説明

ウォーターホース及びホース用混合物

【課題】ホースの肉厚を薄くできるホース用混合物からなるウォーターホース及びホースの肉厚を薄くできるホース用混合物を提供する。
【解決手段】同心上に管状の内層11と外層12とを有し、内層11と外層12との間に補強糸13を編成してなる補強糸層14を含むウォーターホース10であって、内層11と外層12とが、非結晶性のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体である非結晶性EPDMと融点が45〜105℃で、融解熱量が3〜40J/gである結晶性高分子剤とを質量比が80/20〜30/70となるように含み、100℃のムーニー粘度が80以下であり、加硫物の伸び10%時の引張応力が1.0MPa以上であるホース用混合物を加硫してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータホース等のウォーターホース及びウォーターホースに用いられるホース用混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ラジエータホース、ヒーターホース等のウォーターホースは、同心上に管状の内層と外層とを有し、ホースの機械的強度等を増すために内層と外層との間にポリアミド等からなる補強糸を編成してなる補強糸層を含んでいる。内層及び外層は、ホースの耐水性、耐熱性、耐候性等を考慮して、特許文献1記載のように、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)を含むホース用混合物を加硫したものから形成されている。
また、ウォーターホースの製造方法は、特許文献2記載のように、内層押出機により管状に内層を成形し、スパイラル装置を用いてその外周に補強糸をスパイラル状に編成して補強糸層を設けた後、外層押出機により補強糸を覆うように外層を成形している。
従って、内層及び外層に用いられるエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体は成形性(押出性)を考慮すると粘度の低いものが好ましい。
【0003】
ところが、ウォーターホースは、自動車に組付けたときに屈曲して閉塞しないための剛性及びホース内を流れる冷却液等の圧力に耐え得るための耐圧性等が要求されていることから、内層及び外層の成形性をも考慮するとホースの肉厚が厚いものとならざるをえなかった。
【0004】
なお、特許文献3には、ホース用のゴム材(混合物)ではないが、高融点(約140℃以上)の1,2−ポリブタジエンをEPDM等のゴムに混合したゴム組成物が記載されている。しかし、これを用いてもウォーターホースの肉厚を薄くすることはできないものと考えられる。
【特許文献1】特許第2577648号公報
【特許文献2】特開平11−311377号公報
【特許文献3】特開昭62−86035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ホースの肉厚を薄くできるホース用混合物からなるウォーターホース及びホースの肉厚を薄くできるホース用混合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
A.ウォーターホース
上記目的を達成するため、本発明のウォーターホースは、同心上に管状の内層と外層とを有し、該内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースであって、
前記内層及び外層がエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(以下、「EPDM」と言う)とエチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体(以下、「EBDM」と言う)とを質量比(EPDM/EBDM)が80/20〜30/70となるように含むホース用混合物を加硫してなり、
前記EBDMのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が前記EPDMのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)より低いことを特徴としている。
【0007】
ここで、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、JIS K6300に準拠して測定した、ロータの形状L形、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃におけるムーニー粘度である(以下、「100℃のムーニー粘度」と言う)。
【0008】
また、EPDMとEBDMとの質量比(EPDM/EBDM)が70/30〜50/50であることが好ましく、より好ましくは、70/30〜60/40である。
【0009】
また、上記のウォーターホースに用いられるホース用混合物の加硫物の伸び10%時の引張応力(M10)が1.0〜2.0MPaであることが好ましく、より好ましくは、1.2〜1.7MPaである。
【0010】
本明細書において、伸び10%時の引張応力(M10)は、JIS K6251に準拠して測定した値である。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の別のウォーターホースは、同心上に管状の内層と外層とを有し、該内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースであって、
前記内層と外層とが次に記載のホース用混合物を加硫してなっている。
【0012】
B.ホース用混合物
上記目的を達成するため、本発明のホース用混合物は、同心上に管状の内層と外層とを有し、該内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースの該内層と外層とに加硫して用いられるホース用混合物であって、
非結晶性のEPDMである非結晶性EPDMと融点が45〜105℃で、融解熱量が3〜40J/gである結晶性高分子剤とを含み、
加硫物の伸び10%時の引張応力が1.0MPa以上であることを特徴としている。
