説明

ウィンドワイパ用ワイパゴム

加硫によって硬化された少なくとも1つのゴム成分を含有する、ウィンドワイパ用ワイパゴムが記載され、この場合ワイパゴムの材料は、少なくとも未加硫状態で架橋剤と硫黄および/または硫黄供与体との組合せ物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドワイパ用ワイパゴムならびに独立請求項1の上位概念に記載のウィンドワイパ用ワイパゴムの使用に関する。
【0002】
従来技術
ウィンドワイパのための通常ワイパブレードは、オゾンおよびUV線に対して高い安定性と共に、殊に高い耐摩耗性および清浄化すべきウィンド上の僅かな摩擦係数を有するゴム材料から完成されている。この要求の多い要件プロフィールは、使用されたゴム材料に適当した選択の場合にのみ、ならびに適した加工条件によって達成されることができる。この場合には、相応するゴム材料の加硫中に適した架橋度を生じる加工助剤に対する高い要件が課されている。これは、殊に硫化物橋を形成するための硫黄供与体の場合、または加硫促進系に機能する物質の場合である。
【0003】
現在、通常、天然ゴムとクロロプレンとのゴム混合物の加硫のためにエチレンチオ尿素(ETU)が使用されている。このエチレンチオ尿素は、天然ゴムの硬化ならびにポリクロロプレンの硬化を促進する。しかし、労働医学的理由から、ETUの使用は、望ましくない。それというのも、この使用は、奇形発生因子であるかまたは発癌性である疑いがあるからである。
【0004】
更に、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)をゴム材料の加硫のための硫黄供与体として使用することは、公知である。この硫黄供与体の作用機構は、ニトロソアミンの遊離に基づくものであり、このニトロソアミンは、同様に健康上の視点から懸念されている。
【0005】
更に、他の選択可能な方法によるゴム材料は、米国特許第6495625号明細書B1の記載から公知であり、この場合このゴム材料は、架橋剤ならびに加硫促進剤を含有する。
【0006】
発明の開示
本発明の課題は、適当な要件プロフィールに適切であり、および製造中の労働医学的要件を満たす、ウィンドワイパ用ワイパゴムを提供することである。
【0007】
本発明の基礎となる課題は、好ましくは請求項1の特徴部を有するウィンドワイパ用ワイパゴムによって解決される。これは、殊にワイパゴムの材料中に少なくとも未加硫の状態で硬化剤ならびに硫黄供与体が含有されており、したがって機械的要件プロフィール、即ち高い耐摩耗性ならびに僅かな摩擦係数が清浄化すべき表面上で満たされることに基づく。
【0008】
更に、本発明の好ましい実施態様は、従属請求項の記載から明らかである。
【0009】
即ち、架橋剤としてトリアジンまたはチアジアゾールを使用することは、好ましい。更に、硫黄供与体として、例えばジチオホスフェートおよび/またはカプロラクタムジスルフィドが使用される。記載された化合物は、当該化合物が労働医学的視点からETU含有加硫系またはTMTD含有加硫系として取扱いにおいて明らかに有利であるという利点を有する。
【0010】
更に、ワイパゴムの材料が、少なくとも未加硫の状態で付加的に加硫促進剤を、例えばスルフェンアミド、グアニジン、チウラムおよび/またはチアゾールの形で含有することは、利点である。加硫剤、硫黄供与体または加硫促進剤として挙げられた物質の組合せの形での加硫系は、相応する機械的要件に適切であり、および製造中に高められた健康上の危険を孕まないワイパゴムを生じる。
【0011】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、ワイパゴムの材料は、天然ゴムとクロロプレン、ポリイソプレンおよび/または少なくとも部分的にエポキシ化された天然ゴムとの混合物をゴム成分として含有する。この記載されたゴム成分は、架橋剤、加硫促進剤および硫黄供与体からなる既に記載された加硫系で特に有利に加硫中に硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、異なるゴム成分を有する2つのゴム混合物の動的挙動ならびに相応する同じ1つの混合物の動的挙動を一定時間に亘ってプロットした略図であり、この場合それぞれの加硫系は、それぞれの個別のゴム成分の硬化が急速に行なわれるように設計されている。
