説明

ウェーハ収納カセットおよび搬送方法

【課題】搬送ロボット等により吸着された反りのあるウェーハでも破損させることなく収納する。
【解決手段】ウェーハ収納カセット10であって、ウェーハWの周縁部W1を厚さ方向両側から押圧可能なウェーハ固定板11とウェーハ固定板をウェーハ厚さとなる方向に略平行状態に移動可能とする位置規制手段とからなり、ウェーハ固定板には収納するウェーハ口径に対応してウェーハ周縁部以外にウェーハ固定板が当接しないように開口部11cが設けられ、位置規制手段は、複数のウェーハ固定板に設けた貫通孔11a,11bを貫く位置規制棒15,16と、隣接するウェーハ固定板にそれぞれ両端が回動可能に接続されたリンク棒12,13とを有し、ウェーハの搬出入時にはウェーハの両側のウェーハ固定板の間隔を広げ、ウェーハの収納時にはウェーハ固定板でウェーハを押圧してウェーハの反り変形を矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ収納カセットおよび搬送方法に係わり、特にウェーハ口径に対して薄厚化されて反り・変形量が大きいウェーハのハンドリングに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器(機器)に搭載される電子部品(部品)は、機器の小型化、薄型化に伴って小型化されてきている。「ウェーハレベルCSP」と呼ばれる、半導体ウェーハ上に絶縁層、再配線層、封止層、半田バンプ等を形成した後、チップサイズに切断したパッケージ構造により、部品の小型化を実現している。このように部品の小型化に伴いウェーハを使用する頻度が増えているなかで、従来、搬送ロボットや真空ピンセット等により、ウェーハを収納カセットに出し入れすることが行われている。自動装置では、ウェーハは搬送アームで真空吸着され挿入される。または、真空ピンセットを使用して作業者がウェーハを吸着搬送する場合がある。
【0003】
同時に、デバイス製造工程での要請から薄厚化したウェーハを搬送することとなる。
例えば、個々の製品の仕様によって多種あるが、φ150mm程度の6インチウェーハ、φ200mm程度の8インチウェーハで、厚さ150〜500μm程度の状態で搬送がおこなわれている。
ウェーハは、その周縁部を支持するようにしてケース(ウェーハカセット)等に収納して搬送・輸送しており、製造工程の加工作業に際しては、ウェーハ中心位置を支持してケースから取り出し、加工領域へ搬送・移動することが一般におこなわれていた。
【0004】
ウェーハカセットとしては、特許文献1に示すように平行な多数の溝が側壁に形成されたもの、つまり、ウェーハ受け部が固定されている構造が開示されている。あるいは、特許文献2のように固定間隔で設けられた多段式が知られていた。
しかし、ウェーハ裏面を研削して薄厚化する傾向にあるなかで、薄厚化したウェーハは反り易く、特許文献1では自動装置で、キャリアにセンサを搭載し、挿入されるウェーハを検知してから、アームの動きをコントロールする方法がとられている。
特許文献2においては、反りのあるウェーハに対して吸着ミスをなくすために、反りまたは変形のあるウェーハに対応して収納ピッチを大きくして、さらに、ウェーハを平板状に押圧することによリウェーハの反りを無くしてから吸着パッドにウェーハを吸着固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−260010号公報
【特許文献2】特開2004−273867号公報
【特許文献3】特開2000−355392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1などのウェーハカセットでは、反りのないウェーハに合わせてウェーハ収納部がウェーハを狭い所定ピッチで収納するようにその間隔が固定されており、また、ウェーハ周縁部を支持する構成とされているため、反りまたは変形の発生したウェーハを収納しようとすると、ウェーハが収納部分に当接してしまい、ウェーハを収納できないかウェーハが破損する可能性があるという問題があった。
同様に、反りまたは変形のあるウェーハに対応して収納ピッチを大きくした特許文献2においては、反りのあるウェーハに対して吸着ミスをなくすために、ウェーハを平板状に押圧することによリウェーハの反りを無くしてから吸着パッドにウェーハを吸着固定するが、ウェーハの収納率、つまり所定体積に収納できるウェーハの枚数が低下してしまうか、あるいはカセットが大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、搬送ロボットや真空ピンセット等により吸着されたウェーハを、反りのあるウェーハでも破損させることなく収納することのできるウェーハ収納カセットおよび収納カセットからのウェーハ搬送方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載されるウェーハ収納カセットは、
ウェーハを収納するウェーハ収納カセットであって、
ウェーハの周縁部を厚さ方向両側から押圧可能なウェーハ固定板と、このウェーハ固定板をウェーハ厚さとなる方向に略平行状態に移動可能とする位置規制手段とからなり、
前記ウェーハ固定板には、収納するウェーハ口径に対応してウェーハ周縁部以外に該ウェーハ固定板が当接しないように開口部が設けられ、
前記位置規制手段は、複数の前記ウェーハ固定板に設けた貫通孔を貫く位置規制棒と、隣接するウェーハ固定板にそれぞれ両端が回動可能に接続されたリンク棒とを有し、
ウェーハの搬出入時には当該ウェーハの両側のウェーハ固定板の間隔を広げ、ウェーハの収納時にはウェーハ固定板でウェーハを押圧してウェーハの反りまたは変形を矯正してなることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載されるウェーハ収納カセットは、
請求項1記載のウェーハ収納カセットであって、
