エアバッグ装置の取付構造
【課題】エアバッグ装置を車両用シートの構造部材に対してボルトとナットにより取り付けて、締結トルクの低下を防止する。
【解決手段】インフレータ120にボルト125が立設されており、車両用シートのカバー部材110のインフレータ保持壁111には、前記ボルト125が挿通する開口が形成されている。前記ボルト125は前記カバー部材110の開口を挿通し、前記挿通したボルト125に、プレート123を装着して、図示しないナットを締結することで図示しないサイドフレームに取り付ける。前記ボルト125とナットの締結時に、前記カバー部材110がナットで共締めされない構造とした。
【解決手段】インフレータ120にボルト125が立設されており、車両用シートのカバー部材110のインフレータ保持壁111には、前記ボルト125が挿通する開口が形成されている。前記ボルト125は前記カバー部材110の開口を挿通し、前記挿通したボルト125に、プレート123を装着して、図示しないナットを締結することで図示しないサイドフレームに取り付ける。前記ボルト125とナットの締結時に、前記カバー部材110がナットで共締めされない構造とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアバッグ装置の取付構造に関し、とくに車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの車幅方向外側の側部にエアバッグユニットを内蔵させておき、車両の側面衝突時に、エアバッグをシートに着座している乗員の側方に展開させることで、衝突による衝撃力を吸収して乗員を保護するようしたエアバッグ装置を備えた車両用シートが従来から知られている。
【0003】
本発明は、この従来の車両用シートのエアバッグユニットの取付構造を改良しようとするものである。そこで、まず、従来のエアバッグ装置を備えた車両用シートについて説明する。
【0004】
図12及び図13は、この従来の車両用シート1のシートバック3の内部構成を示す。車両用シート1は、自動車等の車両の前席右側のシートであって、車両のフロアパネル上に設置されており、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。
【0005】
シートバック3内には、略矩形枠状のシートバックフレーム11が配置されている。このシートバックフレーム11は、シートバック3の左右両側の側面の近傍においてそれぞれ上下方向に延びる左右のサイドフレーム12、13と、これら両サイドフレーム12、13の上端部同士を連結する、上方に突出する略アーチ状をなして左右方向に延びる円管状のアッパクロスメンバ14と、両サイドフレーム12、13の下端部同士を連結する、左右方向に直線状に延びる断面円形のロアクロスメンバ15とを有している。
【0006】
シートバック3の外側面は表皮31で構成されており、前面側表皮31aの内側にはパッド35が配置されている(図13)。
前面側表皮31aの右側端部と右側面側表皮31bの前側端部との間の縫製部32は、エアバッグ41の展開時にその展開圧により破断されるようになっている。
【0007】
前面側表皮31aの右側端部と右側面側表皮31bの前側端部とはシート内側に折り曲げられて互いに重ね合わされており、それら重ね合わせ部分には縫製部32が形成されている。車両用シート1の右サイドフレーム13よりも右側の部分にパッドが存在しない空間を設け、この空間に、エアバッグ装置のエアバッグユニット40が配置されている。
エアバッグユニット40は、右サイドフレーム13に沿って上下方向に延びている。また、エアバッグユニット40は、折り畳まれた状態にあるエアバッグ41と、右サイドフレーム13に沿って上下方向に延びかつエアバッグ41にガスを供給するインフレータ42とを含んでいる。
エアバッグ41及びインフレータ42は、エアバッグ41の展開圧により破断する紙45で覆われており、これにより、エアバッグ41の折り畳まれた状態が維持されるようになっている。
【0008】
カバー部材51の形状保持部51aのシート内側面におけるエアバッグユニット40の直ぐ後側部分には、エアバッグユニット40を保持するためのユニット保持部51bが形成されている。このユニット保持部51bは、形状保持部51aのシート内側面からシート幅方向内側(左側)に突出した後に折れ曲がって右サイドフレーム13に沿って前側へ延びている。このユニット保持部51bと、形状保持部51aにおけるユニット保持部51bの基端よりも前側の部分(変形部51c)との間に、エアバッグユニット40を収容する収容部51dが形成され、この収容部51dにエアバッグユニット40が収容・保持されている。
【0009】
インフレータ42を保持するインフレータ保持部材43にはスタッドボルト43aが設けられており、このスタッドボルト43aはカバー部材51のユニット保持部51bと右サイドフレーム13とを貫通して、ナット44で締め付けられている。この取付構造により、インフレータ42を右サイドフレーム13に取付固定する際に、カバー部材51(ユニット保持部51b)も右サイドフレーム13に共締めされる。この構成により、カバー部材51を、収容部51dにエアバッグユニット40を収容した状態で、右サイドフレーム13に取り付けている。
【0010】
右サイドフレーム13に取り付けられたエアバッグ装置は、車両の右側側部の車体(センターピラー等)に配置された衝突センサにより、所定値以上の衝撃力が検出されたときに、制御装置(図示せず)がインフレータ42を作動させ、これにより、インフレータ42からエアバッグ41にガスが供給されて、エアバッグ41が前側へ向かって展開するようになっている。
その際、カバー部材51は、エアバッグ41の展開圧によりカバー部材51の前側端が縫製部32側の端部ないしその近傍をシート外側へ押圧するように変形可能に形成されている。
【0011】
なお、この従来のエアバッグ装置を備えた車両用シートには、縫製部32を早期に破断させるため前面側表皮31aよりも伸長率の低い可撓性の低伸張部材55が設けられている。低伸張部材55の一端部は、縫製部32側の右側端部に縫製により取り付けられており、他端部は取付金具56を介して右サイドフレーム13の後側端部に取付固定されている。取付金具56は、右サイドフレーム13のスタッドボルト57を取付金具56のボルト挿通孔56bに挿通してナット58を締め付けて固定する。そのナット締め付けのためナット締め付け工具を差し込めるように、カバー部材51には締め付け用孔51fが設けられている。
【0012】
低伸張部材55は、エアバッグ41の展開時に、前面側表皮31aの縫製部32側の端部を、変形部51cにより押圧される右側面側表皮31bに引っ張られて移動しないように拘束し、それにより縫製部32の低伸張部材55の一端部が取り付けられている部分に破断力を集中させる。
【0013】
以上の構成により、従来のエアバッグ装置を備えた車両用シートは、インフレータ作動時にパッドが介在しないためにその展開が遅れるのを防止することができる。
しかし、前記従来の車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造では、スタッドボルト43aをカバー部材51と右サイドフレーム13に貫通させてナット44で共締めているため、通常樹脂製であるカバー部材51が、締結時にカバー部材51が変形して締め付け難いとともに、締結後にカバー部材51が変形すると、締結トルクが低下する虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造における前記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、エアバッグ装置を車両用シートの構造部材に対してボルトとナットにより取り付けて、締結トルクの低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、折り畳んだエアバッグ及びインフレータを含むエアバッグ装置と、前記インフレータに立設したボルトを挿通する開口を備え、かつエアバッグ装置を保持する保持手段を備えた車両用シートのカバー部材と、前記ボルトを挿通する挿通孔を備えた前記車両用シートの構成部材と、を有し、前記ボルトにナットを締結して前記カバー部材に保持されたエアバッグ装置を前記車両用シートの構成部材に取り付けるエアバッグ装置の取付構造であって、前記ボルトと前記ナットの締結時に、前記カバー部材は前記ボルトと前記ナットとで共締めされない構造であるエアバッグ装置の取付構造である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エアバッグ装置を車両用シートの構造部材に対して、ボルトとナットにより取り付けて、締結トルクの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る車両用シートのカバー部材に装着したエアバッグ装置の正面図である。
