説明

インホイールモータ駆動装置およびその設計方法

【課題】 車輪用軸受、モータ、および減速機を含むインホイールモータユニットにおいて、モータ部の発熱を外部に放熱しやすいインホイールモータを提供する。
【解決手段】 モータBの低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域Lで、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域LHで、銅損と鉄損から構成される上記モータBでの損失の内、上記ステータでの損失を50%以上とする。上記モータBは、上記ステータ23のコイル部28を冷却液によって冷却する冷却媒体流路45を有し、上記モータBの損失の内、銅損を25%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車に搭載されるモータ、減速機、および車輪用軸受が連結されたインホイールモータ駆動装置およびその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車で使用されるインホイールモータユニット形式のインホイールモータ駆動装置は、ハブベアリング等と呼ばれる車輪用軸受と、減速機と、モータとが連結され、モータの駆動トルクを、減速機で倍増(回転数では減速)し、車輪用軸受を介してタイヤに伝達する構成である。
この減速機には、遊星歯車を使用したものが用いられたりするが、乗り心地を確保するため、車体のばね下重量を極力軽くする構成が採られ、サイクロイド減速機が使用される(例えば、特許文献1)。またモータにおいても同様に、そのサイズは極力コンパクトに設計され、モータのパワー密度は大きくならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−258289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようにコンパクト化を図る結果、減速機およびモータの信頼性確保が重要な課題となる。特にモータの冷却性能は課題のひとつであり、小さなサイズ内、すなわち小さな表面積での冷却が必要となる。付随する冷却ユニットのサイズが大きくなると同時に、この冷却のための消費エネルギは大きくなってしまう。
特に、電気自動車用モータでは、自動車の運転状況に応じてトルクと回転速度が変化する。定格出力は点ではなく、トルクと回転速度の面的な特性で表される。このモータに要求される特性は、(1) 低速域では短時間で最大トルクを発生させる必要がある、(2) 中速・高速域では最大出力で広範囲の可変速運転、等である。
特に、低速域で発生させる過大トルクは短時間であるが、その際のモータへのエネルギ投入量は大きい。いかに、モータ部での発熱を抑制、もしくは冷却することで、インホイールモータの信頼性を確保する必要がある。
【0005】
上記インホイールモータ駆動装置は、モータや減速機が過負荷状態になると、温度が過度に上昇する。特に、サイクロイド方式とした高減速比を有する減速機を用いた場合、モータは高速回転までの回転数が必要となる反面、モータ自体のトルクは小さくできることが可能となり、モータの体格を小さくできることが特長となる。このようにモータを小型化できるが、モータ自体の出力は低減速比を有する減速機を用いた場合と変わらない。すなわち、モータからの発熱量は減速比を小さくとったものと同等となる。
よって、モータ自体の出力は低減速比を有する減速機を用いた場合と比較して、サイクロイド方式とした高減速比を有する減速機を用いた場合には、モータの体格が小さい中でモータの冷却を行わなければならないといった点が課題となる。
モータ部損失による熱量を極力抑えるか、もしくはモータ部の冷却方法についての提案はされてきているが、冷却しやすいモータ自体の構成については例がない。
【0006】
この発明の目的は、車輪用軸受、モータ、および減速機を含むインホイールモータ駆動装置における、モータでの発熱を外部に放熱し易いようにしたモータの基本構成、およびその設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のインホイールモータ駆動装置は、静止側軌道輪および回転側軌道輪を有し前記回転側軌道輪に車輪が取付けられる車輪用軸受、この車輪用軸受の前記回転側軌道輪を回転駆動するモータ、並びにこのモータと上記車輪用軸受の回転側軌道輪との間に介在した5以上の減速比を有する減速機を有し、上記モータの性能は低速回転域(Lo)で最大トルクを発生させるモータ特性を持ち、さらに上記モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われるように構成されたインホイールモータ駆動装置において、
上記モータの低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域(L)で、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域(LH)で、銅損と鉄損から構成される上記モータでの損失の内、上記ステータでの損失が50%以上であることを特徴とする。
