説明

インホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法および装置

【課題】ハブベアリングがスプライン嵌合されていた出力軸を芯だし状態に保ったままハブベアリングの脱着を行い得るようにして、この脱着作業を容易なものにする。
【解決手段】ハウジング3の外端に治具30を取り付け、スライダ37の板38にハブベアリング18のホイールハブ22を取り付け、レバー41によりハブベアリング18をハウジング3の端蓋19から図示位置に引き抜く。この状態で、ハブベアリング18が嵌合していた箇所に芯だしプレート43を嵌合して、出力軸9の芯だし状態を保持する。よって、ハウジング3の外端から治具30を取り外し、ハブベアリング18の交換後、再びハウジング3の外端に治具30を取り付けるまでの間も出力軸9は芯だし状態に保たれる。交換後のハブベアリング18を所定位置に嵌合させるに当たっては、芯だしプレート43を除去し、交換後のハブベアリング18を図示位置から左方へ変位させることで、当該ハブベアリング18の嵌合が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を個々の回転電機により駆動して走行可能な電気自動車に用いられる、車輪ごとのインホイールモータユニットに関し、特にその出力軸を支承するハブベアリングの脱着方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータユニットとしては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
この提案技術は、回転電機およびこの回転電機により駆動される入力軸をハウジング内に収納して具え、入力軸の一端に同軸嵌合させて出力軸を設け、これら入力軸および出力軸間を遊星歯車式変速機により結合し、出力軸をハウジングの一端から突出させると共に、当該ハウジングの一端から突出する出力軸の外端をハブベアリングにより当該ハウジングの一端に軸承したものである。
【0003】
かかるインホイールモータユニットは、上記出力軸の外端に車輪を取り付けて実用するが、車載状態においてインホイールモータユニットのハブベアリングを脱着するに際しては先ず、車輪を関連部品とともにインホイールモータユニットから取り外してハブベアリングを露出させる。
【0004】
次いで、上記ハウジングの一端に対するハブベアリングの緊締状態をボルトなどの弛緩により解除し、その後ハブベアリングを出力軸の外端上をスライドさせながら、当該ハウジングの一端から遠ざかる方向へ変位させて、インホイールモータユニットから取り外すことができる。
【0005】
別のハブベアリングをインホイールモータユニットに取り付けるに際しては上記と逆の手順により、つまりこのハブベアリングを出力軸の外端上に嵌合し、この出力軸上をスライドさせながら上記ハウジングの一端に嵌合するまで変位させる。
その後ハブベアリングを、ボルトなどの緊締により上記ハウジングの一端に取り付け、ハブベアリングの脱着を完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−037355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ハブベアリングが上記した脱着作業中、上記ハウジングの一端と嵌合しなくなるところまで変位したとき、ハブベアリングは出力軸を芯だし状態に保持することができなくなる。
【0008】
一方で回転電機のロータおよびステータ間には径方向の磁力が作用しており、しかもこの磁力が円周方向の箇所に応じて異なる。
【0009】
そして出力軸は内端を、回転電機により駆動される入力軸の隣接端に同軸嵌合されており、回転電機のロータおよびステータ間に作用する径方向の磁力は入力軸を経て出力軸に達している。
【0010】
このため、ハブベアリングが上記した脱着作業中、上記ハウジングの一端と嵌合しなくなるところまで変位したとき、出力軸が上記径方向の磁力により芯だし状態に保持され得なくなって傾倒する。
【0011】
よって、ハブベアリングの交換に際し別のハブベアリングを本来の位置へ取り付けようとするとき、上記のごとく傾倒した出力軸を何らかの工具で芯だし状態に戻し、この芯だし状態を保つ必要がある。
しかしこの作業は、極めて困難であり、ハブベアリングの脱着に長時間を要し、実際上は許容限界を超えるのが実情であった。
【0012】
本発明は、ハブベアリングを脱着作業中も傾倒することなく、芯だし状態に保持しておくことができるようなインホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法および装置を提案して、上記の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明によるインホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法は、以下の順次工程になるものとする。
先ず、本発明の前提となるインホイールモータユニットを説明するに、これは、
回転電機および該回転電機により駆動される入力軸をハウジング内に収納して具え、前記入力軸の一端に同軸嵌合させると共に前記ハウジングの一端から突出させて出力軸を設け、前記ハウジングの一端から突出する前記出力軸の外端をハブベアリングにより前記ハウジングの一端に軸承したものである。
