説明

エアバッグ用コート布帛およびエアバッグ

【課題】
カーテンエアバッグが膨張展開した際に、高い気密性を有するように、2枚のコート布帛の隙間を埋める接着剤とコート布帛の合成樹脂層の接着性に優れ、かつコート布帛を構成するベース基布と合成樹脂層の接着性にも優れたエアバッグ用基布を提供する。
【解決手段】
合成繊維からなる織物の少なくとも片面に合成樹脂層が積層されてなるコート布帛であって、織物の経方向および緯方向における合成樹脂層の表面のKES計測による表面粗さ(SMD)が10〜50μmで、かつ、JIS K 6404−6に基づいて測定される合成樹脂層の剥離性が5級であることを特徴とするエアバッグ用コート布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ用コート布帛およびエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車の側面への衝突、即ち側突事故用として、シート内蔵型のサイドバッグ、車内のルーフサイドから側部窓上に降りてくるカーテン式サイドバッグ(以下、カーテンエアバッグ)が開発され、搭載する車も多くなってきている。これらのサイドバッグ、特にカーテンエアバッグは、車が横転した時も乗員が車外に放出されないような、長時間(数秒間)に亘ってエアバッグの内圧を保持する高い気密性が必要とされる。
【0003】
カーテンエアバッグの気密性を高くするために、その基布としては、例えば、シリコ−ン、ポリウレタン、クロロプレンなどのゴムや樹脂をコートしたコート布帛が用いられている。
【0004】
しかしなおカーテンエアバッグにおいては、縫製部からのエア漏れをも抑える気密性が求められている。
【0005】
縫製部からのエア漏れを抑えるために、特許文献1には、接着剤を介して基布同士を縫製することが開示されている。しかし、縫製部の2枚の基布同士の隙間を埋める接着剤とコート布帛の合成樹脂層の接着性が不十分であるために、エアバッグ展開中に該接着剤と該コート布帛が剥がれて隙間が生じ、エア漏れが発生するといった問題があった。また一方で該コート布帛の合成樹脂層とベース織物の接着性についても不十分であったために、エアバッグ展開中に合成樹脂層とベース織物が剥がれるといった問題もあった。
【特許文献1】特開2001−001854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2枚のコート布帛の隙間を埋める接着剤とコート布帛の合成樹脂層の接着性に優れ、かつコート布帛を構成する織物と合成樹脂層の接着性にも優れたエアバッグ用コート布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、合成繊維からなる織物の少なくとも片面に合成樹脂層が積層されてなるコート布帛であって、織物の経方向および緯方向における合成樹脂層の表面のKES計測による表面粗さ(SMD)が10〜50μmで、かつ、JIS K 6328に基づいて測定される合成樹脂層の剥離性が5級であることを特徴とするエアバッグ用コート布帛である。
【0008】
また本発明は、本発明のエアバッグ用コート布帛が縫製されてなることを特徴とするエアバッグである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エアバッグが膨張展開した際に、高い気密性を有するように、2枚のコート布帛の隙間を埋める接着剤とコート布帛の合成樹脂層の接着性に優れ、かつコート布帛を構成する織物と合成樹脂層の接着性にも優れたエアバッグ用コート布帛を提供することができる。
【0010】
またひいては本発明のエアバッグは、展開時に高い気密性を有し、エアバッグ用コート布帛の全面的なエア漏れを防ぐだけでなく、縫製部からのエア漏れをも防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のエアバッグ用コート布帛の織物を構成する合成繊維としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン4・6、ナイロン6とナイロン6・6の共重合体、またこれらにポリアルキレングリコール、ジカルボン酸、アミン等を共重合したもの等のポリアミドからなる合成繊維を好ましく採用することができる。中でも、ナイロン6・6、ナイロン6は耐衝撃性の面から特に好ましく用いられ、また、ナイロン6・6は耐熱性の面から特に好ましく用いられる。
【0012】
合成繊維は、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料および難燃剤等の各種添加剤を含有していることも好ましい。
【0013】
