説明

エアロゾル分解を使用するガラスフリット粉末の製造方法

本発明は、耐食性反応管、反応管の内側に不動態化または耐食性コーティングを提供する方法、および耐食性反応管を使用して高ビスマスガラス粉末を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性反応管、不動態化または耐食性コーティングを反応管の内側に設ける方法、および耐食性反応管を使用した高ビスマスガラス粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製品の用途では、高純度、制御された化学的性質、球状形態、小さな平均サイズ、狭いサイズ分布、ならびに凝集がほとんどまたはまったくないことの中の1つ以上の性質を有するガラス粉末が必要となる。このような性質を必要とするガラス粉末の用途の例としては、電子デバイスの製造に使用される厚膜ペーストが挙げられるが、これに限定されるものではない。厚膜ペーストは、有機ビヒクル中の粉体の混合物であり、ペーストが基体に塗布された後で高温で組成物を焼成することによって有機ビヒクルは除去される。
【0003】
前駆体溶液の霧化液体スプレーのエアロゾル分解は、ほぼ球形のガラス粒子を製造するのに有用な方法である。このような方法においては、最終ガラス中に望ましい元素を含有する前駆体溶液を霧化してエアロゾルを形成する。エアロゾル粒子は反応管に通され、そこで溶媒が除去され、エアロゾル粒子は、前駆体化合物を製品ガラス粒子に変換するのに十分高い温度まで加熱される。これらの高温において、反応管の構成に好適な材料を使用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス粉末の製造に有用な改善されたエアロゾル法が必要とされている。改善された性質を有するガラス、およびガラスの製造方法も必要とされている。さらに、エアロゾル法によるガラスの製造方法に有用な改善された装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、酸化環境中での高温におけるビスマス含有化合物、およびビスマスとアルカリとを含有する化合物による腐食に対して抵抗性であるセラミックまたはガラス−セラミック反応管と、二酸化ケイ素層およびケイ酸ビスマス層からなる保護コーティングを形成し、その結果得られる管をエアロゾル反応の条件下で耐食性にする方法と、高ビスマス含有ガラス、およびビスマスとアルカリとを含有するガラスを製造するためのこの管の使用とに関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
大規模な工業プロセスの製造において使用される化学反応は、材料を製造するために堅牢、高品質、高生産性で、費用対効果の高い方法を維持するために、多くの要因を考慮する必要がある。本発明の主題となるこのような化学反応の1つは、所望のガラス性能および性質を実現するために、最終ガラス粉末が、比較的高濃度のビスマスイオン、ならびにリチウム、ナトリウム、および/またはカリウムなどのアルカリイオンなどの他のイオンを含有することができるガラス粒子の製造である。
【0007】
本発明は、ガラス粉末の製造に有用な改善されたエアロゾル法に関する。一実施形態において、これらのガラス粉末は、比較的高濃度のビスマスイオンを含有することができる。さらに、本発明は、改善された性質を有するガラス、およびガラスの製造方法に関する。さらに、本発明は、エアロゾル法によるガラスの製造方法において有用な改善された装置に関する。
【0008】
エアロゾル法によるガラスの製造方法において、ガラス材料は、反応管中でエアロゾル化することができる。ガラス材料をエアロゾル化する方法において、高濃度のビスマスを含有するガラス材料などの特定のガラス材料の存在下で、反応管が腐食することが認識されていた。したがって、エアロゾル法によりガラスを製造する改善された方法、エアロゾル法に使用される改善された装置、改善された装置を使用してエアロゾル法によって製造されたガラスが必要とされていることが認識されていた。
【0009】
被覆された管
