説明

エタノール水蒸気改質用触媒

【課題】従来品よりも低温(特に225〜350℃)で触媒活性を発揮し、エチレン及びアセトアルデヒドの副生が抑制された、エタノール水蒸気改質用触媒及びそれを用いた水素製造方法を提供する。
【解決手段】酸化インジウムを担体とし、当該担体にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1種が担持されてなるエタノール水蒸気改質用触媒並びに当該エタノール水蒸気改質用触媒を用いた水素製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノール水蒸気改質用触媒及びそれを用いた水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、工業的利用、燃料としての利用において極めて重要である。工業的利用には、アンモニア製造プロセス、原油精製プロセス、メタノール製造プロセス等における利用が挙げられる。また、燃料としての利用には、水素の燃焼による各種熱源、内燃機関(水素エンジン)の燃料、燃料電池による発電(大規模電源、分散型電源、燃料電池自動車等)等が挙げられる。
【0003】
現在、水素は、天然ガス、石油、石炭等の化石燃料(炭化水素)と水蒸気との反応により製造されている。例えば、エタノールと水蒸気(水)との反応(即ち、エタノール水蒸気改質反応)は、下記の反応式:
・C2H5OH + 3H2O → 6H2+ 2CO2 (改質反応1)又は、
・2C2H5OH + H2O → 4H2+ CO2 + CH3COCH3 (改質反応2)で示される。
【0004】
これらの反応は、液体のエタノールから水素を製造できる点で工業的利用及び燃料としての利用の両面において好都合である。これは、水素が気体であるため輸送・貯蔵が困難であるのに対して、エタノールは液体であり比較的輸送・貯蔵が容易であり、更にエタノールは生体安全性を有するとともに再生可能なバイオマスから製造できるためである。
【0005】
また、エタノールを用いた工業的水素製造法では、他の製造法と比較してより高純度の水素を製造できる。そのため、直接、高純度水素を高圧ボンベ等で運搬することなく、エタノールを輸送・貯蔵し、必要とする場所で水蒸気改質反応により水素に変換して高純度水素を供給することができる。
【0006】
エタノールを用いた燃料用水素の製造には次の利点がある。ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車は、それぞれガソリン、軽油を燃料として走行している。水素はガソリンや軽油のような石油由来の燃料よりもクリーン(窒素酸化物や粒状物質により大気を汚すことがない)且つグリーン(二酸化炭素や亜酸化窒素等の地球温暖化原因物質を排出しない)である点から、次世代の燃料として期待されている。
【0007】
しかしながら、現状では、水素燃焼エンジン自動車、水素燃料電池自動車を普及させることは極めて困難である。この理由は、気体である水素を自動車に搭載することが極めて困難だからである。
【0008】
一方、エタノールは、他の燃料(ガソリン、軽油等)と比較して上述の改質反応により容易に水素に変換できる上、エタノール燃料タンク、エタノール改質装置は自動車に搭載できる可能性が高い。
【0009】
上述のように、エタノール水蒸気改質反応は極めて重要な反応であり、この反応を効率良く行うために、比較的低温で反応を進行させる新規な触媒が希求されている。ここで、比較的低温が求められる理由は、以下の通りである。
【0010】
1.水素の供給は、瞬時に供給され、瞬時に停止されることが望ましい。
【0011】
例として、自動車への搭載を想定した燃料電池への水素供給装置を挙げる。現在のガソ
リンエンジン自動車、ディーゼルエンジン自動車と同等の利便性を求める場合には、少なくとも10秒程度でエンジン始動、エンジン停止が実現する必要がある。天然ガス、ガソリン、軽油等の炭化水素を燃料とする燃料電池自動車、エタノール改質型燃料電池自動車の場合、改質反応が瞬時に起動し、瞬時に停止できることが好ましい。
【0012】
エタノール改質反応が低温(例えば室温付近から250℃程度)で進行すれば、例えば、電熱加熱(電熱線による電気加熱)、燃料燃焼による加熱により、瞬時に反応温度に到達可能であり、瞬時な改質反応の始動が可能となり、燃料電池自動車においてもガソリン自動車並みの瞬時の始動、停止が実現できる。
【0013】
2.水素を必要とする装置が室温等の低温度で使われる場合がある。
【0014】
例として、携帯型パソコン、携帯電話用電源への応用を挙げる。現在の携帯型パソコン、携帯電話等は非常に高速な性能向上を実現し、その利便性が極めて向上している。これは、各種電子デバイス(CPUプロセッサ、ハードディスクユニット等)の進化により実現
しているが、消費電力量及び発熱量の増大ももたらしている。
【0015】
これに対して各種電池の技術的発展は、電子デバイスの発展と比較して相対的に遅れていると言わざるを得ない。例えば、最新の携帯型パソコン、携帯電話等では、処理速度や通信速度の飛躍的な向上は実現しているが、特に可動時間の短縮が起こっており、総合的利便性は低下している場合が見受けられる。