合成繊維の断面形状としては、その長軸と短軸との比、即ちアスペクト比が1.2〜2.5であることが好ましい。アスペクト比を1.2以上とすることで、織物の表面をフラットなものとし、その上に形成する合成樹脂層の表面もフラットなものとすることができる。また、アスペクト比を2.5以下とすることで、織物表面に適度な凹凸を残し、合成樹脂層を形成する樹脂が織物の内部に浸透できるので、織物と合成樹脂層との接着性を維持することができる。また、アスペクト比が1.2〜2.5の繊維を用いることによって低通気性や強度を確保しつつ、収納性を向上させることができる。かかる合成繊維の具体的な断面形状としては、楕円形、長方形、菱形、繭型のような左右対称型の他、左右非対称型でもよく、また、それらの組み合わせでもよい。また、これらを基本型として、突起、凹み、中空部等を有していてもよい。
【0014】
合成繊維の単繊維繊度としては、1〜12dtexが好ましく、より好ましくは3〜8dtexである。1dtex以上とすることで、織物の強度等を維持することができる。一方、12dtex以下とすることで、剛性を低く抑え、収納性を維持することができる。
【0015】
織物を構成する経糸および緯糸のマルチフィラメントの総繊度としては、100〜700dtexが好ましく、より好ましくは150〜600dtexである。100dtex以上とすることで、織物の引裂強度等を維持することができる。一方、700dtex以下とすることで、織物の厚さを薄く抑え、収納性を維持することができる。
【0016】
織物の織組織としては、平組織、斜文組織および朱子組織などを採用することができる。なかでも、均一な機械的特性、大量生産の容易さ、高速生産によるコストダウン、織組織構造の安定性等の点から、平組織が好ましい。
【0017】
織物のカバーファクター(CF)としては、機械的特性と収納性の点から1200〜2100が好ましく、より好ましくは1400〜1900である。1200以上とすることで、織物の機械的特性を維持することができる。一方、2100以下とすることで、機械的特性においては問題ないが、収納性を維持することができる。
カバーファクター(CF)は、次式により定義される。
CF=CF1+CF2
CF1=(Dw×0.9)1/2×Nw
CF2=(Df×0.9)1/2×Nf
ここに、CF:カバーファクター
CF1:タテ糸のカバーファクター
CF2:ヨコ糸のカバーファクター
Dw:タテ糸の総繊度(dtex)
Df:ヨコ糸の総繊度(dtex)
Nw:タテ糸の織密度(本/2.54cm)
Nf:ヨコ糸の織密度(本/2.54cm)。
【0018】
製織工程の織機としては、ウォータージェットルーム、エアージェットルームおよびレピアルームなどを用いることができる。特に、生産性を高める点では、高速製織が比較的容易なウォータージェットルームが好ましく用いられる。
【0019】
本発明のエアバッグ用コート布帛は、織物の少なくとも片面に合成樹脂層が積層されていることが必要である。織物に合成樹脂層を積層させることで空気遮断性を持たせ、車輌衝突時にエアバッグが展開したとき、バッグが一定時間膨張し乗員の衝撃をより緩和させることができる。さらには、インフレーターから発生する高温の窒素ガスからエアバッグ用コート布帛を構成する織物を守ることができる。
【0020】
合成樹脂層の樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂およびフッ素樹脂などを挙げることができる。中でもシリコーン樹脂が特に好ましく用いられる。シリコーン樹脂としては、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニル系シリコーン、フロロ系シリコーン等が好ましく用いられる。
【0021】
また、合成樹脂層は、難燃剤を含有していることも好ましい。難燃剤としては例えば、臭素や塩素などのハロゲン化合物、特にハロゲン化シクロアルカン、白金化合物、酸化アンチモン、酸化銅、酸化チタン、燐化合物、チオ尿素系化合物、カーボン、セリウムなどを使用することができ、これらの中でもハロゲン化合物、白金化合物、酸化銅、酸化チタンおよびカーボンがより好ましく用いられる。
【0022】
織物に合成樹脂層を形成させる方法としては、織物を0.5〜3.0kN/mの張力下において、粘度を10,000〜50,000mPa・s、好ましくは10,000〜20,000mPa・sに調製した無溶剤系シリコーン樹脂をフローティングナイフコーティングにより付与することが好ましい。そうすることで、合成樹脂層を形成する樹脂を織物の内部に浸透させ、織物と合成樹脂層との接着性を向上させ、合成樹脂層の表面をフラットにすることができる。
【0023】
また、合成樹脂を付与した後、50〜200℃、好ましくは100〜180℃で熱処理するのが、織物表面に合成樹脂層をフラットに形成する上で好ましい。また必要に応じ、二段熱処理としてもよい。
【0024】
なお、合成樹脂層の形成は、織物の製織後、精練後、乾燥後、熱セット後のいずれにも、行うことができる。
【0025】
合成樹脂層における積層量としては、織物表面の合成樹脂層の平滑性、乗員拘束性および柔軟性の面から、10〜45g/mが好ましく、より好ましくは15〜30g/mである。10g/m以上とすることで、均一かつ表面をフラットに合成樹脂層を形成することができる。また、低通気性を得ることができる。一方、45g/m以下とすることで、収納性を維持することができる。