前記位置規制手段の前記位置規制棒が複数平行に設けられ、そのうち少なくとも2本がウェーハの周縁部に当接してウェーハ主面と平行な方向におけるウェーハの収納位置を設定することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載されるウェーハ収納カセットは、
請求項1または2記載のウェーハ収納カセットであって、
前記位置規制手段の前記位置規制棒がウェーハを収納した状態でウェーハ固定板の外側に位置する部分を分割可能とされてなることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載されるウェーハ収納カセットは、
請求項1から3のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットであって、
前記位置規制手段の前記リンク棒が、ウェーハ固定板の表面と平行で軸線と直交する方向に移動可能な回転軸によってウェーハ固定板に接続され、該回転軸がいずれも平行状態としてウェーハ固定板の四隅にもうけられており、ウェーハ固定板の厚さ方向への移動量が等しくなるように規制されてなることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載されるウェーハ収納カセットは、
請求項1から4のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットであって、
前記複数枚配置されたウェーハ固定板のうち、特定位置の間隔のみ広げられるように位置特定手段を有してなることを特徴とするウェーハ収納カセット。
本発明の請求項6に記載されるウェーハ収納カセットは、
請求項1から5のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットであって、
前記開口部の寸法が異なるウェーハ固定板を有してなることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載されるウェーハ搬送装置は、
請求項1から6のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットと、ウェーハを保持して前記ウェーハ収納カセットに対して搬出入可能なウェーハ用ハンドと、前記ウェーハ用ハンドが進入可能な状態に前記ウェーハ収納カセットのウェーハ固定板の間隔を拡大するアームと、これらを駆動制御する駆動制御部とを有することを特徴とする。
本発明の請求項8に記載されるウェーハ搬送装置は、
請求項7記載のウェーハ搬送装置であって、
前記ウェーハ収納カセットの位置規制手段においてウェーハを収納した状態でウェーハ固定板の外側に位置する部分を分割可能とされてなる前記位置規制棒を有し、該位置規制棒が前記駆動制御部により駆動制御されることを特徴とする。
本発明の請求項9に記載されるウェーハ搬送方法は、
請求項1から6のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットにおいて、搬出入するウェーハの両側のウェーハ固定板のみ間隔を広げることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載されるウェーハ搬送方法は、
請求項9記載のウェーハの搬送方法において、搬出入するウェーハの両側のウェーハ固定板とさらにウェーハを保持してウェーハ収納カセットに対して搬出入可能なウェーハ用ハンドを挿入する隣接するウェーハ固定板との間隔のみを広げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウェーハ収納カセットによれば、位置規制手段によってウェーハ固定板の間隔を広げることで、反りまたは変形のあるウェーハをスムーズにカセットから搬出入できるとともに、位置規制手段によってウェーハ固定板の間隔を狭めることで、省スペース化を図ることができる。同時に、ウェーハ固定板によって、ウェーハを挟んでウェーハの両側から押圧することにより、反りまたは変形のあるウェーハを矯正して収納することが可能となる。しかも、搬出入する当該ウェーハ以外はウェーハ固定板による固定を解除することなく、カセットに当接しないように搬出入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係るウェーハ収納カセットの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明に係るウェーハ収納カセットの第1実施形態を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明に係るウェーハ収納カセットおよび搬送方法の第1実施形態を示す正面図である。
【図4】図4は、本発明に係るウェーハ収納カセットの第2実施形態を示す正面図である。
【図5】図5は、本発明に係るウェーハ収納カセットおよび搬送方法の第2実施形態を示す正面図である。
【図6】図6は、本発明に係るウェーハ収納カセットの第3実施形態を示す正面図である。
【図7】図7は、本発明に係るウェーハ収納装置、ウェーハ収納カセットおよび搬送方法の第4実施形態を示す模式正面図である。
【図8】図8は、本発明に係るウェーハ収納カセットおよび搬送方法の第4実施形態を示す模式平面図である。
【図9】図9は、本発明に係るウェーハ収納装置および搬送方法の第4実施形態を示す模式正面図である。
【図10】図10は、本発明に係るウェーハ収納装置および搬送方法の第4実施形態を示す模式正面図である。
【図11】図11は、本発明に係るウェーハ収納装置および搬送方法の第4実施形態を示す模式正面図である。
【図12】図12は、本発明に係るウェーハ収納装置および搬送方法の第4実施形態を示す模式正面図である。
