説明

ウエット処理方法及びウエット処理装置

【課題】シリコン等の基板上に回路等のパターンを生成する場合において、構成の簡略化及び処理コストの低減化を実現し、シリコン基板から剥離したフォトレジスト及び金属膜などの汚れがシリコン基板上に再付着するのを防止し得るウエット処理方法及びウエット処理装置を提供する。
【解決手段】シリコン基板Sからフォトレジスト及び金属膜を除去する不燃性液体Lを収容可能なスピンステージ2にシリコン基板Sをセットすると共に、スピンステージ2に不燃性液体Lを入れてシリコン基板Sを不燃性液体L中に没入させた後、ホーン型超音波発生器3の超音波ホーン3Cを不燃性液体L中においてシリコン基板Sの表面に適宜間隔をもって対峙させて、シリコン基板Sの表面に向けて超音波を照射するのに続いて、スピンステージ2をその中心回りに回転させて、シリコン基板Sから除去されたフォトレジスト及び金属膜を不燃性液体Lとともにスピンステージ2の外側に排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状のワーク、例えば、シリコン基板上に回路等のパターンを生成するに際して、シリコン基板に付着した被覆物であるフォトレジスト及びこのフォトレジスト上に成膜される膜を有機溶剤に浸漬させるなどのウエット環境においてシリコン基板から除去するのに用いられるウエット処理方法及びウエット処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したウエット処理方法としては、例えば、平板状のワークであるシリコン基板上に回路等のパターンを生成する際に用いられるリフトオフ処理方法がある。
このリフトオフ処理方法において、アルミ等の金属膜でパターンを生成するのが一般的であるが、この場合には、まず、シリコン基板上にリソグラフィによりフォトレジストパターンを作成するのに続いて、このレジストパターン上に蒸着法やスパッタリング法といった成膜手法によりアルミ等の金属膜を堆積させた後、ウエット環境においてフォトレジスト及びこのフォトレジスト上の金属膜を同時に除去することにより、アルミ等の金属膜による所望のパターンを得るようにしている。
【0003】
上記フォトレジスト及びこのフォトレジスト上の金属膜をシリコン基板から剥がす手段としては、高圧ジェットや振動やスチームなどの物理的除去手段が採用されているほか、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やアセトンやイソプロピルアルコール(IPA)といった可燃性有機溶剤を用いた化学的除去手段が採用されており、最近では、これらの物理的除去手段及び化学的除去手段を組み合わせたリフトオフ処理(ウエット処理)が一般的に行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2007−221096公報
【特許文献2】特開2006−114738公報
【特許文献3】特開2005−183859公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のウエット処理方法では、フォトレジスト及びこのフォトレジスト上の金属膜をシリコン基板から除去する場合に、フォトレジスト上の金属膜をフォトレジストと一緒にシリコン基板上から除去する都合上、シリコン基板から除去した多量のそしてサイズの大きいフォトレジスト及び金属膜が汚れとして処理装置内に排出されることとなる。
【0005】
この汚れがシリコン基板上に再び付着しないようにするためには、処理槽内の可燃性有機溶剤の流れ方向や流量の制御等が必要となるうえ、シリコン基板の洗浄液自身の清浄化を行う大容量のフィルタやバッファタンクが必要となり、可燃性有機溶剤を使用するが故の自動消火装置やガス濃度計といった数多くの保全管理機器を必要とすることとも相俟って、ウエット処理システムを複雑かつ大型化せざるを得なくなり、これに伴って、排液や排ガスの処理費用も不可欠なものとなって、ウエット処理コストの上昇をも招いてしまうという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、例えば、平板状のワークであるシリコン基板上に回路等のパターンを生成する場合において、処理システムの簡略且つ小型化を実現すると共に処理コストの低減化をも実現したうえで、シリコン基板から除去した多量のフォトレジスト及び金属膜などの汚れがシリコン基板上に再付着するのを防止することが可能なウエット処理方法及びウエット処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、平板状のワークに付着した被覆物をウエット環境で該ワークから除去するのに用いるウエット処