説明

ウエハ保持機構、ウエハホルダ及び静電チャック

【課題】固定されたウエハの温度制御性能を損なうことなく、異なるサイズのウエハを充分に吸着固定できるようにする。
【解決手段】ウエハWの形状に対応して形成され、そのウエハWが収容される開口孔21、及び開口孔21の下側開口縁下方に延設され、開口孔21にウエハWが収容された状態でそのウエハWの下面に接触して保持する保持爪22を有するウエハホルダ2と、概略平面状の静電吸着面301を有し、静電吸着面にウエハホルダ2及びそれによって保持されたウエハWが載置された状態で保持爪22を収容する保持爪収容溝3Mが形成された静電チャック3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるサイズのウエハを静電チャックによって保持するためのウエハ保持機構、当該ウエハ保持機構に用いられるウエハホルダ及び静電チャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置の処理チャンバ内で半導体ウエハを保持する方式としては、試料台上に静電チャックを設け、当該静電チャック上に載置したウエハを静電吸着するものがある。
【0003】
この種の静電チャックとしては、特許文献1に示すように、静電チャックと基板との間にウエハホルダを介在させることなく、静電チャックに複数枚の基板を設置できるものがある。具体的にこの静電チャックは、上面がウエハを静電吸着するチャック領域が複数形成されており、このチャック領域は、基板上面に突設された複数の島状部の各上面部に形成されている。これによって、各島状部の上面毎にウエハを載置することによって複数枚のウエハを同時に吸着できるように構成されている。なお、ウエハを載置した状態において、各島状部間の空間には、ウエハホルダが配置される。
【0004】
しかしながら、この静電チャックを用いて1つの島状部よりもサイズの大きいウエハ(例えば静電チャックと同じサイズのウエハ)を保持する場合には、ウエハが複数の島状部に跨って保持されることになる。そうすると、ウエハの下面において静電吸着される部分と静電吸着されない部分とが存在し、ウエハの固定が不十分になってしまうという問題がある。このようなことから、特許文献1に示すものでは、ウエハを充分に固定するためには、島状部に対応した特定のサイズのウエハしか取り扱うことができず、汎用性に欠くという問題がある。
【0005】
また、静電チャックによっては、ウエハ下面と接触することによって、このウエハを加熱又は冷却する機能を有するものがあるが、複数の島状部に跨ってウエハが固定されると、島状部に接触している部分と島状部に接触していない部分との温度斑が生じてしまう。そうすると、ウエハの温度制御性能が悪くなるという問題もある。
【0006】
さらに、島状部よりも小さいウエハを固定するためには、当該島状部の内部にサイズの小さい島状部を形成する必要がある。ところが、このように内部に島状部を形成すると、内部の島状部の外延にウエハホルダが配置される空間を形成する必要があり、外部の島状部のチャック領域が小さくなってしまい、ウエハの固定が不十分になるだけでなく、温度制御も難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−66417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、固定されたウエハの温度制御性能を損なうことなく、異なるサイズのウエハを充分に固定できるようにすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るウエハ保持機構は、ウエハの形状に対応して形成され、そのウエハが収容される開口孔、及び当該開口孔の下側開口縁下方に延設され、前記開口孔にウエハが収容された状態でそのウエハの下面に接触して保持する保持爪を有するウエハホルダと、概略平面状の静電吸着面を有し、当該静電吸着面に前記ウエハホルダ及びそれによって保持されたウエハが載置された状態で前記保持爪を収容する保持爪収容溝が形成された静電チャックとを備えることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、平面状の静電吸着面に保持爪収容溝を設けて保持爪を収容する構成とし、ウエハ及びウエハホルダが載置される静電吸着面を同一平面としているので、サイズの異なるウエハを載置した場合でも、ウエハに静電吸着面を確実に接触させることができる。また、保持爪のみが保持爪収容溝に収容されるようにしているので、保持爪収容溝のサイズを小さくすることができる。これにより、サイズの異なるウエハを載置してウエハが保持爪収容溝を跨る場合であっても、ウエハに接触しない部分を小さくすることができる。したがって、ウエハの温度斑を生じにくくすることができ、温度制御性能を損なうことがなく、異なるサイズのウエハそれぞれを十分に固定することができる。
