説明

インフレータ取付装置及びエアバッグ装置

【課題】エアバッグのインフレータを強固に保持しつつ、製造コストを低減する。
【解決手段】エアバッグの内側に配置されて棒状のインフレ−タ22を保持するブラケット24について、ベースブラケット31と保持ブラケット32の2部材に分割して形成する。ブラケット24とインフレ−タ22とを組み合わせる工程は、ベースブラケット31にインフレ−タ22を沿わせた状態で、保持ブラケット32の係止部53をベースブラケット31の係止受部46の係止孔46bに引っ掛け、この係合部分を支点として保持ブラケット32を回転する。そして、固定部54の固定孔54aと固定受部44の円孔44aとを位置合わせした状態で、固定孔54a及び円孔44aに挿入したリベット34をかしめ、固定部54と固定受部44とを締結する。ブラケット24の製造に用いる金型を簡略化でき、製造コストを低減できる。ボルト33の位置と保持片部51との位置を合わせて、インフレ−タ22を強固に保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の座席に着席した乗員の膝に対向して膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置に用いるインフレータ取付装置及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の座席に着座した乗員の膝などに対向してエアバッグを展開する膝保護用エアバッグ装置であるいわゆるニーエアバッグ装置などのエアバッグ装置が知られている。このようなエアバッグ装置は、制御装置が車両の前方衝突などの衝撃を検出した際に、折り畳んで収納されたエアバッグにインフレータからガスを供給して膨張展開させ、乗員を拘束して保護するようになっている。そして、例えば、ニーエアバッグ装置は、インストルメントパネルの、運転席前方のステアリングホイールの下方、あるいは、助手席前方のグローブボックスの下方などに配置され、ケース体の内側に、袋状のエアバッグを小さく折り畳んで収納するとともに、このエアバッグの内側に、インフレ−タが配置されている。
【0003】
そして、このような棒状のインフレータを用いる構成では、リテーナとも呼ばれるブラケットにより、インフレータを保持するとともに、エアバッグをケース体などの被設置部に固定している。このブラケットは、金属板を折曲して形成され、例えば、座席の側部に取り付けられるいわゆるサイドエアバッグ装置について、座席に取り付けられる基板部と、この基板部の一側部から一体に延設されたインフレータ保持部とを備えた構成が知られている。この構成では、基板部は平板状でボルトが固定される一方、インフレータ保持部は、円筒状に屈曲して形成されるとともに先端部がリベットにより固定部に固定されている(例えば、特許文献1参照。)。この構成では、インフレータ保持部を円筒状に形成するために、360度回転する金型が必要になり、製造コストの低減が必ずしも容易でない。また、ボルトとインフレータ保持部とを近接して配置する構成では、ボルトを固定する部分がインフレータ保持部で覆われ、インフレータ保持部を形成した後に基板部にボルトを固定する作業が困難であるため、基板部にボルトを溶接などして固定した後に、インフレータ保持部を金型で形成することになる。しかしながら、この作業工程では、金型でのインフレータ保持部の形成の作業の際に、ボルトとインフレータ保持部とが互いに干渉するため、金型の構造が複雑になり、製造コストの低減が容易でない問題を有している。
【0004】
また、サイドエアバッグ装置について、多角形筒状のリテーナホルダを形成し、このリテーナホルダの内側に棒状のインフレータを圧入して固定する構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながらこの構成においても、ボルトを固定した金属板を多角形筒状に屈曲する複雑な金型装置が必要となり、製造コストが上昇する。また、圧入のみでインフレータを強固に固定するためには、金属板の材料として、高価な材料を用い、あるいは、圧入作業に大きな力が必要になるなどして、製造コストが上昇する。
【0005】
さらに、例えば、座席の側部に設けられ、シートベルトを膨張させる装置について、取付金具を主板と副板とに分割して形成し、これら部材の係止及びボルト止めにより円筒状の部分を形成する構成が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この構成では、取付金具に、この取付金具から突出するボルトが取り付けられるものではないため、取付金具の成形時の部材とボルトとの干渉の問題は生じない。
