説明

エアバッグ用コート布、エアバッグおよびエアバッグ用コート布の製造方法

【課題】エアバッグ用織物に求められる低通気性とエアバッグ作動時の衝撃に耐える接合力を持ち、さらにその衝撃による、縫い目部分からの空気漏れをシール剤等の特別な工夫をせずに防ぐことができるエアバッグ用コート布およびエアバッグを提供すること。
【解決手段】合成繊維からなるタテ糸及びヨコ糸を有してなり、以下の要件を満たし、少なくとも片面に樹脂が被覆されていることを特徴とするエアバッグ用コート布。
(1)1.1≦Df/Dw≦2.0
ここで、
Dw:タテ糸の総繊度(dtex)、
Df:ヨコ方向の総繊度(dtex)。
(2)CF2/CF1≧1.05
ここで、
CF1:タテ糸のカバーファクター、
CF1=(Dw×0.9)1/2×Nw、
CF1:ヨコ糸のカバーファクター、
CF2=(Df×0.9)1/2×Nf、
Nw:タテ糸の織密度(本/2.54cm)、
Nf:ヨコ糸の織密度(本/2.54cm)。
(3)EC1≧200N、EC2≧200N
ここで、
EC1:ASTM D6479−02によるタテ方向の滑脱抵抗力(N)、
EC2:ASTM D6479−02によるヨコ方向の滑脱抵抗力(N)。
(4)0.80≦EC2/EC1≦1.20
(5)JIS L 1096:1999 8.27.1 A法で規定するフラジール形法に基づいて試験差圧125Paで測定したときの通気量が0.1cm/cm・min以下。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車安全部品のひとつであるエアバッグに関する。また、それを構成するエアバッグ用コート布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全意識の向上に伴い、自動車の事故が発生した際に乗員の安全を確保するために、種々のエアバッグが開発されるに伴いその有効性が認識され、急速に実用化が進んでいる。
【0003】
エアバッグは、車両が衝突してから極めて短時間に車内で膨張展開することで、衝突の反動で移動する乗員を受け止め、その衝撃を吸収して乗員を保護するものである。この作用上、袋を構成する布帛の通気量は小さいことが求められている。また、エアバッグが膨張展開し、乗員を受け止める際にバッグの内圧を一定以上に保つためにはエアバッグの縫製部からの空気漏れを極力少なくする必要がある。特に、側面衝突や自動車の横転時に頭部を保護するサイドカーテンエアバッグにおいては、自動車が横転する比較的長い時間エアバッグが所定の形状を保つことが要求されるため、空気漏れ防止の要求が大きい。さらに、車内の意匠性や他の部品との関係から、収納時のコンパクト性が求められ、さらには低コスト化の要求も高まっている。
【0004】
そのため、布帛表面の通気量を小さくする手段として、織物表面に樹脂を塗布したりフィルムを貼り付けた、コート布が提案されており、例えば、500デニール以下の合成繊維マルチフィラメントを織成した織物に樹脂膜をコーティングするコート布が開示されている(例えば特許文献1参照)。この手段は、500デニール以下の合成繊維マルチフィラメントを織成した織物に樹脂膜をコーティングし、縫製部分に力が加わったときの滑脱長を示す滑脱抵抗力を8〜20mmとなるようにするものである。
【0005】
しかし、この手段では、織物表面からの空気漏れは防止できるが、エアバッグ作動時の衝撃で縫い目部分にできる隙間から空気が漏れるため、必要な内圧の保持が難しいという問題があった。
【0006】
一方、縫い目部分からの空気漏れを防止する手段として、エアバッグを構成する基布同士を熱溶着させる手段も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
この手段によれは、織物の少なくとも片面にポリウレタン樹脂、好ましくはポリカーボネート型ポリウレタン樹脂を付与した基布を熱溶着することにより、袋体外周部からのガス漏れを阻止できるというものである。
【0008】
しかし、本公知例中でも触れられているように、熱溶着だけではエアバッグ展開時の衝撃に耐えない場合もあり、熱溶着に加えて縫製による補強が必要である点で、製造上の手間が増えるという欠点があった。
【0009】
また、縫い目部分からの空気漏れを防止する別の手段として、基布の接合部を縫製とシール剤による接着とからなる結合手段で構成するエアバッグ手段も知られている(例えば特許文献3参照)。
【0010】
この手段によれば、布帛を縫製する部分にシール剤を塗布後、布帛を積層圧着しシール部を縫製することにより縫製部の機密性を上げることができる。
【0011】
しかし、所定の位置にシール剤を塗布することや、シール剤が塗布された部分を外れることなく正確に縫製する必要等、製造上の注意点が多いという欠点があった。また、通常の縫製による接合に比べ、シール剤を塗布する分、エアバッグ全体として嵩張り、収納性が劣るという欠点もあった。
【0012】
このように、従来技術では、エアバッグ作動時の衝撃に耐える接合力を持ち、さらにその衝撃による、縫い目部分からの空気漏れをシール剤等の特別な工夫をせずに防ぐことができるエアバッグ用コート布は実現されていない。
【特許文献1】特開平7−164988号公報(特許請求の範囲第1項)
【特許文献2】特開2001−315610号公報(請求項1、段落0036)