【0016】
これら移動体電源の根本的問題を解決する手段の一つとして、固体高分子型燃料電池の利用が注目されている。固体高分子型燃料電池は、例えばエタノールを燃料として、エタノールを直接利用するか、又はエタノール水蒸気改質反応を用いて水素に変換し、燃料電池により電力に変換する装置である。これらの電力発生装置(電池)は、室温から80℃程度の温度で作動することが極めて重要である。エタノール水蒸気改質反応が80℃程度、望ましくは室温で十分に生じれば、これらの携帯型電子機器への応用が大いに期待できる。
【0017】
3.不純物を極低濃度にしたい。
【0018】
固体高分子型燃料電池は、特に燃料水素中に一酸化炭素が極低濃度(10〜100 ppmオー
ダー)でも含まれていると性能が大幅に低下する。エタノール水蒸気改質反応では、パーセントオーダーで一酸化炭素が副生する場合が多い。この原因としては、逆水性ガスシフト反応が考えられる。この反応は、下記の反応式
・CO2 + H2→ CO + H2O
で示される。この反応は平衡反応であり、下記の反応式
・CO + H2O → CO2 + H2
で示される水性ガスシフト反応と平衡関係にある。この平衡は高温度ほど逆水性ガスシフト反応に有利である(高温度ほど一酸化炭素濃度が高い)。即ち、低温度ほど副生する一酸化炭素の濃度は低くなり、低温度で反応速度が高い新規な触媒が希求される。
【0019】
上述の理由により、低温度でエタノール水蒸気改質反応を活性化する触媒が希求されている。また、エタノール水蒸気改質反応を高効率で行うために耐久性も希求されている。
【0020】
例として、自動車への搭載を想定した燃料電池への水素供給装置を挙げる。現在のガソリンエンジン自動車、ディーゼルエンジン自動車と同等の利便性を求めた場合には、少なくとも10年以上の耐久性を有することが求められる。この耐久性を有することが困難であり消耗品として交換を想定した場合でも、半年から1年の耐久性は求められる。
【0021】
更に他の例として、携帯型パソコン、携帯電話用電源への応用を挙げる。現在の携帯型パソコン、携帯電話の電源と同等の利便性を求めた場合には、少なくとも5年から10年以
上の耐久性が求められる。
【0022】
エタノール水蒸気改質用触媒の耐久性低下の原因としては、触媒上での炭素種の析出が挙げられる。
【0023】
この原因としては、下記の反応式
・C2H5OH → C2H4+ H2O
で示されるエタノールの脱水反応で生成するエチレンが重合した炭素種が生成することが挙げられる。よって、エチレンの生成量が少ない新規な触媒の開発が希求されている。
【0024】
また、他の原因としては、下記の反応式
・C2H5OH → CH3CHO + H2
で示されるエタノールの脱水素反応で生成するアセトアルデヒドが重合した炭素種の生成が挙げられる。アセトアルデヒドは改質反応1及び改質反応2の中間生成物であるとされており、アセトアルデヒドの分解又は改質反応2のように耐久性低下を招くほどに進まない程度の重合でとまれば、耐久性向上が期待できる。
【0025】
従来、エタノール水蒸気改質反応用触媒として下記の触媒が報告されている。
(改質反応1)
1.各種酸化物触媒
酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化サマリウム触媒、アルミニウム銅亜鉛複合酸化物、アルミニウムニッケル銅亜鉛複合酸化物、アルミニウムクロム銅亜鉛複合酸化物、カルシウム鉄複合酸化物触媒
2.各種金属を担持した炭素触媒
担持金属:コバルト、パラジウム
3.各種金属を担持した酸化マグネシウム触媒
担持金属:コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、リチウムニッケル(共担持)、ナトリウムニッケル(共担持)、カリウムニッケル(共担持)4.各種金属を担持した酸化アルミニウム触媒
担持金属:リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、タングステン、イリジウム、白金、金、トリウム、鉛、クロムニッケル(共担持)、鉄ニッケル(共担持)、ニッケル銅(共担持)、ニッケル亜鉛(共担持)、タングステンカーバイド、カリウムニッケル銅(共担持)、クロムニッケル銅(共担持)、ロジウムネオジム(共担持)
5.各種金属を担持した酸化ケイ素触媒
担持金属:リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、タングステン、イリジウム、金、トリウム、鉛、ニッケル銅(共担持)
6.各種金属を担持した酸化チタン触媒
担持金属:リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、
カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、タングステン、白金、金、トリウム、鉛
7.コバルトを担持した酸化バナジウム触媒
8.各種金属を担持した酸化亜鉛触媒
担持金属:コバルト、銅、ルテニウム、ロジウム、白金、ナトリウムコバルト(共担持)、ナトリウムニッケルコバルト(共担持)、ナトリウム銅コバルト(共担持)