理方法であって、前記ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部に該ワークをセットすると共に、このワーク載置部に対して前記不燃性液体を供給して前記ワークを不燃性液体で浸漬させた後、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させて、前記ワークから除去され被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させる構成としたことを特徴としており、このウエット処理方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
本発明の請求項1に係るウエット処理方法は、シリコン等の基板上に金属膜等のパターンを生成する際のリフトオフ処理に適用することができるほか、プリント基板や、FPD(Flat Panel Display)基板や、SAW(Surface Acoustic Ware)デバイスや、MEMS(Micro−Element−Meckanical−Systems)や、ハードディスク等の製造時において各種基板上に様々な膜のパターンを生成する際のリフトオフ処理にも適用することができ、基板のエッチング処理にも適用することが可能である。
【0009】
とくに、上記したシリコン等の基板上に金属膜等のパターンを生成する際のリフトオフ処理に好適であるほか、金属部品等の切削・研磨加工後における洗浄やバリ取り洗浄にも広く適用することができ、このような場合には、ホーン型超音波発生器を併用することが望ましい。
そこで、本発明の請求項2に係るウエット処理方法では、平板状のワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能なワーク載置部に該ワークをセットすると共に、このワーク載置部に対して前記不燃性液体を供給して前記ワークを不燃性液体で浸漬させた後、ホーン型超音波発生器の超音波照射部を前記不燃性液体の適宜厚さ(望ましくは0.1〜100mm)の液体層を介して前記ワークの表面に対峙させて、該ワークの表面に向けて超音波を照射するのに続いて、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させて、前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させる構成としたことを特徴としており、このウエット処理方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
この際、本発明の請求項3に係るウエット処理方法のように、ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させるのに続いて、前記ワーク載置部をさらに回転させて前記ワークを乾燥させる構成とすることが望ましい。
一方、請求項1に係るウエット処理方法を行うのに適したウエット処理装置として、本発明の請求項4に係るウエット処理装置では、平板状のワークをセットした状態で該ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部と、前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させるべく、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させる駆動手段を備えている構成としている。
【0011】
また、請求項2に係るウエット処理方法を行うのに適したウエット処理装置として、本発明の請求項5に係るウエット処理装置では、平板状のワークをセットした状態で該ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部と、前記不燃性液体の適宜厚さ(望ましくは0.1〜100mm)の液体層を介して超音波照射部を前記ワークの表面に対峙させた状態で配置されて、該ワークの表面に向けて超音波を照射するホーン型超音波発生器と、前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させるべく、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させる駆動手段を備えている構成としている。
【0012】
ここで、ワーク載置部にセットした平板状のワークを不燃性液体で浸漬させたり、不燃性液体の液体層を介してホーン型超音波発生器の超音波照射部をワークの表面に対峙させたりするには、皿体をワーク載置部としてこの皿体に供給して収容した不燃性液体中にワークを没入させる手法を採用することができるほか、ホーン型超音波発生器の超音波照射部として不燃性液体を噴霧可能な超音波照射部を採用して、この超音波照射部から不燃性液体を噴霧させつつワークの表面に対峙させて局所的に液体層を形成する手法を採用することができる。
