説明

ウォッシャポンプおよびウォッシャ装置

【課題】設置スペースへのレイアウト性や取付作業性を向上させる。
【解決手段】第1弁室51および第2弁室52をポンプ室55よりも軸方向一端側に設け、第1弁室51と第2弁室52との間に、第1弁室51内と第2弁室52内との圧力差により移動し、第1弁室51および第1吐出路64を連通させて第2弁室52および第2吐出路65を非連通とする第1連通状態と、第2弁室52および第2吐出路65を連通させて第1弁室51および第1吐出路64を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブ60を設けた。よって、ウォッシャポンプ30のウォッシャタンク内に配置できる部分を増やし、ウォッシャポンプ30のウォッシャタンク外への突出量を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャ液が流通する一対の吐出路を有し、正逆回転するモータの回転方向に応じて、各吐出路のうちの一方にウォッシャ液が流通するウォッシャポンプおよびウォッシャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のフロント側およびリヤ側には、それぞれウィンドシールドが設けられており、エンジンルーム内の所定箇所には、各ウィンドシールドを洗浄するためのウォッシャ装置が設置されている。ウォッシャ装置は、モータを有するウォッシャポンプと、ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクとを備えている。ウォッシャポンプのモータは、操作スイッチを操作することにより正逆方向に回転駆動され、モータの回転方向に応じてウォッシャタンク内のウォッシャ液を各ウィンドシールドに個別に噴射するようになっている。そして、ウィンドシールドに噴射されたウォッシャ液を、ワイパ装置を駆動してワイパブレードにより払拭することでウィンドシールドを洗浄することができる。
【0003】
このようなウォッシャ装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたウォッシャ装置は、回転軸を有するモータと、モータを収容するポンプ本体とを備えており、ポンプ本体の軸方向一端側には、ウォッシャ液を吸入する吸入口(インレット)が設けられ、また、ポンプ本体の軸方向他端側には、バルブ装置およびコネクタ部が設けられている。バルブ装置には、2つの吐出管(アウトレット)と、回転軸の軸方向と直交する方向に移動する弁体(切替バルブ)とが設けられている。そして、ポンプ本体を回転軸の軸方向からウォッシャタンクに差し込んで、ポンプ本体の吸入口側をウォッシャタンク内に配置するとともに、ポンプ本体のバルブ装置およびコネクタ部側をウォッシャタンク外に配置するようにしている。
【特許文献1】特開2004−100596号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウォッシャ装置は、車両のエンジンルーム内の限られた設置スペースに搭載されるため、そのレイアウト性を向上させることが望ましく、レイアウト性を向上させたウォッシャ装置を準備することにより、一つのウォッシャ装置で種々の車両(小型車や大型車等)に対応できるようになる。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたウォッシャ装置によれば、バルブ装置およびコネクタ部が、ウォッシャタンク外で回転軸の軸方向に並ぶようにして配置されているため、ウォッシャポンプのウォッシャタンク外への突出量が大きく、したがって、ウォッシャ装置の車両へのレイアウト性や取付作業性の低下を招いていた。
【0006】
本発明の目的は、設置スペースへのレイアウト性や取付作業性を向上させることができるウォッシャポンプおよびウォッシャ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のウォッシャポンプは、正逆方向に回転するモータと、前記モータの正方向への回転によりウォッシャ液が流通する第1吐出路と、前記モータの逆方向への回転により前記ウォッシャ液が流通する第2吐出路とを有するウォッシャポンプであって、前記モータの回転中心に設けられる回転軸と、前記回転軸の軸方向一端側に設けられるインペラと、前記モータを収容するポンプ本体と、前記ポンプ本体の軸方向一端側に設けられ、前記ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンク内に配置される液内配置部と、前記液内配置部に設けられ、前記インペラを回転自在に収容するポンプ室と、前記ポンプ室よりも軸方向一端側に設けられ、前記ポンプ室と前記第1吐出路とを連通する第1弁室および前記ポンプ室と前記第2吐出路とを連通する第2弁室と、前記第1弁室と前記第2弁室との間に設けられ、前記第1弁室内と前記第2弁室内との圧力差により移動し、前記第1弁室および前記第1吐出路を連通させて前記第2弁室および前記第2吐出路を非連通とする第1連通状態と、前記第2弁室および前記第2吐出路を連通させて前記第1弁室および前記第1吐出路を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のウォッシャポンプは、前記第1弁室および前記第2弁室を、前記ポンプ室と軸方向に部分的に重なるよう配置することを特徴とする。