【図2】図2は、添加された硬化剤の種類に依存してゴム混合物の動的挙動をプロットした略図であり、この場合この硬化剤は、当該の個別のゴム成分の硬化に対して最適化されている。
【図3】図3は、異なるゴム成分を有する2つのゴム混合物の動的挙動ならびに同じ1つの混合物の動的挙動を本発明の第1の実施態様により一定時間に亘ってプロットした略図である。
【図4】図4は、本発明のさらなる実施態様によりゴム混合物の動的挙動をプロットした略図であり、この場合ゴム成分の混合比は、変動された。
【0013】
次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳説する。
【実施例】
【0014】
実施例
自動車のウィンドワイパのワイパブレードのための本発明によるワイパゴムは、最初に例えば天然ゴム(NR)とポリクロロプレン(CR)、ポリイソプレン(IR)および/または少なくとも部分的にエポキシ化された天然ゴム(EN R)との混合物をゴム成分として含有するゴム材料からなるマトリックスを含む。この場合、エポキシ化された天然ゴムは、例えば15〜50質量%、特に15〜25質量%のエポキシ化度を有する。
【0015】
クロロプレンの含量は、ワイパゴムのゴム成分の全含量に対して例えば少なくとも20質量%、特に少なくとも25質量%、殊に40質量%である。更に、天然ゴム、ポリイソプレンおよび/またはエポキシ化された天然ゴムの含量は、例えばゴム成分の全含量に対して少なくとも30質量%、特に40質量%、殊に60質量%である。
【0016】
更に、ワイパゴムの材料は、例えば1つ以上の充填剤を含有する。生じるワイパゴムの機械的性質は、充填剤混合物の適した構成によって高度に影響を及ぼされうる。充填剤としては、炉カーボンブラックまたはサーマルブラックと共に所謂白色の充填剤、例えば酸化亜鉛、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩等がこれに該当する。この場合には、例えば充填材含量は、例えばゴム材料中に含有されたゴム成分100質量部に対して20〜150質量部、特に20〜100質量部、殊に25〜70質量部で混和される。
【0017】
ワイパゴム材料の加硫プロセス中にゴム成分の十分な加硫度を保証するために、ワイパゴムの材料は、少なくとも未加硫の状態で相応する架橋剤と硫黄および/または硫黄として機能する物質との組合せ物を含有する。この場合、硫黄供与体としては、加硫の条件下で硫黄を中性またはアニオン性の形でゴム材料中の二硫化物橋の形成のための反応成分として使用される化学物質が含まれる。硫黄供与体として、例えばジチオホスフェート、ベンゾチアゾール、殊にニトロソアミンを遊離しないチウラムならびにカプロラクタムジスルフィドまたはこれらの混合物が適している。硫黄供与体は、ワイパゴムの材料中に少なくとも未加硫状態で、例えばゴム成分の全含量に対して0.01〜8質量%、特に0.3〜5質量%、殊に0.5〜3質量%が含有されている。
【0018】
架橋剤としては、例えばトリアジンまたはチアジアゾール、またはこれらの混合物が使用される。架橋剤は、少なくともワイパゴムの未加硫状態でワイパゴムの材料中に、例えばゴム成分の全含量に対して0.1〜8質量%、特に0.3〜5質量%、殊に0.5〜3質量%が含有されている。
【0019】
更に、機械的疲労能力の損失なしにワイパゴムの急激な加硫を達成させるために、ワイパゴムの材料には、特に加硫促進剤が添加される。この加硫促進剤は、例えばスルフェンアミド、例えばチアゾールスルフェンアミド、グアニジン、チウラム、アルキルチアゾリジンチオンの形またはチアゾールの形で形成されていてよい。この場合、加硫促進剤は、少なくともワイパゴムの未加硫の状態で、例えばワイパゴムの材料中に0.1〜8質量%、特に0.3〜5質量%、殊に0.5〜3質量%が含有されている。
【0020】
更に、所謂二次加硫促進剤は、ワイパゴムの材料に未加硫状態で添加されることができる。この二次加硫促進剤は、加硫プロセスのさらなる目的通りの促進を達成しうる機能を有している。この場合には、二次加硫促進剤として、例えばジチオホスフェート、例えば遷移金属アルキルジチオホスフェートが添加される。この二次加硫促進剤は、ワイパゴムの材料中に少なくとも未加硫状態で、例えばゴム成分の全含量に対して0.01〜5質量%、特に0.3〜3質量%が含有されている。
【0021】
付加的に、加硫促進剤と共に、金属酸化物、例えば酸化マグネシウムまたは酸化亜鉛は、ワイパゴムの材料に添加されてよい。この金属酸化物は、活性化を行ない、加硫速度を調節する。