【0011】
静電チャック上にウエハを静電吸着させた状態でウエハを移動させる際、静電チャック上に載置されたウエハホルダがガタつくことによって、粉塵(例えばパーティクル)が発生してしまい、ウエハに付着してしまうことがある。この問題を好適に解決するためには、前記静電チャックが、前記静電吸着面に前記ウエハホルダ及びそれによって保持されたウエハが載置された状態で、前記ウエハホルダ及び前記ウエハを静電吸着するものであることが望ましい。これならば、ウエハだけでなく、ウエハホルダも静電吸着することにより、ウエハホルダがガタつくことを防止することができる。
【0012】
例えば上記ウエハ保持機構を用いてウエハにイオン注入する場合、照射されるイオンビームが静電吸着面に照射されてスパッタ粒子が発生し、このスパッタ粒子がウエハに付着してしまうことがある。また、イオンビームが静電吸着面に照射されることで、静電吸着面のチャージアップをまねき、結果としてウエハ近傍での電位分布が変動して、イオンビームの軌道が偏向されてしまうこともある。これらの問題を好適に解決するためには、前記保持爪が、開口孔の下側開口縁全周から下方に延設されていることが望ましい。これならば、開口孔がウエハの形状に対応して形成されると共に、保持爪が開口縁全周に延設されていることにより、開口孔及びウエハの間に形成される間隙からイオンビームが静電吸着面に照射されることを防止することができる。
【0013】
ウエハを保持した状態で保持爪がウエハ下面の外縁部と接触する場合には、当該ウエハが薄型のものであると、ウエハの中央部が自重により撓んでしまう。この撓みによって、ウエハホルダからウエハが離脱(抜け落ち)してしまう恐れがあり、また、ウエハ下面と他の部材との擦れによるパーティクルの発生やウエハ下面に傷が生じるという問題がある。この問題を解決するためには、前記ウエハホルダが、前記保持爪から開口孔内側に延設されて、当該保持爪のウエハ下面に接触するウエハ接触面と略同一平面上に位置する支持面を有し、当該支持面により前記ウエハ下面の少なくとも略中央部を支持する支持体を有し、前記静電チャックが、前記支持体を収容する支持体収容溝を有することが望ましい。
【0014】
保持爪とウエハ下面との接触面積を可及的に小さくして、接触による粉塵(例えばパーティクル)の発生を抑えるためには、前記保持爪が上方に延設する突起部を有し、当該突起部の上端が前記ウエハの下面に接触するものであることが望ましい。
【0015】
突起部の具体的な実施の態様としては、前記保持爪において周方向に略等間隔に3つ以上設けられていることが考えられる。また、突起部は、略全周に亘って設けられた突条をなすものであっても良い。
【0016】
ウエハホルダの機械的強度を強くするためには、ウエハホルダの平板部の厚みを大きくすることが考えられる。しかしながら、そうすると、ウエハホルダに収容されたウエハに対して斜めからイオンビーム等を照射する場合に、ウエハホルダの開口孔の上側開口縁がイオンビームを遮ってしまい、ウエハの周端部にイオンビームを照射することができないという問題がある。この問題を好適に解決するためには、前記ウエハホルダにおける開口孔の上側開口縁全周にテーパ面が形成されていることが望ましい。
【0017】
前記静電吸着面に異なるサイズのウエハを保持する保持爪に対応した保持爪収容溝が形成されていることが望ましい。具体的には、異なるサイズのウエハを保持する保持爪に対応した異なる保持爪収容溝が重なるように設けられていても良いし、一方が他方を包含するように設けられていても良い。同様に、ウエハホルダが支持体を有するものである場合には、前記静電吸着面に異なるサイズのウエハを保持する保持爪及び支持体に対応した保持爪収容溝及び支持体収容溝が形成されていることが望ましい。
【0018】
