ウイルス感染の治療及び予防又は治療及び予防の改善
HCV遺伝子型1〜6の各々を代表するHCV E2試料に結合することができる、抗体結合部位を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びにそのような性質を有するポリペプチド及びHCV感染を検出し治療する際のそのようなポリペプチドの使用を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)を中和することができるリガンド、HCVに対する抗体を誘発するための様々なアミノ酸残基含有及び/又はヌクレオチド含有組成物、HCV感染を予防する及び/又は治療するための方法、及びHCVを検出するための検定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HCVは、フラビウイルス科(Flaviviridae family)に属するプラス鎖RNAウイルスである。非A非B型ウイルス性肝炎の主要な原因である。HCVは、これまでに約2億人が感染し、現在の推定では毎年3百万人が新たに感染すると示唆されている(参考文献3)。感染者の約80%はウイルスを排除することができない。慢性感染が結果として起こり、しばしば重症の慢性肝疾患、肝硬変及び肝細胞癌を導く(参考文献2、45)。慢性感染のための現在の治療は効果がなく、予防及び治療ワクチンの開発が急務である。
【0003】
RNA依存性RNAポリメラーゼのエラーの起こりやすい性質及びインビボでの高い複製率(参考文献34、50)の故に、HCVは高い度合の遺伝的変異性を示す。HCVは6つの遺伝学的に異なる遺伝子型に分類することができ、さらに、それぞれヌクレオチドレベルで約30%及び15%に異なる少なくとも70のサブタイプに細分できる(参考文献64、66)。ワクチンの開発のための重要な課題は、ウイルス遺伝子型及びサブタイプの大部分において保存される保護エピトープを同定することである。この問題は、中和応答のための天然の標的であるエンベロープタンパク質が最も可変性の高い2つのタンパク質であるということにより、さらに困難なものとなる(参考文献10)。
【0004】
エンベロープタンパク質、E1及びE2は、細胞の結合と侵入の役割を担う(参考文献4、8、17、55、61)。それらは、N末端細胞外ドメイン及びC末端疎水性膜アンカーを有する(参考文献12、23、24)N結合グリコシル化(参考文献22、25、35、47、67)膜貫通タンパク質である。インビトロでの発現実験は、E1及びE2タンパク質が非共有結合へテロ二量体を形成することを示し、そのヘテロ二量体はウイルス表面の機能性複合体であると提案されている(参考文献14、15、18、24)。また、ウイルス侵入の正確な機構については、効率的な培養系が存在しないため不明である。単離一次肝細胞及び細胞系への侵入が、細胞表面受容体CD81及びスカベンジャー受容体クラスB1型(SR−B1)との相互作用を必要とする(参考文献6、7、20、63、71)という報告は増加傾向にあるが、これらの受容体単独ではウイルスの侵入を可能にするためには十分でない。
【0005】
現在の証拠は、細胞性免疫が急性感染におけるウイルス複製の排除と制御に関して極めて重要であることを示唆する(参考文献36、72)。しかし、動物感染や細胞及び受容体結合アッセイなどの感染の代理モデルは、急性及び慢性の両方の感染における抗体の潜在的役割を強調した(参考文献5、26、27、40、59、61、62、68、73、74)。当然ながら、中和抗体は線状エピトープと立体的エピトープの両方を認識する。幅広い中和能力を示す抗体の大部分は、E2内の立体的エピトープを対象とする(参考文献1、9、37、38、40)。保存された立体的エピトープを認識する抗体の誘導はワクチン設計にとって極めて重要であるが、可変領域は免疫優性であると思われるので(参考文献59)、これはおそらく困難であることが判明する可能性が高い。1つのそのような免疫優性線状エピトープはE2の第一超可変領域内に存在する(HVR1)(参考文献73)。保存されたHVR1ミモトープの使用は限られた特異性の問題を克服すると提案されたが(参考文献11、60、75)、このアプローチが成功を収めるかどうかはまだ不明である。本発明者らや他の著者は、HVR1のすぐ下流の領域が多くのエピトープを含むことを記述した(参考文献16、29、32、52、54、69)。残基412〜423を含み、モノクローナル抗体AP33によって定義される1個のエピトープは、CD81と、可溶性E2、E1E2及びウイルス様粒子を含むE2の一連の提示との間の相互作用を阻害する(参考文献52)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AP33はCD81結合をブロックすることができるが、これが直接中和能力と相関するかどうか、そしてもし相関するとすれば、それが、任意の有望な治療抗体にとっての基本的性質であるHCVの多様な一連の遺伝的変異体を中和するかどうかは不明である。加えて、HVR1の下流の他の線状エピトープも、抗体に基づくワクチンの開発において重要であり得るかどうかは不明である。本発明者ら(参考文献6、8)及び他の著者(参考文献71)は最近、レトロウイルス粒子の感染力がHCV E1E2エンベロープタンパク質によって付与されるレトロウイルス偽粒子(pp)アッセイを開発した。このアッセイはまた、抗体及び血清の中和能力を測定するためにも使用できる(参考文献5、44)。本発明者らは本明細書で、AP33抗体、及びAP33エピトープ並びにHVR1に近接する領域に位置づけられるエピトープを認識するポリクローナル抗血清の交差中和能力を測定するための遺伝子型1から6を表わすE1E2クローンで再構成されたHCVppの使用を述べる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、先に述べたAP33と称されるモノクローナル抗体がHCVの6個の公知の遺伝子型1〜6の各々に結合して、それらを中和できることを見出した。AP33モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマは、ブダペスト条約の下にEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC,CAMR Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 OJG UK;寄託日2006年1月27日、アクセッション番号05122101)への寄託の対象である。従って、AP33によって標的されるエピトープはHCVの遺伝子型1〜6の全てと交差反応性であると推論され、AP33を抗HCVリガンドの標的として及び抗HCV抗体を惹起するための免疫原として示唆する。
【0008】
本発明の最初の態様によれば、従って、HCVの遺伝子型1〜6の各々による感染の予防又は治療のための組成物の製造において、モノクローナル抗体AP33によって定義されるHCV E2ポリペプチドのエピトープに結合することができるリガンドの使用が提供される。
【0009】
これに関連して、「によって定義される」とは、エピトープが、本発明のリガンドとAP33がそのエピトープへの結合に関して競合することができるように、モノクローナル抗体AP33によって結合されるのと同じエピトープであることを意味する。
【0010】
好ましくは、リガンドは、配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(式中、X1〜7は何らかのアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができる。
【0011】
好ましい実施形態では、X1は、S、E、Q、H、P及びLからなる群より選択される。
【0012】
好ましい実施形態では、X2は、V、I、A、R及びFからなる群より選択される。
【0013】
好ましい実施形態では、X3は、S、T、H、L及びAからなる群より選択される。
【0014】
好ましい実施形態では、X4は、N、Q及びGからなる群より選択される。
【0015】
好ましい実施形態では、X5は、S、K及びTからなる群より選択される。
【0016】
好ましい実施形態では、X6は、H、R及びQからなる群より選択される。
【0017】
好ましい実施形態では、X7は、I、L、F又はPからなる群より選択される。
【0018】
好都合には、ポリペプチドエピトープは、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF及びELRNLGGTWRPからなる群より選択される。
【0019】
リガンドは、好ましくは免疫グロブリンである。本明細書で使用する、「免疫グロブリン」という用語は、以下で述べる免疫グロブリンスーパーファミリーの構成物を含む。好ましくは、免疫グロブリンは抗体である。「抗体」は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体(dAb)分子などの抗体フラグメントを含む。
【0020】
好ましくは、免疫グロブリンは図8に示すような、モノクローナル抗体AP33に由来する1以上のCDRを含む。CDRは、好都合には、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列からの1、2又は3個のアミノ酸付加、置換又は欠失を有する配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在するとき(a)に示す配列と構造的に類似する配列
からなる群より選択される。
【0021】
構造的な類似性とは、この場合、免疫グロブリンループ内の生じるポリペプチド鎖の主鎖立体配座の類似性を指す。好ましくは、構造的に類似する配列は、AP33の主鎖立体配座から0.2オングストロームである、好都合にはAP33の主鎖立体配座から0.1オングストローム内である主鎖立体配座を有する。
【0022】
好ましくは、本発明は、HCVによる脊椎動物細胞の感染の予防のために有用である。本発明の免疫グロブリンはHCVの遺伝子型1〜6の各々の例を中和することができるので、本発明は全てのHCV感染に広く適用し得る。好都合には、免疫グロブリンは全てのHCV遺伝子型に対して有効であるので、本発明は、リガンドの投与前に除くべきHCV遺伝子型についての試験を可能にする。
【0023】
さらなる態様では、モノクローナル抗体AP33によって定義されるHCV E2ポリペプチドのエピトープに結合するリガンドの有効量を投与することを含む、HCVの遺伝子型1〜6の2以上による感染の予防又は治療のための方法が提供される。
【0024】
なおさらなる態様では、モノクローナル抗体AP33に由来する1以上のCDRを含む免疫グロブリンの有効量を投与することを含む、HCVの遺伝子型1〜6の2以上による感染の予防又は治療のための方法が提供される。
【0025】
本発明の方法は、本発明の使用に関して上述したような特徴を含み得る。
【0026】
本発明はさらに、HCVの遺伝子型1〜6の2以上に属するHCV単離物を中和する免疫グロブリン分子を提供し、前記免疫グロブリン分子は、モノクローナル抗体AP33に由来する1以上のCDRを含み、モノクローナル抗体AP33以外の免疫グロブリンである。
【0027】
好都合には、前記1以上のCDRは、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列からの1、2又は3個のアミノ酸付加、置換又は欠失を有する配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在するとき(a)に示す配列と構造的に類似する配列からなる群より選択される。
【0028】
好ましい実施形態では、免疫グロブリンは、配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1〜7は何らかのアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができ、前記免疫グロブリンは、モノクローナル抗体AP33以外である。
【0029】
好ましくは、免疫グロブリンは1以上のヒトフレームワーク領域を含む。好都合には、免疫グロブリンは1以上のヒトCDRを含む。抗体のヒト化及び脱免疫のための方法は当分野において公知であり、ヒトにおける抗体の免疫原性を低減又は排除しながらマウス抗体の特異性を維持して、フレームワーク及び/又はCDR配列をヒト配列で置換することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
異なる定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、当業者(例えば細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学、抗体工学及び生化学における当業者)によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明は、異なる指示がない限り、当業者の能力の範囲内である従来の手法を用いる。そのような手法は文献の中で説明されている。例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);Harlow and Lane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harbor参照。これらの一般的テキストの各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
(A.リガンド)
本発明に従ったリガンドは、ポリペプチドエピトープに結合することができる何らかの分子であり得る。例えばリガンドは、タンパク質又は核酸アプタマー、又は免疫グロブリンであり得る。免疫グロブリン分子は、本発明によれば、2つのβシート及び、通常は、保存されたジスルフィド結合を含む、抗体分子の特徴である免疫グロブリンの折りたたみを含むポリペプチドのファミリーである免疫グロブリンスーパーファミリーを指す。免疫グロブリンスーパーファミリーは、免疫系における幅広い役割(例えば抗体、T細胞受容体分子等)、細胞接着への関与(例えばICAM分子)及び細胞内シグナル伝達(例えばPDGF受容体などの受容体分子)を含む、インビボでの細胞及び非細胞相互作用の多くの態様に関与する。本発明は、標的分子に結合することができる全ての免疫グロブリンスーパーファミリー分子に適用できる。好ましくは、本発明は抗体に関する。好ましくは、本発明に従ったリガンドは、本明細書で述べるHCVpp中和アッセイによって判定したとき、HCV遺伝子型1〜6の各々を代表するHCV試料を35μg/ml以下のIC50で中和する。
【0032】
AP33のような従来の抗体は、少なくとも4本のポリペプチド鎖を含む大きな多サブユニットタンパク質分子である。例えばヒトIgGは、機能的抗体を形成するためにジスルフィド結合されている2本の「重」鎖と2本の「軽」鎖を有する。各々の重及び軽鎖自体は、「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域は、抗体の抗原結合特異性を決定し、一方C領域は、構造的支持と免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用における機能を提供する。
【0033】
抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの抗原結合特異性は、特定抗原に結合する抗体又はそのフラグメントの能力を表わす。抗体の抗原結合特異性はV領域の構造特徴によって決定される。各々のV領域は、典型的には3つの相補性決定領域(「CDR」、その各々が「超可変ループ」を含む)及び4つのフレームワーク領域を含む。従って、特定所望抗原に実質的な親和性で結合するために必要な最小構造単位である抗体結合部位は、典型的には3個のCDR、及びCDRを適切な立体配座に保持し、提示するためにそれらの間に組み入れられる少なくとも3、好ましくは4個のフレームワーク領域を含む。
【0034】
本明細書で使用する、抗体は、Fv、ScFv、Fab’及びF(ab’)2、dAb、キメラ、CDR移植及びヒト化抗体を含む改変抗体、及びファージディスプレイ又は選択的手法を用いて作製される人為的に選択される抗体を含む、完全抗体又は選択標的に結合することができる抗体フラグメントを指す。dAb、Fv及びScFvなどの低分子フラグメントは、それらの小さなサイズ及びその結果として生じる優れた組織分布の故に、診断及び治療適用のための有利な特性を有する。好ましくは、抗体は一本鎖抗体又はscFvである。
【0035】
一般に抗体は、少なくとも3個の認識可能なCDR又は超可変ループ及び少なくとも3、好ましくは4個の認識可能なフレームワーク領域を含み、いかなる場合もHCV E2タンパク質に結合する能力を保持しなければならない。典型的には、必ずではないが、ポリペプチドはまた、軽鎖定常領域及び/又は重鎖定常領域、好ましくは両方を含む。ポリペプチドの好ましい特徴は、典型的には、本質的に本発明の最初の態様のポリヌクレオチド分子によってコードされるポリペプチドに関して上述したとおりである。
【0036】
1つの特定実施形態では、ポリペプチドは、1以上の超可変ループ又は図8に示すものと実質的に又は完全に同一のアミノ酸残基配列を有するCDRを含み得るが、ヒト免疫グロブリンのものに対応するように変化した1以上のフレームワーク領域を含み得る。ポリペプチドのアミノ酸配列が「ヒトフレームワーク領域」と「マウス」又は「外来性」CDRの理論的理想と異なる場合、そのような逸脱は、好ましくは保存的置換を含む。保存的置換は、1個のアミノ酸残基によるもう1つ別の残基の置換であり、両方の残基は同じ機能的グループ(Figs.2.8−2.15 of 「Biochemistry」 by L.Stryer,2nd edition W.H.Freeman & Coに定義されている)内の側鎖を有する。
【0037】
結合活性を有する非免疫グロブリンポリペプチドを含むポリペプチドは、例えばランダムなポリペプチド構造の組換え体ライブラリーから開発され得る。ファージディスプレイ、SELEX、mRNAディスプレイ又は表面プラズモン共鳴、続いて、必要に応じて突然変異と選択の反復による結合特異性及び親和性の改善などの手法による、所望標的に対して結合親和性を有するポリペプチドの選択は、当業者に公知の手法である。
【0038】
例えばmRNA選択による結合ポリペプチドの選択は、Wilson et al,Proc Natl Acad Sci USA 2001 Mar 27;98(7):3750−3755によって記述されている。Srebalus and Clemmer,Proc Natl Acad Sci USA 2001 Mar 27;98(7):3750−3755は、ポリペプチドのライブラリーの標的分子への結合を特性付けるためのMALDI−TOF MSの使用を述べている。ファージディスプレイの使用は、Nilsson et al.,Adv Drug Deliv Rev 2000 Sep 30;43(2−3):165−96及びMcGregor,Mol Biotechnol 1996 Oct;6(2):155−62によって総説されている。核酸アプタマーの使用は、Hermann and Patel,Science 2000 Feb 4;287(5454):820−5によって総説されている。SELEXは、標的分子への高度特異的結合を有する核酸分子をインビトロで発生させるための方法である。それは、例えば米国特許第5654151号明細書、同第5503978号明細書、同第5567588号明細書及び同第5270163号明細書、並びに国際公開第WO96/38579号パンフレットに述べられている。
【0039】
ファージディスプレイやSELEXなどの反復選択手順は、多数の可能な配列及び構造を含むライブラリー内に、所与の標的に対する広範囲の結合親和性が存在するという原理に基づく。例えば20サブユニットのランダム化ポリペプチド又は核酸ポリマーを含むライブラリーは、420の構造可能性を有し得る。標的に対してより高い親和定数を有するものが、最も結合の可能性が高いとみなされる。分配、分離及び増幅の工程は、より高い結合親和性候補に富む第二の核酸ライブラリーを作成する。さらなる回数の選択は、生じるライブラリーが主として1個だけ又は数個の配列で構成されるまで、漸進的に最良のリガンドを支持する。次にこれらをクローニングし、配列決定して、純粋なリガンドとしての結合親和性に関して個々に試験することができる。
【0040】
所望の目標が達成されるまで選択と突然変異/増幅のサイクルを反復する。最も一般的な場合、サイクルの反復後に結合強度の有意の改善が達成されなくなるまで選択/増幅を続ける。選択/増幅反復法は、少なくとも1014個の配列を含むライブラリーにおいて1個の配列変異体の単離を可能にするのに十分な感受性がある。本方法は、原則として、約1018の異なる核酸種と同数をサンプリングするために使用できる。ライブラリーは、好ましくはランダム化配列部分並びに効率的な増幅のために必要な保存配列を含む。配列変異体は、ランダム化核酸配列の合成及びランダムに切断された細胞核酸からのサイズ選択を含む多くの方法で生産できる。可変配列部分は、完全に又は部分的にランダムな配列を含み得る。それはまた、ランダム化配列と共に組み込まれた保存配列の小部分を含み得る。試験核酸における配列変異は、選択/増幅反復の前又はその間の突然変異誘発によって及び特異的修飾によって導入又は増加させ得る。
【0041】
本発明のポリペプチドは、当業者に公知の手法を用いて形質転換細胞から又はトランスジェニック生物から作製し得る。典型的なプロトコールを例示のために以下で述べる。
【0042】
((a)COS−7細胞における抗体の一過性発現)
DNAは、電気穿孔法、DEAEデキストラン及びリン酸カルシウム沈殿法などの多くの手段によってCOS−7細胞に導入することができる。
【0043】
電気穿孔法に関しては、Kettleborough et al(1991 Protein Eng.4,773−783)の方法が使用できる。重及び軽鎖発現ベクターのコトランスフェクションのために、各々のベクター10μgを使用する。両方の抗体鎖を発現する1個のベクターに関して13μgを使用する。DNAを、PBS中1×107細胞/mlの0.7mlアリコートに添加し、Bio−Rad Gene Pulser(登録商標)装置を用いて1900V、25μF静電容量でパルスする。対照として、非特異的抗体を発現するベクター13μgもCOS−7にトランスフェクトする。DNAの非存在下で電気穿孔したCOS−7細胞を陰性対照として含める。室温で10分間の回復後、電気穿孔した細胞を、5%ウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM 8mlに添加し、5%CO2中37℃で72時間インキュベートする。72時間のインキュベーション後、培地を収集し、細胞デブリを除去するために遠心して、分析のために保存する。
【0044】
若しくは、DEAE−デキストラントランスフェクション法が使用できる。本方法は、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual,W.H Freeman and Company(1990)に述べられている。COS−7細胞を、1×106細胞/100mmディッシュでDMEM(BIOWHITTAKER)、10%ウシ胎仔血清(FBS)に接種する。2日目に、プラスミドDNAをエタノール沈殿させ、滅菌TE(10mMトリス、pH8.0、1mM EDTA)中に20μg/mlの濃度で再懸濁する。DNA 150μlを、滅菌TBS(トリス緩衝食塩水、140mM NaCl、5mM KCl、1.4mM Na2HPO4、25mMトリス塩基、pH7.5、1mM CaCl2及び0.5mM MgCl2)300μl及び滅菌DEAEデキストラン(SIGMA、TBS中1mg/ml)300μlと混合する。増殖培地を吸引し、細胞単層をPBSで1回及びTBSで1回洗う。750μlのDNA/DEAEデキストラン/TBS混合物を単層に添加する。ディッシュを、5分ごとに揺り動かしながら層流フード内で周囲温度にて1時間インキュベートする。1時間のインキュベーション後、DNA溶液を吸引し、細胞をTBSで1回及びその後PBSで1回洗う。細胞を、100μMのクロロキン(SIGMA)を添加した完全培地中で37℃、5%CO2にてインキュベートする。4時間後、培地を完全培地と交換し、細胞を37℃、5%CO2でインキュベートする。トランスフェクションの48時間後、細胞に、血清を含まないDMEM増殖培地を供給する。24時間後、培地を採集し、卓上臨床遠心分離機において1500rpmで5分間遠心分離して細胞デブリを除去する。
【0045】
((b)CHO細胞における本発明の抗体の安定な発現)
この手順のための典型的なプロトコールは以下の通りである。
CHO細胞(CHO DUXB−11、Urlaub & Chasin,1980 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4216−4220)をトリプシン処理し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で1回洗う。DNA(13μgの重及び軽免疫グロブリン鎖についての遺伝子を含むプラスミド)及びPBS中1×107細胞/mlの0.8mlアリコートを滅菌Gene Pulser(登録商標)キュベット(0.4cmギャップ)に入れる。パルスを1900ボルト、25μF静電容量で送達する。室温で10分間の回復期間後、電気穿孔した細胞を20mlのα−MEM(プラスリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド)/10%FBSに添加する。24〜48時間のインキュベーション後、細胞をトリプシン処理し、α−MEM(マイナスリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド)/10%透析FBS中、100mmディッシュにプレートする(dhfr含有プラスミドの発現に関して選択するため)。コロニーが出現するまで培地を3〜4日ごとに交換する。クローニングシリンダーによって単一クローンを単離し、増殖させて、ELISAによってIgG産生に関して分析する。次に、漸増量のIgGを発現するクローンを選択するために、単一クローンを連続的に漸増濃度のメトトレキサート(MTX)(109M-1 MTXから出発する)に供する。コロニーが出現するまで培地を3〜4日ごとに交換する。クローニングシリンダーによって単一クローンを単離し、増殖させて、ELISAによってIgG産生に関して分析する。
【0046】
((c)抗体フラグメントの酵素的生産)
抗原結合抗体フラグメントは、無処置免疫グロブリンの酵素的又は化学的分離によって生産することができる。フラグメントはまた、組換えDNA手法(例えばKing et al,1992 Biochem.J.281,317−323;Carter et al,1992 Biotechnology 10,163−167)によっても生産できる。選択フラグメントをコードする核酸のセグメントは、適切な制限酵素による完全長コード配列の消化によって、又は新規合成によって生産される。
【0047】
例えばF(ab’)2フラグメントは、Harlow & Lane(1988「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,NY)に述べられているような標準方法を用いてpH3.0−3.5でのペプシンによるタンパク質分解消化によってIgG分子から入手できる。
【0048】
Fabフラグメントは、限定還元によってF(ab’)2フラグメントから、又は還元剤の存在下にパパインでの消化によって完全抗体から入手し得る。
【0049】
本発明のポリペプチドは、当業者に明白な多くの方法で特徴づけし得る。これらは、ELISAなどの手法による濃度の物理的測定及びSDS−PAGEによる抗体純度の物理的測定を含む。加えて、ポリペプチドの有効性は、溶液中で、又はELISA、表面プラズモン共鳴(例えばBIAコア)又は免疫蛍光アッセイなどの固相系においてHCV E2糖タンパク質への分子の結合を検出することによって測定できる。より詳細には、本明細書で述べるようなHCVpp中和アッセイにおいて6つの公知の遺伝子型を代表するHCV試料に対してポリペプチドの中和能力を試験することができる。
【0050】
本発明のポリペプチドは非アミノ酸部分を含み得る。例えばポリペプチドはグリコシル化され得る。そのようなグリコシル化は、宿主細胞又は宿主生物におけるポリペプチドの発現の間に自然に起こり得るか、又は人為的介入から生じる意図的な修飾であり得る。付加的に又は選択的に、本発明のポリペプチドは他の化学修飾に供し得る。1つのそのような望ましい修飾は、1以上のポリエチレングリコール(PEG)部分の付加である。ペグ化は、インビボで様々な抗体フラグメントの半減期を有意に上昇させることが示された(Chapman 2002 Adv.Drug Delivery Rev.54,531−545によって総説された)。しかし、抗体フラグメントのランダムなペグ化は、抗原に対するフラグメントの結合親和性に極めて有害な作用を及ぼし得る。これを避けるため、ペグ化は抗体又は抗体フラグメントの特定の標的残基に限定することが望ましい (Knight et al,2004 Platelets 15,409−418及び上記で引用した、Chapman参照)。
【0051】
(B.抗体作製)
本発明に従った抗体は、例えばそれらが天然に生じる抗体の一時配列とは異なる一次配列を有するように、好都合に作製される抗体である。特に、AP33抗体は、好ましくは修飾される。
【0052】
天然のAP33配列を有さない、本発明に従った抗体は、AP33のフラグメント、アミノ酸配列における1以上の付加、置換又は欠失、標識又はエフェクター基の付加等を含む修飾AP33であり得る。好都合には、抗体は、ヒト被験者における免疫原性をより低くするためにヒト化又は脱免疫されている。
【0053】
本発明において有用な抗体は、新規生成し得るか又はAP33を操作することによって生産し得る。
【0054】
(B(i)新規抗体生成)
抗体は、本明細書で述べるペプチド免疫原を使用した動物又はヒトの免疫によって生成し得る。抗体は、免疫動物の血清から入手し得るか又は細胞培養において生産し得る。組換えDNAテクノロジーは、細菌又は好ましくは哺乳動物細胞培養において、確立された手順に従って抗体を生産するために使用し得る。選択細胞培養系は、好ましくは抗体産物を分泌する。
【0055】
ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的方法は周知である。非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス、ウサギ、ウマモノクローナル抗体の作製は周知であり、例えばHCV E2糖タンパク質又はそのフラグメントを含む製剤で動物を免疫することによって実施できる。免疫動物から得られる抗体産生細胞を不死化し、スクリーニングするか、又は最初にE2に結合する抗体の産生に関してスクリーニングし、その後不死化する。(上記で引用した、Harlow & Lane参照)。
【0056】
不死化抗体産生細胞系は、細胞融合によって、及びまた、腫瘍形成性DNAによるBリンパ球の直接形質転換又はエプスタイン−バーウイルスによるトランスフェクションなどの他の手法によって樹立できる。HCV E2エピトープに対して産生されるモノクローナル抗体のパネルは、様々な性質に関して、例えばアイソタイプ及びエピトープ親和性に関してスクリーニングすることができる。
【0057】
HCV E2含有ポリペプチドはまた、ヒトモノクローナル抗体を選択するためにも使用できる。例えば、AP33などの特定マウス抗体と同じエピトープ特異性を有する一部のヒト抗体は、競合結合実験によって選択し得る。そのような抗体は、AP33に関して明らかにされた有用なHCV中和特性を共有する可能性が特に高い。HCV E2に対するヒト抗体は、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって作製できる(Huse et al,1989 Science 246,1275−1281参照)。HCV E2又はそのフラグメントに結合する抗体を選択する。次に、そのような抗体(又は結合フラグメント)をコードする配列を、クローニングして増幅し得る。このプロトコールは、ファージディスプレイテクノロジーとの組合せによって改善される(例えば国際公開第91/17271号パンフレット及び国際公開第92/01047号パンフレット)。
【0058】
インビトロでのハイブリドーマ細胞又は哺乳動物宿主細胞の増殖は、慣例的な標準培地である適切な培地、例えば、場合により哺乳動物血清、例えばウシ胎仔血清、又は微量元素及び増殖維持サプリメント、例えば正常マウス腹膜滲出物細胞などの支持細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージ、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸等を添加した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)又はRPMI 1640培地において実施される。細菌細胞又は酵母細胞である宿主細胞の増殖は、同様に、当分野において公知の適切な培地、例えば細菌に関してはLB、NZCYM、NZYM、NZM、テリフィックブロス、SOB、SOC、2×YT又はM9最小培地、及び酵母に関しては培地YPD、YEPD、最小培地又は完全最小ドロップアウト培地において実施される。
【0059】
インビトロ生産は比較的純粋な抗体製剤を提供し、所与の大量の所望抗体を与えるためのスケールアップを可能にする。細菌細胞、酵母又は哺乳動物細胞培養のための手法は当分野において公知であり、例えばエアリフト反応器又は連続攪拌反応器における均一懸濁培養、又は例えば中空繊維、マイクロカプセル中、アガロースマイクロビーズ又はセラミックカートリッジ上での固定化又はエントラップ細胞培養を含む。
【0060】
大量の所望抗体はまた、哺乳動物細胞をインビボで増殖させることによって入手できる。このために、所望抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、抗体産生腫瘍の増殖を生じさせる組織適合性哺乳動物に注入する。場合により、注入の前に動物を炭化水素で、特にプリスタン(テトラメチル−ペンタデカン)などの鉱物油でプライミングする。1〜3週間後、抗体をそれらの動物の体液から単離する。例えばBalb/cマウスからの抗体産生脾臓細胞と適切な骨髄腫細胞の融合によって得られるハイブリドーマ細胞、又は所望抗体を産生するハイブリドーマ細胞系Sp2/0に由来するトランスフェクト細胞を、場合によりプリスタンで前処置したBalb/cマウスに腹腔内注入し、1〜2週間後に、動物から腹水を採取する。
【0061】
前記や他の手法は、例えば参照により本明細書に組み込まれる、Kohler and Milstein,(1975)Nature 256:495−497;米国特許第4,376,110号明細書;Harlow and Lane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harborの中で論じられている。組換え抗体分子の調製のための手法は、上記参考文献及びまた、例えば参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第0623679号明細書;欧州特許第0368684号明細書及び欧州特許第0436597号明細書に述べられている。
【0062】
細胞培養上清は、優先的に所望標的を発現する細胞の免疫蛍光染色によって、免疫ブロット法によって、酵素免疫測定法、例えばサンドイッチアッセイ又はドットアッセイ、又は放射免疫測定法によって、所望抗体に関してスクリーニングされる。
【0063】
抗体の単離のために、培養上清中又は腹水中の免疫グロブリンを、例えば硫酸アンモニウムによる沈殿、ポリエチレングリコールなどの吸湿性材料に対する透析、選択膜を通してのろ過等によって、濃縮し得る。必要に応じて及び/又は所望する場合は、慣例的なクロマトグラフィー法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー及び/又は(免疫)アフィニティークロマトグラフィー、例えば標的分子又はプロテインAによるアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体を精製する。
【0064】
前記手順に従って生成された抗体は、標準手順に従って、細胞からの核酸の単離によってクローニングし得る。有用には、抗体の核酸可変ドメインを単離し、scFvなどの抗体フラグメントを構築するために使用し得る。
【0065】
