エアフィルタ
【課題】オイル排出部からのオイルの下方から上方への流入を防止することが可能なエアフィルタを提供する。
【解決手段】内部にエレメント配設空間Sを有しエレメント配設空間Sと外部とを連通させる流入孔2及び流出孔3が形成されたフィルタケース10と、エレメント配設空間Sを流入孔2に連通する流入空間Saと流出孔3に連通する流出空間Sbとに二分させてエレメント配設空間Sに取り付けられ、流入孔2から流入された気体からオイルミストを凝集するフィルタエレメント50と、フィルタケース10の下部に上下に貫通して設けられ、フィルタエレメント50により凝集されてフィルタケース10の下部に流下したオイルを流入させるドレン部60とを備え、ドレン部60には、シール性を有する材料から成るチェックバルブ61とオイルに浮遊可能な材料で構成されるフロート62が設けられる。
【解決手段】内部にエレメント配設空間Sを有しエレメント配設空間Sと外部とを連通させる流入孔2及び流出孔3が形成されたフィルタケース10と、エレメント配設空間Sを流入孔2に連通する流入空間Saと流出孔3に連通する流出空間Sbとに二分させてエレメント配設空間Sに取り付けられ、流入孔2から流入された気体からオイルミストを凝集するフィルタエレメント50と、フィルタケース10の下部に上下に貫通して設けられ、フィルタエレメント50により凝集されてフィルタケース10の下部に流下したオイルを流入させるドレン部60とを備え、ドレン部60には、シール性を有する材料から成るチェックバルブ61とオイルに浮遊可能な材料で構成されるフロート62が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルミストを含んだ気体を透過させてオイルミストを分離して除去するエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料としてCNG(圧縮天然ガス)を用いる場合、天然ガスを圧縮する際に圧縮機のコンプレッサ等から飛散するオイルがオイルミストとしてCNGに混入する場合があり、このオイルミストが含まれたままCNGがエンジンに供給されると燃焼効率の低下等の問題が発生するため、気体(CNG)からオイルミストを除去する必要がある。また、エンジンの燃焼室から漏れる燃焼ガス(ブローバイガス)はそのまま大気中に放出すると環境汚染の原因となるため、ブローバイガス循環装置により再度燃焼室に循環させて燃焼させているが、このブローバイガスには、エンジンの潤滑に使われるエンジンオイルがシリンダ等から飛散してオイルミストとして含まれているため、このオイルミストも確実に除去する必要がある。
【0003】
そこで、CNGやブローバイガス等からオイルミストを分離して除去するエアフィルタが提供されており、エンジンからのブローバイガスを受け入れるためのガス入口部と連通し、ブローバイガスの流れを旋回流に変換した後、ガス中の比較的大きい油滴を遠心分離する一次分離部と、一次分離部を通過したブローバイガスから油滴を捕捉する二次分離部と、二次分離部を通過したガスからさらに油滴を捕捉する最終分離部と、捕捉された油滴を下方へ流出させるオイル排出部と、最終分離部を通過したガスの迂回路を開閉させるバイパス弁を備えたエアフィルタが周知となっている(例えば、特許文献1を参照)。このようなエアフィルタでは複数回に亘って油滴を捕捉することによりオイルの回収効率を向上させるとともにフィルタの濾材に目詰まり等が発生しフィルタ内の圧力が高くなったときも当該圧力を低減させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなバイパス弁がないエアフィルタ、または、バイパス弁が設けられているエアフィルタにおいても、オイルの固着等によりバイパス弁が機能しなくなるような場合には、クランクケースからのブローバイガス等の流入により流入側圧力が流出側圧力と比較して著しく高くなることがある。例えば図3に示すようにエアフィルタ1がクランクケース200とエアクリーナ100の間に設けられるようなブローバイ循環系において、上述したように流入側圧力が流出側圧力に比して著しく高くなると、クランクケース200のオイルパンに貯留されているオイルにオイルを排出する方向と反対方向に力が付与される。そして、図3(c)に示すようにエアフィルタのオイル排出部の下方に延びるオイル流路の油面が上昇することにより、オイル排出部からエアフィルタにオイルが逆流する事態が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、オイル排出部からのオイルの下方から上方への流入を防止することが可能なエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るエアフィルタは、内部にエレメント配設空間を有しエレメント配設空間と外部とを連通させる流入孔及び流出孔が形成されたフィルタケースと、エレメント配設空間を流入孔に連通する流入空間と流出孔に連通する流出空間とに二分させてエレメント配設空間に取り付けられ、流入孔から流入された気体からオイルミストを凝集するフィルタエレメントと、フィルタケースの下部に上下に貫通して設けられ、フィルタエレメントにより凝集されてフィルタケースの下部に流下したオイルを流入させるオイル排出孔(例えば、実施形態における排出孔63b)と、オイル排出孔の下部近傍に上下移動可能に設けられ、下方からオイル排出孔を覆うことが可能な封止手段と、フィルタケースの下部に設けられ、封止手段を上下移動可能に収容する収容部材(例えば、実施形態におけるドレン部60及びリブ64)とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このように構成されたエアフィルタにおいて、前記封止手段は、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材であることが好ましく、また、前記収容部材に収容された状態で上下移動可能に設けられた弁体(例えば、実施形態におけるチェックバルブ61)と、前記弁体の下部近傍に設けられ、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材(例えば、実施形態におけるフロート62)とにより構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に関するエアフィルタによれば、オイル排出孔の下部近傍に上下移動可能な封止部材を設け、オイルの油面の上昇に伴い封止部材を上方に移動させてオイル排出孔を塞ぐことが可能になるため、オイル排出部からのオイルの下方から上方への流入を防止することができる。
【0010】
なお、封止部材として、上下移動可能に収容される弁体とその下部にオイルに浮遊可能なフロートを使用することにより、油面の上昇に伴いフロートを上方に移動させフロートにより弁体を持ち上げ、これに伴い、弁体がオイル排出孔を下方から塞ぐようにすることが可能になる。これにより、簡略な構成で上記と同様の効果を得られるとともに、コストを抑え、省スペース性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るエアフィルタを示す側面断面図である。