また、本発明に係るウエハホルダとしては、ウエハの形状に対応して形成され、そのウエハが収容される開口孔、及び当該開口孔の下側開口縁下方に延設され、前記開口孔にウエハが収容された状態でそのウエハの下面に接触して保持する保持爪を有することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る静電チャックは、ウエハの形状に対応して形成され、そのウエハが収容される開口孔、及び当該開口孔の下側開口縁下方に延設され、前記開口孔にウエハが収容された状態でそのウエハの下面に接触して保持する保持爪を有するウエハホルダが載置されるものであって、概略平面状の静電吸着面を有し、当該静電吸着面に前記ウエハホルダ及びそれによって保持されたウエハが載置された状態で前記保持爪を収容する保持爪収容溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、固定されたウエハの温度制御性能を損なうことなく、異なるサイズのウエハを充分に吸着固定できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るウエハ保持機構の全体構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態のウエハホルダの平面図である。
【図3】同実施形態の保持爪及び保持爪収容溝を主として示す部分拡大断面図である。
【図4】同実施形態の静電チャックの載置板の平面図である。
【図5】変形実施形態の保持爪及び保持爪収容溝を主として示す部分拡大断面図である。
【図6】変形実施形態のウエハホルダの平面図である。
【図7】変形実施形態のウエハホルダの部分拡大断面図である。
【図8】変形実施形態の静電チャックの載置板の平面図である。
【図9】変形実施形態に係るウエハホルダを部分的に示す平面図である。
【図10】変形実施形態に係るウエハホルダのA−A線断面図である。
【図11】変形実施形態に係るウエハホルダのB−B線断面図である。
【図12】変形実施形態に係る保持爪、支持体及び収容溝を主として示す拡大断面図である。
【図13】支持体の変形例を示す平面図である。
【図14】支持体の変形例を示す平面図である。
【図15】支持体の変形例を示す平面図である。
【図16】支持体の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明に係るウエハ保持機構の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係るウエハ保持機構100は、例えばイオン注入装置等の半導体製造装置において処理対象となるウエハWを保持するものであり、図1に示すように、ウエハWを収容するウエハホルダ2と、当該ウエハホルダ2に収容されたウエハWを静電吸着する静電チャック3とを備えている。
【0024】
以下、ウエハホルダ2及び静電チャック3について詳述する。
【0025】
ウエハホルダ2は、例えばシリコン又はグラファイト(カーボン)等の導電性を有する非金属から形成されており、図1及び図2に示すように、ウエハWの形状に対応して形成され、そのウエハWが収容される開口孔21と、その開口孔21の下側開口縁下方に延設され、開口孔21にウエハWが収容された状態でそのウエハWの下面に接触して保持する保持爪22とを有する。本実施形態のウエハホルダ2は、平面視において概略円形状をなすものであるが、その他、概略矩形状をなすもの等、種々の形状であっても良い。このウエハホルダ2は、図示しない搬送ロボットによって、半導体製造装置の処理チャンバ内に搬送され、処理後においてその処理チャンバ内から外部に搬出される。
【0026】
開口孔21は、収容するウエハWの平面視形状と略同一形状をなす孔であり、本実施形態では、ウエハホルダ2に複数個形成されている。また、図2において開口孔21は、平面矩形状のウエハを収容することから矩形状をなすものであるが、平面円形状のウエハを収容するものであれば円形状をなすものとする。
【0027】
保持爪22は、開口孔21の下側開口縁全周から下方に延設されている。この保持爪22は、図3に示すように断面概略L字形状をなすものであり、その垂直部22aの内面が開口孔21の内面と同一面を形成するように設けられている。また垂直部22aから屈曲した水平部22bの上面がウエハ接触面として、開口孔21にウエハWが収容された状態でその下面の周端部と接触することによって、ウエハWが開口孔21に保持される。
【0028】
また、ウエハホルダ2の開口孔21が形成されている平板部の厚みは、ウエハWの厚みと略同一としている。つまり、後述する静電チャック3に静電吸着された状態において、ウエハW及びウエハホルダ2の上面は、略同一平面上に位置することになる(図1、図3参照)。