【0013】
本明細書において、融点(Tm)は、結晶性高分子剤の結晶性がほぐれ、流動しはじめる温度である。
【0014】
また、100℃のムーニー粘度としては、特に限定はされないが、ウォーターホースを成形しやすくなることから、80以下であることが好ましい。
【0015】
また、JIS K6300に準拠して測定した、ロータの形状L形、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、80℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)80℃)(以下、「80℃のムーニー粘度」と言う)としては、特に限定はされないが、130以下であることが好ましい。
【0016】
また、非結晶性EPDMと結晶性高分子剤との質量比(非結晶性EPDM/結晶性高分子剤)としては、特に限定はされないが、80/20〜30/70であることが好ましい。
【0017】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0018】
1.補強糸
補強糸の太さとしては、特に限定はされないが、長さ10,000m当りのグラム単位の重さであるdtex(デシテックス)単位において、940〜2800であることが好ましく、ラジエータホースのように内径が大きい(20mm以上)ものについては、1880〜2800であることがより好ましく、ヒーターホースのように内径が小さい(20mm未満)ものについては、940〜1880であることがより好ましい。
補強糸に用いられる材料としては、特に限定はされないが、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T等のポリアミド樹脂やアラミド樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、レーヨン等が例示できる。
また、補強糸は、上記の材料の一種からなる糸であってもよいし、二種以上からなる糸であってもよい。
また、補強糸は、内層及び外層との接着性等を考慮して、RFL処理等のような表面処理を施したものであってもよい。
【0019】
2.非結晶性EPDM
100℃のムーニー粘度が、EBDMの100℃のムーニー粘度よりも高いEPDMでもある非結晶性EPDMとしては、特に限定はされないが、ウォーターホースに一般的に用いられるものを用いることができる。
また、100℃のムーニー粘度としては、特に限定はされないが、40〜200であることが好ましく、より好ましくは、80〜120である。
また、第三成分である非共役ジエンの含有量(EPDM中の非共役ジエン成分の量)としては、特に限定はされないが、2〜8質量%であることが好ましい。
また、非共役ジエン成分としては、特に限定はされないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)等が例示でき、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であることが好ましい。
【0020】
3.結晶性高分子剤
結晶性高分子剤としては、特に限定はされないが、EBDM、1,2−ポリブタジエン又は結晶性のEPDMである結晶性EPDMが好ましい。
また、結晶性高分子剤は、結晶性であることから、融点(Tm)をもっている。
融点(Tm)が45℃未満では、伸び10%時の引張応力(M10)が小さくなる。一方、105℃を超えると、押出加工が難しくなる。好ましくは、50〜103℃である。
融解熱量が3J/g未満では、分子中等に結晶化している部分が少なく、ホース用混合物の強度(特に剛性)を向上させることが難しくなる。一方、40J/gを超えると、加工が難しくなる。好ましくは、5〜38J/gである。
【0021】
4.EBDM
EBDMとしては、特に限定はされないが、粘度が低い方がウォーターホースを成形しやすいことから、100℃のムーニー粘度が、非結晶性EPDMの100℃のムーニー粘度より低いものであることが好ましい。
EBDMの100℃のムーニー粘度としては、特に限定はされないが、10〜40であることが好ましく、より好ましくは、10〜30であり、さらに好ましくは、15〜25である。
また、第三成分である非共役ジエンの含有量(EBDM中の非共役ジエン成分の量)としては、特に限定はされないが、2〜13質量%であることが好ましい。
また、非共役ジエン成分としては、特に限定はされないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)等が例示でき、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であることが好ましい。
【0022】
5.1,2−ポリブタジエン
1,2−ポリブタジエンとしては、特に限定はされないが、融点が50〜105℃のものであることが好ましく、より好ましくは、70〜103℃のものである。融解熱量が3〜15J/gであることが好ましく、より好ましくは、5〜10J/gである。
【0023】
6.結晶性EPDM
結晶性EPDMとしては、特に限定はされないが、粘度が低い方がウォーターホースを成形しやすいことから、100℃のムーニー粘度が、非結晶性EPDMの100℃のムーニー粘度より低いものであることが好ましい。
100℃のムーニー粘度としては、特に限定はされないが、10〜40であることが好ましく、より好ましくは、15〜35である。
また、第三成分である非共役ジエンの含有量(EPDM中の非共役ジエン成分の量)としては、特に限定はされないが、2〜10質量%であることが好ましい。
また、非共役ジエン成分としては、特に限定はされないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)等が例示でき、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であることが好ましい。
【0024】
7.加硫の仕方
ホース用混合物の加硫の仕方としては、特に限定はされないが、ウォーターホースの加硫に一般的に用いられている方法を用いることができ、加硫缶を用いる方法、連続加硫機を用いる方法等が例示できる。加硫条件としては、特に限定はされないが、140〜165℃の温度で、10〜50分間加熱することが好ましい。