【図2】上記エアフィルタのドレン部付近を拡大して示した部分断面図である。
【図3】上記エアフィルタがクランクケースとエアクリーナの間に設けられ、流入側圧力が流出側圧力に比して高くなったときにおけるチェックバルブ及びフロートの動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係るエアフィルタ1は、発電機等のエンジンに取り付けられ、クランクケースから排出されたCNGやブローバイガスに含まれるオイルミストを除去するために用いられるものである。エアフィルタ1は、図1に示すように、内部にエレメント配設空間Sを有し、このエレメント配設空間Sと外部とを連通させる流入孔2及び流出孔3が形成されたフィルタケース10と、エレメント配設空間Sを流入孔2と連通する流入空間Sa、及び流出孔3と連通する流出空間Sbに二分させてエレメント配設空間S内に取り付けられるフィルタエレメント50とから構成されている。エアフィルタ1は、図1に示すように、流入孔2に対して流出孔3が上方向に設けられており、流入孔2から流入されたオイルミストは流入空間Saからフィルタエレメント50を通過しオイルを分離された後、流出空間Sbを通過し流出孔3から外方に流出されるようになっている。なお、分離されたオイルミストは凝集され油滴となって、エアフィルタ1の下方に設けられたドレン部60(後に詳述)からエアフィルタ1の下方に排出されるようになっている。
【0013】
フィルタケース10は、上部ケース半体11と、下部ケース半体12とから構成されており、上部ケース半体11は、雌ネジ11aと、内壁15と、エレメント支持部16と、後述するPCVバルブ20及びバイパスバルブ30とを有して構成されている。上部ケース半体11は、例えば金属材料を用いて下方に向けて開口した有底円筒状に形成され、その内部に上述したエレメント配設空間Sが形成されるようになっており、このエレメント配設空間Sを上述したフィルタエレメント50が流入空間Sa及び流出空間Sbとに二分するように構成されている。上部ケース半体11は、エンジン(図示せず)にネジ等の固定手段(図示せず)により固定された状態になっている。雌ネジ11aは、上部ケース半体11の下端内周面に形成され、後述する下部ケース半体12の雄ネジ12aと螺合可能に形成されている。
【0014】
また、上部ケース半体11の流入空間Saには、下方に延びて形成される内壁15が設けられており、流入孔2から流入された気体は、最初に内壁15に当たった後内壁15に沿って下方に移動した後フィルタエレメント50に流入されるようになっている。このように構成することにより、フィルタエレメント50に均等に気体を流入させることが可能になり、フィルタエレメント50に局所的に気体が流入することを防止することができる。また、エレメント配設空間Sの上端に下方に開口する環状のエレメント支持部16が設けられており、後述するフィルタエレメント50の環状に設けられた上部ゴムブッシュ55にエレメント支持部16を嵌合させることにより、フィルタエレメント50を上部ケース半体11に支持させることができるようになっている。
【0015】
PCVバルブ20は、上部ケース半体11の上端に取り付けられ、エアフィルタ1の内部の掃気、換気を行うとともに内部の圧力を制御するために設けられる蓋状の弁であり、ケーシング21と、ダイヤフラム22と、スプリング23とで構成されている。ケーシング21は、略円筒状に形成されており、ケーシング21の天井部から下方に突出して形成されるダイヤフラム受け部21a及びエアフィルタ1の外部と連通している切り欠き部21bとを備えて構成されている。切り欠き部21bによりケーシング21の下側且つダイヤフラム22の上側の領域と外方(大気側領域)は連通した状態になっている。
【0016】
ダイヤフラム22は、ケーシング21の下部に設けられ、弁体部22aと支持部22bとを備え、弁体部22a及び支持部22bにより流出空間Sbの上方に大気側領域が区画されるようになっている。この弁体部22aは、後述するスプリング23に付勢された状態になっており、通常時(流出空間Sbの負圧の値が零の時)はダイヤフラム受け部21aに当接するようになっているが、流出空間Sbの負圧が所定値を超過すると、ダイヤフラム受け部21aから離間し流出空間Sbと流出孔3内部の領域を連通する連通孔を形成する受圧部3aに当接し、上記連通孔を塞ぎ流出孔3から外部へ気体が流出しないようにすることが可能になっている。スプリング23は、その上端が支持部22bにその下端が受圧部3aの下方側端に設けられたスプリング受け部23aに取り付けられており、ダイヤフラム22は、このスプリング23により受圧部3a側からダイヤフラム受け部21a側に向けて付勢されている。
【0017】
バイパスバルブ30は、外方(大気側領域)と連通しているバイパス路と流出空間Sbの間に設けられ、PCVバルブ20と同様に、ケーシング31と、ダイヤフラム32と、スプリング33とにより構成されている。ダイヤフラム32は、弁体部32aと支持部32bとを備え、弁体部32aの流出空間Sb側(エアフィルタ1の内側)の面が流出空間Sbとバイパス路を連通する連通孔を形成する受圧部3bに当接するように構成されている。スプリング33は、弁体部32aから見てバイパス路側(エアフィルタ1の外側)に設けられ、弁体部32aを流出空間Sbの方向(エアフィルタ1の内側)に押し付ける付勢力を有している。弁体部32aは、スプリング33の付勢力によって通常時は受圧部3bに押し付けられた状態となっているが、後述するフィルタエレメント50に目詰まり等が発生して流入空間Sa内の圧力(流入側圧力)が高くなり流入空間Saと流出空間Sbとの間の圧力差が所定の設定圧以上となると、弁体部32aにエアフィルタ1の外側の方向にスプリング33による付勢力より大きな力が作用し、弁体部32aはスプリング33の付勢力に抗してエアフィルタ1の外側に押し出されて開弁する。これにより流出空間Sbと外方が連通されることとなり、上記圧力差を低減させることができるようになっている。
【0018】
フィルタエレメント50は、オイルミストからオイルを分離する濾材51と、外周が濾材51の内周面に当接接触するように配設されたインナーチューブ52と、濾材51及びインナーチューブ52の上端部及び下端部を覆うようにして固着された環状の上部及び下部エンドプレート53,54とから構成されている。濾材51は、一定の折曲幅を有して蛇腹状に折曲されて、上部エンドプレート53及び下部エンドプレート54の間で保持されることにより、断面菊花状に形成されている。濾材51の内周はインナーチューブ52の外周に当接接触するような寸法になっている。
【0019】
インナーチューブ52は、気体がフィルタエレメント50を通過する際に生じる差圧によりフィルタエレメント50が変形するのを防止するために設けられ、濾材51の内周面に沿って上下に延びた薄肉円筒状に形成される。このインナーチューブ52は、濾材51によって濾過された気体を流出空間Sbに流出可能な多数のチューブ流出孔52aを有し、チューブ流出孔52aは、円周方向及び円筒軸方向に一定間隔を有して形成されている(図1ではチューブ流出孔52aの一部のみを図示している)。このため、濾材51に流入される気体は、この濾材51内でチューブ流出孔52aに向かって流れるようになっている。
