説明

エクストルージョン塗布装置及び塗布フィルムの製造方法

【課題】ビード幅方向の両端部のビード状態を安定化することで、塗布膜の両端部の濡れ広がりによる膜厚低下を抑えることができるエクストルージョン塗布装置を提供する。
【解決手段】ウエブ22とリップ面18とを近接させた状態で、ビードL1を介して塗布液Lをウエブ22に塗布するエクストルージョン塗布装置であって、スリット16の幅方向両端部には、塗布幅を規制するスペーサー24が設けられ、該スペーサー24には、上流側のリップ面18bを覆う先端部24Aが形成されている。該スペーサーには屈曲部24Bがあり、少なくともその部分はHRA70以上の材質を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクストルージョン塗布装置及び塗布フィルムの製造方法に係り、特に、連続走行する帯状の支持体とリップ面とを近接させた状態で、ビードを介して塗布液を支持体に塗布するエクストルージョン塗布装置及び塗布フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エクストルージョン塗布装置は、スロットダイ内のポケット部に供給した塗布液を、該ポケット部で塗布幅方向(ウエブ幅方向と同じ)に広流し、ポケット部に連通する狭隘な間隙を有するスリット(スロットともいう)先端から塗布液を吐出する。一方、塗布液が塗布されるウエブは、バックアップローラに巻き掛けられて走行すると共に、スロットダイ先端とウエブとの間のリップクリアランスにスリット先端から吐出された塗布液のビード(塗布液溜まり)を形成し、このビードを介してウエブに塗布液を塗布する。また、ウエブに塗布される塗布液の塗布幅は、スリットの幅方向(ウエブ幅方向と同じ)の両端部に挿入されたスペーサー同士の距離によって規制される。
【0003】
かかるエクストルージョン塗布装置による安定塗布において、安定したビードが形成されるか否かが非常に重要になる。特に、近年は、生産性の向上から、塗布ラインを高速化(ウエブの走行速度が高速化)し、且つ塗布される塗布液の薄膜化が要求されている。このような塗布の高速化、及び薄膜化を行うと、ビード幅方向(ウエブ幅方向と同じ)の両端部からビードが切れてビードが破壊することが多く、ビード幅方向の両端部におけるビード状態を如何に安定化させるかが重要になる。ビード幅方向端部におけるビードが安定化しないと、塗布された塗布膜の幅方向に膜厚分布が生じる。
【0004】
ビードを安定化する一つの方法として、例えば特許文献1に開示されるように、ビードのウエブ走行方向上流側を引っ張るように減圧することが行われている。
【0005】
また、塗布幅方向におけるスロットダイのウエブ幅方向のスロット間隙分布や、塗布幅方向におけるリップ−ウエブ間隙のウエブ幅方向分布を高精度に改善することにより、薄膜塗布の幅方向における膜厚の均一性を向上させるようにした発明は数多くある。
【0006】
しかし、スロットダイにおいて、低粘度(例えば10cP以下)の塗布液を塗布する場合、狭いリップクリアランス部における毛管現象が顕著になる。この結果、塗布端部の塗布液は、より外側(ウエブ端方向)に向けて濡れ広がろうとする濡れ広がり現象が発生する。この濡れ広がり現象は、特に薄膜塗布の場合、塗布された塗布膜の塗布幅方向における厚み分布に大きな影響を及ぼす。その結果、最終的に得られた製品の幅方向における性能不均一や、製品有効幅の減少が引き起こされる。
【0007】
特許文献2では、スロットダイの塗布幅を可変するスペーサーの形状を変更することで、この濡れ広がりを抑制することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−300394号公報
【特許文献2】特開2001−170542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のようにビードを減圧するだけでは、ビード幅方向両端部におけるビード状態を充分に安定化することはできない。また、特許文献2のように単にスペーサーの形状を変更するだけでは、塗布端部における塗布液の濡れ広がりを抑制し、塗布膜幅方向での膜厚分布を改善することが充分できなかった。
【0010】
即ち、濡れ広がりは、スロットダイのリップ先端とウエブとの間に形成されるリップ−ウエブ間隙でビードにかかるウエブ幅方向端部方向の毛管力が比較的大きく、搬送中のウエブ上の液から引っ張られる力が比較的小さい状況下で発生する。毛管力は、塗布液の液粘度が高い場合やリップ−ウエブ間隙が広い場合には小さいが、液粘度が低く、リップ−ウエブ間隙を狭くしなければならない薄膜塗布を行う際に大きくなり、濡れ広がりが顕在化する。
【0011】