【0009】
本発明のウォッシャ装置は、正逆方向に回転するモータと、前記モータの正方向への回転によりウォッシャ液が流通する第1吐出路と、前記モータの逆方向への回転により前記ウォッシャ液が流通する第2吐出路とを有するウォッシャポンプ、および前記ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクを備えたウォッシャ装置であって、前記ウォッシャポンプを、前記モータの回転中心に設けられる回転軸と、前記回転軸の軸方向一端側に設けられるインペラと、前記モータを収容するポンプ本体と、前記ポンプ本体の軸方向一端側に設けられ、前記ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンク内に配置される液内配置部と、前記液内配置部に設けられ、前記インペラを回転自在に収容するポンプ室と、前記ポンプ室よりも軸方向一端側に設けられ、前記ポンプ室と前記第1吐出路とを連通する第1弁室および前記ポンプ室と前記第2吐出路とを連通する第2弁室と、前記第1弁室と前記第2弁室との間に設けられ、前記第1弁室内と前記第2弁室内との圧力差により移動し、前記第1弁室および前記第1吐出路を連通させて前記第2弁室および前記第2吐出路を非連通とする第1連通状態と、前記第2弁室および前記第2吐出路を連通させて前記第1弁室および前記第1吐出路を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブとから形成し、前記ウォッシャタンクを、当該ウォッシャタンクの外郭を形成するタンク壁と、前記タンク壁に設けられ、前記液内配置部が前記回転軸の軸方向から差し込まれる差し込み孔とから形成することを特徴とする。
【0010】
本発明のウォッシャ装置は、前記第1弁室および前記第2弁室を、前記ポンプ室と軸方向に部分的に重なるよう配置することを特徴とする。
【0011】
本発明のウォッシャ装置は、前記差し込み孔が設けられる前記タンク壁を、前記ウォッシャタンクの内側へ所定量後退させて設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1弁室および第2弁室をポンプ室よりも軸方向一端側に設け、第1弁室と第2弁室との間に、第1弁室内と第2弁室内との圧力差により移動し、第1弁室および第1吐出路を連通させて第2弁室および第2吐出路を非連通とする第1連通状態と、第2弁室および第2吐出路を連通させて第1弁室および第1吐出路を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブを設けるので、ウォッシャポンプのウォッシャタンク内に配置できる部分を増やし、ウォッシャポンプのウォッシャタンク外への突出量を減らすことができる。したがって、ウォッシャ装置の設置スペースへのレイアウト性や取付作業性を向上させることができる。
【0013】
本発明によれば、第1弁室および第2弁室を、ポンプ室と軸方向に部分的に重なるよう配置するので、ウォッシャポンプの小径化を図ることができる。したがって、ウォッシャポンプとウォッシャタンクとの間のシール部分の長さ寸法を短くすることができ、シール性能を向上させることができる。
【0014】
本発明によれば、差し込み孔が設けられるタンク壁を、ウォッシャタンクの内側へ所定量後退させて設けるので、ウォッシャ装置の外形形状を簡素化することができる。したがって、ウォッシャタンクにウォッシャポンプを組み付けた状態、つまり、ウォッシャ装置組立体(サブアッシ)での搬送効率の向上が図れ、また、ウォッシャ装置組立体での搬送時において、ウォッシャポンプのウォッシャタンクからの脱落等を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は第1実施の形態に係るウォッシャ装置を示す部分断面図を、図2は図1のウォッシャポンプの外観を示す斜視図を、図3は図1のA−A線に沿う断面図を、図4は図1のB−B線に沿う断面図を、図5は図1のC−C線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0017】