本発明の一実施形態において、被覆された管が提供される。この実施形態の一態様において、被覆された管は、反応管であってよく、エアロゾル法によるガラスの製造方法に使用することができる。本発明の被覆された管は、高温プロセス(たとえば、500〜1300℃)に適した物理的および化学的性質を有する。一実施形態において、本発明の管は、連続運転において使用される能力を有することができ、周囲温度から運転の最高温度までの間の熱サイクルに耐えることができ、6か月以上の有効耐用寿命を有することができる。一実施形態において、被覆された管は、エアロゾルの環境において耐食性となることができる。腐食に対して抵抗性であることで、管材料によるガラス粉末の汚染を防止することができる。さらに、腐食に対して抵抗性であることで、製造プロセス中の管の破壊を防止することができる。
【0010】
一実施形態において、最初の管は、セラミック、ガラス−セラミック、ガラス、および金属などの当業者に認められている1種類以上の種々の材料でできていてよい。一実施形態において、管は、Hexoloy(登録商標)SiCおよび反応焼結(Reaction Bonded)SiCの管およびクーポンからなる群から選択することができる。一実施形態において、最初の管は、炭化ケイ素、反応焼結炭化ケイ素、α焼結炭化ケイ素(たとえばHexoloy(登録商標)SiC)、および窒化ケイ素の1種類以上の材料を含むことができる。一実施形態において、最初の管は反応焼結炭化ケイ素を含むことができる。
【0011】
参照により本明細書に援用されるHampden−Smitらの米国特許第6,338,809号明細書、およびKodasらによる米国特許第6,866,929号明細書には、ムライト、溶融シリカ、およびアルミナなどのセラミック材料でできた反応管、または金属管が記載されている。
【0012】
一実施形態は、酸化雰囲気中、高温においてビスマス含有化合物、およびビスマスとアルカリとを含有する化合物による腐食に対して抵抗性である被覆されたセラミックまたはガラス−セラミック反応管であって、管の内側上のコーティングが二酸化ケイ素層およびケイ酸ビスマス層を含む、反応管に関する。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「腐食」は、反応管中に不要なまたは望ましくない化学的または物理的変化として定義される。腐食の一例は、エアロゾル前駆体、あるいは反応管に対するあらゆる化学的または物理的な攻撃による反応管の溶解または浸透であり、これによって、反応管が破壊されたり、製造されるガラス粉末の汚染が生じたりすることがあり、それによって、ガラス粉末の製造における反応管の使用寿命が終了する。さらに、高温におけるエアロゾルに対する反応管の固有の耐久性または堅牢性のあらゆる機構、反応管の通常の(固有の)寿命を大幅に引き伸ばすことができるあらゆる機構が、「耐食性」と定義される。長い耐用寿命と、管の破壊および/または反応管の使用寿命の終了の原因となる反応管に対する化学的または物理的損傷の痕跡がわずかであることとは、本発明の状況における反応管の有用性の重要な特性であると見なされる。
【0014】
本発明において使用されるセラミックの定義は、W.D.Kingery、H.K.Bowen,およびD.R.Uhlmannによる“Introduction To Ceramics”:「セラミックは、それらの必須成分として無機非金属材料を有し、大部分が無機非金属材料で構成される固体物品の製造および使用の分野および科学として(定義される)。セラミック材料の例は、アルミナ、クリストバライト(crystoballite)、α石英、ムライト、カイヤナイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸イットリウムジルコニウムであってよい」を採用している。
【0015】
本発明における使用が意図された種々の形態の反応管は、当業者によって認められている方法によって製造することができる。エアロゾル法に必要な具体的な形状および許容範囲は、製造方法の選択の際に考慮することができる。管の製造に使用される代表的な製造方法としては、スリップキャスト、成形、または押出成形が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
