説明

ウォッベ指数センサシステム

【課題】燃料のウォッベ指数を測定するセンサを提供する。
【解決手段】センサ10は基板12とダイアフラム層16とを備える。ダイアフラム層16は、燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された加熱素子を少なくとも1つ含む第1層18を含み、加熱素子は基板12上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含有する。ダイアフラム層16は、第1層18の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層22も含む。センサ10はさらに、触媒が支持構造に分散された検出層22を備える。センサ10は、ダイアフラム層16の下側に形成されたキャビティも備え、キャビティは加熱素子を熱的に隔離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンシステムのモニタリングに関し、特に燃料の低位発熱量及びウォッベ指数を測定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)、パイプライン天然ガスとLNGのブレンド、様々な低BTU燃料などで簡単に運転することのできるガス燃焼システムへの需要が増大している。したがって、エンジン性能が燃料の特性と合致するのを確実にするため、燃料の低位発熱量又はウォッベ指数を測定できるシステムが必要とされている。
【0003】
通常用いられているウォッベ指数測定システムの一つにガスクロマトグラフィ(GC)システムがある。GCシステムは、燃料成分を分離するガラスキャピラリ系と、その成分を定量的に同定する熱伝導率検出器又はフレームイオン化検出器(FID)を含む。しかし、GCシステムからの測定値は、連続的に得られるのではなく、約10分間隔で得られる。さらに、GCシステムは比較的高価であり、操作も難しい。
【0004】
よく用いられているもう一つのシステムは、燃料の品質を判定する熱量計システムであり、燃料の燃焼エネルギーを直接測定する。このシステムは燃料の組成にも周囲温度にも敏感で、周囲温度が変動すると大きな誤差を生じる。
【0005】
ガス濃度の正確な測定値を得る方法として微細加工ホットプレートを用いる方法がある。マイクロホットプレートは、代表的には、ガス検出皮膜を被覆し、この皮膜の対象ガスとの反応の熱量測定を行う。多くの用途において、ガスのガス検出皮膜への反応もしくは吸着を可能にするために、マイクロホットプレートを高温で作動させるのが有利である。代表的なマイクロホットプレートは、窒化ケイ素などのセラミック層の上に白金(Pt)などの金属ヒータ層を設けた構成である。マイクロホットプレートは高温で作動するので、マイクロホットプレートを構成する異種材料の膨張の温度係数が原因で大きな応力を生じ、これがマイクロホットプレートの破損につながるおそれがある。さらに、製造時に発生するマイクロホットプレートの大きな残留応力のために、装置は構造的に脆弱である。
【特許文献1】米国特許第5076147号明細書
【特許文献2】米国特許第5834627号明細書
【特許文献3】米国特許第6786716号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、前述した問題の1つ以上を解決することのできる、燃料品質を判定する改良システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様では、燃料のウォッベ指数を測定するセンサが提供される。本センサは、基板とダイアフラム層とを備える。このダイアフラム層は、燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された加熱素子を少なくとも1つ含む第1層を含み、加熱素子は基板上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含有する。ダイアフラム層は、第1層の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層も含む。センサはさらに、ダイアフラム層上に設けられた、触媒を含有する検出層と、ダイアフラム層の下側に、基板を除去することにより形成されたキャビティを備える。キャビティは、加熱素子を基板から熱的に隔離する。
【0008】
