ウラン−キレートペプチド及びそれらの使用
本発明はウラン−キレートペプチドに関し、ウランで汚染された土壌及び水の汚染を除去するための、ならびに、人々を検出及び治療するためのそれらの使用も同様である。前記ペプチドは、4つのカルモジュリンカルシウム結合部位:部位I:D20、D22及びD24残基において選択される残基;部位II:D56、D58及びN60残基において選択される残基;部位III:D93、D95及びN97残基において選択される残基;部位IV:D129、D131及びD133残基において選択される残基;該位置は参考文献でヒトカルモジュリン配列を示す、の少なくとも一つの、一つ、二つまたは三つの残基の、S、T、C、H、Y、N及びQからなる群から選択される中性残基の少なくとも一つの突然変異を含むカルモジュリンループの配列を含むへリックス−ループ−へリックス型構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウラン−キレートペプチド、および、土壌及び水の汚染を除去するための、ならびに、ウランで汚染された個体を検出及び処置するための、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウランは、通常、非常に低い濃度で環境中に、同位体238(99.27%)及び235(0.72%)の形態で、存在し、これは弱い放射線毒性のα粒子の放出を介して崩壊し;ウラニル形態(UO22+)は、酸化雰囲気におけるウランの最も一般的な形態を表す。
【0003】
しかし、特定の場所において、例えばウラン鉱山近く、保管場所(核管理または劣化ウラン弾薬の貯蔵)、あるいは、原子力事故の場合に、この金属の濃度は非常に高くなり得、そして、それが腎臓及び骨に蓄積する:腎組織に対する毒性及び骨組織癌の発生、という事実のために、ヒトに危険性を示す。
【0004】
汚染された場所及び個体の汚染除去は、第一に、環境中の及び汚染された個体の体内のウランの毒性を中和するための手段を有すること、そして、第二に、この金属に効果的及び特異的な検出試薬を要求する。しかし、特に、それらの汚染除去を行うための、ウランを検出できる(センサー)、ならびに、汚染された環境及び/または生物学的な媒体に存在し得る、この毒性金属をキレートできるウラン−特異的リガンドの欠如のために、ウランを検出する及び汚染を除去するための効果的な手段は現在存在しない。
【0005】
土壌の汚染を除去するための現在の処置は、単に、堀削、採集及び適当な場所における貯蔵により、または、キレート剤を使用するウランの抽出により行われる;これらの物理化学処理は高価であり、あまり特異的でなく、または、全く特異的ではなく、そして、非常に広い汚染表面の処理にあまり好適でなく、そしてまた、ウランへの繰り返しの暴露のために、操作員に対する汚染の高いリスクが存在する。あるいは、ウランで汚染された土壌及び水の汚染を除去するために、生きている生物体(より高等の植物または微生物)を使用することが提案されている。この方法は、金属の吸収、ゆえに、これらの生物体によるこれらの封印に基づく。例えば、植物は、根より毒性金属を吸収すること及び葉にそれらを蓄積することができ、これは後に適当な場所に採集され及び貯蔵される;現在利用可能な生物体は、高濃度の毒性金属の抽出、耐性及び蓄積に関するそれらの低性能のために、汚染した土壌及び水の効果的な汚染除去を許容しない。
【0006】
ウランで汚染しているであろう個体中のウランの検出は、ex siteで、プラズマ質量分析法(ICP−MS)により行われる;この技術は、実施することが困難であり、そして高価である。
【0007】
ウランで汚染された個体の処置は、ウランを結合するキレート剤の投与によって行われ、そして、その排泄を促進し、ゆえに、腎臓及び骨におけるその沈着を減少する。主なウラン−キレート剤の中で:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、5−アミノサリチル酸(5−AS)、没食子酸、スルホカテコール(sulfocatechol)、カルボキシカテコール(carboxycatechol)及びヒドロキシピリジノン、が挙げられ得;これらのキレート剤は、ウラン−特異的でない欠点を有する。
【0008】
特に水性媒体または生物試料において、特定の金属を特異的に検出するために、様々なアプローチが開発されている:
−蛍光化学センサー(Tsien, 1993: Fluorescent chemosensors for ion and molecule recognition, pages 130-146, Czarnik AW (ed), American Chemical Society, Washington DC);これらの蛍光センサーは、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムに特異的であり;一方、ウラン−特異的化学センサーは記載されていない;
−少なくとも一つの蛍光基で標識された、ジンクフィンガードメイン由来の、約26アミノ酸のペプチドからなる蛍光ペプチドセンサー(バイオセンサー)(Walkup et al., 1996, J. Am. Soc., 119, 3443-3450; Godwin et al., 1998, J. Am. Soc., 118, 6514-6515; Walkup et al., 1997, J. Am. Soc., 119, 3443-3540)。亜鉛イオンの存在下、これらのペプチドバイオセンサーは、金属を取り巻く構造を形成し、そして、結果として、金属の濃度に依存する蛍光放出における変動を生じる環境変化に該蛍光基を暴露する。あるいは、該ペプチドが2つの好適な蛍光基と結合される時、亜鉛の該ペプチドとの結合は、結果として2つのフルオロフォアの間のエネルギーの効果的な移動に有利なコンフォーメーション変化を生じ(Fluorescence Resonance Energy Transfer or FRET)、結果として金属の濃度に比例した蛍光シグナルの放出を生じる(上記のWalkup et al., 1996)。「ジンクフィンガー」ドメインの構造のために(これは、亜鉛のように、四面体のジオメトリーを備えたイオンのキレートに適する)、これらのバイオセンサーは、ウランをキレートすることを可能にせず、これは、酸化されたメディウムにおいて最も一般的であるそのウラニル形態(UO22+)において、配位数7−8を備えた五角形のまたは六角形の両錐体ジオメトリー(ウランVI)を示す;
−「カメレオン(chameleons)」と呼ばれる、そのNH2末端からそのCOOH末端を、連続して含む融合タンパク質からなる、蛍光タンパク質センサー:クラゲAequorea victoria由来のGFP蛍光タンパク質の青色またはシアン突然変異体(EBFPまたはECEP、蛍光供与体)、N−及びC−末端ドメインならびにカルシウムイオン−結合部位I及びIIを含むカルモジュリン(CaM)、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)のカルモジュリン−結合ドメインから由来する26残基のカルモジュリン−結合ペプチド、そして、同じ蛍光タンパク質の別の緑色または黄色突然変異体(EGFPまたはEYFP、蛍光受容体)(Miyawaki et al., Nature, 1997, 388, 882-887)。カルシウムのカルモジュリンへの結合は、融合タンパク質におけるコンフォーメーション変化の原因であり、これは、ペプチドが結合する新しい部位を形成し、そして、2つの蛍光タンパク質の間の結合(association)及び蛍光供与体(EBFPまたはECFP)から蛍光受容体(EGFPまたはEYFP)への効果的なエネルギー移動に有利なスペースにおける位置決定をもたらし、ゆえに、該蛍光受容体により放たれた蛍光における増加をもたらす。より広範囲のカルシウム濃度に対してより感受性があり及び特異的である他の「カメレオン」蛍光指示体もまた得られている(Truong et al., Nature Struct. Biol., 2001, 8, 1069-1073)。カルシウムのカルモジュリン−MLCKp複合体への結合により引き起こされるコンフォーメーション変化に基づく、この蛍光指示体システムは、カルシウム特異的であり、そしてゆえに、他の金属イオン、例えばウラニル、を検出することを可能にしない;
−へリックス−ループ−へリックスモチーフ由来の、重金属に対して選択的なペプチドリガンド(Borin et al., Biopolymer, 1989, 28, 353-369; Dadlez et al., FEBS Lett., 1991, 282, 143, 146; Marsden et al., Biochem. Cell. Biol., 1990, 68, 587-601; Shaw et al., Science, 1990, 249, 280-283; Reid et al., Arch. Biochem. Biophys., 1995, 323, 115-119; Procyshyn et al., J. Biol. Chem., 1994, 269, 1641-1647);これらのペプチドは水性媒体においてそれらのへリックスの乏しい構造(poor structure)及び二価金属に対して低い親和性を示す(ミリモーラーオーダーのKd);
−光シグナルとして毒性金属の存在を反映できるプロモータを含む細菌(Bechor et al., Biotechnol., 2002, 94, 125-132; Lee et al., Biosen. Bioelectron., 2003, 18, 571-577);これらのシステムにおいて、毒物は細胞ストレス因子として作用し、そして生物発光タンパク質の変化した発現を誘導し、これは検出されたシグナルを示す;これらのシステムは、ゆえに、ウラン及び毒性金属に対して一般に特異的ではない。
【0009】
汚染された環境または生物媒体に存在し得るこの毒性金属を検出(センサー)及びキレートできるウラン−特異的リガンド(それらの汚染除去を行うための)は現在存在しないことが上記から明らかになる。環境中の(土壌、水など)及び生きている生物体中のウランの特異的なキレート化は、かなり過剰の他の金属(ウラン−結合に対する競合物であるアルカリ土類金属またはランタニドのような)の存在のために、やはり、行うことが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえに、本発明者は、彼らに、ウラニル形態(UO22+)において、ウラン(VI)を特異的にキレートできる薬剤を提供することを目的に与えている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
カルモジュリン(質量16.7kDaを有する)は真核細胞に広く存在し、そして、カルシウム濃度の変化により媒介される様々な細胞コンパートメント間のシグナル翻訳において重要な役割を担う。細胞内のカルシウム濃度の上昇に応じて、それは、それが様々な細胞タンパク質ターゲットに結合し、そして、活性化することを許容することを許容するコンフォーメーション変化を受ける。この構造変化は、トロポニンCにおいて観察され、そして、筋収縮に不可欠であるものと類似している。X線構造は決定され、そして、該タンパク質が2つのN−及びC−末端ドメインを有することを示し、それぞれは、例えばトロポニンC及びパルブアルブミン(parvalbmin)のような、多くの他のカルシウム結合タンパク質に存在する、へリックス−ループ−へリックス型の2つのカルシウムイオン−結合部位、カルシウムをキレートすることに関して最も一般的な構造モチーフ、を含む。このモチーフの構造は、全てのタンパク質において高く保存され;12アミノ酸のループは2つのアルファ−へリックスにより形づくられ;該ループはアスパラギン酸及びグルタミン酸残基を介して、そしてまた、ペプチド骨格のカルボニル基により及び水分子により、金属に配位結合する。ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)カルモジュリン部位I(図1)の詳細な構造は、該カルシウムが五角形両錐体ジオメトリーにあることを示し;Ca−O距離は、2.1と2.3Åの間であり、そして、解離定数は、低親和性部位I及びIIに関しては10μM及び高親和性部位III及びIVに関しては1μMのオーダーにある。これらの部位の間の協同は実証されている;部位I及びIIへのカルシウム結合は、一般的に部位III及びIVの親和性を増加する。キレート化ループの配列は、カルモジュリンにおいて非常に保存される。実際、ヒト及びほとんどの脊椎動物は、このループに同じ配列を有する。
【0012】
ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)カルモジュリンのカルシウム−結合部位のヘリックス−ループ−へリックスモチーフの配列を基準にして、本発明者は以下の特性を有する突然変異ペプチドを調製している:
−それらは、−単離したペプチドの形態で、及び、特定の金属存在下で− へリックスヘリックス−ループ−へリックス構造と両立できる秩序あるコンフォーメーションを示す、及び、
−それらは、−単離したペプチドのまたは該ペプチドの少なくとも一つの配列を含むタンパク質の形態で− 他の金属、種々の緩衝液、あるいは、ウランのそれらと類似の配位特性を有する他の生理学的なまたは天然のイオン存在下であっても、高親和性でそのウラニル形態にあるウラン(1μMオーダーのKd)に選択的に結合する。
【0013】
一つ以上のこれらのペプチド配列を含むこのようなペプチドまたはタンパク質は:
−この毒性金属の結合、吸収及び蓄積に関して増大した能力を有し、それがウランで汚染された土壌及び液体の生物学的な汚染除去に有用である、このペプチド配列に富むタンパク質を発現する改変された新規微生物及び新規植物種の生産、
−それが、特に汚染され得る個体中の、ウランの特異的検出に有用である、ウランに対する新規蛍光ペプチド及びタンパク質センサーの製造、
−光シグナルとしてウランの存在を反映するための感受性エレメントとして、1つから4つのウラン−選択的部位を含む、ウラン特異的ペプチドまたはカルモジュリンタンパク質を使用する新規の改変された微生物の生産、及び、
−ウランで汚染された個体の処置のための新規薬剤の処方、
における使用を有する。
【0014】
ゆえに、本発明の主題は、それが、カルモジュリンの4つのカルシウム−結合部位:
.部位I:残基D20、D22及びD24から選択される残基、
.部位II:残基D56、D58及びN60から選択される残基、
.部位III:残基D93、D95及びN97から選択される残基、
.部位IV:残基D129、D131及びD133から選択される残基、
(該位置は、ヒトカルモジュリン配列(SWISSPROT P02593)を参照して示される)
の少なくとも1つの、1つ、2つまたは3つの残基の、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、His(H)、Tyr(Y)、Asn(N)及びGln(Q)からなる群から選択される中性残基への少なくとも1つの突然変異を含むカルモジュリンループの配列を含むへリックス−ループ−へリックス型構造を有することを特徴とする、ペプチドである。
【0015】
前記ペプチドの有利な実施形態に従うと、該突然変異は、好ましくはトレオニン(Thr)、セリン(Ser)またはアスパラギン(Asn)中性残基への突然変異である。
【0016】
この実施形態の有利なアレンジメントに従うと、突然変異は、好ましくは、残基D20、D22またはD24のトレオニン残基への突然変異、2つの残基D20及びD24の、2つの残基D20及びD22の、または、2つの残基D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への、突然変異、あるいは、3つの残基D20、D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への、突然変異である。
【0017】
本発明に従うと、ウラニルが配位数7(五角形のまたは六角形の両錐体のジオメトリー)を有する配位錯体を得るために、ウラニルに、頂点位における二つの酸素原子に加えて、該両錐体の「スクエアベース(square base)」の4つの頂点に位置する5または6配位原子を提供するように、本発明に従うペプチドは、少なくとも1つの残基24または2つの他の残基を1つまたは2つの中性残基で置換することによって、ループ(D20、D22及びD24、E31)に存在するカルボン酸残基の数が、4未満であるような方法で減少するように、対応する天然のペプチドと比較して改変される。
【0018】
他に示さないかぎり、突然変異の位置は、ヒトカルモジュリン配列(SWISSPROT P02593)を参照して示している。
【0019】
本発明は、任意の脊椎動物または無脊椎動物カルモジュリンの配列由来のペプチドを包含する。
【0020】
本発明の目的のために、前記ループは、ヒト配列(SWISSPROT P02593)に関して、位置20から31(部位I)、56から67(部位II)、93から104(部位III)及び129から140(部位IV)に局在される12−アミノ酸配列により規定される、カルモジュリンのカルシウム結合部位(部位I、II、IIIまたはIV)の一つのそれである。
【0021】
本発明に従うペプチドは、へリックス−ループ−へリックスモチーフのループにおいて少なくとも一つの突然変異を含むカルシウム結合部位突然変異からなる。前記カルシウム結合部位は、一つのカルモジュリン部位か、ループがカルモジュリン部位の一つのそれであり、そして、へリックスが、カルシウムを結合できる、へリックス−ループ−へリックス型モチーフを有する別のタンパク質のそれらであるハイブリッド部位のどちらかである。
【0022】
ゆえに、本発明に従うヘリックス−ループ−へリックス型構造を有するペプチドは、カルモジュリンから完全にまたは部分的に由来する。
【0023】
前記ペプチドが完全にカルモジュリンから由来する時、それは、カルシウム結合部位I、II、III及びIVに存在する前記ループに隣接するヘリックスの配列、すなわち、ヒト配列(SWISSPROT P02593)を参照して、それぞれ、位置7から19及び29から38(部位I)、44−55及び65−78(部位II)、79−92及び102−111(部位III)、そして118−128及び138−147(部位IV)に位置するものに対応する配列、を含む。
【0024】
あるいは、前記ペプチドが部分的にカルモジュリンに由来する時、それは、カルシウムを結合できる、へリックス−ループ−へリックス型モチーフを有するタンパク質、例えば、トロポニンC、パルブアルブミン、カルビンジン、リカバリン(recoverin)、ニューロカルシン(neurocalcin)、カルパイン、オンコモジュリン(oncomodulin)、または、S100タンパク質及びV1Sタンパク質ファミリー及びミオシンのカルシウム結合ドメインのメンバーである、筋カルシウム結合タンパク質、のヘリックスの配列を含む。
【0025】
前記ペプチドの別の有利な実施形態に従うと、それは、それぞれがアミノ酸残基のシステイン残基への突然変異を含むへリックスを有する環状ペプチドであり、システインはジスルフィド架橋または化学的架橋を許容する他の残基を介して結合する。好ましくは、前記ペプチドは、カルモジュリン部位Iから完全に由来し、そして突然変異F19C及びV35Cを有する;環状ペプチドはこのような突然変異を有し、そして、特定の金属の結合後、それらが単離されたペプチドの形態にある時、へリックス−ループ−へリックス型の秩序ある構造を有利に示す。
