説明

エストロゲンレセプタ関連疾患を治療するための化合物および方法

特定の態様において本願が提供する発明は、エストロゲンレセプタ アルファ36の機能を調節するための、エストロゲンレセプタ アルファ36関連疾患を予防および/または治療するための、呼吸性の疾患(例えば、喘息)を予防および/または治療するための、細胞死を誘導する及び/又は細胞増殖を阻害するための、並びに異常な細胞増殖(例えば、癌)が関与する疾患を予防および/または治療するための化合物, 薬学的組成物および方法である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2006年10月25日に出願された米国特許仮出願第60/862,984号の利益を請求するものであり、この仮出願は本明細書に参照によってその全体が援用される。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、エストロゲンレセプタ関連疾患を予防および/または治療するための化合物, 薬学的組成物および方法に関する。
【0003】
[背 景]
エストロゲンは、ヒトの身体において多くの重要な生理的な機能に関与する一群のホルモンである。エストロゲンの機能には、雌性器官を発生させること、妊娠に際して乳房および子宮を準備すること、および出産後の母乳保育が含まれる。また、エストロゲンは、適切な心臓血管機能および骨密度の維持に重要な役割を担っている。エストロゲンは、細胞増殖を刺激し、女性の癌(特に、乳癌および子宮癌)が発生するリスクを増加させえることが知られている。
【0004】
エストロゲンは、標的細胞のエストロジェンレセプタに結合して細胞機能を制御する。二つのタイプのエストロジェンレセプタが、ヒト細胞において発見された(hER-αおよびhER-β)。それらは共通のタンパク質構造を共有し、各々は三つの独立はしているが相互作用する機能的なドメイン; N末端ドメイン(A/B ドメイン), 中心DNA結合ドメイン(Cドメイン), およびC末端リガンド結合ドメイン(D/E/Fドメイン)を有している。N末端ドメインはリガンド非依存性活性化機能(AF-1)を有し、これはリガンドの非存在下でコアクチベータとの相互作用および標的遺伝子の転写活性化に関与する。DNA結合ドメインは、レセプター二量体化および特異的なDNA配列への結合に重要な役割を担っている。C末端リガンド結合ドメインは、リガンド結合を媒介し、リガンド依存性トランス活性化機能(AF-2)を有し、リガンドの存在下で遺伝子の転写を活性化する。
【0005】
完全長のhER-αは、66 kDa タンパク質として同定され、hER-α66と称される。hER-α66は、全ての三つの機能的なドメインを含有する。hER-α66のスプライスバリアントが後に発見され、hER-α46と命名された。hER-α46は、約 46 Kdaの分子量を有し、hER-α66のN末端AF-1ドメインを欠如している。最近、新規の36 kDaのhER-αバリアント(hER-α36)が同定された。そのバリアントは、hER-α66のN末端のAF-1 ドメインおよびC末端のAF-2 ドメインを欠如している(Wang et al., Brochem. Biophys. Res. Commun. 336,1023-1027(2005))。
【0006】
hER-α66は、その標的遺伝子の転写活性化を介してエストロゲン刺激性細胞増殖を媒介することが信じられている。エストロゲンのhER-α66への結合によって、hER-α66のトランス活性化ドメインが活性化され、下流の標的遺伝子の発現が刺激され、最終的に細胞増殖が誘導される。hER-α46によって、膜開始性およびエストロゲン刺激性の急速なNO合成が媒介されることが見出された〔Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 4807-4812 (2003)〕。AF-1 ドメインが欠如しているhER-α46がhER-α66のAF-1 活性を阻害することも示された〔Flouriot, G., EMBO, 19, 4688-4700 (2000)〕。hER-α36はAF-1およびAF-2転写活性化ドメインの両方を欠如しているので、hER-α66およびhER-βのドミナントネガティブインヒビターとして機能し、hER-αおよびhER-βのAF-1およびAF-2機能の両方を阻害する。加えて、hER-α36は主に原形質膜に局在し、細胞増殖を刺激する膜開始性の分裂促進的なエストロゲンシグナル伝達を媒介する。 (Wang et al., Brochem. Biophys. Res. Commun. 336, 1023-1027 (2005); Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103: 9063-9068 (2006))。
【0007】
広範な研究によって、エストロゲンシグナル伝達が古典的な核転写活性化経路同様に非古典的な膜開始性シグナル伝達経路を介して媒介されることが示された。hER-α66 および hER-α46は主に核で機能し、hER-α36は主に核の外側で機能すると思われる。
【0008】
hER-α36がオリジナルのhER-α66のリガンド結合ドメインのヘリックス8-12を欠如し、これによって全体的にhER-α36のリガンド結合特異性が変化することが示された。従って、hER-α36は、hER-α66 および hER-βと異なるリガンドに結合しえる。
【0009】
Epimedium植物は、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用するエストロゲン様化合物を含む。Epimediumの幾つかの異なる種は、伝統的な中医学における漢方薬として何千年も使用されてきた。Epimediumハーブは、インポテンツ, 精液漏, 排尿問題, 腰および膝の疲労および痛み, 女性の不妊症, 無月経, 老人性うつ病(geriatric depression), リウマチ性関節炎, 心不全(cardiovascular failure), 高血圧症, 慢性気管支炎, 狭心症などの多種多様の疾患を治療するために使用されてきた〔Wu et al., Chemicalおよびpharmacological investigations of Epimedium species: a survey, Prog Drug Res. 60:1-57 (2003)〕。Epimediumハーブから抽出された混合物がホルモン関連癌の危険性も減少させる可能性が報告された(U.S. 20030170292)。しかしながら、Epimediumハーブのどの成分がその機能を有しているかは不明である。
【0010】
Epimediumの20以上の種が発見されて調べられており、130以上の異なる化合物がEpimedium植物から同定されてきた〔Wu et al., Chemicalおよびpharmacological investigations of Epimedium species: a survey, Prog Drug Res. 60:1-57 (2003)〕。Epimedium植物からの化合物は、主にフラボノイドグリコジグリコシド(flavonoid glycodies), フラボンおよびイカリシド(icarisides)である。Epimedium 植物から単離された化合物の例は、アピゲニン, ブレビコミン(brevicomin), イカリイン, ケンペロール, ルテオリン, ケルセチンなどである。
【0011】
イカリイン(Icariin)は、Epimedium 植物から単離されたフラボノイド配糖体化合物である。イカリインは、インビトロでの細胞増殖に影響がないことが示された。しかしながら、イカリインの二つのインビボでの代謝物(イカリチン および デスメチルイカリチン)は、乳癌細胞の増殖を有意に増加させることが見出された〔Liu et al., Pharmazie 60:120-125 (2005); Wang et al., Europ. J. Pharm. 504:147-153 (2004); Ye et al., Phytomedicine 12: 735-741 (2005); CN03129242〕。
【0012】
エストロゲンおよびエストロゲンレセプタ関連疾患が多くの個体に継続的に影響するので、そのような疾患を予防および/または治療するための有用な新規の化合物および方法を発見することが早急に必要である。
【0013】
[概要]
本発明の一態様によって、新規のエストロゲンレセプタバリアント(ER-α36)の機能を調節するための化合物, その誘導体, 薬学的組成物および方法が提供される。本発明の別の態様によって、ER-α36に関連する疾患を予防および/または治療するための化合物, その誘導体, 薬学的組成物および方法が提供される。本発明の別の態様によって、細胞死を誘導する及び/又は細胞増殖を阻害するための並びに異常な細胞増殖(例えば、癌)が関与する疾患を予防および/または治療するための化合物, その誘導体, 薬学的組成物および方法が提供される。さらに本発明の別の態様によって、喘息および他の呼吸性の疾患を予防および/または治療するための化合物, その誘導体, 薬学的組成物および方法が提供される。
【0014】
本発明の特定の態様によって、ER-α36の機能を調節するための化合物が提供される。本発明の特定の態様によって、本発明の化合物を用いてER-α36の機能を調節する方法が提供される。本発明の特定の態様によって、ER-α36の機能に関連する疾患を予防および/または治療する方法が提供される。
【0015】
本発明の特定の態様によって、細胞死を誘導するための化合物が提供される。本発明の特定の態様によって、本発明の化合物を用いて細胞死を誘導する方法が提供される。
【0016】
本発明の特定の態様によって、細胞増殖を阻害するための化合物が提供される。本発明の特定の態様によって、本発明の化合物を用いて細胞増殖を阻害する方法が提供される。
【0017】
本発明の特定の態様によって、異常な細胞増殖が関与する疾患を予防および/または治療するための化合物が提供される。本発明の特定の態様によって、本発明の化合物を用いて被験者の異常な細胞増殖が関与する疾患を予防および/または治療する方法が提供される。
【0018】
本発明の特定の態様によって、喘息および他の呼吸性の疾患を予防および/または治療するための化合物が提供される。本発明の特定の態様によって、本発明の化合物を用いて被験者の喘息および他の呼吸性の疾患を予防および/または治療する方法が提供される。
【0019】
本発明の特定の態様によって、本発明の化合物を含んでいる薬学的組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図 1は、ヒト乳癌サンプルにおけるER-α66, ER-α46 および ER-α36の発現を示しているウエスタンブロットの結果を示す。レーン 1: 正常な乳房組織; レーン 2: 浸潤性(infiltrating)の腺管癌; レーン 3: 浸潤性の腺管癌; レーン 4: 浸潤性の腺管癌; レーン 5: 浸潤性の小葉癌; レーン 6: 浸潤性の小葉癌; レーン 7: 非侵襲性(non-invasive)の腺管癌。
【図2】図 2 (上方のパネル)は、ER-α36に特異的に結合する抗体で染色したMDA-MB-231細胞(ER-α66およびER-α46を欠如しているER陰性の乳癌株化細胞)の免疫蛍光染色結果(「ER-α36」とラベルされた図に示される: 緑色で示される陽性染色)。また、細胞核は、4, 6-ジアミジン-2-フェニルインドールで染色された(「DAPI」とラベルされたレーンに示される: 青色で示される陽性染色)。重ね合わせた染色シグナルを、「マージ(Merge)」とラベルされたレーンに示した。抗体が抗体に結合する免疫原ペプチドでプレ-インキュベーションされた場合、ネガティブ染色が観察された(下方のパネル)。
【図3】図 3は、イカリチンを週にゼロ, 1 μM, 5μM および 10μMの濃度で処理後のMDA-MB-231 細胞の顕微鏡写真である。
【図4】図 4は、タモキシフェン (TAM), ICI 182,780 (ICI), ルテオリン および イカリチンをゼロ, 5μM,10μM, 20μM, 30μM, 40μM および 50μMの濃度で10 日処理後のMDA-MB-231 細胞のコロニー数のヒストグラムである。
【図5a】図 5aは、タモキシフェン (TAM), ICI 182,780 (ICI), ルテオリン および イカリチンをゼロ, 5μM, 10μM, 15μM, 20μM および 25μMの濃度で10 日処理後のMCF7細胞のコロニー数のヒストグラムを示す。
【図5b】図 5bは、イカリチン, IC 163 および Y4をゼロ, 5μM, 10μM, 15μM, 20μM および 25μMの濃度で二 週処理後の生存しているMCF7 細胞数のヒストグラムを示す。
【図6】図 6は、MCF7 細胞, ER-α36を過剰発現しているMCF7 細胞(MCF7/ER36) および タモキシフェン耐性 MCF7 細胞(MCF7/TAM)をイカリチンでゼロ, 5μM, 7.5μM および 10μMで二週処理後の生存している細胞数を示しているヒストグラムである。
【図7】図 7は、イカリチンをゼロ, 20μM および 50μMで二週処理後の正常な乳房上皮性のMCF10A細胞の顕微鏡写真を示す。
【図8】図 8は、17 β-エストラジオール (E2β), タモキシフェン (TAM), 血清 および ICI 182,780で36 時間まで処理後のMCF7 細胞におけるER-α66, ER-α46 および ER-α36の発現パターンを示しているウエスタンブロットの結果を示す。
【図9】図 9は、ゼロ乃至25μMのICI 182,780, イカリチン, IC 163 および Y4で12 時間処理後のMCF7 細胞におけるER-α66, ER-α46 および ER-α36の発現を示しているウエスタンブロットの結果を示す。
【図10】図 10は、H226 肺癌細胞(中等度レベルのER-α36を発現している肺上皮性癌の株化細胞), LNCap 細胞(中等度レベルのER-α36を発現している前立腺癌の株化細胞), および PC3細胞(高レベルのER-α36を発現している前立腺癌の株化細胞)をゼロ乃至10μMの濃度のイカリチンで処理後の生存している細胞数を示しているヒストグラムである。
