説明

ウエハレンズ及びその製造方法

【課題】ガラス基板の反りを抑制するウエハレンズを提供する。
【解決手段】ウエハレンズ10はガラス基板12、硬化性樹脂製の第1の樹脂部14、硬化性樹脂製の第2の樹脂部16を備える。第1の樹脂部14と第2の樹脂部と16には、それぞれ複数のレンズ部14a,16aが形成され、第1の樹脂部14と第2の樹脂部16との各樹脂の体積が同等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆるカメラモジュールと称される撮像装置が、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等のコンパクトで薄型の電子機器である携帯端末に搭載されるようになり、これにより遠隔地へ音声情報だけでなく画像情報も相互に伝送することが可能となっている。これらの撮像装置に使用される撮像素子としては、CCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサ等の固体撮像素子が使用され、近年では、撮像素子の高画素化も進み、高解像、高性能化が図られている。
【0003】
他方、これら撮像素子上に被写体像を形成するための撮像用のレンズとしては、低コスト化のために、安価に大量生産できる樹脂材料で形成されるレンズが用いられており、これにより加工性も良好で非球面形状をとることで高性能化の要求にも対応可能となっている。このような、携帯端末に内蔵される撮像装置に用いる撮像用のレンズには、更なる超コンパクト化と携帯端末に求められる量産性とを両立することが要求されており、樹脂材料だけで構成する撮像用のレンズではその要求に応えるのが困難になってきている。
【0004】
このような問題点を克服するため、最近では、数インチのウエハ状のガラス基板に対しレプリカ法によって硬化性樹脂製のレンズ部を複数形成し(ガラス基板上で樹脂を複数のレンズ形状に成形し)、その後レンズ部ごとに切断するという手法が提案されており、撮像用のレンズを大量生産しようとしている。こうした製法によって製造されたレンズはいわゆるウエハレンズと呼ばれ、こういった撮像用のレンズに関する技術が特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−323365号公報
【特許文献2】特許第3929479号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/102773パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウエハレンズにおいては、ガラス基板上で樹脂を成形し、光や熱等のエネルギーを与えて樹脂を硬化させるため、硬化の際の樹脂の収縮により、ガラス基板が樹脂側に引っ張られ、ガラス基板が表裏両面のうちどちらか一方の側に反ってしまうという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の主な目的は、ガラス基板の反りを抑制することができるウエハレンズ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の面に形成された硬化性樹脂製の第1の樹脂部と、
前記ガラス基板の他方の面に形成された硬化性樹脂製の第2の樹脂部と、
を備え、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部のいずれか少なくとも一方には単一又は複数のレンズ部が形成され、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部との各樹脂の体積が同等であることを特徴とするウエハレンズが提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
ガラス基板の一方の面に硬化性樹脂製の第1の樹脂部を形成する第1の工程と、
前記ガラス基板の他方の面に硬化性樹脂製の第2の樹脂部を形成する第2の工程と、
を備え、
前記第1,第2の工程では、前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部のいずれか少なくとも一方に対し、複数のレンズ部を形成するか、又は単一のレンズ部を形成し、