【0026】
あるいは、共有結合または非共有結合でさえ含む他の改変は、へリックス−ループ−へリックスモチーフを安定化し得、そして、ジスルフィド架橋を置き換え得る。
【0027】
前記ペプチドの別の有利な実施形態に従うと、それはまた、−上記の突然変異残基とは異なる−、ウラニルの結合により誘導される化学的な環境における変化に感受性である蛍光アミノ酸残基への残基の突然変異を含む;好ましくは、前記残基は、ウラニル結合部位から20Å未満の距離で、ループに、または、ヘリックスに、配置され得る。前記蛍光アミノ酸は、有利には、チロシン残基(Y)またはトリプトファン残基(W)、そして特に次の残基:T26Y、T26W、A15WまたはF16W、である。
【0028】
上記の実施形態の有利なアレンジメントに従うと、前記ペプチドは次の配列:配列番号4−7または配列番号9−12、の一つにより定義されるカルモジュリン部位Iの突然変異であり;これらのペプチドの突然変異は表1に説明される。
【0029】
前記ペプチドのまた別の有利な実施形態に従うと、それは、適切なアミノ酸残基で、例えば、コンフォーメーション変化、及び、ウラニルを前記フルオロフォア標識ペプチドに結合することにより誘導される化学的な環境における変化に感受性がある位置15及び16で、ダンシル、クマリン、フルオレセイン及びAlexa誘導体のような、少なくとも一つの適切なフルオロフォアと結合される。
【0030】
前記ペプチドの別の有利な実施形態に従うと、ウラニルが2つのフルオロフォアで標識された前記ペプチドに結合する時、蛍光供与体から蛍光受容体へのエネルギー移動(フルオロフォアは共にさらなる接近をもたらす)に好ましいコンフォーメーション変化を誘導する位置で、それは、二つの異なるフルオロフォア、それぞれ蛍光供与体及び蛍光受容体、に結合される。
【0031】
フルオロフォアの中で、蛍光タンパク質、特にGFP及びその突然変異体(EBFP、ECFP、EYFP、EGFP)、及び、海洋生物由来の他の蛍光分子、例えば、DsRed、熱帯海域の赤色蛍光タンパク質Dixosoma(Bowen B. et al., Photochem. Photobiol., 2003, 77, 4, 362-369)、特にEvrogen(www.Evrogen.com)により流通されている、CopGFP、緑色蛍光タンパク質(緑色単量体GFP様タンパク質)、またはPhiYFP、特にEvrogen(www.Evrogen.com)により流通されている黄色蛍光タンパク質、が挙げられる。
【0032】
前記ペプチドのまた別の有利な実施形態に従うと、任意の適切な方法によって、それは腎臓及び/または骨を標的とすることを許容する分子、例えば、特異的scFv分子、特異的成長因子または特異的ペプチド、と連結される。
【0033】
前記ペプチドのまた別の有利な実施形態に従うと、任意の適切な方法によって、それはin vivoでその排泄を促進する分子、例えば、ポリエチレングリコール分子、と連結される。
【0034】
本発明の主題はまた、上記の少なくとも2つの同一または異なるペプチドの連結を含むことを特徴とする、ポリペプチドである。
【0035】
様々な結合部位の間の協同のために、このようなポリペプチドは、ウランに対する親和性を高める。
【0036】
本発明の主題はまた、任意の適切な方法によって互いに連結する、上記の少なくとも2つの同一または異なるペプチドの連結を含む、上記のポリペプチド、及び、少なくとも一つの好適なビヒクルを含むことを特徴とする、ペプチド組成物である。
【0037】
本発明の主題はまた、適切なタンパク質の配列を備えた、上記の少なくとも一つのペプチドの配列のイン−フレーム(in−frame)融合物からなることを特徴とする、融合タンパク質である。
【0038】
本発明に従うと、前記ペプチドは、前記タンパク質の許された部位で、すなわち、本発明に従う少なくとも一つのペプチドの配列にそれが融合される時、分離したペプチドのそれのオーダーの、ウランVIに対する親和性及び特異性を前記融合タンパク質に与えるこのタンパク質の領域で、融合される。
【0039】
適切なタンパク質の中で、上述した、Miyaki et al.及びTruong et al.に記載される原理に従い、カルシウムを結合できる、へリックス−ループ−へリックスモチーフを有するタンパク質、特にカルモジュリン及び後者のタンパク質由来のタンパク質、特に「カメレオン」センサー、が挙げられ得る。
【0040】
例えば、前記タンパク質が、カルモジュリンまたは後者由来のカメレオンタンパク質である場合、前記ペプチドの配列が代わりに、そして、カルモジュリンの対応する配列の代わりに、すなわち、天然のループ(突然変異されていない)または天然のへリックス−ループ−へリックスモチーフ(突然変異されていない)の代わりに、挿入される。
【0041】
前記融合タンパク質の有利な実施形態に従うと、任意の適切な方法により、それは、上記の少なくとも一つのフルオロフォアと結合される。好ましくは、前記タンパク質の一つの末端が、蛍光供与体と結合し、そして、別の末端が蛍光受容体と結合される。好ましくは、前記タンパク質は、その末端の一つで、EBFPまたはECFPの配列を、及び、他方の末端で、EGFPまたはEYFPの配列を含む。
【0042】
ウランに高い親和性及び特異性を示す上記の蛍光ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質は、汚染された土壌及び水中の、そしてまた、ウランで汚染され得る個体由来の、適切な生物試料、特に体液試料中の、ウランを検出及びアッセイに有用なウランVI特異的な蛍光センサーを表す。
【0043】
ゆえに、本発明の主題はまた、ウランで汚染された土壌及び水を検出するための試薬を調製するための、そしてまた、ウランで汚染された個体を診断するための、上記の、ペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質の、あるいは、カルシウムを結合できるタンパク質のへリックス−ループ−へリックス型構造を有するペプチドからなる群から選択されるペプチド、の使用である。好ましくは、前記ペプチド及び前記融合タンパク質は、上記の、少なくとも一つのフルオロフォアと結合される。
【0044】
本発明の主題はまた、ウランで汚染された個体の処置において使用するための医薬を調製するための、上記のペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質の、あるいは、カルシウムを結合できるタンパク質のへリックス−ループ−へリックス型構造を有するペプチドからなる群から選択されるペプチドの使用である。
【0045】
前記使用に従うと、カルシウムを結合できる前記タンパク質は、特にトロポニンCまたはパルブアルブミンである。このような場合、使用されるペプチドは、タンパク質全体に相当するか、それが各へリックスの少なくとも一つの残基のシステイン残基への突然変異を含むかのいずれかであり、その結果、へリックス−ループ−へリックス型の秩序ある構造を有する環状ペプチドを得る。
【0046】
本発明に従うペプチドは、当業者のそれらに知られている固相または液相合成の従来技術により調製される。本発明に従うタンパク質は、組換えDNA技術により調製され、これは、当業者に知られている。
【0047】
ゆえに、本発明の主題はまた、上記の、ペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする配列を含むことを特徴とする単離した核酸分子でもある。
【0048】
本発明の主題はまた、上記のカルシウムイオン結合タンパク質の、へリックス−ループ−へリックス型モチーフに隣接するまたは重なる約10から30ヌクレオチドの配列、このモチーフのへリックスまたはループの一つ、特にカルモジュリン、を含むことを特徴とするプローブ及びプライマーであり;これらのプローブ及びこれらのプライマーは、本発明に従うペプチドをコードする前記核酸分子を特異的に検出/増幅することを可能にする。
【0049】
本発明に従う核酸分子は、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc., Library of Congress, USA)に記載されるもののような標準プロトコールに従う、それ自身公知の、従来法によって得られる。
【0050】
本発明に従うペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする配列は、PCRまたはRT−PCRによる核酸配列の増幅により、あるいは、相同のプローブを使用するハイブリダイゼーションによるゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られ得る。例えば、これらは、上記の適切なプラーマー対を使用するPCRにより増幅される。
【0051】
本発明の主題はまた、上記のペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子からなるインサートを含むことを特徴とする真核または原核の組換えベクターである。真核または原核の宿主細胞にそれを導入する、及び、それを保持するために、興味のある核酸分子が挿入され得る多くのベクターは、それ自身公知である;適切なベクターの選択は、このベクターに想定される使用に(例えば、興味ある配列の複製、この配列の発現、染色体外形態における配列の保持、あるいは、宿主の染色体物質への組込み)、そしてまた、宿主細胞の性質に左右される。例えば、ウイルス性ベクターまたはプラスミドのような非ウイルス性ベクターが使用され得る。
【0052】
好ましくは、前記組換えベクターは、適切な転写または翻訳調節エレメントの制御下で、前記核酸分子またはそれらの断片が配置される発現ベクターである。さらに、前記ベクターは、前記インサートの5’及び/または3’末端でイン−フレーム(in−frame)で融合された(tag)配列を含み得、これは、前記ベクターから発現される融合タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの固定、及び/または、検出、及び/または、精製に有用である。
【0053】
これらのベクターは、
それ自身公知の従来の組換えDNA及び遺伝子工学方法により構築され、そして宿主細胞に導入される。
【0054】
本発明の主題はまた、上記の組換えベクターで改変される真核または原核細胞である。
【0055】
本発明の主題はまた、上記の核酸分子で改変される細胞を含むことを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物である。
【0056】
本発明の主題はまた、上記の核酸分子で改変される細胞を含むことを特徴とするトランスジェニック植物でもある。
【0057】
本発明の主題はまた、調節システムで改変された原核または真核細胞であり、これは、ウラン及び光シグナルの存在を反映する。例えば、本発明に従うペプチドの構造は、生物発光タンパク質をコードする遺伝子、例えば、lux遺伝子、のレギュレータまたはリプレッサーに挿入され得る;このように改変されたこのレギュレータまたはリプレッサーへのウランの結合は、水銀−感受性merRリプレッサーに関して既に記載されたもの(Summers AO et al., Annu. Rev. Microbiol., 1986, 40, 607-634)と同様のメカニズムに従い、遺伝子の転写、そしてゆえに、生物発光タンパク質の発現を許容する。
【0058】
上記の核酸分子で改変された原核または真核細胞及び上記のトランスジェニック植物(これは本発明に従うペプチド配列でエンリッチにされたタンパク質を発現する)は、ウランの結合、吸収及び蓄積に関して高まった能力を有する;ゆえに、それらはウランで汚染された土壌及び液体の汚染除去に有用である。
【0059】
ゆえに、本発明の主題はまた、ウランで汚染された土壌及び水の汚染除去のための、
上記の核酸分子で改変された原核または真核細胞の、または、上記のトランスジェニック植物の使用である。
【0060】
上記の形質転換細胞はまた、特に、上記のペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質の生産に有用である。
【0061】
さらに、上記のプロモーターで改変された原核または真核細胞は、ウランVIを特異的に検出する上で有用である。
【0062】
ゆえに、本発明の主題はまた、ウランで汚染された土壌及び水を検出するための、そしてまた、ウランで汚染された個体を診断するための試薬を調製するための、上記のプロモーターで改変された原核または真核細胞の使用である。
【0063】
本発明の主題はまた、ウラン存在下または非存在下で、上記のペプチドに選択的に結合することを特徴とする抗体であり;このような抗体は、上記の突然変異を有さないへリックス−ループ−へリックス型ペプチドに結合しない。
【0064】
本発明は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体のようなキメラ抗体及びこれらの断片(Fab、Fv、scFv)を含む。
【0065】
このような抗体は、上記のペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質を、適切な支持体において、精製すること及び固定することに、あるいは、上記のペプチドで、ポリペプチドでまたは融合タンパク質と複合化された形態のウランを検出するために有用である。
【0066】
本発明の主題はまた、少なくとも:上記のペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質または抗体、あるいは、上記のプロモーターで改変された原核または真核細胞を含むことを特徴とするウランによる汚染を検出するためのキットである。
【0067】
上述のアレンジメントの他に、本発明はまた、以下の記載から明らかになる他のアレンジメントも含み、これは、本発明に従う抗原の及び抗体の使用例、そしてまた、本出願の配列を要約する表I(ここで、突然変異されているカルモジュリン残基は太字及び下線で示される)及び添付の図面に言及する。
【0068】
【表1】
【実施例】
【0069】
実施例1:材料及び方法
1)ペプチド合成
ペプチドは、Applied Biosystems自動ペプチドシンセサイザー、モデル433Aを用い、、Fmoc化学により(これは、アミノ酸のα−アミン官能基の一時的保護のためのフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基を使用する)固相合成した。アミノ酸側鎖のために使用される保護基は、Ser、Thr及びTyr残基に対するtert−ブチルエーテル(tBu);Asp、Gluに対するtert−ブチルエステル(OtBu);Gln、Asn、Cysに対するトリチル(Trt);Lysに対するtert−ブチルオキシカルボニル(Boc);及びArgに対する2、2、5、7、8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)であった。
【0070】
カップリング反応は、樹脂(0.1ミリモル)に対してアミノ酸10当量(1ミリモル)の過剰量の存在下で行われた。後者は、第一に、20%ピペリジン溶液を使用して、Fmoc基について、脱保護された。過剰のピペリジンは、N−メチル−ピロリドン(NMP)で洗浄することにより除去した。脱保護反応は、ジベンゾ−フルベンピペリジン付加物の305nmにおけるUV検出によりモニターした。並行して、アミノ酸は、1mlのNMP及びNMP中の1−N−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)の1M溶液の1mlからなる混合液に溶解した。そして、NMP中の1M N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の1ml溶液を添加し、その結果、アミノ酸の活性エステルを形成させた。40分後、この活性エステルを、脱保護樹脂を含むリアクターに導入した。
【0071】
合成の最後に、該樹脂をジクロロメタン(DCM)で数回洗浄した。ペプチドの開裂及びアミノ酸側鎖の保護基の脱保護は、酸性条件下で行われた。該樹脂は、周囲温度で、撹拌しながら、3時間、81.5%トリフルオロ酢酸(TFA)、5%フェノール、5%チオアニソール、5%水、2.5%エタンジチオール及び1%トリイソプロピルシランの溶液に懸濁した(樹脂グラムあたり100ml)。焼結ガラス上において濾過後、反応メディウムをジイソプロピルエーテルで沈殿させ、次いで、遠心分離した。ペレットはこの上清から分離し、次いで、TFAに溶解した。エーテルでの再沈殿及び遠心分離後、該ペレットを20%の酢酸に再度溶解し、そして凍結乾燥した。
【0072】
得られた粗反応生産物は、90分間、0−60%のアセトニトリルのグラジエントを使用したVydac C18逆相分離カラム(1.0×25.0cm)上で最初に精製した。そして、純粋な直鎖ペプチドを凍結乾燥し、次いで、200mlの100mMトリス溶液、pH8.0に再度溶解した。当量の5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)を添加し、その結果、2つのシステイン間の分子内ジスルフィド架橋の特異的な形成をもたらした。そして、該反応メディウムを酸性化し、次いで、粗反応生産物に対する同じ方法を使用して精製した。純粋な生産物のフラクションを混合し、次いで、凍結乾燥した。該生産物の純度は、エレクトロスプレー質量分析法により確認した。
【0073】
保存溶液は、水に溶解することにより調製し、濃度は、チロシンに関して1280M−1.cm−1、ジスルフィド架橋に関して120M−1.cm−1及びトリプトファンに関して5690M−1.cm−1のモル吸光係数を使用して、分光光度法により決定した。
【0074】
2)金属
使用した全ての金属塩は、硝酸塩(純度>99.9%、Aldrich、France)である。保存溶液は硝酸でpH=2に酸性化し、水酸化物の形成を抑制した。
【0075】
3)蛍光
蛍光スペクトルは、サーモスタッドキュベットホルダーを備えたCary Eclipse 分光計(Varian、France)において記録した。使用した励起波長は280nmであり、励起において10nm及び発光において2.5nmのスロット幅を用いた。スペクトルは、1cm光路を備えたキュベットにおいて300nmと450nmの間で記録した。
【0076】
4)時間分解レーザー分光蛍光法(TRLS)
266nmで作動し及び周波数20Hzで4nsパルスにおけるエネルギー1mJを送るNd−YAGレーザー(miniliteモデル、Continuum)を、励起源として使用した。光線は、4mlの石英キュベットに、次いで、石英レンズにより「Flo 2001」分光蛍光計(Dilor、France)の測定セルに向けた。そして、該光線をポリクロメーターの入り口で集束させ、そして、シグナルは、ペルティエ効果(−30℃)を使用して冷却した1024光ダイオードのアレイを使用して検出した。スペクトルは、0.5秒の期間、光ダイオードにより検出されたシグナルを統合することにより記録した。レーザーでシンクロナイズした電子回路は、50μsの期間に対して90μsの遅延後に検出を行うことを可能にした。アセンブリはコンピューター(Dell)により制御した。
