説明

インプリント方法及び装置

【課題】グローバルアライメントで求めた目標位置に精度良くパターンを転写することができるインプリント装置を提供する。
【解決手段】基板上に塗布された転写材料とパターンを有する型との少なくとも一方を他方に押し付け、パターンを転写するインプリント装置であって、型2のマーク4と、基板1上に形成された複数のマーク5を検出することで算出された目標転写位置に対応する基板1上のマーク5とを検出する検出部6と、目標転写位置にパターンを転写するために、型2と基板1を位置合わせした状態で、型2のマーク4と目標転写位置に対応する基板1上のマーク5との相対位置を示す情報を検出部9から取得し、目標転写位置で型2と転写材料とが押し付けられた状態で、型2のマーク4と基板の目標転写位置に対応する基板1上のマーク5との相対位置を、位置合わせをした状態における相対位置となるように制御する制御部16とを有するインプリント装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に転写材料を塗布して型のパターンを転写するインプリント方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、微細パターンが形成された型を原版として、基板上に塗布された転写材料に微細パターンを形成する技術である。具体的には、シリコンウエハやガラスプレート等の基板上に転写材料を塗布し、その転写材料に型のパターンを押し付けた状態でその転写材料を硬化させることによって微細パターンを形成することができる。現在、実用化されているインプリント技術としては、熱サイクル法および光硬化法がある。
【0003】
インプリント技術では基板と型との位置合わせに対する高い精度が要求される。従来の位置合わせの方法としては、基板上の複数のショットにパターンを形成する場合、ショット毎に基板と型の位置合わせ計測を行っていた。具体的には、特許文献1に開示されているように、基板と型のそれぞれに構成されたマークを観察してずれ量を補正する、いわゆるダイバイダイ計測を用いて位置合わせを行っていた。
しかしながら、ダイバイダイ計測は基板の外周部のショットに多く観察される下地層の膜減りなどの基板製造にかかるプロセス要因により、マークの位置を正確に検出できず、正しく位置合わせができない問題があった。
【0004】
一方で、半導体露光装置における位置合わせの方法は、代表的な数ショットのマークを計測し、それをもとに統計処理して全ショットを同一指標で成形する、いわゆるグローバルアライメントが主流となっている。このグローバルアライメントは代表ショットを適正に選択することにより、基板の外周部のプロセス要因によるマークずれの影響を低減できるため、重ね合わせ精度の向上に繋がる。このため、インプリント装置でも位置合わせにグローバルアライメントの適用が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−281072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インプリント装置では、転写材料と型との少なくとも一方を押し付ける。その際に反力がインプリント装置の本体に加わり、型や基板にずれが発生することが考えられる。
そのため、グローバルアライメントにより取得した基板上の目標転写位置を基に位置合わせをしても、インプリント時に基板上の目標転写位置に対して上述の型や基板のずれが重畳してしまうという問題がある。そのため、基板上のショットの位置と型に形成されたパターンの位置との相対位置がずれてしまう。
【0007】
本発明は、グローバルアライメントにより取得した基板上の目標転写位置を基に位置合わせする際、基板上の目標位置に対して、より正確にパターンを転写することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインプリント装置は基板上に塗布された転写材料とパターンを有する型との少なくとも一方を他方に押し付け、パターンを転写材料に転写するインプリント装置であって、型のマークと、基板上に形成された複数のマークを検出することで算出された目標転写位置に対応する基板上のマークとを検出する検出部と、目標転写位置にパターンを転写するために、型と基板を位置合わせした状態で、型のマークと目標転写位置に対応する基板上のマークとの相対位置を示す情報を検出部から取得し、目標転写位置で型と転写材料とが押し付けられた状態で、型のマークと基板の目標転写位置に対応する基板上のマークとの相対位置を、位置合わせをした状態における相対位置となるように制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、グローバルアライメントにより取得した目標転写位置を基に位置合わせする際、基板上の目標位置に対して、より正確にパターンを転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態のインプリント装置を示した概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のインプリント方法を示したフローチャートである。