【0020】
また、上部エンドプレート53の上端及び下部エンドプレート54の下端の中央部には、ゴム等の弾性部材で形成された環状の上部及び下部ゴムブッシュ55,56がそれぞれ配設されている。上部ゴムブッシュ55は上部エンドプレート53の上部に、下部ゴムブッシュ56は下部エンドプレート54の下部にそれぞれ嵌合された状態になっており、上部ケース半体11に、フィルタエレメント50及び下部ケース半体12を組立てる際には、上部ゴムブッシュ55の上部が上部ケース半体11が形成するエレメント配設空間Sの上端に、下部ゴムブッシュ56の下部が下部ケース半体12の内面下端に、それぞれ押し付けられた状態になる(後に詳述)。このようにフィルタエレメント50及び下部ケース半体12が、上部及び下部ゴムブッシュ55,56を介設して取り付けられることにより、流入孔2から流入した気体が流入空間Saから濾材51及びインナーチューブ52を通過しないで流出空間Sbに流れることを防止できるようになっている。
【0021】
下部ケース半体12は、例えば、透明樹脂材料を用いて上方に向けて開口した有底円筒状に形成され、下部ケース半体12の上端外周に設けられる雄ネジ12aと、フィルタエレメント50を下部ケース半体12に保持する保持部材13と、雄ネジ12aの下部且つ下部ケース半体12の外周に設けられるにシールリング14とを有して構成されている。下部ケース半体12の雄ネジ12aは、上述した上部ケース半体11の雌ネジ11aと螺合可能になっている。また、保持部材13をフィルタエレメント50にその外周方向から押し付けることにより、フィルタエレメント50を下部ケース半体12に保持することが可能になっている。
【0022】
下部ケース半体12に保持されたフィルタエレメント50は、上部ケース半体11のエレメント配設空間Sに下方から押し上げられ、上部ゴムブッシュ55の上面がエレメント配設空間Sの上端に当接された状態で雌ネジ11aに下部ケース半体12の雄ネジ12aを螺合させることにより、上部ケース半体11に、フィルタエレメント50及び下部ケース半体12を取り付けることができるようになっている。なお、雄ネジ12aの下部にシールリング14が設けられることにより、雌ネジ11aに雄ネジ12aを螺合したときに、上部ケース半体11と下部ケース半体12との間に形成される隙間を確実に埋めることができるようになり、エアフィルタ1内部の気体及び分離したオイルの漏出を防止することができるようになっている。
【0023】
また、下部ケース半体12の下方には、オイルミストから分離されたオイル(油滴)を排出するためのドレン部60が設けられており、流入孔2からオイルミストが流入し、濾材51を通過した結果得られたオイル(油滴)は、下部ケース半体12の下方に溜められ、一定量溜められた後ドレン部60を経由してエアフィルタ1の下方に排出されるようになっている。排出されたオイルは、後述するクランクケース200のオイルパンに流れるようになっている(図3参照)。
【0024】
ところで、本実施形態におけるエアフィルタ1では、濾材51に目詰まり等が発生して流入空間Sa内の圧力(流入側圧力)が高くなり流入空間Saと流出空間Sbとの間の圧力差が所定圧以上になっても上述したバイパスバルブ30により、上記圧力差を低減させることが可能になっている。しかし、バイパスバルブ30が設けられていても、オイルの固着でバイパスバルブ30が作動しなくなる等の原因により、流入側圧力が流出側圧力と比較して高くなることがある。このように流入側圧力が高くなると、オイルパンに溜まっているオイルに対してドレン部60側に押し出す方向(オイルが逆流する方向)の力が働き、ドレン部60とオイルパンを連通させるオイル流路のオイルの液面(油面)が上昇する。そして、さらに圧力が高くなると、ドレン部60からオイルがエアフィルタ1内に流入する問題が発生する(図3参照)。
【0025】
そこで、本実施形態におけるエアフィルタ1には、ドレン部60にチェックバルブ61とフロート62等が設けられ、上記オイルの流入を防止することが可能になっている。本実施形態におけるドレン部60は、下方へのオイルの流出は許可するが下方から流出空間Sbへのオイルの流入を禁止するチェックバルブ61と、チェックバルブ61を上方に押し上げるフロート62と、オイルを下方に排出させる排出孔63bを有するオイル排出部63と、フロート62を載置する4つのリブ64とにより構成されている。
【0026】
オイル排出部63は、図2に示すように、下側ケース半体12に固着された状態になっており、外縁部63aと、2つの排出孔63bと、バルブ支持部63cとを有し、当該排出孔63bから上述したオイルが下方に排出されるようになっている。チェックバルブ61は、上側係止部61aと下側係止部61bとを有して構成されている。また、バルブ支持部63cは2つの排出孔63bの間に設けられ、上側係止部61aと下側係止部61bとの間に設けられた窪みに配設され、チェックバルブ61はオイル排出部63に対して上下方向にのみ移動可能に支持された状態になっている。具体的には、チェックバルブ61を、その上側係止部61aの下面とバルブ支持部63cの上面が接触する位置(図2(a)参照)から、その下側係止部61bの上面とバルブ支持部63cの下面が接触する位置(図2(b)参照)にまで上下移動させることができるようになっている。通常時(下方からのオイルの流入がない状態において)は、図2(a)に示すように、チェックバルブ61の上側係止部61aの下面とバルブ支持部63cの上面が接触した状態になっている。
【0027】
また、チェックバルブ61に下方から外力が加えられた時は、上述したようにチェックバルブ61が上方に移動し、図2(b)に示すように、チェックバルブ61の下側係止部61bの上面とバルブ支持部63cの下面が接触した状態になるが、このとき、下側係止部61bの上面と外縁部63aの下面とも接触した状態になるため、オイル排出部63の排出孔63bを塞ぐことが可能になる。なお、チェックバルブ61は、高い耐油性、耐熱性、耐寒性を有するフロロシリコンゴムにて構成されており、チェックバルブ61に下方から外力が加えられ、その下側係止部61bの上面が外縁部63a及びバルブ支持部63cの下面に接触した状態となったとき、オイルが下方から流出空間Sbに流入しないようにすることができる。
【0028】
フロート62は、中空円柱状に形成され、チェックバルブ61の下端突起部61dがフロート62の中空部62aに挿入される位置に設けられている。フロート62は、オイルより比重が小さくオイルに浮遊可能で高い耐油性を有する発泡NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)で構成されており、通常時(下方からオイルの流入がない状態において)は、図2(a)に示すように、複数のリブ64に載置された状態になっている。リブ64は、その上面にフロート載置面64aを有し、フロート62をそのそれぞれのフロート載置面64aに水平に載置することができるようになっている。