本発明の別の態様では、燃料のウォッベ指数を測定するシステムが提供される。本システムは、可燃性空気−燃料混合物を与える空気の流量と燃料の流量の一方又は両方を制御するように構成された流れ制御装置を備える。システムは、前記流れ制御装置と流体連通した第1センサも備える。第1センサは、基板とダイアフラム層とを含む。ダイアフラム層は、燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された加熱素子を少なくとも1つ含む第1層を含み、加熱素子は基板上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含有する。ダイアフラム層は、第1層の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層も含む。第1センサは、ダイアフラム層の下側に形成された第1キャビティも含み、このキャビティは加熱素子を基板から熱的に隔離する。本システムはまた、前記流れ制御装置と流体連通した第2センサも備える。第2センサは、基板とダイアフラム層とを含む。ダイアフラム層は、燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された加熱素子を少なくとも1つ含む第1層を含み、加熱素子は基板上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含有する。ダイアフラム層は、第1層の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層も含む。第2センサはさらに、ダイアフラム層上に設けられた、触媒を含有する検出層を含む。第2センサは、ダイアフラム層の下側に形成された第2キャビティも含み、このキャビティは加熱素子を基板から熱的に隔離する。本システムはさらに、前記センサと流体連通した、燃焼生成物の体積流量を測定するように構成されたセンサ排気部を備える。
【0009】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点が一層よく理解できるように、以下に添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面中同一符号は同じ部品を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に詳述するように、本発明の一実施形態は、燃料のウォッベ指数(Wobbe index)及び低位発熱量(LHV)を測定するセンサを含む。本発明を、工業的環境にあるガスタービンエンジン向けのセンサを中心に説明するが、本システムはガスタービンに限定されず、他の用途、例えばジェットエンジンでの燃料品質の判定や、パイプラインでの燃料組成の測定などに適用することもできる。さらに、ここで説明する原理や説明は、様々な気体状及び液状燃焼性燃料、例えば天然ガス、ガソリン、灯油、ディーゼル燃料、ジェット燃料などに適用できる。
【0011】
図1に、燃料のウォッベ指数及び低位発熱量(LHV)を測定するセンサ10を断面図にて示す。センサ10は基板12を含む。一実施形態では、基板12はケイ素基板である。絶縁層14が基板12上に設けられる。1例では、絶縁層14は酸化ケイ素層である。さらに、ダイアフラム層16が絶縁層14上に設けられる。ダイアフラム層16は、第1層又は加熱素子18を含み、代表的にはドープされたポリ炭化ケイ素から形成される。1例では、ドーパントは、n型又はp型ドーパントの1種以上であり、例えば、特に限定されないが、窒素、ホウ素、アルミニウム、第I族、第II族、第III族又は第V族元素が挙げられる。一実施形態では、加熱素子は、多数の抵抗体の直列又は並列なパターンを含む。不活性化層又は第2層20は、ドープされていないポリ炭化ケイ素から形成され、第1層18上に被覆されて、第1層を酸化から保護し、結果として作動中一定な抵抗を維持する。さらに、炭化ケイ素は耐酸化性かつ燃焼生成物に対して化学的に耐性であることが知られ、ダイアフラムが割れるおそれを小さくする。
【0012】
検出層22は触媒を支持構造に分散して構成され、空気−燃料混合物の燃焼を比較的低温で開始するのを可能にする。現在考えられる実施形態では、検出層22は白金をアルミナ中に分散した層である。触媒22の例には、特に限定されないが、貴金属、銅などの添加剤を添加した貴金属、半導体酸化物、ヘキサアルミン酸材料などがある。アルミナ以外の支持構造の例には、ヘキサアルミン酸、ジルコニア、セリア、チタニア、水和金属酸化物が挙げられる。キャビティ26がダイアフラム層16の下側に形成され、加熱素子18を周囲環境から熱的に隔離する。金属を含有する接点パッド28及び30で加熱素子18への電気接続を行う。
【0013】
