説明

ウェーハ保護治具及びウェーハの取り扱い方法

【課題】ウェーハの損傷や欠け、割れ、チッピングを防止して円滑に搬送したり、輸送することのできるウェーハ保護治具及びウェーハの取り扱い方法を提供する。
【解決手段】薄化されることにより周縁部22がシャープエッジとなり、基板収納容器の容器本体に収納されるウェーハ20用のウェーハ保護治具30であり、表面の粘着層32に薄い半導体ウェーハ21を着脱自在に粘着保持する治具板31と、治具板31の表面周縁部に周設されるシャープエッジ用の周壁33とを備え、治具板31を半導体ウェーハ21の直径よりも拡径の円板に形成し、周壁33を断面矩形に形成してその高さを半導体ウェーハ21の厚さよりも高くする。治具板31と半導体ウェーハ21とを一体化して剛性を確保し、周壁33により半導体ウェーハ21やその脆い周縁部22を外部との接触から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラインドにより薄化された半導体ウェーハに代表されるウェーハ用のウェーハ保護治具及びウェーハの取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
φ300mmのシリコンウェーハに代表される半導体ウェーハは、図示しない半導体の製造工程で様々な加工や処理が施され、基板収納容器に収納して工程間を搬送されたり、工場や会社に輸送される(特許文献1、2、3、4、5、6参照)。すなわち、半導体ウェーハは、例えば製造工程の後工程におけるバックグラインド工程においては、薄い半導体パッケージに適合させる観点から、100μm以下の厚さに薄化されて周縁部がシャープエッジ化され、その後、ダイシング工程に供されて複数の半導体チップにダイシングされる。
【0003】
また、TSV(Through−Silicon Via)工程においては、半導体の大容量化・高性能化の観点から、100μm以下に薄化されて厚さが略500〜775μmの支持基板に接着されることにより、周縁部がシャープエッジのTSV積層半導体ウェーハを形成し、製造工程の後工程から前工程に戻されて貫通電極等が形成される。
【0004】
これらを収納する基板収納容器としては、複数枚の半導体ウェーハやTSV積層半導体ウェーハを容器本体の支持片を介し上下方向に整列収納するフロントオープンボックスタイプ(FOSBと呼ばれる)、複数枚の半導体ウェーハやTSV積層半導体ウェーハを上下方向に重ねて積層収納するコインスタックタイプがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−139495号公報
【特許文献2】特開2010−135617号公報
【特許文献3】特開2009−177050号公報
【特許文献4】特開2010−28031号公報
【特許文献5】特開2008−41748号公報
【特許文献6】特開2006−216775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における半導体ウェーハやTSV積層半導体ウェーハは、以上のように基板収納容器に単に収納されるので、以下のような問題がある。先ず、半導体ウェーハの場合、半導体ウェーハは、100μm以下の薄化により撓み易く、脆く割れ易くなるので、そのままの状態でフロントオープンボックスタイプの基板収納容器に収納して搬送しようとすると、大きく弓なりに撓んで破損することが少なくない。また、コインスタックタイプの基板収納容器に収納して輸送する場合、輸送の途中で薄化された半導体ウェーハ、特にその脆い周縁部が部分的に割れたり、欠けることがある。
【0007】
一方、TSV積層半導体ウェーハの場合には、厚い支持基板と薄化された半導体ウェーハとが接着により一体化し、半導体ウェーハの剛性が確保されるので、フロントオープンボックスタイプの基板収納容器で出荷するとき、撓みをある程度防止することが可能である。しかしながら、容器本体の支持片に半導体ウェーハの周縁部が接触すると、移動時の振動や衝撃で欠け、割れ、チッピングを招くことがあり、現実問題として出荷や輸送に支障を来たすという問題が生じる。また、コインスタックタイプの基板収納容器で輸送しようとしても、同様に半導体ウェーハやその周縁部が割れたり、欠けるおそれがある。
【0008】
チッピングを防止する手段としては、薄化された半導体ウェーハの周縁部をエッジトリミングして強度を向上させる方法が提案されており、既に実施されている。しかし、この方法を採用しても、容器本体の支持片と半導体ウェーハの周縁部とが接触する場合には、チッピングの完全な防止は困難である。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、ウェーハの損傷や欠け、割れ、チッピングを防止して円滑に搬送したり、輸送することのできるウェーハ保護治具及びウェーハの取り扱い方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては上記課題を解決するため、基板収納容器の容器本体に収納されるウェーハ用の保護治具であって、
表面の粘着層にウェーハを着脱自在に保持する治具板と、この治具板の表裏両面の少なくともいずれか一方の周縁部に設けられる周壁とを含み、