【図11】図 11は、5 mg/マウスのイカリチンを隔日30 日間処理後のヌードマウスにおける乳癌 MDA-MB-231細胞の異種移植片のサイズ減少を示している図である。処理の前後の二つの異なるマウスからの二つの代表的な腫瘍を示す。
【図12】図 12は、5 mg/マウスのイカリチンを隔日15 日間処理後のマウスにおける乳癌MCF7 細胞の異種移植片のサイズ減少を示している図である。処理の前後の三つの異なるマウスからの三つの代表的な腫瘍を示す。
【図13】図 13は、(a) 1 mg/ マウスのイカリチンを週二回36 日間処理後のマウスにおける乳癌 MDA-MB-231 細胞の異種移植片のサイズを示す、および(b) イカリチン処理での腫瘍の重量変化を示しているヒストグラムを示す。イカリチン処理は、乳癌細胞をマウスに接種した直後に開始された。G1: イカリチンで処理されたマウスからの腫瘍。G2: コーン油で処理されたマウスからの腫瘍。
【図14a】(a) 平均腫瘍重量を示しているヒストグラムである、および
【図14b】(b) ヒト乳癌BCAP-37細胞を移植されたBALB/c-nu マウスにおける腫瘍の腫瘍 成長阻害率を示しているヒストグラムである〔ここで、マウスは、それぞれタモキシフェンを0.35mg/マウス/日, イカリチンを0.7mg/マウス/日 (高投薬量), 0.35mg/マウス/日 (中間投薬量)および0.18mg/マウス/日 (低投薬量),および0.1 ml オリーブ油 (陰性対照)で処理される〕;および
【図14c】(c) 平均腫瘍重量を示しているヒストグラムである、および
【図14d】(d) ヒト乳癌 BCAP-37 細胞を移植されたBALB/c-nu マウスにおける腫瘍の腫瘍成長阻害率を示しているヒストグラムである〔ここで、マウスは、それぞれタモキシフェンを0.35mg/マウス/日, IC163を0.7 mg/マウス/日,および均等量のオリーブ油(負の対照)で処理される〕。
【図15a】(a) 平均腫瘍重量を示しているヒストグラムである、および
【図15b】(b) 子宮頚癌 U14 細胞を移植されたICRマウスにおける腫瘍の腫瘍成長阻害率を示しているヒストグラムである〔ここで、マウスは、それぞれタモキシフェン を0.35mg/マウス/日, イカリチンを0.7mg/マウス/日 (高投薬量), 0.35mg/マウス/日 (中間投薬量) および 0.18mg/マウス/日 (低投薬量), および 0.1 ml オリーブ油(陰性対照)で処理される〕。
【図16】図 16は、MCF7, PC3 前立腺癌細胞, H226肺癌細胞, および タモキシフェン 耐性 MCF7 細胞をゼロ乃至25μMの濃度のIC 163で処理後の生存している細胞数を示しているヒストグラムである。
【図17】図 17は、IC-163の高投薬量 (4 mg/kg/日) および 低投薬量 (1 mg/kg/日)の投与の4および6日目に卵白アルブミンで誘導される喘息発作前の潜伏期(latent period)を示しているヒストグラムである。
【図18】図 18は、IC-163の高投薬量 (4 mg/kg/日) および 低投薬量 (1 mg/kg/日)の投与の6日目に試験したモルモットの血液中の好酸性細胞(oxyphil cells)のパーセンテージを示しているヒストグラムである。
【図19】図 19は、IC-163の高投薬量 (4 mg/kg/日) および 低投薬量 (1 mg/kg/日)の投与の6日目に試験したモルモットのヒスタミンの血中濃度を示しているヒストグラムである。
【図20】図 20は、IC-163の高投薬量 (4 mg/kg/日) および 低投薬量 (1 mg/kg/日)の投与の6日目に試験したモルモットの血液中のIgEの血中濃度を示しているヒストグラムである。
【図21】図 21は、ヒト子宮体癌 Hec1A 細胞が異なる濃度のタモキシフェンまたはイカリチンで処理された溶液の色変化の光学密度を示している折れ線グラフである。
【0021】
[詳細な記載]
化合物及びその誘導体
本明細書に提供される特定の態様は、ER-α36に関連する疾患を予防および/または治療する、細胞死を誘導する、細胞増殖を阻害する、異常な細胞増殖(例えば、癌)が関与する疾患を予防および/または治療する、および/または喘息および他の呼吸性の疾患を予防および/または治療する、新規のエストロゲンレセプタ(ER-α36)の機能を調節するために有用な化合物, その誘導体, および薬学的組成物である。
【0022】
特定の態様において、式 (I)の化合物:
【化I】

【0023】
その立体異性体またはプロドラッグ,または該化合物, 立体異性体,またはプロドラッグの薬学的に許容される塩が提供される。 この式中で:
R1, R2, R3, R4, R6およびR7は、独立に水素, ハロ, ヒドロキシル, アミノ, -S03Hまたはその塩 (-S03Na, -S03K, -S03Ca1/2, -S03Mg1/2が含まれるが、これらに限定されない), (C1-C6)アルキル, (C2-C6)アルケニル, (C2-C6)アルキニル, (C1-C6)アルコキシ, (C1-C6)アルキル-(C=0)-, ホルミル, ホルムアミジル, シアノ, ニトロ, HO-(C=O)-, (C1-C6)アルコキシカルボニル, アミノカルボニル, アミノ(C1-C6)アルキル, N-(C1-C6)アルキルアミノカルボニル, N, N-[(C1-C6)アルキル]2 アミノカルボニル, N-(C6-C10)アリールアミノカルボニル, N,N-[(C6-C10)アリール]2 アミノカルボニル, N-(C1-C6)アルキル-N-(C1-C6)アルキルアミノカルボニル, N-(C1-C6)アルキル-N-(C6-C10)アリールアミノカルボニル, (C6-C10)アリール (置換されたアリールが含まれる), (C6-C10)アリールオキシ, (C5-C9)ヘテロアリール (置換されたヘテロアリールが含まれる), (C5-C9)ヘテロアリールオキシ, モルホリノ-カルボニル, (C1-C6)アルコキシアミノカルボニル, (C1-C6)アルキル-カルボニルアミノ, (C3-C8)シクロアルキル(C3-C5)シクロアルキル-メチル, (C3-C8) ヘテロシクロアルキル, (C3-C8)ヘテロシクロアルキル-メチルである,或いはR1およびR2は共に-CH2CH2C(CH3)20-であり,R3, R4, R6およびR7は上記の規定のとおりである。
Yは水素, R5は水素, ハロ, ヒドロキシル, アミノ, (C1-C6)アルキル, (C2-C6)アルケニル, (C2-C6)アルキニル, (C1-C6) アルコキシ, (C1-C6)アルキル-(C=O)-, ホルミル, ホルムアミジル, シアノ, ニトロ, HO-(C=O)-, (C1-C6) アルコキシカルボニル, アミノカルボニル, アミノ(C1-C6)アルキル, N-(C1-C6) アルキルアミノカルボニル, N,N-[(C1-C6)アルキル]2 アミノカルボニル, N-(C6-C10) アリールアミノカルボニル, N,N-[(C6-C10)アリール]2 アミノカルボニル, N-(C1-C6)アルキル-N-(C1-C6) アルキルアミノカルボニル, N-(C1-C6)アルキル-N-(C6-C10)アリールアミノカルボニル, (C6-C10)アリール, (C6-C10)アリールオキシ, (C5-C9)ヘテロアリール, (C5-C9)ヘテロアリールオキシ, モルホリノ-カルボニル, (C1-C6)アルコキシアミノカルボニル, (C1-C6)アルキル-カルボニルアミノ, (C3-C8)シクロアルキル, (C3-C8)シクロアルキル-メチル, (C3-C8)ヘテロシクロアルキル, (C3-C8)ヘテロシクロアルキル-メチルまたはY および R5 は共にオキソ (=0)である。
R1, R2, R3, R4, R5, R6またはR7が(C1-C6)アルキル基である場合、(C1-C6)アルキル基の各炭素原子は、独立に、ヒドロキシル, ハロ, (C1-C6)アルキル, (C2-C6)アルケニル, (C2-C6)アルキニル, (C1-C6)アルコキシ, (C1-C6)アルキル-(C=0)-, ホルミル, ホルムアミジル, シアノ, ニトロ, HO-(C=0)-, (C1-C6)アルコキシカルボニル, アミノカルボニル, アミノ(C1-C6)アルキル, N-(C1-C6)アルキルアミノカルボニル, N,N-[(C1-C6)アルキル]2 アミノカルボニル, N-(C6-C10)アリールアミノカルボニル, N,N-[(C6-C10)アリール]2 アミノカルボニル, N-(C1-C6)アルキル-N-(C1-C6)アルキルアミノカルボニル, N-(C1-C6)アルキル-N-(C6-C10)アリールアミノカルボニル, (C6-C10)アリール, (C6-C10)アリールオキシ, (C5-C9)ヘテロアリール, (C5-C9)ヘテロアリールオキシ, モルホリノ-カルボニル, (C1-C6)アルコキシアミノカルボニル, (C1-C6)アルキル-カルボニルアミノ, (C3-C8)シクロアルキル, (C3-C8)シクロアルキル-メチル, (C3-C8)ヘテロシクロアルキル, (C3-C8)ヘテロシクロアルキル-メチルから選択される一ないし三の置換基で任意で置換されてもよい。
【0024】
本発明の一態様には、IA1群の化合物と称される式 (I)の化合物の一群が含まれ、この群の化合物は以下の式を有する:
【化IA1】

【0025】
式中のR8 および R9は独立に水素, ハロ, ヒドロキシル, アミノ, (C1-C6)アルキル, (C2-C6)アルケニル, (C2-C6)アルキニル, (C1-C6)アルコキシ, (C1-C6)アルキル-(C=O)-, ホルミル, ホルムアミジル, シアノ, -S03H 及びその塩(-S03Na, SO3K, SO3Ca1/2, S03Mg1/2が含まれるが、これらに限定されない), ニトロ, HO-(C=O)-, (C1-C6)アルコキシカルボニル, アミノカルボニル, アミノ(C1-C6)アルキルである。
R1, R2, R3, R4, R5, R6, Yは、上記の規定のとおりである。
【0026】
本発明の別の態様には、IA2群の化合物と称される式 (I)の化合物の一群が含まれ、この群の化合物は以下の式を有する:
【化IA2】

【0027】
式中のR10, R11, R12は、独立に水素, ハロ, (C1-C6)アルキル, (C2-C6)アルケニル, (C2-C6)アルキニル, (C1-C6)アルコキシ, シアノ, ニトロである。
R13 および R14は、独立に水素, (C1-C6) アルキル, (C2-C6)アルケニル, (C2-C6)アルキニル, (C1-C6)アルコキシである又は共にオキソ(=O)として存在する。
R2, R3, R4, R5, R6, R8, R9, Yは、上記の規定のとおりである。
【0028】
本発明の別の態様には、IA3群の化合物と称される式 (I)の化合物の一群が含まれ、この群の化合物は以下の式を有する:
【化IA3】

【0029】
R2, R3, R4, R5, R6, R10, R11, R12, R13, R14, Yは、上記の規定のとおりである。
【0030】
本発明の別の態様には、IA4群の化合物と称される式 (I)の化合物の一群が含まれ、この群の化合物は以下の式を有する:
【化IA4】

【0031】
式中のR2, R3, R4, R5, R6, R10, R11, R12 およびYは、上記の規定のとおりである。
【0032】
本発明の別の態様には、IA5群の化合物と称される式 (I)の化合物の一群が含まれ、この群の化合物は以下の式を有する:
【化IA5】

【0033】
式中のR2, R3, R4, R5, R6 およびYは、上記の規定のとおりである。
【0034】
本発明の別の態様には、IA6群の化合物と称される式 (I)の化合物の一群が含まれ、この群の化合物は以下の式を有する:
【化IA6】

【0035】
式中のR2は、-S03H又はその塩, -OH又はその塩であり、
R4は、-OH又はその塩であり、
R5 および Yは、共にオキソ (=0)であり、
R6は、-OH又はその塩である。
【0036】
式 (I)の化合物の特に好適な例には、以下の化合物が含まれるが、これらの化合物に限定されない:
5,7-ジヒドロキシ-2-(8-(2-ヒドロキシ-3-メチルブタ-3-エニル)-2, 2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-4H-クロメン-4-オン;
5,7-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシ-3-メチルブタ-3-エニル)-5-(4-メチルペンタ-3-エニル) フェニル)-4H-クロメン-4-オン;
5,7-ジヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-4H-クロメン-4-オン;
5,7-ジヒドロキシ-2-(2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-4H-クロメン-4-オン;
5,7-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-(4-メチルペンタ-3-エニル)フェニル)-4H-クロメン-4-オン;
3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン;
3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン;
2-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)-3,5-ジヒドロキシ-8-((3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシ-3-ニトロフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
2-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)-3,5-ジヒドロキシ-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-((3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチル)-4H-クロメン-4-オン;
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシ-3-ニトロフェニル)-8-((3,3-ジメチルオキシラン-2-イル) メチル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