金属、金属合金、鋼などの金属混合物、ステンレス鋼、白金およびその合金、Inconel(登録商標)(オーステナイトニッケル基超合金の一群を指すSpecial Metals Corporationの登録商標)、タングステン、モリブデン、ならびにタングステン−モリブデン合金は、周囲条件下の反応、特に高温および/または高圧、および腐食環境における反応の反応容器、または反応管を構成する材料として使用されることが多い。
【0017】
α焼結炭化ケイ素(またはSiC)は、常圧焼結SiCとしても知られている。この材料は、典型的には十分に緻密であり、最終焼成形状中に1パーセント未満の多孔度を有する。この材料は、多孔度が低いために、ほぼガラス状の外観を有する。この材料から製造される形状は、典型的にはアイソスタティックプレスまたは押出成形によって形成され、SiC微粉末が最終的またはほぼ最終的な形状に圧縮される。次に、ある程度生加工を行って、焼成前の最終形状を得ることができる。次にこれを1500℃を超える高温で焼成して、焼結工程を完了させると、サイズの収縮が15パーセントを超える。α焼結SiCは非常に強度の高い材料であるが、破壊靱性は非常に低い。もし材料中に亀裂が生じると、通常は突発的に破壊される。また、この材料は、加工技術のために、大きさが制限される。この材料の直径が4インチを超える管は製造が非常に困難であり、88インチを超える長さは現在のところ不可能である。
【0018】
α焼結SiCは、熱電対保護管、窯の付属品、シール、熱交換器の管材料、およびローラーとして一般に使用されている。非酸化物の化学的性質を有するので、この材料の酸化は1500℃を超える場合に問題となる。この温度より低いと、α焼結SiCは、保護酸化物層をその表面上に維持し、この層がさらなる酸化から保護する。
【0019】
反応焼結SiCは、十分に緻密化した材料であり、SiC結晶粒の骨格網目構造で構成され、その本体中の格子間の隙間は金属ケイ素で満たされている。この材料は、セラミック粉末の加圧成形またはスリップキャストのいずれかによって最終形状にすることによって製造される。次にこの材料を炭素およびケイ素の存在下で焼成することによって、多孔質体中に浸透させる。炭素とケイ素との間の反応によって、SiCのネックがあらかじめ形成されたSiC結晶粒を互いに結合させる。さらなるケイ素は材料の孔隙中に残存するため、実質的に孔隙が存在しない。この反応焼結ステップ中の寸法変化は非常に少ない。
【0020】
反応焼結SiCは、典型的にはα焼結SiCほど強度が高くないが、ケイ素相のために、はるかに高い破壊靱性を有する。RBSiCは、非常に大きな形状で製造することができ、主として弱いグリーン体、および加熱炉の大きさに関する取り扱いの問題のために大きさが制限される。RBSiCは、典型的には窯の付属品、熱交換器の管、耐摩耗性保護形状、および装甲として使用される。α焼結SiCと同様に、不動態化酸化物層を形成し、それによって高温におけるさらなる酸化から保護される。RBSiCは、ケイ素相が軟化するため、1370℃を超える温度では通常は使用されない。
【0021】
管のコーティング
本発明の一実施形態においては、被覆された管は、反応管の内側にコーティングを含むことができる。コーティングは、二酸化ケイ素、ケイ酸ビスマス、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の成分を含むことができる。コーティングは1つ以上の層を含むことができる。この1つ以上の層は、二酸化ケイ素層、ケイ酸ビスマス層、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の層を含むことができる。
【0022】
一実施形態において、二酸化ケイ素コーティングは、クリストバライト(cristoballite)、石英、およびトリジマイトからなる群から選択される1つ以上の結晶形態を含むことができる。一実施形態において、ケイ酸ビスマスコーティングは、結晶性BiSi12、および成分BiとSiOとを含む非晶質材料からなる群から選択される1つ以上の成分を含むことができる。さらなる一態様においては、非晶質材料は近似組成2Bi.3SiOを含むことができる。
【0023】
