説明

インフルエンザウイルスに対する抗体およびその使用方法

本発明は、インフルエンザウイルスを中和するヒトのscFv抗体およびモノクローナル抗体を提供する。また、トリインフルエンザなどのインフルエンザ関連の疾患又は疾病の治療及び/又は予防方法を提供する。また、本発明はインフルエンザに対する患者の予防接種方法を提供する。また、インフルエンザ関連の疾患又は疾病の診断方法と試料中のインフルエンザの存在の検出方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2007年12月6日に出願のUSSN61/005725及び2008年8月25日に出願のUSSN61/091599の優先権を主張するものであり、これらの内容は出典明記によって本明細書中に援用される。
【0002】
(助成金支援)
本発明は、国立衛生研究所助成U01 AI074518−01の下で、米国政府支援により成された。米国政府は本発明の特定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、概して、抗ウイルス抗体並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
インフルエンザの世界的流行は、ヒトの健康に最も大きな急性感染の脅威の一つである。1918〜1919年のインフルエンザの世界的流行は米国の約500,000人の死を引き起こし、米国歴史上最も致命的な現象となった。高病原性鳥インフルエンザ(HPAI) H5N1インフルエンザはアジア全体に蔓延し、現在中東および北アフリカへ、新たな世界的流行の実質的なリスクとなっている。
自然変異(natural variation)並びに回避変異(escape mutant)は、ウイルスの継続した進化が菌株(一又は複数)を受動および能動的な免疫化に使うべきであるという決定に影響を与えうることを示唆する。多くの重要なエピトープマッピングおよび中和回避(neutralization escape)研究は新規の中和抗体を報告しているが、HPAI H5N1に対する免疫化方策を開発するためには関連の構造的な研究が必要とされている。HPAI H5N1に対する保護ワクチンを開発する試みは大変なものであり、常に変化する敵による人の感染を予防及び治療するためには新たな方策が必要である。受動的にも能動的にも保護的な宿主免疫を誘発するためには、治療的方策を急いで開発する必要がある。
ヒト抗体(Ab)工学の分野は甚だしく進歩している。モノクローナル抗体(Mab)ベースの免疫療法は現在、RSVを含む増えつつあるヒト疾患の標準的な治療となりつつある。デノボのヒトMab単離およびその臨床使用に対する推移は、現在、高い親和性及び特異性を有するヒト抗体を構築するために利用される新規な抗体ディスプレイおよび他のライブラリスクリーニング技術にある程度よるものである。ヒトMab免疫療法は、ヒトの疾患の臨床管理においてますます重要な役割を提供しうる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、インフルエンザウイルス、例えばインフルエンザAウイルスを中和するモノクローナル抗体の発見に基づく。インフルエンザAウイルスはH1クラスターインフルエンザウイルスのようなグループIインフルエンザAウイルスであり、H1クラスターインフルエンザウイルスはH1aクラスター又はH1bクラスターである。モノクローナル抗体は完全にヒトである。様々な態様では、モノクローナル抗体は、二価抗体、一価抗体、単鎖抗体又はその断片である。具体的に、このようなモノクローナル抗体は、HA1又はHA2ポリペプチドのような、ヘマグルチニンタンパク質(HA)のステム領域上のエピトープに結合する。エピトープは非線形である。
場合によって、エピトープはHA-1およびHA-2を含む。エピトープは非線形である。いくつかの実施態様では、エピトープは、HA1ポリペプチドのアミノ酸位18、38、40、291と、HA2ポリペプチドのアミノ酸位18、19、20、21、38、41、42、45、49、52、53および56を含む。
例示的なモノクローナル抗体には、モノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90又はH98、または、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90又はH98と同じエピトープに結合する抗体が含まれる。
【0006】
本発明のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90又はH98の結合親和性を有しうる。あるいは、結合親和性は、およそ1pM〜およそ200mMであってよい。本発明のモノクローナル抗体は、ウイルスと細胞の膜融合を阻害するように機能する。
モノクローナル抗体は、配列番号:2、6、12、18、24、28、32および36を含む重鎖可変アミノ酸配列および/または配列番号:4、8、14、16、20、22、26、30、34および38を含む軽鎖可変アミノ酸配列とを有する。
モノクローナル抗体は、配列番号:1、5、13、15、21、23、29、33、37及び40を含む重鎖可変核酸配列、及び又は配列番号:3、9、11、17、19、25、27、31、35、39および42を含む軽鎖可変核酸配列を有する。
また、モノクローナル抗-インフルエンザヘマグルチニンタンパク質抗体又はその断片であって、 該抗体が、アミノ酸配列SYAFS、TNAFS、AYAFT、SFAIS、SYAIS、GYYIH、MTAFT又はDNAISを有するV CDR1領域;アミノ酸配列GIIPMFGTPNYAQKFQG、GVIPLFRTASYAQNVQG、GIIGMFGTANYAQKFQG、GISPMFGTPNYAQKFQG、GIIGVFGVPKYAQKFQG、WINPMTGGTNYAQKFQV、GISPIFRTPKYAQKFQG又はGIIPIFGKPNYAQKFQGを有するV CDR2領域;アミノ酸配列SSGYYYGGGFDV、SSGYHFGRSHFDS、GLYYYESSLDY、SPSYICSGGTCVFDH、EPGYYVGKNGFDV、GASVLRYFDWQPEALDI、TLSSYQPNNDAFAI又はDSDAYYYGSGGMDVを有するV CDR3領域;アミノ酸配列TGSSSNIGNYVA、TGSSSNIAANYVQ、TGTSSDVGGYNSVS、TGNSNNVGNQGAA、TGDSNNVGHQGTA、GGNNIGGYSVH、RASQSVSSYLA、RASQSLSSKYLA、TGSSSNIGNYVA、SGSSSNIGSNTVN、RASQSISSYLN又はTLSSGHSNYIIAを有するV CDR1領域 ;アミノ酸配列SNSDRPS、EDDRRPS、EVTKRPS、RNNDRPS、RNGNRPS、DDKDRPS、DASNRAT、GASSRAT、SNNQRPS、AASSLQR、SNEQRPS又はVNSDGSHTKGDを有するV CDR2領域、および/またはアミノ酸配列QSYDSLSAYV、QSYDTNNHAV、CSYAGHSAYV、STWDSSLSAVV、SVWDSSLSAWV、QVWDSGNDRPL、QQYGSSPQV、QQYDGVPRT、QSYDSRLSASL、QQYDSSPYT、ASWDDNLSGWV又はETWDTKIHVを有するV CDR3領域を有する抗体又は断片が本発明によって提供される。
【0007】
更なる態様では、本発明は、単離されたモノクローナル抗-インフルエンザヘマグルチニンタンパク質抗体又はその断片であって、 該抗体が、VH生殖系列遺伝子IGHV1-69*01によってコードされるVHアミノ酸配列と、以下の位置にアミノ酸を有し、a) 27がバリンである;b) 28がスレオニンである;c) 30がセリンである;d) 31がセリンである;e) 54がメチオニンである;f) 55がフェニルアラニンである;g) 58がスレオニンである;h) 100がプロリンである;i) 101がセリンである;j) 102がチロシンである;k)103がイソロイシンであり、105がセリンである抗体又は断片を提供する。
他の態様では、本発明は、インフルエンザウイルスによって生じる疾患又は疾病を患うリスクにあるヒトに、治療的に有効量の本明細書中に記載のモノクローナル抗体又はscFV抗体を投与することによる、該疾患又は疾病の予防又は治療の方法を提供する。モノクローナル抗体又はscFV抗体は、インフルエンザウイルスを中和するために十分な用量で投与される。本発明の実施態様では、方法もまた、抗ウイルス薬、ウイルス侵入阻害薬又はウイルス接着阻害薬を投与することを含む。抗ウイルス薬は、ザナミビル又はオセルタミビルリン酸塩のようなノイラミニダーゼ阻害薬、HA阻害薬、シアル酸阻害薬、又はアマンタジン又はリマンタジンのようなM2イオンチャネルである。抗体はインフルエンザウイルスへの曝露の前又は後に投与される。
【0008】
他の態様では、本発明は、試料を本明細書中に記載のモノクローナル抗体と接触させ、抗体−抗原複合体の有無を検出し、これによって試料中のインフルエンザの存在を検出することによって、試料中のインフルエンザウイルスの存在の検出方法を提供する。試験試料は一般に、血液、体毛、頬擦過物又は塗布物、唾液、生検、尿、糞便、痰、鼻吸引又は精液から得られる。
さらに、本発明は、HAのステム領域の高く保存されたエピトープを標的とする広い中和ヒト抗体を生成するためのプロトコールの発見に基づく。可塑性(プラスチック)表面に吸着された無電荷のマンノースと短いN-グリカンを産生するバキュロウイルスに発現される三量体H5外部ドメインを用いると、正常に免疫優性球状ヘッドをマスキングしながら、ステムエピトープを優性に提示することができた。
【0009】
したがって、本発明はまた、単鎖又はFab発現ライブラリをウイルスの膜融合タンパク質にさらし、該タンパク質を特異的に結合するライブラリ中の抗体を同定し、そしてライブラリから抗体を単離することによる、病原性エンベロープウイルスを特異的に結合する単離された抗体の製造方法も包含される。好ましくは、融合タンパク質は、固形表面、例えばプラスチックに固定される。様々な態様では、融合タンパク質は、野生型融合タンパク質と比較して変更したグリコシル化を有する。例えば、融合は、昆虫細胞などの非哺乳動物細胞内で産生される。融合タンパク質は、例えば三量体ヘマグルチニン(HA)タンパク質である。
本発明はさらに、生物学的に適合性のあるマトリックスにコートされたか又は包埋された膜融合タンパク質(例えば三量体ヘマグルチニン(HA)タンパク質)を被検体に投与することによる、インフルエンザウイルスなどの病原性エンベロープウイルスに対して被検体を予防接種する方法を提供する。様々な態様では、融合タンパク質は、野生型融合タンパク質と比較して変更したグリコシル化を有する。
他の態様では、本発明は、本明細書中に記載のモノクローナル抗体を含む組成物、及び一又は複数の容器内の組成物と使用のための指示書を具備するキットを提供する。
【0010】
特に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術的及び化学的用語は、本発明が属する分野の通常の技術者によって共通して理解される意味と同じである。本明細書において記述されるものに類似する方法及び材料又はその等価物が、本発明の実施又は試験に使われうるが、適切な方法および材料は後述する。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、出典明記によってその全体が本明細書中に援用される。紛争の場合、定義を含む本明細書は管理するであろう。さらに、材料、方法および実施例は例示のためだけのものであって、制限を目的とするものではない。
本発明の他の特徴および効果は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】A/Vietnam1203/04三量体の構造の例である。レセプター結合部位および抗原性変異部位を単量体上で強調して示す。
【図1B】ポジティブ選択下にあるH5N1インフルエンザウイルスのHAのアミノ酸残基の位置を示す例である。
【図2】H5N1の収束組合せ免疫療法の概略図である。
【図3】本発明の抗インフルエンザ抗体のVH及びVLのフレームワーク領域1−4(FR1−4)及び相補性決定領域1−3(CDR1−3)のアミノ酸配列比較を示す例である。FRおよびCDR領域はカバットデータベースを使用して定められる。VHおよびVLの遺伝子名を右に示す(IMGTデータベースを使用する)。点はコンセンサス配列に対する配列同一性を示す。ハイフンはギャップを表す。
【図4】抗H5抗体のインビトロ中和を示す。(a)(上パネル)10のnAbを可溶性scFv-Fc(ヒンジ、CH2およびCH3に連結した可変領域の単鎖断片)に変換し、H5TH04−偽型のウイルスに対する活性の中和について評価した。2つの濃度の中和割合を標準誤差バーにて示す。mAb 80R16をコントロール(Ctrl)として用いた。(中央及び下パネル)、プラーク減少アッセイを用いた3つの濃度の10のscFv-Fcによる野生型H5-VN04及びH5-IN05の中和。結果は、マイクロ中和アッセイから得られたデータと一致している(データは示さない)。(b)交差サブタイプ中和。nAb D8、F10及びA66すべてがH5-TH04、H1-SC1918 ((A/South Carolina/1/1918 (H1N1))、H1-PR34 (A/Puerto Rico/8/34 (H1N1))、H2-JP57 (A/Japan/305/57(H2N2))及びH6-NY98 (A/chicken/New York/14677-13/1998(H6N2))偽型ウイルスを中和した。(c) マイクロ中和アッセイ。H5N1およびCtrlに対して生じたマウスmAb 21G8.6と比較したときの、野生型H5N1、H1N1(A/Ohio/83(「H1-OH83」))およびH2N2(A/Ann Arbor/6/60(「H2-AA60」))に対するF10の中和力価。80R(1mg/mL Ab原液)。「<」は20未満の力価を示す。結果は2つの独立した実験を表す。
【図5】中和メカニズムを示す。(a) H5-TH04-偽型HIV−1ウイルスの完全長HAを用いたウイルス結合阻害アッセイ。Ab処理群の細胞に対するウイルスの結合は、Abがない場合の細胞への結合(100%定める)と比較した。3つのnAb(D8、F10及びA66)はいずれも細胞へのウイルス結合を阻害しなかったが、赤血球凝集を阻害し、おそらくヘッドに結合するマウス抗H5 mAbである17A2.1.2とフェレット抗H5N1血清はいずれも有意に結合を低減した。(b) nAbによるシンシチウム(合胞体)形成の阻害。HeLa細胞にH5-TH04発現プラスミドを形質移入した。pH5.0バッファに短時間さらすことによって誘導したシンシチウム形成は、20μg/mlのnAb D8、F10及びA66によって完全に阻害されたのに対して、同じ濃度のコントロール及び抗HA1 mAb(2A)は効果を示さなかった。
【図6】H5-F10エピトープの構造と配列/構造の保存を示す。(a) F10(scFv)に結合したH5三量体の構造。H5は複合体化されなかった構造21に非常に類似している(2つの独立した三量体では、ペアワイズRMSD(Cα)=1.0及び0.63Å)。HA1、HA2、HA2のαAヘリックス、「融合ペプチド」(FP)およびF10(VHおよびVL)を色分けして示す。第3のF10はステムの後に隠れている。VLはH5と接触しないことを注記する。(b) 中央のステム領域の表面。1つの単量体を鎖ごとに色分けする。エピトープに沿ったFPの経路(赤)の輪郭を示す。結合に作用していない突然変異を青色とする。2つの単量体において融合ペプチド(FPおよびFP’)を可視化する。エピトープ残基は白色(HA2)又は黄色(HA1)で標識した。(c) F10の先端(赤リボン)と選択されたCDR側鎖を示すエピトープの拡大図。界面の1500Å埋没表面の43%は疎水的相互作用を伴う。(d) HAサブタイプのオーバーレイ:H1、H5およびH9(グループ1)を赤/黄色の影(1RU7、2IBXおよび1JSD)で、H3およびH7(グループ2)を青の影(1MQLおよび1TI8)で示す。ペアワイズオーバレイのRMSDは0.56±0.11Å(観察範囲、グループ1)、0.75Å(グループ2)、そしてグループ間では1.21±0.12Åである。グループ間の一貫した相違には、18及び38での側鎖方向を交替させるために連結されるW21の配位、17でのヒスチジン(グループ2)より大きなチロシン(グループ1)の埋没、そしてW21に対して埋没したHis111(グループ1)のパッキングが含まれる。他のエピトープ残基は丸で囲んだ数字で示す。N38はH3およびH7クラスターにおいてグリコシル化される。(e) 16のHAサブタイプの配列。円は算出結合エネルギーを示す。強=青、中間=橙、弱=青、好ましくない=黒。着色した強調表示は、クラスターおよびグループ内での配列の保存を示す。融合構造29を安定化させるヘリックス内接触のネットワークを配列の下に示す。
【図7】マウスの抗H5 nAbの予防及び治療的有効性を示す。マウスを、致死的ウイルス抗原投与の前又は後に異なる用量のnAbにて処理する。予防有効性(a、b、g及びh)。マウスを、H5N1又はH1N1の10半致死量(MLD50)の鼻腔内投与(i.n.)により、致死的抗原投与の24時間前に抗H5 nAb又はコントロールmAbにて処理した。(a)10mg/kgの3ついずれかのnAbの腹腔内投与(i.p.)によりH5-VN04(A/Vietnam/1203/04(H5N1)、クレイド1)にて抗原刺激したマウスは完全に保護された。低用量の抗体(2.5mg/kg)でも非常に保護された。(b)H5-HK97(A/HongKong/483/97(H5N1)、クレイド0)ウイルスからの予防的保護は、10mg/kgの3ついずれかのnAbにて処置したマウスの80〜100%に観察された。(g) 3ついずれかのnAb(10mg/kgの単回注射)により、H1-WSN33(A/WSN/1933(H1N1))ウイルスによる抗原刺激マウスが完全に保護された。(h) 10mg/kgを単回注射すると、D8およびF10は、H1-PR34(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))にて抗原刺激したマウスを完全に保護した。25mg/kgの抗体が単回注射として投与されると、A66によりマウスが完全に保護された。治療有効性(c−f)。マウスは、H5-VN04を接種し、24、48、72hpi(c、eおよびf)のnAb、または、24hpiのH5-HK97を注入した(d)。接種後24時間目(hpi)に15mg/kg(ヒトの治療的に達成可能な用量)の3ついずれかのnAbを腹腔内処置すると、H5-VN04又はH5-HK97ウイルスの10倍のMLD50にて抗原刺激したマウスの80〜100%が保護された。
【図8】HAタンパク質のSDS-PAGEおよびゲル濾過分析を示す。(a) H5-TH04のHA1(残基11−325)断片に対する個々のHA1標的選別から抗体2Aを得た(左パネル)。ライブラリ選別のために用いたH5 HA(H5-VN04菌株)を右パネルに示す。(b) H5-VN04(H5)およびscFv F10複合体。HA0は、フューリンとの同時発現によりHA1およびHA2に完全に切断された(左パネル)。複合体は、初めに1:10のモル比でH5とF10を混合することによって形成させ、次いでゲル濾過によって精製した。
【図9】ELISAおよび競合ELISAによる抗H5 scFv-FcのH5又はHA1への結合を示す。(a) 1μg/mlの抗H5 scFv-Fcの後にHRP-抗ヒトIgG1を用いて、ELISAプレート上にコートしたHA1(H5-TH04)又はH5(H5-VN04)への抗H5 scFv-Fcの結合を検出した。HA1サブユニットに対して選別した抗体、mAb 2A scFv-FcはHA1およびH5に結合した。10の強力な中和scFv-FcはHA1でなくH5に結合した。(b) 1012pfuの抗H5ファージ-scFvを、5μg/mlの抗H5 scFv-Fcと混合し、H5(H5-VN04)-コートプレートに加え、洗浄して、その後HRP-抗M13にてH5に結合したファージ-scFvを検出した。mAb 2A-Fcは10のH5選別Abによって認識されるエピトープと競合しなかった。すべてのH5選別scFv-Fcは交差競合した。これらのうち、H5三量体に結合するAb F10(ファージ-scFv)は他のscFv-Fcによる阻害が最も低かったことから、試験したAbすべての中で最も親和性が高いことを示す。
【図10】nAb D8、F10およびA66-IgG1へのH5の結合の動態学的及び熱力学的特徴を示す。nAbは抗ヒトIgG1によりCM4チップに捕獲された。様々な濃度(20、10、5、2.5、2.5、1.25、0.625nM)の三量体H5(H5-VN04)をチップ表面に注入した。結合動態は1:1ラングミュア結合モデルを用いて評価した。記録された結合曲線(ブランク対照を減算したもの)と算出されたカーブは、密接に重なり合った。各々のk、kおよびK値は、3つの実験の平均および標準誤差を表す。
【図11】HAサブタイプの間の系統発生の関係および配列比較を示す。アミノ酸配列に基づくインフルエンザAウイルスの16のHAサブタイプの系統樹。HAサブタイプの4つのクラスターを異なる色で示す。分析のために使用した配列は以下の通りであった。H1(A/South Carolina/1/1918)、H2(A/Japan/305/1957)、H3(A/Aichi/2/1968)、H4(A/duck/Czechoslovakia/56)、H5(A/VietNam1203/2004)、H6(A/chicken/California/431/00)、H7(A/Netherland/219/03)、H8(A/turkey/Ontario/6118/68)、H9(A/swine/HK/9/98)、H10(A/chicken/Germany/N49)、H11(A/duck/England/56)、H12(A/duck/Alberta/60/76)、H13(A/gull/Maryland/704/77)、H14(A/mallard/Astrakhan/263/1982)、H15(A/shearwater/West Australia/2576/79)およびH16(A/black-headed gull/Sweden/2/99)。
【図12】H5-VN04抗原投与後、抗H5 nAbにて処置したマウスの肺、脾臓および脳のウイルス力価を示す。BALB/cマウス(n=5)は、10MLD50のH5-VN04をi.n.感染させた後、24、48又は72時間目に15mg/kgのmAbを腹腔内注射した。ウイルス力価は、96hpiに採取した肺、脳および脾臓において決定した。データは、ボックスが第25から第75のパーセンタイルまで伸び、中央値に水平線を示す、箱髭様式で表す。箱の上下の髭は極値を示す。スチューデントT検定統計分析の結果は、p<0.05を1つの星(*)、p<0.01を2つの星(**)を付して示す。Y軸を越えた矢印は滴定の検出限界を示す。
【図13】H1、H2、H5、H6、H11、H13およびH16を含むすべてのH1クラスターHAへの抗H5 nAb結合のFACS分析を示す。293T細胞に異なるHA発現プラスミドを過渡的に形質移入し、HA発現細胞へのmAb結合をFACSによって分析した。抗SARS mAb 80Rをコントロールとして用いた。2A-FcはH5 HA特異的抗体である。グループ2 HA、H7への結合の欠如も示された。H11、H13およびH16のウイルス株詳細は以下の通りである。H11-MP74(A/Duck/memphis/546/74(H11N9))、H13-MD77(A/Gull/MD/704/77(H13N6))およびH16-DE06(A/Shorebird/DE/172/06(H16N3))。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
インフルエンザA型は、10のタンパク質をコードする8セグメントのゲノムを有するネガティブセンスの一本鎖RNAウイルスである。それは、ヌクレオキャプシッドおよびマトリクスタンパク質の抗原性によって定義されるように、インフルエンザウイルスA、BおよびCの属を含むファミリオルソミクソウイルス科に属する。概して、インフルエンザAウイルスはヒトの重症疾患と関係している。インフルエンザAウイルスはさらに、2つの表面タンパク質、細胞侵入のための宿主細胞にウィリオンを付着するヘマグルチニン(HA)と、プロジェニーウイルス又は細胞表面に付着した宿主シアル酸を切断することによってプロジェニーウイルスの拡散を促すノイラミニダーゼ(NA)によってサブタイプ分けされる。