3,5-ジヒドロキシ-8-(2,3-ジヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
3,5-ジヒドロキシ-8-(2,3-ジヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシ-3-ニトロフェニル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
2-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)-3,5-ジヒドロキシ-8-(2,3-ジヒドロキシ-3-メチルブチル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル ハイドロゲンスルフェート;
5,7-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン;
5,7-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン;
2,3-ジヒドロ-5, 7-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)クロメン-4-オン;
7-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン;
5,7-ジヒドロキシ-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン;
(2S)-2,3-ジヒドロ-7-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-6-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
(2S)-2,3-ジヒドロ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-7-メトキシ-6-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8,8-ジメチル-9,10-ジヒドロ-4H,8H-ピラノ [2,3-f] クロメン-4-オン(本明細書中でY4とも称される);
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8,8-ジメチル-9,10-ジヒドロ-4H,8H-ピラノ [2,3-f] クロメン-4-オン;
3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン;
3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン (本明細書中でIC 163とも称される)。
【0037】
本明細書中で提供される化合物および誘導体は、IUPAC (International Union for Pure and Applied Chemistry)またはCAS (Chemical Abstracts Service, Columbus, OH)命名システムの何れにしたがって命名されてもよい。
【0038】
本明細書中の多様な炭化水素含有部分(hydrocarbon-containing moieties)の炭素原子含有量は前記部分の炭素原子の最小および最大数を表している接頭語で示してもよい〔例えば、接頭語(Ca-Cb)アルキルは、整数「a」ないし「b」の炭素原子のアルキル部分を包括的に示す〕。従って、例えば、(C1-C6) アルキルは、一ないし六炭素原子のアルキル基を包括的に意味する。
【0039】
「アルコキシ(alkoxy)」の用語は、酸素原子に結合した直鎖状または分枝状で, 一価の飽和脂肪族鎖の炭素原子を意味する。アルコキシ基の例には、メトキシ, エトキシ, プロポキシ, ブトキシ, iso-ブトキシ, tertブトキシなどが含まれる。
【0040】
「アルキル(alkyl)」の用語は、直鎖状または分枝状で, 一価の飽和脂肪族鎖の炭素原子を意味し、例えば、メチル, エチル, プロピル, イソプロピル; ブチル, イソブチル, ペンチル, イソペンチル, ヘキシルなどが含まれる。
【0041】
「アルケニル(alkenyl)」の用語は、一または二以上の二重結合を有している直鎖状または分枝状鎖の炭化水素を意味し、例えば、ビニル, アリルなどが含まれる。
【0042】
「アリール(aryl)」の用語は、環状, 芳香族の炭化水素を意味する。アリール基の例には、フェニル, ナフチル, アントラセニル(anthracenyl), フェナントレニル(phenanthrenyl)などが含まれる。
【0043】
「シクロアルキル(cycloalkyl)」の用語は、飽和の単環式または多環式のシクロアルキル(任意で、芳香族の炭化水素に融合される)を意味する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル, シクロブチル, シクロペンチル, シクロヘキシル, シクロヘプチル, インダニル, テトラヒドロナフタリニル(tetrahydronaphthalinyl)などが含まれる。
【0044】
「ハロゲン(halogen)」または「ハロ(halo)」の用語は、クロロ, ブロモ, フルオロ, および ヨード原子を表す。
【0045】
「ヘテロアリール(heteroaryl)」の用語は、一または二以上の炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素, 酸素,またはイオウ)で置換されている単環式または多環式の芳香族炭化水素基を意味する。ヘテロアリール基が一をこえるヘテロ原子を含有する場合、ヘテロ原子は同じであるか又は異なっていてもよい。ヘテロアリール基の例には、ベンゾフラニル, ベンゾチエニル, ベンズイミダゾリル, ベンゾオキサゾリル, ベンゾチアゾリル, クロメニル, フリル, イミダゾリル, インダゾリル, インドリジニル, インドリル, イソベンゾフラニル, イソインドリル, イソキノリル, イソチアゾリル, イソキサゾリル, ナフチリジニル, オキサジアゾリル, オキサジニル, オキサゾリル, フタラジニル, プテリジニル, プリニル, ピラニル, ピラジニル, ピラゾリル, ピリダジニル, ピリド[3,4-b]インドリル, ピリジル, ピリミジル, ピロリル, キノリジニル, キノリル, キノキサリニル, チアジアゾリル, チアトリアゾリル(thiatriazolyl), チアゾリル, チエニル, トリアジニル, トリアゾリル, キサンテニルなどが含まれる。
【0046】
「ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)」の用語は、少なくとも一の炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素, 酸素,またはイオウ)で置換されている飽和の単環式または多環式のシクロアルキル基(任意で、芳香族炭化水素に融合される)を意味する。ヘテロシクロアルキル基が一をこえるヘテロ原子を含有する場合、ヘテロ原子は同じであるか又は異なっていてもよい。係るヘテロシクロアルキル基の例には、アザビシクロヘプタニル(azabicycloheptanyl), アゼチジニル, インドリニル, モルフォリニル, ピペラジニル, ピペリジル, ピロリジニル, テトラヒドロフリル, テトラヒドロキノリニル, テトラヒドロインダゾリル, テトラヒドロインドリル, テトラヒドロイソキノリニル, テトラヒドロピラニル, テトラヒドロキノキサリニル, テトラヒドロチオピラニル, チアゾリジニル, チオモルフォリニル(thiomorpholinyl), チオキサンテニル, チオオキサニル(thioxanyl)などが含まれる。
【0047】
環状基は、一以上の様式で別の基に結合させてもよい。特定の結合の配置(bonding arrangement)が特定されない場合、全ての可能な配置が意図される。例えば、「ピリジル(pyridyl)」の用語には2-, 3-,または4-ピリジルが含まれ、「チエニル(thienyl)」の用語には2-または3-チエニルが含まれる。
【0048】
「オキソ(oxo)」の用語は、炭素原子および酸素原子の組み合わせにより形成されるカルボニル基を意味する。
【0049】
「プロドラッグ(prodrug)」の用語は、被験者への投与に続いて、インビボで化学的または生理的なプロセス(例えば、生理的なpHにすること又は酵素活性をとおして)を介して薬を放出する、薬の前駆体である化合物を意味する。プロドラックの合成および使用の議論は、T. Higuchi および W. Stella〔"Prodrugs as Novel Delivery Systems," vol. 14 of the ACS Symposium Series, および Bioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Press, 1987, 両方の文献は本明細書中に参照によって援用される〕により提供された。「プロドラッグ」の用語には、本発明の化合物の代謝性の前駆体が含まれえる。被験者に投与されインビボで本発明の化合物に変換される場合、プロドラッグは不活性(inactive)であってもよい。プロドラッグは、天然に存在している化合物または合成の化合物であってもよい。
【0050】
特定の態様において、本発明には、インビボで3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンまたは3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンへと変換できるプロドラックが含まれる。係るプロドラック及びそれらのインビボでの代謝物は、本発明に含まれる。
【0051】
本発明のプロドラックの例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない;
3-[(6-デオキシ-a-L-マンノピラノシル) オキシ]-7-(b-D-グルコピラノシルオキシ)-5-ヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
7-(b-D-グルコピラノシルオキシ)-3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
3-[(6-デオキシ-a-L-マンノピラノシル) オキシ]-5,7-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
3-[[4-O-アセチル-3-O-(6-O-アセチル-b-D-グルコピラノシル)-6-デオキシ-a-L-マンノピラノシル] オキシ]-7-(b-D-グルコピラノシルオキシ)-5-ヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
3-[(6-デオキシ-2-O-b-D-グルコピラノシル-a-L-マンノピラノシル) オキシ]-5,7-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
2-[4-[(6-デオキシ-a-L-マンノピラノシル)オキシ] フェニル]-3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-メチル-2-ブテニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;
3,5-ジヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-7-[(2R,3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-2-イル]オキシ-クロメン-4-オン;
3-[(2S,3R,4R,5S,6S)-4,5-ジヒドロキシ-6-メチル-3-[(2S,3R,4R,5S,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-オキサン-2-イル]オキシ-5-ヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-7-[(2S,3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-2-イル]オキシ-クロメン-4-オン;
上記でリストされたプロドラック及びそれらのインビボでの代謝物は、本発明に含まれる。
【0052】
「薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)」という表現は、表される担体, ビヒクル, 希釈剤, 賦形剤, および/または塩が、一般にその処方を含んでいる他の構成成分と化学的および/または物理的に適合性であり, そのレシピエントに生理学的に適合性であることを指摘している。
【0053】
「塩(salts)」および「薬学的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salts)」の用語は、式(I)の化合物,又はその立体異性体,またはプロドラッグの有機および無機の塩を意味する。これらの塩は、インサイチューで化合物の最終的な単離および精製の間に,または別々に式(I)の化合物,又はその立体異性体,またはプロドラッグを適切な有機または無機の酸または塩基と反応させ、形成された塩を単離することにより、調製できる。代表的な塩には、臭化水素酸塩, 塩酸塩, 硫酸塩, 重硫酸塩, 硝酸塩, 酢酸塩, シュウ酸塩, ベシル酸塩(besylate), パルミチン酸塩, ステアリン酸塩, ラウリン酸塩, ホウ酸塩, 安息香酸塩, 乳酸塩, リン酸塩, トシル酸(tosylate), クエン酸塩, マレイン酸塩, フマル酸塩, コハク酸塩, 酒石酸塩, ナフチル酸塩(naphthylate), メシル酸塩(mesylate), グルコヘプトン酸塩(glucoheptonate), ラクトビオン酸塩(lactobionate), およびラウリルスルホン酸塩(laurylsulphonate)などが含まれる。これらには、アルカリおよびアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム, リチウム, カリウム, カルシウム, マグネシウムなど, 同様に非毒性のアンモニウム, 四級アンモニウム,およびアミン陽イオン(アンモニウム, テトラメチルアンモニウム, テトラエチルアンモニウム, メチルアミン, ジメチルアミン, トリメチルアミン, トリエチルアミン, エチルアミンが含まれるが、これらに限定されない)などに基づく陽イオンも含まれえる。さらなる例に関して、例えば、Berge等〔Berge, et al., J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977), 本明細書中に参照によって援用される〕を参照されたい。