【0029】
静電チャック3は、図1に示すように、セラミックス等の絶縁体からなる平板状をなす載置板31と、当該載置板31内に埋設された内部電極32と、当該内部電極32に電圧を印加する給電端子33とを備えている。本実施形態の静電チャック3は双極型のものであり、載置板31内部に正電極32a及び負電極32bが設けられている。また、給電端子33は、各正電極32aに連結される正電極用給電端子33aと、各負電極32bに連結される負電極用給電端子33bとからなる。この給電端子33には、吸着用電源34が接続される。そして、吸着用電源34によって内部電極32に電圧を印加することによって、載置板31内で誘電分極現象が生じ、載置板31上面が概略平面状の静電吸着面301となる。
【0030】
なお、載置板31内には、ウエハホルダ2及びウエハWの帯電を取り除くためのアースピン35が設けられている。このようにアースピン35を設けることによって、ウエハ保持機構100をイオン注入装置に用いた場合に、イオンビームがウエハホルダ2及びウエハWに照射されることによって、それらの表面が帯電して絶縁破壊が生じることを防止している。
【0031】
また、静電チャック3の静電吸着面301(載置板31上面)には、図4に示すように、ウエハホルダ2及びそれによって保持されたウエハWが載置された状態で保持爪22のみを収容する保持爪収容溝3Mが形成されている。なお、ウエハホルダ2は図示しない搬送ロボットによって静電チャック3に対して上下方向に昇降移動されて、静電吸着面301上に載置され又は静電吸着面301から持ち上げられる。
【0032】
保持爪収容溝3Mは、固定すべきウエハWのサイズによって予め形成されている。本実施形態の保持爪収容溝3Mは凹溝であり、載置されるウエハホルダ2に設けられた保持爪22に対応して形成されている。本実施形態では、保持爪22が平面視概略矩形状をなすものであり、それに合わせて保持爪収容溝3Mも平面視概略矩形状をなす。また、保持爪収容溝3Mの断面形状は概略コの字形状をなすものであり、その寸法は保持爪22の形状によって決まる。より詳細には、保持爪収容溝3Mの断面寸法は、ウエハWが跨って載置された際に、当該ウエハWへの温度影響及び吸着影響が実質的に無視できる程度のものである。本実施形態の保持爪収容溝3Mの断面寸法は、幅2mmであり、深さ2mmである。
【0033】
そして、本実施形態の静電チャック3は、静電吸着面301にウエハホルダ2及びそれによって保持されたウエハWが載置された状態で、ウエハホルダ2及びウエハWを静電吸着する。一方で、静電チャック3は、載置板31と同じサイズのウエハWが載置された場合であっても、温度制御性能を損なうことなく、充分に静電吸着して固定する。
【0034】
次に、保持爪収容溝3Mと内部電極32及びアースピン35との配置関係について説明する。
【0035】
図1及び図4に示すように、1枚のウエハWに対して、そのウエハWが載置される領域X1内部に、少なくとも1組の正電極32a及び負電極32bと、少なくとも1本のアースピン35とが設けられるようにしている。つまり、1つの保持爪収容溝3Mに囲まれる領域X1内部に、少なくとも1組の正電極32a及び負電極32bと少なくとも1本のアースピン35が設けられるようにしている。また、ウエハホルダ2が載置される領域X2に、1枚のウエハWと同様に、少なくとも1組の正電極32a及び負電極32bと、少なくとも1本のアースピン35とが設けられるようにしている。
【0036】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係るウエハ保持機構100によれば、平面状の静電吸着面301に保持爪収容溝3Mを設けて保持爪22を収容する構成とし、ウエハW及びウエハホルダ2が載置される静電吸着面301を同一平面としているので、サイズの異なるウエハWを載置した場合でも、ウエハWに静電吸着面301を確実に接触させることができる。また、保持爪22のみが保持爪収容溝3Mに収容されるようにしているので、保持爪収容溝3Mのサイズを小さくすることができる。これにより、サイズの異なるウエハWを載置してウエハWが保持爪収容溝3Mを跨る場合であっても、ウエハWに接触しない部分を小さくすることができる。したがって、ウエハWの温度斑を生じにくくすることができ、温度制御性能を損なうことがなく、異なるサイズのウエハWそれぞれを十分に固定することができる。
【0037】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0038】
