説明

エアバッグ装置

【課題】エアバッグ本体が膨張せずに乗員の頭部がインストルメントパネル等に衝突しても、その衝撃力を十分に吸収して乗員の頭部を安全に保護することが可能な助手席用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、エアバッグ本体(3)とインフレータ(4)とを有するエアバッグモジュール(1)を、取付具(2)を介してリインフォースメント(7)に取り付けたエアバッグ装置(10,30)であって、前記取付具(2)は、前記エアバッグモジュール(1)の収容ケース(5)と、前記エアバッグモジュール(1)及び前記収容ケース(5)を支持して固定する脚部(6a,36a)を有したブラケット(6,36)と、前記収容ケース(5)の底部から突出した突出部材(8,38)とを備えている。また、前記ブラケット(6,36)の前記脚部(6a,36a)は傾斜部(6d,36d)を有し、前記突出部材(8,38)は、前記収容ケース(5)が衝撃を受けて前記ブラケット(6,36)を変形させるときに、前記脚部(6a,36a)の前記傾斜部(6d,36d)を押圧して前記ブラケット(6,36)の変形を補助するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ本体とインフレータとを有するエアバッグモジュールを自動車等の車両に取り付けたエアバッグ装置に関し、特に、エアバッグモジュールを助手席前方のインストルメントパネル内に取り付けた助手席用のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車等の車両が衝突した際に乗員を保護する安全装置の1つとして、ガスを発生させるインフレータと、インフレータで発生したガスにより膨張するエアバッグ本体とを有するエアバッグモジュールが広く普及している。一般に、エアバッグモジュールは、車両が衝突により大きな衝撃を受けたときに、その衝撃を感知してインフレータにて高圧ガスを発生させてエアバッグ本体内に導入することにより、エアバッグ本体を瞬時に膨張展開させる。これにより、乗員をエアバッグ本体で緩衝支持して、人体に加わる衝撃力を大幅に緩和することができる。
【0003】
このような乗員を保護するエアバッグモジュールは、一般に自動車の運転席に標準装備されている。また近年では、助手席用のエアバッグモジュール、側面衝突等に対応するためのカーテンエアバッグモジュール、運転席で乗員の膝を保護するためのニーエアバッグモジュール等が自動車に搭載されるようになってきている。
【0004】
このような各種のエアバッグモジュールについては、その品質や安全性等を高めるために、様々な改良や開発が進められている。例えば特開2005−96560号公報(特許文献1)においては、助手席用のエアバッグモジュールを容易に着脱して作業性の向上を図ることが可能な助手席用エアバッグモジュールに関する発明が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載されている助手席用エアバッグモジュール1は、図7に示したように、エアバッグ本体42と、折り畳まれたエアバッグ本体42を収容する収容ケース43と、図示しないインフレータを収容するインフレータ収容部44と、インフレータ収納部44に結合し、且つステアリングメンバー(リインフォースメント)57にボルト58により締結支持されるブラケット45とを有している。
【0006】
また、収容ケース43の前後の上側辺部には複数のクランプ54が所定間隔で形成されており、このクランプ54には、細帯板状のフック50に複数の爪51が所定間隔で形成された部材が保持されている。
【0007】
一方、合成樹脂製のインストルメントパネル47の下面(裏面)には、エアバッグモジュール41を囲繞するように周壁部55が垂設されている。また、この周壁部55の下端部に複数の貫通孔49が、エアバッグモジュール41に設けた複数の爪51に対向するように形成されてなる。なお、インストルメントパネル47の裏面には、エアバッグ本体42の膨張展開時にインストルメントパネル47の開裂を促すテアライン56が形成されている。
【0008】
このような前記特許文献1の助手席用エアバッグモジュール41をインストルメントパネル47に取り付ける場合には、インストルメントパネル47の裏面側からエアバッグモジュール41を持ち上げて周壁部55の間に挿し込む。これにより、周壁部55の下端部に形成された複数の貫通孔49に、エアバッグモジュール41に設けた複数の爪51が係止されるため、エアバッグモジュール41をインストルメントパネル47の裏面に容易に取り付けることができる。