【図2】エアバッグ装置を装着する車両用シートのカバー部材を示す斜視図であり、図2Aは蓋部材が解放した状態を、また、図2Bは蓋部材が閉じた状態を図2Aと多少角度を変えて示している。
【図3】プレートの斜視図である。
【図4】カバー部材に装着されたエアバッグ装置におけるインフレータの長手方向中心軸と、各スタッドボルトの中心軸を通る断面図であり、図4Aはカバー部材及びエアバッグ装置全体を示す断面図であり、図4Bはその一部拡大図である。
【図5】取付用ブラケットの斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造を示す図であり、図6Aは、図4Aと同様の断面図であり、図6Bはその一部拡大図である。
【図7】第3の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造を示す図4Aと同様の断面図であり、図7Aはその全体を示す図であり、図7Bはその一部の拡大図である。
【図8】セッティングワッシャを示し、図8Aはその正面図、図8Bはその斜視図である。
【図9】セッティングワッシャの取り付けについて説明する図4Aと同様の断面図である。
【図10】プレートを示し、図10Aはその正面図、図10Bは斜視図である。
【図11】図1のカバー部材に装着されたエアバッグ装置の線A−Aに沿った矢視方向における断面図であり、図11Aはカバー部材に設けた蓋部材が開放した状態を、また、図11Bは前記蓋部材が閉じた状態を示す。
【図12】従来の車両用シートのシートバックの内部構成を示す斜視図である。
【図13】図12の車両用シートの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造について図面を参照して説明する。
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートのカバー部材に装着したエアバッグ装置の取付構造について説明するが、以下で説明する車両用シートのカバー部材等の構成以外の構成は、とくに言及しない限り既に説明した従来のものと同じである。
【0019】
図1は、車両用シートのカバー部材110に装着したエアバッグ装置の正面図である。
エアバッグ装置は、従来と同様にエアバッグ100と、作動時にエアバッグ100内にガスを導入してエアバッグ100を膨張・展開させる円筒状のインフレータ120とから成っている。
インフレータ120は、その円筒の長さ方向一端側にガス噴出部120aが設けられており、ガス噴出部120aの全周には複数のガス噴出口120bが配置されている。インフレータ120は、長手方向に沿って間隔を置いてその回りに巻きつけ固定した帯状部材124を備え、この帯状部材124には、スタッドボルト125がそれぞれ一本ずつ立設されている。なお、スタットボルト125は帯状部材124に立設させられているものに限定されず、スタットボルト125の頭に相当する部分でインフレータ120に溶接等により直接固定されていてもよい。
【0020】
図2は、エアバッグ装置を装着する車両用シートのカバー部材110を示す斜視図であり、図2Aは蓋部材113が解放した状態を、また、図2Bは蓋部材113が閉じた状態を図2Aと多少角度を変えて示している。このカバー部材110の車両用シートにおける取付位置などは既に説明した従来のものと同じである。
カバー部材110は、全体を図2A、2Bに示すように、カバー部材110にインフレータ120を装着する空間(前記従来のエアバッグユニットのユニット保持部に相当)が形成できるように、カバー部材110の内側中間部から断面略L字状に延在形成され(図中では逆L字状)、カバー部材110から適宜の間隔を隔てて略平行に形成されたインフレータ保持壁111と、インフレータ保持壁111を囲むように図中逆L字状に湾曲したカバー部材110の湾曲部110a及び前記インフレータ保持壁111の間を連結する複数のリブ114とから成っている。
インフレータ保持壁111のカバー部材110と平行な面には、細長い矩形の凹部(又は段部)111aが形成されており、その凹部111aの底面に、凹部111aよりも一回り小さい同様に細長い矩形の開口112が設けられている。
【0021】
この開口112は、インフレータ120を、図2中においてインフレータ保持壁111の裏面側に配置したとき、インフレータ120のスタッドボルト125(図1)を挿通するためのものであり、その周縁部に形成された凹部111aは、図3に示す斜視図から明らかなように、平板状で矩形の細長い金属製のプレート123を図2中表側から装着できるよう、プレート123の厚さに略等しい深さでかつプレート123を収容できる大きさに形成されている。カバー部材110の湾曲部110aには、開閉自在な補強リブ113a付きの蓋部材113が設けられており、蓋部材113には蓋部材113の係止手段である爪部材113bが形成されている。蓋部材113などについては後に詳述する。
【0022】
図4は、図1に示すカバー部材110に装着されたエアバッグ装置におけるインフレータ120の長手方向中心軸と、各スタッドボルト125の中心軸を通る断面図であり、図4Aはカバー部材110及びエアバッグ装置全体を示す断面図であり、図4Bはその一部拡大図である。また、図5は、取付用ブラケット122の斜視図である。
インフレータ120は、図示のように、そのスタッドボルト125を取付用ブラケット122に挿通させた状態で折り畳んだエアバッグ100中に収納されており、スタッドボルト125をエアバッグ100の基布100aのボルト挿通孔100bから突出させている。折り畳んだエアバッグ100は例えばその膨張時に容易に破断する布テープ(図示せず)や、予め破断箇所を設けた布等のラッピング材(図示せず)等で固定されて折り畳まれた状態に維持され、カバー部材110のインフレータ保持壁111で保持されている。
【0023】
ここで、取付用ブラケット122は、図5に示すように、インフレータ保持壁111の細長い矩形の開口112に嵌合する細長い矩形の段部122aと、段部122aの周縁部に形成されたフランジ部122bと、フランジ部122bの一端側から立ち上がりインフレータ120の円筒に沿って湾曲する湾曲壁122cを有している。この湾曲壁122cは、図1に示すガス噴出部120aの全周に配置されたガス噴出口120bから放射状に噴出されるガスを、エアバッグ100を膨張・展開させる方向に整流すると共に、ガス噴出部周辺のエアバッグ100へガスが直接当たらないように遮蔽し、基布100aをガスの熱から保護するためのものである。
【0024】
再び図4を参照して、インフレータ120を装着したカバー部材110を、インフレータ120の車両用シートの構成部材、ここではサイドフレーム(130;図11)への取り付け手順について説明する。
なお、本実施形態では前記カバー部材110をサイドフレーム(130;図11)に取り付けるものとして説明するが、車両用シートの構造により必ずしもサイドフレーム(130;図11)に限定する必要はなく、要は、インフレータ120を装着したカバー部材110を車両用シートが車両進行方向に向かって左右いずれにあるかにしたがって、それぞれその左又は右側部に取り付けできればよい。
【0025】
前記取り付けに当たっては、まず、取付用ブラケット122を装着する。即ち、インフレータ120のスタッドボルト125を、取付用ブラケット122のボルト挿通孔122d(図5)に挿通する。次に、その状態で折り畳んだエアバッグ100内に挿入し、スタッドボルト125をエアバッグ100の基布100aに設けたボルト挿通孔100bに挿通するか、もしくは折り畳み前のエアバッグ100内に挿入し、スタッドボルト125をエアバッグ100の基布100aに設けたボルト挿通孔100bに挿通後エアバッグ100を折り畳む。
次に、スタッドボルト125をカバー部材110のインフレータ保持壁111の開口112(図2A、2B)に挿通させると共に、取付用ブラケット122の前記細長い矩形の段部122a(図5)の部分で、エアバッグ100の基布100aを開口112に押し込む。
【0026】
次に、開口112から突出したインフレータ120のスタッドボルト125に、インフレータ保持壁111のインフレータ取付面と反対側から、図4に示すようにスタッドボルト125の挿通孔123aを備えたプレート123を装着し、セッティングワッシャ127で仮止めし、その後突出したスタッドボルト125にサイドフレーム(130;図11)を介してナット(126;図11)を締結する。
これによって、エアバッグ100はインフレータ120と共に、サイドフレーム(130;図11)に対して強固に固定される。
【0027】
ここで、前記インフレータ保持壁111の開口112の周縁部には、図2に示すようにプレート123の厚みに略等しい深さの凹部111aが形成されている。そのため、スタッドボルト125にサイドフレーム(130;図11)の外側からナット(126;図11)を締結して、プレート123が凹部111aの底面に当接した状態では、プレート123の表面がインフレータ保持壁111のインフレータ取付面と反対側の面と面一になると共に、その凹部111aはプレート123の長さ及び幅に略等しく形成されているので、例えば図4Bに示すように一旦凹部111aに装着されたプレート123は、妄りに遊動しないように拘束される。