なお、上記の「モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われる」とは、モータ全体の放熱量の少なくとも半分がステータからの放熱であることを言う。また、前記の
「低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域(L)」は、前記の「低速回転域(Lo)」である。
【0008】
このようにモータの特性にかかる構造を設定し、冷却が比較的容易となるステータの発熱割合を配分することで、モータの冷却が困難なモータロータの発熱を抑制し、モータの全体の冷却を促進することができる。その結果、5以上の減速比を有する減速機と組み合わせて使用される高出力でありながら体格の小さい小型モータの冷却が可能となる。
【0009】
この発明において、上記モータは、上記ステータのコイル部を冷却液によって冷却する冷却媒体流路を有し、上記モータの損失の内、銅損が25%以上であることが好ましい。 モータは、ステータのコイル部からの放熱を促進するために、冷却液をコイルに直接もしくは間接的に流す構成にした上で、モータからの発熱をコイル部での損失とするようなモータ設計することで、モータからの発熱量を効率良く外部に放熱できて、小型モータの冷却が容易となる。特に、このコイル部での発熱量(損失量)、すなわち銅損をモータ部全体での損失における割合を25%以上とすると、モータからの発熱量を効率良く外部に放熱できて、小型モータの冷却が容易となる。
【0010】
この発明において、上記減速機がサイクロイド減速機であっても良い。サイクロイド減速機は高減速比を有するので、インホイールモータ駆動装置のコンパクト化が可能である。このような高い減速比の減速機を用いた場合に、この発明における、モータでの発熱を外部に放熱し易くした利点がより一層効果的に発揮される。
【0011】
この発明のインホイールモータ駆動装置の設計方法は、静止側軌道輪および回転側軌道輪を有し前記回転側軌道輪に車輪が取付けられる車輪用軸受、この車輪用軸受の前記回転側軌道輪を回転駆動するモータ、並びにこのモータと上記車輪用軸受の回転側軌道輪との間に介在した5以上の減速比を有する減速機を有し、上記モータの性能は低速回転域で最大トルクを発生させるモータ特性を持ち、さらに上記モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われるように構成されたインホイールモータ駆動装置を設計する方法であって、
上記モータは、低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域で、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域で、銅損と鉄損から構成される上記モータでの損失の内、上記ステータでの損失が50%以上とすることを特徴とする。
この設計方法によると、車輪用軸受、モータ、および減速機を含むインホイールモータ駆動装置につき、モータでの発熱を外部に放熱し易いものを製造することができる。
【0012】
この発明の設計方法においても、上記モータは、上記ステータのコイル部を冷却液によって冷却する冷却媒体流路を有するものとし、上記モータの損失の内、銅損を25%以上とすることが好ましい。これにより、モータからの発熱量をより効率良く外部に放熱できて、小型モータの冷却が容易となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明のインホイールモータ駆動装置は、静止側軌道輪および回転側軌道輪を有し前記回転側軌道輪に車輪が取付けられる車輪用軸受、この車輪用軸受の前記回転側軌道輪を回転駆動するモータ、並びにこのモータと上記車輪用軸受の回転側軌道輪との間に介在した5以上の減速比を有する減速機を有し、上記モータの性能は低速回転域で最大トルクを発生させるモータ特性を持ち、さらに上記モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われるように構成されたインホイールモータ駆動装置において、上記モータの低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域で、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域で、銅損と鉄損から構成される上記モータでの損失の内、上記ステータでの損失が50%以上であるため、インホイールモータ駆動装置における、モータでの発熱を外部に放熱し易いという効果が得られる。
【0014】