【0054】
式 (I)の化合物の塩は、式 (I)の化合物および所望の酸または塩基(必要に応じて)の溶液を共に混合することによって容易に調製しえる。塩は、溶液から沈殿されても、濾過で収集されてもよく、または溶媒の蒸発で回収されてもよい。
【0055】
「置換された(substituted)」の用語は、分子上の水素原子が異なる原子または分子で置き換えられることを意味する。水素原子を置き換える原子または分子は、「置換基」と表示される。
【0056】
式 (I)の化合物は、非対称性またはキラルなセンター(asymmetric or chiral centers)を含んでもよく、異なる立体異性形態で存在しえる。全ての式 (I)の化合物の立体異性形態、同様に、その混合物(ラセミ混合物が含まれる)が本発明の一部を形成することを意図している。加えて、全ての幾何的(geometric)および位置的(positional)な異性体も、企図される。例えば、式 (I)の化合物が二重結合を導入する場合、シスおよびトランス形態の両方(同様に、その混合物)は本発明の範囲内に包含される。
【0057】
ジアステレオマー混合物は、物理的化学的な差に基づき当業者に周知の方法(例えば、クロマトグラフィーおよび/または分別再結晶)によって個々のジアステレオマーへと分離できる。エナンチオマーは、鏡像異性の混合物をジアステレオマー混合物へと適切な光学活性な化合物(例えば、アルコール)との反応で変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応する純粋なエナンチオマーに変換(例えば、加水分解)することで分離できる。また、式 (I)の化合物の幾つかはアトロプ異性体(例えば、置換されたビアリール)であってもよく、これも本発明の一部として考慮される。
【0058】
式 (I)の化合物は薬学的に許容される溶媒(例えば、水, エタノールなど)と非溶媒和(unsolvated)、同様に、溶媒和(solvated)の形態で存在してもよく、本発明が非溶媒和および溶媒和形態の両方を包含することを意図している。
【0059】
また、式 (I)の化合物が平衡の互変異性の異性体(tautomeric isomers in equilibrium)として存在することが可能である(全ての係る形態が本発明の範囲内に包含される)。
【0060】
特定の態様において、同位体で標識された式 (I)の化合物であって、本明細書中に記載されたものと同一であるが、一または二以上の原子が通常天然で見つけられる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有している原子により置き換えられた化合物が提供される。式 (I)の化合物に導入できる同位体の例には、それぞれ水素, 炭素, 窒素, 酸素, リン, フッ素, および 塩素の同位体、例えば、2H, 3H, 13C, 14C, 15N, 170, 180, 31P, 32P, 35S, 18F, および36Clが含まれる。上述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含む式 (I)の化合物, その立体異性体およびプロドラック, およびその化合物, 立体異性体,またはプロドラックの薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0061】
特定の同位体標識された式 (I)の化合物〔3H および 14Cなどの放射性同位体が導入された化合物〕は、化合物および/または基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム化(すなわち、3H)および炭素-14(すなわち、14C)同位体は、相対的に調製の容易性および容易な検出性のために特に好適である。さらに、重水素(すなわち、2H)などのより重い同位体での置換は、代謝の安定性(例えば、インビボ半減期の増加)、または投薬量の要求性の減少から生じる特定の治療上の利点を提供するであろうから、幾つかの状況で好適であろう。同位体標識された式 (I)の化合物は、一般に当業者に既知の方法(例えば、同位体非標識の試薬に対して同位体標識された試薬で置き換えることによって)によって調製できる。
【0062】
使用の方法
特定の態様において、本発明の化合物は、ER-α36の選択的なモジュレーターであり、インビトロおよびインビボで細胞におけるER-α36の機能を調節するために有用である。また、前記化合物は、ER-α36の機能と関連する疾患を予防および/または治療するために有用である。特定の態様において、本発明の化合物は、細胞死を誘発および/または細胞増殖を阻害できるので、異常な細胞増殖が関与している疾患を予防および/または治療するために有用である。特定の態様において、本発明の化合物は、喘息および他の呼吸性の疾患を予防および/または治療するために有用である。
【0063】
特定の態様において、細胞におけるER-α36の機能を調節する方法であって、ER-α36を発現している細胞を式 (I)の化合物に暴露することを備える方法が提供される。細胞は、遺伝子工学で内因性(endogenously)または外因性(exogenously)にER-α36を発現してもよい。一態様において、細胞は、ER-α36を内因性に発現する。好適な態様において、細胞は、ER-α36を内因性に発現する癌細胞である。ER-α36を発現する癌細胞の例は、乳癌細胞, 白血病細胞, 肺癌細胞, ミエローマ細胞, 前立腺癌細胞, 卵巣癌細胞, 結腸癌細胞および胃癌細胞である。更なる好適な態様において、ER-α36を発現している細胞は、ER-α36を内因性に発現する乳癌細胞である。ER-α36を発現している乳癌細胞は、MCF7 および MDA-MB-231細胞である。内因性のER-α36の発現は、一または二以上の因子での処理で増加または減少しえる。係る因子の例は、血清, E2β (17β-エストラジオール), タモキシフェン および ICI 182,780である。
【0064】
別の態様において、細胞は遺伝子工学で変更されて外因性のER-α36を発現する。外因性のER-α36を発現している細胞は、当業者に既知の遺伝子工学法で調製できる〔Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2d Ed. 1989) (Cold Spring Harbor Laboratory)を参照されたい〕。簡単に説明すると、外因性のER-α36遺伝子を、調製し、発現ベクターに挿入され、宿主細胞にトランスフェクションされ、次に外因性のER-α36を発現させるために適切な培養液で成長させる。ヒトER-α36の遺伝子配列の例は、Wang等〔Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 336,1023-1027 (2005) (GenBank アクセッション番号 BX640939)〕に開示された。外因性のER-α36を発現している細胞は、内因性のER-α36を発現してもよい又はしなくてもよい。細胞における内因性または外因性のER-α36の発現レベルは、一または二以上の因子での処理で増加または減少しえる。係る因子の例は、血清, E2β (17β-エストラジオール), タモキシフェン および ICI 182,780である。
【0065】
ER-α36を発現している細胞は、他のエストロジェンレセプタ(例えば、ER-α66, ER-α46 および ER-β)を発現してもよい又は発現しなくてもよい。
【0066】
特定の態様において、被験者におけるER-α36に関連する疾患を予防および/または治療する方法であって、前記被験者に式 (I)の化合物を含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法が提供される。ER-α36に関連する疾患の例には、限定されることなく、骨量の減少(bone loss), 骨折, 骨粗鬆症, 転移性の骨疾患(metastatic bone disease), ページェット病, 歯周病, 軟骨変性, 子宮内膜症, 子宮フィブロイド病(uterine fibroid disease), のぼせ(hot flashes), 低比重リポタンパクコレステロールのレベルの増加, 心血管疾患(cardiovascular disease), 認知機能の障害, 大脳の退行性障害(cerebral degenerative disorders), 再狭窄, 女性化乳房, 血管平滑筋細胞の増殖, 肥満, 失調症, 不安, エストロゲン欠乏から生じるうつ病, 閉経期前後のうつ病, 産後抑鬱症(post-partum depression), 月経前症候群(premenstrual syndrome), 躁鬱病(manic depression), 不安, 痴呆, 強迫的行動(obsessive compulsive behavior), 注意欠陥障害, 睡眠障害, 過敏性(irritability), 衝動性(impulsivity), 免疫不全, 自己免疫疾患, アンガー・マネージメント(anger management), 多発性硬化症およびパーキンソン病, 炎症, 炎症性の腸疾患, 呼吸疾患, 性的不能, 高血圧症, レチナール変性, 喘息および癌が含まれる。好ましくは、ER-α36に関連する疾患には、骨量の減少(bone loss), 骨折, 骨粗鬆症, 閉経期, 月経前症候群, 子宮内膜症, 子宮疾患, インポテンツ, 性的不能, 低比重リポたんぱくコレステロールのレベルの増加, 心血管疾患, 血管平滑筋細胞の増殖, エストロゲン欠乏から生じるうつ病, 閉経期前後のうつ病, 産後抑鬱症(post-partum depression), 免疫不全, 自己免疫疾患, 炎症, 喘息および癌が含まれる。より好ましくは、ER-α36に関連する疾患には、骨量の減少, 骨粗鬆症, インポテンツ, 心血管疾患, 免疫不全, 炎症, 喘息および癌が含まれる。被験者は、哺乳類、例えば、イヌ, ネコ, 雌ウシ, ヒツジ, ウマ,またはヒトであってもよく, 好ましくはヒトである。前記方法に必要とされる治療上の量は、特定の疾患に応じて変動し、容易に本開示の恩恵をうける技術分野の当業者が確認できる。
【0067】
特定の態様において、細胞死を誘導する方法であって、細胞を効果的な量の式 (I)の化合物に暴露することを備える方法が提供される。さらにまた、本発明の特定の態様によって、細胞増殖を阻害する方法であって、細胞を効果的な量の式 (I)の化合物に暴露することを備える方法が提供される。前記細胞は、正常または異常な成長を呈してもよい。異常な細胞成長は、良性または悪性であってもよい。一態様において、前記細胞は、癌細胞である。好適な態様において、癌は、肛門癌(anal cancer), 胆管癌, 膀胱癌, 骨癌(bone cancer), 腸癌 (結腸癌, 直腸癌), 脳癌(brain cancer), 乳癌, カルチノイド癌(carcinoid cancer), 子宮頸部癌(cervix cancer), 内分泌癌(endocrine cancer), 子宮体部癌(endometrial cancer), 眼癌(eye cancer), 胆嚢癌(gall bladder cancer), 頭頸部癌(head and neck cancer), カポジ肉腫癌, 腎臓癌, 喉頭癌, 白血病, 肝臓癌, 肺癌, リンパ腫, メラノーマ, 中皮腫, ミエローマ, 神経内分泌癌, 食道癌, 卵巣癌, 膵臓癌, 陰茎癌, 前立腺癌, 皮膚癌, 軟部組織の肉腫癌(soft tissue sarcomas cancer), 脊髄癌, 胃癌, 精巣癌, 甲状腺癌, 膣癌, 外陰部癌(vulva cancer),または子宮癌(uterus cancer)である。更なる好適な態様において、癌は、乳房癌, 子宮頸部癌, 結腸癌, 子宮体部癌, 白血病, 肝臓癌, 肺癌, ミエローマ, 卵巣癌, 前立腺癌, 胃癌,または子宮癌である。更なる好適な態様において、癌は、乳房癌, 子宮頸部癌, 子宮体部癌, 肺癌, 子宮癌または前立腺癌である。特定の態様において、細胞は、エストロジェンレセプタ(特に、ER-α36)を内因性に又は外因性に発現しえる。好適な態様において、細胞は、ER-α36を内因性に発現する。
【0068】
細胞死を誘導する及び/又は細胞増殖を阻害するために効果的な量の式 (I)の化合物は、特定の細胞タイプおよび処理条件(treatment conditions)に応じて変動するだろう。この事項は、本開示の恩恵をうける技術分野の当業者が容易に確認できる。一態様において、細胞が暴露される式 (I)の化合物の有効量は、少なくとも約 5μMの濃度である。別の態様において、細胞が暴露される式 (I)の化合物の濃度は、約 5μM〜100μMの範囲内である。好ましくは、効果的な量は、約5μM 〜50μMまたは約5μM 〜30μMまたは約5μM 〜25μMまたは約5μM 〜20μMまたは約5μM 〜10μMの範囲内の化合物の濃度である。
【0069】
特定の態様において、被験者における異常な細胞増殖が関与している疾患を予防および/または治療する方法であって、前記被験者に治療上効果的な量の式 (I)の化合物を含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法が提供される。
【0070】
