説明

エアバッグ装置付きステアリングホイール

【課題】部品点数を増加させずに、エアバッグのカバー部材の取付外れを確実に防止することができるエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供する。
【解決手段】エアバッグ装置20のベースとなるバッグホルダ21には、エアバッグとインフレータ23とが組み付けられ、そのエアバッグを覆うパッド24が係止爪24dの係止にて組み付けられる。インフレータ23には、バッグホルダ21と係止状態にあるパッド24の係止爪24dの変位を規制する規制片23dが一体に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転席に着座する乗員の頭部及びその近傍を保護するためのエアバッグ装置を備えたエアバッグ装置付きステアリングホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールに備えられるエアバッグ装置は、例えば特許文献1に開示されているように、ステアリングホイール本体に対してホーンスイッチ機構等が介在されて組み付けられるベースプレート(バッグホルダに相当)に対し、エアバッグ及び該エアバッグを膨張展開させるためのガス発生装置(インフレータに相当)が組み付けられるとともに、そのエアバッグを覆うように樹脂製のエアバッグカバー(パッドに相当)が組み付けられている。このエアバッグカバーのベースプレートへの組み付けは、エアバッグカバーに突起部(係止爪に相当)を設け、該突起部のベースプレートへの係止にてその組み付けが容易に行えるように構成されている。
【特許文献1】特開2004−106822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、エアバッグの膨張展開時には、エアバッグカバーが内部のエアバッグから過大な押圧力を受けるため、その突起部が撓んでベースプレートとの係止が外れ、エアバッグカバーの取付外れが生じることが懸念される。そこで、上記特許文献1では、ベースプレートとは別部材の補助プレートを用い、突起部のベースプレートとの係止が外れないように突起部の変位(姿勢)を規制している。
【0004】
しかしながら、エアバッグカバーの取付外れを確実に防止できるものの、補助プレートという別部品が必要となるため、部品点数が増加するという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、部品点数を増加させずに、エアバッグのカバー部材の取付外れを確実に防止することができるエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングホイール本体にエアバッグ装置が組み付けられてなるエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、前記エアバッグ装置は、前記ステアリングホイール本体側への組み付けのベースとなるバッグホルダに対し、エアバッグと該エアバッグを膨張展開させるインフレータとを組み付けるとともに該エアバッグを覆うパッドを係止爪の係止にて組み付け、前記エアバッグを前記バッグホルダと前記パッドで形成するバッグ収容空間に収容して構成されるものであって、前記インフレータには、前記バッグホルダと係止状態にある前記パッドに設けた係止爪の変位を規制する規制部が一体に設けられていることをその要旨とする。
【0006】
この発明では、エアバッグ装置のベースとなるバッグホルダには、エアバッグとインフレータとが組み付けられ、そのエアバッグを覆うパッドが係止爪の係止にて組み付けられる。そして、インフレータには、バッグホルダと係止状態にあるパッドの係止爪の変位を規制する規制部が一体に設けられる。つまり、インフレータに一体に設けられるこの規制部にてパッドの係止爪の変位が規制されてバッグホルダとの係止外れが防止され、エアバッグのカバー部材であるパッドの取付外れが確実に防止される。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、前記パッドの係止爪は、外側に係止突起を有し、前記バッグホルダの周縁組付部に設けた爪係止孔に挿通されて係止されるのに対し、前記インフレータは、前記バッグホルダの中央部に組み付けられ、前記インフレータの規制部は、外側に位置する前記係止爪に向かって延び、前記係止爪の内側面に当接又は近接するように形成されていることをその要旨とする。