この発明のインホイールモータ駆動装置の設計方法は、静止側軌道輪および回転側軌道輪を有し前記回転側軌道輪に車輪が取付けられる車輪用軸受、この車輪用軸受の前記回転側軌道輪を回転駆動するモータ、並びにこのモータと上記車輪用軸受の回転側軌道輪との間に介在した5以上の減速比を有する減速機を有し、上記モータの性能は低速回転域で最大トルクを発生させるモータ特性を持ち、さらに上記モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われるように構成されたインホイールモータ駆動装置を設計する方法であって、上記モータは、低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域で、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域で、銅損と鉄損から構成される上記モータでの損失の内、上記ステータでの損失が50%以上としたため、車輪用軸受、モータ、および減速機を含むインホイールモータ駆動装置につき、モータでの発熱を外部に放熱し易いものを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態にかかるインホイールモータ駆動装置の断面図とそのモータのモータ特性線図とを示す図である。
【図2】図1のII-II 線に沿う断面図である。
【図3】同インホイールモータ駆動装置の減速機部の断面図である。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【図5】モータの特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を図1ないし図5に説明する。図1に、車両の車輪用軸受AとモータBとの間に減速機Cを介在させ、車輪用軸受Aで支持されるハブとモータBの出力軸24とを同軸心上で連結したインホイールモータ駆動装置を示す。これら車輪用軸受A、モータB、および減速機Cは、互いに一つの組立部品としてユニット化されたインホイールモータユニットUを構成する。減速機Cは、5倍以上の減速比を有するものとする。この例では、減速機Cは、サイクロイド減速機であって、モータBの出力軸24に同軸に連結される入力軸32に偏心部32a,32bを形成し、偏心部32a,32bにそれぞれ軸受35を介して曲線板34a,34bを装着し、曲線板34a,34bの偏心運動を車輪軸受Aへ回転運動として伝達する構成である。
【0017】
すなわち、減速機Cにつき、モータBの回転を曲線板34a,34bの偏心運動とし、この偏心運動を回転運動としてハブに伝達するサイクロイド減速機とすることにより、コンパクトで大きな減速比が得られる減速機Cとこの減速機Cのコンパクトな配置構造を有するインホイールモータ駆動装置である。上記サイクロイド減速機Cは、部品点数が少なくコンパクトに設計でき、1段で1/10以上の大きな減速比を得ることができる。
【0018】
モータBは、外部のコントローラ51によって駆動され、その電流源はバッテリ(図示せず)によって供給される。コントローラ51は、外部のアクセル(図示せず)から出力されるアクセル信号に従い、モータBの駆動電流を制御するものである。また、コントローラ51は、モータBの回転数を回転センサ(図示せず)で検出し、モータBの回転制御に利用する構成である。前記アクセルは、車両のアクセルペダル(図示せず)と、このアクセルペダルの踏み込み量を電気信号であるアクセル信号に変換するアクセル信号生成手段とで構成される。
【0019】
このインホイールモータ駆動装置の機械部分の具体的構成例を説明する。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。車輪用軸受Aは、軸受の転走面を形成した内方部材2がハブを構成する第3世代型の内輪回転タイプのハブベアリングとされている。
【0020】
この車輪用軸受Aは、内周に複列の転走面3を形成した外方部材1と、これら各転走面3に対向する転走面4を形成した内方部材2と、これら外方部材1および内方部材2の転走面3,4間に介在した複列の転動体5とで構成される。内方部材2は、車両の車輪を取付けるハブを兼用する。この車輪用軸受Aは、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体5はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面3,4は断面円弧状であり、各転走面3,4は接触角が外向きとなるように形成されている。外方部材1とハブ2との間の軸受空間のアウトボード側端は、シール部材7でシールされている。
【0021】
外方部材1は静止側軌道輪となるものであって、減速機Cのハウジング33のうちのアウトボード側のハウジング33bに取付けるフランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。フランジ1aには、周方向の複数箇所にボルト挿通孔14が設けられている。また、ハウジング33bには、ボルト挿通孔14に対応する位置に、内周にねじが切られたボルト螺着孔44が設けられている。ボルト挿通孔14に挿通した取付ボルト15をボルト螺着孔44に螺着させることにより、外方部材1がハウジング33bに取付けられる。
【0022】