図1に示すように、ウォッシャ装置10は、ウォッシャタンク20およびウォッシャポンプ30を備えており、ウォッシャ装置10は、自動車等の車両のエンジンルーム内(図示せず)の所定箇所に装着されるようになっている。
【0018】
ウォッシャタンク20は、プラスチック等の樹脂材料により箱形状に形成されており、その内部にはウィンドシールド(図示せず)を洗浄するためのウォッシャ液Wが貯留されている。ウォッシャタンク20の底部側(図中下側)には、ウォッシャタンク20の外郭を形成するタンク壁21が設けられ、当該タンク壁21には、ウォッシャポンプ30の軸方向一端側(図中左側)がアーマチュアシャフト38の軸方向から差し込まれる差し込み孔22が設けられている。
【0019】
差し込み孔22には、ゴム等の弾性材料により環状に形成された弾性グロメット23が装着されている。弾性グロメット23は、ウォッシャタンク20とウォッシャポンプ30との間で弾性変形してシールするようになっており、これにより、ウォッシャタンク20とウォッシャポンプ30との間からウォッシャ液Wが外部に漏洩するのを防止し、また、ウォッシャポンプ30のウォッシャタンク20に対するがたつきを防止している。
【0020】
差し込み孔22が設けられたタンク壁21は、他の部分のタンク壁24よりもウォッシャタンク20の内側(図中左側)に所定量後退して設けられており、これによりタンク壁24の図中下側には、ウォッシャポンプ30の軸方向他端側(図中右側)が配置されるポンプ収容空間Sが形成されている。ここで、タンク壁21のウォッシャタンク20内への後退量は、ウォッシャポンプ30の大きさやウォッシャタンク20の必要とする容量により決定される。
【0021】
ウォッシャポンプ30は、プラスチック等の樹脂材料により筒状に形成された本体筒部(ポンプ本体)31を備えており、本体筒部31は、本体筒部31の軸方向一端側に設けられてウォッシャタンク20内に配置される液内配置部32と、本体筒部31の軸方向他端側に設けられてウォッシャタンク20外のポンプ収容空間Sに配置される液外配置部33とを有している。
【0022】
本体筒部31の内部の図中上側には、別の組み立て工程で組み立てられた電動モータ(モータ)34が収容されている。電動モータ34は、鋼板をプレス加工することにより断面が略小判形状に形成されたヨーク35を備えている。ヨーク35の内側には、一対の永久磁石36が対向するよう固定されている。各永久磁石36の内側には、所定隙間を介してアーマチュアコア37が回転自在に設けられている。アーマチュアコア37の回転中心、つまり電動モータ34の回転中心には、アーマチュアシャフト(回転軸)38が設けられており、アーマチュアシャフト38はアーマチュアコア37とともに回転自在となっている。アーマチュアシャフト38の軸方向一端側は、ヨーク35に支持された第1軸受39により回転自在に支持され、アーマチュアシャフト38の軸方向他端側は、ブラシホルダ40に支持された第2軸受41により回転自在に支持されている。
【0023】
アーマチュアシャフト38の軸方向他端側におけるアーマチュアコア37の近傍には、一対の給電ブラシ42が摺接する整流子43が固定されており、整流子43には、アーマチュアコア37に巻装されたコイル44の端部が電気的に接続されている。アーマチュアコア37は、各給電ブラシ42に供給される駆動電流の大きさや向きに応じて、所定の回転数で正逆方向に回転するようになっている。各給電ブラシ42には、一対の給電ターミナル45(図示では一つのみ示す)の一端側がそれぞれ電気的に接続されており、各給電ターミナル45の他端側は、第2蓋部材70に一体に設けられたコネクタ接続部73の内側に突出されている。
【0024】
アーマチュアシャフト38の軸方向一端側には、図4に示すように、その中心部分から放射状に延びる3つの羽根を備えたインペラ46が固定されている。インペラ46とアーマチュアシャフト38とは、互いに相対回転不能となるよう所謂Dカット形状の嵌合により固定されており、インペラ46はアーマチュアシャフト38とともに回転自在となっている。
【0025】
本体筒部31の軸方向一端側、つまり液内配置部32の軸方向一端側には、弁ブロック47が設けられている。弁ブロック47は、プラスチック等の樹脂材料により有底筒状に形成されており、底壁48と周壁49とを備えている。周壁49は、底壁48から軸方向一端側に延ばされており、周壁49には、弁ブロック47を液内配置部32に超音波溶着する際に、その治具となるホーン(共鳴体)が装着されるようになっている。
【0026】
