説明

エアバッグの仮保持方法及びエアバッグモジュール

【課題】脆弱部を設けなくてもエアバッグを円滑に展開膨張させることのできる、エアバッグの仮保持方法及びエアバッグモジュールを提供する。
【解決手段】エアバッグ35の仮保持に際し、第1の工程及び第2の工程が順に行なわれる。第1の工程では、両端に開口47,48を有し、かつ自身の軸線L2がエアバッグ35の折り畳み部37の展開方向に沿うように配置された熱収縮フィルム46により、展開方向前側の開口47を折り畳み部37よりも展開方向前側に位置させた状態で同折り畳み部37を取り囲む(図2(A))。第2の工程では、展開方向に直交する面を投影面50とした場合に、その投影面50について、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47の投影される箇所が、折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれるように、熱収縮フィルム46を熱収縮させる(図2(B))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグの折り畳み部を折り畳まれた状態に仮保持する方法、及びその方法が適用されて折り畳み部が仮保持されたエアバッグモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗り物に対し衝突等により衝撃が加わった場合にその衝撃から運転者を保護する装置として、エアバッグ装置が組込まれたステアリングホイールが広く知られている。このエアバッグ装置に用いられるエアバッグ本体は、エアバッグ及びリテーナを備える。エアバッグは、折り畳まれた状態で配置された折り畳み部を有し、かつ膨張用ガスにより折り畳み部の折り状態を解消(展開)しながら展開方向前側へ膨張する。リテーナは、主としてエアバッグのガス入口部をバックホルダとの間に挟み込んで締結するために用いられるものであり、折り畳み部の展開方向についての後側に配置される。
【0003】
上記エアバッグ本体では、ステアリングホイールに組付けられるまで、折り畳み部が折り畳まれた状態に仮保持される必要がある。そこで、折り畳み部を仮保持する方法が種々考えられている。
【0004】
その1つに、折り畳み部を有するエアバッグの全体とリテーナとを1枚の布で包み込むことで、エアバッグモジュールを構成するものがある。この布は、折り畳み部を、その展開方向前側からも包み込む。この布において、折り畳み部の展開方向前側の部分は、エアバッグモジュールの輸送時等、エアバッグ装置に組付けられるまで、折り畳み部を折り畳んだ状態に仮保持するが、同エアバッグの展開膨張の妨げとなる。そこで、上記布において、折り畳み部の展開方向前側となる部分等には、他の部位に比較して弱い脆弱部としてスリットが設けられていて、展開膨張するエアバッグにより、布がスリットにおいて簡易迅速に破断されるようになっている。
【0005】
また、特許文献1には、上記布に代えて、エアバッグ本体の全体とリテーナとを熱収縮フィルムによって被覆する仮保持方法が提案されている。この熱収縮フィルムも上記布と同様、折り畳み部を、その展開方向前側からも被覆する。この仮保持方法によれば、エアバッグは、熱収縮する熱収縮フィルムによって締め付けられてコンパクトになる。熱収縮フィルムにおいて、折り畳み部の展開方向前側となる部分等には、脆弱部として、複数のスリットが断続して設けられていて、展開膨張するエアバッグにより、熱収縮フィルムが断続する複数のスリットにおいて破断されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−181493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、エアバッグ及びリテーナを上記布で包み込む従来の仮保持方法、熱収縮フィルムで被覆する特許文献1の仮保持方法のいずれにおいても、脆弱部を別途設けなければならず、このことがコスト上昇を招いている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、脆弱部を設けなくてもエアバッグを円滑に展開膨張させることのできる、エアバッグの仮保持方法及びエアバッグモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、折り畳まれた状態で配置された折り畳み部を有し、かつ膨張用ガスにより前記折り畳み部が展開方向前側へ展開しながら膨張するエアバッグと、前記折り畳み部の前記展開方向についての後側に配置されたリテーナとを備えるエアバッグ本体に適用され、前記折り畳み部を折り畳まれた状態に仮保持する方法であって、両端に開口を有し、かつ自身の軸線が前記折り畳み部の前記展開方向に沿うように配置された熱収縮フィルムにより、前記展開方向前側の開口を前記折り畳み部よりも前記展開方向前側に位置させた状態で前記折り畳み部を取り囲む第1の工程と、前記展開方向に直交する面を投影面とした場合に、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向前側の開口の投影される箇所が、前記折り畳み部の展開方向前側部分の投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれるように、前記熱収縮フィルムを熱収縮させる第2の工程とを備えることを要旨とする。
【0010】
上記の方法によれば、まず、第1の工程において、両端に開口を有し、かつ自身の軸線が折り畳み部の展開方向に沿うように配置された熱収縮フィルムによって、エアバッグの折り畳み部が取り囲まれる。この作業は、熱収縮フィルムの展開方向前側の開口が、折り畳み部よりも展開方向前側に位置させられた状態で行なわれる。
【0011】