【0008】
この発明では、パッドの係止爪は、外側に係止突起を有してバッグホルダの周縁組付部の爪係止孔に挿通されて係止され、その内側であるバッグホルダの中央部にインフレータが組み付けられる。インフレータの規制部は、外側に位置するパッドの係止爪に向かって延び、該係止爪の内側面に当接又は近接するように形成される。つまり、インフレータの規制部をパッドの係止爪に向けて延ばすだけの単純な形状にて対応可能であり、規制部の作製の容易化、及び小型軽量化に寄与できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、前記パッドには、略矩形環状に立設される収容壁部の各辺の先端面それぞれに前記係止爪が形成され、前記インフレータの規制部は、前記係止爪の全部を対象に設けられていることをその要旨とする。
【0010】
この発明では、パッドには、略矩形環状に立設される収容壁部の各辺の先端面それぞれに係止爪が形成され、インフレータの規制部は、各係止爪の全部を対象に設けられる。つまり、全部の係止爪の係止外れが防止されるので、より確実にパッドの取付外れが防止可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、前記インフレータは、前記バッグホルダに組み付けるための取付片を有し、その取付片が前記規制部を兼用してなることをその要旨とする。
【0012】
この発明では、インフレータのバッグホルダに組み付けるために設けられる取付片が、パッドの係止爪の変位を規制する規制部を兼用する。これにより、インフレータに規制部を別途設ける必要がないため、インフレータの構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、前記バッグホルダは、前記パッド及び前記ステアリングホイール本体側との各組付部を該ホルダの幅方向中心線に対して線対称として表裏いずれにおいても組み付け可能に構成し、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定する台座部を前記組付部よりも前記エアバッグ及び前記パッドの配列方向の一方側に突出させ前記バッグ収容空間側に突出又は凹設となるようにその突出向きが選択可能に構成されるものであり、前記インフレータの規制部による前記係止爪の変位の規制が、前記バッグホルダの表裏いずれの組み付け時にも行われるよう構成されていることをその要旨とする。
【0014】
この発明では、インフレータの規制部による係止爪の変位の規制が、バッグホルダの表裏いずれの組み付け時にも行われるよう構成される。つまり、バッグホルダが表裏いずれの組み付けがなされても係止爪の係止外れが防止、即ちパッドの取付外れが防止可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品点数を増加させずに、エアバッグのカバー部材の取付外れを確実に防止することができるエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のステアリングホイール10は、運転者が車両を操舵すべく把持するステアリングホイール本体11の中央部に、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)20が一体に組み付けられて構成されている。ステアリングホイール本体11は、図2に示すように、その芯金12のボス部12aにてステアリングシャフト(図示略)と固定されるとともに、ボス部12aの周囲にエアバッグ装置20を装着する装着部12bがそれぞれ構成されている。各装着部12bは、ボス部12aを挟む左右にそれぞれ1箇所ずつとボス部12aの下側に1箇所の合計3箇所に設けられ、各装着部12bにはクリップ13が備えられている。そして、各装着部12bには、エアバッグ装置20の支持とホーンスイッチとの機能を兼ねる図3に示す3つのホーンスイッチ機構15がそのクリップ13とで構成するスナップフィット構造にて装着され、このホーンスイッチ機構15を介してエアバッグ装置20が芯金12に対して支持される。
【0017】