底壁48のインペラ46の回転中心と対向する部分には、ウォッシャタンク20内に貯留されたウォッシャ液Wを吸入する吸入開口部(インレット)50が形成されている。吸入開口部50は、ウォッシャポンプ30をウォッシャタンク20に取り付けた状態のもとで、ウォッシャタンク20の底部側から所定距離H1の位置に設けられている。
【0027】
図3に示すように、弁ブロック47の図中下側には、図中左右側で対向する略扇形状の第1弁室51および第2弁室52が設けられている。各弁室51,52には、底壁48に設けられた第1ポンプ通路53および第2ポンプ通路54の一端側がそれぞれ連通されており、各ポンプ通路53,54の他端側は、底壁48と液内配置部32との間に形成されるポンプ室55に連通されている。各弁室51,52は、液内配置部32のポンプ室55よりも軸方向一端側で、ポンプ室55と軸方向に部分的に重なるよう配置されており、これによりウォッシャポンプ30の小径化を図り、弾性グロメット23の大径化を抑制している。
【0028】
各弁室51,52の内部には、互いに向き合うようにして突出した第1弁座部材56および第2弁座部材57が一体に設けられており、各弁座部材56,57の内側には、それぞれ第1弁座通路58および第2弁座通路59が設けられている。第1弁座部材56と第2弁座部材57との間、つまり第1弁室51と第2弁室52との間には、各弁室51,52を仕切るようにして切替バルブ60が設けられており、切替バルブ60は、第1弁室51と第2弁室52との間に設けられたバルブ支持部61によって支持されている。切替バルブ60は、ゴム等の弾性材料により略正方形形状に形成され、所謂ダイヤフラム形のバルブ構造を採用している。
【0029】
弁ブロック47の軸方向一端側には、プラスチック等の樹脂材料により略半円形状に形成された第1蓋部材62が設けられている。第1蓋部材62は、超音波溶着によって弁ブロック47に接続されており、各弁室51,52を閉塞するようになっている。第1蓋部材62には、切替バルブ60の一部を支持するバルブ支持部63が一体に設けられており、切替バルブ60は、各バルブ支持部61,63によってがたつくこと無く支持されている。
【0030】
液内配置部32の軸方向一端側には、インペラ46を回転自在に収容するポンプ室55が一体に設けられており、ポンプ室55は、吸入開口部50を介してウォッシャタンク20内に連通されるとともに、各ポンプ通路53,54(図3参照)を介して各弁室51,52に連通されている。
【0031】
図1に示すように、本体筒部31の電動モータ34よりも図中下側には、本体筒部31(液内配置部32および液外配置部33)の軸方向に沿って並列となるように、アウトレットとしての第1吐出路64および第2吐出路65が一体に設けられている。各吐出路64,65の一端側は、各弁座部材56,57の各弁座通路58,59を介して各弁室51,52にそれぞれ接続されている。ここで、第1弁室51はポンプ室55と第1吐出路64とを連通し、第2弁室52はポンプ室55と第2吐出路65とを連通するようになっている。
【0032】
図5に示すように、液外配置部33の外周側には、第1吐出管66および第2吐出管67が一体に設けられており、各吐出管66,67の先端部は、互いに逆向きとなるよう液外配置部33の径方向外側に向けられている。各吐出管66,67の内側には、各吐出路64,65の他端側がそれぞれ設けられており、各吐出路64,65は、各吐出管66,67の基端部で略直角に折り曲げられている。
【0033】
図3に示すように、切替バルブ60の図中両側には、各弁座部材56,57が所定の隙間を介して対向しており、各弁座部材56,57の切替バルブ60側の端部は、それぞれ第1弁座68および第2弁座69となっている。各弁座68,69には、切替バルブ60の両側に設けられた一側面60aおよび他側面60bがそれぞれ離着座するようになっている。
【0034】
切替バルブ60は、各バルブ支持部61,63に支持される支持辺部60cと、肉厚かつ略円盤状に形成されて一側面60aと他側面60bとを備えたバルブ本体60dと、各支持辺部60cとバルブ本体60dとを接続する薄膜部60eとを備えている。これにより、バルブ本体60dは、各支持辺部60cに対して容易に相対移動できるようになっている。
【0035】
切替バルブ60のバルブ本体60dは、各弁座68,69に離着座するようアーマチュアシャフト38の軸方向と直交する方向に移動自在に設けられ、第1弁室51内と第2弁室52内との圧力差により移動するようになっている。切替バルブ60は、以下に示す第1連通状態と第2連通状態とを切り替えるようになっている。
【0036】