【0026】
また、本発明のエアバッグ用基布は、JIS K6404−6に基づいて測定される織物と合成樹脂層との剥離性が5級であることが必要である。樹脂剥離が4級以下になる場合、エアバッグ展開時に基布同士が擦られ、樹脂が剥離し、その部分から熱風ガスが漏れエアバッグとして必要な内圧が得られず、乗員が危険な状態となる可能性がある。
【0027】
また、本発明のコート布帛の表面特性は、合成樹脂層面の経方向および緯方向のKES計測における触針表面粗さ(SMD:Mean deviation of surface roughness[mean deviation of the thickness〈unit:micron〉]が10〜50μmであることが重要である。KES計測における触針表面粗さ(SMD)は、KES規定の接触子を試料に載せて、接触子の上下動から表面粗さを検出し、接触子の垂直変位の標準偏差で表わされる値である。表面粗さが50μmよりも大きいと、基布表面が凹凸のあるものとなり、2枚のコート布帛の合成樹脂層面同士に接着剤を介し縫製部をシールするエアバッグでは合成樹脂層面と接着剤との接着性が悪くなり、エアバッグ展開時に縫製部からエア漏れが起きる原因となる。また、表面粗さが10μmよりも小さいと、エアバッグが高速で展開した場合、織物と合成樹脂層とが剥離し、剥離部分からエア漏れが起きる原因となり、また、エアバッグを高速に展開することが困難になる。
【0028】
本発明のエアバッグ用コート布帛は、ASTM D−6478−02に基づいて測定される収納性が1000〜1850cmであることが好ましい。1850cm以下とすることで、カーテンエアバッグのような容量の大きいエアバッグでもエアバッグカバー内に容易に収納することができる。但し、あまりに低い値であっても扱いにくく却ってエアバッグカバー内への収納作業性に劣ることになるので、1000cm以上であるとよい。
【0029】
本発明のエアバッグ用コート布帛の通気度としては、0.1L/cm・min以下であることが衝突時の乗員を拘束する上で好ましい。さらに、0.0L/cm・minであることが、側面衝突等による車の横転に対し、ある一定時間の間基布を膨張させる上で好ましい。
【0030】
本発明のエアバッグは、本発明のエアバッグ用コート布帛が縫製されてなる。
とりわけ、本発明のエアバッグ用コート布帛はコート布帛の隙間を埋める接着剤とコート布帛の合成樹脂層の接着性に優れているので、本発明のエアバッグは特に、接着剤を介して布帛同士を縫製する態様が好適である。
【実施例】
【0031】
[測定方法]
(1)厚さ
JIS K 6404−2−3:1999 B法に基づき、厚さを測定した。
試料の耳端50mmを除き、なるべくかたよらないように5か所を測厚器で測り、その算術平均値を求めた。
【0032】
(2)目付
JIS K 6404−2−2:1999 試験方法Aに準じて、目付を測定した。
試料の、耳部から50mmを除く全幅にわたり対角線方向に均等な間隔で5か所をとり、25cm×25cmの試験片を5枚採取した。
試験片の質量を試験片の面積で除して、5枚の平均値を求めた。
測定し、その平均値を求めた。
目付(g/m)=m×10/A
ここに、m:試験片の質量(g)
A:試験片の面積(cm)。
【0033】
(3)引張強力・破断伸度
JIS K6404−3 試験方法B:ストリップ法に準じて測定した。
タテ方向について、タテ糸に平行な線を長さの一辺とする、長さ250mm、幅30mmの長方形の試験片5枚を採り、これらの中央部に100mm間隔の標線を付け、その標線の外側各々25mmの位置につかみ線を入れた。これを、タテ方向の試験片とした。同様にして、ヨコ方向に5枚の試験片を採った。
試験片を、つかみ間隔150mmで引張試験機に取り付け、引張速度200mm/minで引っ張り、破断時の荷重および標線間の距離から、以下の式により、引張強力および破断伸度を算出し、タテ方向・ヨコ方向のそれぞれについて5枚の平均値を算出した。
=F/W
ここに、T:引張強力(N/cm)
W:試験片の幅(cm)
:破断時の荷重(N)
E=[(L−L)/L]×100
ここに、E:破断伸度(%)、
:初期の標線間の距離(100mm)
L:切断時の標線間の距離(mm)。
【0034】
(4)引裂強力
JIS K 6404−4:1999 試験方法B:シングルタング法に基づき、引裂強力を測定した。
試料から、長辺200mm、短辺76mmの試験片をタテ・ヨコの両方向にそれぞれ5枚の試験片を採取した。切込みがタテ糸方向に直角になるものをヨコ方向の試験片とし、切込みがタテ糸の長手方向に平行になるものをタテ方向の試験片とした。
試験片の短辺の中央に辺と直角に、鋭利な刃物で75mmの切込みを入れ、つかみ間隔75mmで引張試験機に取り付け、引張速度200mm/minで引っ張り、破断時の荷重を測り、タテ・ヨコの両方向についてそれぞれ5枚の平均値を算出した。
【0035】
(5)収納性