【特許文献3】特開2004−122821号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、エアバッグ用織物に求められる低通気性とエアバッグ作動時の衝撃に耐える接合力を持ち、さらにその衝撃による、縫い目部分からの空気漏れをシール剤等の特別な工夫をせずに防ぐことができるエアバッグ用コート布およびエアバッグならびにエアバッグ用コート布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、合成繊維からなるタテ糸及びヨコ糸からなり、以下の要件を満たすことを特徴とするエアバッグ用コート布である。
(1)1.1≦Df/Dw≦2.0
ここで、
Dw:タテ糸の総繊度(dtex)、
Df:ヨコ糸の総繊度(dtex)。
(2)CF2/CF1≧1.05
ここで、
CF1:タテ糸のカバーファクター、
CF1=(Dw×0.9)1/2×Nw、
CF2:ヨコ糸のカバーファクター、
CF2=(Df×0.9)1/2×Nf、
Nw:タテ糸の織密度(本/2.54cm)、
Nf:ヨコ糸の織密度(本/2.54cm)。
(3)EC1≧200N、EC2≧200N
ここで、
EC1:ASTM D6479−02によるタテ方向の滑脱抵抗力(N)、
EC2:ASTM D6479−02によるヨコ方向の滑脱抵抗力(N)。
(4)0.80≦EC2/EC1≦1.20
(5)JIS L 1096:1999 8.27.1 A法で規定するフラジール形法に基づいて試験差圧125Paで測定したときの通気量が0.1cm/cm・min以下。
【0015】
また、本発明は、本発明のエアバッグ用コート布を縫製してなることを特徴とするエアバッグである。
【0016】
また、本発明は、本発明のエアバッグ用織物を製造する方法であって、製織においてタテ糸張力を50〜230cN/本に調整して製織することを特徴とするエアバッグ用コート布の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来の方法では解決できなかった問題点、すなわち、エアバッグ用織物に求められる、低通気性とエアバッグ作動時の衝撃に耐える接合力を持ち、さらにその衝撃による、縫い目部分からの空気漏れをシール剤等の特別な工夫をせずに防ぐことができるエアバッグ用コート布およびエアバッグを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のエアバック用コート布は合成繊維からなる。合成繊維の素材としては例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アラミド系繊維、レーヨン系繊維、ポリサルホン系繊維、超高分子量ポリエチレン系繊維等を用いることができる。なかでも、大量生産性や経済性に優れたポリアミド系繊維やポリエステル系繊維が好ましい。
【0019】
ポリアミド系繊維としては例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46や、ナイロン6とナイロン66との共重合ポリアミド、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸、アミン等を共重合させた共重合ポリアミド等からなる繊維を挙げることができる。ナイロン6繊維、ナイロン66繊維は耐衝撃性に特に優れており、好ましい。
【0020】
また、ポリエステル系繊維としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなる繊維を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに酸成分としてイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合させた共重合ポリエステルからなる繊維であってもよい。
【0021】
また、合成繊維には、紡糸・延伸工程や加工工程での生産性、あるいは特性改善のために、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0022】
また、合成繊維の単繊維の断面形状としては、丸断面の他に、扁平断面のものを用いることも好ましい。扁平断面繊維を用いることにより、織物としたときの繊維の充填化が促進され、織物中の単繊維間に占める空隙が小さくなり、同じ織物組織であれば、同等繊度の丸断面糸を使用した場合よりも通気量を抑えることができる。扁平断面の形状については、単繊維の断面形状を楕円に近似した際、その長径(D1)と短径(D2)の比(D1/D2)で定義される扁平率が1.5〜4であることが好ましく、より好ましくは2.0〜3.5である。かかる扁平断面形状としては、幾何学的に真の楕円形の他、例えば、長方形、菱形および繭形でもよいし、左右対称の他、左右非対称型でもよい。また、これらを組み合わせた形状のものでもよい。さらに、上記を基本形として、突起や凹みあるいは部分的に中空部があるものであってもよい。
【0023】
本発明に用いられるタテ糸およびヨコ糸は、いずれもその単繊維繊度として、1dtex以上7dtex以下の、比較的低繊度の合成繊維を用いることが好ましい。1dtex以上とすることで特別な工夫を施すことなく合成繊維の製造が可能となり、7dtex以下とすることで合成繊維の柔軟性が向上するからである。繊度は、より好ましくは1.5dtex以上4.0dtex以下、さらに好ましくは2.0dtex以上3.0dtex以下である。単繊維繊度がこれらのより限定された範囲内であると、織物中の単繊維間に占める空隙が小さくなり、繊維の充填化効果がより一層向上する。単繊維繊度を上記の低い範囲に設定することで、合成繊維の剛性を低下させる効果が得られるため、エアバッグの収納性が向上し、好ましい。また、単繊維の充填化が向上することで、織物の表面積が小さくなり平滑性が上がるため、樹脂を塗布する際に均一に塗布することができ、少ない樹脂使用量で織物表面をカバーすることができるため、軽量化の点からも好ましい。さらに、後述するようにタテ糸張力を上げた状態で製織するなどの一定条件下の製織条件を採用することで、タテ糸とヨコ糸間の織物組織の安定度が飛躍的に向上し、抗目ズレ性を著しく向上させることができる。