【0014】
本発明は、かかるインホイールモータユニットのハブベアリングを脱着するに際し、
前記ハウジングの一端に対する前記ハブベアリングの緊締状態を解除する工程と、
前記ハウジングの一端にハブベアリング脱着治具を取り付ける工程と、
前記ハブベアリング脱着治具により前記出力軸の芯だし状態を保持する工程と、
前記ハブベアリングを前記ハブベアリング脱着治具のスライダに取り付けて該スライダの操作によりハブベアリングを前記ハウジングの一端から遠ざかる方向へ変位させる工程と、
該ハブベアリングの変位により生じた前記ハウジングの一端およびハブベアリング間の軸線方向隙間から、前記ハウジングの一端および出力軸間における環状隙間内へ該出力軸の芯だし状態を保持する出力軸芯だしプレートを嵌合する工程と、
前記ハブベアリング脱着治具を前記ハウジングの一端から取り外して、前記スライダ上のハブベアリングを交換した後、ハブベアリング脱着治具を再び前記ハウジングの一端に取り付けた状態で、前記と逆の手順により交換後のハブベアリングを前記ハウジングの一端に取り付ける工程との順次組み合わせにより、ハブベアリングの脱着を行うことを特徴とするものである。
【0015】
また、かかる方法を実施するための本発明によるインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置は、
前記ハウジングの一端に対し取り付けおよび取り外し可能なハブベアリング脱着治具本体を具え、
該ハブベアリング脱着治具本体に、該ハブベアリング脱着治具本体が前記ハウジングの一端へ取り付られている状態で、前記出力軸の芯だし状態を保持するための出力軸芯だし保持手段と、
前記ハウジングの一端に対する緊締状態を解除されたハブベアリングを取り付けられて該ハブベアリングを前記ハウジングの一端から遠ざかる方向へ変位させるためのスライダとを設けて前記ハブベアリング脱着治具を構成し、
該スライダによるハブベアリングの変位で生じた前記ハウジングの一端およびハブベアリング間の軸線方向隙間から、前記ハウジングの一端および出力軸間における環状隙間内へ嵌合して該出力軸の芯だし状態を保持するための出力軸芯だしプレートを具備して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明によるインホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法および装置では、
ハウジングの一端にハブベアリング脱着治具が取り付けられている間は、該ハブベアリング脱着治具自身が出力軸の芯だし状態を保持し、ハウジングの一端からハブベアリング脱着治具が取り外されている間は、出力軸芯だしプレートが出力軸の芯だし状態を保持することとなる。
【0017】
つまり、ハウジングの一端にハブベアリング脱着治具を取り付けて行うハブベアリングの取り外し中に当該ハブベアリングがハウジングの一端に嵌合しなくなった後も出力軸はハブベアリング脱着治具により芯だし状態に保たれて傾倒することがなく、
またハブベアリングの交換用にハウジングの一端からハブベアリング脱着治具を取り外した後も、出力軸は出力軸芯だしプレートにより芯だし状態に保たれて傾倒することがなく、
更に、新しいハブベアリングの取り付け用にハウジングの一端へハブベアリング脱着治具を取り付けると、このハブベアリング脱着治具により出力軸は芯だし状態に保たれて傾倒することがなく、出力軸芯だしプレートを除去して、代わりに新しいハブベアリングを嵌合することにより、取り付けを完了することができる。
【0018】
従って、ハブベアリングの交換に際し新しいハブベアリングを本来の位置へ取り付けようとするとき、出力軸が傾倒していることがなく、常に芯だし状態に保たれており、
ハブベアリングの交換を、インホイールモータユニットが車載状態のままであっても簡単に、且つ短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のハブベアリング脱着方法および装置を用い得るインホイールモータユニットの一例を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の第1実施例になるハブベアリング脱着方法および装置によりハブベアリングの脱着を開始する準備が完了した状態を示す、図1と同様な縦断側面図である。
【図3】図2からハブベアリングの取り外しが進行し、出力軸芯だしプレートを取り付けた状態を示す、図1,2と同様な縦断側面図である。
【図4】出力軸芯だしプレートの詳細を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施例になるインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置を示す要部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明のハブベアリング脱着方法および装置を適用可能なインホイールモータユニットの一例を示す縦断側面図である。
この図において、1は、インホイールモータユニットのハウジング本体、2は、該ハウジング本体1のリヤカバーをそれぞれ示し、
これらハウジング本体1およびリヤカバー2でインホイールモータユニットのハウジング3を構成する。
【0021】