【0029】
ところで、上述したように、流入側圧力が高くなりオイル流路の油面が上昇すると、フロート62はその油面がフロート62の下部に達した後下方から浮力が加えられ上方に移動するようになる。そして、フロート62の上面がチェックバルブ61の下側係止部61bの下面に当接し、さらに、フロート62がチェックバルブ61を上方に押し上げ、図2(b)に示すように、チェックバルブ61の下側係止部61bの上面とバルブ支持部63c及び外縁部63aの下面とが密着した状態になるため、オイル排出部63の下方からオイルが流出空間Sbに流入することを防止することが可能になっている。
【0030】
以上のように構成されたエアフィルタ1において、流入空間Saと流出空間Sbとの間の圧力差が高くなり、バイパスバルブ30によっても上記圧力差を低減させることができない場合におけるチェックバルブ61とフロート62の動作の例について以下で図3を参照しながら説明する。図3は、クランクケース200からオイルミストを排出する排出孔とエアクリーナ100の間にエアフィルタ1が配設されたイメージを示している。なお、図3においては、エアフィルタ1の濾材51、チェックバルブ61、フロート62以外の部材、及びエアクリーナ100、クランクケース200の詳細な構成は省略して図示している。
【0031】
まず、エンジンを停止している時は流入空間Saの圧力(以下、流入側圧力Paとする)、流出空間Sbの圧力(以下、流出側圧力Pbとする)は共に零となっており、エンジンを起動すると、クランクケース200内部の圧力とともに流入側圧力Paが上昇する。また、エンジンを起動した後はエアクリーナ100からクランクケース200の吸気系へ気体が流出するため圧力損失が発生し、流出側圧力Pbは−20mmAq(ミリアクア)となる。よって、図3(a)に示すように、例えば流入側圧力Paが30mmAqとなったときの流入側圧力Paと流出側圧力Pbとの差圧、すなわちフィルタエレメント50に付与される抵抗の大きさ(以下、エレメント抵抗ΔPとする)は50mmAqとなる。このエレメント抵抗ΔPの値が大きくなるとドレン部60とオイルパンを連通させるオイル流路におけるオイルの油面が上昇し、図3(b)に示すように、流入側圧力Paが100mmAqとなったときは、エレメント抵抗ΔPは120mmAqとなり、流入側圧力Paが30mmAqであったときと比較して油面の位置が上昇している。
【0032】
さらに、流入側圧力Paの値が大きくなり280mmAqにまで達すると、エレメント抵抗ΔPは300mmAqとなるが、このとき、油面の位置はドレン部60にまで達し、フロート62の下面に油面が到達した後フロート62に下方から浮力が付与されフロート62が油面とともに上昇する。そして、フロートの上面62がチェックバルブ61の下側係止部61bの下面に当接するとともにフロート62がチェックバルブ61を上方に押し上げ、チェックバルブ61の下側係止部61bの上面とオイル排出部63の外縁部63a及びバルブ支持部63cの下面が密着する。従って、チェックバルブ61が排出孔63bを下方から上方に確実に塞ぐため、オイルのエアフィルタ1への流入を防止することができる。
【0033】
以上、本実施形態では、チェックバルブ61及びフロート62により、流入空間Saと流出空間Sbの圧力差により発生するオイルの流出空間Sbへの逆流を防止することが可能になる。なお、上記の説明では、流入空間Saの圧力及び流出空間Sbの圧力について数値を基に説明したが、これらの数値に限定されることはない。また、上記チェックバルブ61及びフロート62を用いてオイルのエアフィルタ1への流入を防止するという本発明の趣旨を逸脱しなければエアフィルタ1の構成、並びにチェックバルブ61及びフロート62の形状、並びにリブ64の個数も上記実施形態に限定されることなく適宜改良可能である。
【0034】
また、上述した実施形態では、チェックバルブ61としてフロロシリコンゴム、フロート62として発泡NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を用いた例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、チェックバルブ61については、その下側係止部61bの上面(排出孔63bを塞ぐ面)が高いシール性を有する材料で形成されていればよく、アクリロニトリルゴム、ヒドリンゴム等を使用することもできる。また、フロート62については、ポリウレタンや、耐油発泡スチロール等、本発明を構成するフロートに必要な機能(少なくとも、オイルより比重が小さく、耐油性を有し、チェックバルブ61を上方に押し上げる機能)を得られる材料であれば別のものを用いてもよい。さらに、チェックバルブの上面をシール性の高い材料として、それ以外の部分の材料を上記フロートと同じ材料にすれば、フロート62を省略しチェックバルブのみで上記実施形態と同じ効果を得ることも可能である。
【0035】
なお、上述した実施形態では、バイパスバルブ30が設けられたエアフィルタ1を対象として、エアフィルタ1へのオイルの流入を防止する例について説明したが、バイパスバルブ30が設けられていないエアフィルタに対しても、本発明を適用することができる。
【0036】
そして、上述した実施形態では、蛇腹状に折り曲げられた濾材が巻きつけられているフィルタエレメント50について説明したが、フィルタエレメント50または濾材51については、所定の厚さを有したグラスファイバー、不織布等によって円筒状に形成されたものや、これらの素材を組み合わせて形成されたもの、若しくは円筒状に形成された焼結品でもよく、濾過する液体や除去する固形物等に合わせて最適な素材及び形状を選択することができる。
【符号の説明】
【0037】
S エレメント配設空間 Sa 流入空間
Sb 流出空間 1 エアフィルタ
2 流入孔 3 流出孔
10 フィルタケース 11 上部ケース半体
12 下部ケース半体 20 PCVバルブ
30 バイパスバルブ 50 フィルタエレメント
51 濾材 52 インナーチューブ
60 ドレン部 61 チェックバルブ
62 フロート 63 オイル排出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルミストを含んだ気体を透過させてオイルミストを分離して除去するエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料としてCNG(圧縮天然ガス)を用いる場合、天然ガスを圧縮する際に圧縮機のコンプレッサ等から飛散するオイルがオイルミストとしてCNGに混入する場合があり、このオイルミストが含まれたままCNGがエンジンに供給されると燃焼効率の低下等の問題が発生するため、気体(CNG)からオイルミストを除去する必要がある。また、エンジンの燃焼室から漏れる燃焼ガス(ブローバイガス)はそのまま大気中に放出すると環境汚染の原因となるため、ブローバイガス循環装置により再度燃焼室に循環させて燃焼させているが、このブローバイガスには、エンジンの潤滑に使われるエンジンオイルがシリンダ等から飛散してオイルミストとして含まれているため、このオイルミストも確実に除去する必要がある。