前記第2の工程では、前記第2の樹脂部の樹脂の体積を、前記第1の樹脂部の樹脂の体積と同等とすることを特徴とするウエハレンズの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラス基板の一方の面と他方の面とで同体積の硬化性樹脂を使用して第1,第2の樹脂部を構成するから、一方の樹脂部の硬化収縮に伴うガラス基板の変形を、他方の樹脂部の硬化収縮に伴うガラス基板の変形で相殺することができ、その結果ガラス基板の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係るウエハレンズ積層体の概略構成を示す(a)斜視図であり、(b)(a)中のX線に沿う断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態に係るウエハレンズの概略構成を示す(a)斜視図(b)(a)中のY線に沿う断面図である。
【図3】図1のウエハレンズ積層体の製造方法を概略的に説明するための図面であって、詳しくは図2のウエハレンズの製造方法を概略的に説明するための図面である。
【図4】図1のウエハレンズ積層体の製造方法を概略的に説明するための図面であって、詳しくはウエハレンズ同士を積層する際の工程を概略的に説明するための図面である。
【図5】図2のウエハレンズにおける樹脂部の変形例を示す断面図である。
【図6】図2のウエハレンズにおける樹脂部の変形例を示す断面図である。
【図7】図2のウエハレンズにおける樹脂部の変形例を示す断面図である。
【図8】シミュレーションモデルを説明するための概略図である。
【図9】式(1)及び、(3)にかかるシミュレーション結果を概略的に示す図面である。
【図10】式(2)にかかるシミュレーション結果を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
図1に示す通り、本発明の好ましい実施形態に係るウエハレンズ積層体1は2枚のウエハレンズ10,30と2枚のスペーサ20,40とを有しており、これらが互いに積層された構成を有している。ウエハレンズ10,30間にはスペーサ20が配置され、ウエハレンズ30の下部にはスペーサ40が配置されている。ウエハレンズ10,30は互いに同様の部材であり、スペーサ20,40も互いに同様の部材である。
【0014】
図2に示す通り、ウエハレンズ10は円盤状を呈するガラス基板12を有している。ガラス基板12の上部には樹脂部14が形成されており、ガラス基板12の下部には樹脂部16が形成されている。樹脂部14,16は光硬化性樹脂(アクリル系又はエポキシ系のUV硬化性樹脂など)又は熱硬化性樹脂で構成されている。樹脂部14,16を構成する各樹脂は種類が互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
樹脂部14には複数のレンズ部14aが形成されている。レンズ部14aは略半球形状に突出しており、凸状の光学面を構成している。樹脂部16には複数のレンズ部16aが形成されている。レンズ部16aは略半球形状に凹んでおり、凹状の光学面を構成している。レンズ部14aとレンズ部16aとは互いに相対する位置に形成されており、レンズ部14aとレンズ部16aとで光学面に対する光軸が一致するようになっている。
【0016】
特に樹脂部14,16では、図2(b)に示す通り、光学有効面の範囲内の領域Aにレンズ部14a,16aが形成されている。領域Aに隣り合う領域は光学有効面の範囲外の領域Bであり、領域Bには非レンズ部14b,16bが形成されている。非レンズ部14bは平面状を呈しており、非レンズ部16bは凹凸形状を呈している。
【0017】
樹脂部14と樹脂部16とではこれらを構成する各樹脂の体積が同等となっている。「各樹脂の体積が同等」とは、好ましくは式(3)の条件を満たすことであり、より好ましくは式(3a)〜(3c)の条件を満たすことである。
【0018】
0.6≦Vwa/Vwb≦2.1 … (3)
0.6≦Vwa/Vwb≦1.9 … (3a)
0.75≦Vwa/Vwb≦1.4 … (3b)
0.75≦Vwa/Vwb≦1.3 … (3c)
式(3)〜(3c)中、「Vwa」は物体側の樹脂の体積を、「Vwb」は像側の樹脂の体積を表している。
【0019】
樹脂の体積は以下の方法により測定する。
(A)面形状を測定し、また、基点となる樹脂の厚みを測定することで樹脂体積として換算する。
(B)測定方法としては、例えば、パナソニック製形状測定器UA3Pを用いる。なお、測定器はこれに限定されず、触針式及び非接触式がある。触針式では、段差計が一般的に用いられ、例えば、カンチレバーの先端についた先端が尖ったダイヤモンドのチップで、測定試料表面をなぞりそのガラス基板と樹脂表面との段差を測定する。一方で、非接触式では、顕微鏡を用いてガラス基板表面と樹脂表面のフォーカス位置のズレから測定したり、顕微鏡を用いて、レンズ断面を観測したりすることで測定できる。
【0020】
本実施形態では、好ましくは樹脂部14と樹脂部16との各樹脂の厚みが式(1)の条件を満たし、より好ましくは樹脂部14と樹脂部16との各樹脂の厚みが式(1a)〜(1c)の条件を満たしている。