次に、第2の工程において、熱収縮フィルムが加熱される。この加熱により、熱収縮フィルムのうち、折り畳み部を取り囲んでいる箇所は、熱収縮フィルムの軸線に近づく側(径方向内側)へ収縮する。熱収縮フィルムの上記箇所は、折り畳み部が同熱収縮フィルムに対し上記軸線から遠ざかる側(径方向外側)へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制する。
【0012】
また、上記加熱により、熱収縮フィルムの展開方向前側の開口が収縮する。ここで、展開方向に直交する面を投影面とすると、上記展開方向前側の開口の収縮により、投影面について、熱収縮フィルムの展開方向前側の開口の投影される箇所が、折り畳み部の展開方向前側部分の投影される箇所よりも小さく、かつその箇所に含まれるようになる。そして、上記のように熱収縮した展開方向前側の開口及びその周辺部分は、折り畳み部の外周部の展開方向前側で同展開方向に直交する壁となり、折り畳み部が熱収縮フィルムに対し展開方向前側へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制する。このようにして、折り畳み部は、熱収縮フィルムによって、折り畳まれた状態に保持される。
【0013】
この状態では、折り畳み部の展開方向前側に熱収縮フィルムの開口が位置する。この開口は、膨張用ガスの供給を受けたエアバッグが折り状態を解消(展開)しながら膨張するのを許容する。このように、熱収縮フィルムの展開方向前側の開口が、従来の脆弱部と同様の機能を発揮する。しかも、この開口は、熱収縮フィルムに当初(熱収縮前)から存在するものである。そのため、エアバッグを展開膨張させるために、スリット等からなる脆弱部を熱収縮フィルムに別途設けなくてもすむ。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記熱収縮フィルムとして、前記折り畳み部を取り囲む前に環状に形成されたものが用いられ、前記第1の工程では、前記環状の熱収縮フィルムが、前記折り畳み部に被せられることにより、同折り畳み部を取り囲むことを要旨とする。
【0015】
ここで、熱収縮フィルムは、その製造段階で環状に形成されたもの(無端状をなすもの)であってもよいし、平面状をなす1枚のフィルムが環状に湾曲させられ、対向する一対の端部において互いに接合されたものであってもよい。
【0016】
上記の方法によれば、第1の工程では、予め環状に形成された熱収縮フィルムを用い、折り畳み部に被せるといった簡易な作業を行なうだけで、同折り畳み部が熱収縮フィルムによって取り囲まれる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第1の工程では、前記展開方向後側の開口を前記リテーナよりも前記展開方向後側に位置させた状態で、同リテーナを前記熱収縮フィルムにより取り囲み、前記第2の工程では、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向後側の開口の投影される箇所が、前記リテーナの投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれるように、前記熱収縮フィルムを熱収縮させることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、第1の工程中、熱収縮フィルムによって折り畳み部を取り囲む作業は、熱収縮フィルムの展開方向前側の開口が折り畳み部よりも展開方向前側に位置させられ、かつ熱収縮フィルムの展開方向後側の開口が、リテーナよりも展開方向後側に位置させられた状態で行なわれる。
【0019】
次に、第2の工程において、熱収縮フィルムが加熱されると、折り畳み部を取り囲んでいる箇所、及び折り畳み部の展開方向前側の開口が収縮することに加え、熱収縮フィルムの展開方向後側の開口が収縮する。ここで、上記展開方向後側の開口の収縮により、投影面について、熱収縮フィルムの展開方向後側の開口の投影される箇所が、リテーナの投影される箇所よりも小さく、かつその箇所に含まれるようになる。そして、上記のように熱収縮した展開方向後側の開口及びその周辺部分は、リテーナの外周部の展開方向後側で同展開方向に直交する壁となり、リテーナが熱収縮フィルムに対し折り畳み部の展開方向後側へ動くのを規制する。従って、熱収縮フィルムは、エアバッグ本体に対し、軸線に沿う方向へ動くこと、すなわち折り畳み部の展開方向前側にも後側にも動くことを規制され、輸送時等に熱収縮フィルムがエアバッグ本体から脱落する現象が起こりにくくなる。
【0020】
請求項4に記載の発明にかかるエアバッグモジュールは、折り畳まれた状態で配置された折り畳み部を有し、かつ膨張用ガスにより前記折り畳み部が展開方向前側へ展開しながら膨張するエアバッグ、及び前記折り畳み部の前記展開方向についての後側に配置されたリテーナを備えるエアバッグ本体と、両端に開口を有し、かつ自身の軸線が前記折り畳み部の前記展開方向に沿うように配置されて前記折り畳み部を取り囲む環状の熱収縮フィルムとを備え、前記展開方向に直交する面を投影面とした場合に、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向前側の開口の投影される箇所が、前記折り畳み部の展開方向前側部分の投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれていることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、熱収縮フィルムのうち、折り畳み部を取り囲んでいる箇所は、同折り畳み部が熱収縮フィルムの軸線から遠ざかる側(径方向外側)へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制する。
【0022】