図1に示すインホイールモータユニットは、ハウジング3内に電動モータ4および遊星歯車組式減速機5(以下、単に「減速機」と言う)を収納して構成し、これら電動モータ4および減速機5を同軸に対向配置する。
電動モータ4は本発明における回転電機に相当するもので、ハウジング本体1の内周に嵌合して固設した円環状の外周ステータ6と、かかる円環状外周ステータ6(以下、単に「ステータ」と言う)の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配した内周ロータ7(以下、単に「ロータ」と言う)とで構成する。
【0022】
減速機5は、同軸に対向させて配置した入力軸8および出力軸9と、サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し軸線方向へずらせて同心配置したリングギヤ12と、これらサンギヤ11およびリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14とにより構成する。
【0023】
入力軸8は、前記のサンギヤ11を一体成形して具え、この入力軸8をサンギヤ11からリヤカバー2に向かう車幅方向内方へ延在させる。
出力軸9は、減速機5から反対方向(車幅方向外方)に延在させて、ハウジング本体1の車幅方向外端(図の右端)における開口より突出させ、この突出外端において出力軸9に後述のごとく車輪10を結合する。
ハウジング本体1の外端開口内に前記のリングギヤ12を回転止め、且つ抜け止めして固設し、プラネタリピニオン13は、サンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、およびリングギヤ12に噛合する小径ギヤ部13bを一体に有した段付きピニオンとする。
【0024】
段付きプラネタリピニオン13は、1個のみを図示しているが、3個一組として円周方向等間隔に配置し、この円周方向等間隔配置を保って段付きプラネタリピニオン13を共通なキャリア14により回転自在に支持する。
ここでキャリア14は、入力軸8に近い出力軸9の内端に設けてこれに一体化させ、減速機5の出力回転メンバとする。
【0025】
上記のごとくキャリア14を一体化させた出力軸9の内端部に、ベアリング15を介し入力軸8の突き合わせ端部を相対回転可能に軸受して貫入させる。
かくして入出力軸8,9は、相対回転可能な軸ユニットを構成し、この軸ユニットは同時に前記したキャリア14および段付きプラネタリピニオン13をも、同一ユニットとして具える。
【0026】
上記のようにユニット化させた入出力軸8,9の軸ユニットをハウジング3に対し回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した2箇所でベアリング17,18により当該支承を行う。
これらベアリング17,18のうち、電動モータ側のベアリング17は、リヤカバー2と略同じ軸線方向位置において当該リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させる。
また、車輪側のハブベアリング18は、ハウジング本体1の外端開口を塞ぐ端蓋19にボルト20で取着したベアリングサポート21をインナレースとして具え、ハウジング本体1の外端開口から突出する出力軸9の突出部にスプライン嵌合させたホイールハブ22をアウタレースとして具え、
ベアリングサポート21の内周と、ホイールハブ22の外周との間に、転がり素子としてのボール18aを介在させて構成する。
【0027】
ここで電動モータ4の結合要領を詳述するに、そのロータ7は、電動モータ結合部材23を介して入力軸8に結合し、この結合位置を、減速機5と電動モータ側ベアリング17との間における軸線方向位置とする。
【0028】
次に、出力軸9に対する車輪10の結合要領を詳述する。
出力軸9に上記のごとくスプライン嵌合させ、ナット24により抜け止めしたホイールハブ22に同心に、ブレーキドラム25、および車輪10のホイールディスクを順次突き合わせて配置し、これらホイールハブ22、ブレーキドラム25、および車輪10のホイールディスクを、複数個の同心円上に配置してホイールハブ22に植設したホイールボルト26およびこれらに螺合させたホイールナット27により、出力軸9に対する車輪10の取り付けを行う。
【0029】
<インホイールモータユニットの作用>
図1に示す上記のインホイールモータユニットにおいて、電動モータ4のステータ6に通電すると、これからの電磁力で電動モータ4のロータ7が回転され、この回転は電動モータ結合部材23および入力軸8を介して減速機5のサンギヤ11に伝達される。
これによりサンギヤ11は、大径ギヤ部13aを介して段付きプラネタリピニオン13を回転させるが、このとき固定のリングギヤ12が反力受けとして機能するため、段付きプラネタリピニオン13は小径ギヤ部13bがリングギヤ12に沿って転動するような遊星運動を行う。
かかる段付きプラネタリピニオン13の遊星運動はキャリア14を介して出力軸9に伝達され、出力軸9を入力軸8と同方向に回転させる。
【0030】
上記の伝動作用により減速機5は、電動モータ4から入力軸8への回転を、サンギヤ11の歯数およびリングギヤ12の歯数により決まる比で減速して出力軸9に伝達する。
出力軸9への回転は、これにスプライン嵌合したホイールハブ22およびホイールボルト26を介して車輪10に伝達され、車両を走行させることができる。