【0013】
この際、本発明の請求項6に係るウエット処理装置のように、前記ホーン型超音波発生器の超音波照射部は、前記ワークの表面に対して接近離間可能で且つ該ワークの表面に沿って適宜間隔(望ましくは0.1〜100mmの間隔)を維持しつつ移動可能としてある構成とすることが望ましい。
さらに、本発明の請求項7に係るウエット処理装置のように、前記ワーク載置部にセットしたワークに対して前記不燃性液体を供給する液体供給手段を備えている構成としたり、本発明の請求項8に係るウエット処理装置のように、前記ワーク載置部にセットしたワーク表面に対して浄化した気体を供給する気体供給手段を備えている構成としたり、本発明の請求項9に係るウエット処理装置のように、前記ワーク載置部とともに回転することで旋回気流を発生して、該ワーク載置部の外側に排出したワークから剥がれた被覆物を所定位置に強制的に移動させる旋回気流発生手段、例えば、プロペラやシロッコなどのファンを備えている構成としたりすることが望ましい。
【0014】
本発明に係るウエット処理方法及びウエット処理装置において、前記不燃性液体としては、純水や水道水を用いることができるほか、水素水,オゾン水などの機能水を使用したり、中性,アルカリ性及び酸性のうちのいずれかの界面活性剤といった不燃性の液体を使用したり、界面活性剤等の複数種の不燃性の液体と水とを交互に使用したりすることができ、このような不燃性液体をワーク載置部に供給してワークを浸漬させる場合には、ワークの表面上に不燃性液体の液層が100mmを越えない程度形成されるように成すことが望ましい。
【0015】
また、本発明に係るウエット処理方法及びウエット処理装置において、ワーク載置部をその中心回りに回転させて、ワークから離れた被覆物を不燃性液体とともにワーク載置部の外側に排出させる場合、及び、ワークに対する仕上げ洗浄工程やリンス処理工程や乾燥工程を行う場合には、皿体を3000rpm以下の高速で回転させることが望ましい。
さらに、本発明に係るウエット処理方法及びウエット処理装置において、ホーン型超音波発生器の超音波照射部からワークの表面に向けて超音波を照射する場合には、必ずしもワーク載置部を停止させている必要はなく、ワークからの被覆物の除去を助長するべく、ワーク載置部をその中心回りに200rpm以下の低速で回転させてもよい。
【0016】
ここで、ホーン型超音波発生器は、周波数10〜100kHzの超音波を発生する電歪型又は磁歪型の振動素子と、この振動素子で発生する超音波の振動振幅を増幅する超音波照射部である超音波ホーンとで構成されている。超音波ホーンは、その基端から先端側の振動放射端面に向けて断面積が漸次変化していると共に、振動素子の共振周波数とこの超音波ホーンを構成する材料中の音速とで定まる波長の1/2の整数倍である長さを有しており、振動素子及び超音波ホーンを互いに強固に結合することで、超音波ホーンの先端から強力な超音波を照射し得るようになっている。
【0017】
さらにまた、本発明に係るウエット処理装置において、旋回気流発生手段を備えている場合には、この旋回気流発生手段で発生させた旋回気流によって、ワーク載置部の外側に排出したワークから除去された被覆物を含む不燃性液体が所定位置に強制的に移動させられるので、例えば、仕切り板と邪魔板とを組み合わせた構造や、サイクロン構造を有する一組以上の固液分離ユニットを所定位置に連続して設けることが望ましい。
【0018】
さらにまた、本発明に係るウエット処理装置において、互いに同一構成を成してウエット処理からその後の仕上げ洗浄やリンスや乾燥といった一連の処理を同様にして行うウエット処理装置を多数配置し、これらのウエット処理装置に対するワークの搬入及び搬出を自動搬送ロボットで行うようにしてもよい。
ここで、ウエット処理からその後の仕上げ洗浄やリンスや乾燥といった一連の処理を行う際に、排水廃物処理や処理時間の観点から、上記一連の処理をグループ分けしたり一つひとつの処理に分けたりして、グループ分けした処理又は個々に分けた処理に応じて複数のウエット処理装置を割り当てるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係るウエット処理方法及び請求項4に係るウエット処理装置では、上記した構成としているので、ワーク載置部をその中心回りに回転させると、これで生じる遠心力によってワークから除去された被覆物が不燃性液体とともにワーク載置部の外側に排出されることとなり、平板状のワークであるシリコン等の基板上にパターンを生成する場合において、例えば、シリコン基板上に金属膜等の回路パターンを生成する場合において、シリコン基板から除去した多量のフォトレジスト及び金属膜の汚れがシリコン基板上に再付着するのを防止することができ、この際、複雑な制御系や大容量フィルタや数多くの保全管理機器を必要としないのに加えて、薬液購入費や排液処理費や排気処理費がかからない分だけ、処理システムの簡略且つ小型化を実現すると共に処理コストの低減化をも実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0020】