また、熱収縮した展開方向前側の開口及びその周辺部分は、折り畳み部の外周部の展開方向前側で同展開方向に直交する壁となり、折り畳み部が展開方向前側へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制する。これらの規制により、折り畳み部が折り畳まれた状態に保持される。
【0023】
この状態では、折り畳み部の展開方向前側に、熱収縮フィルムの開口が位置する。この開口は、膨張用ガスの供給を受けた折り畳み部が折り状態を解消(展開)しながら膨張するのを許容する。このように、熱収縮フィルムの展開方向前側の開口が、従来の脆弱部と同様の機能を発揮する。しかも、この開口は、熱収縮フィルムに当初から存在するものである。そのため、上述した請求項1に記載の発明と同様に、エアバッグを展開膨張させるために、スリット等からなる脆弱部を熱収縮フィルムに別途設けなくてもすむ。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記熱収縮フィルムのうち、前記折り畳み部を取り囲んでいる箇所は、熱収縮して同折り畳み部の外周面の少なくとも一部に密着していることを要旨とする。
【0025】
上記の構成によれば、熱収縮フィルムのうち、折り畳み部を取り囲んでいる箇所が熱収縮して同折り畳み部の外形形状に沿って変形し、同折り畳み部の外周面の少なくとも一部に密着することにより、同箇所と外周面との間の隙間が小さく(略零に)なる。このため、折り畳み部が熱収縮フィルムの軸線から遠ざかる側(径方向外側)へ動く(折り畳み状態が崩れる)ことが一層規制される。
【0026】
特に、折り畳み部の外形形状が多角柱状である場合、1枚の布で折り畳み部を包み込む従来の仮保持方法では、布と折り畳み部の角部との間に隙間が生じないように包み込むことは困難である。しかし、熱収縮フィルムが熱収縮して折り畳み部に密着する請求項5に記載の発明では、折り畳み部の角部についても、熱収縮フィルムとの間の隙間を小さく(略零に)することが可能である。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、前記熱収縮フィルムは、前記折り畳み部に加え前記リテーナを取り囲んでおり、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向後側の開口の投影される箇所が、前記リテーナの投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれていることを要旨とする。
【0028】
上記の構成によれば、熱収縮フィルムにおいて、展開方向後側の開口及びその周辺部分は、リテーナの外周部の展開方向後側で同展開方向に直交する壁となり、リテーナが熱収縮フィルムに対し展開方向後側へ動くのを規制する。従って、熱収縮フィルムは、エアバッグ本体に対し、軸線に沿う方向へ動くこと、すなわち折り畳み部の展開方向前側にも後側にも動くことを規制される。そのため、上述した請求項3に記載の発明と同様に、輸送時等に熱収縮フィルムがエアバッグ本体から脱落する現象が起こりにくくなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のエアバッグの仮保持方法及びエアバッグモジュールによれば、脆弱部を設けなくてもエアバッグを円滑に展開膨張させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を具体化した一実施形態を示す図であり、エアバッグ装置付きステアリングホイールの部分断面図。
【図2】(A),(B)は、エアバッグの折り畳み部を折り畳まれた状態に仮保持する工程を説明する概略断面図。
【図3】図2(B)のエアバッグモジュールを左方から見た概略正面図。
【図4】図2(B)のエアバッグモジュールを右方から見た概略背面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のエアバッグの仮保持方法及びエアバッグモジュールを、エアバッグ装置付きステアリングホイールに適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両の運転席よりも前方(図1の右方)には、回転軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)11が配設され、その後端部にステアリングホイール12が一体回転可能に取付けられている。ステアリングホイール12は、リム部(ハンドル部、リング部と呼ばれることもある)13、パッド部14及びスポーク部15を備えている。
【0032】
リム部13は、上記ステアリングシャフト11を中心とした略円環状をなしている。パッド部14は、リム部13によって囲まれた空間に配置されている。パッド部14の前側部分はロアカバー16によって構成されている。スポーク部15は、リム部13及びパッド部14間に設けられている。
【0033】
上記パッド部14の内部にはエアバッグ装置20が配設されている。エアバッグ装置20は、バックホルダ21、インフレータ(ガス発生器)23、リテーナ26及びエアバッグ35を備えて構成されている。
【0034】
バックホルダ21は、ステアリングホイール12の芯金(図示略)に支持されている。バックホルダ21は、インフレータ23よりも若干径の大きな円形の挿入孔22を有している。
【0035】
インフレータ23は、前後方向に高さの低い円柱状をなしていて、略円筒状の外周面24を有している。インフレータ23の内部には、エアバッグ35を膨張させるための膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ23の外周面24には、複数のガス噴出孔(図示略)が周方向に略等角度毎に設けられており、ガス発生剤で発生された膨張用ガスが各ガス噴出孔から径方向外方へ噴出される。
【0036】