被覆された管は、ビスマス含有組成物、アルカリ含有組成物、およびそれらの混合物の存在下で耐食性になることができる。この実施形態の一態様において、被覆された管は、高温(500℃〜1300℃)の存在下、酸化環境中で耐食性となることができる。
【0024】
一実施形態において、管またはクーポンの上に形成されたコーティングは、結晶シリカの内層と、結晶性および非晶質のケイ酸ビスマスを含む外層とを含むことができる。一実施形態において、結晶シリカ層は、薄い(約30ミクロン)層であってよく、柱状粒子を含むことができ、炭化ケイ素基体に接着させることができる。
【0025】
一実施形態において、ケイ酸ビスマス層は、結晶シリカ層よりも厚い層であってよく;ケイ酸ビスマス層は大部分がガラス質であってよく、ある程度の結晶ドメインを含有することができる。この層はビスマスリッチであってよく、エネルギー分散分光分析装置を取り付けた走査型電子顕微鏡を使用して測定して、Bi/Si比が>1であってよく、一実施形態においては、約2.7〜4.0の範囲内であってよい。ガラス質層中、ある程度の結晶シリカドメインも存在する。上記コーティングを、Hexoloy(登録商標)SiC上、および反応焼結SiC管上の両方で評価した。
【0026】
被覆された管の製造方法
一実施形態において、コーティングは種々の方法によって形成することができる。これらの方法は、当業者には認識されており、このような方法として、たとえば、プラズマ溶射、溶射、耐食性層を形成するための管の前処理、ならびにビスマス含有ガラス粉末、およびビスマスとアルカリとを含有するガラス粉末の製造プロセス中の耐食性層の形成が挙げられる。コーティングは、好適な有機媒体中のケイ酸ビスマスガラスパワー(glass power)の分散物を使用し、この分散させた材料を間の内側に被覆し、分散物を乾燥させて溶媒を除去し、次に被覆された管を好適な温度で焼成して、ケイ酸ビスマス層を溶融させて形成することもできる。一実施形態において、ケイ酸ビスマス層の形成に500℃〜1300℃の温度を使用することができる。一実施形態においては、この温度は700℃〜1000℃である。
【0027】
被覆された管を使用したガラス粉末の製造方法
本発明の一実施形態は、本明細書に記載の被覆された管を使用したガラス粉末の製造方法に関する。この実施形態の一態様は、本明細書に記載の被覆された管を使用したビスマス含有ガラス粉末、アルカリ含有ガラス粉末、またはそれらの混合物の製造方法に関する。一実施形態において、この方法はエアロゾル分解法を使用する。エアロゾル化法は、本明細書に参照により援用されるKodasらの米国特許第6,360,562号明細書中に詳細に記載されている。この実施形態の一態様において、被覆された管を使用して高ビスマス含有および/またはアルカリ含有ガラス粉末を製造するエアロゾル分解法は、約48時間より長い時間を要する場合がある。一実施形態において、この方法は、酸化雰囲気中で行うことができる。この実施形態の一態様においては、酸化雰囲気は空気であってよい。
【0028】
一実施形態において、耐食性反応管を使用できる温度範囲は非常に広く、500℃〜1300℃の範囲である。一実施形態においては、この温度は700℃〜1000℃である。
【0029】
ガラス
本発明の一実施形態は、エアロゾル分解を使用したガラス粉末の製造方法に関する。本発明のさらなる一実施形態は、本明細書に記載の方法によって製造されたガラスに関する。
【0030】
一実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して複合ガラスを製造することができる。本明細書において使用される場合、複合ガラスは、構造を形成する少なくとも1種類の酸化物(たとえばSiO)と、少なくとも1種類のさらなる酸化物(たとえばB)とを含むガラスである。複合ガラスとしては、2成分、3成分、または4成分のガラス、ならびに5つ以上の成分を含むガラスが挙げられる。
【0031】
本明細書において使用される場合、ガラス粉末またはガラス粒子は、たとえば粉末のX線回折分析によって測定されるように、主として非晶質である無機材料である。ガラスは、長距離(結晶)の秩序を有さない不規則な構造を特徴とすることができる。微粉砕されたガラス粉末は、ガラスフリットまたはフィラーと呼ばれることがある。