また、本発明の請求項2に係るウエット処理方法及び請求項5に係るウエット処理装置では、上記した構成としているので、請求項1に係るウエット処理方法及び請求項4に係るウエット処理装置と同様の効果が得られるのに加えて、平板状のワークであるシリコン等の基板上にパターンを生成する場合において、例えば、シリコン基板上に金属膜等の回路パターンを生成する場合において、シリコン基板からフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜を確実に除去することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0021】
さらに、本発明の請求項3に係るウエット処理方法では、上記した構成としているので、効率の良くウエット処理を行うことができる。
さらにまた、本発明の請求項6に係るウエット処理装置では、上記した構成としているので、ワークの表面全域に対して超音波を均一に照射することができる。
さらにまた、本発明の請求項7に係るウエット処理装置では、上記した構成としているので、ワークを効率良く洗浄することができ、本発明の請求項8に係るウエット処理装置では、上記した構成としたから、ワーク表面を効率良く乾燥させることができ、本発明の請求項9に係るウエット処理装置では、上記した構成としたから、平板状のワークであるシリコン等の基板上にパターンを生成する場合において、例えば、シリコン基板上に金属膜等の回路パターンを生成する場合において、シリコン基板から剥離した多量のフォトレジスト及び金属膜などの汚れがシリコン基板上に再付着するのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るウエット処理装置を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係るウエット処理装置の一実施形態を示しており、この実施形態では、本発明に係るウエット処理装置を平板状のワークであるシリコン基板上に回路パターンを生成する際のリフトオフ処理に用いた場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、このウエット処理装置1は、平板状のワークであるシリコン基板Sを中央で支持すると共に、シリコン基板Sをセットした状態で該シリコン基板Sからフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜(被覆物)を除去する不燃性液体Lを収容可能とした皿状のスピンステージ(ワーク載置部)2と、シリコン基板Sの表面に向けて超音波を照射してシリコン基板Sからのフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜の除去を助長するホーン型超音波発生器3と、シリコン基板Sから除去されたフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜を不燃性液体Lとともにスピンステージ2の外側に排出させるべく、このスピンステージ2をその中心回りに回転させるモータ(駆動手段)4を備えており、スピンステージ2及びモータ4は、いずれもチャンバ9内に収容してある。
【0023】
上記ホーン型超音波発生器3は、周波数10〜100kHzの超音波を発生する電歪型又は磁歪型の振動素子3Aと、この振動素子3Aで発生する超音波の振動振幅を増幅する第一段超音波ホーン3Bと、超音波照射部である第二段超音波ホーン3Cを具備しており、振動素子3A及び超音波ホーン3B,3Cを互いに強固に結合することで、第二段超音波ホーン3Cの先端から強力な超音波を照射し得るようになっている。
【0024】
この場合、ホーン型超音波発生器3の振動素子3A及び超音波ホーン3B,3Cは、図2に示すように、ホーン用スイングアーム駆動部5からの出力によって水平面内で回動すると共に昇降するホーン用スイングアーム6に支持されており、これにより、第二段超音波ホーン3Cをシリコン基板Sの表面に対して接近離間させ且つシリコン基板Sの表面に沿って適宜間隔(0.1〜100mm)を維持しつつ移動させることができるようになっている。