異常な細胞増殖は、良性の細胞成長(benign cell growth)または癌性(cancerous)であってもよい。一態様において、異常な細胞増殖が関与している疾患は、癌である。好適な態様において、癌は、肛門癌, 胆管癌, 膀胱癌, 骨癌, 腸癌(結腸癌, 直腸癌), 脳癌, 乳癌, カルチノイド癌, 子宮頚部癌, 内分泌癌, 子宮体部癌, 眼癌, 胆嚢癌, 頭頸部癌, カポジ肉腫癌, 腎臓癌, 喉頭癌, 白血病癌, 肝臓癌, 肺癌, リンパ腫癌, メラノーマ癌, 中皮腫癌, ミエローマ癌, 神経内分泌癌, 食道癌, 卵巣癌, 膵臓癌, 陰茎癌, 前立腺癌, 皮膚癌, 軟部組織の肉腫癌, 脊髄癌, 胃癌, 精巣癌, 甲状腺癌, 膣癌, 外陰部癌,または子宮癌である。更なる好適な態様において、癌は、乳房癌, 子宮頸部癌, 結腸癌, 子宮体部癌, 白血病, 肝臓癌, 肺癌, ミエローマ, 卵巣癌, 前立腺癌, 胃癌,または子宮癌である。更なる好適な態様において、癌は、乳房癌, 子宮頸部癌, 子宮体部癌, 肺癌, 子宮癌または前立腺癌である。
【0071】
特定の態様において、被験者における喘息および他の呼吸性の疾患を予防および/または治療する方法であって、前記被験者に治療上効果的な量の式 (I)の化合物を含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法が提供される。喘息(Asthma)は、気道の可逆的な気流閉塞(airflow obstruction)での炎症性の障害を意味する。他の呼吸性の疾患には、気道および肺の障害(例えば、気管支炎, 嚢胞性線維症, 肺気腫, 肺炎, 鼻炎 および 副鼻腔炎)が含まれえる。
【0072】
被験者は、好ましくは哺乳類である。一態様において、前記哺乳類は、イヌ, ネコ, 雌ウシ, ヒツジ, ウマ,またはヒトである。好適な態様において、前記哺乳類は、ヒトである。
【0073】
式 (I)の化合物は、化合物を作用部に送達することが可能な任意の方法によって被験者に投与しえる。その方法には、限定されることなく、口(oral), 頬(buccal), 舌下, 眼球(ocular), 局所(例えば、経皮), 非経口(例えば、静脈内, 筋肉内,または皮下, 血管内または輸液), 直腸内, 嚢内(intracisternal), 腟内, 腹腔内, 膀胱内,または鼻内への方法が含まれる。
【0074】
式 (I)の化合物は、被験者に約0.1 mg〜約3,000 mg/日, 好ましくは約0.1 mg〜約1,000 mg/日,または約1 mg〜約500 mg/日,または約1 mg〜約300 mg/日,または約10 mg〜約300 mg/日,または約10 mg〜約200 mg/日,または約20 mg〜約200 mg/日,または約30 mg〜約200 mg/日,または約40 mg〜約200 mg/日,または約50 mg〜約200 mg/日,または約50 mg〜約100 mg/日の範囲の投薬量レベルで投与しえる。約70 kgの体重を有している正常な成人に対して、約0.01 mg〜約100 mg/ kg 体重の範囲の投薬量が典型的には十分であり、好ましくは約0.1 mg〜約100 mg/ kg,または約0.5 mg〜約100 mg/ kg,または約1 mg/ kg〜約100 mg/ kg,または約1 mg/ kg〜約75 mg/ kg,または約1 mg/ kg〜約50 mg/ kg,または約1 mg/ kg〜約25 mg/ kg,または約1 mg/ kg〜約10 mg/ kg,または約2 mg/ kg〜約5 mg/ kgである。しかしながら、一般的な投薬量の範囲における幾らかの可変性が、投与される被験者の年齢および重量、意図している投与経路、投与する特定の化合物などに応じて必要とされる。投薬量の範囲の決定および特定の哺乳類の被験者に至適な投薬量は、本開示の恩恵をうける技術分野の当業者の能力の範囲内である。
【0075】
特定の態様において、本発明の一または二以上の化合物は、互いに組み合わせて使用しえる。任意で、本発明の化合物は、細胞機能を調節する又は疾患を治療するための任意の他の活性薬剤と組み合わせて使用しえる。活性な化合物の組み合わせが使用される場合、これらを同時に, 別々にまたは連続的に投与してもよい。
【0076】
特定の態様において、本発明の化合物は、一または二以上の他の抗癌剤と組み合わせて使用しえる。適切な抗癌剤には、アルキル化剤, ナイトロジェンマスタード, 葉酸代謝拮抗剤(folate antagonists), プリンアンタゴニスト, ピリミジンアンタゴニスト, 紡錘体毒(spindle poisons), トポイソメラーゼインヒビター, アポトーシス誘導因子, 血管形成阻害剤, ポドフィロトキシン, ニトロソ尿素, 抗代謝剤(antimetabolites), タンパク質合成阻害剤, キナーゼインヒビター, 抗エストロゲン, シスプラチン, カルボプラチン, インターフェロン, アスパラギナーゼ(asparginase), ロイプロリド, フルタミド, メゲストロール, マイトマイシン, ブレオマイシン, ドキソルビシン, イリノテカン および タキソールが含まれるが、これらに限定されない。一態様において、抗癌剤は、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤およびICI 182,780である。
【0077】
本発明の化合物を、外因性のER-α36を発現している組換え細胞を用いて細胞死を誘発する又は細胞増殖を阻害する能力に関して試験できる。組換え細胞を作るために、外因性のER-α36遺伝子が、調製され、発現ベクターに挿入され、次に低レベルの内因性のER-α36を発現しない又は発現する宿主細胞が発現ベクターでトランスフェクションされ、安定にトランスフェクションされた宿主細胞が試験アッセイのための組換え細胞として選択される。組換え細胞は、本発明の化合物の有り無しでインキュベーションされた。本発明の化合物の処理の有り無しでのアッセイで生存している細胞の数が、比較された。試験化合物の処理でのアッセイで生存している細胞の数が試験化合物なしのアッセイで生存している細胞の数よりも(統計学的に有意に)少ない場合、試験化合物は細胞死を誘発できる及び/又は細胞増殖を阻害できる。
【0078】
上記で議論した組換え細胞を使用して、ER-α36の機能を調節する能力に関して本発明の化合物を試験できる。外因性のER-α36を発現している組換え細胞および非トランスフェクション宿主細胞は、同じ条件で試験化合物で処理される。所望のER-α36の機能が、観察され、当業者に既知の方法で分析される。係る機能には、ER-α36の下流のシグナル伝達経路〔例えば、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK/ERK)経路またはJun NH2-末端キナーゼ(JNKs)経路の活性化〕を刺激するER-α36の能力が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
薬学的組成物
本発明の方法の特定の態様において、式 (I)の化合物, その立体異性体またはプロドラッグ,又は該化合物, 立体異性体,またはプロドラッグの薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体, ビヒクル,または希釈剤を含んでいる薬学的組成物の形態で投与されてもよい。従って、式 (I)の化合物, その立体異性体またはプロドラッグ,又は該化合物, 立体異性体,またはプロドラッグの薬学的に許容される塩は、口内(oral), 頬内(buccal), 舌下, 眼球内, 局所, 非経口, 直腸内, 嚢内, 腟内, 腹腔内, 膀胱内, ローカル(例えば、粉末, 軟膏,または液滴),または鼻内の剤形を含む任意の従来の剤形(dosage form)で別々にまたは共に被験者に投与されてもよい。
【0080】
非経口的な注射に適切な薬学的組成物には、無菌の注射可能な溶液または分散剤に即時に再構成するための薬学的に許容される無菌の水性または非水性の溶液, 分散剤, 懸濁剤,またはエマルジョン剤, および無菌の粉剤を含んでもよい。適切な水性および非水性の担体, ビヒクル,および希釈剤の例には、水, エタノール, ポリオール(例えば、プロピレングリコール, ポリエチレングリコール, グリセロール), その適切な混合物, 野菜油(例えば、オリーブ油),および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性を、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散剤の場合において必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。
【0081】
特定の態様において、本発明の薬学的組成物は、更に保存剤, 湿潤剤, 乳化剤, および分散剤などのアジュバントを含んでもよい。即時調製用の組成物の微生物混入の阻止は、多様な抗菌性および抗真菌性の薬剤、例えば、パラベン(parabens), クロロブタノール, フェノール, ソルビン酸によって達成されてもよい。また、等張性の薬剤(例えば、糖, 塩化ナトリウム)を含むことも望ましい。注射可能な薬学的組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる能力のある薬剤(例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチン)の使用によって影響されえる。
【0082】
経口投与のための固形剤形には、カプセル, 錠剤, 粉剤, および 顆粒剤が含まれえる。係る固形剤形の特定の態様において、活性な化合物は、少なくとも一つの不活性な従来の薬学的賦形剤(または担体)、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム(dicalcium phosphate),または(a)充填剤または増量剤(extenders)、例えば、デンプン, ラクトース, スクロース, マンニトール,またはケイ酸; (b)結合剤(binders)、例えば、カルボキシメチル-セルロース, アルギナート, ゼラチン, ポリビニルピロリドン, スクロース,またはアカシア; (c)保湿剤、例えば、グリセロール; (d)崩壊剤、例えば、寒天(agar-agar), 炭酸カルシウム, ジャガイモまたはタピオカデンプン, アルギン酸複合ケイ酸(alginic acid certain complex silicates),または炭酸ナトリウム; (e)溶液遅延剤(solution retarders)、例えば、パラフィン; (f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム 化合物; (g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールまたはグリセロール・モノステアレート; (h)吸着剤(adsorbents)、例えば、カオリンまたはベントナイト; および/または(i)潤滑剤、例えば、滑石, ステアリン酸カルシウム, ステアリン酸マグネシウム, 固形のポリエチレングリコール, ラウリル硫酸ナトリウム,或いはその混合物で混合される。カプセルおよび錠剤の場合において、前記剤形は更に緩衝剤を含んでもよい。
【0083】
特定の態様において、固形剤形は、即時放出剤形に関する上記で詳細に説明したものなどの賦形剤を放出速度修飾剤(release rate modifiers)として作用する付加的な賦形剤と共に含んでいる修飾放出(modified release)およびパルス放出(pulsatile release)剤形として処方してもよい(これらはコートされる及び/又は装置のなかに含まれる)。放出速度修飾剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース, メチルセルロース, カルボキシメチルセルロースナトリウム, エチルセルロース, セルロース・アセテート, ポリエチレンオキシド, キサンタンガム, アンモニオメタクリレート共重合体(ammonio methacrylate copolymer), 硬化ヒマシ油(hydrogenated castor oil), カルナウバワックス(carnauba wax), パラフィンワックス, フタル酸セルロース・アセテート(cellulose acetate phthalate), フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose phthalate), メタクリル酸共重合体及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。修飾放出およびパルス放出剤形には、放出速度修飾賦形剤の一つ又は組み合わせが含まれえる。
【0084】
特定の態様において、本発明の薬学的組成物は、更にアスパルテーム, カリウムアセスルファーム, クエン酸, クロスカルメロースナトリウム, クロスポビドン, ジアスコルビン酸(diascorbic acid), エチルアクリラート, エチルセルロース, ゼラチン, ヒドロキシプロピルメチルセルロース, ステアリン酸マグネシウム, マンニトール, メチルメタクリレート, ミント芳香剤(mint flavouring), ポリエチレングリコール, 燻蒸シリカ(fumed silica), 二酸化ケイ素(silicon dioxide), デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate), ステアリルフマル酸ナトリウム(sodium stearyl fumarate), ソルビトール, キシリトールの構成成分を含んでいる即時分散性または溶解性剤形製剤(FDDFs; fast dispersing or dissolving dosage formulations)を含んでもよい。本明細書中に使用されるFDDFsを記載するための分散性または溶解性の用語は、使用される原薬の溶解度に依存する(すなわち、原薬が不溶性である場合、即時分散性剤形が調製されえる、及び、原薬が可溶性である場合、即時溶解性剤形が調製されえる)。
【0085】
また、類似タイプの固形組成物を、ラクトースまたはミルク糖、同様に高分子量のポリエチレングリコール等の賦形剤を用いた、ソフトおよびハードの充填ゼラチンカプセル中に充填剤として使用してもよい。
【0086】
特定の態様において、固形剤形(例えば、錠剤, ドラジェー剤, カプセル,および顆粒剤)は、腸内コーティングおよび当業者に周知の他のものなどのコーティングおよびシェルで調製できる。また、これらは、乳白剤(opacifying agents)を含んでもよく、遅延性, 持続性,または制御性の様式で活性な化合物を放出するような組成物であってもよい。使用できる包埋組成物(embedding compositions)の例は、重合物質(polymeric substances)およびワックスである。活性な化合物は、適切な場合、一または二以上の前述の賦形剤とのミクロ被包性形態(micro-encapsulated form)であってもよい。