【特許文献1】特開2004−338698号公報 (図4−5)
【特許文献2】特開2003−220924号公報 (図1−2)
【特許文献3】特開2007−99224号公報 (図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の構成では、基板部から突出するボルトなどの取付部を備える構成について、製造コストが上昇する問題を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、インフレータを強固に保持するとともに、製造コストを容易に低減できるインフレータ取付装置及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のインフレータ取付装置は、棒状の胴部を有するインフレータを保持し、被設置部に設置されるインフレータ取付装置であって、基板部、この基板部に設けられた取付受部、この取付受部の一側に位置して前記基板部に設けられた係止受部、及び前記取付受部の他側に位置して前記基板部に設けられた固定受部を備えたベースブラケットと、前記取付受部に固定されかつ前記基板部から突出して前記被設置部に取り付けられる取付部と、前記取付受部に対向して位置し前記基板部との間に前記胴部を挟持して前記インフレータを保持する保持片部、この保持片部の一端側に位置し前記係止受部に係止される係止部、及び前記保持片部の他端側に位置し前記固定受部に対向する固定部を備えた保持ブラケットと、前記固定受部と前記固定部とを締結する締結具とを具備するものである。
【0009】
そして、この構成では、係止部を係止受部に係止し、締結具を用いて固定部を固定受部に固定することにより、保持片部と基板部との間に胴部を挟持してインフレ−タを保持する。ベースブラケットと保持ブラケットとを一体に形成する構成に比べて、これらベースブラケット及び保持ブラケットの構造が簡略化され、製造が容易になり、製造コストが低減される。取付部を被設置部に取り付けた状態で、この取付部と、インフレ−タを保持する位置とが近接し、インフレ−タが強固に保持される。
【0010】
請求項2記載のインフレータ取付装置は、請求項1記載のインフレータ取付装置において、ベースブラケット及び保持ブラケットは、それぞれ1枚の金属板で形成され、取付部は、ベースブラケットに固着されるボルトであるものである。
【0011】
そして、この構成では、ベースブラケット及び保持ブラケットの形状は筒状の部材を形成する作業に比べて容易であり、ベースブラケット及び保持ブラケットをそれぞれ金型を用いて容易に形成され、製造コストが低減される。ベースブラケットは、取付受部が保持片部により覆われていないため、ベースブラケットを所定の形状に形成した後に、ボルトをベースブラケットの取付受部に固着する作業が可能になり、ベースブラケットの製造が容易になり、製造コストが低減される。
【0012】
請求項3記載のエアバッグ装置は、ガスが供給されて膨張展開するエアバッグと、このエアバッグにガスを供給するインフレータと、これらインフレータ及び取付部でエアバッグを保持する請求項1または2記載のインフレータ取付装置とを具備するものである。
【0013】
そして、この構成では、請求項1または2記載のインフレータ取付装置を備えたため、インフレータ及びエアバッグが強固に保持されるとともに、製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インフレータを強固に保持できるとともに、製造コストを容易に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のインフレータ取付装置及びエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図2において、1はエアバッグで、このエアバッグ1を備えたエアバッグ装置2は、車両である自動車の車体の室内部としての車室に面した所定面を構成するパネルに配置されている。そして、このエアバッグ装置2は、ニーエアバッグ装置すなわち膝保護用エアバッグ装置とも呼ばれるもので、前面衝突などの衝撃を受けた際に、乗員の足元すなわち膝頭を含む下肢部に対向して展開し、乗員の下肢部を拘束して乗員を保護するようになっている。なお、以下、前後方向などの方向は、車体の直進方向を基準とし、すなわち、車両の前方(矢印F方向)がエアバッグ1の基端側となり、前方の反対側である車両の後方(矢印B方向)がエアバッグ1の展開側すなわち乗員側となり、また、車両を基準として上方(矢印U方向)、下方、及び左右方向である幅方向(図1に示す矢印W方向)を説明する。但し、このエアバッグ装置2は、適宜の位置及び方向に取付可能なもので、取付位置及び方向はこの構成に限られるものではない。