なお車両の制動に際しては、ブレーキドラム25の内周面をブレーキシュー28により摩擦制動させて所期の目的を達成し得る。
【0031】
<ハブベアリング脱着装置>
上記したインホイールモータユニットの車載状態で、出力軸9をハウジング3の外端(端蓋19)に軸承しているハブベアリング18を、交換などのためハウジング3の外端(端蓋19)から脱着する際しては、本発明の第1実施例になる以下のようなハブベアリング脱着装置を用いる。
【0032】
このハブベアリング脱着装置を図2,3に基づき以下に説明する。
ハブベアリング18の脱着に際しては、先ず図1におけるホイールナット27の弛緩、除去により、予め車輪10をブレーキドラム25と共に取り外しておき、
また、ボルト20およびナット24の弛緩、除去によりハブベアリング18を、出力軸9上でスライドさせながら、ハウジング3の外端(端蓋19)から遠ざかる方向へ変位可能な緊締解除状態にしておく。
【0033】
なおこの状態でもハブベアリング18は図2に示すごとく、そのアウタレースであるベアリングサポート21のインロー部21aが端蓋19の内周に嵌合した状態を保つため、インナレースであるホイールハブ22の内周にスプライン嵌合した出力軸9を、ハウジング3内の入力軸8に対し傾倒することなく芯だし状態に保つことができる。
【0034】
次いで図2に示すごとく、ハウジング3の外端面(図2の右端面)にハブベアリング脱着治具30を取り付ける。
この治具30は、ハブベアリング脱着治具本体31を具え、この治具本体31を、4個の支柱32と、ハウジング3の外端面から遠い支柱32の端部を相互に橋絡する平板33とから成る門型に構成する。
ハブベアリング脱着治具30をハウジング3の外端面に取り付けるに当たっては、図2に示すごとくハブベアリング脱着治具本体31を、平板33から遠い支柱32の拡大端部34がハウジング3の外端面所定位置に突き当たるよう位置させ、この状態で支柱32の拡大端部34をハウジング3の外端面にボルト締結することにより、ハウジング3の外端面に対するハブベアリング脱着治具30の取り付けを行う。
【0035】
かかるハブベアリング脱着治具30の取り付け状態で出力軸9と同軸となるよう配して平板33に出力軸出力軸芯だしシャフト35を挿通し、この出力軸芯だしシャフト35には平板33の両側においてダブルロックナット36を螺合させて、出力軸芯だしシャフト35を平板33に対し抜け止めする。
出力軸9に近い出力軸芯だしシャフト35の内端には、図1に示すナット24が螺合していた出力軸9の先端雄ねじ部に螺合する雌ねじ部35aを形成し、出力軸9から遠い出力軸芯だしシャフト35の外端には、回転操作摘み35bを設ける。
【0036】
出力軸芯だしシャフト35は、ダブルロックナット36の弛緩状態で平板33に対し自由にストローク可能であると共に回転自在であり、
この状態で摘み35bを操作して出力軸芯だしシャフト35の内端雌ねじ部35aを出力軸9の先端雄ねじ部に螺合した後、ダブルロックナット36を緊締して出力軸芯だしシャフト35を平板33に固定することにより、出力軸9の芯だし状態を保持することができる。
従って、出力軸芯だしシャフト35およびダブルロックナット36は、本発明における出力軸芯だし保持手段を構成する。
【0037】
平板33には更に、複数個のスライダ37を出力軸9と平行な方向へスライド可能に設ける。
ハウジング3の外端面に近いこれらスライダ37の内端を、共通なハブベアリング着脱板38に結着して相互に橋絡させる。
ハブベアリング着脱板38は、ホイールハブ22のブレーキドラム取り付け面に接する円環状とし、ホイールハブ22に植設されたホイールボルト26が貫通する透孔38aを穿設する。
【0038】
ハブベアリング着脱板38をスライダ37による案内下で図2の位置に向け左行させ、このときハブベアリング着脱板38の透孔38aにホイールボルト26の先端が整列するようホイールハブ22の回転位置を調整する。
かくて、ハブベアリング着脱板38が図2のごとくホイールハブ22のブレーキドラム取り付け面に接するとき、ホイールボルト26がハブベアリング着脱板38の透孔38aを通過し、ホイールボルト26の先端が透孔38aから突出する。
この突出したホイールボルト26の先端にナット39を螺合して緊締することで、ホイールハブ22(ハブベアリング18)をハブベアリング着脱板38(スライダ37)に取り付ける。
【0039】
支柱32にはハブベアリング引き抜きレバー41を枢支ピン42の周りで揺動可能に設け、レバー41の操作端41a(図2の上端)から遠い作用端41bをホイールハブ22に係合させる。
かくてハブベアリング引き抜きレバー41を図2の位置(図3の二点鎖線位置)から図3の実線位置へ揺動させるとき、ホイールハブ22(ハブベアリング18)は図2の位置からスライダ37による案内下で、出力軸9とのスプライン嵌合部に沿って、ハウジング3の外端面から遠ざかる軸線方向へ、図3の位置まで変位する。
【0040】
このとき、ベアリングサポート21のインロー部21aがハウジング3の端蓋19との嵌合域から外れる結果、ベアリングサポート21(ハブベアリング18)が出力軸9の芯だし機能を失う。
しかし、ハブベアリング脱着治具30の出力軸芯だしシャフト35が出力軸9の芯だし状態を保持していることから、出力軸9はステータ4およびロータ7間の径方向磁力によっても傾倒することなく芯だし状態に保たれている。
【0041】