【0087】
特定の態様において、経口投与に関する液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン剤, 液剤(solutions), 懸濁剤, シロップおよびエリキシルが含まれる。液体剤形は、活性成分に加えて、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および/または乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油〔特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油またはゴマ油〕、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステル、又はそれらの物質の混合物などの当該技術において一般的に使用される不活性な希釈剤を含んでもよい。
【0088】
係る不活性な希釈剤以外に、薬学的組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤, 乳化剤, および懸濁剤, 甘味剤, 矯味剤, および芳香剤(perfuming agents)を含んでもよい。薬学的組成物は、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール, ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル, 微結晶性セルロース, アルミニウムメタヒドロオキシド(aluminum metahydroxide), ベントナイト, 寒天およびトラガカント, 又はそれらの物質の混合物などを更に含んでもよい。
【0089】
特定の態様において、本発明の薬学的組成物は獣医学での治療のために構成されてもよく、本発明の化合物、又はその獣医学的に許容される塩、又はその獣医学的に許容される溶媒和物またはプロドラッグが通常の獣医学の実施にしたがって適切な許容される製剤として投与され、獣医学の従事者は特定の動物に最も適切な投薬療法および投与の経路を決定するだろう。
活性な化合物の組み合わせが投与される場合、これらを同時に, 別々にまたは連続的に投与してもよい。
【0090】
式 (I)の化合物は、以下の従来技術、同様に、他の従来の有機物の調製法によって調製できる〔Yu, L.J.; Hu, Y. Z. China Pharm. J. 2005, 40, 1029 および本明細書中で参照される文献。 Nikaido, T.; Ohmoto, T.; Kinoshita, T.;Sankawa, U.; Monache, F. D.; Botta, B.; Tomimori, T.; Miyaichi, Y.; Shirataki, Y.; Yokoe, I.Komatsu, M. Chem. Pharm. Bull. 1989, 37, 1392 および本明細書中で参照される文献〕。
【0091】
[例]
以下の例は本発明の更なる説明であるが、本発明の範囲を限定すると解釈されない。
【0092】
例1: ヒト乳癌標本におけるER-αバリアントの発現。
ヒト乳癌組織でプレブロットした膜をProSci Incorporated (Poway, CA)から購入した。その膜をER-α36を特異的に認識する抗-ER-α36 抗体およびHRP-結合二次抗体でプローブし、 増強化学発光(ECL)検出試薬(Amersham Pharmacia Biotech)で視覚化した。同じ膜を、次にストリップし、全ての三つのサブタイプのER-α, ER-α66, ER-α46 および ER-α36を認識する抗-エストロゲンレセプタ-a 抗体 H222 (Novocastra Laboratories Ltd, UK)で検出した。図 1は、ER-α66, ER-α46 および ER-α36が正常な乳房組織で発現していないが (レーン 1)、浸潤性の腺管癌の一つの標本 (レーン 2)、浸潤性の小葉癌の一つの標本(レーン 5), および非侵襲性の腺管癌(レーン 7)で発現していることを示している。加えて、ER-α36は、侵襲性の腺管癌(レーン 4)および別の標本の浸潤性の小葉癌(レーン 6)で発現している。レーン 2 および 3は、それぞれ二つの異なる患者からの浸潤性の腺管癌(ductal carcinoma)である。レーン 5 および 6は、それぞれ二人の異なる患者からの浸潤性の小葉癌(lobular carcinoma)である。この結果は、ER-α36が正常な乳房組織で発現していないが、ER-α66 および ER-α46を発現していないER-陰性の乳癌サンプルにおいて発現していることを指摘している。
【0093】
例 2: ER-α36はER-陰性の乳癌株化細胞, MDA-MB-231において発現する。
MDA-MB-231株化細胞は、ER-α66 および ER-α46を欠損していることが周知である(乳房腫瘍に関するモデルとしての乳癌細胞株の関連性: 最新情報 Marc Lacroix, Guy Leclercq, Breast Cancer Research and Treatment 83: 249-289 (2004))。MDA-MB-231細胞は、アメリカンタイプティッシュカルチャーコレクション(ATCC; American Type Cell Culture)から取得した。MDA-MB-231 細胞を、8-ウェルBIOCOATチャンバースライド(BD Science Discovery Labware)を5% CO2 雰囲気中でダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)および10%ウシ胎児血清で37℃で12 時間成長させた。次に、細胞を、無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS)で二回洗浄し、4% パラホルムアルデヒドをPBS (pH 7.4)中に含む溶液で30 分間室温で固定した。その後、細胞を、PBSで洗浄し、0.5% (v/v) Triton X-100で10 分間で透化化(permeabilized)した。細胞を、次にPBSで再び洗浄し、3% 血清(PBS中)で室温で1 時間ブロックした。スライドを、ER-α36特異的抗体または該抗体に結合する免疫原ペプチドで30 分間プレインキュベートした同じ抗体で室温で1 時間インキュベーションし、0.5% Triton X-100 (PBST)を含んでいるPBSで三回洗浄し、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)結合型の二次抗体でインキュベーションした。最終的に、スライドを、PBSTで三回、PBSで一回洗浄し、抗フェードメディウム(anti-fade medium, Molecular Probes, Eugene, OR)で被覆し、ニコン E600顕微鏡で検査し、イメージをMRC-1024 共焦点イメージングシステム(Bio-Rad)で捕獲した。図 2 (上方のパネル)は、MDA-MB-231 細胞が抗-ER-α36 抗体で陽性に染色されたことを示す。免疫原ペプチドでプレインキュベートされた同じ抗体でのインキュベーションによって染色性がしめされず(図 2, 下方のパネル)、抗体の特異性が指摘される。
【0094】
例 3: イカリチンはER-陰性の乳癌 MDA-MB-231細胞において細胞死を誘導する。
MDA-MB-231 細胞を、37℃で5% CO2 雰囲気でDMEMおよび10% ウシ胎児血清において維持した。細胞を、1 x 105 細胞/60mm 皿の密度で播種した。MDA-MB-231 細胞を、DMSOに溶解したイカリチンでゼロ, 1μM, 5μM および 10μMの濃度で一週処理した。イカリチンをShanghai Yousi Biotechnology Co., Ltdから購入した。処理した細胞を、ニコン TS100 倒立顕微鏡下で検査し、形態学的な変化の写真をとった。図 3は、10μM イカリチンで処理した場合に細胞がアポトーシス細胞の特徴の形態を呈し、生存している細胞の数が劇的に減少したことを示す。
【0095】
加えて、MDA-MB-231 細胞を、ゼロ, 5μM, 10μM, 20μM, 30μM, 40μM および 50μMの濃度のタモキシフェン, ICI 182,780, ルテオリン, イカリチンで処理して、これらの化合物のMDA-MB-231細胞成長における影響を検査した。タモキシフェン および ルテオリンをSigma(Sigma, St. Louis, MO.)から購入した; ICI 182,780をTocris Bioscience(Tocris Bioscience, Ellisville, MO)から購入した。これらの化合物をDMSOに溶解した。MDA-MB-231 細胞を、500 細胞/60 mm 皿でさらに播種し、異なる化合物で別々に10 日インキュベーションした。化合物処理で生存した細胞がコロニーを形成した。細胞コロニーを、0.5m1の0.02% クリスタルバイオレット, 20% エタノール, 0.74% ホルムアルデヒド, および 80% H2Oで10 分間染色した。染色したコロニーを、光学顕微鏡下で計数した。図 4は、MDA-MB-231 細胞のコロニー数が5μMのイカリチン, ルテオリン, タモキシフェンまたはICI 182,780の処理で減少したことを示す。MDA-MB-231 コロニー数は、10μMのイカリチンまたはタモキシフェンの処理でゼロ近くまで更に減少したことを示した。ルテオリンで処理された場合、MDA-MB-231 コロニー数は40μMの濃度でゼロ近くまで下がった。しかしながら、ICI 182,780で処理された場合、コロニー数は50 μMの濃度で高レベルに維持された。
【0096】
例 4: イカリチンはER-陽性の乳癌MCF7細胞において細胞死を誘導する。
MCF7 株化細胞は、ER-α66, ER-α46 および ER-α36を強く発現する乳癌細胞株である〔乳房腫瘍に関するモデルとしての乳癌細胞株の関連性: 最新情報 Marc Lacroix, Guy Leclercq, Breast Cancer Research and Treatment (2004) 83, 249-289; Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.103:9063-9068 (2006)〕。ATCCから取得したMCF7 細胞を、10% ウシ胎児血清を添加したDMEM/F12 培地 (lnvitrogen)で37℃で5% CO2 雰囲気で維持した。MCF7 細胞を、ゼロないし25μMの濃度でのタモキシフェン, ICI 182,780, ルテオリン および イカリチンで処理して、これらの化合物の10 日のMCF7 細胞成長における影響を検査した。実験を、上記の例 3での図 4の実験と同じ様式で実施した。図 5aは、タモキシフェン, ルテオリン および イカリチンが濃度の上昇にしたがいMCF7 細胞のコロニー数を有意に減少させたことを示す。ICI 182,780は、細胞コロニーの僅か限定的な減少を25μMでさえも誘導した。
【0097】
別の実験において、MCF7 細胞を、それぞれイカリチン, IC 163 および Y4で処理して、これらの化合物のMCF7 細胞成長における影響を比較した。IC 163およびY4をShanghai Yousi Biotechnology Co., Ltdから購入した。MCF7 細胞を、1 x 105 細胞/100-mm 皿の密度で播種し、ゼロないし25μMの濃度で二週各化合物で処理した。生存している細胞の数を、血球計数器を用いて計数した。細胞の五つの皿を、各濃度ポイントで計数した。図 5bは、各化合物が生存しているMCF7 細胞の数を5μM以上の濃度で有意に減少させたことを示す。
【0098】
例 5: イカリチンはER-α36を過剰発現しているMCF7 細胞およびタモキシフェン耐性MCF7細胞において細胞死を誘導する。
ER-α36を過剰発現しているMCF7 細胞を、MCF 細胞にER-α36 発現ベクターを安定的にトランスフェクションすることで作出した。ER-α36 発現ベクターを、pBluescript プラスミドからER-α36の1.1-kbのcDNA断片を哺乳類の発現ベクター pCB6+に以前の記載(Wang et al., 2005, BBRC, 336:1023-1027)のとおりクローニングすることで構築した。構築したER-α36発現ベクターは、サイトメガロウイルス (CMV) 初期プロモータを含む。MCF7 細胞を、FuGene6トランスフェクション試薬(Roche Molecular Biochemicals)を用いてER-α36 発現ベクターでトランスフェクションした。トランスフェクションの四十八時間後、細胞を再度播種し、500 μg/mlのG418 (インビトロゲン)で約 二 週コロニーが出現するまで選択した。クローンを、次にプールし、培養し、ウエスタンブロット分析でER-α36の発現を確認した。
【0099】
タモキシフェン耐性のMCF7 細胞を、5μM タモキシフェンを含有している培地で三月間インキュベーションすることにより作った。三月後になおも生きているMCF7 細胞を、プールし、更にタモキシフェン耐性MCF7 細胞として培養した。ウエスタンブロット分析によって、これらの細胞がER-α36を高度に発現することが明らかとなった(データ示さず)。
【0100】
細胞株を、10% ウシ胎児血清を添加したDMEM/F12 培地で37℃で5% CO2 雰囲気で維持した。細胞を、1 x 105 細胞/100-mm 皿の密度で播種し、ゼロないし10μMの濃度で二週イカリチンで処理した。二週後の生存した細胞の数を、計数した。細胞の五つの皿を、各濃度ポイントで計数した。図 6は、5μMのイカリチンで全て三つのタイプの細胞の成長が有意に阻害されること並びに阻害がMCF7 細胞におけるよりもER-α36を過剰発現しているMCF7 細胞およびTAM耐性MCF7細胞においてより強いことを示す。イカリチンは、10μMで全ての三つのタイプの細胞の数をゼロ近くまで減少させた。
【0101】
例 6: 正常な乳房上皮細胞の成長はイカリチンで影響されない