ウェーハを、100μm以下の厚さに薄化された半導体ウェーハ、あるいは100μm以下の厚さに薄化される半導体ウェーハと支持基板とが積層接着された積層半導体ウェーハとし、
治具板をウェーハの直径よりも拡径の大きさに形成し、周壁の高さをウェーハの厚さよりも高くしたことを特徴としている。
【0011】
なお、治具板の少なくとも中央部を開口し、治具板を中空の無端状に形成することができる。
また、治具板の周縁部を除く表面に凹部を形成し、この凹部内に複数の支持突起を間隔をおいて配設するとともに、この複数の支持突起の先端部にウェーハ用の可撓性の粘着層を支持させて凹部と粘着層との間に空間を区画し、治具板には、区画された空間の気体を外部に排気して粘着層を変形させる排気孔を穿孔することができる。
【0012】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1、2、又は3記載のウェーハ保護治具を使用してウェーハを取り扱うウェーハの取り扱い方法であって、
ウェーハ保護治具にウェーハを基板収納容器の容器本体から取り出して保持させ、基板収納容器の容器本体にウェーハ保護治具をウェーハと共に収納することを特徴としている。
【0013】
なお、治具着脱装置の吸着テーブルにウェーハ保護治具を吸着し、治具着脱装置のウェーハ支持部を治具板の開口を介して上昇させる工程と、
基板収納容器の容器本体からウェーハを取り出し、このウェーハを治具着脱装置のウェーハ支持部に支持吸着させ、治具着脱装置のウェーハ支持部を下降させてウェーハ保護治具の粘着層にウェーハを粘着保持させる工程と、
吸着テーブルに対するウェーハ保護治具の吸着を解除し、ウェーハを吸着したウェーハ支持部を上昇させて吸着テーブルからウェーハ保護治具を上昇させ、ウェーハ支持部の吸着を解除してウェーハ保護治具をピックアップする工程と、
基板収納容器の容器本体にピックアップしたウェーハ保護治具をウェーハと共に収納する工程とを含むことができる。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における基板収納容器は、フロントオープンボックスタイプやコインスタックタイプのいずれでも良い。また、治具板は、ウェーハよりも大面積であれば、硬質の板でも良いし、ある程度屈曲可能な板でも良い。周壁は、治具板の表面周縁部、裏面周縁部、表裏周縁部と一体でも良いし、別体でも良い。さらに、本発明に係るウェーハ保護治具及びウェーハの取り扱い方法は、少なくとも半導体の製造工程、具体的には前工程、後工程、テスト工程等で使用することができる。
【0015】
本発明によれば、ウェーハ保護治具を形成する治具板の粘着層にウェーハを保持させて剛性を確保し、しかも、治具板の周縁部や周壁によりウェーハやそのシャープな周縁部を外部との接触から保護するので、例え基板収納容器にウェーハを収納して搬送したり、輸送等しても、ウェーハが撓んで破損するのを抑制することができる。また、搬送や輸送の途中でウェーハが割れたり、欠けることが少ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウェーハの損傷や欠け、割れ、チッピングを防止し、ウェーハを円滑に搬送したり、輸送することができるという効果がある。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、治具板を中空の無端状に形成するので、治具板の開口を活用することにより、ウェーハ保護治具とウェーハとの脱着を容易にすることができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、ウェーハ保護治具の粘着層表面にウェーハを配置して押し付ければ、粘着層にウェーハを適切に粘着保持することができる。また、区画された空間の気体を排気孔からウェーハ保護治具の外部に排気して粘着層を複数の支持突起に応じて変形させ、粘着層とウェーハとの間に隙間を形成すれば、粘着層からウェーハを簡単に取り外すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るウェーハ保護治具の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係るウェーハ保護治具の実施形態における治具板と周壁とを模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係るウェーハ保護治具の実施形態における基板収納容器を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図4】本発明に係るウェーハ保護治具の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明に係るウェーハ保護治具の第3の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図6】本発明に係るウェーハ保護治具の第4の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図7】本発明に係るウェーハ保護治具の第5の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図8】本発明に係るウェーハ保護治具の第5の実施形態における治具着脱装置等を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明に係るウェーハ保護治具の第6の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態におけるウェーハ保護治具30は、図1ないし図3に示すように、基板収納容器1に収納される周縁部22がシャープエッジのウェーハ20用の治具であり、ウェーハ20を着脱自在に粘着保持する治具板31と、この治具板31の周縁部に周設されるウェーハ20保護用の周壁33とを備え、断面略U字形あるいは略皿形に形成される。