【0025】
8.加硫系薬品
ホース用混合物は、加硫するための加硫系薬品を含むものである。
ホース用混合物を加硫するための加硫系薬品の添加量としては、特に限定はされないが、非結晶性EPDMと結晶性高分子剤との合計量100質量部に対し、2〜6質量部であることが好ましい。
また、加硫系薬品としては、特に限定はされないが、硫黄、有機加硫剤、加硫促進剤等が例示できる。これらのものの一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0026】
8−1.有機加硫剤
有機加硫剤としては、特に限定はされないが、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、4,4’−ジチオジモルホリン、安息香酸アンモニウム、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、テトラクロロベンゾキノン、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミンや、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールスルフィド樹脂等が例示できる。また、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシクメン等の有機過酸化物が例示できる。
【0027】
8−2.加硫促進剤
加硫促進剤としては、特に限定はされないが、チアゾール系化合物、ジチオカルバミン酸塩系化合物、スルフェンアミド系化合物、チウラム系化合物等が例示できる。
【0028】
8−2−1.チアゾール系化合物
チアゾール系化合物としては、特に限定はされないが、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N’−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が例示できる。
【0029】
8−2−2.ジチオカルバミン酸塩系化合物
ジチオカルバミン酸塩系化合物としては、特に限定はされないが、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が例示できる。
【0030】
8−2−3.スルフェンアミド系化合物
スルフェンアミド系化合物としては、特に限定はされないが、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が例示できる。
【0031】
8−2−4.チウラム系化合物
チウラム系化合物としては、特に限定はされないが、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が例示できる。
【0032】
9.その他の添加剤
ホース用混合物は、ウォーターホースの性能等を向上させるため、充填剤、軟化剤等の添加剤が添加されていてもよいし、添加されていなくてもよい。
【0033】
10.内層と外層との厚さ比
内層と外層との厚さの比は、特に限定はされないが、内層/外層が40/60〜70/30であることが好ましい。
【0034】
11.ウォーターホースの用途
エンジンの冷却水のような水が主成分の液体を流すためのウォーターホースの用途としては、特に限定はされないが、内径が20mm未満の細いものは、エンジンとヒーターユニットとを繋ぐヒーターホース等が好ましく、内径が20mm以上(より好ましくは25mm以上)の太いものは、ラジエータとエンジンとを繋ぐラジエータホース等が好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ホースの肉厚を薄くできるホース用混合物からなるウォーターホース及びホースの肉厚を薄くできるホース用混合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
同心上に管状の内層と外層とを有し、内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースの内層と外層とに加硫して用いられるホース用混合物であって、
非結晶性のEPDMである非結晶性EPDMと融点が45〜105℃で、融解熱量が3〜40J/gである結晶性高分子剤とを質量比(非結晶性EPDM/結晶性高分子剤)が80/20〜30/70となるように含み、
100℃のムーニー粘度が80以下であり、
加硫物の伸び10%時の引張応力が1.0MPa以上であることを特徴とするホース用混合物。
また、同心上に管状の内層と外層とを有し、内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースであって、
内層と外層とが、非結晶性のEPDMである非結晶性EPDMと融点が45〜105℃で、融解熱量が3〜40J/gである結晶性高分子剤とを質量比(非結晶性EPDM/結晶性高分子剤)が80/20〜30/70となるように含み、100℃のムーニー粘度が80以下であり、加硫物の伸び10%時の引張応力が1.0MPa以上であるホース用混合物を加硫してなるウォーターホース。
【実施例】
【0037】
図1に示すように、本発明のウォーターホース10は、同心上に管状の内層11と外層12とを有し、内層11と外層12との間にポリアミド66(ナイロン66)からなる補強糸13を編成してなる補強糸層14を含むものである。
【0038】
また、本発明のホース用混合物は、内層11と外層12とに加硫して用いられている。
【0039】
そこで、本発明のホース用混合物の実施例(14種類)及び比較例(4種類)の配合及び物性等の測定結果を次の表1、2に示す。
なお、配合欄の単位は、質量部である。
また、各試料の伸び10%時の引張応力(M10)と100℃のムーニー粘度又は80℃のムーニー粘度との関係のグラフを図2(100℃のムーニー粘度)、図3(80℃のムーニー粘度)に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