【0024】
タテ糸およびヨコ糸の総繊度としては、それぞれ100〜700dtexが好ましい。100dtex以上とすることで、織物の強度を維持できる。また、700dtex以下とすることで、収納時のコンパクト性を維持できる。特に、タテ糸は、200〜400dtexであることがより好ましく、さらに好ましくは300〜400dtexである。また、ヨコ糸の総繊度は、300〜700dtexであることがより好ましく、さらに好ましくは400〜500dtexである。
【0025】
さらに、タテ糸の総繊度Dw(dtex)、ヨコ糸の総繊度Df(dtex)が1.1≦Df/Dw≦2.0の関係を満たすことが重要である。このようにヨコ糸の総繊度をタテ方向の総繊度よりも大きくすることで、後述する織物のタテ糸とヨコ糸のカバーファクターの関係CF2/CF1≧1.05を達成しやすくなり、織物のタテ方向とヨコ方向の滑脱抵抗力をバランスよく、ともに向上させることができる。
【0026】
本発明のエアバッグ用コート布を構成する糸の引張強度としては、エアバッグ用織物として要求される機械的特性を満足するためと合成繊維の生産性から、タテ糸およびヨコ糸ともに8.0〜9.0cN/dtexが好ましく、より好ましくは、8.3〜8.7cN/dtexである。
【0027】
本発明のエアバッグ用コート布の織密度は、後述するカバーファクターの関係を満たすように適宜設定すればよいが、タテ糸の織密度をNw、ヨコ糸の織密度をNfとして、Nf/Nw≧0.90であることが好ましく、さらに好ましくはNf/Nw≧1.00である。
【0028】
本発明において、織物のタテ糸のカバーファクター(CF1)およびヨコ糸のカバーファクター(CF2)を、次のように定義する。
CF1=(Dw×0.9)1/2×Nw
CF2=(Df×0.9)1/2×Nf
ここで、
Dw:タテ糸の総繊度(dtex)、
Df:ヨコ糸の総繊度(dtex)、
Nw:タテ糸の織密度(本/2.54cm)、
Nf:ヨコ糸の織密度(本/2.54cm)。
【0029】
織物のタテ糸およびヨコ糸のカバーファクターはともに700〜1250とすることが好ましい。カバーファクターをこの範囲内に調整することで、エアバッグ用コート布として必要なコンパクト収納性と滑脱抵抗力とを両立することができる。いずれかのカバーファクターが700よりも小さいと、コンパクト収納性は良くなるが滑脱抵抗力が低下し、好ましくない。またいずれかのカバーファクターが1250よりも大きくなると、滑脱抵抗力は大きくなるがコンパクト収納性が低下し、好ましくない。
【0030】
本発明のエアバッグ用コート布は、タテ糸のカバーファクターCF1とヨコ糸のカバーファクターCF2とが、CF2/CF1≧1.05の関係を満たすことが必須であり、好ましくは、CF2/CF1≧1.10とすることである。そうすることが、タテ糸の織物のカバーファクターとヨコ糸の織物のカバーファクターが等しい対称組織の織物に比べて、織物のタテ方向とヨコ方向の滑脱抵抗力をバランスよく、ともに向上させるためには不可欠である。
【0031】
本発明者等は、タテ方向とヨコ方向の滑脱抵抗力のバランスを向上させるために、織物のタテ糸とヨコ糸のカバーファクターとそれぞれの方向の滑脱抵抗力との関係を鋭意検討した。その方法として、織物のタテ糸のカバーファクターを固定して、ヨコ糸のカバーファクターを変化させて、ASTM D6479−02による滑脱抵抗力を測定したところ、表1に示すように織物のヨコ糸のカバーファクターを織物のタテ糸のカバーファクター対比大きくしていくと意外にも織物のヨコ方向の滑脱抵抗力が向上するだけではなく、タテ方向の滑脱抵抗力も向上し、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力をバランスよく、ともに向上できることを見出した。なお、タテ方向の滑脱抵抗力とは、ASTM D6479−02に記載されているように、ヨコ糸に並行にピンを刺し、そのピンでヨコ糸をタテ糸の長手方向に沿って移動させるときの最大荷重を測定したものであり、ヨコ方向の滑脱抵抗力とは、タテ糸に並行にピンを刺し、そのピンでタテ糸をヨコ糸の長手方向に沿って移動させるときの最大荷重を測定したものである。
【0032】
【表1】

【0033】
滑脱抵抗力の向上には、タテ糸とヨコ糸との交錯点での接触状態が影響していると考えられる。すなわち、交錯点の接触面積が大きいほど、タテ糸とヨコ糸の間での摩擦抵抗力が大きくなり、滑脱抵抗力測定時の糸の移動が起こりにくくなる。交錯点でのタテ糸とヨコ糸の接触面積を大きくするためには、合成繊維糸の総繊度を大きくするか、織密度を大きくすることで実現できる。前者の場合は、合成繊維糸の断面を略楕円形とみなしたときの表面積が増えることによる接触面積増である。後者の場合は、タテ糸とヨコ糸の接触回数を増やすことによる接触面積増である。
【0034】