16のHAサブタイプと9のNAサブタイプがあり、HAとNAの様々な組合せによってインフルエンザAウイルスのすべてのサブタイプを成す。16のHAと9のNAウイルスサブタイプのすべての組合せは水鳥に見られる。トリインフルエンザAウイルスの何百もの菌株の中で、H5N1、H7N3、H7N7およびH9N2の4つだけがヒトの感染を引き起こすことが知られている。通常、これらのウイルスによるヒト感染は、軽度の症状であって重症な疾病をほとんど引き起こさない。唯一、H7N7によって引き起こされた肺炎の致命的な症例があるのみである。しかしながら、ヒトでは自然免疫がない、病原性の高いH5N1ウイルスは例外である。RNAポリメラーゼの不信および宿主免疫の選択圧は、突然変異の蓄積とこれらのタンパク質の表面抗原性の変化をもたらしうる。この抗原性変化は抗原ドリフトと呼ばれている。加えて、その分節されたゲノムの結果として、2つの異なるサブタイプのインフルエンザAウイルスが同じ細胞を感染する場合、遺伝子セグメントのシャフリング(組み換え)が起こりうる。例えば、ヒトのH3N2ウイルスとトリH5N1ウイルスは共に、ヒト又は哺乳類種の他の類に感染し、このような現象は新しいH5N2を生じうる。次いで、この新規のウイルスは、ほとんどすべての遺伝子セグメントがヒトのウイルスから生じているので、ヒトからヒトへ効率よく伝達されうる。このような遺伝子再結合により主要な抗原変化、いわゆる抗原シフトが生じ、世界的な集団のほとんどが再構成ウイルスに対する中和抗体を持っていない。インフルエンザH5N1肺炎の高死亡率と加えて、このような状況は、公衆衛生の分野において最も恐れられる状況の一つである。
【0013】
インフルエンザウイルスヘマグルチニン(血球凝集素)(HA)は、インフルエンザウイルスの可変性の高い抗原であって、細胞へのウイルス侵入を担う。これは三量体前駆体ポリペプチドHA0として合成され、単一ジスルフィド結合によって連結される2つのポリペプチドHA1とHA2に翻訳後切断される。HAのHA1鎖は細胞表面へのウイルスの接着の原因となる。HA2はウイルスとエンドソームの細胞膜との融合を媒介し、細胞質へのリボヌクレオタンパク質複合体の放出を可能とする。HA1とは対照的に、HA2分子はHAの相対的に保存された部分を表す。第二免疫原性インフルエンザタンパク質はノイラミニダーゼ(NA)である。この四量体糖タンパク質は、プロデューサー細胞上の表面シアル酸からウイルス粒子を放出する原因となり、また、気道の標的細胞への接触を促す際の役割を有しうる。NAに対する中和抗体が動物およびヒトにおいて保護的であるにもかかわらず、その作用機構についての情報は不足している。N1ノイラミニダーゼの結晶構造についての最近の報告は、抗体を含む新規の抗インフルエンザ剤を開発するために利用されうるその活性部位に隣接するキャビティの存在を示した。この発見は、H5N1ウイルスのためのオセルタミビル(タミフル)およびザナミビル(リレンザ)に対する薬剤耐性の出現の報告を考慮すると、特に重要である。
HAのHA1とHA2鎖は免疫原性であり、ヒトの自然感染の後に両鎖と反応する抗体が示された。HA1に特異的な抗体は主に中和であるが、インビトロのHA1特異的Mabによるウイルス中和の異なる機構は、抗体の濃度に応じて、HA1上のレセプター部位のブロック、ウイルス−細胞融合の細胞内阻害、又は同時付着阻害及びウイルス−細胞融合阻害を含み、記載されている。あまり研究されていないが、抗HA2抗体による細胞融合の阻害が報告されている。
【0014】
20年以上前、H3サブタイプのHA分子は、抗原性ドリフト変異および回避変異のHAを配列決定することによって特徴付けされ、抗原エピトープは分子の三次元構造にマップされた。それ以来、トリ病原性ウイルスのH1、H2およびH5上の抗原性部位はH3の三次元構造にマップされた。1997年の香港におけるヒトのH5N1感染の発生と、1999年のヒトの症例からのH9N2ウイルスの単離の後、両方のタンパク質のX線構造が解析された。しかしながら、構造解析に用いられた1997年のブタ単離物(A/Duck/Singapore/3/97)の抗原ドリフトと、最近単離された病原性が高い菌株は意義深いものである。実際、ブタ単離物(A/Duck/Singapore/3/97)とHPAI H5N1株(A/Vietnam1203/04)との間には、28のマイナーな変化と2つのメジャーになりうる変化がある。
2004〜2005年の発生からのH5 HA遺伝子の系統学的分析により、クレイド1及び2と称される、HA遺伝子の2つの異なる系統が示された。HPAI H5N1株(A/Vietnam1203/04)はクレイド1のメンバーである。これらクレイドのそれぞれのウイルスは地理的にオーバーラップしていないアジア地域に分布している。インドシナからのH5N1ウイルスはクレイド1内に密接に集まっているのに対して、いくつかの周辺国から単離されるH5N1はクレイド1単離物とは異なり、分岐したクレイド2に属する。クレイド1ウイルスは、ベトナム、タイおよびカンボジアのヒトとトリ、そしてラオスおよびマレーシアのトリだけから単離された。クレイド2ウイルスは、中国、インドネシア、日本および韓国のトリのみから単離されるウイルスに見られた。ウイルス導入、風土性および進化に関連する疑問を解決するために、最新の疫学研究は、インドネシアおよびベトナム中の家禽、並びに11人の南ベトナムのヒト試料から単離された82のH5N1型ウイルスを、公共のデータベースで利用可能な配列データと共に分析した36。系統学的分析により、インドネシアのウイルスすべてがH5N1遺伝子型Zウイルスの異なるサブ系統を示したことから、この発生は過去2年の間に国中への蔓延により単独導入から生じたであろうことが示唆される。インドネシアの継続したウイルス活動は、トリの移動による繰り返された導入というよりも、国内での家禽の移動により伝搬されたものであった。インドネシアおよびベトナム内では、H5N1ウイルスは、各々の国の中で時間とともに地理的に異なるグループに進化した。
【0015】
近年、A/Vietnam1203/4からのHAの構造が解析された。クレイド1及び2ウイルスのHPAI2004年および2005年の単離物からのHA遺伝子とそのアミノ酸配列を比較したところ、主にレセプター結合ドメイン周辺に集中しており、残りは退化したエステラーゼドメイン内にある抗原性変異の13の位置が同定された。抗原性変異の領域はH1およびH3セロタイプにおいて同定された(図1A)。H1ではこれらの部位はSa、Sb、CaおよびCbと称され、H3ではA、B、CおよびDと称される。H5 HAの回避変異は3つのエピトープに集中している。部位1:H3の抗原性部位AとHのCa2にオーバーラップする露出したループ(HA1 140−145);部位2:H3セロタイプの抗原性部位Bに相当するHA1残基156および157;そして、3) H1 HAとH9セロタイプのSa部位に制限されるHA1 129−133。Smithによる近年の研究では、アミノ酸レベルでポジティブな選別が検出されると、HAタンパク質の8つの残基がポジティブ選択下であったことが示された(図1B)。これらの残基には、抗原性部位AおよびEの5つ(位置83、86、138、140および141)が含まれ、2つはレセプター結合に関与し(位置129および175)、位置156はレセプター結合部位に近い潜在的なN結合グリコシル化のための部位である。さらに、結果から、HA内の3つの残基(Val86、Ser129およびThr156)が、ニワトリ又はカモ単離物よりもヒトの単離物において観察されることが多く、ヒトに対するH5N1遺伝子型Zの初期適応を表すようであることが明らかとなった。これらの研究のさらに重要な発見は、インドネシアとベトナムとのサブ系統間の系統学的相違はこれら2つの群のウイルス間での抗原交差反応の統計学的相違も反映していたことである。具体的には、インドネシアのウイルスはA/Vietnam1203/04に対するフェレット抗血清に応答せず、ベトナムの代表的なウイルスはインドネシアウイルスIDN/5/06およびDk/IDN/MS/04に対するフェレット抗血清に応答しなかった。これらの所見は、系統学的にだけでなく抗原的に異なっているヒトの1997年と2003年のH5N1ウイルスと免疫ヒト血清による以前の研究と一致している。ゆえに、自然変異並びに回避変異は、ウイルスの継続した進化が菌株(一又は複数)が受動的および能動的な免疫化に用いられるべきかの決定に影響を与えうることを示唆している。
本発明は、ヒト抗インフルエンザモノクローナル抗体の同定、製造及び特徴付けのための方法を提供する。
【0016】
scFv及びモノクローナル抗体の同定と特徴付け
高親和性、交差サブタイプの広く中和するヒト抗HA mAbが同定された。これらnAbは、立体構造変化の重要な成分( 融合ペプチドとヘリックスαAの露出した表面)が非常に同格にあるポイントのステム領域内の新規の高く保存された中和エピトープを認識することによって接着後の融合プロセスを阻害する。16すべてのHAサブタイプの構造及び配列分析により、HAの2つの系統学的グループ分け(グループ1および2)に一致する、2つのみのエピトープの変異の存在を示す。これらの結果は、各群のサブセットから得られるnAbのわずかな反応混液が季節性で全国的に流行しているインフルエンザの幅広い予防を可能にしうるという可能性を示す。
最近の報告は、H5N1感染患者の免疫細胞を利用して抗HA nAbを単離していた。しかしながら、それらのエピトープや作用様式は報告されなかった。珍しいことに、我々は、同じVH生殖系統遺伝子IGHV1−69*01を利用し、Y102と同等の位置にチロシンを含むCDR3ループをコードするnAbを非免疫ライブラリから繰り返し単離した。これは、おそらく以前にH1に、そして1968年以前に生まれたライブラリドナーではH2サブタイプに曝露したために、広い抗HA交差免疫がH5ナイーブ集団に既に存在していることを示唆する。この生殖系統VHセグメントの反復使用、N挿入および/または生殖系統D遺伝子アセンブリにより導入されるCDR3チロシンの共通性、および両研究において発見されたnAbによるVL遺伝子のランダムな使用は、このエピトープを認識することができる再編成されたVHセグメントの前駆体頻度が重要であることを示唆する。これは、本明細書において同定されたF10エピトープへの適切な曝露により、これら広域スペクトルのnAbはインビボで容易に誘導されうる可能性を示す。両群のウイルスサブタイプに対して万能的に保護するために必要とされるnAbの遺伝学的及び構造的な複雑さは以前として未知であるが、我々のデータは驚くほど単純な解決策を示すであろう。
【0017】
3つの異なる抗HA-1 scFvが、58のHA-1ポジティブクローンの配列決定分析によって同定された。これらのscFvを38Bおよび1Cとした。2AのVHおよびVLアミノ酸配列を図4に示す。
10の異なる抗HA0 scFvが、97のHA0ポジティブクローンの配列決定分析によって同定された。これらのscFvを7、8、10、17、40、66、80、88、90及び98とした。6の異なるVHと10の異なるVL遺伝子が明らかとなった。いくつかのscFvは同じVH遺伝子を共有していた。6の異なるVH遺伝子のうちの5つは、IGHV1-69遺伝子ファミリに属した。10のVL遺伝子のうちの3つはκ鎖であった。
2A scFvは中程度の中和抗体であり、38B及び1Cは非中和抗体である。10のscFv、7、8、10、17、40、66、80、88、90および98は強力な中和抗体である(図6)。
【0018】
中和インフルエンザ抗体の核酸およびアミノ酸配列を以下に示す。



















【0019】
中和インフルエンザ抗体の重鎖および軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列を以下の表2および図4に示す。
表2

当業者は、異なる結合親和性を有する更なるscFvやモノクローナル抗体が治療的に有効となりうることを理解するであろう。例えば、およそ1pMからおよそ200mMの結合親和性を有する抗体およびscFvもまた治療的に有効となりうる。
【0020】
抗インフルエンザ抗体によるH5N1の中和。
H-5偽型ウイルスは、二価のscFvと完全長抗体と共にインキュベートし、抗体−ウイルス混合物を293T細胞と接触させた。感染力は、標的細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定することによって定量化した。D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90およびH98抗体は、H5に対して強力な中和活性を有する。また、D8、F10およびA66抗体は、H1N1を交差中和し、株H1-SC/1918を強力に中和し、株H1-PR-34を中程度に中和した(図6)。
【0021】
8、10、66のエピトープの特徴づけ。
インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質に対する8、10及び66の結合の一次エピトープマッピングにより、これら3つの抗体のエピトープが類似しており、HA1の位置307に、そして、HA2の位置52、59、65および93に位置することが示された。このエピトープは、ウイルスによって脱落されないヘマグルチニンタンパク質を含む。ウイルスによって脱落されるノイラミニダーゼタンパク質を結合するほとんどの他の公知の抗インフルエンザ抗体とは異なっている。
【0022】
nAbエピトープの構造的特徴づけ
3.2Å解像度のHA(H5-VN04)と複合体化したscFv断片の結晶構造を解析することと突然変異誘発による、nAbの一つであるF10のエピトープと結合様式。(図6および表4)。
複合体において、各々のH5三量体は、1抗体当たりおよそ1500Åのタンパク質表面を埋没している、対称性-関連部位で、F10の3つの分子を結合する。H5自体の構造はF10結合によってほとんど変化されない。HAは単鎖のHA0として合成され、2つのサブユニット、HA1およびHA2にタンパク質分解性切断される。切断により、膜近位ステムに「融合ペプチド」(HA2の初めのおよそ21残基を含む)が埋没される。F10結合はもっぱらこの領域でのみ起こり(図6)、融合ペプチド、中性pH配座の場所に該ペプチドを固定するHA1とHA2のエレメント(いずれもこの領域の構造に不可欠なもの)、並びに酸性pHで大きな構造変化を受ける大きなHA2のらせん状ヘアピンと密接に接触し、このウイルス膜近位のポケットからウイルスの遠位の表面へ該融合ペプチドを押し出す。これがエンドソーム膜との融合を引き起こす。
【0023】
F10の重鎖はH5結合に主に役割があり、その3つの相補性決定領域(CDR)の先端を利用する。各F10分子は、HA三量体の単一の単量体内のHA1及びHA2サブユニットの両方と接触する(図6)。接触領域は、HA2融合ペプチドの一部によって形成されるポケットと、一端にHA1のエレメントと他端にHA2のヘリックスαAの露出面とを含む(図4および6)。主要な接触点の3組の抗体残基−CDR H2のF55及びM54とCDR H3のY102。F55のフェニル環は、融合ペプチドループの突出したループ(HA2残基DGW19−21(H3番号付け様式;下つき文字の1および2はHA1およびHA2鎖を指す))と、ポケットの背面を形成する2つの隣接ヒスチジン(残基18および38)およびトリプトファンの芳香族側鎖、W21によって形成される平坦な表面全体に位置する。また、M54の側鎖は、W21およびH38の芳香族環、並びにヘリックスαAのI45の側鎖と接するが、主鎖のカルボニル酸素はH38の側鎖と水素結合する。Y102は、その側鎖を、αAヘリックスの4つの側鎖と、融合ペプチドの主鎖カルボニル(D192)に対する水素結合によってつくられる疎水性間隙(crevice)に嵌入する。CDR H1ループは、ヘッド領域の基部のHA1のループとヘリックスαAのC末端と複数回接触する(図12d、e)。
同時に、エピトープを定めるためにヘリックスαA上で突然変異誘発実験を行った(図6)。抗体と直接接触する3つの残基の突然変異:V52A/E、N53AおよびI56Aは抗体の結合を有意に低減又は取り除いたのに対して、保存的突然変異であるV52Lは効果がなかった。コントロールとして、抗体と接触しないヘリックスの異なる露出面上の突然変異は抗体結合に対して効果がなかった(図12b−c)。ゆえに、αAヘリックスの突然変異誘発は、F10について結晶学的に定められるエピトープと十分に一致している。さらに、他の2つのnAb(構造的データはない)がほぼ同じ変異-nAb結合性質を示したことから、密接にオーバーラップするエピトープが示唆され、競合的結合と一致していた(図6、図9)。まとめると、我々は、3つすべてのnAbが、ある領域内のHAの中性pH構造を安定化することによってウイルスを中和し、この領域が膜融合状態を引き起こす構造変化の引き金(ポケットからの融合ペプチドの起こりうる放出)となると結論づけた。
【0024】
抗体
本明細書中で用いる「抗体」なる用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部位、すなわち抗原を特異的に結合する(と免疫応答する)抗原結合部位を含む分子を指す。「特異的に結合する」又は「免疫応答する」とは、抗体が所望の抗原の一又は複数の抗原決定基と反応して、他のポリペプチドとは反応しないことを意味する。抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab'、及びF(ab')2断片、scFvおよびFab発現ライブラリが含まれるがこれらに限定されない。
単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチド分子は、共有結合したVH::VLヘテロ二量体であり、ペプチドコードリンカーによって連結したVH−及びVL−コード遺伝子を含む遺伝子融合から発現されうる。(Huston et al. (1988) Proc Nat Acad Sci USA 85(16): 5879-5883を参照)。自然に凝集するが化学的に分離される、抗体V領域の軽鎖及び重鎖のポリペプチドをscFv分子に転換するための化学構造を識別するための多くの方法が記載されている。このscFv分子は抗原結合部位の構造と実質的に類似する三次元構造にホールドする。例として米国特許第5091513号;同第5132405号;及び同第4946778号を参照。
【0025】
大量の標的分子に対して再編成された抗体遺伝子の大きな供与源を提供するために、非常に大きなナイーブヒトscFvライブラリがあり、作製されうる。疾患特異的な抗体を単離するために、感染症を有する個体から小さいライブラリが造られうる。(Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9339-43 (1992);Zebedee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3175-79 (1992)を参照)。
通常、ヒトから得られた抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDの何れかに関連しており、分子に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。あるクラスは、同様にIgG、IgG及びその他のようなサブクラスを有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はκ鎖又はλ鎖であってよい。
【0026】
「抗原結合部位」又は「結合部分」なる用語は、抗原結合に参加する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗原結合部位は、重鎖(「H」)及び軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの非常に異なる範囲(stretch)は、「高頻度可変領域」と称され、「フレームワーク領域」又は「FR」として知られる保存された隣接範囲の間に配置する。ゆえに、「FR」なる用語は、免疫グロブリン内の高頻度可変領域間に天然に見られ、その領域に隣接しているアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの高頻度可変領域と重鎖の3つの高頻度可変領域は、三次元空間内で互いに関連して整理され、抗原結合界面を形成する。抗原結合界面は、結合した抗原の三次元界面に相補的であり、重鎖および軽鎖各々3つの高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」と称される。11Aおよび256の抗体のVHおよびVL領域のCDRはそれぞれ図1および図6に示される。
本明細書中で用いる「エピトープ」なる用語には、免疫グロブリンに特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基、scFv又はT細胞レセプターが含まれる。エピトープ決定基は、アミノ酸や糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面グルーピング(grouping)から成り、特定の三次元構造特性並びに特定の電荷特性をもつのが普通である。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端又はC末端ペプチドに対して生じうる。
【0027】
本明細書中で用いる「免疫学的結合」及び「免疫学的結合性質」なる用語は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じる非共有的相互作用の類を指す。免疫学的結合相互作用の強度又は親和性は、相互作用の解離定数(K)により表され、小さいKは大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合性質は当分野で周知の方法を使用して定量化されてよい。ある一つの方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成と解離の速度を計測することを伴うものであり、このときこの速度は複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響する幾何級数的パラメータに依存する。ゆえに、「会合速度定数」(Kon)及び「解離速度定数」(Koff)の両方は、濃度と会合および解離の実際の速度の計算によって決定されうる。(Nature 361:186-87 (1993)を参照)。Koff/Konの比率は、親和性に関連しないすべてのパラメータを解除することが可能であり、解離定数Kに等しい。(概して、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照)。平衡結合定数(K)が当分野の技術者に公知の放射性リガンド結合アッセイ又は類似のアッセイによって測定するところの、およそ1μM以下、好ましくは100nM以下、より好ましくは10nM以下、最も好ましくは100pM以下〜およそ1pMである場合に、本発明の抗体は、インフルエンザエピトープに特異的に結合するという。
本発明のインフルエンザタンパク質(例えばHA又はノイラミニダーゼ)、又はその誘導体、断片、アナログ、ホモログ又はオルソログは、これらのタンパク質成分を免疫特異的に結合する抗体の生成における免疫原として利用されてよい。
【0028】
当業者は、過度な実験を行うことなく、ヒトモノクローナル抗体がインフルエンザウイルスのHAタンパク質への本発明のヒトモノクローナル抗体の結合を妨げるか否かを確認することによって、前者のヒトモノクローナル抗体が後者の本発明のヒトモノクローナル抗体と同じ特異性を有することを決定することができる。本発明のヒトモノクローナル抗体による結合の減少で示されるように、試験するヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する場合、それはおそらく、2つのモノクローナル抗体が同じエピトープに結合するか又は非常に関連するエピトープに結合する。
ヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体の特異性を有するか否かを決定するもう一つの方法は、本発明のヒトモノクローナル抗体を通常反応するインフルエンザHAタンパク質とプレインキュベートし、次いで、試験するヒトモノクローナル抗体を添加して、試験するヒトモノクローナル抗体のHAタンパク質を結合する能力が阻害されるか否かを決定することである。試験するヒトモノクローナル抗体が阻害される場合、おそらく、本発明のモノクローナル抗体と同じ、又は機能的に等価なエピトープ特異性を有する。また、インフルエンザウイルスを利用して、試験モノクローナル抗体がインフルエンザウイルスを中和することができるか否かを決定することによって、本発明のヒトモノクローナル抗体のスクリーニングを行うことができる。
【0029】
当分野で公知の様々な手順が、本発明のタンパク質に対する、または、その誘導体、断片、アナログ、ホモログ又はオルソログに対するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の産生のために用いられてよい。(例として、出典明記によって本明細書中に援用される、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照)。