9.各種金属を担持した酸化イットリウム触媒
担持金属:鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル銅(共担持)、ニッケル亜鉛(共担持)、ニッケルルテニウム(共担持)、ニッケルロジウム(共担持)、ニッケル白金(共担持)、ルテニウム白金(共担持)、ロジウム白金(共担持)、パラジウム白金(共担持)
10.各種金属を担持した酸化ジルコニウム触媒
担持金属:リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ロジウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、タングステン、金、トリウム、鉛、ニッケル銅(共担持)
11.各種金属を担持した酸化スズ触媒
担持金属:ルテニウム、ロジウム、白金
12.各種金属を担持した酸化ランタン触媒
担持金属:鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、ニッケル銅(共担持)、ニッケル亜鉛(共担持)、ニッケルルテニウム(共担持)、ニッケルロジウム(共担持)、ニッケル白金(共担持)、ルテニウム白金(共担持)、ロジウム白金(共担持)パラジウム白金(共担持)
13.各種金属を担持した酸化セリウム触媒
担持金属:リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、タングステン、イリジウム、白金、金、トリウム、鉛、ニッケル銅(共担持)、ニッケル亜鉛(共担持)、ニッケルルテニウム(共担持)、ニッケルロジウム(共担持)、ニッケル白金(共担持)、ルテニウム白金(共担持)、ロジウム白金(共担持)パラジウム白金(共担持)
14.各種金属を担持した酸化プラセオジム触媒
担持金属:コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金
15.コバルトを担持した酸化サマリウム触媒
16.各種金属を担持した酸化ビスマス触媒
担持金属:ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金
17.各種金属を担持したマグネシウムアルミニウム複合酸化物触媒
担持金属:ロジウム、白金
18.各種金属を担持したアルミニウムケイ素複合酸化物触媒
担持金属:パラジウム、白金
19.ルテニウムを担持したアルミニウムジルコニウム複合酸化物触媒
20.白金を担持したアルミニウムランタン複合酸化物触媒
21.各種金属を担持したアルミニウムセリウム複合酸化物触媒
担持金属:鉄、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム
22.コバルトを担持したチタンストロンチウム複合酸化物触媒
23.ニッケルを担持したイットリウムジルコニウム複合酸化物触媒
24.各種金属を担持したジルコニウムセリウム複合酸化物触媒
担持金属:鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、コバルト(例えば、特許文献1、2)
25.白金をアルミニウムランタンセリウム複合酸化物触媒
(改質反応2)
1.各種酸化物触媒
酸化カルシウム触媒、酸化マンガン触媒、酸化鉄触媒、酸化銅触媒、酸化亜鉛触媒、ナトリウム亜鉛複合酸化物触媒、マグネシウム亜鉛複合酸化物触媒、カルシウム鉄複合酸化物触媒、カルシウム亜鉛複合酸化物触媒、クロム亜鉛複合酸化物触媒、銅亜鉛複合酸化物触媒、アルミニウム銅亜鉛複合酸化物触媒、クロム銅亜鉛複合酸化物触媒、カリウムクロム亜鉛複合酸化物触媒、銅セリウム複合酸化物と酸化マグネシウムを物理混合した触媒
2.テルルを担持した各種酸化物触媒
酸化物:酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ触媒
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2005−131468号公報
【特許文献2】特開2005−131469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、従来品よりも低温(特に225〜350℃)で触媒活性を発揮し、エチレン及びアセトアルデヒドの副生が抑制された、エタノール水蒸気改質用触媒及びそれを用いた水素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化インジウムを担体とし、当該担体に特定の金属酸化物を担持してなる触媒が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0029】
即ち、本発明は、下記のエタノール水蒸気改質用触媒及びそれを用いた水素製造方法に関する。
1. 酸化インジウムを担体とし、当該担体にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1種が担持されてなるエタノール水蒸気改質用触媒。