何らかの所望ポリペプチドに特異的な完全ヒト抗体も、ライブラリーからの選択によって又はヒト抗体遺伝子レパートリーを担持するトランスジェニックマウスにおいて作製し得る。
【0066】
ライブラリーからの抗体の選択のための様々な手法が記述されており、Hoogenboom(2005)Nature Biotechnology 23,1105−1116によって総説されている。簡単に述べると、抗体ライブラリー選択のために使用可能な方法は、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ及び微生物細胞ディスプレイを含む。
【0067】
いかなるライブラリー選択システムも本発明と共に使用し得る。大きなライブラリーの所望数を単離するための選択プロトコールは、ファージディスプレイ手法に代表されるように、当分野において公知である。様々なペプチド配列が糸状バクテリオファージの表面に提示されるそのようなシステムは(Scott and Smith(1990、上記)、標的抗原に結合する特異的抗体フラグメントのインビトロ選択と増幅のための抗体フラグメント(及びそれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作成するために有用であることが明らかになった。VH及びVL領域をコードするヌクレオチド配列を、それらを大腸菌の細胞周辺腔へと差し向けるリーダーシグナルをコードする遺伝子フラグメントに連結し、その結果として生じる抗体フラグメントは、典型的にはバクテリオファージコートタンパク質(例えばpIII又はpVIII)への融合物として、バクテリオファージの表面に提示される。あるいは、抗体フラグメントは、λファージキャプシド(ファージ体)の外側に提示される。ファージに基づく提示システムの利点は、それらが生物系であるので、選択されるライブラリー構成物が、単に選択ライブラリー構成物を含むファージを細菌細胞において増殖させることによって増幅できることである。さらに、ポリペプチドライブラリー構成物をコードするヌクレオチド配列はファージ又はファージミドベクターに含まれるので、配列決定、発現及びその後の遺伝子操作が比較的容易である。
【0068】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリー及びλファージ発現ライブラリーの構築のための方法は当分野において周知である(参照により本明細書に組み込まれる、McCafferty et al (1990)上記;Kang et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:4363;Clackson et al.(1991)Nature,352:624;Lowman et al.(1991)Biochemistry,30:10832;Burton et al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,88:10134;Hoogenboom et al.(1991)Nucleic Acids Res.,19:4133;Chang et al.(1991)J Immunol,147:3610;Breitling et al(1991)Gene,104:147;Marks et al.(1991)上記;Barbas et al.(1992)上記;Hawkins and Winter(1992)J.Immunol,22:867;Marks et al,1992,J Biol.Chem.,267:16007;Lemer et al(1992)Science,258:1313)。
【0069】
1つの特に有利なアプローチは、scFvファージライブラリーの使用であった(Huston et al,1988,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,85:5879−5883;Chaudhary et al(1990)Proc. Natl.Acad.Sci U.S.A.,87:1066−1070;McCafferty et al.(1990)上記;Clackson et al.(1991)上記;Marks et al(1991)上記;Chiswell et al(1992)Trends Biotech.,10:80;Marks et al.(1992)上記)。バクテリオファージコートタンパク質上に提示されるscFvライブラリーの様々な実施形態が記述されている。ファージディスプレイアプローチの洗練も公知であり、例えば参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第96/06213号パンフレット及び国際公開第92/01047号パンフレット(Medical Research Council et al.)及び国際公開第97/08320号パンフレット(Morphosys,上記)に述べられている。
【0070】
ファージディスプレイ法では、それらの外側表面に種々の抗体又はフラグメントを提示するファージのライブラリーを作成する。抗体は通常、scFv又はFabフラグメントとして提示される。所望特異性を有する抗体を提示するファージを、HCV E2ポリペプチド又はそのフラグメントへの親和性の強化によって選択する。
【0071】
ファージディスプレイ法の変法では、AP33などの選択マウスMAbの結合特異性を有するヒト抗体を作製することができる(国際公開第92/20791号パンフレット参照)。この手法では、選択マウス抗体(例えばAP33)の重又は軽鎖可変領域を出発物質として使用する。例えば軽鎖可変領域を出発物質として選択する場合、同じ軽鎖可変領域(すなわちマウス出発物質)及び異なる重鎖可変領域を提示するファージライブラリーを構築する。重鎖可変領域は再構成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得られる。HCV E2糖タンパク質に対して強い特異的結合(例えば少なくとも108、好ましくは少なくとも109M-1)を示すファージを選択する。その後、このファージからのヒト重鎖可変領域は、さらなるファージライブラリーを構築するための出発物質として役立つ。このライブラリーでは、各々のファージは、同じ重鎖可変領域(すなわち最初のディスプレイライブラリーから特定された領域)及び異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、再構成されたヒト軽鎖可変領域のライブラリーから得られる。再び、HCV E2に対して強い特異的結合を示すファージを選択する。これらのファージは、完全なヒトHCV E2抗体の可変領域を提示する。これらの抗体は通常、マウス出発物質と同じ又は類似のエピトープ特異性を有する。この変異体として、選択は、付加的に又は選択的に、HCVの6つの遺伝子型全てを中和する能力に基づき得る。
【0072】
本発明のHCV E2結合ポリペプチドはまた、トランスジェニックヤギ、マウス又は植物系などのトランスジェニック生物によって発現され、それらから精製され得る。植物における組換え抗体の生産は、Schillberg et al,(2005 Vaccine 23,1764−1769 and 2003 Cell Mol.Life Sci.60,433−445)によって総説された。抗体又は抗体フラグメントの発現に関して成功裏に使用された植物は、アラビドプシス(Arabidopsis、シロイヌナズナ)De Wilde et al,1998 Plant Cell Physiol.39,639−646)及びタバコ(Valdes et al,2003 Biochem.Biophys.Res.Comm.308,94−100)を含む。
【0073】
ひとたび発現されると、本発明の完全抗体又は抗体フラグメントは、硫酸アンモニウム沈殿法、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む、当分野の標準手法に従って精製できる(一般にScopies & Stoter,1982 Methods Enzymol.90 Part E,479−490参照)。医薬用途のためには、少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%又はそれ以上の均一性の免疫グロブリンが最も好ましい。
【0074】
選択的なライブラリー選択テクノロジーは、どちらも先に述べられているように(Huse et al.(1989)Science,246:1275;Caton and Koprowski(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87;Mullinax et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87:8095;Persson et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:2432)、バクテリオファージプラークとして又は溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングでき、本発明において有用である、バクテリオファージλ発現系を含む。そのような発現系は、ライブラリーの106までの異なる構成物をスクリーニングするために使用できるが、それらはより大きな数(106以上)のスクリーニングには実際上適さない。他のスクリーニングシステムは、例えばライブラリー構成物の直接化学合成に基づく。初期の1つの方法は、国際公開第84/03564号パンフレットに述べられているような、一組のピン又はロッド上でのペプチドの合成を含む。各々のビーズが個々のライブラリー構成物であるペプチドライブラリーを形成するビーズ上でのペプチド合成を含む同様の方法が、米国特許第4,631,211号明細書に述べられており、関連方法が国際公開第92/00091号パンフレットに述べられている。ビーズに基づく方法の有意の改善は、各々のライブラリー構成物のアミノ酸配列の同定を容易にするために、オリゴヌクレオチドなどの独自の同定タグで各々のビーズを標識することを含む。これらの改善されたビーズベースの方法は国際公開第93/06121号パンフレットに述べられている。
【0075】
もう1つの化学合成法は、各々の異なるライブラリー構成物(例えばユニークペプチド配列)をアレイ内の離れた、所定の位置に置く方法による表面上でのペプチド(又はペプチドミメティック)のアレイの合成を含む。各ライブラリー構成物の同一性をアレイ内のその空間位置によって決定する。所定の分子(例えば受容体)と反応性ライブラリー構成物との間で結合相互作用が起こるアレイ内の位置を決定し、それによって空間位置に基づき反応性ライブラリー構成物の配列を同定する。これらの方法は、米国特許第5,143,854号明細書;国際公開第90/15070号明細書及び国際公開第92/10092号明細書;Fodor et al.(1991)Science,251:767;Dower and Fodor(1991)Ann.Rep.Med.Chem.,26:271に述べられている。
【0076】
ポリペプチド又はヌクレオチドのライブラリーを作成するための他のシステムは、ライブラリー構成物のインビトロ合成のための無細胞酵素機構の使用を含む。1つの方法では、標的リガンドに対する選択とPCR増幅を交互に実施することによってRNA分子を選択する(Tuerk and Gold (1990)Science,249:505;Ellington and Szostak(1990)Nature,346:818)。同様の手法は、所定のヒト転写因子に結合するDNA配列を同定するために使用し得る(Thiesen and Bach(1990)Nucleic Acids Res.,18:3203;Beaudry and Joyce(1992)Science,257:635;国際公開第92/05258号パンフレット及び国際公開第92/14843号パンフレット)。同様に、インビトロ翻訳は、大きなライブラリーを作成するための方法としてポリペプチドを合成するために使用できる。一般に安定化ポリソーム複合体を含むこれらの方法は、さらに、国際公開第88/08453号パンフレット、国際公開第90/05785号パンフレット、国際公開第90/07003号パンフレット、国際公開第91/02076号パンフレット、国際公開第91/05058号パンフレット及び国際公開第92/02536号パンフレットに述べられている。国際公開第95/22625号パンフレット及び国際公開第95/11922号パンフレット(Affymax)に述べられているような、ファージに基づかない選択的ディスプレイシステムは、選択のためのポリペプチドを提示するためにポリソームを使用する。これら及び全ての前記資料も、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
ファージ又は他のクローン化ライブラリーの使用に代わるのは、選択標的で免疫した動物の脾臓に由来する核酸、好ましくはRNAを使用することである。このようにして得られたRNAは、免疫グロブリンの天然のライブラリーを表す。V領域及びC領域のmRNAの単離は、Fab又はFvなどの抗体フラグメントが本発明に従って細胞内で発現されることを可能にする。
【0078】
簡単に述べると、RNAを免疫動物の脾臓から単離し、PCRプライマーを使用してRNAプールからVH及びVL cDNAを選択的に増幅する。このようにして得られたVH及びVL配列を、scFv抗体を作製するために連結する。PCRプライマー配列は、公開されているVH及びVL配列に基づいており、キットの形態で市販されている。
【0079】
全ての選択及びディスプレイシステムと組み合わせて、本発明は、所望結合活性の単離のためにAP33によって結合されるエピトープを形成することが同定されたペプチドを提供する。そのようなペプチドを本明細書でより詳細に説明する。
【0080】
(B(ii)AP33の作製)
AP33又はAP33のエピトープ特異性を共有する他の抗体は、免疫原性を低減する及び/又は結合特性を改善するように操作し得る。
【0081】
抗体を操作するためのいくつかの手法が当分野において公知である。一般に、CDRを供与側(非ヒト)抗体から受容側(ヒト)抗体のフレームワークに移入することによって抗体の免疫原性が低下する。この手順は、CDR移植又はヒト化として知られる。この手順の難点は、供与側と受容側のフレームワークの相違の結果として、結合活性が失われ得ることである。さらに、CDR自体によって一定量の免疫原性が保持され得る。薄板化、再表面作成、SDR移入及び脱免疫化を含む、様々な補足的及び選択的手法が、これらの問題に対処するために提案されてきた。
【0082】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドはCDR移植分子をコードする。CDR移植分子は、図8に示すAP33の軽又は重鎖のCDR配列と実質的に又は完全に同一のアミノ酸配列を有する軽及び/又は重鎖CDR、及び図8に示すAP33のフレームワーク領域配列と実質的に同一でないフレームワーク領域を含むものである。本発明に関して、CDRは、各々のCDR配列が図8に示す対応CDRの配列と1又は2アミノ酸残基だけ、好ましくは1アミノ酸残基だけ異なる(すなわち好ましくは図8に示すAP33のCDR配列と比較して各々のCDR内に1個だけのアミノ酸残基置換)場合、AP33のCDRと「実質的に同一」とみなす。好ましくは、CDR移植分子のCDR配列は、図8に示すAP33のCDR配列と完全に同一である。
【0083】
特に好ましい種類のCDR移植分子は、図8に示すAP33のものと実質的に又は完全に同一のアミノ酸配列を有するCDRを含むが、ヒトフレームワーク領域配列を含む抗体又は抗原結合フラグメントである。そのような分子は「ヒト化」と称され得る。ヒト抗体のものとより密接に類似する(又はさらには同一である)ために、AP33のものと比較して変化したフレームワーク領域の使用は、生じるポリペプチドのヒト被験者における免疫原性を大きく低下させるはずである(AP33と比較して)。「ヒトフレームワーク領域配列」は、ヒト抗体のものと同一であるか又は有意ではない量だけ(例えばフレームワーク領域につき7アミノ酸残基以下、好ましくはフレームワーク領域につき4残基以下、より好ましくはフレームワーク領域につき3残基以下、最も好ましくはフレームワーク領域につき2残基以下)ヒト抗体のものと異なる配列である。好都合には、コードされるポリペプチドは、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子セグメントによってコードされるものと同一のフレームワーク領域を含む。
【0084】
一般論として、「CDR移植」は、ヒトフレームワーク領域と組み合わせて非ヒト起源(マウス又は他の非ヒト哺乳動物など)からのCDRをコードするポリヌクレオチドの形成を含む。定常領域も、存在する場合には、好ましくはヒト起源である。
【0085】
慣例的に「供与抗体」及び「受容抗体」という用語が使用される。非ヒト供与抗体からのCDRがヒト受容抗体のフレームワークに移植される。CDR移植の手法は当業者に周知である。その手順は、最初にJones et al,(1986 Nature 321,522−525)及びRiechmann et al,(1988 Nature 332,323−327)によって記述され、非ヒト起源のCDRのヒトフレームワークへの移植だけを含んだ。
【0086】
この手法は、CDRの外側の、一定のフレームワーク残基の変化を移植抗体内に付加的に移入することを必要とし得る(Riechmann et al,(1988)Nature 332,323−327)。従って、本明細書では「CDR移植」という用語は、単にCDR残基の異なるフレームワークへの移入を意味すると解釈されるべきではないが、生じる分子にCDRが由来する抗体の抗原結合特性を付与するための実質的な必要に応じて、そのようなフレームワーク残基の付加的な移入も包含する。「CDR移植分子」という用語は、それに準じて、CDRに加えて一定のフレームワーク残基も同時に「移植される」ポリペプチドを包含すると解釈されるべきである。
【0087】
抗体のヒト化は、例えば欧州特許第460167号明細書、欧州特許第682040号明細書、米国特許第5530101号明細書、同第5585089号明細書、同第5693761号明細書、同第5693762号明細書、同第5766886号明細書、同第5821337号明細書、同第5859205号明細書、同第5886152号明細書、同第5887293号明細書、同第5955358号明細書、同第6054297号明細書及び同第6180370号明細書に述べられている。これらの方法は全て、抗原結合特異性を付与する役割を担うアミノ酸残基がヒト抗体可変領域のフレームワーク領域内に組み込まれるように、抗体の可変領域を再設計することを含む。
【0088】
一部の場合には、非ヒト抗体の免疫原性部分をヒト抗体からの残基によって置換する(例えば米国特許第5712120号号明細書)。あるいは非ヒト可変ドメインを「再表面作成する」ために、抗体可変ドメインの表面の残基をヒト抗体からの残基によって置換することができる(例えば米国特許第5639641号号明細書)。再表面作成はPadlan(1991,欧州特許第0519596号明細書)によって示唆されたもので、「薄板化(veneering)」とも称される。この手法では、第一(供与側の等価物−CDRのソース)抗体の溶媒接触残基を第二(「受容」)抗体からの残基によって置換する。典型的には、第二抗体はヒト抗体である。溶媒非接触残基、CDR、ドメイン間の接触残基、及びCDRに直接隣接する残基は全て、第一抗体におけるのと同じままである。この戦略は、完全な抗原結合活性の保持を助けると考えられる、第一抗体からのパッキング及びインターフェース相互作用の全てを保持しながら第二抗体の表面を模倣することを意図する。これはB細胞エピトープの数を低下させるはずであり(及びまた一部のTエピトープも低下させると考えられる)、より低い免疫原性を導く。
【0089】
溶媒接触残基は、抗体の高分解能構造の検討によって同定される。ヒト化に関連すると考えられる抗体の他の領域、つまりCDRと接触し、マウスとヒト抗体の間で異なる(そのような場合はげっ歯動物残基が使用される)埋もれた残基や、両方のドメインに関してCDRの近くに位置し、抗原結合において役割を果たすと考えられるN末端領域、及び離れた距離であっても役割を果たし得る静電的相互作用である。置換すべき表面残基の選択は、第一抗体可変ドメインと第二抗体種からの使用可能な配列(個別又はコンセンサス配列)のドメインとの間の相同性マッチングによって決定される。
【0090】
米国特許第5639641号明細書及び欧州特許出願公報第0592106号明細書は、再表面作成のための選択的方法を述べている。ここでは、第二抗体種の残基に変更すべき溶媒接触可能残基をPadlanと同様の手順を用いて同定するが、各々の位置に関する平均接触可能性を得るためにより多くの数の構造を分析する。一定レベル以上の接触可能性を有する残基を検討し、それを、抗体を使用すべき種からの抗体からの残基に変更する。置換すべき残基の選択は、全体的相同性を有する抗体から又は溶媒接触可能残基だけを考慮したときに最も高い相同性を有する抗体からであり得る。
【0091】
国際公開第93/17105号パンフレット及び米国特許第5766686号明細書に述べられているヒト化法は、通常ヒト等価物に安全に変更し得る低危険度残基を同定する。これらの残基は溶媒接触可能性の傾向がある。従って、溶媒接触可能残基だけを変化させる場合、この工程は再表面作成法に類似する。
【0092】
再表面作成又は薄板化抗体を提供する正味の効果がある2つのさらなる手法が記述されている欧州特許出願公開第0438310号明細書及び欧州特許出願公開第0519596号明細書参照。
【0093】
さらなる手法は、免疫応答のためのT細胞のヘルパー機能を使用不能にするか又は低減して、導入される抗体に対する最小限の免疫応答を導くために、T細胞エピトープを同定し、除去する(「デトープ」と呼ばれる)ことを目指す(米国特許第5712120号明細書;欧州特許出願第0699755号明細書)。この工程でB細胞エピトープを除去することも可能である。
【0094】
「脱免疫(DeImmunisation)」テクノロジーは、抗体配列内のB及びT細胞エピトープの両方を低減しようとするものであり、予測アルゴリズム及びまた、これらのモチーフを同定するためにMHCペプチド結合部位をモデリングするための構造情報に依存する。欧州特許第98/52976号明細書、欧州特許第0983303号明細書、国際公開第00/34317号明細書、欧州特許第1051432号明細書参照。
【0095】
抗体ヒト化手法はまた、「Antibody Engineering」(Eds.Kontermann and Dhubel),Chapter 40 p567−592(O’Brien and Jones)においても示されている。
【0096】
一部の試験は、必ずしも全てのCDRが抗原と接触しない例があることを認めており、例えばMacCallum et al,(1996 J.Mol.Biol.262,732−745)がある。従って、一部の場合には、ヒト化は、CDR残基のサブセットの移入によって達成でき、例えばSantos & Padlan(1988,Prog.Nucl.Acid Res.Mol.Biol.60,169−194)及びTamura et al,(2000,J.Immunol.164,1432−1441)に示される。これはSDR移入と称される。
【0097】
(B(iii).結合型ヒト化及び選択)
フレームワークの相対的重要性における不確実性は、様々な手法の開発において、ヒト化成功への1つの因子であり、一部には様々な選択推進ライブラリー手法を導いてきた。これらは、選択的組合せの集団から最良の結合相手を実際的に同定することを目指す。例えば、ヒト化変異体を試験するための、1以上のフレームワーク位置における変更可能性を有する特定抗体可変ドメインのライブラリーの使用(例えばBaca et al.(1997)J.Biol.Chem.272:10678)、
特定ソースからのCDR3と組み合わせた可変領域フレームワークのライブラリーの使用(例えばRader et al.(1998)PNAS 95:8910)、
特定親和性及び特異性のヒト抗体又はヒト抗体結合部位を形成するために非ヒト抗体可変ドメインを置換するためのライブラリー内からのヒトパートナードメインの選択(例えばGuided selection,Jespers et al. 1994)BioTechnology 12:899;Beiboer et al.,(2000)J.Mol.Biol.296:833)、
特異的結合を得るためのCDR3(例えばHuCal:Knappick et al.,(2000)J.Mol.Biol.296:57)又は全てのCDRのライブラリーを有する特定フレームワークの使用。
【0098】
Wu et al(1999 J.Mol.Biol.294,151−162)は、ヒト化及びヒト化抗体の同時親和性改善のための手順を述べた(米国特許第5955358号明細書も参照のこと)。コンビナトリアルライブラリーは、集中的CDRH3及びCDRL3ライブラリーと共に8つの潜在的に重要なフレームワーク位置を検討した。1個のマウスフレームワーク残基だけを含み、最初のキメラFabよりも約500倍高い親和性を示す多数の抗CD40Fab変異体が同定された。
【0099】
ファージディスプレイテクノロジーはそのような免疫グロブリンを選択するための強力な手法を提供する(国際公開第91/17271号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第92/06204号パンフレット参照)。従って、例えば抗体のヒト化は、ファージディスプレイと細菌細胞を使用するHoogenboomらのエピトープ「刷り込み」手法を用いて(例えばHoogenboom & Winter 1992,J.Mol.Biol.227,381−388によって記述され;Hoogenboom 2002 Methods Mol.Biol.178,1−37 and 2005 Nature Biotechnol.23,1105−1116によって総説された)、又はVaccinex Inc.(例えば米国特許第2005/0266425号明細書に述べられている)によって開発された、ワクシニアウイルスディスプレイライブラリーと哺乳動物細胞を用いるその改変型を用いて達成し得る。
【0100】
(C.ポリヌクレオチド)
本発明は、本明細書で述べるポリペプチドリガンドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、所望のHCV E2結合活性を有するいかなるポリペプチドもコードし得る。
【0101】
例えばポリヌクレオチドは、軽鎖又は重鎖などの免疫グロブリン分子鎖全体をコードし得る。完全な重鎖は、重鎖可変領域(VH)だけでなく、典型的には3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域(CH)、及び「ヒンジ」領域を含む。一部の状況では、定常領域の存在が望ましい。例えば抗体がHCV感染細胞を死滅させることを所望する場合、完全定常領域の存在は補体を活性化するために望ましい。しかし、また別の状況では、完全定常領域の存在は望ましくないと考えられる。例えば抗体が画像化のために必要である場合、定常領域が存在すると分子サイズの上昇により組織浸透が低下し得る。
【0102】
ポリヌクレオチドによってコードされ得る他のポリペプチドは、単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)2及び「ミニ抗体」などの抗原結合抗体フラグメントを含む。ミニ抗体は、(典型的には)CH1及びCK又はCLドメインが除去された二価抗体フラグメントである。ミニ抗体は従来の抗体よりも小さいので、臨床/診断用途においてはより良好な組織浸透を達成するはずであるが、二価であるため、dAbなどの一価抗体フラグメントよりも高い結合親和性を保持するはずである。従って、文脈によって異なる指示が為されない限り、本明細書で使用する「抗体」という用語は、完全抗体分子だけでなく、上記で論じた種類の抗原結合抗体フラグメントも包含する。
【0103】
特定実施形態では、本発明は、少なくとも3つの免疫グロブリン超可変重又は軽鎖ループを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供し、前記ポリペプチドは、抗原結合を保持し、3つの相補的免疫グロブリン超可変軽又は重鎖ループを含むポリペプチドと組み合わせたとき、本明細書で述べるHCVpp中和アッセイによって判定される35μg/ml以下のIC50でHCV遺伝子型1〜6の各々を代表するHCV試料を中和する抗体分子又はそのフラグメントを形成する。
【0104】
ポリヌクレオチドによってコードされる超可変ループは、好ましくはAP33内に存在する超可変ループのアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を有し得る。ループは、Kabat et al,(1991,Sequences of Immunological Interest,5th Edn.US Dept.Health and Human Services,Washington D.C.)によって考案された番号付け慣例を用いて、図8に示すようにAP33軽鎖内のアミノ酸残基24〜34、50〜56及び87〜89及びAP33重鎖内の31〜35B、50〜65及び95〜102によって表わされる。
【0105】
コードされるポリペプチドは、典型的にはAP33と同一又は実質的に同一のCDR配列を有するが、フレームワーク領域は、好ましくはAP33と異なる。従って、本発明のポリヌクレオチドは、AP33の重及び/又は軽鎖(適宜に)と比較して、特にフレームワーク領域内に、アミノ酸残基置換を含む重及び/又は軽鎖可変領域を有するポリペプチドをコードする。コードされるポリペプチドが部分的又は完全な重及び/又は軽鎖定常領域を含む場合、これもまた、AP33の定常領域と比較して置換を含み得る。
【0106】
置換の影響は、AP33と比較して、コードされるポリペプチドが、
(i)HCV E2タンパク質への結合の高い親和性(例えば標準ELISAによって測定される)、及び/又は
(ii)HCV E2タンパク質への結合の高い特異性(すなわち他のタンパク質、特にヒトタンパク質との低い交差反応性)、及び/又は
(iii)本明細書で述べるHCVpp中和アッセイによって測定したとき、HCVの1以上の遺伝子型の中和のための低いIC50、及び/又は
(iv)ヒト被験者における低い免疫原性(例えばコードされるポリペプチドの標準用量をヒト被験者に静脈内投与した後、標準ELISAによって測定される抗イディオタイプ応答によって決定される)
を有することであり得る。
【0107】
好ましくは、コードされるポリペプチドフレームワーク格領域の少なくとも1つ、最も好ましくはフレームワーク領域の各々が、生じるポリペプチドのヒト被験者における免疫原性を低下させる(AP33に比べて)ために、ヒト抗体のものとより類似するようにAP33と比較してアミノ酸置換を含む。
【0108】
好ましくは、コードされるポリペプチド内に存在する各々のフレームワーク領域は、対応するAP33のフレームワークと比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。従って、例えば前記フレームワーク領域は、AP33内に存在するフレームワーク領域と比べて、合計で、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個又は15個のアミノ酸置換を含み得る。
【0109】
ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの超可変ループはまた、図8に示すようなAP33のアミノ酸配列と比較して合計1以上のアミノ酸置換を含み得ることが可能である。コードされるポリペプチドは、例えばAP33の超可変ループ配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個のアミノ酸置換を含み得る(重及び/又は軽鎖内に)。一般に、コードされるポリペプチドはAP33内のものと実質的に同一、好ましくは同一のCDR又は超可変ループ配列を有すると想定されるが、場合により超可変ループの各々は、AP33超可変ループ配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含み得る。
【0110】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは単離及び/又は精製される。単離という用語は、分子がその自然又は天然環境から取り出されている又は分離されていること、又はその自然又は天然環境では存在しない方法で生産されたことを指示することが意図されている。精製という用語は、少なくとも一部の汚染分子又は物質が除去されていることを指示することが意図されている。好ましくは、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、関連ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドが、組成物中に存在する支配的な(すなわち最も豊富な)ポリヌクレオチド又はポリペプチドを構成するように、実質的に精製される。
【0111】
従って、本発明は、好ましくは抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする挿入物を含む組換え核酸を使用する。定義によりそのような核酸は、一本鎖コード核酸、前記コード核酸とそれに相補的な核酸からなる二本鎖核酸、又はこれらの相補的(一本鎖)核酸自体を含む。
【0112】
さらに、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、天然に生じる重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする真正配列、又はその突然変異型を有する酵素的又は化学的に合成された核酸であり得る。真正配列の突然変異型は、1以上のアミノ酸が欠失している又は1以上の他のアミノ酸で交換されている、上記抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸である。好ましくは、前記修飾は、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。そのような突然変異型核酸はまた、1以上のヌクレオチドが、同じアミノ酸をコードする新しいコドンを有する他のヌクレオチドによって置換されているサイレント突然変異型であることが意図されている。そのような突然変異型配列はまた、縮重配列である。縮重配列は、無制限の数のヌクレオチドが、最初にコードされたアミノ酸配列の変化を生じさせることなく他のヌクレオチドによって置換されるという点において遺伝暗号の意味の範囲内で縮重する。そのような縮重配列は、重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインの最適発現を得るために、特定宿主、特に酵母、細菌又は哺乳動物細胞にとって好ましいそれらの異なる制限部位及び/又は特定コドンの使用頻度の故に、有用であり得る。
【0113】
本発明はさらに、本発明の最初の態様に従ったポリヌクレオチドを含む核酸構築物を提供する。典型的には構築物は、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの適切な宿主における発現を可能にする発現ベクターである。構築物は、例えば以下の1以上を含み得る。すなわち、宿主において活性なプロモーター、エンハンサーなどの1以上の調節配列、複製起点及びマーカー、好ましくは選択マーカーを含み得る。宿主は真核又は原核生物宿主であり得るが、真核生物(特に哺乳動物)宿主が好ましいと考えられる。適切なプロモーターの選択は、明らかに、使用する宿主細胞にある程度まで依存するが、HSV、SV40、RSV等のようなヒトウイルスからのプロモーターを含み得る。数多くのプロモーターが当業者に公知である。
【0114】
構築物は、3つの軽鎖超可変ループ又は3つの重鎖超可変ループを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得る。あるいはポリヌクレオチドは、適切な長さの適切に柔軟性のリンカーによって連結された3つの重鎖超可変ループ及び3つの軽鎖超可変ループを含むポリペプチドをコードし得る。もう1つの可能性は、単一構築物が2つの別個のポリペプチド−1つは軽鎖ループを含み、1つは重鎖ループを含む−をコードするポリヌクレオチドを含み得ることである。別個のポリペプチドは、独立して発現され得るか又は1個の共通オペロンの部分を形成し得る。
【0115】