ところで、一般的にエアバッグ用織物は、タテ糸の方がヨコ糸よりも織り構造における拘束によるクリンプ率が大きい、いわゆるタテ曲がり構造を有する。これは、製織時に、ヨコ糸がタテ糸よりも大きな張力で直線的に打ち込まれることと、タテ糸は、開口運動によって曲がり構造を作りながら織り込まれていくことに起因する。
【0035】
このタテ曲がり構造を考慮すると、織物のタテ糸のカバーファクターCF1をヨコ糸のカバーファクターCF2対比大きくした場合には、ヨコ糸の張力がタテ曲がり構造の形成にさほど寄与することができず、タテ糸、ヨコ糸ともに曲がり構造は大きな変化を起こさず、接触面積の増加の効果は得られない。一方、織物のヨコ糸のカバーファクターCF2をタテ糸のカバーファクターCF1対比大きくした場合、ヨコ糸の総繊度を大きくする場合も、織密度を大きくする場合も、タテ曲がり構造を助長することができる。こうして、タテ曲がり構造の助長によりタテ糸とヨコ糸との接触面積をより効率的に向上することができるために、ヨコ方向の滑脱抵抗とタテ方向の滑脱抵抗を同時に向上できたと考える。従って、織物のヨコ糸のカバーファクターCF2をタテ糸のカバーファクターCF1対比大きくすることが、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力をともに向上させるポイントであることを見出した。
【0036】
本発明におけるエアバッグ用コート布は、繊維布帛の少なくとも片面が樹脂で被覆されていることが必要である。少なくとも片面を樹脂で被覆させることで、空気遮断性を持たせ、さらにはインフレーターから発生する高温のガスから該布帛を守ることができる。
【0037】
かかる樹脂としては、耐熱性、耐寒性、難燃性を有する樹脂が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂などがあげられる。中でも、シリコーン樹脂が耐熱性、空気遮断性の点から特に好ましい。かかるシリコーン樹脂については、ジメチル系シリコーン樹脂、メチルビニル系シリコーン樹脂、メチルフェニル系シリコーン樹脂、フロロ系シリコーン樹脂が用いられる。
【0038】
また、繊維布帛を被覆する樹脂は、難燃化合物を含有しているものが好ましい。かかる難燃化合物としては、臭素、塩素などを含むハロゲン化合物、特に、ハロゲン化シクロアルカン、白金化合物、酸化アンチモン、酸化銅、酸化チタン、燐化合物、チオ尿素系化合物、カーボン、セリウム、酸化ケイ素などを使用することができ、これらの中でもハロゲン化合物、白金化合物、酸化銅、酸化チタン、カーボンがより好ましい。
【0039】
織物をコーティングする樹脂の付着量としては、5〜45g/mが好ましく、より好ましくは10〜30g/mである。付着量をこの範囲内とすることで、エアバッグ用コート布のコンパクト収納性と低通気性、耐熱性とを両立することができる。樹脂の付着量を5g/m以上とすることで、織物表面を均一に覆い、低通気性向上や耐熱性向上の実効を得ることができる。また、45g/m以下とすることで、収納性が阻害されるのを防ぎ、また、コストも抑えることができる。
【0040】
本発明のエアバッグ用コート布は、ASTM D6479−02によるタテ方向の滑脱抵抗力EC1およびヨコ方向の滑脱抵抗力EC2がともに200N以上であることが重要であり、好ましくはともに250N以上、より好ましくはともに300N以上である。そうすることで、エアバッグが膨張展開して乗員を拘束する際の縫製部の目ズレの発生を極力抑え、バッグ内圧を保持することができる。200N未満であると縫製部の目ズレが発生し、エアバッグの内圧が保持できない。
【0041】
また、本発明のエアバッグ用コート布は、タテ方向の滑脱抵抗力(EC1)とヨコ方向の滑脱抵抗力(EC2)とが次の関係にあることが重要である。
0.85≦EC2/EC1≦1.15
そうすることで、エアバッグが膨張展開して乗員を拘束する際の縫製部の目ズレを極力抑え、エアバッグの内圧を保持することができる。本来エアバッグは上下左右に等方的に展開するため、EC1とEC2とが上記関係を満足しないと、滑脱抵抗力の低い方向に縫製部の目ズレが発生し、エアバッグの内圧が保持できない。
【0042】
また、本発明のエアバッグ用コート布は、JIS L 1096:1999 8.27.1 A法で規定するフラジール形法に基づいて試験差圧125Paで測定したときの通気量が0.1cm/cm・min以下であることも必要である。通気量を上記の範囲に調整することで、衝突時にインフレータから発せられる膨張用ガスを漏れなく有効に使用することができ、乗員を確実に受け止めることができる。
【0043】
さらに、本発明のエアバッグ用コート布は、JIS K 6404−3 6.試験方法B法で規定するストリップ法に基づく引張強力が400N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは500N/cm以上、さらに好ましくは550N/cm以上である。400N/cm以上とすることで、エアバッグが膨張展開して乗員を拘束する際に布帛の破断によりエアバッグが破損するのを防ぐことができる。
【0044】
次に、本発明のエアバッグ用コート布を製造する方法について説明する。
【0045】
本発明のエアバッグ用コート布は、合成繊維糸をタテ糸およびヨコ糸に用い、織物のヨコ糸のカバーファクターが、織物のタテ糸のカバーファクターより大きくなるように設定して製織する。
【0046】