本実施例又は比較例に用いた3種類のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)、1種類のEBDM、3種類の1,2−ポリブタジエン及び1種類の1,4−ポリブタジエンは次のものである。
【0043】
EPDM1は、非結晶性であり、100℃のムーニー粘度が100であり、第三成分である非共役ジエン成分は、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であり、その含有量は、4.5質量%のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(非結晶性EPDM)であった。
【0044】
EPDM2は、融点が95℃であり、DSC(示差走査熱量計)で測定した融解熱量が38J/g(mJ/mg)であり、100℃のムーニー粘度が32であり、第三成分である非共役ジエン成分は、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であり、その含有量は、4.5質量%のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(結晶性EPDM)であった。
【0045】
EPDM3は、非結晶性であり、100℃のムーニー粘度が45であり、第三成分である非共役ジエン成分は、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であり、その含有量は、8.1質量%のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(非結晶性EPDM)であった。
【0046】
EBDMは、融点が50℃であり、DSC(示差走査熱量計)で測定した融解熱量が34J/g(mJ/mg)であり、100℃のムーニー粘度が20であり、第三成分である非共役ジエン成分は、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)であり、その含有量は、10.5質量%であった。
【0047】
1,2−ポリブタジエン1は、融点が71℃であり、DSC(示差走査熱量計)で測定した融解熱量が5J/g(mJ/mg)の1,2−ポリブタジエンであった。
【0048】
1,2−ポリブタジエン2は、融点が95℃であり、DSC(示差走査熱量計)で測定した融解熱量が10J/g(mJ/mg)の1,2−ポリブタジエンであった。
【0049】
1,2−ポリブタジエン3は、融点が103℃であり、DSC(示差走査熱量計)で測定した融解熱量が5J/g(mJ/mg)の1,2−ポリブタジエンであった。
【0050】
1,4−ポリブタジエンは、非結晶性であり、100℃のムーニー粘度が44であった。
【0051】
表1、2のホース用混合物の物性等は以下のようにして測定した。
【0052】
(1)ムーニー粘度(ML(1+4)80℃)、(ML(1+4)100℃)
JIS K6300に準じ、L型ロータを用い、80℃又は100℃の試験温度で1分間予熱し、ロータの回転時間を4分間として行った。
【0053】
(2)常態物性
160℃で15分間の加熱により加硫した試験片の引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)、伸び10%時の引張応力(M10)及び硬さ(HS)をそれぞれ測定した。
引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)及び伸び10%時の引張応力(M10)は、JIS K6251に準拠して行った。
硬さ(HS)は、JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメータを用いて行った。
【0054】
(3)押出し性
押出し機を用いて押出し時の圧力により良好又は不良の評価を行った。
【0055】
以上の物性等の測定結果を踏まえ、各試料(ホース用混合物)の評価を行った。○:良好、×:不良である。
図2、3にも示すように、全ての実施例(14種類)は、比較例と比べ、ムーニー粘度が相対的に低く、且つ、伸び10%時の引張応力(M10)が相対的に高い傾向がある。従って、特に100℃のムーニー粘度が低い(68以下)ことから、押出し性が良好である上に、伸び10%時の引張応力(M10)も高い(1MPa以上)ことから、総合評価は良好であった。
【0056】
本発明のホース用混合物によれば、加工時(80〜100℃)の粘度が低く、且つ、加硫物の剛性(伸び10%時の引張応力)が高いことから、ウォーターホースの肉厚を薄くすることができる。
【0057】
次に、本発明に係るウォーターホースの実施例1a〜4a及び比較例1b〜3bの構成及び性能等の測定結果を次の表3に示す。
本発明の実施例には、ホース用混合物の実施例2(配合名A2)又は実施例3(配合名A3)を用い、比較例には、ホース用混合物の比較例1(配合名B1)を用いた。
なお、本表における肉厚比(t/φ)は、ホース肉厚(t)をホース内径(φ)で割った値である。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例及び比較例のそれぞれの試料(ウォーターホース)は、内層押出機により管状に内層を成形し、スパイラル装置を用いてその外周に補強糸をスパイラル状に編成して補強糸層を設けた後、外層押出機により補強糸を覆うように外層を成形して作成した。その後、150℃において、25分間加熱を行い、内層及び外層に用いたホース用混合物の加硫を行った。
【0060】
各ウォーターホースの各性能試験については、次のようにして行った。
【0061】
(a)破裂圧
室温中で、試料であるウォーターホースの一端を耐圧試験機にホースクランプを用いて固定した後、試料内(ホース内)をエンジン冷却液で満たした。その後、他端を密栓し、一定速度(1.98MPa/min)で昇圧して、試料が破裂した時の圧力を求めた。
【0062】
(b)圧縮荷重
長さ25mmの試料(ウォーターホース)をホースの径方向に一定速度(30mm/min)で圧縮し、径方向に10mm圧縮した時の荷重を求めた。
【0063】
(c)減厚量(ヘタリ)