【0009】
更にその後、エアバッグモジュール41のブラケット45を、ステアリングメンバー57にボルト58でしっかりと固定することにより、エアバッグモジュール41の取付状態を安定して維持することができる。
【0010】
また、上述のようにインストルメントパネル47の裏面に取り付けたエアバッグモジュール41を取り外す場合には、ボルト58を外してブラケット45とステアリングメンバー57とを分離した後、エアバッグモジュール41を下から持ち上げる。これにより、周壁部55の貫通孔49に係止されている複数の爪51とフック50とが、エアバッグモジュール41のクランプ54から離脱して、エアバッグモジュール41を、インストルメントパネル47の裏面から容易に取り外すことができる。
【0011】
一方、例えば特開平9−123863号公報(特許文献2)においては、乗員の脚部を保護するニーエアバッグモジュールに関する発明が開示されている。この特許文献2に記載されているニーエアバッグモジュール67は、図8に示したように、車両のインストルメントパネル61の下端に一体的に取り付けられたアンダーカバー62の内側で、乗員の左右膝部の前方となる位置にそれぞれ配置されている。このニーエアバッグモジュール67は、一対の屈曲した腕部75を備えたブラケット76によって、フロントデッキクロスメンバー70に連結されて固定されている。
【0012】
従って、前記特許文献2のニーエアバッグモジュール67は、車両が衝突したときに、左右のニーエアバッグモジュール67のニーエアバッグ本体72が膨張してアンダーカバー62のリッド69を開裂し、図8(a)に2点鎖線で示すように展開する。このとき、ニーエアバッグ本体72は、予め設定したとおりの方向及び形状に展開するため、展開したニーエアバッグ本体72に乗員の膝部が当ることにより、膝部への衝撃を緩和させることができる。
【0013】
また、前記特許文献2において、例えばニーエアバッグ本体72では、乗員の膝部への衝撃を十分に受け止めきれない場合には、乗員の膝部からアンダーカバー62へ衝撃力が作用し、アンダーカバー62が前方へ押し込まれる。その結果、左右の取付けブラケット76の屈曲した各腕部75が折れ曲がる。このように腕部75が折れ曲がることにより、衝撃エネルギーの一部をブラケット76で吸収することができるため、乗員の膝部に大きな衝撃力が作用することを防いで運転者を確実に保護することができる。
【特許文献1】特開2005−96560号公報
【特許文献2】特開平9−123863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
助手席用のエアバッグモジュールにおいて、例えば車両が衝突により衝撃を受けたときに、エアバッグモジュールが感知した衝撃力の大きさがインフレータを作動させるほど大きくなかった場合(例えば、車両が低速走行時に衝突した場合)、エアバッグ本体は膨張しないものの、図6に示したように、助手席に座っている乗員21の身体は、衝突で生じた慣性力により前方に押し出される。その結果、乗員21の頭部22は、助手席用エアバッグモジュール23が取り付けられている部分のインストルメントパネル24に衝突してしまう。
【0015】
このとき、例えばエアバッグモジュール23を収容している収容ケース等が剛体で構成されている場合には、助手席に座っている乗員21は頭部22に強い衝撃力を受けてしまう恐れがあった。このため、例えば前記特許文献1に記載されているような従来の助手席用エアバッグモジュール41は、図7に示したように、エアバッグモジュール41の収容ケース43に複数の孔部46を穿設しておき、収容ケース43がその上方側から力を受けたときに、収容ケース43に座屈等の変形を生じさせて、その力を吸収できるように構成されている。
【0016】
これにより、前述のようにエアバッグ本体が膨張せずに、助手席に座っていた乗員の頭部がインストルメントパネルに衝突したときでも、収容ケース43が座屈することによってその衝撃エネルギーの一部を吸収して、乗員の頭部が受ける衝撃力を緩和することができる。しかしながら、エアバッグ本体が膨張せずに乗員の頭部がインストルメントパネルに激しく衝突した場合等では、乗員の頭部が衝突した際に生じる衝撃エネルギーを、上述のような複数の孔部が穿設された収容ケースのみによって完全に吸収することは難しい。このため、乗員の安全性をより一層高めるためには、衝撃エネルギーを更に効果的に吸収することが可能なエアバッグモジュールやエアバッグ装置の開発が望まれていた。