【0021】
0.6≦Twa/Twb≦2.1 … (1)
0.6≦Twa/Twb≦1.9 … (1a)
0.75≦Twa/Twb≦1.4 … (1b)
0.75≦Twa/Twb≦1.3 … (1c)
式(1)〜(1c)中、「Twa」は物体側(樹脂部14)の樹脂の厚みの平均を、「Twb」は像側(樹脂部16)の樹脂の厚みの平均を表している。
【0022】
樹脂の厚みの測定方法としては、触針式及び非接触式がある。触針式では、段差計が一般的に用いられ、例えば、カンチレバーの先端についた先端が尖ったダイヤモンドのチップで、測定試料表面をなぞりそのガラス基板と樹脂表面との段差を測定する。一方で、非接触式では、顕微鏡を用いてガラス基板表面と樹脂表面のフォーカス位置のズレから測定したり、顕微鏡を用いて、レンズ断面を観測したりすることで測定する。
【0023】
式(1)〜(1c)の条件に代えて又は加えて、樹脂部14と樹脂部16との各樹脂の体積硬化収縮率が式(2)の条件を満たしてもよく、好ましくは樹脂部14と樹脂部16との各樹脂の体積硬化収縮率が式(2a)〜(2c)の条件を満たすのがよい。
【0024】
0.6≦kwa/kwb≦3.0 … (2)
0.6≦kwa/kwb≦1.9 … (2a)
0.75≦kwa/kwb≦2.0 … (2b)
0.75≦kwa/kwb≦1.3 … (2c)
式(2)〜(2c)中、「kwa」は物体側の樹脂の体積硬化収縮率を、「kwb」は像側の樹脂の体積硬化収縮率を表している。
【0025】
特に、樹脂部14,16を構成する各樹脂は上記の通りに種類が互いに同じであってもよいし異なっていてもよいが、好ましくは各樹脂の種類が異なる場合に式(2)〜(2c)の条件を満たすのがよい。
【0026】
なお、式(1)〜(1c),(2)〜(2c)の条件は、後述の実施例にかかるシミュレーション結果に基づいている。
【0027】
他方、樹脂部14と樹脂部16とでは、樹脂部14,16の各樹脂の厚みや体積硬化収縮率が式(1)〜(1c),(2)〜(2c)を満たさなくても、樹脂部14と樹脂部16との各樹脂の塗布面積が同等であってもよい。ここでいう「塗布面積」とは、ウエハレンズ10を平面視したときの樹脂部14,16の面積であり、樹脂部14,16の凹凸による起伏(3次元形状)は考慮しないものである。
【0028】
スペーサ20は光透過性の材料(耐熱性のガラスなど)で構成されている。図1(b)に示す通り、スペーサ20にはレンズ部16a,レンズ部34aに対応する位置に円形状の透過孔22が形成されており、ウエハレンズ10を透過した光はスペーサ20に遮光されずにウエハレンズ30に入射するようになっている。
【0029】
続いて、図3,図4を参照しながらウエハレンズ積層体1の製造方法(ウエハレンズ10,30の製造方法を含む。)について説明する。
【0030】
図3(a)に示す通り、ガラス基板10の表面にモノマー状態(硬化前)の樹脂14Aを載置(滴下・塗布など)しておいて上方から成形型50を押圧し、キャビティ52に樹脂14Aを充填する。その後、樹脂14Aが光硬化性樹脂である場合には、樹脂14Aをキャビティ52に充填した状態で上方から光照射する。この場合、成形型50として光透過性を有する型を用いる。
【0031】
その結果、照射した光が成形型50を透過して樹脂14Aに入射して樹脂14Aが硬化し、ガラス基板12上に樹脂部14(特に複数のレンズ部14a)が形成される。他方、樹脂14Aが熱硬化性樹脂である場合には、樹脂14Aをキャビティ52に充填した状態で成形型50を加熱すればよい。
【0032】
その後、樹脂部14をガラス基板12とともに成形型50から離型して裏返し、ガラス基板10の裏面に樹脂部16を形成する。この場合は図3(a)の成形型50に代えて図3(b)の成形型60を使用すればよく、成形型60のキャビティ62に対し樹脂16Aを充填した状態で光照射又は加熱して樹脂16Aを硬化し、樹脂部16(特に複数のレンズ部16a)を形成する。
【0033】
特に、樹脂部16を形成する場合には、樹脂14Aの使用量(体積)に対し樹脂16Aの体積を同等とする。好ましくは樹脂部14と樹脂部16とで式(1)〜(1c),(2)〜(2c)を満たすように樹脂14A,16Aの厚みや体積硬化収縮率を調整する。また樹脂部14と樹脂部16とで塗布面積が同等となるように樹脂14A,16Aの塗布面積を調整してもよい。
【0034】
その後、樹脂部16をガラス基板12とともに成形型60から離型することでウエハレンズ10を製造することができる。
【0035】
なお、ウエハレンズ30を製造する場合にも、ウエハレンズ10を製造するのと同様にすればよい。
【0036】
