説明

インプリントフィルムの製造方法

【課題】紫外線硬化樹脂等の光硬化性樹脂を用いることなく、高い耐熱性を持つインプリントフィルムを高効率で製造する方法を提供する。
【解決手段】芳香族ポリマーフィルムを浸漬、滴下、コーティング、印刷等により有機溶媒に接触させ、軟化せしめる工程と、プレス機、ロール等を用いる機械的な押圧、気体による加圧、減圧、自重による加圧等により芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめる工程とを有するインプリントフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線硬化樹脂等の光硬化性樹脂を用いることなく、高い耐熱性を持つインプリントフィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹凸のパターンを形成したテンプレート(「金型」「モールド」「スタンパ」などと呼ばれることもある)の凹凸パターンを樹脂材料に転写してインプリント成形体を形成する方法として、例えば、未硬化の光硬化性樹脂をテンプレート上で硬化せしめる光インプリント法(特許文献1)、および、熱可塑性樹脂をテンプレートに加熱加圧する熱インプリント法(特許文献2)が知られている。しかしながら、光インプリント法は、使用できる樹脂が光硬化性樹脂に限定されるうえに、光硬化をせしめるため成形に時間がかかるなどの問題があった。一方、熱インプリント法は熱による樹脂の流動が必要なためガラス転移温度の低い樹脂を使用するか、または高温での成形が必要であった。この場合、ガラス転移温度の低い樹脂を使用すると、得られるインプリント成形体もガラス転移温度が低くなり、一方、ガラス転移温度の高い樹脂を高温でインプリントすると、昇温、降温に時間がかかり、また大きな熱量が必要であったり、あるいは加熱によってテンプレートが変形するなどといった問題があった。
【0003】
本発明者らは光硬化性を必要とせず、高いガラス転移温度を持つインプリント成形体の製法として、高分子溶液をテンプレート上に展開し、乾燥せしめる方法を特許文献3に開示した。この方法を用いると熱インプリント法では不可能な高ガラス転移温度のインプリント成形体を光硬化樹脂を用いずに得ることが可能であるが、成型時に溶媒の乾燥が必要であるため、成形に時間がかかる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266901号公報
【特許文献2】特開2009−234249号公報
【特許文献3】特開2006−137083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち本発明の目的は、光硬化性樹脂を用いることなく、高ガラス転移温度を有するインプリントフィルムを高効率で製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、芳香族ポリマーフィルムを有機溶媒に接触せしめる工程と、芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめる工程とを有するインプリントフィルムの製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光硬化性樹脂を必要とせず、高ガラス転移温度を有するインプリントフィルムを高効率で得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は芳香族ポリマーフィルムを有機溶媒に接触せしめる工程と、芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめる工程とを有している。芳香族ポリマーフィルムを有機溶媒に接触せしめることにより、芳香族ポリマーフィルムの一部または全部を成形可能な状態(以下「軟化」ということがある)にせしめる。次にこの軟化した芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめることにより、テンプレートのパターンを芳香族ポリマーフィルムに転写することができる。
【0009】
芳香族ポリマーフィルムを有機溶媒に接触せしめる工程は、有機溶媒浴に芳香族ポリマーフィルムを浸漬せしめる方法、芳香族ポリマーフィルムに有機溶媒を滴下する方法、スプレーコート、バーコートなどのコーティングやインクジェットなどの印刷手法を用いて有機溶媒を芳香族ポリマーフィルムに接触せしめる方法、有機溶媒の蒸気を芳香族ポリマーフィルムに当てる方法、テンプレートに有機溶媒を塗布しておき、これに芳香族ポリマーフィルムを接触せしめて、有機溶媒への接触とテンプレートへの接触を同時に行う方法などが例示できる。
【0010】
軟化した芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめる方法としては、プレス機、ロール等による機械的な押圧、空気、窒素などの気体を用いて加圧する方法や、テンプレートに貫通孔を空けておき、この孔から減圧する方法、フィルムの自重による方法などが例示できる。この場合、芳香族ポリマーフィルムとテンプレートとの間に空気や過剰な有機溶媒が残存しないようにロールやスキージーを用いて空気や過剰な有機溶媒を押し出すことが好ましい。また押圧時の温度、圧力に限定はなく、用いる有機溶媒の種類やテンプレートの凹凸の種類、深さ等によって適宜選択すればよい。
【0011】
本発明に用いる芳香族ポリマーフィルムはガラス転移温度が200℃以上であることが好ましい。芳香族ポリマーフィルムのガラス転移温度が200℃以上であれば、熱インプリント法を採用できない場合であっても十分な品質のインプリントフィルムを得ることが可能となる。すなわち、ガラス転移温度の高いフィルムを用いて熱インプリント法を適用する場合、熱量が足りずに十分なテンプレートの転写が得られなかったり、また高温で加熱するとフィルム自体が分解等により劣化するおそれがあったが、本発明の方法によればそれらの問題を回避することができる。
