説明

ウェハ加工用テープ

【課題】粘着剤層に一度貼り合わされた後に剥離させた面であっても、十分な接着性を持つ接着剤層を有するウェハ加工用テープを提供する。
【解決手段】支持基材と粘着剤層と単層の接着剤層とがこの順に積層されたウェハ加工用テープで、前記接着剤層は半導体素子を配線付き外部接続用配線部材または別の半導体素子に圧着するために用いられる接着剤層であって、前記接着剤層の粘着剤層から剥離した面と粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギー差が10mJ/m以下であるウェハ加工用テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、シリコンウェハをチップ単位に切断(ダイシング)する工程、切断された半導体素子(チップ)をピックアップする工程、さらにピックアップされたチップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するダイボンディング(マウント)工程が実施される。上記半導体装置の製造工程に使用されるウェハ加工用テープとして、近年、支持基材上に、粘着剤層と接着剤層とがこの順に形成されたダイシングダイボンドシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このように、基材上に、粘着剤層と接着剤層とをこの順に形成したウェハ加工用テープでは、製造から使用までの間で、粘着剤層と接着剤層とが接触する時間が必然的に長くなるため、使用前に両層がなじんでしまい、個片化した接着剤層付き半導体素子をピックアップする工程で、粘着剤層と接着剤層をうまく剥離できないという問題点があった。
そこで、このような問題を解決するウェハ加工用テープとして、粘着剤層と接着剤層の間に剥離層を設けることによって、個片化した接着剤層付き半導体素子を容易に粘着剤層から剥離することができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、硬化前の接着剤層の表面自由エネルギーを制御してやることで、粘着剤層からの剥離を有利にするだけでなく、被着体への接着性にも優れるウェハ加工用テープが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−57642号公報
【特許文献2】特開2005−277383号公報
【特許文献3】特開2008−244463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のウェハ加工用テープは以下のような工程に使用される。
(1)支持基材と粘着剤層と接着剤層とをこの順に積層しウェハ加工用テープを形成する工程、
(2)ウェハ加工用テープの接着剤層をシリコンウェハ裏面に貼り合わせる工程、
(3)ウェハ加工用テープの支持基材上に形成された粘着剤層にウェハリングを貼り付ける工程、
(4)前記シリコンウェハを半導体素子(チップ)に切断するダイシング工程、
(5)接着剤層付きの半導体素子を粘着剤層から剥離し取り出すピックアップ工程、及び
(6)半導体素子をリードフレームのような配線付き外部接続用配線部材や他の半導体素子に接着するダイボンディング工程
このため、ダイボンディング工程にて被着体と接する接着剤層の面は粘着剤層に一度貼り合わされた後に剥離させた面となり、表面自由エネルギーが変化しているため、接着剤層単独で見たときの表面自由エネルギーを制御しても、十分な接着性が発揮されないことがあるという問題があった。
よって本発明は、粘着剤層に一度貼り合わされた後に剥離させた面であっても、十分な接着性を持つ接着剤層を有するウェハ加工用テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の手段により解決された。
(1)支持基材と粘着剤層と単層の接着剤層とがこの順に積層されたウェハ加工用テープで、前記接着剤層は半導体素子を配線付き外部接続用配線部材または別の半導体素子に圧着するために用いられる接着剤層であって、前記接着剤層の粘着剤層から剥離した面と粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギー差が10mJ/m以下であることを特徴とするウェハ加工用テープ。
(2)前記接着剤層の粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギーが30mJ/m以上かつ50mJ/m以下であることを特徴とする(1)に記載のウェハ加工用テープ。
(3)前記接着剤層が、アクリロニトリルを含む懸濁重合による高分子化合物を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のウェハ加工用テープ。