【図3】(a)は、本発明の第1実施形態のウエハ上のマーク配置例を示した図である。(b)は、ショットが複数の領域に分かれている場合のウエハ上のマークの配置例を示した図である。
【図4】(a)は、型と樹脂とが非接触の状態で型とウエハとの位置合わせ計測する状態を示した図である。(b)は、型と樹脂とが接触の状態で型とウエハとの位置合わせ計測する状態を示した図である。
【図5】(a)は、本発明の第1実施形態に適した型を側面から見た図である。(b)は、本発明の第1実施形態に適した型をパターンが形成された面から見た図である。
【図6】本発明の第2実施形態のインプリント方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態のインプリント装置を示した図である。図1のインプリント装置は、基板(ウエハ1)を保持するウエハステージ7、微細なパターンを有する型2を保持する構造体3を有する。型2にはマーク4が形成され、ウエハ1上にはマーク5が形成されている。マーク5は、例えば多層基板を構成する過程において、ウエハ1上に既に形成された層に設けられている。また、インプリント装置は、マーク4とマーク5を検出し相対位置を計測する検出器(検出部)6、グローバルアライメント計測を行うために用いられる検出器9を有する。さらに、ウエハステージ7にはウエハステージ7の位置を決める基準となるステージ基準マーク8が設けられている。また、これらインプリント装置の動作を制御する演算処理装置16を有する。更には、図1のインプリント装置は、ウエハステージ7の位置を計測するための不図示のレーザー干渉計或いはエンコーダを有している。レーザー干渉計或いはエンコーダは、初期化した際に計測した位置を基準として、ウエハステージ7の位置を計測するものである。
【0012】
本実施形態では基板としてウエハ1を用いて説明するが、ウエハ以外にもガラス基板などその他の基板を用いることもできる。また、検出器6はウエハ1と型2の相対位置を求めるためにウエハ1上のマーク5と型2のマーク4が検出できれば良い。検出器6としては、マーク4とマーク5を観察するための結像光学系を内部に構成した検出器を用いることができる。マークの位置を検出する方法としては、両マークを画像観察しても良いし、両マークの相乗効果によるモアレなどの干渉信号を検知しても良い。
【0013】
また、インプリント動作前のウエハ1と型2との相対位置を計測する時は、ウエハ1と型2の計測は同時に計測できなくても良い。例えば検出器6の内部に構成した基準(マークやセンサー面など)に対して、型2のマーク4の位置と、ウエハ1上のマーク5の位置とを測定することで、マーク4とマーク5の相対位置を計測しても良い。
【0014】
検出器9は型2のパターン中心外に構成されている。検出器9とパターン中心との距離が近いほどベースライン量(BL)が小さくなるため、構造体3とそれを搭載した本体の熱変形や経時変化などによる誤差の影響を低減することができる。ベースライン量とは、例えば、検出器9によりステージ基準マーク8を計測(観察)して決定された位置Aと、検出器6により型2のマーク4とステージ基準マーク8を計測(観察)することで決定された位置Bとの間の距離(方向を含む)である。位置Aや位置Bは、検出器9や検出器6を用いてマーク観察して、所定条件を満たした際のウエハステージ7の位置を不図示の干渉計やエンコーダを用いて計測して決定している。このベースライン量がわかれば、検出器9を用いてウエハ1のマーク5やマーク12を観察して決定された検出器9の下における所定の位置関係が、ベースライン量分の移動先(検出器6で観察される型2の下)で再現できることになる。つまり、ベースライン量は、距離と方向を含む情報である。
【0015】
また、グローバルアライメント計測には検出器9ではなく、検出器6を用いることもできる。この場合ベースライン量(BL)を計測する必要が無くなるため生産性の向上に繋がる。さらに、検出器9の替わりに検出器6を用いると、検出器9でウエハを計測するために必要であったウエハステージ7の駆動に伴う領域が不要となるため、装置の設置面積を小さく設計できることができる。しかし、検出器6は1ショット内の複数のマークを同時に計測するため、複数の検出器6を設ける必要がある。そのため、設置場所に制約が生じて、NAを大きくして検出器6を設けることができない。従って、プロセス対応性を確保するために大きなNAを持つ検出器9と検出器6を併用する。もしくは選択的に使用することが望ましい。
