説明

ウエハホルダ

【課題】膜の品質を低下させることなく、ウエハを保持しつつ、非接触搬送装置を用いて好適に搬送できるウエハホルダを提供する。
【解決手段】ウエハホルダ1Aは、ウエハWを保持し、主面5には、凹状のポケット部10Aが形成され、ポケット部10Aは、ウエハWが載置される底部20と、主面5及び底部20に連なる側壁部30とによって構成され、主面5から底部20までの深さDは、ウエハ厚みHの50%よりも深く、側壁部30は、主面5に連なる側壁上部32と、側壁上部32及び底部20に連なる側壁下部34とを有し、底部20の中心Oを通り主面5に垂直な断面において、側壁上部32と側壁下部34との接点である側壁接点Kは、底部20からウエハ厚みHの50%より高く、底部20と反対側のウエハ表面200より低い範囲にあり、前記断面において、主面接点Pが側壁接点Kよりも中心軸Cから離れるように、側壁上部32は、傾斜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを保持するウエハホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GaN等の膜が形成されたウエハが、半導体デバイスとして用いられている。ウエハに膜を形成するため、ガス雰囲気下において、高温で熱処理可能な製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような製造装置において、ウエハを保持するため、ポケット部が形成されたウエハホルダが用いられている。
【0003】
ウエハホルダからウエハを搬送する際に、ウエハに接触すると、形成された膜を傷つけ、ウエハの品質を低下させるおそれがある。このため、近年では、ウエハに接触せずに搬送可能な非接触搬送装置が広く知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
非接触搬送装置は、ウエハに空気を噴出し、非接触搬送装置とウエハとの隙間から空気を排出する。これによって、非接触搬送装置内部の空間であるクッション室が負圧になり、ウエハが吸引される。非接触搬送装置とウエハとの距離が近くなると空気が噴出されず、クッション室の圧力が増加する。これによって、ウエハが離れる方向に力が働く。このようにして、非接触搬送装置は、ウエハに接触せずに搬送できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2004−55595号公報
【特許文献2】特開平2001−322080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送時において、非接触搬送装置とウエハとの隙間から排出された空気が、ポケット部の側壁にぶつかり、気流が乱れる。この気流の乱れによって、空気の排出が妨げられ、クッション室の圧力が不安定になる。このため、ウエハがうまく吸着されず、搬送エラーが発生していた。
【0007】
側壁を低くすれば、排出された空気は、側壁にぶつからなくなるものの、膜の形成処理中に、ウエハが側壁を越えてポケット部からはみ出ることもある。これにより、ウエハが均等に加熱されずに、品質の低い膜が形成されていた。さらに、近年では、ウエハに均等に膜を形成するため、膜の形成処理中に、ウエハホルダを回転させることもある。側壁が低いと、この回転によって、ウエハがポケット部から飛び出るおそれもある。
【0008】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、膜の品質を低下させることなく、ウエハを保持しつつ、非接触搬送装置を用いて好適に搬送できるウエハホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。