【図13】図13は、本発明に係るウェーハ収納カセットの第5実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るウェーハ収納カセットの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるウェーハ収納カセットの一部を示す正面図であり、図2は、同側面図、図3は、本実施形態に係るウェーハ収納カセットおよび搬送方法を示す正面図である。図において、符号1は、ウェーハ収納カセットである。
【0012】
本実施形態におけるウェーハ収納カセット1は、薄厚化されたウェーハWを収納・搬送するものとされ、図1,図2に示すように、平行な2枚のウェーハ固定板11,11と、位置規制手段としてのリンク棒12,13と、このリンク棒12,13をウェーハ固定板11に接続する回転軸14と、ウェーハ固定板11,11に設けられた貫通孔11a、11bを垂直に貫く複数の位置規制棒15,16と、これらを収納して密閉可能なケースC1とからなる。なお、図においてケースC1は模式的に破線で示している。
【0013】
ウェーハWは、薄厚化され、例えば、φ150mm程度の6インチウェーハ、φ200mm程度の8インチウェーハのいずれか一方で、厚さ150〜500μm程度の状態とされる。
【0014】
ウェーハ固定板11は、図1,図2に示すように、いずれも、アルミニウム、SUS、硬質プラスチック、セラミック等からなる略矩形の平板とされ、収納するウェーハWをその両側から押圧した際に、周縁部W1以外の中心側に相当する部分に対応する円形の開口11cが中心位置に設けられている。開口11cの径寸法は、収納するウェーハWの口径に対して、周縁部を除いた寸法、具体的には、1〜5mm程度に設定されている。図2に示すように、この開口11cの近傍下側には、ウェーハWの周縁部W1に当接するような位置に貫通孔11b、11bが設けられ、位置規制棒16,16が貫通している。貫通孔11b、11bはいずれも、この貫通孔11bの輪郭が開口11cの下端位置よりも上側位置となるようにかつ、ウェーハWの周縁部W1の径方向寸法と等しい距離だけ開口11cから離間して設けられる。
【0015】
また、開口11cの中心より上側位置両側には、搬出入するウェーハWに当接しないように間隔を持って貫通孔11a、11aが設けられ、この貫通孔11aを位置規制棒15,15が貫通している。この貫通孔11a、11aおよび位置規制棒15,15どうしの位置間隔は、これら貫通孔11a、11aおよび位置規制棒15,15の間をウェーハWが通り抜けられるようウェーハWの径寸法よりも大きく設定される。位置規制棒15,16はいずれも、ウェーハ固定板11の法線方向と平行に設けられている。
【0016】
ウェーハ固定板11の四隅には、図1,図2に示すように、側辺(縦辺)方向に平行な長穴11dがウェーハ固定板11の厚さ方向に貫通して設けられ、この長穴11dが、ウェーハ固定板11の厚さ方向と直交する方向に開口しウェーハ固定板11の厚さ方向に開口する長穴11eと連通している。この長穴11eには、ウェーハ固定板11の上下辺と略平行な回転軸14が上下方向に移動可能に設けられている。長穴11eの長さ寸法は、リンク棒12とリンク棒13の交差する角度が変化した際にウェーハ固定板11の間隔を設定するようになっている。
【0017】
リンク棒12,13は、図1,図2に示すように、ウェーハ固定板11の側辺(縦辺)と平行となるようにウェーハ固定板11の両側にそれぞれ一組ずつ設けられ、それぞれの両端部に回転軸14が回動可能に貫通する回転穴12a、13aが設けられる。リンク棒12は、リンク棒13よりもウェーハ固定板11側に設けられ、それぞれの端部は、異なるウェーハ固定板11に接続されて、ウェーハ固定板11が位置規制棒15,16に沿って離間した際にはリンク棒12とリンク棒13とは交差した状態となるように位置されている。具体的には、図1に示すように、リンク棒12の上端部は図示左側のウェーハ固定板11に回転軸14を介して接続され、リンク棒12の下端部は図示右側のウェーハ固定板11に回転軸14を介して接続され、リンク棒13の上端部は図示右側のウェーハ固定板11に回転軸14を介して接続され、リンク棒13の下端部は図示左側のウェーハ固定板11に回転軸14を介して接続されている。
【0018】
回転軸14は、図1,図2に示すように、ウェーハ固定板11の厚さ方向に設けられた長穴11eの寸法と略等しい径寸法の軸部分14aと、この軸部分14aのウェーハ固定板11側(長穴11d側)に拡径したストッパ14bと、ウェーハ固定板11の外側に位置するリンク棒12,13の回転穴12a、13aを貫通した外側に位置して拡径するストッパ14cとからなる。ストッパ14b、14cの径寸法はいずれもウェーハ固定板11の厚さ寸法を超えないように設定されてなる。ストッパ14bとストッパ14cとの軸部分14aの軸方向における位置は、リンク棒12,13がウェーハ固定板11に対して回動可能となるように、長穴11dからリンク棒13の外側位置までの距離とほぼ等しく設定されてなる。回転軸14は、ウェーハ固定板11の上下辺と平行な状態を維持したまま長穴11eの長手方向(図1の紙面上下方向)に移動可能とされている。
【0019】
位置規制棒16は、ウェーハWの周縁部W1が当接した際に、開口11cに対する収納位置を設定可能なように位置し、開口11cからウェーハWの周縁部W1に相当する距離だけ離間して位置する。
リンク棒12,13,回転軸14,位置規制棒15,16は、位置規制手段を構成している。
【0020】
本実施形態のウェーハ収納カセット1は、図1〜図3に示すように、長穴11eの内部を回転軸14が上下方向に移動することで、リンク棒12とリンク棒13の交差する角度が変化して、ウェーハ固定板11が位置規制棒15,16に沿って移動する。これにより、ウェーハ固定板11どうしが略平行状態を維持したままウェーハ固定板11の間隔を変化させることができる。
【0021】
以下、本実施形態におけるウェーハ収納カセットおよび搬送方法について説明する。
【0022】