【0025】
そして、ホーン型超音波発生器3の作動時には、不燃性液体L中において第二段超音波ホーン3Cをシリコン基板Sの表面に適宜間隔(0.1〜100mm)をもって対峙させることができるようになっている。
また、このウエット処理装置1は、スピンステージ2にセットしたシリコン基板Sの表面に対して不燃性液体Lを吹き付けるノズル(液体供給手段)7と、シリコン基板Sの表面に対して浄化した気体を吹き付ける気体供給ノズル(気体供給手段)8を備えており、この実施形態では、モータ4の中空状を成す出力軸(液体供給手段)4aを介してシリコン基板Sの裏側からも不燃性液体Lを供給するようになっている。
【0026】
この実施形態において、スピンステージ2の周縁部には方向変更板2aが設けてあり、シリコン基板Sから除去されたフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜を不燃性液体Lとともにスピンステージ2の外側に排出する時点で、放射方向に飛び出そうとするフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜及び不燃性液体Lを下方向に落としてチャンバ9内に収めるようにしている。
【0027】
さらに、このウエット処理装置1は、スピンステージ2を回転させるモータ4の出力軸4aと一体で回転するシロッコファン(旋回気流発生手段)10を備えており、このシロッコファン10で生じる旋回気流によって、スピンステージ2の方向変更板2aによりチャンバ9内に落下するフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜を所定位置に強制的に移動させるようにしている、すなわち、仕切り板11aと邪魔板11bとを組み合わせた構成を成す固液分離ユニット11の集塵口11cに強制的に移動させるようにしている。
【0028】
なお、図1及び図2における符号4bはシール軸受、符号12は、フォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜を含む不燃性液体Lがチャンバ9外に飛び出すのを防ぐフード、符号13は、このフードを昇降させる駆動手段であり、符号14は、上記表側ノズル7及び気体供給ノズル8を支持するスイングアーム、符号15は、このスイングアームを水平面内で回動させると共に昇降させるアーム駆動手段、符号11dは排気口、符号11eは排水口である。
【0029】
また、不燃性液体Lとしては、純水や水道水を使用したり、中性,アルカリ性及び酸性のうちのいずれかの界面活性剤といった不燃性の液体を使用したり、界面活性剤等の複数種の不燃性の液体と水とを交互に使用したりすることができる。
上記したウエット処理装置1によってリフトオフ処理を行うに際しては、レジストパターンに蒸着法やスパッタリング法といった成膜手法によりアルミ等の金属膜を堆積させたシリコン基板Sをスピンステージ2の中央にセットすると共に、フード12を上昇させた後、スピンステージ2に対して不燃性液体Lを入れてシリコン基板Sを不燃性液体L中に没入させて浸漬させつつ、ホーン用スイングアーム駆動部5からの出力によってホーン用スイングアーム6を動作させて、第二段超音波ホーン3Cをシリコン基板Sの表面に適宜間隔(0.1〜100mm)をもって対峙させる(図3(a)〜(c))。
【0030】
このとき、シリコン基板Sの表面上に不燃性液体Lの液層が100mmを越えない程度形成されるように成すことが望ましい。
次いで、モータ4の出力によってスピンステージ2を200rpm以下の回転数でシリコン基板Sと一緒に回転させると共に、ホーン型超音波発生器3を作動させて第二段超音波ホーン3Cからシリコン基板Sの表面に向けて超音波を照射してリフトオフ処理を行う(図3(d))。
【0031】
この間、ホーン用スイングアーム駆動部5からの出力によって第二段超音波ホーン3Cをシリコン基板Sの表面に沿って適宜間隔を維持しつつ移動させてもよい。
そして、フォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜がシリコン基板Sの表面から除去された段階で、ホーン型超音波発生器3の作動を停止するのに続いて、ホーン用スイングアーム駆動部5からの出力によって第二段超音波ホーン3Cをシリコン基板Sの上方に退避させた後、シリコン基板Sの表裏面に対してノズル7及びモータ4の出力軸4aから不燃性液体Lをそれぞれ供給して、仕上げ洗浄やリンス処理を行う(図3(e))。
【0032】
次に、モータ4の出力によってスピンステージ2を3000rpm以下の回転数でシリコン基板Sと一緒に回転させつつ、気体供給ノズル8からシリコン基板Sの表面に対して浄化した気体を吹き付けて乾燥処理を行った後、フード12を下降させてシリコン基板Sをスピンステージ2から取り外す(図3(f),(g))。