【0012】
芳香族ポリマーフィルムのガラス転移温度は好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上である。250℃以上とすることで半田リフロー工程に耐えることが可能となり、300℃以上とすることで鉛フリー半田のリフロー工程に耐えることが可能となる。ガラス転移温度を高めるには、用いる芳香族ポリマーフィルムの種類、分子構造を適切に選択することが好ましい。以下、芳香族ポリマーフィルムの種類および分子構造について説明する。
【0013】
本発明に用いる芳香族ポリマーフィルムは有機溶媒との接触により軟化せしめることが重要である。有機溶媒との接触により軟化するために芳香族ポリマーフィルムを構成するポリマーには、その分子構造中にフッ素や、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、ニトロ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、フルオレン基などの嵩高い置換基、水酸基、スルホン酸基、エステル基のような極性基を有することが好ましい。
【0014】
フッ素原子を有すると、分子間水素結合の形成が阻害され、有機溶媒に接触した際に軟化しやすくなるため特に好ましい。フッ素原子を有する基の例としては、−F基や、−CFなどのフッ素化アルキル基、フッ素化アリール基が例示できる。
【0015】
フッ素原子の導入方法としては、重合原料としてフッ素原子を含有する原料を用いる方法が最も確実で簡便である。例えば、ポリマーとして芳香族ポリアミドを用いる場合、その重合原料としては、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、2−フロロテレフタロイルジクロライドなどを用いることができる。
【0016】
本発明に用いる芳香族ポリマーフィルムは、その種類は特に限定はなく、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリアミドヒドラジド、ポリアミドオキザジアゾール、ポリアリレート、ポリスチレンなどのポリマーから構成されるフィルムを例示できる。得られるインプリントフィルムが高いガラス転移温度を有することから、芳香族ポリアミドフィルムや芳香族ポリイミドフィルムがより好ましい。最も好ましくは芳香族ポリアミドを構成成分とするフィルムである。
【0017】
芳香族ポリアミドを用いる場合、そのポリマー分子中にフッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子を含有する芳香族ポリアミドとして、さらに好ましくは化学式(I)で示される構造単位を含むポリマーを用いることである。
【0018】
【化1】

【0019】
芳香族ポリアミドが化学式(I)で示される構造単位を含むことにより、高いガラス転移温度や、プリズムシートやマイクロレンズアレイに必要な高い光線透過率と、有機溶媒による軟化が可能という特徴を併せ持つことができる。
【0020】
芳香族ポリアミドとしては、その構造単位に含まれる全ての芳香環がパラ位で結合していることが好ましい。パラ位で結合することによって、芳香族ポリアミドの持つ強い機械物性を発現させることができる。さらに好ましくは、芳香族ポリアミドが化学式(II)で示される構造単位を含んでいることである。
【0021】
【化2】

【0022】
:p−フェニル、p−ビフェニル
芳香族ポリアミドは最も好ましくは化学式(III)〜(VII)で示される構造単位を含みかつ、化学式(III)で表される構造単位のモル分率をa、化学式(IV)で表される構造単位のモル分率をb、化学式(V)で表される構造単位のモル分率をc、化学式(VI)で表される構造単位のモル分率をd、化学式(VII)で表される構造単位のモル分率をeとしたとき、a、b、c、dおよびeが次式(1)〜(5)を満足することである。このとき、高いインプリント成形性を発揮できると共に、得られるインプリントフィルムには、高い光線透過率とガラス転移温度とを付与できる。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
:O、SO、C(CF、またはO-Ph-SO-Ph-O
【0026】
【化5】

【0027】
X:H、ClまたはF
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
:フェニル基、置換フェニル基またはメチル基
1≦b≦10 ・・・(1)
0≦d≦40 ・・・(2)
a+b=50 ・・・(3)
0≦e≦ 5 ・・・(4)
0.9≦(c+d)/(a+b)≦1.1 ・・・(5)
本発明で用いる芳香族ポリマーフィルムは市販のものであっても、新たに重合、製膜したものでもよい。一例として芳香族ポリアミドフィルムを得る方法を説明する。
【0031】
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法つまり酸ジクロライドとジアミンから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0032】
なお、全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましく、この値を外れた場合、成形に適したポリマー溶液を得ることが困難となる。
【0033】
芳香族ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにはポリマーの溶解を促進する目的で溶媒には50質量%以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を溶解助剤として添加することができる。この溶解助剤としては臭化リチウム、塩化リチウムなどが例示できる。
【0034】