【0077】
5)エレクトロスプレー質量分析法(ESI−MS)
ポジティブ検出モードエレクトロスプレー質量スペクトルは、Q−TOF IIデバイス(Micromass)で記録した。分析するサンプルは、シリンジポンプ(Harvard Apparatus)を介してソースに導入した。窒素は、乾燥用及び80℃に加熱したソースとの衝突ガスとして使用した。コーン電圧は30ボルトであり、そして、3500kVの高電圧をキャピラリーに印加した。サンプル溶液のフローレートは、5μL.min−1に固定した。スペクトルは、スキャン速度6s/scanで、400と3000m/zの間で記録した40スキャンの平均を表す。
【0078】
6)円二色法(CD)
CDスペクトルは、サーモスタットキュベットホルダーを備え、CDMaxプログラムを使用してコンピュータ制御したCD6デバイス(Jobin Yvon)で記録した。化合物は、pH6.5、1mM MES緩衝液中、5μMの濃度で、可溶化した。スペクトルは、0.1mmの光路のキュベットを使用して180nmと250nmの間で、周囲温度で、記録した。各スペクトルは、積分時間0.5s及びステップ0.5nmで得た4つの連続した蓄積の平均を表す。スペクトルは、CDMaxプログラムを含むアルゴリズムを使用してなめらかにした。
【0079】
実施例2:カルモジュリン部位I由来の環状ペプチドの調製及び重金属キレート化の分析
1)環状ペプチドの調製
円二色法により試験したカルモジュリン部位Iに一致する33残基の直鎖ペプチド(CaM:EQIAEFKEAFALFDKDGDGTITTKELGTVMRSL、配列番号1)は、過剰のカルシウムイオン存在下に置かれた時でさえ、秩序正しい構造を示さない。高濃度(100μM)において、おそらく非−構造化へリックスの疎水性部分間の分子間相互作用のために、それは溶液中で凝集する。
【0080】
ゆえに、安定な天然へリックス−ループ−へリックス構造の形成に好ましくないこれらの相互作用を防止するために、前記ペプチドの13及び29位を結合するジスルフィド架橋(それぞれカルモジュリン配列における19及び35位に対応する)含むペプチドを調製した。ゆえに、突然変異Phe19Cys及びVa135Cysを含むペプチドが合成された。さらに、金属の結合をモニターするような方法で、蛍光プローブを座標ループに導入することを可能にするために、突然変異Thr26Tyrを挿入した。さらに、ペプチドの25位でまたはカルモジュリンの31位で、グルタミン酸は必要に応じてアスパラギン酸に突然変異される(Glu31Asp)。
【0081】
合成されたペプチドは、以下の配列(図2及び表I)を有し、ここで、突然変異は太字で示す。:
【0082】
【化1】
【0083】
2)重金属に対する環状ペプチドの構造及び親和性の分析(ペプチドCaM−M1c及びCaM−M2c)
a)ペプチドCaM−M1c
対応するペプチドCaM−M1cを合成し、次いで、様々な金属に対するその親和性を質量分析法、円二色法(CD)及び時間分解蛍光法(TRLS)により試験した。8当量の金属存在下で記録したCDスペクトルは、カルシウム、カドミウム、テルビウム、ユーロピウム及びウランに対して良好な親和性を、そしてまた、コバルトに対しては弱い親和性を示す。相互作用は、アルカリ土類金属カラムのほかの元素(Mg、Sr、Ba)では検出されない。
【0084】
ペプチドCaM1cの円二色法(CD)分析は、最小値190nmで無秩序な構造に典型的なスペクトルを示す(図3)。二次構造の不在が、プロトン核磁気共鳴分光法(1H NMR)により確認された。溶解したカルシウムを添加する場合、CDスペクトルは、最小値206及び222nmで、らせん状コンフォメーションに典型的である形態をとる。そして、CDによるCaM1c滴定を行い、そして、222nmにおける二色性シグナルの強度は、添加したカルシウムイオンの濃度の関数として報告された(図4)。実験ポイントを通る結合等温曲線は、Ca/ペプチド化学量論 1/1を実証し、そして、30μMの解離定数Kdを算出することを可能にする。
【0085】
金属不在下のペプチドの質量スペクトルは、それぞれ、5−、4−及び3−倍のプロトン化ペプチドに対応する、736.8、920.7及び127.3m/zで3つの主なピークを示す。ペプチドに対するカルシウムの増大する濃度の導入は、同じチャージ状態を示す1:1 ペプチド:カルシウム錯体に矛盾のない、744.4、930.6及び1240.5m/zでの新しいピークを伴う、このスペクトルの改変を導く。金属フリーのペプチド及び該錯体が類似のシグナル応答を有すると仮定すると、Whittal et al.により記載されるように(Prot. Sci., 2000, 9, 332-343)、CD滴定により算出された値に一致する、Kd=30μMを与える(表II)、解離定数が算出でき得る。
【0086】
ランタニドイオンは、分子の生物学的研究におけるカルシウムモデルとしてしばしは使用されている(Linse et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 8050-8054)。テルビウムの及びユーロピウムの溶液を使用するペプチドCaM−M1cの分光蛍光滴定(10mM MES緩衝液中20μM溶液、pH6.5)は、時間分解レーザー蛍光(TRLS)により行われる(図5)。この分光法は、金属の励起に基づき、蛍光シグナルの時間分解が続き、そして、蛍光は短寿命であるが強い強度であるフルオロフォアの存在のために、制限を克服する(上に記載のWhittal et al.)。励起波長266nmを使用すると、二つのランタニドの蛍光放出は、1:1のランタニド:ペプチド比に対応する限界までの金属から放出される蛍光における増加を伴って、ペプチドのTyr20を介するエネルギー移動メカニズムにより観察される。テルビウムに関して、より強い放出は545nmに位置する。ユーロピウムの場合、スペクトルは、593及び618nmで蛍光励起最大値を示す。ランタニド濃度の関数としての蛍光放出強度の測定(Tb3+に関しては545nm及びEu3+に関しては618nm)及び結合等温線に対するこれらのデータの適合性は、解離定数Kd(Tb3+)=3.5μM及びKd(Eu3+)=0.6μMの測定値を導く(表II)。
【0087】
ウラニルイオンの場合、ウラニルイオンのペプチドへの結合の研究は、水中でのこの金属の複雑なスペシエーションにより困難になる(図6)。特に、pH6.5において、該スペシエーション図は、優先種が(UO2)3(OH)5+(67%)及び(UO2)(OH)+(17%)であることを示す。このpHにおいて、5%のウラニルイオンUO22+のみが残存する。質量分析によるペプチドと形成した錯体の分析は、ウランがUO22+形態で配位していることを示す。ここで、全てのウラン種は蛍光性であり、そして、従来の蛍光法を使用して、溶液に存在する複数種のただ一つの種をモニターすることは困難である。この問題は、TRLSにより解決され、これは以下の原理に基づく:レーザーパルスによる励起後、ユーザーにより選択された遅延の後、蛍光を検出する;80μsの遅延は、検出のためにUO2OH+以外の全ての種を除去することを可能にする。これらの装置条件下で、励起波長266nmを使用して、ペプチドの水溶液の一部分の連続的な添加により、UO2(NO3)2の2μMの溶液を滴定した。この実験は、解離定数Kd4.7μM、表II、を測定することを可能にした。
【0088】
【表2】
【0089】
b)ペプチドCaM−M2c
さらなる突然変異を含む第二のペプチド、すなわち:カルモジュリン配列の31位でのグルタミン酸のアスパラギン酸への置換(Glu31Asp)、もまた合成した。アミノ酸の側鎖はメチレン基により短くされ、ゆえに、ループにより形成された空洞はサイズがより大きい。同じESI/MS、CD及びTRLS研究は、このペプチドは全ての二価金属に対する、及び、ウラニルイオンに対する親和性を失うことを示す。テルビウム及びユーロピウムそれぞれに関する解離定数3.5±1μM及び3.2±0.8μMで、ランタニドイオンに対する親和性のみが保持される。
【0090】
全ての結果は、突然変異Phe19Cys、Val35Cys及びThr26Tyr、そして必要に応じて、突然変異Glu31Aspを含み、ならびに、システイン19及び35がジスルフィド架橋により連結された、検討した環状ペプチドが、以下の特性:
−カルモジュリン部位I(ペプチドCaM)に対応する直鎖ペプチドと異なり、これは秩序ある構造を示さず、そして、溶液中で凝集し、合成された環状ペプチドは安定したヘリックス−ループ−へリックス型構造を有し、そして、
−これらは、カルシウムイオンに対する天然カルモジュリンのそれに匹敵する親和性で、ウランVI(ペプチドCaM−M1c)を含む、金属イオンを結合することができる、
を有することを示す。
【0091】
これらの結果はまた、カルモジュリン部位Iのループの配列における点突然変異が、様々な金属イオンに対するペプチドの相対的な親和性を変化することを可能にすることを示す。しかし、検討した突然変異ペプチドのいずれもウランVIに特異的に結合しない。
【0092】
実施例3:ウランVIに特異的な環状ペプチドの調製
1)ペプチド合成
合成したペプチドは、実施例2に記載するように、突然変異Phe19Cys、Val35Cys及びThr26Tyr、そしてまた、以下のさらなる突然変異:
− D20T(ペプチドCaM−M9c)
− D24T(ペプチドCaM−M10c)
− D20T及びD24T(ペプチドCaM−M3c)
− D20S及びD24S(ペプチドCaM−M7c)
− D20T及びD22T(ペプチドCaM−M6c)
− D22T及びD24T(ペプチドCaM−M5c)
− D20N、D22N及びD24N(ペプチドCaM−M4c)
− D20T、D22T及びD24T(ペプチドCaM−M8c)
を含む環状ペプチドに一致する。
【0093】
さらに詳細には、これらのペプチドの配列は(ここで、突然変異した残基は太字で示す)図2及び表Iに表す。
【0094】
カルモジュリンループの3次元構造(PDBコード:1EXR)から得た、突然変異されたカルモジュリン(ペプチドCaM−M3c)の座標ループにおけるウラニルの概略図を、図7に示す。
【0095】
2)様々な金属イオンに対するペプチドの親和性の分析(ペプチドCaM−M3c、CaM−M4c及びCaM−M5c)
様々な金属イオン(Ca2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、Tb3+、Eu3+、UO22+)に対するペプチドCaM−M3cの親和性を、2つの分光法:円二色法(CD)及びエレクトロスプレー質量分析法(ESI−MS)を使用して試験した。
【0096】
CDスペクトル及びポジティブ検出モードエレクトロスプレー質量スペクトル(ESI−MS)は、実施例1に記載したように記録した。
【0097】
図8は、過剰のウラニルの添加のみでペプチドCaM−M3cの二色性スペクトルの改変が生じることを示す。この場合、207nm及び222nmで二つの新しい最小値が観察される。これらは、α−らせん状の秩序ある二次構造の特徴を有する。この結果は、ESI−MS分析:溶液へのウラニルの添加のみで、結果として1/1 ペプチド/UO2錯体の形成と矛盾しない質量ピークが現われる、
により確認される。
【0098】
ペプチドCaM−M4c、CaM−M5c、CaM−M6c、CaM−M7c、CaM−M8c、CaM−M9c及びCaM−M10cは、円二色分光法及び質量分光法(ESI−MS)において同じ結果を示し、これは、これらのペプチドがカルシウム、ランタニド及び試験した他のイオンと結合せず、ウラン(VI)のみに結合することを示す。
【0099】
3)ペプチドCaM−M3cによるウラン配位結合の分析
a)解決されるべき問題(スペシエーション)
生物分子によるウラニルイオンの配位の分析は、生理学的な値に近いpH、例えば6と8の間で予想する。現在、このpHにおいて、ウラニルイオンはもはや溶液中でただ一つの形態、UO22+ではなく、この金属コア由来の様々な複合体の形態:例えば、ヒドロキソ及びカーボネート錯体、にある。この現象は、スペシエーションとして言及される。水溶液に存在するそれぞれの種の量は、ウランの濃度、溶存ガス(カーボネート)の濃度に及び金属イオンに関連する熱力学的パラメーターに依存する。ウランについて1μMの濃度において、スペシエーション図(図6)は、pH6.5における優先種が、それぞれ、溶液中のU(VI)の52.1、16及び25.3%に相当する、種(UO2)3(OH)5+、UO2(OH)2及びUO2(OH)+であることを示す。より少量の種はUO22+、UO2(OH)3−及びウラン/カーボネート錯体である。
【0100】
従来の蛍光による滴定実験において、これらのウラン種のそれぞれは、励起後に検出される蛍光の全体の強度に寄与する。溶液中に存在するそれぞれの種の寄与を分離することが可能でないため、解離定数の算出は、ゆえに不可能である。この理由に対して、時間分解、すなわち、実施例1に記載された、関係するそれぞれの種の蛍光の寿命の違い、を使用して滴定を行った。レーザーショット(励起)と検出の間が70μsより長いか等しい遅延を使用すると、検出される唯一の種はモノヒドロオキソ複合体UO2(OH)+である。
【0101】
b)様々な媒体におけるペプチドCaM−M3cによるウラン配位の分析
b1)水中のウラン配位の分析
2μMウランを純粋な水性媒体中のペプチドCaM−M3cで滴定し、このpHは水性アンモニアで6.5に調整した。時間分解パラメーター(70μs遅延、100μsゲート幅、0.5s積分)は、モノヒドロキシレート化されたウラン種のみを可視化することを可能にした。
【0102】
ペプチドの増加量がウランの最初の溶液に添加された場合、UO2(OH)+の蛍光強度は減少し、これはペプチドとの金属の配位を証明する。溶液中のUO2(OH)+の濃度は導入されたU(VI)の17.21%に等しいという事実を考慮すると、添加したペプチドの濃度の関数として520nmにおける強度のグラフは、関係する化学平衡に一致する理論式によりシミュレートされ得る。平衡UO2(OH)+CaM−M3c→(CaM−M3c)(UO2)+OH−に対応する解離定数は、シミュレーション:Kd=3.8±0.3μMから算出される(図9)。
【0103】
b2)ホスフェート媒体中のウラン配位の分析
第二の実験では、1mMホスフェート緩衝液媒体、pH6.5において、ペプチドによるウランキレート化を検討した。この媒体において、ウラニルは最初ホスフェートイオンとの複合体の形態であり、これらの熱力学的なデータは以下:
【0104】
【化2】
【0105】
のようである。
【0106】
ウラン/ホスフェート錯体は、金属イオンの蛍光強度を増加する特徴を有するが、他の知られているリガンドは蛍光の弱化をもたらす。
【0107】
ペプチドの水溶液のフラクションを、pH6.5、1mMホスフェート緩衝液中のUO2(NO3)2の2.0μM溶液に、連続的に添加した。ウラニルイオンの蛍光スペクトル(λex=266nm)を、それぞれ添加後に記録した。得られた全てのスペクトルを図10に表す。
【0108】
そして、添加したウランの濃度の関数としての520nmでの強度のグラフは、解離定数:
【0109】
【化3】
【0110】
(ここで、[U]0=2.0μM、Kdは錯体の解離定数、そして[P]は溶液に添加したペプチドの量を示す)
の式から導き出した関係に従い、ウランとペプチドの間の1/1錯体の形成に一致する結合等温線によりシミュレートされる。実験データ、そしてまた、式(1)によるこれらの解釈を図11に表す。このアプローチにより算出した解離定数は18μMである。
【0111】
b3)他のイオン存在下のウラン配位の分析
ペプチドによるウラン配位はまた、他のイオンの混合物存在下で検討した。反応媒体の組成物は、ウラニル蛍光を阻害剤である、カーボネートイオンを除いた、幾つかのフランスの湧き水の平均イオン組成に一致する。試験したメディウムの正確な組成は以下のよう:
[Ca2+]=[Mg2+]=2.0mM
[Na+]=0.4mM
[NO3−]=[SO42−]=4.0mM
pH=6.5
である。
【0112】
この媒体は、低濃度のウラン(20μM、2μM、0.2μM)で人工的に徐々に汚染させる。それぞれの場合、ウラン蛍光の完全な消滅が得られるまで、ペプチドを添加した(図12)。
【0113】
これらの滴定のそれぞれに対して算出した見かけの解離定数は、10±1μMである。これらは、pH6.5の脱イオン水において、及び、ホスフェート緩衝液において算出した解離定数と同じオーダーの大きさにある。これは、第一に、U(VI)と他の金属カチオンの間の、及び、第二に、ペプチドと他のウランリガンドの間の競合の不在を実証する:ゆえに、ペプチドCaM−M3cは、これらの条件下でウランに対して選択的である。
【0114】
得られた結果は、突然変異D20T及びD24Tを有する、ペプチドCaM−M3cが、ウランVIに選択的であることを示す。検討した濃度範囲(金属に関して0.1μMから2.0mM)において、ペプチドCaM−M3cは、試験した様々な媒体中で、解離定数3.8と18μMの間で、ウランに配位する。Mg、Ca,Sr、Ba、EuまたはTbに対する測定可能な親和性は検出されない。
【0115】
実施例4:ウランと天然ウシ脳カルモジュリンの相互作用の分析
1)ウシ脳カルモジュリンタンパク質によるウラン配位の分析
1mMホスフェート媒体中の天然タンパク質によるウランの配位(ウラニル形態において、2.0μM)もまた検討した。ウランと該タンパク質の錯形成は、ウラニル蛍光強度の低下により反映される。滴定スペクトルを図13に示す。他の実験において、1.0mMホスフェート緩衝液(pH7.0)中の硝酸ウラニルの0.4μM溶液を、8μMのタンパク質濃度までカルモジュリンの溶液で滴定した。8μMのカルモジュリン添加後、カルシウムイオンを8mMの濃度まで添加した(図14)。カルモジュリンによるウラニルの滴定値は、実験データを、ウランの1つ、2つ、3つまたは4つの独立した部位に対応する式のシステムを使用してシミュレートすることにより解釈した(図16)。これらのシミュレーションのために、ダイナフィットソフトウェア(Kuzmic, P. 1996, Anal. Biochem. 237, 260-273)を使用した。2つの高親和性部位を考慮したシステムのみ、2つの部位のそれぞれに関して、解離定数3.3±0.4μM及び0.72±0.2μMを伴って、受け入れ可能なシミュレーションを提示した。カルシウムイオンとの競合の値はまた、好適な式のシステムで解釈し、そして、このシステムを使用した実験ポイントのシミュレーションは、図17に与えられる。該シミュレーションは、8μMのカルモジュリン及び0.4μMのウラニル存在下で、2つの高親和性部位のそれぞれが、同程度の蓋然性のある方法でウランに占められることを考慮して、行った。仮説として、これらの2つの部位のそれぞれが、他と独立しているということもまた考えられる。ゆえに、シミュレーションは、4つの化学平衡:2つは「部位−ウラン(site−uranium)」錯体の解離平衡に一致し、そして、2つは、それぞれの部位におけるカルシウムによるウランの置換に一致する、のシステムを使用して行われる。該シミュレーションは、ウランと錯形成した2つの部位のただ一つのみが、カルシウムで置換され得たことを確認している。これは、カルモジュリンタンパク質がカルシウム錯形成部位でウランに結合し得ることを示す。