まず、前述した素材および総繊度のタテ糸を整経して織機にかけ、同様にヨコ糸の準備をする。かかる織機としては例えば、ウォータージェットルーム、エアージェットルームおよびレピアルームなどが使用可能である。中でも生産性を高めるためには、高速製織が比較的容易なウォータージェットルームを用いるのが好ましい。
【0047】
本発明のエアバッグ用織物の製造方法として、製織においてタテ糸張力を75〜230cN/本に調整して行うことが好ましく、より好ましくは100〜200cN/本である。かかる範囲内にタテ糸張力を調整することで、織物を構成するマルチフィラメント糸の糸束中の単繊維間空隙を減少させることができる。また、ヨコ糸打ち込み後に、上記張力のかけられたタテ糸がヨコ糸を押し曲げることで、ヨコ糸方向の織物の組織拘束力を高める効果が得られる。これによって、織物の抗目ズレ性が向上し、エアバッグとして袋体を形成するときの縫製部分の目ズレによる空気漏れを抑えることができ好ましい。タテ糸張力が75cN/本よりも小さいと、織物におけるタテ糸とヨコ糸との中での接触面積を増やすことができず、滑脱抵抗力が向上しない。また、単繊維間空隙を減少させる効果が小さいため、低通気性を補うために樹脂量を多くする必要があり、ひいては収納性の点でも好ましくない。また、230cN/本を超えると、タテ糸が毛羽立ち、製織性が悪化する。
【0048】
タテ糸張力を上記範囲内に調整する具体的方法としては、織機のタテ糸送り出し速度を調整する他、ヨコ糸の打ち込み速度を調整する方法が挙げられる。上記範囲内のタテ糸張力が製織中に実際に発生しているかどうかは、例えば織機稼動中に経糸ビームとバックローラーとの中間において、タテ糸一本当たりに加わる張力を張力測定器で測ることにより、確認することができる。
【0049】
織機のテンプルとしては、バーテンプルを用いることが好ましい。バーテンプルを用いると、織前全体を把持しながら筬打ちすることができるため、合成繊維フィラメント同士の空隙を小さくすることができ、その結果低通気性と抗目ズレ性が向上するからである。
【0050】
製織工程の次に、必要に応じて、精練、熱セット等の加工を施す。
【0051】
本発明のエアバッグ用コート布は、上記織物の少なくとも片面に樹脂を塗布する。
【0052】
樹脂液の粘度としては、5〜20Pa・s(5,000〜20,000cP)が、均一な塗布量で安定して塗布する上で好ましい。ここで、樹脂液の粘度は、JIS Z 8803に基づきB型粘度計で測定される。粘度を5Pa・s(5,000cP)以上とすることで、後述するナイフコーティングに適する。また、20Pa・s(20,000cP)以下とすることで、低塗布量でコーティングすることができ、収納コンパクト性の上で好ましい。樹脂液の粘度の調整は、溶剤で希釈することにより行ってもよいが、初めから上記範囲内の粘度に調整された無溶剤タイプの樹脂を使用することが、作業性と環境負荷低減の観点から好ましい。
【0053】
樹脂の塗布方法としては、樹脂の低塗布量化および安定塗布の観点から、ナイフコーティング法が好ましい。ナイフコーティング法にはナイフオーバーロール法、ナイフオーバーベルト法、フローティングナイフ法がある。なかでもフローティングナイフ法が、樹脂の低塗布量化および布帛への樹脂浸透性の面からより好ましく用いられる。
【0054】
本発明のエアバッグは、本発明のエアバッグ用コート布を袋状に縫製してなるものであり、さらに通常は、インフレーターなどの付属機器を取り付けられて作動する。
【0055】
本発明のエアバッグは、優れた収納性を有しかつ低通気性や抗目ズレ性に優れた本発明のエアバッグ用コート布帛を用いてなるものであるから、乗員拘束性に優れる。
【実施例】
【0056】
[測定方法]
(1)織物厚さ
JIS L 1096:1999 8.5に則り、試料の異なる5か所について厚さ測定機を用いて、23.5kPaの加圧下、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さを測定し、平均値を算出した。
【0057】
(2)タテ糸・ヨコ糸の織密度
JIS L 1096:1999 8.6.1に基づき測定した。
試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、異なる5か所について2.54cmの区間のタテ糸およびヨコ糸の本数を数え、それぞれの平均値を算出した。
【0058】
(3)目付け
JIS L 1096:1999 8.4.2に則り、20cm×20cmの試験片を3枚採取し、それぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
【0059】
(4)コート量
ブランク試料として、樹脂を塗布しなかった以外は同様の条件で処理したものを作成した。上記(3)により、ブランク試料の目付けを測定し、コート布帛の目付とブランク試料の目付けとの差をコート量として求めた。
【0060】
(5)引張強度
JIS K 6404−3 6.試験方法B(ストリップ法)に則り、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、試験片を5枚ずつ採取し、幅の両側から糸を取り除いて幅30mmとし、定速緊張型の試験機にて、つかみ間隔150mm、引張速度200mm/minで試験片が切断するまで引っ張り、切断に至るまでの最大荷重を測定し、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて平均値を算出した。
【0061】
(6)破断伸度