本発明のHCV E2結合ポリペプチドをコードする核酸構築物は、例えばオリゴヌクレオチド誘発型部位特異的突然変異誘発(例えばCarter et al,1986 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,8127−8131参照)及びPCR(Ho et al,Gene 1989 77,51−59)を含む、当業者に周知の標準組換え核酸手法を用いて作製し得る。
【0116】
本発明はさらに、上記で定義したポリヌクレオチド又は構築物を含む、インビトロでの宿主細胞を提供する。宿主細胞は、細菌、酵母又は他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞であり得る。本発明はまた、本発明に従ったポリペプチドを生産するように遺伝子操作されたトランスジェニック多細胞宿主生物を提供し得る。生物は、例えばトランスジェニック哺乳動物(例えばトランスジェニックヤギ又はマウス系)又はトランスジェニック植物系であり得る。ポリペプチドを生産する方法を以下でさらに説明する。
【0117】
(D.免疫原)
さらなる態様では、本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質に結合する抗体を導入するための組成物を提供し、前記組成物は、アミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXを有するペプチド及び生理的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含み、前記ペプチドは、場合によりN及び/又はC末端に付加的なアミノ酸残基を含むが、HCV E2糖タンパク質全体又はそのE2660フラグメント(すなわちHCVポリタンパク質の残基384〜660)を包含せず、アミノ酸残基の1以上が共有結合修飾されていてもよい。
【0118】
また、配列内のX残基の2以上が同じであってもよく、又はあらゆるX残基が異なっていてもよい。
【0119】
Xは、天然に生じるアミノ酸残基のいずれかであり得るか又は、より好ましくないが、非慣例的な残基(例えばオルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、O−ホスホセリン)であってもよい。考慮される他の共有結合修飾は、特に、グリコシル化(特に1以上のN残基のN−グリコシル化)を含む。
【0120】
本発明に関して、第一X残基(すなわちアミノ末端に最も近いもの)をX1と称し、第二X残基をX2と称し、第三残基をX3等々と称し得る。
【0121】
好ましい実施形態では、X1はS、E、Q、H、P又はLである。
【0122】
好ましい実施形態では、X2はV、I、A、R又はFである。
【0123】
好ましい実施形態では、X3はS、T、H、L又はAである。
【0124】
好ましい実施形態では、X4はN、Q又はGである。
【0125】
好ましい実施形態では、X5はS、K又はTである。
【0126】
好ましい実施形態では、X6はH、R又はQである。
【0127】
好ましい実施形態では、X7はI、L、F又はPである。
【0128】
従って、好ましいアミノ酸配列の例は以下を含む。
【化1】
【0129】
特に好ましい配列は以下に示す配列、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF、及びELRNLGGTWRPを含む。
【0130】
1つの実施形態では、ペプチドは、実質的に又は基本的にアミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXからなる。
【0131】
より好ましくは、ペプチドは、式:
X1LX2NX3NGSWHI又は
X1LX2NX3NGSWHIN
に合致するアミノ酸配列を含む。
【0132】
この配列は、典型的には412、414及び416位だけが天然変異を示すHCV E2タンパク質のアミノ酸残基番号412〜423の保存配列に合致する。好ましくは、X1はQ、S又はEである。好ましくは、X2はI又はVである。好ましくは、X3はT又はSである。
【0133】
1つの実施形態では、ペプチドは、実質的に又は基本的にアミノ酸残基配列:
X1LX2NX3NGSWHIN
からなる。
【0134】
もう1つの好ましい実施形態では、ペプチドは付加的なアミノ酸残基を含む。特に、ペプチドは1以上の付加的なB又はT細胞ペプチドエピトープを含み得る。特に、ペプチドは1以上の付加的なTヘルパー細胞ペプチドエピトープを含み得る。
【0135】
付加的なアミノ酸残基は、例えば配列XLXNXXGXWXXの1以上の反復を含み得るか、及び/又はHCV E2糖タンパク質の他の部分からのペプチドエピトープ、及び/又は完全に他のHCVタンパク質から又は他のタンパク質からのペプチドエピトープを含み得る。例えばペプチドは、アミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXが、1以上のB又はT細胞エピトープを含むペプチド又はポリペプチドなどの他の何らかの望ましい部分に共有結合している(が、典型的に必ずしもペプチド結合によってではない)、分子の部分として提供され得る。好都合には、そのような分子は、生物系において(例えば微生物によって又は組織培養系によって)発現され、合成され得る、融合タンパク質であり得る。ペプチド配列の反復は、場合により介在スペーサーによって分離されていてもよく、又は直接隣接していてもよい。
【0136】
若しくは、エピトープ配列は、エピトープ配列の複数の反復を含む分枝した分子として提供され得る。1つの実施形態では、分子は、リシンの分岐コア及びエピトープの複数のコピーが連結しているC末端アラニン残基を含む。
【0137】
エピトープが組成物内に複数回存在する場合、変異配列を含む可能性が生じる、例えば1個のペプチド配列は、X1がSであり、X2がVである配列であり得、分子内に存在するもう1個のペプチド配列は、X1がQであり、X2がIである配列であり得る。
【0138】
さらなる態様では、本発明は、アミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXを有するペプチドをコードする核酸構築物を提供し、前記ペプチドは、場合によりN及び/又はC末端に付加的なアミノ酸残基を含むが、前記核酸構築物は、HCV E2糖タンパク質全体又はそのE2660フラグメントをコードしない。構築物は、典型的には、コードされるペプチドが適切な原核又は真核生物宿主において発現され得るように、プロモーターを含む発現構築物である。好都合には、プロモーターは、哺乳動物宿主、特にヒト宿主において作動可能なものである。数多くの適切なプロモーターが当業者に公知である(例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモーター、レチノイン酸受容体β(RAR−β)プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス最初期遺伝子1(HCMV)プロモーター、SV−40プロモーター、ヒトc−fosプロモーター)。
【0139】
1つの特定実施形態では、核酸構築物は、アミノ酸配列XLXNXXGXWXXが、隣接反復配列として又は介在スペーサーによって分離された反復配列として複数回存在するペプチドをコードする。
【0140】
構築物は、エンハンサーなどの1以上の調節要素、複製起点、及び1以上のマーカー(選択又はその他)を含み得る。構築物は、プラスミド、酵母人工染色体、酵母ミニ染色体の形態をとり得るか、又はウイルス、特に弱毒化ウイルス又はヒトにとって非病原性である類似ウイルスのゲノムの全部又は一部に組み込まれ得る。
【0141】
組成物又は構築物は、好都合には、哺乳動物被験者、好ましくはヒト被験者への安全な投与のために製剤される。典型的には、それらは複数のアリコートに提供され、各々のアリコートは、少なくとも1名の健常成人被験者の有効な免疫のために十分な組成物又は構築物を含有する。所望する場合は、上記で定義した本発明の4番目と5番目の両方の態様に従った組成物が製剤され得る。
【0142】
組成物又は構築物は、液体又は固体形態で、好ましくは、典型的には使用前に滅菌水性液体で再水和される凍結乾燥粉末として、提供され得る。
【0143】
好ましくは、組成物又は構築物は、アジュバント又は、組成物又は構築物の投与に応答して被験者の免疫応答(例えば特異的抗体力価によって測定される)を上昇させる作用を有する他の成分と共に製剤される。
【0144】
アジュバントは、免疫応答の抗原非特異的刺激を生じさせる物質である。公知のアジュバントは、コレラ毒素(CT)及び大腸菌易熱性毒素(LT)、その非毒性Bサブユニット及びトキソイド(すなわち1以上の突然変異がそれらを非毒性にした突然変異体分子又はA及びBサブユニット架橋などの化学的処理によって非毒性にされた分子)などのADPリボシル化細菌毒素を含む。もう1つの公知のアジュバントは、ヒトワクチンにおける使用が承認されているミョウバンである。免疫応答を増強し得る他の物質は、脂質、特に脂質含有小胞、リポソーム、ミセル等を含む。
【0145】
被験者への構築物の投与は、被験者の細胞の少なくとも一部におけるペプチドエピトープの発現を生じさせ、それが次に、エピトープに対する免疫応答を誘導し得る(すなわちエピトープに結合する抗体を産生するB細胞の集団の発生及び/又は増殖を誘導し得る)。そのような構築物は一般に「DNAワクチン」と称される。核酸は、何らかの適切な経路で、例えば静脈内、皮下経路で、又は皮膚内への又は皮膚を通しての無針投与によって宿主に投与し得る。核酸は、「裸の」形態で投与し得るか、又は他の分子と又は、核酸が何らかの方法で粒子内に被包されている又は粒子と結合している、様々な種類の粒子と同時投与し得る(例えば、表面に結合、典型的に静電気引力によって)。使用し得る粒子は、リポソーム、ウイルス粒子、金マイクロ粒子等を含む。この一般的領域で研究のために広く使用されてきた1つのウイルス粒子は、核酸を被験者における宿主細胞に送達するためのベクターとして使用し得る、修飾ワクシニアアンカラウイルス(MVA)である。MVAはこれまで安全と認められた。ベクターとして使用されてきた他のウイルスは、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス(AAV)を含む。
【0146】
当業者は、構築物がDNAとして投与される必要はなく、実際には、RNAウイルスの一部としてのRNAとして投与することができ、それが次に宿主細胞においてDNAに転写され、その後翻訳されることを認識する。
【0147】
組成物は、何らかの適切な経路によって被験者に投与し得る。経口、経鼻又は他の粘膜経路は非侵襲性であり、従ってそれらが有効であると認められる場合は好ましいと考えられるが、静脈内、皮下又は筋肉内注射などのより慣例的な経路は、より強い免疫応答を惹起する可能性が高い。投与するペプチドの最適用量は、被験者の大きさ及び年齢、投与経路等に依存し得る。一般的指針として、有効用量(すなわち、それまでエピトープに対して検出可能な抗体を有していなかった被験者において検出可能な抗体力価を誘導する、又はある程度の既存の抗体力価を有する被験者において抗体力価の検出可能な上昇を生じさせる用量)は、成人に関して50μg〜500mgの範囲内、好ましくは100μg〜25mgの範囲内のエピトープの量を含む。
【0148】
本発明の1つの特定実施形態では、本発明の4番目の態様に従った組成物であって、本発明の5番目の態様に従った核酸構築物をさらに含む組成物が提供される。
【0149】
生理的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、固体又は液体であり得る。適切な液体は、水及び食塩水、リン酸緩衝食塩水等のような水性溶液を含む。適切な固体は、デンプン、デキストラン及びゲル(例えばカラゲナン、アルギネート等)を含む。
【0150】
本発明の組成物及び/又は構築物は、HCVに結合して、ウイルスを中和する(すなわち非感染性にする)抗体を被験者において誘導するために使用し得る。本発明に関して、抗体をウイルスと共に37℃で1時間プレインキュベートし、抗体が100μg/ml以下、好ましくは75μg/ml以下の濃度を有するとき、インビトロアッセイにおいてHCVの感染力価の少なくとも50の%低下を生じさせることができる場合、抗体は中和性であるとみなすことができる。従って、組成物及び/又は構築物は、被験者がその後HCVに遭遇した場合、感染を予防し得る、又は少なくとも感染の重症度を軽減することによって限られた保護を提供し得る抗体を生成するために使用できる。従って、組成物/構築物は、疾患を完全に予防するため又は少なくとも感染の症状を改善するために使用できる。
【0151】
若しくは、組成物/構築物は、既にHCVに感染している被験者においてHCVに対する免疫応答を増強する、すなわち疾患を治療するために使用し得る。そのような治療は、急性又は慢性感染している被験者からのウイルスの清掃を促進し得る。
【0152】
従って、さらなる態様では、本発明は、被験者においてHCV中和抗体を惹起する又はHCV中和抗体の合成を高めるために、本発明に従った組成物及び/又は構築物の有効量を投与することを含む、哺乳動物被験者、好ましくはヒト被験者においてHCV感染を予防する及び/又は治療する方法を提供する。用量及び投与経路は、好都合には、先に述べられているとおりであり得る。
【0153】
別の部分で説明したように、本発明者らは、驚くべきことに、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する抗体がHCVの各々の公知の遺伝子型を代表するウイルスを中和できることを見出した。従って、そのような抗体が十分に高い濃度で被験者内に存在すれば、それらは、HCVの何らかの遺伝子型によって引き起こされる感染及び/又は疾患に対して防護できるはずである。抗体の十分に高い濃度を達成する1つの方法は、能動免疫である。選択的なアプローチは、既存の抗体を被験者に投与する、受動免疫である。
【0154】
従ってさらなる態様では、本発明は、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する1以上のHCV中和抗体の有効量を被験者に投与することを含む、哺乳動物被験者、好ましくはヒト被験者においてHCV感染を予防する及び/又は治療する方法を提供する。そのような抗体は、好都合には上記で定義した本発明の3番目の態様に従ったポリペプチド、特にキメラ又は、好ましくは、ヒト化抗体又はAP33のものと同一又は実質的に同一のCDRを含む抗体フラグメントであり得る。
【0155】
抗体は、例えば免疫血清の形態で投与し得るか、又はより好ましくは精製組換え又はモノクローナル抗体であり得る。所望特異性を有する血清又はモノクローナル抗体を生産する方法は常套的であり、当業者に周知である。抗体は、静脈内又は筋肉内注射、腹腔内又は経皮的経路を含むがこれらに限定されない、何らかの適切な経路によって投与し得る。
【0156】
好ましくは、投与する抗体は実質的に精製されている(例えばSDS−PAGEによって判定したとき、好ましくは少なくとも95%の均一性、より好ましくは少なくとも97%の均一性、最も好ましくは少なくとも98%の均一性)。抗体は、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、デキストロース溶液等のような、医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と好都合に混合又は組み合わせることができ、場合によりゼラチン、デンプン、アルギネート及び誘導体化セルロースなどの増粘剤を含み得る。
【0157】
受動免疫法は、好都合には、HCV抗原に対して異なる特異性を有する複数の抗体の投与及び/又は他の抗ウイルス治療化合物と組み合わせた抗体の投与を含み得る。最近、そのような受動免疫手法はHIV感染を治療するために安全に使用されている(Armbruster et al,2004 J.Antimicrob.Chemother.54,915−920;Stiegler & Katinger 2003 J.Antimicrob.Chemother.51,757−759)。
【0158】
本発明の能動又は受動免疫法は、上記で定義したコンセンサスペプチドエピトープと比較していくつかのアミノ酸の相違を含む非常にまれな突然変異体単離物(以下のUKN5.14.4に例示されるような)を除き、HCVの遺伝子型1〜6のいずれかのウイルスによる感染に対する個体の保護又は治療を可能にするはずである。
【0159】
さらなる態様では、本発明は、HCVの存在を検出するための診断試験装置及び方法をそれぞれ提供する。装置は、試薬として、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する1以上の抗体を含み得る。抗体は、例えば固体支持体上(例えばマイクロタイターアッセイプレート上、又は微粒子支持体上)に固定化されており、試料(例えば血液又は血清試料又は肝生検などの他の臨床標本)からHCV粒子を「捕獲する」働きをし得る。捕獲されたウイルス粒子は、その後、例えば捕獲ウイルス粒子に結合するさらなる標識試薬を添加することによって検出できる。好都合には、アッセイはELISA、特にサンドイッチ型ELISAの形態をとり得るが、免疫クロマトグラフィー又はディップスティック型アッセイを含む他のいかなるアッセイ形式も原則的に採用できる(例えば放射免疫測定法、ウエスタンブロット法)。
【0160】
XLXNXXGXWXXエピトープに結合する抗体は、標識されていてもよく又は非標識でもよい。いかなる適切な標識も使用でき、例えば放射能標識、酵素標識、蛍光標識又は染料負荷微粒子標識が使用できる。
【0161】
本発明のアッセイ方法は、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する抗体の使用を含む。
【0162】
抗体は遺伝子型1〜6のいずれかからのHCVに結合できるので、アッセイ装置及び対応する方法は、試料においてこれらの遺伝子型のいずれかを代表するHCVを検出することができるはずである。
【0163】
最後の態様では、一般式XLXNXXGXWXXに合致するペプチドを含む分子が、融合工程に干渉することによってHCVの感受性細胞への侵入を阻害し得ると考えられる。そこで、例えば上記アミノ酸残基配列を含むペプチド又はポリペプチドは臨床的有用性を有すると考えられ、従って、本発明は、生理的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合してそのような分子を含む医薬組成物を包含する。そのようなアプローチは、HIV gp41の一部に対応する、T20ペプチドに関して最近記述された(Zwick et al,2004 Nature Medicine 10,133−134)。
【0164】
疑いを回避するため、文脈によって異なる指示が為されない限り、本発明は、単独で又はそのように記述される他の何らかの特徴による組合せと共に、本明細書で「好ましい」、「有利」、「好都合」等と表わされるいかなる特徴も含み得ることをここで明白に言明する。さらに、本明細書において言及される全ての刊行物の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
ここで、説明的実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0166】
HCVの種々の遺伝子型に感染した患者からの、E1E2糖タンパク質をコードするcDNA配列の単離がLavillette et al.,(参考文献43)によって報告された。種々の遺伝子型に由来する糖タンパク質で被包されたHCV偽粒子(HCVpp)を生成するため、本発明者らは、適切なHCV E1E2及びマウス白血病ウイルス(MLV)Gag−Polを発現するベクターを使用した。本発明者らはまた、形質導入マーカーとして働くGFPレポータータンパク質をコードするMLV導入ベクターを利用した。
【0167】
ヒトCMVプロモーターの制御下でHCV遺伝子型1aのH系統由来完全長E1E2、マウス白血病ウイルス(MLV)Gag−Pol及びGFPを担持するMLV導入ベクターを発現するプラスミドがこれまでに報告されている(参考文献6)。様々な臨床単離物からのHCVの完全長E1E2をコードするcDNA配列[H77c系統に関するHCVオープンリーディングフレームのアミノ酸残基170〜746を示す(参考文献70)]は、PCRによって作製され、発現ベクターpCR3.1(Invitrogen)又はphCMV−7a(6)内のヒトCMVプロモーターから下流にクローニングされ(参考文献6)、記述されているように(43)それらのヌクレオチド配列を決定した。
【0168】
実験は、ヒト胚腎(HEK)293T細胞(ATCC CRL−1573)及びヒト肝細胞癌(Huh−7)の細胞の使用を含んだ。これらを、10%ウシ胎仔血清(FCS)、5%可欠アミノ酸、グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、GBCO BRL)において増殖させた。
【0169】
HCVppは、基本的に以前に記述されているように作製した(参考文献6)。簡単に述べると、HEK293%細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクション法(Sigma)を用いて、MLV Gag−Polパッケージングベクター、MLV−GFP導入構築物、及びHCV E1E2を発現するプラスミドとコトランスフェクトした。全ての実験において、HCV糖タンパク質発現構築物をHEK293T細胞のコトランスフェクションから除外した、無エンベロープ対照を使用した。トランスフェクションの2日後、HCVppを含む培地を収集し、清澄化して、0.45μm細孔径の膜でろ過し、Huh−7細胞の感染のために使用した。感染の4日後、細胞を採集し、CellQuestソフトウエアを用いてFACSCalibur(Beckton Dickinson)で分析した。形質導入効率をGFP陽性細胞のパーセンテージとして決定した(典型的には0.05%であった、無エンベロープ対照に「感染した」GFP陽性Huh−7細胞の数を差し引いた後)。形質導入単位/mlとして表わされる感染力価を形質導入効率から算定した。
【0170】
確立された感染性クローン1a型H系統(参考文献6)からのE1E2配列を、実験のこのシリーズ全体を通じて患者由来のE1E2クローンと共に対照として使用した。合計289の患者単離物をスクリーニングし、これらのうちで39は偽粒子を感染性にすることができた。そのうちの一部の性質が本発明者らによって最近報告された(参考文献43)、これらの機能性クローンの代表的選択を表1に示す。遺伝子型の各々を代表する少なくとも1個の感染性クローンを同定した。一部の患者単離物に由来するHCVppは、このアッセイにおいて対照遺伝子型1a H系統からのものよりも再現可能により感染性であった。例えば構築物UKN2B1.1に由来するHCVppは通例標的細胞の30%以上を形質導入したが、H77に由来するものは10〜20%しか導入しなかった。典型的には、形質導入単位/ミリリットル(TU/ml)として表わされる感染力価は、UKN2B1.1に関しては約1×105TU/ml、1a型H系統に関しては4×104TU/mlであった。これに対し、遺伝子型3、5及び6のHCVppは非常に低い力価を与えた((参考文献1〜4)×103TU/ml)(表1)。
【0171】
【表1】
【実施例2】
【0172】
なぜ単離物の多くが感染力を有していなかったのかを検討するため、本発明者らは、HCV糖タンパク質がトランスフェクトHEK293T細胞において発現されたかどうかを調べた。各々の細胞溶解産物中のE2糖タンパク質の相対レベルを、GNA(ガランサス・ニヴァリス(Galanthus nivalis))レクチン被覆ELISAプレート(Dynex Labsystems)、及び全て1a型E2に対して惹起し先に述べられている(参考文献52、16)ポリクローナルウサギ血清R646及び2個のモノクローナル抗体(MAb)、AP33とALP98を含むELISAによって測定した。MAb AP33及びR646抗血清を、製造者のプロトコールに従って(Amersham Biosciences)プロテインGカラムで精製した。
【0173】
E2糖タンパク質を検出するためのELISAアッセイを、基本的に先に述べられているように(参考文献54)実施した。簡単に述べると、上述したようにコトランスフェクトしたHEK293T細胞の清澄化溶解産物からのE1E2糖タンパク質を連続的に3倍希釈し、GNAレクチン被覆ELISAプレート上に捕獲した。結合糖タンパク質を、抗E2 MAb AP33又はALP98又はウサギポリクローナル血清R646、次に抗種IgG HRP(Sigma)及びTMB(3,3’,5,5’−テトラメチル−ベンジジン、Sigma)基質を用いて検出した。吸光度値を450nmで測定した。
【0174】
結果を、試験した様々な溶解産物についての、希釈の逆数に対する吸光度(任意の単位)の一連のグラフである図1aに示す。AP33による検出についての結果を黒い丸で表わし、ALP98については白い丸、及びR646ポリクローナル抗血清については黒い三角で表わしている。
【0175】
MLV Gag−Pol及びGFPレポーター構築物と共に感染性クローンの各々でコトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解産物は、2個のMAbの少なくとも1個に関して、強力な、濃度依存性シグナルを与えるE2のレベルを含んだ。4型単離物(UKN4.21.16)及び試験した2個の5型単離物の1個(UKN5.14.4)が、それぞれMAb ALP98及びAP33によって認識されなかったことは注目すべきである。これは、これらの抗体によって認識されるエピトープ内の変異アミノ酸の存在によるものである(下記参照)。ウサギ抗血清R646は、ほとんど排他的に遺伝子型1a H系統E2を認識した。すなわち、他の遺伝子型からのE2だけでなく、同じサブタイプ(1A.14.36)の異なる単離物からのE2も認識することができなかった。
【0176】
感染性HCVppを生成しない単離物全てでトランスフェクトしたHEK細胞の溶解産物も、E2の存在に関してGNA ELISAによって分析した。一部は、E2が検出不能であるか又は低レベルのE2を有していたが、また別のものは、感染性クローンでトランスフェクトした細胞の溶解産物において認められるのと同様のE2レベルを含んだ(データは示していない)。本発明者らは、一部の単離物はE2を発現しないために感染力を欠き、また別のものは、おそらくそれらがコードするE2又はE1E2複合体が何らかの意味で非機能性であるために、高レベルのE2を発現するにもかかわらず非感染性であると結論した。
【実施例3】
【0177】
HCVppの感染性は、粒子のエンベロープへの完全長E1E2複合体の組込みに依存する(参考文献6、39)。上記ELISAデータは種々の遺伝子型に由来するE2の存在を確認したが、E1の存在は、広範に反応性の抗E1抗体がないため分析できなかった。その代わりに、本発明者らは、免疫沈降アッセイによってE1E2複合体の形成を検討した。HCV糖タンパク質発現構築物とMLV Gag−Pol及びGFP導入ベクターでコトランスフェクトしたHEK293T細胞を[35S]メチオニン/システインで放射性標識した。
【0178】
放射性標識は以下のように実施した。
【0179】
トランスフェクションの18時間後、細胞をPBSで洗い、25μCi/mlのL−[35S]Redivue(商標)Pro−Mix(商標)(Amersham Biosciences)を含むメチオニン/システイン不含培地で48時間インキュベートした。トランスフェクト細胞の培地を採集し、遠心分離によって清澄化した。細胞をPBSで洗い、溶解緩衝液(20mMトリス−HCl、pH7.4、20mMヨードアセトアミド、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5%トリトンX−100)に溶解して、核を除去するために溶解産物を短時間遠心した。清澄化した細胞溶解産物及びHCVppを含む培地を抗E2 MAb AP33とALP98の混合物と共に4℃で2時間インキュベートし、生じた免疫複合体を、プロテインA−セファロースを用いて沈殿させた。プロテインA−セファロースビーズの洗浄後、免疫複合体をSDS−PAGE変性緩衝液(200 mMトリス−HCl、pH6.7;0.5%SDS;10%グリセロール;20mM DTT)に放出し、SDS−10%PAGEによって分析した。ゲルを乾燥し、蛍光スクリーンに一晩暴露して、放射性標識タンパク質をBio−Rad Personal FXホスファイメージャーで視覚化した。
【0180】
結果を図1bに示す。
【0181】
E1を、糖タンパク質発現構築物の大部分でトランスフェクトした細胞の溶解産物からのE2と共に共免疫沈降させた。生じたタンパク質の相対量にはある程度の変動があり、沈降タンパク質(特にE1)の分子量に興味深い差が認められた。ヌクレオチド配列分析は種々の遺伝子型の間で予測グリコシル化部位の変動を示すので(参考文献43)、これらはおそらくグリコシル化の相違によると考えられる。種々の遺伝子型のE1とE2の間で相対的化学量論に有意の変動があったことは注目すべきである。同様に、トランスフェクト細胞の培地に分泌されたE1E2複合体(そのうちのある程度の割合はHCVppの形態であると予想された)も、同じMAbによる免疫沈降によって検出された(データは示していない)。
【実施例4】
【0182】
(HCVpp感染した標的細胞の抗体による中和)
本発明者らは、細胞のH77c系統HCVpp感染を阻害するMAb AP33、ウサギ抗血清R645及びR646(どちらも1a型H77c系統の可溶性細胞外ドメインに対して惹起した)の能力を試験した。
【0183】
また、遺伝子型1a H77c系統の超可変HVR−1領域(残基384〜411)に対応する分枝ペプチドで免疫したニュージーランドウサギにおいて惹起した抗血清R1020及びR1021も試験した。これらの抗血清を生成するために使用した免疫プロトコールは先に記述されている(参考文献53)。
【0184】
中和アッセイを以下のように実施した。遺伝子型1a H系統E1E2を有するHCVppを、抗E2血清R645、R646、R1020及びR1021又はそれらの免疫前(PI)対応物の1:120希釈、又はMAb AP33 50μg/mlと共に37℃で1時間プレインキュベートした。次に、6穴組織培養ディッシュにプレートしたHuh−7細胞にウイルス/抗体混合物を添加し、細胞を37℃で3時間インキュベートした。接種物の除去後、細胞に新鮮培地を再供給し、37℃で4日間インキュベートした。感染細胞の割合を、上述したようにFACSによるGFPの測定によって決定した。中和活性を、それぞれ感染の50%又は90%阻害を達成するために必要な抗体濃度と定義される、IC50又はIC90で表わした。
【0185】
結果を図2Aに示す。
【0186】
試験したウサギ抗血清のうちで、R646は感染を完全に排除することができ、一方R645は感染を約50%ブロックした。R1020及びR1021抗HVR1抗血清はいずれも、感染を65%中和することができた。予想されたように、対応する免疫前ウサギ血清はHCVpp感染に影響を及ぼさなかった。R646と同様に、MAb AP33はH77c系統HCVppによるHuh−7細胞の感染を完全にブロックした。
【0187】
次に、本発明者らは1a H77系統以外のHCV遺伝子型を中和するこれらの抗血清及びMAb AP33の能力を試験した。AP33が広く交差中和性であるのに対し、抗血清R645、R646及びR1020は、1b、2a又は2b型糖タンパク質を組み込んだHCVppの感染力にごくわずかな作用しか及ぼさないことが認められた(図2b)。R646は1a以外の遺伝子型に由来するHCVppによる感染を有意に阻害しないことが確立されているので、本発明者らは、その特異性が1a型H系統の糖タンパク質に限定されるのかどうか、又は他の1a型単離物を阻害し得るのかどうかを検討した。図2cに示すように、この抗血清は、1a H系統以外の2つの患者由来単離物1A14.8及び1A14.36に対してあまり有効ではなく、200ng IgG/mlのIC50値を有していた。
【0188】
MAb AP33の広い反応性を、遺伝子型の完全な相補物を表す単離物に由来するE1E2を組み込んだHCVppのパネルに関して一連の濃度で試験することによってさらに検討した。図3に示すように、6つの遺伝子型全てを代表する単離物のMAb AP33反応性E2を有するHCVppは、遺伝子型5についての0.6μg/mlから遺伝子型3aについての22μg/mlまでの範囲にわたるIC50で有効に中和された。遺伝子型5のHCVpp単離物の1つ、UKN5.14.4の感染力はMAb AP33によって影響を受けなかった(データは示していない)が、これは、この感染性単離物のE2糖タンパク質がこの抗体によって認識されないからである(図1A)。
【0189】
この試験で使用した種々の遺伝子型のE2のN末端領域のアミノ酸配列アラインメント(図4a)は、MAb AP33エピトープ(残基412〜423)が、3個の変異アミノ酸部位(残基412、414及び416)だけしか有さず、比較的良好に保存されていることを示した。このエピトープ内の他の部位は絶対的に保存されている。これに対する例外は、遺伝子型5の単離物UKN5.1.4.4によってコードされるE2内の対応アミノ酸配列であった。これは、その他の単離物と比較して潜在的グリコシル化部位(NGS)の−1シフトと配列内の4残基変化を有していた(図4a)。これに対し、R646によって認識される遺伝子型1a H系統の線状エピトープに対応する配列には、その限られた特異性と一致して、異なる遺伝子型の間で有意の変動が見られた。最後に、ALP98抗体によって認識されるエピトープ(残基644〜651)も保存されていたが、遺伝子型4のクローンの651位に存在するアルギニンからバリンへの突然変異はこの抗体による認識を無効にした(図4b)。AP33によって認識されるエピトープをより詳細に検討するため、エピトープを詳細に位置づけた。
【実施例5】
【0190】
(ファージバイオパニングスクリーンを用いるAP33接触残基の詳細なマッピング)
ファージ提示されるランダムペプチドライブラリー(RPDL)のPhD(New England Biolabs[NEB])シリーズは、3型ファージペプチド提示ベクターM13KEに基づく。これらのライブラリー内の個々のファージは、スペーサー配列Gly−Gly−Gly−Serによって成熟pIIIキャプシドタンパク質のN末端に融合されたランダムペプチドの5コピーまでを発現する。ランダムな12量体ペプチドを発現するライブラリーを本発明者らの実験において使用した(NEBカタログ番号E8110S)。PhDファージ−ライブラリーのアフィニティー選択を、基本的に製造者によって述べられているように実施した。簡単に述べると、AP33を、100μlの被覆緩衝液(CB)(0.05M炭酸塩−重炭酸塩、pH9.6)4℃で一晩インキュベートすることにより、マキシソープマイクロタイタープレート(Nunc,Roskilde,Denmark)のウエルに10〜100μg/mlの濃度で被覆した。被覆後、抗体溶液を廃棄し、その後ウエルを、300μlのTBS−TB(0.1%(v/v)トゥイーン20及び5%(w/v)粉乳(Marvel(登録商標),Cadbury’s)を含むトリス緩衝食塩水、pH7.6[TBS])によって4℃で1時間ブロックした。ブロック溶液を廃棄した後、ウエルをTBS−T(0.1%(v/v)トゥイーン20を含むTBS)で6回洗浄し、その後TBS−T 100μl中で希釈したPhDライブラリーから1×1011ファージを添加した。これらのファージを25℃で1時間放置して固定化AP33に結合させた後、TBS−Tによる連続洗浄を通して非結合ファージを除去した。結合ファージを100μlの0.2Mグリシン−HCl(pH2.2)で10分間溶出し、微量遠心機チューブに移して、その後15μlの1Mトリス−HCl(pH9.1)の添加によって中和した。
【0191】
回収したファージを、LB中で溶出ファージの連続希釈を調製することによって力価測定し、各々の希釈溶液10.0μlを、対数増殖期(0.3OD600nm)の大腸菌ER2537株(NEB)250μlに添加した。ファージを25℃で5分間細菌に感染させた後、細菌を、1mM X−Gal及び1mM IPTGを含む0.7%寒天3mlと混合し、LB寒天プレートに重ねた。寒天を5分間凝固させた後、プレートを裏返して、37℃で一晩インキュベートした。その後、方程式:ファージμl-1=([青色プラークの平均数]×[希釈]-1)/10を用いて、形成された青色プラークの平均数からファージの力価を算定した。
【0192】