すなわち、従来より薄膜塗布を行う場合、スロットダイのリップ−ウエブ間隙をより小さくする必要があるため、毛管力は大きくなり、スペーサーの形状を若干変更するだけで濡れ広がりを充分に防ぐことは困難である。また、リップ−ウエブ間隙が小さい場合はウエブの厚みや形状の変動(下塗り層の厚みムラ、下塗り層によるカール、支持体自体の耳ベコ、搬送によるベコ)の影響を受けやすく、特に塗布幅方向の端部のリップ−ウエブ間隙は変動しやすい。このことによって、単にスペーサーの形状を変更しただけで、ビード幅方向の両端部に形成されるピン(ビードのメニスカス位置)を安定に保持することは一層困難である。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ビード幅方向の両端部のビード状態を安定化することで、塗布膜の両端部の濡れ広がりによる膜厚低下を抑えることができるエクストルージョン塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、塗布液が供給されるマニホールドと、該マニホールドから前記塗布液が通るスリットを介してウエブ走行方向上流側及び下流側のリップ面上に塗布液を吐出する塗布液吐出口と、からなり、連続走行する帯状の支持体と前記リップ面とを近接させた状態で、ビードを介して塗布液を前記支持体に塗布するエクストルージョン塗布装置であって、前記スリットの幅方向両端部には、塗布幅を規制するスペーサーが設けられ、該スペーサーは屈曲部が形成され、さらに、前記上流側のリップ面を覆う先端部が形成され、該スペーサーの前記屈曲部がHRA70以上の硬度を有する素材から成ることを特徴とするエクストルージョン塗布装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、塗布幅規制のためにスリット両端部に挿入するスペーサーであって、屈曲部を有し、その先端部がエクストルージョン塗布装置のウエブ走行方向上流側のリップ面を覆うスペーサーを、スリット先端から突出させて、連続走行するウエブ面に近接させて塗布するようにしたことで、塗布開始時及び塗布中におけるビード幅方向の両端部のビード状態を安定化することができる。即ち、低粘度、低塗布量の塗布液をエクストルージョン塗布装置で塗布する際、メニスカスが不安定になりやすく濡れ広がってしまうのだが、上流側のリップ面まで掛けるスペーサーによって濡れ広がりを物理的にせき止めることで濡れ広がりを抑制するようにした。
【0015】
また、本発明では、スペーサーは少なくとも屈曲部がHRA(ロックウェル硬さ)70以上の硬い素材であるようにする。スペーサーにプラスチックなどの柔らかい材質を用いると、加工精度が出なかったり、使用時に曲がってしまい、しっかりリップ面とスペーサーが密着できなくなってしまってスペーサー先端がウエブに触れて ウエブが削れてゴミが出たり、スペーサーとリップとの隙間から塗布液が漏れ広がったりする。なお、HRAが70以上の素材としては、超鋼やセラミック(アルミナやジルコニア)などが挙げられる。
【0016】
ここで、濡れ広がりをせき止めるためには、スペーサーとウエブとの距離は短いほど効果が上がる。また、上流側のリップ面を覆うスペーサーの長さは、上流側のリップ面を長く覆うほど、効果が上がる。上流側のリップ面を覆う長さが短いと上流側のリップ面の下部に塗布液が濡れ広がってしまうためである。
【0017】
したがって、本発明では、前記スペーサーが前記上流側のリップ面を覆う長/前記上流側のリップ面長さの割合が、50%以上であることが好ましい。なお、上限としては、上流側のリップ面の長さ以下であることが好ましい。上流側のリップ面の長さよりも多くスペーサーで覆っても特に問題はないが、濡れ広がりを抑えるには上流側のリップ面の長さまでで十分である。
【0018】
また、本発明では、前記先端部を前記上流側のリップから突出させる厚みは、10μm以上であることが好ましい。10μm以上の厚みがあることで効果的に濡れ広がりを抑えることができる。
【0019】
さらに、本発明では、前記ウエブに塗布される塗布液の液粘度は、10cP以下である場合に特に効果が発揮される。
【0020】
前述の液粘度10cP以下とは、本発明の効果が特に発揮される塗布液の液粘度を規定したものである。なお、液粘度は小さければ小さいほど本発明の効果が発揮され、液粘度が5cp以下の場合はさらに効果が発揮され、液粘度が3cP以下の場合はさらに効果が発揮され、液粘度が1cP以下ではさらに効果が発揮される。
【0021】
本発明のエクストルージョン塗布装置を用いて製造された塗布フィルムは、ビード幅方向の両端部のビード状態を安定化することができるので、両端部の塗布液の濡れ広がりを片側4.0mm未満とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のエクストルージョン塗布装置によれば、ビード幅方向の両端部のビード状態を安定化することができるので、塗布膜の両端部の濡れ広がりによる膜厚低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のエクストルージョン塗布装置を上から見た平面図