【0003】
そこで、CNGやブローバイガス等からオイルミストを分離して除去するエアフィルタが提供されており、エンジンからのブローバイガスを受け入れるためのガス入口部と連通し、ブローバイガスの流れを旋回流に変換した後、ガス中の比較的大きい油滴を遠心分離する一次分離部と、一次分離部を通過したブローバイガスから油滴を捕捉する二次分離部と、二次分離部を通過したガスからさらに油滴を捕捉する最終分離部と、捕捉された油滴を下方へ流出させるオイル排出部と、最終分離部を通過したガスの迂回路を開閉させるバイパス弁を備えたエアフィルタが周知となっている(例えば、特許文献1を参照)。このようなエアフィルタでは複数回に亘って油滴を捕捉することによりオイルの回収効率を向上させるとともにフィルタの濾材に目詰まり等が発生しフィルタ内の圧力が高くなったときも当該圧力を低減させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなバイパス弁がないエアフィルタ、または、バイパス弁が設けられているエアフィルタにおいても、オイルの固着等によりバイパス弁が機能しなくなるような場合には、クランクケースからのブローバイガス等の流入により流入側圧力が流出側圧力と比較して著しく高くなることがある。例えば図3に示すようにエアフィルタ1がクランクケース200とエアクリーナ100の間に設けられるようなブローバイ循環系において、上述したように流入側圧力が流出側圧力に比して著しく高くなると、クランクケース200のオイルパンに貯留されているオイルにオイルを排出する方向と反対方向に力が付与される。そして、図3(c)に示すようにエアフィルタのオイル排出部の下方に延びるオイル流路の油面が上昇することにより、オイル排出部からエアフィルタにオイルが逆流する事態が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、オイル排出部からのオイルの下方から上方への流入を防止することが可能なエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るエアフィルタは、内部にエレメント配設空間を有しエレメント配設空間と外部とを連通させる流入孔及び流出孔が形成されたフィルタケースと、エレメント配設空間を流入孔に連通する流入空間と流出孔に連通する流出空間とに二分させてエレメント配設空間に取り付けられ、流入孔から流入された気体からオイルミストを凝集するフィルタエレメントと、フィルタケースの下部に上下に貫通して設けられ、フィルタエレメントにより凝集されてフィルタケースの下部に流下したオイルを流入させるオイル排出孔(例えば、実施形態における排出孔63b)と、オイル排出孔の下部近傍に上下移動可能に設けられ、下方からオイル排出孔を覆うことが可能な封止手段と、フィルタケースの下部に設けられ、封止手段を上下移動可能に収容する収容部材(例えば、実施形態におけるドレン部60及びリブ64)とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このように構成されたエアフィルタにおいて、前記封止手段は、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材であることが好ましく、また、前記収容部材に収容された状態で上下移動可能に設けられた弁体(例えば、実施形態におけるチェックバルブ61)と、前記弁体の下部近傍に設けられ、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材(例えば、実施形態におけるフロート62)とにより構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に関するエアフィルタによれば、オイル排出孔の下部近傍に上下移動可能な封止部材を設け、オイルの油面の上昇に伴い封止部材を上方に移動させてオイル排出孔を塞ぐことが可能になるため、オイル排出部からのオイルの下方から上方への流入を防止することができる。
【0010】
なお、封止部材として、上下移動可能に収容される弁体とその下部にオイルに浮遊可能なフロートを使用することにより、油面の上昇に伴いフロートを上方に移動させフロートにより弁体を持ち上げ、これに伴い、弁体がオイル排出孔を下方から塞ぐようにすることが可能になる。これにより、簡略な構成で上記と同様の効果を得られるとともに、コストを抑え、省スペース性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るエアフィルタを示す側面断面図である。
【図2】上記エアフィルタのドレン部付近を拡大して示した部分断面図である。
【図3】上記エアフィルタがクランクケースとエアクリーナの間に設けられ、流入側圧力が流出側圧力に比して高くなったときにおけるチェックバルブ及びフロートの動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係るエアフィルタ1は、発電機等のエンジンに取り付けられ、クランクケースから排出されたCNGやブローバイガスに含まれるオイルミストを除去するために用いられるものである。エアフィルタ1は、図1に示すように、内部にエレメント配設空間Sを有し、このエレメント配設空間Sと外部とを連通させる流入孔2及び流出孔3が形成されたフィルタケース10と、エレメント配設空間Sを流入孔2と連通する流入空間Sa、及び流出孔3と連通する流出空間Sbに二分させてエレメント配設空間S内に取り付けられるフィルタエレメント50とから構成されている。エアフィルタ1は、図1に示すように、流入孔2に対して流出孔3が上方向に設けられており、流入孔2から流入されたオイルミストは流入空間Saからフィルタエレメント50を通過しオイルを分離された後、流出空間Sbを通過し流出孔3から外方に流出されるようになっている。なお、分離されたオイルミストは凝集され油滴となって、エアフィルタ1の下方に設けられたドレン部60(後に詳述)からエアフィルタ1の下方に排出されるようになっている。
【0013】
フィルタケース10は、上部ケース半体11と、下部ケース半体12とから構成されており、上部ケース半体11は、雌ネジ11aと、内壁15と、エレメント支持部16と、後述するPCVバルブ20及びバイパスバルブ30とを有して構成されている。上部ケース半体11は、例えば金属材料を用いて下方に向けて開口した有底円筒状に形成され、その内部に上述したエレメント配設空間Sが形成されるようになっており、このエレメント配設空間Sを上述したフィルタエレメント50が流入空間Sa及び流出空間Sbとに二分するように構成されている。上部ケース半体11は、エンジン(図示せず)にネジ等の固定手段(図示せず)により固定された状態になっている。雌ネジ11aは、上部ケース半体11の下端内周面に形成され、後述する下部ケース半体12の雄ネジ12aと螺合可能に形成されている。
【0014】