エアバッグ装置20は、図3〜図5に示すように、バッグホルダ21、エアバッグ22、インフレータ23及びパッド24を備えてなる。バッグホルダ21は、金属板のプレス加工よりなり、略矩形状をなしている。バッグホルダ21の周縁部は、パッド24及びホーンスイッチ機構15を組み付ける各組付部をそれぞれ有する略矩形環状の周縁組付部21aとして構成されている。
【0018】
ここで、パッド24は、樹脂成形よりなり、表面が意匠面をなす外皮部24aと、その外皮部24aの裏面側に略矩形環状に立設された収容壁部24bとを有している。収容壁部24bは、該収容壁部24bにて囲まれる外皮部24aの内側面とバッグホルダ21とでエアバッグ22を主としたバッグ収容空間Xを形成している。外皮部24aのこの収容空間Xを形成する部位には、エアバッグ22の膨張展開時に押し破られる薄肉部24cが形成されている。
【0019】
収容壁部24bの先端面(バッグホルダ21側の端面)には、矩形板状をなす5つの係止爪24dが一体に形成されており、具体的には収容壁部24bの上側壁部、左側壁部及び右側壁部にそれぞれ1つ、下側壁部に2つ設けられている。各係止爪24dはそれぞれ所定長さの幅広(収容壁部24bの各辺方向に幅広)に形成されており、各係止爪24dの先端部にはその外側面から更に外側(バッグ収容空間Xに対して外側)に突出する係止突起24eが形成されている。また、収容壁部24bの各角部の先端面には、それぞれ矩形板状のかしめ片24fが一体に形成されている。
【0020】
これに対し、前記バッグホルダ21は、矩形環状をなす周縁組付部21aにおいて、前記パッド24の各係止爪24dに対応する爪係止孔21bが上側辺部、左側辺部及び右側辺部にそれぞれ1つ、下側辺部に2つ形成されている。各爪係止孔21bは、幅広の各係止爪24dに対応してバッグホルダ21の辺方向に長い長孔状をなし、バッグホルダ21の表裏を貫通して形成されている。各爪係止孔21bには、各係止爪24dの先端部が挿通されて係止される。その際、各係止爪24dが係止突起24e分だけ図5の二点差線で示す位置まで内側に撓んで挿通され、挿通後、係止爪24dが同図5の実線で示す位置まで形状復帰して係止突起24eが爪係止孔21bの周縁部に係止して係止爪24dの爪係止孔21bからの抜けが防止される。尚、係止爪24dの厚さは約5〜6[mm]、係止突起24eの係り代(突出量)は約2[mm]に設定され、係止爪24dの厚さ方向寸法に対応する爪係止孔21bの短手方向の長さは、係止爪24dの厚さよりも若干大きい約5.5〜6.5[mm]に設定されている。
【0021】
また、バッグホルダ21の各角部には、各かしめ片24fが挿通されるスリット状のかしめ用挿通孔21cが貫通形成されている。各かしめ用挿通孔21cには、各かしめ片24fが挿通され、挿通後においてかしめ片24fの先端部が加熱により潰される所謂熱かしめが施される(図3参照)。そして、各かしめ片24fの熱かしめと各係止爪24dの係止がなされることにより、パッド24がバッグホルダ21に対して固定されるようになっている。
【0022】
また、バッグホルダ21の周縁組付部21aの左側辺部及び右側辺部の上側辺部寄りにおいてそれぞれ爪係止孔21bとかしめ用挿通孔21cとの間の部位と、下側辺部において対で並列に設けられる爪係止孔21b間の中間部位には、ホーンスイッチ機構15を取り付けるための取付部21dがそれぞれ形成されている。各取付部21dには、そのホーンスイッチ機構15の取り付けのための取付孔21eが貫通形成されている。そして、この周縁組付部21aの外周縁には、一側面側(エアバッグ22及びパッド24の配列方向の一方側)に折り曲げられる補強リブ21fが周囲の略全体に形成されている。
【0023】
バッグホルダ21に設けた矩形環状の周縁組付部21aの内側は、その周縁組付部21aからバッグホルダ21の一側面側(エアバッグ22及びパッド24の配列方向の一方側)に所定量突出(他側面側では周縁組付部21aから所定量凹設)されてなる略正方形状の台座部21gが構成されている。台座部21gの中心部には円形状の開口部21hが形成されるとともに、該開口部21hの周縁において正方形状の台座部21gの対角線上にそれぞれ1つ合計4つのネジ挿通孔21iが形成されている。台座部21gには、その開口部21hに円柱状をなすインフレータ23の一部が挿入されて取り付けられる。
【0024】