インフレータ23は、その外周面24から径方向外側へ突出するフランジ部25を有している。そして、インフレータ23においてフランジ部25よりも後側の部分が、バックホルダ21の挿入孔22内に挿入されるとともに、後述するガス入口部36(図2(A),(B)参照)を通じてエアバッグ35に挿入され、同フランジ部25がバックホルダ21よりも前側に配置されている。なお、インフレータ23としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプが用いられてもよい。
【0037】
リテーナ26は、主としてエアバッグ35における上記ガス入口部36の周辺部分をバックホルダ21との間に挟み込んで締結する際に用いられるものである。リテーナ26は、側壁部27と底壁部28とによって構成され、全体として環状をなしている。
【0038】
側壁部27は略四角環状をなしており、インフレータ23を離間状態で取り囲んでいる。底壁部28は、側壁部27の前端部と、インフレータ23の外周面24との間を閉塞するものであり、矩形の外形形状を有している。底壁部28の中央部分には、インフレータ23の外周面24よりも若干大きな径を有する挿入孔29が設けられている。この挿入孔29に対し、インフレータ23のフランジ部25よりも後側部分が挿入されることで、底壁部28がバックホルダ21よりも後側に配置されている。底壁部28において、挿入孔29の周りの複数箇所(本実施形態では4箇所)には、かしめスタッド等からなるボルト31が固定されている(図4参照)。各ボルト31は、上記ステアリングシャフト11の上記回転軸線L1に沿って前方へ延びている。
【0039】
エアバッグ35は、上記回転軸線L1に沿う方向のうち後側(運転者に近づく側、図1の左側)を展開方向前側とし、インフレータ23の上記ガス噴出孔から噴出される膨張用ガスにより展開方向前側へ向けて膨張するものである。エアバッグ35は、強度が高く、かつ可撓性を有する織布等の布によって袋状に形成されている。エアバッグ35は、自身の前端部において開口されており、この開口が上記ガス入口部36を構成している(図2(A),(B)参照)。なお、上記のように本実施形態では、エアバッグ35の展開方向についての前側及び後側が、車両の前側及び後側と逆になっている。そのため、両者を区別するために、前者の前側及び後側については、「展開方向前側」、「展開方向後側」と記載するものとする。
【0040】
エアバッグ35は、インフレータ23の後側で折り畳まれた折り畳み部37と、その折り畳み部37の前側に位置して、バックホルダ21に取付けられる取付け部39とからなる。図1では、説明の便宜上、折り畳み部37が渦巻き状(ロール状)に折り畳まれた状態で図示されているが、折り畳み部37の折り畳みの態様はこれに限定されない。折り畳み部37は、リテーナ26から前記回転軸線L1(展開方向)に沿って後方へ延びる四角柱状の外形形状を有している。
【0041】
ここで、図2(B)に示すように、折り畳み部37の展開方向に直交する面を投影面50とすると、この投影面50について、折り畳み部37の投影される箇所52が、リテーナ26の投影される箇所54と略合致している(図3、図4参照)。
【0042】
図1に示すように、上記各ボルト31は、エアバッグ35における上記ガス入口部36の周辺部分、バックホルダ21及びフランジ部25に挿通されている。そして、各ボルト31にナット32が螺合されることにより、エアバッグ35におけるガス入口部36の周辺部分及びバックホルダ21がリテーナ26の底壁部28及びフランジ部25間で締結されている。
【0043】
ステアリングホイール12は、軟質樹脂等によって一体に形成されたバッグカバー40をさらに備えている。バッグカバー40は、上記エアバッグ35を取り囲む筒状壁部41と、その筒状壁部41を後側から塞ぐ蓋部42とを備えている。バッグカバー40は、筒状壁部41において上記バックホルダ21に対し後方かつ外側から被せられて係止されており、バックホルダ21とともに前後方向へ移動可能である。
【0044】
上記蓋部42には、その蓋部42の他の箇所よりも厚みの小さな破断予定部(図示略)が形成されており、この破断予定部によって、蓋部42が複数の扉部に仕切られている。破断予定部は、蓋部42の他の箇所よりも強度が低くなっており、エアバッグ35が展開膨張したときに、この破断予定部において蓋部42が破断されやすくなっている。破断された各扉部は、それぞれヒンジ部(図示略)を支点として、後側かつ回転軸線L1から遠ざかる側(径方向外側)へ回動する(開く)。
【0045】
上記のようにして、エアバッグ装置20付きステアリングホイール12の基本的な構造が構成されている。このステアリングホイール12では、エアバッグ35とリテーナ26とが、ガス入口部36の周辺部分において各ボルト31が挿通されて一体となった状態、すなわち組合わされた状態のエアバッグ本体45として取り扱われる。エアバッグ35及びリテーナ26は、このエアバッグ本体45という形態で、輸送されたり、ステアリングホイール12に組付けられたりする。
【0046】
ここで、エアバッグ本体45では、上述したように折り畳み部37を有しているため、同エアバッグ本体45がステアリングホイール12に組付けられるまでは、折り畳み部37を折り畳まれた状態に仮保持する必要がある。ただし、仮保持のための構成には、エアバッグ35の展開膨張を妨げにくいことも要求される。
【0047】
そこで、本実施形態では、これらの要求をともに満たす次の態様で、エアバッグ35(折り畳み部37)が仮保持されている。
この態様では、図2(A)に示すように、両端に開口47,48を有する環状の熱収縮フィルム46が用いられている。ここで、両開口47,48を区別するために、折り畳み部37の展開方向前側のものを「開口47」といい、展開方向後側のものを「開口48」というものとする。
【0048】