次に、強化ファージライブラリーを、溶出ファージ50μl(約1×105PFU)をLB中の対数期大腸菌ER2537株20mlに添加し、37℃で少なくとも4時間半インキュベートすることによって増殖させた。ファージ増殖後、10,000×gで10分間の遠心分離(Sorvall SS−34)によって細菌及び他のデブリを除去した。5分の1容量のPEG(20%[w/v]ポリエチレングリコール−8000、2.5M塩化ナトリウム)を4℃で1時間添加してこの培養物の上清からファージを沈殿させ、15,000×gで20分間の遠心分離によって収集した。次にファージペレットをTBS 1.0mlに再懸濁した後、氷上で1時間、5分の1容量のPEGで2回目の沈殿を実施した。その後10,000×gで20分間の遠心分離(MSE Micro Centaur)によってファージを収集し、最終容量200μlの滅菌TBSに再懸濁した。増殖させたライブラリー内のファージの濃度を上述した力価測定によって決定し、その後1×1012ファージを、さらなる2〜3回のアフィニティー選択への投入物として使用した。
【0193】
最終回のアフィニティー選択後、溶出ファージの力価測定から得た個々のプラークを、滅菌ピペットチップを用いてER2537の対数期培養物2mlに接種し、37℃で4時間半増殖させた。2回の上述した沈殿によってこの培養物の上清からファージを回収し、TBS 100μlに再懸濁した。ファージ原液を−20℃で保存した。
【0194】
12塩基の無処置RPDLから濃縮したペプチドの抗原性を調べるため、酵素結合免疫吸着測定法(EIA)を使用した。CB 50μl中で1.0〜100μg/mlに希釈したAP33を、4℃で一晩のインキュベーションによってマイクロタイタープレートのウエルに直接被覆した。ブロックキング後(上述したように)、約1×1011ファージ粒子をウエルに添加し、1〜2時間結合させた。その後、TBS−T中で1:1000に希釈した抗fd
(Sigma、カタログ番号B−7786)とのインキュベーションによって結合ファージを検出した。次に、これらの抗体の結合を、抗ウサギ二次抗体に複合したアルカリホスファターゼ及びpNPP基質(Sigma)との連続インキュベーションによって検出し、ODを490nmで読み取った。
【0195】
配列決定鋳型DNAは、プライマーgIII(f)5’−ATTCCTTTAGTGGTACCTTTC−3’を、製造者によって供給された−96配列決定プライマーと共に使用して、約1×109ファージからのDNAのPCR増幅によって調整した。標準ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をファージ粒子及び細菌の両方からのDNAの増幅のために使用した。各々の反応のために、10×PCR緩衝液(100mMトリス−HCl、15mM MgCl2、500mM KCl[pH8.3])2.5μl、各々のプライマー5.0μl(5.0pmol)、HotStar Taqポリメラーゼ(Qiagen)0.1μl(0.5単位)及び10.0mM dNTP混合物(2.5mM dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含む)0.5μlを薄壁マイクロ遠心チューブに添加した。DNアーゼ/RNアーゼ不含水で反応容量を25.0μlにした後、DNA不含水で約1×109ファージ/mlに希釈したファージ粒子1.0μlを添加した。次にPTC−100/200サーマルサイクラー(MJ Research)でのPCRサイクリング(95℃、45秒間、50℃、45秒間、72℃、90秒間の35サイクル)によってDNAを増幅した。
【0196】
増幅後、組み込まれなかったヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを、配列決定の前に、エビアルカリホスファターゼ(SAP)及びエキソヌクレアーゼI(Exo I)各々1.0μlを添加し、次に37℃で30分間インキュベートすることによって除去した。その後SAPとExo I酵素を75℃で15分間不活性化し、5.0μlのSAP/Exo I処理したPCR産物からの鋳型DNAを、薄壁PCRチューブ中のBigDye terminator ready reaction mix(Applied Biosystems)4.0μl及び−96配列決定プライマー1.0μl(1pmol)と混合し、Perkin−Elmer 9600サーマルサイクラーを用いてサイクルシークエンス法(96℃、10秒間、50℃、5秒間、60℃、4分間の25サイクル)を実施した。次にDNアーゼ不含水10.0μl及び3M酢酸ナトリウム(pH5.2)2.0μl(0.1容量)をチューブに添加した後、短時間遠心分離し、滅菌マイクロ遠心チューブに移した。その後、配列決定したDNAを、100%エタノール45.0μlの添加と25℃で10分間のインキュベーションによって沈殿させた。沈殿したDNAを15,000×gで20分間遠心分離して回収し、70%エタノール45.0μlで洗った後、37℃で15分間乾燥した。その後、ABI Prism 310遺伝子アナライザーを用いて配列分析を実施した。
【0197】
AP33パラトープとの接触を形成する可能性が高いEIA反応性強化提示ペプチドの保存残基の同定を、推定ペプチドのコンピュータ援用アラインメントによって実施した。
【0198】
固定化AP33に対する3回の選択バイオパニング後、22個のファージクローンを採取し、増殖させて、AP33抗体に対するそれらの反応性をEIAによって測定した(図5)。図5は、強化ファージの大部分によって提示されるペプチドがAP33抗体と特異的に相互作用することを示す。相互作用の特異性は、対照ALP98抗体に対する反応性の欠如によって確認される。
【0199】
前記ペプチドのAP33ペプチドへの結合を媒介することに関与する可能性が最も高い残基を同定するため、選択ペプチドのDNA塩基配列決定を実施し、コンピュータ援用アラインメントを用いてそれらの推定アミノ酸配列を整列した。各々の群がユニークペプチド配列を含む、3つの群のファージを同定した(図6)。それらのコンセンサス配列は、予測AP33エピトープに対する各々の群のアラインメントと共に、決定的に重要な結合モチーフがXLXNXXGXWXXと定義できることを指し示す。
【0200】
図6において、抗体AP33によって選択したファージ内に存在するランダムペプチド挿入物の推定アミノ酸配列をパネルAに示す。推定上のAP33エピトープに対して整列した反応群の選択ファージペプチド内各々に存在する推定アミノ酸配列(パネルB)は、抗体−エピトープ相互作用に関与する保存された接触残基を明らかにする。クローンP3.5はAP33 EIAにおいて非反応性であり(図5)、このペプチドはAP33エピトープに対してごくわずかな相補性しか示さないことに留意しなければならない。
【実施例6】
【0201】
(アラニン置換突然変異型E1E2タンパク質を用いるAP33及び3/11エピトープの詳細なマッピング)
上記実施例5で述べた所見を、推定上のAP33エピトープ内の全ての位置で1個の残基をアラニンによって置換した、H77 E1E2突然変異型クローンのパネルを用いる実験によってさらに強化した。このパネルはまた、同じエピトープに結合すると記述されている(Flint et al,1999 J.Virol.73,6235−6244)、ラットモノクローナル抗体3/11の結合を検討するためにも使用した。3/11及びAP33は、どちらもプロテインGカラムを用いてハイブリドーマ上清から精製した。
【0202】
様々なE1E2突然変異型がHEK293T細胞において発現され、生じたタンパク質のMAb AP33及び3/11に対する反応性を、GNA捕獲EIAを用いて評価した(図9)。突然変異型L413A、N415A、G418A及びW420Aに関するAP33の結合は、野生型と比較して75%より多く低下し、これらの残基が結合のために非常に重要であることを指示した。突然変異型T416A及びN417AもAP33結合を低下させたが、この作用はその他の4つの突然変異型に関するほど著明ではなかった。412位のアラニンによるグルタミンの置換(Q412A)は、AP33のE1E2への結合を一貫して増強し、野生型H77タンパク質と比較して約50%上昇させた。これに対し、この置換はMAb 3/11結合には影響を及ぼさなかった。残りの5残基のアラニン置換は、AP33認識に対して無視し得る程度の作用しか及ぼさなかった。
【0203】
野生型H77タンパク質と比較してMAb 3/11による結合の一貫した有意の低下は、突然変異型N415A、W420A及びH421Aに関して認められ、MAb 3/11による結合におけるこれらの残基の重要性を強調した(簡潔さのためにデータは省いている)。422位のイソロイシンの置換は3/11結合の中等度の増強を生じさせた。残りの残基のアラニン置換は、影響を及ぼさないか又は野生型と比較して中等度の結合低下を生じさせた。
【0204】
(MAb AP33とMAb 3/11の結合親和性及びHCVpp中和効率の比較)
詳細なエピトープマッピング実験は、MAb AP33及び3/11がE2タンパク質内の異なる接触残基を認識していることを示唆したので、本発明者らは、これらの相違が結合親和性又は中和効力の差へと翻訳され得るのかどうかを評価することへと進んだ。412〜423分枝ペプチドへの50%結合を得るために必要なMAb AP33の濃度は、MAb 3/11に関して必要な濃度よりも10より多く低かった(図10:AP33=丸、3/11=三角)。同様に、ビオチニル化MAb結合アッセイにおいて、AP33は結合のための競合において3/11よりも効率的であった(データは示していない)。MAb 3/11と比較して、MAb AP33による競合は、ビオチニル化MAb AP33及び3/11の両方による結合のより大きな低下を生じさせた。前記MAbはまた、様々なHCV遺伝子型を代表するE1E2への親和性の著明な差を示した(図11)。E1E2タンパク質への50%結合を得るために必要なMAb AP33の濃度は約1×101〜1×103ng/mlの範囲であったが、一方約1×102〜1×104ng/mlの範囲の濃度の3/11を使用して50%結合が達成可能であった。合わせて考慮すると、これらのデータは、AP33がMAb 3/11よりもE2に対してより高い親和性を有することを指し示す。
【0205】
同様に、遺伝子型1〜6を代表するE1E2を担持するHCVppを中和するMAb AP33及び3/11の能力の比較(図12)は、両方の抗体が広い中和能を有するが、AP33の中和効力はMAb 3/11よりも一貫して高かった(p<0.001、ウィルコクソンのマッチドペア検定)。50μg/mlの濃度で使用したとき、MAb AP33はHCVppの感染力を80〜99%中和することができた。これに対し、MAb 3/11の同じ濃度は10〜80%の中和だけを生じさせた。本明細書で述べるように、MAb AP33は遺伝子型5のUKN5.14.4系統からのE1E2を担持するHCVppをほとんど中和しなかった。同様にMAb 3/11もこのE1E2クローンを担持するHCVppを中和することができなかった。この単離物は、残基412〜423に対応するE2領域内に4アミノ酸変化(QLIQNGSSWHIN)を有する。この突然変異は、AP33認識のために重要な残基のうちの2個(N415とG418)及び3/11にとって重要な1個(N415)を変化させる。MAb AP33及び3/11のどちらも、UKN5.15.4 E2と反応することができない。従って、驚くべきことではないが、両方のMAbはまたUKN5.14.4 HCVppも中和することができない。
【実施例7】
【0206】
(AP33及び3/11のVH及びVL領域の配列分析)
約106ハイブリドーマ細胞からのmRNAを、製造者のプロトコールに従ってRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して単離した。全RNA4μlを、キットに含まれるポリ−dTオリゴヌクレオチドプライマーと共にThermoscript(Invitrogen,UK)を使用して逆転写した。生じた2μlのcDNAを、軽及び重鎖の可変領域を増幅するために設計したPCRにおける鋳型として使用した。
【0207】
重鎖の増幅は、センスプライマーVHlBACK (5’−AGG TSM ARC TGC AGS AGT CWG G−3’)とアンチセンスプライマーVH1FoR−2 (5’−GGG GCC AAG GGA CCA CGG TCA CCG TCT CCT CA−3’)及びHotStar Taq(Qiagen)を使用して、先に述べられているように(McCafferty & Johnson:Construction and Screening of Antibody Display Libraries.In:「Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual」.Ed.Kay et al 1996,p79−111)実施した。軽鎖の増幅は、プライマーMk(5’−GGG AGC TCG AYA TTG TGM TSA CMC ARW CTA MCA−3’)と逆プライマーKc(5’−GGT GCA TGC GGA TAC AGT TGG TGC AGC ATC−3’)を使用して先に述べられているように(Wang et al,2000 J.Immunol.Methods 233,167−177)実施した。PCR産物を、Qiaquick PCR精製キット(Qiagen)を用いてカラム精製し、次にpGEM(登録商標)−Tベクター系を製造者の推奨に従って使用して、Promega pGEM(登録商標)−Tベクターにクローニングした。重及び軽鎖の各々について2個のクローンを、T7正プライマー及びM13逆プライマー(Promega)及びABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer Applied Biosystems)を使用して、製造者のプロトコールに従って配列決定した。AP33について決定したヌクレオチド配列を図7に示す。
【0208】
(結果)
MAb AP33及び3/11の軽及び重鎖可変領域に対応する推定アミノ酸配列を比較した。この比較の最も著しい特徴は、MAb AP33についての重鎖CDR3が10個の、主として疎水性のアミノ酸を含むことであった。これに対し、MAb 3/11の重鎖CDR3は3個のアミノ酸だけを含んだ。IgBLAST検索は、MAb AP33の重及び軽鎖がマウスVH−36−60、サブグループVH−I(アクセッション番号K01569)及びVK−21−10(アクセッション番号K02160)に最も類似することを明らかにした。3/11配列の生殖細胞系分析は、Genbankデータベースで入手可能なラット生殖細胞系配列が少ないため不可能であった。
【実施例8】
【0209】
(HCVの中和)
本実施例では、AP33がHCVウイルスを中和できることを示す。
【0210】
キメラHCV J6−JFH1ゲノムcDNAの作製。T7 RNAポリメラーゼプロモーターの下流の完全長HCV遺伝子型2a JFH1系統のcDNAを担持するプラスミドpJFH1は、T.Wakita(Wakita et al.,2005 Nature Medicine 11,791−796)によって本発明者らに供給された。キメラ構築物を作製するため、JFH1系統cDNAのNS2のコア、E1、E2、p7及びN末端部分をコードするヌクレオチド配列を、もう1つ別の遺伝子型2a J6CF系統からのヌクレオチド配列で置換した(Yanagi et al.,1999 Virology 262,250−263)。J71と称される、生じたキメラJ6−JFH1構築物から生成された感染性ウイルスを、以下で述べるウイルス中和アッセイにおいて使用した。
【0211】
(HCV J71 RNAトランスフェクション及び細胞培養におけるウイルス生産)J71構築物を、ウイルスゲノムcDNAの3’末端の直後に位置する制限酵素部位での切断によって線状化した。HCV J71 RNAを、MEGAscript High Yield Transcriptionキット(Ambion)を製造者によって述べられているように使用して、線状化構築物からインビトロで転写した。約10μgのインビトロ合成したJ71 RNAを、0.4cmのGene Pulserキュベット(Bio−Rad)においてHuh−7細胞と混合し、GenePulser Xcell(Bio−Rad)電気穿孔装置を使用して960μF、270Vで1回パルスした。トランスフェクトした細胞を直ちに細胞培地と混合し、80cm2フラスコ及びカバーガラスに接種した。37℃で4日間のインキュベーション後、フラスコからの培地を収集し、細胞デブリを除去するための短時間の遠心分離によって清澄化して、0.45μm細孔径の膜でろ過し、ナイーブHuh−7細胞を感染させるために使用した。37℃で4日間のインキュベーション後、感染細胞は、電気穿孔細胞から収集した培地中に感染性ウイルス子孫が存在することを確認するウイルス抗原を含むことを見出した。カバーガラス上の電気穿孔細胞を固定し、間接免疫蛍光検査法によってウイルスタンパク質の存在を判定した。
【0212】
第7継代まで細胞の大部分が複製ウイルスゲノムを内包するように電気穿孔細胞を継代したとき、ウイルス抗原陽性細胞の数が上昇することが認められた。
【0213】
(HCV中和アッセイ)
細胞培養産生HCV J71ウイルスを、第10継代のウイルスRNAトランスフェクトHuh−7細胞の培地から採集し、清澄化して、上述したようにろ過し、以下で述べるようにウイルス中和アッセイにおいて使用した。ウイルスを含む培地を、200、40、8、1.6、0.32、0.064μg/mlの精製MAb AP33又は3/11と混合し、37℃で1時間インキュベートした。次に各々のウイルス−抗体混合物を、10-1〜10-7の範囲で、完全培地中で連続的に10倍希釈した。各々の希釈溶液を、48穴組織培養皿中のHuh−7細胞を感染させるために使用し(各希釈溶液につき6穴)、細胞を37℃で3時間インキュベートした後、接種物を除去し、細胞に新鮮培地を再供給して、37℃で4日間インキュベートした。その後細胞をPBSで1回洗い、メタノールで固定して、ヒツジ抗NS5a抗血清(Mark Harris,University of Leedsの好意により提供された)を使用してウイルスNS5aをプローブし、抗ヒツジIgG−FITC複合体(Molecular Probe)を使用して結合抗体を検出した。穴を蛍光細胞の存在又は非存在に関して記録し、ウイルスの感染力を、基本的にLindenbach et al(2005)Science 309,623−626によって述べられたようにTCID50(組織培養感染量)として測定した。
【0214】
(考察)
これまでの試験は、非常に限られた範囲のHCV遺伝子型だけに対する血清又は抗体の中和能力を測定していた(5、21、30)。本発明者らは、主要遺伝子型1〜6の全てを代表するE1E2を担持するHCVppを中和する一連のE2特異的抗体及び血清の能力を評価するためにHCVppアッセイを使用した。
【0215】
主要遺伝子型全てを代表する機能性E1E2クローンのパネルを確立したので、本発明者らは、MAb AP33及びH77c系統のE2タンパク質のHVR1領域又は細胞外部分のいずれかに対して惹起したウサギ抗血清の、HCVppの侵入を中和する能力を評価することへと進んだ。E2のHVR1及び細胞外ドメインに対して惹起したウサギ抗血清は、どちらも、H77c E1E2を組み込んだHCVppを中和することができたが、同じ免疫原で免疫したウサギの間での中和効力の差は明白であった。しかし、どちらも、異種遺伝子型1a E1E2を組み込んだHCVppの低い中和を示し、試験した他の遺伝子型由来のE1E2を含むHCVppを中和しなかった。HVR1の高度の遺伝的多様性は観察された低い交差中和を説明し、この所見は、天然HVR1特異的抗体の限られた中和能力という以前の報告と一致する(76)。E2細胞外ドメインによるウサギの免疫も中和抗体の誘導を生じさせたが、やはりこれらの応答は高度に系統特異的であった。ペプチドマッピング及び競合アッセイは、最も強力な中和血清(R646)が立体配座及び線状決定基の両方を認識することを示した。中和は、天然であるが変性したsE2によって阻害することができ、中和抗体が立体配座エピトープを認識する可能性が高いことを示唆した。
【0216】
これまでの研究は、HCVエンベロープ糖タンパク質による免疫後に惹起される抗体が、同種攻撃誘発に対して少なくとも部分的に保護し得ることを示した(33、59)。同様に、多くの広範に中和するヒトモノクローナル抗体が記述されており、それらの全てが立体配座エピトープを認識する(1、9、37、38、40、42)。これらの抗体は、HCV感染の治療における将来的な役割を有し得る。それらはまた、将来のワクチン候補を定義するためにも役立つと考えられる。しかし、HIV−1に関する試験は、広範な中和抗体によって認識されるエピトープに免疫応答を集中させることが重要な課題であることを示した。これに関して、AP33が極めて多様なE1E2を担持するHCVppの侵入を強力に中和するという所見は、そのエピトープが線状であり、HCVの種々の遺伝子型にわたって高度に保存されているので、重要である。AP33によって認識されるエピトープは、残基412〜423(配列QLINTNGSWHINによって実証される)に位置づけられ、1つの潜在的N結合グリコシル化部位を担持する(52)。1個の遺伝子型5単離物(UKN5.14.4)に由来するHCVppが、感染性であるが、MAb AP33によって認識されなかった(従って中和されなかった)ことに留意するのは興味深い。この単離物は、その他の単離物と比較して−1シフトした、良好に保存されたN結合グリコシル化部位と、AP33エピトープに対応するE2領域内に4アミノ酸変化を有していた(QLIQNGSSWHIN)。Genbankデータベースに寄託した配列のその後の分析は、AP33エピトープが高度に保存されていることを示した。原型AP33エピトープと比較した配列の平均多様性は4.7%であり、可変アミノ酸の大部分は予測エピトープのN末端に位置した。重要な点として、UKN5.14.4内に存在するものと類似の配列は明らかではなかった。本発明者らの予備的なデータは、4個の変異アミノ酸の1個の、その保存された対応物への復帰(すなわちQからNへ)はUKN5.14.4 HCVppを非感染性にし(MAb AP33に対しても非反応性のままである)(示していない)、従って感染におけるE2のこの領域の潜在的重要性を強調する。この所見は、UKN5.14.4 HCVppの感染力がN415Q及びN結合グリコシル化配列の−1シフトによって影響されないという事実と共に、この特定単離物が中和回避突然変異体を表し得ることを示唆する。
【0217】
結論として、本発明者らは、AP33抗体によって定義されるエピトープが全ての主要遺伝子型にわたって高度に保存されていること及びこの抗体が広い中和能力を有することを示した。
【0218】
(参考文献)
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0219】
上記明細書において言及した全ての刊行物は、参照により本明細書の一部をなすものとする。記述した方法及び本発明のシステムの様々な修正及び変法が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明白である。本発明を特定の好ましい実施形態に関して説明したが、特許請求される本発明がそのような特定実施形態に不当に限定されるべきでないことは了解されるべきである。実際に、分子生物学又は関連分野の当業者には明白である、本発明を実施するための記述した様式の様々な修正は、特許請求の範囲内であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1a】様々なELISAの結果を表しており、希釈倍率に対する吸光度(任意の単位)の一連のグラフを示す。
【図1b】抗E2 MAb AP33とALP98の混合物によって免疫沈降させた放射性標識ポリペプチドのSDS−PAGE分析を示す図である。左側の数字は分子量マーカーを示す。
【図2a】様々な抗血清及び免疫前対照血清(「PI」接尾辞)又はMAb AP33によるHCV遺伝子型1偽粒子の中和の程度を示す棒グラフを示す。縦軸は、蛍光細胞(感染した細胞)の割合(%)を示す。
【図2b】様々な抗血清又はMAb AP33による遺伝子型1A、1B、2A及び2B HCVppの中和の程度を示すグラフである。
【図2c】遺伝子型1A HCVサブタイプに対する抗血清R646についての濃度と中和との関係を示すグラフである。
【図3】種々のHCV遺伝子型に対するMAb AP33の濃度と中和との関係を示すグラフである。
【図4a】6つの公知の遺伝子型の各々を代表する様々なHCV単利物のE2のタンパク質のアミノ酸配列の一部を示す。
【図4b】6つの公知の遺伝子型の各々を代表する様々なHCV単利物のE2のタンパク質のアミノ酸配列の一部を示す。
【図5】EIAアッセイにおける、抗体AP33(白い棒)及びALP98(黒い棒)と様々な選択ファージとの反応性を示す棒グラフである。
【図6】様々なファージクローンによって発現されるペプチドの推定アミノ酸配列(パネルA)及びHCV H77 E2タンパク質の対応する部分とのアラインメント(パネルB)を示す。
【図7】AP33モノクローナル抗体の軽鎖と重鎖の可変領域をコードするハイブリドーマから本発明者らによって誘導されたヌクレオチド配列(プライマー決定配列は省いている)を示す。
【図8】軽鎖及び重鎖可変領域に関する、AP33ハイブリドーマからクローニングしたcDNAから得たDNA配列(下段DNA配列)及び使用したプライマーのDNA配列(上段)を示す。推定アミノ酸配列をDNA配列の上部に示す。CDRを構成するアミノ酸配列基を下線で示す。付加的な残基(「X」)が重鎖のフレームワーク領域1の開始部に存在すると考えられる。
【図9】野生型E1E2配列への結合と比較した、EIAによって判定したときの、E1E2タンパク質の様々なアラニン含有突然変異型へのAP33の結合の量を示す棒グラフである。
【図10】関連ペプチドへのAP33(丸記号)及び3/11(三角記号)の結合を比較した、抗体濃度と結合の割合(%)との関係を示すグラフである。
【図11】種々のHCV遺伝子型E1E2タンパク質に結合するときのAP33(丸)及び3/11(三角)についての抗体濃度(ng/ml)と結合する割合(%)の関係を示す一連のグラフである。
【図12】50μg/mlの最終濃度でAP33(黒いバー)又は3/11(白いバー)に暴露したときの、種々のHCV遺伝子型を表わす様々なHCVppクローンに関する感染力の割合を示す棒グラフである。
【図13】AP33(黒丸)及び3/11(白丸)モノクローナル抗体によるHCV J71の中和を示すグラフである。無関係なモノクローナル抗体DB165(黒い三角)及び抗体なし(白い三角)を対照として示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)を中和することができるリガンド、HCVに対する抗体を誘発するための様々なアミノ酸残基含有及び/又はヌクレオチド含有組成物、HCV感染を予防する及び/又は治療するための方法、及びHCVを検出するための検定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HCVは、フラビウイルス科(Flaviviridae family)に属するプラス鎖RNAウイルスである。非A非B型ウイルス性肝炎の主要な原因である。HCVは、これまでに約2億人が感染し、現在の推定では毎年3百万人が新たに感染すると示唆されている(参考文献3)。感染者の約80%はウイルスを排除することができない。慢性感染が結果として起こり、しばしば重症の慢性肝疾患、肝硬変及び肝細胞癌を導く(参考文献2、45)。慢性感染のための現在の治療は効果がなく、予防及び治療ワクチンの開発が急務である。
【0003】
RNA依存性RNAポリメラーゼのエラーの起こりやすい性質及びインビボでの高い複製率(参考文献34、50)の故に、HCVは高い度合の遺伝的変異性を示す。HCVは6つの遺伝学的に異なる遺伝子型に分類することができ、さらに、それぞれヌクレオチドレベルで約30%及び15%に異なる少なくとも70のサブタイプに細分できる(参考文献64、66)。ワクチンの開発のための重要な課題は、ウイルス遺伝子型及びサブタイプの大部分において保存される保護エピトープを同定することである。この問題は、中和応答のための天然の標的であるエンベロープタンパク質が最も可変性の高い2つのタンパク質であるということにより、さらに困難なものとなる(参考文献10)。
【0004】
エンベロープタンパク質、E1及びE2は、細胞の結合と侵入の役割を担う(参考文献4、8、17、55、61)。それらは、N末端細胞外ドメイン及びC末端疎水性膜アンカーを有する(参考文献12、23、24)N結合グリコシル化(参考文献22、25、35、47、67)膜貫通タンパク質である。インビトロでの発現実験は、E1及びE2タンパク質が非共有結合へテロ二量体を形成することを示し、そのヘテロ二量体はウイルス表面の機能性複合体であると提案されている(参考文献14、15、18、24)。また、ウイルス侵入の正確な機構については、効率的な培養系が存在しないため不明である。単離一次肝細胞及び細胞系への侵入が、細胞表面受容体CD81及びスカベンジャー受容体クラスB1型(SR−B1)との相互作用を必要とする(参考文献6、7、20、63、71)という報告は増加傾向にあるが、これらの受容体単独ではウイルスの侵入を可能にするためには十分でない。
【0005】
現在の証拠は、細胞性免疫が急性感染におけるウイルス複製の排除と制御に関して極めて重要であることを示唆する(参考文献36、72)。しかし、動物感染や細胞及び受容体結合アッセイなどの感染の代理モデルは、急性及び慢性の両方の感染における抗体の潜在的役割を強調した(参考文献5、26、27、40、59、61、62、68、73、74)。当然ながら、中和抗体は線状エピトープと立体的エピトープの両方を認識する。幅広い中和能力を示す抗体の大部分は、E2内の立体的エピトープを対象とする(参考文献1、9、37、38、40)。保存された立体的エピトープを認識する抗体の誘導はワクチン設計にとって極めて重要であるが、可変領域は免疫優性であると思われるので(参考文献59)、これはおそらく困難であることが判明する可能性が高い。1つのそのような免疫優性線状エピトープはE2の第一超可変領域内に存在する(HVR1)(参考文献73)。保存されたHVR1ミモトープの使用は限られた特異性の問題を克服すると提案されたが(参考文献11、60、75)、このアプローチが成功を収めるかどうかはまだ不明である。本発明者らや他の著者は、HVR1のすぐ下流の領域が多くのエピトープを含むことを記述した(参考文献16、29、32、52、54、69)。残基412〜423を含み、モノクローナル抗体AP33によって定義される1個のエピトープは、CD81と、可溶性E2、E1E2及びウイルス様粒子を含むE2の一連の提示との間の相互作用を阻害する(参考文献52)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AP33はCD81結合をブロックすることができるが、これが直接中和能力と相関するかどうか、そしてもし相関するとすれば、それが、任意の有望な治療抗体にとっての基本的性質であるHCVの多様な一連の遺伝的変異体を中和するかどうかは不明である。加えて、HVR1の下流の他の線状エピトープも、抗体に基づくワクチンの開発において重要であり得るかどうかは不明である。本発明者ら(参考文献6、8)及び他の著者(参考文献71)は最近、レトロウイルス粒子の感染力がHCV E1E2エンベロープタンパク質によって付与されるレトロウイルス偽粒子(pp)アッセイを開発した。このアッセイはまた、抗体及び血清の中和能力を測定するためにも使用できる(参考文献5、44)。本発明者らは本明細書で、AP33抗体、及びAP33エピトープ並びにHVR1に近接する領域に位置づけられるエピトープを認識するポリクローナル抗血清の交差中和能力を測定するための遺伝子型1から6を表わすE1E2クローンで再構成されたHCVppの使用を述べる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、先に述べたAP33と称されるモノクローナル抗体がHCVの6個の公知の遺伝子型1〜6の各々に結合して、それらを中和できることを見出した。AP33モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマは、ブダペスト条約の下にEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC,CAMR Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 OJG UK;寄託日2006年1月27日、アクセッション番号05122101)への寄託の対象である。従って、AP33によって標的されるエピトープはHCVの遺伝子型1〜6の全てと交差反応性であると推論され、AP33を抗HCVリガンドの標的として及び抗HCV抗体を惹起するための免疫原として示唆する。
【0008】
本発明の最初の態様によれば、従って、HCVの遺伝子型1〜6の各々による感染の予防又は治療のための組成物の製造において、モノクローナル抗体AP33によって定義されるHCV E2ポリペプチドのエピトープに結合することができるリガンドの使用が提供される。
【0009】
これに関連して、「によって定義される」とは、エピトープが、本発明のリガンドとAP33がそのエピトープへの結合に関して競合することができるように、モノクローナル抗体AP33によって結合されるのと同じエピトープであることを意味する。
【0010】
好ましくは、リガンドは、配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(式中、X1〜7は何らかのアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができる。
【0011】
好ましい実施形態では、X1は、S、E、Q、H、P及びLからなる群より選択される。
【0012】
好ましい実施形態では、X2は、V、I、A、R及びFからなる群より選択される。
【0013】
好ましい実施形態では、X3は、S、T、H、L及びAからなる群より選択される。
【0014】
好ましい実施形態では、X4は、N、Q及びGからなる群より選択される。
【0015】
好ましい実施形態では、X5は、S、K及びTからなる群より選択される。
【0016】
好ましい実施形態では、X6は、H、R及びQからなる群より選択される。
【0017】
好ましい実施形態では、X7は、I、L、F又はPからなる群より選択される。
【0018】
好都合には、ポリペプチドエピトープは、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF及びELRNLGGTWRPからなる群より選択される。
【0019】
リガンドは、好ましくは免疫グロブリンである。本明細書で使用する、「免疫グロブリン」という用語は、以下で述べる免疫グロブリンスーパーファミリーの構成物を含む。好ましくは、免疫グロブリンは抗体である。「抗体」は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体(dAb)分子などの抗体フラグメントを含む。
【0020】
好ましくは、免疫グロブリンは図8に示すような、モノクローナル抗体AP33に由来する1以上のCDRを含む。CDRは、好都合には、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列からの1、2又は3個のアミノ酸付加、置換又は欠失を有する配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在するとき(a)に示す配列と構造的に類似する配列
からなる群より選択される。
【0021】
構造的な類似性とは、この場合、免疫グロブリンループ内の生じるポリペプチド鎖の主鎖立体配座の類似性を指す。好ましくは、構造的に類似する配列は、AP33の主鎖立体配座から0.2オングストロームである、好都合にはAP33の主鎖立体配座から0.1オングストローム内である主鎖立体配座を有する。
【0022】
好ましくは、本発明は、HCVによる脊椎動物細胞の感染の予防のために有用である。本発明の免疫グロブリンはHCVの遺伝子型1〜6の各々の例を中和することができるので、本発明は全てのHCV感染に広く適用し得る。好都合には、免疫グロブリンは全てのHCV遺伝子型に対して有効であるので、本発明は、リガンドの投与前に除くべきHCV遺伝子型についての試験を可能にする。
【0023】
さらなる態様では、モノクローナル抗体AP33によって定義されるHCV E2ポリペプチドのエピトープに結合するリガンドの有効量を投与することを含む、HCVの遺伝子型1〜6の2以上による感染の予防又は治療のための方法が提供される。
【0024】