つまり、切替バルブ60の第1連通状態とは、一側面60aが第1弁座68から離間するとともに他側面60bが第2弁座69に着座し、第1弁室51と第1吐出路64とを連通させ、第2弁室52と第2吐出路65とを非連通とする状態である。また、切替バルブ60の第2連通状態とは、他側面60bが第2弁座69から離間するとともに一側面60aが第1弁座68に着座し、第2弁室52と第2吐出路65とを連通させ、第1弁室51と第1吐出路64とを非連通とする状態である。
【0037】
本体筒部31の軸方向他端側、つまり液外配置部33の軸方向他端側には、図1に示すように第2蓋部材70が設けられている。第2蓋部材70は、プラスチック等の樹脂材料により略円盤形状に形成され、3つの爪部71により液外配置部33に接続されている。第2蓋部材70の径方向外周側には、電動モータ34に駆動電流を供給するための外部コネクタ72が接続されるコネクタ接続部73が一体に形成されている。コネクタ接続部73は、図1に示すように、ウォッシャポンプ30をウォッシャタンク20に取り付けた状態のもとで、所定角度を持って図中上側を向くよう設けられており、これにより外部コネクタ72の接続作業を容易に行えるようにしている。
【0038】
図2に示すように、第1吐出管66の先端部には、フロントウォッシャチューブ74の一端側が接続されており、第2吐出管67の先端部にはリヤウォッシャチューブ75の一端側が接続されている。各ウォッシャチューブ74,75の他端側には、フロントおよびリヤウィンドシールド(図示せず)にウォッシャ液Wを噴射するための、フロントウォッシャノズル76およびリヤウォッシャノズル77が接続されている(図1参照)。なお、第1吐出管66と第2吐出管67とを互いに反対側を向くよう対向配置することで、各ウォッシャチューブ74,75の各吐出管66,67への接続作業を容易に行えるようにしている。
【0039】
図1に示すように、コネクタ接続部73に接続される外部コネクタ72には、配線78を介してコントローラ(制御装置)79が電気的に接続されており、さらにコントローラ79には、車両の車室内(図示せず)等に設けられる操作スイッチ80が電気的に接続されている。
【0040】
次に、ウォッシャポンプ30の組立手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0041】
図6はウォッシャポンプの組立手順を説明する説明図を、図7(a),(b),(c)は弁ブロックの液内配置部への超音波溶着の手順を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0042】
まず、射出成形等により成形した本体筒部31を準備し、本体筒部31の各吐出管66,67側の開口部から電動モータ34を差し込む。次いで、インペラ46を本体筒部31のポンプ室55側に臨ませてアーマチュアシャフト38に取り付ける。その後、各給電ターミナル45がインサート成形された第2蓋部材70を本体筒部31に装着し、各爪部71により固定する。これにより、モータ組立体MAが完成する(第1工程)。
【0043】
次に、図7(a)に示すように、超音波溶着機(図示せず)のホーンHに弁ブロック47の開口側を装着し、その状態のもとで、図中矢印に示すように弁ブロック47の底壁48をモータ組立体MAのインペラ46側に臨ませる。なお、ホーンHには、弁ブロック47の周壁49の形状に倣う保持溝Gが形成されており、当該保持溝Gに周壁49を軽圧入することで弁ブロック47はホーンHに保持される。
【0044】
図7(a)および図7(b)に示すように、液内配置部32のテーパ状の接触面CS1に弁ブロック47の接触部CE1を当接させるとともに、各弁座通路58,59と各吐出路64,65との間の接触面CS2および接触部CE2を当接させ、その状態のもとで、図中破線矢印に示すようにホーンHを縦方向に振動させる。このとき、ホーンHの振動周波数は、例えば20kHz以上の高周波数に設定するようにし、液内配置部32と弁ブロック47との接触部分に大きな摩擦力を発生させる。これにより、液内配置部32に弁ブロック47を溶着することができる。その後、図7(c)の矢印に示すようにホーンHを弁ブロック47から引き離す(第2工程)。
【0045】
次いで、切替バルブ60を準備するとともに、当該切替バルブ60を弁ブロック47の軸方向一端側からバルブ支持部61に装着する。その後、第1蓋部材62を弁ブロック47の開口側から臨ませて、各弁室51,52を閉塞するよう超音波溶着する。このとき、第1蓋部材62のバルブ支持部63を切替バルブ60と整合させるようにする。これにより、ウォッシャポンプ30が完成する(第3工程)。
【0046】
次に、以上のように構成した第1実施の形態に係るウォッシャ装置10の動作について、図8および図9を用いて説明する。
【0047】
図8(a),(b),(c)はモータの正方向への回転時におけるウォッシャ液の流れを説明する説明図を、図9(a),(b),(c)はモータの逆方向への回転時におけるウォッシャ液の流れを説明する説明図をそれぞれ表している。