【0016】
次に、本発明の第1実施形態のインプリント方法について、図2のフローチャートを用いて説明する。
ステップS21では新たなウエハ1がインプリント装置に搬入され、ウエハステージ7により保持される。保持されたウエハ1は、ウエハステージ7によって検出器9の下へ送り込まれる。
【0017】
ステップS22ではグローバルアライメント計測を行う。ウエハ1上に形成された複数のショットの中から、代表的な数ショットのアライメントマーク12を検出器9が光学的に観察して、検出器9の計測位置とアライメントマーク12との位置ずれ量を検出する。検出器9の計測位置とは、検出器9の計測の基準とする位置である。例えば、検出器9の観察画像に重畳されるように検出器9の光路に配されたマークにより決まる位置や、検出器9の観察画像の中心として予め設定される検出器9の観察中心などのことである。ここでいう、位置ずれ量は、ショット配列の設計データに基づき、検出器9の計測位置に各サンプルショットに形成されているアライメントマーク12が位置づけられるようにウエハステージ7を駆動した際に得られるものである。アライメントマーク12は図3に示したように、ウエハ1上に構成されている。検出された位置ずれ量を基に、異常値処理、関数フィッティングなどの統計処理を行い、ウエハの装置基準からのシフト、倍率、スキューなどのアライメント情報を取得する。上述の位置ずれ量の検出、位置ずれ量の結果から統計処理を行いアライメント情報の取得、これらの制御や処理は演算処理装置16(制御部)で行われる。ここで取得されたアライメント情報はパターンを転写するための目標転写位置の情報を含み、演算処理装置16に保存される。具体的な検出方法については後述する。
【0018】
また、このステップS22では、検出器6を用いて型2のマーク4とウエハステージ7のステージ基準マーク8とを同時に検出する際に、型2の型ずれ量を求めることができる。ここで型ずれ量とは、型2に有するパターンの向きと、ウエハステージ7の駆動方向又はウエハ1のショット配列の方向とのなす角を示す。例えば、型2のマーク4を複数個所検出することによって、型2に有するパターンの向きを求めることができる。
【0019】
ここで求めた型2の型ずれ量は、演算処理装置16の制御により型2を保持する構造体3を回転駆動させるか、ウエハステージ7を回転駆動させることによって補正を行う。この補正を行うことによって、型2に有するパターンとショットの回転方向のずれの影響を低減した状態でインプリントを行うことができる。
【0020】
ステップS23では演算処理装置16に保存された目標転写位置を含むアライメント情報に基づき、ウエハステージ7を駆動させる。ウエハ上に設定された目標転写位置を不図示の塗布手段の下に移動させ、塗布手段により樹脂を塗布する。本実施形態では転写材料として光硬化する樹脂を用いる。
【0021】
ステップS24ではステップS22のグローバルアライメント計測から得たアライメント情報に基づき、演算処理装置16の制御により、ウエハステージ7を駆動し、ステップS23で樹脂が塗布されたショットを型2の下に送り込む。アライメント情報を基に算出したショット毎の目標転写位置の座標と、検出器6や検出器9を用いて計測したベースライン量に基づき、ウエハステージ7を駆動させる。これによって樹脂が塗布された目標転写位置が型2の下に送り込まれる。これらの制御は演算処理装置16によって行われる。
【0022】
ステップS25では図4(a)に示すように検出器6を用いて、ウエハ1上に塗布された樹脂15と型2とが非接触の状態(OnTheFly)で型2のマーク4とウエハ1上のマーク5を検出する。マーク5は図3に示したように、ウエハ1上のショット10の周辺に構成されている。検出した結果から演算処理装置16によりマーク4とマーク5の相対位置を示す情報を求める。求められた相対位置を示す情報は演算処理装置16の不図示の取得部によって取得され、保存される。ここで、相対位置とはインプリント装置の押印方向をZ軸としたとき、Z軸に垂直な平面におけるマーク4とマーク5の相対位置のことを示す。具体的な計測方法については後述する。
【0023】
本実施形態では検出器6によるマーク4とマーク5の検出は非接触の状態に限らず、図4(b)に示すように樹脂15と型2が接触した状態(InLiquid)でも行うことができる。型2が樹脂に接触するまでの押印動作中にマークの検出を行うことができる。また、光を照射して、樹脂が硬化する状態や樹脂が硬化した後においても、マークを検出することができる。また、マークの検出は1回に限らず、複数回行っても良い。複数回検出を行った場合、例えば不図示の演算処理系により平均値を求めることでマーク4とマーク5の相対位置を精度良く求めることができる。