例えば、保持爪22が、図5に示すように、保持爪22の水平部22b上面から上方に延設する突起部221を有し、当該突起部221の上端が前記ウエハWの下面に接触するように構成することが考えられる。このとき、突起部221は、図6に示すように、保持爪22において周方向に略等間隔に3つ以上設けられていることが望ましい。
【0039】
また、前記実施形態では、ウエハホルダ2の厚さがウエハWと同一であったが、このようなものでは、ウエハWの厚さが薄いもの(例えば1mm程度)であると、ウエハホルダ2の機械的強度が弱くなってしまう。したがって、ウエハホルダ2の機械的強度を増すためには、ウエハホルダ2の厚さを大きくする必要がある。このとき、ウエハWに対して斜めからイオンビームを照射する場合に、そのイオンビームの照射を遮らないようにするために、図7に示すように、ウエハホルダ2における開口孔21の上側開口縁全周を切り欠くことによってテーパ面2Tを形成するようにしても良い。
【0040】
さらに、前記実施形態の保持爪収容溝3Mは断面略コの字状をなす凹溝であったが、その他、断面C字状をなすもの等、保持爪22が収容される形状であれば良い。
【0041】
その上、前記実施形態では、同じサイズの複数のウエハを同時に保持するだけでなく、静電チャックと略同一サイズのウエハを保持可能なものであったが、種々(例えば3種類以上)のサイズのウエハを保持可能にすることもできる。このとき、静電チャックの静電吸着面(載置板上面)には、図8に示すように、種々のサイズを保持するウエハホルダの保持爪に対応した保持爪収容溝3Mを形成する。このとき、保持爪だけを収容する構成としているので、異なるサイズの保持爪収容溝が重なるように構成しても良いし、一方の保持爪収容溝の内部に他方の保持爪収容溝が包含されるように構成しても良い。
【0042】
加えて、前記実施形態のウエハホルダ2がウエハ撓み防止構造を有するものであっても良い。このウエハ撓み防止構造は、図9〜図11に示すように、保持爪22から開口孔21内側に延設されて、ウエハW下面の少なくとも略中央部を支持する1又は複数の支持体23から構成される。
【0043】
この支持体23は、ウエハ下面の略中央部に接触して、ウエハWを支持する支持面23aを有している。この支持面23aは、保持爪22のウエハ下面に接触するウエハ接触面(水平部22bの上面22b1)と略同一平面上に位置しており、支持体23の上面により形成される。具体的に支持体23は、一端及び他端がそれぞれ、保持爪22の水平部22bにおいて互いに異なる部分に接続されて、保持爪22内の空間に架け渡されている。本実施形態の支持体23は直線状をなすものであり、複数の支持体23が保持爪22内の空間内において等間隔となるように、保持爪22と一体に形成されている。そして、それら複数の支持体23の上面全体が、保持爪22の水平部22b上面22b1(ウエハ接触面)と同一平面上となるように構成されている。なお、支持体23は保持爪22と一体ではなく、別体として保持爪22に固定されるものであっても良い。
【0044】
これによりウエハWは、保持爪22が接触する周端部以外の下面内側(略中央部)が支持体23により部分的に支持される。このように支持体23を設けることによって、例えば0.1mmや0.05mm等の薄型のシリコンウエハを周端部のみで保持した場合に生じる自重による撓み、この撓みによって起こる抜け落ち、パーティクルの発生やウエハ下面の傷を防止することができる。
【0045】
またこの支持体23に対応して、静電チャック3には、図12に示すように、保持爪収容溝3Mに加えて、支持体23を収容する支持体収容溝3Maが形成されている。支持体23は保持爪22に連続して形成されているため、保持爪収容溝3Mと支持体収容溝3Maは連通して形成されている。なお、図12においては、内部電極等の静電チャック3の内部構造は省略している。
【0046】
なお、上記のウエハ撓み防止構造は、複数の支持体23を略等間隔に架け渡すことによって形成されているが、その他、概略十字状をなす支持体23(図13参照)や概略格子状をなす支持体23(図14参照)を保持爪22内の空間に架け渡すように形成しても良いし、図15に示すように、1又は複数の湾曲又は屈曲した支持体23を互いに交わらないように架け渡すように形成しても良い。さらに、図16に示すように、平面視において環状をなす内部支持体231と、当該内部支持体231と保持爪22とを連結する連結支持体232とからなる支持体23から構成しても良い。なお、図示しないが、支持体が、その一端のみを保持爪に接続され、他端を自由端とした構成としても良い。
