のアルゴリズムに基づいてデッドタイムを算出し、算出したデッドタイムに設定するようにしてもよい。
【0031】
以上説明した第2実施形態によれば、定期的、メンテナンス時等の任意のタイミングにおいて、制御装置10aはインバータ部20aの可変コンデンサ32a,42aの静電容量の制御を行うことにより、インバータ装置1a内のスイッチとしての各IGBTの応答速度を調整する。これにより、例えば、IGBTの応答速度の経時変化や温度変化等があった場合にも、インバータ装置1aはこれにいち早く対応することができ、ターンオン期間やターンオフ期間が長い場合には、応答速度を高くするよう可変コンデンサ32a,42aの容量を大きくする。このようにして、インバータ装置1aは自装置でデッドタイムを短くするような制御を行うことにより、インバータ装置の高い性能を継続して確保することができる。
【0032】
(C)変形例
上記実施形態を次のように変形してもよい。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
上述した第2実施形態では、可変コンデンサ32a,42aを用いていたが、コンデンサの容量の総和が変化するための構成を、以下のようにしてもよい。
図8は、可変コンデンサを用いずに、コンデンサの容量の総和が変化する構成を採用したスイッチ回路30bを構成したときの回路図である。同図に示すように、スイッチ回路30bは、スイッチ回路30aの可変コンデンサ32aを、コンデンサ部32bに置き換えた構成となっている。なお、図示を省略するが、スイッチ回路40aにおいてもこれと同様の構成を用いることができる。
同図に示すように、コンデンサ部32bにおいては、スイッチSW,i及びコンデンサ72−i(i=1〜5)からなる直列回路が、それぞれ抵抗31に対して並列に複数接続されている。スイッチSW1〜SW5はそれぞれMOSFET(電界効果トランジスタ)等を用いたスイッチであり、制御装置10aはそれぞれのオンオフを制御する。なお、スイッチSW1〜SW5においては、IGBT33,43のように高い応答速度は要求されない。また、コンデンサ72−1〜72−5の静電容量は、例えばそれぞれ1pF、2pF、4pF、8pF、16pFである。
【0033】
上記第2実施形態と同じようにして、制御装置10aが各インバータ部20aについて最適な静電容量を決定すると、この静電容量を実現するように、コンデンサ部32bの各スイッチSW1〜SW5のオンオフを制御する。すなわち、コンデンサ部32bにある複数のコンデンサによる合成容量により、その容量の総和が変化する。このスイッチ回路30bにおいては、5個の直列回路が並列接続されているので、その組み合わせにより2=32通りもの静電容量を実現することもできる。なお、この並列回路の段数や、各コンデンサの容量は一例であり、さらに多くの段数にしてより綿密な容量の制御を行えるようにしてもよい。また、複数のコンデンサを並列に接続するだけでなく、直列に接続するようにしてもよい。直列接続を採用すれば、コンデンサの静電容量をピコオーダで変化させたい場合に、ピコオーダで容量が変化する可変コンデンサを用いなくても、マイクロオーダの固定容量のコンデンサの組み合わせによってこれを実現することができる。
【0034】
また、上述した第2実施形態では、電流検出器60U,60V,60Wを用いていたが、これに代えて、以下の構成を採ってもよい。
例えば、電流検出器に代えて、負荷3の各相の負荷に加えられる負荷電圧の電位を検出する電位検出器を用いてもよいし、電力計を用いてもよい。この構成であっても、その電位の立ち上がり具合、及び立ち上がり具合からターンオン期間及びターンオフ期間をそれぞれ求めることができるから、同様の効果を得ることができる。また、電流や電位そのものの値を測定する検出器でなくてもよく、例えば、測定した電流値がターンオンが完了したことを意味する第1の閾値以上になったときに通知信号を出力し、ターンオフが完了したことを意味する第2の閾値以下の電流値になったときに通知信号を出力する検出器を用いてもよい。もちろん、電位や電力に応じて通知信号を出力する検出器でもよい。また、ターンオン期間及びターンオフ期間の長さを自装置で特定して、それを表す信号を出力する検出器でもよい。
要するに、制御装置10aと検出器とで、スイッチ回路30a,40aに対して出力される制御信号が切り替えられてから、IGBTのオンとオフとが切り替えられるまでの期間を特定できる構成であればよい。
【0035】
上述した第1及び第2実施形態では、インバータ装置における各スイッチ回路のスイッチとしてIGBTを用いていたが、スイッチの構成はこれに限らない。前述のとおり、インバータ部に設けたコンデンサにおける充電時の突入電流の作用により、スイッチには大きな電流が流れる。スイッチは、このような大電流が供給されることによってオフ状態からオン状態への切り替えが速くなる、という性質を有するスイッチであればよい。このようなスイッチであれば、コンデンサを設けない構成と比べて、キャリアの移動はよりスムーズになる。例えば、MOSFET(電界効果トランジスタ)、逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等のトランジスタや、GTO(Gate Turn Off Thyristor)等のサイリスタをスイッチとして用いてもよい。IGBTはスイッチの応答速度に優れているが、上述したように、コンデンサの作用により応答速度を調整することができるので、IGBT以外のスイッチを用いた場合であっても、応答速度を所望の速度にまで高めることは可能である。
また、第1及び第2実施形態では、三相方式のインバータ装置に本発明を適用していたが、単相や2相方式のインバータ装置や、さらに多相の方式のインバータ装置に適用することもできる。また、インバータの回路構成は、実施形態で述べたものに限らず、スイッチとして機能するIGBTが、直流電流の供給源と接続端との間に設けられる構成のものであればよい。
また、スイッチ回路におけるコンデンサに代えて、可変容量ダイオード等の容量性素子を用いてもよい。要するに、入力された制御信号が“L”から“H”に切り替えられたときから電荷を蓄え始め、制御信号が“H”から“L”に切り替えられると、蓄えた電荷を放出するというように、コンデンサと同じように振舞う容量性素子であれば、電荷を蓄え始めるときの突入電流が瞬間的に大きくなるから、スイッチの応答速度を高くすることができる。
【0036】