しかして、かかる出力軸9の芯だし状態保持機能は、ハブベアリング脱着治具30が図2,3のごとくハウジング3の外端面に取り付けられている間しか得られず、
ハブベアリング18を、交換などに際しハブベアリング脱着治具30(ハブベアリング着脱板38)から取り出すべく、ハブベアリング脱着治具30を一旦ハウジング3の外端面から取り外すと、出力軸9はステータ4およびロータ7間の径方向磁力によって傾倒し、もはや芯だし状態でなくなる。
このように出力軸9が一旦芯だし状態でなくなって傾倒すると、再び芯だし状態にするのが極めて困難で、ハブベアリング18の脱着作業が非常に難しくなる。
【0042】
そこで本実施例においては、ハブベアリング脱着治具30を一旦ハウジング3の外端面から取り外した後も、出力軸9が芯だし状態に保たれ、ステータ4およびロータ7間の径方向磁力によっても傾倒することがないようにするため、
図3に示すごとく、ハブベアリング18の図2に示す位置から図3に示す位置への変位によって生じたハブベアリング18および端蓋19間の軸線方向隙間より、端蓋19および出力軸9間の環状隙間内へ嵌合して、出力軸9の芯だし状態を保持するための出力軸芯だしプレート43を、ハブベアリング脱着治具30に付設する。
【0043】
この出力軸芯だしプレート43は、図4に明示するごとく、中心軸線Oを通る面Mにおいて二分割した上下半円プレート部分43a,43bの組み合わせにより構成し、
これら半円プレート部分43a,43bを、図3に示すハブベアリング18および端蓋19間の軸線方向隙間から径方向に挿入した後、軸線方向(図3の左方)へ移動させて端蓋19および出力軸9間の環状隙間内へ嵌合させて用いるものとする。
【0044】
これがため、出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)には、ベアリングサポート21のインロー部21aと同仕様のインロー部43cを設定し、このインロー部43cを、ベアリングサポート21のインロー部21aが嵌合していた端蓋19の内周に嵌合させる。
そして、図1のようにベアリングサポート21を端蓋19に取り付けるのに用いたと同じボルト20、およびこれらボルト20を螺合させるべく端蓋19に形成したネジ穴を用いて出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)を端蓋19に取着し、そのため出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)にボルト20の挿通孔43dを図3,4のごとくに形成する。
【0045】
出力軸9の外周に嵌合する出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)の内周部は、図1,2のごとくにハブベアリング18が突き当たるようにすべく形成した出力軸19の段差部9aに対し、その外周に嵌合する嵌合面43eと、軸線方向に突き当たる軸線方向衝合面43fとを有した皿状部43gに構成する。
そして、出力軸9と接するこの皿状部43gは、出力軸9(例えば鋳鉄)よりも硬度の低い材料(例えばアルミニューム)で構成する。
【0046】
<ハブベアリング脱着方法>
インホイールモータユニットの車載状態で、図1のごとく出力軸9をハウジング3の外端(端蓋19)に軸承しているハブベアリング18を、交換などのためハウジング3の外端(端蓋19)から脱着する方法を、図2,3に基づき以下に説明する。
【0047】
かかるハブベアリング18の脱着に際しては、先ず図1におけるホイールナット27の弛緩、除去により、予め車輪10をブレーキドラム25と共にホイールハブ22から取り外しておき、
また、ボルト20およびナット24の弛緩、除去によりハブベアリング18を、出力軸9上でスライドさせながら、ハウジング3の外端(端蓋19)から遠ざかる方向へ変位可能な緊締解除状態にしておく。
【0048】
なおこの状態でもハブベアリング18は図2に示すごとく、そのアウタレースであるベアリングサポート21のインロー部21aが端蓋19の内周に嵌合した状態を保つため、インナレースであるホイールハブ22の内周にスプライン嵌合した出力軸9を、ハウジング3内の入力軸8に対し傾倒することなく芯だし状態に保っている。
【0049】
次いで図2に示すごとく、ハウジング3の外端面(図2の右端面)にハブベアリング脱着治具30を取り付ける。
この取り付けに当たっては、図2に示すごとくハブベアリング脱着治具本体31を、平板33から遠い支柱32の拡大端部34がハウジング3の外端面所定位置に突き当たるよう位置させ、この状態で支柱32の拡大端部34をハウジング3の外端面にボルト締結することにより、ハウジング3の外端面に対するハブベアリング脱着治具30の取り付けを行う。
【0050】
かかるハブベアリング脱着治具30の取り付け状態で、ダブルロックナット36の弛緩により出力軸芯だしシャフト35を平板33に対し自由にストローク可能、且つ回転自在となす。
この状態で摘み35bを操作して出力軸芯だしシャフト35の内端雌ねじ部35aを出力軸9の先端雄ねじ部に螺合した後、ダブルロックナット36を緊締して出力軸芯だしシャフト35を平板33に固定する。
これにより出力軸9は、ハブベアリング18が端蓋19から抜け出したとしても、ハブベアリング脱着治具30により芯だし状態に保持され得る。
【0051】