【0020】
基板収納容器1は、図3に示すように、例えばウェーハ20やウェーハ保護治具30を整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体2と、この容器本体2の開口した正面に着脱自在に嵌合される蓋体9とを備え、各種の半導体製造装置やオープナ等に搭載される。
【0021】
容器本体2と蓋体9とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。成形材料の所定の樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0022】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が選択的に添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤を添加したり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等を添加することも可能である。
【0023】
容器本体2は、例えば所定の樹脂を含む成形材料を使用して正面が横長に開口したフロントオープンボックスに成形され、両側壁の内面には、ウェーハ保護治具30の側部周縁を水平に支持する左右一対の支持片3が対設されており、この一対の支持片3が上下方向に所定の間隔で配列形成される。
【0024】
容器本体2の底板には、複数の位置決め具4を備えた位置決め固定用のボトムプレート5が装着され、容器本体2の天井中央部には、工場の天井搬送機構に把持されるフランジ6が装着される。また、容器本体2の正面外周の両側中央部には、施錠用の複数の係止部7がそれぞれ突出形成され、容器本体2の両側壁外面には、手動操作用のハンドル8がそれぞれ斜めに装着される。
【0025】
蓋体9は、容器本体2の開口した正面内に枠形のシールガスケットを介し着脱自在に嵌合される横長で矩形の蓋本体10と、この蓋本体10の正面を被覆する表面プレートとを備えて構成される。蓋本体10の裏面両側部には、ウェーハ20やウェーハ保護治具30の前部周縁を保持する弾性のフロントリテーナ11がそれぞれ配設され、蓋本体10の両側壁中央部には、容器本体2の係止部7に嵌合係止する可撓性の係止片12がそれぞれ前後方向に回転可能に支持される。
【0026】
ウェーハ20は、図1に示すように、例えばφ300mmのシリコンウェーハ等からなる平面略円形の半導体ウェーハ21からなり、バックグラインド工程で500〜775μmから100μm以下の厚さに薄化され、周縁部22が鋭くシャープエッジ化される。この半導体ウェーハ21は、100μm以下(50μm以下や75μm以下の場合もある)に薄化されることにより弓なりに撓み易く、特にシャープな周縁部22が脆く割れ易いという特徴を有する。
【0027】
ウェーハ保護治具30の治具板31は、図1や図2に示すように、所定の材料を使用して半導体ウェーハ21の直径よりも大きい拡径の円板に形成され、周縁部を除く平坦な表面に再剥離可能な微粘着性の粘着層32が積層粘着されており、この粘着層32の表面にウェーハ20、すなわち薄化された半導体ウェーハ21が着脱自在に粘着保持される。
【0028】
治具板31の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば金属材料で形成される場合には、ステンレスや表面にメッキが施されて錆の発生を防止可能な材料で形成されることが好ましい。これに対し、樹脂を含む成形材料で形成される場合には、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリカーボネート等を含有する成形材料で成形されると良い。この治具板31は、基板収納容器1の容器本体2に円滑に収納する観点から、好ましくは2mm以下の厚さに形成され、必要に応じて可撓性が選択的に付与される。
【0029】
粘着層32は、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系やポリオレフィン系の自己粘着フィルム(住友化学製の商品名アクリフト、三菱化学製の商品名ゼラス等)、シリコーン系やフッ素系のエラストマー、発泡樹脂により成形されて多数の凹み孔を有する柔軟な薄膜の弾性吸盤等が使用される。この粘着層32は、ウェーハ20や半導体ウェーハ21の面積以上の面積に形成される。
【0030】