その後、図4(a)に示す通り、ウエハレンズ30の樹脂部36の上面又はスペーサ40の下面に接着剤70を塗布し、ウエハレンズ30に対しスペーサ40を載置する。接着剤70は光硬化性樹脂で構成されており、光照射により硬化するものである(後述の接着剤72,74も同様である。)。その後、スペーサ40の上方から光を照射して接着剤70を硬化させ、スペーサ40をウエハレンズ30に固定する。
【0037】
その後、スペーサ40を固定したのと同様にして、図4(b)に示す通りにウエハレンズ30の樹脂部34に対しスペーサ20を固定する。
【0038】
その後、図4(c)に示す通り、ウエハレンズ10の樹脂部16の下面又はスペーサ20の上面に接着剤74を塗布し、スペーサ20に対しウエハレンズ10を載置する。その後、ウエハレンズ10の上方から光を照射して接着剤74を硬化させ、ウエハレンズ10をスペーサ20に固定する。以上の処理によりウエハレンズ積層体1を製造することができる。
【0039】
なお、ウエハレンズ積層体1はCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の固体撮像素子を用いた撮像装置の撮像用のレンズとして好適に使用される。この場合、図1(b)に示す通り、ウエハレンズ積層体1はレンズ部14a,16a,34a,36aごとに切断され、その切断片80がウエハレンズ積層体となって撮像装置に組み込まれ撮像用レンズに使用される。
【0040】
これと同様に、ウエハレンズ10そのものも撮像用レンズとして使用可能であり、この場合には、図2(b)に示す通り、ウエハレンズ10はレンズ部14a,16aごとに切断され、その切断片90がウエハレンズとなって撮像装置に組み込まれ撮像用レンズに使用される。
【0041】
以上の本実施形態によれば、ウエハレンズ10を製造する場合に、ガラス基板12の表面と裏面とで同体積の樹脂14A,16Aを使用し、樹脂部14a,16aを形成するから、例えば樹脂14Aを硬化させる際に起こる樹脂14Aの収縮に伴うガラス基板12の変形を、樹脂16Aを硬化させる際の樹脂16Aの収縮に伴うガラス基板12の変形で相殺され、ガラス基板12が表裏両面のうちいずれか一方の側に反るのを抑制することができる。また樹脂14A,16Aの使用量(体積)を同量とするから、樹脂14A,16Aの使用量を容易に管理することができる。
【0042】
なお、ウエハレンズ10の樹脂部14と樹脂部16とのうち、厚みの平均が小さい側の樹脂の体積硬化収縮率を、厚みの大きい側の樹脂の体積硬化収縮率より大きくしてもよい。
【0043】
樹脂部14と樹脂部16との樹脂の厚みの平均が異なる場合、硬化収縮時において、樹脂部14,16の厚みの平均が大きい樹脂側に、ガラス基板12が引っ張られて反ってしまうため、樹脂部14,16の厚みの平均の大きいほうを体積硬化収縮率の小さい樹脂にすることで、一方の樹脂部14,16の厚みに起因した硬化収縮に伴うガラス基板12の変形を、他方の樹脂部14,16の体積硬化収縮率に起因した硬化収縮に伴うガラス基板12の変形で相殺することができ、その結果、ガラス基板12の反りを抑制することができる。
【0044】
本実施形態にかかるウエハレンズ積層体1では、ウエハレンズ10,30を2段にわたり積層した例を示したが、ウエハレンズ30に対しスペーサ20を介してウエハレンズ10を積層したのと同様に、ウエハレンズ10に対しスペーサを介して更にウエハレンズを積層し、全体としてウエハレンズを3段以上積層してもよい。
【0045】
本実施形態にかかるウエハレンズ積層体1では、各レンズ部14a,16a,34a,36aを複数有する例を示したが、ウエハレンズ積層体1はレンズ部14a,16a,34a,36aを1つずつ有するような形態を有してもよい(図1(b)中符号80参照)。
【0046】
これと同様に、ウエハレンズ10はレンズ部14a,16aを1つずつ有する形態を有してもよい(図2(b)中符号90参照)。
【0047】
このような場合でも、樹脂部14,16(樹脂部34,36)では、樹脂は同等の体積を有しているし、厚みや体積硬化収縮率は式(1)〜(1c),(2)〜(2c)の関係を満たすし、塗布面積は同等である。
【0048】
当該ウエハレンズ積層体,ウエハレンズを製造する場合には、図3の工程において1つのキャビティ52,62を有する金型50,60を使用し、図4の工程において透過孔22,42を有するスペーサ20,40を使用すればよく、その他の工程は図3,図4の工程と同様にすればよい。ただ、当該ウエハレンズ積層体,ウエハレンズを製造する上では、上記のようにガラス基板12,32に複数のレンズ部14a,16a,34a,36aを形成し、レンズ部14a,16a,34a,36aごとに切断するほうが大量生産するのに適している。