【0017】
そこで、助手席用エアバッグにおいて、乗員がインストルメントパネルに衝突した際に、より大きな衝撃エネルギーを吸収できるようにエアバッグモジュールを取り付けるために、エアバッグモジュールの収容ケース(又はインフレータ収納部)と車体のリインフォースメントとを連結するブラケットとして、例えば前記特許文献2に記載のニーエアバッグモジュール67に採用されているブラケット76を用いることが考えられる。
【0018】
この特許文献2のニーエアバッグモジュール67に用いられているブラケット76は、前述のように一対の屈曲した腕部75を備えているため、ブラケット76に衝撃力が作用したときに屈曲腕部75が更に折れ曲がることにより、ブラケット76で衝撃エネルギーの一部を吸収することが可能となる。従って、このようなブラケット76を用いて、助手席用エアバッグモジュールを車体のリインフォースメントとに取り付けることによって、乗員がインストルメントパネルに衝突したときの衝撃エネルギーを大きく吸収し、乗員の頭部が受ける衝撃力をより緩和させることができると考えられる。
【0019】
しかしながら、このように助手席用エアバッグモジュールに特許文献2のブラケット76が用いられた場合には、以下のような問題が生じることも考えられた。即ち、例えばエアバッグモジュールは大きな衝撃を感知したときに、エアバッグ本体を膨張させてインストルメントパネルを開裂し、乗員とインストルメントパネルとの間にエアバッグ本体を展開させる。このとき、助手席用エアバッグモジュールに特許文献2のブラケット76が用いられる場合、エアバッグ本体の膨張によりインストルメントパネルを開裂させる力の一部がブラケット76により吸収される恐れがある。
【0020】
そこで、ブラケットの板厚を厚くして強度を上げることや、インストルメントパネル自体の衝撃吸収性の向上を図ることによって、インストルメントパネルを開裂させる際の問題を解決することが可能となるものの、このような対策を行った場合には、車体重量が増加し、また、インストルメントパネル構造の複雑化を招いてチューニングが煩雑化する等の問題があった。
【0021】
本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、その具体的な目的は、エアバッグ本体が膨張せずに乗員の頭部がインストルメントパネル等に衝突しても、その衝撃力を十分に吸収して乗員の頭部を安全に保護することが可能であり、しかも、助手席用エアバッグモジュールが大きな衝撃を感知したときには、エアバッグ本体の効率的な膨張展開が損なわれることがなく、更には軽量化が図られた助手席用エアバッグ装置を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明により提供される助手席用エアバッグ装置は、基本的な構成として、エアバッグ本体と、前記エアバッグ本体を膨張させるガスを発生するインフレータとを有する助手席用のエアバッグモジュールを、取付具を介して車体のリインフォースメントに取り付けたエアバッグ装置であって、前記取付具は、前記エアバッグモジュールを収容する収容ケースと、前記エアバッグモジュール及び前記収容ケースを支持して前記リインフォースメントに固定する一対の脚部を有したブラケットと、前記収容ケースの底部から突出した突出部材とを備え、前記ブラケットの前記脚部は、前記脚部間の間隔が前記リインフォースメント側に向けて漸減又は漸増するように傾斜する傾斜部を有し、前記突出部材は、前記収容ケースが衝撃を受けて前記リインフォースメントに近づくように前記ブラケットを変形させるときに、前記脚部の前記傾斜部を押圧して前記ブラケットの変形を補助するように構成されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係るエアバッグ装置において、前記傾斜部は、前記脚部間の間隔が前記リインフォースメント側に向けて漸減するように形成され、前記インフレータは、前記収容ケースの底部から前記インフレータの一部を前記脚部間に突出させた状態で前記ブラケットにより支持され、前記インフレータの前記収容ケース底部から突出した部分が前記突出部材を構成していることが好ましい。