内方部材2は、車輪(図示せず)の取付用のハブフランジ9aを有するアウトボード側材9と、このアウトボード側材9の内周にアウトボード側が嵌合して加締めによってアウトボード側材9に一体化されたインボード側材10とでなる。これらアウトボード側材9およびインボード側材10に、前記各列の転走面4が形成されている。インボード側材10の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、周方向複数箇所にハブボルト16の挿入孔17が設けられている。アウトボード側材9のハブフランジ9aの根元部付近には、ホイールおよび制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。このパイロット部13の内周には、前記貫通孔11のアウトボード側端を塞ぐキャップ18が取付けられている。
【0023】
モータBは、筒状のハウジング22に固定したステータ23と出力軸24に取付けたロータ25との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のものである。出力軸24は、減速機Cのインボード側のハウジング33aの筒部に2つの軸受26で片持ち支持されている。出力軸24とハウジング33a間の隙間のインボード側端は、シール部材でシールされている。ハウジング22の周壁部には冷却媒体流路45が全周に渡り設けられている。冷却媒体流路45には、ポンプ等の供給駆動源(図示せず)により、油または水溶性の冷却剤等からなる冷却媒体が、循環させられる。
【0024】
減速機Cは、上記のようにサイクロイド減速機であり、図3のように外形がなだらかな波状のトロコイド曲線で形成された2枚の曲線板34a,34bが、それぞれ軸受35を介して入力軸32の各偏心部32a,32bに装着してある。これら各曲線板34a,34bの偏心運動を外周側で案内する複数の外ピン36を、それぞれハウジング33bに差し渡して設け、内方部材2のインボード側材10に取付けた複数の内ピン38を、各曲線板34a,34bの内部に設けられた複数の円形の貫通孔39に挿入状態に係合させてある。入力軸32は、モータBの出力軸24とスプライン結合されて一体に回転する。なお、入力軸32はインボード側のハウジング33aと内方部材2のインボード側材10の内径面とに2つの軸受40で両持ち支持されている。
【0025】
モータBの出力軸24が回転すると、これと一体回転する入力軸32に取付けられた各曲線板34a,34bが偏心運動を行う。この各曲線板34a,34bの偏心運動が、内ピン38と貫通孔39との係合によって、内方部材2に回転運動として伝達される。出力軸24の回転に対して内方部材2の回転は減速されたものとなる。
【0026】
前記2枚の曲線板34a,34bは、互いに偏心運動による振動が打ち消されるように180°位相をずらして入力軸32の各偏心部32a,32bに装着され、各偏心部32a,32bの両側には、各曲線板34a,34bの偏心運動によって発生する回転軸に直交する軸回りの慣性偶力よる振動を打ち消すように、各偏心部32a,32bの偏心方向と逆方向へ偏心させたカウンターウエイト41が装着されている。
【0027】
図4に拡大して示すように、前記各外ピン36と内ピン38には軸受42,43が装着され、これらの軸受42,43の外輪42a,43aが、それぞれ各曲線板34a,34bの外周と各貫通孔39の内周とに転接する。したがって、外ピン36と各曲線板34a,34bの外周との接触抵抗、および内ピン38と各貫通孔39の内周との接触抵抗を低減し、各曲線板34a,34bの偏心運動をスムーズに内方部材2に回転運動として伝達することができる。
【0028】
この車輪用軸受装置は、減速機Cのハウジング33bまたはモータBのハウジング22の外周部で、ナックル等の懸架装置(図示せず)を介して車体に固定される。
【0029】
図2は、モータの断面図(図1のII-II 断面)を示す。モータBはロータ25とステータ23からなる。このモータBは、ロータ25とステータ23との間にラジアルギャップを設けたラジルアギャップ型のIPMモータ(すなわち埋込磁石型同期モータ)である。図示の例では、ロータ25は軟質磁性材料からなるコア部29と、このコア部29に内蔵される永久磁石30から構成される。永久磁石30は、隣り合う2つの永久磁石がロータコア部29内の同一円周上で断面ハ字状に向き合うように配列される。ステータ23は軟質磁性材料からなるコア部27とコイル28で構成される。コア部27は外周面が断面円形とされたリング状で、その内周面に内径側に突出する複数のティース27aが円周方向に並んで形成されている。コイル28は、ステータコア部27の前記各ティース27aに巻回されている。
【0030】
モータBは、電気自動車の走行性能から図5のような特性が求められるため、この実刑形態では次のように設計している。すなわち、図中Lo部で示される低速回転時の必要トルクは大きく、この運転状態でのモータからの発熱量は大きくなる。そこで、この実施形態では、モータBの低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域Lでは、モータBの損失(発熱)を主にステータ23で発生させ、さらにモータBの冷却を主にステータ23からの放熱によって行われるように構成する。なお、図5、図1ではLo,Lを異ならせて図示しているが、例えば、「最大のトルクを発生させる回転数域(L)」は、前記「低速回転域(Lo)」である。