ASTM D−6478−02に基づき、測定した。
【0036】
(6)表面粗さ
表面粗さ(SMD:mean deviation of surface roughness(mean deviation of the thickness(unit:micron)))表面試験機(KES FB4)で、コーティング布帛(幅20cm、長さ20cm)をKES標準条件(The Standardization and Analysis of Hand Evaluation,7.2nd Ed.S.Kawabata,8.The Textile Machinery Society of Japan,9.1980)で測定した。測定条件は装置に付属したKES規定接触子(直径0.5mmのピアノ線からなる)を用い、接触荷重10gf、押圧ばね定数25gf/m、測定0.1cm/sec、水平保持布帛試料の保持張力を20gf/cmとした。測定は試料を変えてn=5回の平均を求めた。
【0037】
(7)コート布帛の合成樹脂層と織物との剥離性
JIS K6404−6に基づき、スコット形もみ試験機を用いて、合成樹脂層面同志を重ね合わせてもみ試験機を行い、次の基準にて評価した。この剥離性の級数が大きい方が、合成樹脂層と織物との接着性に優れる。
1級:全ての合成樹脂層が織物から剥離する。
2級:ほとんど全ての合成樹脂層が織物から剥離する。
3級:一部の合成樹脂層が織物から剥離する。
4級:ほとんど合成樹脂層が織物から剥離しない。
5級:合成樹脂層が織物から全く剥離しない。
【0038】
(8)コート布帛の合成樹脂層と接着剤との接着性
タテ/ヨコ方向もしくはヨコ/タテ方向に沿った250mm×50mmの試験片2枚を合成樹脂層面を内側にしてシリコーン接着剤(東レ・ダウコーニングSE960)を用いて長さ100mm以上の接着部ができるように塗布し、0.6mmの該接着剤塗布厚みになるように、プレス機にて10秒間プレスした後、24時間標準状態(20℃、65%RH)放置した。その後、幅が20mmになるように試料をカットした。その後、定速緊張型引張試験機のチャックに貼り合わせていない未接着部の両端を取り付け、試験速度50mm/minで試料を引っ張り、試料が剥離される間の荷重を記録した。タテ/ヨコ両方向について、それぞれ5個の試験片の荷重ピーク値を読み取った。
【0039】
(9)燃焼性
FMVSS302により燃焼速度を測定した。
【0040】
(10)コート布帛の通気度
JIS L 1096:1999(8.27.1 A法(フラジール形法))に準じて、試験差圧19.6kPaで試験したときの通気量を測定した。試料の異なる5か所から約20cm×20cmの試験片を採取し、口径100mmの円筒の一端に試験片を取り付け、取り付け箇所から空気の漏れが無いように固定し、レギュレーターを用いて試験差圧19.6kPaに調整し、そのときに試験片を通過する空気量を流量計で計測し、5枚の試験片についての平均値を算出した。
【0041】
(11)剛軟度
JIS L 1096:1999 8.19.1 A法(45°カンチレバー法)に則り測定した。タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、幅2cm×長さ約15cmの試験片を5枚ずつ採取し、カンチレバー形試験機の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置いた。次に、試験片をカンチレバー形試験機の斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央点が前記斜面と接したときの他端の位置をスケールによって読んだ。試験片が移動した長さ(mm)を、試験片の表裏について測り、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて平均値を算出した。
【0042】
[実施例1]
(経糸・緯糸)
単繊維断面のアスペクト比2.0、総繊度470dtex、108フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%の無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を、経糸および緯糸として用いた。
【0043】
(製織)
上記経糸・緯糸を用い、ウォータージェットルームにて、織密度が経糸・緯糸ともに43本/2.54cmの平織物を得た。
【0044】
(樹脂コート)
上記織物に、粘度12,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、2.0kN/mの張力でコートし、190℃で1分間、加硫処理を行い、樹脂の付着量が18g/mのエアバッグ用コート布帛を得た。
【0045】
このエアバッグ用コート布帛は、合成樹脂層と織物との接着性、接着剤との接着性、および低通気性に優れていた。
【0046】
[実施例2]
(経糸・緯糸)