【図2】本発明のエクストルージョン塗布装置の側面断面図
【図3】本発明のエクストルージョン塗布装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って、本発明に係るエクストルージョン塗布装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0025】
図1は、本発明のエクストルージョン塗布装置10を上から見た平面図であり、図2は側面断面図であり、図3は要部を示した斜視図である。
【0026】
これらの図に示すように、スロットダイ12は、ヘッド内部にポケット部14と、該ポケット部14に連通する狭隘なスリット16が形成されると共に、スリット16先端の塗布液吐出口がヘッド先端の略平坦なリップ面18に開口される。ポケット部14の貫通した両端開口部はスロットダイ12の両端面に設けられる側板30,32により閉塞される。
【0027】
そして、一方の側板32を貫通して塗布液をポケット部14に送る送液ライン31に接続される。なお、ポケット部14に塗布液を送る方法としては、ポケット部14の他端側を閉塞して一方側から供給する以外に、ポケット部14の中央部から供給して両側に分流させるタイプ、ポケット部14の一方側から供給し他方向から引き抜くタイプがあり、いずれを適用してもよい。
【0028】
図1〜3においては、バックアップローラ20がスロットダイ12のリップ面18に対向して近接配置され、塗布液Lが塗布されるウエブ22がバックアップローラ20に巻き掛け支持されて矢印方向に連続走行する。ダイ先端のリップ面18とバックアップローラ20上に巻き掛けられたウエブ表面との間隙は、通常、30μm〜300μmの範囲で設定され、塗布厚み、塗布速度、塗布液Lの物性(粘度等)、ビード減圧度等によって適宜設定される。基本的には、液が低粘度なほど濡れ広がりやすいのでスペーサー先端面とウエブとの間隙を狭めたくなるであろう。また、ビード減圧度が高いほどビードはウエブ搬送方向上流側へ引っ張られるので、スペーサーがリップ先端部を覆う長さを長くしたくなるであろう。このように、ビードが濡れ広がらないようにするために適宜スペーサーの厚みとリップ面を覆う長さを調整すればよい。なお、本発明ではスペーサー屈曲部をHRA70以上の硬い素材で形成するので、スペーサー先端部も同じ素材を用いることが製作上簡便である。そのように硬い素材がウエブと接触すると、比較的かなり柔らかいウエブが傷ついてしまう。したがって、スペーサー先端部もHRA70以上の素材にする場合は、スペーサー先端部とウエブが非接触且つ近接となるように、スペーサーの先端部厚みを設定することが好ましい。
【0029】
これにより、スリット16から吐出した塗布液Lは、リップ面18とウエブ22との間に架橋してビードL1(塗布液溜まり、図2参照)を形成し、このビードL1を介して塗布液Lがウエブ22に塗布される。
【0030】
また、ウエブ22に塗布される塗布液Lの塗布幅Aは、図1に示すように、スリット16の幅方向(ウエブ幅方向と同じ)の両端部に挿入された一対のスペーサー24同士の間隔(距離)Bによって規制される。このスペーサー24は、スリット16の先端から突出しており、バックアップローラ20に巻き掛けられたウエブ22の面に近接される。
【0031】
そして、スロットダイ12のポケット部14に供給された塗布液は、ポケット部14でウエブ幅方向に拡流された後、スリット16を上昇してスリット吐出口16Aから吐出される。吐出された塗布液は、塗布ヘッドのリップ面18と、該リップ面18に近接して走行するウエブ22との間でビードを形成しながらウエブ22に塗布される。即ち、スリット先端の吐出口16Aから吐出された塗布液の吐出力とウエブ22が塗布ヘッド先端部を押圧する押圧力がバランスした状態で塗布液がウエブに塗布される。これにより、ウエブ面に極薄の塗布膜が形成される。
【0032】
ここで、本発明では、スペーサー24には、リップ面18のうち上流側のリップ面18aを覆う先端部24Aが形成されている。
【0033】
スペーサー24の材料としては、少なくとも屈曲部24BがHRA(ロックウェル硬さ)が70以上の素材であることが必要であり、具体的には、超硬やセラミック(アルミナやジルコニア)が好ましい。スペーサー24の先端部24Aにプラスチックなどの柔らかい材質(HRAが70未満の金属)を用いると、加工精度が出なかったり、使用時に曲がってしまい、しっかりとリップ面とスペーサーが密着できなくなってしまって先端部24Aがウエブ22に触れて、ウエブが削れてゴミが出たり、スペーサーとリップ面18aとの隙間から塗布液が漏れ広がったりするからである。