本実施形態におけるウェーハ収納カセット1に、ウェーハWを収納するには、まず、図3(a)に示すように、ウェーハ固定板11,11どうしの距離を最大に離間させる。この際、リンク棒12およびリンク棒13の上側の回転軸14は長穴11eの下端に位置し、また、リンク棒12およびリンク棒13の下側の回転軸14は長穴11eの上端に位置し、リンク棒12とリンク棒13との交差する角度が最も平行から離れた状態となっている。同時に、ウェーハ固定板11,11は、いずれも、位置規制棒15,16の両端に位置する状態とされる。
【0023】
次いで、図3(a)に示すように、反りを有するウェーハWをハンドリング部Hによって支持し、ウェーハ固定板11と略平行状態となるように準備する。
【0024】
ハンドリング部Hは、例えば、真空ピンセットとされ、把持部分である本体と、その本体の先端部にウェーハ等の被処理体を吸着する突起状の可撓性吸着部、あるいは、ベルヌーイチャックなどとされる吸着部を有するものとされ、反りまたは変形を有するウェーハを保持可能なようになっている。このハンドリング部Hは、作業員が保持することもできるし、あるいは、自動搬送ロボットなどによって駆動させることも可能である。
【0025】
次いで、図3(b)に示すように、ハンドリング部Hを下降させることで、反りを有するウェーハWをウェーハ固定板11,11の間に挿入し、図3(b)、図2に示すように、ウェーハWの周縁部W1を位置規制棒16,16に当接させた状態で、ハンドリング部HによるウェーハWの保持を解除して、ハンドリング部Hを上昇、退避させる。これにより、ウェーハWの周縁部W1が位置規制棒16,16に当接することで、収納位置が設定され、開口11cに対応する位置に設定される。
【0026】
次いで、図3(c)に示すように、ウェーハ固定板11,11どうしを近づけ、ウェーハ固定板11,11どうしの距離が最終的にウェーハWの厚さ寸法となるように移動させる。この際、リンク棒12およびリンク棒13の上側の回転軸14は長穴11eの上端付近に位置し、また、リンク棒12およびリンク棒13の下側の回転軸14は長穴11eの下端付近に位置し、リンク棒12とリンク棒13との交差する角度が最も平行に近い状態となっている。同時に、ウェーハ固定板11,11が接近したことで、位置規制棒15,16がウェーハ固定板11,11から突出する状態とされる。
【0027】
この状態で、ウェーハWは周縁部W1のみがウェーハ固定板11に当接し、ウェーハ固定板11はウェーハWを厚さ方向両側から押圧することにより、ウェーハWは反りまたは変形が矯正された状態となる。
【0028】
本実施形態のウェーハ収納カセットおよび搬送方法によれば、ウェーハ固定板11を可動とし、従来のスリット幅に対応するウェーハ固定板11の間の寸法を変化させることにより、ウェーハWを挿入するとき、または、取り出すときに、スリット幅を広げ、収納時には縮めることが可能となる。これにより、ウェーハWを挿入するとき、または、取り出すときには、スリット幅に対応するウェーハ固定板11の間の寸法を広げて、ウェーハWとウェーハ固定板11との距離を保ったまま搬出入することができ、ウェーハWとカセット1とが衝突する危険を低減することができる。同時に、ウェーハ収納時には、ウェーハ固定板11の間の寸法を狭めてカセット1を縮めることにより必要な空間を小さくして、省スペース化を図る、または同一空間における収納枚数を増大させることができる。また、ウェーハ固定板11を動かして、搬送アームや真空ピンセットとされるハンドリング部Hを挿入する空間領域をつくることができる。スリット間隔が広いほど、操作はしやすいので、ハンドリング部Hの大きさ、あるいは、ウェーハWの反りまたは変形に対応して、必要な空間を確保した状態でウェーハWを搬出入することが可能となる。これにより、ウェーハが破損する可能性を低減できる。なお、図において、ウェーハ固定板11を紙面上下方向に配した状態としたが、紙面左右方向に配して、左右(横)方向からウェーハを搬出入させる状態としてもよい。
【0029】
以下、本発明に係るウェーハ収納カセットの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図4は、本実施形態におけるウェーハ収納カセットを示す正面図であり、図5は、本実施形態に係るウェーハ収納カセットおよび搬送方法を示す正面図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、複数ウェーハの収納に対応した部分であり、対応する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。
図において、符号10は、ウェーハ収納カセットである。
【0030】
本実施形態のウェーハ収納カセット10は、複数枚のウェーハWを収納可能とするもので、これに対応してウェーハ固定板11が多数設けられている。具体的には、図4、図5に示す例では、7枚のウェーハを収納可能となっている。
【0031】
これに伴い、図の左右両端に位置するウェーハ固定板11以外の内側に位置するウェーハ固定板11に設けられた回転軸14には、いずれも、リンク棒12,とリンク棒13の両方が接続されることになる。つまり、上側の長穴11e側に位置する回転軸14には、軸線方向でウェーハ固定板11に近い位置にリンク棒12の上端が接続され、このリンク棒12の下端は右隣のウェーハ固定板11の下側に位置する長穴11eに接続された回転軸14に接続されている。また、上側の長穴11e側に位置する回転軸14には、軸線方向でウェーハ固定板11から遠い外側位置にリンク棒13の上端が接続され、このリンク棒13の下端は左隣のウェーハ固定板11の下側に位置する長穴11eに接続された回転軸14に接続されている。
【0032】
位置規制棒15,16は、いずれも、最外位置のウェーハ固定板11に固定するためのストッパ15a、16aと、図で左右の移動範囲を規制するように拡径されたストッパ15b、16bがそれぞれの端部に設けられる。
【0033】