このような本実施形態のバッグホルダ21は、図4に示すように、幅方向中心線L1に対して線対称形状、即ち爪係止孔21b、かしめ用挿通孔21c、ネジ挿通孔21i及び取付部21d等の配置及びそれら個々の形状が中心線L1に対して線対称形状に形成されており、バッグホルダ21の表裏いずれにおいても各孔21b,21c,21i及び取付部21d等が同様に使用可能に構成されている。
【0025】
インフレータ23は、円柱状の本体にフランジ部23aを有し、該フランジ部23aには等角度間隔に4つの取付片23bが同一平面で更に径方向外側に延出されている。各取付片23bには、バッグホルダ21のネジ挿通孔21iに対応するネジ挿通孔23cを有している。インフレータ23は、フランジ部23aから一方側に設けられるガス噴出部23xがバッグ収容空間X側に突出するようにその反対側からバッグホルダ21の開口部21hに挿入され、該開口部21hの周縁部にフランジ部23aが当接されて後述のリングリテーナ25とともに取り付けられる。
【0026】
また、このインフレータ23のフランジ部23aには、各取付片23b間において同一平面でそれぞれ径方向外側に矩形板状に延出される規制片23dが一体に形成されている。詳しくは、インフレータ23がバッグホルダ21に取り付けられた際、各規制片23dは、上下左右に位置する各爪係止孔21bに向かってそれぞれ延び、各爪係止孔21bの内側縁部から開口側に所定量突出する長さに設定されている。つまり、バッグホルダ21の各爪係止孔21bに係止されるパッド24の各係止爪24dの内側面(係止突起24eとは反対側面)に当接又は近接するように各規制片23dが配置されて各爪係止孔21bの開口が塞がれ、各係止爪24dの変位(図5の二点差線で示す位置までの内側への撓み)が規制される。これにより、各係止爪24dの係止が維持されて各爪係止孔21bからの抜けが防止され、パッド24の取付外れが防止されるようになっている。因みに、2つ設けられる下側の係止爪24dにおいては1つの規制片23dが跨るように配置され、その1つの規制片23dにて下側の各係止爪24dの規制が行われている。
【0027】
尚、各規制片23dには、バッグホルダ21の台座部21gと周縁組付部21aとの間の段差に対応する段差部23eが形成されており、各係止爪24dの内側面に当接する各規制片23dの先端部が各爪係止孔21bの周縁上面に載置され、その高さが略同等とされている。この段差部23eは、後述する通常サイズ(A)用のインフレータ23ではガス噴出部23xとは反対側に折り曲げられ(図5参照)、大型サイズ(B)用のインフレータ23ではガス噴出部23x側に折り曲げられ(図6参照)、そのサイズに応じて表裏が選択されるバッグホルダ21にともに対応させている。
【0028】
リングリテーナ25は、インフレータ23のガス噴出部23xが挿入されるバッグホルダ21の開口部21hと同等の円形状の開口部25aを有し、該バッグホルダ21の各ネジ挿通孔21iに挿通する4つの取付ネジ25bを有している。リングリテーナ25には、膨張展開可能に折り畳まれたエアバッグ22の開口部が取り付けられている。エアバッグ22が取着されたリングリテーナ25は、バッグ収容空間X側からバッグホルダ21及びインフレータ23の各ネジ挿通孔21i,23cにその取付ネジ25bを挿通し、挿通後の各取付ネジ25bにナット26が螺着されて、バッグホルダ21にリングリテーナ25を介してエアバッグ22が固定され、また同時にインフレータ23もバッグホルダ21に固定される。
【0029】
因みに、組み付け手順として、エアバッグ22を収容したパッド24をバッグホルダ21に各係止爪24dにて装着し、エアバッグ22の固定のためのリングリテーナ25の取付ネジ25bをバッグホルダ21のネジ挿通孔21iに挿通させておいて、インフレータ23がその取付ネジ25bとナット26との締結にて固定される。そして、このインフレータ23の固定により、該インフレータ23に設けた各規制片23dが係止状態にある各係止爪24dの内側面に当接又は近接して該係止爪24dの変位が規制され、各係止爪24dの爪係止孔21bからの抜けが防止、即ちパッド24の取付外れの防止が図られる。
【0030】