本発明の特徴は、主面(主面5)を有し、ウエハ(ウエハW)を保持するウエハホルダ(ウエハホルダ1A,ウエハホルダ1B)であって、前記主面には、凹状のポケット部(ポケット部10A,ポケット部10B)が形成され、前記ポケット部は、前記ウエハが載置される底部(底部20)と、前記主面及び前記底部に連なる側壁部(側壁部30)とによって構成され、前記主面から前記底部までの深さ(深さD)は、前記ウエハの厚みであるウエハ厚み(ウエハ厚みH)の50%よりも深く、前記側壁部は、前記主面に連なる側壁上部(側壁上部32)と、前記側壁上部及び前記底部に連なる側壁下部(側壁下部34)とを有し、前記底部の中心(中心O)を通り前記主面に垂直な断面において、前記側壁上部と前記側壁下部との接点である側壁接点(側壁接点K)は、前記底部から前記ウエハ厚みの50%より高く、前記底部と反対側の前記ウエハ表面(ウエハ表面200)より低い範囲にあり、前記主面と前記側壁上部との接点を主面接点(主面接点P)とし、前記底部の中心を通り前記主面に垂直な軸を中心軸(中心軸C)とすると、前記断面において、前記主面接点が前記側壁接点よりも前記中心軸から離れるように、前記側壁上部は、傾斜することを要旨とする。
【0010】
本発明の特徴によれば、主面から底部までの深さは、ウエハの厚みであるウエハ厚みの50%よりも深く、底部の中心を通り主面に垂直な断面において、側壁上部と側壁下部との接点である側壁接点は、底部からウエハ厚みの50%より高く、底部と反対側のウエハ表面より低い範囲にあり、断面において、主面接点が、側壁接点よりも中心軸から遠ざかるように、側壁上部は、傾斜する。このため、ウエハの重心位置が主面の高さよりも低くなるように、ウエハは保持されるため、ウエハがポケット部からはみ出たり、飛び出たりすることが抑制される。側壁上部は傾斜しているため、側壁にぶつかった空気は、傾斜に沿って流れるため、気流が乱れることもない。このため、ウエハを好適に搬送できる。
【0011】
本発明の他の特徴は、前記断面において、前記側壁接点を通り前記主面に垂直な直線(直線m)と前記側壁上部とがなす、前記側壁接点を中心とした角度(角度θ)は、10度以上45度以下であることを要旨とする。
【0012】
本発明の他の特徴は、前記底部の中心と前記ウエハの底面の中心を一致させた場合、前記側壁下部から前記ウエハの側面までの距離(距離L)は、0.25mm以上0.5mm以下であることを要旨とする。
【0013】
本発明の他の特徴は、前記主面に垂直な平面視において、前記側壁部から突起し、前記ウエハの側面に接触可能な突起部(突起部50)が形成されることを要旨とする。
【0014】
本発明の他の特徴は、前記平面視において、前記突起部の先端部(突起先端部56)は、円弧状に形成されることを要旨とする。
【0015】
本発明の他の特徴は、前記平面視において、前記先端部の曲率半径(曲率半径R1)は、0.5mm以上であることを要旨とする。
【0016】
本発明の他の特徴は、前記平面視において、前記側壁部と前記突起部とをつなぐ前記突起部の端部(突起端部58)は、円弧状に形成され、前記突起部の端部の曲率半径(曲率半径R2)は、10mm以上であることを要旨とする。
【0017】
本発明の他の特徴は、前記突起部は、3個以上形成され、各突起部の間隔は、一定であることを要旨とする。
【0018】
本発明の他の特徴は、前記突起部は、3個以上形成され、前記平面視において、前記突起部は、前記底部の中心を基準として点対称に配置されることを要旨とする。
【0019】
本発明の他の特徴は、前記ウエハホルダは、炭化珪素からなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、膜の品質を低下させることなく、ウエハを保持しつつ、非接触搬送装置を用いて好適に搬送できるウエハホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、第1実施形態に係るウエハホルダ1Aの斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るポケット部10Aの断面図である。
【図3】図3は、第2実施形態に係るウエハホルダ1Bの斜視図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係るウエハホルダ1Bの拡大平面図である。
【図5】図5は、突起部50の斜視図である。
【図6】図6は、突起部50の平面図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係るポケット部10Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るウエハホルダの一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態(2)第2実施形態、(3)作用効果、(4)その他実施形態、について説明する。