JIS K 6404−3 6.試験方法B(ストリップ法)に則り、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、試験片を5枚ずつ採取し、幅の両側から糸を取り除いて幅30mmとし、これら試験片の中央部に100mm間隔の標線を付け、定速緊張型の試験機にて、つかみ間隔150mm、引張速度200mm/minで試験片が切断するまで引っ張り、切断に至るときの標線間の距離を読み取り、下記式によって、破断伸度を算出し、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて平均値を算出した。
E=[(L−100)/100]×100
ここに、E:破断伸度(%)、
L:切断時の標線間の距離(mm)。
【0062】
(7)引裂強力
JIS K 6404−4 6.試験方法B(シングルタング法)に準じ、長辺200mm、短辺76mmの試験片をタテ、ヨコ、両方にそれぞれ5個の試験片を採取し、試験片の短辺の中央に辺と直角に75mmの切込みを入れ、定速緊張型の試験機にてつかみ間隔75mm、引張速度200mm/minで試験片が引ききるまで引裂き、その時の引裂き荷重を測定した。得られた引裂き荷重のチャート記録線より、最初のピークを除いた極大点の中から大きい順に3点選び、その平均値をとった。最後にタテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、平均値を算出した。
【0063】
(8)通気量
JIS L 1096:1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に則り測定した。試料の異なる5か所から約20cm×20cmの試験片を採取し、フラジール形試験機を用い、円筒の一端(吸気側)に試験片を取り付けた。試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファンを調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、試験機に付属の表によって試験片を通過する空気量を求め、5枚の試験片についての平均値を算出した。
【0064】
(9)パッカビリティ
ASTM D−6478−02に則り測定した。
【0065】
(10)滑脱抵抗力
ASTM D6479−02に則り測定した。
【0066】
(11)タテ糸張力
金井工機(株)製チェックマスター(登録商標)(形式:CM−200FR)を用い、織機稼動中に経糸ビームとバックローラーとの中間において、タテ糸一本当たりに加わる張力を測定した。
【0067】
(12)樹脂粘度
JIS Z8803に基づきB型粘度計で測定した。
【0068】
(13)総合評価基準
以上の測定方法によって得られたパッカビリティと、滑脱抵抗力の値が、それぞれ2000cm以下、300N以上を目標値とし、両方の値を満足する場合を後述する表2において、「○」、どちらか片方の値を満足する場合を「△」、両方の値を満足しなかった場合を「×」と評価した。
【0069】
[実施例1]
(タテ糸)
ナイロン6・6からなり、円形の断面形状を有し、単繊維繊度2.6dtex、フィラメント数136、総繊度350dtex、無撚りで、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%の合成繊維マルチフィラメントをタテ糸として使用した。
【0070】
(ヨコ糸)
ナイロン6・6からなり、円形の断面形状を有し、単繊維繊度3.5dtex、フィラメント数136、総繊度470dtex、無撚りで、強度8.6cN/dtex、伸度23.4%の合成繊維マルチフィラメントをヨコ糸として使用した。
【0071】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、ウォータージェットルームにて、タテ糸の織密度が52本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が52本/2.54cmの織物を製織した。その際、筬打ち部とフリクションローラーとの間にはバーテンプルを設置して織物を把持し、タテ糸張力を147cN/本に調整し、織機回転数は500rpmとした。
【0072】
(熱セット工程)
上記の織物に、引き続きピンテンター乾燥機を用いて幅入れ率0%、オーバーフィード率0%の寸法規制の下で160℃にて1分間の熱セット加工を施した。
【0073】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、せき板ナイフを用いたフローティングナイフコーターにより、該織物と該せき板ナイフとの接圧を9N/cmに保ち、樹脂付着量が20g/mになるようにコーティングを行った後、190℃で1分間加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0074】
このエアバッグ用コート布は、非通気性で、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力がバランスよく、さらに収納時のコンパクト性にも優れており、目標値を満足していた。
【0075】
[実施例2]
(タテ糸)
実施例1で用いたのと同様のものをタテ糸とした。
【0076】
(ヨコ糸)
実施例1で用いたのと同様のものをヨコ糸とした。
