説明

ウエーハの支持基板およびウエーハの加工方法

【課題】ウエーハを支持する支持基板の表面を傷つけることなく、ウエーハの面取り部を容易に切断することを目的とする。
【解決手段】ボンド剤を介在させて円形のウエーハWが貼着される支持基板1は、その表面1aにリング状の逃げ溝2が形成されているため、支持基板1の表面1aにウエーハWの表面Waを貼着し、ウエーハWの外周に形成された面取り部4を除去する際に、切削ブレード60が逃げ溝2に入るため、切削ブレード60が支持基板1に接触することを回避できる。これにより、切削ブレード60が支持基板1の表面1aを傷つけることなくウエーハWの面取り部4を容易に切断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを支持する支持基板および支持基板に支持されるウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所定の厚さに形成された後、ダイシング装置によって個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン、テレビ等の各種電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハの裏面が研削された後、ウエーハの裏面にサブデバイスや金属膜等の再加工が施される場合がある。そのため、ウエーハの表面側を支持基板の表面にボンド剤を介在させて貼着し、その状態で研削装置によりウエーハの裏面を所定の厚さに研削している。
【0004】
ウエーハの外周面には面取り部が施されているため、ウエーハの裏面を研削してウエーハを薄化すると、ウエーハの外周がナイフエッジのように鋭角に形成され、ナイフエッジ部分を起点としてウエーハが割れるおそれがある。そこで、支持基板に支持されたウエーハの面取り部を切削ブレードによって切断して除去することとしている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような支持基板は、ウエーハの加工時に繰り返して使い回すことができるため、切削ブレードで支持基板の表面を傷つけないようにウエーハの面取り部を慎重に切断しなければならず、ウエーハの生産性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、支持基板の表面を傷つけることなく、ウエーハの面取り部を容易に切断できるようにすることに解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ボンド剤を介在させて円形のウエーハが貼着され、該ウエーハと同等もしくは該ウエーハより大径の外径を有する支持基板であって、該ウエーハの外周には表面から裏面に至る面取り部が形成されており、該支持基板の表面には面取り部を切削ブレードで除去する際に切削ブレードとの接触を回避するリング状の逃げ溝が形成されている。
【0009】
上記の支持基板は、ガラス、セラミックス、シリコンのいずれかで形成され、厚みは0.5〜1.0mmであり、上記逃げ溝の深さは10〜100μmであることが望ましい。
【0010】
また、本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域とデバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成され、外周には表面から裏面に至る面取り部が形成されたウエーハの裏面を研削するウエーハの加工方法であって、上記支持基板の表面にウエーハの表面を対面させアクリル、ワックス、ポリイミド等のボンド剤を介して貼着する支持基板貼着工程と、ウエーハが貼着された支持基板側を回転可能なチャックテーブルに保持し、ウエーハの外周余剰領域の裏面側に切削ブレードを位置づけるとともにチャックテーブルを回転させて面取り部を除去する面取り部除去工程と、面取り部が除去されたウエーハが貼着された支持基板側を回転可能なチャックテーブルに保持しウエーハの裏面を研削砥石で研削する研削工程と、から少なくとも構成され、面取り部除去工程において、逃げ溝によって切削ブレードと支持基板との接触が回避される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ウエーハを支持する支持基板の表面にリング状の逃げ溝が形成されているため、支持基板にウエーハを貼着してウエーハの外周に形成された面取り部を切削ブレードにより除去する際に、切削ブレードの刃先が逃げ溝に収容され支持基板の表面に接触することが回避され、切削ブレードが支持基板の表面を傷つけることなくウエーハの面取り部を容易に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ウエーハの表面を示す斜視図である。
【図2】ウエーハの裏面を示す斜視図である。