【0034】
このように、スペーサー24に上流側のリップ面18aを覆う先端部24Aを形成したもので塗布液を塗布することで、塗布開始時及び塗布中におけるビード幅方向の両端部のビード状態を安定化することができる。即ち、低粘度、低塗布量の塗布液をエクストルージョン塗布装置で塗布する際、メニスカスが不安定になりやすく濡れ広がってしまうが、上流側のリップ面まで掛けるスペーサーによって濡れ広がりを物理的にせき止めることで濡れ広がりを抑制することができる。
【0035】
ここで、「濡れ広がり」とは、塗布液の端部が塗布幅よりも広がってしまうことをいい、図1において、塗布液Lの塗布幅Aと一対のスペーサー24同士の間隔Bとの差を2で割った値が濡れ広がり幅である。
【0036】
なお、スペーサー24が上流側のリップ面18aを覆う長さD(図2参照)は、300μm以上であることが好ましい。ここで、上限としては、上流側のリップ面の長さ以下であることが好ましい。上流側のリップ面18aの長さよりも多くスペーサー24で覆っても特に問題はないが、濡れ広がりを抑えるには上流側のリップ面の長さまでで十分である。
【0037】
また、本発明では、先端部24Aを上流側のリップ面18aから突出させる厚みCは、10μm以上であることが好ましい。10μm以上の厚みがあることで効果的に濡れ広がりを抑えることができる。
【0038】
次に、上記の如く構成されたエクストルージョン塗布装置10の作用について説明する。
【0039】
スロットダイ12内のポケット部14に供給された塗布液Lは、該ポケット部14で塗布幅方向(ウエブ幅方向と同じ)に拡流し、一対のスペーサー24によって塗布幅規制されたスリット16を上昇してスリット先端から吐出される。これにより、スロットダイ12のリップ面18とウエブ22との間隙Cに塗布液Lが架橋し、ビードL1(塗布液溜まり)が形成される。
【0040】
かかる塗布において、ビード幅方向(ウエブ幅方向と同じ)の両端部の塗布膜の濡れ広がりにより膜厚の低下が起こる。
【0041】
例えば、低粘度(10cP以下)の塗布液を薄膜で高速塗布を行う場合には、塗布端部における塗布液の濡れ広がりが大きくなり、ビード幅方向両端部におけるビードが安定化しにくい。これにより、塗布膜の幅方向における膜厚分布が発生する。
【0042】
そこで、本発明では、上流側のリップ面18aを覆う先端部24Aをスペーサー24に設け近接させるようにした。これにより、ビード幅方向の両端部がスペーサー24に接触することで安定して保持されると共に、塗布端部における塗布液の濡れ広がりが抑制される。
【0043】
なお、本実施の形態では、スペーサー24の形状の好ましい態様を示したが、これに限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない形状は全て含まれる。
【実施例1】
【0044】
次に、本発明のエクストルージョン塗布装置の実施例を説明する。
【0045】
試験に供したウエブ、塗布ヘッド、塗布条件、塗布液は次の通りである。
【0046】
ウエブは、幅800mm、厚み15μmのPETフィルムを使用した。
【0047】
塗布ヘッドは、スリット幅が1000mm、スリット間隙0.15mm、ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ350μmのエクストルージョン型の塗布ヘッドを使用した。
【0048】
塗布液は反射防止膜用の塗布液を使用した。この塗布液の屈折率は1.42であり、熱架橋性含フッ素ポリマーの6重量%のメチルエチルケトン溶液(JN−7228、JSR(株)製)93gに、MEK−ST(平均粒径10nm〜20nm、固形分濃度30重量%のSiO2 ゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)8g、メチルエチルケトン94g及びシクロヘキサノン6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルタ(PPE−01)で濾過して、低屈折率層用の塗布液を調製した。塗布液は、粘度が0.5cPであった。
【0049】
試験1では、クロム鋼(HRA65:株式会社伊藤製作所製、クローム鋼球SUJ−2)で作成したスペーサーを設けて、リップ−ウエブ間隙150μmで塗布した。突出厚みは0とした。
【0050】
試験2では、クロム鋼(HRA65:株式会社伊藤製作所製、クローム鋼球SUJ−2)で作成したスペーサーであって先端部をスロット先端から突出させたスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。突出厚みを1000μmとした。