【0028】
サイドフレーム(130;図11)から突出したスタッドボルト125にナット(126;図11)を締結して、インフレータ保持壁111のインフレータ側と反対側の面からプレート123を締め付ける際、図4BのXで表す部分、即ち、スタッドボルト125の根元の部分と取付用ブラケット122、エアバッグ100の基布100a、及びプレート123間に隙間が無くなるように強く締結する。また、このように、スタッドボルト125及びナット(126;図11)を締結することで、図4BのYで示す部分、即ち、取付用ブラケット122のフランジ部122b、基布100a、カバー部材110とプレート123が重なる部分では、前記フランジ部122bとプレート123でカバー部材110のインフレータ保持壁111を強く挟持することができる。それによってカバー部材110が確実に固定される。
【0029】
本実施形態によれば、インフレータ120のスタッドボルト125をナット(126;図11)で締結する際に、開口112によりカバー部材110にはその締結力が及ばないため、スタッドボルト125に締結するナット(126;図11)で共締めされることがない。そのため、従来のようにスタッドボルト125及びナット(126;図11)の締結後に、カバー部材110が変形してボルトとナットの締結トルクが低下する虞はない。
【0030】
また、前記従来のエアバッグ装置の取付構造では、図13に示すように、スタッドボルト43aをカバー部材51と右サイドフレーム13の貫通孔に挿入しようとすると、その貫通孔はスタッドボルト43aが貫通する程度の径に形成されているため、エアバッグ装置の折り畳まれたエアバッグ41がその作業の障害になり、またカバー部材51とエアバッグユニット40は相対移動しやすいため、スタッドボルト43aを右サイドフレーム13の前記貫通孔に通すのが容易ではない。
【0031】
これに対し、本実施形態によれば、カバー部材110のインフレータ保持壁111にインフレータ120の2本のスタッドボルト125を同時に挿入可能な前記挿通孔の径よりも十分に大きな矩形の開口112を設けたため、組み立て時にスタッドボルト125をカバー部材110の開口112に整合させるのが容易である。したがって、折り畳んだエアバッグ100が障害になって、インフレータ120のスタッドボルト125が取り付け難いということもなく、作業効率が向上する。
以上は本発明の第1の実施形態に係るエアバッグ装置の取付構造である。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係るエアバッグ装置の取付構造を、図6を参照して説明する。なお、図6Aは、図4Aと同様の断面図であり、図6Bはその一部拡大図である。
第2の実施形態に係る取付構造では、スタッドボルト125Aを図示のように、その根元部分の径をスタッドボルト125Aのネジを設けた部分の径よりも大径の段部125Bを備えたものが用いられる。また、エアバッグ100の基布100aのボルト挿通孔100bの径は、前記段部125Bが挿通できる大きさに設定されている。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
このように構成することにより、スタッドボルト125Aにサイドフレーム(130;図11)を介してナット(126;図11)を締結する際に、プレート123の裏面が段付きスタッドボルト125Aの段部125Bにセッティングワッシャ127を介して当接し、プレート123と取付用ブラケット122との間でエアバッグ100の基布100aが共締めされることはない。
【0033】
本実施形態によれば、インフレータ120をカバー部材110のインフレータ保持壁111に装着するために、スタッドボルト125Aにナット(126;図11)を締結する際に、カバー部材110だけではなくエアバッグ100の基布100aもスタッドボルト125Aの段部125Bとナット(126;図11)間に介在しないために、ボルト、ナットの締結トルクを掛け易く、締結後に基布100aの厚みの経時的変化(熱膨張、締結力による厚みの変化等。)による締結トルクの低下を防止し、ナットにロックナットを用いる等の対応を不要とすることができる。
また、この実施形態においても、第1の実施形態と同様に、組み立て時にスタッドボルト125Aをカバー部材110のインフレータ保持壁111の開口112に容易に挿入でき、折り畳んだエアバッグ100が邪魔になって、インフレータ120のスタッドボルト125Aをカバー部材110のインフレータ保持壁111の開口112に挿通し難いということもない。
【0034】
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造の図4Aと同様の断面図であり、図7Aはその全体を示す図であり、図7Bはその一部拡大図である。
本実施形態では、カバー部材110のインフレータ保持壁111に第1及び第2の実施形態の2本のスタッドボルト125を同時に挿通させる開口112は設けられていない。代わりに、カバー部材110のインフレータ保持壁111には、インフレータ120のスタッドボルト125を個別に挿通させる、スタッドボルト125を通す程度の大きさの挿通孔111bが設けられている。
また、そのスタッドボルト125の挿通孔111bには、インフレータ保持壁111の厚さに相当する金属などの剛性の高いつまり、スタッドボルト125とナット(126;図11)の締結力に対抗できる剛性を持った材料でできた鍔付き筒状のスペーサ128が、図示のようにその鍔128aがエアバッグ100の基布100a側となるように配置して挿入されている。
なお、本実施形態のインフレータ保持壁111には、第1及び第2の実施形態のカバー部材110の開口112が存在していないため、これらの実施形態で用いたプレート123は用いられていない。
【0035】
本実施形態によれば、スタッドボルト125にサイドフレーム(130;図11)を介してナット(126;図11)を締結しても、その締め付け力はスペーサ128が対抗してインフレータ保持壁111にその作用が及ぶことはない。
したがって、インフレータ120をインフレータ保持壁111に装着してサイドフレーム(130;図11)に取り付けた後、従来のように、インフレータ保持壁111の厚みの変化によりボルトとナットの締結トルクが低下する虞がない。
なお、以上の説明ではスペーサ128は鍔128aを有するものとして説明したが、スペーサ128は必ずしも鍔128aを備えていなくともよい。
【0036】
以上で説明した各実施形態において、スタッドボルト125、125Aにナット(126;図11)を締結するのに先立って、スタッドボルト125、125Aにセッティングワッシャ127(図4、図6)を取り付けてインフレータ120とプレート123等をインフレータ保持壁111に仮固定している。そのため、部品の脱落や位置ずれを防止でき、また組立時にカバー部材110とエアバッグユニットが相対移動するのを防止できるので、効率よくサイドフレーム130への組立を行うことができる。
【0037】
図8はセッティングワッシャ127を示し、図8Aはその正面図、図8Bは斜視図である。
セッティングワッシャ127は、環状の薄い金属製(例えば厚みt=0.25mmのステンレス製)であって、その内周に沿って複数(図示例では5個)の略矩形の突起部127aが円周の中心方向に向かって略等間隔で設けられている。この突起部127aは、図8Bに示すようにセッティングワッシャ127の環状平面から挿入方向と逆向きに傾斜した傾斜面として形成されており、ボルト125への装着時に突起部127の先端がボルト125のネジ部に噛み込まれて抜け止め規制できるようになっている。
【0038】
図9は、セッティングワッシャ127の取り付けについて説明する図4Aと同様の断面図である。
セッティングワッシャ127をスタッドボルト125Aに取り付ける場合は、カバー部材110の開口110bを通してセッティングワッシャ取付用冶具160を挿入し、スタッドボルト125Aにセッティングワッシャ127を嵌めて、セッティングワッシャ取付用冶具160に向かって折り畳んだエアバッグ100を介して押し込み、嵌め込む。
また、前記セッティングワッシャ127を装着することで、締結後のセッティングワッシャ127における厚みの変化で、スタッドボルト125、125Aとナット126との締結トルクの低下を防止することができる。そのため、ナットにロックナットを用いる等の対応を不要とすることができる。
【0039】
なお、実施形態1及び2において、プレート123の代わりに、セッティングワッシャ127と同様な仮固定機能を備えたプレート123′を用いてもよい。
図10はこのプレートを示し、図10Aはその正面図、図10Bは斜視図である。