なお、本発明において接着剤とは半導体装置製造のダイボンディング工程において半導体素子(チップ)と配線部材または別の半導体素子を固定するために使用される樹脂組成物をいい、粘着剤とは支持基材上に設けられ、半導体装置製造のダイシング工程において、シリコンウェハ裏面に接着剤層を介して貼り合わされ、その粘着力により接着剤付きシリコンウェハをリングフレームに仮固定するために使用される樹脂組成物をいう。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粘着剤層に一度貼り合わされた後に剥離させた面であっても、十分な接着性を持つ接着剤層を有するウェハ加工用テープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のウェハ加工用テープを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のウェハ加工用テープは、支持基材と粘着剤層と単層の接着剤層とがこの順に積層されている。図1に本発明のウェハ加工用テープを模式的に断面図で示した。ウェハ加工用テープ10は粘着フィルム12と粘着剤層13からなる。粘着フィルム12は支持基材12a上に粘着剤層12bが積層されたものである。接着剤層13上には離型PETフィルム11が重ねられているが、使用時にはこれをはがして、シリコンウェハを接着剤層13に接着させて用いる。
(表面自由エネルギー)
本発明において表面自由エネルギーは、水及びジヨードメタンの接触角を測定(液滴容量:水2μL、ジヨードメタン3μL、読み取り時間:滴下30秒後)し、以下の式から算出される値とする。
【0009】
【数1】

【0010】
表面自由エネルギー差を制御することで、粘着剤層に一度貼り合わされた後に剥離させた面であっても、十分な接着性を持つ接着剤層を有するウェハ加工用テープとすることができる理由は明らかではないが、以下のように推定される。
表面自由エネルギー差を制御することで、どちらかの面の接着性だけが非常に低くなることを抑制し、接着剤の破壊モードを凝集破壊に保つことができる。接着剤の破壊モードが凝集破壊の場合、接着剤そのものが壊れなければ半導体素子の固定が壊れることはなく、リフロー工程において熱応力が発生したとしても耐性がある。しかし、制御が不十分でどちらかの面の接着性だけが非常に低くなると、接着剤の破壊モードが界面破壊となり、接着剤の強度が十分であっても、熱応力により剥離が進行し信頼性(リフロー時耐クラック性)が低下する。
【0011】
本発明のウェハ加工用テープでは、接着剤層の粘着剤層から剥離した面と粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギー差が10mJ/m以下、好ましくは0.1〜5.0mJ/mである。表面自由エネルギー差が10mJ/mを超える場合には、粘着剤層から接着剤層、もしくは接着剤層から粘着剤層への成分の移行が発生する可能性がある。前者の場合はリフロー工程において低分子成分が揮発してしまう。後者の場合は接着面が荒れてボンディング工程にて凹凸を埋め込めないことによりボイドが発生して、信頼性(リフロー時耐クラック性)が低下する。
【0012】
接着剤層の粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギーが30mJ/m以上かつ50mJ/m以下が好ましく、接着剤層の粘着剤層から剥離した面の表面自由エネルギーが30mJ/m以上かつ60mJ/m以下であることが好ましい。接着剤層の粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギーは30mJ/m以上かつ40mJ/m以下がより好ましく、接着剤層の粘着剤層から剥離した面の表面自由エネルギーが30mJ/m以上かつ50mJ/m以下がより好ましい。表面自由エネルギーが30mJ/m未満であると、濡れ性が十分ではないためボイドが入りやすく、信頼性(リフロー時耐クラック性)が低下することがある。
【0013】
(接着剤層)
接着剤層は、接着剤を予めフィルム化したものであり、例えば、接着剤に使用される公知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、メラミン樹脂等やその混合物を使用することができるが、接着剤層の接着性と信頼性の観点から、アクリル系共重合体、エポキシ樹脂を含み、アクリル系共重合体のTgが0℃以上40℃以下、重量平均分子量が10万以上100万以下であることが好ましい。より好ましい重量平均分子量は60万以上90万以下である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したものとする。
(GPC法による測定条件)
使用機器:高速液体クロマトグラフィーLC-20AD[株式会社島津製作所製、商品名]
カラム :Shodex Column GPC KF-805[株式会社島津製作所製、商品名]
溶離液 :クロロホルム
測定温度:45℃
流量 :3.0ml/min
RI検出器 :RID-10A
【0014】