【0116】
2) ウラン存在下におけるタンパク質とそのリガンドの相互作用
カルシウム存在下において、カルモジュリンは非常に多様なターゲットに結合し、活性化し得る。これらの中で、17残基を有し、そして、ウサギ筋ミオシン軽鎖キナーゼ(CALBIOCHEM)のカルモジュリン−結合ドメイン由来である、MLCKpペプチドは、以下の配列:
Ac−RRKWQKTGHAVRAIGRL−NH2 (配列番号8)
を有する。
【0117】
二つの系統の実験は、ウラニルイオン存在下で、タンパク質がこのリガンドとまだ相互作用し得ることを確かめるために行った。
【0118】
第一の系統において、pH6.5で、10mM MES緩衝液中の5μMの濃度で溶解した、該リガンドのトリプトファンについての蛍光スペクトルは、実施例1に記載するように記録した。
【0119】
280nmにおける溶液の励起は、水性溶媒に曝されたトリプトファン独特の、350nmにおける発光を検出することを可能にする。金属非存在下における、1当量のカルモジュリンの添加は、結果として、330nmにおける最大発光の移動及び強度の25%の増加を生じる。これは、該タンパク質が該リガンドと相互作用し、そして、後者のトリプトファンがより疎水性媒体にあることを示す。10当量のカルシウムの溶液への添加は、強度における増加(+20%)及び330nmにおける同じ最大値を示す蛍光発光スペクトルを与える。これらのデータは、カルシウム(PDB 1CDL)存在下で得たペプチド/カルモジュリン錯体の結晶構造に類似しているという得られた構造に一致する。
【0120】
ウラニルの存在下で行われる同じ実験は、結果として、リガンドトリプトファンの蛍光の完全な消滅を生じる(図15)。これは、カルシウムの場合に得られるものに類似の構造に矛盾しない。実際、後者はフルシェルの金属であり、これは可能な蛍光遷移を示さない。一方、ウランを伴うと、トリプトファンは金属を介して脱励起し、これは蛍光遷移に一致するエネルギーレベルを示す。そして、検出される発光は金属のそれであり(λ>450nm)、そして、もはやトリプトファンのそれではない。このエネルギー移動現象は、さらに、ウランが、この錯体において、トリプトファンから15Å(エネルギー移動の最大距離)未満に配置されており、これはペプチドのトリプトファンと4つのカルシウムの2つの間のX線構造において測定した距離(10Å及び6.5Å)に一致することを示す。
【0121】
これらの結果は、ウラン存在下で、本発明に従う少なくとも一つのペプチドの配列を含むカルモジュリン由来のカメレオンタンパク質が、MLCK基質ペプチドに結合し、ゆえに、ウランVI特異的バイオセンサーとして使用し得ることを示す。
【0122】
実施例5:ウラン及びテルビウムに対するペプチドの親和性及び特異性の比較分析
以下の表IIIに示すような残基において突然変異した、カルモジュリン部位I由来のペプチドのUO22+及びTb3+に関する比較親和性は、実験1に記載した技術により、pH=7、1mMホスフェート媒体において測定した。
【0123】
結果を以下の表IIIに示す。
【0124】
【表3】
【0125】
これらの結果は、カルモジュリンの錯形成ループにおける、残基D24の中性残基での、例えばトレオニン、あるいは、残基D20、D22及びD24の2つの残基の2つの中性残基での、例えばトレオニンまたはセリン、あるいは、最終的には3つの残基D20、D22及びD24の中性残基での、例えば、トレオニン、セリンまたはアスパラギンでの置換が、ウラニルに対する特異性を誘導することを実証する。これらの突然変異に関して、カルシウムイオンまたはランタニドに対する親和性は、一般的に、検出限界まで大きく減少する。
【0126】
上述から明らかなように、本発明は、まさにより明確に記載している遂行、実施及び適用のその方法のこれらに全く制限されず;反対に、本発明の目的の内容から離れない、当業者に行われ得るこれらの全ての変形を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、頂点における、ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)カルモジュリン部位Iの三次元構造及びカルシウムイオンの配位;底部における、4部位におけるカルシウム−配位残基を示す。
【図2】図2は、検討したカルシウム部位I由来のペプチドの配列を示す。
【図3】図3は、0、0.2、0.5、1.0、2.0、5.0及び20当量に等しい濃度で添加した、10mM MES(pH6.5)中、カルシウムイオン存在下、環状ペプチドCaM1cの50μM溶液の円二色性スペクトルを示す。
【図4】図4は、モル濃度のカルシウムの関数として、ペプチドCaM−M1cの222nmにおける円二色性強度の変化、及び、結合等温線へのその適合性を示す。
【図5】図5は、ペプチドCaM−M1cに添加された、モル濃度のテルビウムイオン(545nmにおける)及びユーロピウムイオン(618nmにおける)の関数として、最大発光における蛍光強度の変化を示す。該曲線は、実験ポイントに適合する結合等温線を表す。
【図6】図6は、1μM濃度におけるウラン(VI)のスペシエーション図を表す。
【図7】図7は、カルモジュリンループの三次元構造(PDBコード:1EXR)から得た、突然変異したカルモジュリン(ペプチドCaM−M3c)の座標ループにおけるウラニルの図示である。
【図8】図8は、8当量の様々な金属存在下における、1mM MES緩衝液中のペプチドCaM−M3cの20μM溶液の二色性スペクトルを示す。
【図9】図9は、pH6.5における、水中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の、ペプチドCaM−M3cでの、滴定に対応する蛍光スペクトルを示す。
【図10】図10は、pH6.5、1mMホスフェート緩衝液中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の、ペプチドCaM−M3cでの、滴定に対応する蛍光スペクトルを示す。
【図11】図11は、ペプチドCaM−M3cの量の関数としての、1.0mMホスフェート緩衝液中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の蛍光発光(520nmにおける)の強度における変化、及び、相対的な結合等温式とのその適合性を示す。
【図12】図12は、ペプチドCaM−M3cの量の関数としての、2.0mMカルシウム、2.0mMマグネシウム及び0.4mMナトリウム金属イオン(及び1.0mMホスフェート緩衝液)存在下における、20.0、2.0及び0.2μM硝酸ウラニル溶液の蛍光の減少を示す。この実験は、湧き水における汚染物質として存在するウランの滴定を真似ている。
【図13】図13は、1.0mMホスフェート緩衝液(pH6.5)中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の、カルモジュリンタンパク質での、滴定のスペクトルを示す。
【図14】図14は、カルモジュリンの溶液(0から8μM)を使用する、1.0mMホスフェート緩衝液(pH7.0)中の硝酸ウラニルの0.4μM溶液の、TRLSによる、滴定、そして、カルシウム(0から8mM)との最終混合物の滴定を示す。各点は、レーザーショットの強度における変化について補正した、溶液中の遊離ウラニルイオンの最大のスペクトルで記録した強度の値を表す。
【図15】図15は、カルシウムを伴う(ダッシュ及びドット曲線)またはウランを伴う(ドット曲線)、タンパク質非存在下(ダッシュ曲線)、1当量のカルモジュリン存在下(連続曲線)におけるカルモジュリンリガンドペプチドの蛍光スペクトルを示す。
【図16】図16は、ダイナフィット(Dynafit)プログラムを使用した、カルモジュリンを伴う0.4μMウラニル溶液の滴定実験において得られた実験ポイントのシミュレーションを示す。4つのシミュレーションは、タンパク質分子あたりのウランの1から4の高親和性部位を考慮して、プログラムに提案した。結果としてそれだけが実験の正確なシミュレーションであったため、2部位に対応する曲線のみをここに表した。
【図17】図17は、各カルモジュリンタンパク質モノマーが互いに独立した2つの部位を含むことを考慮して、ダイナフィットプログラムで得た、カルモジュリンにおけるカルシウムとウラニルの間の競合実験において得た実験ポイントのシミュレーションに一致する。
【配列表フリーテキスト】
【0128】
配列番号1はペプチドCaMである。
配列番号2はペプチドCaM−M1cである。
配列番号3はペプチドCaM−M2cである。
配列番号4はペプチドCaM−M3cである。
配列番号5はペプチドCaM−M4cである。
配列番号6はペプチドCaM−M5cである。
配列番号7はペプチドCaM−M6cである。
配列番号8はペプチドMLCKpである。
配列番号9はペプチドCaM−M7cである。
配列番号10はペプチドCaM−M8cである。
配列番号11はペプチドCaM−M9cである。
配列番号12はペプチドCaM−M10cである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウラン−キレートペプチド、および、土壌及び水の汚染を除去するための、ならびに、ウランで汚染された個体を検出及び処置するための、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウランは、通常、非常に低い濃度で環境中に、同位体238(99.27%)及び235(0.72%)の形態で、存在し、これは弱い放射線毒性のα粒子の放出を介して崩壊し;ウラニル形態(UO22+)は、酸化雰囲気におけるウランの最も一般的な形態を表す。
【0003】
しかし、特定の場所において、例えばウラン鉱山近く、保管場所(核管理または劣化ウラン弾薬の貯蔵)、あるいは、原子力事故の場合に、この金属の濃度は非常に高くなり得、そして、それが腎臓及び骨に蓄積する:腎組織に対する毒性及び骨組織癌の発生、という事実のために、ヒトに危険性を示す。
【0004】
汚染された場所及び個体の汚染除去は、第一に、環境中の及び汚染された個体の体内のウランの毒性を中和するための手段を有すること、そして、第二に、この金属に効果的及び特異的な検出試薬を要求する。しかし、特に、それらの汚染除去を行うための、ウランを検出できる(センサー)、ならびに、汚染された環境及び/または生物学的な媒体に存在し得る、この毒性金属をキレートできるウラン−特異的リガンドの欠如のために、ウランを検出する及び汚染を除去するための効果的な手段は現在存在しない。
【0005】
土壌の汚染を除去するための現在の処置は、単に、堀削、採集及び適当な場所における貯蔵により、または、キレート剤を使用するウランの抽出により行われる;これらの物理化学処理は高価であり、あまり特異的でなく、または、全く特異的ではなく、そして、非常に広い汚染表面の処理にあまり好適でなく、そしてまた、ウランへの繰り返しの暴露のために、操作員に対する汚染の高いリスクが存在する。あるいは、ウランで汚染された土壌及び水の汚染を除去するために、生きている生物体(より高等の植物または微生物)を使用することが提案されている。この方法は、金属の吸収、ゆえに、これらの生物体によるこれらの封印に基づく。例えば、植物は、根より毒性金属を吸収すること及び葉にそれらを蓄積することができ、これは後に適当な場所に採集され及び貯蔵される;現在利用可能な生物体は、高濃度の毒性金属の抽出、耐性及び蓄積に関するそれらの低性能のために、汚染した土壌及び水の効果的な汚染除去を許容しない。
【0006】
ウランで汚染しているであろう個体中のウランの検出は、ex siteで、プラズマ質量分析法(ICP−MS)により行われる;この技術は、実施することが困難であり、そして高価である。
【0007】
ウランで汚染された個体の処置は、ウランを結合するキレート剤の投与によって行われ、そして、その排泄を促進し、ゆえに、腎臓及び骨におけるその沈着を減少する。主なウラン−キレート剤の中で:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、5−アミノサリチル酸(5−AS)、没食子酸、スルホカテコール(sulfocatechol)、カルボキシカテコール(carboxycatechol)及びヒドロキシピリジノン、が挙げられ得;これらのキレート剤は、ウラン−特異的でない欠点を有する。
【0008】
特に水性媒体または生物試料において、特定の金属を特異的に検出するために、様々なアプローチが開発されている:
−蛍光化学センサー(Tsien, 1993: Fluorescent chemosensors for ion and molecule recognition, pages 130-146, Czarnik AW (ed), American Chemical Society, Washington DC);これらの蛍光センサーは、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムに特異的であり;一方、ウラン−特異的化学センサーは記載されていない;
−少なくとも一つの蛍光基で標識された、ジンクフィンガードメイン由来の、約26アミノ酸のペプチドからなる蛍光ペプチドセンサー(バイオセンサー)(Walkup et al., 1996, J. Am. Soc., 119, 3443-3450; Godwin et al., 1998, J. Am. Soc., 118, 6514-6515; Walkup et al., 1997, J. Am. Soc., 119, 3443-3540)。亜鉛イオンの存在下、これらのペプチドバイオセンサーは、金属を取り巻く構造を形成し、そして、結果として、金属の濃度に依存する蛍光放出における変動を生じる環境変化に該蛍光基を暴露する。あるいは、該ペプチドが2つの好適な蛍光基と結合される時、亜鉛の該ペプチドとの結合は、結果として2つのフルオロフォアの間のエネルギーの効果的な移動に有利なコンフォーメーション変化を生じ(Fluorescence Resonance Energy Transfer or FRET)、結果として金属の濃度に比例した蛍光シグナルの放出を生じる(上記のWalkup et al., 1996)。「ジンクフィンガー」ドメインの構造のために(これは、亜鉛のように、四面体のジオメトリーを備えたイオンのキレートに適する)、これらのバイオセンサーは、ウランをキレートすることを可能にせず、これは、酸化されたメディウムにおいて最も一般的であるそのウラニル形態(UO22+)において、配位数7−8を備えた五角形のまたは六角形の両錐体ジオメトリー(ウランVI)を示す;
−「カメレオン(chameleons)」と呼ばれる、そのNH2末端からそのCOOH末端を、連続して含む融合タンパク質からなる、蛍光タンパク質センサー:クラゲAequorea victoria由来のGFP蛍光タンパク質の青色またはシアン突然変異体(EBFPまたはECEP、蛍光供与体)、N−及びC−末端ドメインならびにカルシウムイオン−結合部位I及びIIを含むカルモジュリン(CaM)、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)のカルモジュリン−結合ドメインから由来する26残基のカルモジュリン−結合ペプチド、そして、同じ蛍光タンパク質の別の緑色または黄色突然変異体(EGFPまたはEYFP、蛍光受容体)(Miyawaki et al., Nature, 1997, 388, 882-887)。カルシウムのカルモジュリンへの結合は、融合タンパク質におけるコンフォーメーション変化の原因であり、これは、ペプチドが結合する新しい部位を形成し、そして、2つの蛍光タンパク質の間の結合(association)及び蛍光供与体(EBFPまたはECFP)から蛍光受容体(EGFPまたはEYFP)への効果的なエネルギー移動に有利なスペースにおける位置決定をもたらし、ゆえに、該蛍光受容体により放たれた蛍光における増加をもたらす。より広範囲のカルシウム濃度に対してより感受性があり及び特異的である他の「カメレオン」蛍光指示体もまた得られている(Truong et al., Nature Struct. Biol., 2001, 8, 1069-1073)。カルシウムのカルモジュリン−MLCKp複合体への結合により引き起こされるコンフォーメーション変化に基づく、この蛍光指示体システムは、カルシウム特異的であり、そしてゆえに、他の金属イオン、例えばウラニル、を検出することを可能にしない;
−へリックス−ループ−へリックスモチーフ由来の、重金属に対して選択的なペプチドリガンド(Borin et al., Biopolymer, 1989, 28, 353-369; Dadlez et al., FEBS Lett., 1991, 282, 143, 146; Marsden et al., Biochem. Cell. Biol., 1990, 68, 587-601; Shaw et al., Science, 1990, 249, 280-283; Reid et al., Arch. Biochem. Biophys., 1995, 323, 115-119; Procyshyn et al., J. Biol. Chem., 1994, 269, 1641-1647);これらのペプチドは水性媒体においてそれらのへリックスの乏しい構造(poor structure)及び二価金属に対して低い親和性を示す(ミリモーラーオーダーのKd);
−光シグナルとして毒性金属の存在を反映できるプロモータを含む細菌(Bechor et al., Biotechnol., 2002, 94, 125-132; Lee et al., Biosen. Bioelectron., 2003, 18, 571-577);これらのシステムにおいて、毒物は細胞ストレス因子として作用し、そして生物発光タンパク質の変化した発現を誘導し、これは検出されたシグナルを示す;これらのシステムは、ゆえに、ウラン及び毒性金属に対して一般に特異的ではない。
【0009】
汚染された環境または生物媒体に存在し得るこの毒性金属を検出(センサー)及びキレートできるウラン−特異的リガンド(それらの汚染除去を行うための)は現在存在しないことが上記から明らかになる。環境中の(土壌、水など)及び生きている生物体中のウランの特異的なキレート化は、かなり過剰の他の金属(ウラン−結合に対する競合物であるアルカリ土類金属またはランタニドのような)の存在のために、やはり、行うことが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえに、本発明者は、彼らに、ウラニル形態(UO22+)において、ウラン(VI)を特異的にキレートできる薬剤を提供することを目的に与えている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