熱収縮フィルム46は、加熱されることで収縮する性質を有するフィルムからなる。この熱収縮フィルム46としては、例えばポリエステル、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート等によって形成されたものを用いることができる。また、熱収縮フィルム46は、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。
【0049】
熱収縮フィルム46は、自身の軸線L2が折り畳み部37の展開方向に沿うように配置されて、次の条件を満たす態様で、エアバッグ本体45を取り囲んでいる。
<条件1>
図3に示すように、上記投影面50について、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47の投影される箇所51が、折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所52よりも小さく、かつ同箇所52に含まれるように、熱収縮フィルム46が熱収縮されていること。
【0050】
なお、図3では箇所52が網点で表現され、この箇所52と箇所51との重複部分が、箇所52よりも密度の高い(濃い)網点で表現されている。
<条件2>
図4に示すように、上記投影面50について、熱収縮フィルム46の展開方向後側の開口48の投影される箇所53が、リテーナ26の投影される箇所54よりも小さく、かつ同箇所54に含まれるように、熱収縮フィルム46が熱収縮されていること。
【0051】
なお、図4では箇所54が網点で表現され、この箇所54と箇所53との重複部分が、箇所54よりも密度の高い(濃い)網点で表現されている。
<条件3>
図3に示すように、熱収縮フィルム46のうち、折り畳み部37を取り囲んでいる箇所55が、熱収縮して同折り畳み部37の外周面37Bに密着していること。
【0052】
このようにして、エアバッグ本体45は、熱収縮フィルム46によって取り囲まれることで同熱収縮フィルム46と一体となって、折り畳み部37を折り畳まれた状態に保持された形態にされている。以下、これらのエアバッグ本体45及び熱収縮フィルム46からなるものを「エアバッグモジュールAM」というものとする。
【0053】
上記エアバッグモジュールAMでは、次の第1の工程及び第2の工程が順に行なわれることで、熱収縮フィルム46によって折り畳み部37が折り畳まれた状態に仮保持される。
【0054】
<第1の工程>
第1の工程では、図2(A)に示すように、両端に開口47,48を有する環状の熱収縮フィルム46が用いられる。この熱収縮フィルム46としては、上記投影面50について、開口47の投影される箇所51が、四角柱状の外形形状を有する折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所52よりも僅かに大きいものが適している。また、熱収縮フィルム46としては、上記投影面50について、開口48の投影される箇所53がリテーナ26の投影される箇所54よりも僅かに大きいものが適している。また、熱収縮フィルム46としては、エアバッグ本体45よりも展開方向に長いものが用いられる。
【0055】
続いて、軸線L2が展開方向に沿うように上記環状の熱収縮フィルム46の向き(姿勢)が合わされる。この向き(姿勢)を合わされた熱収縮フィルム46がエアバッグ本体45に被せられることで、同エアバッグ本体45が同熱収縮フィルム46によって取り囲まれる。
【0056】
さらに、環状の熱収縮フィルム46におけるエアバッグ本体45の展開方向についての位置を合わせる作業が行なわれる。この作業は、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47が、折り畳み部37よりも展開方向前側に位置し、かつ展開方向後側の開口48がリテーナ26の底壁部28、より正確にはエアバッグ35のガス入口部36よりも展開方向後側に位置するように行なわれる。
【0057】
<第2の工程>
第2の工程では、上記熱収縮フィルム46の全体が加熱される。この加熱により、図2(B)に示すように熱収縮フィルム46のうち、折り畳み部37を取り囲んでいる箇所55が、同熱収縮フィルム46の軸線L2に近づく側(径方向内側)へ収縮する。収縮した上記箇所55は、折り畳み部37の外周面37Bの多くに密着する。なお、図2(B)では、箇所55が外周面37Bから離れた状態で図示されている。
【0058】
また、上記加熱により、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47が上記軸線L2に近づく側(径方向内側)へ、上記箇所55よりも大きく収縮する。箇所55の内方には折り畳み部37が位置していて、これが同箇所55の収縮を制限するのに対し、開口47及びその周辺部分の内方には、それらの収縮を制限するものが特段ないからである。この収縮により、図3に示すように、投影面50について、開口47の投影される箇所51が、折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所52よりも小さく、しかも同箇所52に含まれるようになる。
【0059】
また、上記加熱により、図2(B)に示すように、熱収縮フィルム46のうちリテーナ26の側壁部27を取り囲んでいる箇所56が、同熱収縮フィルム46の軸線L2に近づく側(径方向内側)へ収縮する。この際、側壁部27は上記箇所56の収縮を制限する。
【0060】
さらに、上記加熱により、図2(B)及び図4に示すように、熱収縮フィルム46の展開方向後側の開口48が上記軸線L2に近づく側(径方向内側)へ、リテーナ26を取り囲んでいる箇所56よりも大きく収縮する。これは以下の理由による。開口48及びその周辺部分の内方には複数本のボルト31が位置していて、これらが上記開口48の収縮を制限する。ただし、これらのボルト31は側壁部27よりも内方に位置するため、熱収縮フィルム46の熱収縮を制限する度合いが、上記側壁部27による制限の度合いよりも小さいからである。上記の収縮により、投影面50について、開口48の投影される箇所53が、リテーナ26の投影される箇所54よりも小さく、かつ同箇所54に含まれるようになる。