【図3】支持基板を示す斜視図である。
【図4】支持基板を示す断面図である。
【図5】ウエーハの支持基板貼着工程を示す斜視図である。
【図6】ウエーハが貼着された支持基板をチャックテーブルに保持する工程を示す斜視図である。
【図7】面取り部除去工程における切削ブレードとウエーハの外周余剰領域と支持基板の逃げ溝との位置関係を示す拡大断面図である。
【図8】面取り部除去工程を示す斜視図である。
【図9】面取り部の除去されたウエーハが貼着された支持基板をチャックテーブルに保持する工程を示す斜視図である。
【図10】研削工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すウエーハWは、切削、研削等が施される被加工物の表面Wa側を示した一例である。ウエーハWは円形に形成されており、表面Waには、IC、LSI等のデバイスDが格子状の分割予定ラインSによって区画されて形成されている。表面Waにおいては、複数のデバイスDを囲繞し、デバイスDが形成されていない領域を外周余剰領域Wcとしている。
【0014】
図2に示すウエーハWは、図1に示したウエーハWを反転させた後の裏面Wbを示している。ウエーハWの表面Waから裏面Wbに至る外周面は、断面形状が円弧状になるように面取りされた面取り部4としている。
【0015】
図3に示すように、支持基板1は、ウエーハWと同等もしくはウエーハWより大径の外径を有する円盤形状に形成されており、支持基板1の表面1aにボンド剤を塗布してウエーハWを貼着し、ウエーハWを下方から支持することができる。
【0016】
図3及び図4に示す支持基板1は、ガラス、セラミックス、シリコンなどのうちのいずれかの硬質材料から構成されている。支持基板1は、このような硬質材料から構成されることにより、ウエーハWを安定して支持することができる。ここで、支持基板1の厚みは、0.5〜1.0mmで形成されることが望ましい。
【0017】
また、図3及び図4に示す支持基板1には、その表面1aにリング状の逃げ溝2が形成されている。逃げ溝2は、支持基板1の表面1aにウエーハWの表面Waを対面させた場合に、外周余剰領域Wcが対面する位置であって、面取り部4よりも内周側に対面する位置に形成されている。支持基板1の逃げ溝2の深さは、10〜100μmであることが望ましい。
【0018】
以下においては、上記のように構成される支持基板1にウエーハWを貼着して加工する方法について説明する。
【0019】
(1)支持基板貼着工程
図5に示すように、ウエーハWの表面Waを支持基板1の表面1aに貼着する。具体的には、ウエーハWを反転させ、ウエーハWの裏面Wbを上方に露出させ表面Waを支持基板1の表面1aに対面させる。支持基板1の表面1aには、予めボンド剤を塗布しておく。そして、ウエーハWを下降させ、支持基板1の表面1aにボンド剤を介在させてウエーハWの表面Waを貼着する。そうすると、図6に示すように、ウエーハWの裏面Wbが上方に露出してウエーハWと支持基板1とが一体となった状態となる。使用されるボンド剤は、例えば、アクリル、ワックス、ポリイミド等からなる接着部材であることが望ましい。
【0020】
(2)面取り部除去工程
支持基板貼着工程が終了した後、ウエーハWが貼着された支持基板1を回転可能なチャックテーブル3において保持する。図6に示すチャックテーブル3は、その保持面3aに微小の吸引孔3bを無数に備えている。チャックテーブル3に支持基板1を保持させるためには、支持基板1を下降させチャックテーブル3の保持面3aに支持基板1を載置する。そして、不図示の吸引源から発生する吸引力によって、吸引孔3bを通じてチャックテーブル3の保持面3aに載置された支持基板1を吸引保持する。
【0021】
ウエーハWの面取り部4を除去するためには、図8に示す切削手段6を作動させ、切削手段6の切削ブレード60をウエーハWの外周余剰領域Wcの上方に位置づける。その後、チャックテーブル3を矢印A方向に回転させ、切削手段6の切削ブレード60を矢印B方向に回転させながらウエーハWの裏面Wbに接触させ、支持基板1に形成された逃げ溝2に達する位置まで切り込む。そして、回転中のウエーハWを切削ブレード60で外周余剰領域Wcに沿って円弧状に切り込んでいき、ウエーハWの外周全面に形成される面取り部4を除去する。
【0022】
ウエーハWの切削中においては、切削ブレード60がウエーハWの裏面Wbから表面Waを貫通することとなるが、外周余剰領域Wcの切削位置の下方には、支持基板1に形成された逃げ溝2が位置づけられているため、切削ブレード60が逃げ溝2に入り、切削ブレード60が支持基板1の表面1aに接触することはない。したがって、切削ブレード60によって支持基板1を傷つけることはなく、ウエーハWの面取り部4を容易に除去できる。
【0023】
(3)研削工程