なおさらなる態様では、モノクローナル抗体AP33に由来する1以上のCDRを含む免疫グロブリンの有効量を投与することを含む、HCVの遺伝子型1〜6の2以上による感染の予防又は治療のための方法が提供される。
【0025】
本発明の方法は、本発明の使用に関して上述したような特徴を含み得る。
【0026】
本発明はさらに、HCVの遺伝子型1〜6の2以上に属するHCV単離物を中和する免疫グロブリン分子を提供し、前記免疫グロブリン分子は、モノクローナル抗体AP33に由来する1以上のCDRを含み、モノクローナル抗体AP33以外の免疫グロブリンである。
【0027】
好都合には、前記1以上のCDRは、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列からの1、2又は3個のアミノ酸付加、置換又は欠失を有する配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在するとき(a)に示す配列と構造的に類似する配列からなる群より選択される。
【0028】
好ましい実施形態では、免疫グロブリンは、配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1〜7は何らかのアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができ、前記免疫グロブリンは、モノクローナル抗体AP33以外である。
【0029】
好ましくは、免疫グロブリンは1以上のヒトフレームワーク領域を含む。好都合には、免疫グロブリンは1以上のヒトCDRを含む。抗体のヒト化及び脱免疫のための方法は当分野において公知であり、ヒトにおける抗体の免疫原性を低減又は排除しながらマウス抗体の特異性を維持して、フレームワーク及び/又はCDR配列をヒト配列で置換することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
異なる定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、当業者(例えば細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学、抗体工学及び生化学における当業者)によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明は、異なる指示がない限り、当業者の能力の範囲内である従来の手法を用いる。そのような手法は文献の中で説明されている。例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);Harlow and Lane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harbor参照。これらの一般的テキストの各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
(A.リガンド)
本発明に従ったリガンドは、ポリペプチドエピトープに結合することができる何らかの分子であり得る。例えばリガンドは、タンパク質又は核酸アプタマー、又は免疫グロブリンであり得る。免疫グロブリン分子は、本発明によれば、2つのβシート及び、通常は、保存されたジスルフィド結合を含む、抗体分子の特徴である免疫グロブリンの折りたたみを含むポリペプチドのファミリーである免疫グロブリンスーパーファミリーを指す。免疫グロブリンスーパーファミリーは、免疫系における幅広い役割(例えば抗体、T細胞受容体分子等)、細胞接着への関与(例えばICAM分子)及び細胞内シグナル伝達(例えばPDGF受容体などの受容体分子)を含む、インビボでの細胞及び非細胞相互作用の多くの態様に関与する。本発明は、標的分子に結合することができる全ての免疫グロブリンスーパーファミリー分子に適用できる。好ましくは、本発明は抗体に関する。好ましくは、本発明に従ったリガンドは、本明細書で述べるHCVpp中和アッセイによって判定したとき、HCV遺伝子型1〜6の各々を代表するHCV試料を35μg/ml以下のIC50で中和する。
【0032】
AP33のような従来の抗体は、少なくとも4本のポリペプチド鎖を含む大きな多サブユニットタンパク質分子である。例えばヒトIgGは、機能的抗体を形成するためにジスルフィド結合されている2本の「重」鎖と2本の「軽」鎖を有する。各々の重及び軽鎖自体は、「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域は、抗体の抗原結合特異性を決定し、一方C領域は、構造的支持と免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用における機能を提供する。
【0033】
抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの抗原結合特異性は、特定抗原に結合する抗体又はそのフラグメントの能力を表わす。抗体の抗原結合特異性はV領域の構造特徴によって決定される。各々のV領域は、典型的には3つの相補性決定領域(「CDR」、その各々が「超可変ループ」を含む)及び4つのフレームワーク領域を含む。従って、特定所望抗原に実質的な親和性で結合するために必要な最小構造単位である抗体結合部位は、典型的には3個のCDR、及びCDRを適切な立体配座に保持し、提示するためにそれらの間に組み入れられる少なくとも3、好ましくは4個のフレームワーク領域を含む。
【0034】
本明細書で使用する、抗体は、Fv、ScFv、Fab’及びF(ab’)2、dAb、キメラ、CDR移植及びヒト化抗体を含む改変抗体、及びファージディスプレイ又は選択的手法を用いて作製される人為的に選択される抗体を含む、完全抗体又は選択標的に結合することができる抗体フラグメントを指す。dAb、Fv及びScFvなどの低分子フラグメントは、それらの小さなサイズ及びその結果として生じる優れた組織分布の故に、診断及び治療適用のための有利な特性を有する。好ましくは、抗体は一本鎖抗体又はscFvである。
【0035】
一般に抗体は、少なくとも3個の認識可能なCDR又は超可変ループ及び少なくとも3、好ましくは4個の認識可能なフレームワーク領域を含み、いかなる場合もHCV E2タンパク質に結合する能力を保持しなければならない。典型的には、必ずではないが、ポリペプチドはまた、軽鎖定常領域及び/又は重鎖定常領域、好ましくは両方を含む。ポリペプチドの好ましい特徴は、典型的には、本質的に本発明の最初の態様のポリヌクレオチド分子によってコードされるポリペプチドに関して上述したとおりである。
【0036】
1つの特定実施形態では、ポリペプチドは、1以上の超可変ループ又は図8に示すものと実質的に又は完全に同一のアミノ酸残基配列を有するCDRを含み得るが、ヒト免疫グロブリンのものに対応するように変化した1以上のフレームワーク領域を含み得る。ポリペプチドのアミノ酸配列が「ヒトフレームワーク領域」と「マウス」又は「外来性」CDRの理論的理想と異なる場合、そのような逸脱は、好ましくは保存的置換を含む。保存的置換は、1個のアミノ酸残基によるもう1つ別の残基の置換であり、両方の残基は同じ機能的グループ(Figs.2.8−2.15 of 「Biochemistry」 by L.Stryer,2nd edition W.H.Freeman & Coに定義されている)内の側鎖を有する。
【0037】
結合活性を有する非免疫グロブリンポリペプチドを含むポリペプチドは、例えばランダムなポリペプチド構造の組換え体ライブラリーから開発され得る。ファージディスプレイ、SELEX、mRNAディスプレイ又は表面プラズモン共鳴、続いて、必要に応じて突然変異と選択の反復による結合特異性及び親和性の改善などの手法による、所望標的に対して結合親和性を有するポリペプチドの選択は、当業者に公知の手法である。
【0038】
例えばmRNA選択による結合ポリペプチドの選択は、Wilson et al,Proc Natl Acad Sci USA 2001 Mar 27;98(7):3750−3755によって記述されている。Srebalus and Clemmer,Proc Natl Acad Sci USA 2001 Mar 27;98(7):3750−3755は、ポリペプチドのライブラリーの標的分子への結合を特性付けるためのMALDI−TOF MSの使用を述べている。ファージディスプレイの使用は、Nilsson et al.,Adv Drug Deliv Rev 2000 Sep 30;43(2−3):165−96及びMcGregor,Mol Biotechnol 1996 Oct;6(2):155−62によって総説されている。核酸アプタマーの使用は、Hermann and Patel,Science 2000 Feb 4;287(5454):820−5によって総説されている。SELEXは、標的分子への高度特異的結合を有する核酸分子をインビトロで発生させるための方法である。それは、例えば米国特許第5654151号明細書、同第5503978号明細書、同第5567588号明細書及び同第5270163号明細書、並びに国際公開第WO96/38579号パンフレットに述べられている。
【0039】
ファージディスプレイやSELEXなどの反復選択手順は、多数の可能な配列及び構造を含むライブラリー内に、所与の標的に対する広範囲の結合親和性が存在するという原理に基づく。例えば20サブユニットのランダム化ポリペプチド又は核酸ポリマーを含むライブラリーは、420の構造可能性を有し得る。標的に対してより高い親和定数を有するものが、最も結合の可能性が高いとみなされる。分配、分離及び増幅の工程は、より高い結合親和性候補に富む第二の核酸ライブラリーを作成する。さらなる回数の選択は、生じるライブラリーが主として1個だけ又は数個の配列で構成されるまで、漸進的に最良のリガンドを支持する。次にこれらをクローニングし、配列決定して、純粋なリガンドとしての結合親和性に関して個々に試験することができる。
【0040】
所望の目標が達成されるまで選択と突然変異/増幅のサイクルを反復する。最も一般的な場合、サイクルの反復後に結合強度の有意の改善が達成されなくなるまで選択/増幅を続ける。選択/増幅反復法は、少なくとも1014個の配列を含むライブラリーにおいて1個の配列変異体の単離を可能にするのに十分な感受性がある。本方法は、原則として、約1018の異なる核酸種と同数をサンプリングするために使用できる。ライブラリーは、好ましくはランダム化配列部分並びに効率的な増幅のために必要な保存配列を含む。配列変異体は、ランダム化核酸配列の合成及びランダムに切断された細胞核酸からのサイズ選択を含む多くの方法で生産できる。可変配列部分は、完全に又は部分的にランダムな配列を含み得る。それはまた、ランダム化配列と共に組み込まれた保存配列の小部分を含み得る。試験核酸における配列変異は、選択/増幅反復の前又はその間の突然変異誘発によって及び特異的修飾によって導入又は増加させ得る。
【0041】
本発明のポリペプチドは、当業者に公知の手法を用いて形質転換細胞から又はトランスジェニック生物から作製し得る。典型的なプロトコールを例示のために以下で述べる。
【0042】
((a)COS−7細胞における抗体の一過性発現)
DNAは、電気穿孔法、DEAEデキストラン及びリン酸カルシウム沈殿法などの多くの手段によってCOS−7細胞に導入することができる。
【0043】
電気穿孔法に関しては、Kettleborough et al(1991 Protein Eng.4,773−783)の方法が使用できる。重及び軽鎖発現ベクターのコトランスフェクションのために、各々のベクター10μgを使用する。両方の抗体鎖を発現する1個のベクターに関して13μgを使用する。DNAを、PBS中1×107細胞/mlの0.7mlアリコートに添加し、Bio−Rad Gene Pulser(登録商標)装置を用いて1900V、25μF静電容量でパルスする。対照として、非特異的抗体を発現するベクター13μgもCOS−7にトランスフェクトする。DNAの非存在下で電気穿孔したCOS−7細胞を陰性対照として含める。室温で10分間の回復後、電気穿孔した細胞を、5%ウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM 8mlに添加し、5%CO2中37℃で72時間インキュベートする。72時間のインキュベーション後、培地を収集し、細胞デブリを除去するために遠心して、分析のために保存する。
【0044】
若しくは、DEAE−デキストラントランスフェクション法が使用できる。本方法は、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual,W.H Freeman and Company(1990)に述べられている。COS−7細胞を、1×106細胞/100mmディッシュでDMEM(BIOWHITTAKER)、10%ウシ胎仔血清(FBS)に接種する。2日目に、プラスミドDNAをエタノール沈殿させ、滅菌TE(10mMトリス、pH8.0、1mM EDTA)中に20μg/mlの濃度で再懸濁する。DNA 150μlを、滅菌TBS(トリス緩衝食塩水、140mM NaCl、5mM KCl、1.4mM Na2HPO4、25mMトリス塩基、pH7.5、1mM CaCl2及び0.5mM MgCl2)300μl及び滅菌DEAEデキストラン(SIGMA、TBS中1mg/ml)300μlと混合する。増殖培地を吸引し、細胞単層をPBSで1回及びTBSで1回洗う。750μlのDNA/DEAEデキストラン/TBS混合物を単層に添加する。ディッシュを、5分ごとに揺り動かしながら層流フード内で周囲温度にて1時間インキュベートする。1時間のインキュベーション後、DNA溶液を吸引し、細胞をTBSで1回及びその後PBSで1回洗う。細胞を、100μMのクロロキン(SIGMA)を添加した完全培地中で37℃、5%CO2にてインキュベートする。4時間後、培地を完全培地と交換し、細胞を37℃、5%CO2でインキュベートする。トランスフェクションの48時間後、細胞に、血清を含まないDMEM増殖培地を供給する。24時間後、培地を採集し、卓上臨床遠心分離機において1500rpmで5分間遠心分離して細胞デブリを除去する。
【0045】
((b)CHO細胞における本発明の抗体の安定な発現)
この手順のための典型的なプロトコールは以下の通りである。
CHO細胞(CHO DUXB−11、Urlaub & Chasin,1980 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4216−4220)をトリプシン処理し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で1回洗う。DNA(13μgの重及び軽免疫グロブリン鎖についての遺伝子を含むプラスミド)及びPBS中1×107細胞/mlの0.8mlアリコートを滅菌Gene Pulser(登録商標)キュベット(0.4cmギャップ)に入れる。パルスを1900ボルト、25μF静電容量で送達する。室温で10分間の回復期間後、電気穿孔した細胞を20mlのα−MEM(プラスリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド)/10%FBSに添加する。24〜48時間のインキュベーション後、細胞をトリプシン処理し、α−MEM(マイナスリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド)/10%透析FBS中、100mmディッシュにプレートする(dhfr含有プラスミドの発現に関して選択するため)。コロニーが出現するまで培地を3〜4日ごとに交換する。クローニングシリンダーによって単一クローンを単離し、増殖させて、ELISAによってIgG産生に関して分析する。次に、漸増量のIgGを発現するクローンを選択するために、単一クローンを連続的に漸増濃度のメトトレキサート(MTX)(109M-1 MTXから出発する)に供する。コロニーが出現するまで培地を3〜4日ごとに交換する。クローニングシリンダーによって単一クローンを単離し、増殖させて、ELISAによってIgG産生に関して分析する。
【0046】
((c)抗体フラグメントの酵素的生産)
抗原結合抗体フラグメントは、無処置免疫グロブリンの酵素的又は化学的分離によって生産することができる。フラグメントはまた、組換えDNA手法(例えばKing et al,1992 Biochem.J.281,317−323;Carter et al,1992 Biotechnology 10,163−167)によっても生産できる。選択フラグメントをコードする核酸のセグメントは、適切な制限酵素による完全長コード配列の消化によって、又は新規合成によって生産される。
【0047】
例えばF(ab’)2フラグメントは、Harlow & Lane(1988「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,NY)に述べられているような標準方法を用いてpH3.0−3.5でのペプシンによるタンパク質分解消化によってIgG分子から入手できる。
【0048】
Fabフラグメントは、限定還元によってF(ab’)2フラグメントから、又は還元剤の存在下にパパインでの消化によって完全抗体から入手し得る。
【0049】
本発明のポリペプチドは、当業者に明白な多くの方法で特徴づけし得る。これらは、ELISAなどの手法による濃度の物理的測定及びSDS−PAGEによる抗体純度の物理的測定を含む。加えて、ポリペプチドの有効性は、溶液中で、又はELISA、表面プラズモン共鳴(例えばBIAコア)又は免疫蛍光アッセイなどの固相系においてHCV E2糖タンパク質への分子の結合を検出することによって測定できる。より詳細には、本明細書で述べるようなHCVpp中和アッセイにおいて6つの公知の遺伝子型を代表するHCV試料に対してポリペプチドの中和能力を試験することができる。
【0050】
本発明のポリペプチドは非アミノ酸部分を含み得る。例えばポリペプチドはグリコシル化され得る。そのようなグリコシル化は、宿主細胞又は宿主生物におけるポリペプチドの発現の間に自然に起こり得るか、又は人為的介入から生じる意図的な修飾であり得る。付加的に又は選択的に、本発明のポリペプチドは他の化学修飾に供し得る。1つのそのような望ましい修飾は、1以上のポリエチレングリコール(PEG)部分の付加である。ペグ化は、インビボで様々な抗体フラグメントの半減期を有意に上昇させることが示された(Chapman 2002 Adv.Drug Delivery Rev.54,531−545によって総説された)。しかし、抗体フラグメントのランダムなペグ化は、抗原に対するフラグメントの結合親和性に極めて有害な作用を及ぼし得る。これを避けるため、ペグ化は抗体又は抗体フラグメントの特定の標的残基に限定することが望ましい (Knight et al,2004 Platelets 15,409−418及び上記で引用した、Chapman参照)。
【0051】
(B.抗体作製)
本発明に従った抗体は、例えばそれらが天然に生じる抗体の一時配列とは異なる一次配列を有するように、好都合に作製される抗体である。特に、AP33抗体は、好ましくは修飾される。
【0052】
天然のAP33配列を有さない、本発明に従った抗体は、AP33のフラグメント、アミノ酸配列における1以上の付加、置換又は欠失、標識又はエフェクター基の付加等を含む修飾AP33であり得る。好都合には、抗体は、ヒト被験者における免疫原性をより低くするためにヒト化又は脱免疫されている。
【0053】
本発明において有用な抗体は、新規生成し得るか又はAP33を操作することによって生産し得る。
【0054】
(B(i)新規抗体生成)
抗体は、本明細書で述べるペプチド免疫原を使用した動物又はヒトの免疫によって生成し得る。抗体は、免疫動物の血清から入手し得るか又は細胞培養において生産し得る。組換えDNAテクノロジーは、細菌又は好ましくは哺乳動物細胞培養において、確立された手順に従って抗体を生産するために使用し得る。選択細胞培養系は、好ましくは抗体産物を分泌する。
【0055】
ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的方法は周知である。非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス、ウサギ、ウマモノクローナル抗体の作製は周知であり、例えばHCV E2糖タンパク質又はそのフラグメントを含む製剤で動物を免疫することによって実施できる。免疫動物から得られる抗体産生細胞を不死化し、スクリーニングするか、又は最初にE2に結合する抗体の産生に関してスクリーニングし、その後不死化する。(上記で引用した、Harlow & Lane参照)。
【0056】
不死化抗体産生細胞系は、細胞融合によって、及びまた、腫瘍形成性DNAによるBリンパ球の直接形質転換又はエプスタイン−バーウイルスによるトランスフェクションなどの他の手法によって樹立できる。HCV E2エピトープに対して産生されるモノクローナル抗体のパネルは、様々な性質に関して、例えばアイソタイプ及びエピトープ親和性に関してスクリーニングすることができる。
【0057】
HCV E2含有ポリペプチドはまた、ヒトモノクローナル抗体を選択するためにも使用できる。例えば、AP33などの特定マウス抗体と同じエピトープ特異性を有する一部のヒト抗体は、競合結合実験によって選択し得る。そのような抗体は、AP33に関して明らかにされた有用なHCV中和特性を共有する可能性が特に高い。HCV E2に対するヒト抗体は、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって作製できる(Huse et al,1989 Science 246,1275−1281参照)。HCV E2又はそのフラグメントに結合する抗体を選択する。次に、そのような抗体(又は結合フラグメント)をコードする配列を、クローニングして増幅し得る。このプロトコールは、ファージディスプレイテクノロジーとの組合せによって改善される(例えば国際公開第91/17271号パンフレット及び国際公開第92/01047号パンフレット)。
【0058】
インビトロでのハイブリドーマ細胞又は哺乳動物宿主細胞の増殖は、慣例的な標準培地である適切な培地、例えば、場合により哺乳動物血清、例えばウシ胎仔血清、又は微量元素及び増殖維持サプリメント、例えば正常マウス腹膜滲出物細胞などの支持細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージ、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸等を添加した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)又はRPMI 1640培地において実施される。細菌細胞又は酵母細胞である宿主細胞の増殖は、同様に、当分野において公知の適切な培地、例えば細菌に関してはLB、NZCYM、NZYM、NZM、テリフィックブロス、SOB、SOC、2×YT又はM9最小培地、及び酵母に関しては培地YPD、YEPD、最小培地又は完全最小ドロップアウト培地において実施される。
【0059】
インビトロ生産は比較的純粋な抗体製剤を提供し、所与の大量の所望抗体を与えるためのスケールアップを可能にする。細菌細胞、酵母又は哺乳動物細胞培養のための手法は当分野において公知であり、例えばエアリフト反応器又は連続攪拌反応器における均一懸濁培養、又は例えば中空繊維、マイクロカプセル中、アガロースマイクロビーズ又はセラミックカートリッジ上での固定化又はエントラップ細胞培養を含む。
【0060】
大量の所望抗体はまた、哺乳動物細胞をインビボで増殖させることによって入手できる。このために、所望抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、抗体産生腫瘍の増殖を生じさせる組織適合性哺乳動物に注入する。場合により、注入の前に動物を炭化水素で、特にプリスタン(テトラメチル−ペンタデカン)などの鉱物油でプライミングする。1〜3週間後、抗体をそれらの動物の体液から単離する。例えばBalb/cマウスからの抗体産生脾臓細胞と適切な骨髄腫細胞の融合によって得られるハイブリドーマ細胞、又は所望抗体を産生するハイブリドーマ細胞系Sp2/0に由来するトランスフェクト細胞を、場合によりプリスタンで前処置したBalb/cマウスに腹腔内注入し、1〜2週間後に、動物から腹水を採取する。
【0061】
前記や他の手法は、例えば参照により本明細書に組み込まれる、Kohler and Milstein,(1975)Nature 256:495−497;米国特許第4,376,110号明細書;Harlow and Lane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harborの中で論じられている。組換え抗体分子の調製のための手法は、上記参考文献及びまた、例えば参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第0623679号明細書;欧州特許第0368684号明細書及び欧州特許第0436597号明細書に述べられている。
【0062】
細胞培養上清は、優先的に所望標的を発現する細胞の免疫蛍光染色によって、免疫ブロット法によって、酵素免疫測定法、例えばサンドイッチアッセイ又はドットアッセイ、又は放射免疫測定法によって、所望抗体に関してスクリーニングされる。
【0063】
抗体の単離のために、培養上清中又は腹水中の免疫グロブリンを、例えば硫酸アンモニウムによる沈殿、ポリエチレングリコールなどの吸湿性材料に対する透析、選択膜を通してのろ過等によって、濃縮し得る。必要に応じて及び/又は所望する場合は、慣例的なクロマトグラフィー法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー及び/又は(免疫)アフィニティークロマトグラフィー、例えば標的分子又はプロテインAによるアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体を精製する。
【0064】
前記手順に従って生成された抗体は、標準手順に従って、細胞からの核酸の単離によってクローニングし得る。有用には、抗体の核酸可変ドメインを単離し、scFvなどの抗体フラグメントを構築するために使用し得る。
【0065】
何らかの所望ポリペプチドに特異的な完全ヒト抗体も、ライブラリーからの選択によって又はヒト抗体遺伝子レパートリーを担持するトランスジェニックマウスにおいて作製し得る。
【0066】
ライブラリーからの抗体の選択のための様々な手法が記述されており、Hoogenboom(2005)Nature Biotechnology 23,1105−1116によって総説されている。簡単に述べると、抗体ライブラリー選択のために使用可能な方法は、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ及び微生物細胞ディスプレイを含む。
【0067】
いかなるライブラリー選択システムも本発明と共に使用し得る。大きなライブラリーの所望数を単離するための選択プロトコールは、ファージディスプレイ手法に代表されるように、当分野において公知である。様々なペプチド配列が糸状バクテリオファージの表面に提示されるそのようなシステムは(Scott and Smith(1990、上記)、標的抗原に結合する特異的抗体フラグメントのインビトロ選択と増幅のための抗体フラグメント(及びそれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作成するために有用であることが明らかになった。VH及びVL領域をコードするヌクレオチド配列を、それらを大腸菌の細胞周辺腔へと差し向けるリーダーシグナルをコードする遺伝子フラグメントに連結し、その結果として生じる抗体フラグメントは、典型的にはバクテリオファージコートタンパク質(例えばpIII又はpVIII)への融合物として、バクテリオファージの表面に提示される。あるいは、抗体フラグメントは、λファージキャプシド(ファージ体)の外側に提示される。ファージに基づく提示システムの利点は、それらが生物系であるので、選択されるライブラリー構成物が、単に選択ライブラリー構成物を含むファージを細菌細胞において増殖させることによって増幅できることである。さらに、ポリペプチドライブラリー構成物をコードするヌクレオチド配列はファージ又はファージミドベクターに含まれるので、配列決定、発現及びその後の遺伝子操作が比較的容易である。
【0068】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリー及びλファージ発現ライブラリーの構築のための方法は当分野において周知である(参照により本明細書に組み込まれる、McCafferty et al (1990)上記;Kang et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:4363;Clackson et al.(1991)Nature,352:624;Lowman et al.(1991)Biochemistry,30:10832;Burton et al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,88:10134;Hoogenboom et al.(1991)Nucleic Acids Res.,19:4133;Chang et al.(1991)J Immunol,147:3610;Breitling et al(1991)Gene,104:147;Marks et al.(1991)上記;Barbas et al.(1992)上記;Hawkins and Winter(1992)J.Immunol,22:867;Marks et al,1992,J Biol.Chem.,267:16007;Lemer et al(1992)Science,258:1313)。
【0069】
1つの特に有利なアプローチは、scFvファージライブラリーの使用であった(Huston et al,1988,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,85:5879−5883;Chaudhary et al(1990)Proc. Natl.Acad.Sci U.S.A.,87:1066−1070;McCafferty et al.(1990)上記;Clackson et al.(1991)上記;Marks et al(1991)上記;Chiswell et al(1992)Trends Biotech.,10:80;Marks et al.(1992)上記)。バクテリオファージコートタンパク質上に提示されるscFvライブラリーの様々な実施形態が記述されている。ファージディスプレイアプローチの洗練も公知であり、例えば参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第96/06213号パンフレット及び国際公開第92/01047号パンフレット(Medical Research Council et al.)及び国際公開第97/08320号パンフレット(Morphosys,上記)に述べられている。
【0070】
ファージディスプレイ法では、それらの外側表面に種々の抗体又はフラグメントを提示するファージのライブラリーを作成する。抗体は通常、scFv又はFabフラグメントとして提示される。所望特異性を有する抗体を提示するファージを、HCV E2ポリペプチド又はそのフラグメントへの親和性の強化によって選択する。
【0071】
ファージディスプレイ法の変法では、AP33などの選択マウスMAbの結合特異性を有するヒト抗体を作製することができる(国際公開第92/20791号パンフレット参照)。この手法では、選択マウス抗体(例えばAP33)の重又は軽鎖可変領域を出発物質として使用する。例えば軽鎖可変領域を出発物質として選択する場合、同じ軽鎖可変領域(すなわちマウス出発物質)及び異なる重鎖可変領域を提示するファージライブラリーを構築する。重鎖可変領域は再構成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得られる。HCV E2糖タンパク質に対して強い特異的結合(例えば少なくとも108、好ましくは少なくとも109M-1)を示すファージを選択する。その後、このファージからのヒト重鎖可変領域は、さらなるファージライブラリーを構築するための出発物質として役立つ。このライブラリーでは、各々のファージは、同じ重鎖可変領域(すなわち最初のディスプレイライブラリーから特定された領域)及び異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、再構成されたヒト軽鎖可変領域のライブラリーから得られる。再び、HCV E2に対して強い特異的結合を示すファージを選択する。これらのファージは、完全なヒトHCV E2抗体の可変領域を提示する。これらの抗体は通常、マウス出発物質と同じ又は類似のエピトープ特異性を有する。この変異体として、選択は、付加的に又は選択的に、HCVの6つの遺伝子型全てを中和する能力に基づき得る。
【0072】
本発明のHCV E2結合ポリペプチドはまた、トランスジェニックヤギ、マウス又は植物系などのトランスジェニック生物によって発現され、それらから精製され得る。植物における組換え抗体の生産は、Schillberg et al,(2005 Vaccine 23,1764−1769 and 2003 Cell Mol.Life Sci.60,433−445)によって総説された。抗体又は抗体フラグメントの発現に関して成功裏に使用された植物は、アラビドプシス(Arabidopsis、シロイヌナズナ)De Wilde et al,1998 Plant Cell Physiol.39,639−646)及びタバコ(Valdes et al,2003 Biochem.Biophys.Res.Comm.308,94−100)を含む。
【0073】
ひとたび発現されると、本発明の完全抗体又は抗体フラグメントは、硫酸アンモニウム沈殿法、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む、当分野の標準手法に従って精製できる(一般にScopies & Stoter,1982 Methods Enzymol.90 Part E,479−490参照)。医薬用途のためには、少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%又はそれ以上の均一性の免疫グロブリンが最も好ましい。
【0074】
選択的なライブラリー選択テクノロジーは、どちらも先に述べられているように(Huse et al.(1989)Science,246:1275;Caton and Koprowski(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87;Mullinax et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87:8095;Persson et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:2432)、バクテリオファージプラークとして又は溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングでき、本発明において有用である、バクテリオファージλ発現系を含む。そのような発現系は、ライブラリーの106までの異なる構成物をスクリーニングするために使用できるが、それらはより大きな数(106以上)のスクリーニングには実際上適さない。他のスクリーニングシステムは、例えばライブラリー構成物の直接化学合成に基づく。初期の1つの方法は、国際公開第84/03564号パンフレットに述べられているような、一組のピン又はロッド上でのペプチドの合成を含む。各々のビーズが個々のライブラリー構成物であるペプチドライブラリーを形成するビーズ上でのペプチド合成を含む同様の方法が、米国特許第4,631,211号明細書に述べられており、関連方法が国際公開第92/00091号パンフレットに述べられている。ビーズに基づく方法の有意の改善は、各々のライブラリー構成物のアミノ酸配列の同定を容易にするために、オリゴヌクレオチドなどの独自の同定タグで各々のビーズを標識することを含む。これらの改善されたビーズベースの方法は国際公開第93/06121号パンフレットに述べられている。
【0075】
もう1つの化学合成法は、各々の異なるライブラリー構成物(例えばユニークペプチド配列)をアレイ内の離れた、所定の位置に置く方法による表面上でのペプチド(又はペプチドミメティック)のアレイの合成を含む。各ライブラリー構成物の同一性をアレイ内のその空間位置によって決定する。所定の分子(例えば受容体)と反応性ライブラリー構成物との間で結合相互作用が起こるアレイ内の位置を決定し、それによって空間位置に基づき反応性ライブラリー構成物の配列を同定する。これらの方法は、米国特許第5,143,854号明細書;国際公開第90/15070号明細書及び国際公開第92/10092号明細書;Fodor et al.(1991)Science,251:767;Dower and Fodor(1991)Ann.Rep.Med.Chem.,26:271に述べられている。