更に、本発明では、前記傾斜部が前記脚部の傾斜角度を変える屈曲部を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置では、助手席用のエアバッグモジュールを車体のリインフォースメントに取り付ける取付具が、収容ケースと、一対の脚部を有したブラケットと、収容ケースから突出した突出部材とを備えている。また、ブラケットの脚部は傾斜部を有しており、突出部材は、ブラケットの変形時に脚部の傾斜部を押圧することによってブラケットの変形を補助するように構成されている。
【0025】
従って、本発明のエアバッグ装置によれば、例えば車両の衝突時にエアバッグ本体が膨張せずに乗員の頭部がインストルメントパネル等に衝突した場合に、エアバッグ装置の取付部における収容ケース及びブラケットで衝撃を受けて、収容ケースが車両のリインフォースメントに近づくようにブラケットを変形させる。それとともに、収容ケースの底部から突出した突出部材が脚部の傾斜部を押圧してブラケットの変形を補助する。
【0026】
これにより、乗員が衝突したときに生じる衝撃エネルギーを、従来のような収容ケースの座屈だけでなく、ブラケットの変形、及びブラケットの変形の補助により十分に吸収することができるため、衝突時に乗員が受ける衝撃力を小さくして乗員を効果的に保護することができる。
【0027】
特に、本発明では、例えばエアバッグ本体の膨張によりインストルメントパネルを開裂させる力の一部がブラケットにより吸収されないようにするために、ブラケットの強度を高めた場合でも、前述のように収容ケースの底部から突出した突出部材がブラケットの変形を補助することができるため、ブラケットの変形による衝撃エネルギーの吸収を確実に行うことができる。
【0028】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、脚部の傾斜部がリインフォースメント側に向けて漸減するように形成されている。それとともに、インフレータが、収容ケースの底部からインフレータの一部を脚部間に突出させた状態で支持され、その突出した部分がブラケットの変形を補助する突出部材を構成している。これにより、乗員が衝突したときの衝撃エネルギーをブラケットの変形によって吸収可能な本発明のエアバッグ装置を、簡単な構造で安価に構成することができ、更には、ブラケットの板厚を過剰に厚くする必要がないため、エアバッグ装置の軽量化も図ることができる。
【0029】
更に本発明では、脚部の傾斜部の傾斜角度を変える屈曲部を有している。これにより、ブラケットの脚部が変形するときに、突出部材によるブラケットの変形の補助をより効果的に行うことができるとともに、ブラケットにおいて衝撃エネルギーの吸収可能なストロークをより長く確保することが可能となる。従って、乗員の衝突時に、より大きな衝撃エネルギーをより確実に吸収することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る助手席用エアバッグ装置について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0031】
図1は、本実施例のエアバッグ装置をインストルメントパネルの裏面側に取り付けたときの状態を示した断面図である。また、図2は、同エアバッグ装置を示した正面図であり、図3は、同エアバッグ装置の各構成部材を分解して示した分解図である。
【0032】
本実施例におけるエアバッグ装置10は、助手席用エアバッグモジュール1と、このエアバッグモジュール1を車体のリインフォースメント7に取り付ける取付具2とを備えている。また、前記助手席用エアバッグモジュール1は、折り畳まれたエアバッグ本体3と、エアバッグ本体3を膨張させるためのガスを発生するインフレータ4とを有している。更に、前記取付具2は、エアバッグモジュール1を収容する収容ケース5と、エアバッグモジュール1及び収容ケース5を支持する第1ブラケット6と、収容ケース5の底部から突出した突出部材8となるインフレータ4の一部とにより構成されている。
【0033】
また本実施例では、このような助手席用エアバッグモジュール1と取付具2とは、それぞれの各構成部材がひとまとめにされて一体的に組み立てられることにより、図2に示したようなエアバッグ装置10を形成することができる。また、このエアバッグ装置10は、後述するように、車両のインストルメントパネル11の裏面側に組み付けられるとともに、車体のリインフォースメント7に固定される。