周壁33は、図1や図2に示すように、例えば治具板31と同様の材料を使用して半導体ウェーハ21の直径よりも拡径の平面リング形に形成され、粘着層32に粘着保持された薄い半導体ウェーハ21を包囲して上方向や横方向から保護する。この周壁33は、断面矩形に形成され、薄い半導体ウェーハ21やそのシャープで脆い周縁部22を保護する観点から、その高さ(厚さ)が半導体ウェーハ21の厚さよりも高く調整される。
【0031】
上記構成において、半導体の製造工程で半導体ウェーハ21を取り扱う場合には、先ず、専用の基板収納容器1の容器本体2からウェーハ保護治具30をロボットハンドにより取り出し、治具着脱装置の吸着テーブル上にウェーハ保護治具30を真空吸着する。こうして吸着テーブル上にウェーハ保護治具30を吸着したら、別の基板収納容器1の容器本体2からバックグラインドにより薄化された半導体ウェーハ21をロボットハンドにより取り出し、ウェーハ保護治具30を形成する治具板31の粘着層32に薄い半導体ウェーハ21を押圧して粘着保持させる。
【0032】
ウェーハ保護治具30の粘着層32に半導体ウェーハ21を適切に粘着保持させたら、ウェーハ保護治具30をバキュームハンド等でピックアップし、基板収納容器1の容器本体2にウェーハ保護治具30をウェーハ20と共に収納支持させ、容器本体2の開口した正面に蓋体9を嵌合して閉鎖し、その後、基板収納容器1を適宜包装して梱包すれば、基板収納容器1に半導体ウェーハ21を収納して工程間を搬送したり、工場や会社に輸送することができる。
【0033】
この際、容器本体2の支持片3にウェーハ保護治具30の治具板31が支持されるので、支持片3に薄い半導体ウェーハ21や割れ易い周縁部22が接触することがない。半導体の製造工程でウェーハ保護治具30の粘着層32から半導体ウェーハ21を取り外す場合には、上記作業と逆の手順で作業すれば良い。
【0034】
上記構成によれば、治具板31と薄い半導体ウェーハ21とを一体化して剛性を確保し、しかも、周壁33により薄い半導体ウェーハ21やその脆い周縁部22を外部との接触から有効に保護するので、例え基板収納容器1に薄い半導体ウェーハ21を収納して搬送したり、輸送しても、薄い半導体ウェーハ21が大きく弓なりに撓んで破損するのを抑制防止することができる。また、輸送途中の振動や衝撃で薄い半導体ウェーハ21自体やその周縁部22が部分的に割れたり、欠けることがない。したがって、製品率の向上や輸送費の削減が大いに期待でき、半導体生産の効率化を図ることができる。
【0035】
また、治具板31の表面に再剥離可能な微粘着性の粘着層32を粘着するので、使用しなくなった粘着層32を簡単に除去することができる。また、剛性に悪影響を与えない範囲で治具板31に可撓性を付与すれば、治具板31を曲げて粘着層32から薄い半導体ウェーハ21を簡単に剥離することが可能になる。さらに、薄い半導体ウェーハ21の周縁部22をエッジトリミングして強度を向上させるという煩雑な作業を省略することが可能となる。
【0036】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ウェーハ20を、バックグラインド工程で100μm以下の厚さに薄化された半導体ウェーハ21と厚い支持基板23の表面とが接着剤24で積層接着されたTSV積層半導体ウェーハ25とし、治具板31をTSV積層半導体ウェーハ25の直径よりも大きい拡径の平面円形に形成し、周壁33の高さをTSV積層半導体ウェーハ25の厚さよりも高くするようにしている。
【0037】
支持基板23は、例えば略500〜775μmの厚さを有する半導体ウェーハ21やガラス基板等からなり、ウェーハ保護治具30の粘着層32に着脱自在に粘着保持される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、TSV積層半導体ウェーハ25を形成する薄い半導体ウェーハ21やその脆い周縁部22の欠け、割れ、チッピングを有効に抑制防止することができ、TSV工程に適した移動手段を提供することができるのは明らかである。
【0038】
次に、図5は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、複数のウェーハ保護治具30を用意し、各ウェーハ保護治具30の粘着層32上にTSV積層半導体ウェーハ25を着脱自在に粘着保持させ、複数のウェーハ保護治具30を周壁33を介し上下方向に積層してコインスタックタイプの基板収納容器1に収納するようにしている。
【0039】
上下に隣接するウェーハ保護治具30とウェーハ保護治具30との間には、緩衝用や収納用のフィルムが選択的に介在される。また、コインスタックタイプの基板収納容器1は、図示しないが、複数のウェーハ保護治具30を積層収納する断面略U字形で円筒形の容器本体と、この容器本体の開口した上面に着脱自在に嵌合される蓋体とを備え、これら容器本体と蓋体のうち、少なくとも容器本体の底部に平坦な支持板が一体化される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0040】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、コインスタックタイプの基板収納容器1に複数のウェーハ保護治具30を適切に収納することができるのは明らかである。また、各ウェーハ保護治具30の周壁33がスペーサ機能を発揮してTSV積層半導体ウェーハ25が隣接する上方のウェーハ保護治具30に接触するのを防ぐので、TSV積層半導体ウェーハ25やその脆い周縁部22の欠け、割れ、チッピングを抑制防止することができる。