プレート123′の挿通孔123a′の内周面には、図示のように、セッティングワッシャ127の突起部127aと同様にスタッドボルト125、125Aのネジ部に噛み込む突起部123b′が複数設けられている。プレート123′は、セッティングワッシャ127の場合と同様に、スタッドボルト125、125Aにプレート123′の挿通孔123a′に押し込んではめ込むことでカバー部材110に仮固定することができる。これにより、セッティングワッシャ127、及びセッティングワッシャ127を組み付ける手間を省くことができる。プレート123′の他の構成は、プレート123と同じである。
【0040】
以上、車両用シートのカバー部材110に装着されたエアバッグ装置のサイドフレーム(130;図11)への取付構造の実施形態について説明したが、本実施形態は、前記従来のものと同様に、カバー部材110よりもシート幅方向内側のシートバック内には、図13の縫製部32に相当する縫製部が設けられており、また、この縫製部を早期に破断させるために、図13の前面側表皮31aよりも伸長率の低い可撓性の低伸張部材55と同様の低伸張部材140(図11)が設けられている。低伸張部材140の一端部は、前記従来のものと同様に前記前面側表皮における縫製部側の端部(右側端部)に縫製等により前面側表皮(図13に示す前面側表皮31aと同様である)の右側端部の近傍に取り付けられている。
【0041】
ここで図11は、図1のカバー部材110に装着されたエアバッグ装置を線A−Aの矢視方向における断面図であり、図11Aはカバー部材に設けた蓋部材が開放した状態を、また、図11Bは前記蓋部材が閉じた状態を示す図である。
低伸張部材140は、サイドフレーム130のシート幅方向内側を通ってサイドフレーム130の後側端部近傍まで延び、低伸張部材140の他端部は、低伸張部材140が挿通される部材挿通孔150aが形成された断面略L字状をなす取付金具150を介して、サイドフレーム130の後側端部に取付固定されている。また、サイドフレーム130の後側端部には、予めスタッドボルト132が固定されている。
一方、取付金具150のスタッドボルト132に対応する部分には、ボルト挿通孔が形成されており、このボルト挿通孔に上記スタッドボルト132を通して、スタッドボルト132にナット135を締結する。
【0042】
ところで、前記従来のカバー部材51には上述のように締め付け用孔51fが設けられている。この締め付け用孔51fはシートカバーで覆われているが、この部分のみシートカバーが凹むので後部の乗員が違和感を持ったり、或いは指などで押すことでシートカバーに損傷を与える可能性がある。
そこで、この問題を解決するため、本発明の各実施形態のカバー部材110には、図11に示すように、そのインフレータ保持壁111を囲むように湾曲したカバー部材110の湾曲部110aに、開閉自在な補強リブ113a付きの蓋部材113(図2も参照)が設けられている。この蓋部材113は、低伸張部材140を挿通した断面略L字状の取付金具150をサイドフレーム130に取り付けるため、サイドフレーム130に植設したスタッドボルト132にナット135を螺合するための工具を挿入するための作業用開口部を覆うために、カバー部材110に設けたものであり、カバー部材110とは肉薄部を介して連結され、その肉薄部をヒンジとして開閉自在に構成されている。
【0043】
また、このカバー部材110の補強リブ113aには、蓋部材113を閉鎖状態に係止する係止手段である爪部材113b(図2)が蓋部材113の補強リブ113aの外面に設けられており、カバー部材110の蓋部材113の両側にあるカバー部材110の端部にこの爪部材113bを係止して、蓋部材113を閉鎖位置に保持しておくことができる。なお、爪部材113bは閉蓋のためカバー部材110の端部間に押し込むとき、蓋部材113と共にカバー部材110の端部の抵抗力で内側に押し込まれて屈曲し、カバー部材110の端部間を通過してカバー部材110の端部からの抵抗力が解放されると、爪部材113bは元の位置に戻ってカバー部材110の裏側のリブ114近傍に係止する。爪部材113bはその係止が円滑に行えるよう、例えば図2Aに示すように略平面視でカバー部材110の下側に向かって傾斜面となる三角形の形状に形成されていることが好ましい。なお、係止手段はこれに限らず、他の周知又は公知の係止手段を適宜用いることができる。なお、図11A中113cは蓋部材113が閉止してサイドフレーム130に当接したときのガタ付きを防止のためのガタ止め用の潰しリブである。
【0044】
前記従来のカバー部材におけるように単に締め付け用孔51fを設けたものでは、カバー部材の表面をシートカバーで覆った場合に、シートカバーは差込孔のところが凹むので、後部座席の乗員に違和感を与えたり、或いは凹みを押すなどによりシートカバーに損傷を与える虞がある。
これに対し、本実施形態では前記蓋部材113を設けたことにより、図11Bに示すようにシートカバー(図示せず)で覆った場合に他の部分との区別がなく、したがって後部座席の乗員に違和感を与えることがなく、また、蓋部材113には補強リブ113aが設けられているので、仮に押しても蓋部材113が凹むことはない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・エアバッグ、110・・・カバー部材、110a・・・(カバー部材の)湾曲部、111・・・インフレータ保持壁、112・・・開口、113・・・蓋部材、114・・・リブ、120・・・インフレータ、122・・・取付用ブラケット、123、123′・・・プレート、124・・・帯状部材、125、125A・・・スタッドボルト、126・・・ナット、127・・・セッティングワッシャ、128・・・スペーサ、130・・・サイドフレーム、132・・・スタッドボルト、140・・・低伸張部材、150・・・取付金具、160・・・セッティングワッシャ取付用冶具。
【技術分野】
【0001】
本発明はエアバッグ装置の取付構造に関し、とくに車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの車幅方向外側の側部にエアバッグユニットを内蔵させておき、車両の側面衝突時に、エアバッグをシートに着座している乗員の側方に展開させることで、衝突による衝撃力を吸収して乗員を保護するようしたエアバッグ装置を備えた車両用シートが従来から知られている。
【0003】
本発明は、この従来の車両用シートのエアバッグユニットの取付構造を改良しようとするものである。そこで、まず、従来のエアバッグ装置を備えた車両用シートについて説明する。
【0004】
図12及び図13は、この従来の車両用シート1のシートバック3の内部構成を示す。車両用シート1は、自動車等の車両の前席右側のシートであって、車両のフロアパネル上に設置されており、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。
【0005】
シートバック3内には、略矩形枠状のシートバックフレーム11が配置されている。このシートバックフレーム11は、シートバック3の左右両側の側面の近傍においてそれぞれ上下方向に延びる左右のサイドフレーム12、13と、これら両サイドフレーム12、13の上端部同士を連結する、上方に突出する略アーチ状をなして左右方向に延びる円管状のアッパクロスメンバ14と、両サイドフレーム12、13の下端部同士を連結する、左右方向に直線状に延びる断面円形のロアクロスメンバ15とを有している。
【0006】
シートバック3の外側面は表皮31で構成されており、前面側表皮31aの内側にはパッド35が配置されている(図13)。
前面側表皮31aの右側端部と右側面側表皮31bの前側端部との間の縫製部32は、エアバッグ41の展開時にその展開圧により破断されるようになっている。
【0007】
前面側表皮31aの右側端部と右側面側表皮31bの前側端部とはシート内側に折り曲げられて互いに重ね合わされており、それら重ね合わせ部分には縫製部32が形成されている。車両用シート1の右サイドフレーム13よりも右側の部分にパッドが存在しない空間を設け、この空間に、エアバッグ装置のエアバッグユニット40が配置されている。
エアバッグユニット40は、右サイドフレーム13に沿って上下方向に延びている。また、エアバッグユニット40は、折り畳まれた状態にあるエアバッグ41と、右サイドフレーム13に沿って上下方向に延びかつエアバッグ41にガスを供給するインフレータ42とを含んでいる。
エアバッグ41及びインフレータ42は、エアバッグ41の展開圧により破断する紙45で覆われており、これにより、エアバッグ41の折り畳まれた状態が維持されるようになっている。
【0008】
カバー部材51の形状保持部51aのシート内側面におけるエアバッグユニット40の直ぐ後側部分には、エアバッグユニット40を保持するためのユニット保持部51bが形成されている。このユニット保持部51bは、形状保持部51aのシート内側面からシート幅方向内側(左側)に突出した後に折れ曲がって右サイドフレーム13に沿って前側へ延びている。このユニット保持部51bと、形状保持部51aにおけるユニット保持部51bの基端よりも前側の部分(変形部51c)との間に、エアバッグユニット40を収容する収容部51dが形成され、この収容部51dにエアバッグユニット40が収容・保持されている。