単繊維断面のアスペクト比2.4、総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%の無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を、経糸および緯糸として用いた。
【0047】
(製織)
上記経糸・緯糸を用い、ウォータージェットルームにて、織密度が経糸・緯糸ともに53本/2.54cmの平織物を得た。
【0048】
(樹脂コート)
上記織物に、粘度40,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、1.8kN/mの張力でコートし、190℃で2分間、加硫処理を行い、樹脂の付着量が25g/mのエアバッグ用コート布帛を得た。
【0049】
このエアバッグ用コート布帛は、合成樹脂層と織物との接着性、接着剤との接着性、および低通気性に優れていた。
【0050】
[比較例1]
(経糸・緯糸)
単繊維断面のアスペクト比1.0、総繊度470dtex、108フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%の無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を、経糸および緯糸として用いた。
【0051】
(製織)
上記経糸・緯糸を用い、ウォータージェットルームにて、織密度が経糸・緯糸ともに43本/2.54cmの平織物を得た。
【0052】
(樹脂コート)
上記織物に、粘度18,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、0.2kN/mの張力でコートし、190℃で1分間、加硫処理を行い、樹脂の付着量が25g/mのエアバッグ用コート布帛を得た。
【0053】
このエアバッグ用コート布帛は柔軟性、低通気性については問題なかったが、接着剤との接着性が劣っていた。
【0054】
[比較例2]
(経糸・緯糸)
単繊維断面のアスペクト比3.2、総繊度350dtex、72フィラメント、強度8.5cN/dtex、伸度23.5%の無撚りのナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を、経糸および緯糸として用いた。
【0055】
(製織)
上記経糸・緯糸を用い、ウォータージェットルームにて、織密度が経糸・緯糸ともに50本/2.54cmの平織物を得た。
【0056】
(樹脂コート)
上記織物に、粘度55,000mPa・sの無溶剤系シリコーン樹脂液を、フローティングナイフコーターにより、2.5kN/mの張力下でコートし、190℃で2分間、加硫処理を行い、樹脂の付着量が40g/mのエアバッグ用コート布帛を得た。
【0057】
このエアバッグ用コート布帛は、柔軟性、低通気性、接着剤との接着性については問題なかったが、合成樹脂層と織物との接着性が劣っていた。
【0058】
【表1】

【0059】
尚、表中の「数値/数値」の記載は、その特性値の「タテ方向についての値/ヨコ方向についての値」を表す。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のエアバッグ用コート布帛は、高い気密性が要求される側面衝突用のシート内蔵型のサイドエアバッグや、車内のルーフサイドから側部窓上に降りてくるカーテン式サイドエアバッグに好適に使用することができる。また、運転席用、助手席用および後部座席用に用いても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維からなる織物の少なくとも片面に合成樹脂層が積層されてなるコート布帛であって、織物の経方向および緯方向における合成樹脂層の表面のKES計測による表面粗さ(SMD)が10〜50μmで、かつ、JIS K 6404−6に基づいて測定される合成樹脂層の剥離性が5級であることを特徴とするエアバッグ用コート布帛。
【請求項2】
前記合成繊維がアスペクト比1.2〜2.5の断面形状を有する、請求項1記載のエアバッグ用コート布帛。
【請求項3】
前記合成樹脂層が無溶剤系シリコーン樹脂を含んでなる、請求項1または2記載のエアバッグ用コート布帛。
【請求項4】
前記合成樹脂層における積層量が10〜45g/mである、請求項1〜3のいずれか記載のエアバッグ用コート布帛。
【請求項5】
ASTM D−6478−02に基づいて測定される収納性が1000〜1850cmである、請求項1〜4のいずれか記載のエアバッグ用コート布帛。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のエアバッグ用コート布帛が縫製されてなることを特徴とするエアバッグ。

【公開番号】特開2008−156798(P2008−156798A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349067(P2006−349067)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】