【0061】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について、<エアバッグモジュールAMの組付け前>、<エアバッグモジュールAMの組付け時>、<エアバッグモジュールAMの組付け後のエアバッグ装置20の非作動時>、及び<エアバッグモジュールAMの組付け後のエアバッグ装置20の作動時>に分けて説明する。
【0062】
<エアバッグモジュールAMの組付け前>
図2(B)に示すように、熱収縮フィルム46のうち、エアバッグ35の折り畳み部37を取り囲んでいる箇所55は、同折り畳み部37が熱収縮フィルム46の軸線L2から遠ざかる側(径方向外側)へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制する。
【0063】
本実施形態では、上記箇所55が熱収縮して、折り畳み部37の外周面37Bの多くに密着している。この密着により、同箇所55と外周面37Bとの間の隙間が小さく(略零に)なっていて、折り畳み部37が上記径方向外側へ動くことが一層規制される。
【0064】
特に、本実施形態では、折り畳み部37の外形形状が四角柱状であって、投影面50について、折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所52が略矩形である。この場合、1枚の布でエアバッグの全体及びリテーナの全体を包み込む従来の仮保持方法では、布と折り畳み部の角部との間に隙間が生じないように包み込むことは困難である。しかし、熱収縮フィルム46が熱収縮する本実施形態では、同熱収縮フィルム46が折り畳み部37の外形形状に沿って変形して密着することから、同折り畳み部37の角部についても、熱収縮フィルム46との間の隙間を小さく(略零に)することが可能である。
【0065】
また、熱収縮した展開方向前側の開口47及びその周辺部分は、折り畳み部37の外周部の展開方向前側で同展開方向に直交する壁となり、折り畳み部37が熱収縮フィルム46に対し展開方向前側へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制する。
【0066】
これらの規制により、折り畳み部37が折り畳まれた状態に保持される。
さらに、熱収縮フィルム46において、熱収縮した展開方向後側の開口48及びその周辺部分は、リテーナ26の外周部の展開方向後側で同展開方向に直交する壁となり、リテーナ26が熱収縮フィルム46に対し展開方向後側へ動くのを規制する。従って、熱収縮フィルム46は、エアバッグ本体45に対し、軸線L2に沿う方向へ動くこと、すなわち折り畳み部37の展開方向前側へも展開方向後側にも動くことを規制される。
【0067】
<エアバッグモジュールAMの組付け時>
エアバッグモジュールAMでは、その外殻部分が熱収縮フィルム46によって構成されている。この熱収縮フィルム46の外表面は、外殻部分が布によって構成される従来のものに比べ滑らかである。しかも、この熱収縮フィルム46には、上記布の場合とは異なり、スリット等の脆弱部が設けられていない。そのため、エアバッグモジュールAMがステアリングホイール12に組付けられるときには、熱収縮フィルム46がバックホルダ21等のエアバッグ装置20の構成部材や、組付け用治具等に接触したとしても滑りやすく、それらに引っ掛かりにくい。
【0068】
<エアバッグモジュールAMの組付け後のエアバッグ装置20の非作動時>
エアバッグ装置20では、車両に対し前方から衝撃が加わらない通常時には、インフレータ23の各ガス噴出孔から膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ35に供給される膨張用ガスがなく、同エアバッグ35では折り畳み部37が折り畳まれた状態に保持され続ける。
【0069】
<エアバッグモジュールAMの組付け後のエアバッグ装置20の作動時>
前突等により車両に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者が前傾しようとする。一方、エアバッグ装置20では、上記の衝撃に応じてインフレータ23の各ガス噴出孔から膨張用ガスが噴出されてエアバッグ35内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグ35は、展開方向前側(運転者側)へ向けて折り状態を解消(展開)しながら膨張する。
【0070】
このときには、折り畳み部37の展開方向前側に熱収縮フィルム46の開口47が位置している。この開口47は、膨張用ガスの供給を受けたエアバッグ35の折り畳み部37が折り状態を解消(展開)しながら膨張するのを許容する。このように、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47が、従来の脆弱部と同様の機能を発揮する。
【0071】
上記展開膨張するエアバッグ35により、バッグカバー40、特に蓋部42に押圧力が加わり、同蓋部42が破断予定部において複数の扉部に破断される。破断された各扉部がヒンジ部を支点として後側へ開くことで、それらの間に開口が生ずる。この開口を通じてエアバッグ35が後方へ向けて展開膨張する。前突の衝撃により前傾しようとする運転者とステアリングホイール12との間に、展開膨張したエアバッグ35が介在することとなり、前傾しようとする上記運転者がエアバッグ35によって拘束されて、衝撃から保護される。