アクリル系共重合体の重合方法は特に制限が無く、例えば、パール重合、溶液重合、懸濁重合等が挙げられ、これらの方法により共重合体が得られる。耐熱性が優れるため懸濁重合が好ましく、このようなアクリル系共重合体としては、例えば、パラクロンW−197C(根上工業株式会社製、商品名)が挙げられる。
アクリル系共重合体はアクリロニトリルを含むことが好ましい。アクリル系共重合体に対し、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%がアクリロニトリルである。アクリロニトリルが10質量%以上あることで、接着剤層のTgを上げ、接着性を向上させることができるが、50質量%以上あると、接着剤層の流動性が悪くなり、接着性が低下する場合がある。アクリロニトリルを含む懸濁重合によるアクリル系共重合体であることが特に好ましい。
【0015】
アクリル系共重合体は接着性を向上させるため、官能基を有していてもよい。官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基等が挙げられ、なかでも、グリシジル基が好ましい。グリシジル基は、熱硬化樹脂であるエポキシとの反応性がよく、水酸基などと比較すると粘着剤層とは反応しにくいため、表面自由エネルギーの変化が起こりにくい。
【0016】
接着剤層は無機フィラーを含有してもよいが、添加量が多いと流動性が低下し、接着性が下がるため40質量%未満が好ましく、より好ましくは20質量%未満、更に好ましくは15質量%未満である。また、粒径が大きいと接着面の表面に凹凸が生じ、接着性が低下するため、平均粒径1μm未満が好ましく、より好ましくは0.5μm未満、更に好ましくは0.1μm未満である。無機フィラーの粒径の下限に特に制限はないが、0.003μm以上であるのが実際的である。
表面自由エネルギーを制御するために、シランカップリング剤もしくはチタンカップリング剤やフッ素系グラフト共重合体を添加剤として加えてもよい。メルカプト基やグリシジル基を含有するものが好ましい。
接着剤層の厚さは特に制限されるものではないが、通常3〜100μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0017】
(支持基材)
支持基材の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテン共重合体もしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。また、これらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。支持基材の厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、50〜200μmが好ましい。
【0018】
(粘着剤層)
粘着剤層には放射線硬化型と放射線照射により粘着力が変化しない非放射線硬化型がある。前者は粘着力の制御が容易であり、後者は放射線照射を許さないデバイスに使用可能であることから、用途に応じて適宜選択される。放射線硬化型を選択する場合には光重合性炭素−炭素二重結合を持つ放射線重合性化合物や光重合開始剤を適宜配合して調製することが好ましい。
粘着剤層が放射線硬化型の場合、硬化させたあとの粘着剤層と接着剤層の剥離力が0.01N/25mm以上0.5N/25mm以下であるものを用いることが好ましい。より好ましくは0.01N/25mm以上0.1N/25mm以下である。剥離力が0.01N/25mm未満だと、ダイシング装置からからピックアップ装置への搬送時に接着剤層付きの半導体素子が粘着剤層から脱離する可能性があり、0.5N/25mm以上であると、接着剤層が粘着剤層の影響を受けやすくなり、面が荒れたり、表面成分の移行が発生したりして、表面自由エネルギーが変化しやすい。
粘着剤層が非放射線硬化型の場合、粘着剤層と接着剤層の剥離力が0.01N/25mm以上0.5N/25mm以下であるものを用いることが好ましい。より好ましくは0.01N/25mm以上0.3N/25mm以下である。剥離力が0.01N/25mm未満だとダイシング時にチップ飛びが発生したり、ダイシング装置からからピックアップ装置への搬送時に接着剤層付きの半導体素子が粘着剤層から脱離する可能性があり、0.5N/25mm以上であると、接着剤層が粘着剤層の影響を受けやすくなり、面が荒れたり、表面成分の移行が発生したりして、表面自由エネルギーが変化しやすい。
粘着剤層の厚さは特に制限されるものではないが、通常5〜50μmが好ましく、7〜20μmがより好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
<アクリルポリマーの製造>
まず、各実施例および各比較例に係るウェハ加工用テープの接着剤層に含まれるアクリルポリマーの製造法について説明する。
(アクリルポリマー(1))