【0034】
本実施例におけるエアバッグ装置10は、図3に示したような、エアバッグ本体3、収容ケース5、及びインフレータ4が、4つの脚部9aを有するリテーナ9と第1ブラケット6との間に挟持固定されて一体的に組み立てられている。ここで、エアバッグ装置10を構成する各構成部材について図3を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
前記エアバッグ本体3は、所定の手順で折り畳まれた袋体が破断可能なラッピングシートによって包まれることによって形成されている。このエアバッグ本体3の下面部にはインフレータ4を挿入可能な開口部3aが設けられており、この開口部3aが形成されている部分にリテーナ9がエアバッグ本体3の内部から取り付けられる。このとき、リテーナ9は、リテーナ9の脚部9aがエアバッグ本体3の下面から下方に突出するようにして取り付けられる。
【0036】
前記収容ケース5は、上面側が開口した箱状に形成されている。この収容ケース5の下壁部には、インフレータ4の上半部を挿入可能な開口部5aが設けられており、開口部5aの周辺には、リテーナ9の4つの脚部を挿通可能な図示しない4つの小孔が設けられている。また、本実施例の収容ケース5は、その下壁部及び前後壁部に複数の貫通孔5bが形成されている。これにより、例えば収容ケース5がその上方側から力を受けたときに、前後壁部や下壁部を容易に座屈させることが可能となる。なお、本実施例において、収容ケース5の下壁部、前後壁部、及び左右壁部とは、エアバッグモジュール1を車両に取り付けたときに車両の下側を向く壁部、前後側を向く壁部、及び左右側を向く壁部をいう。
【0037】
また、収容ケース5の前後壁部には、フック部材12が収容ケース5の幅方向に沿って取り付けられている。このフック部材12は、収容ケース5の前壁部又は後壁部に密着して配される平板部12aと、平板部12aの上端縁に沿って所定の間隔を開けて配される複数のフック部12bと、平板部12aの下端縁に沿って、平板部12aに対して直角に配される補強部12cとを有している。
【0038】
またフック部材12は、平板部12aの左右側縁が収容ケース5の左右壁部に溶接等により固定されることによって、収容ケース5に一体的に取り付けられている。更に、収容ケース5の左右壁部には、エアバッグモジュール1の車体への取付状態を安定させるために、車体の構造部材と連結させるための第2ブラケット13がそれぞれ溶接等により固着されている。
【0039】
前記インフレータ4は、上半球部4aと、柱状部4bと、下半球部4cとからなる略球状の形態を有している。また、このインフレータ4は、柱状部4bの下部に、上面視で略正方形状のフランジ4dが形成されており、このフランジ4dの四隅には、リテーナ9の4つの脚部を挿通可能な小孔4eが設けられている。更に、インフレータ4には、制御ユニット等と接続する図示しないコネクタが取り付けられている。
【0040】
前記第1ブラケット6は、左右対称の一対の脚部6aと、左右の脚部6aの一端に設けられた4つの固定部6bと、脚部6aの他端側で左右の脚部を連結する股部6cとを有している。この第1ブラケット6の左右脚部6aには、脚部間の間隔が股部6cに向けて漸減するように形成された傾斜部6dと、傾斜部6dの傾斜角度を変える屈曲部6eとが形成されている。
【0041】
また、第1ブラケット6の4つの固定部6bには、リテーナ9の4つの脚部9aを挿通可能な小孔6fがそれぞれ設けられており、股部に6cは、車体のリインフォースメント7に固定するときにボルト15を挿通するボルト孔6gが設けられている。更に、この第1ブラケット6は、例えばエアバッグ本体3を膨張させる場合に、膨張するエアバッグ本体3がインストルメントパネル11を開裂するときに生じる衝撃力を第1ブラケット6が受けても変形しないような所定の強度で形成されている。
【0042】
これらのエアバッグ本体3、収容ケース5、インフレータ4、及び第1ブラケット6は、4つの脚部9aを有するリテーナ9を用いて一体に組み立てられている。その組立手順は、先ず、折り畳まれたエアバッグ本体3の内部にリテーナ9を、リテーナ9の各脚部がエアバッグ本体3の下面から突出するようにして取り付ける。なお、このリテーナ9は、エアバッグ本体3が縫製等により作製される際にエアバッグ本体3の内部に取り付けられることが好ましい。