【0041】
次に、図6は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、複数のウェーハ保護治具30を用意し、各ウェーハ保護治具30を形成する治具板31の平坦な裏面周縁部に周壁33を周設し、複数のウェーハ保護治具30を周壁33を介し上下方向に積層してコインスタックタイプの基板収納容器1に収納するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0042】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、TSV積層半導体ウェーハ25の周縁部22よりも外方向に突き出た治具板31の周縁部により、薄い半導体ウェーハ21やその脆い周縁部22を外部との接触から有効に保護することができるので、薄い半導体ウェーハ21の欠け、割れ、チッピングを抑制防止することが可能になる。
【0043】
次に、図7や図8は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、治具板31と粘着層32の少なくとも中央部をそれぞれ円形の開口34に形成し、治具板31を中空の無端状、換言すれば、平面リング形に形成してウェーハ保護治具30とシャープエッジの薄いウェーハ20との粘着を容易にするようにしている。
【0044】
上記構成において、半導体の製造工程でウェーハ20を取り扱う場合には、先ず、専用の基板収納容器1の容器本体2からウェーハ保護治具30をロボットハンド43により取り出し、治具着脱装置40の中空の吸着テーブル41上にウェーハ保護治具30を真空吸着するとともに、吸着テーブル41の中空部と治具板31の開口34とを連通させ、治具着脱装置40のウェーハ支持部42を上昇させる。
【0045】
治具着脱装置40のウェーハ支持部42は、例えば昇降可能な円柱形に形成され、治具着脱装置40内から中空の吸着テーブル41と治具板31の開口34とをそれぞれ貫通して上昇する。吸着テーブル41上にウェーハ保護治具30を吸着したら、別の基板収納容器1の容器本体2からウェーハ20をロボットハンド43により取り出し、このウェーハ20をウェーハ支持部42の平坦な先端面に水平に支持させ、真空吸着する。
【0046】
次いで、治具着脱装置40のウェーハ支持部42を下降させてウェーハ保護治具30の粘着層32にウェーハ20を大気圧で押圧し、粘着保持させる。この際、ウェーハ支持部42は、下降してウェーハ20を下方向に引っ張り、粘着層32にウェーハ20を十分に押圧することが好ましい。また、ウェーハ20を大気圧で押圧する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば治具板31の開口34を利用してバキュームする方法等があげられる。
【0047】
ウェーハ保護治具30の粘着層32にウェーハ20を適切に粘着保持させたら、吸着テーブル41に対するウェーハ保護治具30の真空吸着を解除し、ウェーハ20を真空吸着したウェーハ支持部42を再び上昇させて吸着テーブル41からウェーハ保護治具30を上昇させ、ウェーハ支持部42の真空吸着を解除した後、ウェーハ保護治具30をバキュームハンド等でピックアップする。
【0048】
ウェーハ保護治具30をピックアップしたら、基板収納容器1の容器本体2にウェーハ保護治具30をウェーハ20と共に収納支持させ、バキュームハンドのバキュームを解除して容器本体2から後退させ、容器本体2の開口した正面に蓋体9を嵌合して閉鎖すれば、基板収納容器1にウェーハ20を収納して工程間を搬送したり、工場や会社に輸送することができる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0049】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、治具板31の開口34を利用するので、ウェーハ保護治具30の粘着層32に対する薄いウェーハ20の取り付けや取り外しをきわめて容易にすることが可能になる。
【0050】
次に、図9は本発明の第6の実施形態を示すもので、この場合には、平坦な治具板31の周縁部を除く表面の大部分に断面略皿形の凹部35を浅く形成し、この凹部35内に複数の支持突起36を間隔をおいて配設するとともに、この複数の支持突起36に、可撓性を有するウェーハ20用の粘着層32を支持させて凹部35と粘着層32との間に空気流通用の空間37を区画形成し、治具板31の中央部厚さ方向には、区画された空間37の空気を外部に排気して粘着層32を変形させる排気孔38を穿孔するようにしている。
【0051】
治具板31は、表面の最周縁部に平面リング形の周壁33が形成されるが、裏面の最周縁部あるいは表裏面の最周縁部に平面リング形の周壁33を形成しても良い。また、各支持突起36は、例えば凹部35の深さに相当する高さの円柱形や円錐台形に形成され、平坦な先端面に粘着層32が接着剤や粘着シート等を介して接着される。
【0052】