【0048】
[フロントウィンドシールド洗浄時]
フロントウィンドシールドを洗浄すべく操作スイッチ80をオン操作(フロント洗浄操作)すると、図8(a)の矢印(1)に示すように、電動モータ34のアーマチュアシャフト38が正方向に回転する。すると、アーマチュアシャフト38の正回転に伴ってインペラ46も正方向に回転し、これにより、図1に示すウォッシャタンク20内のウォッシャ液Wが吸入開口部50を介してポンプ室55内に吸い込まれる(矢印(2))。
【0049】
ポンプ室55内に吸い込まれたウォッシャ液Wは、インペラ46の正回転に伴って、図8(a),(b)の矢印(3)に示すように第1ポンプ通路53を介して第1弁室51内に圧送される。すると、第1弁室51内の圧力が上昇する一方で第2弁室52内の圧力が低下する。各弁室51,52内の圧力差により、図8(a)の矢印(4)に示す方向に切替バルブ60が移動し、続いて矢印(5)に示すように、第1弁室51内から第1弁座通路58内にウォッシャ液Wが流れ込むようになる。
【0050】
切替バルブ60の移動に伴い、他側面60bは第2弁座69に着座し、切替バルブ60は上述した第1連通状態となる。これにより、図8(b),(c)の矢印(5)に示すように、第1弁座通路58を介して第1吐出路64にウォッシャ液Wが流れて、フロントウォッシャチューブ74を介してフロントウォッシャノズル76からウォッシャ液Wが噴射される。
【0051】
[リヤウィンドシールド洗浄時]
リヤウィンドシールドを洗浄すべく操作スイッチ80をオン操作(リヤ洗浄操作)すると、図9(a)の矢印(6)に示すように、電動モータ34のアーマチュアシャフト38が逆方向に回転する。すると、アーマチュアシャフト38の逆回転に伴ってインペラ46も逆方向に回転し、これにより、図1に示すウォッシャタンク20内のウォッシャ液Wが吸入開口部50を介してポンプ室55内に吸い込まれる(矢印(7))。
【0052】
ポンプ室55内に吸い込まれたウォッシャ液Wは、インペラ46の逆回転に伴って、図9(a),(b)の矢印(8)に示すように第2ポンプ通路54を介して第2弁室52内に圧送される。すると、第2弁室52内の圧力が上昇する一方で第1弁室51内の圧力が低下する。各弁室51,52内の圧力差により、図9(a)の矢印(9)に示す方向に切替バルブ60が移動し、続いて矢印(10)に示すように、第2弁室52内から第2弁座通路59内にウォッシャ液Wが流れ込むようになる。
【0053】
切替バルブ60の移動に伴い、一側面60aは第1弁座68に着座し、切替バルブ60は上述した第2連通状態となる。これにより、図9(b),(c)の矢印(10)に示すように、第2弁座通路59を介して第2吐出路65にウォッシャ液Wが流れて、リヤウォッシャチューブ75を介してリヤウォッシャノズル77からウォッシャ液Wが噴射される。
【0054】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るウォッシャポンプ30によれば、第1弁室51および第2弁室52をポンプ室55よりも軸方向一端側に設け、第1弁室51と第2弁室52との間に、第1弁室51内と第2弁室52内との圧力差により移動し、第1弁室51および第1吐出路64を連通させて第2弁室52および第2吐出路65を非連通とする第1連通状態と、第2弁室52および第2吐出路65を連通させて第1弁室51および第1吐出路64を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブ60を設けている。したがって、ウォッシャポンプ30のウォッシャタンク20内に配置できる部分を増やし、ウォッシャポンプ30のウォッシャタンク20外への突出量を減らすことができる。これにより、ウォッシャ装置10の設置スペースへのレイアウト性や取付作業性を向上させることができる。
【0055】
また、第1実施の形態に係るウォッシャポンプ30によれば、第1弁室51および第2弁室52を、ポンプ室55と軸方向に部分的に重なるよう配置したので、ウォッシャポンプ30の小径化を図ることができる。したがって、ウォッシャポンプ30とウォッシャタンク20との間のシール部分の長さ寸法、つまり弾性グロメット23の周方向への長さ寸法を短くすることができ、シール性能を向上させることができる。
【0056】
さらに、第1実施の形態に係るウォッシャポンプ30によれば、差し込み孔22が設けられるタンク壁21を、ウォッシャタンク20の内側へ所定量後退させて設けたので、ウォッシャ装置10の外形形状を簡素化することができる。したがって、ウォッシャタンク20にウォッシャポンプ30を組み付けた状態、つまり、ウォッシャ装置10の組立体(サブアッシ)での搬送効率の向上が図れ、また、ウォッシャ装置10の組立体での搬送時において、ウォッシャポンプ30のウォッシャタンク20からの脱落等を抑制することができる。