[変形例1]
図1,図2のウエハレンズ10では、樹脂部14と樹脂部16とでレンズ部14a,16aの形状を凹凸としていわゆるメニスカスレンズを構成したが、レンズ部14a,16aは図1,図2の形状に代えて、図5(a)〜図5(c)に示す形状を呈してもよい(ウエハレンズ30においても同様である。)。
【0049】
すなわち、図5(a)のように、非レンズ部16bが単に平面状を呈していてもよいし、図5(b)のように、非レンズ部14bが凹凸形状を呈してもよいし、図5(c)のように、非レンズ部14b,16bの両方が凹凸形状を呈してもよい。図5(a)〜図5(c)の形状においても、光学的な性能を落とさずに、ガラス基板12の反りを抑制することができる。
【0050】
なお、図5(a)の非レンズ部16bに対し、図2(b)の非レンズ部16bはレンズ部16aの周縁部で大きく凸状を呈し、それに隣り合う部位で凹状を呈している。そのため、図2(b)の非レンズ部16bでは、図5(a)の非レンズ部16bの点線で囲まれた領域Cの分だけ、スペーサ20の配置位置(高さ位置)を確保することができ、ウエハレンズ積層体1を製造する上では図2(b)の形状が好ましい。
[変形例2]
図1,図2のウエハレンズ10のようにメニスカスレンズを構成しなくても、図6(a),(b)に示す通り、ガラス基板12の表裏両面のうちいずれか一方の面には光学的なパワーを持たない樹脂部18を形成してもよい(ウエハレンズ30においても同様である。)。樹脂部18はガラス基板12に対して樹脂を塗布した平面形状を呈してもよい。この場合において、光学的なパワーを持たない樹脂部18を形成することは、樹脂部18を成形しない場合に比べガラス基板12の反りを抑制するのに特に効果がある。レンズ設計面の上でも、樹脂部18が光学的なパワーを持たないために、ウエハレンズ10の構成要素として容易に組み込むことができる。
[変形例3]
図1,図2のウエハレンズ10のようにメニスカスレンズを構成しなくても、図7(a),(b)に示す通り、ガラス基板12の表裏両面に樹脂部14又は樹脂部16を形成してもよい(ウエハレンズ30においても同様である。)。このようにガラス基板12の表裏両面に対し凸状又は凹状を形成した場合でも、ガラス基板12の表裏の心厚や光学面形状、樹脂14A又は樹脂16Aの硬化収縮率の違い等による不均一な状態を、光学面以外の形状(非レンズ部14b,16b)を変えることで、両面からのガラス基板12を引っ張る力を均一にし、より一層ガラス基板12の反りに強い構成とすることができる。
【実施例】
【0051】
本実施例では、構造解析シミュレーションを用いて、ガラス基板の反り量を確認した。
【0052】
まずは、図8に示されるモデルを作成し、各素材のパラメータを振り、ガラス基板の中心位置(基準)から端点までの変化量をガラス基板の反り量(mm)とした。このモデルでは、ガラス基板として、Φ200mmのウエハ状のガラスを想定しており、半径rとして100mmを与えた。
【0053】
第1の樹脂部では、ヤング率1として3,000Mpaを、ポアソン比1として0.33を、硬化収縮率1,厚み1として表1,表2で表記した値を使用した。
【0054】
ガラス基板では、ヤング率2として63,000Mpaを、ポアソン比2として0.20を、硬化収縮率2として0.00を、厚み2として1.00mmを使用した。
【0055】
第3の樹脂部では、ヤング率3として3,000Mpaを、ポアソン比3として0.33を、硬化収縮率3,厚み3として表1,表2で表記した値を使用した。
【0056】
この結果を表1,表2及び図9,図10に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1,表2中、判定の項目の「○」,「△」,「×」の基準は下記の通りとした。
【0060】
「○」…ガラス基板の反りは小さく、破損の可能性や光学性能への影響はほとんどない
「△」…ガラス基板の反りは大きいが、破損の可能性や光学性能への影響は小さい
「×」…ガラス基板の反りが大きく、破損の可能性があったり光学性能に影響が大きかったりする
本実施形態にかかる式(1),(2)、また望ましい範囲を示した式(1a)〜(1c),(2a)〜(2c)の条件はこの結果を元に決定した。
【0061】
本シミュレーション結果は、ガラス基板がウエハの状態であるが、個々のレンズの反りについては、このウエハを切断した状態として考えればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ウエハレンズ積層体
10 ウエハレンズ
12 ガラス基板
14 樹脂部
14a レンズ部
14b 非レンズ部
14A 樹脂
16 樹脂部