次にハブベアリング着脱板38をスライダ37による案内下で図2の位置に向け左行させ、このときハブベアリング着脱板38の透孔38aにホイールボルト26の先端が整列するようホイールハブ22の回転位置を調整する。
かくて、ハブベアリング着脱板38が図2のごとくホイールハブ22のブレーキドラム取り付け面に接するとき、ホイールボルト26がハブベアリング着脱板38の透孔38aを通過し、ホイールボルト26の先端が透孔38aから突出する。
この突出したホイールボルト26の先端にナット39を螺合して緊締することで、ホイールハブ22(ハブベアリング18)をハブベアリング着脱板38(スライダ37)に取り付ける。
【0052】
その後ハブベアリング引き抜きレバー41を図2の位置(図3の二点鎖線位置)から図3の実線位置へ揺動させる。
このとき、ホイールハブ22(ハブベアリング18)はレバー41の作用端41bにより図2の位置から、スライダ37による案内下で、出力軸9とのスプライン嵌合部に沿って、ハウジング3の外端面から遠ざかる軸線方向へ、図3の位置まで変位される。
【0053】
このとき、ベアリングサポート21のインロー部21aがハウジング3の端蓋19との嵌合域から外れる結果、ベアリングサポート21(ハブベアリング18)が出力軸9の芯だし機能を失う。
しかし、ハブベアリング脱着治具30の出力軸芯だしシャフト35が出力軸9の芯だし状態を保持していることから、出力軸9はステータ4およびロータ7間の径方向磁力によっても傾倒することなく芯だし状態に保たれている。
【0054】
しかし、かかる出力軸9の芯だし状態保持機能は、ハブベアリング脱着治具30が図2,3のごとくハウジング3の外端面に取り付けられている間しか得られず、
ハブベアリング18を、交換などに際しハブベアリング脱着治具30(ハブベアリング着脱板38)から取り出すべく、ハブベアリング脱着治具30を一旦ハウジング3の外端面から取り外すと、出力軸9はステータ4およびロータ7間の径方向磁力によって傾倒し、もはや芯だし状態でなくなる。
このように出力軸9が一旦芯だし状態でなくなって傾倒すると、再び芯だし状態にするのが極めて困難で、ハブベアリング18の脱着作業が非常に難しくなる。
【0055】
そこで本実施例においては、ハブベアリング脱着治具30を一旦ハウジング3の外端面から取り外した後も、出力軸9が芯だし状態に保たれ、ステータ4およびロータ7間の径方向磁力によっても傾倒することがないようにするため、
図3に示すごとく、ハブベアリング18の図2に示す位置から図3に示す位置への変位によって生じたハブベアリング18および端蓋19間の軸線方向隙間より、端蓋19および出力軸9間の環状隙間内へ出力軸芯だしプレート43を嵌合して、出力軸9の芯だし状態を保持し得るようになす。
【0056】
かかる出力軸芯だしプレート43の嵌合に当たっては、この出力軸芯だしプレート43を半円プレート部分43a,43bで構成しておき、これら半円プレート部分43a,43bを、図3に示すハブベアリング18および端蓋19間の軸線方向隙間から径方向に挿入した後、軸線方向(図3の左方)へ移動させて端蓋19および出力軸9間の環状隙間内へ嵌合させるものとする。
【0057】
この時、出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)のインロー部43cを、ベアリングサポート21のインロー部21aが嵌合していた端蓋19の内周に嵌合させるようにし、
また、図1のようにベアリングサポート21を端蓋19に取り付けるのに用いたと同じボルト20、およびこれらボルト20を螺合させるべく端蓋19に形成したネジ穴を用いて出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)を端蓋19に取着する。
【0058】
その後、ハブベアリング18の交換などに際し、このハブベアリング18をハブベアリング脱着治具30(ハブベアリング着脱板38)から取り出すべく、レバー41によりハブベアリング18を図3の右方へ限界まで変位させた後、ハブベアリング脱着治具30を一旦ハウジング3の外端面から取り外す。
なお、ハブベアリング脱着治具30の取り外し中、出力軸9がハブベアリング18に連れ動かされるのを、プレート43(半円プレート部分43a,43b)の軸線方向衝合面43fによって防止し得る。
また、かかるハブベアリング脱着治具30の取り外しによっても、これに代わって、端蓋19および出力軸9間の環状隙間内に嵌合した出力軸芯だしプレート43が出力軸9の芯だし状態を保持し得ることから、出力軸9は傾倒することなく芯だし状態に保たれる。
【0059】
よって、ハブベアリング脱着治具30(ハブベアリング着脱板38)上のハブベアリング18を交換後、再度ハブベアリング脱着治具30を図3のごとくハウジング3の外端面に取り付けるときも、ハブベアリング18を難なく出力軸9に嵌合し得ると共に、出力軸芯だしシャフト35の内端雌ねじ部35aを出力軸9の先端雄ねじ部に螺合して行う出力軸9の芯だしも難なく遂行することができる。
【0060】
かようにハブベアリング18を出力軸9に嵌合し、出力軸芯だしシャフト35による出力軸9の芯だしが完了して、図3の状態となった後は、ボルト20の弛緩、除去により出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)を取り外す。
次に、スライダ37の案内下でハブベアリング18を図3の位置から、出力軸9に沿ってスライドさせながら、図2の取り付け位置となし、この状態で図1に示すごとくボルト20の緊締によりハブベアリング18の取着を完了する。