また、上部ケース半体11の流入空間Saには、下方に延びて形成される内壁15が設けられており、流入孔2から流入された気体は、最初に内壁15に当たった後内壁15に沿って下方に移動した後フィルタエレメント50に流入されるようになっている。このように構成することにより、フィルタエレメント50に均等に気体を流入させることが可能になり、フィルタエレメント50に局所的に気体が流入することを防止することができる。また、エレメント配設空間Sの上端に下方に開口する環状のエレメント支持部16が設けられており、後述するフィルタエレメント50の環状に設けられた上部ゴムブッシュ55にエレメント支持部16を嵌合させることにより、フィルタエレメント50を上部ケース半体11に支持させることができるようになっている。
【0015】
PCVバルブ20は、上部ケース半体11の上端に取り付けられ、エアフィルタ1の内部の掃気、換気を行うとともに内部の圧力を制御するために設けられる蓋状の弁であり、ケーシング21と、ダイヤフラム22と、スプリング23とで構成されている。ケーシング21は、略円筒状に形成されており、ケーシング21の天井部から下方に突出して形成されるダイヤフラム受け部21a及びエアフィルタ1の外部と連通している切り欠き部21bとを備えて構成されている。切り欠き部21bによりケーシング21の下側且つダイヤフラム22の上側の領域と外方(大気側領域)は連通した状態になっている。
【0016】
ダイヤフラム22は、ケーシング21の下部に設けられ、弁体部22aと支持部22bとを備え、弁体部22a及び支持部22bにより流出空間Sbの上方に大気側領域が区画されるようになっている。この弁体部22aは、後述するスプリング23に付勢された状態になっており、通常時(流出空間Sbの負圧の値が零の時)はダイヤフラム受け部21aに当接するようになっているが、流出空間Sbの負圧が所定値を超過すると、ダイヤフラム受け部21aから離間し流出空間Sbと流出孔3内部の領域を連通する連通孔を形成する受圧部3aに当接し、上記連通孔を塞ぎ流出孔3から外部へ気体が流出しないようにすることが可能になっている。スプリング23は、その上端が支持部22bにその下端が受圧部3aの下方側端に設けられたスプリング受け部23aに取り付けられており、ダイヤフラム22は、このスプリング23により受圧部3a側からダイヤフラム受け部21a側に向けて付勢されている。
【0017】
バイパスバルブ30は、外方(大気側領域)と連通しているバイパス路と流出空間Sbの間に設けられ、PCVバルブ20と同様に、ケーシング31と、ダイヤフラム32と、スプリング33とにより構成されている。ダイヤフラム32は、弁体部32aと支持部32bとを備え、弁体部32aの流出空間Sb側(エアフィルタ1の内側)の面が流出空間Sbとバイパス路を連通する連通孔を形成する受圧部3bに当接するように構成されている。スプリング33は、弁体部32aから見てバイパス路側(エアフィルタ1の外側)に設けられ、弁体部32aを流出空間Sbの方向(エアフィルタ1の内側)に押し付ける付勢力を有している。弁体部32aは、スプリング33の付勢力によって通常時は受圧部3bに押し付けられた状態となっているが、後述するフィルタエレメント50に目詰まり等が発生して流入空間Sa内の圧力(流入側圧力)が高くなり流入空間Saと流出空間Sbとの間の圧力差が所定の設定圧以上となると、弁体部32aにエアフィルタ1の外側の方向にスプリング33による付勢力より大きな力が作用し、弁体部32aはスプリング33の付勢力に抗してエアフィルタ1の外側に押し出されて開弁する。これにより流出空間Sbと外方が連通されることとなり、上記圧力差を低減させることができるようになっている。
【0018】
フィルタエレメント50は、オイルミストからオイルを分離する濾材51と、外周が濾材51の内周面に当接接触するように配設されたインナーチューブ52と、濾材51及びインナーチューブ52の上端部及び下端部を覆うようにして固着された環状の上部及び下部エンドプレート53,54とから構成されている。濾材51は、一定の折曲幅を有して蛇腹状に折曲されて、上部エンドプレート53及び下部エンドプレート54の間で保持されることにより、断面菊花状に形成されている。濾材51の内周はインナーチューブ52の外周に当接接触するような寸法になっている。
【0019】
インナーチューブ52は、気体がフィルタエレメント50を通過する際に生じる差圧によりフィルタエレメント50が変形するのを防止するために設けられ、濾材51の内周面に沿って上下に延びた薄肉円筒状に形成される。このインナーチューブ52は、濾材51によって濾過された気体を流出空間Sbに流出可能な多数のチューブ流出孔52aを有し、チューブ流出孔52aは、円周方向及び円筒軸方向に一定間隔を有して形成されている(図1ではチューブ流出孔52aの一部のみを図示している)。このため、濾材51に流入される気体は、この濾材51内でチューブ流出孔52aに向かって流れるようになっている。
【0020】
また、上部エンドプレート53の上端及び下部エンドプレート54の下端の中央部には、ゴム等の弾性部材で形成された環状の上部及び下部ゴムブッシュ55,56がそれぞれ配設されている。上部ゴムブッシュ55は上部エンドプレート53の上部に、下部ゴムブッシュ56は下部エンドプレート54の下部にそれぞれ嵌合された状態になっており、上部ケース半体11に、フィルタエレメント50及び下部ケース半体12を組立てる際には、上部ゴムブッシュ55の上部が上部ケース半体11が形成するエレメント配設空間Sの上端に、下部ゴムブッシュ56の下部が下部ケース半体12の内面下端に、それぞれ押し付けられた状態になる(後に詳述)。このようにフィルタエレメント50及び下部ケース半体12が、上部及び下部ゴムブッシュ55,56を介設して取り付けられることにより、流入孔2から流入した気体が流入空間Saから濾材51及びインナーチューブ52を通過しないで流出空間Sbに流れることを防止できるようになっている。
【0021】
下部ケース半体12は、例えば、透明樹脂材料を用いて上方に向けて開口した有底円筒状に形成され、下部ケース半体12の上端外周に設けられる雄ネジ12aと、フィルタエレメント50を下部ケース半体12に保持する保持部材13と、雄ネジ12aの下部且つ下部ケース半体12の外周に設けられるにシールリング14とを有して構成されている。下部ケース半体12の雄ネジ12aは、上述した上部ケース半体11の雌ネジ11aと螺合可能になっている。また、保持部材13をフィルタエレメント50にその外周方向から押し付けることにより、フィルタエレメント50を下部ケース半体12に保持することが可能になっている。
【0022】
下部ケース半体12に保持されたフィルタエレメント50は、上部ケース半体11のエレメント配設空間Sに下方から押し上げられ、上部ゴムブッシュ55の上面がエレメント配設空間Sの上端に当接された状態で雌ネジ11aに下部ケース半体12の雄ネジ12aを螺合させることにより、上部ケース半体11に、フィルタエレメント50及び下部ケース半体12を取り付けることができるようになっている。なお、雄ネジ12aの下部にシールリング14が設けられることにより、雌ネジ11aに雄ネジ12aを螺合したときに、上部ケース半体11と下部ケース半体12との間に形成される隙間を確実に埋めることができるようになり、エアフィルタ1内部の気体及び分離したオイルの漏出を防止することができるようになっている。