【0017】
そして、図示しないが、この車体は、車室内に乗員が着座可能な両側一対の座席を備えているとともに、これら座席の前方には、フロントガラスとインストルメントパネルとが配置されている。さらに、このインストルメントパネルの下方の下部あるいは中段部には、インストルメントパネルを構成するダッシュパネルなどとも呼ばれるパネルが配置され、このパネルに、各座席に対向して、エアバッグ装置2が取り付けられている。また、一方の座席は、運転席であり、インストルメントパネルとパネルとの間には、ステアリングホイールが配置されている。また他方の座席は、助手席であり、インストルメントパネルとパネルとの間には、グローブボックスなどが配置されている。なお、上記のエアバッグ装置2の他に、この車室には、ステアリングホイール、インストルメントパネル、座席の側部、ルーフサイドレールなどに、図示しないエアバッグ装置が備えられている。
【0018】
そして、エアバッグ装置2は、被設置部を構成する容器部であるケース体21と、このケース体21に取り付けられるインフレータ22、インフレータ取付装置としてのリテーナとも呼ばれるブラケット24、インフレ−タ22からガスが供給されて膨張展開するエアバッグ1、及び図示しないカバー体などを備えている。
【0019】
そして、ケース体21は、ハウジングなどとも呼ばれるもので、後面を開口部とした略箱状をなすケース本体部を備え、このケース本体部の内側が、エアバッグ収納部となっている。また、ケース本体部の前面に位置するケース基板部21aには、ブラケット24を取り付けるブラケット取付部を構成する取付孔21bが2カ所に形成されている。また、ケース本体部には、カバー体を係止する取付片部が設けられているとともに、取付金具が取り付けられ、この取付金具が、車体の取付部材に固定されている。
【0020】
また、図示しないカバー体は、リッドなどとも呼ばれるもので、例えば表板部と取付板部とが合成樹脂にて一体に形成されている。そして、表板部は、ケース体21の開口部を覆い、脆弱な破断部であるテアラインが略H字状などに形成されている。また、取付板部は、表板部の裏面側すなわち前面側から前側に角筒状などに突設され、ケース本体部に嵌合し取付片部に係止して取り付けられる。
【0021】
また、インフレータ22は、図1ないし図5に示すように、棒状である略円柱状をなす胴部としてのインフレータ本体部22aを備え、このインフレータ本体部22aの一端部にガス噴射部22bが設けられているとともに、他端部に接続部22cが設けられている。そして、インフレータ本体部22aには、ガスが圧縮して充填されているとともに、燃焼時にガスを生成する薬剤が充填され、いわゆるハイブリッドタイプのインフレ−タ22を構成している。さらに、インフレータ本体部22aの外面には、位置決め用の円柱状の突部である位置決め部22dが突設されている。そして、このインフレータ22は、接続部22cに接続される図示しないハーネスを介して制御装置に接続され、このハーネスを介して制御装置から供給される起動信号に基づき、ガス噴射部22bからガスを噴射するようになっている。
【0022】
また、エアバッグ1は、1枚の基布を折り重ねて縫い合わせあるいは複数枚の基布を縫い合わせて袋状に形成され、所定の形状に折り畳まれてケース体21のエアバッグ収納部に収納されている。例えば、エアバッグ1は、2枚の基布を重ねた状態で外周部を縫い合わせ、袋状の外殻を構成するエアバッグ本体部が構成されているとともに、このエアバッグ本体部の内側に、複数の隔壁が配置され、互いに連通する複数の気室が構成されている。また、エアバッグ1の基端側の気室には、インフレ−タ22が配置されるガス導入部28が設けられるとともに、ブラケット24を取り付けるブラケット取付部を構成する取付孔29が基布を貫通して2カ所に形成されている。
【0023】
そして、ブラケット24は、インフレータ22及びエアバッグ1を保持するとともにケース体21に取り付けられるもので、ベースブラケット31と、保持ブラケット32と、取付部としての2個のボルト33と、締結具としての2個のリベット34とのみにより構成されている。
【0024】