抗体は周知の技術、例えば、主に免疫血清のIgG分画を供給するプロテインA又はプロテインGを用いた親和性クロマトグラフィによって精製されてよい。その後又はあるいは、調査する免疫グロブリンの標的又はそのエピトープである特異的な抗原をカラムに固定し、免疫アフィニティークロマトグラフィによって免疫特異抗体を精製してよい。免疫グロブリンの精製は、例えばD. Wilkinson (The Scientist, published by The Scientist, Inc., Philadelphia PA, Vol. 14, No. 8 (April 17, 2000), pp. 25-28)によって述べられている。
【0030】
本明細書中で用いられる「モノクローナル抗体」又は「MAb」又は「モノクローナル抗体組成物」は、固有の軽鎖遺伝子産物と固有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の唯一の分子種を含む抗体分子の集団を指す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は集団のすべての分子において同一である。MAbは、エピトープに対する固有の結合親和性によって特徴が表される抗原の特定のエピトープと免疫応答することができる抗原結合部位を含む。
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)によって記述されるようなハイブリードーマ法を使用して調製されうる。ハイブリードーマ法では一般に、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を免疫化剤にて免疫化し、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するか又は産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化してもよい。
免疫化剤には一般的に、タンパク質抗原、その断片又はその融合タンパク質が含まれる。一般に、ヒト起源の細胞が望ましい場合、末梢血液リンパ球が使われ、または、非ヒト哺乳類の供与源が望ましい場合、脾細胞又はリンパ節細胞が使われる。次いで、適切な融剤、例えばポリエチレングリコールを用いて、リンパ球を不死化細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103)。不死化細胞株は通常、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯類、ウシ及びヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、融合していない不死化細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適切な培養培地中で培養されうる。例えば、親の細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマの培養培地は通常、HGPRT欠乏細胞の増殖を妨げる、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含む。
【0031】
好適な不死化細胞株は、効率よく融合し、選択された抗体産生細胞により安定して高いレベルで抗体を発現するものであり、HAT培地などの培地に影響されやすい。より好適な不死化細胞株はマウスの骨髄腫細胞株であり、例えばSalk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California and the American Type Culture Collection, Manassas, Virginiaから入手することができる。ヒト骨髄腫およびマウスヒトヘテロメラノーマ細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生について記述されている。(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63)を参照)。
そして、ハイブリドーマ細胞が培養された培養培地が、抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされてよい。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法、または、インビトロ結合アッセイ、例としてラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される。このような技術およびアッセイは当分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析によって測定されてよい。さらに、モノクローナル抗体の治療的適用法では、標的抗原に対して高い特異性と高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0032】
所望のハイブリドーマ細胞が同定されたあと、限界希釈手順によってクローンをサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させてよい。(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103を参照)。このための適切な培養培地には、例えば、ダルベッコの変更イーグル培地およびRPMI1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物の腹水のようなインビボで増殖させてよい。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティクロマトグラフィによって、培養培地又は腹水液から単離されるか又は精製されてよい。
【0033】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号において記述されるものによって作製されてよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に単離され、配列決定されうる。本発明のハイブリドーマ細胞はこのようなDNAの好適な供与源として役立つ。一旦単離されると、DNAは発現ベクターに入れられ、次いで、宿主細胞、例えばサルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞に形質移入し、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成させることができる。また、DNAは、例えば、相同なマウス配列をヒトの重鎖及び軽鎖の定常ドメインのコード配列に置換するか(米国特許第4816567号;Morrison, Nature 368, 812-13 (1994)を参照)又は、免疫グロブリンコード配列のすべて又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部に共有的に系都合させることによって変更してよい。このような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインと置換させるか、または本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインと置換させて、キメラ二価抗体を作製してよい。
完全なヒト抗体は、CDRを含む軽鎖及び重鎖の配列全体がヒト遺伝子に起因する抗体分子である。このような抗体は、本明細書中では「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」と称する。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技法;ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4: 72を参照);及び、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole, et al., 1985: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照)を用いて調製されうる。ヒトモノクローナル抗体が利用され、ヒトハイブリドーマを用いて(Cote, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030を参照)又はインビトロのエプスタインバーウイルスによるヒトB細胞形質転換により(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照)産生されてよい。
【0034】
さらに、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む更なる技術を使用して生産されてよい。(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)を参照)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されているマウスに導入することによって作製されてよい。抗原刺激によりヒト抗体産生が観察され、それは遺伝子再構成、集合(assembly)および抗体レパートリ(repertoire)を含むすべての点においてヒトで観察されるものと非常に似ている。この手法は、例えば、米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号、及びMarks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild et al, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);及びLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
【0035】
さらに、抗原による刺激に応答して動物の内在性抗体よりもむしろ完全ヒト抗体を生産させるために、変更されているトランスジェニック非ヒト動物を用いてヒト抗体を生産してよい。(PCT刊行国際公開94/02602を参照)。非ヒト宿主の重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン鎖をコードする内在性遺伝子の活動能力を無くし、ヒトの重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座を宿主ゲノム内に挿入する。例えば必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて、ヒト遺伝子を組み込む。次いで、完全な変更の構成成分をあまり含まない中間のトランスジェニック動物を交雑することによって、望ましい変更を完全に提供する動物をプロジェニーとして得る。このような非ヒト動物の好ましい実施態様はマウスであり、PCT刊行物国際公開96/33735および国際公開96/34096に開示されるゼノマウスTMと呼ばれる。この動物は、完全なヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を生産する。抗体は、所望の免疫原による免疫化後の動物から直接、例えばポリクローナル抗体の調製物として、あるいは、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのような動物由来の不死化B細胞から得られうる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、発現させて抗体を直接得るか、又は、さらに変更して、例えば単鎖Fv(scFv)分子のような抗体のアナログを得てもよい。
【0036】
内在性免疫グロブリン重鎖の発現を欠いているマウスに例証される、非ヒト宿主の作製方法の一例は、米国特許第5939598号に開示される。胚性幹細胞内の少なくとも一の内在性重鎖遺伝子座からJセグメント遺伝子を欠失させて、遺伝子座の再編成を妨げると同時に再編成された免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写の形成を妨げることと(この欠失は選択マーカーをコードする遺伝子を含むターゲティングベクターによって達成される)、その胚性幹細胞から、その体細胞および生殖系細胞に選択マーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスを生産することとを含む方法によって得られる。
ヒト抗体などの所望の抗体を製造する一つの方法は、米国特許第5916771号に開示される。この方法は、培養物中の一方の哺乳動物宿主細胞に重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入し、他方の哺乳動物宿主細胞に軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入し、そして、2つの細胞を融合してハイブリッド細胞を形成することを含む。ハイブリッド細胞は重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0037】
この手順の更なる改善法では、免疫原上の臨床的に関連するエピトープの同定方法、及び高い親和性で関連のエピトープに免疫特異的に結合する抗体の選択相関方法は、PCT刊行物国際公開99/53049に開示される。
抗体は、前記の一本鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターにより発現されうる。
これらには、ベクター、リポソーム、ネイキッドDNA、アジュバント支援DNA、遺伝子銃、カテーテルなどが含まれる。ベクターには、国際公開93/64701に記載されるような、ターゲティング部分を有する化学的コンジュゲート(例えば細胞表面レセプターに対するリガンド)、および核酸結合部分(例えばポリリジン)、ウイルスベクター(例えばDNA又はRNAウイルスベクター)、PCT/US95/02140(国際公開95/22618)に記述されるような、標的部分(例えば標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部分(例えばプロタミン)を含む融合タンパク質である融合タンパク質、プラスミド、ファージなどが含まれる。このベクターは、染色体制、非染色体性又は合成されたものであってよい。
【0038】
好ましいベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的コンジュゲートが含まれる。レトロウイルスベクターにはモロニーマウス白血病ウイルスが含まれる。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターには、オルソポックス又はアビポックスベクターのようなポックスベクター、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターのようなヘルペスウイルスベクター(Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995);Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995);Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993);Geller, A. I., et al., Proc Natl. Acad. Sci USA 87:1149 (1990)を参照)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993);Davidson, et al., Nat. Genet 3:219 (1993);Yang, et al., J. Virol. 69:2004 (1995)を参照)およびアデノ関連ウイルスベクター(Kaplitt, M. G.. et al., Nat. Genet. 8:148 (1994)を参照)が含まれる。
ポックスウイルスベクターは遺伝子を細胞質に導入する。アビポックスウイルスベクターにより核酸の短期発現が生じる。アデノウイルスベクタ、アデノ関連ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、核酸を神経細胞に導入するために適する。アデノウイルスベクターにより、アデノ関連ウイルス(およそ4か月)より短い期間の発現(およそ2か月)が生じ、それはHSVベクターよりも短い期間である。選択される特定のベクターは、治療される標的細胞および状態に依存するであろう。導入は、標準的な技術、例えば感染、形質移入(トランスフェクション)、形質導入(トランスダクション)又は形質転換(トランスフォーム)によるものであってよい。遺伝子導入の様式の例には、例えば、ネイキッドDNA、CaPO沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクションおよびウイルスベクターが含まれる。
【0039】
ベクターを用いて、基本的に任意の所望の標的細胞をターゲティングすることができる。例えば、定位注射を用いて、ベクター(例えばアデノウイルス、HSV)を所望の場所にあててもよい。さらに、ミニポンプ注入システム、例えばSynchroMed注入システムを用いた脳室内(icv)注入によって粒子が運搬されてよい。また、対流(convection)と称されるバルク流量に基づく方法は、脳の拡張領域への大分子の運搬に有効であり、標的細胞へのベクターの運搬に有用である。(Bobo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2076-2080 (1994);Morrison et al., Am. J. Physiol. 266:292-305 (1994)を参照)。用いられうる他の方法には、カテーテル、静脈内、非経口、腹膜内、及び皮下の注射や、投与や他の公知の投与経路が含まれる。
これらのベクターを用いて、さまざまな方法で用いられうる大量の抗体を発現させることができる。例えば、試料中のofanインフルエンザウイルスを検出するためである。また、抗体を用いて、結合させ、インフルエンザウイルス細胞膜融合を破壊しようと試みることができる。
【0040】
本発明の抗原タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生のための技術を応用することができる(例えば米国特許第4946778号を参照)。さらに、Fab発現ライブラリの構築のための方法を応用して(例えばHuse, et al., 1989 Science 246: 1275-1281を参照)、タンパク質又はその誘導体、断片、アナログないしはホモログに対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ効率よく同定することができる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体断片は当分野で公知の技術によって製造され得、限定するものではないが以下のようなものがある。(i) 抗体分子のペプシン消化によって製造されるF(ab')2断片、(ii) F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって製造されるFab断片、(iii) パパインや還元剤により抗体分子が処理されて製造されるFab断片、及び(iv) F断片。
また、ヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は2つの共有結合して接合された抗体から成る。このような抗体は、例えば、不必要な細胞に対して免疫系細胞を標的化するため(米国特許第4676980号を参照)、そして、HIV感染の治療のため(国際公開91/00360;国際公開92/200373;欧州特許第03089号を参照)に提唱された。抗体が架橋剤を伴うものを含む合成タンパク質化学における公知の方法を使用してインビトロで調製されてよいことは考えられる。例えば、イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって構築されうる。この目的のための適切な試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートおよび、例えば米国特許第4676980号において開示されるものが含まれる。
【0041】
例えば、インフルエンザを治療する際の抗体の有効性を上げるために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい。例えば、システイン残基(一又は複数)はFc領域に導入され、それによって、この領域の鎖間ジスルフィド結合が形成される。したがって、生成されるホモ二量体抗体は内部移行する能力を改善する、および/または、補体媒介性細胞殺傷能および抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を増加することができた。(Caron et al., J. Exp Med., 176: 1191-1195 (1992)およびShopes, J. Immunol., 148: 2918-2922 (1992)を参照)。あるいは、二重Fc領域を有し、このことにより補体細胞溶解およびADCC能を亢進した抗体が設計されてよい。(Stevenson et al., Anti Cancer Drug Design, 3: 219-230 (1989)を参照)。
【0042】
また、本発明は、細胞障害性剤、例えば毒素(例えば細菌、真菌、植物又は動物の起源の酵素活性を有する毒素ないしはその断片)、又は放射性同位体(すなわちラジオコンジュゲート)にコンジュゲートされた抗体を含む免疫コンジュゲートに関する。
使われうる酵素活性を有する毒素およびその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、αサルシナ、アブラギリfordiiタンパク質、dianthinタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAPS)、ニガウリ(momordica charantia)インヒビター、curcin、クロチン、sapaonaria officinalisインヒビター、ゲロニン、mitogellin、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテシンが含まれる。様々な放射性核種がラジオコンジュゲートされた抗体の産生に利用できる。例として、212Bi、131I、131In、90Y、186Reなどがある。
【0043】
抗体と細胞障害性剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCL)、活性なエステル(例えばスベリン酸ジサクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えばビス-(p-アジドベンゾイル)-ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えばトリエン-2,6-ジイソシアナート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載されるように調製されてよい。カルボン-14-標識1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレン トリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲートのための例示的なキレート剤である。(国際公開94/11026を参照)。
当分野の通常の技術者は、多種多様な可能な部分が結果として生じる抗体に、または、本発明の他の分子に連結されてよいことを認識するであろう。(例として"Conjugate Vaccines", Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr (eds), Carger Press, New York, (1989)を参照、この内容全体は出典明記によって本明細書中に援用される)。
【0044】