本実施形態のウェーハ収納カセット10においては、図4、図5に示すように、回転軸14を長穴11e内部でその長手方向(紙面上下方向)に移動させることでリンク棒12,13の交差角度を変化させ、ウェーハ固定板11どうしの位置状態を平行に保ったままで、全てのウェーハ固定板11の間隔を変化させることができる。
【0034】
本実施形態のウェーハ収納カセット10および搬送方法においては、図4に示すように、ウェーハ固定板11の間隔を大きくしてウェーハを挿入した後、図5に示すように、ウェーハ固定板11を位置規制棒15,16に沿って左側に集めるように移動させてそれぞれのウェーハ固定板11,11どうしの間に位置するウェーハWを押圧して反りまたは変形を矯正することができる。
さらに、図4に示すように、ウェーハ固定板11の間隔を大きくしてウェーハWを搬出する。
【0035】
このとき、ウェーハ固定板11の間隔を大きくして、図で左右方向となるウェーハ収納カセット10の厚み方向寸法をt1として、ウェーハWの搬出入を容易にするとともに、ウェーハ固定板11の間隔を小さくして、ウェーハ収納カセット10の厚み方向寸法をt2として、収納時におけるウェーハ収納カセット10の省スペース化を図ることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、さらなる省スペース化を図ることが可能となる。なお、第1実施形態と同様、図において、ウェーハ固定板11を紙面上下方向に配した状態としたが、紙面左右方向に配して、左右(横)方向からウェーハを搬出入させる状態としてもよい。
【0036】
以下、本発明に係るウェーハ収納カセットの第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態におけるウェーハ収納カセットの一部を示す正面図である。本実施形態において、上述した第2実施形態と異なるのは、位置規制棒に対応した部分であり、対応する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。図において、符号10は、ウェーハ収納カセットである。
【0037】
本実施形態のウェーハ収納カセット10においては、図6に示すように、位置規制棒15,16がいずれも長さ方位(軸方向)の途中位置において分割可能とされている。
【0038】
本実施形態の位置規制棒15,16は、ウェーハWを収納した状態で図の左右方向厚み方向寸法がt2となった際に、その右側に多少突出した位置で分割され、左側の最外位置となるウェーハ固定板11に固定された基部側位置規制棒15c,16cと、図で右側となる分離側位置規制棒15d,16dとからなるものとされる。分離側位置規制棒15d,16dの基部側位置規制棒15c,16cに対向する先端には凸部15e,16eが設けられ、基部側位置規制棒15c,16cの対応する位置には、凹部15f、16fが設けられ、これらが嵌合可能とされている。図では凸部15e,16eの表面に雄ネジが、凹部15f、16fの表面に雌ネジが設けられた例を図示するが、この構成に限るものではなく、鍵穴状に組み合わせて嵌合可能とするもの、あるいは、円柱状の凸部15e,16eとこれに対応する凹部15f、16fとすることなどができる。
【0039】
本実施形態のウェーハ収納カセット10においては、第2実施形態と同様に、ウェーハ固定板11の間隔を大きくして、ウェーハ収納カセット10の厚み方向寸法をt1として、ウェーハWの搬出入をおこなった後、図6(a)に示すように、ウェーハ収納カセット10の厚み方向寸法をt2として、収納状態とする。その後、図6(b)に示すように、位置規制棒15,16を分離して、分離側位置規制棒15d,16dを除去することで、厚み方向寸法をt2に対応する小さなケースC2内部にカセット10を収納することができる。これにより、第2実施形態と同様の効果を奏するとともに、ケースC2についてもさらなる省スペース化を図ることが可能となる。なお、図においてケースC2は模式的に破線で示している。
【0040】
本実施形態における位置規制棒15,16は、最外位置のウェーハ固定板11の外側に位置する部分を分割可能としたが、収納されたウェーハWと当接する部分が基部側位置規制棒15c,16cとなっていれば、分割位置はこれに限るものではなく、より省スペースを図れる位置とすることなど、任意に設定することができる。
また、位置規制棒15,16の分割本数は、それぞれ2本としたが、ウェーハWの位置規制をおこなうことができれば、位置規制棒16は2本以上でもよく、また、ウェーハ固定板11の平行状態を保ったまま移動可能とでき、かつ、ウェーハWの出し入れに支障がなければ位置規制棒15も何本設けてもかまわない。
【0041】
以下、本発明に係るウェーハ搬送装置および搬送方法の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態におけるウェーハ収納カセットの一部を示す正面図であり、図8は、同平面図であり、図9〜12は搬送方法における工程を示す模式正面図である。本実施形態において、上述した第3実施形態のウェーハ収納カセット10に関連する部分に対応する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。図において、符号20はウェーハ搬送装置である。
【0042】
本実施形態のウェーハ搬送装置20は、図7、図8に示すように、ウェーハ収納カセット10および、ウェーハWをカセット10に対して搬出入する搬送アーム27と、ウェーハ固定板11を上下に移動するためのスリット開閉アーム28A,28Bと、これらを駆動制御する駆動制御部29を有する。
【0043】
ウェーハ収納カセット10は、図7に示すように、ウェーハ固定板11がいずれも水平方向となるように設けられ、位置規制棒15,16が垂直方向にくるようになっている。また、第3実施形態における位置規制棒の分割された分離側位置規制棒15d,16dに対応して、分離側位置規制棒25d,26dが設けられ、この分離側位置規制棒25d,26dが駆動制御部29によって駆動制御されるようになっている。