【0023】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
(1)第1実施形態
(1.1)ウエハホルダ1Aの概略構成
第1実施形態に係るウエハホルダ1Aの概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係るウエハホルダ1Aの斜視図である。
【0025】
図1に示されるように、ウエハホルダ1Aは、円板状である。ウエハホルダ1Aは、主面5を有する。ウエハホルダ1Aには、ウエハWを保持する凹状のポケット部10Aが主面5に形成される。ウエハホルダ1Aには、複数のポケット部10Aが形成される。
【0026】
ウエハホルダ1Aは、ウエハW上に膜を形成するために用いられる。このため、ウエハホルダ1Aは、炭化珪素からなることが好ましい。炭化珪素は、熱伝導率が高いため、ウエハWを均等に加熱できる。これにより、膜にムラが生じず、ウエハWに品質の良好な膜が形成される。
【0027】
(1.2)ポケット部10Aの概略構成
第1実施形態に係るポケット部10Aについて、図2を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係るポケット部10Aの断面図である。すなわち、図2は、図1のA−A断面図である。具体的には、ポケット部10Aの底部20の中心Oを通り主面5に垂直な断面におけるポケット部10Aの断面図である。ただし、図2では、ポケット部10Aだけでなく、ウエハW及び非接触搬送装置100の断面も示されている。
【0028】
図2に示されるように、ポケット部10Aは、ウエハWが載置される底部20と、主面5と底部20とに連なる側壁部30とによって構成される。側壁部30は、主面5に連なる側壁上部32と、側壁上部32及び底部20に連なる側壁下部34とを有する。
【0029】
ポケット部10Aの深さD、すなわち、主面5から底部20までの深さは、ウエハWの厚みであるウエハ厚みHの50%よりも深い。ウエハホルダ1Aの回転によって、ウエハWが飛び出ることをより抑制するため、深さDは、ウエハ厚みHの50%よりも深い方がより好ましい。
【0030】
側壁上部32と側壁下部34との接点を側壁接点Kとする。主面5と側壁上部32との接点を主面接点Pとする。底部20の中心Oを通り、主面5に垂直な軸を中心軸Cとする。図2に示されるように、側壁上部32は、主面接点Pが、側壁接点Kよりも中心軸Cから離れるように、傾斜する。すなわち、側壁上部32は、テーパー状に形成される。従って、主面5に垂直な平面視において、主面5と側壁上部32との接点によって構成される境界線は、側壁上部32と側壁下部34との接点によって構成される境界線よりも大きい。また、側壁接点Kを通り主面5に垂直な直線mと側壁上部32とは、側壁接点Kを中心とした角度θをなす。この角度θは、10度以上45度以下であることが好ましい。
【0031】
側壁下部34は、直線mと平行に形成される。側壁下部34は、底部20に垂直に形成される。
【0032】
側壁接点Kは、底部20からウエハWの厚みであるウエハ厚みHの50%より高く、底部20と反対側のウエハ表面200より低い範囲にある。従って、底部20から側壁接点Kまでの高さを高さhとすると、H/2<h≦Hとなる。側壁部30は、側壁上部32を有するため、深さDは、高さhよりも高くなる。
【0033】
ポケット部10Aは、ウエハホルダ1Aの主面5を研削することによって、形成することができる。ウエハホルダ1Aが炭化珪素からなる場合、ダイヤモンド砥石を用いて研削することにより、ポケット部10Aを形成することができる。
【0034】
ポケット部10Aは、載置されるウエハWと側壁部30とが適切な距離関係になるように形成することが好ましい。具体的には、底部20の中心OとウエハWの底面の中心を一致させた場合、側壁下部34からウエハWの側面までの距離Lが、0.25mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0035】
(1.3)ウエハWの搬送