【0061】
その後は図1に示すごとく、出力軸9の先端にナット24を螺合してハブベアリング18を抜け止めし、ホイールハブ22に対するブレーキドラム25および車輪10の取着を行って全ての作業を終了する。
【0062】
<第1実施例の効果>
上記した本実施例になるインホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法および装置によれば、
ハウジング3の外端にハブベアリング脱着治具30が取り付けられている間は、該ハブベアリング脱着治具自身が出力軸芯だしシャフト35により出力軸9の芯だし状態を保持し、ハウジング3の外端からハブベアリング脱着治具30が取り外されている間は、出力軸芯だしプレート43が出力軸9の芯だし状態を保持する。
【0063】
従って、ハウジング3の外端にハブベアリング脱着治具30を取り付けて行うハブベアリング18の取り外し中に当該ハブベアリング18がハウジング3の外端に嵌合しなくなった後も、出力軸9はハブベアリング脱着治具30(出力軸芯だしシャフト35)により芯だし状態に保たれて傾倒することがない。
またハブベアリング18の交換用にハウジング3の外端からハブベアリング脱着治具30を取り外した後も、出力軸18は出力軸芯だしプレート43により芯だし状態に保たれて傾倒することがない。
更に、新しいハブベアリングの取り付け用にハウジング3の外端へハブベアリング脱着治具30を取り付けると、このハブベアリング脱着治具30により出力軸9は芯だし状態に保たれて傾倒することがなく、出力軸芯だしプレート43を端蓋19および出力軸9間の環状隙間から除去して、代わりにこの環状隙間へ新しいハブベアリングを嵌合することにより、その取り付けを完了することができる。
【0064】
従って、ハブベアリング18の交換に際し新しいハブベアリングを本来の位置へ取り付けようとするとき、出力軸9が傾倒していることがなく、常に芯だし状態に保たれており、
ハブベアリング18の交換を、インホイールモータユニットが車載状態のままであっても簡単に、且つ短時間で行うことができる。
【0065】
また、出力軸芯だしプレート43と出力軸9との嵌合部に軸線方向衝合面43fを設定するため、
ハブベアリング脱着治具30をハウジング3の外端から取り外す時におけるハブベアリング18の引き抜き変位中に出力軸9が連れ動かされるのを、軸線方向衝合面43fによって阻止することができ、ハブベアリング18の上記脱着作業を容易に遂行することができる。
【0066】
更に、出力軸芯だしプレート43を図4に示すように、中心軸線Oを通る面Mにおいて二分割した半円プレート部分43a,43bの組み合わせにより構成し、これら半円プレート部分43a,43bを、図3に示すハウジング3の外端およびハブベアリング18間の軸線方向隙間から径方向に挿入した後、軸線方向へ移動させて端蓋19および出力軸9間の環状隙間内へ図3のごとく嵌合するため、
ハブベアリング脱着治具30が取り付けられている状態のままでも出力軸芯だしプレート43を端蓋19および出力軸9間の環状隙間内へ嵌合することができ、上記の作用効果を確実に達成し得る。
【0067】
また、出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)の内周部にあって、図3のごとく出力軸9と接する皿状部43gを、出力軸9よりも硬度の低い材料で構成したことから、
ハブベアリング18の脱着時に出力軸芯だしプレート43(半円プレート部分43a,43b)で出力軸9に傷が付くのを防止することができる。
【0068】
<第2実施例>
図5は、本発明の第2実施例になるインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置を示す。
図2,3の第1実施例においては、出力軸芯だしシャフト35により出力軸9を芯出し状態に保持するに際し、出力軸芯だしシャフト35の雌ねじ部35aを出力軸9の先端雄ねじ部に螺合させこととしたが、
本実施例においては、図5に示すごとく出力軸9の先端面に芯だし円錐窪み9bを設け、出力軸芯だしシャフト35の対応端(内端)を円錐尖端35cに構成する。
それ以外は第1実施例と同様な構成とする。
【0069】
本実施例において出力軸芯だしシャフト35により出力軸9を芯出し状態に保持するに際しては、
ダブルロックナット36の弛緩により芯だしシャフト35を平板33に対し自由にストローク可能にする。
この状態で出力軸芯だしシャフト35の円錐尖端35cを出力軸9の先端における円錐窪み9b内に進入させた後、ダブルロックナット36を緊締して芯だしシャフト35を平板33に固定する。
これにより出力軸9は、出力軸芯だしシャフト35(ハブベアリング脱着治具30)により傾倒を防止され、芯だし状態に保持される。
【0070】
本実施例のハブベアリング脱着治具30による出力軸芯だし要領によれば、出力軸芯だしシャフト35を回転することなく、ストロークさせるだけでよいため、出力軸芯だし作業が簡単で、これを短時間のうちに完遂させることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ハウジング本体
2 リヤカバー
3 インホイールモータユニットハウジング
4 電動モータ(回転電機)
5 遊星歯車組式減速機
6 ステータ