次にフィルム化について説明する。上述の芳香族ポリアミドは有機溶媒に可溶であるため、PPTAのように濃硫酸を用いた特殊な製膜方法は必ずしも必要としない。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれの方法で製膜されても差し支えないが、本発明の芳香族ポリアミドは溶解性に優れるため、製膜工程の制御が容易な乾湿式法での製膜が可能である。ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
【0035】
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラム、エンドレスベルト、フィルム等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルト、フィルム等の支持体の表面を平滑にすることにより表面の平滑な芳香族ポリアミドフィルムが得られる、乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれて芳香族ポリアミドフィルムとなる。
【0036】
延伸は延伸倍率として面倍率で0.8〜8(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.3〜8である。また、熱処理としては200℃〜500℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で数秒から数分間熱処理が好ましく実施される。さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することは有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0037】
なお、芳香族ポリアミドの構造は、その原料であるジアミンとカルボン酸ジクロライドによって決定される。原料が不明である場合は芳香族ポリアミド組成物から構造分析を行うが、この手法としては、質量分析、核磁気共鳴法による分析、分光分析などを用いることができる。
【0038】
本発明のインプリントフィルムの製造において使用される有機溶媒は特に限定されないが、安全性や除去の容易さから脂肪族溶媒が好ましく、またカルボニル基を有する有機溶媒が好ましい。より好ましくはケトン、エステル、アルコール、アミドであり、さらに好ましくはケトン、エステルなどカルボニル基を有する溶媒である。もっと好ましくはアセトン、2−ブタノン、酢酸エチルエステル、酢酸メチルエステルであり、最も好ましくはアセトンである。アセトンは十分な軟化能力が有りかつ沸点が低いため軟化後の除去が容易であり好ましい。
【0039】
本発明に用いるテンプレートは、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコーン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン基板、ガラス、石英、PET,PMMA、ポリカーボネート樹脂などの樹脂フィルムが例示される。テンプレートのパターンはフォトリソグラフィや電子線描画法等によって形成されるが、本発明ではテンプレートのパターン形成方法は特に制限されない。
【0040】
テンプレートに押圧された芳香族ポリマーフィルムは有機溶媒の離脱に伴う寸法変化を生じることがあるため、芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触したまま乾燥する工程を有することが好ましい。乾燥工程においては、芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめた状態で、芳香族ポリマーフィルム側から、水蒸気透過率が1g/m/day以上の素材にて芳香族ポリマーフィルムを押圧することが好ましい。水蒸気透過率が1g/m/day以上の素材としては多孔性の素材を用いることが好ましい。また、風船のような柔軟な素材にて押圧してもよく、さらに、気体そのものを押圧媒体として用いてもよい。この場合、加圧した気体を用いたり、気流として吹きつけたりしてもよい。気体を用いることにより、表面の平滑性を保ったまま押圧することが可能となる。気体としては窒素や空気が特に好ましい。この時の温度は特に制限がないが、有機溶媒の沸点と芳香族ポリマーフィルムのガラス転移温度の間の温度から選ばれることが好ましい。
【0041】
たとえば、有機溶媒としてアセトン(沸点:56℃)を用い、芳香族ポリマーフィルムとして、後述の参考例1で示すフッ素原子を含有する芳香族ポリアミドフィルム(ガラス転移温度:315℃)を用いた場合、56℃〜315℃の間の任意の温度で乾燥すればよいため、工程の適合性が大きい。
【0042】
本願発明のインプリントフィルムの製造方法はプリズムシート、マイクロレンズアレイ、光導波路などの光学部材や、アンチグレアなどのフィルム表面の加飾、構造発色フィルム、超撥水フィルムなど、フィルム表面への機能付与などに好適に利用できる。本発明の製造方法は大面積への適用が容易であることから、これらインプリントフィルムを例えばロール状態にて連続的に製造できるなど、容易に量産できる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0044】
本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0045】
(1)インプリント性
下記装置を用いてテンプレートの頂点の周期(μm)および得られるインプリントフィルムの谷の周期(μm)を求めた。両者を比較して、周期の差がテンプレートの頂点の周期(μm)の10%以下の場合はインプリント性を「○」として評価した。
【0046】
テンプレートの形状:三角錐を横に並行に並べたプリズム形状。頂点周期は50μmである。
【0047】
装置:超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9500(キーエンス社製)
測定モード:カラー超深度
(参考例1)