第1実施形態に係るウエハホルダ1Aに載置されたウエハWの搬送について、図2を参照しながら説明する。
【0036】
非接触搬送装置100は、送入口112から空気を取り込んで、非接触搬送装置100内部に形成されたクッション室110を通り、噴出口117から取り込んだ空気を噴出する。図2に示されるように、非接触搬送装置100をウエハWに近づけると、噴出された空気は、非接触搬送装置100とウエハWとの隙間から排出される。これによって、クッション室110の圧力は低下し、ウエハWは、非接触搬送装置100へ近づく方向に力が働く。非接触搬送装置100とウエハWとの距離が近くなると、非接触搬送装置100とウエハWとの隙間が狭くなるため、空気の排出が抑制される。これによって、クッション室110の圧力は上昇し、ウエハWは、非接触搬送装置100から離れる方向に力が働く。これらの力が釣り合う位置になるように、非接触搬送装置100とウエハWとの距離を調整することにより、非接触搬送装置100は、ウエハWを懸垂保持する。ウエハWが懸垂保持された非接触搬送装置100を移動させることにより、ウエハWを接触せずに搬送できる。
【0037】
図2に示されるように、排出された空気は、気流Sを生じさせる。ポケット部10Aは、傾斜した側壁上部32を有するため、側壁上部32にぶつかった気流Sは、傾斜に沿って進む。従って、気流Sは、ポケット部10Aから主面5に向かって流れる。従って、側壁上部32に気流Sがぶつかっても、ぶつかった気流Sが非接触搬送装置100とウエハWとの隙間へ逆流することを抑制できる。このため、気流の乱れを生じず、クッション室110の圧力を、ウエハWが懸垂保持できる圧力に保つことができる。これによって、非接触搬送装置100を用いて、ウエハWを好適に搬送できる。
【0038】
(2)第2実施形態
本発明の第2実施形態に係るウエハホルダ1Bについて、図3から図7を参照しながら説明する。以下の説明において、ウエハホルダ1Aと同様の部分は、適宜省略する。
【0039】
(2.1)ウエハホルダ1B及びポケット部10Bの概略構成
第2実施形態に係るウエハホルダ1B及びポケット部10Bの概略構成について、図3から図7を参照しながら説明する。図3は、第2実施形態に係るウエハホルダ1Bの斜視図である。図4は、第2実施形態に係るウエハホルダ1Bの拡大平面図である。具体的には、図4は、図3におけるウエハホルダ1Bの主面5に垂直な方向から視たポケット部10Bの平面図である。図5は、突起部50の斜視図である。図6は、突起部50の平面図である。図7は、第2実施形態に係るポケット部10Bの断面図である。すなわち、図7は、図4のB−B断面図である。具体的には、ポケット部10Bの底部20の中心Oを通り主面5に垂直な断面におけるポケット部10Bの断面図である。ただし、図2と同様に、ウエハW及び非接触搬送装置100の断面も示されている。
【0040】
図3に示されるように、ウエハホルダ1Bには、ウエハWを保持する凹状のポケット部10Bが主面5に複数形成される。図3及び図4に示されるように、ポケット部10Bは、突起部50を有する。主面5に垂直な方向から視た平面視(以下、平面視と適宜略す)において、突起部50は、側壁部30から突起する。突起部50は、ウエハWの側面に接触可能に形成される(図7参照)。図5及び図6に示されるように、突起部50は、突起先端部56と突起端部58とからなる。
【0041】
図5及び図6に示されるように、突起先端部56は、突起部50の先端部である。平面視において、突起先端部56は、円弧状に形成される。具体的には、突起先端部56は、中心軸C方向であるc方向に向かうように、形成される。すなわち、突起先端部56の円弧がc方向に向かうように、形成される。突起先端部56の曲率半径R1は、0.5mm以上であることが好ましい。
【0042】
図5及び図6に示されるように、突起端部58は、側壁部30と突起部50とをつなぐ。突起端部58は、円弧状に形成される。具体的には、突起端部58の円弧がポケット部10Bの外側になるように、突起端部58は、形成される。突起端部58の曲率半径R2は、10mm以上であることが好ましい。
【0043】