カルモジュリン(質量16.7kDaを有する)は真核細胞に広く存在し、そして、カルシウム濃度の変化により媒介される様々な細胞コンパートメント間のシグナル翻訳において重要な役割を担う。細胞内のカルシウム濃度の上昇に応じて、それは、それが様々な細胞タンパク質ターゲットに結合し、そして、活性化することを許容することを許容するコンフォーメーション変化を受ける。この構造変化は、トロポニンCにおいて観察され、そして、筋収縮に不可欠であるものと類似している。X線構造は決定され、そして、該タンパク質が2つのN−及びC−末端ドメインを有することを示し、それぞれは、例えばトロポニンC及びパルブアルブミン(parvalbmin)のような、多くの他のカルシウム結合タンパク質に存在する、へリックス−ループ−へリックス型の2つのカルシウムイオン−結合部位、カルシウムをキレートすることに関して最も一般的な構造モチーフ、を含む。このモチーフの構造は、全てのタンパク質において高く保存され;12アミノ酸のループは2つのアルファ−へリックスにより形づくられ;該ループはアスパラギン酸及びグルタミン酸残基を介して、そしてまた、ペプチド骨格のカルボニル基により及び水分子により、金属に配位結合する。ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)カルモジュリン部位I(図1)の詳細な構造は、該カルシウムが五角形両錐体ジオメトリーにあることを示し;Ca−O距離は、2.1と2.3Åの間であり、そして、解離定数は、低親和性部位I及びIIに関しては10μM及び高親和性部位III及びIVに関しては1μMのオーダーにある。これらの部位の間の協同は実証されている;部位I及びIIへのカルシウム結合は、一般的に部位III及びIVの親和性を増加する。キレート化ループの配列は、カルモジュリンにおいて非常に保存される。実際、ヒト及びほとんどの脊椎動物は、このループに同じ配列を有する。
【0012】
ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)カルモジュリンのカルシウム−結合部位のヘリックス−ループ−へリックスモチーフの配列を基準にして、本発明者は以下の特性を有する突然変異ペプチドを調製している:
−それらは、−単離したペプチドの形態で、及び、特定の金属存在下で− へリックスヘリックス−ループ−へリックス構造と両立できる秩序あるコンフォーメーションを示す、及び、
−それらは、−単離したペプチドのまたは該ペプチドの少なくとも一つの配列を含むタンパク質の形態で− 他の金属、種々の緩衝液、あるいは、ウランのそれらと類似の配位特性を有する他の生理学的なまたは天然のイオン存在下であっても、高親和性でそのウラニル形態にあるウラン(1μMオーダーのKd)に選択的に結合する。
【0013】
一つ以上のこれらのペプチド配列を含むこのようなペプチドまたはタンパク質は:
−この毒性金属の結合、吸収及び蓄積に関して増大した能力を有し、それがウランで汚染された土壌及び液体の生物学的な汚染除去に有用である、このペプチド配列に富むタンパク質を発現する改変された新規微生物及び新規植物種の生産、
−それが、特に汚染され得る個体中の、ウランの特異的検出に有用である、ウランに対する新規蛍光ペプチド及びタンパク質センサーの製造、
−光シグナルとしてウランの存在を反映するための感受性エレメントとして、1つから4つのウラン−選択的部位を含む、ウラン特異的ペプチドまたはカルモジュリンタンパク質を使用する新規の改変された微生物の生産、及び、
−ウランで汚染された個体の処置のための新規薬剤の処方、
における使用を有する。
【0014】
ゆえに、本発明の主題は、それが、カルモジュリンの4つのカルシウム−結合部位:
.部位I:残基D20、D22及びD24から選択される残基、
.部位II:残基D56、D58及びN60から選択される残基、
.部位III:残基D93、D95及びN97から選択される残基、
.部位IV:残基D129、D131及びD133から選択される残基、
(該位置は、ヒトカルモジュリン配列(SWISSPROT P02593)を参照して示される)
の少なくとも1つの、1つ、2つまたは3つの残基の、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、His(H)、Tyr(Y)、Asn(N)及びGln(Q)からなる群から選択される中性残基への少なくとも1つの突然変異を含むカルモジュリンループの配列を含むへリックス−ループ−へリックス型構造を有することを特徴とする、ペプチドである。
【0015】
前記ペプチドの有利な実施形態に従うと、該突然変異は、好ましくはトレオニン(Thr)、セリン(Ser)またはアスパラギン(Asn)中性残基への突然変異である。
【0016】
この実施形態の有利なアレンジメントに従うと、突然変異は、好ましくは、残基D20、D22またはD24のトレオニン残基への突然変異、2つの残基D20及びD24の、2つの残基D20及びD22の、または、2つの残基D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への、突然変異、あるいは、3つの残基D20、D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への、突然変異である。
【0017】
本発明に従うと、ウラニルが配位数7(五角形のまたは六角形の両錐体のジオメトリー)を有する配位錯体を得るために、ウラニルに、頂点位における二つの酸素原子に加えて、該両錐体の「スクエアベース(square base)」の4つの頂点に位置する5または6配位原子を提供するように、本発明に従うペプチドは、少なくとも1つの残基24または2つの他の残基を1つまたは2つの中性残基で置換することによって、ループ(D20、D22及びD24、E31)に存在するカルボン酸残基の数が、4未満であるような方法で減少するように、対応する天然のペプチドと比較して改変される。
【0018】
他に示さないかぎり、突然変異の位置は、ヒトカルモジュリン配列(SWISSPROT P02593)を参照して示している。
【0019】
本発明は、任意の脊椎動物または無脊椎動物カルモジュリンの配列由来のペプチドを包含する。
【0020】
本発明の目的のために、前記ループは、ヒト配列(SWISSPROT P02593)に関して、位置20から31(部位I)、56から67(部位II)、93から104(部位III)及び129から140(部位IV)に局在される12−アミノ酸配列により規定される、カルモジュリンのカルシウム結合部位(部位I、II、IIIまたはIV)の一つのそれである。
【0021】
本発明に従うペプチドは、へリックス−ループ−へリックスモチーフのループにおいて少なくとも一つの突然変異を含むカルシウム結合部位突然変異からなる。前記カルシウム結合部位は、一つのカルモジュリン部位か、ループがカルモジュリン部位の一つのそれであり、そして、へリックスが、カルシウムを結合できる、へリックス−ループ−へリックス型モチーフを有する別のタンパク質のそれらであるハイブリッド部位のどちらかである。
【0022】
ゆえに、本発明に従うヘリックス−ループ−へリックス型構造を有するペプチドは、カルモジュリンから完全にまたは部分的に由来する。
【0023】
前記ペプチドが完全にカルモジュリンから由来する時、それは、カルシウム結合部位I、II、III及びIVに存在する前記ループに隣接するヘリックスの配列、すなわち、ヒト配列(SWISSPROT P02593)を参照して、それぞれ、位置7から19及び29から38(部位I)、44−55及び65−78(部位II)、79−92及び102−111(部位III)、そして118−128及び138−147(部位IV)に位置するものに対応する配列、を含む。
【0024】
あるいは、前記ペプチドが部分的にカルモジュリンに由来する時、それは、カルシウムを結合できる、へリックス−ループ−へリックス型モチーフを有するタンパク質、例えば、トロポニンC、パルブアルブミン、カルビンジン、リカバリン(recoverin)、ニューロカルシン(neurocalcin)、カルパイン、オンコモジュリン(oncomodulin)、または、S100タンパク質及びV1Sタンパク質ファミリー及びミオシンのカルシウム結合ドメインのメンバーである、筋カルシウム結合タンパク質、のヘリックスの配列を含む。
【0025】
前記ペプチドの別の有利な実施形態に従うと、それは、それぞれがアミノ酸残基のシステイン残基への突然変異を含むへリックスを有する環状ペプチドであり、システインはジスルフィド架橋または化学的架橋を許容する他の残基を介して結合する。好ましくは、前記ペプチドは、カルモジュリン部位Iから完全に由来し、そして突然変異F19C及びV35Cを有する;環状ペプチドはこのような突然変異を有し、そして、特定の金属の結合後、それらが単離されたペプチドの形態にある時、へリックス−ループ−へリックス型の秩序ある構造を有利に示す。
【0026】
あるいは、共有結合または非共有結合でさえ含む他の改変は、へリックス−ループ−へリックスモチーフを安定化し得、そして、ジスルフィド架橋を置き換え得る。
【0027】
前記ペプチドの別の有利な実施形態に従うと、それはまた、−上記の突然変異残基とは異なる−、ウラニルの結合により誘導される化学的な環境における変化に感受性である蛍光アミノ酸残基への残基の突然変異を含む;好ましくは、前記残基は、ウラニル結合部位から20Å未満の距離で、ループに、または、ヘリックスに、配置され得る。前記蛍光アミノ酸は、有利には、チロシン残基(Y)またはトリプトファン残基(W)、そして特に次の残基:T26Y、T26W、A15WまたはF16W、である。
【0028】
上記の実施形態の有利なアレンジメントに従うと、前記ペプチドは次の配列:配列番号4−7または配列番号9−12、の一つにより定義されるカルモジュリン部位Iの突然変異であり;これらのペプチドの突然変異は表1に説明される。
【0029】
前記ペプチドのまた別の有利な実施形態に従うと、それは、適切なアミノ酸残基で、例えば、コンフォーメーション変化、及び、ウラニルを前記フルオロフォア標識ペプチドに結合することにより誘導される化学的な環境における変化に感受性がある位置15及び16で、ダンシル、クマリン、フルオレセイン及びAlexa誘導体のような、少なくとも一つの適切なフルオロフォアと結合される。
【0030】
前記ペプチドの別の有利な実施形態に従うと、ウラニルが2つのフルオロフォアで標識された前記ペプチドに結合する時、蛍光供与体から蛍光受容体へのエネルギー移動(フルオロフォアは共にさらなる接近をもたらす)に好ましいコンフォーメーション変化を誘導する位置で、それは、二つの異なるフルオロフォア、それぞれ蛍光供与体及び蛍光受容体、に結合される。
【0031】
フルオロフォアの中で、蛍光タンパク質、特にGFP及びその突然変異体(EBFP、ECFP、EYFP、EGFP)、及び、海洋生物由来の他の蛍光分子、例えば、DsRed、熱帯海域の赤色蛍光タンパク質Dixosoma(Bowen B. et al., Photochem. Photobiol., 2003, 77, 4, 362-369)、特にEvrogen(www.Evrogen.com)により流通されている、CopGFP、緑色蛍光タンパク質(緑色単量体GFP様タンパク質)、またはPhiYFP、特にEvrogen(www.Evrogen.com)により流通されている黄色蛍光タンパク質、が挙げられる。
【0032】
前記ペプチドのまた別の有利な実施形態に従うと、任意の適切な方法によって、それは腎臓及び/または骨を標的とすることを許容する分子、例えば、特異的scFv分子、特異的成長因子または特異的ペプチド、と連結される。
【0033】
前記ペプチドのまた別の有利な実施形態に従うと、任意の適切な方法によって、それはin vivoでその排泄を促進する分子、例えば、ポリエチレングリコール分子、と連結される。
【0034】
本発明の主題はまた、上記の少なくとも2つの同一または異なるペプチドの連結を含むことを特徴とする、ポリペプチドである。
【0035】
様々な結合部位の間の協同のために、このようなポリペプチドは、ウランに対する親和性を高める。
【0036】
本発明の主題はまた、任意の適切な方法によって互いに連結する、上記の少なくとも2つの同一または異なるペプチドの連結を含む、上記のポリペプチド、及び、少なくとも一つの好適なビヒクルを含むことを特徴とする、ペプチド組成物である。
【0037】
本発明の主題はまた、適切なタンパク質の配列を備えた、上記の少なくとも一つのペプチドの配列のイン−フレーム(in−frame)融合物からなることを特徴とする、融合タンパク質である。
【0038】
本発明に従うと、前記ペプチドは、前記タンパク質の許された部位で、すなわち、本発明に従う少なくとも一つのペプチドの配列にそれが融合される時、分離したペプチドのそれのオーダーの、ウランVIに対する親和性及び特異性を前記融合タンパク質に与えるこのタンパク質の領域で、融合される。
【0039】
適切なタンパク質の中で、上述した、Miyaki et al.及びTruong et al.に記載される原理に従い、カルシウムを結合できる、へリックス−ループ−へリックスモチーフを有するタンパク質、特にカルモジュリン及び後者のタンパク質由来のタンパク質、特に「カメレオン」センサー、が挙げられ得る。
【0040】
例えば、前記タンパク質が、カルモジュリンまたは後者由来のカメレオンタンパク質である場合、前記ペプチドの配列が代わりに、そして、カルモジュリンの対応する配列の代わりに、すなわち、天然のループ(突然変異されていない)または天然のへリックス−ループ−へリックスモチーフ(突然変異されていない)の代わりに、挿入される。
【0041】
前記融合タンパク質の有利な実施形態に従うと、任意の適切な方法により、それは、上記の少なくとも一つのフルオロフォアと結合される。好ましくは、前記タンパク質の一つの末端が、蛍光供与体と結合し、そして、別の末端が蛍光受容体と結合される。好ましくは、前記タンパク質は、その末端の一つで、EBFPまたはECFPの配列を、及び、他方の末端で、EGFPまたはEYFPの配列を含む。
【0042】
ウランに高い親和性及び特異性を示す上記の蛍光ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質は、汚染された土壌及び水中の、そしてまた、ウランで汚染され得る個体由来の、適切な生物試料、特に体液試料中の、ウランを検出及びアッセイに有用なウランVI特異的な蛍光センサーを表す。
【0043】
ゆえに、本発明の主題はまた、ウランで汚染された土壌及び水を検出するための試薬を調製するための、そしてまた、ウランで汚染された個体を診断するための、上記の、ペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質の、あるいは、カルシウムを結合できるタンパク質のへリックス−ループ−へリックス型構造を有するペプチドからなる群から選択されるペプチド、の使用である。好ましくは、前記ペプチド及び前記融合タンパク質は、上記の、少なくとも一つのフルオロフォアと結合される。
【0044】
本発明の主題はまた、ウランで汚染された個体の処置において使用するための医薬を調製するための、上記のペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質の、あるいは、カルシウムを結合できるタンパク質のへリックス−ループ−へリックス型構造を有するペプチドからなる群から選択されるペプチドの使用である。
【0045】
前記使用に従うと、カルシウムを結合できる前記タンパク質は、特にトロポニンCまたはパルブアルブミンである。このような場合、使用されるペプチドは、タンパク質全体に相当するか、それが各へリックスの少なくとも一つの残基のシステイン残基への突然変異を含むかのいずれかであり、その結果、へリックス−ループ−へリックス型の秩序ある構造を有する環状ペプチドを得る。
【0046】
本発明に従うペプチドは、当業者のそれらに知られている固相または液相合成の従来技術により調製される。本発明に従うタンパク質は、組換えDNA技術により調製され、これは、当業者に知られている。
【0047】
ゆえに、本発明の主題はまた、上記の、ペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする配列を含むことを特徴とする単離した核酸分子でもある。
【0048】
本発明の主題はまた、上記のカルシウムイオン結合タンパク質の、へリックス−ループ−へリックス型モチーフに隣接するまたは重なる約10から30ヌクレオチドの配列、このモチーフのへリックスまたはループの一つ、特にカルモジュリン、を含むことを特徴とするプローブ及びプライマーであり;これらのプローブ及びこれらのプライマーは、本発明に従うペプチドをコードする前記核酸分子を特異的に検出/増幅することを可能にする。
【0049】
本発明に従う核酸分子は、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc., Library of Congress, USA)に記載されるもののような標準プロトコールに従う、それ自身公知の、従来法によって得られる。
【0050】
本発明に従うペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする配列は、PCRまたはRT−PCRによる核酸配列の増幅により、あるいは、相同のプローブを使用するハイブリダイゼーションによるゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られ得る。例えば、これらは、上記の適切なプラーマー対を使用するPCRにより増幅される。
【0051】
本発明の主題はまた、上記のペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子からなるインサートを含むことを特徴とする真核または原核の組換えベクターである。真核または原核の宿主細胞にそれを導入する、及び、それを保持するために、興味のある核酸分子が挿入され得る多くのベクターは、それ自身公知である;適切なベクターの選択は、このベクターに想定される使用に(例えば、興味ある配列の複製、この配列の発現、染色体外形態における配列の保持、あるいは、宿主の染色体物質への組込み)、そしてまた、宿主細胞の性質に左右される。例えば、ウイルス性ベクターまたはプラスミドのような非ウイルス性ベクターが使用され得る。
【0052】
好ましくは、前記組換えベクターは、適切な転写または翻訳調節エレメントの制御下で、前記核酸分子またはそれらの断片が配置される発現ベクターである。さらに、前記ベクターは、前記インサートの5’及び/または3’末端でイン−フレーム(in−frame)で融合された(tag)配列を含み得、これは、前記ベクターから発現される融合タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの固定、及び/または、検出、及び/または、精製に有用である。
【0053】
これらのベクターは、
それ自身公知の従来の組換えDNA及び遺伝子工学方法により構築され、そして宿主細胞に導入される。
【0054】
本発明の主題はまた、上記の組換えベクターで改変される真核または原核細胞である。
【0055】
本発明の主題はまた、上記の核酸分子で改変される細胞を含むことを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物である。
【0056】
本発明の主題はまた、上記の核酸分子で改変される細胞を含むことを特徴とするトランスジェニック植物でもある。
【0057】