また、インバータに接続される負荷3は、前掲したダイナモメータに限らない。例えば、電気自動車の駆動においては、モータのトルクをどの回転数に応じても自由にコントロールできることが必要である。そこで、インバータ装置は制御指令に応じて、負荷3の電気自動車を駆動するためのモータのトルクや回転数をコントロールするために、交流電流の大きさや周波数を変えてやれば、インバータ制御により電気自動車を駆動することができる。この場合の直流電流の供給源である電源2は、蓄電池に相当する。また、無電源電源装置(UPS)にも適用可能であり、この場合、インバータ装置は、蓄電池である電源2から直流電流が供給されると、負荷3としての各種家庭用電気機器に電力を供給してこれを作動させる。これ以外にも、負荷3としては、産業用機械や家庭用機器等における各種モータ等、インバータ装置から供給される電力を受けて作動するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインバータシステムの基本構成を示す回路図である。
【図2】インバータ装置の構成を説明する図である。
【図3】(a)は制御装置が出力する制御信号の様子を示すタイムチャートを示す図で、(b)は、IGBTのゲートに流れ込むゲート電流の遷移の様子を示したタイムチャートを示す図である。
【図4】各時刻及び期間におけるスイッチ回路に流れるゲート電流の様子を模式的に表した図である。
【図5】コンデンサの静電容量と、IGBTの応答速度との関係を概略的に示したグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るインバータシステムの構成を示した回路図である。
【図7】インバータ装置の構成を説明する図である。
【図8】変形例のインバータ装置の構成を説明する図である。
【図9】従来のインバータシステムの基本構成を示す回路図である。
【図10】従来のインバータ装置におけるインバータ部の構成を示す回路図である。
【図11】制御装置がスイッチ回路に対して出力する制御信号の様子と、スイッチ回路のIGBTのコレクタ・エミッタ間の電位差の遷移の様子を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1,1a…インバータ装置、10,10a…制御装置、2…電源、20,20a,20U,20Ua,20V,20Va,20W,20Wa…インバータ部、3…負荷、30,30a,30b,40,40a…スイッチ回路、31,41…抵抗、32,32,42,42a…コンデンサ、32b…コンデンサ部。33,43…IGBT、34,44…ダイオード、60,60U,60V,60W…電流検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータにおけるスイッチ回路であって、
一端と他端とを備え、ハイレベル又はローレベルの電位の制御信号が当該一端に入力される抵抗と、
一端と他端とを備え、前記抵抗と並列に接続された容量性素子であって、前記制御信号が当該一端に入力され、入力された当該制御信号の電位がローレベルからハイレベルに切り替えられたときから電荷を蓄え始め、当該制御信号の電位がハイレベルからローレベルに切り替えられると、蓄えた電荷を放出する容量性素子と、
直流電流の供給源と負荷との間に設けられるとともに、前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端に接続され、前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端から供給される前記制御信号の電位がハイレベルのときには、前記供給源と前記負荷とを導通させるオン状態となり、前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端から供給される前記制御信号の電位がローレベルのときには、前記供給源と前記負荷とを導通させないオフ状態となるスイッチと
を備えることを特徴とするインバータにおけるスイッチ回路。
【請求項2】
前記スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタであり、
前記絶縁ゲートバイポーラトランジスタのゲートが前記抵抗の他端及び前記容量性素子の他端にそれぞれ接続され、当該ゲートに供給される制御信号の電位がハイレベルのときには、前記絶縁ゲートバイポーラトランジスタのコレクタ及びエミッタを介して前記供給源と前記負荷とを導通させるオン状態となることを特徴とする請求項1に記載のインバータにおけるスイッチ回路。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一方に記載のスイッチ回路である第1及び第2のスイッチ回路と、
前記第1及び第2のスイッチ回路の各々が備える前記スイッチの間に設けられ、前記負荷に接続される接続端と、
前記第1のスイッチ回路が備える前記抵抗及び前記容量性素子を介してハイレベルの電位の前記制御信号を供給するときには、前記第2のスイッチ回路が備える前記スイッチに前記抵抗及び前記容量性素子を介してローレベルの電位の前記制御信号を供給し、前記第2のスイッチ回路が備える前記スイッチに前記抵抗及び前記容量性素子を介してハイレベルの電位の前記制御信号を供給するときには、前記第1のスイッチ回路が備える前記スイッチに前記抵抗及び前記容量性素子を介してローレベルの電位の前記制御信号を供給する制御手段と
を備えることを特徴とするインバータ装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のスイッチ回路の前記容量性素子は、容量の総和が変化する1又は複数の容量性素子であり、
前記制御手段によってハイレベルの前記制御信号が供給されてから、当該制御信号が供給された前記第1又は第2のスイッチ回路が備えるスイッチがオン状態になるまでの期間を特定する期間特定手段と、
前記期間特定手段によって特定される期間が長い場合には、当該期間が特定されたスイッチを有するスイッチ回路の1又は複数の前記容量性素子の容量の総和を大きくする容量制御手段と
を備えることを特徴とする請求項3に記載のインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−45924(P2010−45924A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208636(P2008−208636)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】