図5から図7に示されるように、突起部50は、側壁上部32に対応する突起上部52と、側壁下部34に対応する突起下部54とを有する。すなわち、突起上部52は、側壁上部32と滑らかに連なっており、突起下部54は、側壁下部34と滑らかに連なっている。また、図7に示されるように、突起上部52は、主面5に連なり、突起下部54は、突起上部52及び底部20に連なる。突起上部52と突起下部54との接点を突起接点K’とする。主面5と突起上部52との接点を主面接点P’とする。突起上部52は、主面接点P’が、突起接点K’よりも中心軸Cから離れるように傾斜する。従って、突起接点K’を通り主面5に垂直な直線m’と突起上部52とは、突起接点K’を中心とした角度φをなす。角度φも、角度θと同様に、10度以上45度以下であることが好ましい。
【0044】
突起部50によって、ウエハWと側壁部30との間の空間が確保できる。具体的には、図7に示されるように、ウエハWの側面と突起下部54とが接触することにより、ウエハWが側壁部30に近づくことを抑制できる。これにより、ウエハWと側壁部30との間の空間が確保できる。気流Sは、突起上部52の傾斜に沿って進み、主面5に流れたり、突起上部52から側壁上部32へと進み、側壁上部32から主面5に向かって流れたりする。このため、気流Sが非接触搬送装置100とウエハWとの隙間へ逆流することを抑制できる。従って、ウエハホルダ1Aと同様に、ウエハホルダ1Bにおいても、側壁下部34からウエハWの側面までの距離Lが、0.25mm以上を保つことができる。
【0045】
図3及び図4に示されるように、突起部50は、複数形成される。具体的には、ウエハホルダ1Bにおいて、突起部50は、5個形成される。処理を行うウエハWの直径によって、突起部50の形成個数を決定するのが好ましい。ウエハWの直径が小さい場合に、突起部50の形成個数が少ないとウエハWが突起部50間に入り込むことがある。このような場合には、突起部50を形成した効果が得られないため、ウエハWの直径に応じて突起部50を複数形成することが好ましい。具体的には、ウエハWの直径が200mmである場合には、突起部50は、3箇所以上形成されることが好ましい。ウエハWの直径が200mmである場合には、突起部50は、3箇所以上形成されることが好ましい。ウエハWの直径が100mmである場合には、突起部50は、5箇所以上形成されることが好ましい。ウエハWの直径が50mmである場合には、突起部50は、6箇所以上形成されることが好ましい。
【0046】
突起部50が複数形成された場合、ウエハWが突起部50間に入り込まないように、平面視において、各突起部50の間隔は、一定であることが好ましい。ここで、一定とは、厳密に一定間隔でなくても良く、本発明の効果が得られる程度に、略等間隔であれば良い。また、同様の理由により、図4に示されるように、平面視において、突起部50は、底部20の中心Oを基準として点対称に配置される。ここでも、点対称とは、厳密に点対称でなくとも良く、本発明の効果が得られる程度に、略点対称であれば良い。
【0047】
(3)作用・効果
本発明に係るウエハホルダによれば、深さDは、ウエハ厚みHの50%よりも深く、側壁接点Kは、底部20からウエハ厚みHの50%より高く、底部20と反対側のウエハ表面200より低い範囲にあり、側壁上部32は、主面接点Pが、側壁接点Kよりも中心軸Cから離れるように、傾斜する。側壁上部32は、傾斜しており、側壁接点Kは、底部20と反対側のウエハ表面200よりも低い範囲にあるため、搬送時において、非接触搬送装置100とウエハWとの隙間から排出された空気によって生じた気流Sは、側壁上部32の傾斜に沿って進む。従って、気流Sは、ポケット部10Aから主面5に向かって流れる。従って、側壁上部32に気流Sがぶつかっても、ぶつかった気流Sが非接触搬送装置100とウエハWとの隙間へ逆流することを抑制できる。このため、気流の乱れを生じず、クッション室110の圧力を、ウエハWが懸垂保持できる圧力に保つことができる。この結果、非接触搬送装置100を用いて、ウエハWを好適に搬送できる。
【0048】
深さDは、ウエハ厚みHの50%よりも深く、側壁接点Kは、底部20からウエハ厚みHの50%よりも高い範囲にある。このため、ウエハWの重心位置は、側壁接点Kの高さ以下となり、主面5の高さよりも低くなる。このため、ウエハWがポケット部10Aから飛び出たり、側壁部30を越えてポケット部10Aからはみ出たりすることが抑制される。この結果、ウエハWは、均等に加熱されるため、品質の良好な膜を形成することができる。