【0032】
ガラス粉末は、従来のガラス製造技術によって一般に製造される。ガラスは、所望の成分を秤量し、次に加熱炉中で、白金合金るつぼを使用して混合して溶融混合物を形成することによって製造される。当技術分野では周知のように、1000℃〜1500℃以上のピーク温度で、溶融物が全体的に液体となり均一となる時間、加熱が行われる。溶融ガラスを急冷し、次に所望の粒度まで粉砕する。
【0033】
本明細書において定義されるようなガラスは、長距離秩序を有さない固体無機材料として一般に定義される。ガラスは、非晶質の固体または構造と記載される場合もある。したがって、X線回折分析を行った場合に、ガラスは一般に、明確な結晶回折ピークを全く有さない。溶融石英(溶融シリカとも呼ばれる)は、周囲条件および高温のより過酷な条件の両方での反応管の構成材料として一般に使用される非晶質(ガラス)材料の一例である。
【実施例】
【0034】
実施例−ガラス前駆体溶液の調製
以下のステップによってガラス前駆体溶液を調製した:溶液#1。602グラムの水酸化ビスマスBi(OH)を1745.6グラムの硝酸(68〜70%HNO)に加えて溶解させた。撹拌しながら2.5〜2.8キログラムの脱イオン水をゆっくり加え、得られた溶液を70℃に加熱し、2時間維持した。別の容器中に以下の粉末を量り取った:11.34gの硝酸セリウム(Ce(NO−6HO)、4.74gの硝酸アルミニウム(Al(NO−9HO)、29.60gの硝酸リチウム(LiNO)、および142.6gのホウ酸(HBO)。これらの粉末を500mlの水にゆっくりと加え、次にこのスラリーを溶液#1に加えた。このスラリーが入った容器を脱イオン水で数回洗浄することで、すべての材料を溶液#1に移した。7.75グラムのコロイダルシリカ(SiO)を撹拌しながら溶液に加えた。別の容器中で、4.14グラムの水酸化ナトリウム(NaOH)を500mlの脱イオン水中にゆっくりと溶解させた。溶解した水酸化ナトリウム溶液を、コロイダルシリカを含有する溶液に加えた。得られた溶液は透明であった。上記溶液に脱イオン水を加え、最終的な全重量を8023グラムにした。
【0035】
実施例1〜8(クーポン)および実施例9〜15(管)
上記前駆体溶液を使用して、実施例1〜15に示されるような種々の試験を行った。
【0036】
セラミックまたは金属の2つの物理的形状である(1)試験材料から作製したクーポンと、(2)実際に加熱炉中に入れることが可能な試験材料の反応管とを使用した。使用したクーポンは、管の中に入れることが可能な試験材料の小片であった。これらのクーポンを、実験終了後に廃棄可能なInconel反応管中に入れた。
【0037】
これらの実施例において使用した試験条件は以下の通りであった:反応管の寸法は1.0〜1.5インチ(外径)で長さは18〜22インチであり;前駆体ガラス溶液は、超音波変換器を使用して液滴にして、空気とともにエアロゾルを形成させ;空気をキャリアガスとして使用し;このエアロゾルを1.25リットル/分の速度で反応間中に流し;反応管は、1000℃まで加熱した加熱炉中に入れた。クーポンおよび反応管の両方を1000℃においてエアロゾルに曝露した。クーポンおよび反応管の腐食に対する抵抗性と、エアロゾル化ガラス粒子の形成に使用される能力とについて分析した。
【0038】
クーポンの明らかな破壊、またはクーポンのより広範な分析によるクーポン材料の激しい浸透のいずれかによって示されるように、実施例1、2、4、および5のクーポン試験は、試験時間中の反応前駆体による容認できない腐食のため不合格であった。実施例3、6、および7は、グレーズの形成が示され、これは反応質中で数日後に安定となり、試験条件に長時間曝露下後でさえもさらなる変化の兆候は示されなかった。実施例8(白金)は、最初の実験ではあきらかな劣化が示されなかったが、試験条件に長時間曝露した後でより注意深く分析すると、白金へのビスマスの浸透が示され、これは、より長期間の曝露後におそらく破壊が生じたことを示している。
【0039】
実施例9〜13の反応管試験では、プロセス条件における前駆体環境中での長時間後に反応間材料の容認できないほどの劣化が示された。一般にこれらの反応管材料の破壊は、試験中の変色、ピッチング、またはその他のあきらかな材料の減少、膨潤、または破損によって示された。