攪拌機を備えた700L重合槽にN−メチル−2−ピロリドン674.68kg、無水臭化リチウム10.59kg(シグマアルドリッチジャパン社製)、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レファインケミカル社製「TFMB」)33.28kg、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化株式会社製「44DDS」)2.87kgを入れ窒素雰囲気下、15℃に冷却、攪拌しながら330分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)18.49kg、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レファインケミカル社製「4BPAC」)6.35kgを5回に分けて添加した。60分間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部を最終のフィルム厚みが7μmになるようにTダイを用いて120℃のエンドレスベルト上に流延、残存溶媒量が52重量%になる様に乾燥してエンドレスベルトから剥離した。次に溶媒を含んだフィルムをMD方向に1.08倍延伸し、水洗して溶媒を除去した。さらに340℃の乾燥炉でTD方向に1.20倍延伸し、厚み7μmのフッ素原子を含有する芳香族ポリアミドフィルムを得た。このフィルムは2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルに由来する化学式(I)で示される構造単位を含む。また、ガラス転移温度は315℃だった。
【0048】
(実施例1)
参考例1で得たフィルムの4辺を固定した。固定されたフィルム上にアセトンを5ml滴下し、直ちに上からプリズムシート形状を付与したステンレス製テンプレート(頂点周期:50μm)を0.0002atmで押圧した。この時フィルムの下は空気である(下から(空気層)/フィルム/テンプレート)。5分後、テンプレートを取り除いてインプリントフィルムを得た。インプリントフィルムの谷の周期は46μmで、成形性は○だった。
【0049】
(実施例2)
プリズムシート形状を付与したステンレス製テンプレート(頂点周期:50μm)上にアセトンを5ml滴下し、直ちに上から参考例1で得たフィルムを乗せた。フィルムは自重でテンプレートに接触しており、反対の面は空気である(下からテンプレート/フィルム/(空気層))。5分後、テンプレートからフィルムを剥離せしめてインプリントフィルムを得た。インプリントフィルムの谷の周期は47μmで、成形性は○だった。
【0050】
(実施例3)
プリズムシート形状を付与したステンレス製テンプレート(頂点周期:50μm)上に2−ブタノンを5ml滴下し、直ちに上から参考例1で得たフィルムを乗せた。フィルムは自重でテンプレートに接触しており、反対の面は空気である(下からテンプレート/フィルム/(空気層))。5分後、テンプレートからフィルムを剥離せしめてインプリントフィルムを得た。インプリントフィルムの谷の周期は45μmで、成形性は○だった。
【0051】
(実施例4)
プリズムシート形状を付与したステンレス製テンプレート(頂点周期:50μm)上に酢酸メチルを5ml滴下し、直ちに上から参考例1で得たフィルムを乗せた。フィルムは自重でテンプレートに接触しており、反対の面は空気である。5分後、テンプレートからフィルムを剥離せしめてインプリントフィルムを得た。インプリントフィルムの谷の周期は48μmで、成形性は○だった。
【0052】
(比較例1)
プリズムシート形状を付与したステンレス製テンプレート(頂点周期:50μm)上にアセトンを5ml滴下し、直ちに上から半脂肪族半芳香族ポリマーフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ株式会社製“ルミラー”T60、厚み100μm)を乗せた。フィルムは自重でテンプレートに接触しており、反対の面は空気である(下からテンプレート/フィルム/(空気層))。5分後、テンプレートからフィルムを剥離せしめた。テンプレートの形状は転写されなかった。成形性は×だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリマーフィルムを有機溶媒に接触せしめる工程と、芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめる工程とを有するインプリントフィルムの製造方法。
【請求項2】
芳香族ポリマーフィルムのガラス転移温度が200℃以上である、請求項1に記載のインプリントフィルムの製造方法。
【請求項3】
芳香族ポリマーフィルムを構成するポリマーがフッ素原子を含有する、請求項1または2に記載のインプリントフィルムの製造方法。
【請求項4】
芳香族ポリマーフィルムを構成するポリマーが芳香族ポリアミドである、請求項1〜3のいずれかに記載のインプリントフィルムの製造方法。
【請求項5】
芳香族ポリアミドが化学式(I)で示される構造単位を含む、請求項4に記載のインプリントフィルムの製造方法。
【化1】

【請求項6】
カルボニル基を有する有機溶媒を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のインプリントフィルムの製造方法。
【請求項7】
芳香族ポリマーフィルムをテンプレートに接触せしめた状態で、芳香族ポリマーフィルム側から、水蒸気透過率が1g/m/day以上の素材にて芳香族ポリマーフィルムを押圧する、請求項1〜6のいずれかに記載のインプリントフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−143598(P2011−143598A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5626(P2010−5626)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】