【0072】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)第1の工程において、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47を、エアバッグ35の折り畳み部37よりも展開方向前側に位置させた状態で、同折り畳み部37を取り囲む(図2(A))。第2の工程において、展開方向に直交する投影面50について、熱収縮フィルム46の上記開口47の投影される箇所51が、折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所52よりも小さく、かつ同箇所52に含まれるように、熱収縮フィルム46を熱収縮させるようにしている(図3)。
【0073】
そのため、熱収縮した開口47及びその周辺部分により、折り畳み部37が展開方向前側へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを規制し、折り畳み部37を折り畳まれた状態に保持することができる(図2(B))。
【0074】
また、熱収縮フィルム46の上記開口47に、従来の脆弱部と同様の機能を発揮させることができる。その結果、折り畳み部37を展開膨張させるために、スリット等からなる脆弱部を熱収縮フィルム46に別途設けなくてもすみ、エアバッグモジュールAMひいてはエアバッグ装置20のコスト低減を図ることができる。
【0075】
(2)熱収縮フィルム46として、折り畳み部37を取り囲む前に環状に形成されたものを用いる。そして、第1の工程では、環状の熱収縮フィルム46を、折り畳み部37に被せることで、同折り畳み部37を取り囲むようにしている(図2(A))。
【0076】
そのため、予め環状に形成された熱収縮フィルム46を用意し、これを折り畳み部37に被せるといった簡易な作業を行なうだけで、同折り畳み部37を熱収縮フィルム46によって取り囲むことができる。
【0077】
(3)第1の工程では、熱収縮フィルム46の展開方向後側の開口48を、リテーナ26よりも展開方向後側に位置させた状態で、同熱収縮フィルム46によってリテーナ26を取り囲む(図2(A))。第2の工程では、上記投影面50について、熱収縮フィルム46の上記開口48の投影される箇所53が、リテーナ26の投影される箇所54よりも小さく、かつ同箇所54に含まれるように、熱収縮フィルム46を熱収縮させるようにしている(図4)。
【0078】
そのため、熱収縮した開口48及びその周辺部分により、リテーナ26が熱収縮フィルム46に対し折り畳み部37の展開方向後側へ動くのを規制する。熱収縮フィルム46が折り畳み部37の展開方向前側にも展開方向後側にも動くのを規制することができる。結果として、輸送時等に熱収縮フィルム46がエアバッグ本体45から脱落するのを抑制することができる。
【0079】
(4)エアバッグ本体45及び熱収縮フィルム46によってエアバッグモジュールAMを構成する。エアバッグ本体45として、膨張用ガスにより折り畳み部37が展開方向へ展開しながら膨張するエアバッグ35と、折り畳み部37の展開方向後側に配置されたリテーナ26とを備えるものを用いる。熱収縮フィルム46として、両端に開口47,48を有していて環状をなし、軸線L2が折り畳み部37の展開方向に沿うように配置されることで折り畳み部37を取り囲むものを用いる。
【0080】
展開方向に直交する投影面50について、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47の投影される箇所51が、折り畳み部37の展開方向前側部分37Aの投影される箇所52よりも小さく、かつ同箇所52に含まれるようにしている(図2(A)、図3)。
【0081】
そのため、上記(1)と同様に、エアバッグ35を円滑に展開膨張させるために、スリット等からなる脆弱部を熱収縮フィルム46に別途設けなくてもすむ。
(5)熱収縮フィルム46のうち、折り畳み部37を取り囲んでいる箇所55を、熱収縮させて同折り畳み部37の外周面37Bの少なくとも一部に密着させている(図2(B))。
【0082】
そのため、折り畳み部37が熱収縮フィルム46の軸線L2から遠ざかる側(径方向外側)へ動く(折り畳み状態が崩れる)のを一層抑制することができる。
また、折り畳み部37の外形形状が四角柱状であるものの、その角部についても、熱収縮フィルム46との間の隙間を小さく(略零に)することができる。
【0083】
(6)投影面50について、リテーナ26を取り囲む熱収縮フィルム46の展開方向後側の開口48の投影される箇所53が、リテーナ26の投影される箇所54よりも小さく、かつ同箇所54に含まれるようにしている(図4)。
【0084】
そのため、上記(3)と同様に、輸送時等に熱収縮フィルム46がエアバッグ本体45から脱落するのを抑制することができる。
(7)エアバッグ本体45を取り囲むものとして、平滑な外表面を有する環状の熱収縮フィルム46を用いている(図2(A))。また、この熱収縮フィルム46にスリット等の脆弱部を設けていない。
【0085】
そのため、エアバッグモジュールAMを、バックホルダ21等のエアバッグ装置20の構成部材や、組付け用治具等に引っ掛けることなく、ステアリングホイール12に容易に組付けることができ、エアバッグモジュールAMの組付け作業性の向上を図ることができる。
【0086】
(8)エアバッグ本体45を取り囲むものとして熱収縮フィルム46を用い、これを熱収縮させることでエアバッグ35に密着させている(図2(B))。そのため、エアバッグ本体45を1枚の布で包み込んだものに比べ、エアバッグ35の容量を少なからず減少させ(減容化し)、エアバッグモジュールAMのコンパクト化を図ることができる。
【0087】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・第1の工程では、エアバッグ35の折り畳み部37のみが環状の熱収縮フィルム46によって取り囲まれてもよい。この場合、リテーナ26及びエアバッグ35の取付け部39は熱収縮フィルム46によって取り囲まれない。
【0088】
第2の工程では、熱収縮フィルム46の展開方向前側の開口47が折り畳み部37の展開方向前側で収縮される。しかし、熱収縮フィルム46の展開方向後側の開口48はリテーナ26及び取付け部39の展開方向後側で収縮されない。