スピンステージ2を3000rpm以下の回転数で回転させている間、シロッコファン10がスピンステージ2とともに回転しているので、スピンステージ2の方向変更板2aによりチャンバ9内に落下するフォトレジスト及びフォトレジスト上の金属膜を含む不燃性液体Lは、上記シロッコファン10で生じる旋回気流によって、強制的に固液分離ユニット11の集塵口11cに運ばれて、この固液分離ユニット11により速やかに排水と廃物とに分離させることとなる。
【0033】
したがって、このウエット処理装置1では、シリコン基板Sから除去された多量のフォトレジスト及び金属膜などの汚れがシリコン基板S上に再付着するのを防止し得ることとなり、この際、複雑な制御系や大容量フィルタを必要としないのに加えて、可燃性有機溶剤を使用しない分だけ、数多くの保全管理機器が不要なものとなると共に、薬液購入費や排液処理費や排気処理費も不要なものとなり、その結果、処理システムの簡略且つ小型化が図られると共に処理コストの低減化も図られることとなる。
【0034】
上記した実施形態では、ウエット処理装置1を用いてリフトオフ処理を行う場合を説明したが、図4に示すように、互いに同一構成を成してリフトオフ処理からその後の仕上げ洗浄やリンスや乾燥といった一連の処理を同様にして行う上記ウエット処理装置1を多数配置し、これらのウエット処理装置1に対するワークの搬入及び搬出を自動搬送ロボットRで行う自動化ラインを構築してもよい。
【0035】
また、この自動化ラインにおいて、リフトオフ処理からその後の仕上げ洗浄やリンスや乾燥といった一連の処理を行う際に、排水廃物処理や処理時間の観点から、上記一連の処理をグループ分けしたり一つひとつの処理に分けたりして、グループ分けした処理又は個々に分けた処理に応じて複数のウエット処理装置1を割り当てるようにしてもよい。
さらに、上記した実施形態では、皿状のスピンステージ2をワーク載置部としてこのスピンステージ2に収容した不燃性液体L中にシリコン基板Sを没入させることで、スピンステージ2にセットした平板状のシリコン基板Sを不燃性液体Lで浸漬させるようにしているが、シリコン基板Sを不燃性液体Lに浸漬させる他の構成として、例えば、図5(a),(b)に示す構成を採用することができる。
【0036】
すなわち、図5(a)に示すように、ホーン型超音波発生器の超音波照射部として側面から先端にかけて形成した流路23aを有する超音波ホーン23Cを採用して、この流路23aの先端から不燃性液体Lを噴霧させつつ超音波ホーン23Cをシリコン基板Sの表面に対峙させて局所的に液体層Laを形成する構成を採用することができるほか、図5(b)に示すように、供給口34aを有するカバー34でホーン型超音波発生器の超音波照射部としての超音波ホーン33Cを覆うと共に、このカバー34の下向き開口の縁部とシリコン基板Sの表面との間に僅かな隙間を形成し、供給口34aを介してカバー34内に不燃性液体Lを供給して局所的に液体層Laを形成する構成を採用することができる。
【0037】
なお、上記した実施形態では、本発明に係るウエット処理装置を平板状のワークであるシリコン基板上に回路パターンを生成する際のリフトオフ処理に用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、他の適用例として、プリント基板や、FPD基板や、SAWデバイスや、MEMSや、ハードディスク等の製造時において各種基板上に様々な膜のパターンを生成する際のリフトオフ処理にも適用することができるほか、集積回路製造時におけるエッチング処理にも適用することが可能である。
【0038】
加えて、金属部品等の切削・研磨加工後における洗浄やバリ取り洗浄にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るウエット処理装置を示す断面説明図である。
【図2】図1に示したウエット処理装置の平面説明図である。
【図3】図1に示したウエット処理装置の動作説明図(a)〜(g)である。
【図4】本発明の一実施形態に係るウエット処理装置を自動化ラインに適用した状況を示すレイアウト説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るウエット処理装置を示す部分断面説明図(a)及びさらに他の実施形態に係るウエット処理装置を示す部分断面説明図(b)である。
【符号の説明】
【0040】
1 ウエット処理装置
2 スピンステージ(ワーク載置部)
3 ホーン型超音波発生器
3A 振動素子
3B 第一段超音波ホーン
3C,23C,33C 第二段超音波ホーン(超音波照射部)