【0031】
このようなモータBの構成を採ることで、モータBの発熱が抑制されモータBの信頼性が向上する。特に、このモータBの低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域Lにおいて、モータ発熱が大きい。そのため、この実施形態では、この領域Lでの最大トルクでの50%以上の高出力領域(図5中LHT部)において、上述の構成を適用している。
また、この高出力領域LHにおけるモータBの損失(発熱)のうちステータ23での損失を50%以上となることが望ましく、この実施形態では、高出力領域LHにおけるモータの損失(発熱)のうちステータ23での損失を50%以上としている。
さらに、モータBはステータ23のコイル28を冷却液によって強制冷却させる構成とすることが望ましい。この場合、モータBの損失の内、コイル28での損失を全体の25%以上であることが望ましい。そのため、この実施形態では、ステータ23のコイル部28を冷却液によって冷却する冷却媒体流路45(図1)を有し、上記モータBの損失の内、銅損を25%以上としている。
【0032】
なお、上記各実施形態は、一つの車輪におけるインホイールモータ駆動装置について説明したが、車両の各車輪を駆動するモータに対して、上記各実施形態で述べたインホイールモータ駆動装置が適用される。
また、上記各実施形態は、減速機Cがサイクロイド型である場合につき説明したが、この発明は、減速機Cを他の各種構成のものとした場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…外方部材
2…内方部材(ハブ)
5…転動体
23…ステータ
24…出力軸
25…ロータ
32…入力軸
32a,32b…偏心部
34a,34b…曲線板
A…車輪用軸受
B…モータ
C…減速機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止側軌道輪および回転側軌道輪を有し前記回転側軌道輪に車輪が取付けられる車輪用軸受、この車輪用軸受の前記回転側軌道輪を回転駆動するモータ、並びにこのモータと上記車輪用軸受の回転側軌道輪との間に介在した5以上の減速比を有する減速機を有し、上記モータの性能は低速回転域で最大トルクを発生させるモータ特性を持ち、さらに上記モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われるように構成されたインホイールモータ駆動装置において、
上記モータの低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域で、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域で、銅損と鉄損から構成される上記モータでの損失の内、上記ステータでの損失が50%以上であることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、上記モータは、上記ステータのコイル部を冷却液によって冷却する冷却媒体流路を有し、上記モータの損失の内、銅損が25%以上であるインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、上記減速機がサイクロイド減速機であるインホイールモータ駆動装置。
【請求項4】
静止側軌道輪および回転側軌道輪を有し前記回転側軌道輪に車輪が取付けられる車輪用軸受、この車輪用軸受の前記回転側軌道輪を回転駆動するモータ、並びにこのモータと上記車輪用軸受の回転側軌道輪との間に介在した5以上の減速比を有する減速機を有し、上記モータの性能は低速回転域で最大トルクを発生させるモータ特性を持ち、さらに上記モータの冷却は主にステータからの放熱によって行われるように構成されたインホイールモータ駆動装置を設計する方法であって、
上記モータは、低速回転で最大のトルクを発生させる回転数域で、かつ前記最大トルクの50%以上の高出力領域で、銅損と鉄損から構成される上記モータでの損失の内、上記ステータでの損失が50%以上とすることを特徴とするインホイールモータ駆動装置の設計方法。
【請求項5】
請求項4において、上記モータは、上記ステータのコイル部を冷却液によって冷却する冷却媒体流路を有するものとし、上記モータの損失の内、銅損を25%以上とするインホイールモータ駆動装置の設計方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188539(P2011−188539A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47708(P2010−47708)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】