【0089】
上記のように変更された場合であっても、脆弱部を設けなくてもエアバッグ35を円滑に展開膨張させる効果が得られる。
・第1の工程において、1枚の熱収縮フィルム46を用い、これをエアバッグ本体45に巻付け、同熱収縮フィルム46の端部同士を溶着等により接合して、両端に開口47,48を有する環状としてもよい。このようにしても、両端に開口47,48を有し、かつ自身の軸線L2が折り畳み部37の展開方向に沿うように配置された熱収縮フィルム46により、展開方向前側の開口47を折り畳み部37よりも展開方向前側に位置させた状態で同折り畳み部37を取り囲むことができる。また、展開方向後側の開口48をリテーナ26よりも展開方向後側に位置させた状態で、同リテーナ26を熱収縮フィルム46により取り囲むことができる。
【0090】
・本発明は、折り畳み部37が四角柱状とは異なる外形形状に折り畳まれるものにも適用可能である。例えば、円柱状、円錐台状、四角錐台状等の多角錘台状等が、これに該当する。
【0091】
この場合には、折り畳み部37の外形形状に合わせて、熱収縮フィルムの環状の形状も変更する。
・本発明は、ステアリングホイールに組込まれて運転者を保護するエアバッグ装置20、いわゆる運転席用エアバッグ装置とは異なるタイプのエアバッグ装置にも適用可能である。例えば、インストルメントパネルに組込まれて助手席の乗員を保護する助手席用エアバッグ装置や、車両用シートのシートバック(背もたれ)に組込まれて、車両側方から受ける衝撃から乗員を保護するサイドエアバッグ装置等がこれに該当する。
【符号の説明】
【0092】
24,37B…外周面、26…リテーナ、35…エアバッグ、37…折り畳み部、37A…展開方向前側部分、45…エアバッグ本体、46…熱収縮フィルム、47,48…開口、50…投影面、51,52,53,54,55,56…箇所、L2…軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態で配置された折り畳み部を有し、かつ膨張用ガスにより前記折り畳み部が展開方向前側へ展開しながら膨張するエアバッグと、前記折り畳み部の前記展開方向についての後側に配置されたリテーナとを備えるエアバッグ本体に適用され、前記折り畳み部を折り畳まれた状態に仮保持する方法であって、
両端に開口を有し、かつ自身の軸線が前記折り畳み部の前記展開方向に沿うように配置された熱収縮フィルムにより、前記展開方向前側の開口を前記折り畳み部よりも前記展開方向前側に位置させた状態で前記折り畳み部を取り囲む第1の工程と、
前記展開方向に直交する面を投影面とした場合に、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向前側の開口の投影される箇所が、前記折り畳み部の展開方向前側部分の投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれるように、前記熱収縮フィルムを熱収縮させる第2の工程と
を備えることを特徴とするエアバッグの仮保持方法。
【請求項2】
前記熱収縮フィルムとして、前記折り畳み部を取り囲む前に環状に形成されたものが用いられ、
前記第1の工程では、前記環状の熱収縮フィルムが、前記折り畳み部に被せられることにより、同折り畳み部を取り囲む請求項1に記載のエアバッグの仮保持方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記展開方向後側の開口を前記リテーナよりも前記展開方向後側に位置させた状態で、同リテーナを前記熱収縮フィルムにより取り囲み、
前記第2の工程では、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向後側の開口の投影される箇所が、前記リテーナの投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれるように、前記熱収縮フィルムを熱収縮させる請求項1又は2に記載のエアバッグの仮保持方法。
【請求項4】
折り畳まれた状態で配置された折り畳み部を有し、かつ膨張用ガスにより前記折り畳み部が展開方向前側へ展開しながら膨張するエアバッグ、及び前記折り畳み部の前記展開方向についての後側に配置されたリテーナを備えるエアバッグ本体と、
両端に開口を有し、かつ自身の軸線が前記折り畳み部の前記展開方向に沿うように配置されて前記折り畳み部を取り囲む環状の熱収縮フィルムと
を備え、
前記展開方向に直交する面を投影面とした場合に、前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向前側の開口の投影される箇所が、前記折り畳み部の展開方向前側部分の投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれていることを特徴とするエアバッグモジュール。
【請求項5】
前記熱収縮フィルムのうち、前記折り畳み部を取り囲んでいる箇所は、熱収縮して同折り畳み部の外周面の少なくとも一部に密着している請求項4に記載のエアバッグモジュール。
【請求項6】
前記熱収縮フィルムは、前記折り畳み部に加え前記リテーナを取り囲んでおり、
前記投影面について、前記熱収縮フィルムの前記展開方向後側の開口の投影される箇所が、前記リテーナの投影される箇所よりも小さく、かつ同箇所に含まれている請求項4又は5に記載のエアバッグモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171412(P2012−171412A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33476(P2011−33476)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】