カップリングは、抗体および他の部分がそれらそれぞれの活性を保持する限り、2つの分子を結合する任意の化学反応によって達成されうる。この結合には、多くの化学機構、たとえば共有結合、親和性結合、インターカレーション、座標結合および複合体生成が含まれうる。しかしながら、好適な結合は共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接的な縮合によって又は外的架橋分子の取込みによって達成されうる。多くの二価又は多価の連結剤は、他の分子に対する、本発明の抗体のようなカップリングタンパク質分子において有用である。例えば、代表的なカップリング剤には、有機化合物、例えばチオエステル類、カルボジイミド類、スクシンイミドエステル類、ジイソシアナート類、グルタールアルデヒド、ジアゾベンゼン類およびヘキサメチレンジアミン類が含まれうる。このリストは、当分野で公知のカップリング剤の様々な種類を網羅しているものではなく、むしろ、一般的なカップリング剤の例示である。(Killen and Lindstrom, Jour. Immun. 133:1335-2549 (1984);Jansen et al., Immunological Reviews 62:185-216 (1982);及びVitetta et al., Science 238:1098 (1987)を参照)。 好適なリンカーは文献に記述されている。例として、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記述しているRamakrishnan, S. et al., Cancer Res. 44: 201-208 (1984)を参照のこと。また、オリゴペプチドリンカーにより抗体にカップリングされるハロゲン化されたアセチルヒドラジド誘導体の使用を記述している、米国特許第5030719号も参照のこと。特に好適なリンカーには以下のものなどがある。(i) EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド、(ii) SMPT(4−サクシニミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2-プリジル-ジチオ)-トルエン(Pierce Chem. Co.、カタログ番号(21558G)、(iii) SPDP(サクシニミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ) プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co.、カタログ番号21651G)、(iv) スルホ-LC-SPDP (スルホサクシニミジル-6 [3-(2-ピリジルジチオ)-プロピアンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co. カタログ番号2165-G)、及び(v) EDCにコンジュゲートしたスルホ-NHS (N-ヒドロキシスルホ-サクシニミジル: Pierce Chem. Co., カタログ番号24510)。
【0045】
上記のリンカーは異なる特質を有する構成成分を含み、ゆえに、異なる生理化学的な性質を有するコンジュゲートとなる。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ-NHSエステル類は、芳香族のカルボキシレート類のスルホ-NHSエステル類より安定している。NHS-エステル含有リンカーはスルホ-NHSエステル類より可溶性が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体障害型ジスルフィド結合を含み、コンジュゲートを形成して安定性を増しうる。ジスルフィド結合はインビトロ切断されるので、ジスルフィド結合は他の結合より一般的に安定性が低く、コンジュゲート利用性が低くなる。特に、スルホ-NHSはカルボジイミドカップリングの安定性を上げうる。カルボジイミドカップリング(例えばEDC)は、スルホ-NHSとともに使われる場合に、カルボジイミドカップリング反応単独より加水分解に対して抵抗力があるエステル類を形成する。
また、本明細書において開示される抗体は免疫リポソームとして調製されてもよい。抗体を含むリポソームは当分野で公知の方法によって調整され、例えばEpstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980);及び米国特許第4485045号及び同第4544545号に記載されている。増加した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5013556号において開示される。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により産生することができる。リポソームは定められた細孔径のフィルターにて押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'断片は、ジスルフィド相互交換反応によりMartin et al., J. Biol. Chem., 257: 286 288 (1982)に記載されるリポソームにコンジュゲートされてよい。
【0046】
インフルエンザウイルスに対する抗体の使用
所望の特異性を有する抗体を選別する方法には、非限定的に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び当技術分野で公知の他の免疫仲介技術が含まれる。
例えばHA(又はそのフラグメント)等のインフルエンザウイルス・タンパク質に対する抗体を、インフルエンザウイルス・タンパク質の局在化及び/又は定量化に関連する、当技術分野で公知の方法において使用することができる(例えば、適切な生理学的試料におけるインフルエンザウイルス・タンパク質のレベルの測定での使用、診断法における使用、蛋白質の画像診断における使用等)。所定の実施形態では、抗体誘導抗原結合性ドメインを含む、インフルエンザウイルス・タンパク質、またはその誘導体、フラグメント、類似体、又はホモログに特異的な抗体が、(以下に「療法」と呼ばれる)薬理学的な活性体として用いられる。
【0047】
本発明のインフルエンザウイルス・タンパク質に特異的な抗体を使用して、例えば免疫アフィニティー、クロマトグラフィー、又は免疫沈降等の標準技術によって、インフルエンザウイルスポリペプチドを単離することができる。インフルエンザウイルス・タンパク質(又はそのフラグメント)に対する抗体を、例えば、所定の治療計画の効能を判定するための臨床試験方法の一部として診断上使用して、細胞中の蛋白質レベルを監視することができる。検出は、抗体を検出可能な物質に連結させる(すなわち物理的に結合させる)ことによって促進できる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、接合団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な接合団複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニラミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリン、そして好適な放射性物質の例として125I、131I、35S又はHが挙げられる。
ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化及び、完全ヒト抗体を含む本発明の抗体は治療薬として使用することができる。この種の薬品は通常、被検体のインフルエンザウイルス関連の疾患または病理学(例えば鳥インフルエンザ)を治療するまたは予防するために用いられる。抗体の製剤、好ましくは標的抗原に対する高い特異性及び高い親和性を有する抗体の製剤は被検体に投与され、通常、製剤が標的と結合することにより効果が発揮される。抗体の投与は、細胞へのウイルスの内部移行を無効にする、又は阻害する又は干渉することができる。この場合、抗体が標的と結合して、自然発生的なリガンドの結合部位をマスキングすることにより、ウイルスの細胞膜への融合を妨げて、ウイルスの内部移行を阻害する。
【0048】
本発明の抗体の治療上有効量は一般に、治療の目的を達成するために必要な量に関連している。上述したように、これは特定の場合において標的の機能に干渉する、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であってよい。必要な投与量は、さらに、特定の抗原に対する抗体の結合親和性に依存する、また、投与された抗体が、その抗体が投与される他の被検体の自由体積から減少する率に依存する。本発明の抗体又は抗体フラグメントの治療上有効量の一般的な範囲は、非限定的な実施例として、約0.1〜50mg/kgの体重であってよい。一般的な投与頻度は例えば一日2回から一週間に1回の範囲であってよい。
本発明の、特にインフルエンザウイルス・タンパク質と結合する抗体又はそのフラグメントだけでなく、本明細書に開示されるスクリーニング・アッセイによって特定される他の分子を、医薬組成物の形態で、インフルエンザウイルス関連の疾患の治療のために投与することができる。上記組成物の調製に関連する原理および考察だけでなく、構成要素の選択におけるガイダンスは、例えば、Remington: The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed. (Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub. Co., Easton, Pa., 1995; Drug Absorption Enhancement: Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends, Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994; and Peptide And Protein Drug Delivery (Advances In Parenteral Sciences, Vol. 4), 1991, M. Dekker, New Yorkにおいて提供されている。
抗体フラグメントが使用されるところでは、特に標的タンパク質のドメインと結合する最も小さい抑制フラグメントが好まれる。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列を結合する能力を保持するペプチド分子を構成することができる。上記ペプチド分子は、化学的に合成することができる及び/又は組み換えDNA技術によって生成することができる。(例えば Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)参照)。製剤はまた、必要に応じて治療中の特定の適応症の複数の活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する活性化合物を含むこともできる。代わりに又は加えて、組成物は、その機能、例えば細胞毒性薬剤、サイトカイン、化学療法剤または増殖抑制薬剤を強化する薬剤を含むことができる。上記分子は、意図する目的に効果的な量で好適に組み合わせられる。
【0049】
活性成分はまた、例えばそれぞれコロイド薬物送達系(たとえば、リポソーム、アルブミン微小球体、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、そして、ナノ・カプセル)又はマクロエマルジョン類のヒドロキシ・メチルセルロース又はゼラチン・マイクロカプセル及びポリ(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル等の、例えばコアセルベーション技術によって又は界面重合によって調製されたマイクロカプセルに封入することができる。
生体内投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、無菌の濾過膜を介した濾過によって、容易に達成される。
徐放性製剤を調合することができる。徐放性製剤の好適な実施例には、抗体(マトリックスが造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形である)を含んでいる固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。徐放性マトリックスの実施例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)、ポリ・ラクチド(米国特許第3773919号明細書)、Lグルタミン酸およびγエチルLグルタミン酸塩の共重合体、分解不能なエチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスティア)等の分解可能な乳酸グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸グリコール酸等のポリマーにより100日間以上の分子の放出が可能になるとともに、特定のヒドロゲルがより短い期間にタンパク質を放出する。
【0050】
本発明による抗体は、試料中のインフルエンザウイルス(またはタンパク質またはそのタンパク質フラグメント)の存在を検出するための薬剤として使用することができる。好ましくは、抗体は、検出可能な標識を含む。抗体は、ポリクローナル、より好ましくはモノクローナルであってよい。無傷の抗体、又はそのフラグメント(例えば、Fab、scFv又はF(ab)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識」は、直接標識化された別の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的な標識化だけでなく、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合する(すなわち、物理的に連結する)ことによるプローブまたは抗体の直接的な標識化を含む。間接的な標識化の実施例には、主要抗体を蛍光標識ストレプトアビジンによって検出できるように、第2の蛍光標識抗体とビオチンを有するDNAプローブの末端標識化を使用した主要抗体の検出が含まれる。用語「生物学的試料」は、被検体内に存在する組織、細胞及び体液だけでなく、被検体から分離される組織、細胞および体液を含む。したがって、用語「生物学的試料」の使用には、血液および血清、血漿またはリンパを含む血液の部分又は構成要素が含まれる。すなわち、本発明の検出方法は、インビボのみでなくインビトロで生物学的試料の被検体mRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出するのに使用することができる。例えば、被検体mRNA検出のインビトロ技術には、ノーザンハイブリダイゼーションと、インサイツハイブリダイゼーションが含まれる。被検体タンパク質検出の生体外技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降、及び免疫蛍光検査が含まれる。被検体ゲノムDNA検出のインビトロ技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。免疫アッセイを実施する手順は、例えばELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology”, Vol. 42, J. R. Crowther (Ed.) Human Press, Totowa, NJ, 1995; “Immunoassay”, E. Diamandis and T. Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, CA, 1996; and “Practice and Theory of Enzyme Immunoassays”, P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985に記載されている。さらに、被検体タンパク質検出のインビボ技術には、標識非被検体タンパク質抗体を被検体に導入することが含まれる。例えば、抗体は、被検体内での存在及び位置が標準撮像技術によって検出可能な放射性マーカーによる標識化が可能である。
【0051】
医薬組成物
本発明の抗体又は薬剤(また、本明細書において「活性化合物」とも称される)、及びその誘導体、フラグメント、類似体及び相同体は、投与に好適な医薬組成物に組み込むことができる。上記組成物は通常、抗体又は薬剤、及び薬学的に受容可能な担体を含む。本明細書で使用しているように、用語「薬学的に受容可能な担体」は、薬学的投与に適合する、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等浸透及び吸収遅延剤等が含まれる。好適な担体は、参照により本明細書に組み込まれる当技術分野における標準参照テキストである、Remington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。上記担体又は希釈剤の好適な実施例は、非限定的に、水、食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液および5%のヒト血清アルブミンを含む。不揮発性油等のリポソームおよび非水性ビヒクルを使用することもできる。薬学的活性物質に対する上記媒体及び薬剤の使用は当技術分野において公知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性化合物と適合しない場合以外は、上記媒体及び薬剤の組成物における使用が考察される。補助活性化合物を組成物に組み込むことも可能である。
本発明の医薬組成物は、意図された投与ルートに適合するように調合される。投与ルートの実施例には、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(すなわち局所の)、経粘膜、直腸投与等の非経口投与が含まれる。非経口、皮内、皮下投与に使用する溶液または懸濁液は以下の構成要素を含むことができる:例えば注射用の水、食塩液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の無菌の希釈剤;例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤;例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖等の張度調整用の酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩及び薬品等のバッファ。pHは例えば、塩酸又は水酸化ナトリウム等の酸または塩基によって調整可能である。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器又はガラス若しくはプラスチック製の複数回投与瓶に封入することができる。
【0052】
注射可能な用途に好適な医薬組成物には、無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性の)、又は分散液及び無菌粉が含まれる。静脈内投与については、好適な担体は、生理的食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において組成物は無菌であり、容易に注射針を通過できる程度に流動的でなければならない。組成物は、製造及び保管の条件下で安定しているべきであり、例えばバクテリア及び菌類等の微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)及びこれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であってよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合は必要な粒径を維持することにより、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により微生物の作用を防止することができる。多くの場合において、組成物中に等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注入可能な組成物の持続的な吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノコテアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることにより成すことができる。
無菌の注射可能な溶液は、必要に応じて必要量の活性化合物を上に列挙された成分を組合せた適切な溶媒に組み込むことによって調製することができ、その後フィルタ殺菌が行われる。通常、分散液は活性化合物を基本的な分散媒及び上に列挙したうちの必要な他の成分を含む無菌ビヒクルへ組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調整用の無菌粉の場合、調整の方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、この方法により、事前に無菌のフィルタ処理された溶液から、活性成分と任意の所望の添加成分の粉が生成される。
【0053】
経口用組成物は一般に、不活性希釈剤または食用の担体を含む。これらは、ゼラチン・カプセルに格納するまたは錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的で、活性化合物を賦形剤と合わせて、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で用いることができる。経口用組成物はまた、うがい薬として使用するために流体担体を使用して調整することができ、この場合流体担体の化合物は経口投与され、口内でかき回されて、喀出される又は嚥下される。薬学的に混合可能な結合剤、及び/又は補助材料を、組成物の一部として含むことができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか又は類似の性質の化合物を含むことができる:例えば微晶質性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン等のバインダ;例えば澱粉またはラクトース等の賦形剤、例えば澱粉またはラクトース、例えばアルギン酸、プリモゲル又はコーンスターチ等の崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム又はステローツ等の潤滑剤;例えばコロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;例えばスクロース又はサッカリン等の甘味剤;例えばペパーミント、メチルサリチレートまたはオレンジ香味料等の香味剤。
吸入による投与のために、化合物はエアロゾルスプレーの形態で、好適な噴霧剤、例えば二酸化炭素等のガスを含む加圧容器またはディスペンサ、又はネブライザーから送出される。
【0054】
全身投与はまた、経粘膜的又は経皮的手段によるものであってよい。経粘膜的又は経皮的投与には、浸透するべきバリアに対する適切な浸透剤が製剤中に使用される。この種の浸透剤は従来技術において一般に公知であり、例えば、経粘膜的投与には、洗剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は、鼻噴霧または坐薬の使用を通して行うことができる。経皮的投与には、活性化合物は、当技術分野で一般に知られているような軟膏、膏薬またはクリームに調合される。
化合物はまた、直腸送達のために、坐薬(例えば、カカオバター及び他のグリセリド等の従来の坐薬基剤によって)又は停留浣腸の形に調製可能である。
一実施形態においては、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル封入送達システムを含む、放出制御製剤等の体内からの急速な排出から化合物を保護する担体で調製される。例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の、生物分解性で生物学的適合性を有するポリマーを用いることができる。この種の製剤の調製方法は、当業者にとって明らかである。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticalsから市販されている。(ウイルス抗原にモノクローナル抗体を有する感染した細胞を標的とするリポソームを含む)リポソームの懸濁は、また、薬学的に受容可能な担体としても用いることができる。これらは、例えば、米国特許第4522811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0055】
経口又は非経口的組成物を投薬量単位の形態で製剤することは 投与の容易さ及び投薬量の均一性のために特に有利である。本明細書で使用される投薬量単位は、治療される被検体均一な投薬量として適した物理的に個別の単位を意味し、各単位は必要な薬学的担体に関連する所望の治療効果を生み出すように計算された活性化合物の所定量を含む。本発明の投薬量単位の形態の規格は、活性化合物の独特の特徴及び達成される特定の治療効果、及び個人の治療向けのこの種の活性化合物の当技術分野に特有の限界によって決定され、直接依存している。