ホーンスイッチ機構15は、本実施形態のステアリングホイール10では3つ備えられるものであり、金属製の固定ピン15aと、接点部材(図示略)を保持する樹脂製の可動装着部15bと、コイルスプリング15cとを備えてなる。ホーンスイッチ機構15は、固定ピン15aに対して可動装着部15bが軸方向に移動可能に組み付けられており、可動装着部15bがバッグホルダ21に設けた取付部21dの取付孔21eに対して所謂スナップフィットにより装着され、固定ピン15aも同様に図2に示すステアリングホイール本体11の芯金12の装着部12bに対して所謂スナップフィットにより装着される。このとき、コイルスプリング15cは、可動装着部15bと芯金12の装着部12bとの間に介在され、可動装着部15bを芯金12から離間するように、即ち可動装着部15bにて保持した接点部材と固定ピン15aとが非接触となるようにバッグホルダ21を通じてエアバッグ装置20全体を支持している。そして、エアバッグ装置20をステアリングホイール本体11に対して傾動させると、少なくとも1つのホーンスイッチ機構15の可動装着部15bがコイルスプリング15cの付勢力に抗して作動し、接点部材がホーンスイッチの一部を構成する固定ピン15aと接触してホーンスイッチがオンする構成となっている。
【0031】
ところで、本実施形態のエアバッグ装置20では、エアバッグ22が通常サイズ(A)か大型サイズ(B)のいずれを使用し、それに伴ってインフレータ23も通常サイズ(A)か大型サイズ(B)のいずれを使用しても、該エアバッグ装置20を構成するバッグホルダ21及びパッド24を同一部品にて対応可能に構成されている。尚、図5では、通常サイズ(A)のものを使用した場合を示し、図6では、大型サイズ(B)のものを使用した場合を示している。
【0032】
即ち、図5に示すように、通常サイズ(A)のエアバッグ22及びインフレータ23を使用する場合、バッグホルダ21の台座部21gがバッグ収容空間X側に突出するように該バッグホルダ21とパッド24とが固定される。これにより、バッグ収容空間Xがその通常サイズ(A)に合わせて狭くなるため、エアバッグ22とパッド24の外皮部24aとの隙間が適正となる。
【0033】
一方、図6に示すように、大型サイズ(B)のエアバッグ22及びインフレータ23を使用する場合、バッグホルダ21の台座部21gがバッグ収容空間Xとは反対側に突出するように(台座部21gがバッグ収容空間X側に凹設となるように)該バッグホルダ21とパッド24とが固定される。これにより、バッグ収容空間Xがその大型サイズ(B)に合わせて広くなるため、この場合においてもエアバッグ22とパッド24の外皮部24aとの隙間が適正となる。
【0034】
このようにエアバッグ22及びインフレータ23のサイズに合わせてバッグホルダ21の装着する向きを変えるだけで、バッグホルダ21及びパッド24に同一部品を用いながらも、エアバッグ22とパッド24の外皮部24aとの隙間をいずれのサイズを用いた場合でもそれぞれ適正とすることが可能とされている。
【0035】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、エアバッグ装置20のベースとなるバッグホルダ21には、エアバッグ22とインフレータ23とが組み付けられ、そのエアバッグ22を覆うパッド24が係止爪24dの係止にて組み付けられている。そして、インフレータ23には、バッグホルダ21と係止状態にあるパッド24の係止爪24dの変位を規制する規制片23dが一体に設けられている。つまり、部品点数を増加することなくインフレータ23に一体に設けられるこの規制片23dにてパッド24の係止爪24dの変位が規制されてバッグホルダ21との係止外れが防止されることで、エアバッグ22のカバー部材であるパッド24の取付外れを確実に防止することができる。
【0036】
(2)本実施形態では、パッド24の係止爪24dは、外側に係止突起24eを有してバッグホルダ21の周縁組付部21aの爪係止孔21bに挿通されて係止され、その内側であるバッグホルダ21の中央部にインフレータ23が組み付けられている。インフレータ23の規制片23dは、外側に位置するパッド24の係止爪24dに向かって延び、該係止爪24dの内側面に当接又は近接するように形成されている。つまり、インフレータ23の規制片23dをパッド24の係止爪24dに向けて延ばすだけの単純な形状、本実施形態のように矩形板状にて構成でき、規制片23dの作製の容易化、及びインフレータ23の小型軽量化に寄与することができる。
【0037】