【0022】
前記のワイパゴムは、有利にウィンドワイパのワイパブレード、殊に可動的用途ならびにドアシーリングに適している。
【0023】
実施例1
次の組成のゴム混合物を加硫反応に掛ける。
【0024】
【表1】

【0025】
加硫反応中の実施例1に記載のゴム混合物の動的挙動は、図1に一定時間に亘ってのゴム混合物の弾性モーメントS’をプロットした形で示されている。
【0026】
図1には、ゴム成分として単に天然ゴムまたはクロロプレン、ならびに前記ゴム成分の1つの加硫に最適な加硫系を含有する2つのゴム系の動的挙動が明示されている。この場合、測定曲線12は、天然ゴム含有ゴム混合物の動的挙動に対応し、測定曲線14は、クロロプレン含有ゴム混合物の動的挙動に対応する。
【0027】
2つのゴム画分を互いに60対40の比で混合する場合には、測定曲線16が生じる。天然ゴムおよびクロロプレンのためのそれぞれ加硫に最適化された系の混合物の使用は、天然ゴムおよびクロロプレンを混合物で含有するゴム系のための最適化された系を生じないことを確認することができる。
【0028】
実施例2
次の組成のゴム混合物を加硫反応に掛ける。
【0029】
【表2】

【0030】
加硫反応中の実施例2に記載のゴム混合物の動的挙動は、図2に一定時間に亘ってのゴム混合物の弾性モーメントS’をプロットした形で示されている。
【0031】
図2には、ゴム成分として単にクロロプレンを含有する2つのゴム系の動的挙動が明示されており、この場合これらのゴム系の1つは、アルキルチアゾリジンチオンをクロロプレンの加硫に最適化された加硫促進剤として含有する。この場合、測定曲線22は、アルキルチアゾリジンチオンなしのクロロプレン含有ゴム混合物の動的挙動に対応し、測定曲線24は、アルキルチアゾリジンチオンを有するクロロプレン含有ゴム混合物の動的挙動に対応する。
【0032】
更に、それぞれCRおよびNRの混合物をゴム成分として含有する2つのゴム系の動的挙動が明示されており、この場合ゴム系の1つは、アルキルチアゾリジンチオンを加硫系として含有する。この場合、測定曲線26は、アルキルチアゾリジンチオンなしのCR/NR含有ゴム混合物の動的挙動に対応し、測定曲線28は、アルキルチアゾリジンチオンを有するCR/NR含有ゴム混合物の動的挙動に対応する。
【0033】
アルキルチアゾリジンチオンが加硫中の純粋なクロロプレン材料の動的挙動のみに著しい影響を及ぼすのではなく、天然ゴムとクロロプレンとの混合物の加硫挙動も実際に顕著にではないがポジティブに影響を及ぼすことを確認することができる。しかし、NR/CR含有ゴム混合物の加硫挙動が導き出される直線的な関連は、明らかには存在しない。
【0034】
更に、専らクロロプレン含有混合物へのアルキルチアゾリジンチオンの添加は、生じるゴム材料の後の機械的挙動に明らかに影響を及ぼす。専ら、クロロプレン含有混合物は、明らかに上昇する100%弾性率またはショアー硬度を示し、この場合Nr/Cr含有混合物は、僅かな効果を確認することができるにすぎない。
【0035】
実施例3
次の組成のゴム混合物を加硫反応に掛ける。
【0036】
【表3】

【0037】
加硫反応中の実施例3に記載のゴム混合物の動的挙動は、図1に一定時間に亘ってのゴム混合物の弾性モーメントS’をプロットした形で示されている。この場合には、硫黄供与体、硬化剤および加硫促進剤からなる適当な加硫系を使用しながら、30は、単に天然ゴムをゴム成分として含有するゴム混合物の動的挙動を示し、32は、単にクロロプレンをゴム成分として含有するゴム混合物の動的挙動を示し、および34は、天然ゴムとクロロプレンとの混合物をゴム混合物として有するゴム混合物の動的挙動を示す。
【0038】
引張伸び特性を考慮した場合、この実施例でのNRおよびCRの断片(Verschnitt)の相乗効果が明らかになる。即ち、引裂き強度および100%弾性率は、個別の成分CRとNRが単独で使用される場合よりも高い。
【0039】
更に、NRとCRとの混合物を含むが、しかし、極めて良好に好適であるゴム混合物の架橋のために、本発明による加硫系は、実際に単にCRまたはNRをゴム成分として含有するゴム混合物の架橋に対してのみ制限されている。
【0040】
実施例4
次の組成のゴム混合物を加硫反応に掛ける。
【0041】
【表4】

【0042】
加硫反応中の実施例4に記載のゴム混合物1〜4の動的挙動は、図4に一定時間に亘ってのゴム混合物の弾性モーメントS’をプロットした形で示されている。