面取り部除去工程が終了した後、ウエーハWを所定の厚さまで薄化するために、ウエーハWの裏面Wbを研削する。まず、面取り部4が切断されたウエーハWを図9に示す回転可能なチャックテーブル5において保持する。チャックテーブル5は上記のチャックテーブル3と同様の構成としており、その保持面5aに微小の吸引孔5bを無数に備えている。チャックテーブル5において支持基板1を保持するためには、支持基板1を下降させチャックテーブル5の保持面5aに支持基板1を載置する。そして、不図示の吸引源から発生する吸引力によって、吸引孔5bを通じてチャックテーブル5の保持面5aに載置された支持基板1を吸引保持する。
【0024】
チャックテーブル5に支持基板1を吸引保持した後、図10に示すようにチャックテーブル5を研削手段7の下方に送り込む。研削手段7は、垂直方向に軸心を有するスピンドル70と、スピンドル70の下端に装着された研削ホイール71と、研削ホイール71の下部に環状に固着された研削砥石72とを備えており、中心軸73の周りを矢印C’方向に回転できる。そして、研削手段7を矢印D方向に昇降可能な図示しない昇降手段が配設されている。
【0025】
チャックテーブル5を矢印C方向に300rpmの回転速度で回転させながら研削手段7の下方に送り込み、チャックテーブル5の回転中心を研削砥石72が通過する位置に設定し、スピンドル70を矢印C’方向に回転させながら研削手段7を矢印D方向に下降させ、研削砥石72をウエーハWの裏面Wbに接触させ、裏面Wbを所定の厚みに至るまで研削する。なお、研削ホイール71の回転速度は、例えば6000rpmに設定しておく。また、研削手段7の矢印D方向の下降送り速度は、例えば1.0(μm/秒)に設定しておく。
【0026】
支持基板1には、逃げ溝2が形成されているため、切削手段6による切削の際には、切削ブレード60が逃げ溝2に入るため、切削ブレード60が支持基板1の表面1aに接触することはなく、支持基板1を傷つけることはない。そのため、切削ブレード60で支持基板1の表面1aを傷つけないようにウエーハWの面取り部4を慎重に切断することが不要となり、ウエーハWの生産性が向上する。さらに、支持基板1の表面1aが傷つけられないため、ウエーハWを安定的に支持できる平坦面を維持することができ、ウエーハWの加工において支持基板1を繰り返し使うことが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1:支持基板 1a:表面
2:逃げ溝
3:保持テーブル 3a:保持面 3b:吸引孔
4:面取り部
5:保持テーブル 5a:保持面 5b:吸引孔
6:切削手段 60:切削ブレード
7:研削手段 70:スピンドル 71:研削ホイール 72:研削砥石 73:中心軸
W:ウエーハ Wa:表面 Wb:裏面 Wc:外周余剰領域 S:分割予定ライン D:デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンド剤を介在させて円形のウエーハが貼着され、該ウエーハと同等もしくは該ウエーハより大径の外径を有する支持基板であって、
該ウエーハの外周には表面から裏面に至る面取り部が形成されており、
該支持基板の表面には面取り部を切削ブレードで除去する際に切削ブレードとの接触を回避するリング状の逃げ溝が形成されている支持基板。
【請求項2】
前記支持基板は、ガラス、セラミックス、シリコンのいずれかで形成され、厚みは0.5〜1.0mmであり、前記逃げ溝の深さは10〜100μmである請求項1記載の支持基板。
【請求項3】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成され、外周には表面から裏面に至る面取り部が形成されたウエーハの該裏面を研削するウエーハの加工方法であって、
請求項1又は2に記載の支持基板の表面にウエーハの表面を対面させアクリル、ワックス、ポリイミド等のボンド剤を介して貼着する支持基板貼着工程と、
該ウエーハが貼着された支持基板側を回転可能なチャックテーブルに保持し、該ウエーハの外周余剰領域の裏面側に切削ブレードを位置づけるとともに該チャックテーブルを回転させて該面取り部を除去する面取り部除去工程と、
該面取り部が除去されたウエーハが貼着された支持基板側を回転可能なチャックテーブルに保持し該ウエーハの裏面を研削砥石で研削する研削工程と、
から少なくとも構成され、
該面取り部除去工程において、前記逃げ溝によって該切削ブレードと該支持基板との接触が回避されるウエーハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−102080(P2013−102080A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245480(P2011−245480)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】