(3)本実施形態では、パッド24に略矩形環状に立設される収容壁部24bの各辺の先端面それぞれに係止爪24dが形成され、インフレータ23の規制片23dは、各係止爪24dの全部を対象に設けられている。つまり、全部の係止爪24dの係止外れが防止されるので、より確実にパッド24の取付外れを防止することができる。
【0038】
(4)本実施形態では、バッグホルダ21の台座部21gと周縁組付部21aとの間に段差を設け、エアバッグ22のサイズに応じて表裏が選択されるバッグホルダ21を用いているため、通常サイズ(A)用と大型サイズ(B)用のインフレータ23とで規制片23dに設ける段差部23eの折り曲げ方向を変えることで、その規制片23dによる係止爪24dの変位の規制がバッグホルダ21の表裏いずれの組み付け時にも行われるよう構成されている。つまり、バッグホルダ21が表裏いずれの組み付けがなされても係止爪24dの係止外れが防止、即ちパッド24の取付外れを防止することができる。
【0039】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、図5及び図6に示すように、通常サイズ(A)用と大型サイズ(B)用のインフレータ23とで各規制片23dの段差部23eの折り曲げ方向を変えることで、エアバッグ22のサイズに応じて表裏が選択されるバッグホルダ21に対応したが、これに限らず適宜変更してもよい。
【0040】
例えば図7及び図8に示すように、インフレータ23に設ける各規制片23dを平板状とするのに対し、バッグホルダ21の段差部分に爪係止孔21bと連通するスリット部21jを形成する。そして、通常サイズ(A)のエアバッグ22の使用時には(図7)、インフレータ23の規制片23dをそのスリット部21j内に配置して係止爪24dの内側面に当接又は近接させ、大型サイズ(B)のエアバッグ22の使用時には(図8)、スリット部21jを使用せずにインフレータ23の規制片23dを係止爪24dの内側面に当接又は近接させる。このようにしても、規制片23dによる係止爪24dの変位の規制がバッグホルダ21の表裏いずれの組み付け時にも行うことができる。
【0041】
・上記実施形態では、インフレータ23に取付片23bとは別途、規制片23dを設ける構成としたが、例えば図9に示すように、インフレータ23のバッグホルダ21への取付角度を変更し、取付片23bを係止爪24dの変位を規制する規制片と兼用する構成としてもよい。このようにすれば、インフレータ23の構成の簡素化を図ることができる。
【0042】
・上記実施形態では、パッド24の係止爪24dは外側に係止突起24eを有し、その係止爪24dの内側面にインフレータ23の規制片23dを当接又は近接する構成としたが、パッド24の係止爪24dの形状はこれに限らず、例えば内側に係止突起24eを有する係止爪24dの構成とした場合、インフレータ23の規制片23dはその係止爪24dの外側面から当接又は近接するように形成して対応することとなる。
【0043】
・上記実施形態では、全部の係止爪24dを規制の対象としたが、少なくとも1つ、又は少なくとも対向する1組の係止爪24dをその規制の対象としてもよく、この場合、規制片23dを作製する数が少なく済む。
【0044】
・上記実施形態では、エアバッグ22のサイズに応じて表裏が選択されるバッグホルダ21を用いたが、表裏選択のないバッグホルダに適用してもよい。
・上記実施形態では、バッグホルダ21にプレス加工により作製したものを用いたが、これに限らず、例えばダイカスト成形といったプレス加工以外で作製したものを用いてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、バッグホルダ21にホーンスイッチ機構15を組み付け、そのホーンスイッチ機構15をステアリングホイール本体11(芯金12)に直接装着する構成としたが、この構成に限らず、例えばステアリングホイール本体11(芯金12)への装着用に構成した中間部材を用い、バッグホルダ21に組み付けられるホーンスイッチ機構15をその中間部材に対して組み付ける構成としてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、ホーンスイッチ機構15を3つ用いる構成であったが、数はこれに限らず、例えば2つで構成してもよい。また、ホーンスイッチ機構15の組み付けにネジ及びナット等の締付部材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態におけるステアリングホイールの正面図である。