【0009】
インフレータ42を保持するインフレータ保持部材43にはスタッドボルト43aが設けられており、このスタッドボルト43aはカバー部材51のユニット保持部51bと右サイドフレーム13とを貫通して、ナット44で締め付けられている。この取付構造により、インフレータ42を右サイドフレーム13に取付固定する際に、カバー部材51(ユニット保持部51b)も右サイドフレーム13に共締めされる。この構成により、カバー部材51を、収容部51dにエアバッグユニット40を収容した状態で、右サイドフレーム13に取り付けている。
【0010】
右サイドフレーム13に取り付けられたエアバッグ装置は、車両の右側側部の車体(センターピラー等)に配置された衝突センサにより、所定値以上の衝撃力が検出されたときに、制御装置(図示せず)がインフレータ42を作動させ、これにより、インフレータ42からエアバッグ41にガスが供給されて、エアバッグ41が前側へ向かって展開するようになっている。
その際、カバー部材51は、エアバッグ41の展開圧によりカバー部材51の前側端が縫製部32側の端部ないしその近傍をシート外側へ押圧するように変形可能に形成されている。
【0011】
なお、この従来のエアバッグ装置を備えた車両用シートには、縫製部32を早期に破断させるため前面側表皮31aよりも伸長率の低い可撓性の低伸張部材55が設けられている。低伸張部材55の一端部は、縫製部32側の右側端部に縫製により取り付けられており、他端部は取付金具56を介して右サイドフレーム13の後側端部に取付固定されている。取付金具56は、右サイドフレーム13のスタッドボルト57を取付金具56のボルト挿通孔56bに挿通してナット58を締め付けて固定する。そのナット締め付けのためナット締め付け工具を差し込めるように、カバー部材51には締め付け用孔51fが設けられている。
【0012】
低伸張部材55は、エアバッグ41の展開時に、前面側表皮31aの縫製部32側の端部を、変形部51cにより押圧される右側面側表皮31bに引っ張られて移動しないように拘束し、それにより縫製部32の低伸張部材55の一端部が取り付けられている部分に破断力を集中させる。
【0013】
以上の構成により、従来のエアバッグ装置を備えた車両用シートは、インフレータ作動時にパッドが介在しないためにその展開が遅れるのを防止することができる。
しかし、前記従来の車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造では、スタッドボルト43aをカバー部材51と右サイドフレーム13に貫通させてナット44で共締めているため、通常樹脂製であるカバー部材51が、締結時にカバー部材51が変形して締め付け難いとともに、締結後にカバー部材51が変形すると、締結トルクが低下する虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造における前記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、エアバッグ装置を車両用シートの構造部材に対してボルトとナットにより取り付けて、締結トルクの低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、折り畳んだエアバッグ及びインフレータを含むエアバッグ装置と、前記インフレータに立設したボルトを挿通する開口を備え、かつエアバッグ装置を保持する保持手段を備えた車両用シートのカバー部材と、前記ボルトを挿通する挿通孔を備えた前記車両用シートの構成部材と、を有し、前記ボルトにナットを締結して前記カバー部材に保持されたエアバッグ装置を前記車両用シートの構成部材に取り付けるエアバッグ装置の取付構造であって、前記ボルトと前記ナットの締結時に、前記カバー部材は前記ボルトと前記ナットとで共締めされない構造であるエアバッグ装置の取付構造である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エアバッグ装置を車両用シートの構造部材に対して、ボルトとナットにより取り付けて、締結トルクの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る車両用シートのカバー部材に装着したエアバッグ装置の正面図である。
【図2】エアバッグ装置を装着する車両用シートのカバー部材を示す斜視図であり、図2Aは蓋部材が解放した状態を、また、図2Bは蓋部材が閉じた状態を図2Aと多少角度を変えて示している。
【図3】プレートの斜視図である。
【図4】カバー部材に装着されたエアバッグ装置におけるインフレータの長手方向中心軸と、各スタッドボルトの中心軸を通る断面図であり、図4Aはカバー部材及びエアバッグ装置全体を示す断面図であり、図4Bはその一部拡大図である。
【図5】取付用ブラケットの斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造を示す図であり、図6Aは、図4Aと同様の断面図であり、図6Bはその一部拡大図である。
【図7】第3の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造を示す図4Aと同様の断面図であり、図7Aはその全体を示す図であり、図7Bはその一部の拡大図である。
【図8】セッティングワッシャを示し、図8Aはその正面図、図8Bはその斜視図である。
【図9】セッティングワッシャの取り付けについて説明する図4Aと同様の断面図である。
【図10】プレートを示し、図10Aはその正面図、図10Bは斜視図である。
【図11】図1のカバー部材に装着されたエアバッグ装置の線A−Aに沿った矢視方向における断面図であり、図11Aはカバー部材に設けた蓋部材が開放した状態を、また、図11Bは前記蓋部材が閉じた状態を示す。
【図12】従来の車両用シートのシートバックの内部構成を示す斜視図である。
【図13】図12の車両用シートの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造について図面を参照して説明する。
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートのカバー部材に装着したエアバッグ装置の取付構造について説明するが、以下で説明する車両用シートのカバー部材等の構成以外の構成は、とくに言及しない限り既に説明した従来のものと同じである。
【0019】
図1は、車両用シートのカバー部材110に装着したエアバッグ装置の正面図である。
エアバッグ装置は、従来と同様にエアバッグ100と、作動時にエアバッグ100内にガスを導入してエアバッグ100を膨張・展開させる円筒状のインフレータ120とから成っている。
インフレータ120は、その円筒の長さ方向一端側にガス噴出部120aが設けられており、ガス噴出部120aの全周には複数のガス噴出口120bが配置されている。インフレータ120は、長手方向に沿って間隔を置いてその回りに巻きつけ固定した帯状部材124を備え、この帯状部材124には、スタッドボルト125がそれぞれ一本ずつ立設されている。なお、スタットボルト125は帯状部材124に立設させられているものに限定されず、スタットボルト125の頭に相当する部分でインフレータ120に溶接等により直接固定されていてもよい。
【0020】
図2は、エアバッグ装置を装着する車両用シートのカバー部材110を示す斜視図であり、図2Aは蓋部材113が解放した状態を、また、図2Bは蓋部材113が閉じた状態を図2Aと多少角度を変えて示している。このカバー部材110の車両用シートにおける取付位置などは既に説明した従来のものと同じである。
カバー部材110は、全体を図2A、2Bに示すように、カバー部材110にインフレータ120を装着する空間(前記従来のエアバッグユニットのユニット保持部に相当)が形成できるように、カバー部材110の内側中間部から断面略L字状に延在形成され(図中では逆L字状)、カバー部材110から適宜の間隔を隔てて略平行に形成されたインフレータ保持壁111と、インフレータ保持壁111を囲むように図中逆L字状に湾曲したカバー部材110の湾曲部110a及び前記インフレータ保持壁111の間を連結する複数のリブ114とから成っている。
インフレータ保持壁111のカバー部材110と平行な面には、細長い矩形の凹部(又は段部)111aが形成されており、その凹部111aの底面に、凹部111aよりも一回り小さい同様に細長い矩形の開口112が設けられている。
【0021】