【0024】
ステップS26では型2に形成されたパターンを、ウエハ1上に塗布された樹脂に押し付ける。このとき、型2のみを動かしても、ウエハ1のみを動かしても、また型2とウエハ1とを同時に動かしても良い。このとき、ステップS25で計測した相対位置を示す情報に基づいて、相対位置を保持するようにウエハステージ7を押し付ける動作を行っている間に位置補正制御する。ステップS26の押し付ける動作、相対位置を示す情報に基づく位置補正制御は演算処理装置16で行われる。この位置補正制御の目標位置はシフト、倍率等のプロセス起因や装置固有に持つオフセットを上乗せするようにしても良い。詳しい押し付け方法は後述する。
これにより、樹脂を介して基板に型を押し付ける際の反力がインプリント装置に加っても、型の位置とウエハの位置との相対関係が大きく変化しないようにすることができる。このため、グローバルアライメントで求めた目標転写位置に精度良くパターンを転写することができる。
【0025】
また、演算処理装置16はウエハステージ7の代わりに、型2を保持する構造体3をステップS26による押し付ける動作を行っている間に位置補正制御しても良い。一方、押し付ける動作を行っている間ではなく、検出器6によって型2のマーク4とウエハ1上のマーク5との両マークのずれ量をOnTheFlyで計測した後、押印完了時にInLiquidで計測しても良い。InLiquidの時に計測したずれ量が、OnTheFlyの時に計測したずれ量となるように、演算処理装置16はウエハステージ7を駆動させる。
【0026】
ステップS27では、型2と樹脂15とが接触した状態で樹脂を硬化させる。光硬化法を用いたインプリント技術の場合、紫外線を照射することにより樹脂が硬化する。そのため、インプリント装置には型2を挟んで光を樹脂に照射できるように不図示の光源を備えている。また、型2は光が透過できるように、例えば石英などの光が透過する材料で作られている。さらに、マーク4とマーク5を光学的に観察するので、型2は光が透過できる材料で作られる必要がある。樹脂に光を照射後、硬化した樹脂から型2を引き離すことによりウエハ1上の樹脂が成型される。
【0027】
ステップS28では、ウエハ1上の全てのショットで樹脂が成型されたか判断する。未成型のショットがあればそのショットに不図示の塗布手段により樹脂を塗布する(S23)。樹脂を塗布した後、上述のステップを経ることにより樹脂にパターンを成型することができる。ステップS28で未成型のショットが無くなれば、ステップS29でインプリント装置からウエハ1が搬出される。
【0028】
次に、ステップS25で実行される計測方法について、図3(a)及び図3(b)を用いて詳述する。図3はウエハ1上に構成されたウエハマークの配置を示している。図3(a)は基板上に実際に形成されているショット10とショットを囲むようにスクライブライン11が形成されている。そして、スクライブライン上にショット10に対応付けられたウエハ1上のマーク5と、検出器9で検出されるアライメントマーク12が配置されている。図3(b)は1つの型2内にショット10が複数の領域に分かれている場合であり、ショット10の領域を分けるスクライブラインにショット10に対応付けられたウエハ上のマーク5が形成されている。
マーク5は1次元方向を検出することを想定して構成しているが、2次元的に検出できるマークであれば、マークの数を減らすことができる。ウエハ上に形成されたマーク5は既に複数の層が形成されている場合、必ずしも最上面に形成されていなくてもよい。
【0029】
アライメントマーク12はX方向とY方向を同時に検出可能な2次元マークを想定して構成しているが、マーク5のように1次元方向のみ検出できるマークであれば、X方向とY方向のそれぞれを検出できるようにマークを構成する。本実施例では不図示の塗布手段と型2が並んでいる方向をX方向とし、ウエハ面上でX方向に垂直な方向をY方向とする。マーク5とアライメントマーク12の配置と形状は一例であり、図3(a)及び図3(b)に示されたものに限定されない。
【0030】
マークの検出に関しては、例えば、型2とショット10の単純な相対位置を計測する時は、X方向とY方向のそれぞれを少なくとも一箇所ずつ検出できれば相対位置を計測することができる。また、型2とショット10の相対位置を示す情報の求め方は、ウエハ上のマーク5と型のマーク4を検出し、何れか一方を基準として、他方のマークの基準に対するずれ量を求める方法などがある。ずれ量としてはX方向のずれ量とY方向のずれ量を求めたり、2つのマークの距離と所定の軸に対するずれ角度を求めたりすることが考えられる。また、検出器6の内部に基準を設けて、その基準からのウエハ上のマーク5のずれ量と型のマーク4のずれ量をそれぞれ求めても良い。