【0040】
実施例14および15は、試験中に反応管の内面状にグレーズ材料の形成のみが示され、試験環境で数日後にさらなる変化は示されなかった。試験中にその場で形成されたグレーズ材料は、試験環境へのより長期間の曝露中にさらなる劣化に対する障壁として機能した。これらの管は、耐食性であり許容できることが分かった。
【0041】
【表1】

【0042】
クーポンおよび反応管の試験に関して記載した条件を使用して、反応管に通したエアロゾルをガラス粉末に変換した。このガラス粉末は高ビスマス粉末であった。形成されたガラス粉末中の酸化物の重量%は以下の通りであった:84.00%のBi、1.20%のSiO、0.10%のAl、12.50%のB、0.50%のNaO、1.00%のLiO、0.70%のCeO
【0043】
一実施形態において、ガラス粒子は、球状形態、小さな平均粒度、および狭い粒度分布を有する。一実施形態において、ガラス粉末は、実質的に凝集しておらず、高純度である。粒子の平均サイズは粉末の個別の用途により変動するが、粒子の重量平均粒度は、一実施形態においては、少なくとも約0.05μm;別の一実施形態においては、少なくとも約0.1μm;さらなる一実施形態においては、少なくとも約0.3μmであってよい。さらに、この実施形態の一態様においては、平均粒度は約10μm以下であってよい。さらなる一態様においては、重量平均粒度は約5μm以下、特に3μm以下である。本発明の一実施形態によると、ガラス粒子の粉末バッチは狭い粒度分布を有し、そのためガラス粒子の大部分が狭い粒度分布を有し、そのためガラス粒子の大部分がほぼ同じサイズとなる。この実施形態の一態様においては、少なくとも約80重量パーセント、さらなる一実施形態においては、少なくとも約90重量パーセントが、重量平均粒度の2倍以下の大きさである。本発明により製造されたガラス粒子は高純度をも有し、粒子は、約0.1原子パーセントを超える不純物を含まず、一実施形態においては約0.01原子パーセントを超える不純物を含まない。本発明の一実施形態によると、ガラス粒子は緻密である(たとえば中空および多孔質ではない)。この実施形態によると、ガラス粒子は、粒子密度(ヘリウムピクノメトリーによって測定)が理論値の少なくとも約80%、より好ましくは理論値の少なくとも約90%である。本発明の一実施形態によるガラス粒子は実質的に球状の形態をも有する。すなわち、粒子はとがった部分や不規則な形状を有さない。さらに、ガラス粉末は低表面積を有する。粒子が実質的に球状であるため、特定の質量の粉末の全表面積が減少する。一実施形態において、ガラス粉末は、同じ平均粒度を有する単分散球に関して計算される計算幾何学的表面積の約5パーセント以内などの非常に近い表面積を有する。
【0044】
形成されたガラス粉末は球状粒子を含有し、0.9平方メートル/グラムの低表面積(MicromeriticsのFlowsorb II,Model 2300を使用して1点BET法を使用して測定)と、d10が0.53ミクロン、d50が0.92ミクロン、d90が1.8ミクロン、およびd95が2.6ミクロンの狭い粒度分布(Leeds and Northrup のMicrotrac(登録商標)X100装置を使用して測定)とを有した。
【0045】
比較例1−石英管
比較例として、石英から作製した管を、表に示されるように試験した。管の破壊形態として、管材料の反応による減少によって管の脆弱化および最終的な破損と、管材料とは大きく異なる熱膨張を有する化合物が形成された場合の加熱または冷却による破壊とが含まれた。
【0046】
比較例2−アルミナ管
比較例として、アルミナ管を、表に示されるように試験した。管の破壊形態として、変色およびピッチングが含まれた(アルミナ管の内側の領域からアルミナが除去された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管の内側にコーティングを含む被覆された反応管であって、前記コーティングが、二酸化ケイ素、ケイ酸ビスマス、およびそれらの混合物からなる群から選択される1種類以上の成分を含む、被覆された反応管。
【請求項2】