本発明の主題はまた、調節システムで改変された原核または真核細胞であり、これは、ウラン及び光シグナルの存在を反映する。例えば、本発明に従うペプチドの構造は、生物発光タンパク質をコードする遺伝子、例えば、lux遺伝子、のレギュレータまたはリプレッサーに挿入され得る;このように改変されたこのレギュレータまたはリプレッサーへのウランの結合は、水銀−感受性merRリプレッサーに関して既に記載されたもの(Summers AO et al., Annu. Rev. Microbiol., 1986, 40, 607-634)と同様のメカニズムに従い、遺伝子の転写、そしてゆえに、生物発光タンパク質の発現を許容する。
【0058】
上記の核酸分子で改変された原核または真核細胞及び上記のトランスジェニック植物(これは本発明に従うペプチド配列でエンリッチにされたタンパク質を発現する)は、ウランの結合、吸収及び蓄積に関して高まった能力を有する;ゆえに、それらはウランで汚染された土壌及び液体の汚染除去に有用である。
【0059】
ゆえに、本発明の主題はまた、ウランで汚染された土壌及び水の汚染除去のための、
上記の核酸分子で改変された原核または真核細胞の、または、上記のトランスジェニック植物の使用である。
【0060】
上記の形質転換細胞はまた、特に、上記のペプチド、ポリペプチドまたは融合タンパク質の生産に有用である。
【0061】
さらに、上記のプロモーターで改変された原核または真核細胞は、ウランVIを特異的に検出する上で有用である。
【0062】
ゆえに、本発明の主題はまた、ウランで汚染された土壌及び水を検出するための、そしてまた、ウランで汚染された個体を診断するための試薬を調製するための、上記のプロモーターで改変された原核または真核細胞の使用である。
【0063】
本発明の主題はまた、ウラン存在下または非存在下で、上記のペプチドに選択的に結合することを特徴とする抗体であり;このような抗体は、上記の突然変異を有さないへリックス−ループ−へリックス型ペプチドに結合しない。
【0064】
本発明は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体のようなキメラ抗体及びこれらの断片(Fab、Fv、scFv)を含む。
【0065】
このような抗体は、上記のペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質を、適切な支持体において、精製すること及び固定することに、あるいは、上記のペプチドで、ポリペプチドでまたは融合タンパク質と複合化された形態のウランを検出するために有用である。
【0066】
本発明の主題はまた、少なくとも:上記のペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質または抗体、あるいは、上記のプロモーターで改変された原核または真核細胞を含むことを特徴とするウランによる汚染を検出するためのキットである。
【0067】
上述のアレンジメントの他に、本発明はまた、以下の記載から明らかになる他のアレンジメントも含み、これは、本発明に従う抗原の及び抗体の使用例、そしてまた、本出願の配列を要約する表I(ここで、突然変異されているカルモジュリン残基は太字及び下線で示される)及び添付の図面に言及する。
【0068】
【表1】
【実施例】
【0069】
実施例1:材料及び方法
1)ペプチド合成
ペプチドは、Applied Biosystems自動ペプチドシンセサイザー、モデル433Aを用い、、Fmoc化学により(これは、アミノ酸のα−アミン官能基の一時的保護のためのフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基を使用する)固相合成した。アミノ酸側鎖のために使用される保護基は、Ser、Thr及びTyr残基に対するtert−ブチルエーテル(tBu);Asp、Gluに対するtert−ブチルエステル(OtBu);Gln、Asn、Cysに対するトリチル(Trt);Lysに対するtert−ブチルオキシカルボニル(Boc);及びArgに対する2、2、5、7、8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)であった。
【0070】
カップリング反応は、樹脂(0.1ミリモル)に対してアミノ酸10当量(1ミリモル)の過剰量の存在下で行われた。後者は、第一に、20%ピペリジン溶液を使用して、Fmoc基について、脱保護された。過剰のピペリジンは、N−メチル−ピロリドン(NMP)で洗浄することにより除去した。脱保護反応は、ジベンゾ−フルベンピペリジン付加物の305nmにおけるUV検出によりモニターした。並行して、アミノ酸は、1mlのNMP及びNMP中の1−N−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)の1M溶液の1mlからなる混合液に溶解した。そして、NMP中の1M N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の1ml溶液を添加し、その結果、アミノ酸の活性エステルを形成させた。40分後、この活性エステルを、脱保護樹脂を含むリアクターに導入した。
【0071】
合成の最後に、該樹脂をジクロロメタン(DCM)で数回洗浄した。ペプチドの開裂及びアミノ酸側鎖の保護基の脱保護は、酸性条件下で行われた。該樹脂は、周囲温度で、撹拌しながら、3時間、81.5%トリフルオロ酢酸(TFA)、5%フェノール、5%チオアニソール、5%水、2.5%エタンジチオール及び1%トリイソプロピルシランの溶液に懸濁した(樹脂グラムあたり100ml)。焼結ガラス上において濾過後、反応メディウムをジイソプロピルエーテルで沈殿させ、次いで、遠心分離した。ペレットはこの上清から分離し、次いで、TFAに溶解した。エーテルでの再沈殿及び遠心分離後、該ペレットを20%の酢酸に再度溶解し、そして凍結乾燥した。
【0072】
得られた粗反応生産物は、90分間、0−60%のアセトニトリルのグラジエントを使用したVydac C18逆相分離カラム(1.0×25.0cm)上で最初に精製した。そして、純粋な直鎖ペプチドを凍結乾燥し、次いで、200mlの100mMトリス溶液、pH8.0に再度溶解した。当量の5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)を添加し、その結果、2つのシステイン間の分子内ジスルフィド架橋の特異的な形成をもたらした。そして、該反応メディウムを酸性化し、次いで、粗反応生産物に対する同じ方法を使用して精製した。純粋な生産物のフラクションを混合し、次いで、凍結乾燥した。該生産物の純度は、エレクトロスプレー質量分析法により確認した。
【0073】
保存溶液は、水に溶解することにより調製し、濃度は、チロシンに関して1280M−1.cm−1、ジスルフィド架橋に関して120M−1.cm−1及びトリプトファンに関して5690M−1.cm−1のモル吸光係数を使用して、分光光度法により決定した。
【0074】
2)金属
使用した全ての金属塩は、硝酸塩(純度>99.9%、Aldrich、France)である。保存溶液は硝酸でpH=2に酸性化し、水酸化物の形成を抑制した。
【0075】
3)蛍光
蛍光スペクトルは、サーモスタッドキュベットホルダーを備えたCary Eclipse 分光計(Varian、France)において記録した。使用した励起波長は280nmであり、励起において10nm及び発光において2.5nmのスロット幅を用いた。スペクトルは、1cm光路を備えたキュベットにおいて300nmと450nmの間で記録した。
【0076】
4)時間分解レーザー分光蛍光法(TRLS)
266nmで作動し及び周波数20Hzで4nsパルスにおけるエネルギー1mJを送るNd−YAGレーザー(miniliteモデル、Continuum)を、励起源として使用した。光線は、4mlの石英キュベットに、次いで、石英レンズにより「Flo 2001」分光蛍光計(Dilor、France)の測定セルに向けた。そして、該光線をポリクロメーターの入り口で集束させ、そして、シグナルは、ペルティエ効果(−30℃)を使用して冷却した1024光ダイオードのアレイを使用して検出した。スペクトルは、0.5秒の期間、光ダイオードにより検出されたシグナルを統合することにより記録した。レーザーでシンクロナイズした電子回路は、50μsの期間に対して90μsの遅延後に検出を行うことを可能にした。アセンブリはコンピューター(Dell)により制御した。
【0077】
5)エレクトロスプレー質量分析法(ESI−MS)
ポジティブ検出モードエレクトロスプレー質量スペクトルは、Q−TOF IIデバイス(Micromass)で記録した。分析するサンプルは、シリンジポンプ(Harvard Apparatus)を介してソースに導入した。窒素は、乾燥用及び80℃に加熱したソースとの衝突ガスとして使用した。コーン電圧は30ボルトであり、そして、3500kVの高電圧をキャピラリーに印加した。サンプル溶液のフローレートは、5μL.min−1に固定した。スペクトルは、スキャン速度6s/scanで、400と3000m/zの間で記録した40スキャンの平均を表す。
【0078】
6)円二色法(CD)
CDスペクトルは、サーモスタットキュベットホルダーを備え、CDMaxプログラムを使用してコンピュータ制御したCD6デバイス(Jobin Yvon)で記録した。化合物は、pH6.5、1mM MES緩衝液中、5μMの濃度で、可溶化した。スペクトルは、0.1mmの光路のキュベットを使用して180nmと250nmの間で、周囲温度で、記録した。各スペクトルは、積分時間0.5s及びステップ0.5nmで得た4つの連続した蓄積の平均を表す。スペクトルは、CDMaxプログラムを含むアルゴリズムを使用してなめらかにした。
【0079】
実施例2:カルモジュリン部位I由来の環状ペプチドの調製及び重金属キレート化の分析
1)環状ペプチドの調製
円二色法により試験したカルモジュリン部位Iに一致する33残基の直鎖ペプチド(CaM:EQIAEFKEAFALFDKDGDGTITTKELGTVMRSL、配列番号1)は、過剰のカルシウムイオン存在下に置かれた時でさえ、秩序正しい構造を示さない。高濃度(100μM)において、おそらく非−構造化へリックスの疎水性部分間の分子間相互作用のために、それは溶液中で凝集する。
【0080】
ゆえに、安定な天然へリックス−ループ−へリックス構造の形成に好ましくないこれらの相互作用を防止するために、前記ペプチドの13及び29位を結合するジスルフィド架橋(それぞれカルモジュリン配列における19及び35位に対応する)含むペプチドを調製した。ゆえに、突然変異Phe19Cys及びVa135Cysを含むペプチドが合成された。さらに、金属の結合をモニターするような方法で、蛍光プローブを座標ループに導入することを可能にするために、突然変異Thr26Tyrを挿入した。さらに、ペプチドの25位でまたはカルモジュリンの31位で、グルタミン酸は必要に応じてアスパラギン酸に突然変異される(Glu31Asp)。
【0081】
合成されたペプチドは、以下の配列(図2及び表I)を有し、ここで、突然変異は太字で示す。:
【0082】
【化1】
【0083】
2)重金属に対する環状ペプチドの構造及び親和性の分析(ペプチドCaM−M1c及びCaM−M2c)
a)ペプチドCaM−M1c
対応するペプチドCaM−M1cを合成し、次いで、様々な金属に対するその親和性を質量分析法、円二色法(CD)及び時間分解蛍光法(TRLS)により試験した。8当量の金属存在下で記録したCDスペクトルは、カルシウム、カドミウム、テルビウム、ユーロピウム及びウランに対して良好な親和性を、そしてまた、コバルトに対しては弱い親和性を示す。相互作用は、アルカリ土類金属カラムのほかの元素(Mg、Sr、Ba)では検出されない。
【0084】
ペプチドCaM1cの円二色法(CD)分析は、最小値190nmで無秩序な構造に典型的なスペクトルを示す(図3)。二次構造の不在が、プロトン核磁気共鳴分光法(1H NMR)により確認された。溶解したカルシウムを添加する場合、CDスペクトルは、最小値206及び222nmで、らせん状コンフォメーションに典型的である形態をとる。そして、CDによるCaM1c滴定を行い、そして、222nmにおける二色性シグナルの強度は、添加したカルシウムイオンの濃度の関数として報告された(図4)。実験ポイントを通る結合等温曲線は、Ca/ペプチド化学量論 1/1を実証し、そして、30μMの解離定数Kdを算出することを可能にする。
【0085】
金属不在下のペプチドの質量スペクトルは、それぞれ、5−、4−及び3−倍のプロトン化ペプチドに対応する、736.8、920.7及び127.3m/zで3つの主なピークを示す。ペプチドに対するカルシウムの増大する濃度の導入は、同じチャージ状態を示す1:1 ペプチド:カルシウム錯体に矛盾のない、744.4、930.6及び1240.5m/zでの新しいピークを伴う、このスペクトルの改変を導く。金属フリーのペプチド及び該錯体が類似のシグナル応答を有すると仮定すると、Whittal et al.により記載されるように(Prot. Sci., 2000, 9, 332-343)、CD滴定により算出された値に一致する、Kd=30μMを与える(表II)、解離定数が算出でき得る。
【0086】
ランタニドイオンは、分子の生物学的研究におけるカルシウムモデルとしてしばしは使用されている(Linse et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 8050-8054)。テルビウムの及びユーロピウムの溶液を使用するペプチドCaM−M1cの分光蛍光滴定(10mM MES緩衝液中20μM溶液、pH6.5)は、時間分解レーザー蛍光(TRLS)により行われる(図5)。この分光法は、金属の励起に基づき、蛍光シグナルの時間分解が続き、そして、蛍光は短寿命であるが強い強度であるフルオロフォアの存在のために、制限を克服する(上に記載のWhittal et al.)。励起波長266nmを使用すると、二つのランタニドの蛍光放出は、1:1のランタニド:ペプチド比に対応する限界までの金属から放出される蛍光における増加を伴って、ペプチドのTyr20を介するエネルギー移動メカニズムにより観察される。テルビウムに関して、より強い放出は545nmに位置する。ユーロピウムの場合、スペクトルは、593及び618nmで蛍光励起最大値を示す。ランタニド濃度の関数としての蛍光放出強度の測定(Tb3+に関しては545nm及びEu3+に関しては618nm)及び結合等温線に対するこれらのデータの適合性は、解離定数Kd(Tb3+)=3.5μM及びKd(Eu3+)=0.6μMの測定値を導く(表II)。
【0087】
ウラニルイオンの場合、ウラニルイオンのペプチドへの結合の研究は、水中でのこの金属の複雑なスペシエーションにより困難になる(図6)。特に、pH6.5において、該スペシエーション図は、優先種が(UO2)3(OH)5+(67%)及び(UO2)(OH)+(17%)であることを示す。このpHにおいて、5%のウラニルイオンUO22+のみが残存する。質量分析によるペプチドと形成した錯体の分析は、ウランがUO22+形態で配位していることを示す。ここで、全てのウラン種は蛍光性であり、そして、従来の蛍光法を使用して、溶液に存在する複数種のただ一つの種をモニターすることは困難である。この問題は、TRLSにより解決され、これは以下の原理に基づく:レーザーパルスによる励起後、ユーザーにより選択された遅延の後、蛍光を検出する;80μsの遅延は、検出のためにUO2OH+以外の全ての種を除去することを可能にする。これらの装置条件下で、励起波長266nmを使用して、ペプチドの水溶液の一部分の連続的な添加により、UO2(NO3)2の2μMの溶液を滴定した。この実験は、解離定数Kd4.7μM、表II、を測定することを可能にした。
【0088】
【表2】
【0089】
b)ペプチドCaM−M2c
さらなる突然変異を含む第二のペプチド、すなわち:カルモジュリン配列の31位でのグルタミン酸のアスパラギン酸への置換(Glu31Asp)、もまた合成した。アミノ酸の側鎖はメチレン基により短くされ、ゆえに、ループにより形成された空洞はサイズがより大きい。同じESI/MS、CD及びTRLS研究は、このペプチドは全ての二価金属に対する、及び、ウラニルイオンに対する親和性を失うことを示す。テルビウム及びユーロピウムそれぞれに関する解離定数3.5±1μM及び3.2±0.8μMで、ランタニドイオンに対する親和性のみが保持される。
【0090】
全ての結果は、突然変異Phe19Cys、Val35Cys及びThr26Tyr、そして必要に応じて、突然変異Glu31Aspを含み、ならびに、システイン19及び35がジスルフィド架橋により連結された、検討した環状ペプチドが、以下の特性:
−カルモジュリン部位I(ペプチドCaM)に対応する直鎖ペプチドと異なり、これは秩序ある構造を示さず、そして、溶液中で凝集し、合成された環状ペプチドは安定したヘリックス−ループ−へリックス型構造を有し、そして、
−これらは、カルシウムイオンに対する天然カルモジュリンのそれに匹敵する親和性で、ウランVI(ペプチドCaM−M1c)を含む、金属イオンを結合することができる、
を有することを示す。
【0091】
これらの結果はまた、カルモジュリン部位Iのループの配列における点突然変異が、様々な金属イオンに対するペプチドの相対的な親和性を変化することを可能にすることを示す。しかし、検討した突然変異ペプチドのいずれもウランVIに特異的に結合しない。
【0092】
実施例3:ウランVIに特異的な環状ペプチドの調製
1)ペプチド合成
合成したペプチドは、実施例2に記載するように、突然変異Phe19Cys、Val35Cys及びThr26Tyr、そしてまた、以下のさらなる突然変異:
− D20T(ペプチドCaM−M9c)
− D24T(ペプチドCaM−M10c)
− D20T及びD24T(ペプチドCaM−M3c)
− D20S及びD24S(ペプチドCaM−M7c)
− D20T及びD22T(ペプチドCaM−M6c)
− D22T及びD24T(ペプチドCaM−M5c)
− D20N、D22N及びD24N(ペプチドCaM−M4c)
− D20T、D22T及びD24T(ペプチドCaM−M8c)
を含む環状ペプチドに一致する。
【0093】
さらに詳細には、これらのペプチドの配列は(ここで、突然変異した残基は太字で示す)図2及び表Iに表す。
【0094】
カルモジュリンループの3次元構造(PDBコード:1EXR)から得た、突然変異されたカルモジュリン(ペプチドCaM−M3c)の座標ループにおけるウラニルの概略図を、図7に示す。
【0095】
2)様々な金属イオンに対するペプチドの親和性の分析(ペプチドCaM−M3c、CaM−M4c及びCaM−M5c)
様々な金属イオン(Ca2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、Tb3+、Eu3+、UO22+)に対するペプチドCaM−M3cの親和性を、2つの分光法:円二色法(CD)及びエレクトロスプレー質量分析法(ESI−MS)を使用して試験した。
【0096】
CDスペクトル及びポジティブ検出モードエレクトロスプレー質量スペクトル(ESI−MS)は、実施例1に記載したように記録した。
【0097】