【0031】
その他の方法としては、ウエハ上のマーク5と型のマーク4の区別を設けずに検出器6でマークを検出し、画像処理によってマークの領域のみを求めることによって相対位置の計測とすることも可能である。また、検出器6により検出されたウエハ上のマーク5と型のマーク4が部分的に重なりを持つような場合には、重なった領域を求めることで相対位置の計測としても良い。
【0032】
また、検出器6で検出されたウエハ上のマーク5と型のマーク4から求めた相対位置を示す情報は、演算処理装置16に保存することができる。この演算処理装置16はウエハ上の異なる目標転写位置毎に求められた相対位置を示す情報を更新する機能を有している。これにより、ウエハ上の異なるショット毎にステップS22で得られた目標転写位置とその目標転写位置に対応したショットに含まれるウエハ上のマークとの相対位置が異なる場合に対応することができる。
【0033】
インプリント装置において基板と型との相対位置の変化は、基板上に塗布された樹脂と型とが接触したときに生じる。そのため、上述の相対位置の制御は少なくとも型と基板上に塗布された樹脂とが接触した後に制御が行われていれば良い。さらに上述の制御は、樹脂に光を照射して樹脂を硬化させる前に相対位置の制御を完了させる必要がある。この制御方法について、図2のステップS26に示す押印工程を詳細に説明する。
【0034】
型2をOnTheFly位置から下降させて樹脂と接触するまでは、演算処理装置16により位置制御を行いながら型2を降下させる。このとき、OnTheFly位置で計測された相対位置を保持するように押印制御部はウエハステージをリアルタイムに位置補正制御を行っても良いし、行わなくても良い。
【0035】
型2を降下させ、樹脂と接触した後は、型2は力制御により制御される。具体的には所定の圧力(F)となるように押印を行い、所定の圧力に到達した後は、樹脂の充填を待つために所定の時間(t)の待ち時間を置くことなどが考えられる。圧力(F)と時間(t)の値については、実験により転写パターンを形成できる適切な値を導き出しておくことが望ましい。
【0036】
型と樹脂との接触は、例えば、型を保持する構造体3を駆動させるための駆動機構(不図示)の駆動電流を検知することで型と樹脂とが接触したことが認知できる。他にも型を保持する構造体内部の閉ざされた空間の気圧変化を感知する方法や、型にセンサーを設けて圧力または歪みを検知する方法、型とウエハ間の電気抵抗を計測して接触による通電を感知する方法などがある。
【0037】
相対位置の制御に関しては、少なくとも型と樹脂とが接触した後に位置補正制御が行われていれば良い。その方法としては、型と樹脂とが接触したと同時に位置補正制御を開始したり、接触後、樹脂の充填を待つための待ち時間の間に位置補正制御をしたりすることができる。また接触前から位置補正制御を行う場合、接触前はある程度の相対位置のずれを許容するように制御し、接触後に相対位置に対するずれの許容範囲を狭めて制御を行っても良い。このようにすることにより、接触時の相対位置のずれに対して効果的に補正制御することが可能になる。
【0038】
上述の実施形態では、型と基板を互いに平行として押印することを考慮しているが、型と基板上に塗布された樹脂を接触させる際に、接触面を互いに平行としないで接触させることがある。非平行で接触することにより型に形成されたパターンに樹脂が充填しやすくするためである。このような場合には、OnTheFly位置で予め相対位置を計測した時とは、異なる状態で接触時に型のマークと基板のマークを検出することになる。
【0039】
そこで、位置補正制御は型と樹脂とが接触した後、型と基板の面は互いに平行平面となってから開始する。このようにすることにより、型と基板を非平行で接触させた場合にも相対位置を精度良く検出することができ、位置補正制御を行うことができる。当然、目標転写位置に転写するために、型と基板を位置合わせした状態で、型のマークと目標転写位置に対応する基板上のマークとの相対位置を示す情報を検出器6から取得する際も、型と基板は平行であることが望ましい。平行にしてからマークを観察することで、マークの見え方の誤差を低減することができる。
【0040】
ステップS22で実行されるグローバルアライメント計測から得られるアライメント情報としては、ショットのX方向のずれ量ShiftX、Y方向のずれ量ShiftYがある。さらに、アライメント情報としてショット配列X軸の回転量RotX、ショット配列Y軸の回転量RotY、ショット配列X軸の伸縮量MagX、ショット配列Y軸の伸縮量MagYなどがある。
【0041】