【0044】
本実施形態のウェーハ収納カセット10は、複数枚のウェーハWを収納可能とするもので、これに対応してウェーハ固定板11が多数設けられている。具体的には、図7に示す例では、12枚のウェーハを収納可能となっている。
【0045】
ウェーハ収納カセット10は、図8に示すように、複数のウェーハ固定板11の開口11cの形状がリンク棒12,13のないウェーハWを出し入れする辺にむけて開いた切欠11c1を有するものとされる。この切欠は、搬送アーム27の移動に支障がない状態であれば、なるべく小さい幅寸法とされることが好ましい。
【0046】
複数のウェーハ固定板11には、切欠11c1を有する辺の一部分がリンク棒12,13の延在する方向に突出して、開閉段選択凸部(耳部)11Aとして設けられている。この開閉段選択凸部(耳部)11Aは、複数のウェーハ固定板11で異なる位置に設けられる。図示する例では、最上部に位置するウェーハ固定板11において、開口11cから切欠11c1側に向かって最右側つまり図8の最上側に位置するように耳部11A1が設けられる。次いで、上から2番目に位置するウェーハ固定板11においては、平面視して、耳部11A1に隣接し、かつ平面視して重ならない位置となる図8で耳部11A1のすぐ下側位置に耳部11A2が設けられる。上から3番目に位置するウェーハ固定板11においては、平面視して、耳部11A2に隣接し、かつ平面視して重ならない位置となる図8で耳部11A2のすぐ下側位置に耳部11A3が設けられる。上から4番目に位置するウェーハ固定板11においては、平面視して、耳部11A3に隣接し、かつ平面視して重ならない位置となる図8で耳部11A3のすぐ下側位置に耳部11A4が設けられる。上から5番目に位置するウェーハ固定板11においては、平面視して、耳部11A4に隣接し、かつ平面視して重ならない位置となる図8で耳部11A4のすぐ下側位置に耳部11A5が設けられる。これより下側位置のウェーハ固定板11に対応して、それぞれ耳部11Aが所定の位置となるように設けられる。耳部11Aは、切欠11c1を避けて搬送アーム27の動きを妨げない位置、および、ウェーハ固定板11の上下動を妨げない位置であればウェーハ固定板11の周囲のどの位置でも設けることができる。
開閉アーム28A,28Bおよび開閉段選択凸部(耳部)11Aは、複数枚配置されたウェーハ固定板のうち、特定位置の間隔のみ広げる位置特定手段を構成する。
【0047】
搬送アーム27は、第1実施形態におけるハンドリング部Hに対応する構成とすることができ、ウェーハを吸着・保持する吸着部27aが先端部に設けられる。
開閉アーム28A,28Bは、後述するように、複数のウェーハ固定板11から選択された特定の一枚を、位置規制棒15,16に沿って平行状態に移動させることができればよく、どのような形状でもかまわない。また、図示する開閉アーム28A,28Bは図で左右に進退可能な構成としたが、ウェーハ固定板11の厚み方向に進退してウェーハ固定板11を移動するよう構成してもかまわない。
駆動制御部29は、搬送アーム27、開閉アーム28A,28B、分離側位置規制棒25d,26dを駆動可能とする図示しない駆動部と、これを制御する制御部とからなる。
【0048】
本実施形態のウェーハ搬送装置20におけるウェーハ搬送方法においては、図7に示すように、密閉されたケースC2に収納されたウェーハ収納カセット10を所定位置に載置または、固定し、ケースC2を開放する。
次いで、駆動制御部29に制御された分離側位置規制棒25d,26dが下降して、基部側位置規制棒15c,16cと接続状態とされる。
【0049】
次いで、駆動制御部29に制御されたスリット開閉アーム28Aを駆動して、所定のウェーハ固定板11を位置規制棒15,16に沿って上昇させ、搬送アーム27がウェーハWの操作をおこなう余地を作るようにウェーハ固定板11の間隔を保持設定する。例えば、図9に示すように、上から5番目のウェーハ固定板11に載置されたウェーハWを取り出す場合には、図8に示すように、開閉アーム28Aの進退方向となる横方向位置(図では上下位置)を耳部11A5に対応した位置に設定するとともに、上から5番目のウェーハ固定板11の直下となる高さ位置に設定した後、この開閉アーム28Aをウェーハ収納カセット11に向けて進出させ、耳部11A5の下側に当接して、これを上方に駆動して上から5番目のウェーハ固定板11と上から6番目のウェーハ固定板11の間の間隔を拡大する。これは、搬出入するウェーハWは反りまたは変形した状態では搬送アームで吸着・保持できない場合があるため、隣接する両側のウェーハ固定板11で押圧して、その反りまたは変形を矯正した状態で吸着・保持するために当該ウェーハWの載置された1つ下側のウェーハ固定板11との間隔を広げたものである。なお、ウェーハ固定板11による押圧を解除した状態でウェーハWの反りが逆向きになっているなど、吸着・保持する際に好ましい場合には、隣接する上側のウェーハ固定板11との間隔を拡大することも可能である。
【0050】
次いで、図10に示すように、駆動制御部29によって、上から5番目のウェーハ固定板11と6番目のウェーハ固定板11との間に搬送アーム27を挿入して、ウェーハWの中心付近に吸着部27aを当接させてウェーハWを保持する。
搬送アーム27でウェーハWを保持した状態で、図11に示すように、駆動制御部29に制御されたスリット開閉アーム28Bを駆動して、開閉アーム28Bの駆動位置を耳部11A4に対応した位置に設定して、上から4番目のウェーハ固定板11を位置規制棒15,16に沿って上昇させ、上から5番目のウェーハ固定板11に載置されたウェーハを収納状態から開放する。すると、ウェーハは隣接する両側のウェーハ固定板11から押圧されなくなる。
次いで、駆動制御部29によって、搬送アーム27を駆動し、図12に示すように、ウェーハ収納カセット10からウェーハWを外部に搬出する。