2. 前記アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1種の担持量が0.5〜20重量%である、上記項1に記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
3. 前記アルカリ金属酸化物は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化ルビジウム及び酸化セシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1又は2に記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
4. 前記アルカリ土類金属酸化物は、酸化マグネシウムである、上記項1〜3のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
5. 前記周期表13族元素酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ガリウムの少なくとも
1種である、上記項1〜4のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
6. 前記第1遷移金属酸化物は、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1〜5のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
7. 前記貴金属酸化物は、酸化パラジウムである、上記項1〜6のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
8. 上記項1〜7のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒を用いて、エタノールと水蒸気の混合物を主として水素と二酸化炭素に変換する水素製造方法。
9. 225〜350℃の範囲でエタノールと水蒸気の混合物を主として水素と二酸化炭素に変換する、上記項8に記載の水素製造方法。

以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
エタノール水蒸気改質用触媒
本発明のエタノール水蒸気改質用触媒は、酸化インジウムを担体とし、当該担体にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1種(担持金属酸化物)が担持されてなる。
【0031】
担体となる酸化インジウム粉末又は粒子の平均粒子径(平均粉末径も含む、以下同じ)は限定されないが、1〜100nmが好ましく、10〜70nmがより好ましい。この平均粒子径は、X線回折法の測定結果から算出した値である。本発明のエタノール水蒸気改質用触媒は、上記粉末又は粒子のまま使用することもできるが、成形することにより顆粒、ペレット、ハニカム等の形態で用いることもできる。
【0032】
担持金属酸化物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物の少なくとも1種を用いる。
【0033】
上記アルカリ金属酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化ルビジウム及び酸化セシウムの少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
上記アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0035】
上記周期表13族元素酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム及び酸化ガリウムの少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
上記第1遷移金属酸化物(即ち、第4周期遷移金属酸化物)としては、例えば、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅及び酸化亜鉛の少なくとも1種が挙げられる。
【0037】
上記貴金属酸化物としては、例えば、酸化パラジウムが挙げられる。
【0038】
これらの金属酸化物の平均粒子径は限定的ではないが、1〜20nmが好ましく、1〜10nmがより好ましい。金属酸化物の担持量も限定的ではないが、酸化インジウム+担持金属酸化物の合計量を100重量%として、0.5〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0039】
これらの金属酸化物の中でも、特に350℃程度でエタノール水蒸気改質反応を行う場合
には特にアルカリ金属(Li, Rb, Cs)酸化物、第1遷移金属(Mn)酸化物、貴金属(Pd)酸化物が好ましい。また、300℃程度でエタノール水蒸気改質反応を行う場合には特に第
1遷移金属(Mn, Cu)酸化物、希土類金属(Ce)酸化物、貴金属(Pd)酸化物が好ましい。また、250℃程度でエタノール水蒸気改質反応を行う場合には特に貴金属(Pd)酸化物