図2は図1のセンサ10の平面図である。センサ10は多数の加熱素子18及び不活性化層20を含む。加熱素子18及び不活性化層20は、代表的には、多結晶炭化ケイ素から形成される。図1で説明したように、加熱素子18及び不活性化層20を含むダイアフラム層16は、マイクロホットプレートということもある。加熱素子18は、電流が流れるとマイクロホットプレートを加熱する構成である。図示の実施形態では、加熱素子18は、かなりの高温と苛酷な環境に耐えることができるドープト炭化ケイ素材料を含む。触媒を支持構造に担持した検出層22がダイアフラム層16上に被覆され、燃焼を開始する作用をなす。ダイアフラム層16は、接点パッド28及び30も含み、センサ10の電気接続を容易にする。現在考えられる実施形態では、接点パッド28及び30はドープされたポリ炭化ケイ素及びNi/Au層を含む。一実施形態では、接点パッド28及び30は他の適当な金属を含んでもよい。さらに、接点パッド材料を炭化ケイ素接点パッド28及び30上に堆積してもよい。接点パッド材料の例には、チタン、タングステン、金、ニッケル及びこれらの組合せがある。ドープされたポリ炭化ケイ素を含む素子32及び34で、接点パッド28及び30と加熱素子18とを電気接続する。
【0014】
ダイアフラム層16の加熱素子18及び不活性化層20に炭化ケイ素を用いると、苛酷な環境での作動に望ましい強固な信頼性の高い設計のセンサ10が得られるので、有利である。これにより、熱膨張係数の異なる材料、例えばセラミックと金属の使用を避けることができる。さらに、ダイアフラム層16の製造が信頼性高く、反復可能なものとなる。
【0015】
図3は、燃料のLHV及びウォッベ指数を測定するセンサ10を含むシステム50をブロック図にて示す。本システム50は、燃焼性燃料と空気との混合物(以下、「空気−燃料混合物」という)の流量を制御する流れ制御装置52を含む。一実施形態では、空気対燃料の割合を、過薄(リーン)混合気の場合のように当量比が1未満となるように固定する。流れ制御装置52は、空気供給ライン56へ空気を供給する1つ以上の空気入口54を含む。圧力調整器58で流れ制御装置52を通る空気の圧力を調節する。オリフィス板60で、圧力調整器58と流通関係にあるオリフィス62を画定する。圧力調整器58を用いてオリフィス62を通しての背圧を、オリフィス62を通しての空気流を絞る(チョークする)ように、調節する。オリフィス62の上流圧力が下流圧力より十分に高いので、オリフィス62に流れる空気の速度はほぼ一定である。このような流れを「チョーク」流れと呼ぶ。チョーク空気流れ条件を維持することにより、空気の質量流れは、非チョーク空気流と比較して、ほぼ安定に保たれる。
【0016】
同様に、天然ガスのような燃料の供給を1つ以上の燃料入口64から燃料供給ライン66に送る。圧力調整器68で流れ制御装置52を通る燃料の圧力を調節する。オリフィス板70で、圧力調整器68と流通関係にあるオリフィス72を画定する。圧力調整器68を用いてオリフィス72を通しての背圧を、オリフィス72を通しての燃料流を絞る(チョークする)ように、調節する。オリフィス72より上流の圧力が下流の圧力より十分に高いので、オリフィス72に流れる燃料の速度はほぼ一定であり、例えば「チョーク」流れとなる。チョーク燃料流れ条件を維持することにより、燃料の質量流れは、非チョーク燃料流と比較して、ほぼ安定に保たれる。燃料の密度が変化したら、質量流れを変化させることが可能である。しかし、燃料の密度とチョーク流れが与えられれば、質量流れの変動は簡単に計算できる。
【0017】
流れ制御装置52、特定すると圧力調整器58,68は燃料の質量流れと空気の質量流れとをバランスさせて、所望の空燃比を達成するように構成されている。さらに、流れ制御装置52は少なくとも約200℃までの温度の高温燃料の流れを制御するのに適当であり、また燃料から粒状物やタールなどの汚染物を濾過する。
【0018】
特定の実施形態では、バイパス74が燃料供給ライン66と流体連通している。バイパス74は可変ニードル弁76により作動制御され、所望通りの適当な量の燃料を下流に位置するセンサに供給するように、バイパス74を通る燃料の流量を増加する。例えば、オリフィス72が燃料供給ライン66を通る燃料流れを低い値に制御し、その結果燃料入口64と下流に位置するセンサとの全距離のせいで、センサ応答時間が望ましくないほど長くなることがある。センサ応答時間を短くするために、可変ニードル弁76を付勢して開にし、バイパス74を通る燃料流れを増加し、適当な量の燃料をセンサに供給する。
【0019】