撹拌機を備えたガラス製の四口丸底フラスコに水300質量部を入れ、分散安定剤としてポリビニルアルコール0.7質量部を溶解し、撹拌翼により300rpmで撹拌しつつ、アクリル酸エチル60質量部、アクリル酸ブチル5質量部、メタクリル酸グリシジル15質量部、アクリロニトリル20質量部からなる単量体混合物と重合開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリル1質量部を一括投入し、懸濁液を作成した。
これを、撹拌継続下に反応系内を68℃まで昇温させ、4時間一定に保って反応させた。その後、室温(約25℃)まで冷却した。次いで、反応物を固液分離し、水で充分に洗浄した後、乾燥機を用いて70℃で12時間乾燥し、続いて2−ブタノンを加え固形分が15%になるよう調整して、アクリルポリマー(1)を得た。配合比から計算されるTgは3℃である。この重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography: GPC)による重量平均分子量は95万、分散度は3.5であった。
【0021】
(アクリルポリマー(2))
アクリル酸エチル60質量部、アクリル酸ブチル5質量部、メタクリル酸グリシジル6質量部、アクリロニトリル29質量部とした以外は、アクリルポリマー(1)と同様の製造法によりアクリルポリマー(2)を作製した。配合比から計算されるTgは7℃である。この重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量は60万、分散度は3.4であった。
(アクリルポリマー(3))
アクリル酸エチル34質量部、アクリル酸ブチル15質量部、メタクリル酸グリシジル2質量部、アクリロニトリル49質量部とした以外は、アクリルポリマー(1)と同様の製造法によりアクリルポリマー(3)を作製した。配合比から計算されるTgは21℃である。この重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量は12万、分散度は2.3であった。
【0022】
(アクリルポリマー(4))
アクリル酸エチル43質量部、アクリル酸ブチル15質量部、メタクリル酸グリシジル5質量部、アクリロニトリル37質量部とした以外は、アクリルポリマー(1)と同様の製造法によりアクリルポリマー(4)を作製した。配合比から計算されるTgは12℃である。この重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量は70万、分散度は3.6であった。
(アクリルポリマー(5))
アクリル酸エチル65重量部、アクリル酸ブチル23重量部、メタクリル酸グリシジル2重量部、アクリロニトリル12重量部とした以外は、アクリルポリマー(1)と同様の製造法によりアクリルポリマー(5)を作製した。配合比から計算されるTgは−22℃である。この重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量は40万、分散度は3.8であった。
【0023】
(アクリルポリマー(6))
混合機及び冷却器を備え付けた反応器にアクリル酸エチル60質量部、アクリル酸ブチル5質量部、メタクリル酸グリシジル16質量部、アクリロニトリル19質量部を入れ、85℃に加熱し、ここに2−ブタノン2質量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.05質量部を添加した後8時間保温し、冷却後メタノールを加えポリマーを沈殿させ上澄み液を取り除き、ポリマー中に残ったメタノールを乾燥させ、続いて2−ブタノンを加え固形分が15%になるよう調整して、アクリルポリマー(6)を作製した。配合比から計算されるTgは3℃である。この重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量は50万、分散度は11.5であった。
【0024】
なお、各アクリルポリマー(1)〜(6)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した。
【0025】
<接着剤層の製造>
(接着剤層(1))
上記アクリルポリマー(1)100質量部に対して、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量197、分子量1200、軟化点70℃)25質量部、キシリレンノボラック樹脂(水酸基当量104、軟化点80℃)60質量部、充填材として平均粒径0.045μmのシリカフィラー20質量部を加えて熱硬化性の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を、離型フィルムをなすPETフィルムに塗布し、120℃で10分間加熱乾燥して、乾燥後の厚さ20μmのBステージ状態の塗膜を形成し、PETフィルム/接着剤層(1)/PETフィルムの積層体を得た。
なお、PETフィルムはシリコーン離型処理されたPETフィルム(帝人:ヒューピレックスS−314(商品名)、厚み25μm)を用いた。
(接着剤層(2)〜(6))
上記アクリルポリマー(1)に代えてアクリルポリマー(2)〜(6)を用いた以外は接着剤層(1)と同様の方法で、接着剤層(2)〜(6)を得た。