16a レンズ部
16b 非レンズ部
16A 樹脂
18 樹脂部
20 スペーサ
22 透過孔
30 ウエハレンズ
32 ガラス基板
34 樹脂部
34a レンズ部
34b 非レンズ部
34A 樹脂
36 樹脂部
36a レンズ部
36b 非レンズ部
36A 樹脂
40 スペーサ
42 透過孔
50 成形型
52 キャビティ
60 成形型
62 キャビティ
70,72,74 接着剤
80,90 切断片
A 光学有効面の範囲内の領域
B 光学有効面の範囲外の領域
C (スペーサの高さ位置を確保するための)領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の面に形成された硬化性樹脂製の第1の樹脂部と、
前記ガラス基板の他方の面に形成された硬化性樹脂製の第2の樹脂部と、
を備え、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部のいずれか少なくとも一方には単一又は複数のレンズ部が形成され、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部との各樹脂の体積が同等であることを特徴とするウエハレンズ。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部との各樹脂の厚みが式(1)の条件を満たすことを特徴とするウエハレンズ。
0.6≦Twa/Twb≦2.1 … (1)
(式(1)中、「Twa」は物体側の樹脂の厚みの平均を、「Twb」は像側の樹脂の厚みの平均を表している。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部との各樹脂の体積硬化収縮率が式(2)の条件を満たすことを特徴とするウエハレンズ。
0.6≦kwa/kwb≦3.0 … (2)
(式(2)中、「kwa」は物体側の樹脂の体積硬化収縮率を、「kwb」は像側の樹脂の体積硬化収縮率を表している。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1,第2の樹脂部のうち、厚みの平均が小さい側の樹脂の体積硬化収縮率が、厚みの大きい側の樹脂の体積硬化収縮率よりも大きいことを特徴とするウエハレンズ。
【請求項5】
請求項1に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部との各樹脂の塗布面積が同等であることを特徴とするウエハレンズ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1の樹脂部のレンズ部と前記第2の樹脂部のレンズ部とのうち、一方のレンズ部が凸状を呈しており、他方のレンズ部が凹状を呈していることを特徴とするウエハレンズ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部とが、有効光学面の範囲内に形成されるレンズ部と有効光学面の範囲外に形成される非レンズ部とをそれぞれ有し、
前記第1の樹脂部の非レンズ部と前記第2の樹脂部の非レンズ部とのうち、少なくとも一方の非レンズ部が凸状又は凹状を呈していることを特徴とするウエハレンズ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のウエハレンズにおいて、
前記第1の樹脂部のレンズ部と前記第2の樹脂部のレンズ部とのうち、一方のレンズ部が凸状又は凹状を呈しており、他方のレンズ部が平面状を呈していることを特徴とするウエハレンズ。
【請求項9】
ガラス基板の一方の面に硬化性樹脂製の第1の樹脂部を形成する第1の工程と、
前記ガラス基板の他方の面に硬化性樹脂製の第2の樹脂部を形成する第2の工程と、
を備え、
前記第1,第2の工程では、前記第1の樹脂部と前記第2の樹脂部のいずれか少なくとも一方に対し、複数のレンズ部を形成するか、又は単一のレンズ部を形成し、
前記第2の工程では、前記第2の樹脂部の樹脂の体積を、前記第1の樹脂部の樹脂の体積と同等とすることを特徴とするウエハレンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8581(P2012−8581A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168147(P2011−168147)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2011−46030(P2011−46030)の分割
【原出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】