そして、ベースブラケット31は、1枚の金属板を金型でプレス形成して形成され、略平板状をなす基板部41と、この基板部41の下端部を前方に折曲した側板部42とを備えている。そして、基板部41には、2カ所に、円孔43aを形成した取付受部43が設けられているとともに、2カ所に、円孔44aを形成した固定受部44が設けられている。そして、取付受部43は、基板部41の他の部分より若干前方に向かって凹設され、中央部に円孔43aが形成されている。また、固定受部44は、取付受部43よりも上側に位置して形成され、少なくとも一方の固定受部44は、一方の取付受部43に近接し、上側に位置を合わせて形成されている。一方、側板部42の2カ所からは、前側に向かって係止受部46が延設されている。これら係止受部46は、矩形板状の係止受部基部46aと、この係止受部基部46aに形成された四角状の係止孔46bと、この係止孔46bの両側に位置して前後方向に延びる補強用の凹溝部46cとを備えている。すなわち、この係止受部46は、取付受部43よりも下側に位置して形成され、少なくとも一方の係止受部46は、一方の取付受部43に近接し、下側に位置を合わせて形成されている。
【0025】
また、保持ブラケット32は、1枚の金属板を金型でプレス形成して形成され、一対の保持片部51と、これら保持片部51の上側部同士を連結する連結片部52とを備えている。そして、各保持片部51は、略円弧状の半円筒状に形成され、下端部となる一端部に、先端部が折り返されたフック部である係止部53が形成されている。また、各保持片部51の上端部となる他端部は、折曲されて平板状をなす固定部54が形成され、この固定部54に、円孔状の固定孔54aが形成されている。さらに、各保持片部51には、各保持片部51が形成する円弧の中心側に向かって突出する押圧部51aが形成されている。また、連結片部52には、補強用の突条部52aが形成されているとともに、位置決め用の位置決め受部52bが切り欠き形成されている。
【0026】
ボルト33は、スタッドとも呼ばれるもので、軸部33aと、この軸部33aより径寸法の大きい頭部33bとを有し、軸部33aには、ねじ山を形成したねじ部33cが形成されている。
【0027】
また、リベット34は、かしめ、すなわち塑性変形により2枚の板材を締め付け固定するいわゆるブラインドリベットである。
【0028】
そして、このブラケット24は、ベースブラケット31と、保持ブラケット32とをそれぞれ金型により所定の形状に形成した後、ベースブラケット31の取付受部43の円孔43aに後側からボルト33の軸部33aを挿入し、頭部33bを取付受部43に溶接などして固定し、ボルト33の軸部33aが基板部41から前側に突出した状態とされている。
【0029】
次に、このエアバッグ装置2の組み立て工程を説明する。
【0030】
まず、ブラケット24とインフレ−タ22とを組み合わせ、インフレ−タ装置を構成する。この工程は、ベースブラケット31にインフレ−タ22を沿わせた状態で、保持ブラケット32の係止部53をベースブラケット31の係止受部46の係止孔46bに引っ掛け、この係合部分を支点として保持ブラケット32を回転させる。そして、固定部54の固定孔54aと固定受部44の円孔44aとを位置合わせするとともに、インフレ−タ22の位置決め部22dを保持ブラケット32の位置決め受部52bに当接して位置決めした状態で、固定孔54a及び円孔44aに挿入したリベット34をかしめ、すなわち塑性変形させ、固定部54と固定受部44とを締結する。
【0031】
この状態で、ベースブラケット31の主として基板部41と保持ブラケット32の保持片部51との間に、インフレ−タ22のインフレ−タ本体部22aが挟持され、特に、保持ブラケット32の押圧部51aがインフレ−タ本体部22aを押圧して、インフレ−タ22がブラケット24に位置決めして保持される。
【0032】
そして、このようにインフレ−タ22とブラケット24とを組み合わせたインフレ−タ装置を、エアバッグ1の内側のガス導入部28に挿入し、ブラケット24のボルト33をエアバッグ1の取付孔29から外側に引き出す。次いで、エアバッグ1を、ロール状、蛇腹状、あるいはこれらを組み合わせた方法などで小さく折り畳み、必要に応じてラッピングを被せ折り畳み形状を保持しエアバッグ1、インフレータ22、及びブラケット24を組み合わせた組立体を構成する。
【0033】
次いで、この組立体を、ケース体21に挿入し、ケース基板部21aの取付孔21bにブラケット24のボルト33を挿入し、このボルト33にケース体21の外側からナット60を螺合して、基板部41をエアバッグ1を挟んで被設置部であるケース体21に圧接し、組立体すなわちエアバッグ1、インフレータ22、及びブラケット24などをケース体21に固定する。次いで、ケース体21にカバー体を取り付け、ケース体21の開口部すなわちエアバッグ1をカバー体で覆うことにより、エアバッグ装置2が構成される。