4 モータ(駆動手段)
4a 中空状出力軸(液体供給手段)
7 ノズル(液体供給手段)
8 気体供給ノズル(気体供給手段)
10 シロッコファン(旋回気流発生手段)
L 不燃性液体
S シリコン基板(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のワークに付着した被覆物をウエット環境で該ワークから除去するのに用いるウエット処理方法であって、
前記ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部に該ワークをセットすると共に、このワーク載置部に対して前記不燃性液体を供給して前記ワークを不燃性液体で浸漬させた後、
前記ワーク載置部をその中心回りに回転させて、前記ワークから除去され被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させる
ことを特徴とするウエット処理方法。
【請求項2】
平板状のワークに付着した被覆物をウエット環境で該ワークから除去するのに用いるウエット処理方法であって、
前記ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部に該ワークをセットすると共に、このワーク載置部に対して前記不燃性液体を供給して前記ワークを不燃性液体で浸漬させた後、
ホーン型超音波発生器の超音波照射部を前記不燃性液体の適宜厚さの液体層を介して前記ワークの表面に対峙させて、該ワークの表面に向けて超音波を照射するのに続いて、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させて、前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させる
ことを特徴とするウエット処理方法。
【請求項3】
前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させるのに続いて、前記ワーク載置部をさらに回転させて前記ワークを乾燥させる請求項1又は2に記載のウエット処理方法。
【請求項4】
平板状のワークに付着した被覆物をウエット環境で該ワークから除去するのに用いるウエット処理装置であって、
前記ワークをセットした状態で該ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部と、
前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させるべく、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させる駆動手段を備えている
ことを特徴とするウエット処理装置。
【請求項5】
平板状のワークに付着した被覆物をウエット環境で該ワークから除去するのに用いるウエット処理装置であって、
前記ワークをセットした状態で該ワークから被覆物を除去する不燃性液体を供給可能としたワーク載置部と、
前記不燃性液体の適宜厚さの液体層を介して超音波照射部を前記ワークの表面に対峙させた状態で配置されて、該ワークの表面に向けて超音波を照射するホーン型超音波発生器と、
前記ワークから除去された被覆物を前記不燃性液体とともに前記ワーク載置部の外側に排出させるべく、前記ワーク載置部をその中心回りに回転させる駆動手段を備えている
ことを特徴とするウエット処理装置。
【請求項6】
前記ホーン型超音波発生器の超音波照射部は、前記ワークの表面に対して接近離間可能で且つ該ワークの表面に沿って適宜間隔を維持しつつ移動可能としてある請求項5に記載のウエット処理装置。
【請求項7】
前記ワーク載置部にセットしたワークに対して前記不燃性液体を供給する液体供給手段を備えている請求項4又5に記載のウエット処理装置。
【請求項8】
前記ワーク載置部にセットしたワーク表面に対して浄化した気体を供給する気体供給手段を備えている請求項4又5に記載のウエット処理装置。
【請求項9】
前記ワーク載置部とともに回転することで旋回気流を発生して、該ワーク載置部の外側に排出したワークから除去された被覆物を所定位置に強制的に移動させる旋回気流発生手段を備えている請求項4又5に記載のウエット処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−289803(P2009−289803A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137948(P2008−137948)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(599001943)株式会社メディア研究所 (2)
【Fターム(参考)】