【0043】
次に、エアバッグ本体3の内部に取り付けたリテーナ9の4つの脚部9aに、収容ケース5と、インフレータ4と、第1ブラケット6とを順番に取り付けた後、リテーナ9の4つの脚部9aにナット14を取り付けて締め付ける。これによって、図2に示したようなエアバッグモジュール1と取付具2を一体に組み立てたエアバッグ装置10を得ることができる。
【0044】
このとき、助手席用エアバッグモジュール1を構成するインフレータ4は、その下半球部4cが収容ケース5の底部から突出した状態で固定されており、この収容ケース5の底部から突出したインフレータ4の下半球部4cが、本実施例のエアバッグ装置10における突出部材8として機能する。
【0045】
次に、このような本実施例のエアバッグ装置10を、インストルメントパネル11の裏面側に装着する方法について説明する。なお、図1に示したように、エアバッグ装置10が装着されるインストルメントパネル11の裏面には、四角筒形状の周壁部11aが突設されており、この周壁部11aの下部には収容ケース5に設けたフック部材12のフック部12bを係止可能な複数の係止孔11bが形成されている。また、このインストルメントパネル11の裏面には、エアバッグ本体3を膨張させるときにインストルメントパネル11を開裂し易くするための薄肉溝からなるテアライン11cが形成されている。
【0046】
先ず、インストルメントパネル11裏面の周壁部11aに、本実施例のエアバッグ装置10を持ち上げるようにして挿し込む。このとき、インストルメントパネル11の周壁部11aに形成された複数の係止孔11bに、収容ケース5に設けたフック部材12のフック部12bを引っ掛けて係止することにより、収容ケース5をインストルメントパネル11裏面の所定位置に保持することができる。
【0047】
続いて、エアバッグ装置10の第1ブラケット6と車体のリインフォースメント7に設けた固定部7aの位置を合わせて、ボルト15により締結する。これにより、本実施例のエアバッグ装置10を、インストルメントパネル11の裏面に簡単な取付け作業で容易に取り付けることができる。
【0048】
次に、このように本実施例のエアバッグ装置10がインストルメントパネル11と車体のリインフォースメント7とに固定されている場合において、車両が衝突してもエアバッグ本体3が膨張しなかったときの衝撃エネルギーの吸収について、図4を参照しながら説明する。
【0049】
例えば、車両が衝突したときに、その衝撃力が所定の大きさよりも小さくてエアバッグ本体3が膨張しなかった場合、乗員21の頭部22がインストルメントパネル11に強く衝突する(図6を参考)。このとき、インストルメントパネル11のみでは、乗員21の頭部22が衝突したときの衝撃エネルギーを吸収することができず、図4(a)に示したように、乗員の頭部22がエアバッグ装置10の上面に衝突する。
【0050】
このように乗員の頭部22がエアバッグ装置10に衝突すると、その衝撃エネルギーがエアバッグ本体3を介して収容ケース5に伝わる。このとき、収容ケース5の下壁部及び前後壁部に複数の孔部5bが形成されているため、図4(b)に示したように、収容ケース5の前後壁部、更には収容ケース5の下壁部が座屈し始めて、衝撃エネルギーの一部を収容ケース5によって吸収することができる。
【0051】
次に、収容ケース5の座屈では吸収されなかった衝撃エネルギーは、第1ブラケット6に伝わる。このとき、本実施例における第1ブラケット6の脚部6aは傾斜部6dを有しているため、図4(c)に示したように、第1ブラケット6の脚部6aは脚部6a間の間隔が開くように変形し、この脚部6aの変形により衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0052】
更に、このような第1ブラケット6の脚部6aの変形により、収容ケース5が車体のリインフォースメント7に近づくと、図4(d)に示したように、突出部材8(即ち、インフレータ4の下半球部4c)が第1ブラケット6の脚部6aにぶつかって、脚部6aの傾斜部6dを押圧する。これにより、その脚部6aの変形を突出部材8が補助することができるため、脚部6aの変形による衝撃エネルギーの吸収効果を高めることができる。これにより、第1ブラケット6が、前述のように所定の強度で形成されていても、衝撃エネルギーの吸収を確実に行うことができる。
【0053】