【0034】
そして、ケース体21の取付金具を、ボルト及びナットなどの取付具を用いて車体の取付部材に固定し、カバー体の表板部がパネルと面一になるようにエアバッグ装置2を車体に取り付けるとともに、インフレータ22の接続部22cに接続したハーネスを制御手段に電気的に連結することにより、エアバッグ装置2が車体に設置される。
【0035】
次に、このエアバッグ装置2の展開動作を説明する。
【0036】
制御装置が自動車の正面衝突などの衝撃を検出すると、この制御装置はハーネスを通じて起動信号である電力を供給し、インフレータ22を作動させる。そして、インフレータ22のガス噴射部22bからエアバッグ1内にガスが供給されると、エアバッグ1は、ケース体21の内側で膨張し、カバー体をテアラインで破断して、エアバッグ1をケース体21から車室に膨出し、さらに、パネルに沿って上方に膨張展開させ、乗員の下方への滑り込みを防止して乗員を保護する。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、棒状のインフレ−タ本体部22aを保持するブラケット24について、ブラケット24をベースブラケット31と保持ブラケット32とに2分割するとともに、係止部53を係止受部46に係止し、リベット34を用いて固定部54を固定受部44に固定する構成により、保持片部51と基板部41との間にインフレ−タ本体部22aを挟持してインフレ−タ22を強固に保持できるとともに、製造コストを低減できる。すなわち、ベースブラケット31と保持ブラケット32とを一体に形成する構成に比べて、これらベースブラケット31と保持ブラケット32の構造が簡略化され、円筒状の部材を形成するために必要となる複雑な金型装置が不要になり、ベースブラケット31と保持ブラケット32とが安価な金型で容易に製造でき、製造コストを低減できる。また、ベースブラケット31は、取付受部43が保持片部51により覆われていないため、ベースブラケット31を金型で所定の形状に形成した後に、ベースブラケット31にボルト33を固定できる。そこで、ベースブラケット31の形成時には、金型とボルト33との干渉が生じず、ベースブラケット31の製造が容易になり、製造コストを低減できる。
【0038】
また、インフレ−タ22の取付作業は、保持ブラケット32の係止部53をベースブラケット31の係止受部46の係止孔46bに引っ掛け、固定孔54a及び円孔44aに挿入したリベット34をかしめ、固定部54と固定受部44とを締結する簡略な作業であり、作業性が良く、製造コストを低減できる。
【0039】
また、インフレ−タ22は、保持ブラケット32の2カ所の保持片部51でベースブラケット31との間に挟持し、強い挟持力でインフレ−タ22を強固に保持できる。さらに、各保持片部51には、インフレ−タ22側に突出する押圧部51aを形成したため、インフレ−タ22を2点で押圧し強固に挟持して保持できるとともに、この押圧部51aの形状を変更することにより、挟持する力の調整も容易にできる。
【0040】
さらに、ベースブラケット31を金型で所定の形状に形成した後に、ベースブラケット31にボルト33を固定できるため、取付受部43を挟み、固定受部44と係止受部46とを配置して、ボルト33の位置に近接しさらには位置あわせし、ボルト33を覆う位置に保持片部51を容易に配置できる。すなわち、ボルト33を突設した位置と保持片部51とを位置合わせし、インフレ−タ22の作動時に力が加わる保持片部51の部分と、エアバッグ1を保持するとともに車体に取り付けられるボルト33とを位置合わせして、エアバッグ装置2を安定して保持できる。
【0041】
また、ベースブラケット31と保持ブラケット32とを一体に形成した構成では、円筒状に形成した保持片部51の先端部を基板部41に締結する際に、金属が復帰変形しようとする力が生じ、この力に抗してかしめて締結する必要があるが、ベースブラケット31と保持ブラケット32とを分割した構成では、金属が復帰変形しようとする力は生じず、かしめる力を有効に使える。
【0042】
また、保持ブラケット32に位置決め受部52bを設け、この位置決め受部52bにインフレ−タ22の位置決め部22dを当接して位置決めしたため、インフレ−タ22を容易に安定して位置決めできる。
【0043】
このようにして、ブラケット32に取り付けた棒状のインフレータ22をエアバッグ1内に挿入し、エアバッグ1とともに車体に取り付ける、いわゆるニーエアバッグ装置やサイドエアバッグ装置などのエアバッグ装置2に好適なインフレータ22の固定構造を提供できる。