【0047】
また、前記実施形態のウエハホルダの開口孔内面及び保持爪の垂直部内面に、ウエハの面方向の向きを合わせるためのオリフラ又はノッチを設けても良い。
【0048】
その上、前記実施形態の静電チャックは、双極型のものであったが、単極型のものであっても良い。
【0049】
なお、本発明で取り扱う静電チャックは表面にエンボス加工が施されているものでも良い。エンボス加工により表面に形成された凸部の高さが略同一であれば、静電吸着面は概略平面形状であると言える。
【0050】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100・・・ウエハ保持機構
W ・・・ウエハ
2 ・・・ウエハホルダ
21 ・・・開口孔
22 ・・・保持爪
3 ・・・静電チャック
301・・・静電吸着面
3M ・・・保持爪収容溝
221・・・突起部
2T ・・・テーパ面
23 ・・・支持体
3Ma・・・支持体収容溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの形状に対応して形成され、そのウエハが収容される開口孔、及び当該開口孔の下側開口縁下方に延設され、前記開口孔にウエハが収容された状態でそのウエハの下面に接触して保持する保持爪を有するウエハホルダと、
概略平面状の静電吸着面を有し、当該静電吸着面に前記ウエハホルダ及びそれによって保持されたウエハが載置された状態で前記保持爪を収容する保持爪収容溝が形成された静電チャックとを備えるウエハ保持機構。
【請求項2】
前記静電チャックが、前記静電吸着面に前記ウエハホルダ及びそれによって保持されたウエハが載置された状態で、前記ウエハホルダ及び前記ウエハを静電吸着するものである請求項1記載のウエハ保持機構。
【請求項3】
前記保持爪が、開口孔の下側開口縁全周から下方に延設されている請求項1又は2記載のウエハ保持機構。
【請求項4】
前記ウエハホルダが、前記保持爪から開口孔内側に延設されて、当該保持爪のウエハ下面に接触するウエハ接触面と略同一平面上に位置する支持面を有し、当該支持面により前記ウエハ下面の少なくとも略中央部を支持する支持体を有し、
前記静電チャックが、前記支持体を収容する支持体収容溝を有する請求項1、2又は3記載のウエハ保持機構。
【請求項5】
前記保持爪が、上方に延設する突起部を有し、当該突起部の上端が前記ウエハの下面に接触するものである請求項1、2又は3記載のウエハ保持機構。
【請求項6】
前記突起部が、前記保持爪において周方向に略等間隔に3つ以上設けられている請求項5記載のウエハ保持機構。
【請求項7】
前記静電吸着面に異なるサイズのウエハを保持する保持爪に対応した保持爪収容溝が形成されている請求項1、2、3、5又は6記載のウエハ保持機構。
【請求項8】
前記静電吸着面に異なるサイズのウエハを保持する保持爪及び支持体に対応した保持爪収容溝及び支持体収容溝が形成されている請求項4記載のウエハ保持機構。
【請求項9】
前記ウエハホルダにおける開口孔の上側開口縁全周にテーパ面が形成されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のウエハ保持機構。
【請求項10】
ウエハの形状に対応して形成され、そのウエハが収容される開口孔、及び当該開口孔の下側開口縁下方に延設され、前記開口孔にウエハが収容された状態でそのウエハの下面に接触して保持する保持爪を有するウエハホルダ。
【請求項11】
ウエハの形状に対応して形成され、そのウエハが収容される開口孔、及び当該開口孔の下側開口縁下方に延設され、前記開口孔にウエハが収容された状態でそのウエハの下面に接触して保持する保持爪を有するウエハホルダが載置されるものであって、
概略平面状の静電吸着面を有し、当該静電吸着面に前記ウエハホルダ及びそれによって保持されたウエハが載置された状態で前記保持爪を収容する保持爪収容溝が形成された静電チャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−35369(P2011−35369A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27466(P2010−27466)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】