粘着層32は、所定の材料を使用して屈曲可能な平面円形の膜に形成され、治具板31の表面周縁部と複数の支持突起36とに平坦に接着されており、表面にウェーハ20を着脱自在に粘着保持する。この粘着層32は、特に限定されるものではないが、例えば微弱の自己粘着性を有するシリコーン系やフッ素系のゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系、ウレタン系のエラストマーフィルム、ポリエステル製のフィルムに再剥離可能なアクリル系やシリコーン系の粘着層が積層された積層フィルムの加工により形成される。
【0053】
排気孔38には図示しない真空ポンプ39が配管を介して着脱自在に接続され、真空ポンプ39が駆動して空間37の空気をウェーハ保護治具30の外部に排気することにより、粘着層32が複数の支持突起36に沿うよう凹凸に変形し、粘着層32とウェーハ20との間に隙間を形成して空気を流入させるよう機能する。
【0054】
上記構成において、平坦な粘着層32の表面にウェーハ20を配置して押圧すれば、粘着層32にウェーハ20を隙間なく粘着保持することができる。これに対し、真空ポンプ39を駆動して粘着層32を複数の支持突起36に応じて凹凸に変形させ、粘着層32とウェーハ20との間に隙間を形成すれば、粘着層32の粘着力が低下するので、粘着層32からウェーハ20を簡単に取り外すことができる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0055】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ウェーハ保護治具30の構成の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0056】
なお、上記実施形態では基板収納容器1を、容器本体2と蓋体9とから構成したが、これらの他、容器本体2に嵌合した蓋体9を施錠する施錠機構とから構成しても良い。また、ウェーハ20として、φ300mmのシリコンウェーハからなる半導体ウェーハ21を使用したが、φ200mmや450mm等のシリコンウェーハからなる半導体ウェーハ21を用いても良い。
【0057】
また、治具板31の底面から周壁33の上面までの高さを2mm以下にして基板収納容器1に対する収納を容易にしても良い。また、周壁33を平面リング形に形成したが、治具板31の表面周縁部や裏面周縁部の周方向に円弧形の周壁33を所定の間隔で複数配列形成することもできる。さらに、基板収納容器1の容器本体2にウェーハ保護治具30を先に収納支持させ、このウェーハ保護治具30にウェーハ20を後から粘着保持させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るウェーハ保護治具及びウェーハの取り扱い方法は、半導体の製造分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 基板収納容器
2 容器本体
3 支持片
9 蓋体
20 ウェーハ
21 半導体ウェーハ
22 周縁部
23 支持基板
25 TSV積層半導体ウェーハ(積層半導体ウェーハ)
30 ウェーハ保護治具
31 治具板
32 粘着層
33 周壁
34 開口
35 凹部
36 支持突起
37 空間
38 排気孔
40 治具着脱装置
41 吸着テーブル
42 ウェーハ支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板収納容器の容器本体に収納されるウェーハ用のウェーハ保護治具であって、表面の粘着層にウェーハを着脱自在に保持する治具板と、この治具板の表裏両面の少なくともいずれか一方の周縁部に設けられる周壁とを含み、
ウェーハを、100μm以下の厚さに薄化された半導体ウェーハ、あるいは100μm以下の厚さに薄化される半導体ウェーハと支持基板とが積層接着された積層半導体ウェーハとし、
治具板をウェーハの直径よりも拡径の大きさに形成し、周壁の高さをウェーハの厚さよりも高くしたことを特徴とするウェーハ保護治具。
【請求項2】
治具板の少なくとも中央部を開口し、治具板を中空の無端状に形成した請求項1記載のウェーハ保護治具。
【請求項3】
治具板の周縁部を除く表面に凹部を形成し、この凹部内に複数の支持突起を間隔をおいて配設するとともに、この複数の支持突起の先端部にウェーハ用の可撓性の粘着層を支持させて凹部と粘着層との間に空間を区画し、治具板には、区画された空間の気体を外部に排気して粘着層を変形させる排気孔を穿孔した請求項1記載のウェーハ保護治具。
【請求項4】
請求項1、2、又は3記載のウェーハ保護治具を使用してウェーハを取り扱うウェーハの取り扱い方法であって、
ウェーハ保護治具にウェーハを基板収納容器の容器本体から取り出して保持させ、基板収納容器の容器本体にウェーハ保護治具をウェーハと共に収納することを特徴とするウェーハの取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−164748(P2012−164748A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22806(P2011−22806)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】