この開口112は、インフレータ120を、図2中においてインフレータ保持壁111の裏面側に配置したとき、インフレータ120のスタッドボルト125(図1)を挿通するためのものであり、その周縁部に形成された凹部111aは、図3に示す斜視図から明らかなように、平板状で矩形の細長い金属製のプレート123を図2中表側から装着できるよう、プレート123の厚さに略等しい深さでかつプレート123を収容できる大きさに形成されている。カバー部材110の湾曲部110aには、開閉自在な補強リブ113a付きの蓋部材113が設けられており、蓋部材113には蓋部材113の係止手段である爪部材113bが形成されている。蓋部材113などについては後に詳述する。
【0022】
図4は、図1に示すカバー部材110に装着されたエアバッグ装置におけるインフレータ120の長手方向中心軸と、各スタッドボルト125の中心軸を通る断面図であり、図4Aはカバー部材110及びエアバッグ装置全体を示す断面図であり、図4Bはその一部拡大図である。また、図5は、取付用ブラケット122の斜視図である。
インフレータ120は、図示のように、そのスタッドボルト125を取付用ブラケット122に挿通させた状態で折り畳んだエアバッグ100中に収納されており、スタッドボルト125をエアバッグ100の基布100aのボルト挿通孔100bから突出させている。折り畳んだエアバッグ100は例えばその膨張時に容易に破断する布テープ(図示せず)や、予め破断箇所を設けた布等のラッピング材(図示せず)等で固定されて折り畳まれた状態に維持され、カバー部材110のインフレータ保持壁111で保持されている。
【0023】
ここで、取付用ブラケット122は、図5に示すように、インフレータ保持壁111の細長い矩形の開口112に嵌合する細長い矩形の段部122aと、段部122aの周縁部に形成されたフランジ部122bと、フランジ部122bの一端側から立ち上がりインフレータ120の円筒に沿って湾曲する湾曲壁122cを有している。この湾曲壁122cは、図1に示すガス噴出部120aの全周に配置されたガス噴出口120bから放射状に噴出されるガスを、エアバッグ100を膨張・展開させる方向に整流すると共に、ガス噴出部周辺のエアバッグ100へガスが直接当たらないように遮蔽し、基布100aをガスの熱から保護するためのものである。
【0024】
再び図4を参照して、インフレータ120を装着したカバー部材110を、インフレータ120の車両用シートの構成部材、ここではサイドフレーム(130;図11)への取り付け手順について説明する。
なお、本実施形態では前記カバー部材110をサイドフレーム(130;図11)に取り付けるものとして説明するが、車両用シートの構造により必ずしもサイドフレーム(130;図11)に限定する必要はなく、要は、インフレータ120を装着したカバー部材110を車両用シートが車両進行方向に向かって左右いずれにあるかにしたがって、それぞれその左又は右側部に取り付けできればよい。
【0025】
前記取り付けに当たっては、まず、取付用ブラケット122を装着する。即ち、インフレータ120のスタッドボルト125を、取付用ブラケット122のボルト挿通孔122d(図5)に挿通する。次に、その状態で折り畳んだエアバッグ100内に挿入し、スタッドボルト125をエアバッグ100の基布100aに設けたボルト挿通孔100bに挿通するか、もしくは折り畳み前のエアバッグ100内に挿入し、スタッドボルト125をエアバッグ100の基布100aに設けたボルト挿通孔100bに挿通後エアバッグ100を折り畳む。
次に、スタッドボルト125をカバー部材110のインフレータ保持壁111の開口112(図2A、2B)に挿通させると共に、取付用ブラケット122の前記細長い矩形の段部122a(図5)の部分で、エアバッグ100の基布100aを開口112に押し込む。
【0026】
次に、開口112から突出したインフレータ120のスタッドボルト125に、インフレータ保持壁111のインフレータ取付面と反対側から、図4に示すようにスタッドボルト125の挿通孔123aを備えたプレート123を装着し、セッティングワッシャ127で仮止めし、その後突出したスタッドボルト125にサイドフレーム(130;図11)を介してナット(126;図11)を締結する。
これによって、エアバッグ100はインフレータ120と共に、サイドフレーム(130;図11)に対して強固に固定される。
【0027】
ここで、前記インフレータ保持壁111の開口112の周縁部には、図2に示すようにプレート123の厚みに略等しい深さの凹部111aが形成されている。そのため、スタッドボルト125にサイドフレーム(130;図11)の外側からナット(126;図11)を締結して、プレート123が凹部111aの底面に当接した状態では、プレート123の表面がインフレータ保持壁111のインフレータ取付面と反対側の面と面一になると共に、その凹部111aはプレート123の長さ及び幅に略等しく形成されているので、例えば図4Bに示すように一旦凹部111aに装着されたプレート123は、妄りに遊動しないように拘束される。
【0028】
サイドフレーム(130;図11)から突出したスタッドボルト125にナット(126;図11)を締結して、インフレータ保持壁111のインフレータ側と反対側の面からプレート123を締め付ける際、図4BのXで表す部分、即ち、スタッドボルト125の根元の部分と取付用ブラケット122、エアバッグ100の基布100a、及びプレート123間に隙間が無くなるように強く締結する。また、このように、スタッドボルト125及びナット(126;図11)を締結することで、図4BのYで示す部分、即ち、取付用ブラケット122のフランジ部122b、基布100a、カバー部材110とプレート123が重なる部分では、前記フランジ部122bとプレート123でカバー部材110のインフレータ保持壁111を強く挟持することができる。それによってカバー部材110が確実に固定される。
【0029】
本実施形態によれば、インフレータ120のスタッドボルト125をナット(126;図11)で締結する際に、開口112によりカバー部材110にはその締結力が及ばないため、スタッドボルト125に締結するナット(126;図11)で共締めされることがない。そのため、従来のようにスタッドボルト125及びナット(126;図11)の締結後に、カバー部材110が変形してボルトとナットの締結トルクが低下する虞はない。
【0030】
また、前記従来のエアバッグ装置の取付構造では、図13に示すように、スタッドボルト43aをカバー部材51と右サイドフレーム13の貫通孔に挿入しようとすると、その貫通孔はスタッドボルト43aが貫通する程度の径に形成されているため、エアバッグ装置の折り畳まれたエアバッグ41がその作業の障害になり、またカバー部材51とエアバッグユニット40は相対移動しやすいため、スタッドボルト43aを右サイドフレーム13の前記貫通孔に通すのが容易ではない。
【0031】
これに対し、本実施形態によれば、カバー部材110のインフレータ保持壁111にインフレータ120の2本のスタッドボルト125を同時に挿入可能な前記挿通孔の径よりも十分に大きな矩形の開口112を設けたため、組み立て時にスタッドボルト125をカバー部材110の開口112に整合させるのが容易である。したがって、折り畳んだエアバッグ100が障害になって、インフレータ120のスタッドボルト125が取り付け難いということもなく、作業効率が向上する。
以上は本発明の第1の実施形態に係るエアバッグ装置の取付構造である。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係るエアバッグ装置の取付構造を、図6を参照して説明する。なお、図6Aは、図4Aと同様の断面図であり、図6Bはその一部拡大図である。
第2の実施形態に係る取付構造では、スタッドボルト125Aを図示のように、その根元部分の径をスタッドボルト125Aのネジを設けた部分の径よりも大径の段部125Bを備えたものが用いられる。また、エアバッグ100の基布100aのボルト挿通孔100bの径は、前記段部125Bが挿通できる大きさに設定されている。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
このように構成することにより、スタッドボルト125Aにサイドフレーム(130;図11)を介してナット(126;図11)を締結する際に、プレート123の裏面が段付きスタッドボルト125Aの段部125Bにセッティングワッシャ127を介して当接し、プレート123と取付用ブラケット122との間でエアバッグ100の基布100aが共締めされることはない。
【0033】
本実施形態によれば、インフレータ120をカバー部材110のインフレータ保持壁111に装着するために、スタッドボルト125Aにナット(126;図11)を締結する際に、カバー部材110だけではなくエアバッグ100の基布100aもスタッドボルト125Aの段部125Bとナット(126;図11)間に介在しないために、ボルト、ナットの締結トルクを掛け易く、締結後に基布100aの厚みの経時的変化(熱膨張、締結力による厚みの変化等。)による締結トルクの低下を防止し、ナットにロックナットを用いる等の対応を不要とすることができる。