【0023】
また、下部ケース半体12の下方には、オイルミストから分離されたオイル(油滴)を排出するためのドレン部60が設けられており、流入孔2からオイルミストが流入し、濾材51を通過した結果得られたオイル(油滴)は、下部ケース半体12の下方に溜められ、一定量溜められた後ドレン部60を経由してエアフィルタ1の下方に排出されるようになっている。排出されたオイルは、後述するクランクケース200のオイルパンに流れるようになっている(図3参照)。
【0024】
ところで、本実施形態におけるエアフィルタ1では、濾材51に目詰まり等が発生して流入空間Sa内の圧力(流入側圧力)が高くなり流入空間Saと流出空間Sbとの間の圧力差が所定圧以上になっても上述したバイパスバルブ30により、上記圧力差を低減させることが可能になっている。しかし、バイパスバルブ30が設けられていても、オイルの固着でバイパスバルブ30が作動しなくなる等の原因により、流入側圧力が流出側圧力と比較して高くなることがある。このように流入側圧力が高くなると、オイルパンに溜まっているオイルに対してドレン部60側に押し出す方向(オイルが逆流する方向)の力が働き、ドレン部60とオイルパンを連通させるオイル流路のオイルの液面(油面)が上昇する。そして、さらに圧力が高くなると、ドレン部60からオイルがエアフィルタ1内に流入する問題が発生する(図3参照)。
【0025】
そこで、本実施形態におけるエアフィルタ1には、ドレン部60にチェックバルブ61とフロート62等が設けられ、上記オイルの流入を防止することが可能になっている。本実施形態におけるドレン部60は、下方へのオイルの流出は許可するが下方から流出空間Sbへのオイルの流入を禁止するチェックバルブ61と、チェックバルブ61を上方に押し上げるフロート62と、オイルを下方に排出させる排出孔63bを有するオイル排出部63と、フロート62を載置する4つのリブ64とにより構成されている。
【0026】
オイル排出部63は、図2に示すように、下側ケース半体12に固着された状態になっており、外縁部63aと、2つの排出孔63bと、バルブ支持部63cとを有し、当該排出孔63bから上述したオイルが下方に排出されるようになっている。チェックバルブ61は、上側係止部61aと下側係止部61bとを有して構成されている。また、バルブ支持部63cは2つの排出孔63bの間に設けられ、上側係止部61aと下側係止部61bとの間に設けられた窪みに配設され、チェックバルブ61はオイル排出部63に対して上下方向にのみ移動可能に支持された状態になっている。具体的には、チェックバルブ61を、その上側係止部61aの下面とバルブ支持部63cの上面が接触する位置(図2(a)参照)から、その下側係止部61bの上面とバルブ支持部63cの下面が接触する位置(図2(b)参照)にまで上下移動させることができるようになっている。通常時(下方からのオイルの流入がない状態において)は、図2(a)に示すように、チェックバルブ61の上側係止部61aの下面とバルブ支持部63cの上面が接触した状態になっている。
【0027】
また、チェックバルブ61に下方から外力が加えられた時は、上述したようにチェックバルブ61が上方に移動し、図2(b)に示すように、チェックバルブ61の下側係止部61bの上面とバルブ支持部63cの下面が接触した状態になるが、このとき、下側係止部61bの上面と外縁部63aの下面とも接触した状態になるため、オイル排出部63の排出孔63bを塞ぐことが可能になる。なお、チェックバルブ61は、高い耐油性、耐熱性、耐寒性を有するフロロシリコンゴムにて構成されており、チェックバルブ61に下方から外力が加えられ、その下側係止部61bの上面が外縁部63a及びバルブ支持部63cの下面に接触した状態となったとき、オイルが下方から流出空間Sbに流入しないようにすることができる。
【0028】
フロート62は、中空円柱状に形成され、チェックバルブ61の下端突起部61dがフロート62の中空部62aに挿入される位置に設けられている。フロート62は、オイルより比重が小さくオイルに浮遊可能で高い耐油性を有する発泡NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)で構成されており、通常時(下方からオイルの流入がない状態において)は、図2(a)に示すように、複数のリブ64に載置された状態になっている。リブ64は、その上面にフロート載置面64aを有し、フロート62をそのそれぞれのフロート載置面64aに水平に載置することができるようになっている。
【0029】
ところで、上述したように、流入側圧力が高くなりオイル流路の油面が上昇すると、フロート62はその油面がフロート62の下部に達した後下方から浮力が加えられ上方に移動するようになる。そして、フロート62の上面がチェックバルブ61の下側係止部61bの下面に当接し、さらに、フロート62がチェックバルブ61を上方に押し上げ、図2(b)に示すように、チェックバルブ61の下側係止部61bの上面とバルブ支持部63c及び外縁部63aの下面とが密着した状態になるため、オイル排出部63の下方からオイルが流出空間Sbに流入することを防止することが可能になっている。
【0030】
以上のように構成されたエアフィルタ1において、流入空間Saと流出空間Sbとの間の圧力差が高くなり、バイパスバルブ30によっても上記圧力差を低減させることができない場合におけるチェックバルブ61とフロート62の動作の例について以下で図3を参照しながら説明する。図3は、クランクケース200からオイルミストを排出する排出孔とエアクリーナ100の間にエアフィルタ1が配設されたイメージを示している。なお、図3においては、エアフィルタ1の濾材51、チェックバルブ61、フロート62以外の部材、及びエアクリーナ100、クランクケース200の詳細な構成は省略して図示している。
【0031】
まず、エンジンを停止している時は流入空間Saの圧力(以下、流入側圧力Paとする)、流出空間Sbの圧力(以下、流出側圧力Pbとする)は共に零となっており、エンジンを起動すると、クランクケース200内部の圧力とともに流入側圧力Paが上昇する。また、エンジンを起動した後はエアクリーナ100からクランクケース200の吸気系へ気体が流出するため圧力損失が発生し、流出側圧力Pbは−20mmAq(ミリアクア)となる。よって、図3(a)に示すように、例えば流入側圧力Paが30mmAqとなったときの流入側圧力Paと流出側圧力Pbとの差圧、すなわちフィルタエレメント50に付与される抵抗の大きさ(以下、エレメント抵抗ΔPとする)は50mmAqとなる。このエレメント抵抗ΔPの値が大きくなるとドレン部60とオイルパンを連通させるオイル流路におけるオイルの油面が上昇し、図3(b)に示すように、流入側圧力Paが100mmAqとなったときは、エレメント抵抗ΔPは120mmAqとなり、流入側圧力Paが30mmAqであったときと比較して油面の位置が上昇している。
【0032】