空気の供給と燃料の供給を配管接合部80で合わせ、混合する。主空気−燃料供給ライン82は、配管接合部80で空気供給ライン56及び燃料供給ライン66それぞれと流体連通している。一実施形態では、空気−燃料混合物の空気の割合と燃料の割合を、空気−燃料混合物が燃焼可能になるように選択する。主空気−燃料供給ライン82は空気−燃料混合物を供給ライン82と流体連通しているセンサ装置10に送る。一実施形態では、センサ10は、内部にチャンバ88を画定するエンクロージャ87を含む。
【0020】
システム50は、第1又は基準マイクロホットプレート又はセンサ90と、これに対して所定位置に配置された第2又は触媒マイクロホットプレート又はセンサ100とを含む。第1センサ90及び第2センサ100は図1に示すセンサ10と同じである。基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100はチャンバ88内に配置される。一実施形態では、基準マイクロホットプレート90は、方向矢印103で示されるチャンバ88に流れる空気−燃料混合物の流れ方向に関して触媒マイクロホットプレート100と直列に並んでいる。別の実施形態では、基準マイクロホットプレート90は、チャンバ88に流れる空気−燃料混合物の流れ方向に関して触媒マイクロホットプレート100と並列に並んでいる。当業者に明らかなように、簡潔にするために、2つのマイクロホットプレート、即ち基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100が図示されている。しかし、システム50には多数の基準マイクロホットプレート90及び多数の触媒マイクロホットプレート100を直列又は並列配置で組み込み、燃焼変換効率を増加することができる。
【0021】
特定の実施形態では、基準マイクロホットプレート90はケイ素基板上に炭化ケイ素メンブランを含む。空気−燃料混合物が基準マイクロホットプレート90の流れ面92に流れるにつれて、基準マイクロホットプレート90からの熱が空気−燃料混合物に転送される。基準マイクロホットプレート90は検出マイクロホットプレート100と同一であるが、ガスとの反応が起こらないので、マイクロホットプレートからの対流及び伝達損失を測定することができる。
【0022】
空気−燃料混合物はさらに触媒マイクロホットプレート100に流れる。特定の実施形態では、触媒マイクロホットプレート100はケイ素基板上に炭化ケイ素メンブランを含む。触媒マイクロホットプレート100の少なくとも一部分が支持構造に担持された触媒で被覆される。触媒は高温安定な高比表面積材料に担持される。1例では、触媒はアルミナに担持された白金である。触媒の例には、特に限定されないが、パラジウムなどの貴金属がある。支持構造の例には、特に限定されないが、ヘキサアルミン酸塩、ジルコニア、セリア、チタニア又は水和金属酸化物、例えば水和酸化チタン(HTO)、シリカ添加水和酸化チタン(HTO:Si)、シリカ添加水和酸化ジルコニウム(HZO:Si)などがある。支持構造付きの触媒は安定性、反応性ともに良好である。空気−燃料混合物が触媒マイクロホットプレート100の表面に流れるにつれて、空気−燃料混合物は、触媒皮膜と接触する結果として燃焼し始め、そして燃焼熱は触媒マイクロホットプレート100に必要なパワーを少なくする。触媒マイクロホットプレート100は、ガス流にさらされたとき、システムの流れ及び熱変動を測定する構成である。この測定は、基準マイクロホットプレート90と比較して、システムの精度を増加する。基準マイクロホットプレート90は非反応性膜コーティング、例えば触媒なしのアルミナを含む。
【0023】
支持触媒は、触媒マイクロホットプレート100の空気−燃料混合物の流れにさらされる流れ面102上に堆積することができる。いつも一定な性能を得るために、信頼性の高い触媒堆積が望ましい。触媒は触媒マイクロホットプレート100の流れ面102上に、当業界で周知の適当な堆積法で堆積すればよい。センサ10内での空気−燃料混合物の燃焼から得られる燃焼生成物は、センサ排気部106に導かれ、その後排気出口108から大気中に放出される。
【0024】
温度制御システム110は、作動中に最適な温度を維持するよう構成され、センサ10と連通している。温度制御システム110は、基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100を一定な温度に維持する。さらに、温度制御システム110は、固定抵抗値、そしてその結果として所望の温度を維持するために、基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100への入力(パワー)を変えることにより、基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100のアクティブコントロールを行う。特定の実施形態では、温度制御システム110は一定な温度を維持するのに必要な入力(パワー)を測定する。特定の実施形態では、基準マイクロホットプレート90からの熱を空気−燃料混合物に転送し、そして一定な温度を維持するのに必要な基準マイクロホットプレート90に供給する入力(パワー)の変化をモニタすることにより、対流もしくは伝達パワーロスを測定する。別の実施形態では、燃焼からの外部加熱が流れ面102の温度を上げるように作用するとき、温度制御システム110がパワーを下げて補償を行い、その結果として触媒マイクロホットプレート100を一定な温度に維持する。