【0044】
なお、上記の実施の形態では、2カ所の保持片部51のうち、一方のみをボルト33と位置合わせしたが、2カ所の保持片部51ともボルト33と位置合わせすることができる。また、3カ所以上の保持片部51を設け、少なくとも1カ所の保持片部51をボルト33と位置合わせすることができる。
【0045】
また、上記の実施の形態では、保持ブラケット32の各保持片部51に一カ所ずつ押圧部51aを設けたが、それぞれ複数カ所に設けても良く、あるいは、押圧部51aをベースブラケット31側に設けることもできる。
【0046】
また、保持ブラケット32の各保持片部51の押圧部51a以外の部分、及びベースブラケット31側の部分についても、インフレータ22の外周に密着させる形状として、振動時の異音、いわゆるビビリ音を抑制、防止できる。
【0047】
一方、複数の突起によりインフレータ22の外周部とブラケット24の外周部との間に一定の隙間を設定し、振動時の異音、いわゆるビビリ音を抑制、防止することもできる。
【0048】
また、ベースブラケット31及び保持ブラケット32の適宜の位置に、突条状のいわゆるビード等を形成して、ブラケット24の強度を向上し、エアバッグ1の展開時及び展開後についてもインフレータ22を強固に安定して保持できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、車両に備えられるエアバッグ装置の他、例えば、車両以外の移動体に備えて乗員を保護するエアバッグ装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のインフレータ取付装置及びエアバッグ装置の一実施の形態を示すインフレータ取付装置とインフレータとの分解状態の斜視図である。
【図2】同上エアバッグ装置の図5のI−I相当位置の断面図である。
【図3】同上インフレータ取付装置にインフレータを保持した状態の斜視図である。
【図4】同上インフレータ取付装置にインフレータを保持した状態の図3の矢印II方向からみた正面図である。
【図5】同上インフレータ取付装置にインフレータを保持した状態の図3の矢印III方向からみた底面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 エアバッグ
2 エアバッグ装置
21 被設置部を構成するケース体
22 インフレ−タ
22a 胴部としてのインフレータ本体部
24 インフレータ取付装置としてのブラケット
31 ベースブラケット
32 保持ブラケット
33 取付部としてのボルト
34 締結具としてのリベット
41 基板部
43 取付受部
44 固定受部
46 係止受部
51 保持片部
53 係止部
54 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の胴部を有するインフレータを保持し、被設置部に設置されるインフレータ取付装置であって、
基板部、この基板部に設けられた取付受部、この取付受部の一側に位置して前記基板部に設けられた係止受部、及び前記取付受部の他側に位置して前記基板部に設けられた固定受部を備えたベースブラケットと、
前記取付受部に固定されかつ前記基板部から突出して前記被設置部に取り付けられる取付部と、
前記取付受部に対向して位置し前記基板部との間に前記胴部を挟持して前記インフレータを保持する保持片部、この保持片部の一端側に位置し前記係止受部に係止される係止部、及び前記保持片部の他端側に位置し前記固定受部に対向する固定部を備えた保持ブラケットと、
前記固定受部と前記固定部とを締結する締結具とを具備する
ことを特徴とするインフレータ取付装置。
【請求項2】
ベースブラケット及び保持ブラケットは、それぞれ1枚の金属板で形成され、取付部は、ベースブラケットに固着されるボルトである
ことを特徴とする請求項1記載のインフレータ取付装置。
【請求項3】
ガスが供給されて膨張展開するエアバッグと、
このエアバッグにガスを供給するインフレータと、
これらインフレータ及び取付部でエアバッグを保持する請求項1または2記載のインフレータ取付装置と
を具備することを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154670(P2009−154670A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334296(P2007−334296)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】