このように本実施例のエアバッグ装置10においては、乗員の頭部22が衝突したときの衝撃エネルギーを、収容ケース5の座屈、第1ブラケット6の変形、及び第1ブラケット6の変形の補助によって十分に吸収することができるため、乗員が受ける衝撃力を小さくして乗員を効果的に保護し、乗員の安全を確保することができる。
【0054】
特に本実施例では、第1ブラケット6の傾斜部6dに屈曲部6eが形成され、この屈曲部6eを挟んで傾斜部6dの傾斜角度を変えている。これにより、エアバッグ装置10において、屈曲部6eよりも収容ケース5側の脚部6aの傾斜部6dを、突出部材8(インフレータ4の下半球部4c)に近い位置に配することができる。これにより、第1ブラケット6の脚部6aが変形するときに、突出部材8がすぐに脚部6aの傾斜部6dにぶつかって脚部6aの傾斜部6dを押圧するため、突出部材8による脚部変形の補助をより効果的に行うことができる。
【0055】
しかも、屈曲部6eを挟んで傾斜部6dの傾斜角度を変えることにより、屈曲部6eよりもリインフォースメント7側の傾斜部6dの長さを長くすることができるため、衝撃エネルギーの吸収可能なストロークをより長く確保することが可能となる。これによって、より大きな衝撃エネルギーを、第1ブラケット6の脚部6aで確実に吸収することができる。
【0056】
なお、本発明のエアバッグ装置は、上述の実施例の形態に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0057】
例えば、前記実施例において、第1ブラケット6の脚部6aは、脚部間の間隔が股部6cに向けて漸減するように形成された傾斜部6dを有している。また、第1ブラケット6の変形時にその変形を補助する突出部材8は、インフレータ4の下半球部4cにより構成されている。しかしながら、本発明では、エアバッグ装置を図5に示したような形態で構成することも可能である。なお、図5において、前記実施例と同様の構成を有する部材については、同じ符号を用いて表しており、それによってその部材の説明を省略することとする。
【0058】
即ち、この図5に示したエアバッグ装置30において、取付具32の第1ブラケット36は、左右対称の一対の脚部36aと、左右の脚部36aの一端側で左右の脚部36aを連結する股部36bと、脚部36bの他端に設けられた2つの固定端部36cとを有している。この第1ブラケット36の左右脚部36aには、脚部間の間隔が固定端部36c側に向けて漸増するように形成された傾斜部36dと、傾斜部36dの傾斜角度を変える屈曲部36eとが形成されている。また、第1ブラケット36の股部36bには、リテーナ9の4つの脚部9aを挿通可能な図示しない小孔が設けられており、2つの固定端部36cには、ボルトを挿通するボルト孔36gがそれぞれ設けられている。
【0059】
更に、図5に示したエアバッグ装置30では、第1ブラケット36の変形時にその変形を補助する突出部材38が、収容ケース5の底部に突設された2つの突起部38aにより構成され、インフレータ4とは別個に形成されている。
【0060】
このような構成を有するエアバッグ装置30をインストルメントパネル11の裏面側に取り付けることによっても、前記実施例と同様に、乗員の頭部がインストルメントパネに衝突した場合に、その衝撃エネルギーを、収容ケース5の座屈、第1ブラケット36の変形、及び第1ブラケット36の変形の補助によって十分に吸収することができる。このため、衝突時に乗員が受ける衝撃力を小さくして乗員の安全を確保することができる。
【0061】
なお、以上の説明において、取付具2,32及び助手席用エアバッグモジュール1の各構成部材は、リテーナ9を用いることにより、ひとまとめにして組み立てられているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、例えば取付具と助手席用エアバッグモジュールとを別々に組み立てた後に、それらを更に組み立てることによって、インストルメントパネルの裏面側に取り付け可能なエアバッグ装置を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、自動車等の車両に助手席用エアバッグモジュールを取り付ける取付具として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のエアバッグ装置をインストルメントパネルの裏面側に取り付けたときの状態を示した断面図である。