【0057】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
図10は第2実施の形態に係るウォッシャ装置を示す部分断面図を表している。
【0059】
図10に示すように、第2実施の形態に係るウォッシャ装置90は、上述した第1実施の形態に比して、ウォッシャポンプ91を上下反転させて、これに伴い外部コネクタ72の接続作業性を確保するためにコネクタ接続部92の先端側の向きについても上下反転させた点が異なっている。
【0060】
これにより、第2実施の形態に係るウォッシャポンプ91およびウォッシャ装置90においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
これに加えて、第2実施の形態においては、ウォッシャポンプ91をウォッシャタンク20に取り付けた状態のもとで、吸入開口部50をウォッシャタンク20の底部側から所定距離H2(H2<H1)の位置に設けることができるので、第1実施の形態に比して、吸い込み不可能となるウォッシャ液Wの量を減らすことができる。したがって、ウォッシャポンプ91により吸い込むことができるウォッシャ液Wの容量が増加し、ひいては、ウォッシャタンク20の容量を見かけ上増やすことが可能となる。
【0062】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、切替バルブ60を略正方形形状に形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、切替バルブの仕様(特性)等に応じて、円形形状等の他の形状に形成した切替バルブを用いることもできる。
【0063】
また、上記各実施の形態においては、切替バルブ60の移動方向が、図1および図10に示すように紙面の垂直方向となるようウォッシャポンプ30(91)をウォッシャタンク20に装着したものを示したが、本発明はこれに限らず、ウォッシャ装置10(90)の設置スペースや外部コネクタ72の引き出し方向等に応じて、ウォッシャポンプ30(91)をウォッシャタンク20に対して任意の相対回転角度を持たせて装着することもできる。
【0064】
さらに、上記各実施の形態においては、ウォッシャ装置10(90)を、自動車等の車両に搭載したものとして説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、航空機や鉄道車両,建設機械等に搭載されるウォッシャ装置としても用いることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施の形態に係るウォッシャ装置を示す部分断面図である。
【図2】図1のウォッシャポンプの外観を示す斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図6】ウォッシャポンプの組立手順を説明する説明図である。
【図7】(a),(b),(c)は、弁ブロックの液内配置部への超音波溶着の手順を説明する説明図である。
【図8】(a),(b),(c)は、モータの正方向への回転時におけるウォッシャ液の流れを説明する説明図である。
【図9】(a),(b),(c)は、モータの逆方向への回転時におけるウォッシャ液の流れを説明する説明図である。
【図10】第2実施の形態に係るウォッシャ装置を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 ウォッシャ装置
20 ウォッシャタンク
21 タンク壁
22 差し込み孔
23 弾性グロメット
24 タンク壁
30 ウォッシャポンプ
31 本体筒部(モータ本体)
32 液内配置部
33 液外配置部
34 電動モータ(モータ)
35 ヨーク
36 永久磁石
37 アーマチュアコア
38 アーマチュアシャフト(回転軸)
39 第1軸受
40 ブラシホルダ
41 第2軸受
42 給電ブラシ
43 整流子
44 コイル
45 給電ターミナル
46 インペラ
47 弁ブロック
48 底壁
49 周壁
50 吸入開口部
51 第1弁室
52 第2弁室
53 第1ポンプ通路
54 第2ポンプ通路
55 ポンプ室
56 第1弁座部材
57 第2弁座部材
58 第1弁座通路
59 第2弁座通路
60 切替バルブ
60a 一側面
60b 他側面
60c 支持辺部
60d バルブ本体
60e 薄膜部
61 バルブ支持部
62 第1蓋部材
63 バルブ支持部
64 第1吐出路
65 第2吐出路
66 第1吐出管