【0049】
本発明に係るウエハホルダによれば、角度θは、10度以上45度以下である。角度θが、10度以上であることにより、気流Sは、側壁上部32の傾斜に沿って進むやすくなる。従って、ウエハWをより好適に搬送できる。角度θが45度以下であることにより、側壁上部32にウエハWの端部がかかっても、すぐにポケット部10AにウエハWの端部は落ち込む。その結果、ウエハWがポケット部10Aからはみ出ることがより抑制される。また、角度θが45度より大きい場合に比べると、ウエハWの端部が側壁上部32に当たりやすくなり、ウエハWがポケット部10Aから飛び出ることをより抑制できる。
【0050】
本発明に係るウエハホルダによれば、底部20の中心OとウエハWの底面の中心を一致させた場合、側壁下部34からウエハWの側面までの距離Lが、0.25mm以上0.5mm以下である。距離Lが0.25mm以上であることにより、非接触搬送装置100とウエハWとの隙間と、側壁部30との距離が長くなるため、側壁部30にぶつかった気流Sが非接触搬送装置100とウエハWとの隙間へ逆流することをより抑制できる。距離Lが0.5mm以下であることにより、ウエハWと側壁部30との距離が短くなる。これによって、ポケット部10Aの内部において、ウエハWが大きく移動することがなくなるため、ウエハWに非接触搬送装置100を位置合わせしやすくなる。これにより、ウエハWをより好適に搬送できる。また、膜の形成処理中に、ウエハWは、略同じ位置で加熱されるため、均等に加熱される。これにより、品質の良好な膜を形成できる。
【0051】
本発明に係るウエハホルダ1Bによれば、主面5に垂直な平面視において、側壁部30から突起し、ウエハWの側面に接触可能な突起部50が形成される。突起部50により、ウエハWと側壁部30との間の空間が確保できるため、気流Sが非接触搬送装置100とウエハWとの隙間へ逆流することをより抑制できる。また、突起部50により、膜の形成処理中に、ウエハWが側壁部30に接したまま加熱されることが抑制される。ウエハWは、側壁部30を通じた熱の移動が抑制されるため、より均等に加熱される。これにより、品質の良好な膜を形成できる。
【0052】
本発明に係るウエハホルダ1Bによれば、平面視において、突起先端部56は、円弧状に形成される。ウエハWの側面が突起先端部56に接触しても、突起先端部56は、円弧状であるため、ウエハWの側面に応力が集中することを抑制できる。この結果、ウエハWの品質を低下させることを抑制できる。
【0053】
本発明に係るウエハホルダ1Bによれば、平面視において、突起先端部56の曲率半径R1は、0.5mm以上である。これにより、ウエハWの側面に応力が集中することをより抑制できる。
【0054】
本発明に係るウエハホルダ1Bによれば、平面視において、突起端部58は、円弧状に形成され、突起端部58の曲率半径R2は、10mm以上である。突起部50と側壁部30との接続部分が大きくなるため、突起部50と側壁部30との接続強度が高くなる。これにより、ウエハWが突起部50に接触しても、突起部50が根本、すなわち、突起部50と側壁部30との接続部分付近から、突起部50が外れることが抑制される。
【0055】
本発明に係るウエハホルダ1Bによれば、突起部50は、3個以上形成され、各突起部50の間隔は、一定である。また、平面視において、突起部50は、底部20の中心Oを基準として点対称に配置される。これにより、ポケット部10Aの内部において、ウエハWがいずれの方向へ動いても、突起部50に接触する又はしやすくなるため、ウエハWと側壁部30との間の空間が確保できる。
【0056】
本発明に係るウエハホルダによれば、ウエハホルダは、炭化珪素からなる。炭化軽度は、熱伝導性に優れているため、ウエハWを均一に加熱できる。このため、品質の良好な膜を形成できる。
【0057】
(4)その他実施形態
本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。
【0058】
例えば、側壁下部34は、直線mと平行に形成されていたが、必ずしもその必要はない。側壁下部34は、直線mと平行でなくとも良い。また、側壁下部34は、ポケット部10Aの断面において、側壁下部34と底部20とをつなぐ部分が円弧状となるように側壁下部34を形成しても良い。