【0076】
ポリペプチド又はヌクレオチドのライブラリーを作成するための他のシステムは、ライブラリー構成物のインビトロ合成のための無細胞酵素機構の使用を含む。1つの方法では、標的リガンドに対する選択とPCR増幅を交互に実施することによってRNA分子を選択する(Tuerk and Gold (1990)Science,249:505;Ellington and Szostak(1990)Nature,346:818)。同様の手法は、所定のヒト転写因子に結合するDNA配列を同定するために使用し得る(Thiesen and Bach(1990)Nucleic Acids Res.,18:3203;Beaudry and Joyce(1992)Science,257:635;国際公開第92/05258号パンフレット及び国際公開第92/14843号パンフレット)。同様に、インビトロ翻訳は、大きなライブラリーを作成するための方法としてポリペプチドを合成するために使用できる。一般に安定化ポリソーム複合体を含むこれらの方法は、さらに、国際公開第88/08453号パンフレット、国際公開第90/05785号パンフレット、国際公開第90/07003号パンフレット、国際公開第91/02076号パンフレット、国際公開第91/05058号パンフレット及び国際公開第92/02536号パンフレットに述べられている。国際公開第95/22625号パンフレット及び国際公開第95/11922号パンフレット(Affymax)に述べられているような、ファージに基づかない選択的ディスプレイシステムは、選択のためのポリペプチドを提示するためにポリソームを使用する。これら及び全ての前記資料も、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
ファージ又は他のクローン化ライブラリーの使用に代わるのは、選択標的で免疫した動物の脾臓に由来する核酸、好ましくはRNAを使用することである。このようにして得られたRNAは、免疫グロブリンの天然のライブラリーを表す。V領域及びC領域のmRNAの単離は、Fab又はFvなどの抗体フラグメントが本発明に従って細胞内で発現されることを可能にする。
【0078】
簡単に述べると、RNAを免疫動物の脾臓から単離し、PCRプライマーを使用してRNAプールからVH及びVL cDNAを選択的に増幅する。このようにして得られたVH及びVL配列を、scFv抗体を作製するために連結する。PCRプライマー配列は、公開されているVH及びVL配列に基づいており、キットの形態で市販されている。
【0079】
全ての選択及びディスプレイシステムと組み合わせて、本発明は、所望結合活性の単離のためにAP33によって結合されるエピトープを形成することが同定されたペプチドを提供する。そのようなペプチドを本明細書でより詳細に説明する。
【0080】
(B(ii)AP33の作製)
AP33又はAP33のエピトープ特異性を共有する他の抗体は、免疫原性を低減する及び/又は結合特性を改善するように操作し得る。
【0081】
抗体を操作するためのいくつかの手法が当分野において公知である。一般に、CDRを供与側(非ヒト)抗体から受容側(ヒト)抗体のフレームワークに移入することによって抗体の免疫原性が低下する。この手順は、CDR移植又はヒト化として知られる。この手順の難点は、供与側と受容側のフレームワークの相違の結果として、結合活性が失われ得ることである。さらに、CDR自体によって一定量の免疫原性が保持され得る。薄板化、再表面作成、SDR移入及び脱免疫化を含む、様々な補足的及び選択的手法が、これらの問題に対処するために提案されてきた。
【0082】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドはCDR移植分子をコードする。CDR移植分子は、図8に示すAP33の軽又は重鎖のCDR配列と実質的に又は完全に同一のアミノ酸配列を有する軽及び/又は重鎖CDR、及び図8に示すAP33のフレームワーク領域配列と実質的に同一でないフレームワーク領域を含むものである。本発明に関して、CDRは、各々のCDR配列が図8に示す対応CDRの配列と1又は2アミノ酸残基だけ、好ましくは1アミノ酸残基だけ異なる(すなわち好ましくは図8に示すAP33のCDR配列と比較して各々のCDR内に1個だけのアミノ酸残基置換)場合、AP33のCDRと「実質的に同一」とみなす。好ましくは、CDR移植分子のCDR配列は、図8に示すAP33のCDR配列と完全に同一である。
【0083】
特に好ましい種類のCDR移植分子は、図8に示すAP33のものと実質的に又は完全に同一のアミノ酸配列を有するCDRを含むが、ヒトフレームワーク領域配列を含む抗体又は抗原結合フラグメントである。そのような分子は「ヒト化」と称され得る。ヒト抗体のものとより密接に類似する(又はさらには同一である)ために、AP33のものと比較して変化したフレームワーク領域の使用は、生じるポリペプチドのヒト被験者における免疫原性を大きく低下させるはずである(AP33と比較して)。「ヒトフレームワーク領域配列」は、ヒト抗体のものと同一であるか又は有意ではない量だけ(例えばフレームワーク領域につき7アミノ酸残基以下、好ましくはフレームワーク領域につき4残基以下、より好ましくはフレームワーク領域につき3残基以下、最も好ましくはフレームワーク領域につき2残基以下)ヒト抗体のものと異なる配列である。好都合には、コードされるポリペプチドは、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子セグメントによってコードされるものと同一のフレームワーク領域を含む。
【0084】
一般論として、「CDR移植」は、ヒトフレームワーク領域と組み合わせて非ヒト起源(マウス又は他の非ヒト哺乳動物など)からのCDRをコードするポリヌクレオチドの形成を含む。定常領域も、存在する場合には、好ましくはヒト起源である。
【0085】
慣例的に「供与抗体」及び「受容抗体」という用語が使用される。非ヒト供与抗体からのCDRがヒト受容抗体のフレームワークに移植される。CDR移植の手法は当業者に周知である。その手順は、最初にJones et al,(1986 Nature 321,522−525)及びRiechmann et al,(1988 Nature 332,323−327)によって記述され、非ヒト起源のCDRのヒトフレームワークへの移植だけを含んだ。
【0086】
この手法は、CDRの外側の、一定のフレームワーク残基の変化を移植抗体内に付加的に移入することを必要とし得る(Riechmann et al,(1988)Nature 332,323−327)。従って、本明細書では「CDR移植」という用語は、単にCDR残基の異なるフレームワークへの移入を意味すると解釈されるべきではないが、生じる分子にCDRが由来する抗体の抗原結合特性を付与するための実質的な必要に応じて、そのようなフレームワーク残基の付加的な移入も包含する。「CDR移植分子」という用語は、それに準じて、CDRに加えて一定のフレームワーク残基も同時に「移植される」ポリペプチドを包含すると解釈されるべきである。
【0087】
抗体のヒト化は、例えば欧州特許第460167号明細書、欧州特許第682040号明細書、米国特許第5530101号明細書、同第5585089号明細書、同第5693761号明細書、同第5693762号明細書、同第5766886号明細書、同第5821337号明細書、同第5859205号明細書、同第5886152号明細書、同第5887293号明細書、同第5955358号明細書、同第6054297号明細書及び同第6180370号明細書に述べられている。これらの方法は全て、抗原結合特異性を付与する役割を担うアミノ酸残基がヒト抗体可変領域のフレームワーク領域内に組み込まれるように、抗体の可変領域を再設計することを含む。
【0088】
一部の場合には、非ヒト抗体の免疫原性部分をヒト抗体からの残基によって置換する(例えば米国特許第5712120号号明細書)。あるいは非ヒト可変ドメインを「再表面作成する」ために、抗体可変ドメインの表面の残基をヒト抗体からの残基によって置換することができる(例えば米国特許第5639641号号明細書)。再表面作成はPadlan(1991,欧州特許第0519596号明細書)によって示唆されたもので、「薄板化(veneering)」とも称される。この手法では、第一(供与側の等価物−CDRのソース)抗体の溶媒接触残基を第二(「受容」)抗体からの残基によって置換する。典型的には、第二抗体はヒト抗体である。溶媒非接触残基、CDR、ドメイン間の接触残基、及びCDRに直接隣接する残基は全て、第一抗体におけるのと同じままである。この戦略は、完全な抗原結合活性の保持を助けると考えられる、第一抗体からのパッキング及びインターフェース相互作用の全てを保持しながら第二抗体の表面を模倣することを意図する。これはB細胞エピトープの数を低下させるはずであり(及びまた一部のTエピトープも低下させると考えられる)、より低い免疫原性を導く。
【0089】
溶媒接触残基は、抗体の高分解能構造の検討によって同定される。ヒト化に関連すると考えられる抗体の他の領域、つまりCDRと接触し、マウスとヒト抗体の間で異なる(そのような場合はげっ歯動物残基が使用される)埋もれた残基や、両方のドメインに関してCDRの近くに位置し、抗原結合において役割を果たすと考えられるN末端領域、及び離れた距離であっても役割を果たし得る静電的相互作用である。置換すべき表面残基の選択は、第一抗体可変ドメインと第二抗体種からの使用可能な配列(個別又はコンセンサス配列)のドメインとの間の相同性マッチングによって決定される。
【0090】
米国特許第5639641号明細書及び欧州特許出願公報第0592106号明細書は、再表面作成のための選択的方法を述べている。ここでは、第二抗体種の残基に変更すべき溶媒接触可能残基をPadlanと同様の手順を用いて同定するが、各々の位置に関する平均接触可能性を得るためにより多くの数の構造を分析する。一定レベル以上の接触可能性を有する残基を検討し、それを、抗体を使用すべき種からの抗体からの残基に変更する。置換すべき残基の選択は、全体的相同性を有する抗体から又は溶媒接触可能残基だけを考慮したときに最も高い相同性を有する抗体からであり得る。
【0091】
国際公開第93/17105号パンフレット及び米国特許第5766686号明細書に述べられているヒト化法は、通常ヒト等価物に安全に変更し得る低危険度残基を同定する。これらの残基は溶媒接触可能性の傾向がある。従って、溶媒接触可能残基だけを変化させる場合、この工程は再表面作成法に類似する。
【0092】
再表面作成又は薄板化抗体を提供する正味の効果がある2つのさらなる手法が記述されている欧州特許出願公開第0438310号明細書及び欧州特許出願公開第0519596号明細書参照。
【0093】
さらなる手法は、免疫応答のためのT細胞のヘルパー機能を使用不能にするか又は低減して、導入される抗体に対する最小限の免疫応答を導くために、T細胞エピトープを同定し、除去する(「デトープ」と呼ばれる)ことを目指す(米国特許第5712120号明細書;欧州特許出願第0699755号明細書)。この工程でB細胞エピトープを除去することも可能である。
【0094】
「脱免疫(DeImmunisation)」テクノロジーは、抗体配列内のB及びT細胞エピトープの両方を低減しようとするものであり、予測アルゴリズム及びまた、これらのモチーフを同定するためにMHCペプチド結合部位をモデリングするための構造情報に依存する。欧州特許第98/52976号明細書、欧州特許第0983303号明細書、国際公開第00/34317号明細書、欧州特許第1051432号明細書参照。
【0095】
抗体ヒト化手法はまた、「Antibody Engineering」(Eds.Kontermann and Dhubel),Chapter 40 p567−592(O’Brien and Jones)においても示されている。
【0096】
一部の試験は、必ずしも全てのCDRが抗原と接触しない例があることを認めており、例えばMacCallum et al,(1996 J.Mol.Biol.262,732−745)がある。従って、一部の場合には、ヒト化は、CDR残基のサブセットの移入によって達成でき、例えばSantos & Padlan(1988,Prog.Nucl.Acid Res.Mol.Biol.60,169−194)及びTamura et al,(2000,J.Immunol.164,1432−1441)に示される。これはSDR移入と称される。
【0097】
(B(iii).結合型ヒト化及び選択)
フレームワークの相対的重要性における不確実性は、様々な手法の開発において、ヒト化成功への1つの因子であり、一部には様々な選択推進ライブラリー手法を導いてきた。これらは、選択的組合せの集団から最良の結合相手を実際的に同定することを目指す。例えば、ヒト化変異体を試験するための、1以上のフレームワーク位置における変更可能性を有する特定抗体可変ドメインのライブラリーの使用(例えばBaca et al.(1997)J.Biol.Chem.272:10678)、
特定ソースからのCDR3と組み合わせた可変領域フレームワークのライブラリーの使用(例えばRader et al.(1998)PNAS 95:8910)、
特定親和性及び特異性のヒト抗体又はヒト抗体結合部位を形成するために非ヒト抗体可変ドメインを置換するためのライブラリー内からのヒトパートナードメインの選択(例えばGuided selection,Jespers et al. 1994)BioTechnology 12:899;Beiboer et al.,(2000)J.Mol.Biol.296:833)、
特異的結合を得るためのCDR3(例えばHuCal:Knappick et al.,(2000)J.Mol.Biol.296:57)又は全てのCDRのライブラリーを有する特定フレームワークの使用。
【0098】
Wu et al(1999 J.Mol.Biol.294,151−162)は、ヒト化及びヒト化抗体の同時親和性改善のための手順を述べた(米国特許第5955358号明細書も参照のこと)。コンビナトリアルライブラリーは、集中的CDRH3及びCDRL3ライブラリーと共に8つの潜在的に重要なフレームワーク位置を検討した。1個のマウスフレームワーク残基だけを含み、最初のキメラFabよりも約500倍高い親和性を示す多数の抗CD40Fab変異体が同定された。
【0099】
ファージディスプレイテクノロジーはそのような免疫グロブリンを選択するための強力な手法を提供する(国際公開第91/17271号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第92/06204号パンフレット参照)。従って、例えば抗体のヒト化は、ファージディスプレイと細菌細胞を使用するHoogenboomらのエピトープ「刷り込み」手法を用いて(例えばHoogenboom & Winter 1992,J.Mol.Biol.227,381−388によって記述され;Hoogenboom 2002 Methods Mol.Biol.178,1−37 and 2005 Nature Biotechnol.23,1105−1116によって総説された)、又はVaccinex Inc.(例えば米国特許第2005/0266425号明細書に述べられている)によって開発された、ワクシニアウイルスディスプレイライブラリーと哺乳動物細胞を用いるその改変型を用いて達成し得る。
【0100】
(C.ポリヌクレオチド)
本発明は、本明細書で述べるポリペプチドリガンドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、所望のHCV E2結合活性を有するいかなるポリペプチドもコードし得る。
【0101】
例えばポリヌクレオチドは、軽鎖又は重鎖などの免疫グロブリン分子鎖全体をコードし得る。完全な重鎖は、重鎖可変領域(VH)だけでなく、典型的には3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域(CH)、及び「ヒンジ」領域を含む。一部の状況では、定常領域の存在が望ましい。例えば抗体がHCV感染細胞を死滅させることを所望する場合、完全定常領域の存在は補体を活性化するために望ましい。しかし、また別の状況では、完全定常領域の存在は望ましくないと考えられる。例えば抗体が画像化のために必要である場合、定常領域が存在すると分子サイズの上昇により組織浸透が低下し得る。
【0102】
ポリヌクレオチドによってコードされ得る他のポリペプチドは、単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)2及び「ミニ抗体」などの抗原結合抗体フラグメントを含む。ミニ抗体は、(典型的には)CH1及びCK又はCLドメインが除去された二価抗体フラグメントである。ミニ抗体は従来の抗体よりも小さいので、臨床/診断用途においてはより良好な組織浸透を達成するはずであるが、二価であるため、dAbなどの一価抗体フラグメントよりも高い結合親和性を保持するはずである。従って、文脈によって異なる指示が為されない限り、本明細書で使用する「抗体」という用語は、完全抗体分子だけでなく、上記で論じた種類の抗原結合抗体フラグメントも包含する。
【0103】
特定実施形態では、本発明は、少なくとも3つの免疫グロブリン超可変重又は軽鎖ループを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供し、前記ポリペプチドは、抗原結合を保持し、3つの相補的免疫グロブリン超可変軽又は重鎖ループを含むポリペプチドと組み合わせたとき、本明細書で述べるHCVpp中和アッセイによって判定される35μg/ml以下のIC50でHCV遺伝子型1〜6の各々を代表するHCV試料を中和する抗体分子又はそのフラグメントを形成する。
【0104】
ポリヌクレオチドによってコードされる超可変ループは、好ましくはAP33内に存在する超可変ループのアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を有し得る。ループは、Kabat et al,(1991,Sequences of Immunological Interest,5th Edn.US Dept.Health and Human Services,Washington D.C.)によって考案された番号付け慣例を用いて、図8に示すようにAP33軽鎖内のアミノ酸残基24〜34、50〜56及び87〜89及びAP33重鎖内の31〜35B、50〜65及び95〜102によって表わされる。
【0105】
コードされるポリペプチドは、典型的にはAP33と同一又は実質的に同一のCDR配列を有するが、フレームワーク領域は、好ましくはAP33と異なる。従って、本発明のポリヌクレオチドは、AP33の重及び/又は軽鎖(適宜に)と比較して、特にフレームワーク領域内に、アミノ酸残基置換を含む重及び/又は軽鎖可変領域を有するポリペプチドをコードする。コードされるポリペプチドが部分的又は完全な重及び/又は軽鎖定常領域を含む場合、これもまた、AP33の定常領域と比較して置換を含み得る。
【0106】
置換の影響は、AP33と比較して、コードされるポリペプチドが、
(i)HCV E2タンパク質への結合の高い親和性(例えば標準ELISAによって測定される)、及び/又は
(ii)HCV E2タンパク質への結合の高い特異性(すなわち他のタンパク質、特にヒトタンパク質との低い交差反応性)、及び/又は
(iii)本明細書で述べるHCVpp中和アッセイによって測定したとき、HCVの1以上の遺伝子型の中和のための低いIC50、及び/又は
(iv)ヒト被験者における低い免疫原性(例えばコードされるポリペプチドの標準用量をヒト被験者に静脈内投与した後、標準ELISAによって測定される抗イディオタイプ応答によって決定される)
を有することであり得る。
【0107】
好ましくは、コードされるポリペプチドフレームワーク格領域の少なくとも1つ、最も好ましくはフレームワーク領域の各々が、生じるポリペプチドのヒト被験者における免疫原性を低下させる(AP33に比べて)ために、ヒト抗体のものとより類似するようにAP33と比較してアミノ酸置換を含む。
【0108】
好ましくは、コードされるポリペプチド内に存在する各々のフレームワーク領域は、対応するAP33のフレームワークと比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。従って、例えば前記フレームワーク領域は、AP33内に存在するフレームワーク領域と比べて、合計で、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個又は15個のアミノ酸置換を含み得る。
【0109】
ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの超可変ループはまた、図8に示すようなAP33のアミノ酸配列と比較して合計1以上のアミノ酸置換を含み得ることが可能である。コードされるポリペプチドは、例えばAP33の超可変ループ配列と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個のアミノ酸置換を含み得る(重及び/又は軽鎖内に)。一般に、コードされるポリペプチドはAP33内のものと実質的に同一、好ましくは同一のCDR又は超可変ループ配列を有すると想定されるが、場合により超可変ループの各々は、AP33超可変ループ配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含み得る。
【0110】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは単離及び/又は精製される。単離という用語は、分子がその自然又は天然環境から取り出されている又は分離されていること、又はその自然又は天然環境では存在しない方法で生産されたことを指示することが意図されている。精製という用語は、少なくとも一部の汚染分子又は物質が除去されていることを指示することが意図されている。好ましくは、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、関連ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドが、組成物中に存在する支配的な(すなわち最も豊富な)ポリヌクレオチド又はポリペプチドを構成するように、実質的に精製される。
【0111】
従って、本発明は、好ましくは抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする挿入物を含む組換え核酸を使用する。定義によりそのような核酸は、一本鎖コード核酸、前記コード核酸とそれに相補的な核酸からなる二本鎖核酸、又はこれらの相補的(一本鎖)核酸自体を含む。
【0112】
さらに、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、天然に生じる重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする真正配列、又はその突然変異型を有する酵素的又は化学的に合成された核酸であり得る。真正配列の突然変異型は、1以上のアミノ酸が欠失している又は1以上の他のアミノ酸で交換されている、上記抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸である。好ましくは、前記修飾は、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。そのような突然変異型核酸はまた、1以上のヌクレオチドが、同じアミノ酸をコードする新しいコドンを有する他のヌクレオチドによって置換されているサイレント突然変異型であることが意図されている。そのような突然変異型配列はまた、縮重配列である。縮重配列は、無制限の数のヌクレオチドが、最初にコードされたアミノ酸配列の変化を生じさせることなく他のヌクレオチドによって置換されるという点において遺伝暗号の意味の範囲内で縮重する。そのような縮重配列は、重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインの最適発現を得るために、特定宿主、特に酵母、細菌又は哺乳動物細胞にとって好ましいそれらの異なる制限部位及び/又は特定コドンの使用頻度の故に、有用であり得る。
【0113】
本発明はさらに、本発明の最初の態様に従ったポリヌクレオチドを含む核酸構築物を提供する。典型的には構築物は、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの適切な宿主における発現を可能にする発現ベクターである。構築物は、例えば以下の1以上を含み得る。すなわち、宿主において活性なプロモーター、エンハンサーなどの1以上の調節配列、複製起点及びマーカー、好ましくは選択マーカーを含み得る。宿主は真核又は原核生物宿主であり得るが、真核生物(特に哺乳動物)宿主が好ましいと考えられる。適切なプロモーターの選択は、明らかに、使用する宿主細胞にある程度まで依存するが、HSV、SV40、RSV等のようなヒトウイルスからのプロモーターを含み得る。数多くのプロモーターが当業者に公知である。
【0114】
構築物は、3つの軽鎖超可変ループ又は3つの重鎖超可変ループを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得る。あるいはポリヌクレオチドは、適切な長さの適切に柔軟性のリンカーによって連結された3つの重鎖超可変ループ及び3つの軽鎖超可変ループを含むポリペプチドをコードし得る。もう1つの可能性は、単一構築物が2つの別個のポリペプチド−1つは軽鎖ループを含み、1つは重鎖ループを含む−をコードするポリヌクレオチドを含み得ることである。別個のポリペプチドは、独立して発現され得るか又は1個の共通オペロンの部分を形成し得る。
【0115】
本発明のHCV E2結合ポリペプチドをコードする核酸構築物は、例えばオリゴヌクレオチド誘発型部位特異的突然変異誘発(例えばCarter et al,1986 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,8127−8131参照)及びPCR(Ho et al,Gene 1989 77,51−59)を含む、当業者に周知の標準組換え核酸手法を用いて作製し得る。
【0116】
本発明はさらに、上記で定義したポリヌクレオチド又は構築物を含む、インビトロでの宿主細胞を提供する。宿主細胞は、細菌、酵母又は他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞であり得る。本発明はまた、本発明に従ったポリペプチドを生産するように遺伝子操作されたトランスジェニック多細胞宿主生物を提供し得る。生物は、例えばトランスジェニック哺乳動物(例えばトランスジェニックヤギ又はマウス系)又はトランスジェニック植物系であり得る。ポリペプチドを生産する方法を以下でさらに説明する。
【0117】
(D.免疫原)
さらなる態様では、本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質に結合する抗体を導入するための組成物を提供し、前記組成物は、アミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXを有するペプチド及び生理的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含み、前記ペプチドは、場合によりN及び/又はC末端に付加的なアミノ酸残基を含むが、HCV E2糖タンパク質全体又はそのE2660フラグメント(すなわちHCVポリタンパク質の残基384〜660)を包含せず、アミノ酸残基の1以上が共有結合修飾されていてもよい。
【0118】
また、配列内のX残基の2以上が同じであってもよく、又はあらゆるX残基が異なっていてもよい。
【0119】
Xは、天然に生じるアミノ酸残基のいずれかであり得るか又は、より好ましくないが、非慣例的な残基(例えばオルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、O−ホスホセリン)であってもよい。考慮される他の共有結合修飾は、特に、グリコシル化(特に1以上のN残基のN−グリコシル化)を含む。
【0120】
本発明に関して、第一X残基(すなわちアミノ末端に最も近いもの)をX1と称し、第二X残基をX2と称し、第三残基をX3等々と称し得る。
【0121】
好ましい実施形態では、X1はS、E、Q、H、P又はLである。
【0122】
好ましい実施形態では、X2はV、I、A、R又はFである。
【0123】
好ましい実施形態では、X3はS、T、H、L又はAである。
【0124】
好ましい実施形態では、X4はN、Q又はGである。
【0125】
好ましい実施形態では、X5はS、K又はTである。
【0126】
好ましい実施形態では、X6はH、R又はQである。
【0127】
好ましい実施形態では、X7はI、L、F又はPである。
【0128】
従って、好ましいアミノ酸配列の例は以下を含む。
【化1】
【0129】
特に好ましい配列は以下に示す配列、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF、及びELRNLGGTWRPを含む。
【0130】
1つの実施形態では、ペプチドは、実質的に又は基本的にアミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXからなる。
【0131】
より好ましくは、ペプチドは、式:
X1LX2NX3NGSWHI又は
X1LX2NX3NGSWHIN
に合致するアミノ酸配列を含む。
【0132】
この配列は、典型的には412、414及び416位だけが天然変異を示すHCV E2タンパク質のアミノ酸残基番号412〜423の保存配列に合致する。好ましくは、X1はQ、S又はEである。好ましくは、X2はI又はVである。好ましくは、X3はT又はSである。
【0133】
1つの実施形態では、ペプチドは、実質的に又は基本的にアミノ酸残基配列:
X1LX2NX3NGSWHIN
からなる。
【0134】
もう1つの好ましい実施形態では、ペプチドは付加的なアミノ酸残基を含む。特に、ペプチドは1以上の付加的なB又はT細胞ペプチドエピトープを含み得る。特に、ペプチドは1以上の付加的なTヘルパー細胞ペプチドエピトープを含み得る。
【0135】
付加的なアミノ酸残基は、例えば配列XLXNXXGXWXXの1以上の反復を含み得るか、及び/又はHCV E2糖タンパク質の他の部分からのペプチドエピトープ、及び/又は完全に他のHCVタンパク質から又は他のタンパク質からのペプチドエピトープを含み得る。例えばペプチドは、アミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXが、1以上のB又はT細胞エピトープを含むペプチド又はポリペプチドなどの他の何らかの望ましい部分に共有結合している(が、典型的に必ずしもペプチド結合によってではない)、分子の部分として提供され得る。好都合には、そのような分子は、生物系において(例えば微生物によって又は組織培養系によって)発現され、合成され得る、融合タンパク質であり得る。ペプチド配列の反復は、場合により介在スペーサーによって分離されていてもよく、又は直接隣接していてもよい。
【0136】
若しくは、エピトープ配列は、エピトープ配列の複数の反復を含む分枝した分子として提供され得る。1つの実施形態では、分子は、リシンの分岐コア及びエピトープの複数のコピーが連結しているC末端アラニン残基を含む。
【0137】
エピトープが組成物内に複数回存在する場合、変異配列を含む可能性が生じる、例えば1個のペプチド配列は、X1がSであり、X2がVである配列であり得、分子内に存在するもう1個のペプチド配列は、X1がQであり、X2がIである配列であり得る。
【0138】
さらなる態様では、本発明は、アミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXを有するペプチドをコードする核酸構築物を提供し、前記ペプチドは、場合によりN及び/又はC末端に付加的なアミノ酸残基を含むが、前記核酸構築物は、HCV E2糖タンパク質全体又はそのE2660フラグメントをコードしない。構築物は、典型的には、コードされるペプチドが適切な原核又は真核生物宿主において発現され得るように、プロモーターを含む発現構築物である。好都合には、プロモーターは、哺乳動物宿主、特にヒト宿主において作動可能なものである。数多くの適切なプロモーターが当業者に公知である(例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモーター、レチノイン酸受容体β(RAR−β)プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス最初期遺伝子1(HCMV)プロモーター、SV−40プロモーター、ヒトc−fosプロモーター)。
【0139】
1つの特定実施形態では、核酸構築物は、アミノ酸配列XLXNXXGXWXXが、隣接反復配列として又は介在スペーサーによって分離された反復配列として複数回存在するペプチドをコードする。
【0140】
構築物は、エンハンサーなどの1以上の調節要素、複製起点、及び1以上のマーカー(選択又はその他)を含み得る。構築物は、プラスミド、酵母人工染色体、酵母ミニ染色体の形態をとり得るか、又はウイルス、特に弱毒化ウイルス又はヒトにとって非病原性である類似ウイルスのゲノムの全部又は一部に組み込まれ得る。
【0141】
組成物又は構築物は、好都合には、哺乳動物被験者、好ましくはヒト被験者への安全な投与のために製剤される。典型的には、それらは複数のアリコートに提供され、各々のアリコートは、少なくとも1名の健常成人被験者の有効な免疫のために十分な組成物又は構築物を含有する。所望する場合は、上記で定義した本発明の4番目と5番目の両方の態様に従った組成物が製剤され得る。
【0142】
組成物又は構築物は、液体又は固体形態で、好ましくは、典型的には使用前に滅菌水性液体で再水和される凍結乾燥粉末として、提供され得る。
【0143】
好ましくは、組成物又は構築物は、アジュバント又は、組成物又は構築物の投与に応答して被験者の免疫応答(例えば特異的抗体力価によって測定される)を上昇させる作用を有する他の成分と共に製剤される。
【0144】
アジュバントは、免疫応答の抗原非特異的刺激を生じさせる物質である。公知のアジュバントは、コレラ毒素(CT)及び大腸菌易熱性毒素(LT)、その非毒性Bサブユニット及びトキソイド(すなわち1以上の突然変異がそれらを非毒性にした突然変異体分子又はA及びBサブユニット架橋などの化学的処理によって非毒性にされた分子)などのADPリボシル化細菌毒素を含む。もう1つの公知のアジュバントは、ヒトワクチンにおける使用が承認されているミョウバンである。免疫応答を増強し得る他の物質は、脂質、特に脂質含有小胞、リポソーム、ミセル等を含む。
【0145】
被験者への構築物の投与は、被験者の細胞の少なくとも一部におけるペプチドエピトープの発現を生じさせ、それが次に、エピトープに対する免疫応答を誘導し得る(すなわちエピトープに結合する抗体を産生するB細胞の集団の発生及び/又は増殖を誘導し得る)。そのような構築物は一般に「DNAワクチン」と称される。核酸は、何らかの適切な経路で、例えば静脈内、皮下経路で、又は皮膚内への又は皮膚を通しての無針投与によって宿主に投与し得る。核酸は、「裸の」形態で投与し得るか、又は他の分子と又は、核酸が何らかの方法で粒子内に被包されている又は粒子と結合している、様々な種類の粒子と同時投与し得る(例えば、表面に結合、典型的に静電気引力によって)。使用し得る粒子は、リポソーム、ウイルス粒子、金マイクロ粒子等を含む。この一般的領域で研究のために広く使用されてきた1つのウイルス粒子は、核酸を被験者における宿主細胞に送達するためのベクターとして使用し得る、修飾ワクシニアアンカラウイルス(MVA)である。MVAはこれまで安全と認められた。ベクターとして使用されてきた他のウイルスは、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス(AAV)を含む。
【0146】
当業者は、構築物がDNAとして投与される必要はなく、実際には、RNAウイルスの一部としてのRNAとして投与することができ、それが次に宿主細胞においてDNAに転写され、その後翻訳されることを認識する。
【0147】