さらに、流入側圧力Paの値が大きくなり280mmAqにまで達すると、エレメント抵抗ΔPは300mmAqとなるが、このとき、油面の位置はドレン部60にまで達し、フロート62の下面に油面が到達した後フロート62に下方から浮力が付与されフロート62が油面とともに上昇する。そして、フロートの上面62がチェックバルブ61の下側係止部61bの下面に当接するとともにフロート62がチェックバルブ61を上方に押し上げ、チェックバルブ61の下側係止部61bの上面とオイル排出部63の外縁部63a及びバルブ支持部63cの下面が密着する。従って、チェックバルブ61が排出孔63bを下方から上方に確実に塞ぐため、オイルのエアフィルタ1への流入を防止することができる。
【0033】
以上、本実施形態では、チェックバルブ61及びフロート62により、流入空間Saと流出空間Sbの圧力差により発生するオイルの流出空間Sbへの逆流を防止することが可能になる。なお、上記の説明では、流入空間Saの圧力及び流出空間Sbの圧力について数値を基に説明したが、これらの数値に限定されることはない。また、上記チェックバルブ61及びフロート62を用いてオイルのエアフィルタ1への流入を防止するという本発明の趣旨を逸脱しなければエアフィルタ1の構成、並びにチェックバルブ61及びフロート62の形状、並びにリブ64の個数も上記実施形態に限定されることなく適宜改良可能である。
【0034】
また、上述した実施形態では、チェックバルブ61としてフロロシリコンゴム、フロート62として発泡NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を用いた例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、チェックバルブ61については、その下側係止部61bの上面(排出孔63bを塞ぐ面)が高いシール性を有する材料で形成されていればよく、アクリロニトリルゴム、ヒドリンゴム等を使用することもできる。また、フロート62については、ポリウレタンや、耐油発泡スチロール等、本発明を構成するフロートに必要な機能(少なくとも、オイルより比重が小さく、耐油性を有し、チェックバルブ61を上方に押し上げる機能)を得られる材料であれば別のものを用いてもよい。さらに、チェックバルブの上面をシール性の高い材料として、それ以外の部分の材料を上記フロートと同じ材料にすれば、フロート62を省略しチェックバルブのみで上記実施形態と同じ効果を得ることも可能である。
【0035】
なお、上述した実施形態では、バイパスバルブ30が設けられたエアフィルタ1を対象として、エアフィルタ1へのオイルの流入を防止する例について説明したが、バイパスバルブ30が設けられていないエアフィルタに対しても、本発明を適用することができる。
【0036】
そして、上述した実施形態では、蛇腹状に折り曲げられた濾材が巻きつけられているフィルタエレメント50について説明したが、フィルタエレメント50または濾材51については、所定の厚さを有したグラスファイバー、不織布等によって円筒状に形成されたものや、これらの素材を組み合わせて形成されたもの、若しくは円筒状に形成された焼結品でもよく、濾過する液体や除去する固形物等に合わせて最適な素材及び形状を選択することができる。
【符号の説明】
【0037】
S エレメント配設空間 Sa 流入空間
Sb 流出空間 1 エアフィルタ
2 流入孔 3 流出孔
10 フィルタケース 11 上部ケース半体
12 下部ケース半体 20 PCVバルブ
30 バイパスバルブ 50 フィルタエレメント
51 濾材 52 インナーチューブ
60 ドレン部 61 チェックバルブ
62 フロート 63 オイル排出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエレメント配設空間を有し前記エレメント配設空間と外部とを連通させる流入孔及び流出孔が形成されたフィルタケースと、
前記エレメント配設空間を前記流入孔に連通する流入空間と前記流出孔に連通する流出空間とに二分させて前記エレメント配設空間に取り付けられ、前記流入孔から流入された気体からオイルミストを凝集するフィルタエレメントと、
前記フィルタケースの下部に上下に貫通して設けられ、前記フィルタエレメントにより凝集されて前記フィルタケースの下部に流下したオイルを流入させるオイル排出孔と、
前記オイル排出孔の下部近傍に上下移動可能に設けられ、下方から前記オイル排出孔を覆うことが可能な封止手段と、
前記フィルタケースの下部に設けられ、前記封止手段を上下移動可能に収容する収容部材とを備えたことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記封止手段は、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記封止手段は、前記収容部材に収容された状態で上下移動可能に設けられた弁体と、前記弁体の下部近傍に設けられ、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材とにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項1】
内部にエレメント配設空間を有し前記エレメント配設空間と外部とを連通させる流入孔及び流出孔が形成されたフィルタケースと、
前記エレメント配設空間を前記流入孔に連通する流入空間と前記流出孔に連通する流出空間とに二分させて前記エレメント配設空間に取り付けられ、前記流入孔から流入された気体からオイルミストを凝集するフィルタエレメントと、
前記フィルタケースの下部に上下に貫通して設けられ、前記フィルタエレメントにより凝集されて前記フィルタケースの下部に流下したオイルを流入させるオイル排出孔と、
前記オイル排出孔の下部近傍に上下移動可能に設けられ、下方から前記オイル排出孔を覆うことが可能な封止手段と、
前記フィルタケースの下部に設けられ、前記封止手段を上下移動可能に収容する収容部材とを備えたことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記封止手段は、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記封止手段は、前記収容部材に収容された状態で上下移動可能に設けられた弁体と、前記弁体の下部近傍に設けられ、前記オイルに浮遊可能な材料から成るフロート部材とにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2011−169222(P2011−169222A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33407(P2010−33407)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000252252)和興フィルタテクノロジー株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000252252)和興フィルタテクノロジー株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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