【0025】
温度制御システム110とインターフェースするマイクロプロセッサ114は、センサ10で取り込まれた測定値をモニタし、記録するよう構成されている。さらに、マイクロプロセッサ114は燃料のLHV及びウォッベ指数を計算する。特定の実施形態では、センサ排気部106をマイクロプロセッサ114とカップリングして、排気出口108を通る質量流れをフィードバックすることができる。特定の実施形態では、温度を約400℃に維持する。基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100に供給される電力(パワー)の全体的変化はLHVと直接関係している。さらに、基準マイクロホットプレート90及び触媒マイクロホットプレート100の応答時間はミリ秒程度であり、LHVの実時間測定となる。
【0026】
図4は、2つのウォッベ指数センササンプルについて、抵抗測定値を温度の関数として示したグラフ130である。X軸132は℃で測定した温度を表し、Y軸134はオームで測定した抵抗を表す。温度はセンサから赤外高温計により測定する。抵抗は、センサに供給する電圧及び電流を測定することにより、V=I・R(式中のVは電圧、Iは電流、Rは抵抗である)で与えられるオームの法則により求める。曲線136及び138が示す通り、抵抗は温度に対して指数関数的に減少する。曲線136は第1センサについての抵抗測定値を示し、曲線138は第2センサについての抵抗測定値を示す。指数関数への最小二乗の当てはめを曲線136及び138について行い、抵抗と温度の関数関係を得る。この関係を用いて、作動中にマイクロホットプレートを所望の温度に設定する。当業者に明らかなように、他の関数関係、例えばSteinhart equationも使用できる。曲線136及び138は、製造のばらつきのため、互いに相違する。ばらつきには、特に限定されないが、ダイアフラム厚さ、ドーピングレベル、抵抗体トラック幅の小さな差などがある。
【0027】
上述したウォッベ指数センサ及びウォッベ指数及びLHVを検出するシステムの種々の実施形態は、燃料のエネルギー含量の効率よい正確な測定を達成することができる。これらのシステムは、改良されたリアルタイムの検出技術であるので、高効率な燃焼システムを実現することもできる。
【0028】
勿論、必ずしも上述した目的及び効果のすべてが特定の実施形態により達成できる訳ではない。したがって、例えば、本システム及び方法は、ここに記載した効果の1つ又は2つ以上を達成するか最適化する態様で実施できること、そしてその場合必ずしもここに示唆される他の目的又は効果を達成することがなくてもよいことが、当業者に明らかである。
【0029】
以上、本発明のいくつかの特徴だけを具体的に説明したが、種々の変更や改変が可能である。したがって、特許請求の範囲はこのような変更例や改変例もすべてその要旨の範囲内に入るものとして包含する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料のウォッベ指数を測定するセンサの断面図である。
【図2】図1のセンサの平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る図1のセンサを用いた、燃料のウォッベ指数を測定するシステムのブロック図である。
【図4】2つのウォッベ指数センササンプルについての抵抗を温度の関数として示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
10 センサ
12 基板
14 絶縁層
16 ダイアフラム層
18 第1層又は加熱素子
20 不活性化層
22 検出層
28,30 接点パッド
50 システム
52 流れ制御装置
54 空気入口
56 空気供給ライン
58,68 圧力調整器
60,70 オリフィス板
62,72 オリフィス
64 燃料入口
66 燃料供給ライン
74 バイパス
90 基準マイクロホットプレート
100 触媒マイクロホットプレート
102 流れ面
110 温度制御システム