組成物は、何らかの適切な経路によって被験者に投与し得る。経口、経鼻又は他の粘膜経路は非侵襲性であり、従ってそれらが有効であると認められる場合は好ましいと考えられるが、静脈内、皮下又は筋肉内注射などのより慣例的な経路は、より強い免疫応答を惹起する可能性が高い。投与するペプチドの最適用量は、被験者の大きさ及び年齢、投与経路等に依存し得る。一般的指針として、有効用量(すなわち、それまでエピトープに対して検出可能な抗体を有していなかった被験者において検出可能な抗体力価を誘導する、又はある程度の既存の抗体力価を有する被験者において抗体力価の検出可能な上昇を生じさせる用量)は、成人に関して50μg〜500mgの範囲内、好ましくは100μg〜25mgの範囲内のエピトープの量を含む。
【0148】
本発明の1つの特定実施形態では、本発明の4番目の態様に従った組成物であって、本発明の5番目の態様に従った核酸構築物をさらに含む組成物が提供される。
【0149】
生理的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、固体又は液体であり得る。適切な液体は、水及び食塩水、リン酸緩衝食塩水等のような水性溶液を含む。適切な固体は、デンプン、デキストラン及びゲル(例えばカラゲナン、アルギネート等)を含む。
【0150】
本発明の組成物及び/又は構築物は、HCVに結合して、ウイルスを中和する(すなわち非感染性にする)抗体を被験者において誘導するために使用し得る。本発明に関して、抗体をウイルスと共に37℃で1時間プレインキュベートし、抗体が100μg/ml以下、好ましくは75μg/ml以下の濃度を有するとき、インビトロアッセイにおいてHCVの感染力価の少なくとも50の%低下を生じさせることができる場合、抗体は中和性であるとみなすことができる。従って、組成物及び/又は構築物は、被験者がその後HCVに遭遇した場合、感染を予防し得る、又は少なくとも感染の重症度を軽減することによって限られた保護を提供し得る抗体を生成するために使用できる。従って、組成物/構築物は、疾患を完全に予防するため又は少なくとも感染の症状を改善するために使用できる。
【0151】
若しくは、組成物/構築物は、既にHCVに感染している被験者においてHCVに対する免疫応答を増強する、すなわち疾患を治療するために使用し得る。そのような治療は、急性又は慢性感染している被験者からのウイルスの清掃を促進し得る。
【0152】
従って、さらなる態様では、本発明は、被験者においてHCV中和抗体を惹起する又はHCV中和抗体の合成を高めるために、本発明に従った組成物及び/又は構築物の有効量を投与することを含む、哺乳動物被験者、好ましくはヒト被験者においてHCV感染を予防する及び/又は治療する方法を提供する。用量及び投与経路は、好都合には、先に述べられているとおりであり得る。
【0153】
別の部分で説明したように、本発明者らは、驚くべきことに、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する抗体がHCVの各々の公知の遺伝子型を代表するウイルスを中和できることを見出した。従って、そのような抗体が十分に高い濃度で被験者内に存在すれば、それらは、HCVの何らかの遺伝子型によって引き起こされる感染及び/又は疾患に対して防護できるはずである。抗体の十分に高い濃度を達成する1つの方法は、能動免疫である。選択的なアプローチは、既存の抗体を被験者に投与する、受動免疫である。
【0154】
従ってさらなる態様では、本発明は、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する1以上のHCV中和抗体の有効量を被験者に投与することを含む、哺乳動物被験者、好ましくはヒト被験者においてHCV感染を予防する及び/又は治療する方法を提供する。そのような抗体は、好都合には上記で定義した本発明の3番目の態様に従ったポリペプチド、特にキメラ又は、好ましくは、ヒト化抗体又はAP33のものと同一又は実質的に同一のCDRを含む抗体フラグメントであり得る。
【0155】
抗体は、例えば免疫血清の形態で投与し得るか、又はより好ましくは精製組換え又はモノクローナル抗体であり得る。所望特異性を有する血清又はモノクローナル抗体を生産する方法は常套的であり、当業者に周知である。抗体は、静脈内又は筋肉内注射、腹腔内又は経皮的経路を含むがこれらに限定されない、何らかの適切な経路によって投与し得る。
【0156】
好ましくは、投与する抗体は実質的に精製されている(例えばSDS−PAGEによって判定したとき、好ましくは少なくとも95%の均一性、より好ましくは少なくとも97%の均一性、最も好ましくは少なくとも98%の均一性)。抗体は、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、デキストロース溶液等のような、医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と好都合に混合又は組み合わせることができ、場合によりゼラチン、デンプン、アルギネート及び誘導体化セルロースなどの増粘剤を含み得る。
【0157】
受動免疫法は、好都合には、HCV抗原に対して異なる特異性を有する複数の抗体の投与及び/又は他の抗ウイルス治療化合物と組み合わせた抗体の投与を含み得る。最近、そのような受動免疫手法はHIV感染を治療するために安全に使用されている(Armbruster et al,2004 J.Antimicrob.Chemother.54,915−920;Stiegler & Katinger 2003 J.Antimicrob.Chemother.51,757−759)。
【0158】
本発明の能動又は受動免疫法は、上記で定義したコンセンサスペプチドエピトープと比較していくつかのアミノ酸の相違を含む非常にまれな突然変異体単離物(以下のUKN5.14.4に例示されるような)を除き、HCVの遺伝子型1〜6のいずれかのウイルスによる感染に対する個体の保護又は治療を可能にするはずである。
【0159】
さらなる態様では、本発明は、HCVの存在を検出するための診断試験装置及び方法をそれぞれ提供する。装置は、試薬として、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する1以上の抗体を含み得る。抗体は、例えば固体支持体上(例えばマイクロタイターアッセイプレート上、又は微粒子支持体上)に固定化されており、試料(例えば血液又は血清試料又は肝生検などの他の臨床標本)からHCV粒子を「捕獲する」働きをし得る。捕獲されたウイルス粒子は、その後、例えば捕獲ウイルス粒子に結合するさらなる標識試薬を添加することによって検出できる。好都合には、アッセイはELISA、特にサンドイッチ型ELISAの形態をとり得るが、免疫クロマトグラフィー又はディップスティック型アッセイを含む他のいかなるアッセイ形式も原則的に採用できる(例えば放射免疫測定法、ウエスタンブロット法)。
【0160】
XLXNXXGXWXXエピトープに結合する抗体は、標識されていてもよく又は非標識でもよい。いかなる適切な標識も使用でき、例えば放射能標識、酵素標識、蛍光標識又は染料負荷微粒子標識が使用できる。
【0161】
本発明のアッセイ方法は、エピトープXLXNXXGXWXXに結合する抗体の使用を含む。
【0162】
抗体は遺伝子型1〜6のいずれかからのHCVに結合できるので、アッセイ装置及び対応する方法は、試料においてこれらの遺伝子型のいずれかを代表するHCVを検出することができるはずである。
【0163】
最後の態様では、一般式XLXNXXGXWXXに合致するペプチドを含む分子が、融合工程に干渉することによってHCVの感受性細胞への侵入を阻害し得ると考えられる。そこで、例えば上記アミノ酸残基配列を含むペプチド又はポリペプチドは臨床的有用性を有すると考えられ、従って、本発明は、生理的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合してそのような分子を含む医薬組成物を包含する。そのようなアプローチは、HIV gp41の一部に対応する、T20ペプチドに関して最近記述された(Zwick et al,2004 Nature Medicine 10,133−134)。
【0164】
疑いを回避するため、文脈によって異なる指示が為されない限り、本発明は、単独で又はそのように記述される他の何らかの特徴による組合せと共に、本明細書で「好ましい」、「有利」、「好都合」等と表わされるいかなる特徴も含み得ることをここで明白に言明する。さらに、本明細書において言及される全ての刊行物の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
ここで、説明的実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0166】
HCVの種々の遺伝子型に感染した患者からの、E1E2糖タンパク質をコードするcDNA配列の単離がLavillette et al.,(参考文献43)によって報告された。種々の遺伝子型に由来する糖タンパク質で被包されたHCV偽粒子(HCVpp)を生成するため、本発明者らは、適切なHCV E1E2及びマウス白血病ウイルス(MLV)Gag−Polを発現するベクターを使用した。本発明者らはまた、形質導入マーカーとして働くGFPレポータータンパク質をコードするMLV導入ベクターを利用した。
【0167】
ヒトCMVプロモーターの制御下でHCV遺伝子型1aのH系統由来完全長E1E2、マウス白血病ウイルス(MLV)Gag−Pol及びGFPを担持するMLV導入ベクターを発現するプラスミドがこれまでに報告されている(参考文献6)。様々な臨床単離物からのHCVの完全長E1E2をコードするcDNA配列[H77c系統に関するHCVオープンリーディングフレームのアミノ酸残基170〜746を示す(参考文献70)]は、PCRによって作製され、発現ベクターpCR3.1(Invitrogen)又はphCMV−7a(6)内のヒトCMVプロモーターから下流にクローニングされ(参考文献6)、記述されているように(43)それらのヌクレオチド配列を決定した。
【0168】
実験は、ヒト胚腎(HEK)293T細胞(ATCC CRL−1573)及びヒト肝細胞癌(Huh−7)の細胞の使用を含んだ。これらを、10%ウシ胎仔血清(FCS)、5%可欠アミノ酸、グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、GBCO BRL)において増殖させた。
【0169】
HCVppは、基本的に以前に記述されているように作製した(参考文献6)。簡単に述べると、HEK293%細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクション法(Sigma)を用いて、MLV Gag−Polパッケージングベクター、MLV−GFP導入構築物、及びHCV E1E2を発現するプラスミドとコトランスフェクトした。全ての実験において、HCV糖タンパク質発現構築物をHEK293T細胞のコトランスフェクションから除外した、無エンベロープ対照を使用した。トランスフェクションの2日後、HCVppを含む培地を収集し、清澄化して、0.45μm細孔径の膜でろ過し、Huh−7細胞の感染のために使用した。感染の4日後、細胞を採集し、CellQuestソフトウエアを用いてFACSCalibur(Beckton Dickinson)で分析した。形質導入効率をGFP陽性細胞のパーセンテージとして決定した(典型的には0.05%であった、無エンベロープ対照に「感染した」GFP陽性Huh−7細胞の数を差し引いた後)。形質導入単位/mlとして表わされる感染力価を形質導入効率から算定した。
【0170】
確立された感染性クローン1a型H系統(参考文献6)からのE1E2配列を、実験のこのシリーズ全体を通じて患者由来のE1E2クローンと共に対照として使用した。合計289の患者単離物をスクリーニングし、これらのうちで39は偽粒子を感染性にすることができた。そのうちの一部の性質が本発明者らによって最近報告された(参考文献43)、これらの機能性クローンの代表的選択を表1に示す。遺伝子型の各々を代表する少なくとも1個の感染性クローンを同定した。一部の患者単離物に由来するHCVppは、このアッセイにおいて対照遺伝子型1a H系統からのものよりも再現可能により感染性であった。例えば構築物UKN2B1.1に由来するHCVppは通例標的細胞の30%以上を形質導入したが、H77に由来するものは10〜20%しか導入しなかった。典型的には、形質導入単位/ミリリットル(TU/ml)として表わされる感染力価は、UKN2B1.1に関しては約1×105TU/ml、1a型H系統に関しては4×104TU/mlであった。これに対し、遺伝子型3、5及び6のHCVppは非常に低い力価を与えた((参考文献1〜4)×103TU/ml)(表1)。
【0171】
【表1】
【実施例2】
【0172】
なぜ単離物の多くが感染力を有していなかったのかを検討するため、本発明者らは、HCV糖タンパク質がトランスフェクトHEK293T細胞において発現されたかどうかを調べた。各々の細胞溶解産物中のE2糖タンパク質の相対レベルを、GNA(ガランサス・ニヴァリス(Galanthus nivalis))レクチン被覆ELISAプレート(Dynex Labsystems)、及び全て1a型E2に対して惹起し先に述べられている(参考文献52、16)ポリクローナルウサギ血清R646及び2個のモノクローナル抗体(MAb)、AP33とALP98を含むELISAによって測定した。MAb AP33及びR646抗血清を、製造者のプロトコールに従って(Amersham Biosciences)プロテインGカラムで精製した。
【0173】
E2糖タンパク質を検出するためのELISAアッセイを、基本的に先に述べられているように(参考文献54)実施した。簡単に述べると、上述したようにコトランスフェクトしたHEK293T細胞の清澄化溶解産物からのE1E2糖タンパク質を連続的に3倍希釈し、GNAレクチン被覆ELISAプレート上に捕獲した。結合糖タンパク質を、抗E2 MAb AP33又はALP98又はウサギポリクローナル血清R646、次に抗種IgG HRP(Sigma)及びTMB(3,3’,5,5’−テトラメチル−ベンジジン、Sigma)基質を用いて検出した。吸光度値を450nmで測定した。
【0174】
結果を、試験した様々な溶解産物についての、希釈の逆数に対する吸光度(任意の単位)の一連のグラフである図1aに示す。AP33による検出についての結果を黒い丸で表わし、ALP98については白い丸、及びR646ポリクローナル抗血清については黒い三角で表わしている。
【0175】
MLV Gag−Pol及びGFPレポーター構築物と共に感染性クローンの各々でコトランスフェクトしたHEK293T細胞の溶解産物は、2個のMAbの少なくとも1個に関して、強力な、濃度依存性シグナルを与えるE2のレベルを含んだ。4型単離物(UKN4.21.16)及び試験した2個の5型単離物の1個(UKN5.14.4)が、それぞれMAb ALP98及びAP33によって認識されなかったことは注目すべきである。これは、これらの抗体によって認識されるエピトープ内の変異アミノ酸の存在によるものである(下記参照)。ウサギ抗血清R646は、ほとんど排他的に遺伝子型1a H系統E2を認識した。すなわち、他の遺伝子型からのE2だけでなく、同じサブタイプ(1A.14.36)の異なる単離物からのE2も認識することができなかった。
【0176】
感染性HCVppを生成しない単離物全てでトランスフェクトしたHEK細胞の溶解産物も、E2の存在に関してGNA ELISAによって分析した。一部は、E2が検出不能であるか又は低レベルのE2を有していたが、また別のものは、感染性クローンでトランスフェクトした細胞の溶解産物において認められるのと同様のE2レベルを含んだ(データは示していない)。本発明者らは、一部の単離物はE2を発現しないために感染力を欠き、また別のものは、おそらくそれらがコードするE2又はE1E2複合体が何らかの意味で非機能性であるために、高レベルのE2を発現するにもかかわらず非感染性であると結論した。
【実施例3】
【0177】
HCVppの感染性は、粒子のエンベロープへの完全長E1E2複合体の組込みに依存する(参考文献6、39)。上記ELISAデータは種々の遺伝子型に由来するE2の存在を確認したが、E1の存在は、広範に反応性の抗E1抗体がないため分析できなかった。その代わりに、本発明者らは、免疫沈降アッセイによってE1E2複合体の形成を検討した。HCV糖タンパク質発現構築物とMLV Gag−Pol及びGFP導入ベクターでコトランスフェクトしたHEK293T細胞を[35S]メチオニン/システインで放射性標識した。
【0178】
放射性標識は以下のように実施した。
【0179】
トランスフェクションの18時間後、細胞をPBSで洗い、25μCi/mlのL−[35S]Redivue(商標)Pro−Mix(商標)(Amersham Biosciences)を含むメチオニン/システイン不含培地で48時間インキュベートした。トランスフェクト細胞の培地を採集し、遠心分離によって清澄化した。細胞をPBSで洗い、溶解緩衝液(20mMトリス−HCl、pH7.4、20mMヨードアセトアミド、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5%トリトンX−100)に溶解して、核を除去するために溶解産物を短時間遠心した。清澄化した細胞溶解産物及びHCVppを含む培地を抗E2 MAb AP33とALP98の混合物と共に4℃で2時間インキュベートし、生じた免疫複合体を、プロテインA−セファロースを用いて沈殿させた。プロテインA−セファロースビーズの洗浄後、免疫複合体をSDS−PAGE変性緩衝液(200 mMトリス−HCl、pH6.7;0.5%SDS;10%グリセロール;20mM DTT)に放出し、SDS−10%PAGEによって分析した。ゲルを乾燥し、蛍光スクリーンに一晩暴露して、放射性標識タンパク質をBio−Rad Personal FXホスファイメージャーで視覚化した。
【0180】
結果を図1bに示す。
【0181】
E1を、糖タンパク質発現構築物の大部分でトランスフェクトした細胞の溶解産物からのE2と共に共免疫沈降させた。生じたタンパク質の相対量にはある程度の変動があり、沈降タンパク質(特にE1)の分子量に興味深い差が認められた。ヌクレオチド配列分析は種々の遺伝子型の間で予測グリコシル化部位の変動を示すので(参考文献43)、これらはおそらくグリコシル化の相違によると考えられる。種々の遺伝子型のE1とE2の間で相対的化学量論に有意の変動があったことは注目すべきである。同様に、トランスフェクト細胞の培地に分泌されたE1E2複合体(そのうちのある程度の割合はHCVppの形態であると予想された)も、同じMAbによる免疫沈降によって検出された(データは示していない)。
【実施例4】
【0182】
(HCVpp感染した標的細胞の抗体による中和)
本発明者らは、細胞のH77c系統HCVpp感染を阻害するMAb AP33、ウサギ抗血清R645及びR646(どちらも1a型H77c系統の可溶性細胞外ドメインに対して惹起した)の能力を試験した。
【0183】
また、遺伝子型1a H77c系統の超可変HVR−1領域(残基384〜411)に対応する分枝ペプチドで免疫したニュージーランドウサギにおいて惹起した抗血清R1020及びR1021も試験した。これらの抗血清を生成するために使用した免疫プロトコールは先に記述されている(参考文献53)。
【0184】
中和アッセイを以下のように実施した。遺伝子型1a H系統E1E2を有するHCVppを、抗E2血清R645、R646、R1020及びR1021又はそれらの免疫前(PI)対応物の1:120希釈、又はMAb AP33 50μg/mlと共に37℃で1時間プレインキュベートした。次に、6穴組織培養ディッシュにプレートしたHuh−7細胞にウイルス/抗体混合物を添加し、細胞を37℃で3時間インキュベートした。接種物の除去後、細胞に新鮮培地を再供給し、37℃で4日間インキュベートした。感染細胞の割合を、上述したようにFACSによるGFPの測定によって決定した。中和活性を、それぞれ感染の50%又は90%阻害を達成するために必要な抗体濃度と定義される、IC50又はIC90で表わした。
【0185】
結果を図2Aに示す。
【0186】
試験したウサギ抗血清のうちで、R646は感染を完全に排除することができ、一方R645は感染を約50%ブロックした。R1020及びR1021抗HVR1抗血清はいずれも、感染を65%中和することができた。予想されたように、対応する免疫前ウサギ血清はHCVpp感染に影響を及ぼさなかった。R646と同様に、MAb AP33はH77c系統HCVppによるHuh−7細胞の感染を完全にブロックした。
【0187】
次に、本発明者らは1a H77系統以外のHCV遺伝子型を中和するこれらの抗血清及びMAb AP33の能力を試験した。AP33が広く交差中和性であるのに対し、抗血清R645、R646及びR1020は、1b、2a又は2b型糖タンパク質を組み込んだHCVppの感染力にごくわずかな作用しか及ぼさないことが認められた(図2b)。R646は1a以外の遺伝子型に由来するHCVppによる感染を有意に阻害しないことが確立されているので、本発明者らは、その特異性が1a型H系統の糖タンパク質に限定されるのかどうか、又は他の1a型単離物を阻害し得るのかどうかを検討した。図2cに示すように、この抗血清は、1a H系統以外の2つの患者由来単離物1A14.8及び1A14.36に対してあまり有効ではなく、200ng IgG/mlのIC50値を有していた。
【0188】
MAb AP33の広い反応性を、遺伝子型の完全な相補物を表す単離物に由来するE1E2を組み込んだHCVppのパネルに関して一連の濃度で試験することによってさらに検討した。図3に示すように、6つの遺伝子型全てを代表する単離物のMAb AP33反応性E2を有するHCVppは、遺伝子型5についての0.6μg/mlから遺伝子型3aについての22μg/mlまでの範囲にわたるIC50で有効に中和された。遺伝子型5のHCVpp単離物の1つ、UKN5.14.4の感染力はMAb AP33によって影響を受けなかった(データは示していない)が、これは、この感染性単離物のE2糖タンパク質がこの抗体によって認識されないからである(図1A)。
【0189】
この試験で使用した種々の遺伝子型のE2のN末端領域のアミノ酸配列アラインメント(図4a)は、MAb AP33エピトープ(残基412〜423)が、3個の変異アミノ酸部位(残基412、414及び416)だけしか有さず、比較的良好に保存されていることを示した。このエピトープ内の他の部位は絶対的に保存されている。これに対する例外は、遺伝子型5の単離物UKN5.1.4.4によってコードされるE2内の対応アミノ酸配列であった。これは、その他の単離物と比較して潜在的グリコシル化部位(NGS)の−1シフトと配列内の4残基変化を有していた(図4a)。これに対し、R646によって認識される遺伝子型1a H系統の線状エピトープに対応する配列には、その限られた特異性と一致して、異なる遺伝子型の間で有意の変動が見られた。最後に、ALP98抗体によって認識されるエピトープ(残基644〜651)も保存されていたが、遺伝子型4のクローンの651位に存在するアルギニンからバリンへの突然変異はこの抗体による認識を無効にした(図4b)。AP33によって認識されるエピトープをより詳細に検討するため、エピトープを詳細に位置づけた。
【実施例5】
【0190】
(ファージバイオパニングスクリーンを用いるAP33接触残基の詳細なマッピング)
ファージ提示されるランダムペプチドライブラリー(RPDL)のPhD(New England Biolabs[NEB])シリーズは、3型ファージペプチド提示ベクターM13KEに基づく。これらのライブラリー内の個々のファージは、スペーサー配列Gly−Gly−Gly−Serによって成熟pIIIキャプシドタンパク質のN末端に融合されたランダムペプチドの5コピーまでを発現する。ランダムな12量体ペプチドを発現するライブラリーを本発明者らの実験において使用した(NEBカタログ番号E8110S)。PhDファージ−ライブラリーのアフィニティー選択を、基本的に製造者によって述べられているように実施した。簡単に述べると、AP33を、100μlの被覆緩衝液(CB)(0.05M炭酸塩−重炭酸塩、pH9.6)4℃で一晩インキュベートすることにより、マキシソープマイクロタイタープレート(Nunc,Roskilde,Denmark)のウエルに10〜100μg/mlの濃度で被覆した。被覆後、抗体溶液を廃棄し、その後ウエルを、300μlのTBS−TB(0.1%(v/v)トゥイーン20及び5%(w/v)粉乳(Marvel(登録商標),Cadbury’s)を含むトリス緩衝食塩水、pH7.6[TBS])によって4℃で1時間ブロックした。ブロック溶液を廃棄した後、ウエルをTBS−T(0.1%(v/v)トゥイーン20を含むTBS)で6回洗浄し、その後TBS−T 100μl中で希釈したPhDライブラリーから1×1011ファージを添加した。これらのファージを25℃で1時間放置して固定化AP33に結合させた後、TBS−Tによる連続洗浄を通して非結合ファージを除去した。結合ファージを100μlの0.2Mグリシン−HCl(pH2.2)で10分間溶出し、微量遠心機チューブに移して、その後15μlの1Mトリス−HCl(pH9.1)の添加によって中和した。
【0191】
回収したファージを、LB中で溶出ファージの連続希釈を調製することによって力価測定し、各々の希釈溶液10.0μlを、対数増殖期(0.3OD600nm)の大腸菌ER2537株(NEB)250μlに添加した。ファージを25℃で5分間細菌に感染させた後、細菌を、1mM X−Gal及び1mM IPTGを含む0.7%寒天3mlと混合し、LB寒天プレートに重ねた。寒天を5分間凝固させた後、プレートを裏返して、37℃で一晩インキュベートした。その後、方程式:ファージμl-1=([青色プラークの平均数]×[希釈]-1)/10を用いて、形成された青色プラークの平均数からファージの力価を算定した。
【0192】
次に、強化ファージライブラリーを、溶出ファージ50μl(約1×105PFU)をLB中の対数期大腸菌ER2537株20mlに添加し、37℃で少なくとも4時間半インキュベートすることによって増殖させた。ファージ増殖後、10,000×gで10分間の遠心分離(Sorvall SS−34)によって細菌及び他のデブリを除去した。5分の1容量のPEG(20%[w/v]ポリエチレングリコール−8000、2.5M塩化ナトリウム)を4℃で1時間添加してこの培養物の上清からファージを沈殿させ、15,000×gで20分間の遠心分離によって収集した。次にファージペレットをTBS 1.0mlに再懸濁した後、氷上で1時間、5分の1容量のPEGで2回目の沈殿を実施した。その後10,000×gで20分間の遠心分離(MSE Micro Centaur)によってファージを収集し、最終容量200μlの滅菌TBSに再懸濁した。増殖させたライブラリー内のファージの濃度を上述した力価測定によって決定し、その後1×1012ファージを、さらなる2〜3回のアフィニティー選択への投入物として使用した。
【0193】
最終回のアフィニティー選択後、溶出ファージの力価測定から得た個々のプラークを、滅菌ピペットチップを用いてER2537の対数期培養物2mlに接種し、37℃で4時間半増殖させた。2回の上述した沈殿によってこの培養物の上清からファージを回収し、TBS 100μlに再懸濁した。ファージ原液を−20℃で保存した。
【0194】
12塩基の無処置RPDLから濃縮したペプチドの抗原性を調べるため、酵素結合免疫吸着測定法(EIA)を使用した。CB 50μl中で1.0〜100μg/mlに希釈したAP33を、4℃で一晩のインキュベーションによってマイクロタイタープレートのウエルに直接被覆した。ブロックキング後(上述したように)、約1×1011ファージ粒子をウエルに添加し、1〜2時間結合させた。その後、TBS−T中で1:1000に希釈した抗fd
(Sigma、カタログ番号B−7786)とのインキュベーションによって結合ファージを検出した。次に、これらの抗体の結合を、抗ウサギ二次抗体に複合したアルカリホスファターゼ及びpNPP基質(Sigma)との連続インキュベーションによって検出し、ODを490nmで読み取った。
【0195】
配列決定鋳型DNAは、プライマーgIII(f)5’−ATTCCTTTAGTGGTACCTTTC−3’を、製造者によって供給された−96配列決定プライマーと共に使用して、約1×109ファージからのDNAのPCR増幅によって調整した。標準ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をファージ粒子及び細菌の両方からのDNAの増幅のために使用した。各々の反応のために、10×PCR緩衝液(100mMトリス−HCl、15mM MgCl2、500mM KCl[pH8.3])2.5μl、各々のプライマー5.0μl(5.0pmol)、HotStar Taqポリメラーゼ(Qiagen)0.1μl(0.5単位)及び10.0mM dNTP混合物(2.5mM dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含む)0.5μlを薄壁マイクロ遠心チューブに添加した。DNアーゼ/RNアーゼ不含水で反応容量を25.0μlにした後、DNA不含水で約1×109ファージ/mlに希釈したファージ粒子1.0μlを添加した。次にPTC−100/200サーマルサイクラー(MJ Research)でのPCRサイクリング(95℃、45秒間、50℃、45秒間、72℃、90秒間の35サイクル)によってDNAを増幅した。
【0196】
増幅後、組み込まれなかったヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを、配列決定の前に、エビアルカリホスファターゼ(SAP)及びエキソヌクレアーゼI(Exo I)各々1.0μlを添加し、次に37℃で30分間インキュベートすることによって除去した。その後SAPとExo I酵素を75℃で15分間不活性化し、5.0μlのSAP/Exo I処理したPCR産物からの鋳型DNAを、薄壁PCRチューブ中のBigDye terminator ready reaction mix(Applied Biosystems)4.0μl及び−96配列決定プライマー1.0μl(1pmol)と混合し、Perkin−Elmer 9600サーマルサイクラーを用いてサイクルシークエンス法(96℃、10秒間、50℃、5秒間、60℃、4分間の25サイクル)を実施した。次にDNアーゼ不含水10.0μl及び3M酢酸ナトリウム(pH5.2)2.0μl(0.1容量)をチューブに添加した後、短時間遠心分離し、滅菌マイクロ遠心チューブに移した。その後、配列決定したDNAを、100%エタノール45.0μlの添加と25℃で10分間のインキュベーションによって沈殿させた。沈殿したDNAを15,000×gで20分間遠心分離して回収し、70%エタノール45.0μlで洗った後、37℃で15分間乾燥した。その後、ABI Prism 310遺伝子アナライザーを用いて配列分析を実施した。
【0197】
AP33パラトープとの接触を形成する可能性が高いEIA反応性強化提示ペプチドの保存残基の同定を、推定ペプチドのコンピュータ援用アラインメントによって実施した。
【0198】
固定化AP33に対する3回の選択バイオパニング後、22個のファージクローンを採取し、増殖させて、AP33抗体に対するそれらの反応性をEIAによって測定した(図5)。図5は、強化ファージの大部分によって提示されるペプチドがAP33抗体と特異的に相互作用することを示す。相互作用の特異性は、対照ALP98抗体に対する反応性の欠如によって確認される。
【0199】
前記ペプチドのAP33ペプチドへの結合を媒介することに関与する可能性が最も高い残基を同定するため、選択ペプチドのDNA塩基配列決定を実施し、コンピュータ援用アラインメントを用いてそれらの推定アミノ酸配列を整列した。各々の群がユニークペプチド配列を含む、3つの群のファージを同定した(図6)。それらのコンセンサス配列は、予測AP33エピトープに対する各々の群のアラインメントと共に、決定的に重要な結合モチーフがXLXNXXGXWXXと定義できることを指し示す。
【0200】
図6において、抗体AP33によって選択したファージ内に存在するランダムペプチド挿入物の推定アミノ酸配列をパネルAに示す。推定上のAP33エピトープに対して整列した反応群の選択ファージペプチド内各々に存在する推定アミノ酸配列(パネルB)は、抗体−エピトープ相互作用に関与する保存された接触残基を明らかにする。クローンP3.5はAP33 EIAにおいて非反応性であり(図5)、このペプチドはAP33エピトープに対してごくわずかな相補性しか示さないことに留意しなければならない。
【実施例6】
【0201】
(アラニン置換突然変異型E1E2タンパク質を用いるAP33及び3/11エピトープの詳細なマッピング)
上記実施例5で述べた所見を、推定上のAP33エピトープ内の全ての位置で1個の残基をアラニンによって置換した、H77 E1E2突然変異型クローンのパネルを用いる実験によってさらに強化した。このパネルはまた、同じエピトープに結合すると記述されている(Flint et al,1999 J.Virol.73,6235−6244)、ラットモノクローナル抗体3/11の結合を検討するためにも使用した。3/11及びAP33は、どちらもプロテインGカラムを用いてハイブリドーマ上清から精製した。
【0202】
様々なE1E2突然変異型がHEK293T細胞において発現され、生じたタンパク質のMAb AP33及び3/11に対する反応性を、GNA捕獲EIAを用いて評価した(図9)。突然変異型L413A、N415A、G418A及びW420Aに関するAP33の結合は、野生型と比較して75%より多く低下し、これらの残基が結合のために非常に重要であることを指示した。突然変異型T416A及びN417AもAP33結合を低下させたが、この作用はその他の4つの突然変異型に関するほど著明ではなかった。412位のアラニンによるグルタミンの置換(Q412A)は、AP33のE1E2への結合を一貫して増強し、野生型H77タンパク質と比較して約50%上昇させた。これに対し、この置換はMAb 3/11結合には影響を及ぼさなかった。残りの5残基のアラニン置換は、AP33認識に対して無視し得る程度の作用しか及ぼさなかった。
【0203】
野生型H77タンパク質と比較してMAb 3/11による結合の一貫した有意の低下は、突然変異型N415A、W420A及びH421Aに関して認められ、MAb 3/11による結合におけるこれらの残基の重要性を強調した(簡潔さのためにデータは省いている)。422位のイソロイシンの置換は3/11結合の中等度の増強を生じさせた。残りの残基のアラニン置換は、影響を及ぼさないか又は野生型と比較して中等度の結合低下を生じさせた。
【0204】
(MAb AP33とMAb 3/11の結合親和性及びHCVpp中和効率の比較)
詳細なエピトープマッピング実験は、MAb AP33及び3/11がE2タンパク質内の異なる接触残基を認識していることを示唆したので、本発明者らは、これらの相違が結合親和性又は中和効力の差へと翻訳され得るのかどうかを評価することへと進んだ。412〜423分枝ペプチドへの50%結合を得るために必要なMAb AP33の濃度は、MAb 3/11に関して必要な濃度よりも10より多く低かった(図10:AP33=丸、3/11=三角)。同様に、ビオチニル化MAb結合アッセイにおいて、AP33は結合のための競合において3/11よりも効率的であった(データは示していない)。MAb 3/11と比較して、MAb AP33による競合は、ビオチニル化MAb AP33及び3/11の両方による結合のより大きな低下を生じさせた。前記MAbはまた、様々なHCV遺伝子型を代表するE1E2への親和性の著明な差を示した(図11)。E1E2タンパク質への50%結合を得るために必要なMAb AP33の濃度は約1×101〜1×103ng/mlの範囲であったが、一方約1×102〜1×104ng/mlの範囲の濃度の3/11を使用して50%結合が達成可能であった。合わせて考慮すると、これらのデータは、AP33がMAb 3/11よりもE2に対してより高い親和性を有することを指し示す。
【0205】
同様に、遺伝子型1〜6を代表するE1E2を担持するHCVppを中和するMAb AP33及び3/11の能力の比較(図12)は、両方の抗体が広い中和能を有するが、AP33の中和効力はMAb 3/11よりも一貫して高かった(p<0.001、ウィルコクソンのマッチドペア検定)。50μg/mlの濃度で使用したとき、MAb AP33はHCVppの感染力を80〜99%中和することができた。これに対し、MAb 3/11の同じ濃度は10〜80%の中和だけを生じさせた。本明細書で述べるように、MAb AP33は遺伝子型5のUKN5.14.4系統からのE1E2を担持するHCVppをほとんど中和しなかった。同様にMAb 3/11もこのE1E2クローンを担持するHCVppを中和することができなかった。この単離物は、残基412〜423に対応するE2領域内に4アミノ酸変化(QLIQNGSSWHIN)を有する。この突然変異は、AP33認識のために重要な残基のうちの2個(N415とG418)及び3/11にとって重要な1個(N415)を変化させる。MAb AP33及び3/11のどちらも、UKN5.15.4 E2と反応することができない。従って、驚くべきことではないが、両方のMAbはまたUKN5.14.4 HCVppも中和することができない。