試料を相手部品であるパイプに外嵌し、外周より板ばねクリップを用いて圧着した。この状態で120℃の雰囲気中に120時間静置し、肉厚の減厚量を0.67時間経過時を基準(0mm)として求めた。なお、減厚量は、外周に取付けている板状クリップの外径を測定し、その値の差を半分にしたものである。
また、各試料の減厚量の経時変化を図4に示す。
【0064】
ホース内径が30mmである比較例3bは、ホース内径が同じである比較例1bより、ホース肉厚を薄く(4mm→2.5mm)し、補強糸も細く(2800dtex→1880dtex)したことにより、組付時に屈曲して閉塞しないための剛性の指標である圧縮荷重が低下した。
【0065】
ホース内径が30mmである実施例1a、2aは、ホース内径が同じである比較例1bよりホース肉厚を30%以上薄く(4mm→2.5mm)し、且つ補強糸も細く(2800dtex→1880dtex)したにもかかわらず、ウォーターホースに必要な、破裂圧及び圧縮荷重を確保することができた。また、減厚量も小さくなり、比較例1bと比べ、耐ヘタリ性が向上した。
【0066】
ホース内径が30mmである実施例1a、2aは、ホース肉厚(2.5mm)及び補強糸(1880dtex)が同じである比較例3bより、破裂圧、圧縮荷重及び耐ヘタリ性の全てが優れていた。
【0067】
ホース内径が37mmである実施例3a、4aは、ホース内径が同じである比較例2bよりホース肉厚を30%以上薄く(5mm→3.5〜3.1mm)し、且つ補強糸も細く(2800dtex→1880dtex)したにもかかわらず、比較例2bより圧縮荷重が向上した。
【0068】
以上の結果より、本発明によれば、ウォーターホースに求められる破裂圧及び圧縮荷重を確保しつつ、ホース肉厚を薄くすることで、ウォーターホースの軽量化及びコスト削減が図れる。
また、耐ヘタリ性が向上することで、経時劣化等によるシール性の低下を抑えることができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例のウォーターホースの斜視図である。
【図2】100℃のムーニー粘度とM10との関係のグラフである。
【図3】80℃のムーニー粘度とM10との関係のグラフである。
【図4】減厚量の経時変化のグラフである。
【符号の説明】
【0071】
10 ウォーターホース
11 内層
12 外層
13 補強糸
14 補強糸層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心上に管状の内層と外層とを有し、該内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースであって、
前記内層及び外層がエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体とエチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体とを質量比(エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体/エチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体)が80/20〜30/70となるように含むホース用混合物を加硫してなり、
前記エチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が前記エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML(1+4)100℃)より低いことを特徴とするウォーターホース。
【請求項2】
前記質量比(エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体/エチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体)が70/30〜60/40である請求項1記載のウォーターホース。
【請求項3】
前記ホース用混合物の加硫物の伸び10%時の引張応力が1.0〜2.0MPaである請求項1又は2記載のウォーターホース。
【請求項4】
同心上に管状の内層と外層とを有し、該内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースの該内層と外層とに加硫して用いられるホース用混合物であって、
非結晶性のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体である非結晶性EPDMと融点が45〜105℃で、融解熱量が3〜40J/gである結晶性高分子剤とを含み、
加硫物の伸び10%時の引張応力が1.0MPa以上であることを特徴とするホース用混合物。
【請求項5】
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が80以下である請求項4記載のホース用混合物。
【請求項6】
前記非結晶性EPDMと前記結晶性高分子剤との質量比(非結晶性EPDM/結晶性高分子剤)が80/20〜30/70である請求項4又は5記載のホース用混合物。
【請求項7】
前記結晶性高分子剤がエチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体、1,2−ポリブタジエン又は結晶性のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体である結晶性EPDMである請求項4〜6のいずれか一項に記載のホース用混合物。
【請求項8】
同心上に管状の内層と外層とを有し、該内層と外層との間に補強糸を編成してなる補強糸層を含むウォーターホースであって、
前記内層と外層とが請求項4〜7のいずれか一項に記載のホース用混合物を加硫してなるウォーターホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−137272(P2009−137272A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84234(P2008−84234)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】