114 マイクロプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料のウォッベ指数の測定用センサ(10)であって、
(a)基板(12)と、
(b)(i)燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された1以上の加熱素子を含む第1層(18)であって、該加熱素子が基板上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含む第1層(18)と、(ii)第1層(18)の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層(20)とを備えるダイアフラム層(16)と、
(c)触媒を含有し、ダイアフラム層(16)上に設けられた検出層(22)と、
(d)ダイアフラム層(16)の下側に形成され、上記加熱素子を熱的に隔離するキャビティと
を備えるセンサ(10)。
【請求項2】
さらに、基板(12)上に設けられた絶縁層(14)を備える、請求項1記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記触媒が、金属を支持構造中に分散してなる層を含む、請求項1記載のセンサ(10)。
【請求項4】
当該センサが加熱素子の抵抗率測定値に基づいて温度を検出するよう構成されている、請求項1記載のセンサ(10)。
【請求項5】
燃料のウォッベ指数の測定するためのシステム(50)であって、
可燃性空気−燃料混合物を与える空気の流量と燃料の流量の一方又は両方を制御するように構成された流れ制御装置(52)と、
上記流れ制御装置(52)と流体連通した第1センサ(90)であって、(a)第1基板(12)と、(b)(i)燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された1以上の加熱素子を含む第1層(18)であって、該加熱素子が第1基板上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含む第1層(18)と(ii)第1層(18)の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層(20)とを備える第1ダイアフラム層(16)と、(d)第1ダイアフラム層(16)の下側に形成され、上記1以上の加熱素子を熱的に隔離する第1キャビティとを備える第1センサ(90)と、
上記流れ制御装置(52)と流体連通した第2センサ(100)であって、(a′)第2基板(12)と、(b′)(i)燃料中のエネルギー含量を検出するように構成された複数の加熱素子を含む第1層(18)であって、該加熱素子が第2基板上に設けられたドープトポリ炭化ケイ素を含む第1層(18)と、(ii)第1層の酸化を防止するように構成された非ドープトポリ炭化ケイ素層を含む第2層(20)とを備える第2ダイアフラム層(16)と、(c′)触媒を含有し、第2ダイアフラム層(16)上に設けられた検出層(22)と、(d′)第2ダイアフラム層(16)の下側に形成され、上記加熱素子を熱的に隔離する第2キャビティとを備える第2センサ(100)と、
上記センサ(10)と流体連通し、燃焼生成物の体積流量を測定するように構成されたセンサ排気部(106)と
を備えるシステム(50)。
【請求項6】
さらに、前記ダイアフラム層(16)及び検出層(22)のそれぞれと制御通信関係にあり、前記ダイアフラム層(16)及び検出層(22)を一定温度に維持するよう構成された温度制御システム(110)を備える、請求項5記載のシステム(50)。
【請求項7】
第1センサ(90)が第1基板(10)上に設けられた第1絶縁層(14)を含み、第2センサ(100)が第2基板上に設けられた第2絶縁層を含む、請求項5記載のシステム(50)。
【請求項8】
前記触媒が、金属を支持構造中に分散してなる層を含む、請求項5記載のシステム(50)。
【請求項9】
第1センサ(90)及び第2センサ(100)が加熱素子の抵抗率測定値に基づいて温度を検出するよう構成されている、請求項5記載のシステム(50)。
【請求項10】
前記燃料が気体状又は液状燃料系を含む、請求項5記載のシステム(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−20106(P2009−20106A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178524(P2008−178524)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】