前記被覆された管が被覆された反応管である、請求項1に記載の被覆された管。
【請求項3】
前記コーティングが1つ以上の層を含む、請求項1に記載の被覆された管。
【請求項4】
前記1つ以上の層が、二酸化ケイ素層およびケイ酸ビスマス層からなる群から選択される1つ以上の層を含む、請求項3に記載の被覆された管。
【請求項5】
前記管がセラミックおよびガラスからなる群から選択される1種類以上の材料を含む、請求項1に記載の被覆された管。
【請求項6】
前記被覆された反応管が高温(>700℃)において酸化環境下で、ビスマス含有化合物、およびビスマスとアルカリとを含有する化合物による腐食に対して抵抗性である、請求項1に記載の被覆された管。
【請求項7】
セラミック材料を含む前記管が炭化ケイ素、反応焼結炭化ケイ素、α焼結炭化ケイ素(たとえば、Hexoloy(登録商標))、および窒化ケイ素からなる群から選択される1種類以上の材料を含む、請求項5に記載の被覆された管。
【請求項8】
前記二酸化ケイ素層が、クリストバライト(cristoballite)、石英、およびトリジマイトからなる群から選択される1つ以上の結晶形態を含む、請求項4に記載の被覆された管。
【請求項9】
前記ケイ酸ビスマス層が、結晶性BiSi12、およびBiとSiOとを含む非晶質材料からなる群から選択される1種類以上の成分を含む、請求項4に記載の被覆された管。
【請求項10】
前記非晶質材料が2Bi・3SiOを含む、請求項9に記載の被覆された管。
【請求項11】
被覆された反応管の製造方法であって:
a.700℃を超える温度でケイ素含有前駆体および/またはビスマス含有前駆体を含有するエアロゾルを熱分解することによって、その場でシリカ層を形成するステップと;
b.ビスマス前駆体を含有するエアロゾルを熱分解することによって、その場でケイ酸ビスマス層を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
請求項2に記載の前記二酸化ケイ素およびケイ酸ビスマス層が、700℃を超える温度でケイ素含有前駆体および/またはビスマス含有前駆体を含有するエアロゾルを熱分解することによってその場で形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応管の内側のコーティングが二酸化ケイ素およびケイ酸ビスマスを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ケイ酸ビスマス層を形成するステップが:
(a)好適な有機媒体中のケイ酸ビスマスガラス粉末の分散物を前記反応管の内側に塗布するステップと;
(b)前記分散物を乾燥させるステップと;
(c)被覆された管を焼成するステップであって、焼成によって前記ケイ酸ビスマス層を溶融させるステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ酸ビスマスが、プラズマおよび溶射からなる群から選択される方法によって塗布される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法によって製造された被覆された反応管。
【請求項17】
二酸化ケイ素層およびケイ酸ビスマス層からなる内側のコーティングで構成されるセラミックまたはガラスの反応管を使用して、ビスマス含有前駆体、アルカリ含有前駆体、およびその他の前駆体を含む水溶液から、エアロゾルを形成し、続いて高温で分解させることによって、アルカリおよびビスマスを含有するガラスフリット粉末を製造する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法によって製造されたガラスフリット粉末。

【公表番号】特表2011−526878(P2011−526878A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516864(P2011−516864)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049469
【国際公開番号】WO2010/003035
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】