7 ロータ
8 入力軸
9 出力軸
9a 段差部
9b 円錐窪み
10 車輪
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 段付きプライマリピニオン
14 キャリア
18 ハブベアリング
18a 転がり素子
19 端蓋
21 ベアリングサポート(ハブベアリングのアウタレース)
22 ホイールハブ(ハブベアリングのインナレース)
23 電動モータ結合部材
24 ハブベアリング抜け止めナット
25 ブレーキドラム
26 ホイールボルト
27 ホイールナット
30 ハブベアリング脱着治具
31 ハブベアリング脱着治具本体
32 支柱
33 平板
35 出力軸芯だしシャフト(出力軸芯だし保持手段)
35a 雌ねじ部
35b 回転操作摘み
35c 円錐尖端
36 ダブルロックナット(出力軸芯だし保持手段)
37 スライダ
38 ハブベアリング着脱板
39 ナット
41 ハブベアリング引き抜きレバー
43 出力軸芯だしプレート
43a,43b 半円プレート部分
43f 軸線方向衝合面
43g 内周皿状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機および該回転電機により駆動される入力軸をハウジング内に収納して具え、前記入力軸の一端に同軸嵌合させると共に前記ハウジングの一端から突出させて出力軸を設け、前記ハウジングの一端から突出する前記出力軸の外端をハブベアリングにより前記ハウジングの一端に軸承したインホイールモータユニットのハブベアリングを脱着するに際し、
前記ハウジングの一端に対する前記ハブベアリングの緊締状態を解除する工程と、
前記ハウジングの一端にハブベアリング脱着治具を取り付ける工程と、
前記ハブベアリング脱着治具により前記出力軸の芯だし状態を保持する工程と、
前記ハブベアリングを前記ハブベアリング脱着治具のスライダに取り付けて該スライダの操作によりハブベアリングを前記ハウジングの一端から遠ざかる方向へ変位させる工程と、
該ハブベアリングの変位により生じた前記ハウジングの一端およびハブベアリング間の軸線方向隙間から、前記ハウジングの一端および出力軸間における環状隙間内へ該出力軸の芯だし状態を保持する出力軸芯だしプレートを嵌合する工程と、
前記ハブベアリング脱着治具を前記ハウジングの一端から取り外して、前記スライダ上のハブベアリングを交換した後、ハブベアリング脱着治具を再び前記ハウジングの一端に取り付けた状態で、前記と逆の手順により交換後のハブベアリングを前記ハウジングの一端に取り付ける工程との順次組み合わせになることを特徴とするインホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたインホイールモータユニットのハブベアリング脱着方法を実施するための装置において、
前記ハウジングの一端に対し取り付けおよび取り外し可能なハブベアリング脱着治具本体を具え、
該ハブベアリング脱着治具本体に、該ハブベアリング脱着治具本体が前記ハウジングの一端へ取り付られている状態で、前記出力軸の芯だし状態を保持するための出力軸芯だし保持手段と、
前記ハウジングの一端に対する緊締状態を解除されたハブベアリングを取り付けられて該ハブベアリングを前記ハウジングの一端から遠ざかる方向へ変位させるためのスライダとを設けて前記ハブベアリング脱着治具を構成し、
該スライダによるハブベアリングの変位で生じた前記ハウジングの一端およびハブベアリング間の軸線方向隙間から、前記ハウジングの一端および出力軸間における環状隙間内へ嵌合して該出力軸の芯だし状態を保持するための出力軸芯だしプレートを具備して成ることを特徴とするインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置において、
前記出力軸芯だしプレートと前記出力軸との嵌合部に、前記スライダによるハブベアリングの変位に前記出力軸が連れ動かされるのを阻止するための軸線方向衝合面を設定したことを特徴とするインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置において、
前記出力軸芯だしプレートは、中心軸線を通る面において二分割した半円プレート部分の組み合わせにより構成し、これら半円プレート部分を前記ハウジングの一端およびハブベアリング間の軸線方向隙間から径方向に挿入した後、軸線方向へ移動させた前記ハウジングの一端および出力軸間の環状隙間内へ嵌合するものであることを特徴とするインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載されたインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置において、
前記出力軸芯だしプレートは、前記出力軸と接する箇所を、出力軸よりも硬度の低い材料で成形したものであることを特徴とするインホイールモータユニットのハブベアリング脱着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−51065(P2012−51065A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195261(P2010−195261)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】