得られた値から、目標転写位置である各転写ショット位置を求めることができる。例えば、転写ショット座標X、Yをショット中心座標px、pyを用いて下記式のように表すことができる。
X=px+ShiftX+MagX*px−RotY*py
Y=py+ShitfY+RotX*px+MagY*py
ウエハ上に構成されたマークの上に樹脂が塗布されると検出器によるマークの検出が難しくなる。そのため、ステップS23における樹脂の塗布ではウエハ上に構成されたマーク上に樹脂が掛からないように、不図示の塗布手段によりショットに樹脂が塗布される。
また、InLiquid位置において余分な樹脂がマーク上に掛からないようにするために図5に示した型2を用いることができる。図5(a)は型2を側面から見た図である。また、図5(b)はパターンが形成された面から見た型2の図である。図5に示された型2には、モートと呼ばれる溝14が設けられている。このような型を使用する場合、型2に構成されたマーク、およびウエハ上に構成されたマークに掛からないように不図示の塗布手段でウエハ上に樹脂を塗布する。こうすることにより、InLiquid位置において余分な樹脂が溝に流入するため、マーク上に樹脂が掛かることを低減することができる。
【0042】
これにより、樹脂を介して基板に型を押し付ける際の反力がインプリント装置に加わっても、型のパターンの位置とショットの位置の相対関係が変化しないようにグローバルアライメントで求めたショット位置に精度良くパターンを転写することができる。
また、本発明を適用した上記実施形態によれば、グローバルアライメント計測の計測値を維持しつつ補正、転写を行うものであり、インプリント時の押印力の反力による本体構造体の変形や、型・ウエハの押印力による変形の影響を低減することができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、ウエハ上のマークを避けるように樹脂を塗布する例について説明した。しかし、例えばウエハ1上のマーク5の位置がショットの位置に接近している場合や、ショットの中にマークを有している場合には、ショット上に樹脂を塗布しようとすると、樹脂を塗布する場所に制約を受ける。そのため、パターンを転写するための目標転写位置に樹脂を均一に塗布できないおそれがある。樹脂が均一に塗布されないとウエハ上に形成されるパターンに影響を与える。そこで第2実施形態では、マーク上に樹脂が塗布されても目標位置を保持したまま型をウエハに押印することを可能にするインプリント方法について、図6のフローチャートを用いて説明する。
ステップS61では新たなウエハ1がインプリント装置に搬入されウエハステージ7により保持される。そして、ウエハ1を保持したウエハステージ7は、検出器9の下へ駆動される。
【0044】
ステップS62ではグローバルアライメント計測を行う。ステップS22と同様にウエハ1上に形成された複数のショットの中から、代表的な数ショットのアライメントマーク12を検出器9が光学的に観察して、検出器9の計測位置とアライメントマーク12との位置ずれ量を算出する。この結果を元に、統計処理を行い、アライメント情報を得る。上述の位置ずれ量の算出、位置ずれ量の結果から統計処理を行いアライメント情報を得る、これらの制御は演算処理装置16で行われる。ここで得られたアライメント情報はパターンを転写する場所を示す目標転写位置の情報を含み、演算処理装置16に保存される。
【0045】
ステップS63では、ステップS62のグローバルアライメント計測から得たアライメント情報に基づき、演算処理装置16の制御により、ウエハステージ7が駆動され、樹脂が塗布されていないショットを型2の下に送り込む。具体的にはアライメント情報を基に算出した、ショット毎の目標転写位置の座標と、検出器9で計測したベースライン量に基づき、ウエハステージ7の駆動によってウエハ1を型2の下に送り込む。
そして、ステップS25と同様に検出器6を用いて、型2のマーク4とウエハ1上のマーク5を検出する。検出した結果から演算処理装置16によりマーク4とマーク5の相対位置を示す情報を求める。求められた相対位置を示す情報は演算処理装置16により取得され、保存される。ここで、相対位置とはインプリント装置の押印方向をZ軸としたとき、Z軸に垂直な平面におけるマーク4とマーク5の相対位置のことを示す。
【0046】
S25とS63が異なる点はショットに樹脂を塗布した状態でマークを検出するか、樹脂を塗布する前にマークを検出するかの違いである。ウエハ上に樹脂が塗布される前に、検出器6によって、OnTheFlyで型のマーク4とウエハ上のマーク5とを検出し相対位置を全ショット分求める。計測して得られた相対位置を示す情報はショット毎に演算処理装置16に保存される。
【0047】