【0051】
同様にして、必要な場所に収納されたウェーハWを搬出する、あるいは、必要な場所にウェーハWを挿入して、順次、隣接する上下のウェーハ固定板11によって押圧することで反りまたは変形のないように収納する。
これらの搬出入がすべて終了した後、図7に示す初期状態となるよう、駆動制御部29によって、搬送アーム27および開閉アーム28A,28Bを退避させ、分離側位置規制棒25d,26dを分離して、上方に退避させる。その後、ウェーハ収納カセット10をケースC2に収納して密閉する。
【0052】
本実施形態のウェーハ搬送装置20およびウェーハ搬送方法によれば、選択された耳部11Aを開閉アーム28Aで駆動することで、特定の一枚のウェーハが載置収納されたウェーハ固定板11を上方に移動して一枚下側のウェーハの収納されたウェーハ固定板11との間隔を広げることで、搬送アーム27が進入する空間を確保することができる。また、当該ウェーハはウェーハ固定板11で押圧され変形が矯正された状態で搬送アームが吸着可能なので、確実に吸着支持をおこなうことができ、支持不十分でウェーハが落下することを防止できる。これにより、収納された複数のウェーハのうち、任意の位置に収納された一枚を選択して、これを取り出すことができる。同様に、収納する複数のウェーハのうち、任意の位置に収納する一枚を選択して、これを挿入することができる。
本実施形態のウェーハ搬送装置20およびウェーハ搬送方法によれば、駆動制御部29により自動制御で、ウェーハWを挿入するとき、または、取り出すときに、いわゆるスリット幅を変化させるようにウェーハ固定板11を上下動させて幅寸法を広げることで、搬送アーム27へのウェーハ吸着を容易にすることができる。また、駆動制御部29により駆動された開閉アーム28A,28Bおよび耳部11Aにより、複数収納したウェーハのうち、搬送するウェーハWに対応してウェーハ固定板11を選択的に開閉することが可能となり、駆動制御部29により自動制御で、ウェーハWを搬送することが容易となる。
また、搬送する際に、収納状態としたウェーハを隣接する両側のウェーハ固定板11で押圧固定することにより、反りまたは変形の有無にかかわらず、収納体積の省スペース化を図るかまたは収納枚数を増やすとともにウェーハを押圧して搬送可能なことにより、搬送時におけるウェーハの破損等を防止することが可能となる。
【0053】
搬送アーム27でウェーハWの面に吸着する際に、搬送アーム27を挿入するウェーハ固定板11とウェーハ固定板11の間の領域を充分確保するため、駆動制御部29によって搬送アーム27を自動で駆動した場合でも、充分な余裕をもって操作可能なようにすることができ、監視用のセンサなどを設ける必要がなく、簡単な構造で、コスト削減をおこなうことができる。しかも、搬送先の搬送アーム27の規格あるいはサイズが異なるような場合でも、これに対応して、ウェーハWの搬送をおこなうことが可能で、いちいち、別のケースに移してからウェーハをラインに流すなどの処理が不要である。
スリット間隔が広いほど、操作はしやすい。
【0054】
薄厚化したウェーハWは反りがあることが多いが、反りを有するウェーハWは、ウェーハ表面(主面)が歪んでいるため搬送アーム27で吸着しづらく、搬送アームなどを押し付けたときにウェーハWが逃げてしまうおそれがあったが、ウェーハ固定板11で押圧した収納状態としてウェーハWを固定したままで吸着することで、吸着操作を容易におこなうことができる。
【0055】
位置規制棒の分割された分離側位置規制棒25d,26dをケースC2に収納する必要がないため、ケースC2を小型にすることができるとともに、分離側位置規制棒25d,26d、開閉アーム28A,28B、搬送アーム27をいずれも清浄度の高い状態として、ケースC2の密閉を破るようにできるため、搬送によるウェーハWの清浄低下を防止あるいは低減することが容易になる。
【0056】
また、収納するウェーハWとしては、φ300mmで10〜300μmの厚さ、あるいは、φ450mmで250〜500μm程度あるいは500〜750μm程度の厚さで、薄厚化していない通常状態でも反りが発生するものに対応することも可能である。
【0057】
本実施形態のような自動装置でのウェーハ搬送時には、任意の1枚を取り出す際、ウェーハの入っているスロット間隔は狭めておき一つ下のスロット間隔を広げることで、搬送アームの進入スペースを空ける。次いで、搬送アームが進入し吸着が完了するまでウェーハの入っているスロットは狭めてウェーハ周縁部を押圧する状態を保持する。吸着が完了したところで、ウェーハの入っているスロットを広げ、ウェーハを搬出するものである。
【0058】
以下、本発明に係るウェーハ収納カセットの第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図13は、本実施形態におけるウェーハ収納カセットを示す模式平面図である。本実施形態において、上述した第1〜第4実施形態のウェーハ収納カセットと異なるのは、異なる口径のウェーハを収納可能とした部分であり、対応する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。
図において、符号11はウェーハ固定板である。
【0059】
本実施形態のウェーハ収納カセットにおいては、ウェーハ固定板11における開口11cが異なる寸法に設定されたものを有する。
具体的には、図7に示すウェーハ収納カセット10において上から7番目までのウェーハ固定板11に載置するウェーハがφ200mm程度の8インチウェーハを収納するものとされ、8番目のウェーハ固定板11にはウェーハを収納せず、9番目から12番目までのウェーハ固定板11に載置するウェーハがφ150mm程度の6インチウェーハとされる。
【0060】
φ200mm程度の8インチウェーハを収納する上から7番目までのウェーハ固定板11には、図2,図8、図13に示すようにφ190〜198mm程度、ウェーハ周縁部W1のみが当接するような寸法に設定された開口11cが設けられる。