医薬品組成物は、投与説明書と共に、容器、パックまたはディスペンサに含むことができる。
【0056】
スクリーニング方法
本発明は、モジュレータ、(本明細書においては「スクリーニング分析」とも称される)、すなわち変調するかまたはさもないと細胞膜へのインフルエンザウイルスの融合を調整する又はそうでなければ干渉する候補または試験化合物または薬剤(例えばペプチド、ペプチド模倣薬、小さい分子または他の薬)を識別する方法を提供する。インフルエンザ感染症を治療するのに役立つ化合物を識別する方法も提供されている。本発明はまた、本明細書において記載されているスクリーニング分析を使用して識別される化合物も含む。
例えば、本発明は、インフルエンザウイルス及び細胞膜の間の相互作用を調整するスクリーニング候補または試験化合物のための分析を提供する。本発明の試験化合物は、当技術分野で公知の組合せライブラリ法の多数の方法のいずれかを用いて得ることができ、組合せライブラリ法には:生物学的ライブラリ;空間的にアドレス可能な平行した固体位相または溶液位相ライブラリ;逆重畳積分が必要である合成ライブラリ法;「一ビーズ一化合物」ライブラリ法;及び親和性クロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリ法が含まれる。生物学的ライブラリ法はペプチド・ライブラリに限られる一方、その他の4つの方法は化合物のペプチド、非ペプチド・オリゴマー又は小さい分子ライブラリに適用可能である。(例えば Lam, 1997. Anticancer Drug Design 12: 145参照)。
【0057】
本明細書において使われる「小分子」は、約5kD未満及び最も好ましくは約4kD未満の分子量を有する組成物を指す。小さい分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、炭水化物、脂質または他の有機又は無機分子であってよい。例えば菌類、細菌、藻類抽出物等の化学及び/又は生物学的混合物のライブラリは、当技術技術で公知であり、本発明の任意の分析によってスクリーニングすることができる。
分子ライブラリの合成方法の実施例は、当技術分野において例えば:DeWitt, et al., 1993. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6909; Erb, et al., 1994. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 11422; Zuckermann, et al., 1994. J. Med. Chem. 37: 2678; Cho, et al., 1993. Science 261: 1303; Carrell, et al., 1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carell, et al., 1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; and Gallop, et al., 1994. J. Med. Chem. 37: 1233に見受けられる。
化合物のライブラリは溶液内に(例えばHoughten, 1992. Biotechniques 13: 412-421参照)、又はビーズ上に(Lam, 1991. Nature 354: 82-84参照)、チップ上に(Fodor, 1993. Nature 364: 555-556参照)、バクテリア(米国特許第5,223,409号明細書参照)、胞子(米国特許第5,233,409号明細書参照)、プラスミド(Cull, et al., 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-1869参照)、又はファージに(Scott and Smith, 1990. Science 249: 386-390; Devlin, 1990. Science 249: 404-406; Cwirla, et al., 1990. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 6378-6382; Felici, 1991. J. Mol. Biol. 222: 301-310; 及び米国特許第5,233,409号明細書参照)含まれることが可能である。
【0058】
一実施形態において、候補化合物は抗体-抗原複合体に導入されて、候補化合物が抗体-抗原複合体を崩壊させるかどうかを決定し、この複合体の崩壊は候補合成物がインフルエンザウイルスおよび細胞膜の間の相互作用を調整することを表す。例えば、抗体はモノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90およびH98であってよく、抗原はインフルエンザウイルスのHAタンパク質上に位置することができる。
別の実施形態では、少なくとも一つのHAタンパク質は形成され、このタンパク質は少なくとも一つの中和モノクローナル抗体に曝露される。抗体-抗原複合体の形成が検出され、一又は複数の候補化合物が複合体に導入される。抗体-抗原複合体が一又は複数の候補化合物の導入後に崩壊する場合、候補化合物は、例えば鳥インフルエンザ等のインフルエンザウイルス関連の疾患又は障害を治療するのに有用である。例えば、少なくとも一つのインフルエンザウイルス・タンパク質をインフルエンザウイルス分子として、供給することができる。
【0059】
抗原またはその生物学的に活性な部分に対する試験化合物の結合が、複合体の標識化合物を検出することによって決定できるように、試験化合物を放射性同位体または酵素標識に連結することにより、試験化合物の、抗体-抗原複合体を干渉するかまたは崩壊させる能力を決定することができる。例えば、試験化合物は直接又は間接的に、125I、35S、14CまたはHで標識化することができ、放射性同位体は電波放射の直接計数によって又はシンチレーション計数によって検出される。あるいは、試験化合物は例えば、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又は発光酵素で酵素的に標識化することができ、酵素的標識は、適切な物質の製品への転換の決定によって検出される。
一実施形態において、分析は、抗体-抗原複合体を試験化合物に接触させて、抗原と相互作用する又はさもなければ、既存の抗体-抗原複合体を崩壊させる試験化合物の能力を決定することを含む。本実施形態では、抗原と相互作用する又はさもなければ、既存の抗体-抗原複合体を崩壊させる試験化合物の能力を決定することは、抗原又は抗原の生物学的に活性な部分と優先的に結合する試験化合物の能力を決定することを含む。
【0060】
別の実施形態では、分析は、抗体-抗原複合体を試験化合物に接触させて、抗体-抗原複合体を調整する試験化合物の能力を決定することを含む。抗体-抗原複合体を調整する試験化合物の能力を決定することは、例えば、試験化合物の存在下で、抗体と結合する又は相互作用する抗原の能力を決定することによって達成可能である。
当業者は、本明細書において開示されるスクリーニング方法全てにおいて、抗原は、モノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90およびH98等のインフルエンザウイルス中和口外であってよい。さらに、抗原はHAタンパク質又はその一部であってよい。本明細書に記載された全ての分析において、モノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90およびH98とHAタンパク質との間の結合に干渉する候補化合物の能力は、候補化合物がインフルエンザウイルス及び細胞膜との融合に干渉するまたは調整することが可能であることを表している。さらに、HAタンパク質の細胞への結合は、細胞へのインフルエンザウイルスの侵入の原因となるため、上記候補化合物は、例えば鳥インフルエンザ等のインフルエンザウイルス関連の疾患または障害の治療にも役立つ。
【0061】
本願明細書に開示されるスクリーニング方法は、細胞に基づいた分析として又は無細胞分析として実行可能である。本発明の無細胞分析は、HAタンパク質とその一部の可溶形態または膜結合形態の両方の使用に修正可能である。HAタンパク質の膜結合形態を含む無細胞分析の場合、タンパク質の膜結合形態が溶液中に維持されるように、可溶化剤を用いることが望ましいことであり得る。上記可溶化剤の実施例には、例えばn−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton(登録商標)X−100、Triton(登録商標)X−114、Thesit(登録商標)、イソトリデシルポリ(エチレン・グリコール・エーテル)、N−ドデシル−−N、N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸塩(CHAPS)、又は3−(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸塩(CHAPSO)等の非イオン洗剤が挙げられる。
複数の実施形態において、以下の候補化合物の導入の一方または両方の非複合形態からの複合体の分離を容易にする抗体又は抗原を静止させると同時に、分析の自動化を図ることは、望ましいことであり得る。候補化合物の有無における抗体-抗原複合体の観察は、反応物を含むのに適した全ての容器にもおいて行うことができる。上記容器の実施例には、マイクロタイタープレート、試験管、及びマイクロ遠心分離管が含まれる。一実施形態では、タンパク質の一方または両方がマトリックスに結合することが可能になるドメインを加える融合タンパク質が提供可能である。例えば、GST抗体融合タンパク質またはGST抗原融合タンパク質はグルタチオンセファロースビーズ(ミズーリ州セントルイスのシグマケミカル社)又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上へ吸着することができ、その後試験化合物と結合し、この混合物は複合体形成(例えば、塩およびpHの生理的条件で)につながる条件下で培養される。培養後、ビーズ又はマイクロタイタープレートウェルは洗浄されて未結合の構成要素が全て除去され、ビーズの場合はマトリックスが固定化され、複合体が直接又は間接的に決定される。あるいは、複合体はマトリックスから分離可能であり、抗体-抗原複合体形成のレベルは標準の技術を使用して決定することができる。
【0062】
マトリックス上のタンパク質を固定化することの他の技術を、本発明のスクリーニング分析に用いることができる。例えば、抗体又は抗原は、ビオチン及びストレプトアビジンの共役を用いて固定化できる。ビオチン化抗体又は抗原分子は、当技術分野で公知の技術(例えばイリノイ州ロックフォードのピアスケミカル社のビオチン化キット)を使用して、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルプレート(ピアスケミカル社)のウェルにおいて固定化することができる。あるいは、対象の抗体または抗原と反応するが、対象の抗体-抗原複合体の形成には干渉しない他の抗体を、プレートのウェルに誘導体化させて、抗体コンジュゲートによってウェルに捕獲された抗体又は抗原を開放することができる。上記複合体を検出する方法は、GSTが固定化された複合体について上述したものに加えて、抗体又は抗原と反応する上記の他の抗体を使用する複合体の免疫検出を含む。
本発明は、更なる本発明は処理のために任意の前述したスクリーニング分析およびその使用によって識別される新規の薬剤さらに関連する。
【0063】
診断分析
本発明の抗体は、適切な分析、例えば従来の種類の免疫測定法によって検出が可能である。例えば、ある分析は、インフルエンザ・タンパク質(例えばHA1、HA2又はノイラミニダーゼ)又はそのフラグメントが固相に加えられる方法で実行することができる。培養は、試料中の抗体が固相上の固定化されたポリペプチドと結合することができるように、十分な期間維持される。この最初の培養後に、固相が試料から分離される。この固相は洗浄されて、試料中にも存在しえる未結合材料と例えば非特異的タンパク質等の干渉物質が除去される。ポリペプチドと結合した関心対象の抗体を含む固相は次に、第2の標識化抗体又はビオチンまたはアビジン等の結合剤と結合した抗体で培養される。この第2の抗体は、他の抗インフルエンザ抗体又は他の抗体であってよい。抗体の標識は、当技術分野において公知であり、放射性核種、酵素(例えばマレアート・デヒドロゲナーゼ、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ、ブドウ糖オキシダーゼ、カタラーゼ)、蛍石(フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコシアニン、フルオレカーミン(fluorescarmine))、ビオチンなどを含む。標識化抗体は固体で培養され、固相に結合される標識が測定される。これらの、及び他の免疫分析は、当業者によって容易に実行されることができる。
生体試料中のインフルエンザウイルスの有無を検出する実例となる方法は、インフルエンザウイルスの存在が生体試料において検出されるように、被検体から生体試料を得て、生体試料を本発明による標識化モノクローナル又はscFv抗体と接触させることを含む。
【0064】
本明細書で使用している、プローブ又は抗体に関連する用語「標識化」は、検出可能な物質をプローブ又は抗体に結合させる(すなわち物理的に連結させる)ことによってプローブ又は抗体を直接標識化することだけでなく、直接標識化された別の試薬との反応によるプローブ又は抗体の間接的な標識化を含む。間接的な標識化の実施例には、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができるように、蛍光標識された第2の抗体及びビオチンによるDNAプローブの末端標識化を使用した主要抗体の検出が含まれる。用語「生体試料」には、被検体内に存在する組織、細胞及び体液と同様に、被検体から分離された組織、細胞および生体液が含まれる。すなわち、本発明の検出方法は、生体外だけでなく生体内における生体試料のインフルエンザウイルスを検出するために用いることができる。例えば、インフルエンザウイルス検出の生体外技術は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降、及び免疫蛍光法を含む。さらに、インフルエンザウイルスを検出する生体内技術は、標識抗インフルエンザウイルス抗体を被検体に導入することを含む。例えば、抗体は、被検体の存在および位置が標準の撮像技術によって検出可能な放射性マーカーで標識することができる。
一実施形態では、生体試料は被検体からのタンパク質分子を含む。ある好適な生体試料は、被検体から従来の手段によって分離された末梢血白血球の試料である。
本発明はまた、生体試料におけるインフルエンザウイルスの存在を検出するためのキットを含む。例えばキットは:生体試料のインフルエンザウイルス(例えば抗インフルエンザscFv又はモノクローナル抗体)を検出することができる標識化合物または薬剤;試料中のインフルエンザウイルスの量を決定するための手段;及び試料中のインフルエンザウイルスの量を標準と比較するための手段を含むことができる。化合物または薬剤は、好適な容器にパッケージ化することができる。キットはさらに、キットを使用して試料中のインフルエンザウイルスを検出する説明書を含むことができる。
【0065】
受動免疫法
受動免疫法は、ウイルス疾患の予防および治療に対する効果的で安全な戦略であると判明した。(Keller et al., Clin. Microbiol. Rev. 13:602-14 (2000); Casadevall, Nat. Biotechnol. 20:114 (2002); Shibata et al., Nat. Med. 5:204-10 (1999); and Igarashi et al., Nat. Med. 5:211-16 (1999) 参照。各文献は参照することによって本明細書に組み込まれる。)中和ヒトモノクローナル抗体を使用した受動免疫法は、鳥インフルエンザ等のインフルエンザの救急予防及び治療のための緊急治療戦略を提供する一方で、代替的な、そして時間のかかるワクチン及び新薬の開発が進行中である。
サブユニットワクチンは潜在的に、従来の免疫原に勝る重要な利点を提供する。サブユニットワクチンは、従来の死菌又は弱毒化全病原体ワクチンの製造、配布及び配送特有の安全上の問題を回避する。さらにサブユニットワクチンは、承認された防御エピトープのみを含むように合理的に構成することができ、これにより、抑制Tエピトープ(Steward et al., J. Virol. 69:7668 (1995)参照)、又は効果のない非保護反応(例えば、「デコイ」エピトープ)を生じさせることによって免疫システムを破壊する、免疫優勢Bエピトープを回避する(Garrity et al., J. Immunol. 159:279 (1997)参照。
さらに、当業者は、多くの異なるウイルス、チャレンジ・ルートおよび動物モデルに対する生体外の抗体中和作用及び生体内での予防の間に良い創刊関係があることを認識する(Burton, Natl. Rev. Immunol. 2:706-13 (2002); Parren et al., Adv. Immunol. 77:195-262 (2001)参照)。本明細書において示されるデータは、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90及びH98ヒトモノクローナル交代を更に開発し生体内動物試験において試験して、インフルエンザの救急予防及び治療向けの良く効くウイルス侵入阻害剤としての臨床有用性を決定することができることを示している。
【0066】
ワクチンの抗体−Igキメラ
第1抗体が、免疫システムに対する抗原決定基の効果的な提示のための骨格として使用されて10年以上がたつ(Zanetti, Nature 355:476-77 (1992);Zaghouani et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:631-35 (1995) 参照)。ペプチドがIgG分子(例えば本明細書において記載されている11A又は256IgG1モノクローナル抗体)の一体部分として含まれるときに、ペプチド・エピトープの抗原性および免疫原性は遊離したペプチドと比較して非常に強化される。この種の強化は、おそらく抗原−IgGキメラの、それらの自然構造を模倣するより長い半減期、より良い提示、及び拘束配座に起因する。
さらに、抗原−Igキメラを使用することの更なる利点は、変数又は抗原−IgキメラのFc領域を使用して、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)のターゲッティングすることができる。今までは、重鎖可変遺伝子(V)の相補性決定領域(CDR)がB又はT細胞によって認識される様々な抗原ペプチドに置換される、組み換えIgが生成されてきた。この種の抗原−Igキメラは、体液及び細胞免疫反応の両方を誘発するために用いられてきた(Bona et al., Immunol. Today 19:126-33 (1998)参照)。
【0067】
CDR3ループに移植された特定のエピトープを有するキメラは、HIV−1 gp120 V3−ループ又はヒトCD4レセプタの第1の細胞外ドメイン(D1)に対する体液反応を誘導するために用いられてきた(Lanza et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11683-87 (1993); Zaghouani et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:631-35 (1995) 参照)。免疫血清により、HIV−1MN(抗−gp120 V3C)によってCD4 SupT1細胞の感染を予防する又はシンシチウム形成(抗−CD4−D1)を阻害することが可能であった。CDR2及びCDR3は同時にペプチド・エピトープと置換することができ、挿入されるペプチドの長さは最大19アミノ酸長にもなり得る。
あるいは、あるグループは、ペプチド抗原がIg一定の(C)領域のループで提示され、キメラの可変領域をB細胞の表層上のIgD又はB細胞、樹枝細胞(DC)及び大食細胞を含むプロフェッショナルAPC上のMHCクラスII分子をターゲッティングするために用いることができる「troybody」戦略を開発した(Lunde et al., Biochem. Soc. Trans. 30:500-6 (2002) 参照)。
抗原−Igキメラはまた、直接抗原をIgG分子のFc部分と融和させることによって生成することもできる。You et al., Cancer Res. 61:3704-11 (2001)は、この方法を使用して、非常に高いレベルの抗体からB型肝炎ウイルス核抗原までを含む特定の免疫反応の全てのアームを得ることができた。
【0068】
DNAワクチン接種
DNAワクチンは安定しており、抗原が自然に処理される機会を提供することができ、比較的長く続く反応を誘発することができる。非常に魅力的な免疫化戦略ではあるが、DNAワクチンの免疫反応を誘発する効力はしばしば非常に限られている。例えば樹枝細胞(DC)等のプロフェッショナルAPCによって注入されたDNAの取り込み不足が、上記限界の主な原因であり得る。抗原−Igキメラ・ワクチンと組み合わせて、DCの表層上のFcレセプタ(FcγR)の存在を利用する、APC抗原提示の促進に基づく有望な新規DNAワクチン戦略が報告された(Casares, et al., Viral Immunol. 10:129-36 (1997); Gerloni et al., Nat. Biotech. 15:876-81 (1997); Gerloni et al., DNA Cell Biol. 16:611-25 (1997); You et al., Cancer Res. 61:3704-11 (2001) 参照)。
抗原(Ag)−Igキメラをコード化するDNAワクチンを生成することは可能である。免疫処置においては、DNA分子を処理する細胞によってAg−Ig融合タンパク質が発現し、分泌される。分泌されたAg−Ig融合タンパク質は、B細胞反応を誘発すると共に、DC表層上のFcγRを有するFcフラグメントの相互作用によって捕獲され、取り込まれることが可能であり、これにより、効率的な抗原提示を増進し、抗原特有の免疫反応を大幅に促進する。機能性抗MHC II特異的scFv領域遺伝子を担持しているDNAコード化抗原−Igキメラはまた、同じ原理を適用して、免疫原をAPCの全3種類にターゲッティングすることもできる。免疫反応は、必要に応じて、生体外で生成される(すなわちプライム及びブースト)同じタンパク質抗原を使用して、さらに促進することができる。この戦略を使用して、インフルエンザウイルスの感染に対する特定細胞及び体液の免疫反応は、DNAワクチンの筋肉内(i.m.)注射によって達成された(Casares et al., Viral. Immunol. 10:129-36 (1997)参照)。
【0069】
ワクチン組成物
治療又は予防組成物は本明細書において提供されており、これらは一般に、一又は複数のモノクローナル抗体またはScFvの混合物及びこれらの組合せを含む。予防ワクチンは、インフルエンザウイルス感染を予防するために用いることができ、治療ワクチンは、インフルエンザウイルスに感染した人を治療するために用いることができる。予防的な使用には、ワクチンの接種対象者のインフルエンザウイルスに、増加した抗体価を供給することが含まれる。このように、インフルエンザにかかるリスクが高い被検体に、インフルエンザウイルスに対する受動免疫を付与することができる。
これらワクチン組成物は、補助免疫調節剤とともに投与することができる。例えば、非限定的にIL−2、変性IL−2(Cys125→Ser125)、GM−CSF、IL−12、γ−インターフェロン、IP−10、MIP1β、及びRANTESを含む、サイトカイン、リンフォカイン及びケモカインである。
【0070】
免疫化の方法
本発明のワクチンは、他の抗ウイルス・ワクチンよりも優れた免疫保護及び免疫療法特性を有する。
本発明は被検体の免疫化、例えば免疫反応を誘発する方法を提供する。被検体は、病原体外膜ウイルスの膜融合タンパク質を含む組成物を被検体へ投与することによって、免疫化される。融合タンパク質は、生物学的に適合したマトリックスで覆われている又は埋め込まれている。