また、この実施形態においても、第1の実施形態と同様に、組み立て時にスタッドボルト125Aをカバー部材110のインフレータ保持壁111の開口112に容易に挿入でき、折り畳んだエアバッグ100が邪魔になって、インフレータ120のスタッドボルト125Aをカバー部材110のインフレータ保持壁111の開口112に挿通し難いということもない。
【0034】
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態に係る車両用シートへのエアバッグ装置の取付構造の図4Aと同様の断面図であり、図7Aはその全体を示す図であり、図7Bはその一部拡大図である。
本実施形態では、カバー部材110のインフレータ保持壁111に第1及び第2の実施形態の2本のスタッドボルト125を同時に挿通させる開口112は設けられていない。代わりに、カバー部材110のインフレータ保持壁111には、インフレータ120のスタッドボルト125を個別に挿通させる、スタッドボルト125を通す程度の大きさの挿通孔111bが設けられている。
また、そのスタッドボルト125の挿通孔111bには、インフレータ保持壁111の厚さに相当する金属などの剛性の高いつまり、スタッドボルト125とナット(126;図11)の締結力に対抗できる剛性を持った材料でできた鍔付き筒状のスペーサ128が、図示のようにその鍔128aがエアバッグ100の基布100a側となるように配置して挿入されている。
なお、本実施形態のインフレータ保持壁111には、第1及び第2の実施形態のカバー部材110の開口112が存在していないため、これらの実施形態で用いたプレート123は用いられていない。
【0035】
本実施形態によれば、スタッドボルト125にサイドフレーム(130;図11)を介してナット(126;図11)を締結しても、その締め付け力はスペーサ128が対抗してインフレータ保持壁111にその作用が及ぶことはない。
したがって、インフレータ120をインフレータ保持壁111に装着してサイドフレーム(130;図11)に取り付けた後、従来のように、インフレータ保持壁111の厚みの変化によりボルトとナットの締結トルクが低下する虞がない。
なお、以上の説明ではスペーサ128は鍔128aを有するものとして説明したが、スペーサ128は必ずしも鍔128aを備えていなくともよい。
【0036】
以上で説明した各実施形態において、スタッドボルト125、125Aにナット(126;図11)を締結するのに先立って、スタッドボルト125、125Aにセッティングワッシャ127(図4、図6)を取り付けてインフレータ120とプレート123等をインフレータ保持壁111に仮固定している。そのため、部品の脱落や位置ずれを防止でき、また組立時にカバー部材110とエアバッグユニットが相対移動するのを防止できるので、効率よくサイドフレーム130への組立を行うことができる。
【0037】
図8はセッティングワッシャ127を示し、図8Aはその正面図、図8Bは斜視図である。
セッティングワッシャ127は、環状の薄い金属製(例えば厚みt=0.25mmのステンレス製)であって、その内周に沿って複数(図示例では5個)の略矩形の突起部127aが円周の中心方向に向かって略等間隔で設けられている。この突起部127aは、図8Bに示すようにセッティングワッシャ127の環状平面から挿入方向と逆向きに傾斜した傾斜面として形成されており、ボルト125への装着時に突起部127の先端がボルト125のネジ部に噛み込まれて抜け止め規制できるようになっている。
【0038】
図9は、セッティングワッシャ127の取り付けについて説明する図4Aと同様の断面図である。
セッティングワッシャ127をスタッドボルト125Aに取り付ける場合は、カバー部材110の開口110bを通してセッティングワッシャ取付用冶具160を挿入し、スタッドボルト125Aにセッティングワッシャ127を嵌めて、セッティングワッシャ取付用冶具160に向かって折り畳んだエアバッグ100を介して押し込み、嵌め込む。
また、前記セッティングワッシャ127を装着することで、締結後のセッティングワッシャ127における厚みの変化で、スタッドボルト125、125Aとナット126との締結トルクの低下を防止することができる。そのため、ナットにロックナットを用いる等の対応を不要とすることができる。
【0039】
なお、実施形態1及び2において、プレート123の代わりに、セッティングワッシャ127と同様な仮固定機能を備えたプレート123′を用いてもよい。
図10はこのプレートを示し、図10Aはその正面図、図10Bは斜視図である。
プレート123′の挿通孔123a′の内周面には、図示のように、セッティングワッシャ127の突起部127aと同様にスタッドボルト125、125Aのネジ部に噛み込む突起部123b′が複数設けられている。プレート123′は、セッティングワッシャ127の場合と同様に、スタッドボルト125、125Aにプレート123′の挿通孔123a′に押し込んではめ込むことでカバー部材110に仮固定することができる。これにより、セッティングワッシャ127、及びセッティングワッシャ127を組み付ける手間を省くことができる。プレート123′の他の構成は、プレート123と同じである。
【0040】
以上、車両用シートのカバー部材110に装着されたエアバッグ装置のサイドフレーム(130;図11)への取付構造の実施形態について説明したが、本実施形態は、前記従来のものと同様に、カバー部材110よりもシート幅方向内側のシートバック内には、図13の縫製部32に相当する縫製部が設けられており、また、この縫製部を早期に破断させるために、図13の前面側表皮31aよりも伸長率の低い可撓性の低伸張部材55と同様の低伸張部材140(図11)が設けられている。低伸張部材140の一端部は、前記従来のものと同様に前記前面側表皮における縫製部側の端部(右側端部)に縫製等により前面側表皮(図13に示す前面側表皮31aと同様である)の右側端部の近傍に取り付けられている。
【0041】
ここで図11は、図1のカバー部材110に装着されたエアバッグ装置を線A−Aの矢視方向における断面図であり、図11Aはカバー部材に設けた蓋部材が開放した状態を、また、図11Bは前記蓋部材が閉じた状態を示す図である。
低伸張部材140は、サイドフレーム130のシート幅方向内側を通ってサイドフレーム130の後側端部近傍まで延び、低伸張部材140の他端部は、低伸張部材140が挿通される部材挿通孔150aが形成された断面略L字状をなす取付金具150を介して、サイドフレーム130の後側端部に取付固定されている。また、サイドフレーム130の後側端部には、予めスタッドボルト132が固定されている。
一方、取付金具150のスタッドボルト132に対応する部分には、ボルト挿通孔が形成されており、このボルト挿通孔に上記スタッドボルト132を通して、スタッドボルト132にナット135を締結する。
【0042】
ところで、前記従来のカバー部材51には上述のように締め付け用孔51fが設けられている。この締め付け用孔51fはシートカバーで覆われているが、この部分のみシートカバーが凹むので後部の乗員が違和感を持ったり、或いは指などで押すことでシートカバーに損傷を与える可能性がある。
そこで、この問題を解決するため、本発明の各実施形態のカバー部材110には、図11に示すように、そのインフレータ保持壁111を囲むように湾曲したカバー部材110の湾曲部110aに、開閉自在な補強リブ113a付きの蓋部材113(図2も参照)が設けられている。この蓋部材113は、低伸張部材140を挿通した断面略L字状の取付金具150をサイドフレーム130に取り付けるため、サイドフレーム130に植設したスタッドボルト132にナット135を螺合するための工具を挿入するための作業用開口部を覆うために、カバー部材110に設けたものであり、カバー部材110とは肉薄部を介して連結され、その肉薄部をヒンジとして開閉自在に構成されている。
【0043】
また、このカバー部材110の補強リブ113aには、蓋部材113を閉鎖状態に係止する係止手段である爪部材113b(図2)が蓋部材113の補強リブ113aの外面に設けられており、カバー部材110の蓋部材113の両側にあるカバー部材110の端部にこの爪部材113bを係止して、蓋部材113を閉鎖位置に保持しておくことができる。なお、爪部材113bは閉蓋のためカバー部材110の端部間に押し込むとき、蓋部材113と共にカバー部材110の端部の抵抗力で内側に押し込まれて屈曲し、カバー部材110の端部間を通過してカバー部材110の端部からの抵抗力が解放されると、爪部材113bは元の位置に戻ってカバー部材110の裏側のリブ114近傍に係止する。爪部材113bはその係止が円滑に行えるよう、例えば図2Aに示すように略平面視でカバー部材110の下側に向かって傾斜面となる三角形の形状に形成されていることが好ましい。なお、係止手段はこれに限らず、他の周知又は公知の係止手段を適宜用いることができる。なお、図11A中113cは蓋部材113が閉止してサイドフレーム130に当接したときのガタ付きを防止のためのガタ止め用の潰しリブである。