【0059】
他にも、ウエハホルダ1Bにおいて、突起部50は、傾斜していたが、必ずしもそうである必要はない。突起部50は、傾斜していなくても良い。すなわち、角度φは、0度であっても良い。図7に示されるように、突起部50は、傾斜していなくても、突起部50にぶつかった気流Sは、突起部50から側壁上部32へと流れ、ポケット部10Aから主面5に向かって流れる。このため、突起部50にぶつかった気流Sは、非接触搬送装置100とウエハWとの隙間へ逆流することはなく、非接触搬送装置100を用いて、ウエハWを好適に搬送できる。
【0060】
以上のように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B…ウエハホルダ、 5…主面、 10A,10B…ポケット部、 …ポケット部、 20…底部、 30…側壁部、 32…側壁上部、 34…側壁下部、 50…突起部、 52…突起上部、 54…突起下部、 56…突起先端部、 58…突起端部、 100…非接触搬送装置、 110…クッション室、 112…送入口、 117…噴出口、 K…側壁接点、 K’…突起接点、 O…中心、 P,P’…主面接点、 S…気流、 W…ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有し、ウエハを保持するウエハホルダであって、
前記主面には、凹状のポケット部が形成され、
前記ポケット部は、前記ウエハが載置される底部と、前記主面及び前記底部に連なる側壁部とによって構成され、
前記主面から前記底部までの深さは、前記ウエハの厚みであるウエハ厚みの50%よりも深く、
前記側壁部は、前記主面に連なる側壁上部と、前記側壁上部及び前記底部に連なる側壁下部とを有し、
前記底部の中心を通り前記主面に垂直な断面において、前記側壁上部と前記側壁下部との接点である側壁接点は、前記底部から前記ウエハ厚みの50%より高く、前記底部と反対側の前記ウエハ表面より低い範囲にあり、
前記主面と前記側壁上部との接点を主面接点とし、前記底部の中心を通り前記主面に垂直な軸を中心軸とすると、
前記断面において、前記主面接点が前記側壁接点よりも前記中心軸から離れるように、前記側壁上部は、傾斜するウエハホルダ。
【請求項2】
前記断面において、前記側壁接点を通り前記主面に垂直な直線と前記側壁上部とがなす、前記側壁接点を中心とした角度は、10度以上45度以下である請求項1に記載のウエハホルダ。
【請求項3】
前記底部の中心と前記ウエハの底面の中心を一致させた場合、前記側壁下部から前記ウエハの側面までの距離は、0.25mm以上0.5mm以下である請求項1又は2に記載のウエハホルダ。
【請求項4】
前記主面に垂直な平面視において、前記側壁部から突起し、前記ウエハの側面に接触可能な突起部が形成される請求項1から3の何れか1項に記載のウエハホルダ。
【請求項5】
前記平面視において、前記突起部の先端部は、円弧状に形成される請求項4に記載のウエハホルダ。
【請求項6】
前記平面視において、前記先端部の曲率半径は、0.5mm以上である請求項5に記載のウエハホルダ。
【請求項7】
前記平面視において、前記側壁部と前記突起部とをつなぐ前記突起部の端部は、円弧状に形成され、前記突起部の端部の曲率半径は、10mm以上である請求項4から6の何れか1項に記載のウエハホルダ。
【請求項8】
前記突起部は、3個以上形成され、
各突起部の間隔は、一定である請求項4から7の何れか1項に記載のウエハホルダ。
【請求項9】
前記突起部は、3個以上形成され、
前記平面視において、前記突起部は、前記底部の中心を基準として点対称に配置される請求項4から8の何れか1項に記載のウエハホルダ。
【請求項10】
前記ウエハホルダは、炭化珪素からなる請求項1から9の何れか1項に記載のウエハホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23183(P2012−23183A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159578(P2010−159578)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】