融合タンパク質はグリコシル化され、例えば糖鎖を含む。糖鎖は、単糖類、一又は複数の二糖類、一又は複数のオリゴ糖類、一又は複数の多糖類又はそれらの誘導体(例えばスルホ又はホスホ置換された)の形であってよい。炭水化物は、直鎖状である又は分岐している。糖鎖は、ポリペプチドにN結合又はO結合している。N−結合グリコシル化はアスパラギン側鎖のアミド窒素へ、O−結合グリコシル化はセリン及びトレオニン側鎖のヒドロキシ酸素へ結合している。
糖鎖は、ワクチン接種を受けている被検体に対し内在性である。あるいは、糖鎖は、ワクチン接種を受けている被検体に対し外生的である。糖鎖は、ワクチン接種を受けている被検体のポリペプチドに通常発現しない糖鎖である。例えば、炭水化物半分は、植物特異的な炭水化物である。植物特異的な糖鎖は、例えばコア結合α1,3フコース又はコア結合1,2キシロースを有するN−結合型グリカンを含む。あるいは、糖鎖は、ワクチン接種を受けている被検体のポリペプチド又は脂質に発現する糖鎖である。例えば、多くの宿主細胞は、ヒト様糖付着品を有するヒトタンパク質を生成するために遺伝子操作が行われてきた。
【0071】
例えば、融合タンパク質は、三量体赤血球凝集素タンパク質である。任意に、赤血球凝集素タンパク質は、例えば植物細胞等の非哺乳類細胞において生成される。被検体は、ウイルス感染症を発症する又はウイルス感染症に苦しむ危険にさらされている。外膜ウイルスは例えば、エプスタイン・バーウイルス、単純疱疹ウイルス、1及び2型、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、8型、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス及び風疹ウイルスを含む。本明細書に記載した方法により、ウイルス感染の一又は複数の症状の重症度が軽減又は緩和される。感染症は、標準的な手順を使用する医師によって診断される及び又は監視される。予防接種が必要な被検体は、当技術分野で公知の方法によって識別される。例えば、被検体には、CDCのGeneral Recommendation on Immunization(51(RR02)pp1-36)に概説されているように予防接種が行われる。癌は例えば物理的な試験、生検、血液検査またはX線によって診断される。被検体は例えば、全ての哺乳類、例えばヒト、霊長類、マウス、ネズミ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、魚または鳥である。処置は、感染症の診断の前に行われる。あるいは、処置は診断後に行われる。
処置の効果は、特定の障害または感染症を診断する又は治療する全ての公知の方法に関連して決定される。障害の一又は複数の症状の緩和は、化合物が臨床的利点をもたらすことを示す。
【0072】
ワクチンの可能性のための抗原性タンパク質フラグメント(APF)の評価
体液性免疫を標的とするワクチン候補は、少なくとも3つの基準を満たさなければ成功しない:強い抗体反応(「免疫原性」)を引き起こさなければならない;それが引き起こす抗体の重要なフラグメントは、病原体(「免疫原性適合性」)と交差反応しなければならない;それが引き起こす抗体は、保護するものでなければならない。免疫原性が佐剤又は担体を使用してしばしば促進可能である一方で、免疫原性適合性及び(中和によって明白なように)保護を誘導する能力は、ワクチン構成要素としてのその抗原の成功を最終的に決定する抗原の固有特性である。
【0073】
免疫原性適合性の評価
「免疫原性適合性」は、病原体と交差反応する抗原によって誘導される抗体の一部として定義される(Matthews et al., J. Immunol. 169:837 (2002)参照)。これは、病原体と交差反応しない抗体を含む抗原によって誘導された全ての抗体の力価によって測定される免疫原性とは別のものである。不十分な免疫原性適合性は、おそらく今までペプチド・ワクチンの期待外れの実績に寄与してきた。抗体に高い親和性で結合し、高い抗体価を引き出すペプチドはしばしば十分な免疫原性適合性に欠くため、見込みのあるワクチン構成要素としては不合格である。したがって、インフルエンザ・ワクチン候補を選ぶ基準の一つとして、免疫原性適合性を含むことは重要である。
低い免疫原性適合性の一般的な理由は、一番短いペプチドの立体配座の柔軟性である。
具体的には、可撓性ペプチドは、患者からの抗体と良好に結合することができ、未投与の被検体において実質的な抗体価を導き出すことができる。しかしながら、ペプチドが多数の配座のレパートリを有する場合、それが未投与の被検体に引き起こす抗体の優位により、完全な病原体上の対応するネイティブエピトープと交差反応できない可能性がある。
短いペプチドのように、あるAPFは非常に可撓性である可能性があり、従って、ワクチンの構成要素としてはふさわしくない。最も免疫原性的に適切なAPFは、総タンパクの状況とは別に本質的に拘束されている自己折りたたみ型タンパク質サブドメインで構成される傾向にある。免疫原性適合性は主にAPF自体のものであって、反応する免疫システムのものではないため、最終的にはAPFはヒトにおいて作用しなければならないが、動物モデル(例えばマウス)において免疫原性適合性を評価することが可能である。
【0074】
APFによって達成される免疫原性適合性は、Matthews et al., J. Immunol. 169:837 (2002)に記載されたものに類似した手順で、精製されたスパイクまたは膜タンパク質を有する抗APF血清の免疫吸収によって評価される。IgGは、予防接種をされたマウスから採取された血清から精製される。精製され、ビオチン化されたタンパク質(マウスが予防接種された特定のAPFにより必要に応じて)は、マウスのIgGと混合されて、培養される。ストレプトアビジンでコーティングされた十分な量のセファロースビーズが次に添加され、全ての結合IgGとともに、ビオチン化されたタンパク質を全て捕捉する。ストレプトアビジンでコーティングされたビーズは、それぞれ、タンパク質に対する抗体が枯渇されたIgGを残す、マイクロ遠心分離機において13,000rpmの遠心分離によって除去される。偽免疫吸収は、ビオチン化されたBSAが偽吸収剤としてインフルエンザ・タンパク質と置換される以外は、同じように平行して行われる。
APFの免疫原性適合性を測定するために、吸収された抗体および偽吸収された抗体は、免疫APFに対するELISAにおいて並んで滴定される。ファージ提示NPLから選択されるAPFの親和性については、これらELISAの抗原が、精製されたAPF−GST融合タンパク質となる。哺乳類細胞提示NPLからの潜在的にグリコシル化されたAPFについては、これらELISAの抗原が、哺乳類細胞によって分泌され、プロテインAによって精製されたAPF−Fc融合タンパク質となる。偽吸収された抗体と比較して、吸収された抗体の抗APF滴定量の減少率により、APFの免疫原性適合性の量が得られる。
【0075】
治療方法
本発明は、インフルエンザウイルス関連の疾患または障害の(又はこれに感染しやすい)危険にさらされている被検体を治療する、予防的及び治療的な方法の両方を提供する。例えば、この種の疾患または障害は、鳥インフルエンザを含むが、これに限定されるものではない。
【0076】
予防方法
一態様では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体又はscFv抗体、あるいは本発明の方法にしたがって識別された薬剤を投与することによって、被検体のインフルエンザウイルス関連の疾患または障害を予防する方法を提供する。例えば、scFv及び/又はモノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90及びH98の治療上有効量を投与することができる。任意には、2つ以上の抗インフルエンザ抗体が同時投与される。
インフルエンザウイルス関連の疾患または障害の危険にさらされている被検体は、感染者と接触した患者、又は、何らかの他の方法でインフルエンザウイルスにさらされた患者を含む。予防薬剤の投与は、インフルエンザウイルス関連の疾患または障害に特有の症状の徴候が現れる前に行うことができ、これにより、疾患または障害が予防される、又は、その進行が遅らされる。
適切な薬剤は、本明細書に記載されているスクリーニング分析に基づいて決定することができる。代わりに又は加えて、投与される薬剤は、本発明の方法に従って識別されたインフルエンザウイルスを中和するscFv又はモノクローナル抗体である。
【0077】
治療方法
本発明の別の態様は、患者のインフルエンザウイルス関連の疾患または障害を治療する方法に関連する。一実施形態では、この方法には、疾患または障害を患っている患者に、インフルエンザを中和する薬剤(例えば、本明細書に記載されているスクリーニング分析によって識別される薬剤及び/又は本発明の方法に従って識別されるscFv抗体又はモノクローナル抗体)又は薬剤の組合せを投与することが含まれる。
【0078】
組み合わせ方法
本発明は、例えばHAタンパク質の同じエピトープと結合するD7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90及びH98等の2つ以上の抗体を投与することによって、患者のインフルエンザ関連の疾患又は障害(例えば鳥インフルエンザ等)を治療することを提供する。
【0079】
本発明は、請求項に記載されている本発明の範囲を制限しない以下の実施例において更に説明される。
【実施例】
【0080】
実施例1:一般的な方法
ファージ提示抗体ライブラリの選択のための様々なパニング抗原の発現及び調製
HA1 HA1は(A/Thailand/2(SP−33)/2004(H5N1)のN末端フラグメント(aa17−338)である。遺伝子は、コドン最適化し、C末端9アミノ酸タグ(C9−タグ:GTETSQVAPA)を有する融合タンパク質として発現させた。融合タンパク質HA1−C9は、293T細胞において一時的に発現させ、分泌されたタンパク質は親和性クロマトグラフィによって上澄みから精製した。HA1−C9の精製のために、抗C9抗体1D4(国立細胞培養センター)に共有結合的に結合するプロテインAセファロースを使用した。
三量体HA0 前述したプロトコル33を適応させることにより、A/Viet Nam/1203/2004の赤血球凝集素(HA)遺伝子の細胞外ドメイン(HA0)を昆虫細胞において融合タンパク質として発現させた。このコンストラクトは三量体化構造を安定させるためのバクテリオファージT4フィブリチンからのC末端三量体化「フォールドン」シーケンスと、その後にトロンビン・サイト及びHis6タグを含む。融合タンパク質のcDNAは、バキュロウイルス移入ベクター、pAcGP67A(マサチューセッツ州ベッドフォードのBDバイオサイエンス社)にクローニングし、組み換えタンパク質の効率的な分泌を可能とした。9×10細胞は、ウイルス株によって感染した。感染3日後に細胞を沈降させ、そして、上澄みは6mlのNi−NTAビーズ(カリフォルニア州バレンシアのQiagen社)で培養した。ビーズは、10mMのイミダゾールを有するTBS緩衝液(10mMのTris.HCl/80mMのNaCl、pH8.0)で洗浄し、250mMのイミダゾールを有するTBSによって溶出させた。溶出させたHA5タンパク質は、TBS緩衝液で透析処理して、Mono Q HR10/10カラム(ニュージャージー州ピスカタウェイのGEヘルスケア社)を使用したイオン交換によって更に精製した。精製したHA5を終夜トロンビンによって消化させた。HA0三量体の完全性及び性質は、ゲル濾過(Superdex 200カラム)及びSDS−PAGEを使用して調べた。
【0081】
ファージ抗体ライブラリの選択及びH5に対する抗体のスクリーニング
57人のワクチン接種を受けていない提供者のB細胞から構成される2つのヒト非免疫性scFvライブラリ(合計2.7×1010メンバー)を、精製されたHA1又は三量体HA0に対するscFvsの選択のために用いた。各々のライブラリから調製される5×1011pfuのファージ−scFvsを、別々に、10μgのHA1又はHA0でコーティングされたイムノチューブ(イリノイ州ネーパービルのヌンク社)で培養した。選択手順は前述したのと同じであった。選択手順を2回繰り返した後で、ランダムに選択した単一のファージ−scFvクローンを前述したように、酵素免疫吸着法(ELISA)によってHA1又はHA0への特異結合のためにスクリーニングした。>1.0のA450値を有するHA1又はHA0と結合したクローンは陽性として記録し、その一方で負のクローンの値は<0.1であった。HA1又はHA0特異結合クローンについては、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の遺伝子を配列決定し、それらの対応するアミノ酸配列は、抗体を更に特徴づけするために異なる配列で識別するように整列配置した。
【0082】
可溶なscFv−Fcs及び完全長ヒトIgG1の発現及び精製
ファージ・ライブラリを作製するのと同じ方法を使用して、中和分析のために個々のクローンのファージ−scFvsを生成した。ファージ粒子は、PEG/NaCl沈殿を利用して25倍に濃縮した。前述したように、scFv−Fcs及び完全ヒトIgG1sを生成した。簡単に言うと、選択されたscFvsを、scFvを、ヒトIgG1のCH2及びCH3領域を含むが、CH1を欠くヒンジを含むFc発現ベクターpcDNA3.1−Hingeへサブクローニングすることによって、scFv−Fcsへ変換した。完全ヒトIgG1については、scFvのVH及びVL遺伝子のフラグメントを、ヒトIgG1カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖発現ベクター、TCAE5又はTCAE6へ別々にサブクローニングした。scFv−Fcs又はIgG1は、一時的な移入によって293T又は293F細胞(インビトロゲン)において発現させ、タンパク質Aセファロース親和性クロマトグラフィによって精製した。
【0083】
表層プラズモン共鳴(SPR)分析
組み替え型HA0(VietNam1203/04)三量体に結合するH5 HA Mabsの動態分析を、Biacore T100(Biacore)上で25℃で行った。抗ヒトIgG Fc抗体(Biacore)を、アミン結合キット(Biacore)を使用して、アミン結合によってCM4センサチップの個々のフローセル表面に、共有結合的にコーティングを施した。HA Mabを、Mab−HA0結合が均一の1:1ラングミュア相互作用として行われるように、HBS緩衝液(Biacore)において10ul/分の流動率で抗ヒトIgG Fc表面上で捕捉させた。HA0は、HBS緩衝液において30ul/分の流動率、及び0.31〜20nMの範囲の濃度で、各フローセルを通して注入した。緩衝注射は、負の制御として機能した。全ての実験には付加的な抗ヒトIgG Fc抗体コントロール表面を含め、緩衝屈折指標の変化を考慮し、またHA0と抗ヒトIgG Fcの間の潜在的な非特異性相互作用を検査した。各々の会合及び解離サイクルが完成したときに、表層は、3M MgCl溶液によって再構成した。会合速度(ka)、解離速度定数(kd)及び親和定数(KD)は、Biacore T100評価用ソフトを使用して算出した。各適合度は、実験データ及び算出された適合との一致に基づいており、ここで、Chi値は1.0未満であった。HA0に対するMabの表面密度は、質量移動を最小限に抑え、親和効果の寄与を完全になくすために最適化された。本明細書で報告される全てのka、kd、KDは、3つの実験の手段及び標準誤差を表す。
【0084】
ウイルス及び細胞
A/Ann Arbor/6/1960(H2N2)の低温適応ワクチン株だけでなく、野生型インフルエンザA/Vietnam/1203/2004(H5N1;H5−VN04)型、A/HongKong/483/1997(H5N1;H5−HK97)型、A/Netherlands/219/2003(H7N7;H7−NL03)、及びA/Ohio/4/1983(H1N1;H1−OH83)ウイルスは、WHO世界インフルエンザサーベイランスネットワークから入手し、アレキサンダー・クリモフ氏(米国アトランタのCDC)によって提供された。H1−PR34及びメイディン・ダービー犬の腎臓(MDCK)細胞は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から入手し、10%のウシ胎仔血清を有するダルベッコ変法イーグル培地において増殖させた。ウイルスの伝染力は、MDCK細胞のプラーク分析で判定した。活野生H5N1型ウイルスは、米国農務省の選択物質プログラム(http://www.cdc.gov/od/ohs/biosfty/bmbl5/bmbl5toc.htm)によって要求される強化を含む、バイオセーフティレベル3の格納容器内で取り扱った。
【0085】
HA−偽型ウイルスの中和分析
プラスミド及びコンストラクト
A/Thailand/2(SP−33)/2004(H5N1))の全長HA遺伝子、H5−SP33、及びA/Vietnam 1203/2004のノイラミダーゼ遺伝子、N1をコドン最適化し、pcDNA3.1ベクトルへクローン化して、pcDNA3.1−H5−SP33及びpcDNA3.1−N1発現プラスミドを別々に生成した。pCAGGS−H1(SC)プラスミドコード化A/South Carolina/1/1918(H1N1)全長HAタンパク質は、P.Palese博士(米国シナイ山医学部)によって、好意で提供された。pCAGGS−H1(PR)プラスミドコード化A/Puerto Rico/8/34 (H1N1) HAタンパク質は、M. Farzan博士(米国ハーバード・メディカル・スクール)からの寛大な贈り物である。
【0086】
HA−偽型ウイルスの生成
H5−SP33、H1−SC/1918又はH1−PR/34によって偽型化されたH5N1又はH1N1のsingle-roundHIV発光酵素リポータ・ウイルスを、pcDNA3.1−H5−SP33、HIV−1 Gag−PolをコードするHIVパッケージ化ベクターpCMVΔR 8.257、HIV−1 LTR制御下にHIV−1ホタル・ルシフェラーゼリポータ遺伝子をコードするトランスファーベクターpHIV−Luc、発現プラスミドpcDNA3.1−N1の4つのプラスミドによる293T細胞の同時移入により作製した。36時間の移入後に、ウイルス上澄みを採取し、4℃で保管した。
【0087】
中和分析
細胞を導入する前に、H1−SC/1918又はH1−PR/34F偽型ウイルスのウイルス上澄みを、16μg/mLの TPCK処理トリプシンで25℃で1時間培養し、次に1:1(V/V)の比率のトリプシン中和溶液(TNS、Cambrex)で中和した。試験抗体又は血清は、RTにおいて30分間、十分な量のH5−SP33偽型又はトリプシン処理H1偽型ウイルスで培養した。混合物はその後、96ウェルプレートの293T細胞に加えて、48時間培養を継続した。ウイルス侵入レベルは、マイクロプレート照度計で標的細胞のルシフェラーゼ活性を測定することによって評価した。
【0088】
抗体8、10及び66のエピトープ・マッピング
プラスミド及びコンストラクト pcDNA3.1−H5−SP33、pCAGGS−H1(SC)及びpCAGGS−H1(PR)は、上に説明したのと同様である。A/FPV/Rostock/34(H7N1)のHAタンパク質をコード化するpCAGGS−H7(FPV)は、X.ヤン博士(ベス・イスラエルディーコネス医療センター)によって、好意的に提供された。pcDNA3.1−H5−SP33又はpCAGGS−H7(FPV)の変異体は全て、QuikChange方法(ストラタジーン)によって作製した。抗H5抗体のHA発現細胞への結合のフローサイトメトリー分析である。H1、H5又はH7のプラスミドを発現している様々な完全長野生型HA及びHA変異体を、293T細胞に一時的に移入した。移入の48時間後に、抗H5抗体(10ug/ml)は4℃において、移入された293T細胞と共に1時間培養した。次に細胞を、0.5%のBSA及び0.1%のNaN3を含むPBSで3回洗浄した。HA移入細胞に結合する抗H5抗体を検出するために、FITC標識ヤギ抗ヒトIgG(ピアス)を第2の抗体として使用して、細胞とともに30分間4℃で培養した。細胞を上記したように再度洗浄し、CellQuestソフトウェアを有するBecton Dickinson FACScaliber with CellQuest softwareを使用して分析した。
【0089】
マイクロ中和分析
本方法は、前述したように48行った。簡単に説明すると、ウイルスのTCID50(半組織培養感染量)を、96−ウェル組織培養プレートにおいて等しい容量の抗体貯蔵液(1mg/ml)のlog2希釈剤と混合し、37℃で1時間培養した。指示薬MDCK細胞(1.5×10細胞/ウェル)をプレートに加えて、37℃で20時間で培養した。エンドポイントを確立するために、細胞単分子層を次に、アセトンに固定されたPBSで洗浄し、ウイルス抗原をインフルエンザA型NP(A−3、Accurate)に対するmAbを有する間接的なELISAによって検出した。
【0090】
プラーク減少分析
A/Viet Nam 1203/2004(H5N1)又はA/Netherland/219/03(H7N7)ウイルス(10,000pfu)を、抗H5 scFv−Fcsで、37℃で30分間、3つの異なる濃度100ug/ml、10ug/ml及び1ug/mlで培養した。ウイルス−抗体混合物を、12−ウェルプレートのMDCK細胞単分子層に移して37℃で1時間培養し、その後細胞を洗浄し寒天で覆った。4日間の培養後に寒天の覆いを廃棄し、斑をクリスタル・バイオレットに染色して視覚化した。
【0091】
赤血球凝集阻止(HI)分析
鳥インフルエンザウイルスは、優先的にN−アセチルノイラミン酸α2,3−ガラクトース(α2,3Gal)を含むシアル酸レセプターと結合するが、ヒトウイルスは優先的にN−アセチルノイラミン酸α2,6−ガラクトース((α2,6Gal)結合を含むシアル酸レセプターと結合する。レセプター特性の分子基礎は、ウイルスHAの複合的な残留物でおそらく測定される。赤血球凝集阻止(HI)試験は、インフルエンザ赤血球凝集素に対する抗体反応を評価する、単純で広く使われている方法である。スティーブンソン氏他は、ウマ赤血球を使用することにより、結合に利用可能なα2,3Gal結合の比率を増やすことによって、赤血球凝集分析の感度が改善されたと報告している。加えて、HI分析の滴定濃度は、マイクロ中和分析の滴定濃度と良好に相関した。偽型ウイルスは、説明したようにウマ赤血球の赤血球凝集を使用して、最初に滴定される。最初のハイスループットスクリーニングは同様に、ウマ赤血球懸濁液を使用し、滴定されたH5/N1ウイルスのHIエンドポイントを阻害するファージ抗体の能力を分析することによって行われる。H5N1リポータ・ウイルス侵入及びHIを抑制するためのより詳細な第2のスクリーニングは、一時的に移入された293T細胞によって生成しタンパク質Aビーズによって精製された可溶scFvFcタンパク質で用量反応研究を使用して行われる。
【0092】
ウイルス結合抑制分析
0.5×10の293T細胞を、抗H5 mAb、コントロールmAbの存在下、または抗体のない状態で、H5−TH04−偽型HIVウイルス(p24のおよそ500ng)とともに、0.5%のBSA及び0.02%のNaNを含むPBS緩衝液において4℃で培養した。1時間培養した後に、細胞を遠心沈殿させた。上澄みを採取して、HIV−1 p24CA捕捉ELISAキット(NCI、フレデリック、NIH)を使用し、未結合のウイルスを定量化した。細胞を次に1又は2回洗浄して、同様の方法を使用して細胞結合ウイルスを定量化するために溶解した。
【0093】
細胞融合抑制分析
(6つのウェルプレートにおいて融合性が最高90%の)293T細胞に、リポフェクタミン2000(インビトロゲン)を使用して4:1の比率(DNA/ウェル合計3μg)で、pcDNA3.1−H5−TH04プラスミド及びpcDNA 3.1−N1を移入させた。トランスフェクションの6時間後に培養基に1mlの抗H5、制御又は模擬mAbsを追加し、細胞を36時間培養した。細胞を位相差顕微鏡でシンシチウム形成について観察した。顕微鏡写真は10xの倍率で撮影した。
【0094】
パニングのための様々なHAタンパク質の発現及び調製
HA1は、H5N1 A/Thailand/2(SP−33)/2004(H5−TH04)のHAのN末端フラグメントであり、残留物は11〜325である(H3ナンバリング)。遺伝子をコドン最適化して、C末端9アミノ酸タグ(C9−タグ:GTETSQVAPA)を有する融合タンパク質として発現させた。融合タンパク質HA1−C9を一時的に293T細胞において発現させ、トランスフェクションから48時間後に上澄み中の分泌タンパク質を回収し、抗C9抗体1D4(国立細胞培養センター)と共有結合的に結合したタンパク質Aセファロースを使用した親和性クロマトグラフィによって上澄みから精製した。H5−VN04のHA0タンパク質を生成する方法は、furin-開裂のためのbaculovirus重感染がない以外は、下記に記載するH5−F10複合体の結晶化の方法と同様である。