【0044】
前記従来のカバー部材におけるように単に締め付け用孔51fを設けたものでは、カバー部材の表面をシートカバーで覆った場合に、シートカバーは差込孔のところが凹むので、後部座席の乗員に違和感を与えたり、或いは凹みを押すなどによりシートカバーに損傷を与える虞がある。
これに対し、本実施形態では前記蓋部材113を設けたことにより、図11Bに示すようにシートカバー(図示せず)で覆った場合に他の部分との区別がなく、したがって後部座席の乗員に違和感を与えることがなく、また、蓋部材113には補強リブ113aが設けられているので、仮に押しても蓋部材113が凹むことはない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・エアバッグ、110・・・カバー部材、110a・・・(カバー部材の)湾曲部、111・・・インフレータ保持壁、112・・・開口、113・・・蓋部材、114・・・リブ、120・・・インフレータ、122・・・取付用ブラケット、123、123′・・・プレート、124・・・帯状部材、125、125A・・・スタッドボルト、126・・・ナット、127・・・セッティングワッシャ、128・・・スペーサ、130・・・サイドフレーム、132・・・スタッドボルト、140・・・低伸張部材、150・・・取付金具、160・・・セッティングワッシャ取付用冶具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳んだエアバッグ及びインフレータを含むエアバッグ装置と、
前記インフレータに立設したボルトを挿通する開口を備え、かつエアバッグ装置を保持する保持手段を備えた車両用シートのカバー部材と、
前記ボルトを挿通する挿通孔を備えた前記車両用シートの構成部材と、を有し、
前記ボルトにナットを締結して前記カバー部材に保持されたエアバッグ装置を前記車両用シートの構成部材に取り付けるエアバッグ装置の取付構造であって、
前記ボルトと前記ナットの締結時に、前記カバー部材は前記ボルトと前記ナットとで共締めされない構造であるエアバッグ装置の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記共締めされない構造は、長手方向に間隔を隔てて複数立設されたボルトを挿通可能な一つの開口と、
前記開口の前記インフレータ側と反対側から装着し、前記ボルトを挿通する挿通孔を備えたプレートと、
で構成されているエアバッグ装置の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、前記エアバッグ装置を前記カバー部材に仮止めするため、前記ボルトに前記プレートを装着可能とする突起部が前記プレートの挿通孔に設けられているエアバッグ装置の取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記共締めされない構造は、前記ボルトを挿通する開口にボルト挿通孔が形成されたスペーサを嵌装させたカバー部材で構成されており、
前記スペーサは前記カバー部材の厚さに略等しい高さを有し、かつ前記ボルトにナットを締結したときその締結力を前記カバー部材に作用させない機能を有するエアバッグ装置の取付構造。
【請求項5】
請求項1または4に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記インフレータは前記ボルトを取付用ブラケットのボルト挿通孔に挿通して、前記取付用ブラケットに取り付けた状態で前記エアバッグ内に収容されているエアバッグ装置の取付構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記ボルトは前記ボルトの径よりも大径部を基部に備えた段付ボルトであり、前記エアバッグの基布は前記大径部を挿通可能な挿通孔を有するエアバッグ装置の取付構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記エアバッグ装置を前記カバー部材に仮止めするためボルトに装着するセッティングワッシャを備えたエアバッグ装置の取付構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記カバー部材が作業用開口部に開閉自在な蓋部材を一体に備えたエアバッグ装置の取付構造。
【請求項9】
請求項8に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記蓋部材は閉止位置に係止するための係止手段を備えたエアバッグ装置の取付構造。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記車両用シートの構成部材はサイドフレームであるエアバッグ装置の取付構造。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造を備えた車両用シート。
【請求項1】
折り畳んだエアバッグ及びインフレータを含むエアバッグ装置と、
前記インフレータに立設したボルトを挿通する開口を備え、かつエアバッグ装置を保持する保持手段を備えた車両用シートのカバー部材と、
前記ボルトを挿通する挿通孔を備えた前記車両用シートの構成部材と、を有し、
前記ボルトにナットを締結して前記カバー部材に保持されたエアバッグ装置を前記車両用シートの構成部材に取り付けるエアバッグ装置の取付構造であって、
前記ボルトと前記ナットの締結時に、前記カバー部材は前記ボルトと前記ナットとで共締めされない構造であるエアバッグ装置の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記共締めされない構造は、長手方向に間隔を隔てて複数立設されたボルトを挿通可能な一つの開口と、
前記開口の前記インフレータ側と反対側から装着し、前記ボルトを挿通する挿通孔を備えたプレートと、
で構成されているエアバッグ装置の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、前記エアバッグ装置を前記カバー部材に仮止めするため、前記ボルトに前記プレートを装着可能とする突起部が前記プレートの挿通孔に設けられているエアバッグ装置の取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記共締めされない構造は、前記ボルトを挿通する開口にボルト挿通孔が形成されたスペーサを嵌装させたカバー部材で構成されており、
前記スペーサは前記カバー部材の厚さに略等しい高さを有し、かつ前記ボルトにナットを締結したときその締結力を前記カバー部材に作用させない機能を有するエアバッグ装置の取付構造。
【請求項5】
請求項1または4に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記インフレータは前記ボルトを取付用ブラケットのボルト挿通孔に挿通して、前記取付用ブラケットに取り付けた状態で前記エアバッグ内に収容されているエアバッグ装置の取付構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記ボルトは前記ボルトの径よりも大径部を基部に備えた段付ボルトであり、前記エアバッグの基布は前記大径部を挿通可能な挿通孔を有するエアバッグ装置の取付構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記エアバッグ装置を前記カバー部材に仮止めするためボルトに装着するセッティングワッシャを備えたエアバッグ装置の取付構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記カバー部材が作業用開口部に開閉自在な蓋部材を一体に備えたエアバッグ装置の取付構造。
【請求項9】
請求項8に記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記蓋部材は閉止位置に係止するための係止手段を備えたエアバッグ装置の取付構造。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造において、
前記車両用シートの構成部材はサイドフレームであるエアバッグ装置の取付構造。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載されたエアバッグ装置の取付構造を備えた車両用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−6447(P2013−6447A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138579(P2011−138579)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
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