が好ましい。本発明のエタノール水蒸気改質用触媒は、特に250〜350℃でエタノール水蒸気改質反応を活性化でき、特にPd酸化物を担持した触媒が好ましい。このような本発明のエタノール水蒸気改質用触媒は、特に改質反応2を活性化する。
【0040】
酸化インジウム担体に金属酸化物を担持させる方法は限定されず、例えば、担持対象の金属を含む塩(例えば硝酸塩)を蒸留水に溶解し、得られた溶液に酸化インジウム担体を浸漬した後、脱水及び酸化性雰囲気で熱処理する方法が挙げられる。溶液濃度は金属酸化物の担持量に応じて適宜調整する。
【0041】
水素製造方法
本発明のエタノール水蒸気改質用触媒の存在下、エタノール及び水蒸気を反応させることによって主として水素と二酸化炭素が得られる。エタノール及び水蒸気は気相で反応させることができ、通常は気相流通式で反応させる。具体的には、エタノール及び水蒸気の混合ガスを加熱下で本発明のエタノール水蒸気改質用触媒に接触させることにより、エタノールと水蒸気を反応させることができる。
【0042】
本発明で用いるエタノールは含水していてもよい。エタノール中の不純物、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、酢酸等の有機酸類、エチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、は改質反応に悪影響を与えない限り含まれていてもよい。よって、バイオマス起源のエタノール、例えば、醸造エタノールやバイオリアクターを用いて製造されたエタノール水溶液も使用できる。但し、上記不純物の含有量は、水蒸気とエタノールの含有量に対して5重量%以下、好ましくは1重量%以下が好ましい。
【0043】
供給ガスの組成は特に制限されないが、通常、エタノールと水蒸気の容積比が7〜70容積%:30〜93容積%とすればよい。キャリアガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0044】
反応温度は225〜350℃程度が好ましく、250〜350℃程度がより好ましい。このように比較的低温で反応可能であることは、瞬時に改質反応の開始・停止を制御できる点、及び触媒の耐久性を低下させるエチレンやアセトアルデヒドの生成量を低減できる点で好ましい。
【0045】
反応圧力は限定されないが、通常0.5〜30気圧、好ましくは1〜10気圧である。反応圧力が高いと生成する水素の分圧を高めることが可能となり、後段で水素分離を行う時に有利となるが、圧力が高すぎると化学平衡が水素生成に不利となる。本発明では、水素分離膜を備えたメンブレンリアクターを併用して水素を分離しながら反応させてもよい。
【0046】
気相流通式で反応させる場合の反応ガスの供給量は反応器の大きさ、形状、反応温度、反応圧力などに応じて適宜選択することができ、通常は触媒1gあたり1000〜100000ml/h、好ましくは5000〜50000ml/h程度とすることができる。
【0047】
本発明の水素製造方法によれば、エタノールの消費速度が3mmol/h/g-cat.以上(好ま
しくは4mmol/h/g-cat.以上、より好ましくは5mmol/h /g-cat.以上)であり、かつ水素
生成速度が3mmol/h/g-cat.以上(好ましくは4mmol/h/g-cat.以上、より好ましくは5mmol/h/g-cat.以上)が達成される。
【発明の効果】
【0048】
本発明のエタノール水蒸気改質用触媒は、従来よりも低温でエタノール水蒸気改質反応を触媒することができる。低温化できることは、改質反応の開始・停止を瞬時に制御できる点で好ましい。また、触媒の耐久性を低下させるエチレンやアセトアルデヒドの生成量を低減できる点でも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例2の水素生成速度(a)及び出口ガスCO濃度(b)示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0051】
実施例1
(1)硝酸リチウム[LiNO3] 0.0345 g (5.0×10-4モル)を10 mLの蒸留水に溶解させてA液を得た。
【0052】
上記A液0.680 mLに酸化インジウム(平均粒子径64nm)を浸漬し、エバポレーターを使
用して70℃で水を除去した。得たれた粉体を空気中で350℃、3時間焼成することにより酸化リチウム担持酸化インジウム触媒(触媒No.1)[Li2O/In2O3、重量比Li2O:In2O3= 1:99]を得た。
【0053】
また、上記と同様に各種金属硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウム、硝酸クロム、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸セリウム、硝酸パラジウム)を用いて触媒No.3-5及びNo.7-16を得た(平均粒子径や重量比の条件は触媒No.1と同じとした)。
(2)硝酸リチウム[LiNO3] 0.0695 g (1.0×10-3モル)を20 mLの蒸留水に溶解させてB液を得た。
【0054】
上記B液0.544 mLに酸化インジウム(平均粒子径64nm)を浸漬し、エバポレーターを使