正常な乳房の上皮細胞MCF10Aを、Karmanos癌研究所(Karmanos Cancer Institute at Detroit, MI)から取得した。これらのMCF10A細胞は、ER アイソフォーム, ER-α36, ER-α46 および ER-α66を発現しない。MCF10A 細胞を、37℃で10% CO2 雰囲気で、5% ウマ 血清, L- グルタミン (2 mM), ペニシリン (100 U/ml), ストレプトマイシン (100 μg/ml), ヒドロコルチゾン (0.5 μg/ml), インシュリン (10 μg/ml), EGF (2 ng/ml), コレラ毒素 (0.1 μg/ml) および ファンギゾン(0.5 μg/ml)を添加したDMEM/F12 培地において維持した。MCF10A 細胞を、1 x 105 細胞/100-mm 皿の密度で、それぞれゼロ, 20 μM および 50 μMのイカリチンを含有している皿に二週培養した。次に細胞を、ニコン TS100 倒立顕微鏡下で検査し、形態学的な変化の写真をとった。図 7は、MCF10A 細胞の形態がイカリチンを50 μMと同じ程度の濃度での処理によって変化させられなかったことを示す。
【0102】
例 7: ER-α バリアントの発現の異なる因子による制御
MCF7 細胞を異なる因子で処理し、ER-α66, ER-α46 および ER-α36の発現をウエスタンブロット分析で分析した。
【0103】
血清飢餓(Serum-starved)のMCF7 細胞を、10 μMの17β-エストラジオール (E2β), タモキシフェンまたはICI 182,780または血清 (20%)で異なる時間で処理した。処理した細胞を、PBSで洗浄し、溶解緩衝剤(50 mM Tris-HCI pH8.0, 150 mM NaCl, 0.25 mM EDTA pH8.0, 0.1 % SDS, 1 % Triton X-100, 50 mM NaF, およびプロテアーゼインヒビター反応混液 Sigma)で溶解させた。溶解物(lysates)を、SDS ゲルローディングバッファー(25 mM Tris-CI pH 6.8; 10% SDS; 2% グリセロール; 20% β-メルカプトエタノール; 0.01% ブロモフェノールブルー)で5 分間沸騰させ、10% SDS-PAGE ゲルで分離した。電気泳動法後、タンパク質を、PVDF 膜 (Bio Rad Laboratories, Hercules, CA)に転写した。膜を、抗-エストロゲンレセプタ-α 抗体 H222でプローブした。次に、膜を、HRP-結合型の二次抗体でインキュベーションし、ECL検出試薬で視覚化した。図 8は、E2β処理がER-α66 および ER-α46発現の両方を劇的に減少させたが、ER-α36発現を誘導したことを示す。血清処理は、類似する効果を有していた。しかしながら、タモキシフェンは、ER-α66 および ER-α46の発現レベルを安定化し、ER-α36発現レベルも増加させた。ICI 182,780は、劇的にER-α66 および ER-α46のレベルを減少させ、同時にER-α36発現のレベルを増加させた。
【0104】
加えて、MCF7 細胞を、異なる濃度のICI 182,780, イカリチン, IC 163またはY4で12 時間処理した。ER-α66, ER-α46 および ER-α36の発現を、上記記載のとおりウエスタンブロット分析で分析した。図 9は、ICI 182,780処理がその濃度の増加にしたがってER-α66 および ER-α46 発現を減少させ、ER-α36発現を増加させたことを示す。しかしながら、イカリチンは、高濃度で有意に全て三つのアイソフォーム, ER-α66, ER-α46 および ER-α36の発現レベルを減少させた。また、IC163またはY4処理によって、全て三つのERアイソフォームの発現が非常に減少させられる。
【0105】
例 8: イカリチンは肺 および 前立腺の癌細胞において細胞死を誘導する
H226肺癌細胞, LnCap 細胞およびPC3細胞を、各々1 x 105 細胞/30-mm 皿の密度で播種した。細胞を、イカリチンで二週処理した。生存している細胞の数を、血球計数器を用いて計数した。イカリチン処理を、それぞれゼロ, 1.0 μM, 2.5 μM, 5.0 μM, 7.5 μM および 10 μMの濃度で試験した。細胞の五つの皿を、各濃度ポイントで計数した。図 10は、全ての細胞株の細胞数を、5 μM イカリチンの処理で減少したことを示す。全ての細胞株からの細胞数は、10 μMでさらに減少した。従って、イカリチンは、肺 および 前立腺の癌細胞において細胞死を誘導する。
【0106】
例 9: イカリチンはヌードマウスにおけるER-陽性およびER-陰性の乳癌異種移植片の成長を阻害する
動物に投与するイカリチンを、コーン油中に調製した。コーン油中にイカリチンを作るために、5 mlのコーン油をシンチレーションバイアルにいれ、42℃で30 分間熱した。100 mgのイカリチンを、予熱した5 ml コーン油に20 mg/mlの終濃度で添加した。バイアルをアルミニウム箔で包装し、振盪機(rocker)に37℃で数時間配置した。イカリチン溶液を、4℃で貯蔵し、動物投与での使用を準備した。イカリチン溶液を、胃管栄養技術(gavage technique)を用いてマウスに投与した。胃管栄養に関して、我々はAnimal Feeding Needles(Popper; cat No. 9921, サイズ: 20GX1.1/2)を使用した。
【0107】
腫瘍形成を、雌性の胸腺欠損ヌードマウス(6 週齡, CDI nu/nu系統, Charles River Breeding Laboratory)でアッセイした。200 μlのMatrigel(BD Biosciences)において1 x 107 細胞の濃度でMCF7 細胞またはMDA-MB-231細胞を、乳房脂肪パッド(mammary fatpad)の注射によってマウスに注射した。5 マウスの群に各タイプの乳癌細胞を注射した。MCF7 細胞に関して、接種を、Innovative Research of American(Sarasota, FL)から購入した1.7 mg/60日放出のE2βペレット(特定量のE2βを毎日60 日間放出できる徐放性のE2β ペレット)の皮下移植5 日後に行った。直径約 0.5 cmの腫瘍サイズの動物は、Animal Feeding Needlesでの胃管栄養技術を用いてコーン油中のイカリチンを投与された。MCF7 細胞を接種されたマウスに対して、各々5 mgのイカリチンを隔日15 日間で与えられた。MDA-MB-231細胞を接種されたマウスに対して、各々5 mgのイカリチンを隔日30 日間で与えられた。腫瘍の消失は触診で決定され、腫瘍のサイズは二つの垂直直径(perpendicular diameters)をノギスで隔日測定することでモニターし、写真をとった。図 11 および 12は、それぞれイカリチン処理の前後でMDA-MB-231 および MCF7 細胞の異種移植片における腫瘍サイズの減少の写真を示す。この結果は、イカリチン処理後の両方のタイプの乳癌細胞の異種移植片に有意な腫瘍サイズの減少があったことを示す。
【0108】
例 10: イカリチンは移植の直後に適用された場合にヌードマウスにおけるER-陰性の乳癌異種移植片の成長を阻害する
腫瘍形成を、雌性の胸腺欠損ヌードマウス(6 週齡, CDI nu/nu系統, Charles River Breeding Laboratory)でアッセイした。200 μlのMatrigel(BD Biosciences)において1 x 107 細胞の濃度でMDA-MB-231細胞を、乳房脂肪パッド(mammary fatpad)の注射によってマウスに注射した。5 マウスの群に乳癌細胞を注射した。マウスを、注射の直後にイカリチンで処理した。各マウスを、1 mgのイカリチンを週二回36日間与えた。次に、マウスを屠殺し、マウスから腫瘍組織を解剖し、写真をとり、秤量した。図 13は、イカリチンで処理されたMDA-MB-231 細胞の異種移植片における腫瘍サイズの減少を示す。
【0109】
例 11: イカリチン および IC 163はヌードマウスにおけるヒト乳癌BCAP-37細胞の異種移植片の成長を阻害する
乳癌の異種移植片を有するヌードマウスを、イカリチンで処理して腫瘍成長の阻害における効果を検査した。BCAP-37 乳癌を担持しているオリジナルのヌードマウスは、研究所(Institute of Materia Medica, Chinese Academy of Medical Sciences)によって提供された。腫瘍組織をマウスから採取し、小片に切断した。腫瘍組織の幾つかの小片を、雌ヌードマウス(Medical School of Beijing Universityの実験動物部により提供)の右前肢下の腋窩に移植した。移植後、マウスを、E2β溶液を毎日一回7μg/マウスの投薬量で6日間与えて、受けたマウスにおける腫瘍成長を刺激した。第七日から、マウスはイカリチン三投薬量を与えられた。高投薬量は、0.7mg/マウス/日 (約 33 mg/kg/日)であった。中間投薬量は、0.35mg/マウス/日 (約 16.5 mg/kg/日)であった。低投薬量は、0.18 mg/マウス/日 (約 8.25 mg/kg/日)であった。タモキシフェンを、正の対照として0.35mg/マウス/日の投薬量で使用した。オリーブ油を、負の対照として使用した(各マウスは、0.1 ml のオリーブ油を与えられた)。イカリチンを、上記の例 9の記載と同じ方法によりオリーブ油剤として調製した。マウスは、イカリチンを異なる投与量でタモキシフェンまたはオリーブ油を毎日一回15日間与えられた。次に、マウスを屠殺し、マウスから腫瘍組織を解剖し、秤量した。二つの並行的な実験(parallel experiments)を、検査のために行った。十個体の雌性BALB/c-nuマウスを、二つの並行的な実験の一つのために各試験化合物および各投薬量に使用した。八個体の雌性BALB/c-nuマウスを、二つの並行的な実験のもう一つのために各試験化合物および各投薬量に使用した。図 14aは、高投薬量, 中間投薬量および低投薬量のイカリチンで処理されたマウスが負の対照と比較した場合に腫瘍重量が減少していたことを示す。図 14bは、異なる投与量での腫瘍の成長阻害率を示す。腫瘍の成長阻害率は、次の式を用いて計算されたパーセンテージである: 腫瘍の成長阻害率 = (対照における腫瘍の平均重量 - イカリチンで処理された腫瘍の平均重量)/対照における腫瘍の平均重量。高投薬量のイカリチンで処理されたマウスの腫瘍重量は、正の対照と類似する腫瘍の減量を生じた。
【0110】
乳癌成長を阻害することにおけるIC 163の効果を、上記と同じアッセイで試験した。IC 163を、0.7 mg/マウス/日 (約 35 mg/kg/日)の投薬量で試験した。タモキシフェンを、正の対照として半分の投薬量のIC 163で試験した。オリーブ油を、負の対照として使用した。図 14c および 14dは、IC 163処理が腫瘍成長の阻害においてタモキシフェンと類似する効果を有していたことを示す。
【0111】
例 12: イカリチンはICRマウスにおけるマウス子宮頚癌U14細胞の異種移植片の成長を阻害する
子宮頚癌 U14 株化細胞を含んでいるオリジナルのICR マウスは、研究所(Institute of Materia Medica, Chinese Academy of Medical Sciences)により提供された。5mlの腹腔液(abdominal fluid)を、マウスの下腹部からとった。その液を、生理食塩水で1:5の比で希釈した。0.2mlの希釈された腹腔液を、雌性ICRマウス(Medical School of Beijing Universityの実験動物部により提供)の右前肢および胸部の皮下に注射した。移植後、マウスを、それぞれイカリチン, タモキシフェン および オリーブ油で直ちに処理した。イカリチンを、三投薬量あたえた。高投薬量は、0.7mg/マウス/日 (約 33 mg/kg/日)であった。中間投薬量は、0.35mg/マウス/日 (約 16.5 mg/kg/日)であった。低投薬量は、0.18mg/マウス/日 (約 8.25mg/kg/日)であった。タモキシフェンを、正の対照として0.35mg/マウス/日(約 16.5mg/kg/日)の投薬量で使用した。オリーブ油を、負の対照として使用した(各マウスは、0.1 ml のオリーブ油を与えられた)。イカリチンを、上記の例 9の記載と同じ方法によりオリーブ油剤として調製した。マウスは、イカリチンを異なる投与量でタモキシフェンまたはオリーブ油を毎日一回14日の期間与えられた。次に、マウスを屠殺し、マウスから腫瘍組織を解剖し、秤量した。十個体の雌性ICR マウスを、各試験化合物および投薬量に使用した。三つの並行的な実験を行った。図 15aは、高投薬量, 中間投薬量および低投薬量のイカリチンで処理されたICR マウスが負の対照と比較した場合に腫瘍重量が減少していたことを示す。高投薬量のイカリチンで処理されたマウスの腫瘍重量は、正の対照と類似する腫瘍の減量を生じた。図 15bは、異なる投与量での腫瘍の成長阻害率を示す。腫瘍の成長阻害率を、例 11と同じ式を用いて計算した。
【0112】
例 13: IC 163は乳房, 肺 および 前立腺の癌細胞において細胞死を誘導する
MCF7 細胞, PC3 前立腺癌細胞, H226 肺癌細胞およびMCF7/TAM細胞を、IC 163で処理して、化合物の癌の細胞成長の阻害における影響を検査した。実験を、例 8と同じ様式で実施した。結果を図16に示す。5 μMで幾つかの細胞株の細胞数は減少しはじめた。10 μMで全ての試験した細胞株の細胞数は、減少し、IC 163の濃度の増加にしたがい連続的に減少した。
【0113】
例 14: モルモットにおいて卵白アルブミンで誘導された抑止喘息発作(Deterring Asthma Attack)におけるIC-163の効果
250-300 gのモルモットが、Beijing Haidian Xingwang Animal Farmから提供された。モルモットは、1 mlの10% 卵白アルブミン(Sigma Cat.No.A5253)を腹部に一度注射した。注射の15-17日後、モルモットは、1 % エアロゾル化した卵白アルブミンを点鼻薬(nasal spray)で約 20秒あたえられて喘息発作を誘発させられた。卵白アルブミン投与後からモルモットが痙攣(convulsion)で衰弱(collapsed)したときまで計算した喘息発作前の潜伏期を測定した。モルモットが卵白アルブミン投与後に150秒以内に痙攣で衰弱しなかった場合、そのモルモットは更なる検査に不適格とされた。