【0026】
<粘着フィルムの製造>
(粘着剤層組成物(1))
アクリル酸2−エチルヘキシル77質量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート23質量部を重合させ、重量平均分子量80万のアクリル共重合体に硬化剤としてポリイソシアネート3重量部を加えて混合し、粘着剤層組成物(1)とした。
(粘着剤層組成物(2))
ブチルアクリレート65質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量部、アクリル酸10質量部をラジカル重合させ、2−イソシアネートエチルメタクリレートを滴下反応させて合成した重量平均分子量80万のアクリル共重合体に硬化剤としてポリイソシアネート3質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン1質量部を加えて混合し、粘着剤層組成物(2)とした。
【0027】
(粘着フィルム(1),(2))
作製した粘着剤層組成物を乾燥膜厚が10μmとなるように離型フィルムをなすPETフィルムに塗布し、120℃で3分間乾燥した。このPETフィルムに塗工した粘着剤層組成物を、支持基材である厚さ100μmのポリプロピレン−エラストマー(PP:HSBR=80:20のエラストマー)樹脂フィルム上に転写させることで粘着フィルム(1)、(2)を作製した。
なお、ポリプロピレン(PP)は、日本ポリケム株式会社製のノバテックFG4(商品名)を用い、水添スチレンブタジエン(HSBR)はJSR株式会社製のダイナロン1320P(商品名)を用いた。また、PETフィルムはシリコーン離型処理されたPETフィルム(帝人:ヒューピレックスS−314(商品名)、厚み25μm)を用いた。
【0028】
<実施例1>
以上のようにして得られた接着剤層(1)と粘着フィルム(1)とを、接着剤層のPETフィルムを片側のみ剥がし、粘着剤層と接するように貼合し、支持基材、粘着剤層、接着剤層、離型フィルムがこの順で積層された図1に示すような離型フィルム付きのウェハ加工用テープを得た。このウェハ加工用テープを実施例1のサンプルとした。
<実施例2>
得られた上記接着剤層(2)と粘着フィルム(1)とを用いて、実施例1と同様の方法で実施例2のウェハ加工用テープを作製した。
<実施例3>
得られた上記接着剤層(3)と粘着フィルム(1)とを用いて、実施例1と同様の方法で実施例3のウェハ加工用テープを作製した。
<実施例4>
得られた上記接着剤層(4)と粘着フィルム(1)とを用いて、実施例1と同様の方法で実施例4のウェハ加工用テープを作製した。
<実施例5>
得られた上記接着剤層(1)と粘着フィルム(2)とを用いて、実施例1と同様の方法で実施例5のウェハ加工用テープを作製した。
<比較例1>
得られた上記接着剤層(5)と粘着フィルム(1)とを用いて、実施例1と同様の方法で比較例1のウェハ加工用テープを作製した。
<比較例2>
得られた上記接着剤層(6)と粘着フィルム(1)とを用いて、実施例1と同様の方法で比較例2のウェハ加工用テープを作製した。
【0029】
実施例1〜5及び比較例1、2のウェハ加工用テープについて以下の測定、評価を行った。結果を表1に示した。
(表面自由エネルギー)
上記実施例、比較例の各サンプルの接着剤層において、粘着剤層に接しない面をA面とし、粘着剤層から剥がした面をB面とした。このとき、実施例5は、接着剤層を剥がす前に粘着剤層に紫外線を空冷式高圧水銀灯(80W/cm、照射距離100mm)により200mJ/cm照射した。これらA面及びB面に対する水及びジヨードメタンの接触角を測定(液滴容量:水2μL、ジヨードメタン3μL、読み取り時間:滴下後30秒)し、測定により得られた水及びジヨードメタンの接触角から、幾何平均法を使って、上述した算出式により表面自由エネルギーを算出した。
【0030】
(剥離力)
実施例、比較例の各サンプルの接着剤層の離型フィルムを剥がし、離型フィルムを剥がした接着剤層の表面に形状保持テープ(積水化学工業社製、商品名:フォルテ)を2kgのローラによって貼り合わせて、25mm幅の短冊状に切り取り、支持基材と粘着剤層と接着剤層と形状保持テープとがこの順に積層された試験片を作製した。作製した試験片を(株)東洋精機製作所製のストログラフ(VE10)により「支持基材及び粘着剤層」と、「接着剤層及び形状保持テープ」の積層体とに分けて掴み、線速300mm/minにて粘着剤層と接着剤層との間の剥離力を測定した。このとき、実施例5は、接着剤層を剥がす前に粘着剤層に紫外線を空冷式高圧水銀灯(80W/cm、照射距離100mm)により200mJ/cm照射した。なお、剥離力の単位は[N/25mm]である。また、「支持基材及び粘着剤層」と、「接着剤層及び形状保持テープ」の積層体とに分けて、「支持基材及び粘着剤層」から「接着剤層及び形状保持テープ」を剥離させるのは、接着剤層だけを掴んで剥離すると接着剤層が伸びるためである。
【0031】