【0077】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、実施例1と同様にして、タテ糸の織密度が52本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が50本/2.54cmの織物を製織した。
【0078】
(熱セット工程)
上記の織物に、実施例1と同様の熱セット加工を施した。
【0079】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、実施例1と同様にして、樹脂付着量が20g/mになるようにコーティングおよび加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0080】
このエアバッグ用コート布は、非通気性で、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力がバランスよく、さらに収納時のコンパクト性にも優れており、目標値を満足していた。
【0081】
[実施例3]
(タテ糸)
実施例1で用いたのと同様のものをタテ糸とした。
【0082】
(ヨコ糸)
実施例1で用いたのと同様のものをヨコ糸とした。
【0083】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、実施例1と同様にして、タテ糸の織密度が55本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が59.5本/2.54cmの織物を製織した。
【0084】
(熱セット工程)
上記の織物に、実施例1と同様の熱セット加工を施した。
【0085】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、せき板ナイフを用いたフローティングナイフコーターにより、該織物と該せき板ナイフとの接圧を11N/cmに保ち、樹脂付着量が20g/mになるようにコーティングを行った後、190℃で1分間加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0086】
このエアバッグ用コート布は、非通気性で、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力がバランスよく、さらに収納時のコンパクト性にも優れており、目標値を満足していた。
【0087】
[実施例4]
(タテ糸)
実施例1で用いたのと同様のものをタテ糸とした。
【0088】
(ヨコ糸)
ナイロン6・6からなり、円形の断面形状を有し、単繊維繊度4.3dtex、フィラメント数136、総繊度585dtex、無撚りで、強度8.2cN/dtex、伸度24.0%の合成繊維マルチフィラメントをヨコ糸として使用した。
【0089】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、実施例1と同様にして、タテ糸の織密度が52本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が50本/2.54cmの織物を製織した。
【0090】
(熱セット工程)
上記の織物に、実施例1と同様の熱セット加工を施した。
【0091】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、せき板ナイフを用いたフローティングナイフコーターにより、該織物と該せき板ナイフとの接圧を11N/cmに保ち、樹脂付着量が20g/mになるようにコーティングを行った後、190℃で1分間加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0092】
このエアバッグ用コート布は、非通気性で、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力がバランスよく、さらに収納時のコンパクト性にも優れており、目標値を満足していた。
【0093】
[比較例1]
(タテ糸)
実施例1でヨコ糸として用いたのと同様のものを、タテ糸とした。
【0094】
(ヨコ糸)
実施例1でタテ糸として用いたのと同様のものを、ヨコ糸とした。
【0095】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、実施例1と同様にして、タテ糸の織密度が50.5本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が54本/2.54cmの織物を製織した。
【0096】
(熱セット工程)
上記の織物に、実施例1と同様の熱セット加工を施した。
【0097】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、実施例1と同様にして、コーティングおよび加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0098】
このエアバッグ用コート布は、非通気性で、収納時のコンパクト性は問題ないが、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力がバランスの悪いものであった。
【0099】
[比較例2]
(タテ糸・ヨコ糸)
実施例1でタテ糸として用いたのと同様のものを、タテ糸およびヨコ糸とした。
【0100】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、実施例1と同様にして、タテ糸の織密度が52.5本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が53.5本/2.54cmの織物を製織した。