【0051】
試験3では、クロム鋼(HRA65:株式会社伊藤製作所製、クローム鋼球SUJ−2)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを350μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=350÷350=100%)。
【0052】
試験4では、超鋼(HRA89.5:日本タングステン株式会社製、V30)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。ウエブ搬送方向上流側のリップ面をスペーサー先端部が覆う長さを175μm、スペーサーの突出厚みは70μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=175÷350≒50%)。
【0053】
試験5では、超鋼(HRA89.5:日本タングステン株式会社製、V30)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを175μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=175÷350≒50%)。
【0054】
試験6では、超鋼(HRA89.5:日本タングステン株式会社製、V30)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを300μm、突出厚みは10μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=300÷350≒86%)。
【0055】
試験7では、超鋼(HRA89.5:日本タングステン株式会社製、V30)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを350μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=350÷350=100%)。
【0056】
試験8では、アルミナ(HRA85:アズワン株式会社製、アルミナボール SSA-999W-5)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。ウエブ搬送方向上流側のリップ面をスペーサー先端部が覆う長さを175μm、スペーサーの突出厚みは70μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=175÷350≒50%)。
【0057】
試験9では、アルミナ(HRA85:アズワン株式会社製、アルミナボール SSA-999W-5)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを175μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=175÷350≒50%)。
【0058】
試験10では、アルミナ(HRA85:アズワン株式会社製、アルミナボール SSA-999W-5)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを300μm、突出厚みは10μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=300÷350≒86%)。
【0059】
試験11では、アルミナ(HRA85:アズワン株式会社製、アルミナボール SSA-999W-5)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを350μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=350÷350=100%)。
【0060】
試験12では、純タングステン焼結体(HRA70:日本タングステン株式会社製、エスタン)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。ウエブ搬送方向上流側のリップ面をスペーサー先端部が覆う長さを175μm、スペーサーの突出厚みは70μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=175÷350≒50%)。
【0061】
試験13では、(HRA70:日本タングステン株式会社製、エスタン)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを175μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=175÷350≒50%)。
【0062】