図8は、過剰のウラニルの添加のみでペプチドCaM−M3cの二色性スペクトルの改変が生じることを示す。この場合、207nm及び222nmで二つの新しい最小値が観察される。これらは、α−らせん状の秩序ある二次構造の特徴を有する。この結果は、ESI−MS分析:溶液へのウラニルの添加のみで、結果として1/1 ペプチド/UO2錯体の形成と矛盾しない質量ピークが現われる、
により確認される。
【0098】
ペプチドCaM−M4c、CaM−M5c、CaM−M6c、CaM−M7c、CaM−M8c、CaM−M9c及びCaM−M10cは、円二色分光法及び質量分光法(ESI−MS)において同じ結果を示し、これは、これらのペプチドがカルシウム、ランタニド及び試験した他のイオンと結合せず、ウラン(VI)のみに結合することを示す。
【0099】
3)ペプチドCaM−M3cによるウラン配位結合の分析
a)解決されるべき問題(スペシエーション)
生物分子によるウラニルイオンの配位の分析は、生理学的な値に近いpH、例えば6と8の間で予想する。現在、このpHにおいて、ウラニルイオンはもはや溶液中でただ一つの形態、UO22+ではなく、この金属コア由来の様々な複合体の形態:例えば、ヒドロキソ及びカーボネート錯体、にある。この現象は、スペシエーションとして言及される。水溶液に存在するそれぞれの種の量は、ウランの濃度、溶存ガス(カーボネート)の濃度に及び金属イオンに関連する熱力学的パラメーターに依存する。ウランについて1μMの濃度において、スペシエーション図(図6)は、pH6.5における優先種が、それぞれ、溶液中のU(VI)の52.1、16及び25.3%に相当する、種(UO2)3(OH)5+、UO2(OH)2及びUO2(OH)+であることを示す。より少量の種はUO22+、UO2(OH)3−及びウラン/カーボネート錯体である。
【0100】
従来の蛍光による滴定実験において、これらのウラン種のそれぞれは、励起後に検出される蛍光の全体の強度に寄与する。溶液中に存在するそれぞれの種の寄与を分離することが可能でないため、解離定数の算出は、ゆえに不可能である。この理由に対して、時間分解、すなわち、実施例1に記載された、関係するそれぞれの種の蛍光の寿命の違い、を使用して滴定を行った。レーザーショット(励起)と検出の間が70μsより長いか等しい遅延を使用すると、検出される唯一の種はモノヒドロオキソ複合体UO2(OH)+である。
【0101】
b)様々な媒体におけるペプチドCaM−M3cによるウラン配位の分析
b1)水中のウラン配位の分析
2μMウランを純粋な水性媒体中のペプチドCaM−M3cで滴定し、このpHは水性アンモニアで6.5に調整した。時間分解パラメーター(70μs遅延、100μsゲート幅、0.5s積分)は、モノヒドロキシレート化されたウラン種のみを可視化することを可能にした。
【0102】
ペプチドの増加量がウランの最初の溶液に添加された場合、UO2(OH)+の蛍光強度は減少し、これはペプチドとの金属の配位を証明する。溶液中のUO2(OH)+の濃度は導入されたU(VI)の17.21%に等しいという事実を考慮すると、添加したペプチドの濃度の関数として520nmにおける強度のグラフは、関係する化学平衡に一致する理論式によりシミュレートされ得る。平衡UO2(OH)+CaM−M3c→(CaM−M3c)(UO2)+OH−に対応する解離定数は、シミュレーション:Kd=3.8±0.3μMから算出される(図9)。
【0103】
b2)ホスフェート媒体中のウラン配位の分析
第二の実験では、1mMホスフェート緩衝液媒体、pH6.5において、ペプチドによるウランキレート化を検討した。この媒体において、ウラニルは最初ホスフェートイオンとの複合体の形態であり、これらの熱力学的なデータは以下:
【0104】
【化2】
【0105】
のようである。
【0106】
ウラン/ホスフェート錯体は、金属イオンの蛍光強度を増加する特徴を有するが、他の知られているリガンドは蛍光の弱化をもたらす。
【0107】
ペプチドの水溶液のフラクションを、pH6.5、1mMホスフェート緩衝液中のUO2(NO3)2の2.0μM溶液に、連続的に添加した。ウラニルイオンの蛍光スペクトル(λex=266nm)を、それぞれ添加後に記録した。得られた全てのスペクトルを図10に表す。
【0108】
そして、添加したウランの濃度の関数としての520nmでの強度のグラフは、解離定数:
【0109】
【化3】
【0110】
(ここで、[U]0=2.0μM、Kdは錯体の解離定数、そして[P]は溶液に添加したペプチドの量を示す)
の式から導き出した関係に従い、ウランとペプチドの間の1/1錯体の形成に一致する結合等温線によりシミュレートされる。実験データ、そしてまた、式(1)によるこれらの解釈を図11に表す。このアプローチにより算出した解離定数は18μMである。
【0111】
b3)他のイオン存在下のウラン配位の分析
ペプチドによるウラン配位はまた、他のイオンの混合物存在下で検討した。反応媒体の組成物は、ウラニル蛍光を阻害剤である、カーボネートイオンを除いた、幾つかのフランスの湧き水の平均イオン組成に一致する。試験したメディウムの正確な組成は以下のよう:
[Ca2+]=[Mg2+]=2.0mM
[Na+]=0.4mM
[NO3−]=[SO42−]=4.0mM
pH=6.5
である。
【0112】
この媒体は、低濃度のウラン(20μM、2μM、0.2μM)で人工的に徐々に汚染させる。それぞれの場合、ウラン蛍光の完全な消滅が得られるまで、ペプチドを添加した(図12)。
【0113】
これらの滴定のそれぞれに対して算出した見かけの解離定数は、10±1μMである。これらは、pH6.5の脱イオン水において、及び、ホスフェート緩衝液において算出した解離定数と同じオーダーの大きさにある。これは、第一に、U(VI)と他の金属カチオンの間の、及び、第二に、ペプチドと他のウランリガンドの間の競合の不在を実証する:ゆえに、ペプチドCaM−M3cは、これらの条件下でウランに対して選択的である。
【0114】
得られた結果は、突然変異D20T及びD24Tを有する、ペプチドCaM−M3cが、ウランVIに選択的であることを示す。検討した濃度範囲(金属に関して0.1μMから2.0mM)において、ペプチドCaM−M3cは、試験した様々な媒体中で、解離定数3.8と18μMの間で、ウランに配位する。Mg、Ca,Sr、Ba、EuまたはTbに対する測定可能な親和性は検出されない。
【0115】
実施例4:ウランと天然ウシ脳カルモジュリンの相互作用の分析
1)ウシ脳カルモジュリンタンパク質によるウラン配位の分析
1mMホスフェート媒体中の天然タンパク質によるウランの配位(ウラニル形態において、2.0μM)もまた検討した。ウランと該タンパク質の錯形成は、ウラニル蛍光強度の低下により反映される。滴定スペクトルを図13に示す。他の実験において、1.0mMホスフェート緩衝液(pH7.0)中の硝酸ウラニルの0.4μM溶液を、8μMのタンパク質濃度までカルモジュリンの溶液で滴定した。8μMのカルモジュリン添加後、カルシウムイオンを8mMの濃度まで添加した(図14)。カルモジュリンによるウラニルの滴定値は、実験データを、ウランの1つ、2つ、3つまたは4つの独立した部位に対応する式のシステムを使用してシミュレートすることにより解釈した(図16)。これらのシミュレーションのために、ダイナフィットソフトウェア(Kuzmic, P. 1996, Anal. Biochem. 237, 260-273)を使用した。2つの高親和性部位を考慮したシステムのみ、2つの部位のそれぞれに関して、解離定数3.3±0.4μM及び0.72±0.2μMを伴って、受け入れ可能なシミュレーションを提示した。カルシウムイオンとの競合の値はまた、好適な式のシステムで解釈し、そして、このシステムを使用した実験ポイントのシミュレーションは、図17に与えられる。該シミュレーションは、8μMのカルモジュリン及び0.4μMのウラニル存在下で、2つの高親和性部位のそれぞれが、同程度の蓋然性のある方法でウランに占められることを考慮して、行った。仮説として、これらの2つの部位のそれぞれが、他と独立しているということもまた考えられる。ゆえに、シミュレーションは、4つの化学平衡:2つは「部位−ウラン(site−uranium)」錯体の解離平衡に一致し、そして、2つは、それぞれの部位におけるカルシウムによるウランの置換に一致する、のシステムを使用して行われる。該シミュレーションは、ウランと錯形成した2つの部位のただ一つのみが、カルシウムで置換され得たことを確認している。これは、カルモジュリンタンパク質がカルシウム錯形成部位でウランに結合し得ることを示す。
【0116】
2) ウラン存在下におけるタンパク質とそのリガンドの相互作用
カルシウム存在下において、カルモジュリンは非常に多様なターゲットに結合し、活性化し得る。これらの中で、17残基を有し、そして、ウサギ筋ミオシン軽鎖キナーゼ(CALBIOCHEM)のカルモジュリン−結合ドメイン由来である、MLCKpペプチドは、以下の配列:
Ac−RRKWQKTGHAVRAIGRL−NH2 (配列番号8)
を有する。
【0117】
二つの系統の実験は、ウラニルイオン存在下で、タンパク質がこのリガンドとまだ相互作用し得ることを確かめるために行った。
【0118】
第一の系統において、pH6.5で、10mM MES緩衝液中の5μMの濃度で溶解した、該リガンドのトリプトファンについての蛍光スペクトルは、実施例1に記載するように記録した。
【0119】
280nmにおける溶液の励起は、水性溶媒に曝されたトリプトファン独特の、350nmにおける発光を検出することを可能にする。金属非存在下における、1当量のカルモジュリンの添加は、結果として、330nmにおける最大発光の移動及び強度の25%の増加を生じる。これは、該タンパク質が該リガンドと相互作用し、そして、後者のトリプトファンがより疎水性媒体にあることを示す。10当量のカルシウムの溶液への添加は、強度における増加(+20%)及び330nmにおける同じ最大値を示す蛍光発光スペクトルを与える。これらのデータは、カルシウム(PDB 1CDL)存在下で得たペプチド/カルモジュリン錯体の結晶構造に類似しているという得られた構造に一致する。
【0120】
ウラニルの存在下で行われる同じ実験は、結果として、リガンドトリプトファンの蛍光の完全な消滅を生じる(図15)。これは、カルシウムの場合に得られるものに類似の構造に矛盾しない。実際、後者はフルシェルの金属であり、これは可能な蛍光遷移を示さない。一方、ウランを伴うと、トリプトファンは金属を介して脱励起し、これは蛍光遷移に一致するエネルギーレベルを示す。そして、検出される発光は金属のそれであり(λ>450nm)、そして、もはやトリプトファンのそれではない。このエネルギー移動現象は、さらに、ウランが、この錯体において、トリプトファンから15Å(エネルギー移動の最大距離)未満に配置されており、これはペプチドのトリプトファンと4つのカルシウムの2つの間のX線構造において測定した距離(10Å及び6.5Å)に一致することを示す。
【0121】
これらの結果は、ウラン存在下で、本発明に従う少なくとも一つのペプチドの配列を含むカルモジュリン由来のカメレオンタンパク質が、MLCK基質ペプチドに結合し、ゆえに、ウランVI特異的バイオセンサーとして使用し得ることを示す。
【0122】
実施例5:ウラン及びテルビウムに対するペプチドの親和性及び特異性の比較分析
以下の表IIIに示すような残基において突然変異した、カルモジュリン部位I由来のペプチドのUO22+及びTb3+に関する比較親和性は、実験1に記載した技術により、pH=7、1mMホスフェート媒体において測定した。
【0123】
結果を以下の表IIIに示す。
【0124】
【表3】
【0125】
これらの結果は、カルモジュリンの錯形成ループにおける、残基D24の中性残基での、例えばトレオニン、あるいは、残基D20、D22及びD24の2つの残基の2つの中性残基での、例えばトレオニンまたはセリン、あるいは、最終的には3つの残基D20、D22及びD24の中性残基での、例えば、トレオニン、セリンまたはアスパラギンでの置換が、ウラニルに対する特異性を誘導することを実証する。これらの突然変異に関して、カルシウムイオンまたはランタニドに対する親和性は、一般的に、検出限界まで大きく減少する。
【0126】
上述から明らかなように、本発明は、まさにより明確に記載している遂行、実施及び適用のその方法のこれらに全く制限されず;反対に、本発明の目的の内容から離れない、当業者に行われ得るこれらの全ての変形を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、頂点における、ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)カルモジュリン部位Iの三次元構造及びカルシウムイオンの配位;底部における、4部位におけるカルシウム−配位残基を示す。
【図2】図2は、検討したカルシウム部位I由来のペプチドの配列を示す。
【図3】図3は、0、0.2、0.5、1.0、2.0、5.0及び20当量に等しい濃度で添加した、10mM MES(pH6.5)中、カルシウムイオン存在下、環状ペプチドCaM1cの50μM溶液の円二色性スペクトルを示す。
【図4】図4は、モル濃度のカルシウムの関数として、ペプチドCaM−M1cの222nmにおける円二色性強度の変化、及び、結合等温線へのその適合性を示す。
【図5】図5は、ペプチドCaM−M1cに添加された、モル濃度のテルビウムイオン(545nmにおける)及びユーロピウムイオン(618nmにおける)の関数として、最大発光における蛍光強度の変化を示す。該曲線は、実験ポイントに適合する結合等温線を表す。
【図6】図6は、1μM濃度におけるウラン(VI)のスペシエーション図を表す。
【図7】図7は、カルモジュリンループの三次元構造(PDBコード:1EXR)から得た、突然変異したカルモジュリン(ペプチドCaM−M3c)の座標ループにおけるウラニルの図示である。
【図8】図8は、8当量の様々な金属存在下における、1mM MES緩衝液中のペプチドCaM−M3cの20μM溶液の二色性スペクトルを示す。
【図9】図9は、pH6.5における、水中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の、ペプチドCaM−M3cでの、滴定に対応する蛍光スペクトルを示す。
【図10】図10は、pH6.5、1mMホスフェート緩衝液中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の、ペプチドCaM−M3cでの、滴定に対応する蛍光スペクトルを示す。
【図11】図11は、ペプチドCaM−M3cの量の関数としての、1.0mMホスフェート緩衝液中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の蛍光発光(520nmにおける)の強度における変化、及び、相対的な結合等温式とのその適合性を示す。
【図12】図12は、ペプチドCaM−M3cの量の関数としての、2.0mMカルシウム、2.0mMマグネシウム及び0.4mMナトリウム金属イオン(及び1.0mMホスフェート緩衝液)存在下における、20.0、2.0及び0.2μM硝酸ウラニル溶液の蛍光の減少を示す。この実験は、湧き水における汚染物質として存在するウランの滴定を真似ている。
【図13】図13は、1.0mMホスフェート緩衝液(pH6.5)中の硝酸ウラニルの2.0μM溶液の、カルモジュリンタンパク質での、滴定のスペクトルを示す。
【図14】図14は、カルモジュリンの溶液(0から8μM)を使用する、1.0mMホスフェート緩衝液(pH7.0)中の硝酸ウラニルの0.4μM溶液の、TRLSによる、滴定、そして、カルシウム(0から8mM)との最終混合物の滴定を示す。各点は、レーザーショットの強度における変化について補正した、溶液中の遊離ウラニルイオンの最大のスペクトルで記録した強度の値を表す。
【図15】図15は、カルシウムを伴う(ダッシュ及びドット曲線)またはウランを伴う(ドット曲線)、タンパク質非存在下(ダッシュ曲線)、1当量のカルモジュリン存在下(連続曲線)におけるカルモジュリンリガンドペプチドの蛍光スペクトルを示す。
【図16】図16は、ダイナフィット(Dynafit)プログラムを使用した、カルモジュリンを伴う0.4μMウラニル溶液の滴定実験において得られた実験ポイントのシミュレーションを示す。4つのシミュレーションは、タンパク質分子あたりのウランの1から4の高親和性部位を考慮して、プログラムに提案した。結果としてそれだけが実験の正確なシミュレーションであったため、2部位に対応する曲線のみをここに表した。
【図17】図17は、各カルモジュリンタンパク質モノマーが互いに独立した2つの部位を含むことを考慮して、ダイナフィットプログラムで得た、カルモジュリンにおけるカルシウムとウラニルの間の競合実験において得た実験ポイントのシミュレーションに一致する。
【配列表フリーテキスト】
【0128】
配列番号1はペプチドCaMである。
配列番号2はペプチドCaM−M1cである。
配列番号3はペプチドCaM−M2cである。
配列番号4はペプチドCaM−M3cである。
配列番号5はペプチドCaM−M4cである。
配列番号6はペプチドCaM−M5cである。
配列番号7はペプチドCaM−M6cである。
配列番号8はペプチドMLCKpである。
配列番号9はペプチドCaM−M7cである。
配列番号10はペプチドCaM−M8cである。
配列番号11はペプチドCaM−M9cである。
配列番号12はペプチドCaM−M10cである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルモジュリンの4つのカルシウム結合部位:
・部位I:残基D20、D22及びD24から選択される残基、
・部位II:残基D56、D58及びN60から選択される残基、
・部位III:残基D93、D95及びN97から選択される残基、
・部位IV:残基D129、D131及びD133から選択される残基、
(前記位置は、ヒトカルモジュリン配列(SWISSPROT P02593)を参照して示される)
の少なくとも1つの、1つ、2つまたは3つの残基の、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、His(H)、Tyr(Y)、Asn(N)及びGln(Q)からなる群から選択される中性残基への少なくとも1つの突然変異を含むカルモジュリンループの配列を含むへリックス−ループ−へリックス型構造を有することを特徴とする、ペプチド。
【請求項2】
該突然変異が好ましくは、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)またはアスパラギン(Asn)中性残基への突然変異であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
該突然変異が好ましくは、残基D20、D22またはD24のトレオニン残基への突然変異、2つの残基D20及びD24の、2つの残基D20及びD22の、または、2つの残基D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への突然変異、あるいは、3つの残基D20、D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への、突然変異であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