(ピックアップ性)
上記実施例及び比較例の各サンプルのウェハ加工用テープを、厚み50μmのシリコンウェハに70℃で10秒間加熱貼合した後、10mm×10mmのチップにダイシングした。その後、実施例5は、粘着剤層に紫外線を空冷式高圧水銀灯(80W/cm、照射距離10cm)により200mJ/cm照射した。シリコンウェハ中央部のチップ50個についてダイボンダー装置(NECマシナリー製、商品名:CPS−100FM)によるピックアップ試験を行い、ピックアップチップ個数でのピックアップ成功率を求めた。その際、ピックアップされた素子において、粘着剤層から剥離した接着剤層が保持されているものをピックアップが成功したものとし、ピックアップ成功率を算出した。その算出結果を表1に示す。表1中、◎、○、△、×の基準(ピックアップ性の基準)は下記のとおりである。
「◎」…突き上げピンによる突き上げ高さ0.7mm、0.5mm、0.3mmにおけるピックアップ成功率が100質量%である。
「○」…突き上げ高さ0.7mm、0.5mmにおけるピックアップ成功率が100質量%で、且つ、突き上げ高さ0.3mmにおけるピックアップ成功率が100質量%未満である。
「△」…突き上げ高さ0.7mmにおけるピックアップ成功率が100質量%で、且つ、突き上げ高さ0.5mm、0.3mmにおけるピックアップ成功率が100質量%未満である。
「×」…突き上げ高さ0.7mm、0.5mm、0.3mmにおけるピックアップ成功率が100質量%未満である。
【0032】
(信頼性(リフロー時クラック発生率))
厚み200μmのシリコンウェハの裏面に各実施例および各比較例に係るウェハ加工用テープの接着剤層を貼り付け、7.5mm×7.5mmにダイシングした後、銀メッキ処理されたリードフレーム上に、温度160℃、圧力0.1MPa、時間1秒の条件でマウントした。更に、封止材(KE−1000SV、京セラケミカル(株)製、商品名)でモールドし、各実施例および各比較例のサンプルを20個作製した。
各実施例および各比較例の封止後のサンプルを85℃/60質量%RHの恒温恒湿層で196時間処理した後、サンプル表面の最高温度が260℃で20秒になるよう設定したIR(赤外線)リフロー炉にサンプルを通し、室温放置により冷却する処理を3回繰り返した。各実施例および各比較例において、上記のような処理を行った20個のサンプルに対してクラックの有無を観察し、20個のサンプル中のクラックが発生したサンプルの割合を算出し、リフロー時クラック発生率を信頼性として表1に示した。
なお、クラックの有無を観察する際には、超音波探査装置(Scanning Acoustic Tomograph:SAT)を使用して透過法にて各サンプルを観察し、剥離が見られたものは全てクラックとした。
【0033】
【表1】

A面:粘着剤に接しない面
B面:粘着剤から剥離した面
【0034】
比較例1、2ではピックアップ性に問題があり、比較例2では信頼性も劣った。
これに対し、実施例1〜5は剥離力、ピックアップ性、信頼性のいずれも十分であった。本発明のウェハ加工用テープは接着剤層が、粘着剤層に一度貼り合わせた面であっても十分な接着力を有することがわかる。
【符号の説明】
【0035】
10 ウェハ加工用テープ
11 離型PETフィルム
12 粘着フィルム
12a 支持基材
12b 粘着剤層
13 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と粘着剤層と単層の接着剤層とがこの順に積層されたウェハ加工用テープで、前記接着剤層は半導体素子を配線付き外部接続用配線部材または別の半導体素子に圧着するために用いられる接着剤層であって、前記接着剤層の粘着剤層から剥離した面と粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギー差が10mJ/m以下であることを特徴とするウェハ加工用テープ。
【請求項2】
前記接着剤層の粘着剤層に接しない面の表面自由エネルギーが30mJ/m以上かつ50mJ/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のウェハ加工用テープ。
【請求項3】
前記接着剤層が、アクリロニトリルを含む懸濁重合による高分子化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のウェハ加工用テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−8882(P2013−8882A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141266(P2011−141266)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【特許番号】特許第4865926号(P4865926)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】