試験14では、(HRA70:日本タングステン株式会社製、エスタン)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを300μm、突出厚みは10μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=300÷350≒86%)。
【0063】
試験15では、(HRA70:日本タングステン株式会社製、エスタン)で作成したスペーサーであって上流側のリップ面の先端部を覆うスペーサーをウエブ面に当接させて塗布した。先端部を覆う長さを350μm、突出厚みは140μmとした(ウエブ搬送方向上流側のリップ面を先端部が覆う長さ÷ウエブ搬送方向上流側のリップ面長さ=350÷350=100%)。
【0064】
スペーサーをスロットの両端に挿入して塗布幅を1300、1480、1500mmの3水準に設定した。
【0065】
その結果、実験1〜3では、塗布端部における塗布液の濡れ広がりが7mm〜18mmと大きく、その結果、塗布膜幅方向の膜厚分布が5.7%〜9.5%と大きくなり、光学フィルムを製造する際の目標値である膜厚分布1%以下を達成できなかった。
【0066】
これに対して、実験4〜13では、塗布端部における塗布液の濡れ広がりが1.5mm〜4.5mmと非常に小さく、その結果、塗布膜幅方向の膜厚分布が0.5%〜1.0%と非常に小さくなり、目標の膜厚分布1%以下を達成できた。
【0067】
なお、実験4、8、12では、濡れ広がりが4.5mm、実験5、9、13では、濡れ広がりが4.0mmであったが、実験6、7、10、11、14、15では、濡れ広がりは3.5mm以下であった。
【0068】
以上から、本発明のエクストルージョン塗布装置により塗布された塗布フィルムは、塗布膜の両端部の濡れ広がりによる膜厚低下を抑えることができることが分かる。
【0069】
なお、上記塗布液の溶剤の量を変更し粘度が10cPになるよう調整し、上記のスペーサーを用いて同様の実験を行ったが、同様の傾向となった。
【符号の説明】
【0070】
10…エクストルージョン塗布装置、12…スロットダイ、14…ポケット部、16…スリット、16A…吐出口、18…リップ面、18a…上流側のリップ面、18b…下流側のリップ面、20…バックアップローラ、22…ウエブ、24…スペーサー、24A…先端部、24B…屈曲部、30…側板、31…送液ライン、32…側板、A…塗布幅、B…スペーサー同士の間隔、L…塗布液、L1…ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が供給されるマニホールドと、該マニホールドから前記塗布液が通るスリットを介してウエブ走行方向上流側及び下流側のリップ面上に塗布液を吐出する塗布液吐出口と、からなり、
連続走行する帯状の支持体と前記リップ面とを近接させた状態で、ビードを介して塗布液を前記支持体に塗布するエクストルージョン塗布装置であって、
前記スリットの幅方向両端部には、塗布幅を規制するスペーサーが設けられ、該スペーサーは屈曲部が形成され、さらに、前記上流側のリップ面を覆う先端部が形成され、
該スペーサーの前記屈曲部がHRA70以上の硬度を有する素材から成ることを特徴とするエクストルージョン塗布装置。
【請求項2】
前記スペーサーが前記上流側のリップ面を覆う長さ/前記上流側のリップ面長さの割合が、50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のエクストルージョン塗布装置。
【請求項3】
前記先端部を前記上流側のリップから突出させる厚みは、10μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエクストルージョン塗布装置。
【請求項4】
前記ウエブに塗布される塗布液の液粘度は、10cP以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のエクストルージョン塗布装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する工程を含むことを特徴とする塗布フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記連続走行する帯状の支持体に塗布された塗布液の両端部の濡れ広がりが4.0mm未満であることを特徴とする請求項5に記載の塗布フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200831(P2011−200831A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72509(P2010−72509)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】