カルモジュリンカルシウム結合部位突然変異であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項5】
それぞれが、アミノ酸残基の化学架橋を許容する残基、特に、システインがジスルフィド架橋を介して結合するシステイン残基への突然変異を含むへリックスを有する環状ペプチドであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項6】
突然変異F19C及びV35Cを有することを特徴とする、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
アミノ酸残基の蛍光アミノ酸残基への突然変異も含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項8】
前記蛍光アミノ酸残基がチロシン残基またはトリプトファン残基であることを特徴とする、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
T26Y、T26W、A15W及びF16W:からなる群から選択される突然変異を有することを特徴とする、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号4−7または配列番号9−12の配列の一つを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項11】
少なくとも一つのフルオロフォアと結合されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項12】
二つの異なるフルオロフォアと結合されることを特徴とする、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
前記フルオロフォアがEBFP、ECFP、EYFP、EGFP、DsRed、CopGFP、PhiYFP:から選択される蛍光タンパク質であることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記フルオロフォアがダンシル、クマリン、フルオレセイン及びAlexa誘導体から選択されることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のペプチド。
【請求項15】
腎臓及び/または骨を標的とすることを許容する少なくとも一つの分子と結合することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項16】
in vivoで、その排泄を促進する分子と結合することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一つに記載の少なくとも2つの同じでも異なってもよいペプチドの連結を含むことを特徴とする、ポリペプチド
【請求項18】
請求項17に記載の少なくとも一つのポリペプチド及び少なくとも一つの好適なビヒクル含むことを特徴とする、ペプチド組成物。
【請求項19】
適切なタンパク質の配列との、請求項1から10のいずれか一つに記載の少なくとも一つのペプチドの配列のイン−フレーム(in−frame)融合物からなることを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項20】
前記ペプチドの配列が、カルシウムに結合できる、カルモジュリン、後者由来のカメレオンタンパク質及びへリックス−ループ−へリックス型モチーフを有するタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の配列に融合されることを特徴とする、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
請求項13または14に記載の少なくとも一つのフルオロフォアと結合されることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記タンパク質の末端の一つが蛍光供与体と結合し、他方が蛍光受容体と結合することを特徴とする、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
その末端の一つに、EBFPまたはECFPの配列を、及び、他方の末端に、EGFPまたはEYFPの配列を含むことを特徴とする、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
ウランで汚染された土壌及び水を検出するための試薬を調製するための:請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、請求項18に記載のペプチド組成物及び請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質、からなる群から選択されるプロダクトの使用。
【請求項25】
ウランで汚染された個体を診断するための試薬を調製するための:請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、請求項18に記載のペプチド組成物及び請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質、からなる群から選択されるプロダクトの使用。
【請求項26】
請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、または請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質をコードする配列を含むことを特徴とする、単離した核酸分子。
【請求項27】
カルシウムイオン結合タンパク質の、へリックス−ループ−へリックス型モチーフに、あるいは、このモチーフの一つのへリックスまたはループに隣接した約10から30ヌクレオチドの配列を含み、請求項26に記載の核酸分子を特異的に検出/増幅できることを特徴とする、プローブ及びプライマー。
【請求項28】
請求項26に記載の核酸分子からなるインサートを含むことを特徴とする、真核または原核組換えベクター。
【請求項29】
請求項28に記載の組換えベクターで改変されることを特徴とする、真核または原核細胞。
【請求項30】
請求項26に記載の核酸分子で改変された細胞を含むことを特徴とする、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項31】
請求項26に記載の核酸分子で改変された細胞を含むことを特徴とする、トランスジェニック植物。
【請求項32】
生物発光タンパク質をコードする遺伝子のレギュレーターまたはリプレッサーとしての請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチドを含む調節システムで改変された原核または真核細胞。
【請求項33】
ウランで汚染された土壌及び水のレメディエーションのための、請求項29に記載の改変された原核または真核細胞の、または、請求項31に記載のトランスジェニック植物の使用。
【請求項34】
ウランで汚染された土壌及び水を検出するための試薬を調製するための、請求項32に記載の改変された原核または真核細胞の使用。
【請求項35】
ウランで汚染された個体を診断するための試薬を調製するための、請求項32に記載の改変された原核または真核細胞の使用。
【請求項36】
請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチドに選択的に結合することを特徴とする、抗体。
【請求項37】
少なくとも:請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、請求項18に記載のペプチド組成物、請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質、請求項36に記載の抗体、あるいは、請求項32に記載の改変された原核または真核細胞を含むことを特徴とする、ウランによる汚染を検出するためのキット。
【請求項1】
カルモジュリンの4つのカルシウム結合部位:
・部位I:残基D20、D22及びD24から選択される残基、
・部位II:残基D56、D58及びN60から選択される残基、
・部位III:残基D93、D95及びN97から選択される残基、
・部位IV:残基D129、D131及びD133から選択される残基、
(前記位置は、ヒトカルモジュリン配列(SWISSPROT P02593)を参照して示される)
の少なくとも1つの、1つ、2つまたは3つの残基の、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、His(H)、Tyr(Y)、Asn(N)及びGln(Q)からなる群から選択される中性残基への少なくとも1つの突然変異を含むカルモジュリンループの配列を含むへリックス−ループ−へリックス型構造を有することを特徴とする、ペプチド。
【請求項2】
該突然変異が好ましくは、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)またはアスパラギン(Asn)中性残基への突然変異であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
該突然変異が好ましくは、残基D20、D22またはD24のトレオニン残基への突然変異、2つの残基D20及びD24の、2つの残基D20及びD22の、または、2つの残基D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への突然変異、あるいは、3つの残基D20、D22及びD24の、トレオニン、セリンまたはアスパラギン残基への、突然変異であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
カルモジュリンカルシウム結合部位突然変異であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項5】
それぞれが、アミノ酸残基の化学架橋を許容する残基、特に、システインがジスルフィド架橋を介して結合するシステイン残基への突然変異を含むへリックスを有する環状ペプチドであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項6】
突然変異F19C及びV35Cを有することを特徴とする、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
アミノ酸残基の蛍光アミノ酸残基への突然変異も含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項8】
前記蛍光アミノ酸残基がチロシン残基またはトリプトファン残基であることを特徴とする、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
T26Y、T26W、A15W及びF16W:からなる群から選択される突然変異を有することを特徴とする、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号4−7または配列番号9−12の配列の一つを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項11】
少なくとも一つのフルオロフォアと結合されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項12】
二つの異なるフルオロフォアと結合されることを特徴とする、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
前記フルオロフォアがEBFP、ECFP、EYFP、EGFP、DsRed、CopGFP、PhiYFP:から選択される蛍光タンパク質であることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記フルオロフォアがダンシル、クマリン、フルオレセイン及びAlexa誘導体から選択されることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のペプチド。
【請求項15】
腎臓及び/または骨を標的とすることを許容する少なくとも一つの分子と結合することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項16】
in vivoで、その排泄を促進する分子と結合することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載のペプチド。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一つに記載の少なくとも2つの同じでも異なってもよいペプチドの連結を含むことを特徴とする、ポリペプチド
【請求項18】
請求項17に記載の少なくとも一つのポリペプチド及び少なくとも一つの好適なビヒクル含むことを特徴とする、ペプチド組成物。
【請求項19】
適切なタンパク質の配列との、請求項1から10のいずれか一つに記載の少なくとも一つのペプチドの配列のイン−フレーム(in−frame)融合物からなることを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項20】
前記ペプチドの配列が、カルシウムに結合できる、カルモジュリン、後者由来のカメレオンタンパク質及びへリックス−ループ−へリックス型モチーフを有するタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の配列に融合されることを特徴とする、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
請求項13または14に記載の少なくとも一つのフルオロフォアと結合されることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記タンパク質の末端の一つが蛍光供与体と結合し、他方が蛍光受容体と結合することを特徴とする、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
その末端の一つに、EBFPまたはECFPの配列を、及び、他方の末端に、EGFPまたはEYFPの配列を含むことを特徴とする、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
ウランで汚染された土壌及び水を検出するための試薬を調製するための:請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、請求項18に記載のペプチド組成物及び請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質、からなる群から選択されるプロダクトの使用。
【請求項25】
ウランで汚染された個体を診断するための試薬を調製するための:請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、請求項18に記載のペプチド組成物及び請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質、からなる群から選択されるプロダクトの使用。
【請求項26】
請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、または請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質をコードする配列を含むことを特徴とする、単離した核酸分子。
【請求項27】
カルシウムイオン結合タンパク質の、へリックス−ループ−へリックス型モチーフに、あるいは、このモチーフの一つのへリックスまたはループに隣接した約10から30ヌクレオチドの配列を含み、請求項26に記載の核酸分子を特異的に検出/増幅できることを特徴とする、プローブ及びプライマー。
【請求項28】
請求項26に記載の核酸分子からなるインサートを含むことを特徴とする、真核または原核組換えベクター。
【請求項29】
請求項28に記載の組換えベクターで改変されることを特徴とする、真核または原核細胞。
【請求項30】
請求項26に記載の核酸分子で改変された細胞を含むことを特徴とする、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項31】
請求項26に記載の核酸分子で改変された細胞を含むことを特徴とする、トランスジェニック植物。
【請求項32】
生物発光タンパク質をコードする遺伝子のレギュレーターまたはリプレッサーとしての請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチドを含む調節システムで改変された原核または真核細胞。
【請求項33】
ウランで汚染された土壌及び水のレメディエーションのための、請求項29に記載の改変された原核または真核細胞の、または、請求項31に記載のトランスジェニック植物の使用。
【請求項34】
ウランで汚染された土壌及び水を検出するための試薬を調製するための、請求項32に記載の改変された原核または真核細胞の使用。
【請求項35】
ウランで汚染された個体を診断するための試薬を調製するための、請求項32に記載の改変された原核または真核細胞の使用。
【請求項36】
請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチドに選択的に結合することを特徴とする、抗体。
【請求項37】
少なくとも:請求項1から16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17に記載のポリペプチド、請求項18に記載のペプチド組成物、請求項19から23のいずれか一つに記載の融合タンパク質、請求項36に記載の抗体、あるいは、請求項32に記載の改変された原核または真核細胞を含むことを特徴とする、ウランによる汚染を検出するためのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図10】
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【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−537695(P2007−537695A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516341(P2006−516341)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001698
【国際公開番号】WO2005/012336
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(500511590)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001698
【国際公開番号】WO2005/012336
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(500511590)
【Fターム(参考)】
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