用して70℃で水を除去した。得たれた粉体を空気中で350℃、3時間焼成することにより酸化リチウム担持酸化インジウム触媒(触媒No.2)[Li2O(0.8)/In2O3、重量比Li2O:In2O3= 0.8:99.2]を得た。
(3)硝酸セシウム[CsNO3] 0.1956 g (1.0×10-3モル)を20 mLの蒸留水に溶解させてC液を得た。
【0055】
上記C液0.120 mLに酸化インジウム(平均粒子径64nm)を浸漬し、エバポレーターを使
用して70℃で水を除去した。得たれた粉体を空気中で350℃、3時間焼成することにより酸化セシウム担持酸化インジウム触媒(触媒No.6)[Cs2O(0.5)/In2O3、重量比Cs2O:In2O3= 0.5:99.5]を得た。
(4)続いて、上記各触媒(No.1〜16)0.10 gを内径7ミリメートルの石英管に充填し、
水素ガスを流通させながら350℃で10分間還元処理を行った。その後、250、300、350℃の各温度において、この石英管中にエタノール0.4容量%、水蒸気1.6容量%を含む窒素ガスを50 mL/分の流量で流通させた。
【0056】
流通後のガスに含まれる水素濃度、エタノール濃度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、メタン濃度、エチレン濃度、アセトアルデヒド濃度、プロピレン濃度、及びアセトン濃度をガスクロマトグラフにより分析した。また、下記式により、水素生成速度、エタノール消費速度、及びカーボンバランスを元に転化したエタノール量に対する二酸化炭素+アセトン、エチレン、及び一酸化炭素の量を算出した。
・水素生成速度(ミリモル/時/触媒量(g))={[[[(全ガス流量(mL / 分)×(水素濃度(%)/100)]/22400(mL/モル)]×60]/触媒量(g)}×1000
・エタノール消費速度(ミリモル/時/触媒量(g))={[[(全ガス流量(mL / 分)×([触媒層入口のエタノール濃度(%)]−[触媒層出口のエタノール濃度(%))/100)]/22400(mL/モル)]×60]/触媒量(g)}×1000
・カーボンバランス(−)={{[触媒層出口の各含炭素生成物濃度(%)]×(炭素数/2)}の総和}/[触媒層入口のエタノール濃度(%)]
・転化したエタノール量に対する一酸化炭素量(−)={{1−[触媒層出口のエタノール
濃度(%)]/[触媒層出口のエタノール濃度(%)]} /100}×カーボンバランス×[触媒層出口の一酸化炭素濃度(%)]/2}/{{[触媒層出口の各含炭素生成物濃度(%)×(炭
素数/2)}の総和}
・転化したエタノール量に対する二酸化炭素量+アセトン量(−)={{{1−[触媒層出口のエタノール濃度(%)]/[触媒層出口のエタノール濃度(%)]} /100}×カーボンバ
ランス×[触媒層出口の二酸化炭素濃度(%)]/2}+{{1−[触媒層出口のエタノール濃
度(%)]/[触媒層出口のエタノール濃度(%)]} /100}×カーボンバランス×[触媒層出口のアセトン濃度(%)]×(3/2)}}/{{[触媒層出口の各含炭素生成物濃度(%)×(
炭素数/2)}の総和}
・転化したエタノール量に対するエチレン量(−)={{1−[触媒層出口のエタノール濃
度(%)]/[触媒層出口のエタノール濃度(%)]} /100}×カーボンバランス×[触媒層出口のエチレン濃度(%)]}/{{[触媒層出口の各含炭素生成物濃度(%)]×(炭素数/2)}の総和}。
【0057】
下記表1に250℃、300℃、350℃での各触媒の水素生成速度を示す。表中の[]内の数値はエタノールの消費速度を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
[]内の数値はエタノール消費速度(mmol / h / g-cat.)を示す。
【0060】
表1の結果からは、350℃では、金属酸化物として特にアルカリ金属(Li, Rb, Cs)酸
化物、第1遷移金属(Mn)酸化物、貴金属(Pd)酸化物を担持した場合の効果が大きい。また、300℃では、特に第1遷移金属(Mn, Cu)酸化物、希土類金属(Ce)酸化物、貴金
属(Pd)酸化物を担持した場合の効果が大きい。また、250℃では、特に貴金属(Pd)酸
化物を担持した場合の効果が大きい。
【0061】
下記表2は、水素生成速度が速かった触媒2, 6, 11, 16についての300℃における含炭
素生成物中の二酸化炭素+アセトンの割合を表している。いずれの触媒もIn2O3単体より
も二酸化炭素+アセトンの割合が高くなっており、水素生成に関与しないエチレン及びCOの副生量が少ない。これよりいずれの担持触媒上においても主な含炭素生成物は二酸化炭素とアセトンである。エチレンはその重合物が触媒上に堆積して耐久性を低下させるが、他方アセトンは耐久の低下に影響を与えない点で好ましい。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例2
硝酸パラジウム[Pd(NO3)2・nH2O] 0.1328 g (0.0004984モル)を10 mLの蒸留水に溶解させてD液を得た。
【0064】