【0043】
図4には、ゴム成分としてNRとCRとの混合物をゴム成分として含有するゴム混合物の動的挙動が明示されている。この場合、測定曲線42は、ゴム混合物1の動的挙動に対応し、測定曲線44は、ゴム混合物2の動的挙動に対応し、測定曲線46は、ゴム混合物3の動的挙動に対応し、および測定曲線48は、ゴム混合物4の動的挙動に対応する。
【0044】
天然ゴムとクロロプレンとの混合比は、加硫反応の硬化動力学に対する明らかな影響を示すことを確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫によって硬化された少なくとも1つのゴム成分を含むウィンドワイパ用ワイパゴムにおいて、ワイパゴムの材料が少なくとも未加硫の状態で架橋剤と硫黄および/または硫黄供与体との組合せ物を含有することを特徴とする、ウィンドワイパ用ワイパゴム。
【請求項2】
架橋剤がトリアジンおよび/またはチアジアゾールである、請求項1記載のワイパゴム。
【請求項3】
架橋剤、硫黄および硫黄供与体の含量が少なくともワイパゴムの未加硫の状態でワイパゴムの材料中のゴム成分の全含量に対して0.3〜30質量%である、請求項1から3までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項4】
硫黄供与体がジチオホスフェート、チウラムおよび/またはカプロラクタムジスルフィドである、請求項1から3までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項5】
硫黄供与体は少なくともワイパゴムの未加硫状態でワイパゴムの材料中のゴム成分の全含量に対して0.01〜8質量%が含有されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項6】
ワイパゴムの材料が少なくとも未加硫状態で付加的に加硫促進剤を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項7】
加硫促進剤がスルフェンアミド、グアニジン、チウラム、アルキルチアゾリジンチオンおよび/またはチアゾールである、請求項7記載のワイパゴム。
【請求項8】
スルフェンアミドがチアゾールスルフェンアミドである、請求項8記載のワイパゴム。
【請求項9】
硫黄供与体は少なくともワイパゴムの未加硫状態でワイパゴムの材料中のゴム成分の全含量に対して0.1〜8質量%が含有されている、請求項7から9までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項10】
二次加硫促進剤が遷移金属アルキルジチオホスフェートの形で設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項11】
ゴム成分としてクロロプレンと天然ゴム、ポリイソプレンおよび/または少なくとも部分的にエポキシ化された天然ゴムとの混合物が設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項12】
クロロプレンは、ゴム成分の全含量に対して少なくとも20質量%が含有されている、請求項12記載のワイパゴム。
【請求項13】
天然ゴム、ポリイソプレンまたはエポキシ化された天然ゴムは、ゴム成分の全含量に対して少なくとも30質量%が含有されている、請求項12または13記載のワイパゴム。
【請求項14】
ワイパゴムの材料が付加的に1つの金属酸化物を含有する、請求項1から13までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項15】
可動的用途のための、ならびにドアシーリングにおけるワイパブレード中への請求項1から14までのいずれか1項に記載のワイパゴムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504846(P2011−504846A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535325(P2010−535325)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065322
【国際公開番号】WO2009/068434
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】