【0095】
ELISA
0.2μgの純粋なH5 HAタンパク質を2μg/mL含むPBSにて96ウェルMaxisorb ELISAプレート(Nunc, NY)を4℃で終夜をかけてコートした。プレートをPBSにて3回洗浄し、コートしていないタンパク質を除去した。通常のELISAのために、1μg/mLの抗H5 scFv−Fcの後にHRP−抗ヒトIgG1を用いて、H5 HAタンパク質への抗H5 scFv−Fcの結合を検出した。競合ELISAのために、50μL(1012pfu)の抗H5ファージ−scFvを、5μg/mLの抗H5 scFv−Fcと混合し、H5-VN04 HAコートELISAプレートに適用した。HA0に対するファージ−scFvの結合についてのscFv−Fcの競合は、HRP−抗M13を用いたファージ−scFvの残りの結合を測定することによって決定した。ペルオキシダーゼテトラメチルベンジジン(TMB)基質システム(KPL, Gaithersburg MD)の培養の後に450nmの光学濃度を測定した。
【0096】
H5−F10複合体の発現、精製および結晶化
単鎖(VH−リンカー−VL)F10(scFv)をコードする遺伝子を、N末端周辺質分泌シグナルpelBおよびC末端6xHisタグを含むpSynIベクターにクローニングした。F10 scFvは、0.5mMのIPTGと15時間おき、25℃の0.1%グルコース(w/v)を含む2YT培地中でXL10細胞において発現させた。タンパク質は、始めに製造業者の指示に従ってHisbind Ni-NTA(Novagen)にて、次いで50mM トリス-HCl、0.5M NaCl、pH8のSuperdex200(Amersham Biosciences)にて精製した。
既に記載されているプロトコール6を用いて、H5-VN04 HA遺伝子の外部ドメインを融合タンパク質として昆虫細胞において発現させた。このコンストラクトは、三量体構造を安定させるためのバクテリオファージT4フィブリチンのC末端三量体形成「foldon」配列と、その後にトロンビン部位およびHis6タグを含む。融合タンパク質のcDNAを、バキュロウイルス導入ベクターであるpAcGP67A(BD Biosciences, Bedford, MA)にクローニングし、組み換えタンパク質を効率よく分泌させた。十分に切断されたHA(HA1−HA2三量体)を得るために、sf9細胞を、経験的に得られた比率のHA0およびフューリンのバキュロウイルス系統と共に同時感染させた。フューリンcDNAは、Dr. Robert Fuller (University of Michigan)からの贈り物であった。感染の3日後に、細胞を遠心にかけ、上清をNi-NTAビーズ(Qiagen Inc., Valencia, CA)と共にインキュベートした。ビーズは、10mM イミダゾールを有するTBSバッファ(10mM Tris.HCl、80mM NaCl、pH8.0)にて洗浄し、250mM イミダゾールを有するTBSにて溶出した。溶出したH5タンパク質は、TBSバッファに対して透析し、さらにMonoQ HR10/10カラム(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を用いたイオン交換によって精製した。精製されたH5は終夜をかけてトロンビンによって消化させ、さらにTBSバッファのSuperdex200カラムにて精製した。
H5−F10複合体は、2つの精製した構成成分を混合することによって形成され、TBSバッファのSuperdex200にて単離した(補足図1b)。ピークの分画をプールし、およそ11mg/mlに濃縮した。H5三量体の完全性は、ゲルろ過法(Superdex200カラム)およびSDS-PAGEを用いて調べた。結晶は22℃の懸滴蒸気拡散法にて大きくした。2μLのH5−F10を、等しい体積の12.5%PEG 1K、25%エチレングリコール、100mM トリス、pH8.5と混合した。結晶は液体窒素にて急速冷凍し、データ採取した。
【0097】
H5−F10複合体の共結晶化
H5−F10の共結晶化のために、F10を大腸菌において発現させ、Ni-NTAおよびゲル濾過によって精製した。H5は、H5及びフューリンバキュロウイルス系統の共感染によりsf9細胞において発現させ、Ni-NTA、陰イオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィにて精製した。H5−F10複合体は、H5を過剰量のF10と混合することによって得、ゲル濾過にて単離した。結晶は、22℃の懸滴蒸気拡散法を用いて、2μLの複合体(およそ11mg/ml)を、等しい体積の12.5%PEG 1K、25%エチレングリコール、100mM トリス、pH8.5と混合することによって大きくした。結晶構造は、分子置換(Molecular Replacement)による3.2Å分解能で測定し、優れた幾何学を有する0.29のRFREEに精密化した。
【0098】
データ採取、構造決定および分子構造精密化
X線回折データは、Stanford Synchrotron Radiation Laboratory(SSRL)ビーム−ライン7.1および9.2で採取した。データは、XDSおよびHKL2000パッケージにて処理した。
H5−F10複合体の構造は、探索モデルとして、H5(A/Vietnam/1194/04;PDBコード2IBX)の構造とSARS nAb 80R(PDBコード2GHW)のscFv構造を使用したPHASERによる分子置換によって測定した。scFv構造相同モデルをWHATIF9にて構築した。非対称性ユニットは2つのH5三量体および6つのF10分子を含む。
分子置換の溶液は、CootおよびXtalviewによる手動モデル再構築とCNSにおける模擬アニーリングを有するプログラムREFMAC5による数ラウンドの分子構造精密化に用いた。最終モデルは、6つのHAコピーについてそれぞれ506/503/503/496/495/496残基、各nAb10について233残基、24のN−アセチル−d−グルコサミンおよび6 β−d−マンノース、0の水分子を含む。幾何学的なパラメータは、PROCHECKおよびRampageにて評価した。
【0099】
H5に対するhMabによるマウスの保護
すべてのマウス実験は、CDC動物保護と使用委員会にて承認されるプロトコールに従って、USDAおよびCDC 公認の生物学的安全性レベル3(BSL3)動物施設において実施した。雌8〜10週齢のBalb/Cマウス(1群につき5匹)をすべての実験に用いた。すべての群について、マウスを2週間観察し、加重させ、死亡を毎日確認した。
予防的マウス研究。10mg/kgおよび2.5mg/kg53の2用量の3つのhMab(D8-IgG1、F10−IgG1およびA66-IgG1)又はコントロールhMab 80R−IgG1をマウスの腹膜内に投与した(i.p.)。hMab投与の24時間後に、すべてのマウス群を、軽い麻酔下で、10MLD50(50%のマウス致死量)ウイルス用量のA/Vietnam/1203/04(H5N1)又はA/HK/483/97(H5N1)を鼻腔内投与(i.n.)することにより抗原刺激した。
治療的マウス研究。マウスは、始めにA/Vietnam/1203/04(H5N1)又はA/HK/483/97(H5N1)の10MLD50にてi.n.感染させた。次いで、10mg/kgのH5に対する3つのhMabまたはコントロールhMabを、A/Vietnam/1203/04(H5N1)感染の24、48および72時間後にマウスに腹腔内投与した。A/HK/483/97(H5N1)感染マウスでは、hMabをウイルス抗原刺激の24時間後にのみ注入した。
【0100】
抗H5ファージ抗体の同定。
HA1に対する抗体。精製した組み換えHA1を用いて、2つの非免疫性ヒトscFvライブラリから別々に抗体を選択した。HA1について2ラウンドの選別の後、ELISAによってスクリーニングされた96のうち58のクローンは、HA1特異的なポジティブクローンであった。58のHA1ポジティブクローンの配列決定分析によって、3つの固有の抗HA1 scFvが同定された(38Bおよび1C)。同種の選別およびスクリーニング実験を繰り返した。新規なクローンは同定されなかったが、上記と同じ3つのscFvが得られた。2Aのアミノ酸配列を図4に示す。
H5の外部ドメイン(HA0)に対する抗体。精製した組み換え三量体HA0を用いて、HA1について使用したのと同じ抗体ライブラリを選択した。HA0について2ラウンドの選別の後、ELISAにより、HA0特異的結合について合計392のクローンがスクリーニングされた。97のクローンはHA0タンパク質を特異的に認識した。配列分析によって10の固有の抗HA0 scFv(7、8、10、17、40、66、80、88、90および98)が同定された。6の異なるVHと10の異なるVL遺伝子が明らかとなった(いくつかのscFvは同じVH遺伝子を共有していた)。6のうち5の異なるVHは、一つの遺伝子ファミリ、IGHV1−69に属する。VL遺伝子はVH遺伝子より非常に多様であり、10のうち3つのVLはカッパ鎖である。(図4)。
【0101】
確実な単回ラウンドレポーターウイルスシステムの確立
H5-SP33、H1−SC/1918又はH1−PR/34によって偽型化したH5N1又はH1N1の単回ラウンドHIVルシフェラーゼレポーターウイルスは、pcDNA3.1-H5-SP33、HIV−1 Gag−PolをコードするHIVパッケージベクターpCMV R8.2、HIV−1 LTRのコントロール下にホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードしている導入ベクターpHIV-Luc、及び発現プラスミドpcDNA3.1-N1である4つのプラスミドにより293T細胞を共形質移入することによって作製した。形質移入の36時間後、ウイルス上清を回収し、4℃に保存した。HA0偽型ウイルスの力価は293T細胞を感染させて、測定した。偽型ウイルスを作製する形質移入においてN1発現プラスミドを含めることにより、H5偽型ウイルスの力価が劇的に増加しうる。H5偽型ウイルスの適切な行動はH5N1(A/VietNam/2004)に対するフェレット免疫血清を使用して調べた。これらのウイルスは抗血清によって強力に中和されうるが、出血前(pre-bleeding)血清によっては中和されない。ゆえに、中和抗体の効率的なスクリーニングのために、確実な単回ラウンド高効率レポーターウイルスシステムが確立した。
【0102】
実施例2:H5-SP33により偽型化されたウイルスを用いたH5N1に対する中和抗体の同定とマイクロ中和アッセイ
偽型化されたウイルスを用いた中和アッセイの結果。
抗H5抗体の二価のscFvFcを産生し、HA0−偽型ウイルスに対する中和活性について試験した。我々は、2Aが中程度の中和抗体であり、38Bおよび1Cが中和抗体でないことを発見した(データは示さない)。以下に示す他のアッセイ(エピトープマッピング)のための有用な抗HA試薬として2A抗体を用いた。HA0三量体を標的として使用して、我々はHA0に対する10の新規な固有の抗体を同定した。これらのAbは、我々の研究室において最近設けられた新しいハイスループットファージ-scFvスクリーニング法を用いて、中和活性についてスクリーニングした。簡単にいうと、個々のクローンのファージ-scFvを、直接中和アッセイに用いて、その後すぐに96ウェルプレートにおいてポジティブクローンについてELISAによってスクリーニングした。この計画では、中和活性は48時間でみられるであろう。こうすることによって、我々は、時間を要する可溶性Abのサブクローニングと発現の工程を回避する。
図に示されるように、ファージ-scFvによって示された中和Ab(図6の上段左パネル)は、可溶性scFvFc Abにて確認した場合に強力に中和していることがわかった(図6の上段真ん中パネル)。ファージ-scFvによってスクリーニングされた10すべての抗体は強力な中和Abである。また、我々は、10のうちの3つの抗体(D8、F10およびA66)を完全長ヒトIgG1に変換したところ、H5-SP33偽型ウイルスにも強力な活性がみられた(図6の下段左パネル)。また、3つの抗体はH1N1を交差中和した。H1−SC/1918の強力に中和された菌株(図6の下段左パネル)およびH1−PR/34の中程度に中和された菌株(図6の下段右パネル)。
【0103】
マイクロ中和アッセイの結果。図6の上段右パネルに示されるように、10の抗H5抗体は異なるレベルの中和を表した。F10−Fc、A66-Fc、E88-FcおよびE90-Fcは最も強力な阻害薬であるようであり、10ug/mlで10000pfuウイルスの95%以上、そして1ug/mlで50%以上を中和する。また、我々は、10ug/mlまたは1ug/mlのこれら4つの抗体に100pfuを用いた場合に完全なプラーク減少を観察した(データは示さない)。
10の抗体(scFv−Fc)は、この場合クレイド1ウイルス、A/Thailand/2−SP−33/2004(H5N1)のH5偽−ウイルス(表面にH5を提示するHIV−1コアのみを有するウイルス様粒子)(「H5-TH04」)を中和することが明らかとなった。また、10すべての抗体は、ストリンジェントなプラーク減少アッセイ(図9)においてH5-VN04(クレイド1)およびA/Indonesia/5/2005(「H5-IN05」、クレイド2.1)ウイルスに対して高いが異なるレベルの中和を示したことから、中和エピトープ(一又は複数)は異なるH5クレイド間で保存されていることが示唆される。しかしながら、いずれのAbもグループ2ウイルス、HPAI H7N7株、A/Netherlands/219/03(H7N7)(H7-NL03)を中和しなかった(図4)。
10すべてのnAbが三量体H5を結合し、互いに対して交差競合したことから(図16)、これらのnAbはオーバーラップするエピトープを認識することが示される。この発見とVH配列多様性および中和作用強度に基づいて、3つのnAb(D8、F10およびA66)が選択され、完全長ヒトIgG1に変換した。3つすべてのnAb IgG1は、高い親和性(Kdおよそ100〜200pM)および非常に遅い解離速度(kdおよそ10−4−1)で、インビトロで組み換えH5(H5-VN04)に結合した(図17)。
【0104】
実施例3:BIAcore T-100を用いることによるD8-IgG1、F10−IgG1およびA66-IgG1に対するHA0(A/Vietnam1203/04のHAの外部ドメイン)の結合の動態学的特徴づけ
Mabは抗ヒトIgG1によりCM4チップに捕獲させ、様々な濃度(20、10、5、2.5、2.5、1.25、0.625nM)の三量体HA0をチップ表面に注入した。結合動態は、1:1ラングミュア結合モデルを使用して評価した。記録された結合曲線(ブランク比較対象を減算したもの)を黒で、算出カーブを赤で示す。すべてのka、kd、KDは、3回の実験の平均と標準誤差を表す。我々は、Biacore T100およびBiacore T100評価用ソフトウェアを使用して、1:1ラングミュアモデルにフィッティングさせることによって、3つの抗HA MAbの動態学的速度および親和定数を決定した。下記の図に示すように、D8およびF10では類似したka、kdおよびKDが観察され、A66はその他2つの抗体より相対的に速い解離速度のため、8および10より1.8倍低いKDを有していた。MabとHA0との複合体は安定しており、これは非常に遅い解離速度(8.8±1.1×10−5−1〜1.8±0.3×10−4−1)とpMレベルでH5三量体との高い親和性結合により示された。(図7)
【0105】
実施例4:抗H5抗体の予防的および治療的効果
H5N1およびH1N1ウイルス感染に対するヒトnAbの予防効果を、BALB/cマウスモデルにおいて評価した。マウスは、致死的ウイルス抗原刺激の前又は後に異なる用量のnAbにて処置した。
予防効果(図7、b、g及びh)。マウスは、10半致死量(MLD50)のH5N1又はH1N1の鼻腔内投与(i.n.)による致死的抗原刺激の24時間前に、抗H5 nAb又はコントロールmAbにて処置した。10mg/kgの3つのnAb何れかの腹膜内(i.p.) 投与により、H5-VN04(A/Vietnam/1203/04(H5N1)、クレイド1)にて抗原刺激したマウスは完全に予防された。低い抗体用量(2.5mg/kg)でも高い予防作用であった(図7a)。10mg/kgの3つのnAb何れかにて処置したマウスの80〜100%において、H5-HK97(A/HongKong/483/97(H5N1)、クレイド0)ウイルスに対する予防効果が観察された(図7b)。3つ何れかのnAb(10mg/kgの単回注射)により、H1-WSN33(A/WSN/1933(H1N1))ウイルスにて抗原刺激したマウスが完全に予防された(図7g)。10mg/kgの単回注射の場合、D8およびF10は、H1-PR34(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))にて抗原刺激したマウスを完全に予防した。25mg/kgの抗体を単回注射した場合、A66はマウスを完全に予防した(図7h)。
治療効果(図7c−f)。マウスにH5-VN04を接種し、24、48、72hpi(図7c、eおよびf)のnAb、または、24hpiにH5-HK97(図7d)を注射した。接種後24時間(24hpi)に15mg/kg(ヒトにおいて治療上達成可能な用量)の3つのnAbの何れかを腹腔内投与することにより、10倍MLD50のH5-VN04又はH5-HK97ウイルスにて抗原刺激したマウスの80〜100%が予防された(図7c−d)。H5-VN04にて48又は72hpiに同じ用量のnAbにて処置したマウスは、類似又はより高いレベルの予防を示した(図7 2e−f)。すべての抗H5 nAb処置群における生存マウスは健康なままであり、2週間の診察期間にわたって体重損失は僅かであった(データは示さない)。
【0106】
実施例5:治療的動物実験における抗H5抗体による組織でのウイルス力価の抑制
更に、治療上用いられるnAbの抗ウイルス効果を、局所的な複製の抑制の指標として肺での、又はH5N1感染の特徴である全身の蔓延を表す脾臓及び脳での、抗原刺激後4日目のウイルス力価を測定することによって調べた。nAbは、抗原刺激後48時間内に投与された場合、コントロールと比較して、H5 nAb処置マウスの肺におけるウイルス複製を有意に抑制した(図12)。特に、D8およびF10の2つのnAbは72hpiに投与された場合抗ウイルス効果を示した。脳への全身性ウイルス蔓延はコントロール動物において低く、nAb治療の何らかの効果を不明瞭にするものであった。しかしながら、3つのnAbが72hpi以内に投与される場合であってもウイルスの脾臓への蔓延が1000倍以上抑制されることから、nAb治療の全身蔓延に対する劇的な効果が示された。
【0107】
実施例6:抗体D8、F10およびA66の初期エピトープマッピング
H5-SP33の、様々な完全長野生型HAおよびHA変異発現プラスミドを、293T細胞に過渡的に形質移入した。形質移入の48時間後に、抗H5抗体(10ug/ml)を、形質移入した293T細胞と共に4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、0.5%BSAおよび0.1%NaN3を含むPBSにて3回洗浄した。HA形質移入細胞に対する抗H5抗体の結合の検出のために、FITC標識ヤギ抗ヒトIgG(Pierce)を二次抗体として用い、細胞と共に4℃で30分間インキュベートした。各変異体の発現を示すために、抗体2Aをコントロール抗体として用いた。以下の表からわかるように、Mab D8、1F0およびA66のエピトープは類似しており、HA1上の位置307およびHA2上の52、59、65、93に位置している。これらのアミノ酸の位置は、H5(A/Vietnam/1203/04(H5N1))の結晶構造において強調して示す。
【0108】
実施例7:クラスターH1ウイルスの結合と中和。
H5N1ウイルスの交差クレイド中和(図4)により、グループ1 H1クラスター内の他のHAサブタイプの中和についての試験を行った(図11)。3つすべてのnAbは、完全長H1(A/South Carolina/1/1918(H1N1)(「H1-SC1918」)及びA/Puerto Rico/8/34(H1N1)(「H1-PR34」))、H2(A/Japan/305/57(H2N2))(「H2-JP57」)、H6(A/chicken/New York/14677-13/1998(H6N2))(H6-NY98)を発現する細胞には結合したが、グループ2サブタイプ、H7((A/FPV/Rostock/34(H7N1)(「H7-FP34」))には結合しなかった(図4)。また、これらは、H1-SC1918−及びH1−PR34−偽型ウイルス感染も中和した(図4)。加えて、F10は、PR34(H1N1)、A/Ohio/83(H1N1)(「H1-OH83」)およびA/Ann Arbor/6/60(H2N2)感染を中和した(図4)。これらの結果から、これらのnAbがH5クレイドの間で高く保存されているだけでなく、H1、H2およびH6サブタイプ及び他のクラスター内の潜在的なサブタイプにも存在するHA上のエピトープを認識することが示唆される。したがって、我々は、ウイルス中和のメカニズムを詳細に調査することに決めた。
【0109】
実施例8:nAbは細胞融合を阻害するがウイルス結合を阻害しない。
抗HA Abが中和を媒介する2つの方法は、その細胞レセプターへのHA結合をブロックすることと、低pHにより誘導されるHAの立体構造変化を妨げることによるウイルス−宿主膜融合の阻害である。我々は、3つのnAbは細胞へのウイルス結合に影響せず、また血球凝集反応(赤血球の結合および架橋結合)も阻害しなかったのに対して、血球凝集反応を阻害するマウス抗H5 nAb、17A2.1.2およびフェレット抗H5N1血清はバックグラウンドレベルにまで結合を低減した。
次に、我々は、H5-TH04のH5とN1との発現プラスミドが高密度の293T細胞に同時形質移入されているモデルシステムを用いて、宿主細胞膜の融合を阻害するnAbの能力を試験した。表面に発現されたウイルスタンパク質によって細胞が融合し、融合細胞が形成される。これは、通常の培養条件下で形質移入後36〜48時間以内に自発的に起こる。形質移入の6時間後にnAbを添加し、36時間後に観察した場合、3つすべての場合において融合細胞形成の完全な阻害が観察された。nAbがない場合、形質移入の30時間目に酸性培地(pH5)に短時間(3〜4分)さらした細胞はたくさんの融合細胞を形成する。また、nAb(5μg/ml)は、これらの条件下で融合細胞形成を完全に妨げた(データは示さない)。まとめると、これらの結果は、3つすべてのnAbは、レセプター結合を妨げることなく膜融合を阻害することを示す。
【0110】
実施例9:nAbエピトープの構造的特徴づけ
次に、我々は、3.2Å分解能のHA(H5-VN04)と複合体化したscFv断片の結晶構造の解析と突然変異により、nAbの一つであるF10の結合のエピトープと様式を決定した。(図6および表4)。
複合体では、各H5三量体は、抗体1つにつきタンパク質表面のおよそ1500Åを覆っている対称性関連部位で、F10の3つの分子を結合する。H5自体の構造はF10結合によってほとんど変わらない。HAは、HA1およびHA2の2つのサブユニットへのタンパク分解性切断によって活性化される、単鎖、HA0として合成される。切断により、膜近位のステムに「融合ペプチド」(HA2の始めのおよそ21残基を含む)が覆われる。F10結合はもっぱらこの領域で起こり(図6)、融合ペプチド、中性pH立体構造内の場所にペプチドを固定するHA1とHA2の成分(いずれもこの領域の構造に不可欠なもの)、並びに酸性pHで多くの立体構造変化を受けるHA2の大きならせん状ヘアピンと密接に接触し、これによりウイルス膜近位のポケットからウイルスの遠位の表面へ融合ペプチドが押し出される。これはエンドソーム膜との融合の引き金となりうる。
【0111】
F10の重鎖はH5結合において主に働くことから、その3つの相補性決定領域(CDR)の先端を利用する。各々のF10分子は、HA三量体の一つの単量体内でHA1及びHA2サブユニットの両方と接触する(図6)。接触領域はHA2融合ペプチドの一部によって形成されるポケットを含み、一端にHA1の成分を他端にHA2のヘリックスαAの露出面を有する(図4および6)。3組の抗体残基−CDR H2のF55とM54、及びCDR H3のY102は主要な接触点を形成する。F55のフェニル環は、融合ペプチドループの突出ループ(HA2残基DGW19−21(H3番号付けスキーム;下付き文字1および2はHA1鎖およびHA2鎖を指す))と、2つの隣接ヒスチジン(残基181および381)及びトリプトファン、W21の芳香族側鎖とによって形成される平坦表面全体に位置する。また、M54の側鎖は、W21およびH38の芳香族環、並びにヘリックスAのI45の側鎖と接触するのに対して、その主鎖はH38の側鎖とカルボニル酸素水素結合する。Y102は、その側鎖を、Aヘリックスの4つの側鎖によって造られる疎水性クレバスに嵌入し、更に、融合ペプチドの主鎖カルボニル(D19)に水素結合する。CDR H1ループは、ヘリックスαAのC末端と先端領域の基部のHA1のループと複数接触する(図12d、e)。