【0114】
注射後17日に適格とされたモルモットを、3群にわけた〔高投薬量 IC-163 群 (4 mg/kg/日), 低投薬量 IC-163 群(1 mg/kg/日) および対照群〕。各群は、10 モルモットからなる。10% 卵白アルブミンを注射されなかった8個体の正常モルモットからなる正常群も試験した。IC-163をモルモットに4 mg/キログラム体重/日 (高投薬量群)または1 mg/キログラム体重/日(低投薬量群)で筋肉注射で日に一回6 日投与し、正常群および対照群のモルモットは生理食塩水を注射された。薬の投与の4および6日目に、モルモットは、上記と同じ様式で喘息発作を誘導させられた。喘息発作前の潜伏期を測定した。潜伏期が5 分間よりも長く持続する場合、潜伏期は5 分間と記録した。6日目に、血液を四群のモルモットからとり、好酸性細胞のパーセンテージ、血中のヒスタミンおよびIgEの濃度を検査した。好酸性細胞のパーセンテージを、顕微鏡下で200の白血球ごとの好酸性細胞の数を計数することによって測定した。ヒスタミンおよびIgEの濃度を、二重抗体サンドイッチ ELISA (酵素結合免疫吸着検定法)により測定した。
【0115】
図17は、IC-163の高および低投薬量のモルモットへの投与の4および6日における卵白アルブミンにより誘発された喘息発作前の潜伏期を示す。高投薬量のIC-163が投与された場合、潜伏期は対照群と比較して薬投与の4日で72.9%(および6日で63.5%)延長(extended)された。低投薬量のIC-163が投与された場合、潜伏期は対照群と比較して4日で83.4%および6日で72.7%延長された。高および低投薬量のIC-163の投与によって、卵白アルブミンで誘導させられたモルモットにおける喘息発作を有意に遅延できることを結果は示した。
【0116】
図 18は、モルモットが高および低投薬量のIC-163を投与されたときの血液における好酸性細胞のパーセンテージを示す。正常群の好酸性細胞のパーセンテージは約 5.3%であり、対照群のパーセンテージは約 9.9%程度に高かった。IC-163が高および低投薬量で投与された場合、好酸性細胞のパーセンテージはそれぞれ約 8.6% および 約 7.8%に減少した。図は、高および低投薬量のIC-163が試験したモルモットにおける好酸性細胞のパーセンテージを有意に減少できることを指摘している。
【0117】
モルモットの血液中のヒスタミンの濃度を、正常群, 対照群, 高投薬量IC-163および低投薬量IC-163群において測定した。図 19の結果は、高および低投薬量のIC-163の投与が有意にモルモットにおけるヒスタミンの血中濃度を減少できることを示す。
【0118】
四群のモルモットの血液におけるIgEの濃度を測定し、結果を図 20に示した。結果は、高および低投薬量のIC-163の投与が有意に試験したモルモットにおけるIgEの濃度を減少できることを示す。
【0119】
例 15: イカリチンはヒト子宮体癌 Hec1 A 細胞の成長を阻害する
ヒト子宮体癌 Hec1 A 細胞(ATCC No.: HTB-112TM)を、96-ウェル培養プレートに5x103 細胞/ウェルの濃度でさらに播種し、高グルコース培地を含有しているDMEM(HyClone, SH30022.01B)で培養した。細胞を、一晩血清飢餓させ、タモキシフェンまたはイカリチンに異なる濃度で24 時間暴露した。タモキシフェンまたはイカリチンの濃度は、それぞれ0 μM, 0.001 μM, 0.01 μM, 0.1 μM, 1 μM, 3 μM および 5 μMである。細胞を、次に0.5 mg/mlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム ブロミド(MTT)で4 時間37!でインキュベーションした(MTTは、不溶性のムラサキのホルマザンに生細胞における活性なミトコンドリアレダクターゼ酵素によって還元された)。次に、過剰な液体MTTを、反応混合物から除去した。150 μlのDMSOを添加して、ムラサキのホルマザンを着色した溶液に溶解した。着色した溶液の光学密度を、ミクロプレートリーダーを用いて490 nmで測定した。着色した溶液の光学密度は、溶液中の細胞数と直線性の相関を有しており、細胞の正確な定量が可能である。
【0120】
図 21は、MTTアッセイの結果を示す。光学密度は、Hec1A 細胞をイカリチンの濃度を増加させて暴露した場合になめらかに低下した。これに対し、光学密度は、Hec1 A 細胞が0.001 μM ないし3 μMに増加した濃度でタモキシフェンに暴露した場合に上昇した。図は、イカリチンがHec1 A 細胞の成長に有意な阻害効果を有し、タモキシフェンがHec1A 細胞の成長に3 μM未満の濃度で刺激する逆の効果を有することを指摘している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における異常な細胞増殖が関与している疾患を予防または治療する方法であって、前記被験者に治療上効果的な量の式 (I)の構造を有している単離された化合物を含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物は式 IA1の構造を有する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記化合物は式 IA2の構造を有する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記化合物は式 IA3の構造を有する方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記化合物は式 IA4の構造を有する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記化合物は式 IA5の構造を有する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記化合物は式 IA6の構造を有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物は(i) 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, (ii) 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, (iii) 5,7-ジヒドロキシ-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン, (iv) 3,5-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8,8-ジメチル-9,10-ジヒドロ-4H,8H-ピラノ[2,3-f]クロメン-4-オン, および (v) 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン, (vi) 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンからなる群から選択される方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項13】
前記被験者が哺乳類である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳類がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記投与は、口内(oral), 頬内(buccal), 舌下, 眼球内, 局所, 非経口, 直腸内, 嚢内, 腟内, 腹腔内, 膀胱内,または鼻内である方法。
【請求項16】
前記投与が非経口である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記疾患は、乳癌, 子宮頸部癌, 結腸癌, 子宮体部癌, 白血病, 肝臓癌, 肺癌, ミエローマ, 卵巣癌, 前立腺癌, 胃癌,または子宮癌からなる群から選択される方法。
【請求項18】
前記疾患が乳癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
被験者におけるER-α36に関連する疾患を予防または治療する方法であって、前記被験者に治療上効果的な量の式 Iの構造を有している化合物を含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記化合物は式 IA1の構造を有する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記化合物は式 IA2の構造を有する方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記化合物は式 IA3の構造を有する方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記化合物は式 IA4の構造を有する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記化合物は式 IA5の構造を有する方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記化合物は式 IA6の構造を有する方法。
【請求項26】
前記被験者が哺乳類である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳類がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項19に記載の方法であって、前記投与は、口内(oral), 頬内(buccal), 舌下, 眼球内, 局所, 非経口, 直腸内, 嚢内, 腟内, 腹腔内, 膀胱内,または鼻内である方法。
【請求項29】
前記投与が非経口である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記非経口投与は、静脈内, 筋肉内,または皮下, 血管内または輸液である方法。
【請求項31】
前記疾患が骨粗鬆症である、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
請求項19に記載の方法であって、前記化合物は(i) 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, (ii) 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, (iii) 5,7-ジヒドロキシ-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン, (iv) 3,5-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8,8-ジメチル-9,10-ジヒドロ-4H,8H-ピラノ[2,3-f]クロメン-4-オン, (v) 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン, および(vi) 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンからなる群から選択される方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項37】
被験者における呼吸性の疾患を予防または治療する方法であって、前記被験者に治療上効果的な量の式 (I)の構造を有している単離された化合物を含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法。
【請求項38】
前記呼吸性の疾患が喘息である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、前記化合物は(i) 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, (ii) 3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オン, (iii) 5,7-ジヒドロキシ-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン, (iv) 3,5-ジヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8,8-ジメチル-9,10-ジヒドロ-4H,8H-ピラノ[2,3-f]クロメン-4-オン, (v) 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン, および(vi) 3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンからなる群から選択される方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-メトキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-8-(3-メチルブタ-2-エニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-メトキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法であって、前記化合物は3,5,7-トリヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンである方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−508284(P2010−508284A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534827(P2009−534827)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/082286
【国際公開番号】WO2008/052005
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509120517)シェノゲン・ファーマ・グループ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】