【実施例7】
【0206】
(AP33及び3/11のVH及びVL領域の配列分析)
約106ハイブリドーマ細胞からのmRNAを、製造者のプロトコールに従ってRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して単離した。全RNA4μlを、キットに含まれるポリ−dTオリゴヌクレオチドプライマーと共にThermoscript(Invitrogen,UK)を使用して逆転写した。生じた2μlのcDNAを、軽及び重鎖の可変領域を増幅するために設計したPCRにおける鋳型として使用した。
【0207】
重鎖の増幅は、センスプライマーVHlBACK (5’−AGG TSM ARC TGC AGS AGT CWG G−3’)とアンチセンスプライマーVH1FoR−2 (5’−GGG GCC AAG GGA CCA CGG TCA CCG TCT CCT CA−3’)及びHotStar Taq(Qiagen)を使用して、先に述べられているように(McCafferty & Johnson:Construction and Screening of Antibody Display Libraries.In:「Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual」.Ed.Kay et al 1996,p79−111)実施した。軽鎖の増幅は、プライマーMk(5’−GGG AGC TCG AYA TTG TGM TSA CMC ARW CTA MCA−3’)と逆プライマーKc(5’−GGT GCA TGC GGA TAC AGT TGG TGC AGC ATC−3’)を使用して先に述べられているように(Wang et al,2000 J.Immunol.Methods 233,167−177)実施した。PCR産物を、Qiaquick PCR精製キット(Qiagen)を用いてカラム精製し、次にpGEM(登録商標)−Tベクター系を製造者の推奨に従って使用して、Promega pGEM(登録商標)−Tベクターにクローニングした。重及び軽鎖の各々について2個のクローンを、T7正プライマー及びM13逆プライマー(Promega)及びABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer Applied Biosystems)を使用して、製造者のプロトコールに従って配列決定した。AP33について決定したヌクレオチド配列を図7に示す。
【0208】
(結果)
MAb AP33及び3/11の軽及び重鎖可変領域に対応する推定アミノ酸配列を比較した。この比較の最も著しい特徴は、MAb AP33についての重鎖CDR3が10個の、主として疎水性のアミノ酸を含むことであった。これに対し、MAb 3/11の重鎖CDR3は3個のアミノ酸だけを含んだ。IgBLAST検索は、MAb AP33の重及び軽鎖がマウスVH−36−60、サブグループVH−I(アクセッション番号K01569)及びVK−21−10(アクセッション番号K02160)に最も類似することを明らかにした。3/11配列の生殖細胞系分析は、Genbankデータベースで入手可能なラット生殖細胞系配列が少ないため不可能であった。
【実施例8】
【0209】
(HCVの中和)
本実施例では、AP33がHCVウイルスを中和できることを示す。
【0210】
キメラHCV J6−JFH1ゲノムcDNAの作製。T7 RNAポリメラーゼプロモーターの下流の完全長HCV遺伝子型2a JFH1系統のcDNAを担持するプラスミドpJFH1は、T.Wakita(Wakita et al.,2005 Nature Medicine 11,791−796)によって本発明者らに供給された。キメラ構築物を作製するため、JFH1系統cDNAのNS2のコア、E1、E2、p7及びN末端部分をコードするヌクレオチド配列を、もう1つ別の遺伝子型2a J6CF系統からのヌクレオチド配列で置換した(Yanagi et al.,1999 Virology 262,250−263)。J71と称される、生じたキメラJ6−JFH1構築物から生成された感染性ウイルスを、以下で述べるウイルス中和アッセイにおいて使用した。
【0211】
(HCV J71 RNAトランスフェクション及び細胞培養におけるウイルス生産)J71構築物を、ウイルスゲノムcDNAの3’末端の直後に位置する制限酵素部位での切断によって線状化した。HCV J71 RNAを、MEGAscript High Yield Transcriptionキット(Ambion)を製造者によって述べられているように使用して、線状化構築物からインビトロで転写した。約10μgのインビトロ合成したJ71 RNAを、0.4cmのGene Pulserキュベット(Bio−Rad)においてHuh−7細胞と混合し、GenePulser Xcell(Bio−Rad)電気穿孔装置を使用して960μF、270Vで1回パルスした。トランスフェクトした細胞を直ちに細胞培地と混合し、80cm2フラスコ及びカバーガラスに接種した。37℃で4日間のインキュベーション後、フラスコからの培地を収集し、細胞デブリを除去するための短時間の遠心分離によって清澄化して、0.45μm細孔径の膜でろ過し、ナイーブHuh−7細胞を感染させるために使用した。37℃で4日間のインキュベーション後、感染細胞は、電気穿孔細胞から収集した培地中に感染性ウイルス子孫が存在することを確認するウイルス抗原を含むことを見出した。カバーガラス上の電気穿孔細胞を固定し、間接免疫蛍光検査法によってウイルスタンパク質の存在を判定した。
【0212】
第7継代まで細胞の大部分が複製ウイルスゲノムを内包するように電気穿孔細胞を継代したとき、ウイルス抗原陽性細胞の数が上昇することが認められた。
【0213】
(HCV中和アッセイ)
細胞培養産生HCV J71ウイルスを、第10継代のウイルスRNAトランスフェクトHuh−7細胞の培地から採集し、清澄化して、上述したようにろ過し、以下で述べるようにウイルス中和アッセイにおいて使用した。ウイルスを含む培地を、200、40、8、1.6、0.32、0.064μg/mlの精製MAb AP33又は3/11と混合し、37℃で1時間インキュベートした。次に各々のウイルス−抗体混合物を、10-1〜10-7の範囲で、完全培地中で連続的に10倍希釈した。各々の希釈溶液を、48穴組織培養皿中のHuh−7細胞を感染させるために使用し(各希釈溶液につき6穴)、細胞を37℃で3時間インキュベートした後、接種物を除去し、細胞に新鮮培地を再供給して、37℃で4日間インキュベートした。その後細胞をPBSで1回洗い、メタノールで固定して、ヒツジ抗NS5a抗血清(Mark Harris,University of Leedsの好意により提供された)を使用してウイルスNS5aをプローブし、抗ヒツジIgG−FITC複合体(Molecular Probe)を使用して結合抗体を検出した。穴を蛍光細胞の存在又は非存在に関して記録し、ウイルスの感染力を、基本的にLindenbach et al(2005)Science 309,623−626によって述べられたようにTCID50(組織培養感染量)として測定した。
【0214】
(考察)
これまでの試験は、非常に限られた範囲のHCV遺伝子型だけに対する血清又は抗体の中和能力を測定していた(5、21、30)。本発明者らは、主要遺伝子型1〜6の全てを代表するE1E2を担持するHCVppを中和する一連のE2特異的抗体及び血清の能力を評価するためにHCVppアッセイを使用した。
【0215】
主要遺伝子型全てを代表する機能性E1E2クローンのパネルを確立したので、本発明者らは、MAb AP33及びH77c系統のE2タンパク質のHVR1領域又は細胞外部分のいずれかに対して惹起したウサギ抗血清の、HCVppの侵入を中和する能力を評価することへと進んだ。E2のHVR1及び細胞外ドメインに対して惹起したウサギ抗血清は、どちらも、H77c E1E2を組み込んだHCVppを中和することができたが、同じ免疫原で免疫したウサギの間での中和効力の差は明白であった。しかし、どちらも、異種遺伝子型1a E1E2を組み込んだHCVppの低い中和を示し、試験した他の遺伝子型由来のE1E2を含むHCVppを中和しなかった。HVR1の高度の遺伝的多様性は観察された低い交差中和を説明し、この所見は、天然HVR1特異的抗体の限られた中和能力という以前の報告と一致する(76)。E2細胞外ドメインによるウサギの免疫も中和抗体の誘導を生じさせたが、やはりこれらの応答は高度に系統特異的であった。ペプチドマッピング及び競合アッセイは、最も強力な中和血清(R646)が立体配座及び線状決定基の両方を認識することを示した。中和は、天然であるが変性したsE2によって阻害することができ、中和抗体が立体配座エピトープを認識する可能性が高いことを示唆した。
【0216】
これまでの研究は、HCVエンベロープ糖タンパク質による免疫後に惹起される抗体が、同種攻撃誘発に対して少なくとも部分的に保護し得ることを示した(33、59)。同様に、多くの広範に中和するヒトモノクローナル抗体が記述されており、それらの全てが立体配座エピトープを認識する(1、9、37、38、40、42)。これらの抗体は、HCV感染の治療における将来的な役割を有し得る。それらはまた、将来のワクチン候補を定義するためにも役立つと考えられる。しかし、HIV−1に関する試験は、広範な中和抗体によって認識されるエピトープに免疫応答を集中させることが重要な課題であることを示した。これに関して、AP33が極めて多様なE1E2を担持するHCVppの侵入を強力に中和するという所見は、そのエピトープが線状であり、HCVの種々の遺伝子型にわたって高度に保存されているので、重要である。AP33によって認識されるエピトープは、残基412〜423(配列QLINTNGSWHINによって実証される)に位置づけられ、1つの潜在的N結合グリコシル化部位を担持する(52)。1個の遺伝子型5単離物(UKN5.14.4)に由来するHCVppが、感染性であるが、MAb AP33によって認識されなかった(従って中和されなかった)ことに留意するのは興味深い。この単離物は、その他の単離物と比較して−1シフトした、良好に保存されたN結合グリコシル化部位と、AP33エピトープに対応するE2領域内に4アミノ酸変化を有していた(QLIQNGSSWHIN)。Genbankデータベースに寄託した配列のその後の分析は、AP33エピトープが高度に保存されていることを示した。原型AP33エピトープと比較した配列の平均多様性は4.7%であり、可変アミノ酸の大部分は予測エピトープのN末端に位置した。重要な点として、UKN5.14.4内に存在するものと類似の配列は明らかではなかった。本発明者らの予備的なデータは、4個の変異アミノ酸の1個の、その保存された対応物への復帰(すなわちQからNへ)はUKN5.14.4 HCVppを非感染性にし(MAb AP33に対しても非反応性のままである)(示していない)、従って感染におけるE2のこの領域の潜在的重要性を強調する。この所見は、UKN5.14.4 HCVppの感染力がN415Q及びN結合グリコシル化配列の−1シフトによって影響されないという事実と共に、この特定単離物が中和回避突然変異体を表し得ることを示唆する。
【0217】
結論として、本発明者らは、AP33抗体によって定義されるエピトープが全ての主要遺伝子型にわたって高度に保存されていること及びこの抗体が広い中和能力を有することを示した。
【0218】
(参考文献)
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0219】
上記明細書において言及した全ての刊行物は、参照により本明細書の一部をなすものとする。記述した方法及び本発明のシステムの様々な修正及び変法が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明白である。本発明を特定の好ましい実施形態に関して説明したが、特許請求される本発明がそのような特定実施形態に不当に限定されるべきでないことは了解されるべきである。実際に、分子生物学又は関連分野の当業者には明白である、本発明を実施するための記述した様式の様々な修正は、特許請求の範囲内であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1a】様々なELISAの結果を表しており、希釈倍率に対する吸光度(任意の単位)の一連のグラフを示す。
【図1b】抗E2 MAb AP33とALP98の混合物によって免疫沈降させた放射性標識ポリペプチドのSDS−PAGE分析を示す図である。左側の数字は分子量マーカーを示す。
【図2a】様々な抗血清及び免疫前対照血清(「PI」接尾辞)又はMAb AP33によるHCV遺伝子型1偽粒子の中和の程度を示す棒グラフを示す。縦軸は、蛍光細胞(感染した細胞)の割合(%)を示す。
【図2b】様々な抗血清又はMAb AP33による遺伝子型1A、1B、2A及び2B HCVppの中和の程度を示すグラフである。
【図2c】遺伝子型1A HCVサブタイプに対する抗血清R646についての濃度と中和との関係を示すグラフである。
【図3】種々のHCV遺伝子型に対するMAb AP33の濃度と中和との関係を示すグラフである。
【図4a】6つの公知の遺伝子型の各々を代表する様々なHCV単利物のE2のタンパク質のアミノ酸配列の一部を示す。
【図4b】6つの公知の遺伝子型の各々を代表する様々なHCV単利物のE2のタンパク質のアミノ酸配列の一部を示す。
【図5】EIAアッセイにおける、抗体AP33(白い棒)及びALP98(黒い棒)と様々な選択ファージとの反応性を示す棒グラフである。
【図6】様々なファージクローンによって発現されるペプチドの推定アミノ酸配列(パネルA)及びHCV H77 E2タンパク質の対応する部分とのアラインメント(パネルB)を示す。
【図7】AP33モノクローナル抗体の軽鎖と重鎖の可変領域をコードするハイブリドーマから本発明者らによって誘導されたヌクレオチド配列(プライマー決定配列は省いている)を示す。
【図8】軽鎖及び重鎖可変領域に関する、AP33ハイブリドーマからクローニングしたcDNAから得たDNA配列(下段DNA配列)及び使用したプライマーのDNA配列(上段)を示す。推定アミノ酸配列をDNA配列の上部に示す。CDRを構成するアミノ酸配列基を下線で示す。付加的な残基(「X」)が重鎖のフレームワーク領域1の開始部に存在すると考えられる。
【図9】野生型E1E2配列への結合と比較した、EIAによって判定したときの、E1E2タンパク質の様々なアラニン含有突然変異型へのAP33の結合の量を示す棒グラフである。
【図10】関連ペプチドへのAP33(丸記号)及び3/11(三角記号)の結合を比較した、抗体濃度と結合の割合(%)との関係を示すグラフである。
【図11】種々のHCV遺伝子型E1E2タンパク質に結合するときのAP33(丸)及び3/11(三角)についての抗体濃度(ng/ml)と結合する割合(%)の関係を示す一連のグラフである。
【図12】50μg/mlの最終濃度でAP33(黒いバー)又は3/11(白いバー)に暴露したときの、種々のHCV遺伝子型を表わす様々なHCVppクローンに関する感染力の割合を示す棒グラフである。
【図13】AP33(黒丸)及び3/11(白丸)モノクローナル抗体によるHCV J71の中和を示すグラフである。無関係なモノクローナル抗体DB165(黒い三角)及び抗体なし(白い三角)を対照として示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体AP33によって定義されるHCV E2ポリペプチドのエピトープに結合することができるリガンドを、遺伝子型1〜6の各々のHCVによる感染の予防又は治療のための組成物の製造に使用する方法。
【請求項2】
前記リガンドが、配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1〜7はアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができるものである請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記X1が、S、E、Q、H、P及びLからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】
前記X2が、V、I、A、R及びFからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項5】
前記X3が、S、T、H、L又はAからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項6】
前記X4が、N、Q又はGからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項7】
前記X5が、S、K又はTからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項8】
前記X6が、H、r又はQからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項9】
前記X7が、I、L、F又はPからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドエピトープが、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF及びELRNLGGTWRPからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項11】
前記リガンドが免疫グロブリンである請求項1に記載の使用方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンが、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体(dAb)分子からなる群より選択される免疫グロブリンフラグメントである請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
前記リガンドが、モノクローナル抗体AP33に由来する1又は複数のCDRを含むものである請求項11又は12に記載の使用方法。
【請求項14】
前記1又は複数のCDRが、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列から1、2又は3個のアミノ酸が付加、置換又は欠失した配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在する場合、(a)に示す配列に構造的に類似する配列からなる群より選択される請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記免疫グロブリンが、ヒト化、薄板化、再表面作成、CDR移植、SDR移入又は脱免疫化免疫グロブリンである請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項16】
HCVによる脊椎動物細胞の感染の予防のための請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項17】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVによる感染の予防又は治療のための方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載のリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項18】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVによる感染の予防又は治療のための方法であって、請求項11〜16のいずれか一項に記載の免疫グロブリンの有効量を投与することを含む方法。
【請求項19】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVに属するHCV単離物を中和する免疫グロブリン分子であって、前記免疫グロブリンはモノクローナル抗体AP33に由来する1又は複数のCDRを含み、前記免疫グロブリン分子はモノクローナル抗体AP33以外である、免疫グロブリン分子。
【請求項20】
前記1又は複数のCDRが、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列から1、2又は3個のアミノ酸が付加、置換又は欠失した配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在する場合、(a)に示す配列に構造的に類似する配列からなる群より選択される請求項19に記載の免疫グロブリン分子。
【請求項21】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVに属するHCV単離物を中和する免疫グロブリン分子であって、前記免疫グロブリン分子は配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1〜7はアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができるものであり、前記免疫グロブリンはモノクローナル抗体AP33以外である、免疫グロブリン分子。
【請求項22】
1又は複数のヒトフレームワーク領域を含む請求項19〜21のいずれか一項に記載の免疫グロブリン分子。
【請求項23】
ヒト化、薄板化、再表面作成、CDR移植、SDR移入又は脱免疫化免疫グロブリンである請求項19〜22のいずれか一項に記載の免疫グロブリン。
【請求項24】
1又は複数のヒトCDRを含む請求項19〜23のいずれか一項に記載の免疫グロブリン。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質に結合する抗体を誘導するための組成物であって、前記組成物はアミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXを有するペプチド及び生理的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含み、前記ペプチドは、場合によりN及び/又はC末端に付加的なアミノ酸残基を含むが、HCV E2糖タンパク質全体又はそのE2660フラグメント(すなわちHCVポリタンパク質の残基384〜660)を包含せず、アミノ酸残基の1又は複数が共有結合修飾されていてもよい、組成物。
【請求項27】
前記ペプチドが、アミノ酸配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1はS、E、Q、H、P及びLからなる群より選択され、X2はV、I、A、R及びFからなる群より選択され、X3はS、T、H、L及びAからなる群より選択され、X4はN、Q及びGからなる群より選択され、X5はS、K及びTからなる群より選択され、X6はH、r及びQからなる群より選択され、及びX7はI、L、F及びPからなる群より選択される)を含む請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ペプチドが、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF及びELRNLGGTWRPからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ペプチドが、T細胞エピトープ及び/又はさらにB細胞エピトープを付加的に含む請求項25〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記ペプチドが、一般配列XLXNXXGXWXXに一致するアミノ酸残基配列の1又は複数の反復を含む請求項25〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記ペプチドが、配列XLXNXXGXWXXに一致する2以上の非同一アミノ酸残基配列を含む請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ペプチドが融合タンパク質の一部として存在するものである請求項25〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が分枝ペプチドを含む請求項25〜32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
アジュバントをさらに含む請求項25〜33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
請求項25〜33のいずれか一項に記載の組成物に使用されるペプチドをコードする核酸構築物。
【請求項36】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVに属するHCVの存在を検出するためのキットであって、モノクローナル抗体AP33に由来する1又は複数のCDRを含む免疫グロブリンを含むキット。
【請求項37】
前記1又は複数のCDRが、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列から1、2又は3個のアミノ酸が付加、置換又は欠失した配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在する場合(a)に示す配列と構造的に類似する配列からなる群より選択される請求項36に記載のキット。
【請求項1】
モノクローナル抗体AP33によって定義されるHCV E2ポリペプチドのエピトープに結合することができるリガンドを、遺伝子型1〜6の各々のHCVによる感染の予防又は治療のための組成物の製造に使用する方法。
【請求項2】
前記リガンドが、配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1〜7はアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができるものである請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記X1が、S、E、Q、H、P及びLからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】
前記X2が、V、I、A、R及びFからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項5】
前記X3が、S、T、H、L又はAからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項6】
前記X4が、N、Q又はGからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項7】
前記X5が、S、K又はTからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項8】
前記X6が、H、r又はQからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項9】
前記X7が、I、L、F又はPからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドエピトープが、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF及びELRNLGGTWRPからなる群より選択される請求項2に記載の使用方法。
【請求項11】
前記リガンドが免疫グロブリンである請求項1に記載の使用方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンが、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv及び単一ドメイン抗体(dAb)分子からなる群より選択される免疫グロブリンフラグメントである請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
前記リガンドが、モノクローナル抗体AP33に由来する1又は複数のCDRを含むものである請求項11又は12に記載の使用方法。
【請求項14】
前記1又は複数のCDRが、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列から1、2又は3個のアミノ酸が付加、置換又は欠失した配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在する場合、(a)に示す配列に構造的に類似する配列からなる群より選択される請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記免疫グロブリンが、ヒト化、薄板化、再表面作成、CDR移植、SDR移入又は脱免疫化免疫グロブリンである請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項16】
HCVによる脊椎動物細胞の感染の予防のための請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項17】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVによる感染の予防又は治療のための方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載のリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項18】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVによる感染の予防又は治療のための方法であって、請求項11〜16のいずれか一項に記載の免疫グロブリンの有効量を投与することを含む方法。
【請求項19】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVに属するHCV単離物を中和する免疫グロブリン分子であって、前記免疫グロブリンはモノクローナル抗体AP33に由来する1又は複数のCDRを含み、前記免疫グロブリン分子はモノクローナル抗体AP33以外である、免疫グロブリン分子。
【請求項20】
前記1又は複数のCDRが、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列から1、2又は3個のアミノ酸が付加、置換又は欠失した配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在する場合、(a)に示す配列に構造的に類似する配列からなる群より選択される請求項19に記載の免疫グロブリン分子。
【請求項21】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVに属するHCV単離物を中和する免疫グロブリン分子であって、前記免疫グロブリン分子は配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1〜7はアミノ酸である)を有するポリペプチドエピトープに結合することができるものであり、前記免疫グロブリンはモノクローナル抗体AP33以外である、免疫グロブリン分子。
【請求項22】
1又は複数のヒトフレームワーク領域を含む請求項19〜21のいずれか一項に記載の免疫グロブリン分子。
【請求項23】
ヒト化、薄板化、再表面作成、CDR移植、SDR移入又は脱免疫化免疫グロブリンである請求項19〜22のいずれか一項に記載の免疫グロブリン。
【請求項24】
1又は複数のヒトCDRを含む請求項19〜23のいずれか一項に記載の免疫グロブリン。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
C型肝炎ウイルス(HCV)E2糖タンパク質に結合する抗体を誘導するための組成物であって、前記組成物はアミノ酸残基配列XLXNXXGXWXXを有するペプチド及び生理的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含み、前記ペプチドは、場合によりN及び/又はC末端に付加的なアミノ酸残基を含むが、HCV E2糖タンパク質全体又はそのE2660フラグメント(すなわちHCVポリタンパク質の残基384〜660)を包含せず、アミノ酸残基の1又は複数が共有結合修飾されていてもよい、組成物。
【請求項27】
前記ペプチドが、アミノ酸配列X1LX2NX3X4GX5WX6X7(X1はS、E、Q、H、P及びLからなる群より選択され、X2はV、I、A、R及びFからなる群より選択され、X3はS、T、H、L及びAからなる群より選択され、X4はN、Q及びGからなる群より選択され、X5はS、K及びTからなる群より選択され、X6はH、r及びQからなる群より選択され、及びX7はI、L、F及びPからなる群より選択される)を含む請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ペプチドが、QLINTNGSWHI、QLVNTNGSWHI、QLINSNGSWHI、SLINTNGSWHI、ELINTNGSWHI、HLANHQGKWRL、PLFNANGTWQF及びELRNLGGTWRPからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ペプチドが、T細胞エピトープ及び/又はさらにB細胞エピトープを付加的に含む請求項25〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記ペプチドが、一般配列XLXNXXGXWXXに一致するアミノ酸残基配列の1又は複数の反復を含む請求項25〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記ペプチドが、配列XLXNXXGXWXXに一致する2以上の非同一アミノ酸残基配列を含む請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ペプチドが融合タンパク質の一部として存在するものである請求項25〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が分枝ペプチドを含む請求項25〜32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
アジュバントをさらに含む請求項25〜33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
請求項25〜33のいずれか一項に記載の組成物に使用されるペプチドをコードする核酸構築物。
【請求項36】
遺伝子型1〜6のいずれかである2以上のHCVに属するHCVの存在を検出するためのキットであって、モノクローナル抗体AP33に由来する1又は複数のCDRを含む免疫グロブリンを含むキット。
【請求項37】
前記1又は複数のCDRが、
(a)RASESVDGYGNSFLH、LASNLNS、QQNNVDPWT、GDSITSGYWN、YISYSGSTY又はITTTTYAMDYからなる配列、
(b)(a)に示す配列から1、2又は3個のアミノ酸が付加、置換又は欠失した配列、及び
(c)前記CDRが免疫グロブリン内に存在する場合(a)に示す配列と構造的に類似する配列からなる群より選択される請求項36に記載のキット。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−532559(P2008−532559A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502456(P2008−502456)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000987
【国際公開番号】WO2006/100449
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000987
【国際公開番号】WO2006/100449
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】
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