67 第2吐出管
68 第1弁座
69 第2弁座
70 第2蓋部材
71 爪部
72 外部コネクタ
73 コネクタ接続部
74 フロントウォッシャチューブ
75 リヤウォッシャチューブ
76 フロントウォッシャノズル
77 リヤウォッシャノズル
78 配線
79 コントローラ
80 操作スイッチ
90 ウォッシャ装置
91 ウォッシャポンプ
92 コネクタ接続部
CE1,CE2 接触部
CS1,CS2 接触面
G 保持溝
H ホーン
MA モータ組立体
S ポンプ収容空間
W ウォッシャ液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆方向に回転するモータと、前記モータの正方向への回転によりウォッシャ液が流通する第1吐出路と、前記モータの逆方向への回転により前記ウォッシャ液が流通する第2吐出路とを有するウォッシャポンプであって、
前記モータの回転中心に設けられる回転軸と、
前記回転軸の軸方向一端側に設けられるインペラと、
前記モータを収容するポンプ本体と、
前記ポンプ本体の軸方向一端側に設けられ、前記ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンク内に配置される液内配置部と、
前記液内配置部に設けられ、前記インペラを回転自在に収容するポンプ室と、
前記ポンプ室よりも軸方向一端側に設けられ、前記ポンプ室と前記第1吐出路とを連通する第1弁室および前記ポンプ室と前記第2吐出路とを連通する第2弁室と、
前記第1弁室と前記第2弁室との間に設けられ、前記第1弁室内と前記第2弁室内との圧力差により移動し、前記第1弁室および前記第1吐出路を連通させて前記第2弁室および前記第2吐出路を非連通とする第1連通状態と、前記第2弁室および前記第2吐出路を連通させて前記第1弁室および前記第1吐出路を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブとを備えることを特徴とするウォッシャポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のウォッシャポンプにおいて、前記第1弁室および前記第2弁室を、前記ポンプ室と軸方向に部分的に重なるよう配置することを特徴とするウォッシャポンプ。
【請求項3】
正逆方向に回転するモータと、前記モータの正方向への回転によりウォッシャ液が流通する第1吐出路と、前記モータの逆方向への回転により前記ウォッシャ液が流通する第2吐出路とを有するウォッシャポンプ、および前記ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクを備えたウォッシャ装置であって、
前記ウォッシャポンプを、
前記モータの回転中心に設けられる回転軸と、
前記回転軸の軸方向一端側に設けられるインペラと、
前記モータを収容するポンプ本体と、
前記ポンプ本体の軸方向一端側に設けられ、前記ウォッシャ液を貯留するウォッシャタンク内に配置される液内配置部と、
前記液内配置部に設けられ、前記インペラを回転自在に収容するポンプ室と、
前記ポンプ室よりも軸方向一端側に設けられ、前記ポンプ室と前記第1吐出路とを連通する第1弁室および前記ポンプ室と前記第2吐出路とを連通する第2弁室と、
前記第1弁室と前記第2弁室との間に設けられ、前記第1弁室内と前記第2弁室内との圧力差により移動し、前記第1弁室および前記第1吐出路を連通させて前記第2弁室および前記第2吐出路を非連通とする第1連通状態と、前記第2弁室および前記第2吐出路を連通させて前記第1弁室および前記第1吐出路を非連通とする第2連通状態とを切り替える切替バルブとから形成し、
前記ウォッシャタンクを、
当該ウォッシャタンクの外郭を形成するタンク壁と、
前記タンク壁に設けられ、前記液内配置部が前記回転軸の軸方向から差し込まれる差し込み孔とから形成することを特徴とするウォッシャ装置。
【請求項4】
請求項3記載のウォッシャ装置において、前記第1弁室および前記第2弁室を、前記ポンプ室と軸方向に部分的に重なるよう配置することを特徴とするウォッシャ装置。
【請求項5】
請求項3または4記載のウォッシャ装置において、前記差し込み孔が設けられる前記タンク壁を、前記ウォッシャタンクの内側へ所定量後退させて設けることを特徴とするウォッシャ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−106725(P2010−106725A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278598(P2008−278598)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】