並行して、エピトープ決定の補助のためにらせんαAについて突然変異誘発実験を行った(図6)。抗体と直接接触する3つの残基の突然変異:V52A/E、N53AおよびI56Aは抗体結合を有意に低減するか又は抗体結合を除くが、保存的突然変異であるV52Lは影響を及ぼさなかった。コントロールとして、抗体と接触しないらせんの異なる露出面上の突然変異は抗体結合に影響を及ぼさなかった(図12b−c)。ゆえに、αAヘリックスの突然変異誘発は、F10のために結晶学的に定められるエピトープと、十分に一致している。さらに、その他の2つのnAbはほぼ同じ変異体−nAb結合プロファイルを示したことから(構造的データは存在しない)、密接に重なり合うエピトープと、競合的結合との一致を示唆する(図6、図9)。まとめると、我々は、膜融合の状態を引き起こす立体構造変化の引き金(多くの場合ポケットからの融合ペプチドの放出)となる領域においてHAの中性pH立体構造を安定させることによって、3つすべてのnAbが、ウイルスを中和したと結論づける。
【0112】
実施例10:広域スペクトル中和の構造的基本
F10エピトープによって定められるHAの領域は、16のHAサブタイプ間で高く保存されている(図6および表5)。融合ペプチドは、中性pH立体構造においても膜融合の過程の間においても明確な構造をとっており、突然変異誘発研究により許容される配列変化はほとんどないことが示された。また、HA2 αAの露出したらせん状の表面は、両群全体でほとんど変化していない。その理由はおそらく、その表面が、膜融合状態において長い三量体のコイルドコイルの内側表面を形成するために再編成されるためであろう。ゆえに、2つの異なる環境において2つの非常に異なる構造を取るためのこれらセグメントの必要性はおそらく、配列に対する進化の上での強い制約であり、16のHAサブタイプにわたる保存の明確な理論的根拠となりうる。
グループ1のサブタイプH1、H5およびH9、そしてグループ2のH3およびH7について結晶構造を決定し、構造を、系統発生分析によって定まる2つのグループと一致する2つの異なるクラスに分けた。更なる比較により、2つのクラスがF10エピトープによって定まる領域内の詳細な三次元レベルで容易に区別されることが示唆される。各々のクラスの特徴であるコア内に覆われた2、3の重要なアミノ酸(例えば17および111)において配列が異なることにより、エピトープ内の様々な側鎖の定位と、らせんαAに関するポケットの配置が一致して異なる。
各グループ/クラス内で、エピトープ領域は高く保存されており、所定のクラスター内の相違が非常に僅かであり、たった2、3しか変化しておらず、一般にクラスター間で保存されている(例えば位置18および38、図6a)。3つのnAbがH1クラスターの4つすべてのメンバーを認識しうるという我々の所見は、エピトープ周辺でのアミノ酸相違(このクラスターではK、Q又はVである残基401など)は結合に重要でないことを示す。
我々が選択した10の抗体は、実質的に配列と長さが異なる異なる5セットのVH CDR1−3を有している。しかしながら、ポケット内に挿入するCDR2(M54、F55)およびCDR3(Y102)の3つの重要な残基は保存されている。変化したCDR内の重要な残基の保存は、ここで試験したものを越えて、nAbのこのグループによるHAサブタイプ/クラスター認識の範囲を拡大するものであってよい。しかしながら、6のうち4つのグループ2サブタイプは位置381でグリコシル化されており、F10エピトープ周辺に位置していることは注目すべきことである。モデリング研究は立体的衝突(しかし、CDR H1ループとのみ)を予測するものであり、それはおそらくH7ウイルスの結合/中和の欠如の観察に貢献するであろう。
【0113】
実施例11:抗H5 nAbはグループ1HAサブタイプの広範囲に結合する
グループ1ウイルスはインフルエンザAウイルスの合計16のうち10のサブタイプを含み、さらに3つの「クラスター」、H1a、H1bおよびH9に分類される。我々は、グループ2サブタイプH3を除き、トリH5と最も一般的なヒトインフルエンザサブタイプを含む、クラスターH1aおよびH1bの7つすべてのHAサブタイプへの結合について我々のnAbを試験した。H5に加えて、我々は、3つすべてのnAb IgG1が、1918の「スペインのインフルエンザ」;H2N2のH2;及びH6N2からのH6;並びにクラスター1bサブタイプ:H11N9のH11;H13N6のH13;及びH16N3のH16を含む、H1N1の2つの異なる菌株の完全長H1を発現する細胞に結合したことを発見した。しかしながら、これらはいずれも、グループ2サブタイプ、H7N1のH7には結合しなかった(図13)。図13についての詳細を以下に示す。H1、H2、H5、H6(クラスタH1a)およびH11、H13およびH16(クラスタH1b)への抗H5 nAb結合のFACS分析。293T細胞は、異なるHA発現プラスミドを過渡的に形質移入した。細胞へのNAb結合はFACSによって分析した。H5-特異的抗体2Aおよび80Rはネガティブコントロールである。グループ2HA、H7への結合の欠如も示される。ウイルス株についての詳細は以下の通りである。H1-SC1918((A/South Carolina/1/1918(H1N1)) H1-PR34(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))、H2-JP57(A/Japan/305/57(H2N2))、H5-TH04(A/Thailand/2−SP−33/2004(H5N1))、H6-NY98(A/Chicken/New York/14677-13/1998(H6N2))、H7-FP34(A/FPV/Rostock/34(H7N1))、H11-MP74(A/Duck/memphis/546/74(H11N9))、H13-MD77(A/Gull/MD/704/77(H13N6))、およびH16-DE06(A/Shorebird/DE/172/06(H16N3))。
【0114】
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【0115】

【0116】

【0117】

【0118】
他の実施態様
本明細書中では特定の実施態様を詳細に開示したが、これは例示のみを目的とするものであって、以下に続く添付の特許請求の範囲を限定するものではない。特に、特許請求の範囲によって定められる本発明の精神及び権利範囲を逸脱することなく、本発明に様々な置き換え、変更および修飾がなされうることは発明者が意図するものである。他の態様、便宜及び修飾は以下の特許請求の範囲内であるとみなされる。示される特許請求の範囲は、本明細書において開示される本発明の代表である。他の特許請求の範囲に記載していない発明もまた包含される。出願人は、後の特許請求の範囲の発明を取得する権利を保有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質のステム領域のエピトープに結合し、インフルエンザAウイルスを中和する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記インフルエンザウイルスがグループIインフルエンザウイルスである、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記インフルエンザウイルスがH1クラスターインフルエンザウイルスである、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記H1クラスターインフルエンザウイルスがH1aクラスターインフルエンザウイルス又はH1bクラスターインフルエンザウイルスである、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記エピトープが非線形である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記エピトープがHA1とHA2のポリペプチドを含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
エピトープが、HA1ポリペプチドの位置18、38、40、291のアミノ酸と、HA2ポリペプチドの位置18、19、20、21、38、41、42、45、49、52、53および56のアミノ酸を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体がウイルスと細胞の膜融合を阻害する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90又はH98のHAタンパク質への結合と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体が完全なヒト抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質のエピトープに結合し、インフルエンザAウイルスを中和する、単離されたscFv抗体。
【請求項12】
前記インフルエンザウイルスがグループIインフルエンザウイルスである、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記インフルエンザウイルスがH1クラスターインフルエンザウイルスである、請求項11に記載の抗体。
【請求項14】
前記H1クラスターインフルエンザウイルスがH1aクラスターインフルエンザウイルスである、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記エピトープが非線形である、請求項11に記載の抗体。
【請求項16】
エピトープがHA1とHA2のポリペプチドを含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項17】
エピトープが、HA1ポリペプチドの位置18、38、40、291のアミノ酸と、HA2ポリペプチドの位置18、19、20、21、38、41、42、45、49、52、53および56のアミノ酸を含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体がウイルスと細胞の膜融合を阻害する、請求項11に記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体が、モノクローナル抗体D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90又はH98のHAタンパク質への結合と競合する、請求項11に記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
インフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患又は疾病の予防方法であって、前記疾患又は疾病を患うリスクにあるヒトに、請求項1に記載のモノクローナル抗体又は請求項11に記載のscFv抗体の治療上の有効量を投与することを含む方法。
【請求項21】
抗ウイルス薬、ウイルス侵入阻害薬又はウイルス接着阻害薬を投与することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗ウイルス薬が、ノイラミニダーゼ阻害薬、 HA阻害薬、シアル酸阻害薬又はM2イオンチャネルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記M2イオンチャネル阻害薬がアマンタジン又は リマンタジンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ノイラミニダーゼ阻害薬がザナミビル又は リン酸オセルタミビルである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
グループIインフルエンザウイルスに特異的な2以上の抗体を投与することを含む、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項26】
グループIIインフルエンザウイルスに特異的な抗体を投与することを更に含む、請求項20、請求項21又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体がインフルエンザウイルスへの曝露の前又はその後に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、 前記インフルエンザウイルスを中和するために十分な用量で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
インフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患又は疾病の治療方法であって、前記疾患又は疾病を患うリスクにあるヒトに、請求項1に記載のモノクローナル抗体又は請求項11に記載のscFv抗体の治療上の有効量を投与することを含む方法。
【請求項30】
抗ウイルス薬、ウイルス侵入阻害薬又はウイルス接着阻害薬を投与することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗ウイルス薬が、ノイラミニダーゼ阻害薬、HA阻害薬、シアル酸阻害薬又はM2イオンチャネルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記M2イオンチャネル阻害薬がアマンタジン又はリマンタジンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ノイラミニダーゼ阻害薬がザナミビル又はリン酸オセルタミビルである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
グループIインフルエンザウイルスに特異的な2以上の抗体を投与することを含む、請求項29又は請求項30に記載の方法。
【請求項35】
グループIIインフルエンザウイルスに特異的な抗体を投与することを更に含む、請求項29、請求項30又は請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体がインフルエンザウイルスへの曝露の前又はその後に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体が、 前記インフルエンザウイルスを中和するために十分な用量で投与される、請求項29に記載の方法 。
【請求項38】
請求項1に記載のモノクローナル抗体又は請求項11に記載のscFv抗体と担体を含む組成物。
【請求項39】
抗ウイルス薬、ウイルス侵入阻害薬又はウイルス接着阻害薬を更に含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記抗ウイルス薬が、ノイラミニダーゼ阻害薬、 HA阻害薬、シアル酸阻害薬又はM2イオンチャネルである、 請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記M2イオンチャネル阻害薬がアマンタジン又は リマンタジンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ノイラミニダーゼ阻害薬がザナミビル又はリン酸オセルタミビルである、 請求項40に記載の方法。
【請求項43】
グループIインフルエンザウイルスに特異的な2以上の抗体を更に含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項44】
グループIIインフルエンザウイルスに特異的な抗体を更に含む、請求項38、請求項39又は請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
インフルエンザウイルスに特異的な抗体の同定方法であって、
固形表面に固定されている三量体ヘマグルチニン(HA)タンパク質を試験抗体と接触させることと、そしてHAタンパク質−抗体複合体を検出することを含む方法。
【請求項46】
前記固形表面が可塑性である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記HAタンパク質が非哺乳動物細胞において生産される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記HAタンパク質が昆虫細胞において生産される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記HAタンパク質が、野生型HAタンパク質に比べて変更したグリコシル化を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記HAタンパク質が、前記HAタンパク質の球状上部をマスキングするように前記固形表面上で固定されている、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
三量体ヘマグルチニン(HA)タンパク質を特異的に結合する単離された抗体の製造方法であって、(a)固形表面に固定されているHAタンパク質に単鎖又はFab発現ライブラリをさらし、(b)該タンパク質を特異的に結合する該ライブラリ中の抗体を同定し、そして、(c)抗体をライブラリから単離することを含む方法。
【請求項52】
前記固形表面が可塑性である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記HAタンパク質が非哺乳動物細胞において生産される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記HAタンパク質が、野生型HAタンパク質に比べて変更したグリコシル化を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記HAタンパク質が、前記HAタンパク質の球状上部をマスキングするように前記固形表面上で固定されている、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記発現ライブラリが非免疫性ライブラリである、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記発現ライブラリがH5ナイーブライブラリである、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
インフルエンザウイルスに対する被検体の予防接種方法であって、生物学的に適合したマトリックスにコート又は包埋された三量体ヘマグルチニン(HA)タンパク質を被検体に投与することを含む方法。
【請求項59】
前記HAタンパク質が非哺乳動物の糖鎖構造を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記HAタンパク質が、野生型HAタンパク質に比べて変更したグリコシル化を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記HAタンパク質が、前記HAタンパク質の球状上部をマスキングするように前記生物学的に適合したマトリックスにコート又は包埋されている、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
病原性エンベロープウイルスを特異的に結合する単離された抗体の製造方法であって、(a)固形表面に固定されている、ウイルスの膜融合タンパク質に単鎖又はFab発現ライブラリをさらし、(b)該タンパク質を特異的に結合する該ライブラリ中の抗体を同定し、そして、(c)抗体をライブラリから単離することを含む方法。
【請求項63】
前記固形表面が可塑性である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記膜融合タンパク質が非哺乳動物細胞において生産される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記膜融合タンパク質が非哺乳動物の糖鎖構造を有する、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記膜融合タンパク質が、野生型膜融合タンパク質に比べて変更したグリコシル化を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記発現ライブラリが非免疫性ライブラリである、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記発現ライブラリがH5ナイーブライブラリである、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
病原性エンベロープウイルスに対する被検体の予防接種方法であって、生物学的に適合したマトリックスにコート又は包埋された、ウイルスの膜融合タンパク質を被検体に投与することを含む方法。
【請求項70】
前記融合タンパク質が非哺乳動物の糖鎖構造を有する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記融合タンパク質が、野生型膜融合タンパク質に比べて変更したグリコシル化を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
試料中のインフルエンザウイルスの存在の検出方法であって、
a) 試料を請求項に記載のモノクローナル抗体と接触させ、そして、b) 抗体−抗原複合体の有無を検出し、このことにより試料中のインフルエンザウイルスの存在を検出することを含む方法。
【請求項73】
検出がインビボで起こる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
試料が血液、体毛、頬擦過物、唾液、生検又は精液から得られる、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
VH生殖系遺伝子IGHV1-69*01によってコードされるVHアミノ酸配列を含み、a) 位置27のアミノ酸がバリンであり、b) 位置28のアミノ酸がスレオニンであり、c) 位置30のアミノ酸がセリンであり、d) 位置31のアミノ酸がセリンであり、e) 位置54のアミノ酸がメチオニンであり、f) 位置55のアミノ酸がフェニルアラニンであり、g) 位置58のアミノ酸がスレオニンであり、h) 位置100のアミノ酸がプロリンであり、i) 位置101のアミノ酸がセリンであり、j) 位置102のアミノ酸がチロシンであり、k) 位置103のアミノ酸がイソロイシンであり、位置105のアミノ酸がセリンであり、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質のステム領域のエピトープに結合して、インフルエンザAウイルスを中和する、単離されたモノクローナル抗体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A−B】
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【図6C−D】
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【図6E】
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【図7A−C】
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【図7D−F】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−506344(P2011−506344A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537143(P2010−537143)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/085876
【国際公開番号】WO2009/079259
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(591183991)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】DANA−FARBER CANCER INSTITUTE, INCORPORATED
【出願人】(508236848)バーナム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (9)
【Fターム(参考)】