ステップS64ではウエハ上の目標転写位置に塗布手段により樹脂を塗布する。ここでは、第1実施形態のようにマーク上に樹脂が掛からないように塗布手段を制御する必要が無い。既にステップS63で相対位置計測がOnTheFlyで行われているので、マーク上に樹脂が塗布されても良い。
ステップS65ではステップS62のグローバルアライメント計測から得た、アライメント情報に基づき演算処理装置16の制御により、ウエハステージ7を駆動し、ステップS64で樹脂が塗布された目標転写位置を型2の下に送り込む。
ステップS66では型2に形成されたパターンをウエハ1上に塗布された樹脂に押し付ける。演算処理装置16によって動作は制御される。このとき第1実施形態と同様に、型2を動かしても、ウエハ1を動かしても、また両者を同時に動かしても良い。
【0048】
ステップS64でウエハ上のマーク5に樹脂が掛かっていると、OnTheFlyで検出器6によるマーク5の検出が難しくなる。しかし、樹脂と型との屈折率差は小さいため、ウエハ上のマーク5と型との間に樹脂が充填され、検出器とマークが近づくと、マークを検出することができる。本実施形態では透明な樹脂を用いることで、樹脂と型が接触したときにウエハ上のマーク5を型を通して検出器6で検出することができる。
【0049】
一方で、インプリント装置に用いられる型のマークは、型のパターン面に凹凸を設け、その箇所をマークとしている。そのため、OnTheFlyで検出することができた型のマーク4はInLiquidで検出されにくくなるという問題がある。そのため、本実施形態で用いる型2は、第1実施形態で用いた型のように溝14は必要としないが、InLiquidでマーク4を検出できるようにマーク4にクロムなどの金属を蒸着させた型を使用する。こうすることで、ステップS66で樹脂と型が接触時にマーク4とマーク5を検出器6によって検出することが可能になる。そして、ステップS63で樹脂が塗布される前に計測された相対位置を保持するように押印制御部はウエハステージ7をリアルタイムに位置補正制御する。
その後は、ステップS27と同様にステップS67では樹脂の硬化を行い、ステップS28と同様にステップS68でウエハ1上の全てのショットで樹脂が成型されたか判断する。未成型のショットが無くなれば、ステップS29と同様にステップS69でインプリント装置からウエハ1が搬出される。
【0050】
第2実施形態における相対位置を示す情報や位置の位置補正制御する方法など、第1実施形態に記載された方法も利用することができる。
これにより、ウエハ1上のマーク5の位置がショットの位置に接近している場合でも、目標転写位置に樹脂を均一に塗布することができる。そのため、形成されるパターンへの影響を低減できる。
【0051】
本実施形態では、予め全てのショットの相対位置を計測するように説明したが、ショット領域に樹脂を塗布する度に、樹脂を塗布する前に型2のマーク4とウエハ1のマーク5の相対位置を計測してもよい。この時、図6のステップS68でウエハ上の全てのショットで樹脂が成型されたか判断した結果、未成型のショットがある場合、ステップS63のショット計測の後にステップS64の樹脂の塗布を行う。
【0052】
また、任意のショット数を予め相対位置計測を行うこともできる。この時、予め相対位置計測を行ったショットに対して樹脂の塗布を行うことにより、樹脂の塗布とパターンの転写のために移動するウエハステージ7の移動量を低減することができる。移動量を低減することによりスループットが向上する。基板上に樹脂を塗布してからパターンを転写するまでに時間がかかると樹脂の特性が変化する恐れがある。任意のショット数に関しては、予め樹脂を塗布しても樹脂の特性に影響が無いように決めれば良い。
【0053】
また、第2実施形態で説明したマーク4にクロムを蒸着した型2を第1実施形態で用いてもよい。型2のずれ量とウエハ1上のショットのずれ量をインプリントの際にも計測して補正する。こうすることで、複数のショット領域にインプリント行う場合でもグローバルアライメント計測によるショットの位置に型のパターンを転写することができる。
【0054】
〔物品の製造方法〕
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【符号の説明】
【0055】
1 ウエハ(基板)
2 型
4 マーク(型に形成されたマーク)
5 マーク(ウエハ上に形成されたマーク)
6 検出器
7 ウエハステージ
8 ステージ基準マーク
9 検出器(アライメント検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布された転写材料とパターンを有する型との少なくとも一方を他方に押し付け、前記パターンを前記転写材料に転写するインプリント装置であって、