上記D液1.3601 mLに酸化インジウム(平均粒子径64nm)を浸漬し、エバポレーターを使用して70℃で水を除去した。得たれた粉体を空気中で350度、3時間焼成することにより酸化パラジウム担持酸化インジウム触媒(触媒No.17)[PdO/In2O3、重量比PdO:In2O3 = 1:99]を得た。
【0065】
続いて上記触媒(触媒No.17)0.60 gを内径12.7 mmのSUS製管に充填し、300℃において、このSUS製管にエタノール9.5容量%、水蒸気42.7容量%を含む窒素ガスを50 mL/分の
流量で10時間流通させて水素濃度及び一酸化炭素濃度を測定した。水素に関しては前記同様に水素生成速度(ミリモル/時/触媒量(g))も算出した。
【0066】
水素生成速度及び出口ガスCO濃度をそれぞれ図1(a)、(b)に示す。図1の結果からは、エタノール濃度が高濃度(9.5容量%)であっても、水素生成速度及び出口ガスCO濃
度が安定していることが分かる。
【0067】
実施例3
硝酸パラジウム[Pd(NO3)2・nH2O] 0.1338 g (0.0005022モル)を10 mLの蒸留水に溶解させてE液を得た。
【0068】
上記E液1.3600 mLに酸化インジウム(平均粒子径64nm)を浸漬し、エバポレーターを使用して70℃で水を除去した。得たれた粉体を空気中で350度、3時間焼成することにより酸化パラジウム担持酸化インジウム触媒(触媒No.18)[PdO/In2O3、重量比PdO:In2O3 = 1:99]を得た。
【0069】
続いて上記触媒(触媒No.18) 0.6 gを内径12.7 mmのSUS製管に充填し、300℃におい
て、このSUS製管にエタノール9.5容量%、水蒸気42.7容量%を含む窒素ガスを50 mL/分
の流量で3時間流通させた後に取り出した触媒のうち0.05 gを内径7mmのガラス管に充填し、10 %酸素を含む窒素50 mL/分の流量で流通させ、室温(10℃)から5℃/分で600℃まで昇温して二酸化炭素濃度(%)を測定し、エタノール全流通量に対する二酸化炭素総量(−)から推定炭素析出量を算出した。その結果、推定炭素析出量は、2.75×10-6mol-CO2/mol-全エタノールであった。つまり、流通させた全エタノールのうち、100万分の1.38が
析出炭素になった見積りであり、実質的に無視できる析出量であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化インジウムを担体とし、当該担体にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1種が担持されてなるエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項2】
前記アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、周期表第13族元素酸化物(但し酸化インジウムを除く)、第1遷移金属酸化物、希土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1種の担持量が0.5〜20重量%である、請求項1に記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項3】
前記アルカリ金属酸化物は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化ルビジウム及び酸化セシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属酸化物は、酸化マグネシウムである、請求項1〜3のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項5】
前記周期表13族元素酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ガリウムの少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項6】
前記第1遷移金属酸化物は、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項7】
前記貴金属酸化物は、酸化パラジウムである、請求項1〜6のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のエタノール水蒸気改質用触媒を用いて、エタノールと水蒸気の混合物を主として水素と二酸化炭素に変換する水素製造方法。
【請求項9】
225〜350℃の範囲でエタノールと水蒸気の混合物を主として水素と二酸化炭素に変換する、請求項8に記載の水素製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−264369(P2010−264369A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117118(P2009−117118)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】