φ150mm程度の6インチウェーハを収納する9番目から12番目までのウェーハ固定板11には、図13に示すようにφ140〜148mm程度、ウェーハ周縁部W1のみが当接するような寸法に設定された開口11gが設けられる。
8番目のウェーハ固定板11においては、開口寸法は特に特定されず、例えば開口の無いものでもかまわない。
【0061】
これらのウェーハ固定板11においては、対応するウェーハ口径は異なるものの、開口11cおよび開口11gと貫通穴11bとの距離は変わらないため、ウェーハを収納した場合には、口径が異なるウェーハWがいずれも、位置規制棒16,16に当接することになる。
これにより、従来はウェーハの周縁部に苦労して嵌め込んだ一枚ごとのアタッチメントを用いるなど、極めて困難を来していた、異なる口径のウェーハを同時に搬送することが容易に可能となる。
【0062】
なお、切欠11c1は搬送アーム27あるいはハンドリング部Hによる作業性によって、その有無を設定することが可能である。
また、上記の各実施形態におけるウェーハ収納カセットは、反りまたは変形の無いウェーハに適用させてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,10…ウェーハ収納カセット、11…ウェーハ固定板、11a,11b…貫通孔(位置規制手段)、11c…開口、11d、11e…長穴、12,13…リンク棒(位置規制手段)、14…回転軸(位置規制手段)、15,16…位置規制棒(位置規制手段)、20…ウェーハ搬送装置、W…ウェーハ、W1…周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを収納するウェーハ収納カセットであって、
ウェーハの周縁部を厚さ方向両側から押圧可能なウェーハ固定板と、このウェーハ固定板をウェーハ厚さとなる方向に略平行状態に移動可能とする位置規制手段とからなり、
前記ウェーハ固定板には、収納するウェーハ口径に対応してウェーハ周縁部以外に該ウェーハ固定板が当接しないように開口部が設けられ、
前記位置規制手段は、複数の前記ウェーハ固定板に設けた貫通孔を貫く位置規制棒と、隣接するウェーハ固定板にそれぞれ両端が回動可能に接続されたリンク棒とを有し、
ウェーハの搬出入時には当該ウェーハの両側のウェーハ固定板の間隔を広げ、ウェーハの収納時にはウェーハ固定板でウェーハを押圧してウェーハの反りまたは変形を矯正してなることを特徴とするウェーハ収納カセット。
【請求項2】
請求項1記載のウェーハ収納カセットであって、
前記位置規制手段の前記位置規制棒が複数平行に設けられ、そのうち少なくとも2本がウェーハの周縁部に当接してウェーハ主面と平行な方向におけるウェーハの収納位置を設定することを特徴とするウェーハ収納カセット。
【請求項3】
請求項1または2記載のウェーハ収納カセットであって、
前記位置規制手段の前記位置規制棒がウェーハを収納した状態でウェーハ固定板の外側に位置する部分を分割可能とされてなることを特徴とするウェーハ収納カセット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットであって、
前記位置規制手段の前記リンク棒が、ウェーハ固定板の表面と平行で軸線と直交する方向に移動可能な回転軸によってウェーハ固定板に接続され、該回転軸がいずれも平行状態としてウェーハ固定板の四隅にもうけられており、ウェーハ固定板の厚さ方向への移動量が等しくなるように規制されてなることを特徴とするウェーハ収納カセット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットであって、
前記複数枚配置されたウェーハ固定板のうち、特定位置の間隔のみ広げられるように位置特定手段を有してなることを特徴とするウェーハ収納カセット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットであって、
前記開口部の寸法が異なるウェーハ固定板を有してなることを特徴とするウェーハ収納カセット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットと、ウェーハを保持して前記ウェーハ収納カセットに対して搬出入可能なウェーハ用ハンドと、前記ウェーハ用ハンドが進入可能な状態に前記ウェーハ収納カセットのウェーハ固定板の間隔を拡大するアームと、これらを駆動制御する駆動制御部とを有することを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項8】
請求項7記載のウェーハ搬送装置であって、
前記ウェーハ収納カセットの位置規制手段においてウェーハを収納した状態でウェーハ固定板の外側に位置する部分を分割可能とされてなる前記位置規制棒を有し、該位置規制棒が前記駆動制御部により駆動制御されることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項記載のウェーハ収納カセットにおいて、搬出入するウェーハの両側のウェーハ固定板のみ間隔を広げることを特徴とするウェーハの搬送方法。
【請求項10】
請求項9記載のウェーハの搬送方法において、搬出入するウェーハの両側のウェーハ固定板とさらにウェーハを保持してウェーハ収納カセットに対して搬出入可能なウェーハ用ハンドを挿入する隣接するウェーハ固定板との間隔のみを広げることを特徴とするウェーハの搬送方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−216641(P2012−216641A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80147(P2011−80147)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】