【0101】
(熱セット工程)
上記の織物に、実施例1と同様の熱セット加工を施した。
【0102】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、実施例1と同様にして、コーティングおよび加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0103】
このエアバッグ用コート布は、非通気性で、収納時のコンパクト性は問題ないが、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力がバランスの悪いものであった。
【0104】
[比較例3]
(タテ糸)
実施例1で用いたのと同様のものをタテ糸とした。
【0105】
(ヨコ糸)
ナイロン6・6からなり、円形の断面形状を有し、単繊維繊度6.9dtex、フィラメント数136、総繊度940dtex、無撚りで、強度8.5cN/dtex、伸度22.5%の合成繊維マルチフィラメントをヨコ糸として使用した。
【0106】
(製織工程)
上記タテ糸とヨコ糸を用い、実施例1と同様にして、タテ糸の織密度が52本/2.54cm、ヨコ糸の織密度が37本/2.54cmの織物を製織した。
【0107】
(熱セット工程)
上記の織物に、実施例1と同様の熱セット加工を施した。
【0108】
(コート工程)
上記の熱セット加工を施した織物に、粘度12Pa・s(12,000cP)の無溶剤系メチルビニルシリコーン樹脂液を、せき板ナイフを用いたフローティングナイフコーターにより、該織物と該せき板ナイフとの接圧を11N/cmに保ち、樹脂付着量が20g/mになるようにコーティングを行った後、190℃で1分間加硫処理を行い、エアバッグ用コート布を得た。
【0109】
このエアバッグ用コート布は、非通気性には問題ないが、収納時のコンパクト性が悪く、タテ方向およびヨコ方向の滑脱抵抗力のバランスも悪いものであった。
【0110】
各実施例・比較例のエアバッグ用コート布帛の特性を表に示す。
【0111】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明のエアバッグは、運転席用、助手席用および後部座席用、側面用エアバッグなどに使用することができる。特に、側面衝突や自動車の横転時に頭部を保護するために比較的長い時間エアバッグが所定の形状を保つことが要求されるサイドカーテンエアバッグとして使用することに適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維からなるタテ糸及びヨコ糸を有してなり、以下の要件を満たし、少なくとも片面に樹脂が被覆されていることを特徴とするエアバッグ用コート布。
(1)1.1≦Df/Dw≦2.0
ここで、
Dw:タテ糸の総繊度(dtex)、
Df:ヨコ糸の総繊度(dtex)。
(2)CF2/CF1≧1.05
ここで、
CF1:タテ糸のカバーファクター、
CF1=(Dw×0.9)1/2×Nw、
CF2:ヨコ糸のカバーファクター、
CF2=(Df×0.9)1/2×Nf、
Nw:タテ糸の織密度(本/2.54cm)、
Nf:ヨコ糸の織密度(本/2.54cm)。
(3)EC1≧200N、EC2≧200N
ここで、
EC1:ASTM D6479−02によるタテ方向の滑脱抵抗力(N)、
EC2:ASTM D6479−02によるヨコ方向の滑脱抵抗力(N)。
(4)0.80≦EC2/EC1≦1.20
(5)JIS L 1096:1999 8.27.1 A法で規定するフラジール形法に基づいて試験差圧125Paで測定したときの通気量が0.1cm/cm・sec以下。
【請求項2】
タテ糸およびヨコ糸を構成する単繊維の繊度がそれぞれ1〜7dtexである、請求項1に記載のエアバッグ用コート布。
【請求項3】
タテ糸およびヨコ糸の総繊度がそれぞれ100〜700dtexである、請求項1または2記載のエアバッグ用コート布。
【請求項4】
タテ糸のカバーファクターCF1およびヨコ糸のカバーファクターCF2が、いずれも700〜1250である、請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用コート布。
【請求項5】
さらにCF2/CF1≧1.10を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用コート布。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエアバッグ用コート布を縫製してなることを特徴とするエアバッグ。
【請求項7】
請求項1記載のエアバッグ用コート布を製造する方法であって、製織においてタテ糸張力を50〜230cN/本に調整して製織することを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項8】
製織時のテンプルとしてバーテンプルを使用することを特徴とする請求項7に記載のエアバッグ用コート布の製造方法。

【公開番号】特開2008−285766(P2008−285766A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128959(P2007−128959)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】