【図2】ステアリングホイール本体の一部を示す正面図である。
【図3】エアバッグ装置の背面側からの斜視図である。
【図4】エアバッグ装置の背面側からの分解斜視図である。
【図5】通常サイズのエアバッグ使用時のエアバッグ装置の断面図である。
【図6】大型サイズのエアバッグ使用時のエアバッグ装置の断面図である。
【図7】別例における通常サイズのエアバッグ使用時のエアバッグ装置の断面図である。
【図8】別例における大型サイズのエアバッグ使用時のエアバッグ装置の断面図である。
【図9】別例におけるエアバッグ装置の背面側からの斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10…ステアリングホイール、11…ステアリングホイール本体、20…エアバッグ装置、21…バッグホルダ、21a…周縁組付部、21b…爪係止孔、21g…台座部、22…エアバッグ、23…インフレータ、23b…取付片(規制部)、23d…規制片(規制部)、24…パッド、24b…収容壁部、24d…係止爪、24e…係止突起、X…バッグ収容空間、L1…幅方向中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール本体にエアバッグ装置が組み付けられてなるエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
前記エアバッグ装置は、前記ステアリングホイール本体側への組み付けのベースとなるバッグホルダに対し、エアバッグと該エアバッグを膨張展開させるインフレータとを組み付けるとともに該エアバッグを覆うパッドを係止爪の係止にて組み付け、前記エアバッグを前記バッグホルダと前記パッドで形成するバッグ収容空間に収容して構成されるものであって、
前記インフレータには、前記バッグホルダと係止状態にある前記パッドに設けた係止爪の変位を規制する規制部が一体に設けられていることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
前記パッドの係止爪は、外側に係止突起を有し、前記バッグホルダの周縁組付部に設けた爪係止孔に挿通されて係止されるのに対し、前記インフレータは、前記バッグホルダの中央部に組み付けられ、
前記インフレータの規制部は、外側に位置する前記係止爪に向かって延び、前記係止爪の内側面に当接又は近接するように形成されていることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
前記パッドには、略矩形環状に立設される収容壁部の各辺の先端面それぞれに前記係止爪が形成され、
前記インフレータの規制部は、前記係止爪の全部を対象に設けられていることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
前記インフレータは、前記バッグホルダに組み付けるための取付片を有し、その取付片が前記規制部を兼用してなることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
前記バッグホルダは、前記パッド及び前記ステアリングホイール本体側との各組付部を該ホルダの幅方向中心線に対して線対称として表裏いずれにおいても組み付け可能に構成し、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定する台座部を前記組付部よりも前記エアバッグ及び前記パッドの配列方向の一方側に突出させ前記バッグ収容空間側に突出又は凹設となるようにその突出向きが選択可能に構成されるものであり、
前記インフレータの規制部による前記係止爪の変位の規制が、前記バッグホルダの表裏いずれの組み付け時にも行われるよう構成されていることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−69935(P2010−69935A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236810(P2008−236810)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】