【図2】同エアバッグ装置を模式的に示した正面図である。
【図3】同エアバッグ装置の各構成部材を分解して示した分解図である。
【図4】同エアバッグ装置により衝撃エネルギーを吸収する様子を説明した説明図である。
【図5】本発明の別の形態に係るエアバッグ装置を模式的に示した正面図である。
【図6】慣性力を受けて乗員の頭部がインストルメントパネルに衝突する様子を説明した説明図である。
【図7】従来の助手席用エアバッグモジュールをインストルメントパネルの裏面側に取り付けた状態を模式的に示した断面図である。
【図8】(a)は、従来のニーエアバッグモジュールの取り付け状態を模式的に示した断面図であり、(b)は、ニーエアバッグモジュールの要部を拡大して模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 助手席用エアバッグモジュール
2 取付具
3 エアバッグ本体
3a 開口部
4 インフレータ
4a 上半球部
4b 柱状部
4c 下半球部
4d フランジ
4e 小孔
5 収容ケース
5a 開口部
5b 貫通孔
6 第1ブラケット
6a 脚部
6b 固定部
6c 股部
6d 傾斜部
6e 屈曲部
6f 小孔
6g ボルト孔
7 リインフォースメント
7a 固定部
8 突出部材
9 リテーナ
9a 脚部
10 エアバッグ装置
11 インストルメントパネル
11a 周壁部
11b 係止孔
11c テアライン
12 フック部材
12a 平板部
12b フック部
12c 補強部
13 第2ブラケット
14 ナット
15 ボルト
21 乗員
22 頭部
23 エアバッグモジュール
24 インストルメントパネル
30 エアバッグ装置
32 取付具
36 第1ブラケット
36a 脚部
36b 股部
36c 固定端部
36d 傾斜部
36e 屈曲部
36g ボルト孔
38 突出部材
38a 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ本体(3)と、前記エアバッグ本体(3)を膨張させるガスを発生するインフレータ(4)とを有する助手席用のエアバッグモジュール(1)を、取付具(2)を介して車体のリインフォースメント(7)に取り付けるエアバッグ装置(10,30)であって、
前記取付具(2)は、前記エアバッグモジュール(1)を収容する収容ケース(5)と、前記エアバッグモジュール(1)及び前記収容ケース(5)を支持して前記リインフォースメント(7)に固定する一対の脚部(6a,36a)を有したブラケット(6,36)と、前記収容ケース(5)の底部から突出した突出部材(8,38)とを備え、
前記ブラケット(6,36)の前記脚部(6a,36a)は、前記脚部(6a,36a)間の間隔が前記リインフォースメント(7)側に向けて漸減又は漸増するように傾斜する傾斜部(6d,36d)を有し、
前記突出部材(8,38)は、前記収容ケース(5)が衝撃を受けて前記リインフォースメント(7)に近づくように前記ブラケット(6,36)を変形させるときに、前記脚部(6a,36a)の前記傾斜部(6d,36d)を押圧して前記ブラケット(6,36)の変形を補助するように構成されてなる、
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記傾斜部(6d)は、前記脚部(6a)間の間隔が前記リインフォースメント(7)側に向けて漸減するように形成され、
前記インフレータ(4)は、前記収容ケース(5)の底部から前記インフレータ(4)の一部を前記脚部間(6a)に突出させた状態で前記ブラケット(6)により支持され、
前記インフレータ(4)の前記収容ケース底部から突出した部分(4c)が前記突出部材(8)を構成してなる、
請求項1記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記傾斜部(6d,36d)は、前記脚部(6a,36a)の傾斜角度を変える屈曲部(6e,36e)を有してなる請求項1又は2記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−110737(P2008−110737A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296547(P2006−296547)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】