前記型のマークと、前記基板上に形成された複数のマークを検出することで算出された目標転写位置に対応する前記基板上のマークとを検出する検出部と、
前記目標転写位置に前記パターンを転写するために、前記型と前記基板を位置合わせした状態で、前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの相対位置を示す情報を前記検出部から取得し、前記目標転写位置で前記型と前記転写材料とが押し付けられた状態で、前記型のマークと前記基板の目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの前記相対位置を、前記位置合わせをした状態における前記相対位置となるように制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記相対位置を示す情報は、前記目標転写位置に位置合わせした状態で検出された前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとのずれ量であることを特徴とする、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出部で取得された前記型のマークと前記基板の目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの相対位置を示す情報を保存し、目標転写位置毎に取得された前記相対位置を示す情報を更新することを特徴とする、請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記基板上の前記目標転写位置に前記転写材料を塗布する前に、前記型と前記基板を位置合わせし、前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとを検出し、
前記検出部による該検出の後に、前記基板上に前記転写材料を塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記基板上の前記目標転写位置に前記転写材料を塗布する前に、前記基板上の全ての目標転写位置に対して前記型のマークと前記目標転写位置に対応するマークとを検出し、
前記制御部は、前記基板上の全ての目標転写位置に対して、前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの相対位置を示す情報を取得し、前記基板上に前記転写材料を塗布し、前記型と前記転写材料との少なくとも一方を押し付けた状態で、前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの相対位置を、前記取得された相対位置となるように制御することを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記転写材料と前記型とが接触してから、前記型と前記基板を位置合わせした状態で、検出された前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの前記相対位置となるように制御を開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記基板と前記型が互いに平行となってから、前記型のマークと前記目標転写位置に対応する前記基板上のマークとの相対位置を示す情報を取得することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
基板上に塗布された転写材料と、パターンを有する型との少なくとも一方を押し付け、前記基板上に形成された複数のマークを検出することで算出された複数の目標転写位置に、前記パターンを転写するインプリント方法であって、
前記目標転写位置に前記パターンを転写するために、前記型と前記基板を位置合わせした状態で、前記型のマークと前記基板の目標転写位置に対応するマークとの相対位置を示す情報を取得する工程と、
前記目標転写位置で前記型と前記転写材料を押し付けた状態で、前記型のマークと前記基板の目標転写位置に対応するマークとの相対位置を、前記位置合わせをした状態における該相対位置となるように制御する工程と
を有することを特徴とするインプリント方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−84732(P2012−84732A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230648(P2010−230648)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】